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技術 工程処理実施の有無を判別する手段を有するスライドグラス、組織切片スライド、組織切片用処理容器、および工程処理実施の有無の判別方法

出願人 コニカミノルタ株式会社
発明者 剣持紘明梶浦勇生
出願日 2015年4月2日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2015-075726
公開日 2016年11月24日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-197134
状態 特許登録済
技術分野 顕微鏡、コンデンサー サンプリング、試料調製 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 漬用容器 製品製造後 液面部分 処理用容器 パパニコロウ シール基材 スライド処理 pH試験紙
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

プレパラートを作製する際に各工程処理が適切に行われているかどうかを客観的に管理・把握できるような手段を提供する。

解決手段

プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の、実施の有無を判別できる表示を提示する手段(判別手段)を有する、プレパラート作製用スライドグラス。判別手段は複数の工程処理に対応したものであることが好ましい。判別手段としては、例えば、工程処理で使用される溶液またはその温度もしくはpHと反応して、発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものが好適である。

概要

背景

病理診断では、人体から採取した組織片についてプレパラートを作製し、細胞の形態や特定のタンパク質や遺伝子の発現状況を反映した染色状況を観察する。一般的に、採取された組織片は脱水してパラフィンブロック化されており、プレパラート作製時に数μmの厚さに薄切され、スライドグラスに載置される。続いて、スライドグラス上に載置された組織切片は、例えば特定のタンパク質の発現状況を評価する場合は、脱パラフィン処理賦活化処理をされたのち、そのタンパク質(抗原)に対応した標識抗体標識処理される。このようなタンパク質の標識処理には従来、ペルオキシダーゼで標識された抗体を結合させた後、DAB(ジアミノベンジジン)を基質として添加して発色させる、DAB染色などの色素染色法が用いられていた。しかしながら近年では、蛍光体、例えば蛍光色素等の蛍光物質メラミン樹脂等の母体集積化した蛍光体集積ナノ粒子のように特に識別性に優れた蛍光体で標識された抗体を結合させる蛍光染色法も提案されている(例えば特許文献1:国際公開WO2013/035705号パンフレット、特許文献2:WO2013/147081号パンフレット等参照)。このような蛍光標識法を利用した場合、同一の組織切片に対してさらに、細胞の形態を観察するための色素染色、たとえばヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)を施し、明視野における形態観察暗視野における蛍光観察の両方を行うこともできる。

このように、プレパラートの作製過程では通常、複雑なプロトコールに従って多数の工程処理が行われることになり、各工程処理が適切に行われているかどうか管理・把握が重要である。

病理診断等の分析検査に関連する工程処理の実施の有無を確認する方法として、例えば特許文献3(特開2009−291123号公報)には、主にマイクロプレートウェル内で行われる血液等の体液由来する検体試料の分析において、希釈液または溶解液に検体試料が正しく添加されたか否かを確認する方法が開示されている。その方法の一実施形態として、体液には一般的にグルコースが含まれることに基づき、グルコースを基質とする呈色試薬を検体試料に添加しておき、呈色するか否かによって、検体試料の添加の有無を目視判別できるようにする方法が記載されている。

一方、特許文献4(国際公開WO2004/044639号パンフレット)には、病理診断等のための顕微鏡観察撮影画像の取得に使用されるスライドグラスであって、その画像の色評価および色補正に使用できるように、色基準用のマイクロカラーフィルタが面上に形成されているものが開示されている。

概要

プレパラートを作製する際に各工程処理が適切に行われているかどうかを客観的に管理・把握できるような手段を提供する。プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の、実施の有無を判別できる表示を提示する手段(判別手段)を有する、プレパラート作製用スライドグラス。判別手段は複数の工程処理に対応したものであることが好ましい。判別手段としては、例えば、工程処理で使用される溶液またはその温度もしくはpHと反応して、発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものが好適である。なし

目的

本発明は、プレパラートを作製する際に各工程処理が適切に行われているかどうかを客観的に管理・把握できるような手段を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の、実施の有無を判別できる表示を提示する手段(以下「判別手段」と称する。)を有する、プレパラート作製用スライドグラス

請求項2

複数の工程処理のそれぞれに対応した複数の判別手段を有する、請求項1に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項3

判別手段が、工程処理で使用される溶液と反応して発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、請求項1または2に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項4

判別手段が、工程処理で使用される溶液の温度に反応して発色、変色または溶融することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、請求項1または2に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項5

判別手段が、工程処理で使用される溶液のpHに反応して発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、請求項1または2に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項6

工程処理の実施の有無を判別できる表示を文字または図柄によって提示する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項7

脱着可能なシールマスク材が判別手段を覆うように貼着している、請求項1〜3,5,6のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項8

判別手段がさらに、工程処理で用いられる溶液に組織切片スライドを浸漬させるべき深さを把握できる目盛りを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項9

判別手段が、工程処理で使用される溶液に含まれる蛍光体捕捉する機構を有し、その蛍光体の蛍光発光により工程の処理実施の有無を判別できる表示を提示するものである、請求項1〜3,6〜8のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。

請求項10

請求項1〜9のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラスと、そこに載置された組織切片を含む、組織切片スライド。

請求項11

請求項10に記載の組織切片スライドを、その判別手段が所定の機能を発揮できるよう、工程処理で用いられる溶液にしかるべき深さで浸漬させた状態で保持することのできる収容部を備えた、組織切片スライド用処理容器

請求項12

組織切片スライドの複数の判別手段のそれぞれに対応した複数の収容部を備える、請求項11に記載の組織切片スライド用処理容器。

請求項13

請求項11または12に記載の組織切片スライド用処理容器で、請求項10に記載の組織切片スライドを工程処理で用いられる溶液にしかるべき深さで浸漬し、その判別手段の表示によって工程処理の実施の有無を判別する方法。

技術分野

0001

本発明は、病理診断等に用いられるプレパラートを作製するために用いられるスライドグラスおよび組織切片スライド、組織切片スライドからプレパラートを作製する際に用いられる器具、組織切片スライドからプレパラートを作製するための工程などに関する。

背景技術

0002

病理診断では、人体から採取した組織片についてプレパラートを作製し、細胞の形態や特定のタンパク質や遺伝子の発現状況を反映した染色状況を観察する。一般的に、採取された組織片は脱水してパラフィンブロック化されており、プレパラート作製時に数μmの厚さに薄切され、スライドグラスに載置される。続いて、スライドグラス上に載置された組織切片は、例えば特定のタンパク質の発現状況を評価する場合は、脱パラフィン処理賦活化処理をされたのち、そのタンパク質(抗原)に対応した標識抗体標識処理される。このようなタンパク質の標識処理には従来、ペルオキシダーゼで標識された抗体を結合させた後、DAB(ジアミノベンジジン)を基質として添加して発色させる、DAB染色などの色素染色法が用いられていた。しかしながら近年では、蛍光体、例えば蛍光色素等の蛍光物質メラミン樹脂等の母体集積化した蛍光体集積ナノ粒子のように特に識別性に優れた蛍光体で標識された抗体を結合させる蛍光染色法も提案されている(例えば特許文献1:国際公開WO2013/035705号パンフレット、特許文献2:WO2013/147081号パンフレット等参照)。このような蛍光標識法を利用した場合、同一の組織切片に対してさらに、細胞の形態を観察するための色素染色、たとえばヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)を施し、明視野における形態観察暗視野における蛍光観察の両方を行うこともできる。

0003

このように、プレパラートの作製過程では通常、複雑なプロトコールに従って多数の工程処理が行われることになり、各工程処理が適切に行われているかどうか管理・把握が重要である。

0004

病理診断等の分析検査に関連する工程処理の実施の有無を確認する方法として、例えば特許文献3(特開2009−291123号公報)には、主にマイクロプレートウェル内で行われる血液等の体液由来する検体試料の分析において、希釈液または溶解液に検体試料が正しく添加されたか否かを確認する方法が開示されている。その方法の一実施形態として、体液には一般的にグルコースが含まれることに基づき、グルコースを基質とする呈色試薬を検体試料に添加しておき、呈色するか否かによって、検体試料の添加の有無を目視判別できるようにする方法が記載されている。

0005

一方、特許文献4(国際公開WO2004/044639号パンフレット)には、病理診断等のための顕微鏡観察撮影画像の取得に使用されるスライドグラスであって、その画像の色評価および色補正に使用できるように、色基準用のマイクロカラーフィルタが面上に形成されているものが開示されている。

先行技術

0006

国際公開WO2013/035705号パンフレット
国際公開WO2013/147081号パンフレット
特開2009−291123号公報
国際公開WO2004/044639号パンフレット

発明が解決しようとする課題

0007

プレパラートを作製する際に各工程処理が適切に行われているかどうかは、従来は必要に応じて作業者が独自に、実施済みチェックを記したり、シールを貼ったりして記録する人為的な手段で管理・把握するにとどまっていたため、記録のミスによって工程の管理・把握が不適切なものとなるおそれがあった。特に、蛍光体を用いて特定タンパク質標識化する場合、肉眼では蛍光視認できないため、標識工程を経たかどうか(蛍光標識抗体が特定タンパク質に結合したかどうか)を直ちに確認することができない。このように従来は、プレパラートの作製に関する一連の工程を適切に通過し、プレパラートが完成したか否かの判別が困難であるという課題があった。

0008

したがって本発明は、プレパラートを作製する際に各工程処理が適切に行われているかどうかを客観的に管理・把握できるような手段を提供することを課題とする。

0009

なお、特許文献1に記載されている試料添加確認方法は、溶液中に呈色試薬を添加するため、一旦呈色してしまえば次工程でさらなる呈色反応を行うこと、すなわち希釈液等への検体試料の添加以外の工程が行われたか否かを判別することは困難である。このような方法を、プレパラートの作製過程における、通常は複数行われる工程処理の実施の有無を判別する手段に応用することは困難であり、特に、グルコースを含有しない溶液を用いた工程の実施の有無を判別する方法については全く示唆されていない。

0010

また、引用文献2に記載されているスライドグラスからも、プレパラートの作製過程における、通常は複数行われる工程処理の実施の有無を判別する手段は、記載も示唆もされていない。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、スライドグラスの表面に、プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の実施の有無を判別できる表示を、人為的に提示するのではなく、たとえば所定の溶液に浸漬するといった工程処理に付随する操作によって自ずと提示する手段(本明細書において「判別手段」と称する。)を備えさせることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。しかも、そのような判別手段は、一つだけでなく複数備えさせることができるため、多数の工程処理が必要とされるプレパラートの作製に用いられるスライドグラスにとって特に好適である。

0012

すなわち、本発明の一側面において、以下の[1]〜[13]のプレパラート作成用スライドグラス、組織切片スライド、組織切片用スライド用処理容器、および工程処理の実施の有無を判別する方法が提供される。
[1]
プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の、実施の有無を判別できる表示を提示する手段(以下「判別手段」と称する。)を有する、プレパラート作製用スライドグラス。
[2]
複数の工程処理のそれぞれに対応した複数の判別手段を有する、[1]に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[3]
判別手段が、工程処理で使用される溶液と反応して発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、[1]または[2]に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[4]
判別手段が、工程処理で使用される溶液の温度に反応して発色、変色または溶融することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、[1]または[2]に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[5]
判別手段が、工程処理で使用される溶液のpHに反応して発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものである、[1]または[2]に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[6]
工程処理の実施の有無を判別できる表示を文字または図柄によって提示する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[7]
脱着可能なシールマスク材が判別手段を覆うように貼着している、[1]〜[3],[5],[6]のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[8]
判別手段がさらに、工程処理で用いられる溶液に組織切片スライドを浸漬させるべき深さを把握できる目盛りを有する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[9]
判別手段が、工程処理で使用される溶液に含まれる蛍光体を捕捉する機構を有し、その蛍光体の蛍光発光により工程の処理実施の有無を判別できる表示を提示するものである、[1]〜[3],[6]〜[8]のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラス。
[10]
[1]〜[9]のいずれか一項に記載のプレパラート作製用スライドグラスと、そこに載置された組織切片を含む、組織切片スライド。
[11]
[10]に記載の組織切片スライドを、その判別手段が所定の機能を発揮できるよう、工程処理で用いられる溶液にしかるべき深さで浸漬させた状態で保持することのできる収容部を備えた、組織切片スライド用処理容器。
[12]
組織切片スライドの複数の判別手段のそれぞれに対応した複数の収容部を備える、[11]に記載の組織切片スライド用処理容器。
[13]
[11]または[12]に記載の組織切片スライド用処理容器で、[10]に記載の組織切片スライドを工程処理で用いられる溶液にしかるべき深さで浸漬し、その判別手段の表示によって工程処理の実施の有無を判別する方法。

発明の効果

0013

本発明のプレパラート作製用スライドグラスを用いることにより、プレパラートの作製過程に含まれる一連の工程が適切に実施されたかどうかを明確に判別し、管理・把握できるようになる。そのため、工程の未通過、工程の順序誤り工程内での処理の過不足などを防ぎ、病理診断等に用いられるプレパラートとしての品質信頼性を担保することができる。例えば、スライドグラスに組織切片を載置して組織切片スライドを作製する者もしくは団体(病理医等)と、その組織切片スライドに所定の工程処理を施してプレパラートを完成させる者もしくは団体とが異なっている場合がある。後者の作業の終了後、組織切片の見た目に変化がなくても、判別手段が所定の状態になっているかどうかを確認することで、プレパラートとしての不良品が病理診断を行う者もしくは団体(組織切片スライドを作製する者または団体と同じこともある。)に渡されることを防止することができる。

0014

さらに、本発明の組織切片スライド用保持具を使用することにより、簡便な操作、本発明のプレパラート作製用スライドグラスが備える判別手段の機能を利用することができる。

図面の簡単な説明

0015

図1は、複数の工程処理に対応した判別手段を有する、本発明のプレパラート作製用スライドグラスの実施例を示す模式図である。
図2[A]および[B]は、工程処理の実施の有無を判別できる表示を文字または図柄によって提示する、本発明のプレパラート作製用スライドグラスの実施例を示す模式図である。
図3は、脱着可能なシールマスク材が判別手段を覆うように貼着している、本発明のプレパラート作製用スライドグラスの実施例を示す模式図である。
図4は、判別手段がさらに工程処理で用いられる溶液に組織切片スライドを浸漬させるべき深さを把握できる目盛りを有する、本発明のプレパラート作製用スライドグラスの実施例を示す模式図である。
図5[A]および[B]は、組織切片スライドの複数の判別手段のそれぞれに対応した複数の収容部を備える、本発明の組織切片スライド用処理容器の実施例を示す模式図である。

実施例

0016

−プレパラート作製用スライドグラス−
本発明のプレパラート作製用スライドグラスは、組織切片を載置し、プレパラートを作製するためのスライドグラスであって、プレパラートを作製する過程に含まれる工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示する手段(判別手段)を有するものである。このようなスライドグラスは、予め判別手段が形成されていて、これに組織切片を載置するように用いられるものであってもよいし、スライドグラスに組織切片を載置した後、判別手段を形成するように用いられるものであってもよい。いずれにしても、プレパラート作製過程を開始する段階で、組織切片が載置され、かつ判別手段が形成されている状態にあるスライドグラス(組織切片スライド)は、本発明のスライドグラスを利用しているといえる。

0017

プレパラートは、スライドグラスに組織切片を載置し、染色、封入等の必要な工程処理を行った後、カバーガラスを被せることによって作製される、顕微鏡観察用試料を指す。プレパラートを作製するための過程には、例えば以下に挙げる工程処理が含まれる。本明細書では、以下に挙げる工程処理を経てプレパラートを作製する実施形態に基づいて本発明のスライドグラスを説明する。ただし、プレパラートの作製過程に含まれる工程処理は以下に挙げるものに限定されず、他の工程処理が含まれる場合であっても、それに応じて本発明のスライドグラス、特に判別手段の実施形態を改変することが可能である。

0018

[プレパラート作製過程]
プレパラートの典型例としては、特定のタンパク質を標識化(染色)の対象とする実施形態(組織免疫染色プレパラート)と、特定の核酸(遺伝子)を標識化の対象とする実施形態(FISHプレパラート)が挙げられる。以下、これらのプレパラートの作製過程の一般的な実施形態について、まず組織免疫染色プレパラートについて記載し、次にFISHプレパラートの作製過程について記載する。本発明において、このような作製過程に含まれる工程処理は必要に応じて改変することができる。

0019

[組織免疫染色プレパラートの作製過程]
(1)脱パラフィン工程
脱パラフィン工程ではまず、パラフィン包埋された組織切片をキシレンに浸漬し、パラフィンを除去する。通常、このキシレンを用いた処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中でキシレンを交換してもよい。

0020

次に、エタノールに組織切片を浸漬してキシレンを除去する。通常、このエタノールを用いた処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中でエタノールを交換してもよい。

0021

最後に、水(例:蒸留水)に組織切片を浸漬させてエタノールを除去する。通常、この水を用いた処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中で水を交換してもよい。

0022

(2A)賦活化工程
賦活化工程では、脱パラフィン工程を経た組織切片を賦活液に浸漬し、加熱して、タンパク質(抗原)への抗体の結合能回復させる。賦活液としては、例えば、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMエチレンジアミン四酢酸EDTA)溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液などを用いることができる。加熱機器としては、オートクレーブマイクロウェーブ圧力鍋ウォーターバス等を用いることができる。通常、加熱処理の温度は50〜130℃、時間は5〜30分である。

0023

賦活液を用いた加熱処理後、好ましくは組織切片をPBS等の洗浄液に浸漬して洗浄する。通常、この賦活液での加熱処理後に行われるPBSを用いた洗浄処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中でPBSを交換してもよい。

0024

(3A)免疫染色に基づく標識工程(免疫染色工程)
標識工程を免疫染色に基づいて行う場合、賦活化工程を経た組織切片を組織免疫染色用の標識液に浸漬し、標識液中の1または複数の標識剤を直接的または間接的に標的とするタンパク質(抗原)に結合させて、標識化する。

0025

標的タンパク質(抗原)は特に限定されるものではないが、典型的には、組織免疫染色法に基づく病理診断の対象となり得る遺伝子、例えばHER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、MET、その他の各種のがん腫瘍関連遺伝子(いわゆるバイオマーカー遺伝子)由来のタンパク質、さらにはがんの増殖因子転写制御因子、増殖制御因子受容体、転写制御因子受容体等のがんに関連するタンパク質から選択することができる。したがって、次に述べる抗体も、上記のような標的タンパク質(抗原)に適した結合能を有するものとして、公知の手法に基づいて作製することができる。

0026

組織免疫染色用の標識剤としては、例えば、(a)標的タンパク質(抗原)を直接的に標識する場合は、その抗原に対応する抗体と標識物質とが共有結合を介して連結された物質を用いることができ、(b)標的タンパク質(抗原)を間接的に標識する場合は、(b−1)その抗原に対応する抗体(1次抗体)および(b−2)1次抗体に対応する抗体(2次抗体)と標識物質とが共有結合を介して連結された物質の組み合わせを用いることができる。また、上記(b−2)が有する標識物質を、ビオチンまたはアビジンハプテン(ジコキゲニン等)に置き換え、さらに(b−3)その置き換えられたビオチンまたはアビジンやハプテンと特異的に結合する物質(例えばビオチンに対してはアビジン、アビジンに対してはビオチン、ハプテンに対しては抗ハプテン抗体)と標識物質とが共有結合を介して連結された物質を加えて、合計3種類の標識剤を組み合わせて用いるようにして、間接的な標識の手法(形成される複合体)を改変することもできる。標識液は、このような標識剤を適切な濃度でPBS等の溶媒に溶解させて調製することができる。標識液には必要に応じて、BSA等のブロッキング剤を適切な濃度で添加してもよい。通常、組織免疫染色用の標識液を用いた処理は、4℃程度の低温で、1晩かけて行われる。抗原を間接的に標識する場合は、それぞれの標識剤を含む標識液に順次、組織切片を浸漬させていけばよい。

0027

標識工程に用いられる標識物質は特に限定されるものではなく、公知の各種の標識物質の中から選択することができる。例えば、所定の励起光照射することにより蛍光を発する、半導体ナノ粒子または蛍光色素、あるいはこれらを集積化した蛍光体集積ナノ粒子といった“蛍光体”を用いることもできるし、所定の基質を添加することにより自然光の下で視認できる通常光を発する酵素、例えばDABを基質として発色色素を生成するペルオキシダーゼを用いることもできる。このうち、発光強度輝度)が強く、視認性に優れる蛍光体集積ナノ粒子は、標識工程に用いられる標識物質として特に好ましい。標識工程に用いることができる標識物質、特に蛍光体集積ナノ粒子についての詳細は、例えば国際公開WO2013/035703号パンフレット(特許文献1)、国際公開WO2013/147081号パンフレット(特許文献2)などを参照することができる。

0028

標識液を用いた処理後、好ましくは組織切片をPBS等の洗浄液に浸漬して洗浄する。通常、この標識液での処理後に行われるPBSを用いた洗浄処理の温度は室温であり、時間は3〜30分である。必要により、浸漬途中でPBSを交換してもよい。

0029

(4)封入工程
プレパラート作製の最終段階として、標識工程を経た組織切片を、エタノール(水溶液)に浸漬して脱水処理し、次いでキシレンに浸漬して透徹処理をした後、封入液に浸漬して封入処理をする。

0030

エタノールを用いる脱水処理は、エタノール中の水の含有率を、例えば50%、30%、10%、0%というように下げていきながら、組織切片を順次それらのエタノールに浸漬し、組織中の水をエタノールに置換する(脱水)。その後、キシレンに浸漬し、そのエタノールをキシレンに置換する(透徹)。透徹処理後の組織切片に封入剤滴下し、カバーガラスを載せ、乾燥させることで、封入工程は完了し、プレパラートは完成する。

0031

封入剤としては、水性封入剤を用いることも、油性封入剤を用いることもできる。油性封入剤を用いる場合の実施形態については、例えば国際公開WO2013/147081号パンフレット(特許文献2)を参照することができる。

0032

(5A)任意工程:形態観察用染色工程
標識工程(免疫染色工程)において標識物質として蛍光体集積ナノ粒子を用いる場合、細胞ないし組織の形態観察用の染色液細胞膜等を染色しても、目的とするタンパク質を標識した蛍光体集積ナノ粒子を識別することが可能である。したがって、その場合は必要に応じて、標識工程を経た組織切片を染色液に浸漬し、細胞膜等を染色する工程を行ってもよい。

0033

形態観察用染色液としては、例えばヘマトキシリン・エオジン(HE)染色液や、パパニコロウ(Pap)染色液が挙げられる。HE染色であれば、例えば、まずマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色し、45℃の流水で3分間洗浄した後、1%エオシン液で5分間染色する、といった処理が行われる。

0034

(6)任意工程:固定化工程
標識工程(免疫染色工程)において標識物質として蛍光体集積ナノ粒子を用いた場合、特に封入剤として油系封入剤を用いる場合は、必要に応じて、標識工程を経た組織切片を固定化処理液に浸漬し、蛍光体集積ナノ粒子等を組織に強固に結合させて安定させた状態とする、固定化工程を行ってもよい。

0035

固定化処理液としては、ホルマリンパラホルムアルデヒドグルタールアルデヒドアセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤や、細胞膜透過物質などが挙げられる。通常、固定化処理の温度は室温、時間は数分から数時間程度である。

0036

組織免疫染色プレパラート作製過程に関するその他の事項は、公知の一般的な組織免疫染色の実施形態に準じたものとすることができる。

0037

[FISHプレパラートの作製過程]
FISHプレパラートの作製過程では、脱パラフィン工程(1)、および封入工程(4)については、前述した組織免疫染色プレパラートと同様に実施することができる一方、標識工程が、タンパク質を目的とする免疫染色工程(3A)ではなく、核酸(遺伝子)を目的とするFISH工程(3B)に変更される。また、賦活化工程(2A)に代わるFISH独自の工程として、細胞膜および核膜を除去するための工程、すなわち膜除去工程(2B)を実施する。
したがって、FISHプレパラートの作製過程については、上記工程(1)および(4)についての記載を省略し、工程(2B)および(3B)について以下に記載する。

0038

(2B)膜除去工程
プローブハイブリダイゼーション反応に供する前には、膜除去工程として、前処理(加熱処理および/または酸処理)と酵素処理の2段階の処理を施すことによって、細胞膜および核膜を除去し、プローブ試薬が効率的に組織切片上の核酸に到達できるようにすることが好ましいこと知られている。これらの処理条件組合せは、切片の種類・厚さやスライドの作製条件などに応じて、最適なものとなるよう適宜決定する必要がある。すべての処理を必ず実施する必要があるわけではなく、例えば酵素処理を実施しないという選択肢もある。以下に、膜除去工程の一実施形態の手順を示す。

0039

(前処理)
前処理としては、加熱処理および酸処理のいずれか一方またはこれら両方が行われる。すなわち、酸を用いない(緩衝溶液またはその他の溶液を用いた)加熱処理を行ってもよいし、加熱を行わない(室温で反応させる)酸処理を行ってもよいし、酸を用い、かつ加熱を行う処理を行ってもよい。前処理としては、上記のような処理を1回(1種類)のみ行ってもよいし、2回(2種類)以上行ってもよい。

0040

例えば、以下の(1)〜(5)のような手順で、2種類の処理を含む前処理を行うことができる。(1)プレパラートを塩酸溶液(0.2mol/L程度)に室温で、20分間浸漬する。(2)その後、水に3分間浸漬し、さらに洗浄緩衝液(2×SSC:standard sailine citrate)に3分間浸漬して洗浄する。(3)次に、プレパラートを80℃のNaSCN溶液(1mol/L程度)に30分間浸漬する。(4)その後、水に1分間浸漬し、さらに洗浄緩衝液に浸漬して洗浄する。(5)(4)の操作を2回繰り返す。

0041

(酵素処理)
酵素処理としては、プロテアーゼペプチド結合加水分解酵素)を用いた処理が行われる。このような処理は、細胞膜および核膜のタンパク質、特にコラーゲンの分解をするために行うことが好ましい。プロテアーゼとしては、プロテイナーゼ(タンパク質中の所定のアミノ酸配列を認識してそのペプチド結合加水分解するエンドペプチダーゼ)またはペプチダーゼペプチドN末端またはC末端のペプチド結合を加水分解するエキソペプチダーゼ)を用いることができるが、ペプシン、プロテイナーゼKといったプロテイナーゼが好ましい。

0042

例えば、以下の(1)〜(4)のような手順で酵素処理を行うことができる。(1)前処理したプレパラートを取り出し、ペーパータオルにスライドグラスの下端をつけて余分な洗浄緩衝液を取り除く。(2)10mMのHClに100μg/mlの濃度のペプシンを含むプロテアーゼ溶液を調製し、37℃に加温したこのプロテアーゼ溶液にプレパラートを10〜20分間浸漬する。(3)プレパラートを洗浄緩衝液に5分間浸漬する。この操作を2回繰り返す。(4)プレパラートを風乾または45〜50℃のスライドウォーマー上で2〜5分間乾燥させる。

0043

(3B)FISHに基づく標識工程(FISH工程)
標識工程をFISHに基づいて行う場合、膜除去工程を経た組織切片をまず変性液に浸漬させ、所定の温度で一定時間保持し、核酸(染色体)の2本鎖DNAを1本鎖DNAに解離させる変性処理を行う。続いて、変性処理を経た組織切片をFISH用の標識液に浸漬し、変性処理よりも低い所定の温度で一定時間保持し、標識液中の一または複数の標識剤を直接的または間接的に標的とする核酸(遺伝子)に結合させて標識化する、ハイブリダイゼーション処理を行う。

0044

標的核酸(遺伝子)は特に限定されるものではないが、典型的には、FISH法に基づく病理診断の対象となり得る遺伝子、例えばHER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、MET、その他の各種のがん・腫瘍関連遺伝子、いわゆるバイオマーカー遺伝子から選択することができる。したがって、次に述べるプローブも、上記のような標的核酸(遺伝子)に適した配列および長さを有するものとして、公知の手法に基づいて作製することができる。

0045

変性液としては、FISH用の一般的なもの、たとえばホルムアルデヒドとSSC(Standard SalineCitrate)の混合液を用いることができる。変性処理の温度は、例えば70〜85℃程度である。

0046

FISH用の標識剤としては、例えば、(a)標的核酸(遺伝子)を直接的に標識する場合は、その遺伝子の塩基配列の一部と相補的な塩基配列を有する核酸(プローブ)と標識物質とが共有結合を介して連結された化合物を用いることができ、(b)標的タンパク質(抗原)を間接的に標識する場合は、(b−1)その遺伝子の塩基配列の一部と相補的な塩基配列を有する核酸(プローブ)とビオチンまたはアビジンやハプテン(ジコキシゲニン等)とが共有結合を介して連結された物質および(b−2)そのビオチンまたはアビジンやハプテンと特異的に結合する物質(例えばビオチンに対してはアビジン、アビジンに対してはビオチン、ハプテンに対しては抗ハプテン抗体)と標識物質とが共有結合を介して連結された物質の組み合わせを用いることができる。

0047

FISH用の標識液は、上記のような標識剤を適切な濃度でPBS等の溶媒に溶解させて調製することができる。この標識液を用いて行うハイブリダイゼーション処理の温度は、例えば45℃前後である。なお、標識剤として上記(a)のようなものを用い、一段階の反応で標識処理を行うことができる場合は、変性液と標識液の両方を兼ねる溶液に組織切片を浸漬し、昇温して一定時間保持することで変性処理を行ったのち、降温して一定時間保持することで標識処理をするといったように、溶液を交換せずに2つの処理を連続的に行うことも可能である。

0048

標識工程に用いられる標識物質や、標識液を用いた処理後に行ってもよい洗浄処理については、組織免疫染色プレパラートについて記載したことと同様である。FISHプレパラート作製過程に関するその他の事項、例えばFISH用の標識剤に用いられるプローブの性状(塩基配列、塩基数等)、FISHの反応条件(温度、時間等)などは、公知の一般的なFISHの実施形態に準じたものとすることができる。

0049

(5B)任意工程:核染色工程
標識工程(FISH工程)において標識物質として蛍光体集積ナノ粒子を用いる場合、核染色液で核を染色しても、目的とするタンパク質を標識した蛍光体集積ナノ粒子を識別することが可能である。したがって、その場合は必要に応じて、標識工程を経た組織切片を染色液に浸漬し、核を染色する工程を行ってもよい。

0050

代表的な核染色液としては、2本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素であるDAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロライド)が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、7−AAD(7-aminoactinomycin D)、EB(エチジウムブロマイド:2,7-Diamino-10-ethyl-6-phenylphenanthridinium bromide)、エチジウムホモダイマーI(Ethidium Homodimer I)、エチジウムホモダイマーIII(Ethidium Homodimer III)、DMAO、Hoechst 33258(2'-(4-hydroxyphenyl)-5-(4-methyl-1-piperazinyl)-2,5'-bi-1Hbenzimidazole,trihydrochloride)、Hoechst 33342(2'-(4-ethoxyphenyl)-5-(4-methyl-1-piperazinyl)-2,5'-bi-1Hbenzimidazole,trihydrochloride)、PI(ヨウ化プロピジウム:3,8-Diamino-5-(3-[diethylmethylammonio]propyl)-6-phenylphenanthridinium, diiodide)、AO(アクリジンオレンジ:3,6-Acridinediamine)、NucRed Dead647 ReadyProbes Reagent(登録商標)などの核染色液を用いることもできる。

0051

[判別手段]
本発明のスライドグラスが備える判別手段、すなわち工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示する手段は特に限定されるものではないが、例えば、以下のような実施形態が挙げられる。以下、いくつかの具体例を挙げながら本発明について説明するが、本発明の実施形態はそれらに限定されるものではなく、具体例に示した以外の公知の様々な手法を用いることができる。

0052

<複数工程への対応>
判別手段は、一つの工程処理に対応したものだけでなく、複数の工程処理のそれぞれに対応した複数のものとすることができる。例えば、一つの工程処理の実施の有無を判別できる表示を、スライドグラス上の一つの領域(本明細書において、このような領域の一つずつを「表示部」と称することにする。)に提示するようにし、それらの表示部を、相互の表示の提示やそのための反応を阻害しないような適切な配置でもって、スライドグラス上に複数形成するようにすればよい。複数の判別手段(表示部)は、プレパラートを作製する過程に含まれる全ての工程処理に対応していてもよいし、それらの工程処理のうちの一部に対応していてもよい。また、複数の判別手段で所定の表示を提示するために用いられる手法は、1種類(共通)であってもよいし、2以上の種類(一部または全部が互いに相違)であってもよい。

0053

図1に、複数の工程処理に対応した判別手段を有するプレパラート作製用スライドグラスの模式図を示す。第1工程処理に対応した第1判別手段(第1表示部)、第2工程処理に対応した第2判別手段(第2表示部)、および第3工程処理に対応した第3判別手段(第3表示部)が、スライドグラスの長手方向および短手方向のそれぞれで重複しないようにずれて配置されている。このようにすることにより、スライドグラスを第1工程処理に用いる溶液に浸漬する(スライドグラスの長手方向が溶液の深さ方向になる)ときに、第1表示部のみが溶液と接触して第2および第3表示部は溶液と接触しないようにすることができる。また、スライドグラスを第2工程処理に用いる溶液に浸漬するときに、第2表示部(およびすでに反応を終えている第1表示部)が溶液と接触して第3表示部は溶液と接触しないようにすることができる。このとき、第2表示部に所定の表示を提示するための反応は、まだ利用されていない第3表示部での所定の表示の提示に影響を与えないものであることと同時に、すでに提示されている第1表示部での所定の表示に影響を与えないことが好ましい。例えば、第1表示部において第1の色から第2の色への変色が起きたときに、その後の任意の時点で第1工程処理が適切に行われたかどうかを確認できる(第1表示部が第1の色であれば、第1工程処理が未実施であると判別する)よう、第2工程処理以降で第1表示部が再び第1の色に戻らないようにすることが適切である。なお、スライドグラスの材質性質上、ペーパークロマトグラフィー薄層クロマトグラフィーとは異なり、第1表示部が溶液(多くの場合は水溶液)に浸漬しているときに、第1表示部よりも溶液の深さ方向で高い位置にある第2表示部にその溶液が浸透等により到達することは、通常は起きない。換言すれば、意図しない溶液との接触が起きないようにするために、そのような浸透が起きるような塗布処理を複数の表示部にまたがって施すことは避けるべきである。

0054

<工程処理の実施の有無を判別できる表示>
工程処理の実施の有無を判別できる表示は、一般的に、表示部の発色(無色から有色への色の変化)、変色(有色から有色、または有色から無色への色の変化)、溶解・溶融(有色から無色への色の変化)などによって提示することができる。また、このような提示は、判別手段(表示部)が、工程処理で使用される溶液と反応すること、工程処理で使用される溶液の温度に反応すること、または工程処理で使用される溶液のpHに反応することによって、引き起こすことができる。

0055

なお、発色、変色、溶解・溶融に関する色は、通常の電灯や自然光の照射下で目視で認識できる色に限定されるものではなく、所定の励起光を照射した時に発せられる蛍光の色であってもよい。例えば、後述するような具体例で示す、表示部で蛍光体(蛍光体集積ナノ粒子等)を捕捉するような場合における発色のように、直ちに目視で認識できなくても、所定の波長を有する励起光を照射することによって目視で認識できるようになるものでもよい。そのような励起光の光源としては、蛍光顕微鏡等で用いられるレーザーダイオードや、励起光の波長が紫外線領域である場合はUVランプまたはブラックライトなどを用いることができる。また、色の濃淡は特に限定されるものではなく、工程処理の実施の有無を的確に判別できる程度であればよい。さらに、判別手段(表示部)の有色または無色は、肉眼だけでなく、明視野または暗視野の顕微鏡で観察したり、光検出器撮影機器撮影した画像の処理ソフト)を利用して検知したりしてもよく、提示させる色(波長)や表示部のサイズはそのような観察に適合したものとすることができる。

0056

<第1実施形態:溶液との反応>
判別手段の第1の実施形態として、工程処理で使用される“溶液”と反応して、発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものが挙げられる。

0057

ここで、「溶液と反応する」とは、判別手段(表示部)が溶液と接触したときに、(i)溶媒自体、(ii)溶液中に溶解している、工程処理にとって必須の物質、または(iii)工程処理にとっては必須ではないが、判別手段を実施する目的で溶液中に添加した物質(本明細書において「判別試薬」と称する。)のいずれかによって発色等が引き起こされることをいい、次に述べる、溶液の温度やpHにより発色等が引き起こされることとは区別される。

0058

・溶液/発色の具体例
表示部が溶液と反応して“発色”する実施形態としては、上記(ii)または(iii)に相当するものであって、溶液中の“発色”のための物質を表示部において捕捉するものが挙げられる。“発色”のための物質としては、発光強度や視認性、検出性の観点から蛍光体を用いることが好ましい。本発明における好ましい実施形態としては、判別手段(表示部)が工程処理で使用される溶液に含まれる蛍光体を捕捉する機構を有し、その蛍光体の蛍光発光により工程の処理実施の有無を判別できる表示を提示するものが挙げられる。

0059

上記(ii)に相当する実施形態の具体例としては、抗原抗体反応、相補的な塩基配列を有する核酸の結合反応、その他の生体物質間の特異的な結合反応を利用する実施形態が挙げられる。

0060

上記(ii)において抗原抗体反応を利用する実施形態の一例は次の通りである。標識工程で用いる標識液には、標識の対象とするタンパク質(抗原)に直接的または間接的に結合させるための結合性生体物質とそれに連結した蛍光体等の標識物質が、標識剤として必然的に溶解している。一方、スライドグラスの表示部には、上記結合性生体物質の結合相手物理吸着化学的な結合、その他の手法を用いて固定しておく。例えば、上記抗原に直接的に結合させるための標識剤には、当該抗原に対する抗体(1次抗体)が連結されているので、表示部には当該抗体を固定しておく。また、上記抗原に間接的に結合させるための標識剤には、当該抗原に対する抗体(1次抗体)に結合する抗体(2次抗体)、あるいは当該1次抗体にさらに連結されたビオチンに結合するアビジン、または当該1次抗体にさらに連結されたジコキシゲニン等のハプテンに結合する抗ハプテン抗体などが連結されているので、表示部にはそれぞれ1次抗体、ビオチン、ハプテンなどを固定しておく。標識工程において、上記のような標識剤が溶解している標識液に、スライドグラス上の組織切片とともに表示部を浸漬する。すると、上記直接的または間接的な結合が、組織切片で起きるとともに表示部でも起きるので、表示部で捕捉された標識剤に含まれる標識物質によって、所定の表示が提示される。

0061

スライドグラスの表面に化学的な結合に基づいて、結合性生体物質の相手を固定する手法は公知である。例えば、結合性生体物質が2次抗体であり、表示部にその2次抗体に対応する抗原(すなわち組織免疫染色で用いられている1次抗体)を固定する場合、まず、無修飾のスライドグラスの表面を、末端カルボキシル基を有するシランカップリング剤で処理し、表面にカルボキシル基を導入する。つづいて、EDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochoride)およびNHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)で処理して、そのカルボキシル基を活性エステル化した後、上記1次抗体が有するアミノ基(N末端または側鎖に存在するアミノ基)を反応させることで、そのスライドグラスの表面を1次抗体で修飾することができる。そのように修飾された表示部では、結合性生体物質として2次抗体が連結された標識物質を捕捉することが可能となる。あるいは、結合性生体物質がビオチンであり、表示部にそれと特異的に結合するアビジンを固定する場合、まず、無修飾のスライドグラスの表面を、末端にアミノ基を有するシランカップリング剤で処理し、表面にアミノ基を導入する。つづいて、NHS−PEG4−ビオチンで処理して、そのアミノ基にビオチンを結合させた後、さらにアビジンで処理することで、スライドグラスの表面をアビジンで修飾することができる。そのように修飾された表示部では、結合性生体物質としてビオチンが連結された標識物質を捕捉することが可能となる。

0062

上記(iii)に相当する実施形態の具体例としては、いわゆる「クリックケミストリー」ないし「クリック反応」として生化学の分野で広く知られている、アジドアルキンの間で起きるヒュゲン環化付加反応を利用する実施形態が挙げられる。

0063

上記(iii)においてクリック反応を利用する実施形態の一例は次の通りである。工程処理に用いる溶液、例えば賦活化工程や標識工程の最終段階で行われる洗浄処理で用いる洗浄液に、蛍光体等の“発色物質”を連結させたアジドまたはアルキン化合物を判別試薬として添加し溶解させておく。一方、スライドグラスの表示部に、アルキンまたはアジドを物理吸着等により固定しておく。判別試薬にアジドを用いるときは、表示部にはアルキンを固定しておき、判別試薬にアルキンを用いるときは、表示部にはアジドを固定しておく。工程処理(例えば洗浄処理)において、スライドグラス上の組織切片とともに表示部を上記のようにして調製した溶液(例えば洗浄液)に浸漬する。すると、アジド−アルキンのクリック反応により前記判別試薬が表示部に捕捉され、そこに含まれる“発色物質”によって所定の表示が提示される。

0064

なお、(iii)の実施形態で捕捉される判別試薬が有する“発色物質”は、標識工程で用いられ、(ii)の実施形態で捕捉される標識抗体等が有する“標識物質”と同等の物質であるが、機能を区別するために異なる用語を用いる。(iii)の実施形態において用いられる“発色物質”と、その実施形態における標識工程で用いられるが表示部には捕捉されない“標識物質”の色は、同じまたは類似する種類のものであってもよいが、何らかの理由により“標識物質”が表示部で捕捉されるなどの意図しない反応が起きた場合でもそれを検知できるよう、異なる種類のものとすることが好ましい。

0065

上記(iii)の実施形態において、工程処理に用いる溶液中の判別試薬の濃度は特に限定されず、所定の表示が提示されるよう適宜調節すればよい。また、スライドグラスの表示部にアルキンまたはアジドを物理吸着させるためには、例えばアルキンまたはアジドの水溶液を表示部に滴下し、乾燥させればよい。クリック反応は、スライドグラスを所定の溶液に浸漬したときに、本来の所定の工程処理を行うための時間、温度、その他の条件を変更せずに十分に進行させることができるものが好適である。

0066

判別試薬としての、標識物質が連結したアジドまたはアルキン化合物は、クリックケミストリーで利用されている公知の手法に基づいてないし応用して作製することができる。すなわち、蛍光体等の標識物質と、その標識物質が有する(予め導入された)官能基に適合する反応性基がPEG等のリンカーを介してアジ基またはアルキニル基に結合されているアジドまたはアルキン化合物とを反応させて、両者を連結すればよい。例えば、標識物質が官能基としてアミノ基(−NH2)、スルフヒドリル基(−SH)を有する場合は、適合する反応性基として、それぞれNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)基、マレイミド基が結合したアジドまたはアルキン化合物を用いることができる。各種の反応性基が結合したアジドまたはアルキン化合物は、公知の手法を用いて合成することもできるし、製品として市販されているものを入手して利用してもよい。なお、初期のクリック反応は銅(I)イオンのような金属触媒を必要とするものであったが、近年では金属触媒が不要のシクロオクチンとアジドを反応させるクリック反応が利用可能になっており、そのための試薬キットも市販されて入手可能である(例えばClick-iT(登録商標)maleimide DIBO alkyne、ライフサイエンステクノロジーズ社、製品番号:C-1041)。

0067

再び図1を参照しながら、上記(iii)の実施形態の一例をより具体的に記載する。組織切片スライドとして、BioMax社製の乳がん組織アレイ検体スライド)を用意し、その一端に第1〜第3表示部を設ける。図1の第1表示部および第2表示部にはそれぞれ、次に述べる判別試薬を捕捉するための物質として、試薬A(アルキン:DBCO−PEG4−NHSエステル、Click Chemistry Tools社、製造番号:A102P)および試薬B(アジド:Alkyne−PEG−NHSエステル、NANOCS社、製造番号:PG2-AKNS-3K)をそれぞれ物理吸着させる。蛍光体集積ナノ粒子を調製し、脱パラフィン工程、賦活化工程、標識工程(免疫染色工程)などを順次行う。賦活化工程および標識工程では、それぞれ賦活液への浸漬処理および標識液への浸漬処理の後、洗浄液への浸漬処理(洗浄処理)を行う。この際に、それぞれの洗浄液に、判別試薬として、試薬C(アジドにAlexa Flouor 488が連結された化合物:Alexa Flouor 488 Azide、life technologies社、製造番号:A10266)および試薬D(アルキンにTAMRAが連結された化合物:TAMRA Alkyne, 5-isomer、life technologies社、製造番号:T10183)をそれぞれ添加する。賦活化工程の最終段階の洗浄処理では、試薬Aが固定されている第1表示部が、試薬Cが溶解している洗浄液に浸漬され、これらの試薬A(アルキン)および試薬D(アジド)がクリック反応により結合する。また、標識工程の最終段階の洗浄処理では、試薬Bが固定されている第2表示部が、試薬Dが溶解している洗浄液に浸漬され、これらの試薬B(アジド)および試薬D(アルキン)がクリック反応により結合する。このような工程処理が問題なく実施されていれば、所定の励起光を照射したときに、第1表示部は試薬Cが有するAlexa Flouor 488の色(緑色)を呈色し、第2表示部は試薬Dが有するTAMRAの色(オレンジ色)を呈色する。

0068

・溶液/変色の具体例
表示部が溶液と反応して“変色”する実施形態としては、上記(i)に相当するものであって、工程処理で用いられる多くの溶液の溶媒となっている水と反応して、表示部に固定された物質が“変色”するものが挙げられる。

0069

たとえば、乾燥時には青色であり、水と反応すると赤色になる塩化コバルトを表示部に塗布しておけば、工程処理で用いられる水溶液に浸漬したときに、表示部に赤色に呈色させることができる。また、いわゆる水発色インクと知られている技術を利用し、表示部にまず有色(白色以外)の第1のインクを塗布し、その上に、乾燥時には白色であり水と反応すると透明化する第2のインク(親水性シリカなどの顔料を同じく親水性のバインダーインク化したものを)を塗布しておけば、工程処理で用いられる水溶液に浸漬したときに、表示部に第1のインクの色を呈色させることができる。このほかにも、工程処理で用いられる溶液の溶媒および/または溶質に応じて、それと反応して“変色”する様々な物質を表示部に固定しておくことができる。

0070

・溶液/溶解の具体例
表示部が溶液と反応して“溶解”する実施形態としては、上記(i)に相当するものであって、工程処理で用いられる多くの溶液の溶媒となっている水と反応して、表示部に固定された物質が“溶解”するものが挙げられる。たとえば、グルコースは水に容易に溶解するので、着色したグルコースを表示部に塗布しておき、工程処理で用いられる水溶液に浸漬することにより、その着色したグルコースが水溶液中に溶解して、表示部は無色になる。このほかにも、工程処理で用いられる溶液の溶媒に応じて、それと反応して“溶解”する様々な物質を表示部に固定しておくことができる。

0071

<第2実施形態:温度による反応>
判別手段の第2の実施形態として、所定の工程処理で使用される溶液の“温度”に反応して、発色、変色または溶融することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものが挙げられる。その所定の工程処理で使用される溶液の温度と異なる環境下では、つまりその所定の工程処理以外の工程処理において溶液に浸漬させても、表示部の所定の発色、変色または溶融は起こらない。

0072

表示部が温度に反応して“発色”または“変色”する実施形態としては、工程処理で溶液が加熱または冷却されることで、表示部に塗布された物質が“発色”または“変色”するものが挙げられる。例えば、サーモロック(色素化学工業所(株)製)のインキは、常温では黒色であるが、消色温度である79〜86℃以上に加熱されると,ほぼ無色になるので、その物質を表示部に塗布しておき、賦活化工程において加熱された溶液に浸漬することにより、表示部を黒色から無色に変色させることができる。このほかにも、工程処理における加熱または冷却温度に応じて、その温度で“発色”または“変色”する様々な物質を表示部に塗布しておくことができる。

0073

表示部が温度に反応して“溶融”する実施形態としては、工程処理で溶液が加熱されることで、表示部に塗布された物質が“溶融”するものが挙げられる。例えば、融点は、賦活化工程における一般的な加熱温度の90℃より低い温度なので、着色したその物質を表示部に塗布しておき、工程処理において加熱された溶液に浸漬することにより、その着色した物質が加熱された溶液中に溶融して、表示部は無色になる。このほかにも、工程処理における加熱温度に応じて、その温度で“溶融”する(つまりその温度が融点以上である)様々な物質を表示部に塗布しておくことができる。

0074

<第3実施形態:pHによる反応>
判別手段の第3の実施形態として、工程処理で使用される溶液の“pH”に反応して、発色、変色または溶解することにより、工程処理の実施の有無を判別できる表示を提示するものが挙げられる。その所定の工程処理で使用される溶液のpHと異なる環境下では、つまりその所定の工程処理以外の工程処理において溶液に浸漬させても、表示部の所定の発色、変色または溶解は起こらない。

0075

表示部がpHに反応して“発色”または“変色”する実施形態としては、工程処理で用いられる溶液のpHにおいて、表示部に塗布された物質、好適にはpH試験紙に用いられているpH指示薬のような物質が“発色”または“変色”するものが挙げられる。例えばメチルオレンジを含有するインキは、中性付近乾燥状態)ではオレンジ色であるが、ヘマトキシリン染色工程で用いられる処理液について一般的なpH2の付近では赤色になるので、その物質を表示部に塗布しておき、工程処理においてそのpHの処理液に浸漬することにより、表示部をオレンジ色から赤色に変色させることができる。このほかにも、工程処理におけるpHに応じて、そのpHで“発色”または“変色”する様々な物質を表示部に塗布しておくことができる。

0076

表示部がpHに反応して“溶解”する実施形態としては、工程処理で用いられる溶液のpHにおいて、表示部に塗布された物質が“溶解”するものが挙げられる。中性付近の水に対する溶解性は極めて低い(難水溶性ないし非水溶性である)物質を着色し、表示部に塗布しておき、工程処理においてそのpHの溶液に浸漬することにより、その着色した物質が溶液中に溶融して、表示部は無色になる。このほかにも、工程処理におけるpHに応じて、そのpHで“溶解”する様々な物質を表示部に塗布しておくことができる。

0077

<文字、図柄>
判別手段により提示される、工程処理の実施の有無を判別するための表示は、円、矩形等の単純な図形であってもよいが、判別性を向上させるために、文字または図柄とすることもできる。

0078

図2に、上述した文字または図柄に関する実施形態の模式図を示す。工程処理が実施されていない段階では、文字(済)または図柄(◎)の表示が見えない(無色である)ようになっており、工程処理が実施されると、その工程処理に対応した表示部の文字または図柄が浮き出る(着色される)ようになっている。

0079

<シールマスク材>
判別手段には、脱着可能なシールマスク材がそこを覆うように貼着していてもよい。このシールマスク材は、対応する工程が開始される前に剥がされる。シールマスク材が貼着した状態では、判別手段(表示部)に工程処理で使用される溶液が接触するなどの、工程処理の実施の有無を判別できる表示の提示が抑制されるが、シールマスク材が剥がされると、そのような溶液の接触などの抑制が解かれ、所定の表示の提示が可能となる。必要であれば、シールマスク材は対応する工程が終了した後に再び貼着してもよく、それにより提示された表示がその後の工程処理によって変化することを防ぐことができる。一方で、対応する工程が終了した判別手段のシールマスク材は剥がされたままとして、まだ実施されていない工程の判別手段と区別しやすくしてもよい。

0080

なお、シールマスク材は、上記のような機能から、スライドグラスが複数の判別手段(表示部)を有するものである場合に使用することが好適である。また、シールマスク材で判別手段(表示部)を被覆すれば、判別手段(表示部)を作製してからプレパラート作製過程の所定の工程の開始直前まで(製品製造後保管時等)の間に、空気や光との接触により判別手段(表示部)が劣化してしまうことを防止することもできる。その意味で、必要であれば、スライドグラスが判別手段を1つだけ有するものである場合にシールマスク材を使用することも可能である。

0081

シールマスク材は、スライドグラスの製造時の貼着性および使用時の剥離性を有し、かつ対応する工程以外で貼着されている状態のときに、浸漬される溶液中で剥離したり溶解したりしないような耐性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、樹脂フィルム金属フィルムシール基材などから選ばれる、様々な種類のシールマスク材を用いることができる。

0082

図3に、上述したシールマスク材に関する実施形態の模式図を示す。この模式図は、第1工程開始時の状態を表しており、第1工程に対応する第1表示部はシールマスク材で被覆されていない(最初から第1表示部にはシールマスク材を貼着しないでおいてもよいし、貼着しておいて第1工程の開始直前に剥がしてもよい)が、第2工程に対応する第2表示部および第3工程に対応する第3表示部はシールマスク材で被覆されている。第1〜第3表示部は、図1の実施形態のように長手方向にずらして配置されているわけではないが、シールマスク材を使用しているのでこれら全体を第1工程で用いられる溶液に浸漬させることができる。あわせて、第1〜第3表示部の各判別手段に用いられる手法を共通化する、例えば第1〜第3工程の全てで“水溶液”に浸漬されるときに、第1〜第3表示部の全てを“水”と反応して所定の表示を提示する実施形態とすることが可能であり、スライドグラスの製造を簡便で効率的なものとすることができるという利点もある。

0083

<目盛り>
判別手段はさらに、工程処理で用いられる溶液に組織切片スライドを浸漬させるべき深さを把握できる目盛りを有していてもよい。例えば、浸漬用容器(組織切片スライド用保持具)に組織切片スライドを挿入した後、工程処理で使用する溶液を、それに対応する判別手段(表示部)が浸漬する位置に付された目盛りに液面が達するまで注入するようにして使用する。また、工程処理で使用する溶液を浸漬用容器にあらかじめ十分な深さで注入しておき、そこに組織切片スライドを、液面が目盛りに一致するところまで挿入するといった使用方法も可能である。これにより、工程処理で使用される溶液を、対応する本来の判別手段だけでなく、後に行われる工程処理に対応する判別手段まで、誤って接触させることを防止しやすくなる。

0084

なお、目盛りは、上記のような機能から、スライドグラスが複数の判別手段を有するものである場合に、対応する各工程処理での浸漬させるべき深さを把握するために使用することが好適である。また、目盛りは、各工程処理で使用される溶液の液量を最小限に留めることもできる。その意味で、必要であれば、スライドグラスが判別手段(表示部)を1つだけ有するものである場合に目盛りを使用することも可能である。

0085

図4に、上述した目盛りに関する実施形態の模式図を示す。第1〜第3表示部には、それぞれ対応する工程処理で用いられる溶液の液面の位置を表す、第1〜第3目盛りが付されている。例えば、第1表示部に対応する第1工程処理において、溶液の液面が第1目盛りに一致するようにすれば、第2および第3表示部は第1工程処理の溶液中には浸漬しない。このようにすれば、シールマスク材との関連で前述したことと同様に、第1〜第3表示部の各判別手段に用いられる手法を共通化することも可能であり、スライドグラスの製造を簡便で効率的なものとすることができるという利点もある。

0086

目盛りは工程処理の進行にかかわらず常に表示された状態のものとすることができるので、例えば、判別手段が表示部を無色から有色に発色させるものであって、溶液に浸漬する際の表示部の位置が分かりにくい場合や、判別手段が表示部を有色から無色に変化させる(溶解または溶融する)ものであって、一定時間経過後に液面部分が無色になっているときに、問題なく溶解または溶融が完了したのか、それとも最初から表示部が浸漬されていなかったのか(表示部でないところを浸漬していたのか)が分かりにくい場合に、工程にかかわらず常に表示されている目盛りを別途設けることが有用である。

0087

−組織切片スライド処理容器
本発明の組織切片スライド処理用容器は、上述したような本発明のスライドグラスを使用して作製される組織切片スライドと組み合わせて使用するのに好適な器具である。

0088

組織切片スライド用処理容器の基本的な実施形態は、図4に示されているようなものである。処理容器の収容部は、組織切片スライドと、工程処理で用いられる溶液の必要量とを収容し、組織切片スライドを工程処理の間、前述したような判別手段(表示部)が所定の機能を発揮できるよう、その溶液にしかるべき深さで、つまり判別手段(表示部)が液面下にある状態で、浸漬させた状態を保持することのできる構造となっている。また、浸漬の様子を確認できるよう、収容部の少なくとも一方の面(スライドグラスの表示部と対向する面、観察者から見て前面)は透過性の部材で形成されていることが好ましい。

0089

ここで、図4の実施形態ではスライドグラスに目盛りが付されているが、処理用容器の収容部に目盛りを付して、工程処理で用いられる溶液に組織切片スライドを浸漬させるべき深さを把握できるといった同様の機能が発揮されるようにすることも可能である。

0090

組織切片スライド用処理容器は、複数の判別手段を有する組織切片スライドと組み合わせて用いることができるよう、それらの複数の判別手段のそれぞれに対応した複数の収容部を備えることが好ましい。

0091

図5[A]および[B]に、複数の収容部を備えた組織切片スライド用処理容器の実施形態の模式図を示す。第1〜第3収容部は、組織切片スライド(プレパラート作製用スライドグラス)が有する第1〜第3表示部のそれぞれがしかるべき深さで溶液中に浸漬されるように異なる深さで形成されており、それぞれ第1〜第3工程処理で用いられる溶液で満たされている。第1〜第3収容部には、組織切片スライドを挿入する前に予め、それぞれ第1〜第3表示部がちょうど浸漬するように計算された体積の、各工程で用いられる溶液を注入しておくようにしておくことが好ましいが、各収容部の上端(縁)から不要な溶液が溢れ出ても適切に処理できる機構が施されている(例えば、隣接する収容部に流れ込んで溶液が混合しないよう、仕切りの壁に溶液排出用の溝を設ける)ならば、上記体積より多くの溶液を注入しておくことも可能である。また、各工程において対応する収容部に組織切片スライドを挿入した後、対応する表示部が浸漬するまで各工程で用いられる溶液を注入するようにして用いることも可能である。

0092

組織切片スライドはまず、第1工程において第1収容部に挿入される。組織切片が溶液中に浸漬し、第1工程の所定の処理が実施されるのと同時に、第1表示部が溶液中に浸漬し(第2および第3表示部は浸漬しない)、所定の表示を提示する。次に、組織切片スライドは第2工程において第2収容部に挿入され、第2表示部が溶液中に浸漬し(第3表示部は浸漬しない)、所定の表示を提示する。最後に、組織切片スライドは第3工程において第3収容部に挿入され、第3表示部が溶液中に浸漬し、所定の表示を提示する。このようにすれば、シールマスク材および目盛りとの関連で前述したことと同様に、第1〜第3表示部の各判別手段に用いられる手法を共通化することも可能である。

0093

このような組織切片スライド処理用容器換を用いることで、本発明の組織切片スライドを工程処理で用いられる溶液にしかるべき深さで浸漬させ、その判別手段の表示によって工程処理の実施の有無を判別することが的確に行えるようになる。

0094

1:スライドグラス
2:組織切片
8:第1表示部
8a:[A]文字による判別手段を有する第1表示部(工程処理済み)
8b:[B]図柄による判別手段を有する第1表示部(工程処理済み)
8c:シールマスク材が剥がされた判別手段を有する第1表示部(工程処理済み)
8d:目盛りが付された判別手段を有する第1表示部
8e:[A]第1〜第3収容部の各自の深さによって浸漬する判別手段を有する第1表示部
8f:[B]溶液の液面の高さによって浸漬する判別手段を有する第1表示部
9:第2表示部
9c:シールマスク材で覆われた判別手段を有する第2表示部(工程未処理)
9d:目盛りが付された判別手段を有する第2表示部
9e:[A]第1〜第3収容部の各自の深さによって浸漬する判別手段を有する第2表示部
9f:[B]溶液の液面の高さによって浸漬する判別手段を有する第2表示部
10:第3表示部
10c:シールマスク材で覆われた判別手段を有する第3表示部(工程未処理)
10d:目盛りが付された判別手段を有する第3表示部
10e:[A]第1〜第3収容部の各自の深さによって浸漬する判別手段を有する第3表示部
10f:[B]溶液の液面の高さによって浸漬する判別手段を有する第3表示部
11a:文字による判別手段を有する第2及び第3表示部(工程未処理)
11b:図柄による判別手段を有する第2及び第3表示部(工程未処理)
12:シールマスク材
13:浸漬用容器(組織切片用スライド用保持具)
14:第1目盛り
15:第2目盛り
16:第3目盛り
17:組織切片スライド処理用容器
18a:[A]組織切片スライド処理用容器の第1収容部
18b:[B]組織切片スライド処理用容器の第1収容部
19a:[A]組織切片スライド処理用容器の第2収容部
19b:[B]組織切片スライド処理用容器の第2収容部
20a:[A]組織切片スライド処理用容器の第3収容部
20b:[B]組織切片スライド処理用容器の第3収容部

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