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技術 一方向性電磁鋼板と一方向性電磁鋼板用脱炭板及びそれらの製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 濱知江
出願日 2015年4月2日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2015-075740
公開日 2016年11月24日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-196669
状態 特許登録済
技術分野 軟質磁性材料 電磁鋼板の製造
主要キーワード 性状劣化 分析強度 表層域 密着性劣化 酸化挙動 存在状況 Si強度 積層鋼板間
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年11月24日)のものです。
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図面 (2)

課題

良好なグラス皮膜密着性を示す一方向性電磁鋼板を提供する。

解決手段

母鋼板の表面にグラス皮膜が形成された一方向性電磁鋼板であって、前記母鋼板は、質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.003%、S:0.0001〜0.0030%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が7以上50未満であり、下記で規定されるAl検出強度ピークを3以上を有し、下記で規定されるS検出強度のピークを2以上を有し、GDSで測定されるNの最高検出強度が0.05以上0.1未満である。

概要

背景

一方向性電磁鋼板は、Siを2〜4%程度含有し、二次再結晶により結晶粒方位を{110}<001>方位に高度に集積させ、表面にグラス皮膜を形成した鋼板で、積層して鉄心を形成し、電力用変圧器あるいは回転機の部材として用いられている。特性としては、鉄損が低いことと、磁束密度が高いこと、グラス皮膜密着性が良好であることが求められる。特に結晶方位については、結晶方位集積度極限まで高めることで、これに連動する鉄損も極限まで低下させている。

鋼板には、鋼板への張力付与による磁気特性向上と積層鋼板間絶縁による鉄心特性確保のための皮膜(以降、張力皮膜と呼ぶ)が塗布される。この張力被膜は鋼に直接塗布しても密着性を確保することが困難なため、張力被膜との密着性が高いグラス皮膜を張力皮膜と鋼板表面の間に介在させている。母鋼板に対してのグラス皮膜の密着性が劣ると、鋼板加工時にグラス皮膜ととともに張力被膜が脱落してしまう。

Siは素材固有抵抗を高めて渦電流損を低くするため添加される。しかし、過度な添加は鋼板の脆化を招いて製造上困難となるため、冷延工程を経て製造される場合、工業的には3.5%程度までの添加に留まっている。このためSi以外の元素を含有させることで高固有抵抗の特徴を持たせた鋼板の報告、提案がなされている。例えば特許文献1、4では、Mnの2〜4%の添加を試みている。しかし、この技術は二次再結晶挙動に重大な役割を持つインヒビター(主としてMnS)が変化することに加え、オーステナイトフォーマー元素であるMnを多量に含有するため二次再結晶中に組織の一部がγ相に変態してしまい方位集積度の著しい劣化が問題となる。

グラス皮膜密着性の改善に関する技術として、特許文献2では、中間焼鈍で形成され性状劣化の一因となるSi濃化層を、中間焼鈍後に除去することを特徴とするものが開示されている。しかし、この技術ではグラス皮膜密着性の改善は十分ではない。

また融点が低いFeSに起因する熱延中の割れによる鋼板表面の性状悪化が、最終製品のグラス皮膜密着性劣化の原因となることがある。特許文献3は、熱延前の鋼材表面にMo含有溶液を塗布しておき熱延中の鋼材表面でMoのS化合物優先析出させることで、熱延材表面の割れを抑制し、結果として製品のグラス皮膜密着性を向上させるものである。しかしインヒビターとして二次再結晶挙動を調整する硫化物の形態を変えてしまうため、磁性不良が起きやすいことが問題となっている。

概要

良好なグラス皮膜密着性を示す一方向性電磁鋼板を提供する。母鋼板の表面にグラス皮膜が形成された一方向性電磁鋼板であって、前記母鋼板は、質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.003%、S:0.0001〜0.0030%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が7以上50未満であり、下記で規定されるAl検出強度ピークを3以上を有し、下記で規定されるS検出強度のピークを2以上を有し、GDSで測定されるNの最高検出強度が0.05以上0.1未満である。

目的

本発明は、低鉄損、高磁束密度、良好なグラス皮膜密着性を有する一方向性電磁鋼板、中間製品として一方向性電磁鋼板用の脱炭板及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

母鋼板の表面にグラス皮膜が形成された一方向性電磁鋼板であって、前記母鋼板は、質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が7以上50未満であり、下記で規定されるAl検出強度ピークを3以上を有し、下記で規定されるS検出強度のピークを2以上を有し、GDSで測定されるNの最高検出強度が0.05以上0.1未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。SM値:グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のSiおよびMnの強度分布において、表面に濃化しているSiの最高強度をSi(S)とし、その最高強度をSi(S)を検出した深さでのMn強度をMn(S)とする。さらに母鋼板内部でSi強度およびMn強度が安定した領域での強度をそれぞれSi(B)、Mn(B)とする。これらの値から、次式(1)でをSM値を計算する。SM値=Si(S)/Si(B)*Mn(B)/Mn(S)・・・式(1)Al検出強度のピーク:グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のAlの強度分布において、Al検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をAl検出強度のピークと規定する。S検出強度のピーク:グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のSの強度分布において、S検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をS検出強度のピークと規定する。

請求項2

前記母鋼板は、質量%でさらにCr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Ni:1%以下、B、Bi及びSe:B+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下のうち1種もしくは2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板。

請求項3

一方向性電磁鋼板の中間製品となる脱炭板であって、質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が4以上30未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板用の脱炭板。SM値:酸化膜皮膜された表面から内部にわたりGDSで板厚方向のSiおよびMnの強度分布を測定し、表面に濃化しているSiの最高強度をSi(S)とし、その最高強度をSi(S)を検出した深さでのMn強度をMn(S)とする。さらに母鋼板内部でSi強度およびMn強度が安定した領域での強度をそれぞれSi(B)、Mn(B)とする。これらの値から、次式(1)でをSM値を計算する。SM値=Si(S)/Si(B)*Mn(B)/Mn(S)・・・式(1)

請求項4

質量%でさらにCr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Ni:1%以下、B、Bi及びSe:B+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下のうち1種もしくは2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項3に記載の一方向性電磁鋼板用の脱炭板。

請求項5

熱間圧延冷間圧延脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て請求項1または2のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板を製造する方法であって、前記脱炭焼鈍の最高到達温度をY:700〜900℃とし、Y−30℃超での滞在時間:4秒以下、その後のY−30℃以下、Y−85℃以上の温度域での滞留時間:10秒以上とすることを特徴とする、一方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項6

前記脱炭焼鈍後から仕上焼鈍前の間で、酸洗機械研磨または化学研磨の1つ又は2つ以上の工程により鋼板表面の酸化膜を除去することを特徴とする、請求項5に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項7

熱間圧延、冷間圧延、脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て請求項1または2のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板を製造する方法であって、前記熱間圧延、前記冷間圧延、前記脱炭焼鈍、前記仕上焼鈍の少なくともいずれか一つの前処理として、鋼板表面にB、Al、Te、Mn、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布することを特徴とする、一方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項8

熱間圧延、冷間圧延、脱炭焼鈍を経て請求項3または4のいずれか1項に記載の脱炭板を製造する方法であって、前記脱炭焼鈍の最高到達温度をY:700〜900℃とし、Y−30℃超での滞在時間:4秒以下、その後のY−30℃以下、Y−85℃以上の温度域での滞留時間:10秒以上とすることを特徴とする、一方向性電磁鋼板用の脱炭板の製造方法。

請求項9

前記熱間圧延、前記冷間圧延、前記脱炭焼鈍の少なくともいずれか一つの前処理として、鋼板表面にB、Al、Te、Mn、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布することを特徴とする、請求項8に記載の一方向性電磁鋼板用の脱炭板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、軟磁性材料として電気機器鉄心に用いられる一方向性電磁鋼板磁気特性グラス皮膜密着性を改善するものである。

背景技術

0002

一方向性電磁鋼板は、Siを2〜4%程度含有し、二次再結晶により結晶粒方位を{110}<001>方位に高度に集積させ、表面にグラス皮膜を形成した鋼板で、積層して鉄心を形成し、電力用変圧器あるいは回転機の部材として用いられている。特性としては、鉄損が低いことと、磁束密度が高いこと、グラス皮膜密着性が良好であることが求められる。特に結晶方位については、結晶方位集積度極限まで高めることで、これに連動する鉄損も極限まで低下させている。

0003

鋼板には、鋼板への張力付与による磁気特性向上と積層鋼板間絶縁による鉄心特性確保のための皮膜(以降、張力皮膜と呼ぶ)が塗布される。この張力被膜は鋼に直接塗布しても密着性を確保することが困難なため、張力被膜との密着性が高いグラス皮膜を張力皮膜と鋼板表面の間に介在させている。母鋼板に対してのグラス皮膜の密着性が劣ると、鋼板加工時にグラス皮膜ととともに張力被膜が脱落してしまう。

0004

Siは素材固有抵抗を高めて渦電流損を低くするため添加される。しかし、過度な添加は鋼板の脆化を招いて製造上困難となるため、冷延工程を経て製造される場合、工業的には3.5%程度までの添加に留まっている。このためSi以外の元素を含有させることで高固有抵抗の特徴を持たせた鋼板の報告、提案がなされている。例えば特許文献1、4では、Mnの2〜4%の添加を試みている。しかし、この技術は二次再結晶挙動に重大な役割を持つインヒビター(主としてMnS)が変化することに加え、オーステナイトフォーマー元素であるMnを多量に含有するため二次再結晶中に組織の一部がγ相に変態してしまい方位集積度の著しい劣化が問題となる。

0005

グラス皮膜密着性の改善に関する技術として、特許文献2では、中間焼鈍で形成され性状劣化の一因となるSi濃化層を、中間焼鈍後に除去することを特徴とするものが開示されている。しかし、この技術ではグラス皮膜密着性の改善は十分ではない。

0006

また融点が低いFeSに起因する熱延中の割れによる鋼板表面の性状悪化が、最終製品のグラス皮膜密着性劣化の原因となることがある。特許文献3は、熱延前の鋼材表面にMo含有溶液を塗布しておき熱延中の鋼材表面でMoのS化合物優先析出させることで、熱延材表面の割れを抑制し、結果として製品のグラス皮膜密着性を向上させるものである。しかしインヒビターとして二次再結晶挙動を調整する硫化物の形態を変えてしまうため、磁性不良が起きやすいことが問題となっている。

先行技術

0007

特開平5-51705号公報
特願平5-201707号公報
特開昭59-85820号公報
特開平9-104923号公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、低鉄損、高磁束密度、良好なグラス皮膜密着性を有する一方向性電磁鋼板、中間製品として一方向性電磁鋼板用の脱炭板及びその製造方法を提供するものである。低鉄損化のため固有抵抗を十分に高めた成分の鋼材において、二次再結晶中にγ変態を起こさずα単相状態を前提とした良好な二次再結晶を発現させ、さらに良好なグラス皮膜が形成されるようグラス皮膜形成前の鋼材の表面の元素濃化や性状を制御することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、上記の要求を満足するため、まずMn、Al、Cu、Mo、Niなどを比較的多量に含有させ固有抵抗を高めた材料の探索を実施した。これらの元素は、二次再結晶制御の要とも言えるインヒビター制御に多大な影響を与えるが、Mn含有量が1〜3%程度であれば良好な二次再結晶が発現する場合があることがわかった。

0010

さらに詳細に検討した結果、Mnは酸化を促進させる作用も併せ持つため、製造途中の熱処理で生じる酸化膜が従来材料とは著しく異なり、中間製品の表面に不均一に生成、残存し、最終製品のグラス皮膜の密着性を悪化させていることが判明した。そして、中間製品の鋼板表面でのMn及びその酸化膜形成に影響を及ぼす元素の存在状況を制御することで、鋼板表面に良好なグラス皮膜を形成することに成功した。最終的に良好なグラス皮膜密着性を示す一方向性電磁鋼板は、グラス皮膜表面での元素分布状況、または途中製品として脱炭板表面の元素分布状況に特徴があり、これを規定することで特定でき、さらにその製造方法を提供できることがわかった。具体的には以下のものである。

0011

[1]
母鋼板の表面にグラス皮膜が形成された一方向性電磁鋼板であって、
前記母鋼板は、質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が7以上50未満であり、下記で規定されるAl検出強度ピークを3以上を有し、下記で規定されるS検出強度のピークを2以上を有し、GDSで測定されるNの最高検出強度が0.05以上0.1未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
SM値:
グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のSiおよびMnの強度分布において、表面に濃化しているSiの最高強度をSi(S)とし、その最高強度をSi(S)を検出した深さでのMn強度をMn(S)とする。さらに母鋼板内部でSi強度およびMn強度が安定した領域での強度をそれぞれSi(B)、Mn(B)とする。これらの値から、次式(1)でをSM値を計算する。
SM値=Si(S)/Si(B)*Mn(B)/Mn(S) ・・・式(1)
Al検出強度のピーク:
グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のAlの強度分布において、Al検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をAl検出強度のピークと規定する。
S検出強度のピーク:
グラス皮膜の表面から内部にわたりGDSで元素強度分布を測定し、板厚方向のSの強度分布において、S検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をS検出強度のピークと規定する。
[2]
前記母鋼板は、質量%でさらにCr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Ni:1%以下、B、Bi及びSe:B+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下のうち1種もしくは2種以上の元素を含有することを特徴とする[1]に記載の一方向性電磁鋼板。
[3]
一方向性電磁鋼板の中間製品となる脱炭板であって、
質量%でSi:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、C:0.0001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、下記で規定されるSM値が4以上30未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板用の脱炭板。
SM値:
酸化膜で皮膜された表面から内部にわたりGDSで板厚方向のSiおよびMnの強度分布を測定し、表面に濃化しているSiの最高強度をSi(S)とし、その最高強度をSi(S)を検出した深さでのMn強度をMn(S)とする。さらに母鋼板内部でSi強度およびMn強度が安定した領域での強度をそれぞれSi(B)、Mn(B)とする。これらの値から、次式(1)でをSM値を計算する。
SM値=Si(S)/Si(B)*Mn(B)/Mn(S) ・・・式(1)
[4]
質量%でさらにCr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Ni:1%以下、B、Bi及びSe:B+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下のうち1種もしくは2種以上の元素を含有することを特徴とする[3]に記載の一方向性電磁鋼板用の脱炭板。
[5]
熱間圧延冷間圧延脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て[1]または[2]のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
前記脱炭焼鈍の最高到達温度をY:700〜900℃とし、Y−30℃超での滞在時間:4秒以下、その後のY−30℃以下、Y−85℃以上の温度域での滞留時間:10秒以上とすることを特徴とする、一方向性電磁鋼板の製造方法。
[6]
前記脱炭焼鈍後から仕上焼鈍前の間で、酸洗機械研磨または化学研磨の1つ又は2つ以上の工程により鋼板表面の酸化膜を除去することを特徴とする、[5]に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
[7]
熱間圧延、冷間圧延、脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て[1]または[2]のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
前記熱間圧延、前記冷間圧延、前記脱炭焼鈍、前記仕上焼鈍の少なくともいずれか一つの前処理として、鋼板表面にB、Al、Te、Mn、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布することを特徴とする、一方向性電磁鋼板の製造方法。
[8]
熱間圧延、冷間圧延、脱炭焼鈍を経て[3]または[4]のいずれか1項に記載の脱炭板を製造する方法であって、
前記脱炭焼鈍の最高到達温度をY:700〜900℃とし、Y−30℃超での滞在時間:4秒以下、その後のY−30℃以下、Y−85℃以上の温度域での滞留時間:10秒以上とすることを特徴とする、一方向性電磁鋼板用の脱炭板の製造方法。
[9]
前記熱間圧延、前記冷間圧延、前記脱炭焼鈍の少なくともいずれか一つの前処理として、鋼板表面にB、Al、Te、Mn、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布することを特徴とする、[8]に記載の一方向性電磁鋼板用の脱炭板の製造方法。

発明の効果

0012

本発明によれば、低鉄損、高磁束密度、良好なグラス皮膜密着性を有する一方向性電磁鋼板製品板、途中製品として一方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍板及びそれらの製造方法が得られる。

図面の簡単な説明

0013

グラス皮膜のGDSの結果を示す図である。

0014

先ず、本発明鋼板の各元素含有量の限定理由について説明する。これらの元素は、本発明の特徴でもあるグラス皮膜表面での元素分布に強く影響する元素であり、その特定は重要である。なお、成分について%は質量%を意味する。

0015

Si:3.0〜4.0%
Siは、添加量を多くして固有抵抗を高めて鉄損特性を改善するため3.0%以上とする。しかし、昜酸化元素であり、Mn共存下での酸化挙動コントロールして本発明の特徴であるSM値を本発明内に制御するため4.0%以下にする必要がある。

0016

Mn:1.0〜3.0%
Mnは固有抵抗を高め、鉄損特性を改善する。含有量が1.0%以下であればMnの特異な酸化挙動は問題とはならず本発明が解決しようとする課題は生じないため、1.0%以上を本発明の対象とする。3.0%を超えると仕上焼鈍時にγ変態が生じ良好な二次再結晶を阻害するばかりでなく、鋼板表面の酸化挙動と分布状態に強く影響してSM値やAl、S検出強度の形状を好ましく制御することが困難となりグラス皮膜密着性が劣化する。

0017

C:0.0001〜0.1%
Cは、磁気時効を引き起こし磁気特性を劣化させるので、0.1%以下にする必要がある。存在してなくても本発明効果は失われるものではないが、低減コストの観点から下限を0.0001%とする。

0018

S:0.0001〜0.01%
Sは、0.01%を超えて含有すると、本発明の特徴でもあるS検出強度の形状を2ピーク以上にすることが困難になり、良好なグラス皮膜密着性が得られなくなる。磁気特性の観点では全く含有しなくても良い元素であるが、不純物として微量に含まれてしまう元素であるため、完全にゼロにすることは困難であり、実用的には0.0001%以上である。

0019

酸可溶性Al:0.003〜0.030%
酸可溶性Alは、不純物として微量に含まれてしまう元素であるが、完全にゼロにすることは困難である。実用的には0.003%以上である。0.030%以上含有すると、本発明の特徴でもあるAl検出強度の形状を3ピーク以上にすることが困難になり、良好なグラス皮膜密着性が得られなくなる。

0020

N:0.0030〜0.050%
Nは、不純物として微量に含まれてしまう元素であるため、完全にゼロにすることは困難である。実用的には0.0030%以上である。0.030%以上含有すると、本発明の特徴でもあるAl検出強度の形状を3ピーク以上にすることが困難になり、良好なグラス皮膜密着性が得られなくなる。

0021

残部はFe及び不可避不純物からなるが、本発明では、上記元素に加えて、必要に応じて、Cr、Cu、P、Sn、B、Bi、Ni、Seを含有させても良い。Crは0.3%以下、Cuは0.4%以下、Pは0.5%以下、Snは0.3%以下、Niは1%以下、B、Bi及びSeは、B+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下の範囲で含有できる。

0022

Crは、脱炭焼鈍の酸化膜を改善し、グラス皮膜形成に有効な元素であり、0.3%以下の範囲で添加する。0.3%を超えると皮膜の密着性に悪影響をきたす。

0023

Cuは、固有抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.4%を超えると鉄損低減効果飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。

0024

Pは粒界偏析元素で、添加量が0.5%を超えると圧延性に問題を生じる。

0025

Snは粒界偏析元素である。仕上焼鈍の条件によっては焼鈍分離剤から放出される水分によりAlが酸化されてインヒビター強度が変化する。そのため磁気特性がコイル位置の違いにより変動する場合がある。この対策の一つとして、これらの粒界偏析元素の添加により酸化を防止する方法があり、そのためにSnは0.3%以下の範囲で添加できる。一方0.3%を超えると脱炭焼鈍時に酸化されにくく、グラス皮膜の形成が不十分となると共に、脱炭焼鈍性を著しく阻害する。

0026

Niは固有抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素で、熱延板金属組織を制御して磁気特性を向上させる上で有効な元素である。しかしながら、添加量が1%を超えると二次再結晶が不安定になる。

0027

B、Bi、Te及びSeは、磁気特性に悪影響を及ぼすのでB+Bi+Se+S+Teの合計で0.015%以下とすることが望ましく、添加量が1%を超えると、製品の磁束密度が低下してしまう。また、熱間圧延における割れの発生を防止する目的のために、S及びSeの総量との関係でMn/(S+Se+B+Bi+Te)≧4添加することが望ましい。

0028

次に本発明の特徴である元素分布について説明する。本発明の一方向性電磁鋼板は、下記で規定されるSM値が7以上50未満であり、下記で規定されるAl検出強度のピークを3以上を有し、下記で規定されるS検出強度のピークを2以上を有し、GDSで測定されるNの最高検出強度が0.05以上0.1未満であることにより、Mnを比較的高濃度で含有する一方向性電磁鋼板において、良好な磁気特性とグラス皮膜密着性を両立できる。また本発明の一方向性電磁鋼板は、下記で規定されるSM値が4以上30未満である脱炭板(中間製品)を仕上焼鈍することによって製造することが可能である。

0029

まず本発明の各規定に関する分析事例として、従来鋼と発明鋼における製造途中の鋼板表面での元素分布の一例を図1に示す。図1は、張力皮膜を塗布する前の一方向性電磁鋼板の鋼板表面のGDS分析の結果である。母鋼板表面に形成されたグラス皮膜を含めて表面層を分析したものになる。なお、図1において、上の図はMn:1%(高マンガン:本発明例)、下の図はMn:0.1%(低マンガン:比較例)、左の図は、右の図の縦軸分析強度)を拡大したものである。左の図では、Siの強度は縦軸範囲を超えているため現れない。また、GDS測定での測定初期では、放電が不安定になる異常放電による強度変動が生じる。例えば表層域スパッタ時間0の付近)では、一時的にSiの強いピークが現れるが、実際の濃度変化は存在せず、一定値である。そのため、測定初期の範囲での強度は、本発明とは無関係なピークとする。なお図1では、一方向性電磁鋼板の鋼板表面のGDS分析の結果を示したが、脱炭板でも一方向性電磁鋼板と同様の挙動を示す。

0030

Si、Mnは鋼板に相当量含有されている元素としては、比較的酸化されやすい元素である。仕上焼鈍される鋼板にはMgを含有する焼鈍分離剤が塗布され、仕上焼鈍中に分離剤と鋼板の反応が起きグラス皮膜が形成されるが、特にSiについては、分離剤中のMg、Oや雰囲気中のOと反応しフォルステライトの形成に寄与する。この過程において、SiおよびMnの挙動を制御することが本発明のポイントであり、その分布は特徴的なものとなっている。

0031

仕上焼鈍前の脱炭板および仕上焼鈍後のグラス皮膜においては、図1のように、鋼板表層部(スパッタ時間20〜30の付近)にSi検出強度のピークが観察される。同時にこのピーク位置において、従来鋼(低Mn鋼)においてはMn検出強度の変化はそれほど大きくないものの、発明鋼(高Mn鋼)においてはMn濃度の顕著な低下が見られる。このようなMn挙動の違いは、フォルステライト形成中のMnの拡散および皮膜からの排出挙動の結果によるものと思われるが、結果的にこのようなSiおよびMnの分布挙動は、本発明での熱処理条件前処理条件とも相まってグラス皮膜と鋼板の界面の凹凸の深さに影響してその密着性を向上させるものと考えられ、本発明で規定するSM値が7以上50未満であれば、良好なグラス皮膜密着性が得られるようになる。本発明ではこのような挙動の差をSM値にて定義するものである。

0032

また、Alの分布にも明確な差が確認できる。一般的に張力皮膜塗布前の一方向性電磁鋼板の表面のAl分布は、グラス皮膜に起因するピークと、母材に起因するピークの2つのピークを示すことが知られている。しかし、発明鋼においては、このピークは3つ以上の複雑なものとなっており、従来鋼とは明らかに異なるものとなっている。理由は不明であるが、SについてもAlと同様に、従来鋼は単純な分布になっているが発明鋼では複雑なものになっている。

0033

AlおよびSの検出強度のピーク数と密着性との関連は、理由は明確ではないが、本発明での熱処理条件や前処理条件とも相まってピーク数の増大は酸化物形態の複雑化を促進し、酸化物からなるグラス皮膜と鋼板界面の凹凸形状を微細にするものと考えられ、本発明で規定するAl検出強度のピークが3以上、S検出強度のピークが2以上であれば、良好なグラス皮膜密着性が得られるようになる。本発明ではこのような挙動の差をAlおよびSのピーク数にて定義するものである。これらの結果、グラス皮膜と鋼板の界面の立体的な凹凸は、深く微細で複雑な形態となり、いわゆるアンカー効果による密着性向上に効果を発揮するものと考えられる。

0034

さらに図示はしないが、表面近傍でのNの検出強度の最高値について、従来材と発明材では明瞭な差が観察された。なお、Nの検出強度の最高値とグラス皮膜の密着性の関係については、後述する実施例において立証する。

0035

次に本発明で規定する各パラメータについて説明する。
(SM値)
本発明で規定するSM値は、以下のように決定される。
グラス皮膜表面のSM値については、張力皮膜を剥離した一方向性電磁鋼板または張力皮膜を塗布する前の一方向性電磁鋼板について、グラス皮膜から地鉄(母鋼板)にわたりGDSで板厚方向の元素強度分布を測定する。また、脱炭板表面のSM値については、一方向性電磁鋼板の製造過程で脱炭直後の表面酸化膜がついたままの脱炭板について、鋼板表面から鋼板内部にわたりGDSで板厚方向の元素強度分布を測定する。この強度分布で、Siは表面に濃化が観察され、その最高強度をSi(S)とする。その深さでのMn強度をMn(S)とする。さらに母鋼板内部でSi強度およびMn強度が安定した領域での強度をそれぞれSi(B)、Mn(B)とする。これらの値から、次式(1)でをSM値を計算する。
SM値=Si(S)/Si(B)*Mn(B)/Mn(S) ・・・式(1)

0036

(Al検出強度のピーク)
本発明での「Al検出強度のピーク」は以下のように決定する。
まず上記のようにグラス皮膜表面から鋼板内部への板厚方向の元素強度分布を測定した結果に基づき、板厚方向のAlの強度分布において、Al検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をAl検出強度のピークと規定する。出現したピーク数により、Al検出強度のピーク数を求める。これにより測定ばらつきによる強度変化による影響を除外し、本発明の特徴を表す妥当なピーク数を決定できる。

0037

(S検出強度のピーク)
本発明での「S検出強度のピーク」は以下のように決定する。
まず上記のようにグラス皮膜表面から鋼板内部への板厚方向の元素強度分布を測定した結果に基づき、板厚方向のSの強度分布において、S検出強度の極大値および極小値を求める。得られた極大値の内、表面側または内部側に隣接する極小値との強度差が極小値の10%以上である極大値をS検出強度のピークと規定する。出現したピーク数により、S検出強度のピーク数を求める。これにより測定ばらつきによる強度変化による影響を除外し、本発明の特徴を表す妥当なピーク数を決定できる。

0038

以下に本発明での各パラメータの条件について詳細に説明する。
グラス皮膜または脱炭板表面のSM値は、鋼板のSi、Mn含有量だけに単純に依存するように思われるが、前述のように表面でのMn分布挙動やSi分布挙動の制御が本発明の本質であるため、必ずしも添加量とは一致する傾向ではない。むしろ、後述する熱処理履歴、工程途中での水溶液の塗布や酸化膜除去などにより大きく変化し、これらにより制御されるものである。本発明では、一方向性電磁鋼板についてはグラス皮膜表面のSM値を7以上50未満とし、脱炭板表面でのSM値を4以上30未満とする。一方向性電磁鋼板ではグラス皮膜表面のSM値この範囲内にないと良好なグラス皮膜密着性を実現することが困難となる。また脱炭板表面でのSM値がこの範囲内にないと、グラス皮膜表面のSM値が7以上50未満である一方向性電磁鋼板を製造することが困難になる。

0039

Al検出強度のピーク数は3以上とした。2ピーク以下では本発明特有の特徴・効果が発揮されない。ピーク数上限は限定しないが、ピークとして認識できる程度の強度変化を有する分布状態であることが必要である。

0040

S検出強度のピーク数は2以上とした。単一ピークでは本発明特有の特徴・効果が発揮されない。ピーク数上限は限定しないが、ピークとして認識できる程度の強度変化を有する分布状態であることが必要である。

0041

Nの検出最高強度は0.05以上0.1未満とする。Nの検出最高強度については、0.05以下では本発明の効果が発揮されず、0.1以上の場合は後述のようにインヒビター強度が大きくなりすぎる為、二次再結晶が困難となる。

0042

また本発明においてAl、S、Nに関しては、鋼板表面での分布を制御することになる。これらの元素の分布が高くなると、その領域では二次再結晶に影響を及ぼすインヒビターが変化するため、磁気特性に想定外の悪影響を及ぼすことが考えられる。規定の最高強度の特に上限近くなる場合には、この影響にも配慮すべきである。

0043

次に本発明の製造条件について説明する。以下に限定されるものでないが、代表的な条件を記述する。

0044

本発明の一方向性電磁鋼板は、一般的に知られている一方向性電磁鋼板の製造法である、溶解、熱延、熱延板焼鈍、酸洗、冷延、脱炭焼鈍、必要に応じた窒化焼鈍、焼鈍分離剤塗布、仕上焼鈍の工程により製造できる。また一方向性電磁鋼板を製造する中間製品となる本発明の脱炭板は、溶解、熱延、熱延板焼鈍、酸洗、冷延、脱炭焼鈍の工程により製造できる。電磁鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼真空脱ガス処理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。注意を要するのは、一般的な一方向性電磁鋼板の製法においてはスラブ組成と最終製品の組成は異なることである。特に、C,S、N、Alは脱炭工程や仕上焼鈍での純化により含有量が低下する。また、Mgなど焼鈍分離剤などで塗布することにより含有量が増加する元素もある。

0045

本発明鋼程度の成分の最終製品を製造するのであれば、一般的にスラブ組成は、質量%でC:0.01〜0.08%、Si:3.0〜4.0%、Mn:1.0〜3.0%、S:0.0030〜0.01%、酸可溶性Al:0.003〜0.030%、N:0.0030〜0.050%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなるものである。目的とする組成および磁気特性を有する最終製品を得るために、磁気特性を制御する製造条件やその製造工程での組成変化を考慮してスラブ組成を決定することは当業者であれば困難なことではない。

0046

熱間圧延に先だってスラブ加熱がなされる。本発明においては、一般的な熱延条件適応する。上述した温度にて加熱されたスラブは引続き熱間圧延され、所要板厚の熱延板となる。その後の工程については、以下に説明する工程以外については通常の製造条件を適用すればよい。

0047

本発明では、前述のようにグラス皮膜形成までの母鋼材表面での酸化挙動を制御することで良好なグラス皮膜を形成させる。特に脱炭焼鈍後の時点での酸素量は、本発明効果の一つの指標となる。本発明では0.1〜2.3g/m2の場合に発明効果が現れやすい。この酸化挙動を制御するのに脱炭焼鈍は重要な工程である。本発明の効果を発揮するために、脱炭焼鈍での温度履歴として、冷間圧延後の最高到達温度をY℃として、Y:700〜900℃、Y−30℃超での滞在時間:4秒以下、その後のY−30℃以下、Y−85℃以上の温度域での滞留時間:10秒以上とすることで発明効果を十分に得ることができる。焼鈍雰囲気は特に限定されるものではないが、酸化度(PH2O/PH2)を0.15超1.1以下とすることが好ましい。理由は明確ではないが、上記のような熱履歴と雰囲気で酸化を行うと、脱炭板での酸化膜と鋼板の界面にTi、Bが濃化しやすくなり、結果としてその後形成されるグラス皮膜の密着性が向上する。また、理由は不明であるが脱炭焼鈍の加熱速度を75〜125℃/秒とした場合は本発明の効果は顕著になる。

0048

さらに本発明では、熱延、冷延、脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て製造される一方向性電磁鋼板の製造工程において、または熱延、冷延、脱炭焼鈍を経て製造される一方向性電磁鋼板用の脱炭板の製造工程において、熱延、冷延、脱炭焼鈍もしくは仕上焼鈍のうちの、1工程もしくは2工程以上の前処理において、B、Al、Te、Mn 、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布することで、各元素の表面濃度を高め、鋼板を熱処理した際の酸化挙動を変化させ、グラス皮膜や脱炭板での元素分布状態を好ましく制御できる。塗布の方法は特に問わない。イオンプレーティング、めっきの他、硫化物、酸化物、水酸化物溶液ゲル状・ゾル状コロイド状の懸濁液などでの塗布など、一般的に用いられる方法の適用が可能である。例えば、B2O3、Al2O3、TeCl4、KMnO4、Bi2O3、SiO2、CuSなどの化合物を、水、アセトンメタノールなどを溶媒とし、酸化力のある酸可溶などの性質を利用して、水溶液や懸濁液として塗布できる。鋼板のハンドリング等を考慮し、特に湿式塗布法を適用した場合は乾燥させることが好ましい。また現状の実用製法でも鋼板の表面に特殊な物質を塗布する工程としては、焼鈍分離剤塗布があるが、上記元素または元素を含有する化合物を焼鈍分離剤に混合して塗布することも可能である。

0049

さらに、脱炭焼鈍後から仕上焼鈍前の間で、酸洗、機械研磨または化学研磨の1つ又は2つ以上の工程により鋼板表面の酸化膜の一部を除去することで本発明効果が好ましく得ることができる。つまり、酸化膜の一部を残して、酸化膜の最表面を除去することが有効である。
酸洗溶液としては、塩酸硫酸硝酸等の無機酸が有効である。酸洗条件は特に規定しないが、酸化膜除去の程度に応じて本発明効果が現れるため、温度、時間と濃度を考慮して条件を決定することが必要である。この条件は通常の工程でも酸洗を実施している当業者であれば適切に設定することは容易である。ただし本発明での酸洗は軽酸洗であるため無機酸のみでは均一な酸洗とならないことがあり、無機酸に0.1〜5%のフッ酸を混合すると均一な酸洗が可能となる。実用的な範囲も考慮した好ましい条件は、40℃以下、濃度5%以下のH2SO4の水溶液に10秒以下の浸漬である。このような条件により1〜10g/m2の酸洗減量が得られる。なお、酸化膜除去の工程として、酸洗とブラシ研磨等の機械研磨等の物理的な方法を組み合わせてもよい。なお、脱炭焼鈍と仕上焼鈍の間に窒化焼鈍を挟む場合も想定される。かかる場合、脱炭焼鈍後と窒化焼鈍後のそれぞれで酸化膜を除去することもできる。

0050

上記のような処理を実施した鋼板には、最終的に張力被膜が塗布され最終製品として出荷、使用される。

0051

以下、本発明の実施例を説明する。実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一例であり、これに限定されるものではない。本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0052

C:0.004%、Si:3.8%、S:0.002%、Al:0.007%、N:0.0080%、残りはFeの溶鋼に対して、Mn:0.77〜3.16%と変化させたA〜Hの8鋼種の材料を2.6mm厚の熱延板とした。この熱延板から、冷間圧延、脱炭焼鈍、仕上焼鈍を経て一方向性電磁鋼板を製造した。電磁鋼板では、溶解時と製品までの工程中に成分変化するため、スラブ組成(表1)と製品板組成(表2)を記述した。アンダーライン発明範囲外を示す。

0053

0054

0055

熱延板には、Si3N4を主成分に含有した化合物の5%希薄水溶液を、素材表面に均一に8g/cm3塗布した。1000℃x30秒の熱延板焼鈍を行い、その後0.23mmまで冷間圧延した。その後、脱炭焼鈍して脱炭板を製造し、さらに仕上焼鈍を経て一方向性電磁鋼板を製造した。なお、脱炭工程後、緩やかな酸洗により酸化膜の除去を施した。MnS及びAlTeを含有した化合物の9%希薄水溶液を、素材表面に均一に塗布して乾燥させた後、MgOを主とした焼鈍分離剤を塗布した材料に、窒化可能なガスを吹き込みながら、除加熱で1200℃x20時間の焼鈍を施した。脱炭焼鈍の条件、脱炭焼鈍後の酸洗の条件、仕上焼鈍時の水溶液の塗布条件を表3〜8に示す。

0056

途中工程で得られたグラス板と脱炭板をGDSによって分析した。脱炭昇温時の最高到達温度、(最高到達温度-30)℃超え滞在時間、(最高到達温度-30)℃以下(最高到達温度-85)℃以上の温度域での滞在時間、酸洗処理回数、仕上焼鈍前までのいずれかの時点で実施した希薄水溶液の含有元素組み合わせ及び塗布量と二次再結晶の可否の関係について、実績サンプルn=80弱で整理した結果を表3〜8に示す。二次再結晶の可否の目安として、SST測定から得られた磁束密度B8を飽和磁束密度Bsで除した一般的な指標B8/Bsを参考に用いた。0.85以上を◎○(良好)、二次再結晶するもののB8/Bsが規定に到達しなかったものは△、二次再結晶しなかったものは×、と4種類で判定した。またグラス皮膜密着性評価として、φ10曲げを実施し、曲げ部が全面剥離したものを×、3〜5cm2剥離したものを△、1〜3cm2内を○、1cm2以下を◎と4種類で判定した。良好の判定を満たすものは、脱炭昇温時の最高到達温度700〜900℃、(最高到達温度-30)℃超え滞在時間4s以下、(最高到達温度-30)℃以下(最高到達温度-85)℃以上の温度域での滞在時間10s以上、酸洗処理回数1回以上、仕上焼鈍前までのいずれかの時点でB、Al、Te、Mn 、Bi、Si、Cuのうち1種もしくは2種以上の元素を0.002〜0.120g/m2塗布した場合であった。

実施例

0057

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