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技術 損傷評価システム及び損傷評価プログラム

出願人 みずほ情報総研株式会社東北電力株式会社
発明者 小坂部和也石井隆今井隆太下元正義遠藤利浩長谷川宗司武田浩佳佐藤文夫田附匡鈴木淳中嶋誠
出願日 2015年3月31日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2015-073818
公開日 2016年11月17日 (4年0ヶ月経過) 公開番号 2016-194433
状態 特許登録済
技術分野 機械的応力負荷による材料の強さの調査
主要キーワード 構造応答 基準範囲値 圧力機器 長時間運転後 機器寿命 外縁位置 位置入力画面 分布画面
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図面 (11)

課題

構造物き裂状態を、効率的に評価するための損傷評価システム及び損傷評価プログラムを提供する。

解決手段

形状、荷重条件材料特性を記憶した基礎情報記憶部22と、き裂状態を評価する制御部21とを備えた損傷評価システム20を用いる。制御部21は、基礎情報記憶部22に記憶された情報を用いて有限要素解析により構造物を構成する各要素のひずみ、温度及び応力を算出し、運転サイクルにおける各要素の損傷率を算出する。制御部21は、損傷率を用いて予測された初期き裂発生位置を特定した場合、き裂進展計算処理を実行する。このき裂進展計算処理において、制御部21は、き裂位置・寸法とき裂の各要素の応力とを用いて破壊力学パラメータを算出し、この破壊力学パラメータを用いてき裂進展速度を算出し、このき裂進展速度から新たな現在のき裂位置・寸法を算出する処理を繰り返して、き裂状態を特定して出力する。

概要

背景

火力発電所においては、多数の機器高温状態で使用されている。これらの機器は、火力発電所の運転サイクルにおいて高温状態に曝され、その状態の維持あるいは変化に伴って、微小き裂が発生し、それが巨視的なき裂として進展し、機器の健全性に影響を及ぼす可能性がある。

そこで、部品寿命を的確に把握するために、き裂の発生やき裂進展についてのシミュレーションが行なわれている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術によれば、機器寿命評価システムは、クリープ或いは疲労に基づく機器構造の損傷を微小亀裂の進展とみなして、この微小亀裂の進展を予測することで機器寿命の評価を行なっている。また、非特許文献1に記載の技術においては、き裂の進展挙動と高い相関を持つ非弾性J積分について、荷重制御変位制御の下で、熱応力下での非弾性J積分評価法を提案して、既存の簡易法を改良し、精度向上及び適用範囲の拡大を図っている。

ところで、構造物には、複数の材料が用いられている。更に、同じ材料であっても、材料特性が均一とは限らない。例えば、母材溶接部とでは、各材料特性が異なることがある。

例えば、図10に示すように、構造物50において、母材部51、溶接部52、これらの間のHAZ(熱影響部)53がある。この場合、HAZ53において、き裂55が発生することもある。

発電プラントにおいては、溶接部における複数部材横断して進展するき裂の例が報告されている。このため、このような複数の部材を横断して進展するき裂についても、評価できることが望まれている。そこで、従来、溶接部を有した構造物において、この溶接部を横断するき裂進展についてのシミュレーションも行われている(例えば、特許文献2、3参照)。特許文献2に記載の技術においては、溶接構造物のき裂の進展を3次元的に解析するために、接合部における接合情報及びき裂に関する情報を用いた有限要素解析を行なう。ここで、接合情報とは、接合線に接している部材の材料、接合線の長さ、部材同士溶接方法等である。また、特許文献3に記載の技術においては、き裂の前縁上にメッシュ接点が位置するようにしてき裂進展解析を行なう。

概要

構造物のき裂状態を、効率的に評価するための損傷評価システム及び損傷評価プログラムを提供する。形状、荷重条件、材料特性を記憶した基礎情報記憶部22と、き裂状態を評価する制御部21とを備えた損傷評価システム20を用いる。制御部21は、基礎情報記憶部22に記憶された情報を用いて有限要素解析により構造物を構成する各要素のひずみ、温度及び応力を算出し、運転サイクルにおける各要素の損傷率を算出する。制御部21は、損傷率を用いて予測された初期き裂発生位置を特定した場合、き裂進展計算処理を実行する。このき裂進展計算処理において、制御部21は、き裂位置・寸法とき裂の各要素の応力とを用いて破壊力学パラメータを算出し、この破壊力学パラメータを用いてき裂進展速度を算出し、このき裂進展速度から新たな現在のき裂位置・寸法を算出する処理を繰り返して、き裂状態を特定して出力する。

目的

このため、このような複数の部材を横断して進展するき裂についても、評価できることが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、前記構造物を構成する要素毎の経過時間に応じた材料特性及び位置に関するデータを記憶した基礎情報記憶部に接続され、前記構造物におけるき裂状態を評価する制御部を備えた損傷評価システムであって、前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の経過時間に応じた材料特性及び位置を特定し、前記構造物に荷重負荷して前記各要素の応力を算出し、前記算出した応力に基づいて、き裂のき裂進展速度を算出し、前記き裂進展速度から前記き裂のき裂状態を特定して出力することを特徴とする損傷評価システム。

請求項2

前記荷重は、前記構造物の運転及び停止からなる運転サイクルに応じた荷重であって、前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の材料特性及び位置を特定し、前記運転サイクルにおける荷重を負荷して、前記各要素の応力を算出し、前記算出したき裂状態に応じて、き裂の要素の材料特性を取得し、前記材料特性に基づいて、き裂進展速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の損傷評価システム。

請求項3

前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の材料特性及び位置を特定し、前記荷重を負荷した有限要素解析によって、前記各要素のひずみ、温度及び応力を算出し、前記各要素のひずみ、温度及び応力を用いて、前記運転サイクルにおける各要素における損傷率を算出し、前記損傷率を用いて予測された初期き裂発生位置を含む最初のき裂状態を特定し、き裂状態と、算出した前記各要素の応力とを用いて、き裂進展速度を算出し、このき裂進展速度から新たなき裂状態を特定する処理を繰り返し実行して、き裂状態を特定することを特徴とする請求項2に記載の損傷評価システム。

請求項4

前記制御部は、前記損傷率がき裂発生判定値を超えた箇所を、初期き裂発生位置として特定することを特徴とする請求項3に記載の損傷評価システム。

請求項5

材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、前記構造物を構成する要素毎の経過時間に応じた材料特性及び位置に関するデータを記憶した基礎情報記憶部に接続された制御部を備えた損傷評価システムを用いて、前記構造物におけるき裂状態を評価する損傷評価プログラムであって、前記制御部を、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の経過時間に応じた材料特性及び位置を特定し、前記構造物に荷重を負荷して前記各要素の応力を算出し、前記算出した応力に基づいて、き裂のき裂進展速度を算出し、前記き裂進展速度から前記き裂のき裂状態を特定して出力する手段として機能させることを特徴とする損傷評価プログラム。

技術分野

0001

本発明は、構造物き裂状態を評価するための損傷評価システム及び損傷評価プログラムに関する。

背景技術

0002

火力発電所においては、多数の機器高温状態で使用されている。これらの機器は、火力発電所の運転サイクルにおいて高温状態に曝され、その状態の維持あるいは変化に伴って、微小なき裂が発生し、それが巨視的なき裂として進展し、機器の健全性に影響を及ぼす可能性がある。

0003

そこで、部品寿命を的確に把握するために、き裂の発生やき裂進展についてのシミュレーションが行なわれている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術によれば、機器寿命評価システムは、クリープ或いは疲労に基づく機器構造の損傷を微小亀裂の進展とみなして、この微小亀裂の進展を予測することで機器寿命の評価を行なっている。また、非特許文献1に記載の技術においては、き裂の進展挙動と高い相関を持つ非弾性J積分について、荷重制御変位制御の下で、熱応力下での非弾性J積分評価法を提案して、既存の簡易法を改良し、精度向上及び適用範囲の拡大を図っている。

0004

ところで、構造物には、複数の材料が用いられている。更に、同じ材料であっても、材料特性が均一とは限らない。例えば、母材溶接部とでは、各材料特性が異なることがある。

0005

例えば、図10に示すように、構造物50において、母材部51、溶接部52、これらの間のHAZ(熱影響部)53がある。この場合、HAZ53において、き裂55が発生することもある。

0006

発電プラントにおいては、溶接部における複数部材横断して進展するき裂の例が報告されている。このため、このような複数の部材を横断して進展するき裂についても、評価できることが望まれている。そこで、従来、溶接部を有した構造物において、この溶接部を横断するき裂進展についてのシミュレーションも行われている(例えば、特許文献2、3参照)。特許文献2に記載の技術においては、溶接構造物のき裂の進展を3次元的に解析するために、接合部における接合情報及びき裂に関する情報を用いた有限要素解析を行なう。ここで、接合情報とは、接合線に接している部材の材料、接合線の長さ、部材同士溶接方法等である。また、特許文献3に記載の技術においては、き裂の前縁上にメッシュ接点が位置するようにしてき裂進展解析を行なう。

0007

特開2010−2261号公報
特開2001−272318号公報
特開2003−302331号公報

先行技術

0008

岡照高、″無次元化構造応答パラメータに基づく発電用高温圧力機器簡易構造健全性評価法の開発″、[online]、電力中央研究所研究報告書総合報告:M03、平成19年8月、[平成27年1月29日検索]、インターネット<http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/M03.html>

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、特許文献2に記載の技術では、溶接線の長さを含む接合情報を用いる必要がある。例えば、上述したHAZ(熱影響部)と母材部や溶接部との接合線のように、接合線の長さを正確に特定できない構造の場合には、正確な接合情報を用いることができず、き裂状態を効率的に評価することは難しかった。

0010

また、特許文献3に記載の技術では、き裂の前縁上にメッシュの接点を位置させる必要があるため、き裂進展方向と進展量を予測する度に、メッシュの再作成を行なう必要がある。このため、母材や溶接部等を横断して進展するき裂を効率よく簡易に評価することは難しい。

0011

本発明は、構造物のき裂状態を、効率的に評価するための損傷評価システム及び損傷評価プログラムを提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決する損傷評価システムは、材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、前記構造物を構成する要素毎の経過時間に応じた材料特性及び位置に関するデータを記憶した基礎情報記憶部に接続され、前記構造物におけるき裂状態を評価する制御部を備えた損傷評価システムであって、前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の経過時間に応じた材料特性及び位置を特定し、前記構造物に荷重負荷して前記各要素の応力を算出し、前記算出した応力に基づいて、き裂のき裂進展速度を算出し、前記き裂進展速度から前記き裂のき裂状態を特定して出力する。これにより、経過時間に応じた材料特性を考慮することができる。更に、き裂進展速度の算出よりも前に算出した応力と材料特性とを用いて、材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、異なる複数の部分を横断してき裂状態を評価することができるので、損傷評価を効率的に行なうことができる。ここで、材料特性としては、構造物の評価開始からの経過時間に応じて、各要素の応力の算出に用いるパラメータ値を用いる。

0013

上記損傷評価システムにおいては、前記荷重は、前記構造物の運転及び停止からなる運転サイクルに応じた荷重であって、前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の材料特性及び位置を特定し、前記運転サイクルにおける荷重を負荷して、前記各要素の応力を算出し、前記算出したき裂状態に応じて、き裂の要素の材料特性を取得し、前記材料特性に基づいて、き裂進展速度を算出することが好ましい。これにより、き裂の要素の材料特性を考慮して、構造物の運転及び停止からなる運転サイクルに応じた荷重を負荷して、き裂状態を算出することができる。

0014

上記損傷評価システムにおいては、前記制御部は、前記基礎情報記憶部において前記構造物の各要素の材料特性及び位置を特定し、前記荷重を負荷した有限要素解析によって、前記各要素のひずみ、温度及び応力を算出し、前記各要素のひずみ、温度及び応力を用いて、前記運転サイクルにおける各要素における損傷率を算出し、前記損傷率を用いて予測された初期き裂発生位置を含む最初のき裂状態を特定し、き裂状態と、算出した前記各要素の応力とを用いて、き裂進展速度を算出し、このき裂進展速度から新たなき裂状態を特定する処理を繰り返し実行して、き裂状態を特定することが好ましい。これにより、各要素の材料特性を考慮した初期き裂発生位置を用いて、き裂進展速度を算出しながら、損傷評価を行なうことができる。

0015

上記損傷評価システムにおいては、前記制御部は、前記損傷率がき裂発生判定値を超えた箇所を、初期き裂発生位置として特定することが好ましい。これにより、初期き裂発生位置を効率的に特定することができる。

発明の効果

0016

本発明によれば、構造物のき裂状態を、効率的に評価することができる。

図面の簡単な説明

0017

実施形態における損傷評価システムのブロック構成図。
実施形態における損傷評価システムの制御部のブロック構成図。
実施形態における損傷評価処理処理手順を説明する流れ図。
実施形態におけるき裂進展計算処理の処理手順を説明する流れ図。
実施形態における構造物の一部における応力分布を説明する説明図。
実施形態の具体例における最大主応力分布の説明図であって、(a)は経過時間に依存せずに一定の材料特性を用いた場合、(b)は経過時間に応じた材料特性を用いた場合を示す。
実施形態の具体例におけるクリープ損傷率の分布の説明図であって、(a)は経過時間に依存せずに一定の材料特性を用いた場合、(b)は経過時間に応じた材料特性を用いた場合を示す。
実施形態の具体例における材料の経時劣化の有無によるき裂寸法の説明図。
実施形態における材料に応じたき裂進展速度切替の有無によるき裂寸法の説明図。
従来の構造物におけるき裂の発生を説明する説明図。

実施例

0018

以下、図1図9を用いて、損傷評価システムを具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態においては、構造物に生じたき裂により損傷を評価する。例えば、構造物として、蒸気タービン配管等、火力発電所における高温機器設備)がある。

0019

図1に示すように、損傷評価システム20は、入力部11及び出力部12を備えている。入力部11は、各種情報を入力するための入力手段であり、キーボードポインティングデバイス記録媒体からデータを取得する入力インターフェイス等により構成される。また、出力部12は、ディスプレイ等、各種情報を出力するためのデータ出力部から構成されている。

0020

損傷評価システム20は、構造物の損傷を評価するためのコンピュータシステムである。この損傷評価システム20は、制御部21、基礎情報記憶部22、FEM解析結果記憶部23及びき裂状態記憶部24を備えている。

0021

制御部21は、CPU、RAM及びROM等のメモリ等を備え、各記憶部(22,23,24)に接続されており、損傷評価処理を実行する。そして、損傷評価処理プログラムを実行することにより、制御部21は、管理部210、FEM計算部211、損傷率計算部212及び進展計算部213として機能する。

0022

管理部210は、計算対象の構造物に関する情報を取得したり、計算に必要な情報を出力したりする処理を実行する。管理部210は、運転サイクルに関する経過サイクル数繰り返し数に関するデータを仮記憶する。
経過サイクル数は、損傷評価処理の開始から繰り返された運転サイクルの総数である。この経過サイクル数は、損傷評価処理の開始時にリセットされ、き裂進展計算処理が終了するまで、継続してカウントアップされる。
繰り返し数は、繰り返し計算における繰り返し回数運転サイクル数)である。この繰り返し数は、繰り返し計算の開始時にリセットされ、繰り返し計算が終了するまでカウントアップされる。

0023

次に、図2を用いて、FEM計算部211、損傷率計算部212及び進展計算部213を説明する。
FEM計算部211は、構造物の形状や構成要素に応じて、有限要素法(FEM)に適したメッシュを作成する。例えば、配管の軸方向あるいは周方向突き合わせ溶接部を想定する場合は、母材部、溶接部、HAZ(熱影響部)から構成される配管のFEM用メッシュを作成する。

0024

更に、FEM計算部211は、評価する構造物のひずみ分布、温度分布及び応力分布を算出する処理を実行する。具体的には、FEM計算部211は、構造物の材料別の形状、この構造物の材料特性及び荷重条件を用いて、構造物を構成する有限要素法(FEM)による各要素のひずみ、温度及び応力を計算する。この場合、FEM計算部211は、荷重(応力)と変形(ひずみ)とをバランスさせたFEMの解き方の1つである陰解法を用いて計算を行なう。そして、この計算において、以下のクリープひずみ速度式を用いる。

0025

ここで、σは応力、Aは材料によって異なる係数、n1は指数である。ここで、n1は、材料(母材、溶接金属、HAZ(熱影響部))に関係なく一定の値を用いる。
例えば、鋼管エルボ」を解析対象とした事例においては、具体的には、下記の係数Aや指数を用いる。

0026

0027

損傷率計算部212は、FEM計算部211が算出したひずみ分布、温度分布及び応力分布を用いて、損傷率を算出する処理を実行する。具体的には、損傷率計算部212は、疲労損傷率を計算するための疲労損傷率計算式、クリープ損傷率を計算するためのクリープ損傷率計算式を記憶している。疲労損傷率算出式及びクリープ損傷率算出式は、ひずみ、温度及び応力と、基礎情報記憶部22に記録された各パラメータ、運転時間(運転サイクル)を変数として、それぞれ損傷率を算出するための関数である。
本実施形態では、疲労損傷率算出式として、例えば、以下の関数を用いる。

0028

ここで、Dfは疲労損傷率、n2はサイクル数、Ncは破断サイクル数である。また、破断サイクル数Ncは以下の式で表される。

0029

ここで、Δεはひずみ範囲κ1、κ2、α1、α2は、材料等により決まる係数である。
また、本実施形態では、クリープ損傷率算出式として、例えば、以下の関数を用いる。

0030

ここで、DCはクリープ損傷率、hはクリープ保持時間、trはクリープ破断時間、σは応力である。また、クリープ破断時間trは以下の式で表される。

0031

ここで、a0,a1,a2,a3、a4、C、Sは材料等によって決まる係数、Tは温度である。

0032

進展計算部213は、構造物に生じたき裂の寸法を算出するき裂進展計算を実行する。具体的には、クリープ/疲労き裂進展速度(疲労き裂進展速度とクリープき裂進展速度との和)を算出する。このため、進展計算部213は、疲労き裂進展速度及びクリープき裂進展速度をそれぞれ算出する算出式と、これらの計算に用いる破壊力学パラメータの算出式とを保持している。本実施形態では、破壊力学パラメータとして、構造物の表面に形成された表面き裂と、構造物の内部に生成された埋没き裂とを分けて計算する。このため、進展計算部213は、表面き裂に対する破壊力学パラメータと、埋没き裂に対する破壊力学パラメータとをそれぞれ算出する算出式を保持している。これら破壊力学パラメータは、各要素の応力と、材料特性、き裂進展解析で入力されるき裂の寸法とを用いて算出される。

0033

更に、進展計算部213は、基準範囲値、基準深さ値に関するデータを保持している。基準範囲値は、き裂寸法に応じて、計算対象要素を特定するために用いられる。また、基準深さ値は、表面き裂、埋没き裂を判定するために用いられる。

0034

図1に示すように、基礎情報記憶部22には、計算対象の構造物に関する基礎情報が記憶されている。本実施形態の基礎情報には、構造物の形状(3次元)、荷重条件、構造物の材料特性に関する情報が含まれる。
構造物の形状に関する情報には、構造物の全体形状、構造物の各要素における構成要素(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))の形状に関する情報が含まれている。
荷重条件に関する情報には、設備の稼働に伴う「停止→起動→停止」の各段階を含むサイクルにおいて、各段階で加える荷重(温度、所要時間)が含まれる。

0035

構造物の材料特性に関する情報には、構成要素毎に、疲労損傷率及びクリープ損傷率を算出するための材料特性に関する情報が含まれる。本実施形態では、経過時間(例えば経年年数等)に応じた材料特性に関する情報が記録される。

0036

FEM解析結果記憶部23には、FEM計算部211が算出したFEM解析結果に関するデータが記憶される。FEM解析結果として、有限要素法において用いた構造物を構成する要素毎にひずみ、温度及び応力が関連付けられて記憶される。

0037

き裂状態記憶部24には、進展計算部213が算出したき裂状態に関するデータが記憶される。本実施形態では、き裂状態に関するデータとして、現在のき裂位置(き裂を楕円近似したときの中心位置)、き裂想定面の方向及びき裂寸法(き裂想定面におけるき裂位置からの深さ及び長さ)に関するデータが記録される。

0038

(損傷評価処理)
次に、図3を用いて、損傷評価処理を説明する。
まず、損傷評価システム20の制御部21は、条件の取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の管理部210は、出力部12に、評価対象指定画面を出力する。この場合、ユーザは、入力部11を用いて、予め準備しておいた計算対象の構造物の3次元形状を指定する。更に、ユーザは、入力部11を用いて、構造物の各領域について、構成要素(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))を指定する。更に、入力部11を用いて、構成要素の材料特性に関するデータを入力する。この材料特性は、経過時間毎に入力する。この場合、管理部210は、入力部11を用いて指定された構造物の形状、構成要素、材料特性に関する情報を、基礎情報記憶部22に記録する。

0039

更に、管理部210は、出力部12に、荷重指定画面を出力する。この場合、ユーザは、評価に用いる荷重条件(温度、時間)を入力する。例えば、停止→起動→停止のサイクル(時間(横軸)に対して、荷重(縦軸)とする台形波)について、「停止時の荷重」、「運転時の荷重」、「運転時間」の組み合わせ(運転サイクル)を設定する。この場合、管理部210は、入力部11を用いて指定された荷重条件に関する情報を、基礎情報記憶部22に記録する。

0040

そして、FEM計算部211は、構造物の形状において、有限要素法に適したメッシュを作成する。例えば、配管の軸方向あるいは周方向の突き合わせ溶接部を想定する場合は、母材部、溶接部、HAZ(熱影響部)から構成される配管のFEM用メッシュを作成する。
ここで、鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合を例示する。
図5は、鋼管「エルボ」の管軸垂直面の断面のメッシュを示す。このように、FEM計算部211は、その配管の形状に合わせたメッシュを生成する。例えば、図5に示すように、HAZ(熱影響部)33のメッシュが密となり、母材部31のメッシュが疎となるメッシュを作成する。そして、FEM計算部211は、メッシュの各要素(各格子点)の位置に対応して、各要素の材料(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))を識別する材料識別子を関連付けておく。

0041

そして、ユーザは、繰り返し計算を行なう回数(第1継続サイクル数)を入力する。更に、計算開始指示が入力された場合、制御部21の管理部210は、初めての計算の場合には、経過サイクル数、繰り返し数を「0」に設定する。そして、繰り返し数が第1継続サイクル数に達するまで、運転サイクル毎に、以下の処理を繰り返す。

0042

ここで、まず、損傷評価システム20の制御部21は、材料特性の特定処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21のFEM計算部211は、管理部210から経過サイクル数(損傷評価処理の開始時からの現在の運転サイクル数)を取得する。次に、FEM計算部211は、経過サイクル数に1サイクルの所要時間を乗算して経過時間を算出する。そして、FEM計算部211は、経過時間に応じた材料特性を、基礎情報記憶部22から特定する。

0043

次に、損傷評価システム20の制御部21は、有限要素法による解析処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21のFEM計算部211は、運転サイクルの荷重条件を用いて、構造物を構成する要素毎に、ひずみ、温度及び応力を計算する。そして、FEM計算部211は、各要素の要素識別子に関連付けて計算結果(ひずみ、温度及び応力)をFEM解析結果記憶部23に記憶する。この場合、FEM計算部211は、既にFEM解析結果記憶部23に計算結果が記録されている場合には、新たに算出した計算結果を上書き記録する。

0044

ここで、FEM計算部211において算出した応力の具体例を説明する。
ここでは、鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合について説明する。
この場合、鋼管「エルボ」の材料特性を、経年に応じて上述した表1に示す範囲で変化させた値を用いる。また、負荷として、温度(575度)を30万時間で加える場合を想定する。
ステップS1−2において、FEM計算部211は、鋼管「エルボ」に対して作成したメッシュの各要素(各格子点)の材料識別子を特定する。そして、FEM計算部211は、基礎情報記憶部22から、材料識別子と経過時間とに対応する材料特性(上述した表1に示す材料特性)を取得する。
ステップS1−3において、FEM計算部211は、鋼管「エルボ」のメッシュの要素毎(格子点毎)に、上述したクリープひずみ速度式や隣接する要素の関係式を用いた陰解法(FEM法)を利用して、ひずみ、温度及び応力を計算する。そして、FEM計算部211は、格子点毎に、ひずみ、温度及び応力をFEM解析結果記憶部23に記憶する。
ここで、図6(a)及び図6(b)には、算出した応力の最大主応力を、内表面からの距離とともに示した一例を示す。ここでは、90度「エルボ」の45度位置にあるHAZ(熱影響部)の中央部に生じる最大主応力について、内表面からの距離を変数とした分布を示している。図6(a)は、経過時間に依存せずに一定の材料特性を用いて最大主応力を算出した場合の分布を示している。具体的には、上述したクリープひずみ速度式における係数Aとして、表1における「荷重負荷後」の値を用いる。一方、図6(b)は、経過時間に応じた材料特性を用いて最大主応力を算出した場合の分布を示している。具体的には、クリープひずみ速度式における係数Aとして、表1における時間毎の値を用いる。図6(a)及び図6(b)における各線σ0、σ1、σ2、σ3、σ4は、荷重負荷後、7.5時間後、15万時間後、22.5万時間後、30万時間後の最大主応力を示している。なお、図6(a)及び図6(b)から、経過時間が長くなるに従って、最大主応力の最大値が、内表面から離れた位置に移動していることがわかる。

0045

次に、損傷評価システム20の制御部21は、疲労損傷率計算処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の損傷率計算部212は、算出した各要素のひずみ、応力、材料特性、繰り返し回数(サイクル数)を、疲労損傷率計算式に代入して、各要素の疲労損傷率を算出する。

0046

次に、損傷評価システム20の制御部21は、クリープ損傷率計算処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の損傷率計算部212は、算出した各要素のひずみ、温度、応力、材料特性、時間を、クリープ損傷率計算式に代入して、各要素のクリープ損傷率を算出する。

0047

次に、損傷評価システム20の制御部21は、計算結果の出力処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21の損傷率計算部212は、疲労損傷率及びクリープ損傷率をそれぞれ表した2つの画面を含む損傷分布画面を、出力部12に表示する。この場合、損傷率計算部212は、疲労損傷率の高さ、クリープ損傷率の高さを識別できるように出力する。

0048

次に、制御部21は、経過サイクル数、繰り返し数に「1」を加算する。そして、繰り返し数が、第1継続サイクル数に達するまで、以上の処理を繰り返す。
次に、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂が発生したか否かの判定処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の管理部210は、出力部12にき裂発生確認画面を出力する。
前述した鋼管「エルボ」について損傷評価を行なった場合のき裂発生確認画面に表示されるクリープ損傷率の分布の具体例を説明する。
図7(a)及び図7(b)には、90度エルボにおける45度位置において、30万時間の経過後のクリープ損傷率の分布を示している。図7(a)及び図7(b)において、下側円弧がエルボの内表面側であり、上側円弧がエルボの外表面側である。図7(a)及び図7(b)において、母材部31と溶接部32の間にHAZ(熱影響部)33が存在する。
図7(a)には、経過時間に係らず一定の材料特性を用いて算出したクリープ損傷率の分布、図7(b)には、経過時間に応じた材料特性を用いて算出したクリープ損傷率の分布を示している。
図7(a)においては、内表面側において、溶接部32を中心として、クリープ損傷率が高くなっていることを示している。図7(b)においては、溶接部32の内部が、若干クリープ損傷率が高くなっていることを示している。ただし、最もクリープ損傷率が高い領域の絶対値は、図7(b)の方が低い。また、図7(b)において、溶接部32やHAZ(熱影響部)33は、母材部31に比べてクリープ損傷率が高くなっているが、この断面においては、図7(a)の場合に比べて、クリープ損傷率が高い部分が少なくなっている。

0049

出力部12に出力したき裂発生確認画面においては、初期き裂の発生の有無を入力するための選択ボタンが含まれる。管理部210は、損傷分布画面を確認したユーザによる選択ボタンの選択に基づいて判定する。
図7(b)には、前述した鋼管「エルボ」についての損傷評価の場合にき裂発生確認画面に含まれる一例の損傷分布画面を示している。ここで、ユーザが、クリープ損傷率に基づいて、初期き裂が発生したと判定した場合、初期き裂の発生「あり」の選択ボタンを選択する。
ここで、初期き裂の発生「あり」の選択ボタンが選択され、初期き裂が発生したと判定した場合(ステップS1−7において「YES」の場合)、制御部21の進展計算部213は、き裂進展計算処理(ステップS1−8)を実行する。このき裂進展計算処理については、図4を用いて、後述する。

0050

一方、初期き裂の発生「なし」の選択ボタンが選択され、初期き裂が発生していないと判定した場合(ステップS1−7において「NO」の場合)、制御部21の管理部210は、次の運転サイクルについて、ステップS1−2以降の処理を繰り返して実行する。この場合、管理部210は、仮記憶している経過サイクル数に対して、継続してカウントアップする。また、管理部210は、仮記憶している繰り返し数をリセットする。

0051

(き裂進展計算処理)
次に、図4を用いて、き裂進展計算処理(ステップS1−8)について説明する。
まず、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂位置、き裂想定面の取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、き裂情報入力画面を出力部12に表示する。

0052

このき裂情報入力画面には、初期き裂位置を指定する位置入力画面と、き裂想定面の方向を選択するき裂想定面選択欄と、実行ボタンとが含まれる。位置入力画面には、3次元形状において損傷分布が表示される。また、き裂想定面選択欄においては、計算対象の構造物の3次元形状を表現する各軸を選択することができる。例えば、円筒形状の構造物については、円周方向、径方向軸線方向等を選択することができる。
ここで、ユーザは、き裂情報入力画面において、初期き裂位置を指定するとともに、き裂想定面の方向を選択する。ここで、例えば、初期き裂位置として、内表面からの距離を指定する。

0053

そして、実行ボタンが選択された場合、進展計算部213は、ユーザによって指定された初期き裂位置及びき裂想定面の方向を、き裂状態記憶部24に記録する。この場合、進展計算部213は、初期き裂位置に対して、最小寸法(初期値寸法)のき裂を設定する。

0054

そして、ユーザは、繰り返し計算を行なう回数(第2継続サイクル数)を入力する。計算開始指示が入力された場合、制御部21の管理部210は、繰り返し数を「0」に設定する。そして、制御部21の進展計算部213は、繰り返し数が第2継続サイクル数に達するまで、運転サイクル毎に、以下の処理を繰り返す。

0055

ここでは、損傷評価システム20の制御部21は、き裂位置・寸法に応じたき裂の応力抽出処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、き裂状態記憶部24に記録されたき裂位置及びき裂寸法に対して、基準範囲値の距離内に存在する要素を計算対象要素として特定する。そして、進展計算部213は、計算対象の各要素の応力を、FEM解析結果記憶部23から抽出する。

0056

次に、損傷評価システム20の制御部21は、表面き裂か否かの判定処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、き裂の位置を特定し、構造物における表面からの深さ(き裂深さ)を算出する。そして、き裂深さが基準深さ値内の場合には、表面き裂と判定する。一方、き裂深さが基準深さ値を超えている場合には、埋没き裂と判定する。

0057

埋没き裂と判定した場合(ステップS2−3において「NO」の場合)、損傷評価システム20の制御部21は、埋没き裂に対する破壊力学パラメータの算出処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、埋没き裂に対する破壊力学パラメータの算出式に対して、各要素の応力、現在のき裂の位置及び寸法を適用して、破壊力学パラメータを算出する。

0058

一方、表面き裂であると判定した場合(ステップS2−3において「YES」の場合)、損傷評価システム20の制御部21は、表面き裂に対する破壊力学パラメータの算出処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、表面き裂に対する破壊力学パラメータの算出式に対して、各要素の応力、現在のき裂寸法を適用して、破壊力学パラメータを算出する。

0059

次に、損傷評価システム20の制御部21は、破壊力学パラメータを用いたき裂進展速度の算出処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、破壊力学パラメータを進展速度算出式に適用して、き裂進展速度を算出する。

0060

次に、損傷評価システム20の制御部21は、き裂進展量の算出処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、算出したき裂進展速度を積分して、き裂想定面におけるき裂進展量を算出する。

0061

そして、損傷評価システム20の制御部21は、き裂想定面に沿ったき裂の更新処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、算出したき裂進展量を用いて、き裂を楕円近似したときの中心位置(き裂位置)とき裂寸法とを算出し、この運転サイクルにおける新たなき裂位置及びき裂寸法を、き裂状態記憶部24に記録する。

0062

次に、損傷評価システム20の制御部21は、き裂状態の出力処理を実行する(ステップS2−9)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、き裂状態出力画面を出力部12に出力する。この場合、進展計算部213は、構造物に対して、初期き裂の位置を基準として、き裂想定面において更新されたき裂位置・寸法を有するき裂を表示したデータを生成し、き裂状態出力画面に表示する。
次に、制御部21は、経過サイクル数、繰り返し数に「1」を加算する。そして、繰り返し数が、第2継続サイクル数に達するまで、以上の処理を繰り返す。

0063

図8及び図9には、上述の処理により算出されたき裂寸法の具体例を示している。
ここでは、上述した鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合について説明する。
ステップS2−1において、き裂情報入力画面において、HAZ(熱影響部)の内表面近傍の内部き裂であって、HAZ(熱影響部)に沿った面に進展するき裂を想定する。この場合、進展計算部213は、設定された初期き裂位置に対応し、鋼管「エルボ」に対して作成した各要素(各格子点)を特定する。更に、進展計算部213は、鋼管「エルボ」において、き裂想定面の方向に存在する各要素(各格子点)を特定する。
ステップS2−2において、進展計算部213は、FEM解析結果記憶部23に記録され、経過時間(30万時間)に対応する材料特性を用いて算出された各要素の応力分布を用いる。
ステップS2−3において、進展計算部213は、き裂位置にある、鋼管「エルボ」に対して作成した各要素(各格子点)と、鋼管「エルボ」の表面(外表面又は内表面)との距離を算出し、この内の最小距離を算出する。そして、進展計算部213は、最小距離が基準深さ値以下の場合には、表面き裂と判定する。一方、最小距離が基準深さ値を超えている場合には、埋没き裂と判定する。
ステップS2−8において、進展計算部213は、き裂想定面において、現在のき裂寸法に、き裂が進展する各方向のき裂進展量を加算して、予想されるき裂の外縁位置(き裂の形状及び大きさ)を算出する。そして、進展計算部213は、この予想されるき裂の外縁位置に近似する楕円の中心位置(き裂位置)とき裂寸法とを算出して、き裂状態記憶部24に記録する。
図8では、き裂状態記憶部24に記録されているき裂寸法の時間依存性を示している。この場合、サイクル数に対応する時間を横軸にしている。ここでは、HAZ(熱影響部)の内表面近傍に内部き裂を想定し、30万時間の応力分布を用いて、HAZ(熱影響部)に沿って進展すると仮定している。図8における実線a0は、経過時間に係らず一定の材料特性を用いて算出した30万時間における応力を用いてき裂進展解析を行なった結果である。また、同図における実線b0は、経過時間に応じた材料特性を用いて算出した30万時間における応力を用いてき裂進展解析を行なった結果である。き裂寸法が急激に大きくなる時期は、材料劣化を考慮せず一定の材料特性を用いた場合(実線a0)より、材料劣化を考慮し経過時間に応じた材料特性を用いた場合(実線b0)の方が遅いことを示している。

0064

図9では、HAZ(熱影響部)に生じたき裂がHAZ(熱影響部)内を進展する場合と、母材部に達する場合とを示している。具体的には、図9において、実線は、HAZ(熱影響部)内のみをき裂が進展する場合を想定した「き裂進展速度切替無し」のき裂寸法(深さ)を示している。また、破線は、HAZ(熱影響部)が母材部に達した時点で、母材部のき裂進展速度を用いる場合を想定した「き裂進展速度切替有り」のき裂寸法(深さ)を示している。
この図9から、母材部への到達以降は、母材部におけるき裂進展の速度が遅くなり、例えば、限界き裂寸法を「30mm」と仮定すると、構造物の寿命が長くなる(70年から90年に延びる)と評価することができる。このように、き裂進展速度を切り替えて、損傷を評価することができる。更に、経過時間(図9の保持時間)に応じた材料特性の変化(例えば、変形し易い材料特性に変化)を考慮して、応力を計算し、き裂寸法や寿命を評価することができる。

0065

次に、損傷評価システム20の制御部21は、終了か否かの判定処理を実行する(ステップS2−10)。具体的には、制御部21の管理部210は、出力部12に終了確認画面を出力する。この終了確認画面においては、き裂進展計算処理の継続の要否を入力するための選択ボタンが含まれる。そして、き裂状態出力画面を確認したユーザによる選択ボタンが選択されたか否かによって、管理部210は終了か否かを判定する。

0066

ここで、き裂進展計算処理の継続の選択ボタンが選択され、終了ではないと判定した場合(ステップS2−10において「NO」の場合)、制御部21の管理部210は、繰り返し数を「0」にリセットし、ステップS2−2以降の処理を実行する。

0067

一方、き裂進展計算処理の継続不要の選択ボタンが選択され、終了と判定した場合(ステップS2−10において「YES」の場合)、制御部21の進展計算部213は、き裂進展処理(ステップS1−8)を終了する。

0068

本実施形態の損傷評価システム20によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、基礎情報記憶部22には、計算対象の構造物に関する基礎情報(構造物の形状、荷重条件、構造物の材料特性)に関する情報が記録される。制御部21の管理部210は、出力部12に、評価対象指定画面を出力する。そして、FEM計算部211は、構造物の形状や構成要素に応じて、有限要素法に適したメッシュを作成する。これにより、異なる構成要素から構成された構造物において、有限要素法による解析を行なって、異なる構成要素を横断したき裂状態を効率的に評価することができる。

0069

(2)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、出力部12に、荷重指定画面を出力する。これにより、運転に伴う運転サイクルを任意に入力することができる。

0070

(3)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、材料特性の特定処理を実行する(ステップS1−2)。この場合、制御部21のFEM計算部211は、経過時間に応じた材料特性を、基礎情報記憶部22から取得する。これにより、複数の材料について経年変化を考慮することができる。例えば、運転初期クリープ変形し難く、長時間運転後はクリープ変形しやすい等のクリープ特性の経年変化を考慮することができる。

0071

(4)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、計算結果の出力処理を実行する(ステップS1−6)。そして、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂位置、き裂想定面の取得処理を実行する(ステップS2−1)。これにより、ユーザが、疲労損傷率及びクリープ損傷率の計算結果に基づいて、き裂発生位置を特定することができる。

0072

(5)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、き裂位置・寸法に応じたき裂の応力抽出処理を実行する(ステップS2−2)。これにより、予測されるき裂発生位置の応力を抽出することができる。

0073

(6)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、材料特性に応じて算出した各要素の応力、現在のき裂の寸法を適用して、破壊力学パラメータを算出する(ステップS2−4,S2−5)。制御部21は、算出した破壊力学パラメータを用いてき裂進展速度を算出し(ステップS2−6)、き裂状態の出力処理を実行する(ステップS2−9)。これにより、材料特性に応じてき裂状態を算出して出力することができる。例えば、HAZ(熱影響部)においては進展し易く、母材部は進展し難いことがある。このような状況下で、き裂が母材部、溶接部、HAZ(熱影響部)を跨って進展する場合においても、それぞれのき裂進展速度を考慮することができる。特に、経過時間に応じた材料特性を用いるため、材料特性の変化を考慮して、応力を精度よく算出し、この応力を用いてき裂状態を評価することができる。

0074

(7)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、表面き裂か否かの判定処理を実行する(ステップS2−3)。これにより、埋没き裂と表面き裂とを識別して、破壊力学パラメータを算出することができる。例えば、初期は埋没き裂として発生し、進展に伴い表面に近づく場合にも、埋没き裂から表面き裂に置き換えてき裂進展計算を行なうことができる。

0075

(8)本実施形態では、損傷評価システム20の制御部21は、有限要素法による解析により、構造物を構成する各要素の応力を算出し、FEM解析結果記憶部23に記録する。そして、制御部21は、FEM解析結果記憶部23に記録された応力を用いて、き裂進展計算処理を実行する(ステップS1−8)。このため、各要素の応力計算とき裂進展計算とを分けて、簡易に損傷評価を行なうことができる。

0076

また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態においては、損傷評価システム20の制御部21は、火力発電所における高温機器(設備)の損傷を評価した。評価対象となる構造物は、火力発電所において用いられる構造物に限定されるものではない。また、上記実施形態においては、溶接部、HAZ(熱影響部)、母材部を異なる材料特性として説明したが、必ずしもこれに限定されることなく、異なる材料特性を有する複数の部分から構成される構造物全般に適用することができる。

0077

・上記実施形態においては、第1継続サイクル数に達した場合、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂が発生したか否かの判定処理を実行する(ステップS1−7)。ここで、損傷評価システム20の制御部21が、初期き裂の発生を予測して、繰り返し計算を終了するようにしてもよい。この場合には、管理部210に初期き裂発生条件に関する情報を保持させておく。例えば、初期き裂発生条件としては、初期き裂の発生と判定するために、疲労損傷率、クリープ損傷率の判定基準値を管理部210に記憶させておく。そして、制御部21は、算出した疲労損傷率とクリープ損傷率との少なくとも一方が、き裂発生判定値以上になった場合には、初期き裂の発生と判定する(ステップS1−7において「YES」)。この場合、き裂進展計算(ステップS1−8)を続けて実行するようにしてもよいし、ユーザに初期き裂の発生の確認を促してもよい。これにより、初期き裂の発生を、効率的に判定することができる。

0078

・上記実施形態においては、制御部21は、疲労損傷率及びクリープ損傷率を含む損傷分布画面を出力部12に表示する。そして、制御部21は、損傷分布画面を確認したユーザによる選択ボタンの選択に基づいて、初期き裂が発生したか否かの判定処理を実行する(ステップS1−7)。これに代えて、制御部21は、疲労損傷クリープ損傷の評価を行なうことなく、ユーザによって指定された初期き裂の位置を取得し、この初期き裂の位置を用いてき裂進展計算を行なうようにしてもよい。

0079

・上記実施形態においては、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂位置、き裂想定面の取得処理を実行する(ステップS2−1)。これに代えて、損傷評価システム20の制御部21が、き裂想定面を特定するようにしてもよい。この場合には、損傷率が高い面や、応力が集中している面をき裂想定面として特定してもよい。また、複数の仮想面について、ステップS2−2〜S2−9の処理を繰り返して実行し、き裂進展速度が最も早い面を、き裂想定面として特定するようにしてもよい。

0080

・上記実施形態においては、損傷評価システム20の制御部21は、終了か否かの判定処理を実行する(ステップS2−10)。この場合、き裂状態出力画面を確認したユーザによる選択ボタンの選択に基づいて判定する。これに代えて、損傷評価システム20の制御部21が、終了か否かの判定処理を実行するようにしてもよい。この場合には、管理部210に終了条件に関する情報を保持させておく。例えば、終了条件としては、き裂寸法やき裂位置を用いることができる。そして、制御部21は、き裂寸法が終了条件のき裂寸法以上になった場合や、き裂位置が終了条件のき裂位置を含む場合には、終了(ステップS2−10において「YES」)と判定する。これにより、き裂寸法やき裂位置に応じて損傷評価を効率的に行なうことができる。

0081

・上記実施形態においては、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂が発生したと判定した場合(ステップS1−7において「YES」の場合)、FEM解析結果記憶部23に記録された応力を用いて、き裂進展計算処理を実行する(ステップS1−8)。具体的には、き裂進展計算処理に用いる応力は、初期き裂が発生したときの応力(一定値)を用いる。ここで、応力を、き裂進展の時間経過に応じて順次、算出するようにしてもよい。そして、算出した応力を用いて、き裂進展計算処理を実行する。更に、応力を算出する場合に、材料劣化を考慮した材料特性を用いてもよい。

0082

11…入力部、12…出力部、20…損傷評価システム、21…制御部、210…管理部、211…FEM計算部、212…損傷率計算部、213…進展計算部、22…基礎情報記憶部、23…FEM解析結果記憶部、24…き裂状態記憶部、50…構造物、51…母材部、52…溶接部、53…HAZ(熱影響部)、55…き裂。

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