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課題
解決手段
概要
背景
概要
インシュレータを薄型化でき、製造コストが低く容易に製造可能なモータの固定子構造を提供する。モータ1のコアユニット45は、空芯のコイル35を用いたモータ1に用いられる。コアユニット45は、筒状のバックヨーク部41と、バックヨーク部41の内周に配置されているインシュレータ43とを有する。インシュレータ43の内周面には、コイル35が固定される。バックヨーク部41とインシュレータ43とは、一体に形成されている。インシュレータ43の内周面は、バックヨーク部41とインシュレータ43とが一体に形成された後で、インシュレータ43の一部を除去する加工が行われることにより形成された面を有する。
目的
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、インシュレータを薄型化でき、製造コストが低く容易に製造可能なモータの固定子構造及びモータを提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
空芯のコイルを用いたモータに用いられるモータの固定子構造であって、筒状のバックヨーク部と、前記バックヨーク部の内周に形成されたインシュレータと、前記インシュレータの内周面に固定された空芯のコイルとを備え、前記バックヨーク部と前記インシュレータとは、一体に形成されており、前記インシュレータの内周面は、前記バックヨーク部と前記インシュレータとが一体に形成された後で、前記インシュレータの一部を除去する加工が行われることにより形成された面を有する、モータの固定子構造。
請求項2
前記バックヨーク部は、複数のリング状部材が積層されて構成されている、請求項1に記載のモータの固定子構造。
請求項3
前記インシュレータの内周面の表面粗さは、前記インシュレータの表面のうち前記加工が行われていない面の表面粗さよりも大きい、請求項1又は2に記載のモータの固定子構造。
請求項4
請求項1から3のいずれか1項に記載のモータの固定子構造と、前記コイルの内周側に配置されたロータとを備え、前記ロータは、シャフトと、前記シャフトに取り付けられ前記コイルを挟んで前記バックヨーク部に対向するように配置された永久磁石とを有する、モータ。
請求項5
前記コイルは、前記インシュレータの内周面に接着されている、請求項4に記載のモータ。
技術分野
背景技術
0002
モータにおいて、コイルと鉄心等とを絶縁するために、インシュレータ(絶縁物)が用いられる。モータの性能を向上させるには、コイルを巻回するスペースをより広く確保することが重要になる。そのため、インシュレータは、耐電圧性が確保される限り、できるだけ薄く形成されていることが望ましい。
0003
下記特許文献1には、モータの固定子を構成する分割鉄心に一体成形によりインシュレータが設けられた構造が記載されている。分割鉄心の形状を改善することにより、インシュレータの薄型化が図られている。
先行技術
0004
特開2004−248471号公報
発明が解決しようとする課題
0006
すなわち、金型と鉄心との隙間に樹脂を適正に流すためには、インシュレータの肉厚をある程度確保することが必要である。しかしながら、そうすると、コイルを巻回するスペースが狭くなるという問題がある。また、ショートモールドの危険性が生じるため、インシュレータの厚みを、成形機や材料の許容範囲以上に薄くすることは困難である。
0007
また、薄肉に成形するためには、流動性が高い高価な樹脂を使用する必要があり、モータの製造コストが高くなるという問題がある。すなわち、一般に、流動性が高い(肉薄に成形できる)樹脂ほど、高価である。例えば、比較的安価なPBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)やPA(ポリアミド樹脂)等と比較して、PPS(ポリフェニレンサルファイド)耐熱樹脂は流動性が高いが、高価である。また、例えば、LCP(液晶ポリマー)は、さらに流動性が高いが、さらに高価である。
0008
なお、ショートモールドを起こさない範囲の長さで鉄心の上下にインシュレータを取り付け、鉄心の中間部に絶縁塗料を塗布することで、コイルと鉄心との間を絶縁する方法がある。しかしながらこの方法では、インシュレータを上下別体で形成し、鉄心に絶縁塗装を行った後で両者を組み合わせる必要がある。そのため、部品点数が増え、製造工数が増加するという問題がある。
0009
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、インシュレータを薄型化でき、製造コストが低く容易に製造可能なモータの固定子構造及びモータを提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
0010
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、空芯のコイルを用いたモータに用いられるモータの固定子構造は、筒状のバックヨーク部と、バックヨーク部の内周に形成されたインシュレータと、インシュレータの内周面に固定された空芯のコイルとを備え、バックヨーク部とインシュレータとは、一体に形成されており、インシュレータの内周面は、バックヨーク部とインシュレータとが一体に形成された後で、インシュレータの一部を除去する加工が行われることにより形成された面を有する。
0011
好ましくは、バックヨーク部は、複数のリング状部材が積層されて構成されている。
0012
好ましくは、インシュレータの内周面の表面粗さは、インシュレータの表面のうち加工が行われていない面の表面粗さよりも大きい。
0013
この発明の他の局面に従うと、モータは、上述に記載のモータの固定子構造と、コイルの内周側に配置されたロータとを備え、ロータは、シャフトと、シャフトに取り付けられコイルを挟んでバックヨーク部に対向するように配置された永久磁石とを有する。
0014
好ましくは、コイルは、インシュレータの内周面に接着されている。
発明の効果
0015
これらの発明に従うと、インシュレータの内周面は、バックヨーク部とインシュレータとが一体に形成された後で、インシュレータの一部を除去する加工が行われることにより形成された面を有している。したがって、インシュレータを薄型化でき、製造コストが低く容易に製造可能なモータの固定子構造及びモータを提供することができる。
図面の簡単な説明
0016
本発明の実施の形態の1つにおけるモータを示す側断面図である。
固定子の分解斜視図である。
固定子をモータの回転軸を通る平面で切断した場合の断面斜視図である。
コアユニットの製造工程を説明する第1の図である。
コアユニットの製造工程を説明する第2の図である。
表面粗さの測定結果を示す表である。
後加工前のインシュレータについての表面粗さの測定結果を示すグラフである。
後加工後のインシュレータについての表面粗さの測定結果を示すグラフである。
インシュレータの成形についてのシミュレーション結果を示す第1の図である。
インシュレータの成形についてのシミュレーション結果を示す第2の図である。
実施例
0017
以下、本発明の実施の形態の1つにおける固定子構造を有するモータについて説明する。
0018
[実施の形態]
0019
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ1を示す側断面図である。
0020
図1に示されるように、モータ1は、ロータ10と、固定子40と、ハウジング30とを有している。ロータ10は、大まかに円筒状に形成された固定子40の内径側に配置されている。すなわち、モータ1は、いわゆるインナーロータ型のものである。
0022
ロータ10は、シャフト11と、筒状の永久磁石12とを有している。永久磁石12は、シャフト11と同軸になるようにしてシャフト11に固定されている。シャフト11は、永久磁石12を貫通している。
0023
ハウジング30は、例えば、非磁性体の金属板を用いて形成されたケース31と、エンドピース32とを有している。ケース31の一方の端部は、シャフト11が貫通可能な程度に開口している。この端部には、ロータ10を支持するためのベアリング33がはめ込まれている。ケース31の他方の端部は、全面が開口している。この端部には、エンドピース32が配置されている。エンドピース32は、ロータ10を支持するためのベアリング34を保持する。
0024
ロータ10は、シャフト11がベアリング33,34に軸支された状態で、ハウジング30に対して回転可能に取り付けられている。シャフト11は、ベアリング33側の端部から、ハウジング30の外部に突出している。永久磁石12は、ハウジング30の内部に収容されている。
0025
固定子40は、コアユニット45と、コアユニット45の内側に固定されたコイル35とを有している。固定子40は、ハウジング30の内部に収容されている。固定子40は、ケース31に対して固定されている。これにより、ロータ10の永久磁石12は、コイル35を挟んで、バックヨーク部41に対向するように配置される。
0026
図2は、固定子40の分解斜視図である。
0028
コアユニット45は、筒状のバックヨーク部41と、その内周に配置されたインシュレータ43とを有している。コアユニット45は、バックヨーク部41とインシュレータ43とで一体に構成されたインシュレータ構造を有している。コアユニット45は、略円筒形状を有している。コアユニット45の外径は、ケース31の内径と略同じである。コアユニット45の内周面43a(内径側の面)は、円筒面である。
0029
コイル35は、コアユニット45に挿入され、コアユニット45に接着される。このとき、コイル35は、接着により、コアユニット45の内周面43aに固定される。
0030
図3は、固定子40をモータ1の回転軸を通る平面で切断した場合の断面斜視図である。
0031
図3に示されるように、本実施の形態において、バックヨーク部41は、多数のコアシート(リング状部材の一例)41aを積層して形成されている。コアシート41aは、例えば鋼板を加工することにより形成された、リング状部材である。なお、バックヨーク部41は、他の構造を有していてもよい。
0032
固定子40において、インシュレータ43は、バックヨーク部41とコイル35との間に位置している。すなわち、コイル35は、インシュレータ43の内周面43aに接着されている。インシュレータ43は、樹脂製であり、コイル35とバックヨーク部41とを絶縁する。
0033
バックヨーク部41とインシュレータ43とは、インサート成形により一体成形されている。すなわち、バックヨーク部41を金型に設置し、金型に樹脂を流し込むことで、インシュレータ43とバックヨーク部41とが一体成形されたコアユニット45が得られる。
0034
ここで、本実施の形態において、インシュレータ43は、バックヨーク部41とインシュレータ43とが一体成形されるとき、樹脂が金型内に行き渡りやすくなるように、厚く(肉厚に)形成される。そして、肉厚に形成されたインシュレータ43に対して後加工が行われることで、インシュレータ43が薄肉化される。
0035
図4は、コアユニット45の製造工程を説明する第1の図である。
0036
図4においては、コアユニット45の製造工程において、バックヨーク部41とインシュレータ43とが一体成形された後であって、後加工が行われる前の状態が示されている。図4に示されるように、インシュレータ43の内径側の肉厚が厚くなるように、一体成形が行われる。後加工前のインシュレータ43の厚さは、例えば0.3ミリメートルから0.4ミリメートル程度である。
0037
図5は、コアユニット45の製造工程を説明する第2の図である。
0038
図5においては、コアユニット45の製造工程において、インシュレータ43に後加工が行われた後の状態が示されている。すなわち、コアユニット45の製造が完了した状態が示されている。
0039
図5に示されるように、後加工では、上述のように厚く形成されたインシュレータ43の内径側の部分が除去される。後加工により、インシュレータ43が薄肉化される。後加工後のインシュレータ43の厚さは、例えば0.1ミリメートル程度である。後加工後のインシュレータ43の内周面43aが、コイル35が接着される面となる。すなわち、本実施の形態において、コイル35が接着されるインシュレータ43の内周面43aは、バックヨーク部41とインシュレータ43とが一体成形された後で、インシュレータ43の一部を除去する加工が行われることにより形成された面を有する。
0040
モータ1の全体の外径は5ミリメートル程度であるため、旋盤による切削加工(バイトの刃による加工)によりインシュレータ43の後加工を行うことは不可能である。そのため、後加工は、例えば、ドリル加工により行うようにすればよい。後加工は、一体成形された後のコアユニット45の外径をチャッキングした状態で、ドリルの刃をインシュレータ43に当てて、インシュレータ43の内径側の部位を除去するようにすればよい。なお、モータが比較的大きいサイズである場合は、通常の切削加工により後加工を行ってもよいし、他の方法で加工を行ってもよい。
0041
ここで、本実施の形態において、インシュレータ43の内周面43aの表面粗さは、インシュレータ43の表面のうち後加工が行われていない面の表面粗さよりも大きくなっている。すなわち、インシュレータ43の表面のうち後加工が行われていない面は、一体成形時の表面であり、その表面粗さは比較的小さい。これに対して、後加工が行われることにより形成された内周面43aは、ドリル加工の加工面であり、その表面粗さは比較的大きくなっている。
0042
インシュレータ43についてドリル加工により後加工を行う前後では、内周面の表面粗さは、例えば次のように変化する。
0043
すなわち、表面粗さ測定器として株式会社東京精密製の「サーフコム1400G」を用いた。測定対象サンプルのインシュレータ43の内壁表面に測定針を当て、軸方向に2ミリメートルの測定範囲内で、毎秒0.06ミリメートルの測定速度で測定針を走査させ、算術平均粗さ(Ra)と最大高さ粗さ(Rz)とを算出した。測定は、後加工前と後加工後とで、それぞれ3つのサンプルについて行った。
0044
図6は、表面粗さの測定結果を示す表である。図7は、後加工前のインシュレータ43についての表面粗さの測定結果を示すグラフである。図8は、後加工後のインシュレータ43についての表面粗さの測定結果を示すグラフである。
0046
このように内周面43aの表面粗さが後加工が行われていない面の表面粗さよりも大きいことにより、コイル35とインシュレータ43との接着性が良好になるという効果が得られる。なお、後加工が行われたとき、その加工面に対して、表面粗さを大きくするための加工がさらに行われるようにしてもよい。
0047
[実施の形態における効果]
0048
以上説明したように、本実施の形態においては、インシュレータ43は、一体成形により厚肉に成形された後で、薄肉に加工される。
0050
図9及び図10において、着色部分は樹脂が流れ込む部分を示し、数値は、樹脂の充填開始から経過した秒数を示している。図9が、インシュレータ43の成形時の厚みが0.3ミリメートルの場合のシミュレーション結果を示す。図10が、インシュレータ43の成形時の厚みが0.1ミリメートルであると仮定した場合のシミュレーション結果を示す。図に示されるように、厚みが厚い方は、0.11秒程度でくまなく樹脂が行き渡っているのに対し、厚みが薄い方は、その倍の時間をかけても、樹脂が全体には行き渡っていない。すなわち、厚みが薄いと、ショートモールドが発生する可能性が高くなる。
0051
本実施の形態においては、インシュレータ43の成形時の厚みを厚めに確保しているので、一体成形を、流動性が高い高価な樹脂を用いることなく、比較的安価な樹脂を用いて、容易かつ確実に行うことができる。また、成形後に後加工を行うので、インシュレータ43を薄く形成することができる。したがって、モータ1の製造コストを低く抑えることができ、かつ、コイル35を設けるスペースを広く確保してモータ1の性能を高くすることができる。
0052
また、バックヨーク部41は、リング状のコアシート41aが積層されて構成されているため、バックヨーク部41の形状の寸法精度を容易に高めることができる。バックヨーク部41の外周面と、一体成形時のインシュレータ43の内周面との同軸度が0.05ミリメートルでもずれると片側偏肉となり、射出成形時にショートモールドが発生しやすくなる。しかしながら、本実施の形態においては、リング状のコアシート41aを用いることで、射出成形時に偏肉とならないように、バックヨーク部41を高い精度で成形することができる。また、インシュレータ43の後加工を行うとき、バックヨーク部41の外径を基準にして加工を行うことができる。したがって、容易に、後加工後にも偏肉にならないように、高精度にコアユニット45を形成することができる。
0053
さらにまた、インシュレータ43の内周面43aは、他の表面よりも表面粗さが大きくなっている。コイル35とインシュレータ43との接着性が良好になり、コイル35がしっかりと固定される。したがって、モータ1の信頼性が高くなる。インシュレータ43の内周面43aは、ドリル加工によりインシュレータ43が後加工されることで生成された加工面である。したがって、表面粗さを大きくするために特別の加工を行うことなく、容易に、コイル35とインシュレータ43との接着性を向上させることができる。
0054
[その他]
0055
モータは、インナーロータモータに限られない。上述と同様のインシュレータ構造を用いる他種のモータであってもよい。
0057
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
0058
1モータ
10ロータ
11シャフト
12永久磁石
35コイル
40固定子
41バックヨーク部
41aコアシート(リング状部材の一例)
43インシュレータ
43a内周面
45 コアユニット