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技術 複合繊維およびこれを用いた水硬性材料用補強材

出願人 三菱ケミカル株式会社
発明者 加藤健司万代修作
出願日 2016年3月25日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-061056
公開日 2016年10月20日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-183441
状態 特許登録済
技術分野 合成繊維 セメント、コンクリート、人造石、その養生 複合繊維
主要キーワード 二次成型 不純物処理 ハロゲン化アリル化合物 コンクリート補強用 ジオール構造単位 対数比 編み生地 酢酸ビニル構造単位
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年10月20日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題

水硬性材料補強材等として好適に用いることのできる、水系材料中での良好な分散性とこれを分散含有させる相手に対する高い接着強度を発揮しうる複合繊維を提供する。

解決手段

エチレンビニルエステル系共重合体ケン化物(A)と水溶性樹脂(B)とを含有してなる複合繊維であり、少なくとも繊維表面において上記(A)、(B)による海島構造が形成されており、繊維表面の島成分全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が、50%以上である

概要

背景

従来、水硬性材料、例えばセメント骨材と水と混和剤等を混合し硬化させて得られるコンクリートは、耐圧縮性に優れ、上から大きな荷重がかかっても堅牢であることから、高層ビル高速道路港湾ダムといった巨大建造物汎用されている。しかし、水硬性材料は、耐圧縮性に優れる一方、引張力には弱いため、コンクリート中に鉄筋鉄骨を入れて施工したり、コンクリート中に合成繊維スチール繊維炭素繊維ガラス繊維等を短繊維の形で混入したりして、補強することが行われている。

このような、コンクリート補強用の短繊維として、例えばビニロン繊維が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、ビニロン繊維は、コンクリート組成物中で均一に分散しにくいため、得られるコンクリート体において強度に偏りが生じ、全体として充分な補強効果が得られにくいという問題がある。

そこで、コンクリート組成物中での分散性がより良好な短繊維として、ビニロン繊維よりも水酸基の割合の多い、エチレンビニルエステル系共重合体ケン化物(以下「EVOH」と略す)からなる繊維を用いることが提案されている(特許文献2を参照)。

概要

水硬性材料用補強材等として好適に用いることのできる、水系材料中での良好な分散性とこれを分散含有させる相手に対する高い接着強度を発揮しうる複合繊維を提供する。エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)と水溶性樹脂(B)とを含有してなる複合繊維であり、少なくとも繊維表面において上記(A)、(B)による海島構造が形成されており、繊維表面の島成分全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が、50%以上である

目的

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、コンクリート用補強材等として好適に用いることのできる、水系材料中での良好な分散性とこれを分散含有させる相手に対する高い接着強度を発揮しうる複合繊維を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

エチレンビニルエステル系共重合体ケン化物(A)と水溶性樹脂(B)とを含有してなる複合繊維であり、少なくとも繊維表面において上記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)が海成分、上記水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造になっており、繊維表面の島成分の全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が50%以上であることを特徴とする複合繊維。

請求項2

エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)と水溶性樹脂(B)の、せん断速度912sec−1、210℃における溶融粘度対数比(B/A)が、1.10〜1.50であることを特徴とする請求項1記載の複合繊維。

請求項3

水溶性樹脂(B)が、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の複合繊維。 〔式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕

請求項4

ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が、600〜1500であることを特徴とする請求項3記載の複合繊維。

請求項5

エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)と水溶性樹脂(B)の含有割合重量比、A/B)が、95/5〜65/35であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合繊維。

請求項6

請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合繊維を用いてなることを特徴とする水硬性材料補強材

技術分野

0001

本発明は、複合繊維およびこれを用いた水硬性材料補強材に関し、詳細には、少なくともその繊維表面において、難水溶性樹脂水溶性樹脂とが海島構造を有する複合繊維と、この複合繊維を用いてなる水硬性材料用補強材に関するものである。

背景技術

0002

従来、水硬性材料、例えばセメント骨材と水と混和剤等を混合し硬化させて得られるコンクリートは、耐圧縮性に優れ、上から大きな荷重がかかっても堅牢であることから、高層ビル高速道路港湾ダムといった巨大建造物汎用されている。しかし、水硬性材料は、耐圧縮性に優れる一方、引張力には弱いため、コンクリート中に鉄筋鉄骨を入れて施工したり、コンクリート中に合成繊維スチール繊維炭素繊維ガラス繊維等を短繊維の形で混入したりして、補強することが行われている。

0003

このような、コンクリート補強用の短繊維として、例えばビニロン繊維が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、ビニロン繊維は、コンクリート組成物中で均一に分散しにくいため、得られるコンクリート体において強度に偏りが生じ、全体として充分な補強効果が得られにくいという問題がある。

0004

そこで、コンクリート組成物中での分散性がより良好な短繊維として、ビニロン繊維よりも水酸基の割合の多い、エチレンビニルエステル系共重合体ケン化物(以下「EVOH」と略す)からなる繊維を用いることが提案されている(特許文献2を参照)。

先行技術

0005

特開平11−350246号公報
特開2003−261371号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、上記EVOH繊維は、水との親和性が良好で、ビニロン繊維に比べてコンクリート組成物中で分散しやすい半面、繊維表面が平滑なため、コンクリートとの接着強度が低く、コンクリートに強い引張力がかかってずれや歪みが生じた場合、繊維表面がコンクリートから外れてコンクリートに対する補強効果が弱くなるという問題がある。

0007

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、コンクリート用補強材等として好適に用いることのできる、水系材料中での良好な分散性とこれを分散含有させる相手に対する高い接着強度を発揮しうる複合繊維を提供すること、また、そのような複合繊維を用いてなる水硬性材料用補強材を提供すること、をその目的とするものである。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねる過程で、EVOHを単独で用いるのではなく、EVOHと、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)系樹脂等の水溶性樹脂とを組み合わせた複合繊維を用い、水系材料中で上記水溶性樹脂が溶解除去され繊維表面が凹凸になれば、その凹凸によって、補強しようとする相手と繊維との接着強度を高めることができるのではないかとの着想を得た。

0009

そして、本出願人がすでに出願している、EVOHを海成分とし特定のPVA系樹脂島成分とする海島型構造を有する複合繊維(特開2010−189829号公報を参照)を例にとって、期待されるような分散性と接着性を兼ね備えたものが得られるか否かについて、研究を重ねた結果、上記特開2010−189829号公報記載の複合繊維は、単に繊維断面において海島型構造を有するものであり、接着性の点でさらなる改善の余地があることが判明した。そこで、さらに研究を重ねた結果、その溶融紡糸時の繊維表面において、EVOHが海成分、PVAが島成分となり、しかもアスペクト比10以下の島成分を多く有する海島構造を与えることが重要であることを見いだし、本発明に到達した。

0010

なお、上記特開2010−189829号公報記載の複合繊維では、EVOHと特定のPVA系樹脂の粘度がほぼ等しいため、溶融紡糸することによって得られた繊維の表面は、紡糸時のせん断力によって島成分(PVA系樹脂)が紡糸方向に沿って筋状に引き伸ばされてしまい、本発明のような、繊維表面においてアスペクト比10以下の島成分を多く有する海島構造が得られないものである。

0011

<発明の要旨>
すなわち、本発明は、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)とを含有してなる複合繊維であり、少なくとも繊維表面において上記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)が海成分、上記水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造になっており、繊維表面の島成分の全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が50%以上である複合繊維を第1の要旨とする。

0012

また、本発明は、そのなかでも、特に、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)の、せん断速度912sec−1、210℃における溶融粘度対数比(B/A)が、1.10〜1.50である複合繊維を第2の要旨とする。

0013

さらに、本発明は、そのなかでも、特に、水溶性樹脂(B)が、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂である複合繊維を第3の要旨とし、特に、PVA系樹脂の平均重合度が、600〜1500である複合繊維を第4の要旨とする。

0014

〔式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、
Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して水素
原子または有機基を示す。〕

0015

また、本発明は、それらのなかでも、特に、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)の含有割合重量比、A/B)が、95/5〜65/35である複合繊維を第5の要旨とする。

0016

そして、上記第1〜第5のいずれかの要旨である複合繊維を用いてなる水硬性材料用補強材を第6の要旨とする。

発明の効果

0017

本発明の複合繊維は、少なくとも繊維表面において、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分であり、繊維表面の島成分の全面積に対し、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の占める割合が50%以上である、特殊な海島構造を有するものである。この構成によれば、繊維表面から上記水溶性樹脂(B)を溶解除去することにより、EVOH(A)による複雑な凹凸形状が付与された、独特風合いの繊維を得ることができる。

0018

そして、上記凹凸形状がアンカー効果を果たし、コンクリートや樹脂ゴム中において高い接着強度を発揮するため、優れた繊維補強材として用いることができる。とりわけ、水硬性材料、例えば水を含むコンクリート材料等に配合して使用すれば、その水分によって水溶性樹脂(B)が溶解除去されるため、予め複合繊維から水溶性樹脂(B)を溶解除去する必要がなく、好適に用いることができる。

0019

また、本発明のなかでも、特に、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)の、せん断速度912sec−1、210℃における溶融粘度の対数比(B/A)が、1.10〜1.50である複合繊維は、その粘度特性によって、少なくとも繊維表面において、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である、特殊な構成の海島構造が形成されやすいため、好適である。

0020

さらに、本発明のなかでも、特に、上記水溶性樹脂(B)が、上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有する特定のPVA系樹脂である複合繊維は、とりわけ繊維表面において、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である、特殊な構成の海島構造が形成されやすい。そして、水溶性樹脂(B)が溶解除去された後の繊維表面に複雑な凹凸が形成されやすく、他の物質(この複合繊維による補強対象等)に対し高い接着強度を発揮するものとなり、好ましい。

0021

また、上記特定のPVA系樹脂のなかでも、特に、その平均重合度が、600〜1500である複合繊維は、PVA系樹脂の粘度が比較的高いものとなり、繊維表面において、EVOH(A)からなる海成分に対し、水溶性樹脂(B)であるPVA系樹脂からなる島成分が粒状に分散している海島構造となるため、水溶性樹脂(B)が溶出した後の繊維表面の凹部が粒状に分散するものとなり、より一層高い接着強度を発揮することができ、好ましい。

0022

さらに、本発明のなかでも、特に、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)の含有割合(重量比)A/Bが、95/5〜65/35である複合繊維は、要求される分散性と接着強度のどちらについても、とりわけ優れた性能を発揮するものとなり、好ましい。

0023

そして、上記第1〜第5のいずれかの要旨である複合繊維を用いてなる水硬性材料用補強材は、水硬性材料中に均一に分散した状態で硬化され、しかも硬化した水硬性材料に対し高い接着強度で接合一体化するため、優れた補強効果を発揮することができる。

図面の簡単な説明

0024

本発明の複合繊維における海島構造を模式的に示す説明図である。
本発明とは異なる海島構造を模式的に示す説明図である。
実施例1品のSEMによる拡大写真である。
比較例1品のSEMによる拡大写真である。
比較例2品のSEMによる拡大写真である。

0025

本発明の複合繊維は、EVOH(A)と、水溶性樹脂(B)とを含有するものである。
そして、本発明においては、少なくとも繊維表面において、上記EVOH(A)が海成分、上記水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造であり、繊維表面の島成分の全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が50%以上であることを最大の特徴とするものである。

0026

すなわち、本発明の複合繊維の繊維表面を模式的に示すと、図1に示すように、EVOH(A)を海成分1とし、水溶性樹脂(B)を島成分2とする海島構造になっている。そして、島成分2は、その紡糸の過程で、どうしても繊維の長さ方向に延びる傾向がある。本発明における海島構造は、そのような島成分2を、アスペクト比が10以下の、比較的丸い島成分2aと、アスペクト比が10を超える、細長く延びた筋状の島成分2bに分け、アスペクト比が10以下の島成分2aの面積(総和面積、以下同じ)が、繊維表面の島成分2の全面積に対し、50%以上の割合を占めるようになっている。

0027

この構成によれば、繊維表面において、島成分2である水溶性樹脂(B)が溶解除去されると、海成分1であるEVOH(A)による複雑な凹凸形状が付与されるため、独特の風合いの繊維を得ることができる。また、その凹凸形状がアンカー効果を果たし、コンクリートや樹脂、ゴム中において高い接着強度を発揮するため、優れた繊維補強材として用いることができる。特に、アスペクト比10以下の、比較的丸い島成分2aに由来する凹部において、顕著なアンカー効果が得られる。

0028

ちなみに、本発明の海島構造から外れる、アスペクト比が10以下の、比較的丸い島成分2aが、島成分2の全面積に対し50%未満である場合は、図2に示すように、繊維の長さ方向に延びる筋状の島成分2bが、島成分2の多くを占めるため、水溶性樹脂(B)の溶解除去によって得られる凹凸形状は、アンカー効果に乏しいものとなる。

0029

なお、本発明において、上記アスペクト比10以下の島成分2aの面積が、島成分2の全面積に占める割合Pは、上述のとおり50%以上であり、なかでも、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。

0030

上記アスペクト比10以下の島成分2aの面積が、島成分2の全面積に占める割合Pは、以下の方法によって求めることができる。
〔アスペクト比10以下の島成分の面積が占める割合Pの求め方〕
例えば、繊維表面を2000倍で観察したSEM画像にて、島成分の長径および短径計測し、長径を短径で除すことによって、アスペクト比を求めることができる。そして、アスペクト比10以下の島成分の面積を、全ての島成分の面積で除すことによって算出される値を、アスペクト比10以下の島成分の面積が占める割合Pとする。

0031

本発明の複合繊維の詳細について、順に説明する。
まず、EVOH(A)について説明する。

0032

EVOH(A)とは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化して得られる樹脂であり、非水溶性熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合懸濁重合エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノール等の低級アルコール溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
すなわち、EVOH(A)は、エチレン構造単位ビニルアルコール構造単位を主として含むものであり、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むこともある。

0033

上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えばギ酸ビニルプロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニルイソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルカプリン酸ビニルラウリン酸ビニルステアリン酸ビニルバーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を併用してもよい。

0034

本発明で用いられるEVOH(A)は、エチレン含有量が、ISO14663に基づいて測定した値で、通常20〜60モル%であり、特に25〜50モル%が好ましく、さらに28〜45モル%が好ましい。エチレン含有量が多すぎると、後述する水溶性樹脂(B)との相溶性が低下し、複合紡糸時に糸切れが多発する傾向がある。また、エチレン含有量が少なすぎると、融点が高くなるため、溶融紡糸時に熱劣化しやすくなる傾向がある。

0035

EVOH(A)のMFR(メルトフローレート)は、通常3〜50g/10分(210℃、2160g)であり、特に5〜40g/10分(210℃、2160g)が好ましく、さらに8〜20g/10分(210℃、2160g)が好ましい。MFRが大きすぎると、溶融紡糸時の張力が弱く、安定な溶融紡糸が困難になる傾向がある。また、小さすぎると、溶融粘度が高すぎて、繊維径の小さい繊維が紡糸できなくなる傾向がある。

0036

EVOH(A)のケン化度(JIS K6726に準拠して測定。ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶液に均一に溶解した溶液である。)は、通常99モル%以上、特に99.5モル%以上が好ましい。ケン化度が低すぎると、溶融紡糸時の熱劣化によって異臭が発生したり、繊維が着色したりしやすくなる傾向がある。

0037

また、本発明におけるEVOH(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
前記コモノマーは、例えば、プロピレン、1−ブテンイソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1オール、3−ブテン−1,2−ジオール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物アシル化物等の誘導体アクリル酸メタクリル酸クロトン酸、(無水フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリルメタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテルヒドロキシアルキルビニルエーテルアルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類塩化ビニル塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコールジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。

0038

さらに、ウレタン化アセタール化シアノエチル化オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
特に、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOHは、二次成型性が良好になる点で好ましく、なかでも1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。

0039

本発明で用いられるEVOH(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOHに配合される配合剤、例えば、熱安定剤酸化防止剤帯電防止剤着色剤紫外線吸収剤滑剤可塑剤光安定剤界面活性剤抗菌剤乾燥剤アンチブロッキング剤難燃剤架橋剤、硬化剤発泡剤結晶核剤防曇剤生分解添加剤シランカップリング剤酸素吸収剤等が含有されていてもよい。

0040

また、本発明で用いられる水溶性樹脂(B)としては、例えば、澱粉セルロースポリビニルピロリドンポリエチレングリコール、PVA系樹脂、水溶性ナイロンポリアクリルアミド等をあげることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、EVOHとの相溶性が優れることからPVA系樹脂が好ましく、さらには、下記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂が、熱溶融成形性に優れることから、好適である。

0041

〔式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、
Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して水素
原子または有機基を示す。〕

0042

なお、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR1〜R3およびR4〜R6は、すべて水素原子であることが望ましく、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂が好適に用いられる。

0043

0044

また、前記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR1〜R3およびR4〜R6は、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば、有機基であってもよく、その有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基エチル基、n−プロピル基イソプロピル基n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、これらアルキル基がハロゲン基、水酸基、エステル基カルボン酸基スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。

0045

さらに、前記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは、前述のEVOH(A)と海島構造を形成しやすいという理由から、単結合であることが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレンアルケニレンアルキニレンフェニレンナフチレン等の炭化水素基(これらの炭化水素基はフッ素塩素臭素等のハロゲン等を有していてもよい)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)−、−(CH2O)mCH2−、−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C6H4)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、mは自然数である)があげられる。なかでも、製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。

0046

上記1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂の製造法としては、例えば、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化および脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化および脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。なかでも特に、(i)の方法が好ましい。なお、(i)、(ii)、および(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825号公報に説明されている方法を採用することができる。

0047

0048

0049

0050

なお、上記一般式(2)、(3)、(4)中のR1、R2、R3、X、R4、R5、R6は、いずれも一般式(1)の場合と同様である。R7およびR8はそれぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)である。R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子またはR1〜R6と同様の有機基である。

0051

そして、なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、上記一般式(2)において、R1〜R6が水素、Xが単結合、R7〜R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、そのなかでも、特に、R9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。

0052

上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等があげられるが、経済的にみて、なかでも酢酸ビニルが好ましく用いられる。

0053

また、上述のモノマー〔ビニルエステル系モノマー、一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物〕の他に、樹脂物性に大幅な影響を及ぼさない範囲であれば、共重合成分として、例えば、エチレンやプロピレン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物等の誘導体;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノまたはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類;メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類エチレンスルホン酸アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、等の化合物が共重合されていてもよい。

0054

そして、本発明で好適に用いられるPVA系樹脂は、前記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を通常0.1〜20モル%、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは3〜8モル%を含有するものである。前記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位のモル分率過度に高くしても、溶融紡糸性水溶性の向上が頭打ちとなり、所定の重合度のPVA系樹脂が得られにくくなる傾向がある。一方、モル分率が低すぎると、融点が高くなるため成型温度を高くせざるを得ず、溶融紡糸性が低下したり、熱劣化による不溶物が発生したりする傾向がある。また、PVA系樹脂の水溶性が低下し、複合繊維からの溶出に長時間を要したり、完全に溶出されなかったりする傾向がある。

0055

また、上記PVA系樹脂中、前記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位の含有率(モル分率)は、PVA系樹脂を完全にケン化したものの1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトンメチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトン等に由来するピーク面積から算出することができる。

0056

さらに、上記PVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常70〜100モル%、特に75〜99.9モル%、さらに80〜99.5モル%が好ましい。特に本発明で用いるPVA系樹脂は、ケン化度が高くても側鎖の1,2−ジオール構造によって結晶サイズが制御され、融点の上昇が抑制されており、良好な溶融成形性が得られ、熱劣化の問題が少ないことを特徴とするものである。ケン化度が低すぎると、溶融紡糸時の熱安定性が低下したり、酢酸臭がしたりする傾向がある。

0057

また、上記PVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常600〜1500、特に800〜1400、さらに1000〜1300が好ましい。平均重合度が高すぎると、溶融粘度が高くなり、紡糸が困難になる傾向がある。一方、平均重合度が低すぎると、EVOH(A)との混練時および溶融紡糸時に、PVA系樹脂が抵抗なく紡糸方向に沿って流れやすく、繊維表面において、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造ができにくくなる傾向がある。

0058

そして、PVA系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、通常0.05〜6g/10分(230℃、2160g)であり、特に0.05〜4g/10分(230℃、2160g)が好ましく、さらに0.08〜2g/10分(230℃、2160g)が好ましい。MFRが大きすぎると、溶融紡糸時の張力が弱く、安定な溶融紡糸が困難になる傾向がある。また、小さすぎると、溶融粘度が高すぎ、紡糸が困難になる傾向がある。

0059

本発明の複合繊維は、上記EVOH(A)と、上記水溶性樹脂(B)とを混合紡糸することにより製造することができる。混合紡糸では、例えば、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)とを1つの押出機溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノズルから吐出させて巻取り、繊維化することができる。もしくは、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)とを1つの押出機で溶融混練して、ペレット化した後、紡糸機にそのペレット仕込み、紡糸機のノズルから吐出させて巻取り、繊維化してもよい。紡糸に際しての紡糸口金の温度、ノズル通過時のせん断速度等の製造条件は、製造する複合繊維のEVOH(A)と水溶性樹脂(B)の含有比率、複合繊維の断面形状等に応じて、適宜設定される。

0060

なお、本発明においては、必要に応じて、1種もしくは複数種の添加剤を、EVOH(A)および/または水溶性樹脂(B)に配合しておいてもよく、また、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)の混合時に配合してもよい。かかる添加剤としては、例えば、溶融流動性を向上させ、繊維化工程での熱分解を抑え、良好な可塑化性、紡糸性を得るための可塑剤としてグリセリンソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、あるいはこれらのアルキレンオキサイド付加物を配合することができる。さらに、エチレンビスステアリルアマイド等の滑剤や酸化防止剤を配合してもよい。

0061

また本発明において、本発明に用いられる上記EVOH(A)と上記水溶性樹脂(B)は、せん断速度912sec−1、210℃における溶融粘度の対数比(B/A)が、1.10〜1.50であることが、繊維表面に、本発明の特殊な海島構造を形成する上で、好ましい。

0062

かかる溶融粘度の対数比(B/A)の、より好ましい範囲は、1.15〜1.40、特には1.15〜1.30である。かかる溶融粘度の対数比(B/A)が大きすぎると、溶融紡糸がしにくくなる傾向があり、一方で小さすぎると、繊維表面に海島構造が形成されにくくなる傾向がある。

0063

上記EVOH(A)と上記水溶性樹脂(B)のせん断速度912sec−1、210℃における溶融粘度の対数比(B/A)を所定範囲内に満足させるには、例えば、下記方法等を適宜組み合わせることにより可能となる。

0064

<EVOH(A)の溶融粘度を調整する方法>
(1)反応工程において重合度、エチレン組成、ケン化度を調整する。
(2)重合度、エチレン組成、ケン化度の異なる2種類以上のEVOHを溶融ブレンドして、見かけの溶融粘度を調整する。
(3)溶融粘度に及ぼす影響が大きい添加剤を、1種もしくは2種以上、少量用いて調整する。かかる添加剤としては、例えば、(1)EVOH樹脂に対して反応系樹脂であるポリアミド系樹脂、(2)EVOH樹脂に対して非反応系樹脂であるポリオレフィンポリエステルポリスチレンポリカーボネート、それらの共重合体、(3)フィラーガラスファイバー等の無機物、(4)高級脂肪酸亜鉛塩等の高級脂肪酸金属塩等があげられる。高級脂肪酸亜鉛塩に用いられる高級脂肪酸塩は、炭素数8以上(好ましくは炭素数12〜30、より好ましくは炭素数12〜20)の脂肪酸をいい、具体的には、ラウリン酸トリデシル酸、ミリスチン酸ペンタデシル酸、パルミチン酸ヘプタデシル酸、ステアリン酸ノナデカン酸、オレイン酸カプリン酸ベヘニン酸リノール酸等をあげることができる。これらのなかでも、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸が好適に用いられる。

0065

<水溶性樹脂(B)の溶融粘度を調整する方法>
(1)製造工程において、重合度(あるいは分子量)を調整する。
なかでもPVA系樹脂の場合には、重合度だけでなく、ケン化度、変性度を調整する方法がある。
(2)重合度の異なる2種類以上の水溶性樹脂を溶融ブレンドして、見かけの重合度を調整する。
(3)溶融粘度に及ぼす影響が大きい添加剤を、1種もしくは2種以上、少量用いて調整する。かかる添加剤としては、例えば、(1)フィラー、ガラスファイバー等の無機物、(2)酸無水物イソシアネート系架橋剤アミン系架橋剤アルデヒド系架橋剤エポキシ系架橋剤メラミン系架橋剤金属キレート系架橋剤等の架橋剤があげられる。なかでもPVA系樹脂に対する架橋剤としては、ホウ酸メチロールメラミン塩化第二鉄チタンラクテートチタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート)、炭酸ジルコニウムアンモニウム塩、オキシ塩化ジルコニウムなどを用いることができる。(3)グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、あるいはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の可塑剤を用いることもできる。

0066

特に、これらのなかでも、反応工程あるいは後工程での溶融ブレンドにより重合度を調整した水溶性樹脂(B)を用いることで、目的とする溶融粘度の対数比(B/A)を所定範囲内にすることが好適である。

0067

また、本発明において、上記のEVOH(A)と水溶性樹脂(B)の含有割合(A/B)は、重量比で、95/5〜65/35であることが好適であり、好ましくは、90/10〜75/25である。EVOH(A)が水溶性樹脂(B)に対し多すぎると、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造が、繊維表面において充分に得られず、水硬性材料に対する接着強度が低下するおそれがある。逆に、EVOH(A)が水溶性樹脂(B)に対し少なすぎると、繊維強度が低下する傾向がある。

0068

なお、本発明の複合繊維の断面形状は、真円形状中空形状、異型断面形状等、どのような形状であってもよいが、この複合繊維をコンクリート等の水硬性材料の補強材として用いる場合、繊維と、補強する相手との接触面積が大きい方がその界面での接着強度が高くなることから、異型断面形状であることが好ましい。ただし、製造工程の効率を考慮すれば、真円状であってもよい。

0069

また、本発明の複合繊維は、上記必須成分であるEVOH(A)と水溶性樹脂(B)とともに、他の熱可塑性樹脂を1種以上含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂ポリエチレン系樹脂LLDPE、LDPE、VLDPE等)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン6/66、ナイロン12等)等があげられ、特に、ポリエステル系樹脂が、強度等の繊維特性向上の点で好適である。

0070

このような、他の熱可塑性樹脂を含む場合、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)とを含有する複合樹脂からなる部分が、繊維表面に露出する形態になっていることが必要である。例えば、サイドバイサイド型芯鞘型の複合繊維において、他の熱可塑性樹脂が繊維内側に配置され、EVOH(A)と水溶性樹脂(B)とを含有する複合樹脂が繊維外側に配置されるようにすることが重要である。

0071

また、本発明においては、上述の複合繊維を用いて紡績された紡績糸もまた本発明の複合繊維に概念的に包含される。かかる紡績糸としては、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造を有する複合繊維からなる短繊維を用いた紡績糸、あるいは、この短繊維と他の短繊維からなる紡績糸があげられる。他の短繊維としては、上述の他の熱可塑性樹脂(ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂等)や天然繊維(綿、等)からなる短繊維があげられる。

0072

紡糸または紡績された複合繊維は、必要に応じて、延伸熱処理がなされてもよい。熱処理は延伸と同時または延伸と別工程で行うことができる。なお、この複合繊維をコンクリート等の水硬性材料の補強用に用いる場合において、水溶性樹脂(B)を溶解除去する際に生じる収縮を抑えるために、複合繊維そのものに、予め熱収縮が伴う程度まで熱処理を行なってもよい。

0073

本発明の複合繊維は、少なくともその繊維表面において、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分であり、繊維表面の島成分の全面積に対する、繊維表面のアスペクト比10以下の島成分の面積の割合が50%以上である、特殊な海島構造になっている(図1参照)。したがって、この特殊な海島構造を有する繊維表面から、上記水溶性樹脂(B)を溶解除去することにより、EVOH(A)による複雑な凹凸形状が付与された繊維を得ることができる。

0074

したがって、この複合繊維を、コンクリートや樹脂、ゴム等に混入すれば、繊維表面の凹凸形状がアンカー効果を奏し、優れた接着強度を示すものとなる。このことから、上記複合繊維は、各種材料に対し、優れた補強材として用いることができる。なお、本発明の複合繊維を、コンクリート等の水硬性材料の補強材として用いた場合、短繊維のまま材料中に配合しても分散性が良好で、均一に分散するため使い勝手がよい。もちろん、短繊維に限らず、糸や織生地編み生地、不織布としたものを補強材として用いることもできる。

0075

そして、上記のように、コンクリートや樹脂、ゴム等の補強材として用いる場合、予め、複合繊維(複合繊維を用いた各種形態の繊維品を含む)を、水や湯に浸漬して水溶性樹脂(B)を溶解除去してから用いてもよいが、補強材として用いる相手が、コンクリート材料等の水硬性材料のように水を含むものである場合は、複合繊維の水溶性樹脂(B)を予め除去しなくても、水硬性材料に配合して混合するだけで、複合繊維の水溶性樹脂(B)が溶解して少なくとも繊維表面に凹凸が形成されるため、水硬性材料との高い接着強度が発現し、優れた補強効果を付与することができる。したがって、本発明の複合繊維は、水硬性材料用補強材として用いることが最適である。

0076

なお、本発明の複合繊維を、短繊維のまま水硬性材料用補強材として用いる場合、複合繊維の繊度は、好ましくは0.01〜3000デシテックス、より好ましくは1〜300デシテックスであることが、補強効果を得る上で好適である。そして、短繊維の長さは、好ましくは1〜100mm、より好ましくは3〜40mmであることが、補強効果を得る上で好適である。

0077

また、本発明の複合繊維において、予め水溶性樹脂(B)を溶解除去して少なくとも繊維表面に凹凸をつける場合、そのために用いる水もしくは湯の温度は、通常、5〜95℃、好ましくは20〜80℃である。水の温度が高すぎると、もう一方の成分であるEVOH(A)が軟化し、明確な凹凸が形成されにくくなるおそれがある。一方、水の温度が低すぎると、水溶性樹脂(B)の溶解除去に長時間を要したり、除去が不完全になって、やはり明確な凹凸が形成されにくくなったりするおそれがある。ただし、上記水溶性樹脂(B)の溶解除去は、複合繊維全体において完全になされる必要はなく、少なくとも繊維表面において水溶性樹脂(B)が除去されて、EVOH(A)が海成分、水溶性樹脂(B)が島成分である海島構造のうち、EVOH(A)の部分が凸部として残って繊維表面に凹凸が形成されていればよい。

0078

複合繊維から予め水溶性樹脂(B)を溶解除去するための処理方法としては、特に限定されず、複合繊維を熱水温水等の水中に浸漬する方法、複合繊維に水をスプレー等で噴射する方法等をあげることができる。処理に用いる水は、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。

0079

以下、本発明の実施例を、比較例とともに具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「%」「部」とあるのは、重量基準を意味する。

0080

〔材料〕
実施例1、比較例1、2で用いた材料の詳細を以下に示す。
・EVOH1:
エチレン含有量32モル%、MFR12g/10分(2160g、210℃)、
ケン化度99.5モル%以上
・水溶性樹脂1(側鎖に1,2−ジオール構造単位を有する変性PVA1):
1,2−ジオール構造単位の含有量6モル%、重合度1200、
MFR0.1g/10分(2160g、230℃)、ケン化度99モル%
・水溶性樹脂2(側鎖に1,2−ジオール構造単位を有する変性PVA2):
1,2−ジオール構造単位の含有量6モル%、重合度450、
MFR8g/10分(2160g、230℃)、ケン化度99モル%

0081

〔水溶性樹脂1(変性PVA1)の製造方法〕
還流冷却器滴下漏斗撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール120部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン87.6部(全仕込み量の73%、6モル%対仕込み酢酸ビニル)、アゾビスイソブチロニトリルを0.07モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン32.4部(全仕込み量の27%)を7時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が72%となった時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを加え、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去して、PVA系樹脂のメタノール溶液を得た。

0082

ついで、該溶液をメタノールで希釈して濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を、PVA系樹脂中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して、12ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するに伴ってケン化物が析出して、粒子状となった時点で固液分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中、70℃で12時間乾燥し、変性PVA系樹脂1である水溶性樹脂1を得た。

0083

得られた水溶性樹脂1のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび残存3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量分析を行ったところ、99モル%であり、平均重合度はJIS K6726に準じて分析を行ったところ1200であった。また、1,2−ジオール構造を含有する側鎖の導入量は、1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6モル%であった。

0084

〔水溶性樹脂2(変性PVA2)の製造方法〕
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル400部(全仕込み量の40%)、メタノール74g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン48部(全仕込み量の40%、6モル%対仕込み酢酸ビニル)、アゾビスイソブチロニトリル0.068モル%(対仕込み酢酸ビニル)を投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに酢酸ビニル、および3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの残量を13.5時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が91%となった時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを加え、重合を終了した。それ以外は、上記の製法を同様にして、変性PVA系樹脂2である水溶性樹脂2を得た。

0085

得られた水溶性樹脂2のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび残存3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99モル%であり、平均重合度はJIS K6726に準じて分析を行ったところ450であった。また、1,2−ジオール構造を含有する側鎖の導入量は、1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6モル%であった。

0086

〔実施例1〕
EVOH1のペレットと水溶性樹脂1の粉末とを質量比80/20でドライブレンドし、これを二軸押出機テクノベル社製、KZW15−60)により、下記温度パターンで溶融混練することより、EVOH1/水溶性樹脂1のアロイペレットを得た。
<温度パターン>
C1:130℃、 C2:210℃、 C3:230℃、 C4:230℃、
C5:230℃、 C6:230℃、 C7:230℃、 C8:220℃、
D:220℃

0087

得られたアロイペレットを、メルトスピニングテスター(富士フィルター工業社製、MST−CII)を用い、下記温度パターンで溶融紡糸を行うことにより、目的とする複合繊維(繊維径350μm:1160デシテックス)を作製した(以下の例についても同じ)。
<温度パターン>
C1:200℃、 C2:210℃、 D:210℃

0088

〔比較例1〕
EVOH1のペレットのみを用い、実施例1と同様にして、EVOH繊維を作製した。

0089

〔比較例2〕
EVOH1のペレットと水溶性樹脂2の粉末とを質量比80/20でドライブレンドし、これを二軸押出機(テクノベル社製、KZW15−60)により、実施例1と同じ温度パターンで溶融混練することより、EVOH/水溶性樹脂2のアロイペレットを得た。このアロイペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融紡糸を行うことにより、目的とする複合繊維を得た。

0090

得られた実施例1品、比較例1、2品の特徴を、下記の表1にまとめて示す。

0091

0092

なお、上記実施例1、比較例2において、下記の方法に従って、複合繊維を溶融紡糸する前の、組み合わせる樹脂材料同士の溶融粘度比を求めた。また、上記実施例1、比較例1、2において、下記の方法に従って、それぞれの繊維表面の状態を観察して官能評価するとともに、繊維表面において、アスペクト比10以下の島成分の面積が、繊維表面の島成分の全面積に占める割合Pを、前述の方法にしたがって求めた。さらに、上記実施例1、比較例1、2において、後記の方法に従って、セメントとの接着強度を測定した。それらの結果を後記の表2に併せて示す。

0093

〔溶融粘度比〕
キャピログラフ(東洋精機製作所社製、1B PMD−C)を用い、せん断速度912sec−1、210℃における各樹脂の溶融粘度を測定した。そして、水溶性樹脂の粘度の対数を、EVOH1の粘度の対数で除した値を溶融粘度比とした。この値が大きいほど両者の粘度差が大きいことを意味する。

0094

〔繊維表面の観察〕
各繊維(繊維径350μm)を60℃の温水に浸し、3時間超音波処理を施して繊維表面の水溶性樹脂を溶解させた後、乾燥させた。そして、処理を施した繊維の表面をSEM(日本電子社製、JSM−6060LA)にて観察した。なお、図3は、上記SEMによる実施例1の拡大写真(倍率:2000倍)である。図4は、同じく比較例1の拡大写真(倍率:2000倍)、図5は、同じく比較例2の拡大写真(倍率:2000倍)である。

0095

〔セメントとの接着強度測定
セメント粉末(宇部三菱セメント社製、オイルウェルセメント)と水とを、質量比75/25で混合したセメントスラリーを用意した。そして、管径1cm、長さ3cmのサンプル管に、深さ2cmになるように上記セメントスラリーを加えたのち、実施例1、比較例1、2の繊維(繊維径350μm)1本を、それぞれサンプル管に対し垂直に挿入してセメントスラリーに浸漬(セメント/繊維接触長さは2cm)させ、室温23℃にて4日間静置してセメントを固化させた。そして、オートグラフ島津製作所社製、AG−IS)の下部チャックにサンプル管を、上部チャックに繊維を固定し、5mm/minの速度で引張試験を実施した。変位2mmまでに検出された力の最大値を、セメントと繊維の接着強度とした。

0096

実施例

0097

上記の結果から、実施例1品は、繊維表面に、アスペクト比10以下の島成分に由来する複雑な凹凸形状が形成されており、このような繊維表面を形成し得る複合繊維をコンクリート用補強材として用いた場合には、コンクリートと高い接着強度を呈することがわかる。これに対し、比較例1品は、繊維表面に凹凸が形成されていない。そのため、コンクリート用補強材として用いた場合、実施例1品に比べてコンクリートとの接着強度が劣っている。また、比較例2品は、島成分に由来する繊維表面の凹部の殆どが、繊維の長さ方向に筋状に延びた形状(アスペクト比が10を超えた形状)で、その凹凸が浅いため、凹凸によるアンカー効果は期待できないと思われる。接着強度も、比較例1品に比べると高いが、実施例1品と比べるとやはり劣っている。

0098

本発明は、水系材料中での良好な分散性とこれを分散含有させる相手に対する高い接着強度を発揮しうる複合繊維として、またその複合繊維を用いた水硬性材料用補強材等として、広く利用することができる。

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