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技術 2相ステンレス継目無鋼管の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 佐々木俊輔勝村龍郎牛田裕己加藤康
出願日 2015年3月17日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2015-052960
公開日 2016年9月29日 (4年3ヶ月経過) 公開番号 2016-172891
状態 特許登録済
技術分野 物品の熱処理 鋼の加工熱処理
主要キーワード 焼入れ焼戻し熱処理 最終熱間 エネルギー価格 中空素材 集合組織化 装置負荷 肉厚中心 加熱炉温度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16.0〜35.0%、Ni:3.0〜12.0%、Mo:5.0%以下、Al:0.1%以下、N:0.5%以下、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1100℃以下の温度域で施す異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

概要

背景

近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田深層油田)や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田や、さらには厳しい気象環境の極における油田やガス田等において、エネルギー資源開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される鋼材には、高強度で、かつ優れた耐食性耐サワー性)や、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた材質を有することが要求されている。また、鋼管肉厚薄肉から厚肉まで様々なものが要求されている。

従来から、炭酸ガスCO2、塩素イオンCl−等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する鋼材として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が多く使用されている。しかし、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼はサワー環境において十分な耐食性を持たないため、最近ではC量を低減し、Cr量Ni量を増加させた2相ステンレス鋼の使用も拡大している。

例えば、特許文献1には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、mass%で、C:0.005〜0.050%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管を、850℃以上の温度に再加熱し空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことにより、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さが654MPa以上の油井用高強度ステンレス鋼管を得ることができるとしている。これにより、高強度で、CO2やCl−を含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかも−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有する鋼管であるとしている。

概要

表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供する。質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16.0〜35.0%、Ni:3.0〜12.0%、Mo:5.0%以下、Al:0.1%以下、N:0.5%以下、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1100℃以下の温度域で施す異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

目的

本発明は、表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

熱間加工温度域フェライト相オーステナイト相を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16.0〜35.0%、Ni:3.0〜12.0%、Mo:5.0%以下、Al:0.1%以下、N:0.5%以下、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1100℃以下の温度域で施すことを特徴とする表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

請求項2

前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3.0%以下、Ti:0.1%以下、V:3.0%以下、Zr:0.5%以下、W:3.5%以下、Cu:3.5%以下、REM:0.05%以下、B:0.01%以下、Ca:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

請求項3

前記熱間加工を施す熱間加工装置として、穿孔圧延装置以降のいずれかに傾斜圧延機を配設し、該傾斜圧延機を用いて外表面温度1100℃以下の温度で断面減少率10%以上の圧延を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、継目無鋼管の製造方法に係り、とくに表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法に関する。なお、表面性状に優れたとは圧延後の素管表面に深さ0.5mm以上の疵が5個以下であり、異方性が小さいとは、−40℃におけるシャルピー試験での鋼管長手方向の吸収エネルギー値が鋼管周方向の吸収エネルギー値の1.5倍以下のものをいう。

背景技術

0002

近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田深層油田)や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田や、さらには厳しい気象環境の極における油田やガス田等において、エネルギー資源開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される鋼材には、高強度で、かつ優れた耐食性耐サワー性)や、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた材質を有することが要求されている。また、鋼管肉厚薄肉から厚肉まで様々なものが要求されている。

0003

従来から、炭酸ガスCO2、塩素イオンCl−等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する鋼材として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が多く使用されている。しかし、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼はサワー環境において十分な耐食性を持たないため、最近ではC量を低減し、Cr量Ni量を増加させた2相ステンレス鋼の使用も拡大している。

0004

例えば、特許文献1には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、mass%で、C:0.005〜0.050%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管を、850℃以上の温度に再加熱し空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことにより、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さが654MPa以上の油井用高強度ステンレス鋼管を得ることができるとしている。これにより、高強度で、CO2やCl−を含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかも−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有する鋼管であるとしている。

先行技術

0005

特許第5109222号公報

発明が解決しようとする課題

0006

高深度の油井に用いられる部材用鋼管として、最近では、2相ステンレス鋼管も多用されるようになっている。2相ステンレス鋼管の製造においては、多くの場合において熱間加工中もフェライト相とオーステナイト相の2相域状態であることが多く、加熱保持温度や加熱時間よって相分率が異なるが、特に加熱時、穿孔圧延時の高温域ではフェライト(以下、δフェライトともいう)の相分率が高く、圧延が進むにつれて温度が低下し、オーステナイトの相分率が増加する。フェライト粒高温保持時での粒成長が早く、初期結晶粒径や熱間加工により分断した結晶粒成長粗粒化が起こりやすい。粗粒化を生じた組織は熱間加工時変形能を悪化させる。また、特に厚肉材では肉厚中心部に歪を付与しにくいため再結晶によるフェライト粒の分断ができず、高温加熱熱間圧延中加工発熱により高温に保持された際に粗大化した粒が集合組織として製品時に残存しやすい。熱間加工中に再結晶を生じずに連結したフェライト粒はき裂伝播経路となるため、加熱時、圧延時にフェライト粒が粗大化した場合、または、フェライト相の多い高温で圧延され、歪が不足し、再結晶をおこさなかった鋼管における肉厚中央部(低歪部)では低温靭性が低下する。また、圧延方向に展伸し、集合組織化した2相ステンレス鋼は異方性を生じるため、鋼管長手方向と周方向で機械的特性が異なる。異方性を生じた鋼管は実使用環境で生じる様々な方向からの負荷や加工に対して一部で弱くなる可能性があるため、好ましくない。そのため、2相域で熱間圧延を行う2相ステンレス鋼管の製造においては熱間圧延条件やその後の熱処理における温度管理を適切なものにしなければ所望の特性が得られない。

0007

特許文献1に記載された技術は、素材の高温加熱時や熱間加工時の温度管理についての言及は無い。また対象としている鋼管も高々肉厚12.7mmまでであり、肉厚15mmを超えるような厚肉鋼管についての言及はない。とくに、特許文献1に記載された技術では、高温加熱時や熱間圧延中の温度管理による鋼管の圧延疵抑制による製造安定性や特性向上、とくに異方性や低温靭性の向上についての言及はない。

0008

かかる従来技術の状況に鑑み、本発明は、表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、2相ステンレス鋼材の製品組織に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、熱間圧延による圧延疵の発生と異方性の惹起を抑制するのに最も有効な方法は、加熱温度最終圧延温度を制限することであるということに思い至った。

0010

そこで、熱間単軸引張試験機を使用し、熱間でδフェライト相とオーステナイト相を含む2相域となる2相ステンレス鋼を加熱し、所定の温度で熱間引張した際の熱間加工性調査した。図2は、2相ステンレス鋼をδAまたはδA−100℃に加熱し、600〜3600s間保持してから1100℃まで冷却し、その後破断まで引っ張った際の断面減少率を比較した結果である。図2では、δA−100℃で60min間保持した際の断面減少率を1とし、断面減少率を指数化して比較した。図2から明らかなように、加熱温度がδAの場合はδA−100℃で60min間保持した場合と比較して熱間加工性が低下した。また、δA−100℃で60minより短い時間保持された場合では断面減少率が増大し、熱間加工性が向上した。

0011

熱間でδフェライト相を含む2相域となる2相ステンレス鋼においては、通常、高温域では、δフェライト相の相分率が上昇し、高温域で且つ長時間保持するとδフェライト結晶粒が急激に粒成長する。一方で、オーステナイト相が残存する2相域ではオーステナイト相により粒成長が阻止されδフェライト結晶粒の粒成長が抑えられる。すなわち、(δA−100℃)以上の高温域では、オーステナイト相分率が減少し、δフェライト結晶粒の粒成長が生じ、特に、δフェライト相単相となる高温域ではより短時間でδフェライト結晶粒の粒成長が生じる。つまり、粒成長した組織は熱間加工中に粒界がき裂の伝播経路となりやすいことや、相変態時に排出された元素が粒界に偏析し、熱間加工性の低下が生じたと考えられる。

0012

また、フェライト系ステンレス鋼に代表される熱間圧延中にフェライト相を多く含む材料は、圧延中に再結晶による組織微細化が難しく異方性の強い集合組織を生じやすい。そのため組織を微細化するには適切な加工温度で大きな歪を付加することが必要となる。2相ステンレス鋼においても、上述した通り、高温での加工ではδフェライト相が多く存在するため、熱間加工によって集合組織が発達し、最終製品時に異方性を生じやすい。また、加熱時にδフェライト粒が粗大化した場合も、その後の圧延で粗大なフェライト粒を分断し難いことから、加熱温度を高くすることは製品の特性にとって好ましくない。そのため、熱間加工温度を低下させ、相対的に熱間強度が高いオーステナイト相への変態を待った上で熱間加工を行うことで、相対的に強度の低いδフェライト相に歪を集中し、組織を微細化することが重要であることに思い至った。さらに、熱間加工による歪は大きいほうが好ましく、また、マンドレル圧延の様に一方向(圧延方向)への展延伸加工よりもエロンゲータに代表されるような傾斜圧延による付加的せん断歪を与えたほうが、より微細で異方性の少ない製品を得られることがわかった。

0013

そこで、更なる研究を行ない、2相ステンレス継目無鋼管の熱間圧延疵の発生と異方性の惹起を抑制するには、図1に示す継目無鋼管製造プロセスにおいて加熱装置1で鋼素材を加熱し、熱間加工する際に、加熱、熱間加工中の前記鋼素材の最高温度昇温過程でδフェライト相単相になる温度(δA)を超えないようにするとともに、前記鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上となる時間を3600s以下とし、且つ、熱間加工装置2による最終熱間加工を1100℃以下の温度で終了することでフェライト粒を細粒に制御でき、熱間加工疵を抑制でき、その後、適切な焼入れ焼戻し熱処理を加えることでステンレス継目無鋼管の肉厚中心位置においても異方性の少ない製品にできるという知見を得た。

0014

本発明は、かかる知見に基づき、更なる検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)熱間加工温度域でフェライト相とオーステナイト相を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16.0〜35.0%、Ni:3.0〜12.0%、Mo:5.0%以下、Al:0.1%以下、N:0.5%以下、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程でδフェライト相単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1100℃以下の温度域で施すことを特徴とする表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(2)前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:3.0%以下、Ti:0.1%以下、V:3.0%以下、Zr:0.5%以下、W:3.5%以下、Cu:3.5%以下、REM:0.05%以下、B:0.01%以下、Ca:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(3)前記熱間加工を施す熱間加工装置として、穿孔圧延装置以降のいずれかに傾斜圧延機を配設し、該傾斜圧延機を用いて外表面温度1100℃以下の温度で断面減少率10%以上の圧延を施すことを特徴とする(1)または(2)に記載の表面性状に優れ、異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

発明の効果

0015

本発明によれば、圧延疵が少なく異方性の小さい2相ステンレス継目無鋼管を、容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、初期組織の粗大化を防ぐことで、比較的少ない加工量でも2相ステンレス継目無鋼管のフェライト粒径を微細に保つことができ、圧延疵の抑制と異方性の抑制が可能であることから肉厚中心部の加工量を大きくすることができない厚肉鋼管においても、肉厚中心部も異方性が小さい、低温靭性の優れた製品が得られる効果がある。

図面の簡単な説明

0016

継目無鋼管を製造するプロセスを示す図である。
加熱温度が熱間加工性に与える影響を示す図である。

0017

本発明に係る継目無鋼管は、図1に示す加熱装置1と熱間加工装置2とをこの順に配設した装置列を用いて、前記加熱装置1で鋼素材を加熱し、その後熱間加工工程を経て製造される。

0018

本発明で使用する加熱装置1は、鋳片、鋼片等の鋼素材を所定温度に加熱できる加熱炉であればよく、とくに限定する必要はない。例えば、回転炉床式加熱炉ウォーキングビーム式加熱炉等の常用の加熱炉がいずれも適用できる。また、誘導加熱方式の加熱炉としてもよい。

0019

本発明で使用する熱間加工装置2は、通常、鋼素材を所定寸法の継目無鋼管とする場合に適用する熱間加工装置がいずれも適用できる。例えば、穿孔圧延装置、および縮径圧延矯正圧延等の通常公知の圧延装置が例示できる。好ましい装置列の一例を図1に示す。

0020

熱間加工装置2の一つである穿孔圧延装置21は、加熱された鋼素材に穿孔圧延を施し中空素材とすることができる穿孔圧延装置であればよく、例えば、バレル形ロールコーン型ロール等を用いるマンスマン傾斜式穿孔機熱間押出式穿孔機等の、通常公知の穿孔圧延装置がいずれも適用できる。また、熱間加工装置2の一つである圧延装置22は、中空素材に加工を施し所定形状の継目無鋼管とすることができる装置であればよく、目的に応じて、例えば、エロンゲータ221、穿孔された中空素管を薄く長く延ばすプラグミル222、素管内外表面を滑らかにするリーラ(図示せず)、所定寸法に整えるサイジングミル223の順で配置された圧延装置、あるいは中空素管を所定寸法の鋼管とするマンドレルミル(図示せず)、若干の圧下を行ない外径、肉厚を調整するレデューサ(図示せず)を配置した圧延装置等の、通常公知の熱間加工装置がいずれも適用できる。なお、より好ましくは、穿孔圧延装置21以降の熱間圧延において、1100℃以下の温度でエロンゲータ221に代表される傾斜タイプの圧延機を用いると、付加的せん断歪が多く加わるため、組織の細粒化に有利である。

0021

本発明に係る製造方法では、加熱装置1による加熱および熱間加工装置2による熱間加工工程において、鋼素材(以下、熱間加工工程では被加工材ともいう)の温度がδA(昇温過程でδフェライト相単相となる温度)を超えないようにする。鋼素材(被加工材)の温度がδフェライト相単相域になると、隣り合うフェライト結晶粒の間に存在した異なる結晶構造を持つ第2相が無くなり、隣り合うフェライト粒同士が原子再配列のみで容易に粒成長を開始する。そのため、鋼素材(被加工材)の最高到達温度をδA以下とした。なお、エネルギーコスト低減の観点から好ましくは(δA−50℃)以下である。

0022

一方、鋼素材(被加工材)の最高到達温度が1000℃を下回ってその後の穿孔圧延に供されると、δフェライトより強度の高い第2相の分率が大きくなりすぎて、圧延負荷が増大し、焼き付き等の原因となる。そのため、鋼素材(被加工材)の最高到達温度の下限を1000℃に限定した。なお、好ましくは1100℃以上である。

0023

また、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間が3600sを超えて長くなると、δフェライト粒の成長抑制に有効なδフェライトの粒界に存在するオーステナイトなどの第2相が減少し、δフェライト粒の成長が容易に生じる。すなわち、δフェライト粒界、またはδフェライト粒界の3重点に存在し、δフェライトの粒成長を抑制するのに重要な役割を有する第2相の量、つまり分率は該第2相を形成する元素の拡散律速されるため、温度上昇中の鋼素材(被加工材)の前記第2相の分率は平衡状態でのその分率より大きくなっている。しかし、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間が長くなると、第2相を形成する元素の拡散が追いつき、第2相の分率が減少することに加え、特にδフェライトの粒成長抑制に有効なδフェライト粒界に存在する第2相が減少し、残存した第2相もδフェライト粒界の3重点に球状の形態で偏在するようになるため、隣り合うδフェライト粒の界面同士が接触し、容易に粒成長を起こし、熱間加工性低下とその後の加工で細粒化が困難となる。そのため、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下に限定した。なお、好ましくは900s以下である。

0024

加熱された鋼素材は、ついで、熱間加工装置で、所定の形状に加工される。この際、最終の熱間加工を被加工材の表面の平均温度が1100℃以下まで低下した後に終了する。

0025

熱間加工終了温度が1100℃超えでは、フェライト相分率が高く、加工による組織の微細化が困難になり、低温靭性の低下や異方性が顕著となる。このため、最終熱間加工温度を1100℃以下と限定する。なお、最終熱間加工温度が低温になりすぎると変形抵抗の増大による装置負荷の増大や疵の発生につながるため、好ましくは、最終熱間加工温度は900〜1100℃である。

0026

なお、δA(昇温過程でδフェライト単相となる温度)は熱平衡計算により算出しても良いし、加熱中の熱膨張曲線を測定し、δフェライト単相となった際に生じる熱膨張曲線の変曲点を測定しても良い。

0027

次に、本発明に係る高強度2相ステンレス継目無鋼管の組成限定理由について説明する。

0028

本発明の適用により効果が発揮される鋼素材は、比較的低温でδフェライト相単相となり、かつ、常温における製品時にδフェライト相が残存する組成を有する鋼素材であり、
質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Ni:3.0〜12.0%、Cr:16.0〜35.0%、Mo:5.0%以下、Al:0.1%以下、N:0.5%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる二相ステンレス鋼組成とする。

0029

まず、鋼素材の好ましい組成の限定理由について説明する。なお、とくに断わらないかぎり、質量%は単に%で記す。

0030

C:0.05%以下
Cは、強度を増加させる元素であるが、耐食性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は製造コストの高騰を招く。このため、本発明では、0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。

0031

Si:2.0%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度を向上させる元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、2.00%を超える多量の含有は、延性の低下や、金属間化合物析出を助長し、耐食性を低下させる。このため、Siは2.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.5〜1.5%である。

0032

Mn:5.0%以下
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、2相組織の分率を適正に調整し、2相ステンレス鋼材の耐食性と加工性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有が望ましいが、5.0%を超える含有は、熱間加工性、耐食性を低下させる。このため、Mnは5.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.5〜2.0%である。

0033

P:0.05%以下
Pは、不純物として混入する元素であり、結晶粒界等に偏析しやすく、耐食性や熱間加工性の低下を招くため、できるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。しかし、過度の低減は、材料コストの高騰を招くため、0.002%以上とすることが好ましい。このようなことから、Pは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。

0034

S:0.03%以下
Sは、Pと同様に、不純物として混入する元素であり、鋼中では硫化物系介在物として存在し、延性、耐食性、熱間加工性を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.03%までは許容できる。しかし、過度の低減は、材料コストの高騰を招くため、0.002%以上とすることが好ましい。このようなことから、Sは0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。

0035

Ni:3.0〜12.0%
Niは、オーステナイト安定化元素であり、2相組織の分率を適正に調整し、2相ステンレス鋼材の耐食性と加工性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、3.0%以上の含有を必要とする。一方、12.0%を超える含有は、過度のオーステナイト相の増加を招き、所望の2相組織を維持することが困難となる。このため、Niは3.0〜12.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは5.0%超9.0%以下である。

0036

Cr:16.0〜35.0%
Crは、耐食性を向上させる元素であり、かつフェライト安定化元素であってフェライト相とオーステナイト相の2相組織の分率を決める主要な元素である。このような効果を得るためには16.0%以上の含有を必要とする。一方、35.0%を超えて多量に含有すると、σ相χ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性の低下を招く。このため、Crは16.0〜35.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは18.0%超28.0%以下である。

0037

Mo:5.0%以下
Moは、耐食性を向上させる元素であり、このような効果を得るためには、1.0%以上含有することが望ましい。一方、5.0%を超えて含有すると、金属間化合物の析出を助長し、耐食性、熱間加工性を低下させる。このため、Moは5.0%以下に限定した。なお、好ましくは2.0〜4.0%である。

0038

Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて多量に含有すると、酸化物系介在物量が増加し、清浄度の低下を招く。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.001〜0.050%である。

0039

N:0.5%以下
Nは、強力なオーステナイト安定化元素であり、耐食性向上にも寄与する。このような効果を得るためには、0.050%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超えて含有すると、過度のオーステナイト相の増加を招き、所望の2相組織を維持することが困難となる。このため、Nは0.5%以下に限定した。

0040

上記した組成に加えてさらに、Nb:3.0%以下、Ti:0.1%以下、V:3.0%以下、Zr:0.5%以下、W:3.5%以下、Cu:3.5%以下、REM:0.05%以下、B:0.01%以下、Ca:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有してもよい。

0041

Nb、Ti、V、Zrは、いずれも強度と靭性の向上および耐食性の向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上、選択して含有することができる。このような効果を得るためには、Nb:0.01%以上、Ti:0.01%以上、V:0.01%、Zr:0.01%以上含有することが望ましい。一方、Nb:3.0%、Ti:0.1%、V:3.0%、Zr:0.5%を超えて含有しても、靭性、熱間加工性が低下する。このため、含有する場合には、Nb:3.0%以下、Ti:0.1%以下、V:3.0%以下、Zr:0.5%以下に限定することが好ましい。

0042

W、Cu、REMはいずれも、耐食性向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上、選択して含有することができる。このような効果を得るためには、W:0.01%以上、Cu:0.01%以上、REM:0.005%以上、含有することが望ましい。一方、W:3.5%、Cu:3.5%、REM:0.05%、を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、含有する場合には、W:3.5%以下、Cu:3.5%以下、REM:0.05%以下に、それぞれ限定することが好ましい。

0043

また、B、Caはいずれも熱間の疵生成の抑制に寄与する元素であり、上記した組成に加えてさらに、1種または2種選択して含有することができる。このような効果を得るためには、B:0.0001%、Ca:0.001%以上含有することが望ましい。一方、B:0.01%、Ca:0.1%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、含有する場合には、B:0.01%以下、Ca:0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。

0044

上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O(酸素):0.0050%以下が許容できる。

0045

上記した組成を有する鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はない。転炉電気炉等、常用の溶製炉を使用して、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で、鋳片(丸鋳片)としたものを鋼素材とすることが好ましい。なお、鋳片を熱間圧延して所定寸法の鋼片として鋼素材としてもよい。また、造塊−分塊圧延法で鋼片とし、鋼素材としてもなんら問題はない。

0046

なお、上記した説明は、加熱装置による加熱温度、保持時間、および熱間加工装置による熱間加工時の鋼素材(被加工材)の最高到達温度、高温域での保持時間、および最終熱間加工を施す温度について説明したが、最終熱間加工後に鋼管を熱処理等で1000℃以上の温度に昇温する場合においても粒成長を抑制する観点から前記本発明に係る手段(1)に記載の限定条件を適用し、最高到達温度と保持時間を限定することが望ましい。例えば、本発明の製造方法で製造された継目無鋼管に焼入れ、焼戻し熱処理を施す場合においても、1000℃以上の温度へ昇温する際、加熱温度と保持時間が前記(1)を満たす条件で加熱・保持することで粒成長が抑制でき所望の機械的特性を得られることを確認している。

0047

また、温度の測定は、直接接触式、または放射温度計に代表される非接触式温度計を用いて行えば良い。また、測定したタイミングでの温度から伝熱解析等で導かれる最高到達温度と温度履歴によって温度管理を行っても構わない。また、温度制御の方法も加熱炉温度管理や圧延速度制御、冷媒を用いた方法のいずれを利用しても良い。

0048

上記した製造方法で得られる2相ステンレス継目無鋼管は、0.5mm以上の外面疵が5個以下でかつ、上記した組成と、δフェライト相とオーステナイト相からなる組織とを有する2相ステンレス継目無鋼管となる。また、このような組織を有する2相ステンレス継目無鋼管は、肉厚中心位置でのシャルピー衝撃試験試験温度:−40℃での吸収エネルギー(vE−10)が60J以上となる優れた低温靭性とシャルピー試験の鋼管長手方向の吸収エネルギー値と鋼管周方向の吸収エネルギー値の比率が1.5倍以下である異方性の小さい高強度2相ステンレス継目無鋼管となる。

0049

つぎに、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。

0050

表1に示す組成の溶鋼を、電炉で溶製し、孔型圧延を行い、径70mmの丸鋼片(鋼素材)とした。次に、図1に示す装置列を利用して、これら丸鋼片を加熱装置1に装入し、加熱した後、熱間加工装置2(穿孔圧延装置)で熱間加工(肉厚13.5mm)を施し、その後、更にマンドレル圧延、もしくはエロンゲータ圧延を行い肉厚を11.5mm(減肉量15%)とし、その後放冷して継目無鋼管を得た。得られた継目無鋼管に熱処理を施したのち、試験片採取し、衝撃試験と圧延疵の有無を確認した。なお、加熱、熱間加工中の鋼素材(被加工材)の温度測定および得られた継目無鋼管の試験方法はつぎの通りとした。
(1)温度測定
継目無鋼管製造時の温度は加熱炉での温度、圧延終了直後鋼管内面温度、および最終熱間加工温度の3点を測定した。なお、加熱および熱間加工中の温度履歴については接触式熱電対による測定温度を基に伝熱解析により導いた。また、δフェライト単相になる温度(δA)については予め加熱過程の熱膨張曲線を測定し、δフェライトへの変態が完了し、膨張曲線曲率が変化した点を使用した。
各丸鋼片(鋼素材)のδA、および、各鋼管製造時の鋼素材の最高到達温度、(δA−100℃)以上の温度域における保持時間、最終加工温度を表2に示す。

0051

(2)衝撃試験
得られた継目無鋼管の肉厚中心から、鋼管周方向(C方向)と鋼管長手方向(L方向)が試験片長手方向となるように、Vノッチ試験片(ハーフサイズ)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−40℃における吸収エネルギー(vE−40)を測定した。なお、試験片は各3本とし、それらの平均値を当該鋼管の吸収エネルギーとした。吸収エネルギーが60Jを超えたものを○とし、さらに(L方向の吸収エネルギー)/(C方向の吸収エネルギー)の値を調べ異方性について調査した。
(3)疵調査
得られた継目無鋼管の外面及び内面について、疵の有無を確認し、個数と、切り出しによる深さの調査を行った。疵の深さが0.5mm以下でかつ個数が5個以下を○とし、それ以上の深さ、個数がある場合を×で示した。

0052

得られた結果を表3に示す。

0053

0054

0055

実施例

0056

本発明で提案した加熱、熱間加工条件を適用し、好ましい製造条件で製造された継目無鋼管(ここでは、本発明例という)はいずれも、肉厚中心位置においても組織の微細化と異方性の低減ができ、試験温度:−40℃における吸収エネルギーが60J以上の優れた低温靭性を有している。また、鋼管の外面及び内面の圧延疵についても有効に低減できた。一方、本発明の加熱、熱間加工条件を利用しないため、好ましい製造条件の範囲を外れる継目無鋼管は、外面及び内面に圧延疵が発生し、組織の微細化、異方性の低減が確保できていない。

0057

1加熱装置
2熱間加工装置
21穿孔圧延装置
22圧延装置
221エロンゲータ
222プラグミル
223 サイジングミル

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