図面 (/)

技術 動作安定機構、ムーブメントおよび機械式時計

出願人 セイコーインスツル株式会社
発明者 川内谷卓磨中嶋正洋新輪隆幸田雅行
出願日 2015年12月9日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-240647
公開日 2016年9月23日 (4年3ヶ月経過) 公開番号 2016-170162
状態 特許登録済
技術分野 機械時計
主要キーワード 組付け箇所 固定車 三角カム 定力ばね 駆動伝達効率 軸受プレート 噛合力 長手方向中央側
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年9月23日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題

歩度精度を高めつつ、小型化できる動作安定機構ムーブメントおよび機械式時計を提供する。

解決手段

互いに回転可能に設けられた外キャリッジ32および内キャリッジ33と、これら外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に設けられ、外キャリッジ32に対して内キャリッジ33が回転するように、この内キャリッジ33に回転力を付与する定力ばねと、外キャリッジ32に設けられるストップ車69と、内キャリッジ33の回転を受け、ストップ車69に対して係合解除動作を行うストッパ73と、を備え、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが交差している。

概要

背景

機械式時計歩度精度を決定する主要な機構として、調速機および脱進機がある。調速機は、てんぷおよびひげぜんまいから成る。てんぷは、ひげぜんまいのばね力によって、一定周期振動する。てんぷの重心位置は、てん真の軸心上に位置していることが望ましい。てん真の軸心とてんぷの重心位置とがずれていると、時計立姿勢にあるとき、偏心したてんぷの重心によって不要なトルクが発生してしまう。このため、重力がかかる方向によって歩度精度に誤差が生じてしまう。なお、このような誤差を立姿勢差という。
また、ひげぜんまいも渦巻状に形成されているので、その形状による特性上、時計が立姿勢にあるとき、重力がかかる方向によって立姿勢差を生じる。このように、機械式時計の調速機は、2つの要因によって立姿勢差を生じる。

このような立姿勢差を解決する機構として、従来から、トゥールビヨン機構(動作安定機構)が知られている。トゥールビヨン機構は、調速機および脱進機を1つのキャリッジ内に配置し、一定の周期でキャリッジを回転させるように構成されている。これにより、重力によって生じる歩度精度の誤差を平均化することができ、立姿勢差を抑制できる。
しかしながら、上記に記載のトゥールビヨン機構は、1つの軸で回転するので、時計が平姿勢にあるときと、立姿勢にあるときとの間に生じる歩度精度の誤差(以下、平立差という)を解消することが困難である。

このため、立姿勢差や平立差を同時に抑制するためのさまざまな技術が提案されている。
例えば、調速機および脱進機を、回転軸の異なる複数のキャリッジで回転させることによって、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。

ところで、調速機は、理想的には一定の振動周期で振動するものであるが、実際には、数々の誤差要因の影響を受けててんぷの振幅が変化し、このてんぷの振動周期が変動してしまう。この振動周期が変化することによって、時計の歩度精度が低下してしまう。
てんぷは、動力ぜんまいのばね力によって振動するので、動力ぜんまいの巻解けによっててんぷの振り角が低下し、てんぷの振動周期が変動してしまう。このようなてんぷの振動周期の変動は、上記に記載のトゥールビヨン機構を用いたとしても解消することが困難である。このため、歩度精度を高めるためには、調速機に一定のエネルギーを供給することが望ましい。

調速機に一定のエネルギーを供給するための機構として、従来から、ルモントワール機構などの定力機構が知られている。そして、この定力機構を、トゥールビヨン機構とは別に設けることにより、歩度精度をさらに高める技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

概要

歩度精度を高めつつ、小型化できる動作安定機構、ムーブメントおよび機械式時計を提供する。互いに回転可能に設けられた外キャリッジ32および内キャリッジ33と、これら外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に設けられ、外キャリッジ32に対して内キャリッジ33が回転するように、この内キャリッジ33に回転力を付与する定力ばねと、外キャリッジ32に設けられるストップ車69と、内キャリッジ33の回転を受け、ストップ車69に対して係合解除動作を行うストッパ73と、を備え、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが交差している。

目的

この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、歩度精度を高めつつ、小型化できる動作安定機構、ムーブメントおよび機械式時計を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

多重に配置され、互いに回転可能に設けられた複数のキャリッジと、前記複数のキャリッジのうち、隣り合う2つの前記キャリッジの間に設けられ、該2つのキャリッジのうちの一方の前記キャリッジに対し、他方の前記キャリッジが回転するように、前記他方のキャリッジに回転力を付与する定力ばねと、前記一方のキャリッジに設けられるストップ車と、前記他方のキャリッジの回転を受け、前記ストップ車に対して係合解除動作を行うストッパと、を備え、前記複数のキャリッジのうち、少なくとも2つの前記キャリッジのそれぞれの回転軸線が交差していることを特徴とする動作安定機構

請求項2

前記一方のキャリッジに、前記ストッパおよび脱進調速機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作安定機構。

請求項3

前記キャリッジを2つ備え、外側に配置された外キャリッジに輪列駆動力が伝達されるように構成されていると共に、前記外キャリッジに前記ストップ車が設けられ、内側に配置された内キャリッジに、前記ストッパおよび前記脱進調速機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動作安定機構。

請求項4

前記脱進調速機構は、前記内キャリッジの回転に伴って、該内キャリッジ上で回転するがんぎ車と、前記がんぎ車の回転に伴って、前記内キャリッジ上で回転振動するてんぷと、を備え、前記てんぷの回転軸線と前記外キャリッジの回転軸線とが交差するように、前記てんぷが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の動作安定機構。

請求項5

前記内キャリッジの回転軸線と、前記てんぷの回転軸線とが交差していることを特徴とする請求項4に記載の動作安定機構。

請求項6

前記内キャリッジの回転軸線、および前記外キャリッジの回転軸線の少なくとも何れか一方の回転軸線上に、前記てんぷの重心が位置していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の動作安定機構。

請求項7

前記内キャリッジの回転軸線上に、前記内キャリッジの重心が位置していることを特徴とする請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項8

前記外キャリッジの回転軸線上に、前記外キャリッジの重心が位置していることを特徴とする請求項3〜請求項7の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項9

前記ストッパは、前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、を備え、前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線に対して交差する方向に設定されており、前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力ベクトルが、前記アームの揺動軸線の方向に沿うように設定されていることを特徴とする請求項3〜請求項8の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項10

前記ストッパは、前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、を備え、前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線の方向に沿うように設定されており、前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力のベクトルが、前記アームの揺動軸線上を通るように設定されていることを特徴とする請求項3〜請求項8の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項11

前記アームは、バランサーを備え、前記アームの揺動軸線上に、前記アームの重心が位置していることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の動作安定機構。

請求項12

前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジの相対回転量規制する規制部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項13

前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、外側の前記キャリッジに、前記定力ばねを巻き上げるための定力ばね巻き上げ車を設け、該定力ばね巻き上げ車に規制板を設ける一方、前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、内側の前記キャリッジに、前記規制板に係合可能な係合ピンを設け、前記規制板および前記係合ピンを、前記規制部として構成したことを特徴とする請求項12に記載の動作安定機構。

請求項14

前記複数のキャリッジは、各々の回転周期が互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の動作安定機構。

請求項15

前記複数のキャリッジとは別に設けられた固定車と、前記ストップ車に一体的に固定されていると共に、前記固定車に噛合されているストップ車駆動車と、を備え、前記固定車の歯数と、前記ストップ車駆動車の歯数は、互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする請求項14に記載の動作安定機構。

請求項16

請求項1〜請求項15の何れか1項に記載の動作安定機構を備えたことを特徴とするムーブメント

請求項17

請求項16に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする機械式時計

技術分野

0001

この発明は、動作安定機構ムーブメントおよび機械式時計に関するものである。

背景技術

0002

機械式時計の歩度精度を決定する主要な機構として、調速機および脱進機がある。調速機は、てんぷおよびひげぜんまいから成る。てんぷは、ひげぜんまいのばね力によって、一定周期振動する。てんぷの重心位置は、てん真の軸心上に位置していることが望ましい。てん真の軸心とてんぷの重心位置とがずれていると、時計立姿勢にあるとき、偏心したてんぷの重心によって不要なトルクが発生してしまう。このため、重力がかかる方向によって歩度精度に誤差が生じてしまう。なお、このような誤差を立姿勢差という。
また、ひげぜんまいも渦巻状に形成されているので、その形状による特性上、時計が立姿勢にあるとき、重力がかかる方向によって立姿勢差を生じる。このように、機械式時計の調速機は、2つの要因によって立姿勢差を生じる。

0003

このような立姿勢差を解決する機構として、従来から、トゥールビヨン機構(動作安定機構)が知られている。トゥールビヨン機構は、調速機および脱進機を1つのキャリッジ内に配置し、一定の周期でキャリッジを回転させるように構成されている。これにより、重力によって生じる歩度精度の誤差を平均化することができ、立姿勢差を抑制できる。
しかしながら、上記に記載のトゥールビヨン機構は、1つの軸で回転するので、時計が平姿勢にあるときと、立姿勢にあるときとの間に生じる歩度精度の誤差(以下、平立差という)を解消することが困難である。

0004

このため、立姿勢差や平立差を同時に抑制するためのさまざまな技術が提案されている。
例えば、調速機および脱進機を、回転軸の異なる複数のキャリッジで回転させることによって、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。

0005

ところで、調速機は、理想的には一定の振動周期で振動するものであるが、実際には、数々の誤差要因の影響を受けててんぷの振幅が変化し、このてんぷの振動周期が変動してしまう。この振動周期が変化することによって、時計の歩度精度が低下してしまう。
てんぷは、動力ぜんまいのばね力によって振動するので、動力ぜんまいの巻解けによっててんぷの振り角が低下し、てんぷの振動周期が変動してしまう。このようなてんぷの振動周期の変動は、上記に記載のトゥールビヨン機構を用いたとしても解消することが困難である。このため、歩度精度を高めるためには、調速機に一定のエネルギーを供給することが望ましい。

0006

調速機に一定のエネルギーを供給するための機構として、従来から、ルモントワール機構などの定力機構が知られている。そして、この定力機構を、トゥールビヨン機構とは別に設けることにより、歩度精度をさらに高める技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

先行技術

0007

国際公開第2004/077171号
欧州特許第1465024号明細書
米国特許第6948845号明細書

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、上述の特許文献3にあっては、機構全体が大型化してしまい、スペースの限られた時計の中に配置してしまうと、他の機構を効率よく配置することが困難になってしまうという課題がある。

0009

そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、歩度精度を高めつつ、小型化できる動作安定機構、ムーブメントおよび機械式時計を提供するものである。

課題を解決するための手段

0010

上記の課題を解決するために、本発明に係る動作安定機構は、多重に配置され、互いに回転可能に設けられた複数のキャリッジと、前記複数のキャリッジのうち、隣り合う2つの前記キャリッジの間に設けられ、該2つのキャリッジのうちの一方の前記キャリッジに対し、他方の前記キャリッジが回転するように、前記他方のキャリッジに回転力を付与する定力ばねと、前記一方のキャリッジに設けられるストップ車と、前記他方のキャリッジの回転を受け、前記ストップ車に対して係合解除動作を行うストッパと、を備え、前記複数のキャリッジのうち、少なくとも2つの前記キャリッジのそれぞれの回転軸線が交差していることを特徴とする。

0011

このように、隣り合う2つのキャリッジの間に定力ばねを配置することで、機構全体を大型化することなく、一方のキャリッジに安定的に回転力を付与することができる。また、複数のキャリッジで構成することにより、平立差を解消することができる。このため、歩度精度を高めつつ、小型な動作安定機構を提供できる。

0012

本発明に係る動作安定機構は、前記一方のキャリッジに、前記ストッパおよび脱進調速機構が設けられていることを特徴とする。

0013

このように構成することで、脱進調速機構が設けられている一方のキャリッジに安定的に回転力を付与することができる。このため、脱進調速機構に伝達される回転トルクを安定させることができ、この結果、脱進調速機構の動作を安定させることができる。

0014

本発明に係る動作安定機構は、前記キャリッジを2つ備え、外側に配置された外キャリッジに輪列駆動力が伝達されるように構成されていると共に、前記外キャリッジに前記ストップ車が設けられ、内側に配置された内キャリッジに、前記ストッパおよび脱進調速機構が設けられていることを特徴とする。

0015

このように構成することで、小型化を図りつつ、脱進調速機構が設けられた内キャリッジに、安定的に回転力を付与することができる。

0016

本発明に係る動作安定機構において、前記脱進調速機構は、前記内キャリッジの回転に伴って、該内キャリッジ上で回転するがんぎ車と、前記がんぎ車の回転に伴って、前記内キャリッジ上で回転振動するてんぷと、を備え、前記てんぷの回転軸線と前記外キャリッジの回転軸線とが交差するように、前記てんぷが配置されていることを特徴とする。

0017

このように、てんぷの回転軸線と外キャリッジの回転軸線とが交差するように配置するということは、外キャリッジの回転中心に、てんぷの回転中心を位置させるということである。このように構成することで、内キャリッジおよび外キャリッジに無駄なスペースができてしまうことを防止できる。このため、確実に動作安定機構を小型化でき、意匠性も向上させることができる。
また、内キャリッジにてんぷが搭載されるので、てんぷに伝達される回転トルクを安定させることができる。この結果、てんぷの振り角の変動を抑制することができる。

0018

本発明に係る動作安定機構は、前記内キャリッジの回転軸線と、前記てんぷの回転軸線とが交差していることを特徴とする。

0019

このように構成することで、外キャリッジと内キャリッジの少なくとも2つのキャリッジを設ければ、てんぷの向きをあらゆる全ての方向に向けさせることができる。このため、できる限り構造を簡素化し、小型化を図りつつ歩度精度を高めた動作安定機構を提供できる。

0020

本発明に係る動作安定機構は、前記内キャリッジの回転軸線、および前記外キャリッジの回転軸線の少なくとも何れか一方の回転軸線上に、前記てんぷの重心が位置していることを特徴とする。

0021

このように構成することで、各キャリッジが回転することによる遠心力を、てんぷに作用しにくくすることができる。このため、てんぷの動作を安定させることができる。

0022

本発明に係る動作安定機構は、前記内キャリッジの回転軸線上に、前記内キャリッジの重心が位置していることを特徴とする。

0023

このように構成することで、内キャリッジを回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。このため、駆動効率を高めることができ、歩度精度を高めることができる。

0024

本発明に係る動作安定機構は、前記外キャリッジの回転軸線上に、前記外キャリッジの重心が位置していることを特徴とする。

0025

このように構成することで、外キャリッジを回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。この結果、外キャリッジによる定力ばねの巻き上げも効率よく行うことができ、定力ばねの巻き上げ量を安定させることができる。よって、駆動効率を高めることができ、歩度精度を高めることができる。

0026

本発明に係る動作安定機構において、前記ストッパは、前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、を備え、前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線に対して交差する方向に設定されており、前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力ベクトルが、前記アームの揺動軸線の方向に沿うように設定されていることを特徴とする。

0027

このように、アームの揺動軸線が、ストップ車の回転軸線に対して交差する方向に設定されている場合において、ストップ車と爪部とが係合した際に生じる噛合力が、内キャリッジに影響を及ぼしてしまうことを防止できる。このため、内キャリッジを回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。

0028

本発明に係る動作安定機構において、前記ストッパは、前記外キャリッジに対して揺動可能に設けられ、前記内キャリッジの回転を受けて揺動するアームと、前記アームに設けられ、前記ストップ車と係脱可能な爪部と、を備え、前記アームの揺動軸線は、前記ストップ車の回転軸線の方向に沿うように設定されており、前記ストップ車と前記爪部とが係合した際に生じる噛合力のベクトルが、前記アームの前記揺動軸線上を通るように設定されている。

0029

このように、アームの揺動軸線が、ストップ車の回転軸線の方向に沿うように設定されている場合において、ストップ車と爪部とが係合した際に生じる噛合力が、内キャリッジに影響を及ぼしてしまうことを防止できる。このため、内キャリッジを回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。

0030

本発明に係る動作安定機構において、前記アームは、バランサーを備え、前記アームの揺動軸線上に、前記アームの重心が位置していることを特徴とする。

0031

このように構成することで、動作安定機構の傾きによって、アーム自身の重力がこのアームの揺動動作に影響を及ぼしてしまうことを防止できる。このため、アームの揺動動作に必要な力を一定に保つことができ、歩度精度をさらに高めることができる。

0032

本発明に係る動作安定機構は、前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジの相対回転量規制する規制部を備えていることを特徴とする。

0033

このように構成することで、定力ばねが所定以上巻解けてしまうことを防止できる。このため、所望のキャリッジに安定的に回転力を付与することができる。

0034

本発明に係る動作安定機構は、前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、外側の前記キャリッジに、前記定力ばねを巻き上げるための定力ばね巻き上げ車を設け、該定力ばね巻き上げ車に規制板を設ける一方、前記定力ばねによって連結されている2つの前記キャリッジのうち、内側の前記キャリッジに、前記規制板に係合可能な係合ピンを設け、前記規制板および前記係合ピンを、前記規制部として構成したことを特徴とする。

0035

このように構成することで、簡素な構造で確実に定力ばねの巻解けを防止できる。よって、動作安定機構を小型化しつつ、歩度精度を確実に高めることができる。

0036

本発明に係る動作安定機構は、前記複数のキャリッジは、各々の回転周期が互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする。

0037

ここで、各キャリッジの回転周期が互いに割り切れる数字に設定されている場合、各キャリッジの何れかに設けられている脱進調速機構(てんぷ)と、その他のキャリッジとの相対姿勢が同じになるタイミングが多くなる。例えば、2つのキャリッジ同士の回転周期が1:1に設定され、一方のキャリッジにてんぷが設けられているとすると、他方のキャリッジが1回転したときにてんぷは同じ姿勢になる。このため、各キャリッジの回転周期を互いに割り切れない数に設定することにより、てんぷが同じ場所で同じ姿勢になるまでの時間が長くなる。よって、重力による影響を分散することができ、より確実に平立差を解消できると共に、回転軸等にかかる応力も分散できる。

0038

本発明に係る動作安定機構は、前記複数のキャリッジとは別に設けられた固定車と、前記ストップ車に一体的に固定されていると共に、前記固定車に噛合されているストップ車駆動車と、を備え、前記固定車の歯数と、前記ストップ車駆動車の歯数は、互いに割り切れない数に設定されていることを特徴とする。

0039

このように構成することで、各キャリッジの回転周期が互いに割り切れる数字に設定されている場合、各キャリッジの何れかに設けられている脱進調速機構(てんぷ)と、その他のキャリッジとの相対姿勢が同じになるタイミングを、簡素な構造で減少できる。

0040

本発明に係るムーブメントは、上記に記載の動作安定機構を備えたことを特徴とする。

0041

このように構成することで、歩度精度を高めつつ、小型化可能なムーブメントを提供できる。

0042

本発明に係る機械式時計は、上記に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする。

0043

このように構成することで、歩度精度を高めつつ、小型化可能な機械式時計を提供できる。

発明の効果

0044

本発明によれば、隣り合う2つのキャリッジの間に定力ばねを配置することで、機構全体を大型化することなく、一方のキャリッジに安定的に回転力を付与することができる。また、複数のキャリッジで構成することにより、平立差を解消することができる。このため、歩度精度を高めつつ、小型な動作安定機構を提供できる。

図面の簡単な説明

0045

本発明の第1実施形態における機械式時計のムーブメント表側の平面図である。
本発明の第1実施形態における機械式時計の概略断面図である。
本発明の第1実施形態における定力装置トゥールビヨンの斜視図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジを一方からみた斜視図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジを他方からみた斜視図である。
図4のA矢視図である。
図5のB矢視図である。
本発明の第1実施形態におけるストップ車駆動車と定力ばね巻き上げ車の固定車への噛合状態を示す斜視図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジを裏側からみた平面図である。
本発明の第1実施形態におけるストップ車とストッパの位置関係を示す斜視図である。
本発明の第1実施形態における内キャリッジを一方からみた斜視図である。
本発明の第1実施形態における内キャリッジを他方からみた斜視図である。
図11のC矢視図である。
図11のD矢視図である。
本発明の第1実施形態における定力ばね巻き上げ車と位相規制プレートとの位置関係を示す説明図である。
本発明の第1実施形態における内キャリッジの一部を取り外した状態の斜視図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態における外キャリッジおよび内キャリッジの動作説明図である。
本発明の第1実施形態におけるストップ車とストッパアンクルとの噛合状態、およびストッパアンクルの挙動を示し、(a)は、ストップ車を軸方向からみた図であり、(b)は、ストップ車を径方向からみた図である。
本発明の第1実施形態におけるストップ車とストッパアンクルとの噛合状態、およびストッパアンクルの挙動を示し、(a)は、ストップ車を軸方向からみた図であり、(b)は、ストップ車を径方向からみた図である。
本発明の第1実施形態におけるストッパアンクルの変形例を示す斜視図である。
本発明の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨンを一方からみた斜視図である。
本発明の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨンを他方からみた斜視図である。
本発明の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨンの変形例を示す斜視図である。
本発明の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨンの変形例を示す側面図である。
本発明の第3実施形態における定力装置付トゥールビヨンを一方からみた斜視図である。
本発明の第3実施形態における定力装置付トゥールビヨンを他方からみた斜視図である。
本発明の第3実施形態におけるストップ車とストッパの位置関係を示す斜視図である。
本発明の第3実施形態におけるストッパアンクルの変形例を示す斜視図である。
本発明の第4実施形態における定力装置付トゥールビヨンを一方からみた斜視図である。
本発明の第4実施形態における定力装置付トゥールビヨンを他方からみた斜視図である。

実施例

0046

次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

0047

(第1実施形態)
(機械式時計)
まず、図1図24に基づいて、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、機械式時計1のムーブメント表側の平面図、図2は、機械式時計1の概略断面図である。
図1図2に示すように、機械式時計1は、ムーブメント10と、このムーブメント10を収納する不図示のケーシングと、により構成されている。

0048

ムーブメント10は、基板を構成する地板11を有している。この地板11の裏側には不図示の文字板が配置されている。なお、ムーブメント10の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント10の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、ここに巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15および裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。

0049

このような構成のもと、巻真12が、回転軸方向に沿ってムーブメント10の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真12を回転させると、不図示のつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。そして、このきち車17が回転することにより、これと噛合う丸穴車20が回転する。そして、この丸穴車20が回転することにより、これと噛合う角穴車21が回転する。さらに、この角穴車21が回転することにより、香箱車22に収容された不図示の主ぜんまいを巻き上げる。

0050

ムーブメント10の表輪列は、上述した香箱車22の他に、二番車25および三番車26により構成されており、香箱車22の回転力を伝達する機能を果している。また、ムーブメント10の表側には、表輪列の回転を制御するための定力装置付トゥールビヨン30が配置されている。

0051

二番車25は、軸部25aと、この軸部25aに固定されたかな部25bおよび歯車部25cと、を備えている。そして、香箱車22に二番車25のかな部25bが噛合されている。この他に、二番車25には、筒かな27と、この筒かな27に取付けられた分針29aと、筒車28と、この筒車28に取り付けられた時針29bと、が設けられている。
このような構成のもと、二番車25が回転すると、この二番車25に軽圧入された筒かな27が同時に回転し、この筒かな27に取り付けられた分針29aが「分」を表示する。また、筒かな27の回転に基づいて不図示の日の裏車の回転を介して筒車28が回転し、この筒車28に取り付けられた時針29bが「時」を表示する。

0052

また、三番車26は、軸部26aと、この軸部26aに固定されたかな部26bおよび歯車部26cと、を備えている。そして、二番車25の歯車部25cに、三番車26のかな部26bが噛合されている。さらに、三番車26の歯車部26cに、定力装置付トゥールビヨン30が噛合されている。

0053

(定力装置付トゥールビヨン)
図3は、定力装置付トゥールビヨン30の斜視図である。
図2図3に示すように、定力装置付トゥールビヨン30は、上述した表輪列の回転を制御する機構である。また、定力装置付トゥールビヨン30は、後述のてんぷ101の向きによる重力の影響を低減する、いわゆるトゥールビヨン機構を有している。また、定力装置付トゥールビヨン30は、後述のがんぎ車124に伝えられる回転トルクの変動を抑制するため定力装置3を備えている。

0054

以下に、定力装置付トゥールビヨン30について詳述する。
定力装置付トゥールビヨン30は、地板11の表側に取付けられた表側キャリッジ受23と、地板11の裏側に取付けられた裏側キャリッジ受24と、に回転可能に支持されている。定力装置付トゥールビヨン30は、表側キャリッジ受23の地板11側に固定されている固定車31と、表側キャリッジ受23と裏側キャリッジ受24とに回転可能に支持されている外キャリッジ32と、この外キャリッジ32の内側に、外キャリッジ32に対して回転自在に支持されている内キャリッジ33と、を備えている。

0055

固定車31は略円板状に形成されており、その裏側(地板11側)の周縁歯部31aが形成されている。

0056

(外キャリッジ)
図4は、外キャリッジ32を、一方からみた斜視図、図5は、外キャリッジ32を、他方からみた斜視図、図6は、図4のA矢視図、図7は、図5のB矢視図である。
図4図7に示すように、外キャリッジ32は、この外キャリッジ32の外枠を構成する外フレーム34を有している。外フレーム34は、裏側に配置された円板状の裏ベース部35と、表側に配置された円板状の表ベース部36と、を備えている。
なお、以下の外キャリッジ32の説明では、各ベース部35,36の径方向を単に径方向と称し、各ベース部35,36の周方向を単に周方向と称して説明する。

0057

裏ベース部35には、裏側キャリッジ受24に向かって突出するほぞ部35aが設けられている。このほぞ部35aが、裏側キャリッジ受24に設けられている不図示の穴石に回転自在に支持されている。
一方、表ベース部36は、表側キャリッジ受23に形成されている凹部23aを介して固定車31よりも表側に位置している。そして、表ベース部36の表側には、外キャリッジかな37が設けられ、この外キャリッジかな37が三番車26の歯車部26cに噛合されている。

0058

表ベース部36および外キャリッジかな37には、軸部38が圧入されている。この軸部38によって、表ベース部36と外キャリッジかな37とが一体となって回転する。また、軸部38の一端には、外キャリッジかな37から表側キャリッジ受23側に向かって突出するほぞ部38aが一体成形されている。このほぞ部38aが、表側キャリッジ受23に設けられている不図示の穴石に回転自在に支持されている。

0059

裏ベース部35のほぞ部35aと表ベース部36のほぞ部36aは、同一直線上に配置されており、この直線が外キャリッジ32の回転軸線L1となる。
裏ベース部35と表ベース部36との間には、これら裏ベース部35と表ベース部36とに跨るように4つの縦フレーム39が一体成形されている。縦フレーム39は、各ベース部35,36から湾曲しながら径方向外側に向かって延びる一対の湾曲部39aと、これら湾曲部39aから径方向外側に向かって延びる一対の径方向延出部39bと、これら径方向延出部39bの先端同士を連結する軸方向延出部39cと、が一体成形されたものである。

0060

このように縦フレーム39を構成することにより、固定車31よりも表側に表ベース部36が突出していても、固定車31と外フレーム34とが干渉しないようにすることができる。
また、4つの縦フレーム39は、2つずつが回転軸線L1を中心に点対称となるように配置されている。換言すれば、4つの縦フレーム39は、周方向の間隔が広い広間隔部K1と、これら広間隔部K1と比較して周方向の間隔が狭い狭間隔部K2とが2つずつ形成されるように、かつ広間隔部K1と狭間隔部K2とが交互に形成されるように配置されている。

0061

縦フレーム39の軸方向延出部39cには、軸方向略中央に、各軸方向延出部39cを連結するように周方向に沿って延在する横フレーム41が一体成形されている。この横フレーム41のうち、一方の広間隔部K1に対応する箇所は切断されており、この切断した箇所を連結するように内キャリッジ軸受部42がねじ43により締結固定されている。

0062

内キャリッジ軸受部42は、内キャリッジ33を回転自在に支持するためのものであって円板状の軸受座44と、軸受座44の径方向中心を挟んで両側に延出する脚部46と、が一体成形されている。
軸受座44の径方向中央には、内キャリッジ33を回転自在に支持するための穴石45が設けられている。穴石45の中心軸L2は、外キャリッジ32の回転軸線L1と直交、つまり、外キャリッジ32の径方向に沿っている。

0063

脚部46は、横フレーム41に当接し、横フレーム41の延在方向に沿って長くなるように略直方体状に形成されたねじ座46aと、ねじ座46aの基端(軸受座44側端)から横フレーム41とは反対側に向かって屈曲延出する立ち上がり部46bと、により構成されている。そして、立ち上がり部46bの先端に、軸受座44が連結されている。すなわち、軸受座44は、横フレーム41から離間して配置されている。

0064

ねじ座46aの先端側には、不図示のねじ孔が形成されている。このねじ孔にねじ43が挿入され、さらに横フレーム41に螺入されることによって、内キャリッジ軸受部42がねじ43により締結固定される。一方、ねじ座46aの基端側には、がんぎ駆動用固定車47がねじ48によって締結固定されている。

0065

がんぎ駆動用固定車47は、後述のがんぎ車124を回転させるためのものであって、略リング状に形成されている。そして、がんぎ駆動用固定車47は、その中心軸が内キャリッジ軸受部42に設けられた穴石45の中心軸L2と同軸上となるように配置されている。また、がんぎ駆動用固定車47には、回転軸線L1側の周縁に、歯部47aが形成されている。さらに、がんぎ駆動用固定車47は、内キャリッジ軸受部42のねじ座46aに対応する位置に、一対の取付ステー49が一体成形されている。これら取付ステー49にねじ48が挿入され、さらにねじ座46aに螺入されることによって、取付ステー49がねじ48によって締結固定される。

0066

また、横フレーム41には、回転軸線L1を挟んで内キャリッジ軸受部42(がんぎ駆動用固定車47)と対向する側に、リング状の軸受ホルダ51が一体成形されている。この軸受ホルダ51に、玉軸受52が設けられている。
玉軸受52は、その中心軸L3が内キャリッジ軸受部42に設けられた穴石45の中心軸L2と同軸上となるように配置されている。また、玉軸受52には、回転プレート53が回転自在に支持されている。回転プレート53は、略円板状のプレート本体53aと、プレート本体53aの径方向中央から突出する支軸53bと、が一体成形されたものである。この支軸53bが、玉軸受52に回転自在に支持されている。

0067

回転プレート53のプレート本体53aには、定力ばね巻き上げ車54が固定されており、この定力ばね巻き上げ車54と回転プレート53は、一体に回転するようになっている。定力ばね巻き上げ車54の外周部には、歯部54aが形成されている。この歯部54aは、固定車31の歯部31aに噛合される(図3参照)。

0068

また、定力ばね巻き上げ車54の径方向中央には、内キャリッジ33を回転自在に支持するための穴石55が設けられている。さらに、定力ばね巻き上げ車54には、穴石55から径方向外側にずれた位置に、回転軸線L1側に向かって突出する係合ピン56が取り付けられている。この係合ピン56は、後述の位相規制プレート153と協働して内キャリッジ33と定力ばね巻き上げ車54との回転位相を規制する。

0069

また、定力ばね巻き上げ車54には、穴石55を挟んで係合ピン56とは反対側にひげ持受57が設けられている。このひげ持受57には、ひげ持58が止めねじ57aを介して固定されている(図9参照)。ひげ持58には、定力ばね59の外端部が固定されている(図9参照)。
定力ばね59は、外キャリッジ32に対して内キャリッジ33に回転力を付与するためのものであって、渦巻状に形成されている。定力ばね59の内端部は、ひげ玉152を介して内キャリッジ33に固定されている。

0070

また、横フレーム41には、2つの狭間隔部K2のうちの一方に対応する位置に、ストップ車軸受部61がねじ62より締結固定されている。
ストップ車軸受部61は、円板状の軸受座63と、軸受座63の径方向中心を挟んで両側から横フレーム41の延在方向に沿って延出する一対の脚部64と、が一体成形されたものである。軸受座63の径方向中央には、穴石65が設けられている。

0071

一方、脚部64は、軸受座63から延出する脚部本体64aと、脚部本体64aの先端から延出するねじ座64bと、が一体成形されたものである。ねじ座64bは、その面方向が脚部本体64aの面方向と直交するように形成されている。そして、ねじ座64bは、横フレーム41の裏側端に当接した状態で、ねじ62によって横フレーム41に締結固定されている。この締結固定した状態では、横フレーム41に対して所定間隔をあけて軸受座63および脚部64が対向した形になる。

0072

横フレーム41には、ストップ車軸受部61の軸受座63と対向する位置に、略円板状の軸受座66が一体成形されている。この軸受座66に、穴石67が設けられている。
そして、横フレーム41とストップ車軸受部61との間にストップ車駆動車68およびストップ車69が配置され、これらストップ車駆動車68およびストップ車69が2つの穴石65,67によって回転自在に支持されている。このように、ストップ車駆動車68およびストップ車69の回転軸線L4は、定力ばね巻き上げ車54の回転軸線(玉軸受52の中心軸L3)に対して直交、つまり外キャリッジ32の径方向に沿っている。

0073

ストップ車駆動車68およびストップ車69は、僅かに間隔を開けて重なった状態で配置され、それぞれの径方向中央に軸部71が圧入されている。この軸部71によって、ストップ車駆動車68およびストップ車69が一体化されている。また、軸部71の両端には、それぞれほぞ部71aが設けられており、これらほぞ部71aがそれぞれ穴石65,67に回転自在に支持されている。これにより、ストップ車駆動車68およびストップ車69は、横フレーム41に対して一体的に回転することができる。

0074

ストップ車駆動車68の外周部には、歯部68aが形成されている。この歯部68aは、固定車31の歯部31aに噛合される。
ここで、ストップ車駆動車68のピッチ円直径は、定力ばね巻き上げ車54のピッチ円直径と同一に設定されている。また、ストップ車駆動車68の歯部68aの歯数は、定力ばね巻き上げ車54の歯部54aの歯数と同一に設定されている。

0075

図8は、ストップ車駆動車68と定力ばね巻き上げ車54の固定車31への噛合状態を示す斜視図である。
同図に示すように、ストップ車駆動車68と定力ばね巻き上げ車54は、それぞれの回転軸線(L4,L3)が直交した状態で固定車31に噛合されている。また、ストップ車駆動車68と定力ばね巻き上げ車54は、それぞれ外フレーム34に取り付けられているので、外フレーム34が回転軸線L1回りに回転すると、同時に、かつ同回転速度で回転する。つまり、ストップ車駆動車68の歯数と定力ばね巻き上げ車54の歯数は、それぞれ同一数に設定されている。

0076

なお、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数は、互いに割り切れる数に設定されている。具体的には、本実施形態では、ストップ車駆動車68の歯数と定力ばね巻き上げ車54の歯数が40に設定されており、固定車31の歯数が80に設定されている。しかしながら、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数は、互いに割り切れない数に設定されていることが望ましい。これについての詳細は、後述する。

0077

図8に示すように、ストップ車69は、例えば金属材料単結晶シリコン等の結晶方位を有する材料等により形成された部材あって、電鋳加工や、フォトリソグラフィ技術のような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)、MIM(Metal Injection Molding)等により形成されている。

0078

ストップ車69の外周部には、複数(この実施形態では3つ)の部72が径方向外側に向かって突出形成されている。また、鉤部72は、周方向に等間隔で配置されている。
このような構成のもと、ストップ車69には、ストッパ73が係合、解除される。

0079

図9は、外キャリッジ32を、裏側からみた平面図、図10は、ストップ車69とストッパ73の位置関係を示す斜視図である。
図9図10に示すように、ストッパ73は、裏側からみた平面視で略L字状のストッパアンクル74を有している。より具体的には、ストッパアンクル74は、ストップ車駆動車68側に配置されたストッパアンクル体75と、定力ばね巻き上げ車54側に配置されたフォーク部76と、これらストッパアンクル体75とフォーク部76とを連結する連結部77と、が一体成形されたものである。

0080

ストッパアンクル体75は、ストップ車駆動車68が取り付けられている横フレーム41に沿って延在し、外キャリッジ32の径方向内側からみた平面視が略T字状に形成されている。より具体的には、ストッパアンクル体75は、ストップ車軸受部61の脚部64の先端近傍から穴石65の近傍に至る間に横フレーム41の延在方向に沿って延びるアーム部75aと、アーム部75aの先端からストップ車駆動車68(ストップ車69)の径方向に沿って延びる爪支持体75bと、を備えている。

0081

爪支持体75bの長さは、ストップ車駆動車68の外径とほぼ同程度に設定されている。爪支持体75bの長手方向両端には、ストップ車69側に向かって突出する凸部75cが一体成形されている。これら凸部75cに、それぞれ爪石78a,78bが取り付けられている。爪石78a,78bは、凸部75cから爪支持体75bの長手方向に沿って突出しており、その先端部がストップ車69の鉤部72に当接可能になっている。これにより、ストップ車69に対して、ストッパ73が係合、解除される。なお、ストップ車69に対するストッパ73の係合、解除動作についての詳細は、後述する。

0082

フォーク部76は、定力ばね巻き上げ車54が取り付けられている横フレーム41に沿って延在している。フォーク部76は、定力ばね巻き上げ車54の径方向中央に対応する位置に配置された二又状のフォーク本体76aと、フォーク本体76aの基端と連結部77とに跨るアーム部76bと、により構成されている。フォーク本体76aは、内キャリッジ33に設けられている三角カム151(図10参照)と係合する。
また、アーム部76bの基端には貫通孔76cが形成されており、この貫通孔76cにストッパアンクル真79が圧入されている。ストッパアンクル真79の両端には、それぞれほぞ部79aが一体成形されている。

0083

図4図5に詳示するように、横フレーム41には、ストッパアンクル真79に対応する位置に、ストッパアンクル真79を回転自在に支持する軸受部80が設けられている。
軸受部80は、横フレーム41に一体成形され、横フレーム41の延在方向と直交する方向に沿って延在する台座部81と、この台座部81にねじ82を介して締結固定される支持部83と、を備えている。
台座部81の横フレーム41との交差部には、穴石84が設けられている。この穴石84に、ストッパアンクル真79の一端に一体成形されたほぞ部79aが回転自在に支持される。また、台座部81の長手方向両端側には、それぞれ支持部83を締結固定するためのねじ82が螺入可能な雌ねじ部85が設けられている。

0084

支持部83は、断面略ハット状に形成されている。すなわち、支持部83は、ストッパアンクル真79を受け入れ可能な断面略コの字状に形成された支持部本体83aと、支持部本体83aの先端に一体成形された一対のフランジ部83bと、を備えている。そして、フランジ部83bを、台座部81に当接させるように配置されている。
フランジ部83bには、ねじ82を挿入可能な不図示の挿入孔が形成されており、この挿入孔にねじ82が挿入され、さらに台座部81の雌ねじ部85にねじ82が螺入されることにより、台座部81に支持部83が締結固定される。

0085

支持部本体83aの底壁部83cには、台座部81の穴石84と同軸上となるように穴石86が設けられている。この穴石86に、ストッパアンクル真79の他端に一体成形されたほぞ部79aが回転自在に支持される。
このように、ストッパアンクル真79は、その軸線L5が定力ばね巻き上げ車54の回転軸線(玉軸受52の中心軸L3)に対して平行で、かつストップ車駆動車68およびストップ車69の回転軸線L4に対して直交するように配置されている。

0086

そして、ストッパアンクル真79が圧入されているストッパアンクル74は、ストッパアンクル真79の軸線L5を中心に揺動する。ストッパアンクル74が揺動することにより、ストッパアンクル体75の裏側に配置された爪石78aがストップ車69側に寄る一方、表側に配置された爪石78bがストップ車69から離間したり、これとは逆に、表側に配置された爪石78bがストップ車69側に寄る一方、裏側に配置された爪石78aがストップ車69から離間したりする。

0087

これにより、ストッパアンクル体75の裏側に配置された爪石78aと表側に配置された爪石78bとが順番にストップ車69と係合する。このようなストッパアンクル74の揺動動作は、このストッパアンクル74のフォーク部76と係合している三角カム151の回転動作に基づいている。三角カム151は、内キャリッジ33に設けられている。
このような構成のもと、外キャリッジ32の回転軸線L1上に、外キャリッジ32の重心が位置している。

0088

(内キャリッジ)
図11は、内キャリッジ33を、一方からみた斜視図、図12は、内キャリッジ33を、他方からみた斜視図、図13は、図11のC矢視図、図14は、図11のD矢視図である。
図11図14に示すように、内キャリッジ33は、この内キャリッジ33の内枠を構成する内フレーム90を有している。内フレーム90は、ベースプレート91を有している。

0089

ベースプレート91は、外キャリッジ32の内キャリッジ軸受部42に設けられた穴石45の中心軸L2(図5参照)方向に沿って長くなるように形成されている。ベースプレート91の長手方向略中央には、耐震軸受93が設けられている。また、ベースプレート91の長手方向両端には、それぞれピラーブロック94,95がねじ96によって締結固定されている。各ピラーブロック94,95は、断面略コの字状に形成されており、それぞれの開口をベースプレート91の長手方向中央側に向けて配置されている。

0090

2つのピラーブロック94,95のうち、第1ピラーブロック94の底部94aには、中央部に、ほぞ部97が設けられている。ほぞ部97は、ベースプレート91の長手方向外側に向かって突出している。ほぞ部97は、外キャリッジ32の内キャリッジ軸受部42に設けられている穴石45に回転自在に支持されている。

0091

一方、2つのピラーブロック94,95のうち、第2ピラーブロック95の底部95aには、中央部に、ピボットシャフト98が設けられている。ピボットシャフト98は、長手方向外側に向かって突出している。また、ピボットシャフト98の先端には、ほぞ部98aが突設されている。このほぞ部98aは、定力ばね巻き上げ車54に設けられている穴石55に回転自在に支持されている。

0092

このように、内キャリッジ33は、ほぞ部97,98aによって、外キャリッジ32に対し、内キャリッジ軸受部42に設けられた穴石45の中心軸L2および外キャリッジ32に設けられた玉軸受52の中心軸L3を中心として回転自在に支持される。すなわち、内キャリッジ33の回転軸線L6は、外キャリッジ32の回転軸線L1に対して直交している。

0093

また、ピボットシャフト98には、第2ピラーブロック95の底部95a側から順に、三角カム151、ひげ玉152、位相規制プレート153が圧入されている。すなわち、これら三角カム151、ひげ玉152、および位相規制プレート153は、内キャリッジ33と一体となって回転する。
三角カム151は、一回転でストッパアンクル74を3往復揺動させるように形成されている。ひげ玉152には、定力ばね59の内端部が接合されている。すなわち、内キャリッジ33は、外キャリッジ32に対して回転自在に支持されていると共に、定力ばね59を介して外キャリッジ32に連結されている。

0094

図15は、外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態における定力ばね巻き上げ車54と位相規制プレート153との位置関係を示す説明図である。
図12図15に示すように、位相規制プレート153は円板状に形成されたものであって、その外径は、定力ばね59の無負荷時の外径よりも若干大きく設定されている。外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態では、位相規制プレート153は、定力ばね巻き上げ車54と内キャリッジ33の回転軸線L6方向で対向している。

0095

位相規制プレート153には、外キャリッジ32の定力ばね巻き上げ車54に設けられた係合ピン56に対応する位置に、この係合ピン56を挿入可能な長孔154が形成されている。長孔154は、周方向に沿って円弧状に形成されている。また、長孔154は、この長孔154に係合ピン56を挿入した状態で、定力ばね巻き上げ車54に対する位相規制プレート153の回転角度が60°以上ずれないように形成されている。

0096

図11図14戻り、2つのピラーブロック94,95のベースプレート91とは反対側端には、2つのピラーブロック94,95に跨るように、ブリッジプレート155が設けられている。ブリッジプレート155は、ベースプレート91に設けられている耐震軸受93と同軸上に配置された略リング状の軸受座157を有している。この軸受座157に、耐震軸受158が設けられている。

0097

また、軸受座157には、この軸受座157の側面から2つのピラーブロック94,95に向かってそれぞれ延出するアーム部159が一体成形されている。さらに、各アーム部159の先端に、それぞれステー161が一体成形されている。これらステー161は、2つのピラーブロック94,95の側面の形状に対応するように略長方形状に形成されている。各ステー161は、それぞれねじ156によって2つのピラーブロック94,95に締結固定されている。このように、ベースプレート91、ピラーブロック94,95、およびブリッジプレート155が一体化されて内フレーム90が形成される。

0098

ここで、内フレーム90の大きさ、および外キャリッジ32に設けられたがんぎ駆動用固定車47の内径の大きさは、それぞれ外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態で、がんぎ駆動用固定車47内に内フレーム90が挿通可能な大きさに設定されている。すなわち、外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態では、がんぎ駆動用固定車47内に、内フレーム90の第1ピラーブロック94側の一部が挿通された状態になる。
このように構成された内フレーム90では、ベースプレート91の耐震軸受93とブリッジプレート155の耐震軸受158とによって、てんぷ101が回転自在に支持されている。

0099

(てんぷ)
てんぷ101は、各耐震軸受93,158に回転自在に支持されるてん真103と、てん真103に取り付けられたてん輪104と、ひげぜんまい105と、を備え、ひげぜんまい105から伝えられた動力によって、一定の振動周期で正逆回転するようになっている。
てん真103は、軸方向略中央から軸方向両端に向かうに従って段差により漸次縮径するように形成された軸体である。てん真103の両端には、それぞれ不図示のほぞ部が軸方向外側に向かって突出形成されている。各ほぞ部が、それぞれ耐震軸受93,158に回転自在に支持されている。

0100

ここで、各耐震軸受93,158は、それぞれベースプレート91およびブリッジプレート155の長手方向略中央に設けられている。換言すると、各耐震軸受93,158は、それぞれの軸線が外キャリッジ32の回転軸線L1上に位置したり、この回転軸線L1と交差したりするように設けられている。すなわち、てんぷ101は、その回転軸線L7が外キャリッジ32の回転軸線L1と交差するように配置されている。また、てんぷ101は、その重心が外キャリッジ32の回転軸線L1上、および内キャリッジ33の回転軸線L6上に位置している。
なお、回転軸線L7は、内キャリッジ33と共に回転するので、回転軸線L7と回転軸線L1とが交差するということは、当然に回転軸線L7と回転軸線L1とが同一直線上になることも含まれている。

0101

また、てんぷ101の回転軸線L7は、内キャリッジ33の回転軸線L6に対して直交している。さらに、てん真103の軸方向略中央の軸径が最も大きい箇所に外フランジ部103aが一体成形されており、この外フランジ部103aに位置決めされる形で、てん真103にてん輪104が外嵌固定されている。

0102

さらに、てん真103には、外フランジ部103aのてん輪104とは反対側に、振り座106(図13参照)が設けられている。振り座106は、てん真103に外嵌固定されている筒部106aと、筒部106aの外フランジ部103a側に一体成形されている環状の鍔部106bと、を備えている。鍔部106bには、振り石107(図16参照)がベースプレート91側に向かって突出するように設けられている。振り石107は、後述の脱進機構120のアンクル125を揺動させるためのものである。

0103

ひげぜんまい105は、例えば一平面内で渦巻状に巻かれた平ひげであって、ひげ玉111を介し、その内端部がてん真103のてん輪104よりもブリッジプレート155側に固定されている。
一方、ひげぜんまい105の外端部には、ひげ持109が取り付けられている。ひげ持109は、ブリッジプレート155に設けられているひげ持受110に固定されている。そして、ひげぜんまい105は、後述の脱進機構120から振り座106に伝えられた動力を蓄え、この動力をてん真103およびてん輪104に伝える役割を果たしている。

0104

(脱進機構)
図16は、内キャリッジ33の一部を取り外した状態の斜視図である。
図11図13図16に示すように、ベースプレート91には、脱進機構120が取り付けられている。
脱進機構120は、ベースプレート91に取付けられた脱進機構押え121と、この脱進機構押え121とベースプレート91とによって回転自在に支持されているがんぎ車124、およびアンクル125と、を備えている。

0105

脱進機構押え121は、てん真103の第2ピラーブロック95側に配置され、てん真103の周囲に沿って略C字状に形成されたベース部121aを有している。
ベース部121aには、ベースプレート91の短手方向両側に、それぞれねじ座121bが一体成形されている。これらねじ座121bには、それぞれねじ122が挿入されている。各ねじ122は、ベースプレート91に設けられた雌ねじ部123に螺入されることによって、ベースプレート91にベース部121aを締結固定している。

0106

ベース部121aの各ねじ座121bの近傍には、それぞれ嵩上げ部121cが一体成形され、さらに、嵩上げ部121c上に軸受プレート121dが一体成形されている。
軸受プレート121dは、各嵩上げ部121cからてん真103を迂回しながら第1ピラーブロック94側に向かって延出している。このため、てん真103の軸方向から脱進機構押え121をみると、この脱進機構押え121に、てん真103および振り座106を挿入可能な開口部121eが形成された状態になっている。また、軸受プレート121dは、各嵩上げ部121c上に一体成形されているので、ベースプレート91と所定の間隔をあけて対向した状態になっている。

0107

このように形成された軸受プレート121dには、がんぎ車124を回転自在に支持するための第1穴石(不図示)と、アンクル125を回転自在に支持するための第2穴石125aと、が設けられている。
ベースプレート91の第1穴石に対応する位置には、軸支持部127が設けられている。軸支持部127は、がんぎ車124の軸体131を支持するためのものであって、ベースプレート91に固定された略円環状のフランジ部127aを有している。フランジ部127aは、中央の開口部が軸受プレート121dの第1穴石と同軸上に位置するように配置されている。

0108

フランジ部127aには、ブリッジプレート155とは反対側に向かって突出する壁部127bが一体成形されている。この壁部127bは、ベースプレート91から外キャリッジ32に設けられているがんぎ駆動用固定車47の径方向外側に至るまで延出されている。また、壁部127bは、がんぎ駆動用固定車47側が開口するように断面略C字状に形成されている。さらに、壁部127bの先端の内周面側には、略円板状の軸受座127cが壁部127bと直交するように一体成形されている。軸受座127cには、穴石128が設けられている。この穴石128は、脱進機構押え121の第1穴石と同軸上に配置されている。

0109

このような構成ものと、脱進機構押え121の第1穴石と軸支持部127の穴石128とによって、がんぎ車124が回転自在に支持されている。
がんぎ車124は、軸体131と、軸体131に外嵌固定されているがんぎ歯車部132と、を備えている。軸体131は、そのほとんどが軸支持部127に収納されている。そして、軸体131の脱進機構押え121側の端部は、軸支持部127のフランジ部127aを介して脱進機構押え121の軸受プレート121dに至るまで突出している。また、軸体131の軸方向両端には、それぞれほぞ部131aが一体成形されている。これらほぞ部131aが脱進機構押え121の第1穴石、および軸支持部127の穴石128に回転自在に支持されている。

0110

また、軸体131の軸支持部127に収納されている箇所には、がんぎかな部131bが一体成形されている。
ここで、外キャリッジ32に内キャリッジ33を取り付けた状態では、がんぎ駆動用固定車47内に、内フレーム90の第1ピラーブロック94側が挿通された状態になる。また、軸支持部127の壁部127bは、ベースプレート91から外キャリッジ32に設けられているがんぎ駆動用固定車47の径方向外側に至るまで延出されている。このため、がんぎ駆動用固定車47の歯部47aに、がんぎかな部131bが噛合される。

0111

がんぎ歯車部132は、例えば金属材料や単結晶シリコン等の結晶方位を有する材料等により形成された部材あって、電鋳加工や、フォトリソグラフィ技術のような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)、MIM(Metal Injection Molding)等により形成されている。

0112

がんぎ歯車部132は、軸体131に圧入される略円環状のハブ部133を有している。このハブ部133に形成されている貫通孔133aに、軸体131が圧入される。そして、ベースプレート91と脱進機構押え121の軸受プレート121dとの間に、がんぎ歯車部132が介在した状態になる。

0113

ハブ部133の径方向外側には、このハブ部133を取り囲むようにリング状に形成されたリム部134が設けられている。このリム部134とハブ部133は、複数(この実施形態では4つ)のスポーク部135によって連結されている。スポーク部135は、径方向に沿って延出され、周方向に等間隔で配置されている。
また、リム部134の外周縁には、特殊な鉤型状に形成された複数(この実施形態では20個)の歯部136が径方向外側に向けて突出形成されている。これら歯部136の先端に、アンクル125のつめ石140a,140bが係合、解除される。

0114

一方、ベースプレート91には、脱進機構押え121の第2穴石125aに対応する位置に、穴石129が設けられている。この穴石129は、第2穴石125aと同軸上に配置されている。そして、脱進機構押え121の第2穴石125aとベースプレート91の穴石129とによって、アンクル125が回転自在に支持されている。

0115

アンクル125は、がんぎ車124を脱進させて規則正しく回転させるためのものであって、アンクル真137と、アンクル真137に外嵌固定されるアンクル体138と、このアンクル体138に一体成形されているアンクルさお139と、を備えている。
アンクル真137は軸体であり、脱進機構押え121の第2穴石125aとベースプレート91の穴石129とによって回転自在に支持されている。

0116

アンクル体138およびアンクルさお139は、例えば電鋳加工により三つ又状に形成されている。なお、アンクル体138およびアンクルさお139を形成する電鋳金属としては、例えば、硬度が高いクロムニッケル、鉄、およびこれらを含む合金で構成することができる。
アンクル体138は、2つのアンクルビーム138a,138bが接続されて成る。アンクル体138は、2つのアンクルビーム138a,138bの接続部138cに、アンクル真137を挿通可能な挿通孔138dが形成されている。そして、2つのアンクルビーム138a,138bは、接続部138cからそれぞれ反対側に向かって延出している。また、2つのアンクルビーム138a,138bのうち、一方のアンクルビーム138bは、てん真103に設けられた振り座106に向かって延出している。

0117

2つのアンクルビーム138a,138bの先端側には、それぞれがんぎ車124側が開口するようにスリット138e,138fが形成されている。これらスリット138e,138fに、それぞれつめ石140a,140bが接着剤等により接着固定されている。
つめ石140a,140bは、略四角柱状に形成されたルビーであって、各アンクルビーム138a,138bの先端からがんぎ歯車部132の歯部136に向かって突出している。
また、一方のアンクルビーム138bの先端には、クワガタ141と、クワガタ141の間に配置された剣先142と、が設けられている。そして、クワガタ141の内側に、てんぷ101の振り石107が係脱されるアンクルハコ143が形成される。

0118

一方、アンクルさお139は、アンクル体138の接続部138cからがんぎ車124とは反対側に向かって突出形成されている。
ベースプレート91には、アンクルさお139の先端に対応する位置でアンクルさお139の短手方向両側に、それぞれドテピン144a,144bが立設されている。これらドテピン144a,144bによって、アンクル体138およびアンクルさお139の回動範囲が規制される。
このような構成のもと、内キャリッジ33の回転軸線L6上に、内キャリッジ33の重心が位置している。

0119

(定力装置付トゥールビヨンの動作)
次に、定力装置付トゥールビヨン30の動作について説明する。
まず、図11図12図16に基づいて、内キャリッジ33に搭載されているてんぷ101および脱進機構120の動作について説明する。
てんぷ101は、振り石107を介してがんぎ車124の回転力を受け、この回転力とひげぜんまい105のばね力とにより自由振動する。てんぷ101が自由振動することにより、振り石107と係脱可能になっているアンクルハコ143が、アンクル体138と共に、アンクル真137を中心にして左右に揺動する。

0120

アンクル体138が揺動することにより、がんぎ歯車部132の歯部136に、2つのつめ石140a,140bが交互に繰り返し接触する。これにより、がんぎ車124が常に一定周期で脱進する。
ここで、アンクル125は、アンクル体138に一体成形されているアンクルさお139を備えており、このアンクルさお139が、ドテピン144a,144bによって、回動範囲が規制されている。このため、外部からの衝撃等を受けてアンクル125が所定範囲以上に揺動してしまうことを防止できる。

0121

続いて、図1図10図17図24に基づいて、外キャリッジ32および内キャリッジ33の動作について説明する。
図17図22は、外キャリッジ32および内キャリッジ33の動作説明図であって、各タクトの外キャリッジ32および内キャリッジ33の状態を示している。図23図24は、ストップ車69とストッパアンクル74との噛合状態、およびストッパアンクル74の挙動を示し、それぞれの(a)は、ストップ車69を軸方向からみた図であり、(b)は、ストップ車69を径方向からみた図である。

0122

図1図17に示すように、外キャリッジ32は、外キャリッジかな37が三番車26の歯車部26cに噛合されているので、香箱車22の回転力が表輪列を介して外キャリッジ32に伝達される。そして、外フレーム34が回転軸線L1回りに回転しようとする(図17における矢印Y1参照)。
すると、外フレーム34に設けられ、かつ固定車31の歯部31aに噛合されているストップ車駆動車68が回転しようとすると共に(図17における矢印Y2参照)、定力ばね巻き上げ車54が回転しようとする(図17における矢印Y3参照)。なお、外フレーム34は、2分(120秒)で1回転するように構成されている。

0123

このとき、ストップ車駆動車68と一体となって回転するストップ車69の鉤部72に、ストッパアンクル74の2つの爪石78a,78bのうちの何れか一方が当接(係合)していると、ストップ車駆動車68およびストップ車69が停止する。このため、外フレーム34および定力ばね巻き上げ車54が停止する。

0124

ここで、図10に示すように、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の2つの爪石78a,78bは、それぞれ鉤部72に爪石78a,78bが当接した状態の際にかかる荷重(噛合力)のベクトルF1が、ストッパアンクル真79の軸線L5と平行になるように形成されている。このため、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の爪石78a,78bとの噛合力によって、ストッパアンクル74に、ストッパアンクル真79回りの回転力が作用してしまうことを防止できる。

0125

一方、図17に示すように、内キャリッジ33は、外キャリッジ32に対して回転自在に支持されていると共に、定力ばね59を介して外キャリッジ32に連結されている。このため、定力ばね59の付勢力を受けて、外フレーム34に対し内フレーム90が回転軸線L6回りに回転する(図17における矢印Y4参照)。このとき、外キャリッジ32のがんぎ駆動用固定車47に噛合されているがんぎ車124の軸体131が回転する。

0126

ここで、がんぎ車124は、脱進機構120を構成するものであり、アンクル125やてんぷ101によって常に一定周期で脱進するようになっている。すなわち、がんぎ車124が一定周期で脱進することにより、このがんぎ車124を回転自在に支持している内キャリッジ33が一定周期で回転と停止を繰り返す。

0127

具体的には、がんぎ車124は、内フレーム90が1分間に1回転するように一定速度で回転する。換言すれば、内フレーム90は、1秒で6度回転する。
このため、「秒」を表示する構成としては、例えば、がんぎ駆動用固定車47の外周面のうちの裏側に秒針に相当するものを設けると共に、内フレーム90の秒針に対応する位置に、メモリ刻設された円板を設ける構成が挙げられる。このような構成のもと、秒針は停止したままであるが、内フレーム90の回転に伴いメモリが回転移動するので、「秒」を表示することができる。
なお、内フレーム90が1分間に1回転することにより、二番車25が1時間に1回転する。

0128

ここで、内フレーム90が回転することにより、この内フレーム90と一体化されている三角カム151も回転する。三角カム151が回転することにより、この三角カム151に係合されている外キャリッジ32のストッパアンクル74が、ストッパアンクル真79回りに揺動する。
三角カム151は、一回転でストッパアンクル74を3往復揺動させるように形成されているので、ストッパアンクル74は、1分間に3往復揺動することになる。これにより、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の爪石78a,78bは、それぞれ係合、解除を繰り返す。

0129

より詳しくは、例えば、ストップ車69の鉤部72に、ストッパアンクル74の2つの爪石78a,78bのうち、表側の爪石78bが係合していたとする。この状態から図23(a)、図23(b)に示すように、内フレーム90(三角カム151)の回転に伴い、ストッパアンクル74が揺動し始めると、表側の爪石78bは、鉤部72の回転軌跡上から外れる方向に移動する。一方(図23(b)における矢印Y5参照)、裏側の爪石78aは、鉤部72の回転軌跡上に向かって移動する(図23(b)における矢印Y6参照)。

0130

ここで、図23(b)に詳示するように、ストップ車69の鉤部72から表側の爪石78bが外れる瞬間には、裏側の爪石78aは、鉤部72の回転軌跡上に位置している。このため、ストップ車69の鉤部72から表側の爪石78bが外れると、次に裏側の爪石78aと鉤部72とが係合するまで、ストップ車69が回転する。より具体的には、ストップ車69に形成されている鉤部72の個数は3つであり、鉤部72は等間隔に配置されているので、ストップ車69が60°回転する。

0131

ストップ車69が回転すると、外フレーム34が回転軸線L1回りに回転し、さらに、定力ばね巻き上げ車54が回転する。ここで、ストップ車駆動車68のピッチ円直径は、定力ばね巻き上げ車54のピッチ円直径と同一に設定されている。また、ストップ車駆動車68の歯部68aの歯数は、定力ばね巻き上げ車54の歯部54aの歯数と同一に設定されている。このため、ストップ車69が60°回転すると、定力ばね巻き上げ車54も60°回転する。

0132

定力ばね巻き上げ車54には、ひげ持受57(ひげ持58)が設けられているので、定力ばね巻き上げ車54が回転すると、ひげ持58が一体となって移動する。ひげ持58が移動することにより、60°分だけ定力ばね59が巻き上げられる。そして、定力ばね59が巻き上げられた状態で再びストップ車69が停止するのに伴い、外フレーム34も停止する。一方、内フレーム90は、巻き上げられた定力ばね59の付勢力を受けて、外フレーム34に対して回転する。これを繰り返すことにより、内キャリッジ33およびがんぎ車124が一定速度で回転し続ける。

0133

より具体的に、図17図22に基づいて、定力装置付トゥールビヨン30の経時変化について説明する。
まず、図17の状態から20秒経過すると、定力装置付トゥールビヨン30は、図18に示すような状態になる。さらに、20秒経過すると(図17の状態から40秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図19に示すような状態になる。
さらに、20秒経過すると(図17の状態から60秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図20に示すような状態になる。

0134

さらに、20秒経過すると(図17の状態から80秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図21に示すような状態になる。さらに、20秒経過すると(図17の状態から100秒経過すると)、定力装置付トゥールビヨン30は、図22に示すような状態になる。そして、120秒経過すると、外フレーム34が一回転し、再び図17の状態に戻る。

0135

ここで、外キャリッジ32に設けられた定力ばね巻き上げ車54と、内キャリッジ33に設けられた位相規制プレート153は、対向するように配置されている。さらに、定力ばね巻き上げ車54に突設された係合ピン56と、位相規制プレート153の長孔154とが係合されている。そして、これによって、定力ばね巻き上げ車54に対する位相規制プレート153の回転角度が60°以上ずれないようになっている。このため、定力ばね59が所定以上巻解けてしまうことを防止できる。

0136

このように、上述の第1実施形態では、定力装置付トゥールビヨン30を、外キャリッジ32と、外キャリッジ32に対して回転自在に設けられた内キャリッジ33と、により構成している。また、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とを、直交させている。このため、内キャリッジ33に設けられたてんぷ101を、あらゆる全ての方向に向けさせることができ、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる。

0137

また、外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に、これら外キャリッジ32と内キャリッジ33とを連結する定力ばね59を配置している。そして、外キャリッジ32に設けられたストップ車69とストッパ73(ストッパアンクル74)との係合、解除動作が、内キャリッジ33の回転運動を受けて繰り返し行われるように構成している。このため、定力装置付トゥールビヨン30を大型化することなく、内キャリッジ33に安定的に回転力を付与することができる。

0138

さらに、外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に、これら外キャリッジ32と内キャリッジ33とを連結する定力ばね59を配置することで、内キャリッジ33に安定的に回転力を付与することができる。てんぷ101は、内キャリッジ33の回転トルクががんぎ車124に伝達されることにより自由振動するので、内キャリッジ33に安定的に回転力を付与されると、てんぷの振り角を安定させることができる。このため、機械式時計1の歩度精度を確実に高めることができる。

0139

また、内キャリッジ33に設けられたてんぷ101は、その回転軸線L7が外キャリッジ32の回転軸線L1と交差するように配置されている。このため、外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に無駄なスペースができてしまうことを防止できる。よって、確実に定力装置付トゥールビヨン30を小型化でき、意匠性も向上させることができる。
さらに、てんぷ101は、その重心が外キャリッジ32の回転軸線L1上、および内キャリッジ33の回転軸線L6上に位置している。このため、各キャリッジ32,33が回転することによる遠心力を、てんぷ101に作用しにくくすることができる。このため、てんぷ101の動作を安定させることができる。

0140

また、内キャリッジ33の回転軸線L6上に、内キャリッジ33の重心が位置している。このため、内キャリッジ33を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。よって、定力装置付トゥールビヨン30の駆動効率を高めることができると共に、歩度精度を高めることができる。

0141

外キャリッジ32の回転軸線L1上に、外キャリッジ32の重心が位置している。このため、外キャリッジ32を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。この結果、外キャリッジ32による定力ばね59の巻き上げも効率よく行うことができ、定力ばね59の巻き上げ量を安定させることができる。よって、定力装置付トゥールビヨン30の駆動効率を高めることができ、歩度精度を高めることができる。

0142

さらに、ストッパアンクル74を揺動自在に支持するためのストッパアンクル真79の軸線L5を、ストップ車69の回転軸線L4に対して直交させている。そして、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の2つの爪石78a,78bは、それぞれ鉤部72に爪石78a,78bが当接した状態の際にかかる荷重(噛合力)のベクトルF1が、ストッパアンクル真79の軸線L5と平行になるように形成されている。
このため、ストップ車69の鉤部72とストッパアンクル74の爪石78a,78bとの噛合力によって、ストッパアンクル74に、ストッパアンクル真79回りの回転力が作用してしまうことを防止できる。この結果、内キャリッジ33に、三角カム151を介して余計な回転力が作用することがない。よって、内キャリッジ33を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。

0143

また、外キャリッジ32に設けられた定力ばね巻き上げ車54と、内キャリッジ33に設けられた位相規制プレート153とが対向するように配置されている。さらに、定力ばね巻き上げ車54に突設された係合ピン56と、位相規制プレート153の長孔154とが係合されている。そして、これによって、定力ばね巻き上げ車54に対する位相規制プレート153の回転角度が60°以上ずれないようになっている。このため、定力ばね59が所定以上巻解けてしまうことを防止できる。よって、内キャリッジ33に安定的に回転力を付与することができる。

0144

(第1実施形態の変形例)
なお、上述の第1実施形態では、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが直交するように構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外キャリッジ32の回転軸線L1と内キャリッジ33の回転軸線L6とが交差するように構成されていればよい。

0145

また、上述の第1実施形態では、外フレーム34は、120秒で一回転するように構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではない。
例えば、三角カム151の形状を変更したり、別途増幅器等を設けたりすることにより、外フレーム34を、60秒で一回転させるように構成することも可能である。外フレーム34を、60秒で一回転させるように構成した場合、外フレーム34に設けた秒針と、不図示の文字板とにより、「秒」を表示することも可能である。

0146

さらに、上述の第1実施形態では、外フレーム34に外キャリッジかな37を設け、この外キャリッジかな37を三番車26の歯車部26cに噛合させている場合について説明した。そして、香箱車22の回転力を、表輪列を介して外キャリッジ32に伝達させている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、表輪列を構成する歯車の何れかに外フレーム34の何れかの箇所が噛合されるように構成されていればよい。例えば、外フレーム34の横フレーム41に歯部を形成し、この歯部と表輪列の歯車とを噛合させるように構成してもよい。

0147

また、上述の第1実施形態では、固定車31は略円板状に形成されており、その裏側(地板11側)の周縁に歯部31aが形成されている場合について説明した。そして、この歯部31aに、定力ばね巻き上げ車54およびストップ車駆動車68が噛合されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、固定車31、定力ばね巻き上げ車54、およびストップ車駆動車68を、それぞれかさ歯車状に形成してもよい。このように構成することで、各歯車の噛合面積を増大させることができるので、駆動伝達効率を高めることができる。

0148

さらに、上述の第1実施形態では、てんぷ101は、その回転軸線L7が外キャリッジ32の回転軸線L1と交差するように配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各回転軸線L1,L7が完全に交差しなくてもよく、多少のずれは含む。つまり、外キャリッジ32の回転軸線L1の近傍に、てんぷ101の回転軸線L7が位置するように、このてんぷ101が設けられていればよい。これは、実際は、製造上の誤差が発生したり、各部品組付け箇所に多少のガタが発生したりするからである。このような場合であっても、内キャリッジ33のほぼ中央にてんぷ101が配置されることになるので、外キャリッジ32と内キャリッジ33との間に無駄なスペースができてしまうことを防止できる。

0149

また、上述の第1実施形態では、てんぷ101は、その重心が外キャリッジ32の回転軸線L1上、および内キャリッジ33の回転軸線L6上に位置している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外キャリッジ32の回転軸線L1上、または内キャリッジ33の回転軸線L6上の少なくとも何れか一方に、てんぷ101の重心が位置していればよい。てんぷ101の重心が、外キャリッジ32の回転軸線L1上、または内キャリッジ33の回転軸線L6上の何れか一方に位置している場合であっても、その重心が位置している回転軸線回りに回転するキャリッジの遠心力が、てんぷ101に作用してしまうことを防止できる。このため、てんぷ101の動作を安定させることができる。

0150

さらに、上述の第1実施形態では、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数は、互いに割り切れる数に設定されている場合について説明した。しかしながら、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数は、互いに割り切れない数に設定されていることが望ましい。このように構成することで、てんぷ101が同じ場所で同じ姿勢になるまでの時間が長くなる。よって、重力による影響を分散することができ、より確実に平立差を解消できると共に、てん真103にかかる応力も分散できる。

0151

すなわち、例えば、上述の第1実施形態のように、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数が、互いに割り切れる数に設定されている場合、各キャリッジ32,33の回転周期も互いに割り切れることになる。この場合、図17図22に基づいて定力装置付トゥールビヨン30の経時変化について説明したように、120秒毎(外フレーム34が一回転する毎)に、てんぷ101の姿勢が同じになる。このため、てんぷ101に、重力による影響が及びやすくなってしまう。

0152

しかしながら、固定車31の歯数と、ストップ車駆動車68の歯数、および定力ばね巻き上げ車54の歯数を、互いに割り切れない数に設定すると(各キャリッジ32,33の回転周期が互いに割り切れない数に設定されていると)、てんぷ101が同じ場所で同じ姿勢になるまでの時間が長くなる。よって、重力による影響を分散することができ、より確実に平立差を解消できると共に、てん真103にかかる応力も分散できる。

0153

さらに、上述の第1実施形態では、ストッパ73のストッパアンクル74は、ストッパアンクル体75と、フォーク部76と、連結部77と、が一体成形されたものであり、フォーク部76は、二又状のフォーク本体76aと、フォーク本体76aの基端と連結部77とに跨るアーム部76bと、により構成されている場合について説明した。そして、内キャリッジ33に設けられている三角カム151にフォーク本体76aが係合する場合について説明した。しかしながら、ストッパアンクル74の形状は、これに限られるものではなく、以下のように構成してもよい。

0154

図25は、第1実施形態におけるストッパアンクル74の変形例を示す斜視図である。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の実施形態、および変形例についても同様)。
同図に示すように、ストッパアンクル74のフォーク本体76aには、2つの先端のそれぞれにバランサー76dが一体成形されている。バランサー76dは、ストッパアンクル74と同一の材料で形成されたである。バランサー76dは、先端に向かうに従って互いに対向する向きとは反対側に傾斜延出されている。さらに、バランサー76dは、先端に向かうに従って先細りとなるように形成されている。

0155

バランサー76dを設けることにより、ストッパアンクル74全体の重心は、ストッパアンクル真79の軸線L5上に位置する。このため、機械式時計1の立姿勢や平姿勢によって、ストッパアンクル74自身の重力がストッパアンクル74を揺動させるために必要な力に影響を及ぼすことを防止できる。したがって、上述の第1実施形態におけるストッパアンクル74の変形例によれば、内キャリッジ33(三角カム151)がストッパアンクル74を揺動させるのに必要な力が変化してしまうことを防止できる。

0156

ここで、内キャリッジ33の回転トルクががんぎ車124に伝達され、てんぷ101が自由振動するので、内キャリッジ33の回転トルクが変化しなければてんぷの振り角が変化しない。このため、バランサー76dによって内キャリッジ33のストッパアンクル74を揺動させるのに必要な力の変化を防止することにより、機械式時計1の歩度精度を確実に高めることができる。

0157

なお、上述の第1実施形態における変形例では、ストッパアンクル74のフォーク本体76aに、バランサー76dが一体成形されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、バランサー76dをフォーク本体76aとは別体に構成し、フォーク本体76aに取付けるように構成してもよい。この場合、フォーク本体76aにバランサー76dを圧入してもよいし、例えば、フォーク本体76aおよびバランサー76dにねじ等を形成し、フォーク本体76aに対してバランサー76dを着脱可能に設けてもよい。フォーク本体76aにバランサー76dを着脱可能に設けることにより、バランサー76dによるストッパアンクル74の重心位置の調整を容易に行うことが可能になる。

0158

(第2実施形態)
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図26図27に基づいて、この発明の第2実施形態を説明する。
図26は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230を、一方からみた斜視図、図27は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230を、他方からみた斜視図である。
この第2実施形態において、定力装置付トゥールビヨン230は、機械式時計1に組み込まれ、表輪列の回転を制御する機構である点は、上述の第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。

0159

第2実施形態の定力装置付トゥールビヨン230は、外キャリッジ232と、外キャリッジ232内に設けられ、この外キャリッジ232の回転軸線L21に直交する方向に回転軸線L26を有する内キャリッジ233と、を備えている。そして、内キャリッジ233に、てんぷ101および脱進機構120が設けられている。
ここで、第2実施形態の内キャリッジ233では、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されている。この点、前述の第1実施形態と大きく異なる。

0160

また、外キャリッジ232の外フレーム234は、地板11(図1図2参照)の表裏方向に対して直交する方向に長く形成されており、外キャリッジ232の回転軸線L21も地板11の表裏方向に対して直交する方向に設定されている。外キャリッジかな37は、外フレーム234の長手方向の端部に設けられており、表輪列の歯車と噛合されるようになっている。

0161

さらに、地板11側には、外キャリッジ232の外キャリッジかな37が設けられている側と反対側に、固定車231が設けられている。一方、外フレーム234には、固定車231の歯部231aと噛合されるアイドラ車205と、このアイドラ車205と噛合される定力ばね巻き上げ車254と、が設けられている。
ここで、固定車231の歯部231aとアイドラ車205は、それぞれの回転軸線が直交している。このため、固定車231とアイドラ車205とを、それぞれかさ歯車状に形成してもよい。この場合、アイドラ車205と、このアイドラ車205と一体となって回転し、定力ばね巻き上げ車254に噛合う外歯車を設ける必要がある。

0162

このような構成のもと、外フレーム234が回転すると、固定車231と噛合されたアイドラ車205が、固定車231の周り公転しながら自転しようとする。さらに、定力ばね巻き上げ車254に、アイドラ車205の回転力が伝達される。

0163

また、外キャリッジ232には、定力ばね巻き上げ車254に固定され、この定力ばね巻き上げ車254と一体に回転する回転プレート255が設けられている。この回転プレート255には、ストップ車69が設けられている。一方、内キャリッジ233には、ストップ車69の鉤部72に係合、解除可能な爪石(不図示)が設けられている。さらに、外キャリッジ232と内キャリッジ233との間には、これら外キャリッジ232と内キャリッジ233とを連結する不図示の定力ばねが設けられている。そして、この定力ばねのばね力によって、内キャリッジ233が回転するようになっている。

0164

このような構成のもと、内キャリッジ233が所定角度(具体的には、本第2実施形態では、6°)だけ回転すると、ストップ車69と爪石との係合が解除され、外キャリッジ232が所定角度(具体的には、本第2実施形態では、6°)だけ回転する。これにより、定力ばねが巻き上げられる。これを繰り返すことにより、内キャリッジ233および脱進機構120が一定速度で駆動し続ける。

0165

したがって、上述の第2実施形態によれば、内キャリッジ233と回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されていても、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。

0166

(第2実施形態の変形例)
なお、上述の第2実施形態では、外キャリッジ232の回転軸線L21と内キャリッジ233の回転軸線L26とが直交するように構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外キャリッジ232の回転軸線L21と内キャリッジ233の回転軸線L26とが交差するように構成されていればよい。
また、上述の第2実施形態では、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、内キャリッジ233と回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが平行であればよい。

0167

さらに、内キャリッジ233との回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7が斜めになるように設けてもよい。これについて、図28図29に基づいて、詳述する。

0168

図28は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230の変形例を示す斜視図、図29は、第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230の変形例を示す側面図である。
図28図29に示すように、内キャリッジ233には、この内キャリッジ233を外キャリッジ232に対して回転自在に支持する回転体261を有している。

0169

回転体261は、略円板状に形成されたベース部261aを有している。このベース部261aの径方向中央に、てん真203の一端が回転自在に支持されている。また、ベース部261aには、てん真203が支持されている側とは反対側の面261cで、かつてん真203の軸心(てんぷ101の回転軸線L7)からはずれた位置に、ほぞ部261bが突設されている。ほぞ部261bは、てん真203の軸心に対して斜めに延出している。このように構成されたほぞ部261bは、外キャリッジ232の軸受座235に設けられている穴石235aに回転自在に支持されている。
つまり、ほぞ部261bの軸心が、内キャリッジ233の回転軸線L26となり、この回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7が傾いた状態になる。ベース部261aも、面方向が回転軸線L26に対して傾いた状態で配置される。

0170

一方、内キャリッジ233の回転体261とは反対側には、中間回転体262が設けられている。この中間回転体262は、外キャリッジ232と内キャリッジ233との間に配置されている。そして、中間回転体262は、外キャリッジ232に対して回転自在に支持されている。また、中間回転体262に、内キャリッジ233の回転体261とは反対側が回転自在に支持されている。

0171

より具体的には、中間回転体262は、回転体261のベース部261aに対して平行に延在するベース部262aを有している。このベース部262aに、ストップ車69等が設けられている。また、ベース部262aの面方向略中央には不図示の穴石が設けられており、この穴石に内キャリッジ233の下ほぞ部261dが回転自在に支持されている。この下ほぞ部261dは、てん真203と同軸上に設けられている。

0172

さらに、ベース部262aには、てん真293が支持されている側とは反対側の面262cで、かつてんぷ101の回転軸線L7からはずれた位置に、軸部262bが突設されている。軸部262bは、てん真203の軸心に対して斜めに延出している。このように構成された軸部262bは、外キャリッジ232の軸受座236に設けられている玉軸受(不図示)に回転自在に支持されている。
つまり、軸部262bの軸心が、内キャリッジ233の回転軸線L26となり、この回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7が傾いた状態になる。ベース部262aも、面方向が回転軸線L26に対して傾いた状態で配置される。

0173

ここで、前述の第2実施形態のように、2つのキャリッジ(外キャリッジ232および内キャリッジ233)で構成しつつ、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されていると、てんぷ101の向く方向に制限ができてしまう。
このため、上述の第2実施形態の変形例のように、内キャリッジ233の回転軸線L26に対し、てんぷ101の回転軸線L7を傾かせることにより、てんぷ101の向く方向を拡大することができる。この分、立姿勢差および平立差を同時に抑制できる。

0174

なお、内キャリッジ233の回転軸線L26に対するてんぷ101の回転軸線L7の傾斜角θは、45°であることが望ましい。傾斜角θを45°に設定することにより、立姿勢差や平立差を最も効果的に抑制できる。これは、以下のような理由からである。

0175

すなわち、傾斜角θを45°とした場合であっても、内キャリッジ233内において、てんぷ101の向く方向に限界がある。しかしながら、立姿勢の場合にてんぷ101が向く方向の全範囲と、平姿勢の場合にてんぷ101が向く方向の全範囲との両者を考慮すると、てんぷ101は、あらゆる全ての方向に向くことになる。換言すれば、てんぷ101の向く方向とその頻度が、立姿勢と平姿勢とでほぼ同じになる。このため、平姿勢にあるときと、立姿勢にあるときとの間に生じる歩度精度の誤差を解消することができる。

0176

これに対し、傾斜角θが45°よりも小さい場合、立姿勢の場合にてんぷ101が向く方向の全範囲と、平姿勢の場合にてんぷ101の向く方向の全範囲との両者を考慮してもてんぷ101の向かない方向が存在してしまう。すなわち、立姿勢の場合にてんぷ101が向く方向の全範囲と、平姿勢の場合にてんぷ101の向く方向の全範囲が異なる。このため、平姿勢にあるときと、立姿勢にあるときとの間に生じる歩度精度の誤差を解消することができない。よって、傾斜角θは、45°であることが望ましい。

0177

(第3実施形態)
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図30図32に基づいて、この発明の第3実施形態を説明する。
図30は、第3実施形態における定力装置付トゥールビヨン330を、一方からみた斜視図、図31は、第3実施形態における定力装置付トゥールビヨン330を、他方からみた斜視図、図32は、第3実施形態におけるストップ車369とストッパ373の位置関係を示す斜視図である。

0178

図30図32に示すように、前述の第1実施形態と第3実施形態との相違点は、前述の第1実施形態では、ストップ車69の回転軸線L4と、ストッパアンクル74の揺動軸線(ストッパアンクル真79の軸線L5)とが、直交していたのに対し、第3実施形態では、これら回転軸線L4と揺動軸線(ストッパアンクル真379の軸線L5)とが、平行になっている点にある。

0179

より具体的には、ストップ車369は、外フレーム334における径方向で軸受ホルダ51よりも内側に配置されている。そして、ストップ車369は、その回転軸線が軸受ホルダ51(玉軸受52)の軸線と同一直線上となるように配置されている。
また、ストッパ373のストッパアンクル374は、ストップ車369と係合、解除可能なストッパアンクル体375と、内キャリッジ33に設けられている三角カム(この第3実施形態では不図示)と係合するフォーク部376と、がそれぞれ別体で構成されている。

0180

これらストッパアンクル体375とフォーク部376は、互いに外キャリッジ332の径方向で対向するように配置されており、それぞれの基端側がストッパアンクル真379に圧入されて支持されている。そして、ストッパアンクル体375とフォーク部376との間に、ストッパアンクル体375側から順に、ストップ車369、定力ばね巻き上げ車54、位相規制プレート153、定力ばね59、および三角カム151が配置されている。

0181

一方、ストッパアンクル真379は、外フレーム334の軸受部80に回転自在に支持されており、その軸線L5が定力ばね巻き上げ車54の回転軸線(ストップ車369の回転軸線L4)と平行になっている。
ストッパアンクル体375は、ストップ車369の回転軸線L4方向からみて略C字状に形成されている。より具体的には、ストッパアンクル体375は、ストッパアンクル真379からストップ車369の周方向に沿って地板11(図1図2参照)の表裏方向に向かってそれぞれ延び、全体として約半円分延在している。ストッパアンクル体375の2つの先端部には、それぞれストップ車369の鉤部72と係合、解除可能な爪部378a,378bが一体成形されている。

0182

このような構成のもと、内キャリッジ33の回転に伴って三角カム151が回転すると、この三角カム151に係合されているストッパアンクル374のフォーク部376がストッパアンクル真379回りに揺動する。さらに、ストッパアンクル体375も、ストッパアンクル真379回りに揺動する。そして、ストップ車369の鉤部372に対し、ストッパアンクル体375の爪部378a,378bが、それぞれ係合、解除を繰り返す。

0183

ここで、ストップ車369の鉤部372とストッパアンクル374の2つの爪部378a,378bは、それぞれ鉤部372に爪部378a,378bが当接した状態の際にかかる荷重(噛合力)のベクトルF31が、ストッパアンクル真379の軸線L5上を通るように形成されている。

0184

したがって、上述の第3実施形態によれば、ストップ車369の回転軸線L4と、ストッパアンクル374の揺動軸線(ストッパアンクル真379の軸線L5)とが平行になっている場合において、ストップ車369の鉤部372とストッパアンクル374の爪部378a,378bとの噛合力によって、ストッパアンクル374に、ストッパアンクル真379回りの回転力が作用してしまうことを防止できる。
この結果、内キャリッジ33に、三角カム151を介して余計な回転力が作用することがない。よって、内キャリッジ33を回転させるために必要な回転トルクを最小限に抑えることができる。

0185

また、ストップ車369と定力ばね巻き上げ車54とを同軸に配置して一体化できるので、前述の第1実施形態におけるストップ車駆動車68を設ける必要がなくなる。このため、前述の第1実施形態と比較して、定力装置付トゥールビヨン330の部品点数を減少させることができる。
さらに、ストッパ373(ストッパアンクル374)も小型化できると共に、ストッパアンクル374をL字状に形成する必要がなくなるので、ストッパアンクル374の剛性を高めることができる。

0186

(第3実施形態の変形例)
なお、上述の第3実施形態では、ストップ車369は、外フレーム334における径方向で軸受ホルダ51よりも内側に配置され、その回転軸線が軸受ホルダ51(玉軸受52)の軸線と同一直線上となるように配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ストップ車369の回転軸線L4と、ストッパアンクル374の揺動軸線(ストッパアンクル真379の軸線L5)とが、略平行になるように設けられていればよい。

0187

また、上述の第3実施形態では、ストッパ373のストッパアンクル374は、ストッパアンクル体375と、フォーク部376と、がそれぞれ別体で構成されている場合について説明した。そして、これらストッパアンクル体375とフォーク部376は、互いに外キャリッジ332の径方向で対向するように配置されており、それぞれの基端側がストッパアンクル真379に圧入されて支持されている場合について説明した。しかしながら、ストッパアンクル374の形状は、これに限られるものではなく、以下のように構成してもよい。

0188

図33は、第3実施形態におけるストッパアンクル374の変形例を示す斜視図である。
同図に示すように、ストッパアンクル374のフォーク部376には、ストッパアンクル真379を挟んで反対側に、バランサー380が一体成形されている。バランサー380は、フォーク部376と同一材料で形成された錘であって、フォーク部376のアーム部376b、およびストッパアンクル真379の軸線L5と直交する方向に沿って延出形成されている。また、バランサー380は、ストッパアンクル真379を挟んで両側にそれぞれ配置された2つの錘本体380aを有している。これら錘本体380aは、ストッパアンクル真379の軸線L5方向からみて1/4円状に形成されている。

0189

バランサー380を設けることにより、ストッパアンクル374全体の重心は、ストッパアンクル真79の軸線L5上に位置する。このため、機械式時計1の立姿勢や平姿勢によって、ストッパアンクル374自身の重力がストッパアンクル74を揺動させるために必要な力に影響を及ぼすことを防止できる。したがって、上述の第3実施形態におけるストッパアンクル74の変形例によれば、内キャリッジ33(三角カム151)がストッパアンクル74を揺動させるのに必要な力が変化してしまうことを防止できる。よって、機械式時計1の歩度精度を確実に高めることができる。

0190

なお、上述の第3実施形態における変形例では、ストッパアンクル374のフォーク部376に、バランサー380が一体成形されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、バランサー380をフォーク部376とは別体に構成し、フォーク部376に取付けるように構成してもよい。

0191

この場合、フォーク部376にバランサー380を圧入してもよいし、例えば、フォーク部376およびバランサー380にねじ等を形成し、フォーク部376に対してバランサー380を着脱可能に設けてもよい。フォーク部376にバランサー380を着脱可能に設けることにより、バランサー380によるストッパアンクル374の重心位置の調整を容易に行うことが可能になる。
また、フォーク部376に代えて、ストッパアンクル374のストッパアンクル体375にバランサー380を設けてもよい。すなわち、バランサー380によって、ストッパアンクル374全体として、重心がストッパアンクル真79の軸線L5上に位置するように構成されていればよい。

0192

(第4実施形態)
(定力装置付トゥールビヨン)
次に、図34図35に基づいて、この発明の第4実施形態を説明する。
図34は、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430を一方からみた斜視図、図35は、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430を他方からみた斜視図である。なお、第4実施形態において、前述の第2実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
図34図35に示すように、第4実施形態における定力装置付トゥールビヨン430は、前述の第2実施形態における定力装置付トゥールビヨン230に、さらに第3キャリッジ404を追加した構成になっている。

0193

より具体的には、第3キャリッジ404は、外キャリッジ232を外側から囲むように形成された第3フレーム406を有している。第3フレーム406の基本的構成は、前述の第1実施形態の外キャリッジ32と同様である。
すなわち、第3フレーム406は、裏ベース部35、表ベース部36、これら裏ベース部35と表ベース部36とに跨るように設けられた縦フレーム39、および横フレーム41を主構成としている。裏ベース部35には、ほぞ部35aが設けられている。一方、表ベース部36には、第3キャリッジかな437と、この第3キャリッジかな437から突出するほぞ部437aが設けられている。

0194

そして、裏側キャリッジ受24に、裏ベース部35のほぞ部35aが回転自在に支持されていると共に、表側キャリッジ受23に、第3キャリッジかな437のほぞ部437aが回転自在に支持されている。また、第3キャリッジかな437に表輪列が噛合され、この第3キャリッジかな437を介して表輪列の回転力が第3キャリッジ404に伝達される。

0195

また、第3キャリッジ404の表側には、固定車31が設けられている。さらに、第3フレーム406の横フレーム41には、2つの外キャリッジ軸受部442a,442bが、第3キャリッジ404の回転軸線L8を中心にして対向するように設けられている。これら外キャリッジ軸受部442a,442bは、外キャリッジ232を回転自在に支持するためのものであって、それぞれ不図示の穴石を備えている。

0196

2つの外キャリッジ軸受部442a,442bのうちの一方(図35における右側)の外キャリッジ軸受部442bには、内面側に外キャリッジ駆動用固定車431が設けられている。外キャリッジ駆動用固定車431は、前述の第2実施形態における固定車231に相当するものであって、外キャリッジ軸受部442bの穴石(不図示)と同軸上で、かつ、固定車31と噛合わないように配置されている。また、外キャリッジ駆動用固定車431の径方向中央には、外キャリッジ232の長手方向一端側に設けられたほぞを挿通可能な開口部(何れも不図示)が形成されている。これにより、一方の外キャリッジ軸受部442bに、外キャリッジ232の長手方向一端が回転自在に支持される。

0197

外キャリッジ232の長手方向他端図34における右端)には、外キャリッジ駆動車405が設けられている、この外キャリッジ駆動車405は、外フレーム234と一体化されている。また、外キャリッジ駆動車405の径方向中央には、不図示のほぞが突設されている。このほぞが、他方の外キャリッジ軸受部442aに回転自在に支持されている。このように、第3キャリッジ404内において、外キャリッジ232は、回転軸線L21が第3キャリッジ404の回転軸線L8に対して直交するように配置されている。また、外キャリッジ駆動車405は、固定車31と噛合されている。

0198

このような構成ものと、内キャリッジ233が所定角度だけ回転し、外キャリッジ232に設けられたストップ車69と、内キャリッジ233に設けられた爪石との係合が解除されると、第3キャリッジ404が所定角度だけ回転する。第3キャリッジ404が回転すると、外キャリッジ232が第3キャリッジ404の回転軸線L8回りに回転する。このとき、外キャリッジ232の外キャリッジ駆動車405が固定車31に噛合されているので、外キャリッジ232は、第3キャリッジ404の回転軸線L8回りに回転しつつ、外キャリッジ232の回転軸線L21回りに回転する。

0199

すると、第3キャリッジ404に設けられた外キャリッジ駆動用固定車431に噛合されたアイドラ車205が、外キャリッジ駆動用固定車431の周りを公転しながら自転する。さらに、アイドラ車205と噛合されている定力ばね巻き上げ車254が回転し、不図示の定力ばねが巻き上げられる。これを繰り返すことにより、内キャリッジ233および脱進機構120が一定速度で駆動し続ける。

0200

ここで、前述の第2実施形態のように、2つのキャリッジ(外キャリッジ232および内キャリッジ233)で構成しつつ、内キャリッジ233の回転軸線L26と、てんぷ101の回転軸線L7とが同一直線上に設定されていると、てんぷ101の向く方向に制限ができてしまう。
しかしながら、この第4実施形態のように、前述の第2実施形態の2つのキャリッジ232,233に加えてさらに第3キャリッジ404を設け、この第3キャリッジ404の回転軸線L8と、外キャリッジ232の回転軸線L21とを直交させるように構成することにより、てんぷ101をあらゆる全ての方向に向かせることができる。

0201

また、前述の第2実施形態では、外キャリッジかな37と表輪列の歯車とを噛合わせるために、この歯車の向きを他の表輪列の歯車に対して直交させるように設けたり、外キャリッジ232を回転自在に支持するために、地板11等に加工が必要だったりした。しかしかしながら、第4実施形態のように構成することで、表輪列の歯車の向きを全て通常の向きとしたままで、この歯車を第3キャリッジかな437と噛合わせることができる。さらに、表側キャリッジ受23や裏側キャリッジ受24(図2参照)に、第3キャリッジ404を回転自在に支持させることが可能になる。

0202

なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の第1〜第4実施形態(各実施形態の変形例も含む)の構成を、任意に組み合わせてもよい。

0203

また、上述の第1〜第3実施形態では、定力装置付トゥールビヨン30,230,330を、2つのキャリッジ(外キャリッジ32,232,332および内キャリッジ33,233)で構成し、上述の第4実施形態では、定力装置付トゥールビヨン430を3つのキャリッジ(外キャリッジ232、内キャリッジ233および第3キャリッジ404)で構成した場合について説明した。
しかしながら、これらに限られるものではなく、4つ以上のキャリッジで構成してもよい。この場合であっても、少なくとも隣り合う2つのキャリッジの間に、定力ばね59を設けると共に、少なくとも2つのキャリッジの回転軸線が交差していればよい。

0204

さらに、4つ以上のキャリッジで構成する場合、最もてんぷ101に近い隣り合う2つのキャリッジの間に、定力ばね59を設けることが望ましい。このように構成することで、てんぷ101が設けられているキャリッジに安定的に回転力を付与することができる。この結果、てんぷ101の振り角の変動を抑制できる。

0205

1…機械式時計
3…定力装置
10…ムーブメント
22…香箱車(輪列)
25…二番車(輪列)
26…三番車(輪列)
30,230,330,430…定力装置付トゥールビヨン(動作安定機構)
31…固定車
32,232,332…外キャリッジ
33,233…内キャリッジ
54,254…定力ばね巻き上げ車
56…係合ピン
59…定力ばね
68…ストップ車駆動車
69,369…ストップ車
73,373…ストッパ
74,374…ストッパアンクル(アーム)
76d,380…バランサー
78a,78b…爪石(爪部)
101…てんぷ
120…脱進機構(脱進調速機構)
124…がんぎ車
153…位相規制プレート(規制板)
378a,378b…爪部
404…第3キャリッジ(キャリッジ)
F1,F31…荷重のベクトル(噛合力のベクトル)
L1,L6,L7,L8,L21,L26…回転軸線
L5…軸線(揺動軸線)

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 深せん市は灯貿易有限公司の「 三色時間表示掛け時計」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】ベルト伝動によって指針を継続的に安定に回転させ、同時に灯された表示ランプを段々に遮ることによって時間の流れを表示し、表示ランプの色によって人々の注意を引くことができる三色時間表示掛け時計を提供... 詳細

  • 青島七盛箱包有限公司の「 埋め込み式創意掛け時計」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】美観性と機動性を高めた埋め込み式創意掛け時計を提供する。【解決手段】壁主体10を含み、壁主体10の中には昇降チャンバ11が設置され、収縮溝13の中には閉鎖ブロック15がスライドできるように設置... 詳細

  • セイコークロック株式会社の「 時計」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】複雑に動作する装飾体を備えた時計を提供する。【解決手段】時計は、地板20と、地板20に対して所定の中心軸線O回りに相対回転可能な回転板30と、回転板30に回転可能に支持され、地板20に対する回... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ