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技術 対象構造物を補修又は補強する方法及びそれに用いる粘接着シート

出願人 大日本印刷株式会社
発明者 築山一樹星健太郎
出願日 2015年3月16日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-051605
公開日 2016年9月23日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2016-169576
状態 特許登録済
技術分野 既存建築物への作業 接着テープ トンネルの覆工・支保 接着剤、接着方法
主要キーワード 作業者負担 工業用ドライヤ 公営住宅 熱風送風機 接着剤塗布層 接着層形成用組成物 海岸堤防 河川管理施設
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

補修用又は補強用シートコンクリート等の対象構造物に貼り合わせる際に、そのシートを対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定でき、対象構造物の補修又は補強を容易に行うことができる方法及び補修又は補強用粘接着シートを提供する。

解決手段

粘接着シート10を用いて対象構造物を補修又は補強する方法であって、粘接着層2と補修又は補強部材3とを備えた粘接着シート10を準備する工程と、粘接着シート10に電離放射線照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて粘接着層2の硬化を開始する工程と、硬化を開始した後、粘接着層2を対象構造物に貼り合わせる工程とを有し、その貼り合わせる工程において、貼り合わせと同時に加熱する又は貼り合わせた後に加熱する方法によって上記課題を解決する。貼り合わせる工程において、加熱とともに加圧も行ってもよい。

概要

背景

我が国の高度経済成長時代には、道路治水下水道港湾公営住宅公園海岸空港航路標識、官施設等、多くの社会インフラ整備された。こうした社会インフラも年月とともに老朽化してきており、全てを同時期に新しく創り換えることはできないため、補修補強を行いながら順次創り換えを行っているのが現状である。

補修や補強(以下「補修・補強」とも表す。)は、安全性の観点からの当面の緊急課題であり、例えば公共施設を中心に、老朽化した多くの社会インフラの補修・補強を行う必要がある。しかし、補修・補強の必要性は認識しつつも、多くの問題がある。例えば、A)トンネルだけでも1万本以上あるように、補修・補強を行う必要性のある老朽化した社会インフラの数が膨大であること、B)補修・補強技術、目視打音等の検査技術等、手間と時間がかかる作業が多い上に、そうした作業の標準化ができておらず、作業ノウハウ伝承が十分ではなく、効率的な作業を実現できていないこと、C)インフラ整備には、人件費も含めて多くの費用が必要であること、等の問題がある。

ところで、補修・補強方法のうち、例えばトンネル内のコンクリートの補修・補強方法については幾つか提案されている。例えばトンネル内のコンクリートのうち、補修・補強が必要な部分に接着剤塗料等を数回にわたり塗り重ねる方法、シート補修用補強用として接着させる方法が提案されている。なかでも、補修・補強用シートは、水、酸素炭酸ガス、又は塩化物イオン等のコンクリート劣化因子がコンクリートに浸入するのを防ぐとともに、劣化して強度が低下しているコンクリートを補強するために好ましく使用される。補修・補強用シートを用いたコンクリートの補修・補強に関する技術は種々提案されている。

特許文献1には、樹脂フィルムを有する中間層とその両面に接着樹脂を介して積層された布帛材料からなる表面層とを備えたコンクリート補修用シートを、補修すべきコンクリート面に施工用接着剤貼付し、その後、貼付したコンクリート補修用シートのコンクリート面とは反対側の表面層に塗料を塗布するコンクリートの補修方法に関する技術が提案されている。この技術によれば、コンクリート面と接する表面層は表面積が大きい布帛材料であるから、コンクリート面が垂直であったり天井面であったりしても、施工用接着剤が完全に硬化する前からコンクリート補修用シートが落下したり剥がれたりしにくく、また、施工品質も高いとのことである。また、コンクリート補修用シートにより施工用接着剤と塗料が完全に遮断されているため、施工用接着剤の硬化を待って塗料を塗布することなく、施工時間が短縮可能であるとのことである。

特許文献2には、保護層と接着剤塗布層とを接着するとともに接着剤塗布層のコンクリート構造物への接着面に粘着剤又はホットメルト型接着剤である接着剤層を形成したコンクリート構造物の補修、補強、劣化防止用シートに関する技術が提案されている。この技術によれば、この補修、補強、劣化防止用シートを現場で補修が必要な部分に貼付することで、コンクリートの剥落を防止するための補修や補強の作業を軽減、短縮化、及び品質の安定化をなし得るとのことである。

特許文献3には、紫外線を受けると硬化し接着する光硬化型繊維強化樹脂シートを、コンクリート構造物の補修必要箇所の表面へ当てがい、紫外線により硬化させて接着しコンクリート構造物を補修、補強する方法が提案されている。この技術は、コンクリート構造物の補修必要箇所の表面へ当てがった光硬化型繊維強化樹脂シートを可塑化する温度に加熱して可塑化状態軟化させ、シートに圧力を加えてコンクリート表面へ強く密着させ、シートに紫外線を照射して硬化させ、コンクリート表面へ接着させて補修、補強するというものである。

概要

補修用又は補強用のシートをコンクリート等の対象構造物に貼り合わせる際に、そのシートを対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定でき、対象構造物の補修又は補強を容易に行うことができる方法及び補修又は補強用粘接着シートを提供する。粘接着シート10を用いて対象構造物を補修又は補強する方法であって、粘接着層2と補修又は補強部材3とを備えた粘接着シート10を準備する工程と、粘接着シート10に電離放射線を照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて粘接着層2の硬化を開始する工程と、硬化を開始した後、粘接着層2を対象構造物に貼り合わせる工程とを有し、その貼り合わせる工程において、貼り合わせと同時に加熱する又は貼り合わせた後に加熱する方法によって上記課題を解決する。貼り合わせる工程において、加熱とともに加圧も行ってもよい。

目的

さらに詳しくは、対象構造物の補修又は補強作業を大幅に省略化でき、短時間で行うことができ、且つ作業者の技量に関係なく均一に補修又は補強できる方法であって、紫外線等を照射した後の補修又は補強用粘接着シートを対象構造物に貼り合わせ、その後に対象構造物の通常環境温度で硬化を進行させる方法、及びその方法に用いる補修又は補強用粘接着シートを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

接着シートを用いて対象構造物補修又は補強する方法であって、粘接着層と補修又は補強部材とを備えた粘接着シートを準備する工程と、前記粘接着シートに電離放射線照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて前記粘接着層の硬化を開始する工程と、前記硬化を開始した後、前記粘接着層を前記対象構造物に貼り合わせる工程とを有し、前記貼り合わせる工程において、前記貼り合わせと同時に加熱する、又は前記貼り合わせた後に加熱する、ことを特徴とする方法。

請求項2

前記貼り合わせる工程において、前記加熱とともに加圧も行う、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記対象構造物に貼り合わせた後の前記粘接着シートの硬化が、前記対象構造物の環境温度で進行する、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

前記補修又は補強部材が、前記粘接着層の内部に含まれている、又は前記粘接着層の一方の面に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

前記硬化を開始する工程での電離放射線の照射又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線の照射を、少なくとも一方の粘接着層側から行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で用いられることを特徴とする粘接着シート。

請求項7

対象構造物に貼り合わせて前記対象構造物を補修又は補強する粘接着シートであって、電離放射線硬化性樹脂と電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化合物とを含む粘接着層と、前記粘接着層の少なくとも片面に設けられた耐熱性剥離フィルムと、前記粘接着層内又は前記粘接着層の一方の面に設けられた補修又は補強部材とを有し、前記対象構造物に貼り合わされる側の反対面に配置された前記剥離フィルム又は前記補修又は補強部材が耐熱性を有することを特徴とする粘接着シート。

請求項8

前記耐熱性の剥離フィルム又は補修又は補強部材は、前記粘接着シートを前記対象構造物に貼り合わせる際の加熱に対して配置されるもの、又はその加熱とともに加えられる圧力に対して配置される、請求項7に記載の粘接着シート。

請求項9

前記化合物は、前記電離放射線を受けた後の重合開始物質の放出が前記対象構造物の通常環境温度で進行する、請求項6に記載の粘接着シート。

請求項10

前記補修又は補強部材が、前記粘接着層の内部に含まれている、又は前記粘接着層の一方の面に設けられている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の粘接着シート。

技術分野

0001

本発明は、対象構造物補修又は補強する方法、及びそれに用いる補修又は補強用接着シートに関する。さらに詳しくは、対象構造物の補修又は補強作業を大幅に省略化でき、短時間で行うことができ、且つ作業者の技量に関係なく均一に補修又は補強できる方法であって、紫外線等を照射した後の補修又は補強用粘接着シートを対象構造物に貼り合わせ、その後に対象構造物の通常環境温度で硬化を進行させる方法、及びその方法に用いる補修又は補強用粘接着シートを提供する。

背景技術

0002

我が国の高度経済成長時代には、道路治水下水道港湾公営住宅公園海岸空港航路標識、官施設等、多くの社会インフラ整備された。こうした社会インフラも年月とともに老朽化してきており、全てを同時期に新しく創り換えることはできないため、補修や補強を行いながら順次創り換えを行っているのが現状である。

0003

補修や補強(以下「補修・補強」とも表す。)は、安全性の観点からの当面の緊急課題であり、例えば公共施設を中心に、老朽化した多くの社会インフラの補修・補強を行う必要がある。しかし、補修・補強の必要性は認識しつつも、多くの問題がある。例えば、A)トンネルだけでも1万本以上あるように、補修・補強を行う必要性のある老朽化した社会インフラの数が膨大であること、B)補修・補強技術、目視打音等の検査技術等、手間と時間がかかる作業が多い上に、そうした作業の標準化ができておらず、作業ノウハウ伝承が十分ではなく、効率的な作業を実現できていないこと、C)インフラ整備には、人件費も含めて多くの費用が必要であること、等の問題がある。

0004

ところで、補修・補強方法のうち、例えばトンネル内のコンクリートの補修・補強方法については幾つか提案されている。例えばトンネル内のコンクリートのうち、補修・補強が必要な部分に接着剤塗料等を数回にわたり塗り重ねる方法、シート補修用・補強用として接着させる方法が提案されている。なかでも、補修・補強用シートは、水、酸素炭酸ガス、又は塩化物イオン等のコンクリート劣化因子がコンクリートに浸入するのを防ぐとともに、劣化して強度が低下しているコンクリートを補強するために好ましく使用される。補修・補強用シートを用いたコンクリートの補修・補強に関する技術は種々提案されている。

0005

特許文献1には、樹脂フィルムを有する中間層とその両面に接着樹脂を介して積層された布帛材料からなる表面層とを備えたコンクリート補修用シートを、補修すべきコンクリート面に施工用接着剤貼付し、その後、貼付したコンクリート補修用シートのコンクリート面とは反対側の表面層に塗料を塗布するコンクリートの補修方法に関する技術が提案されている。この技術によれば、コンクリート面と接する表面層は表面積が大きい布帛材料であるから、コンクリート面が垂直であったり天井面であったりしても、施工用接着剤が完全に硬化する前からコンクリート補修用シートが落下したり剥がれたりしにくく、また、施工品質も高いとのことである。また、コンクリート補修用シートにより施工用接着剤と塗料が完全に遮断されているため、施工用接着剤の硬化を待って塗料を塗布することなく、施工時間が短縮可能であるとのことである。

0006

特許文献2には、保護層と接着剤塗布層とを接着するとともに接着剤塗布層のコンクリート構造物への接着面に粘着剤又はホットメルト型接着剤である接着剤層を形成したコンクリート構造物の補修、補強、劣化防止用シートに関する技術が提案されている。この技術によれば、この補修、補強、劣化防止用シートを現場で補修が必要な部分に貼付することで、コンクリートの剥落を防止するための補修や補強の作業を軽減、短縮化、及び品質の安定化をなし得るとのことである。

0007

特許文献3には、紫外線を受けると硬化し接着する光硬化型繊維強化樹脂シートを、コンクリート構造物の補修必要箇所の表面へ当てがい、紫外線により硬化させて接着しコンクリート構造物を補修、補強する方法が提案されている。この技術は、コンクリート構造物の補修必要箇所の表面へ当てがった光硬化型繊維強化樹脂シートを可塑化する温度に加熱して可塑化状態軟化させ、シートに圧力を加えてコンクリート表面へ強く密着させ、シートに紫外線を照射して硬化させ、コンクリート表面へ接着させて補修、補強するというものである。

先行技術

0008

特開2010−144360号公報
特開2004−27718号公報
特開2005−120820号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、特許文献1で提案された技術では、コンクリートの補修作業時に、施工用接着剤をコンクリート又はコンクリート補修用シートに塗布して用いるので、作業性が悪いという問題があった。また、施工用接着剤の塗布量を一定にできないので、補修作業の再現性が低くなるという問題があった。また、計量作業で施工用接着剤が手に着いたり、顔にかかったりするおそれがあり、慣れない作業者では作業者負担が大きいという難点があった。

0010

また、特許文献2で提案された技術では、接着剤層が粘着剤又はホットメルト型接着剤であるので、例えば、接着剤層が粘着剤である場合は、接着性が不十分であるという問題があった。また、接着剤層がホットメルト型接着剤である場合は、接着時の加熱により接着剤が軟化して流動するおそれがあるため、コンクリート面が垂直面であったり天井面であったりすると、シートをコンクリート面に接着させるのが難しいという問題があった。

0011

また、特許文献3で提案された技術では、光硬化性繊維強化樹脂シートを補修必要箇所に当てがった後に熱と圧力を加えて密着させ、その後に紫外線を照射して硬化しているので、施行箇所が大面積の壁や天井のような場合には、熱や圧力を加えながら密着させたり、シートの硬化も貼り合わせた後に行うという難しい作業が必要となる。特に、紫外線照射装置を持ち歩く必要があり、大面積の天井や壁面での作業は高所に装置を向けて紫外線照射するために負担が大きく、危険を伴うおそれもある。

0012

また、補修する対象構造物の表面凹凸が大きい場合、上記した各技術では、その表面凹凸に合わせて補修・補強シートを貼り合わせることは難しかった。

0013

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、補修用又は補強用のシートをコンクリート等の対象構造物に貼り合わせる際に、そのシートを対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定でき、対象構造物の補修又は補強を容易に行うことができる補修又は補強方法、及びその方法に用いる補修又は補強用粘接着シートを提供することにある。

課題を解決するための手段

0014

(1)上記課題を解決するための本発明に係る補修又は補強方法は、粘接着シートを用いて対象構造物を補修又は補強する方法であって、粘接着層と補修又は補強部材とを備えた粘接着シートを準備する工程と、前記粘接着シートに電離放射線を照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて前記粘接着層の硬化を開始する工程と、前記硬化を開始した後、前記粘接着層を前記対象構造物に貼り合わせる工程とを有し、前記貼り合わせる工程において、前記貼り合わせと同時に加熱する、又は前記貼り合わせた後に加熱する、ことを特徴する。

0015

本発明に係る補修又は補強方法において、前記貼り合わせる工程において、前記加熱とともに加圧も行うように構成できる。

0016

本発明に係る補修又は補強方法において、前記対象構造物に貼り合わせた後の前記粘接着シートの硬化が、前記対象構造物の環境温度で進行するように構成できる。

0017

本発明に係る補修又は補強方法において、前記補修又は補強部材が、前記粘接着層の内部に含まれている、又は前記粘接着層の一方の面に設けられているように構成できる。

0018

本発明に係る補修又は補強方法において、前記硬化を開始する工程での電離放射線の照射又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線の照射を、少なくとも一方の粘接着層側から行うように構成してもよい。

0019

(2)上記課題を解決するための本発明に係る粘接着シートは、上記本発明に係る方法で用いられることを特徴とする。

0020

(3)上記課題を解決するための本発明に係る粘接着シートは、対象構造物に貼り合わせて前記対象構造物を補修又は補強する粘接着シートであって、
電離放射線硬化性樹脂と電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化合物とを含む粘接着層と、
前記粘接着層の少なくとも片面に設けられた剥離フィルムと、
前記粘接着層内又は前記粘接着層の一方の面に設けられた補修又は補強部材と、を有し、
前記対象構造物に貼り合わされる側の反対面に配置された前記剥離フィルム又は前記補修又は補強部材が耐熱性を有することを特徴とする。

0021

本発明に係る粘接着シートにおいて、前記耐熱性の剥離フィルム又は、補修又は補強部材は、前記粘接着シートを前記対象構造物に貼り合わせる際の加熱に対して配置されるもの、又はその加熱とともに加えられる圧力に対して配置されるものであるように構成できる。

0022

本発明に係る粘接着シートにおいて、前記化合物は、前記電離放射線を受けた後の重合開始物質の放出が前記対象構造物の通常環境温度で進行するように構成できる。

0023

本発明に係る粘接着シートにおいて、前記補修又は補強部材が、前記粘接着層の内部に含まれている、又は前記粘接着層の一方の面に設けられているように構成してもよい。

発明の効果

0024

本発明によれば、補修用又は補強用のシートをコンクリート等の対象構造物に貼り合わせる際に、そのシートを対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定でき、対象構造物の補修又は補強を容易に行うことができる補修又は補強方法、及びその方法に用いる補修又は補強用粘接着シートを提供することができる。その結果、社会インフラの整備に関する問題のうち、例えばトンネルや建造物等のような補修・補強を必要とする多くの社会インフラの補修又は補強作業を大幅に省略化でき、且つ短時間で行うことができる。特に、表面凹凸が比較的大きい対象構造物に対して好ましく適用することができる。

図面の簡単な説明

0025

補修又は補強部材を備えた粘接着層(A)、その粘接着層の片面に剥離フィルムを設けた補修又は補強用粘接着シート(B)、及びその粘接着層の両面に剥離フィルムを設けた補修又は補強用粘接着シート(C)を示す模式的な断面図である。
剥離シートと粘接着層と補修又は補強部材とを備えた補修又は補強用粘接着シート(A)及び接着層と補修又は補強部材とを備えた補修又は補強用粘接着シート(B)を示す模式的な断面図である。
粘接着層と補修又は補強部材とを少なくとも備えた補修又は補強用粘接着シートの例を示す模式的な断面図である。

0026

以下、本発明に係る補修又は補強方法、及び補修又は補強用粘接着シートについて説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

0027

[補修又は補強方法]
本発明に係る補修又は補強方法は、図1図3にその一例を示す補修又は補強用粘接着シート10を用いて対象構造物を補修又は補強する方法である。そして、その特徴は、粘接着層2と補修又は補強部材3とを備えた粘接着シート10を準備する工程(準備工程)と、その粘接着シート10に電離放射線を照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて粘接着層2の硬化を開始する工程(硬化開始工程)と、硬化を開始した後、粘接着層2を対象構造物に貼り合わせる工程(貼合工程)とを有し、その貼り合わせる工程において、貼り合わせと同時に加熱する、又は貼り合わせた後に加熱することにある。

0028

この方法は、粘接着シート10に電離放射線を照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて粘接着層2の硬化が開始した後に、その粘接着層2を対象構造物に貼り合わせる。そして、その貼り合わせ後においては、対象構造物に貼り合わせた後の粘接着シート10の硬化が、その対象構造物の環境温度で進行することから、特段硬化処理は行わず、意図的な硬化作業を行わない。そのため、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせ、そのままにして次の作業や段取りを行っている間に、その粘接着シート10が硬化して対象構造物に接着することができる。特に、貼り合わせる工程において、貼り合わせと同時に加熱する、又は貼り合わせた後に加熱する方法であることから、粘接着シート10を対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定できるという利点がある。その結果、表面凹凸が比較的大きい対象構造物の補修又は補強(補修・補強と略す。)の作業を段取りよく効率的に行うことができ、トータルの作業時間の短縮化を図ることができる。このような省エネ方法により、特にトンネルや建造物等の対象構造物に対する補修・補強作業において、狭い箇所や高い箇所のような作業困難な場所や、段取りよく短時間で補修・補強しなければならない交通規制して行う工事、夜間のトンネル工事、夜間の鉄道工事等であって、表面凹凸が比較的大きい対象構造物に対して効率的に補修・補強工事を行うことができる。

0029

以下、粘接着シートを用いた補修・補強方法を詳しく説明する。なお、本発明において、補修とは、対象構造物に生じているヒビを隠したり、凹凸を消したりすることを意味し、補強とは、強度向上、保水性向上、表面保護加飾等の機能を付与することを意味し、さらに、前記の補修をしつつこうした機能を付与することも含まれる。

0030

(対象構造物)
対象構造物は、補修・補強の対象となるものであり、架橋、トンネル、道路舗装河川管理施設砂防堰堤砂防床固工、下水管梁、下水処理場港湾施設、公営住宅、集合住宅一般住宅都市公園海岸堤防、空港、空港、航路標識、官庁施設等、多くの社会インフラを挙げることができる。本発明に係る粘接着シート10は、これらの対象構造物に適用可能である。また、表面凹凸が大きい対象構造物に対しても適用可能である。なお、そうした表面凹凸は、ポータブル表面粗さ計等によって測定できる。以下では、対象構造物としてトンネルを例にして説明し、対象物としてはコンクリートを例にして説明する。

0031

[準備工程]
準備工程は、粘接着層2と補修又は補強部材3(以下、補修・補強部材と略す。)とを備えた粘接着シート10を準備する工程である。粘接着層2は、紫外線等の電離放射線を当てると、粘接着シート10を貼り合わせる対象構造物の周囲の環境温度(この温度を「通常環境温度」という。)で徐々に硬化する層であり、その後に積極的な硬化手段を施さなくても硬化が徐々に進行し、接着する遅延硬化型の粘接着層である。こうした遅延硬化型の粘接着層2を有した粘接着シート10を用いることにより、効率的な貼り合わせ作業と補修・補強作業を行うことできる。「通常環境温度」とは、作業者が作業を行うことができる温度範囲内であり、例えば、−5℃以上、45℃以下程度の範囲内である。なお、粘接着シート10についての詳しい説明は後述する。

0032

(硬化開始工程)
硬化開始工程は、その粘接着シート10に電離放射線を照射して粘接着層2の硬化を開始する工程である。又は、その粘接着シート10に自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線が照射されて粘接着層2の硬化を開始する工程である。そして、この硬化開始工程での電離放射線の照射又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線の照射は、少なくとも一方の粘接着層側から行う。

0033

紫外線や電子線等の電離放射線の照射は、従来のように粘接着シート10を貼り合わせた後に行う必要はなく、貼り合わせる前の粘接着シート10に行う。したがって、作業場平らなところや広いところで電離放射線を照射することができる。例えば、設置型電離放射線照射装置を作業場に置き、ロールツウロールで粘接着シート10に電離放射線照射を照射することができる。また、粘接着シート10を作業場に置き、その粘接着シート10に例えばハンディ型の電離放射線照射装置を用いて照射してもよい。また、特定の電離放射線照射装置(例えば紫外線照射装置等)がない場合は、太陽光等でもよく、本願での「電離放射線」には太陽光等に含まれる紫外線等の電離放射線も含まれる。

0034

電離放射線の照射条件のうち、紫外線を照射するときの照射条件は、硬化剤の種類によっても異なるが、例えば後述の実施例のように、波長300nm〜370nmの領域で積算光量が50mJ/cm2以上程度の照射条件を挙げることができる。なお、特に硬化後により高い物性を示す観点から、500mJ/cm2以上、2000mJ/cm2以下程度の照射条件が好ましい。また、電子線を照射する場合の条件も、硬化剤の種類によっても異なるが、50kGy以上、100kGy以下の程度の照射条件を挙げることができる。

0035

電離放射線を照射した後の粘接着シート10は、急激に硬化して貼り合わせ前に粘接着シート10の粘着性がなくならないことが必要である。すなわち、後述の貼り合わせ工程で粘接着シート10を貼り合わせる作業を行っている間は、粘着性を有していなければならない。そうした作業時間は、通常、30秒以上、24時間以下の程度であるので、少なくともその時間範囲内で硬化が完了して粘着性がなくならないことが好ましい。

0036

自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線の照射は、自然光もしくは人工光に積極的に曝して照射するものであってもよいし、意図的に照射せずに結果として間接的に照射するものであってもよい。なお、自然光は太陽光等であり、人工光は室内蛍光灯LED、メタルハイライドランプブラックライト等である。

0037

貼り合わせることができる粘着性は、アルミニウムに対する粘着力で評価した場合、その粘着力は、少なくとも0.01N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内であることが好ましい。「少なくとも」とは、最低限の範囲の粘着力を有していれば対象構造物に貼り合わせてその貼り合わせ状態を保持することができる粘着力である範囲という意味であり、上限は更に大きい値であってもよい。そして、この範囲の粘着力を有する間は、粘接着シート10を対象構造物に対して好ましく貼り合わせることができる。電離放射線を照射した後の粘接着シート10の粘着力の変化は急激には起こらないので、上記範囲内の粘着力は、電離放射線を照射する前の粘着力として評価することができる。なお、一時的に仮貼りでき、かつ貼り直しができるという観点から、粘着力が、5N/インチ以上、30N/インチ以下の範囲内であることが好ましい。

0038

したがって、硬化開始工程に供する粘接着シート10は、電離放射線や自然光等を照射する前の粘着力が少なくとも0.01N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内であり、その粘着力が少なくとも30秒以上、24時間以下の範囲で保持されていることが望ましい。こうした粘着特性と粘着力保持時特性有する粘接着シート10を用い、電離放射線を照射して又は自然光もしくは人工光に含まれる電離放射線を照射して硬化を開始し、その後に対象構造物に対して作業性のよい効率的な貼り合わせ作業を行うことができる。

0039

(貼合工程)
貼合工程は、その粘接着層2の硬化を開始させた後、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせる工程である。この貼り合わせ工程の後は、電離放射線を積極的に照射したり、積極的に加熱処理したりすることはしない。すなわち、電離放射線が照射されて対象構造物に貼り合わせた後の粘接着シート10は、その硬化が、その対象構造物の環境温度で進行することから、貼り合わせ工程後においては、意図的な硬化作業を行わない。そのため、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせ、そのままにして次の作業や段取りを行っている間に、その粘接着シート10が経時的に徐々に硬化して対象構造物に接着することができる。貼り合わせ時間は、上記したように、通常、30秒以上、24時間以下である。この貼り合わせ作業の時間内では、硬化開始処理された粘接着シート10は粘着力があまり低下しないことが望ましい。貼り合わせの間に保持される粘着力は、上記のように、電離放射線を照射する前の0.01N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内の粘着力であることが望ましい。硬化処理後にこの範囲内の粘着力を有する粘接着シート10は、対象構造物によく貼り合わせることができる。

0040

この貼り合わせ工程では、電離放射線照射済みの粘接着シート10や、積極的に電離放射線を照射しないが太陽光等で間接的に照射された粘接着シート10の貼り合わせと同時に加熱する。又は、その粘接着シート10を貼り合わせた後に加熱する。こうした貼り合わせと同時の加熱、又は貼り合わせた後の加熱は、粘接着シート10を、対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定できるという利点がある。この加熱によって、粘接着シート10を構成する粘接着層2が軟化し、軟化した粘接着層2が対象構造物の表面凹凸の形状に沿うように追従する。そうした追従によって、粘接着層2をその表面凹凸に合わせて貼ることができる。その結果、高い付着性能を維持することができる。

0041

加熱手段としては、いわゆるアイロン等の加熱構造物を用いてもよいし、いわゆる工業用ドライヤー等の熱風送風機を用いてもよい。加熱構造物は、回転するロール構造物でもよいし、回転しないコテ状構造物であってもよい。なお、加熱構造物に熱風送風機能が付いているものでもよい。

0042

ここでの加熱は、粘接着層2を軟化させるためであるので、その目的を実現できるだけの加熱を行えばよく、その加熱によって硬化させることは必要ない。粘接着層22を軟化させるに足る加熱としては、軟化させる粘接着層2の特性や厚さに応じて加熱温度と加熱時間が任意に設定される。加熱温度の例としては、50℃以上、250℃以下の範囲内の温度を挙げることができ、加熱時間の例としては、0.1秒以上、30秒以下の範囲内の時間を挙げることができる。ここでの加熱は、こうした短時間加熱を一時的に行えばよいもので、厳密に定義されるものではない。

0043

加熱とともに、加圧も行ってもよい。加圧は、加熱によって軟化した粘接着層2を、表面凹凸の形状に沿って追従させることができる点で好ましい。加圧方法としては、前記した加熱手段として用いるロール状構造物やコテ状構造物を押し付けるようにして行うことができる。また、熱風送風機を用いる場合には、加熱手段のないロール状構造物やコテ状構造物を用い、熱風を粘接着層2に当てた直後にロール状構造物やコテ状構造物を押し付けて加圧することができる。また、ロール状構造物やコテ状構造物を用いなくても、手で加圧してもよい。加圧力は特に限定されないが、粘接着層2が表面凹凸の形状に沿って追従させることができる程度であればよい。

0044

加熱や加圧は、粘接着シート10に設けられた耐熱性の剥離フィルム側から行うことが望ましく、加熱手段や加圧手段を、耐熱性の剥離フィルム側に押し当て、又は送風して行う。粘接着シート10は、対象構造物に貼り合わせる粘接着層2を備えているが、その粘接着層2に直接、加熱や加圧を行うことはできないので、剥離フィルム側から行うことになるが、その剥離フィルムとして、耐熱性の剥離フィルムが設けられた側から行うことが望ましい。このように、耐熱性の剥離フィルムは、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせる際の加熱に対して配置されるもの、又はその加熱とともに加えられる圧力に対して配置されるものである。

0045

なお、粘接着シート10に耐熱性の剥離フィルムが設けられておらず、その代わりに補修・補強部材3が設けられている場合には、その補修・補強部材3側から加熱や加圧を行うことができる。この場合は、加熱手段や加圧手段を、補修・補強部材3側に押し当て、又は送風して行う。補修・補強部材3に直接、加熱手段や加圧手段を適用する場合には、その補修・補強部材3は、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせる際の加熱に対して配置されるもの、又はその加熱とともに加えられる圧力に対して配置されるものであり、耐熱性を有するものであることが望ましい。

0046

各粘着シートの貼り合わせ)
図1図3に示す各粘接着シート10は、例えば予め電離放射線を照射して硬化を開始させた後に、以下の貼り合わせ手段で貼り合わせることができる。

0047

図1(B)に示す粘接着シート10Aは、補修・補強部材3が粘着層2内に含浸されている態様の粘接着シートである。この粘接着シート10Aでは、先ず、コンクリート等の対象構造物に貼り合わせる側の面S1を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)し、さらにその後に反対側の面S2に設けられた耐熱性の剥離フィルム1を剥がして施工することができる。一方、図1(C)に示す粘接着シート10Bも補修・補強部材3が粘接着層2内に含浸されている粘接着シートである。この粘接着シート10Cでは、先ず、対象構造物に貼り合わせる側の面S1の剥離フィルム1’を剥がし、露出した粘接着層2を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)し、その後に反対側の面S2に設けられた耐熱性の剥離フィルム1を剥がして施工することができる。図1(B)(C)に示す粘接着シート10A,10Bでは、露出した粘接着層2に、保護部材カバー部材、他の補修・補強部材等の他の部材を貼り合わせることができる。

0048

図2(A)に示す粘接着シート10Cは、補修・補強部材3が粘接着層2の一方の面S2に貼り合わされている粘接着シートである。この粘接着シート10Cでは、対象構造物に貼り合わせる側の面S1の剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)して施工することができる。この粘接着シート10Cには、予め補修・補強部材3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。一方、図2(B)に示す粘接着シート10Dも補修・補強部材3が粘接着層2の一方の面S2に貼り合わされている粘接着シートであり、対象構造物に貼り合わせる側の面S1を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)して施工することができる。この粘接着シート10Dにも、予め補修・補強部材3が粘接着層2に粘着しているので、簡易に施工することができる。

0049

図3(A)に示す粘接着シート10Eは、補修・補強部材3の両側に粘接着層2,2’が貼り合わされた粘接着シートである。この粘接着シート10Eでは、上記した粘接着シート10Cと同様、対象構造物に貼り合わせられる側の面S1に設けた剥離フィルム1を剥がし、露出した粘接着層2を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)して施工することができる。この粘接着シート10Eは、その後に必要に応じて耐熱性の剥離フィルム1’を剥がし、露出した粘接着層2’に機能性のシート又は層を設けることができる。一方、図3(B)(C)に示す粘接着シート10F,10Gも補修・補強部材3の両側に粘接着層2,2’が貼り合わされた粘接着シートである。この粘接着シート10F,10Gでは、上記した粘接着シート10Dと同様、対象構造物に貼り合わせられる側の面S1を対象構造物に貼り合わせ、この貼り合わせと同時に又は貼り合わせた後に加熱(さらに加圧してもよい)して施工することができる。この図3(B)示す粘接着シート10Fは、耐熱性の剥離フィルムが設けられていないので、通常は接触させないで加熱手段や加圧手段を適用する。また、図3(A)に示す粘接着シート10Eと同様、粘接着層2’が設けられているので、その粘接着層2’に機能性のフィルム又は層を設けることができる。

0050

こうして粘接着シート10A〜10Gを用いて補修・補強部材3を対象構造物に粘接着させる。その際、上記のような加圧手段を併用しない場合には、その後にローラー等で粘接着層2を対象構造物に圧着させることが好ましい。粘接着層2の硬化は、既に始まっているので、硬化手段をさらに積極的に施す必要はないが、補助的に、圧着時のローラーを加熱して圧着と加熱硬化を同時に行ってもよいし、ローラー圧着した後に温風を吹き付ける等して硬化をさらに促進してもよい。

0051

粘接着シート10が表面凹凸の比較的大きい対象構造物等に対して貼り合わされ、さらに硬化した後の付着強度は、0.5N/mm2以上であることが好ましい。表面凹凸が比較的大きい対象構造物の補修・補強を効果的に行うことができる。

0052

図1に示す補修・補強部材3は、遅延硬化型の粘接着剤が塗布されてその粘接着剤中に含浸可能な補修・補強部材である。また、図2及び図3に示す補修・補強部材3のように、粘接着層2を貼り合わせてもよい。こうした補修・補強部材3としては、例えば、補強用途では、アラミド繊維炭素繊維ビニロン繊維PET繊維等を挙げることができる。また、機能を付与できる補修用途では、広告用看板塗装フィルム防水シート吸水シート耐紫外線シート、保水シート着色シート等を挙げることができる。なお、補強には、ヒビを隠したり、凹凸を消したりする補修を含み、さらに強度向上、保水、表面保護、加飾等の機能を付与するものも含む。

0053

なお、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせる前に、対象構造物にプライマーを塗布してもよい。このとき塗布するプライマーは、対象構造物上に粘接着層2を密着性よく粘接着させるために働く。こうしたプライマーとしては、日米レジン株式会社製のアルロンW301や、水谷ペイント株式会社製の強化コンクリート用プライマーII等を挙げることができ、そのプライマーを塗布して、約1μm以上、1mm以下の範囲の厚さで塗布することができる。

0054

以上説明したように、遅延硬化型の粘接着層2と補修・補強部材3とを含む粘接着シート10を使用し、貼り合わせの際に、その粘接着シート10を対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定できるので、特に表面凹凸が比較的大きい対象構造物の補修又は補強作業を大幅に省略化でき、且つ短時間で行うことができる。また、硬化開始工程での電離放射線の照射を、少なくとも一方の粘接着層側から行うこと(例えば、粘接着シート10のうち対象構造物と貼り合せる側の粘接着層2に対して行うこと)により、例えば光透過性のない補修・補強部材3を含む場合であっても、簡単に貼り合わせることができる。また、紫外線等の電離放射線を、ロールツウロールで粘接着シート10に当てることができるため、従来のように、高い場所や狭い場所で電離放射線の照射作業を行わずにすむという利点がある。

0055

[粘接着シート]
上記の方法で用いる粘接着シート10について説明する。この粘接着シート10は、対象構造物に貼り合わせてその対象構造物を補修・補強する粘接着シートである。そして、その特徴は、電離放射線硬化性樹脂と電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化合物とを含む粘接着層2と、粘接着層2の少なくとも片面に設けられた剥離フィルム1と、粘接着層2内又は粘接着層2の一方の面に設けられた補修・補強部材3とを有し、対象構造物に貼り合わされる側の反対面に配置された剥離フィルム又は補修・補強部材3が耐熱性を有することにある。

0056

(粘接着層)
粘接着層2は、電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂であるとともに、貼り合わせと同時に又はその後に行う加熱手段によって軟化する特性を有する樹脂で形成されたものである。こうした樹脂で構成された粘接着層2は、貼り合わせと同時に又はその後に行う加熱手段によって粘接着層2が軟化し、軟化した粘接着層2が対象構造物の表面凹凸の形状に沿うように追従する。そうした追従によって、粘接着層2をその表面凹凸に合わせて貼ることができる。その結果、高い付着性能を維持することができる。なお、こうした樹脂からなる粘接着層2は、対象構造物に貼り合わせる粘接着層2であり、例えば図3に示すように、対象構造物に貼り合わせない側の粘接着層2’には必須の構成ではなく、任意である。

0057

粘接着層2を形成する組成物は、Tgを有している樹脂であれば特に特定されることはない。例えば、電離放射線硬化性アクリル樹脂液状エポキシ樹脂固形エポキシ樹脂等と、電離放射線硬化性樹脂用の硬化剤等を挙げることができる。

0058

こうした特性を有する樹脂としては、電離放射線硬化性の液状エポキシ樹脂及び固形エポキシ樹脂の一方又は両方を含むとともに、電離放射線硬化性樹脂用の硬化剤をさらに含む樹脂を挙げることができる。こうした樹脂成分を含む粘接着層2は、電離放射線を照射しても遅延硬化する粘接着層であるので、電離放射線を照射する前の粘着力で対象構造物に貼り合わせることができる。その結果、電離放射線を照射した後に、その粘接着層2を介して粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせることができる。また、粘接着層2は遅延硬化によりまだ十分に硬化していないので、粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせた後に、その粘接着シート10を剥がして再び貼り合わせることも可能である。粘接着層2は、粘着性能接着性能を有するので、対象構造物面が垂直面であったり天井面であったりしても、粘接着層2を介して粘接着シート10を対象構造物に貼り合わせることができる。

0059

粘接着層2は、一方の面が対象構造物に粘接着するように貼り合わせられる。なお、他方の面には、他の部材(保護部材、カバー部材、他の補修・補強部材等)が貼り合わせられる。本願において「粘接着」とは、粘着性能と接着性能を併せ持つことを意味し、粘着は一時的な接着現象を意味するものとして用いられるのに対し、接着は永久的な接着現象を意味するものとして用いられる点で区別されることがある(岩波書店理化学辞典第5版)。

0060

粘接着層2は、粘接着層形成用組成物を層状又はシート状にしたものであり、通常、後述する粘接着シート10のように剥離フィルム1上に設けられている。なお、粘接着層形成用組成物とは、粘接着層2を塗布等によって形成するための樹脂組成物のことである。この粘接着層組成物は、各種の樹脂を配合できるが、粘接着層形成用の成分で構成することができる。そうした構成成分としては、例えば、電離放射線硬化性のアクリル樹脂、液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等と、電離放射線硬化性樹脂用の硬化剤等を挙げることができる。

0061

この粘接着層2には、遅延硬化を可能にする化学種が遅延硬化手段として含まれている。そうした遅延硬化手段としては、種々の手段が考えられるが、本願では、電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化学種で行う遅延硬化手段を挙げることができる。

0062

これらの遅延硬化手段のうち、電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化学種としては、光塩基発生剤のように電離放射線によって硬化促進物質(例えば塩基)が徐々に発生する化学種を挙げることができる。

0063

上記の光塩基発生剤は、電離放射線によって硬化促進物質である塩基が徐々に発生する化学種である。例えば、下記化学式で表わされ、且つ紫外線や電子線等の電離放射線の照射により塩基を発生するものであることが好ましい。

0064

光塩基発生剤は、下記化学式中、R1及びR2は、それぞれ、独立に水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、R1及びR2のうち、少なくとも一つは1価の有機基である。R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、水素、ハロゲン又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R3、R4、R5及びR6は、それらの二つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。

0065

0066

こうした光塩基発生剤は、紫外線や電子線等の電離放射線が照射されて塩基を発生し、塩基の発生が促進される。そのため、電離放射線の照射により、効率的に塩基を発生することができる。なお、光塩基発生剤とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電離放射線が加えられると、塩基を発生する剤をいう。光塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、電離放射線が照射されることにより、化学式中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、環化し、塩基であるアミン、NHR1R2を生成する。

0067

電離放射線を照射して粘接着層2を硬化させる硬化剤が、電離放射線の照射によりカチオン重合を開始させる硬化剤である場合の含有量は、例えばエポキシ樹脂に対しては、1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。また、フェノール系硬化剤酸無水物系硬化剤等のエポキシ樹脂と当量反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、例えばエポキシ樹脂のエポキシ当量に対しては、0.8当量以上、1.2当量以下であることが好ましい。また、光塩基発生剤のエポキシ樹脂の当量反応系での硬化触媒を併用した場合の含有量は、例えばエポキシ樹脂に対しては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。

0068

粘接着層2は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、対象構造物と粘接着層2との密着性を向上させるためのカップリング剤や、粘接着層形成用組成物の塗膜性を向上させるためのレベリング剤等の各種添加剤等を含んでいてもよい。また、粘着力を高めるために粘着付与剤を含んでいてもよく、せん断強度を向上させるためにフィラー等を含んでいてもよい。

0069

粘接着層2の厚さは、150μm以上、500μm以下が好ましく、150μm以上、300μm以下がより好ましい。

0070

粘接着層2は、易剥離処理された剥離フィルム1上に設けられる。剥離フィルム1については、後述の粘接着シート10の欄で詳しく説明する。

0071

粘接着層形成用組成物は、上記した各原料を配合して撹拌し、溶解させて調製される。撹拌に用いる撹拌機は特に限定されず、通常の混練分散機、例えば、二本ロールミル三本ロールミルペブルミルトロンミル、高速インペラー分散機高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー高速ミキサーリボンブレンダーコニーダーインテンシブミキサータンブラーブレンダーデスパーザー、ホモジナイザー、及び超音波分散機等を適用できる。

0072

粘接着層形成用組成物の塗布方法も特に限定されない、印刷による形成方法としては、例えば、グラビア印刷法フレキソ印刷法オフセット印刷法等を挙げることができる。コーティングによる方法としては、例えば、ロールコート、リバースコートコンマコート、ナイフコート、ダイコートグラビアコート等を挙げることができる。

0073

塗布された後の粘接着層形成用組成物の乾燥は、粘接着層形成用組成物中に含まれている溶剤を十分揮発させることができるとともに、電離放射線硬化性樹脂の硬化が過度に促進されて粘着性能が低下しない程度の条件で行うことが好ましい。乾燥条件としては、通常、50℃以上、100℃以下の温度で、2分以上、20分以下の間保持することにより行う。

0074

(粘接着シートの形態)
粘接着シート10(10A,10B,10C)は、例えば図1(B)(C)及び図2(A)に示すように、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面(S1又はS2)に設けられた剥離フィルム1とを有する。この粘接着シート10は、剥離フィルム1が片面S2のみに設けられている粘接着シート10A,10Cであってもよいし、剥離フィルム1,1’が両面S1,S2に設けられている粘接着シート10Bであってもよい。このうち、図1(B)(C)に示す粘接着シート10A,10Bは、粘接着層2の中に補修・補強部材3が含まれている。こうした粘接着シート10A,10Bにおいて、施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される剥離フィルムは、耐熱性であることが望ましい。

0075

また、粘接着シート10(10C,10D)は、例えば図2(A)(B)に示すように、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面S2に設けられた補修・補強部材3とを有する。この粘接着シート10は、粘接着層2の片面S2に補修・補強部材3が設けられ、他の面S1に剥離フィルム1が設けられている粘接着シート10Cであってもよいし、粘接着層2の片面S2に補修・補強部材3が設けられ、他の面S1には何も設けられていない粘接着シート10Dであってもよい。こうした粘接着シート10C,10Dにおいて、施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される補修・補強部材3は、耐熱性であることが望ましい。

0076

また、粘接着シート10(10E,10F,10G)は、例えば図3(A)(B)(C)に示すように、図2(A)(B)の粘接着シート10C,10Dを構成する補修・補強部材3の上にさらに粘接着層2’が設けられた態様である。すなわち、図3に示す粘接着シート10は、上記した粘接着層2と、その粘接着層2の片面S2に設けられた補修・補強部材3と、その補修・補強部材3上に設けられた粘接着層2’とを有する。粘接着層2’上には、図3(A)(C)に示すように剥離フィルム1’が設けられていてもよいし、図3(B)に示すように剥離フィルムが設けられていなくてもよい。「補修・補強部材3の上」とは、補修・補強部材3の粘接着層2が設けられた側の反対面上のことである。なお、図3中、符号S2’は、粘接着層2’の補修・補強部材側の面であり、符号S1’は、粘接着層2’の補修・補強部材側とは反対側の面である。こうした粘接着シート10E,10F,10Gにおいて、施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される剥離フィルムは、耐熱性であることが望ましい。

0077

粘接着層2’は、上記した粘接着層2と同じ成分で構成されてもよいし、異なる成分で構成されてもよいが、同じ成分であることが製造コストの観点からは望ましい。

0078

(剥離フィルム)
剥離フィルム1は、図1及び図2に示すように、粘接着層2の片面(S1又はS2)又は両面(S1及びS2)に設けられている。この剥離フィルム1は、粘接着層2の片面(S1又はS2)又は両面(S1及びS2)を覆って、使用時まで粘接着層2を保護するように作用する。剥離フィルム1は、図1(B)に示すように、粘接着層2の面S1,S2のうち、対象構造物に貼り合わせられる側の面S1の反対面S2に設けられていてもよいし、図1(C)に示すように、その面S2と対象構造物に貼り合わせられる側の面S1との両方に設けられていてもよい。こうした剥離フィルムが施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される場合には、その剥離フィルムは耐熱性であることが望ましい。

0079

また、図2(A)及び図3(A)に示すように、粘接着層2の面S1,S2のうち、対象構造物に貼り合わせられる側の面S1に剥離フィルム1が設けられていてもよい。また、図3(A)(C)に示すように、補修・補強部材3上に粘接着層2’が設けられた場合は、その粘接着層2’上に剥離フィルム1’が設けられていてもよい。こうした剥離フィルムが施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される場合には、その剥離フィルムは耐熱性であることが望ましい。

0080

剥離フィルム1の粘接着層側の表面は、易剥離処理が施されていることが好ましい。易剥離処理をした剥離フィルム1は、例えば粘接着シート10が備える粘接着層2を対象構造物に貼り合わせた後に、粘接着層2から容易に剥がすことができる。

0081

剥離フィルム1は、粘接着層2の表面に剥離可能に設けられて、粘接着層2を保護することができる程度の強度や柔軟性を有するものであれば特に限定されず、各種のフィルムを用いることができる。

0082

耐熱性の剥離フィルムの耐熱性は、50℃以上、250℃以下程度の範囲内の熱を一時的に剥離フィルムに当てることで、溶融したりせず、加熱構造物に粘着したりせず、剥離性能がなくなったりしない程度の耐熱性であればよく、特に限定されることはない。

0083

(補修・補強部材)
補修・補強部材3は、図1に示すように、遅延硬化型の粘接着剤が塗布されてその粘接着剤中に含浸されたものであってもよいし、図2及び図3に示すように、粘接着層2に貼り合わせられたものであってもよい。

0084

補修・補強部材3としては、例えば、ポリエステル繊維ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、カーボン繊維ガラス繊維及びポリオレフィン繊維等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、及びポリオレフィン繊維は、軽くて強度に優れることから好ましく用いられる。これらの繊維は、混紡されていてもよいし、縦糸横糸使い分けられていてもよいし、多層に積層されていてもよい。なお、補強には、ヒビを隠したり、凹凸を消したりする補修を含み、さらに強度向上、保水、表面保護、加飾等の機能を付与するものも含む。また、こうした補修・補強部材3において、例えば図2(A)(B)に示す接着シート10C,10Dにおいて、施工時に加熱手段や加圧手段が加えられる側に配置される補修・補強部材3は、耐熱性であることが望ましい。

0085

また、防水シート、吸水シート、耐紫外線シート、保水シート、着色シート等のシート状部材を補修・補強部材3として用いてもよいし、そうしたシート状の補修・補強部材と繊維状の補修・補強部材とを複合したものであってもよい。

0086

こうした補修・補強部材3は、対象構造物の一部が剥離等した場合や剥離等するおそれのある場合に、剥離した対象構造物片又は剥離するおそれのある対象構造物片を支えることができる強度(補強強度)を有することが好ましい。その強度としては、例えば、旧日本道路公団(東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)の規定する押し抜き試験において、10mm以上の変位時に1500N以上になることが好ましい。

0087

補修・補強部材の厚さは、補修用として用いるか補強用として用いるかによって異なるが、通常、0.01mm以上、1.0mm以下の範囲である。

0088

(その他)
粘接着シート10(10E,10F,10G)のように、補修・補強部材3の両側に粘接着層(2,2’)を設けることができるので、両面テープのように機能させることができる。この粘接着シート10の粘接着層2の面S1は、対象構造物を貼り合わせることができ、粘接着層2’の面S1’には、後述する機能性のシート又は層を貼り合わせることができる。なお、粘接着シート10E,10Gは、剥離フィルム1’に代えて機能性のシート又は層が設けられたものであってもよい。

0089

機能性のシート又は層としては、例えば、耐光性耐水性防汚性耐候性耐衝撃性耐傷付性耐酸性耐アルカリ性及び意匠性等のいずれか1又は2以上の機能を有するシート又は層を挙げることができる。

0090

以上説明したように、本発明に係る粘接着シートは、対象構造物に貼り合わせてその対象構造物を補修・補強する粘接着シート10であって、電離放射線硬化性樹脂と電離放射線を受けて重合開始物質を放出する化合物とを含む粘接着層2と、粘接着層2の少なくとも片面に設けられた剥離フィルム1と、粘接着層2内又は粘接着層2の一方の面に設けられた補修・補強部材3とを有し、前記対象構造物に貼り合わされる側の反対面に配置された前記剥離フィルム1又は前記補修・補強部材3が耐熱性を有するので、粘接着シート10の貼り合わせと同時に加熱することができ、又はその粘接着シート10を貼り合わせた後に加熱することができる。こうした貼り合わせと同時の加熱、又は貼り合わせた後の加熱は、粘接着シート10を、対象構造物の表面凹凸に合わせて仮固定できるという利点がある。また、対象構造物の補修又は補強作業を大幅に省略化でき、且つ短時間で行うことができる。その結果、社会インフラの整備に関する問題のうち、例えばトンネルや建造物等のような補修・補強を必要とする多くの社会インフラの補修又は補強作業を大幅に省略化でき、且つ短時間で行うことができる。

0091

本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。

0092

[実施例1]
(対象構造物と粘接着シート)
対象構造物として、中心線平均粗さRaが1μm以下のモルタル板モルタル種Aという。)を用いた。このときの中心線平均粗さRaは、JIS B 0601(2013)に準拠した評価方法によって測定した値である。

0093

初期粘着力
上記対象構造物に貼り合わせるための下記の粘接着シート10を準備した。準備した粘接着シート10の粘接着層2は、電離放射線を受けなければ硬化が始まらないので、遮光性の袋に入れて保管した。硬化が始まる前の粘接着層2の初期粘着力は、アルミニウムを貼り合わせ対象とした場合、約17N/インチであった。粘着力の測定は、先ず、準備した粘接着シート10を縦25mm、横150mmに裁断し、粘接着シートの剥離フィルムを剥がし、露出した粘接着層をアルミニウム合金(A6061、試料:25mm×150mm)に貼り合わせ、その後、手で粘接着シートを20mm程剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番RTF−1150H)を用いて、JIS Z0237に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、アルミニウム板面に対する初期粘着力(N/25mm)を測定した。

0094

気泡の有無と施工性の評価)
A4サイズ(縦297mm、横210mm)の粘接着シート10に対し、電離放射線照射装置(Hバルブ使用、フュージョンUVシステムジャパン株式会社製、商品名:DRE−10/12QN)を用いて、波長300〜370nmの領域の紫外線を積算光量が800mJ/cm2となるように照射した。照射後の粘接着シート10について、粘接着シートが有する剥離フィルム(SP−PET−03)を剥がし、その粘接着層側の剥離フィルム上から、210℃に加熱した加熱機能付きハンドローラーにて厚さ60mmの対象構造物(モルタル種A)に貼り合わせた。特定箇所での加熱時間は、約2秒であった。なお、照射直後の粘着力を上記と同様に測定したところ、照射前の粘着力と同じであった。

0095

対象構造物に貼り合わせた後は、特段の硬化処理は行わず、意図的な硬化作業を行わなかった。そして、対象構造物の表面での気泡の有無を確認した。直径1μm以上の気泡が貼り合わせ面にある場合は「×」で表し、直径1μm以上の気泡が貼り合わせ面にない場合は「○」で表した。その結果を表1に示した。

0096

対象構造物に貼り合わせた後は、特段の硬化処理は行わず、意図的な硬化作業を行わなかった。そして、施工時の通常の温度である18℃〜25℃で7日間放置した後、浮きの有無を評価した。きれいに粘接着し、浮きがなかった場合を「○」で表し、浮きが発生した場合を「×」で表した。その結果を表1に示した。

0097

(付着強度試験)
付着強度試験として、同じ粘接着シートを、上記と同じ対象構造物に上記と同じ条件で貼り合わせた。コンクリートカッターを用いて縦40mm、横40mmの大きさに切断し、はく防止性能照査試験(JHS 424 2004)により評価した。その結果、2N/mm2の付着強度を示し、実用上問題ないレベルであった。

0098

(粘接着シート)
用いた粘接着シートは以下のとおりである。剥離フィルムとして、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(商品名:SP−PET−03、膜厚:38μm、東セロ株式会社製)を準備し、この剥離シートの剥離処理面上に、下記の粘接着層形成用塗工液を用い、塗工後の厚さが100μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した。その後、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させ、粘接着層を形成した。この粘接着層を2枚用意した。次いで、得られた2枚の粘接着層の面のうち一方の面に、アラミド繊維(商品名:AK−10/10、ファイベックス株式会社製)を常温にて2kgのローラーを用いて貼付し、もう一方の粘接着面とアラミド繊維とを接触するように約60℃のホットプレート上にて2kgのローラーを用いて貼り合わせた。こうして実施例1の粘接着シートを得た。

0099

(粘接着層形成用組成物)
・液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、分子量:380、三菱化学株式会社製、商品名:jER828)100質量部
メルカプト基を有する硬化剤としてPEMP(ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、粘度:400〜550mPa・s/25℃、メルカプタン当量:125〜137g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:QX40)70質量部
熱可塑性高分子アミノ基が導入された変性メチルメタクリレートブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、Tg:−42℃、アルケマ株式会社製、商品名:M22N)50質量部
・光塩基発生剤A(下記の合成方法を参照)5質量部
希釈溶剤酢酸エチルDICグラフィックス株式会社製)100質量部

0100

用いた光塩基発生剤Aは以下のようにして合成した。先ず、100mLフラスコメタノール15mLを入れ、そこに炭酸カリウム2.00gを加えた。次いで、50mLフラスコにメタノール10mLを入れ、そこにエトキシカルボニルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)2.67g(6.2mmol)及び2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒド1.7g(6.2mmol)を添加し、溶解させた後、よく撹拌した上記炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下した。そして、3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認した。次いで、ろ過により炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮した後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えて1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除き、濃塩酸を滴下して反応液酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルム洗浄することにより2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸を1.7g得た。続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中で、2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸1.0g(3.19mmol)を脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業株式会社製)0.73g(3.83mmol,1.2eq.)を加えた。30分後に、アミンとしてピペリジン(東京化成株式会社製)129mg(1.52mmol、0.95eq.)を加えた後、終夜で撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、下記式(I)に示す光塩基発生剤Aを1.0g得た。

0101

0102

[実施例2]
実施例1において、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にした他は、実施例1と同じ作業条件作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0103

[実施例3]
実施例1において、対象構造物として中心線平均粗さRaが1μmを超え2μm以下のモルタル板(モルタル種Bという。以下同じ。)を用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0104

[実施例4]
実施例1において、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にし、さらに対象構造物としてモルタル種Bを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0105

[実施例5]
実施例1において、以下の粘接着層形成用組成物で粘接着層を形成した粘接着シートを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0106

(粘接着層形成用組成物)
・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量:5000、三菱化学株式会社製、商品名:jER1009)100質量部
・メルカプト基を有する硬化剤としてPEMP(ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、粘度:400〜550mPa・s/25℃、メルカプタン当量:125〜137g/eq.、三菱化学株式会社製、商品名:QX40)7.6質量部
・熱可塑性高分子(アミノ基が導入された変性メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、Tg:−42℃、アルケマ株式会社製、商品名:M22N)50質量部
・光塩基発生剤A(上記の合成方法と同じ)5質量部
・希釈溶剤(酢酸エチル、DICグラフィックス株式会社製)100質量部

0107

[実施例6]
実施例1において、粘接着層形成用組成物を実施例5のものを用い、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にした他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0108

[実施例7]
実施例1において、粘接着層形成用組成物を実施例5のものを用い、対象構造物としてモルタル種Bを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0109

[実施例8]
実施例1において、粘接着層形成用組成物を実施例5のものを用い、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にし、さらに対象構造物としてモルタル種Bを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0110

[実施例9]
実施例1において、補修・補強部材をアラミド繊維からアルミニウム箔(厚さ:50μm)に代えた他は、実施例1と同じ粘接着シートを用いた。それ以外は実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0111

[実施例10]
実施例1において、補修・補強部材をアラミド繊維からアルミニウム箔(厚さ:50μm)に代え、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にした他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0112

[実施例11]
実施例1において、補修・補強部材をアラミド繊維からアルミニウム箔(厚さ:50μm)に代え、対象構造物としてモルタル種Bを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0113

[実施例12]
実施例1において、補修・補強部材をアラミド繊維からアルミニウム箔(厚さ:50μm)に代え、加熱機能付きハンドローラーでの加熱温度を160℃にし、さらに対象構造物としてモルタル種Bを用いた他は、実施例1と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0114

[比較例1〜6]
比較例1,2,3,4,5,6は、それぞれ、実施例1,3,5,7,9に対応するものであるが、加熱機能付きハンドローラーで加熱しなかった。加熱を加えない他は、実施例1、3,5,7,9と同じ作業条件と作業手順で行った。また、各種の試験も実施例1、3,5,7,9と同様に行って評価した。

0115

[比較例7]
実施例1において、粘接着層形成用塗工液を下記のものに代えるとともに、加熱機能付きハンドローラーで加熱しなかった。その他は、実施例1と同様とし、また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0116

(粘接着層形成用組成物)
・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量:5000、三菱化学株式会社製、商品名:jER1009)100質量部
・硬化剤(ジシアンジミド、三菱化学株式会社製、商品名:DICY7)10質量部
硬化促進剤アミンアダクト系、味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:アミキュアMYH)5質量部
・希釈溶剤(酢酸エチル、DICグラフィックス株式会社製)100質量部

0117

[比較例8]
実施例1において、粘接着層形成用塗工液を下記のものに代えるとともに、加熱機能付きハンドローラーで加熱しなかった。その他は、実施例1と同様とし、また、各種の試験も実施例1と同様に行って評価した。

0118

(粘接着層形成用組成物)
・固形エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量:5000、三菱化学株式会社製、商品名:jER1009)50質量部
・液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、分子量:380、三菱化学株式会社製、商品名:jER828)50質量部
・硬化剤(ジシアンジミド、三菱化学株式会社製、商品名:DICY7)10質量部
・硬化促進剤(アミンアダクト系、味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:アミキュアMYH)5質量部
・希釈溶剤(酢酸エチル、DICグラフィックス株式会社製)100質量部

0119

[結果]
結果を表1に示した。表1の結果より、実施例1〜12での結果は、1μm以上の気泡もなく、施工性も良好であった。この結果は、粘接着シートの貼り合わせ時に同時に又はその直後に行う加熱手段の効果によるものであった。

実施例

0120

0121

1,1’剥離フィルム
2,2’ 粘接着層
3補修又は補強部材
10,10A〜10G 粘接着シート
S1,S2,S1’,S2’ 粘接着層の表面

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