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課題
解決手段
概要
背景
捩り振動低減装置は、エンジンの動力伝達軸に連結される第1の入力側回転部材(ピストン)及び第2の入力回転部材(ホールドプレート)と、トルクコンバータのタービンに連結される出力側回転部材(ドリブンプレート)と、これらの入力側回転部材と出力側回転部材とを回転方向に弾性的に連結するとともに円周方向に沿って配置された振動吸収ばね(トーションスプリング)と、振動吸収ばねを直列作動させる中間回転部材(バックプレート)とにより構成されている。(上記の入力側回転部材と出力側回転部材における「入力」及び「出力」の表現は便宜的なものであり、どちらか一方が「入力」であって他方が「出力」であれば技術上差支えない。よって本発明においてはいずれの場合も同様に適応できること前提にする。)
トルクコンバータのダンパーは、走行状態に応じてエンジンとトランスミッションとを直結し、エンジン駆動により伝達される振動を吸収する捩り振動低減装置としての機能を果たしている。入力側回転部材は、内燃機関(エンジン)のクランクシャフトと伝動装置の入力軸との間にあって、入力側のトルクを与える回転部材をいい、材質・形状に特に制限はないが、回転に耐えうる一定以上の剛性を有する材料であって回転運動に適合するような平面視略円形(円盤状)の形状によってなるのが望ましい。
出力側回転部材は、入力側からのトルクが伝達される出力側の部材をいい、たとえばハブクラッチ又はドリブンプレートによって実現されるものである。材質・形状に特に制限はないが、回転による振動に耐えうる一定以上の剛性を有する材料、回転運動に適合するような平面視略円形(円盤状)の形状によってなるのが望ましい。入力側回転部材と出力側回転部材とは相対回転可能な態様で配設される。
上記回転部材は通常円周面上にばね収容部を有し、入力側回転部材及び出力側回転部材が相対回転の動きをする際、これに当接し連動して伸縮運動を行う振動吸収ばね(トーションスプリング)が収容される機能を持つ。振動吸収ばねは、吸収すべき捩り振動の強度及び周波数に応じてバネ定数等仕様の異なるものが任意に選択される。本発明においては、トーションスプリング大小等の表現でその差異を表現する。
これらの部材は、エンジン駆動に伴う高速から低速までを任意変動する回転トルクを、トーションスプリングの緩衝を介して捩り振動を吸収しながら適時伝達しなければならないため、高度な剛性を必要とする。また同時に正負回転方向の急激な変化にも対応して逐次トルク伝達機能を発揮するための構造寸法の確保及び安定性及び長期信頼性が要求される。
特に入力側回転部材は、入力された回転トルクを減衰させることなくスムースに伝達させる必要があるため、強固な嵌合固定による一体化と回転軸方向及び軸垂直方向に対して均等な質量バランスが要求される。(本発明においては回転軸垂直方向を「半径方向」と表現する。また、略円盤状である各入出力プレートの面を「円周面」、外周輪郭側を「外周」と表現する。)
上述のような特徴を有する捩り振動低減装置の構造において、トルク伝達軸を回転中心として効率的に回転トルクを伝達しつつ、入力側回転部材と出力側回転部材との相対回転を可能とするためには、両部材の回転軸に対する相対回転の可能な自由度(角度)を十分にとることが望ましい。しかしこの自由度は上記トーションスプリングの配置や各部材の接合のためのリベットの位置等によって大きな制約を受けるため、捩り振動低減装置を構成する各部材の形状及び構造においては様々な技術検討が成されている。同様に、捩り振動を吸収しつつ効率的なトルク伝達を可能とするための捩り振動吸収装置の構造についても様々な技術検討が成されている。
特許文献1(特開2013−217450号公報)には、入力側回転部材であるドライブプレートとサイドプレートを同一形状とし、出力側回転部材であるハブクラッチを介在して対向面を合せる構造を有する捩り振動低減装置について技術思想が開示されている。
しかし、この技術思想は、2枚の出力側回転部材を接合固定するためのリベットの固定部を円周上の最外周側に配置させ且つピストンプレートとの接合を兼ねているため、トーションスプリング配置が内周側にとなり、ばね緩衝仕様を合せて設計上のトーションスプリング配置選択が大きく制限されてしまう。
また特許文献2(特開2010−43658号公報)には、入力側回転部材であるピストンプレートとホールドプレート及びバックプレートの一体的回転駆動を可能にする捩り振動低減装置に関する技術思想が開示されている。トーションスプリングの配置においても円周上最外殻側であるが、バックプレートがピストンプレートに接触する構造であるため、耐摩耗及び熱処理のための加工コストが非常に大きく、回転部材の円盤リング形状化等による部材コスト削減を相殺してしまっている。
上記のように、入力側回転部材及び出力側回転部材の基本的な形態を変えず、可能であれば縮小、小スペース化、軽量化を図り且つ部品点数を削減させ、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を十分に確保しつつ、入力側回転部材及び出力側回転部材の回転駆動における相対的左右回転の自由度を確保できる捩り振動低減装置の構造の開発が望まれている。
概要
従来の入力側回転部材の基本的な形態を変えず且つ部品点数を増加させずに、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を確保しつつ、各回転部材の最適な構造及びコスト低減に寄与する捩り振動低減装置の構造を提供することを課題とし、特に入力回転部材であるピストンプレートの部材コスト低減という課題に着目したものである。本発明の捩り振動低減装置の中間回転部材は、その内周フランジ部を第2の入力側回転部材の外周突起部に有する2段爪部によって摺動可能な態様ではさみ込み保持される構造をとり且つ第1の入力側回転部材とは接する部分がない構造で構成されていることに特徴を有する。
目的
上記のように、入力側回転部材及び出力側回転部材の基本的な形態を変えず、可能であれば縮小、小スペース化、軽量化を図り且つ部品点数を削減させ、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を十分に確保しつつ、入力側回転部材及び出力側回転部材の回転駆動における相対的左右回転の自由度を確保できる捩り振動低減装置の構造の開発が望まれている
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
請求項1
略円盤状の第1及び第2の入力側回転部材と、前記入力側回転部材に略同心状に並設され且つ正逆反対方向に相対回転可能に配置された略円盤状の出力側回転部材と、第2の入力側回転部材の外周を略同心状に覆って且つ前記第2の入力側回転部材及び前記出力側回転部材に対して正逆反対方向に相対回転可能に配置された円環状の中間回転部材と、前記第2の入力側回転部材の外周面と前記中間回転部材の内周面の間に円周状に形成されたばね収容部に保持され且つ前記第2の入力側回転部材、前記出力側回転部材及び前記中間回転部材の各突起部が圧接することによって収縮される振動吸収ばねとを具備し、前記中間回転部材は、その内周フランジ部を前記第2の入力側回転部材の外周突起部に有する2段爪部によって摺動可能な態様ではさみ込み保持される構造であり且つ前記第1の入力側回転部材と接する部分がない構造で構成されていることに特徴を有する捩り振動低減装置。
請求項2
前記中間回転部材は、回転中心を軸に略120度の等角度間隔で前記振動吸収ばねに当接する内周突起部を有し、且つ前記振動吸収ばねの外周側面を摺動可能な態様で保持する内周フランジ部を有することに特徴を有する請求項1に記載の捩り振動低減装置。
請求項3
技術分野
背景技術
0002
捩り振動低減装置は、エンジンの動力伝達軸に連結される第1の入力側回転部材(ピストン)及び第2の入力回転部材(ホールドプレート)と、トルクコンバータのタービンに連結される出力側回転部材(ドリブンプレート)と、これらの入力側回転部材と出力側回転部材とを回転方向に弾性的に連結するとともに円周方向に沿って配置された振動吸収ばね(トーションスプリング)と、振動吸収ばねを直列作動させる中間回転部材(バックプレート)とにより構成されている。(上記の入力側回転部材と出力側回転部材における「入力」及び「出力」の表現は便宜的なものであり、どちらか一方が「入力」であって他方が「出力」であれば技術上差支えない。よって本発明においてはいずれの場合も同様に適応できること前提にする。)
0003
トルクコンバータのダンパーは、走行状態に応じてエンジンとトランスミッションとを直結し、エンジン駆動により伝達される振動を吸収する捩り振動低減装置としての機能を果たしている。入力側回転部材は、内燃機関(エンジン)のクランクシャフトと伝動装置の入力軸との間にあって、入力側のトルクを与える回転部材をいい、材質・形状に特に制限はないが、回転に耐えうる一定以上の剛性を有する材料であって回転運動に適合するような平面視略円形(円盤状)の形状によってなるのが望ましい。
0004
出力側回転部材は、入力側からのトルクが伝達される出力側の部材をいい、たとえばハブクラッチ又はドリブンプレートによって実現されるものである。材質・形状に特に制限はないが、回転による振動に耐えうる一定以上の剛性を有する材料、回転運動に適合するような平面視略円形(円盤状)の形状によってなるのが望ましい。入力側回転部材と出力側回転部材とは相対回転可能な態様で配設される。
0005
上記回転部材は通常円周面上にばね収容部を有し、入力側回転部材及び出力側回転部材が相対回転の動きをする際、これに当接し連動して伸縮運動を行う振動吸収ばね(トーションスプリング)が収容される機能を持つ。振動吸収ばねは、吸収すべき捩り振動の強度及び周波数に応じてバネ定数等仕様の異なるものが任意に選択される。本発明においては、トーションスプリング大小等の表現でその差異を表現する。
0006
これらの部材は、エンジン駆動に伴う高速から低速までを任意変動する回転トルクを、トーションスプリングの緩衝を介して捩り振動を吸収しながら適時伝達しなければならないため、高度な剛性を必要とする。また同時に正負回転方向の急激な変化にも対応して逐次トルク伝達機能を発揮するための構造寸法の確保及び安定性及び長期信頼性が要求される。
0007
特に入力側回転部材は、入力された回転トルクを減衰させることなくスムースに伝達させる必要があるため、強固な嵌合固定による一体化と回転軸方向及び軸垂直方向に対して均等な質量バランスが要求される。(本発明においては回転軸垂直方向を「半径方向」と表現する。また、略円盤状である各入出力プレートの面を「円周面」、外周輪郭側を「外周」と表現する。)
0008
上述のような特徴を有する捩り振動低減装置の構造において、トルク伝達軸を回転中心として効率的に回転トルクを伝達しつつ、入力側回転部材と出力側回転部材との相対回転を可能とするためには、両部材の回転軸に対する相対回転の可能な自由度(角度)を十分にとることが望ましい。しかしこの自由度は上記トーションスプリングの配置や各部材の接合のためのリベットの位置等によって大きな制約を受けるため、捩り振動低減装置を構成する各部材の形状及び構造においては様々な技術検討が成されている。同様に、捩り振動を吸収しつつ効率的なトルク伝達を可能とするための捩り振動吸収装置の構造についても様々な技術検討が成されている。
0009
特許文献1(特開2013−217450号公報)には、入力側回転部材であるドライブプレートとサイドプレートを同一形状とし、出力側回転部材であるハブクラッチを介在して対向面を合せる構造を有する捩り振動低減装置について技術思想が開示されている。
0010
しかし、この技術思想は、2枚の出力側回転部材を接合固定するためのリベットの固定部を円周上の最外周側に配置させ且つピストンプレートとの接合を兼ねているため、トーションスプリング配置が内周側にとなり、ばね緩衝仕様を合せて設計上のトーションスプリング配置選択が大きく制限されてしまう。
0011
また特許文献2(特開2010−43658号公報)には、入力側回転部材であるピストンプレートとホールドプレート及びバックプレートの一体的回転駆動を可能にする捩り振動低減装置に関する技術思想が開示されている。トーションスプリングの配置においても円周上最外殻側であるが、バックプレートがピストンプレートに接触する構造であるため、耐摩耗及び熱処理のための加工コストが非常に大きく、回転部材の円盤リング形状化等による部材コスト削減を相殺してしまっている。
0012
上記のように、入力側回転部材及び出力側回転部材の基本的な形態を変えず、可能であれば縮小、小スペース化、軽量化を図り且つ部品点数を削減させ、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を十分に確保しつつ、入力側回転部材及び出力側回転部材の回転駆動における相対的左右回転の自由度を確保できる捩り振動低減装置の構造の開発が望まれている。
先行技術
0013
特開2013−217450号公報
特開2010−043658号公報
発明が解決しようとする課題
0014
エンジン出力伝達機構であるトルクコンバータ内の捩り振動低減装置ダンパーは、略円盤リング形状の入力回転部材と出力回転部材で構成され、両回転部材の相対回転が可能な構造を有することにより介在するバネ等の弾性力を利用して捩り振動を吸収する機能を発揮する。急激な回転トルクを円滑に出力側に伝達するためには、捩り振動低減装置全体としての十分な強度及び剛性が必要であり、そのためには回転部材の円周内側でのリベット等による接合固定や、回転部材同士を構造的に保護又は固定する相互保護構造等の採用が必要であった。
0015
しかし、上記相互保護構造の例として特許文献2について記載したように、入力側回転部材及び出力側回転部材の相対的回転に対してトーションスプリングを保持しつつ自由摺動する中間回転部材であるバックプレートの構造は、急激な回転トルクによる影響からの変形破損等を回避するため、その外周をピストンプレートの外周フランジのオーバーラップ構造等によって保護される形態となっている。
0016
また、バックプレートのピストンプレート側の外周フランジ部は、ピストンプレートに接する構造を有することにより、上記と同様に急激な回転トルクによる影響を回避することができる安全構造をとっている。
0017
上記のようなピストンプレートとの相互保護構造をとることにより、バックプレート自体の構造にも制約を受ける上に、両回転部材の接触摩擦による摩耗及び加熱変形等のデメリットを生じ、そのための対策として浸炭処理及び/若しくは窒化処理等の特殊な耐熱性及び耐摩耗性表面処理加工をピストンプレート及びバックプレート自体にも施さなければならなかった。
0019
本発明はこうした従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、従来の入力側回転部材の基本的な形態を変えず且つ部品点数を増加させずに、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を確保しつつ、各回転部材の最適な構造及びコスト低減に寄与する捩り振動低減装置の構造を提供することを課題とし、特に入力回転部材であるホールドプレートの構造改善及び捩り振動低減装置の構成部材コスト低減という課題に着目したものである。
課題を解決するための手段
0020
かかる課題を解決するため、本発明に係る捩り振動低減装置は、
略円盤状の第1(ピストンプレート)及び第2(ホールドプレート)の入力側回転部材と、
前記入力側回転部材に略同心状に並設され且つ正逆反対方向に相対回転可能に配置された略円盤リング状の出力側回転部材(ドリブンプレート)と、
第2の入力側回転部材の外周を略同心状に覆って且つ前記第2の入力側回転部材及び前記出力側回転部材に対して正逆反対方向に相対回転可能に配置された円環状の中間回転部材(バックプレート)と、
前記第2の入力側回転部材の外周面と前記中間回転部材の内周面の間に円周状に形成されたばね収容部に保持され且つ前記第2の入力側回転部材、前記出力側回転部材及び前記中間回転部材の各突起部が圧接することによって収縮される振動吸収ばね(トーションスプリング)と
を具備し、
前記中間回転部材は、その内周フランジ部を前記第2の入力側回転部材の外周突起部に有する2段爪部によって摺動可能な態様ではさみ込み保持される構造であり且つ前記第1の入力側回転部材とは接する部分がない構造で構成されていること
に特徴を有する。
0021
上記のピストンプレートは、バックプレートを外郭に沿って覆うフランジ部を削除した構造を有することによって、バックプレートの外周側と接することがなくなる。同様に、バックプレートのフランジ部とピストンプレートとの接触部を無くす構造をとることによって、両プレートの接する部分がなくなる。(図4参照)
0022
これにより、ピストンプレートは軽量化が図られ、捩り振動低減装置全体としての軽量化及びコスト低減に貢献する。
0023
ピストンプレートとバックプレートとの接触部が無くなることにより、従来からの接触部の摩擦及び摩耗の問題が回避され、そのための技術的対策が不要になる。つまり、摩擦及び摩耗対策のためのピストンプレートに対する浸炭処理及び/若しくは窒化処理等の高額な熱処理・表面処理を回避することができる。捩り振動低減装置全体としての軽量化及びコスト低減に大きく貢献する。
0024
本発明に係る捩り振動低減装置のバックプレートは、その内周フランジ部を第2の入力側回転部材であるホールドプレートの外周突起部に有する2段爪部によって摺動可能な態様で挟み込み保持される構造を有する。
0025
つまり、ピストンプレートの保護フランジが削除されたことによるバックプレートの急激なトルク衝撃に対するリスクの対策は、第2の入力側回転部材であるホールドプレートの外周先端部に形成した2段爪構造によってバックプレートの内側フランジ部を摺動可能な態様で保持する構造を採用することによって代替される。2段爪部で挟み込む構造は、急激に回転するバックプレートのフランジ部を挟み込み固定し且つ保護する。これによりバックプレートの強度、剛性、安定性が確保される。
0026
バックプレート自体の摺動性もピストンプレートの回転に左右されず、入力側回転部材及び出力側回転部材且つトーションスプリングの動きに連動したスムースな摺動を確保することができる。
0027
本発明に係る捩り振動低減装置のバックプレートは、回転中心を軸に略120度の等角度間隔で前記振動吸収ばねに当接する内周突起部を有し、且つ前記振動吸収ばねの外周側面を摺動可能な態様で保持する内周フランジ部を有することに特徴を有する。
0028
すなわち、本発明に係る捩り振動低減装置のバックプレートは、振動吸収ばねの両端に当接する内周突起部の位置を3カ所にしたことにより、上記振動吸収ばねの収容できる円周上の空間距離を長く確保することができる。これにより、従来に比較して長いトーションスプリングを選択することが可能になると共にばね定数等のばね仕様についても選択の幅が広がる。
0029
またピストンプレートとの接触を考慮しなくてもよいため、バックプレートの内側フランジ部の形状は、トーションスプリングの外周側面の保持に最適な形状を考慮してバックプレートの自由な摺動性を十分確保できる形状とする設計上の自由度が拡大する。
0030
本発明に係る捩り振動低減装置のピストンプレートは、熱処理及び/若しくは浸炭処理及び/若しくは窒化処理の特殊表面処理を施されていないことに特徴を有する。
0031
本発明に係る捩り振動低減装置のピストンプレートは、従来はバックプレートと接触する又は接触する可能性を有する部分を有していたため、急激なトルク回転伝達時における接触による摩擦・摩耗、摩擦熱の影響を回避するため、ピストンプレート表面の剛性及び耐熱性向上を目的に浸炭窒化処理等を施す必要があった。
0032
しかし本発明に係る捩り振動低減装置のピストンプレートは、その必要がないため、浸炭処理及び/若しくは窒化処理等の高コストとなる耐熱性表面処理及び/又は耐摩耗性表面処理を施す必要が無くなる。これは製造工程上も部材コスト面においてもコスト低減に大きく貢献する。捩り振動低減装置の製造工程が大幅に減縮され、工期の大幅な短縮及び製造費の大幅な削減が実現される。
発明の効果
0033
本発明に係る捩り振動低減装置によれば、従来の入力側回転部材の基本的な形態を変えず且つ部品点数を増加させずに、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を確保しつつ、各回転部材の最適な構造及びコスト低減に寄与する捩り振動低減装置の構造を提供することができる。
特に第2の入力回転部材であるホールドプレートの2段爪部構造の採用によって、第1の入力回転部材であるピストンプレートのコスト低減という課題を解決することができる。
0034
これにより、捩り振動低減装置を含むトルクコンバータ機能及びトランスミッション全体としての機能の向上及び軽量化、長期信頼性を確保することができ、自動車エンジン駆動機構における技術的経済的効果は大きい。
図面の簡単な説明
0035
本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置の部材の構成を示した概念図である。
本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のバックプレート示した図である。
本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のホールドプレートを示した図である。
本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置と従来の捩り振動低減装置の切断面(中心軸から片半径部分)を示した図である。
実施例
0036
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
0037
図1は、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置の構造形態を部材ごとに示す斜視図である。同図に示すように、駆動エンジン側(図1においては左側)からピストンプレート10、バックプレート30、ホールドプレート20、ドリブンプレート40の順でトランスミションである出力側へ略円盤状の回転部材が構成されている。
0038
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置の入力回転部材がピストンプレート10及びホールドプレート20であり両部材はリベット等によって固定される構造になっている。出力回転部材がドリブンプレート40である。バックプレート40は、入力側回転部材と出力側回転部材とを回転方向に弾性的に連結するとともに、円周方向に沿って配置されたトーションスプリング(図1では記載されていない。)を直列作動させるための中間回転部材である。
0039
バックプレート30は、略円盤状である入力側回転部材及び出力側回転部材の外周において囲う態様で円環状に構成されており、両回転部材の回転運動に対しては独立摺動可能な態様で相対回転できるように構成されている。
0040
図2は、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のバックプレート示した図である。同図に示すようにバックプレート30は、円環状の中間回転部材であって中心軸から略120度間隔で内周突起部31を3カ所有し、内周突起部31の円周方向の両側面である内周ばね当接部32においてトーションスプリング大の一端を保持する。(図2においてトーションスプリングは記載されていない。)円環状であるバックプレート30の内周突起部31を除いた内周側縁部には内周フランジ部33を有する。
0041
後述するが、バックプレート30の内周フランジ部33はピストンプレート10に対して反対側に位置し、ホールドプレート20の先端2段爪部によって保持される。また、内周フランジ部33以外のバックプレート30の内周面は、トーションスプリング大の外周側面を保持する構造になっている。図2に示すように、バックプレート30の内周突起部31の数を従来の4カ所から3カ所に減ずることにより、内周に保持されるトーションスプリング大の保持スペースが大きくとれるため、トーションスプリング大の大きさや仕様の選択幅が広がる。
0042
図3は、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のホールドプレートを示した図である。同図に示すようにホールドプレート20は、略円盤状の回転部材であり中央部に開口を有する略円環状の部材でもある。その外周には外周突起部21を中心軸から略120度間隔で3カ所有し、それらの円周方向の両側面である外周ばね当接部24においてトーションスプリング大を保持する構造となっている。(図3においてトーションスプリング大は記載されていない。)バックプレート30と同様に外周突起部21の数を従来の4カ所から3カ所に減ずることにより外周に保持されるトーションスプリング大の保持スペースが大きくとれるため、採用するトーションスプリング仕様の選択幅が広がる。
0043
図3に示すように、円環状のホールドプレート20の内周には内周小ばね保持部25を3カ所設け、小型のトーションスプリング(トーションスプリング小)を保持する構造となっている。(図3においてトーションスプリング小は記載されていない。)
0044
図3のZ−Z断面図に示すように、ホールドプレート20の外周突起部21の先端部は、先端2段爪上段22と先端2段爪下段23の二段構成の爪状構造を有する。後述するが、外周突起部21はピストンプレート10に対して反対側に位置し、先端2段爪部によってバックプレート30の内周フランジ部33を摺動可能な態様で保持する構造になっている。
0045
図4は、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置と従来の捩り振動低減装置の切断面(中心軸から片半径部分)を示した断面図である。同図に示すように、左側の図が本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置の切断面を示し、右側の図は従来の捩り振動低減装置の切断面(前述の特許文献2参照)を示す。両図面共に、エンジン側である右側に第1の入力側回転部材であるピストンプレート10があり、同様に第2の入力側回転部材であるホールドプレート20がリベット52によって連結固定されている。
0046
トランスミッション側である左側には出力側回転部材であるドリブンプレート40を有し、各々の回転部材に包接された態様でトーションスプリング大50及びトーションスプリング小51を保持する構造となっている。(左側図である本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置の切断面ではトーションスプリング小51は図示されていない。)
0047
次に本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のバックプレート30について記載する。図4の右側図に示すように従来の捩り振動低減装置のバックプレート30は、エンジン側の内周フランジ部33においてピストンプレート10の円周面に接触する構造になっている。この構造によってバックプレート30の回転軸方向の不要な移動を制御する機構となっている。またピストンプレート10の最外周は略直角に折れ曲がったフランジ部53を有し、このフランジ部53によってバックプレート30を円環状に保護し急激な回転による変形や破損を回避する構造になっている。
0048
上記のように従来の捩り振動低減装置におけるバックプレート30は、急激な回転の際、内周フランジ部33によってピストンプレート10の円周面に接触し摩擦による摩耗を生じ、同様に摩擦による発熱が起こる。バックプレート30の外周面も同様にピストンプレート10のフランジ部53との接触により摩擦摩耗及び発熱が生じる。このため、ピストンプレート10には耐摩耗及び耐熱のための表面処理(熱処理、浸炭及び/若しくは窒化処理等)を施す必要があった。当然、回転部材に対するこのような特殊表面処理は、製造コストや部材の部品単価において不利な要因となり製造面で非効率な工程を生んでいた。
0049
従来の構造に代えて、図4の左側図に示すように本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のバックプレート30は、ピストンプレート10側にある内周フランジ部33を削除しピストンプレート10の内周面との接触を回避した構造を有する。また、ピストンプレート10の最外周フランジ部53を無くし、バックプレート30の円環状の外郭を保護する形態を削除した。
0050
またバックプレート30の軸方向に対する移動及び構造的な脆弱性を回避するため、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のバックプレート30は、ピストンプレート10に対して反対側の内周フランジ部33において、ホールドプレート20の外周突起部21の先端に設けた先端2段爪上段22と先端2段爪下段23部によって挟み込み保持する構造を採用した。
0051
図3の断面図にも示したようにホールドプレート20の先端爪部は、先端2段爪下段23(1つ)を中央にして両サイドから段違いに先端2段爪上段が(2つ)挟み込む態様でバックプレート30の内周フランジ部33を保持する構造となっている。加えて先端2段爪下段23と先端2段爪上段22との間隔はバックプレート30の内周フランジ部33の板厚より若干大きくし、且つ内周フランジ部33の先端が先端2段爪上段22の支柱部に触れないように若干の隙間を設定することによって、バックプレート30はホールドプレート20に対しても摺動可能な態様で保持される。
0052
図4に示すように、上記構造を採用することによりバックプレート30の軸方向に対する移動を従来の構造と同じように制御し回避することができる。また、バックプレート30の内周構造は、その内周面に接するトーションスプリング大50を従来と比較して包接してスムースに保持する構造を採用することができる。
0053
また、本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置のピストンプレート10は、バックプレート30との接触部を持たないため、従来のような両プレートの接触摩擦による摩擦摩耗及び摩擦熱の問題を回避することができる。これにより、ピストンプレート10の特殊表面処理(耐熱処理、浸炭及び/若しくは窒化処理等)を実施する必要が無くなった。硬度な剛性を要する回転部材の耐熱・耐摩耗性付与のための熱処理は、製造工程的にも非常に大きなコスト要因となっていたが、これらの工程を回避し部品コストの低減を図ることができる。
0054
以上のように本発明の一実施形態に係る捩り振動低減装置は、従来の入力側回転部材の基本的な形態を変えず且つ部品点数を増加させずに、捩り振動低減装置一体としての強度・剛性を確保しつつ、各回転部材の最適な構造及びコスト低減に寄与する捩り振動低減装置の構造を提供することができる。特に入力回転部材であるピストンプレートの構造改善及び部材コスト低減という大きな効果を発揮することができる。
0055
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。また本発明が二次的製造物に組込まれた場合でも、これらはすべて、本技術思想の一部である。
0056
本発明は、高い制振効果と高い許容トルクとを長期に保つための品質を確保するため工夫されたトルクコンバータの捩り振動低減装置ダンパーを提供するためものであり、自動車のエンジン出力系トランスミションにおける本発明の採用だけではなく、エンジン駆動システムを有する広い産業分野において活用される可能性の高い技術である。駆動エンジンの出力を効率よく伝達し、高信頼性を確保し、かつ軽量化、低コスト化につながる本発明の産業上の利用可能性は大きい。
0057
1・・・捩り振動低減装置
10・・・ピストンプレート(第1の入力側回転部材)
20・・・ホールドプレート(第2の入力側回転部材)
21・・・外周突起部
22・・・先端2段爪上段
23・・・先端2段爪下段
24・・・外周ばね当接部
25・・・内周小ばね保持部
30・・・バックプレート(中間回転部材)
31・・・内周突起部
32・・・内周ばね当接部
33・・・内周フランジ部
40・・・ドリブンプレート(出力側回転部材)
41・・・外周爪部
42・・・外周爪ばね当接部
43・・・貫通切欠き部
44・・・小ばね当接部
50・・・大ばね(トーションスプリング大)
51・・・小ばね(トーションスプリング小)
52・・・リベット
53・・・フランジ部(ピストンプレート)