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図面 (20)

課題

酸やアルカリによる処理やタンパク質分解酵素による従来の処理方法が抱える問題、即ち、(1)粉末化超音波処理沸騰処理といった前処理が必要であること、(2)長時間の処理を必要とすること、(3)分解率が低い(約20%)こと、といった問題の少なくとも一つを解消できる、卵殻膜可溶化方法を提供することを課題とする。

解決手段

タンパク質分解酵素と還元剤を併用することによって、効率的に卵殻膜を可溶化する。

概要

背景

鶏肉および鶏卵の国内消費量は多く、それぞれ年間220万トン、250万トンにものぼるといわれている。世界全体の消費量では鶏肉が約8300万トン、鶏卵が約5600万トンである。一方で、不食部の羽毛および卵殻膜も大量に排出される。羽毛および卵殻膜の90%以上は蛋白質から構成されており、羽毛はケラチン蛋白質、卵殻膜はコラーゲン様タンパク質が主成分となっている。いずれもシステインを多く含み(約10%)、その分解物抗酸化作用等の多くの生理機能を持つことが知られている。

卵殻膜は、鶏卵において卵細胞卵黄)や卵白包み卵殻とともに物理的に外界から隔離し、有害な紫外線酸素および乾燥から鶏卵を守っている。また病原菌ウイルスなどの外来生物の感染から防御する重要な働きがある。また卵殻膜には抗菌物質およびリゾチームやβ−N−アセチルグルコサミニダーゼなどの抗菌酵素が含まれている。さらに卵殻膜には、その他特殊なタンパク質が含まれているといわれており、その機能性に注目が集まっている。

卵殻膜を用いた各種の機能物が知られている。例えば、パーマネント剤毛髪キューティクルを保護するために卵殻膜を加えたもの(特開2000−128744)や、創傷治療のために絆創膏卵殻膜分解物を加えたもの(特開2003−225298)等が知られている。

卵殻膜の大部分は利用されることなく廃棄処分されているのが現状である。その理由として、難分解性であるが故に扱いづらく、効率的な可溶化方法が無いことがあげられる。現在主流の卵殻膜処理技術は、酸およびアルカリ処理によるものであるが、茶褐色の着色やアミノ酸分解による異臭発生の問題を伴う。また、過剰反応による有用成分の低収率化の問題もある。代替技術としてタンパク質分解酵素プロテアーゼ)による処理が検討されているが(例えば特許文献1〜4を参照)、(1)粉末化超音波処理沸騰処理といった前処理が必要であること、(2)長時間の処理を必要とすること、(3)分解率が低い(約20%)こと、といった問題を抱えている。酵素反応は比較的温和な条件で進むため、有効成分の高収率化が期待できるが、上記問題により実用的な技術は確立されていなかった。

概要

酸やアルカリによる処理やタンパク質分解酵素による従来の処理方法が抱える問題、即ち、(1)粉末化、超音波処理、沸騰処理といった前処理が必要であること、(2)長時間の処理を必要とすること、(3)分解率が低い(約20%)こと、といった問題の少なくとも一つを解消できる、卵殻膜可溶化方法を提供することを課題とする。タンパク質分解酵素と還元剤を併用することによって、効率的に卵殻膜を可溶化する。なし

目的

本発明は、従来の処理方法(酸やアルカリによる処理やタンパク質分解酵素による処理)が抱える上記問題の少なくとも一つを解消できる、卵殻膜可溶化方法及びその用途等を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

還元剤共存下、卵殻膜タンパク質分解酵素を作用させる工程を含み、タンパク質分解酵素と還元剤を併用することを特徴とする、卵殻膜可溶化方法であって、前記還元剤が、亜硫酸塩亜硫酸水素塩、L−システイン、N−アセチル−L−システイン、L−システイン塩酸塩2−メルカプトエタノールグルタチオン及びDTTからなる群より選択される一種以上の還元剤である、卵殻膜可溶化方法。

請求項2

前記還元剤の濃度が5mM〜1Mである、請求項1に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項3

前記還元剤の濃度が100mM〜500mMである、請求項1に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項4

前記タンパク質分解酵素がアルカリ性プロテアーゼ又は中性プロテアーゼである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項5

前記タンパク質分解酵素が、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼメタロエンドペプチダーゼアミノペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼからなる群より選択される一種以上の酵素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項6

前記タンパク質分解酵素がキモトリプシンサブチリシンパパインバシロライシンステムブロメラインロイシルアミノペプチダーゼ、ペプシン及びトリプシンからなる群より選択される一種以上の酵素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項7

前記タンパク質分解酵素の濃度が0.01%(W/W)〜20%(W/W)である、請求項1〜6に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項8

以下の工程(1)及び(2)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法:(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程、(2)前記溶媒に還元剤及びタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程。

請求項9

固形物が認められなくなるまで、前記工程(2)の反応を継続する、請求項8に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項10

工程(2)における反応溶液のpHが4.5〜9.5である、請求項8又は9に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項11

工程(2)における反応温度が30〜80℃である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。

請求項12

以下の工程(3)を更に含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法:(3)工程(2)後の溶液濾過し、固形物を除去する工程。

請求項13

請求項1〜12のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法で得られる、卵殻膜可溶物

請求項14

リゾチーム、β−N−アセチルグルコサミニダーゼヒアルロン酸コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸からなる群より選択される一以上の成分を含む、請求項13に記載の卵殻膜可溶物。

請求項15

抗酸化活性及びアンジオテンシン変換酵素阻害活性からなる群より選択される一以上の活性を示す、請求項13に記載の卵殻膜可溶物。

請求項16

卵殻膜の完全な可溶物である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶物

請求項17

請求項13〜16のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶物を含む組成物

請求項18

医薬医薬部外品食品又は化粧料である、請求項17に記載の組成物。

請求項19

以下の工程(i)及び(ii)を含む、卵殻膜有用成分抽出方法:(i)請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法による可溶化工程;(ii)前記可溶化工程で得られた卵殻膜可溶物を精製する工程。

請求項20

工程(ii)で精製される成分が、リゾチーム及びβ−N−アセチルグルコサミニダーゼからなる群より選択される酵素、又はヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸からなる群より選択される酸性ムコ多糖である、請求項19に記載の卵殻膜有用成分抽出方法。

請求項21

請求項19に記載の卵殻膜有用成分抽出方法で得られる卵殻膜抽出物

請求項22

以下の工程(1)及び(2’)を含む、タンパク質分解酵素と還元剤を併用することを特徴とする、活性を有するリジルオキシダーゼを含む卵殻膜可溶化物調製方法:(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程、(2’)前記溶媒に還元剤を添加して反応させた後、還元剤を除去し、次いでタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程。

請求項23

前記還元剤が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、L−システイン、L−システイン塩酸塩、N−アセチル−L−システイン、2−メルカプトエタノール、グルタチオン及びDTTからなる群 より選択される一種以上の還元剤である、請求項22のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項24

前記還元剤の濃度が5mM〜1Mである、請求項22又は23に記載の調製方法。

請求項25

工程(2’)における反応溶液のpHが4.5〜9.5である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項26

工程(2’)における反応温度が30〜80℃である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項27

工程(2’)におけるタンパク質分解酵素の濃度が0.01%(W/W)〜20%(W/W)である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項28

前記タンパク質分解酵素がアルカリ性プロテアーゼ又は中性プロテアーゼである、請求項22〜27のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項29

前記タンパク質分解酵素が、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼからなる群より選択される一種以上の酵素である、請求項22〜27のいずれか一項に記載の調製方法。

請求項30

請求項22〜29のいずれか一項に記載の調製方法で得られる、活性を有するリジルオキシダーゼを含む卵殻膜可溶物。

請求項31

請求項30に記載の卵殻膜可溶物を含む組成物。

請求項32

医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、請求項31に記載の組成物。

請求項33

以下の工程(i’)及び(ii’)を含む、卵殻膜有用成分抽出方法:(i’)請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法による調製工程;(ii’)前記調製工程で得られた卵殻膜可溶物を精製する工程。

請求項34

工程(ii’)で精製される成分がリジルオキシダーゼである、請求項33に記載の卵殻膜有用成分抽出方法。

技術分野

0001

本発明は酵素を用いた卵殻膜可溶化方法に関する。詳しくは、タンパク質分解酵素を用いた卵殻膜可溶化方法及びその用途に関する。本出願は、2010年8月31日に出願された日本国特許出願第2010−195076号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。

背景技術

0002

鶏肉および鶏卵の国内消費量は多く、それぞれ年間220万トン、250万トンにものぼるといわれている。世界全体の消費量では鶏肉が約8300万トン、鶏卵が約5600万トンである。一方で、不食部の羽毛および卵殻膜も大量に排出される。羽毛および卵殻膜の90%以上は蛋白質から構成されており、羽毛はケラチン蛋白質、卵殻膜はコラーゲン様タンパク質が主成分となっている。いずれもシステインを多く含み(約10%)、その分解物抗酸化作用等の多くの生理機能を持つことが知られている。

0003

卵殻膜は、鶏卵において卵細胞卵黄)や卵白包み卵殻とともに物理的に外界から隔離し、有害な紫外線酸素および乾燥から鶏卵を守っている。また病原菌ウイルスなどの外来生物の感染から防御する重要な働きがある。また卵殻膜には抗菌物質およびリゾチームやβ−N−アセチルグルコサミニダーゼなどの抗菌酵素が含まれている。さらに卵殻膜には、その他特殊なタンパク質が含まれているといわれており、その機能性に注目が集まっている。

0004

卵殻膜を用いた各種の機能物が知られている。例えば、パーマネント剤毛髪キューティクルを保護するために卵殻膜を加えたもの(特開2000−128744)や、創傷治療のために絆創膏卵殻膜分解物を加えたもの(特開2003−225298)等が知られている。

0005

卵殻膜の大部分は利用されることなく廃棄処分されているのが現状である。その理由として、難分解性であるが故に扱いづらく、効率的な可溶化方法が無いことがあげられる。現在主流の卵殻膜処理技術は、酸およびアルカリ処理によるものであるが、茶褐色の着色やアミノ酸分解による異臭発生の問題を伴う。また、過剰反応による有用成分の低収率化の問題もある。代替技術としてタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による処理が検討されているが(例えば特許文献1〜4を参照)、(1)粉末化超音波処理沸騰処理といった前処理が必要であること、(2)長時間の処理を必要とすること、(3)分解率が低い(約20%)こと、といった問題を抱えている。酵素反応は比較的温和な条件で進むため、有効成分の高収率化が期待できるが、上記問題により実用的な技術は確立されていなかった。

先行技術

0006

特開2008−118887号公報
特開2008−061514号公報
特開平09−040564号公報
特開2008−007419号公報

発明が解決しようとする課題

0007

そこで本発明は、従来の処理方法(酸やアルカリによる処理やタンパク質分解酵素による処理)が抱える上記問題の少なくとも一つを解消できる、卵殻膜可溶化方法及びその用途等を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)と還元剤を併用すること、特に還元剤の共存下でタンパク質分解酵素を作用させることによって、卵殻膜を極めて効率的に可溶化できることを見出した。驚くべきことに、酵素を利用した従来の方法では困難であった完全な可溶化も達成し得ることが示されるとともに、酸性プロテアーゼ中性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼのいずれを採用した場合においても、温和なpH条件下にも拘わらず、良好な可溶化を認めた。更なる検討の末、可溶化に有効な各種条件を特定することに成功した。一方、本法によって得られる卵殻膜可溶物の特性を調べたところ、有用な物質の存在を確認し、当可溶物の利用価値が高いことが判明した。主として以上の成果に基づき、以下の本発明が完成された。
[1]タンパク質分解酵素と還元剤を併用することを特徴とする、卵殻膜可溶化方法。
[2]還元剤の共存下、卵殻膜にタンパク質分解酵素を作用させる工程を含む、[1]に記載の卵殻膜可溶化方法。
[3]以下の工程(1)及び(2)を含む、[1]に記載の卵殻膜可溶化方法:
(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程、
(2)前記溶媒に還元剤及びタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程。
[4]工程(2)における反応溶液のpHが4.5〜9.5である、[3]に記載の卵殻膜可溶化方法。
[5]前記還元剤の濃度が5mM〜1Mである、[3]又は[4]に記載の卵殻膜可溶化方法。
[6]固形物が認められなくなるまで、前記工程(2)の反応を継続する、[3]〜[5]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[7]以下の工程(3)を更に含む、[3]〜[6]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法:
(3)工程(2)後の溶液濾過し、固形物を除去する工程。
[8]前記タンパク質分解酵素がアルカリ性プロテアーゼ又は中性プロテアーゼである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[9]前記タンパク質分解酵素が、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼメタロエンドペプチダーゼアミノペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼからなる群より選択される一種以上の酵素である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[10]前記タンパク質分解酵素がキモトリプシンサブチリシンパパインバシロライシンステムブロメラインロイシルアミノペプチダーゼ、ペプシン及びトリプシンからなる群より選択される一種以上の酵素である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[11]前記タンパク質分解酵素がビオソーク、プロレザーFG−F、パパインW40、プロテアーゼN、ブロメラインF、ウマミザイムG、サモアーゼY100、ProteAX、プロテアーゼS、スミチームLP500、デスキンC、プロチンNY10、プロチンPC10、スミチームMP、プロチンAY及びプロテイナーゼK(Proteinase K)からなる群より選択される一種以上の酵素である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[12]前記還元剤が、亜硫酸塩亜硫酸水素塩、L−システイン、N−アセチル−L−システイン、2−メルカプトエタノールグルタチオン及びDTTからなる群より選択される一種以上の還元剤である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[13]前記還元剤が亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムである、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法。
[14]以下の工程(1)及び(2’)を含む、[1]に記載の卵殻膜可溶化方法:
(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程、
(2’)前記溶媒に還元剤を添加して反応させた後、還元剤を除去し、次いでタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程。
[15]タンパク質分解酵素と還元剤を組合せてなる、卵殻膜可溶化剤
[16]タンパク質分解酵素と還元剤を含有することを特徴とする、[15]に記載の卵殻膜可溶化剤。
[17]タンパク質分解酵素を含有する第1構成要素と、還元剤を含有する第2構成要素とからなるキットであることを特徴とする、[15]に記載の卵殻膜可溶化剤。
[18][1]〜[13]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶化方法で得られる、卵殻膜可溶物。
[19]リゾチーム、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、ヒアルロン酸コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸からなる群より選択される一以上の成分を含む、[18]に記載の卵殻膜可溶物。
[20]抗酸化活性及びアンジオテンシン変換酵素阻害活性からなる群より選択される一以上の活性を示す、[18]に記載の卵殻膜可溶物。
[21][14]に記載の卵殻膜可溶化方法で得られる、卵殻膜可溶物。
[22]リジルオキシダーゼを含む、[21]に記載の卵殻膜可溶物。
[23]卵殻膜の完全な可溶物である、[18]〜[22]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶物
[24][18]〜[23]のいずれか一項に記載の卵殻膜可溶物を含む組成物
[25]医薬医薬部外品食品又は化粧料である、[24]に記載の組成物。
[26]以下の工程(i)及び(ii)を含む、卵殻膜有用成分抽出方法
(i)[1]〜[13]のいずれか一項に記載の方法による可溶化工程;
(ii)前記可溶化工程で得られた卵殻膜可溶物を精製する工程。
[27]工程(ii)で精製される成分が、リゾチーム及びβ−N−アセチルグルコサミニダーゼからなる群より選択される酵素、又はヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸からなる群より選択される酸性ムコ多糖である、[26]に記載の卵殻膜有用成分抽出方法。
[28][27]に記載の方法で得られるリゾチーム、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸又はデルマタン硫酸。
[29]以下の工程(i’)及び(ii)を含む、卵殻膜有用成分抽出方法:
(i’)[14]に記載の方法による可溶化工程;
(ii)前記可溶化工程で得られた卵殻膜可溶物を精製する工程。
[30]工程(ii)で精製される成分がリジルオキシダーゼである、[29]に記載の卵殻膜有用成分抽出方法。
[31][30]に記載の方法で得られるリジルオキシダーゼ。
[32][26]又は[29]に記載の卵殻膜有用成分抽出方法で得られる卵殻膜抽出物

図面の簡単な説明

0009

酵素剤(ビオソーク)単独で卵殻膜を分解した結果。
酵素剤(ビオソーク)と還元剤(DTT)を併用して卵殻膜を分解した結果。
試験した還元剤の種類と卵殻膜可溶化(分解)の有無を示す表。
酵素剤(ビオソーク)と還元剤(亜硫酸ナトリウム)を併用した場合のpH条件と可溶化の程度の関係を示すグラフ
SDS-PAGEによる卵殻膜可溶物の分析結果。
卵殻膜可溶化における還元剤の濃度依存性を示すグラフ。左はビオソークを用いた場合の結果、右はプロレザーFG−Fを用いた場合の結果。
亜硫酸ナトリウムとビオソークを用いた場合の卵殻膜の可溶化。
亜硫酸ナトリウムとプロレザーFG−Fを用いた場合の卵殻膜の可溶化。
卵殻膜濃度と可溶化時間の関係を示す図。左は反応前後の卵殻膜の状態を示す。右は各卵殻膜量で完全可溶化に要する時間をプロットしたグラフ。
ペプシンと還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
スミチームLP500と還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
デスキンCと還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
プロチンNY10と還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
プロチンPC10と還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
トリプシン(Trypsin)と還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
スミチームMPと還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
プロチンAYと還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
プロテイナーゼK(Proteinase K)と還元剤を併用した場合の卵殻膜の可溶化。
還元剤としてN−アセチル−L−システインを使用した場合の卵殻膜の可溶化。
還元剤として2−メルカプトエタノールを使用した場合の卵殻膜の可溶化。
卵殻膜可溶物中の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)含量を示す表。
卵殻膜可溶物中のヒアルロン酸含量を示す表。
卵殻膜可溶物のリジルオキシダーゼ活性を示すグラフ。
卵殻膜可溶物の溶菌活性を示すグラフ。
卵殻膜可溶物のフリーラジカル消去活性を示すグラフ。
卵殻膜可溶物のCu2+還元活性を示すグラフ。
卵殻膜可溶物のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害率を示すグラフ。

0010

1.卵殻膜可溶化方法
本発明の第一の局面は卵殻膜の可溶化方法に関する。本発明の方法によれば、茶褐色の着色やアミノ酸分解による異臭発生の問題を回避しつつ、卵殻膜を効率的に可溶化できる。また、前処理を行わなくとも高い可溶化(分解)率を達成できる。

0011

本明細書において「卵殻膜」とは鶏、ウズラ烏骨鶏、アヒルガチョウダチョウ等の鳥類外殻の内側に存在する膜である。本発明の可溶化方法ではタンパク質分解酵素と還元剤を併用して卵殻膜を処理し、可溶化する。処理に供する卵殻膜の状態は特に限定されない。例えば、外殻から分離した後、乾燥処理天日乾燥熱風乾燥真空乾燥吸引乾燥凍結乾燥など)を施したもの(乾燥状態)、乾燥処理を施す前のもの(湿潤状態)、乾燥処理後に膨潤させたもの(湿潤状態)を用いることができる。また、裁断粉砕などの処理が施されたもの(例えば粉末状)であってもよい。更には、殻から分離していない状態の卵殻膜を用いることにしてもよい。

0012

本発明における「タンパク質分解酵素と還元剤を併用する」とは、還元剤の作用を利用しつつタンパク質分解酵素を卵殻膜に作用させることを意味する。このような還元剤の作用を利用できる環境が形成される限りにおいて、卵殻膜にタンパク質分解酵素を作用させるタイミング(時期)と還元剤の使用のタイミング(時期)は特に限定されない。好ましくは、卵殻膜をより効率的に可溶化するため、還元剤の作用とタンパク質分解酵素の作用が同時に発揮されるようにする。典型的には、還元剤の共存下、卵殻膜にタンパク質分解酵素を作用させる。この態様では、例えば、次の工程(1)及び(2)が実施される。
(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程
(2)前記溶媒に還元剤及びタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程

0013

工程(1)に使用する溶媒は酵素反応が生ずる限り特に限定されないが、好ましくは、pH調整及び所望のpHの維持を容易にすべく緩衝液を用いる。工程(2)において、還元剤及びタンパク質分解酵素の添加のタイミング及び順序は特に限定されないが、好ましくは、併用効果が十分に発揮させるように、還元剤とタンパク質分解酵素を同時に添加するか又は還元剤の添加後、タンパク質分解酵素を添加する(好ましくは速やかに添加する)。前者の方法によれば添加操作が1回となり、操作性の点でも有利である。

0014

上記の態様と異なり、還元剤で処理した後の卵殻膜にタンパク質分解酵素を作用させることにしてもよい。この態様の場合、例えば、次の工程(1)及び(2’)が実施されることになる。尚、当該態様は、活性を維持したリジルオキシダーゼを含む卵殻膜可溶物を得る目的において特に適する。
(1)溶媒中に卵殻膜を用意する工程
(2’)前記溶媒に還元剤を添加して反応させた後、還元剤を除去し、次いでタンパク質分解酵素を添加し、反応させる工程

0015

本発明で用いるタンパク質分解酵素は、卵殻膜の効率的な可溶化が達成できる限り特に限定されない。タンパク質分解酵素として市販の酵素剤を用いてもよい。酵素剤の例を挙げると、ビオソーク、ニューラーゼF3−G、ニューラーゼA、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW−40、プロメラインF、プロチンNY10、プロチンPC10、プロチンAY、プロチンSD−NY10、プロチンSD−PC10F、サモアーゼPC10F、プロチンSD−AC10F、プロチンSD−AY10、プロレザーFG−F、プロテアーゼP「アマノ」3G、プロテアーゼM「アマノ」G、ProteAX(以上、天野エンザイム)、モルシンF(キッコーマン食品)、スミチームAP、スミチームLP、スミチームLP500、スミチームFP、スミチームLPL、スミチームMP(以上、新日本化学工業)、デナプシン2P、デナチームAP、ビオプラーゼOP、ビオプラーゼAL−15FG、ビオプラーゼ30G、ビオプラーゼAPL−30、ビオプラーゼOR−10G、ビオプラーゼ30L、ビオプラーゼXL−416F、ビオプラーゼSP−20FG、ビオプラーゼSP−4FG、プロテアーゼCL−15(以上、ナガセケムテックス)、オリエンターゼ20A、テトラーゼS、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ90N、オリエンターゼONS、オリエンターゼ22BF(以上、エイチビィアイ)、ブリューワーズクラレックスバリダーゼAFP、バリダーゼFP60、ブリューワーズプロテアーゼ、アクセラザイムNP50.000、デルボラーゼ、バリダーゼTSP200、ベイクザイムPPU95.000、ベイクザイムB500、コルプリン、バリダーゼパパインSF、バリダーゼブロメライン(以上、ディエスエム(DSMジャパン)、プロテアーゼYP−SSパンチダーゼNP−2、パンチダーゼP、アロアーゼAP−10、アロアーゼNP−10、アロアーゼNS、アロアーゼXA−10、プロテアーゼAL(以上、ヤクルト薬品工業)、プロモッド223LP、プロテックス7L、プロテックス14L、アルカリプロテアーゼGL、プロテックス6L、プロテックス89L、ピュラフクト、ピュラフェクトOX、プロペラーゼ、プロテックスOXG、プロテックス40L(以上、ジェネンコア(Genencor)協和)、PTN、ニュートラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼアルカラーゼクリアーレンズプロ、エバラーゼ、カンナーゼ、ポーラザイム、フレーバーザイム、プロタメクスノボラン(以上、ノボザイムス(Novozymes)ジャパン)、パパイン(PAPAIN)F.、トリプシン(TRYPSIN)4.0T、コロラーゼ(COROLASE)N、ヴェロンVERON)L10、コロラーゼ(COROLASE)L10、コロラーゼ(COROLASE)7089、ヴェロン(VERON)W(以上、口商会)、エンチロNBS、エンチロンSA、マグナックスMT(以上、洛東化成工業)、コクラーゼP(三菱化学フーズ)、アクチナーゼAS、アクチナーゼAF(以上、科研ファルマ)、グリドアミルPR59、グリンドアミルPR43(以上、ダニスコ(Danisco)ジャパン)、ソフターゲンM2(タイショーテクノス)、プロテイナーゼK(Proteinase K)(和光純薬工業)、デスキンC(大和化成)等を用いることができる。

0016

後述の実施例に示す通り、ビオソーク、プロレザーFG−F、パパインW40、プロテアーゼN、ブロメラインF、ウマミザイムG、サモアーゼY100、ProteAX、プロテアーゼSを用いた場合、短時間で卵殻膜を完全に可溶化できた。また、スミチームLP500、デスキンC、プロチンNY10、プロチンPC10、スミチームMP、プロチンAY及びプロテイナーゼK(Proteinase K)、ペプシン、トリプシンを用いた場合にも卵殻膜の効率的な可溶化を認めた。これらの結果に基づき、好ましい態様では、これらの酵素剤又は酵素の中から選択される1種類以上の酵素剤をタンパク質分解酵素として採用する。ここで、これらの酵素剤を構成する酵素には、至適pH域がアルカリ性でセリンエンドペプチダーゼに分類されるキモトリプシン、至適pH域がアルカリ性でセリンエンドペプチダーゼに分類されるサブチリシン、至適pH域が中性でシステインエンドペプチダーゼに分類されるパパイン、至適pH域が中性でメタロエンドペプチダーゼに分類されるバシロライシン、至適pH域が中性でシステインエンドペプチダーゼに分類されるステムブロメライン、至適pH域が中性でアミノペプチダーゼに分類されるロイシルアミノペプチダーゼを含む。また、ペプシンは至適pH域が酸性でアスパラギン酸エンドペプチダーゼに分類され、トリプシンは至適pH域が中性でセリンエンドペプチダーゼに分類される。これらの事実より、本発明の好ましい一態様ではセリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼからなる群より選択される一種以上の酵素を用いる。より具体的にはキモトリプシン、サブチリシン、パパイン、バシロライシン、ステムブロメライン、ロイシルアミノペプチダーゼ、ペプシン及びトリプシンからなる群より選択される一種以上の酵素を用いる。一方、多くのアルカリプロテアーゼ及び中性プロテアーゼが良好な可溶化を実現したことから(後述の実施例を参照)、好ましい一態様として、アルカリプロテアーゼ及び中性プロテアーゼを採用する。

0017

後述の実施例に示す通り、ビオソーク、プロレザーFG−F及びパパインW40によれば、極めて短時間で卵殻膜の完全な可溶化が可能であった。そこで、これらの酵素剤の1種類以上、又はこれらの酵素剤を構成する酵素(即ち、キモトリプシン(ビオソークの成分)、サブチリシン(プロレザーFG−Fの成分)及びパパイン(パパインW40の成分))の1種類以上をタンパク質分解酵素として採用することが特に好ましい。最も好ましい態様では、最も短時間で卵殻膜の完全な可溶化を認めたビオソーク又はその成分であるキモトリプシンを、タンパク質分解酵素の少なくとも一つとして採用する。

0018

本発明で使用するタンパク質分解酵素は精製品でなくともよい。例えば、植物抽出物動物抽出物、微生物による培養抽出物、或いはこれらの部分精製物なども、卵殻膜の効率的な可溶化が達成できる限り、タンパク質分解酵素として用いることが可能である。

0019

還元剤としては例えば亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩が用いられる。ここでの塩は例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はアンモニウムの塩(具体的にはナトリウムカリウムモノエタノールアミンなど)である。より好ましくは亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム)が用いられる。

0020

還元剤としてチオール類又はホスフィン類を用いることもできる。チオール類の例は、システイン及びその誘導体(例えばN-アセチルシステイン)、システアミン及びその誘導体(誘導体の例としてC1-C4アシル誘導体、より具体的にはN-アセチルシステアミン及びN-プロピオニルシステアミン等が挙げられる。)、チオ乳酸及びそのエステル(チオ乳酸のエステルとして例えば、モノチオ乳酸グリセロール等がある。)、チオグリコール酸及びそのエステル(チオグリコール酸のエステルとして例えば、グリセロール又はグリコールのモノチオグリコレート等が挙げられる。)及びチオグリセロール並びにそれらの混合物である。チオール類の具体例を示すと、N-メルカプトアルキルアミド類、N-(メルカプトアルキル)ω-ヒドロキシアルキルアミド類、N-モノ-又はN,N-ジアルキルメルカプト-4-ブチルアミド類、アミノメルカプトアルキルアミド類、及びアルキルアミノメルカプトアルキルアミド類、2−メルカプトエタノールである。N-メルカプトアルキルアミド類としては例えば、N-(メルカプト-2-エチル)グルコアミド、β-メルカプトプロピオン酸及びその誘導体、チオリンゴ酸パンテテインを用いることができる。N-(メルカプトアルキル)ω-ヒドロキシアルキルアミド類としては例えば、特開平2−104515号に記載のものを用いることができる。N-モノ-又はN,N-ジアルキルメルカプト-4-ブチルアミド類として例えば、特開平2−196711号に記載のものを用いることができる。アミノメルカプトアルキルアミド類として例えば、特開平3−170411号に記載のものを用いることができる。アルキルアミノメルカプトアルキルアミド類として例えば、特開平5−279322号に記載のものを用いることができる。

0021

ホスフィン類としては例えば、トリ(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、ビス(ヒドロキシメチル)(フェニル)ホスフィン、アリジフェニルホスフィンベンジルジフェニルホスフィン、ビス(3,4,5−トリメトキシフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,4,5−トリメトキシフェニル)ホスフィン、ベンジルオキシ(ジイソプロピルアミノ)メチルホスフィン、ビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン、ビス(2−シアノエチル)ホスフィン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィン、ビス(ジエチルアミノ)メチルホスフィン、ビス(ジエチルアミノ)クロロホスフィン、ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン、ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ジエチルアミノホスフィン、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(4−フルオロフェニル)クロロホスフィン、ビス(2−フリル)クロロホスフィン、ビス(2−フリル)ホスフィン、ビス(ヒドロキシメチル)フェニルホスフィン、ビス(4−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(4−フルオロフェニル)クロロホスフィン、ビス(4−メトキシフェニル)クロロホスフィン、ビス(4−メトキシフェニル)フェニルイホスフィン、ビス(4−メチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)クロロホスフィン、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(ジエチルアミノ)メチルホスフィン、ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン、ビス(ヒドロキシメチル)フェニルホスフィン、ビス(o−トリル)クロロホスフィン、ビス(o−トリル)ホスフィン、ビス(ピロリジノ)メチルホスフィン、ブチルジクロロホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシル(ジエチルアミノ)クロロホスフィン、シクロヘキシル(ジメチルアミノ)クロロホスフィン、シクロヘキシルジクロロホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、2−クロロエチルジフェニルホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2'−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、ジエチルアミノジエチルホスフィン、ジメチルアミノジクロロホスフィン、(4−ジメチルアミノフェニル)ジフェニルホスフィン、N−[(ジフェニルホスフィニル)メチル]−N−メチルアニリン、o−ジフェニルホスフィノ安息香酸、2−メトキシ(ジクロロホスフィノ)ベンゼン、4−メトキシフェニル(ジエチルアミノ)クロロホスフィン、4−メトキシフェニル(ジメチルアミノ)クロロホスフィン、(2−メトキシフェニル)メチルフェニルホスフィン、2−メトキシホスフィノベンゼン、(5−メチル−2−イソプロピルシクロヘキシル)ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンジアリルフェニルホスフィン、ジベンジルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジシクロヘキシルクロロホスフィンジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジイソブチルホスフィン、ジイソプロピルクロロホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジメチル(フェニル)ホスフィン、ジメチル(トリメチルシリル)ホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジフェニル(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、ジフェニル(トリメチルシリル)ホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン、ジフェニルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、ジ−tert−ブチルクロロホスフィン、ジ−tert−ブチルヒドロキシホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン、ジ−tert−ブチルフェニルイホスフィン、ジーtert−ブチルホスフィンジビニルフェニルホスフィン、エチルジクロロホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、イソプロピルジクロロホスフィン、メトキシジエトキシホスフィン、メチルジクロロホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、メチルフェニルクロロホスフィン、フェニルホスフィン、プロピルジクロロホスフィン、tert−ブチルビス(トリメチルシリル)ホスフィン、tert−ブチルジクロロホスフィン、tert−ブチルジエチルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、tert−ブチルホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィントリシクロペンチルホスフィントリエチルホスフィン、トリイソブチルホスフィントリイソプロピルホスフィン、トリメチルホスフィントリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−シアノエチル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−トリエチル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチル−4−メトキシ)ホスフィン、トリス(3−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(3−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシプロピル)ホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−モルホリノ)ホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、2−シアノエチルジフェニルホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル等が挙げられる。

0022

好ましい一態様では、その使用によって良好な可溶化を認めた還元剤(後述の実施例を参照)、即ち、亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム)、亜硫酸水素塩(例えば亜硫酸水素ナトリウム)、L−システイン、L−システイン塩酸塩、N−アセチル−L−システイン、2−メルカプトエタノール、グルタチオン(グルタチオンを含有する酵母エキスを用いてもよい。)又はDTTを採用する。尚、本発明に必要な作用・効果が得られる限り、2種類以上の還元剤を併用してもよいことはいうまでもない。

0023

工程(2)の反応は、弱酸性pH〜弱アルカリpH条件下(具体的にはpH4.5〜9.5)で行うことが好ましい。更に好ましくは、中性pH条件下で行う。ここでの中性pH条件下とはpHが6.0〜8.0をいう。好ましくはpHが7.0〜7.5に調整した反応液中で反応させる。

0024

工程(2)の反応の時間は例えば10分〜24時間の範囲内で任意に設定可能である。本発明の方法によれば効率的な可溶化が進行するため、短時間で卵殻膜を可溶化できる。好ましくは、卵殻膜の完全な可溶化が達成可能になるように反応時間を設定する。反応効率を高めるために、攪拌振盪などを加えることにしてもよい。

0025

温度条件についても特段制約はなく、使用するタンパク質分解酵素の作用に支障のない範囲で設定すればよい。温度条件の例を挙げると30℃〜80℃である。好ましい温度条件は40℃〜70℃である。

0026

タンパク質分解酵素の使用量(添加濃度)は、卵殻膜の効率的な可溶化を可能にする限りにおいて特に限定されない。使用する酵素の種類によって最適な使用量は一般に異なるものの、例えば、反応液中のタンパク質分解酵素の濃度が、0.01%(W/W)〜20%(W/W)となる量の酵素を使用する。反応液中のタンパク質分解酵素の濃度は好ましくは0.1%(W/W)〜20%(W/W)、より好ましくは0.1%(W/W)〜10%(W/W)である。

0027

還元剤の使用量もタンパク質分解酵素との併用効果が十分に得られる限り特に限定されない。使用する還元剤の種類によって最適な使用量は一般に異なるものの、例えば、反応液中の還元剤の濃度が5mM〜1Mとなる量の還元剤を使用する。反応液中の還元剤の濃度は、好ましくは10mM〜500mM、より好ましくは50mM〜500mMである。

0028

最適な条件(pH、反応時間、温度、酵素使用量、還元剤使用量など)は、本明細書の教示事項を参考にすれば、予備実験を通して容易に決定することができる。

0029

尚、以上の各種条件は工程(2’)の反応にも該当する。

0030

後述の実施例に示した実験結果に裏付けられるように、本発明の方法によれば、簡便な操作にも拘わらず、卵殻膜の完全な可溶化をも可能となる。「卵殻膜の完全な可溶化」とは、少なくとも目視により固形物が認められなくなる程度にまで卵殻膜が分解されることをいう。本発明の方法において「卵殻膜の完全な可溶化」は必須ではないものの、「卵殻膜の完全な可溶化」が達成されるように条件設定することは、卵殻膜中の有用成分が無駄なく抽出できる点や残渣の除去などが不要になる点などにおいて好ましい。そこで本発明の一態様では、固形物が認められなくなるまで、工程(2)(或いは(2’))の反応を継続することにする。対照的に、本発明の他の一態様では、固形分が残存する状態で工程(2)(或いは(2’))を終了し、その後、溶液を濾過し、固形分を除去する(工程(3))。この態様は、例えば、分解ないし失活し易い成分を取得する目的において有用である。

0031

2.卵殻膜可溶化剤
本発明の第2の局面は卵殻膜可溶化剤に関する。本発明の卵殻膜可溶化剤はタンパク質分解酵素と還元剤を組合せてなる点に特徴を有する。換言すれば、本発明の卵殻膜可溶化剤ではタンパク質分解酵素と還元剤を併用する。典型的には、タンパク質分解酵素と還元剤とを混合した配合剤として本発明の卵殻膜可溶化剤が提供されることになる。一方、例えば、タンパク質分解酵素を含有する要素(第1構成要素)と、還元剤を含有する要素(第2構成要素)とからなるキットの形態で本発明の卵殻膜可溶化剤を提供することもできる。2種類以上のタンパク質分解酵素を併用してもよい。同様に2種類以上の還元剤を併用してもよい。尚、タンパク質分解酵素と還元剤については、本発明の卵殻膜可溶化方法の場合と同様であるため、重複する説明は省略する。

0032

本発明の卵殻膜可溶化剤は、有効成分(タンパク質分解酵素及び/又は還元剤)の他、賦形剤緩衝剤懸濁剤、安定剤、保存剤防腐剤生理食塩水などを含有していてもよい。賦形剤としては乳糖ソルビトール、D-マンニトール白糖等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩クエン酸塩酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコールアスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール塩化ベンザルコニウムベンジルアルコールクロロブタノールメチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。

0033

3.卵殻膜可溶物及びそれを含有する組成物
本発明の更なる局面は本発明の卵殻膜可溶化方法で得られる卵殻膜可溶物を提供する。好ましい一態様として、卵殻膜の完全な可溶物が提供される。本発明の卵殻膜可溶化方法によれば、温和な条件で卵殻膜を可溶化することができる。従って、当該方法により得られる卵殻膜可溶物は、卵殻膜に含まれる有用成分(タンパク質(リジルオキシダーゼ、リゾチーム、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ等の酵素、コラーゲンタンパク質を含む)、糖タンパク質ペプチドコラーゲンペプチドを含む)、糖ペプチドアミノ酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等の酸性ムコ多糖等)を多く含有する。一態様では、本発明の方法により得られる卵殻膜可溶物は、リゾチーム、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸からなる群より選択される一以上の成分を含む。また、本発明の方法により得られる卵殻膜可溶物を、抗酸化活性を示すこと及び/又はアンジオテンシン変換酵素阻害活性を示すことによって特徴付けることもできる。一方、他の一態様の卵殻膜可溶物はリジルオキシダーゼを含む点が特徴的である。リジルオキシダーゼを含む当該卵殻膜可溶物は、典型的には、上記工程(1)及び(2’)を含む卵殻膜可溶化方法によって得られる。

0034

本発明はまた、卵殻膜可溶物を含有する組成物を提供する。本発明の組成物の用途は特に限定されないが、好ましくは医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である。即ち、本発明は好ましい態様として卵殻膜可溶物を含有する医薬組成物医薬部外品組成物食品組成物及び化粧料組成物を提供する。本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の用途ないし効果の例として、抗酸化抗菌抗炎症、創傷治療、血圧低下育毛、栄養補助を挙げることができる。

0035

本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴムアルギン酸ナトリウムトラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリンモノステアリン酸アルミニウムメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

0036

製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤散剤細粒剤顆粒剤カプセル剤シロップ剤注射剤外用剤、及び座剤などとして本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物を提供できる。

0037

本発明の医薬組成物には、期待される治療効果予防効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。同様に本発明の医薬部外品組成物には、期待される改善効果や予防効果等を得るために必要な量の有効成分が含有される。本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物に含まれる有効成分量は一般に剤型や形態によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。

0038

本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物はその剤型・形態に応じて経口又は非経口静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注射経皮経鼻、経粘膜、塗布など)で対象に適用される。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物ペット動物家畜実験動物を含む。具体的には例えばマウスラットモルモットハムスターサルウシブタヤギヒツジイヌネコニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では、適用対象はヒトである。

0039

本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の投与量・使用量は、期待される効果が得られるように設定される。有効な投与量の設定においては一般に適用対象の症状、年齢性別、体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、適用対象の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。

0040

上記の通り本発明の一態様は、本発明の卵殻膜可溶化方法で得られる卵殻膜可溶物を含有する食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として一般食品(穀類野菜食肉、各種加工食品菓子類牛乳清涼飲料水アルコール飲料等)、栄養補助食品(抗酸化、抗菌、抗炎症、創傷治療、血圧低下、老化防止等を目的としたサプリメントや栄養ドリンク等)、食品添加物を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレットペースト液体等の形状で提供することができる。本発明の卵殻膜可溶化方法で得られる卵殻膜可溶物を食品組成物の形態で提供することによって、卵殻膜可溶物を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが可能となる。

0041

卵殻膜可溶物の添加量は目的に応じて任意に設定可能である。例えば、健康の維持又は増進或いは特定の疾病病態の治療ないし予防に寄与する効果が本発明の食品組成物に期待される場合には、当該効果を発揮するために十分な量の卵殻膜可溶物を含有させることが好ましい。添加量は、食品の種類、食品の消費者(性別、年齢、体重など)、食品に期待される効果などを考慮して定めることができる。

0042

上記の通り本発明の一態様は、本発明の卵殻膜可溶化方法で得られる卵殻膜可溶物を含有する化粧料組成物である。本発明の化粧料組成物は卵殻膜可溶物と、化粧料に通常使用される成分・基材(例えば、各種油脂、ミネラルオイルワセリンスクワランラノリンミツロウ変性アルコールパルミチン酸デキストリングリセリングリセリン脂肪酸エステルエチレングリコールパラベンカンフルメントール、各種ビタミン酸化亜鉛酸化チタン、安息香酸、エデト酸カミツレ油、カラギーナンキチン末、キトサン香料着色料など)を配合することによって得ることができる。化粧料組成物の形態として、フェイス又はボディー用の乳液化粧水クリームローションエッセンスオイルパックシート洗浄料などを例示できる。化粧料組成物における卵殻膜可溶物の添加量は特に限定されない。例えば0.1重量%〜60重量%となるように卵殻膜可溶物を添加するとよい。本発明の化粧料組成物の用途ないし効果の例として、保湿浸潤肌荒れ防止美肌しわ防止、たるみ防止、老化防止が挙げられる。

0043

本発明の卵殻膜可溶物はその他、金属イオン回収保湿剤吸水剤抗菌剤育毛剤等においても利用できる。

0044

4.卵殻膜有用成分抽出方法
本発明は更に、本発明の卵殻膜可溶化方法を応用した卵殻膜有用成分抽出方法を提供する。本発明の卵殻膜有用成分抽出方法では、以下の工程(i)及び(ii)を行う。
(i)本発明の卵殻膜可溶化方法による可溶化工程
(ii)前記可溶化ステップで得られた卵殻膜可溶物を精製する工程

0045

テップ(ii)では、ろ過、遠心処理脱塩硫安沈殿等の塩析透析、各種クロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィー疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなど)などを適宜組み合わせて精製する。精製目的の有用成分として、リゾチーム、リジルオキシダーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ等の酵素、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等の酸性ムコ多糖を例示できる。段階的に精製し、2種類以上の有用成分を分取することにしてもよい。

0046

本発明の方法により得られる卵殻膜有用成分は、卵殻膜可溶物の場合と同様に、医薬、食品、化粧料等に使用又は添加される成分として利用できる。

0047

1.タンパク質分解酵素による卵殻膜可溶化の検討
鶏卵を割卵して卵液を取り出した後、卵殻膜付きの卵殻を4重量%酢酸水溶液に5〜10分程度浸漬させ、手で卵殻膜を剥がして採取した。剥がし取った卵殻膜を水洗いし、十分に水気を切ったものを使用した。

0048

卵殻膜を基質とし、既存酵素剤による卵殻膜の可溶化が可能かどうかを検証した。市販の酵素剤15種類(ニューラーゼF3G、プロテアーゼM、プロテアーゼN、プロテアーゼP3G、プロテアーゼS、ブロメラインF、プロレザーFG−F、ペプチダーゼR、ウマミザイムG、サモアーゼY100、ProteAX、プロテアーゼA、パパインW40、パンクレアチン8AP、ビオソーク)を用いて、各種pH条件下(pH 4.0〜13.0)にて反応を行った。各pH領域の緩衝液は以下の通りである。pH 4.0、5.0は100 mM NaOAcバッファー、pH 6.0は100 mM MES-NaOHバッファー、pH 7.0は100 mMHEPES-NaOHバッファー、pH 8.0は100 mM Tris-HClバッファー、pH 9.0〜12.0は100 mM Glycine-NaOHバッファー、pH 13.0は100 mM KCl-NaOHバッファーを用いた。酵素量は0.1% (w/v)、卵殻膜量は1.0% (w/v)、反応温度は60℃とし、72時間インキュベーションした。図1は、試験酵素剤としてビオソークを用いた場合の結果を示している。当結果が示すように、72時間反応を行ったとしても卵殻膜の可溶化(分解)は目視上確認できなかった。他の14種類の酵素剤においても目視上可溶化は見られなかった。

0049

2.タンパク質分解酵素と還元剤との共存による卵殻膜可溶化の検討
酵素剤単独では卵殻膜の可溶化は見られなかったため、還元剤との組み合わせによる効果を検証した。本試験では対象酵素剤としてビオソークおよびプロレザーFG-Fを用いた。緩衝液として100 mM Glycine-NaOH pH 9.0を用い、10 mM DTTを添加した、または添加していない条件にて可溶化を試みた。酵素量は0.1% (w/v)、卵殻膜量は1.0% (w/v)、反応温度は60℃でインキュベーションした。図2は、試験酵素剤としてビオソークを用いた場合の結果を示している。図2が示すように、DTT単独および酵素剤単独では卵殻膜の可溶化は見られないが、DTTと酵素剤が共存する条件下では1.5時間という短時間での可溶化が見られた。また、プロレザーFG-Fを用いた場合も同様の結果が得られたが、完全可溶化に要する時間はビオソークよりも長かった(約2時間)。卵殻膜を構成する蛋白質中に存在するジスルフィド結合を還元剤が開裂させた結果、可溶化を容易にしたと考えられる。また、セリンプロテアーゼ阻害剤であるPMSFによって可溶化が阻害されたことから、当試験での卵殻膜の可溶化はプロテアーゼによるものであると考えられる。

0050

3.タンパク質分解酵素と還元剤(食品添加物)との共存による卵殻膜可溶化の検討
安全性とコスト面を考慮し、食品添加物から卵殻膜の可溶化を可能にする還元剤を探索した。まず、ビオソークを試験酵素剤として用い、10種の還元剤(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、L−システイン塩酸塩、亜硝酸ナトリウム硝酸ナトリウム、L−システイン、グルタチオン、DTT、水素化ホウ素ナトリウムハイチオンエキスYH-8、ハイチオンエキスYH-15、ハイチオンエキスYH-D12)を各々添加し、可溶化を試みた。亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、DTT、水素化ホウ素ナトリウムの濃度は1、10、100 mMを試験した。L−システイン塩酸塩、L−システイン、グルタチオンの濃度は1、10、20、50 mMを試験した。ハイチオンエキスYH-8、ハイチオンエキスYH-15、ハイチオンエキスYH-D12の濃度は1、5、10% (w/v)を試験した。緩衝液のpH条件は4.0〜13.0でそれぞれ行い、前述と同じものを用いた。酵素量は0.1% または0.5% (w/v)、卵殻膜量は1.0% (w/v)、反応温度は60℃とし、6時間または12時間インキュベーションした。亜硫酸ナトリウム存在下におけるpH変化による分解能の比較では、亜硫酸ナトリウムの濃度を100mMとし、pH 4.0〜13.0の各緩衝液(100 mM)を用いて試験を行った。ビオソークおよびプロレザーFG-Fを用いた試験においては、pH 4.0〜5.5はNaOAcバッファー、pH 5.5〜6.5はMES-NaOHバッファー、pH 6.5〜7.5はHEPES-NaOHバッファー、pH 7.5〜9.0はTris-HClバッファー、pH 9.0〜12.5はGlycine-NaOHバッファー、pH 12.5〜13.0はKCl-NaOHバッファーを用いた。他の13種類の酵素剤を用いた試験では、NaOAcバッファー(pH 4.0、5.0)、MES-NaOHバッファー(pH 6.0)、HEPES-NaOHバッファー(pH 7.0)、Tris-HClバッファー(pH 8.0)、Glycine-NaOHバッファー(pH 9.0)を用いて行った。酵素量は0.1% (w/v)、卵殻膜量は1.0% (w/v)、反応温度は60℃でインキュベーションを行い、完全な可溶化に要する時間を測定した。分解パターンの確認では、ビオソークおよびプロレザーFG-Fを対象酵素剤とし、各pH条件にて反応後の溶液にPMSFを終濃度1 mMとなるように添加することで反応を停止し、各サンプルをSDS-PAGEに供した。図3は、試験した還元剤の種類と添加による卵殻膜可溶化(分解)の有無を示している。食品添加物では亜硫酸塩と亜硫酸水素塩が100 mMの濃度条件で顕著な効果を示した。亜硫酸ナトリウムを用いた場合、卵殻膜の可溶化はpH 6.0〜8.0において効率よく見られた。L-システインを使用した場合、一部可溶化を認めた。

0051

次に、亜硫酸ナトリウム存在下において、pH変化による分解能の比較を行った。図4はビオソークを用いた場合の結果を示しており、横軸は反応pHを、縦軸は卵殻膜の完全可溶化に要した時間を示している。横軸の反応pHは調整時のpHではなく、実際の反応時のpHを示している。調整時のpHと、反応時のpHの対応表を表1に示す。

0052

図4に示したように、亜硫酸ナトリウム存在下では、pH 6.0〜8.0の間で効率良く可溶化が起こる。ビオソークをはじめ、プロレザーFG-Fを含む他の9種類の酵素剤でもpH 7.0付近において卵殻膜の効率的な可溶化が見られた。各酵素剤の至適pH条件において、卵殻膜の可溶化が早い順に並べたものを表2に示す。



*最適条件下における所要時間

0053

亜硫酸ナトリウムの還元作用はpH 7.0付近で高くなることが知られており、今回の結果はその知見と一致する。一方で、ビオソークの至適pHは10.5〜11.5であるが、これらのpH条件下では可溶化は見られない。したがって、卵殻膜の可溶化は還元剤の効果に大きく依存するといえる。

0054

卵殻膜の可溶化が見られたサンプルに関して、PMSFを添加することでビオソークまたはプロレザーFG-Fを失活させた後、SDS-PAGEに供した(図5)。可溶化産物の分子量は3.5〜25 kDaに分布しており、その多くは6 kDa付近のものであった。また、14 kDa付近に濃いバンドが確認された。

0055

4.卵殻膜可溶化における亜硫酸ナトリウムの濃度依存性
卵殻膜可溶化において、至適亜硫酸ナトリウム濃度の探索を行った。本試験では対象酵素剤としてビオソークおよびプロレザーFG-Fを用いた。緩衝液として50 mM Tris-HCl pH 7.0を用い、10〜1000 mM 亜硫酸ナトリウムを添加した、または添加していない条件にて可溶化を試みた。酵素量は0.1% (w/v)、卵殻膜量は1.0% (w/v)、反応温度は60℃でインキュベーションを行い、完全な可溶化に要する時間を測定した。図6に示すように、ビオソーク、プロレザーFG-Fともに至適な亜硫酸ナトリウム濃度は200 mMであった。一方で、10〜1000 mMの広い濃度条件下で可溶化可能であることも確認できた。尚、ビオソーク及びプロレザーFG-Fを用いた場合の卵殻膜の可溶化の結果をそれぞれ図7及び図8に示す。

0056

5.卵殻膜可溶化における酵素濃度依存性
卵殻膜可溶化において、至適な酵素濃度の探索を行った。本試験では対象酵素剤としてビオソークを用いた。緩衝液として50 mM Tris-HCl pH 7.0を用い、200 mM亜硫酸ナトリウムを添加した条件にて可溶化を試みた。酵素量は0.01、0.1、1.0% (w/v)、卵殻膜量は10% (w/v)、反応温度は60℃でインキュベーションを行い、完全な可溶化に要する時間を測定した。また、本試験からインキュベーション中に撹拌することにした。表3に示すように、ビオソークを用いた場合、1.0%濃度では45分、0.1%濃度では60分で完全に可溶化することが分かった。一方、0.01%濃度では可溶化は見られなかった。本試験から卵殻膜量を10% (w/v)としているにもかかわらず、可溶化時間は1% (w/v)のときよりも短縮された。おそらく撹拌の影響が大きいと考えられる。用いる酵素量に関して、1.0%と0.1%ではそれほど大きな違いはないといえる。コスト面を考慮した場合、0.1%での使用がより効率的と思われる。

0057

6.卵殻膜量変化に伴う可溶化時間
卵殻膜の量を変化させ、どこまでの量を可溶化可能か検証した。本試験では対象酵素剤としてビオソークを用いた。緩衝液として50 mM Tris-HCl pH 7.0を用い、200 mM亜硫酸ナトリウムを添加した条件にて可溶化を試みた。酵素量は0.1 (w/v)、卵殻膜量は10〜50% (w/v)、反応温度は60℃でインキュベーションを行い、完全な可溶化に要する時間を測定した。また、本試験でもインキュベーション中に撹拌した。図9左に示すように、10〜50%の卵殻膜量であっても完全に可溶化することが可能であった。また図9右には、卵殻膜量に伴う可溶化時間のグラフを示す。横軸は卵殻膜量、縦軸は可溶化に要した時間を示しており、各卵殻膜量で完全可溶化に要する時間をプロットしている。10〜40%の卵殻膜量ではプロットが直線にのることから、同効率で分解反応が進んでいることを示している。

0058

7.還元剤共存下で卵殻膜の可溶化が可能なプロテアーゼの探索
15種類の市販酵素剤のうち10種類の酵素剤において、還元剤、特に亜硫酸ナトリウムの共存下で卵殻膜の可溶化が見られた。これら10種類の酵素剤の中には中性およびアルカリ性プロテアーゼが含まれていた。本実験では酸性プロテアーゼによる卵殻膜の分解能を実証することを目的とし、複数の酸性プロテアーゼを用いて分解能の有無を検証した。また、新たな中性およびアルカリ性プロテアーゼを用いた実験も並行して行った。

0059

以下の酵素剤を検討対象とした。
(1)酸性プロテアーゼ:スミチームAP(Aspergillus niger由来酸性プロテアーゼ、新日本化学)、ペプシン(Sigma)
(2)中性プロテアーゼ:スミチームFP(Aspergillus oryzae由来中性プロテアーゼ、新日本化学)、スミチームLP500(Aspergillus oryzae由来中性プロテアーゼ、新日本化学)、スミチームLPL(Aspergillus oryzae由来中性プロテアーゼ、新日本化学)、デスキンC(由来は不明、中性プロテアーゼ、大和化成)、プロチンNY10(Bucillus subtilis由来中性プロテアーゼ、大和化成)、プロチンPC10(Bucillus subtilis由来中性プロテアーゼ、大和化成)、トリプシン(Trypsin)(Roche)
(3)アルカリ性プロテアーゼ:スミチームMP(Aspergillus sp.由来アルカリ性プロテアーゼ、新日本化学)、プロチンAY(Bucillus licheniformis由来アルカリ性プロテアーゼ、大和化成)、プロテナーゼK(Proteinase K)(Roche)

0060

添加する還元剤としては亜硫酸ナトリウム(関東化学株式会社)を用い、終濃度が100 mMとなるように添加した。緩衝液としては、酸性pH条件(pH 4.5またはpH4.7)では100 mM NaOAcバッファー、中性pH条件(pH 7.0またはpH 7.5)では100 mM Tris-HClバッファー、アルカリ性pH条件(pH 9.0またはpH 8.7)では100 mM Glycine-NaOHバッファーを用いた。添加する酵素は終濃度0.1% (w/v)で行った。50℃で24時間インキュベーションを行い、卵殻膜の可溶化の有無を調べた。

0061

ペプシン(図10)では、還元剤共存下、酸性pH条件において顕著な可溶化が見られた。ペプシンに関しては、完全な可溶化には至らなかったが、添加する酵素量を増やせば完全に可溶化できると考えられる。中性プロテアーゼに関しては、スミチームLP500(図11)、デスキンC(図12)、プロチンNY10(図13)、プロチンPC10(図14)、Trypsin(図15)において、還元剤の共存下で卵殻膜の可溶化が見られた。アルカリ性プロテアーゼに関しては、スミチームMP(図16)、プロチンAY(図17)、Proteinase K(図18)において可溶化が見られた。

0062

上記の結果から、還元剤共存下であれば、酸性プロテアーゼも卵殻膜の可溶化が可能であることを証明できた。したがって、還元剤との共存下における卵殻膜の可溶化は、酸性、中性、アルカリ性のどのプロテアーゼでも可能であるといえる。また、還元剤共存下において卵殻膜の可溶化が可能な中性およびアルカリ性プロテアーゼとして、新たに8種類の酵素剤が見つかった。

0063

8.新たな還元剤候補の探索
上記の通り、プロテアーゼによる効率的な卵殻膜の可溶化には還元剤の添加が有効であることが示された。これまでに、卵殻膜の可溶化を可能にする還元剤として、亜硫酸ナトリウム(関東化学株式会社)、亜硫酸水素ナトリウム(和光純薬工業)、L-システイン(Sigma Aldrich)、DTT(和光純薬工業)の4種類が確認された。以下では、新たに数種類の還元剤を用いて可溶化試験を行った。

0064

本試験では対象酵素剤としてビオソークおよびプロレザーFG-Fを用いた。添加した酵素量は0.1% (w/v)である。緩衝液として100 mM Tris-HCl pH 7.0および100 mM Glycine-NaOH pH 9.0を用いた。還元剤としては、(1)N-アセチル-L-システイン(和光純薬工業)、(2)2-メルカプトエタノール(和光純薬工業)、(3)チオグリコール酸(和光純薬工業)、(4)チオ硫酸ナトリウム(和光純薬工業)、(5)チオ尿素(和光純薬工業)の5種類を試験した。各還元剤を1、10、100 mMの終濃度で添加し、50℃で24時間インキュベーションすることで、卵殻膜の可溶化の有無を調べた。

0065

試験した5種類の還元剤のうち、N-アセチル-L-システイン(図19)を添加した場合及び2-メルカプトエタノール(図20)を添加した場合で、ビオソークとプロレザーFG-Fともに卵殻膜の可溶化が見られた。N-アセチル-L-システインに関しては、その可溶化は一部にとどまったが、添加する酵素量を増やせば完全な可溶化が達成できると考えられる。還元剤として2-メルカプトエタノールを使用した場合、完全な可溶化を達成できている。N-アセチル-L-システインと2-メルカプトエタノールはいずれもジスルフィド結合を切断することが知られていることから、卵殻膜の可溶化にはジスルフィド結合の切断が重要且つ有効であることが示唆される。

0066

9.卵殻膜可溶物中の酸性ムコ多糖の同定
卵殻膜にはコラーゲン様蛋白質以外に、デルマタン硫酸やコンドロイチン硫酸といった硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)と、ヒアルロン酸が存在することが知られている。これら酸性ムコ多糖は関節症の治療や、保水性を活かした化粧品に利用されている。したがって、本法によって得られる卵殻膜可溶物中にこれらの多糖類が確認できれば、その利用価値を高めることができる。そこで本実験では、今回得られた卵殻膜可溶物を用いて、硫酸化GAGとヒアルロン酸の同定を試みた。

0067

まず、卵殻膜可溶物を調製した。10% (w/v)の卵殻膜を含む反応溶液(50 mM Tris-HCl pH 7.0、100mM亜硫酸ナトリウム)の中に酵素剤を添加することで卵殻膜を可溶化した。酵素剤としては、Proteinase K(Roche)、ビオソーク、プロレザーFG-F、パパインW40を用い、Proteinase Kについては終濃度0.01% (w/v)、他の酵素剤については終濃度0.1% (w/v)となるように添加した。酵素剤添加後、50℃で12時間、撹拌しながらインキュベーションすることで、卵殻膜を完全に可溶化した。コントロールとして、卵殻膜を含まないサンプル(酵素剤と還元剤を含む)を調製した。

0068

各サンプルを用いて硫酸化GAGの同定を試みた。硫酸化GAGを検出する常法として、比色法(Farndale, et al. (1986) Biochim. Biophys. Acta. 883, 173-177.)とHPLC法(特開平4−135496号公報)があげられるが、汎用性、簡便性使用実績などから1,9-ジメチルメチレンブルー(DMMB)を使用する比色法を用いた。1,9-DMMBの吸収波長は硫酸化GAGに反応していない状態では595 nmであるのに対し、硫酸化GAGに反応すると525 nmに変化する。したがって、525 nmの測定値が大きいほど、多量の硫酸化GAGを含むことになる。標準サンプルとして既知濃度のコンドロイチン硫酸(2.5、5、7.5、10、15、20 μg/ml)を用いて検量線を作成し、各サンプルの525 nmの値を測定することで硫酸化GAG含量を算出した。測定手順として、1 mLの1,9-DMMB溶液(16 mg 1,9-DMMB(Biochemica)、3.0 gグリシン、2.37 g NaCl、95 mL 0.1 N HCl、904 mL H2O)と40 μLのサンプルを混合し、撹拌後、マイクロプレートリーダーにより525 nmの値を測定した。

0069

各サンプル中のヒアルロン酸の同定は、市販のヒアルロン酸測定キット生化学工業株式会社)を用いて行った。本キットヒアルロン酸結合性タンパク質HABP)を利用した阻害法を原理としており、ヒアルロン酸を特異的に検出することができる。

0070

各酵素剤によって処理した卵殻膜可溶物中の硫酸化GAG含量を図21に示す。当含量は卵殻膜質量当たりの含量であり、その卵殻膜の質量は酵素剤処理前に測定した値を用いている。また、各サンプルの含量は、コントロールの値を差し引いたものである。図21に示すように、本実験により得られた卵殻膜可溶物中には硫酸化GAG(含有量は卵殻膜重量当たり0.53〜5.4% (w/w))が含まれていることが明らかになった。

0071

卵殻膜可溶物中のヒアルロン酸含量を図22に示す。当含量についても、卵殻膜重量当りの含量であり、また、コントロールの値を差し引いたものである。当結果が示すように、各卵殻膜可溶物中にはヒアルロン酸(含有量は卵殻膜重量当たり0.026〜0.11% (w/w))が含まれていることが明らかになった。

0072

上記の通り、本卵殻膜可溶化方法(プロテアーゼと還元剤の併用)により得られる卵殻膜可溶物中には、硫酸化GAGやヒアルロン酸といった酸性ムコ多糖が存在することが明らかになった。前述のように、酸性ムコ多糖の利用価値は高い。したがって、当可溶物の利用価値は非常に高いといえる。

0073

10.卵殻膜可溶物中のリジルオキシダーゼ活性の同定
卵殻膜にはリジルオキシダーゼ(EC 1.4.3.13)が存在することが知られている。当酵素はタンパク質中のリジン残基のε-アミノ基を酸化的に脱アミノすることでアルデヒドアリシン残基)を生成し、コラーゲンやエラスチン等のタンパク質の架橋化反応に関与する。この架橋化反応は、表皮弾性伸張性などの機能発現だけではなく、組織構築に必要不可欠な特異的プロセスである。したがって、本法によって得られる卵殻膜可溶物中からリジルオキシダーゼ活性を同定できれば、その利用価値をさらに高めることになる。そこで本実験では、卵殻膜可溶物を用いて、リジルオキシダーゼ活性の検出を試みた。

0074

まず、還元剤とプロテアーゼを併用した条件で卵殻膜可溶物を調製した。10% (w/v)の卵殻膜を含む反応溶液(100 mMPBSバッファーpH 7.4、100mM亜硫酸ナトリウム)の中に酵素剤を添加することで卵殻膜を可溶化した。酵素剤としては、Proteinase K(Roche)、ビオソーク、プロレザーFG-F、パパインW40を用い、Proteinase Kについては終濃度0.01% (w/v)、他の酵素剤については終濃度0.1% (w/v)となるように添加した。酵素剤添加後、50℃で12時間、撹拌しながらインキュベーションすることで、卵殻膜を完全に可溶化した。コントロールとして、卵殻膜を含まないサンプル(酵素剤と還元剤を含む)を調製した。次いで、可溶物溶液へn-ブチルアミンを終濃度10 mMとなるように添加し、37℃で60分間インキュベーションした。この時、リジルオキシダーゼが可溶物中に存在していれば、n-ブチルアミンは酸化反応を受けてn-ブチルアルデヒドとなる。このn-ブチルアルデヒドをNash試薬(15% (w/v)酢酸アンモニウム、0.5% (w/w)酢酸、20% (w/w)アセチルアセトン、Nash, et al. (1953) Biochem. J. 55,416.)を用いて検出した。具体的には、Nash試薬とサンプルを等量混合し、50℃で30分間インキュベーションすると、反応液中のn-ブチルアルデヒドはNash試薬と反応し黄色の呈色物質を生成するため、388 nmでの検出が可能となる。つまり、388 nmの値が大きいほど、リジルオキシダーゼ活性が高いことになる。インキュベーション後のサンプルを用いて、マイクロプレートリーダーにより388 nmの値を測定した。

0075

次に、卵殻膜を還元剤処理した後、その還元剤を除去し、その後プロテアーゼ処理を行った卵殻膜可溶物の調製を行った。まず、約500 mgの卵殻膜を5 mLの還元剤溶液(100 mMPBSバッファーpH 7.4、100 mM亜硫酸ナトリウム)の中へ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。その後、卵殻膜を取り出し、50 mLの蒸留水で5回洗浄し、最後に500 mLの蒸留水で洗浄することで亜硫酸ナトリウムを除去した。洗浄後の卵殻膜の水分を軽く除き、0.1% (w/v)のビオソークを含む溶液(100 mM PBSバッファー pH 7.4)を5 mL添加し、37℃でインキュベーションした。各時間(0、1、2、3、4、6時間)で200 μLのサンプルを回収し、各サンプルのリジルオキシダーゼ活性を測定した。各サンプル中へ20 μLの100 mMn-ブチルアミンを添加し(終濃度10 mM)、37℃で45分間インキュベーションした。その後、220μLのNash試薬を添加し、50℃で30分間インキュベーションした後、マイクロプレートリーダーを用いて388 nmの値を測定した。

0076

還元剤とプロテアーゼを併用した場合の卵殻膜可溶物では、いずれのサンプルにおいてもリジルオキシダーゼ活性は確認できなかった。リジルオキシダーゼは酸化酵素であり、還元剤により失活してしまう可能性がある。特に、プロテアーゼの分解によって溶液中に遊離したリジルオキシダーゼは、還元剤の影響を大きく受けてしまう可能性が考えられる。一方で、卵殻膜を還元剤処理した後、還元剤を除去し、次いでプロテアーゼ処理を行った卵殻膜可溶物中にはリジルオキシダーゼ活性を確認することができた(図23)。また、その活性はプロテアーゼ処理の時間経過にともなって増大した。コントロールではリジルオキシダーゼ活性が検出されなかったことから、当活性は卵殻膜由来リジルオキシダーゼのものであると言える。還元剤処理を行わなかった卵殻膜を用いて酵素処理した場合もリジルオキシダーゼ活性は確認されたが、その活性は還元剤処理した場合の半分から3分の1程度であった。したがって、卵殻膜の還元剤処理は、リジルオキシダーゼの効率的な回収に有効であると言える。

0077

以上の通り、(1)卵殻膜の還元剤処理、(2)還元剤の除去、(3)プロテアーゼ処理、といった3ステップを経ることで、効率的にリジルオキシダーゼを回収できることが明らかとなった。

0078

11.卵殻膜可溶化中における溶菌(抗菌)活性の同定
卵殻膜には、リゾチーム(EC 3.2.1.17)やβ-N-アセチルグルコサミニダーゼ(EC 3.2.1.96)といった溶菌(抗菌)活性を持つ酵素が存在している。本法によって得られる卵殻膜可溶物中にこれらの酵素が存在しておれば、当可溶物の利用範囲を拡大できる。当実験では、卵殻膜可溶物を用いて溶菌活性の有無を検証した。

0079

まず、卵殻膜可溶物を調製した。10% (w/v)の卵殻膜を含む反応溶液(100 mMPBSバッファーpH 7.0、100mM亜硫酸ナトリウム)の中に酵素剤を添加することで卵殻膜を可溶化した。対象酵素剤としては、ビオソーク、プロレザーFG-F、パパインW40を用い、終濃度0.5% (w/v)となるように添加した。酵素剤添加後、37℃で12時間、撹拌しながらインキュベーションすることで、卵殻膜を完全に可溶化した。コントロールとして、卵殻膜を含まないサンプル(酵素剤と還元剤を含む)を調製した。

0080

溶菌活性測定は、基質となる試験菌としてMicrococcus luteus(和光純薬工業)が常用されている。当菌体粉末を終濃度0.32 mg/mLとなるように100 mMPBSバッファーpH 7.0で懸濁した。10μLの各卵殻膜可溶物サンプルをマイクロプレート(Nunc)に添加し、その後240μLの上記菌体懸濁液を各サンプルに添加した。添加直後の450 nmの値を測定した後、37℃でのインキュベーションを開始し、10分毎に450 nmの値を測定した。溶菌にともなって懸濁液は清澄度が増すため、450 nmの値は減少していく。つまり、450 nmの値がより早く減少するほど溶菌活性が高いことになる。

0081

図24に示すように、いずれの酵素剤で処理した卵殻膜可溶物においても、溶菌活性が見られた。程度の違いはあるものの、その溶菌活性は明らかである。コントロールでは溶菌活性が全く見られなかったことから、当活性は卵殻膜由来のものであると言える。

0082

以上の結果から、本法によって得られる卵殻膜可溶物中には溶菌活性を持つ酵素が存在しており、その酵素とは、リゾチームまたはβ-N-アセチルグルコサミニダーゼのいずれか、もしくは両酵素であると考えられる。

0083

12.卵殻膜可溶物の抗酸化能
癌、生活習慣病、身体の老化において、活性酸素フリーラジカル過酸化脂質などの酸化ストレスが大きな要因であることが明らかにされている。酸化ストレスを防ぐ抗酸化物質として、ビタミンCビタミンEβ-カロテンなどが利用されている一方で、タンパク質に由来する抗酸化ペプチドも、その安全性の面から注目されている。特に、グルタチオンのようにシステイン残基を持つペプチドは高い抗酸化能を示す。卵殻膜を構成するアミノ酸のうち約10%はシステイン(シスチン)であることから、その可溶物は高い抗酸化能を持つことが期待できる。本実験では、本法によって得られる卵殻膜可溶物について、抗酸化能を持つ素材としての可能性を探るため、その抗酸化活性を測定した。

0084

まず、卵殻膜可溶物を調製した。10%(w/v)の卵殻膜を含む反応溶液(100 mMPBSバッファーpH 7.0、100mM亜硫酸ナトリウム)の中に酵素剤を添加することで卵殻膜を可溶化した。対象酵素剤としては、ビオソーク、プロレザーFG-F、パパインW40を用い、終濃度0.5% (w/v)となるように添加した。酵素剤添加後、37℃で12時間、撹拌しながらインキュベーションすることで、卵殻膜を完全に可溶化した。コントロールとして、卵殻膜を含まないサンプル(酵素剤と還元剤を含む)を調製した。

0085

抗酸化能の測定について、フリーラジカルの消去能を測定するDPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazol)を用いた須田郁夫の方法(「食品の機能性マニュアル集」、16、農林水産技術会議・食品総合研究所編、1999)を改変して行った。つまり、各サンプルを5μLずつマイクロプレートに添加し、さらに245μLの0.5 mM DPPH-EtOH溶液を添加した後、2分後に520 nmで吸光度を測定した。標準試薬として1.0 mM Trolox(抗酸化物質)を用いることで、各サンプルの抗酸化活性をTrolox相当量(μmol Trolox相当量/100g)で表した。100 gで表される質量とは卵殻膜の質量であり、可溶化反応前に測定した値を用いている。

0086

次いで、銅の還元による抗酸化能の測定は、抗酸化能測定キット「PAO」(日本老化制御研究所)を用いて行った。この銅還元能試験は、銅イオン還元反応(Cu2+→Cu+)を利用した抗酸化力の試験である。

0087

上記2つの手法によって得られる各卵殻膜可溶物サンプルの抗酸化活性の値は、コントロールの値を差し引いたものを用いている。

0088

図25に示すように、各酵素剤で処理した卵殻膜可溶物はフリーラジカル消去活性を有することが明らかになった。その値は、ビオソーク可溶物、プロレザーFG-F可溶物、パパインW40可溶物でそれぞれ678.3、521.7、415.2 μmol Trolox相当量/100 gであった。さらに、図26に示すように、銅の還元活性も確認することができた。各サンプルの値は、ビオソーク可溶物、プロレザーFG-F可溶物、パパインW40可溶物でそれぞれ3617.1、2090.8、2816.8 μmol/Lと比較的高い値を示すことが明らかになった。

0089

以上の通り、本法によって得られる卵殻膜可溶物は比較的高い抗酸化能を有することが確認できた。したがって、当可溶物は抗酸化能を持つ機能性素材として有用であるといえる。

0090

13.卵殻膜可溶物のACE阻害活性
ヒトの血圧調節機構においてアンジオテンシン変換酵素(ACE)は極めて重要な役割を持っている。ACEは血圧調節メカニズムの一つであるレニン-アンジオテンシン系において、アンジオテンシンIから昇圧作用を有するアンジオテンシンIIを生成するなど、血圧上昇に大きく関係している酵素である。近年、高血圧予防を目的とした機能食品特定保健用食品)が多く販売されるなど、ACE阻害作用を有する食品成分が注目を集めている。そこで本実験では、本法で得られる卵殻膜可溶物について、血圧降下作用を有する素材としての可能性を探るため、そのACE阻害活性を測定した。

0091

まず、卵殻膜可溶物を調製した。10% (w/v)の卵殻膜を含む反応溶液(100 mMPBSバッファーpH 7.0、100mM亜硫酸ナトリウム)の中に酵素剤を添加することで卵殻膜を可溶化した。対象酵素剤としては、ビオソーク、プロレザーFG-F、パパインW40を用い、終濃度0.5% (w/v)となるように添加した。酵素剤添加後、37℃で12時間、撹拌しながらインキュベーションすることで、卵殻膜を完全に可溶化した。コントロールとして、卵殻膜を含まないサンプル(酵素剤と還元剤を含む)を調製した。

0092

得られた卵殻膜可溶物を100℃、5分間の熱処理(プロテアーゼの不活化)に供した後、蒸留水で25倍希釈し、ACE阻害活性測定キット「ACE Kit-WST」(和光純薬工業)を用いてACE阻害活性を測定した。本キットは3-Hydroxybutyrylglycyl-glycyl-glycine (3HB-GGG)から切り出されてくる3-Hydroxybutyric acid (3HB)を酵素法によって検出し、簡便で再現性の高いACE阻害活性測定キットである。本手法によって得られる各卵殻膜可溶物サンプルのACE阻害活性は、コントロールの値を差し引いたものを用いている。

0093

図27に示すように、卵殻膜可溶物は比較的高いACE阻害能を持つことが明らかになった。その阻害率は、ビオソーク可溶物、プロレザーFG-F可溶物、パパインW40可溶物でそれぞれ72.4%、74.5%、63.6%であった。

実施例

0094

以上の結果から、本法により得られる卵殻膜可溶物はACE阻害活性を持つことから、血圧降下作用を有する素材として利用価値が高いといえる。

0095

本発明の方法によれば、温和な条件で卵殻膜を効率的に可溶化することができる。即ち、エネルギーコスト原料コストの点で大きなメリットがある。また、本発明の方法によって得られる卵殻膜可溶物は例えば、医薬分野、食品分野、化粧品(スキンケア概念も含む)、金属イオンの回収、保湿剤、吸水剤、抗菌剤、乳化剤、育毛剤等に利用可能である。その他、各種作用(抗菌作用、吸水・保湿作用、レオロジー調整作用、被覆保護作用など)を付与するために本発明の卵殻膜可溶物を用いることも想定される。また高分子素材等に本発明の卵殻膜可溶物を含有させ、素材の伸縮性を高めることも想定される。

0096

この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

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