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技術 車両の制動力発生装置

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 棚橋敏雄兼原洋治山田浩史
出願日 2015年2月10日 (3年6ヶ月経過) 出願番号 2015-024547
公開日 2016年8月18日 (2年0ヶ月経過) 公開番号 2016-148369
状態 特許登録済
技術分野 ブレーキ装置
主要キーワード アーシング ピン支持体 フローティング式 自己放電式 ホイール部材 中心平面 導電性グリース レース部材

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図面 (10)

課題

静電気除去装置のような特別な装置を要することなく、制動力発生装置内のグリース帯電する電荷を除去し、これにより電荷の帯電に起因してグリースの粘性が高くなって粘性抵抗が高くなることを防止することである。

解決手段

キャリパ支持部材34に対し摺動ブレーキパッド22、24をブレーキディスク20に押圧するキャリパ36及びピストン38を含む制動力発生装置10。ブレーキディスク20、ブレーキパッド22及び24、キャリパ支持部材34、キャリパ36及びピストン38の少なくとも何れかである特定の部材の表面に自己放電式除電器70A〜70Dが設けられ、除電器は、特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、空気イオンを特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、特定の部材の帯電量を低下させると共に、潤滑剤の帯電量を低下させる。

概要

背景

車両の制動力発生装置は、車輪と共に回転軸線周りに回転する回転部材(例えば、ブレーキディスク)と、回転軸線の周りに回転しないように支持された摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)及び押圧装置(例えば、ホイールシリンダ)とを有している。押圧装置はナックルにより支持されたキャリパ支持部材のような静止部材と、静止部材に対し摺動し摩擦部材を回転部材に押圧する変位部材(例えば、キャリパ及びピストン)とを含んでいる。静止部材及び変位部材の摺動部は潤滑剤としてのグリースにて潤滑されている。

ところで、自動車などの車両が走行すると、空気が車両に摩擦接触する状態にて流れることに起因して車両に静電気が発生する。また、車輪の回転に伴ってタイヤの各部が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すこと、エンジン及びブレーキ装置などにおいて構成部品相対運動することなどによっても、静電気が発生する。

車両は導電性が低いタイヤによって大地から実質的に電気絶縁された状態にあるため、車両に静電気が発生すると、電荷(一般的には正の電荷)が車体などに帯電する。電荷が車体などに帯電するとラジオノイズが生じ易くなるため、車両に帯電した電荷を低減する構造が従来研究され、種々の構造が提案されている。

例えば、下記の特許文献1には、インナレース部材と、アウタレース部材と、これらのレース部材の間に介装された複数の転動体とを有する軸受装置であって、一方のレース部材に接触する弾性部材を含むシール装置を有し、軸受装置の内部が導電性グリースにて充填された軸受装置が記載されている。

上述のように、制動力発生装置においても静止部材及び変位部材の摺動部を潤滑するグリースが使用されており、このグリースにも電荷が帯電すると考えられる。よって、下記の特許文献1に記載された軸受装置の構成に習い、制動力発生装置内の静止部材及び変位部材の摺動部を潤滑するグリースとして、導電性を有するグリースを使用することが考えられる。

概要

静電気除去装置のような特別な装置を要することなく、制動力発生装置内のグリースに帯電する電荷を除去し、これにより電荷の帯電に起因してグリースの粘性が高くなって粘性抵抗が高くなることを防止することである。キャリパ支持部材34に対し摺動しブレーキパッド22、24をブレーキディスク20に押圧するキャリパ36及びピストン38を含む制動力発生装置10。ブレーキディスク20、ブレーキパッド22及び24、キャリパ支持部材34、キャリパ36及びピストン38の少なくとも何れかである特定の部材の表面に自己放電式除電器70A〜70Dが設けられ、除電器は、特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、空気イオンを特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、特定の部材の帯電量を低下させると共に、潤滑剤の帯電量を低下させる。

目的

本発明の主要な課題は、静電気除去装置のような特別な装置を要することなく、制動力発生装置内のグリースに帯電する電荷を除去し、これにより電荷の帯電に起因してグリースの粘性が高くなって粘性抵抗が高くなることを防止することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

車輪と共に回転軸線周りに回転する回転部材と、前記回転軸線の周りに回転しないように支持された摩擦部材及び押圧装置とを有し、前記押圧装置はナックルにより支持された静止部材と、前記静止部材に対し摺動し前記摩擦部材を支持して前記回転部材に押圧する変位部材とを含み、前記静止部材及び前記変位部材の摺動部は潤滑剤にて潤滑された車両の制動力発生装置において、前記回転部材、前記摩擦部材、前記静止部材及び前記変位部材の少なくとも何れかである特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられ、前記自己放電式除電器は、前記特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、前記自己放電式除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、前記負の空気イオンを前記特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、前記特定の部材の帯電量を低下させることにより、前記潤滑剤の帯電量を低下させるよう構成された空気イオン変換型自己放電式除電器である、車両の制動力発生装置。

請求項2

請求項1に記載の車両の制動力発生装置において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキディスクであり、前記摩擦部材はブレーキパッドであり、前記押圧装置はフローティング式の押圧装置であり、前記静止部材はキャリパ支持部材であり、前記変位部材は前記回転軸線に平行な軸線に沿って前記キャリパ支持部材に対し摺動可能なキャリパと、前記キャリパに対し摺動して前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスクに押圧するピストンとを含み、前記特定の部材は前記ブレーキディスク、前記ブレーキパッド、前記キャリパ支持部材及び前記キャリパの少なくとも何れかである、車両の制動力発生装置。

請求項3

請求項1に記載の車両の制動力発生装置において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキディスクであり、前記摩擦部材はブレーキパッドであり、前記押圧装置は対向ピストン式の押圧装置であり、前記静止部材はキャリパであり、前記変位部材は前記ブレーキディスクの両側に配置され且つ前記キャリパに対し前記回転軸線に平行な軸線に沿って摺動可能な少なくとも二つのピストンを含み、前記ピストンは前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスクに押圧し、前記特定の部材は前記ブレーキディスク、前記ブレーキパッド及び前記キャリパの少なくとも何れかである、車両の制動力発生装置。

請求項4

請求項1に記載の車両の制動力発生装置において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキドラムであり、前記摩擦部材はブレーキシューであり、前記静止部材は前記ブレーキシューを相対変位可能に支持し且つ前記押圧装置を固定的に支持する支持部材であり、前記特定の部材は前記ブレーキドラム、前記ブレーキシュー、前記支持部材の少なくとも何れかである、車両の制動力発生装置。

請求項5

請求項1乃至4の何れか一つに記載の車両の制動力発生装置において、前記自己放電式除電器は、外周の側面に多数の微小凹凸を有する導電性金属箔と、該金属箔の一方の面に付着された粘着剤の層とを有し、前記粘着剤の層による接着により前記特定の部材に固定されている、車両の制動力発生装置。

技術分野

0001

本発明は、車両の制動力発生装置係り、特に回転部材摩擦部材との間の摩擦力により制動力を発生する制動力発生装置に係る。

背景技術

0002

車両の制動力発生装置は、車輪と共に回転軸線周りに回転する回転部材(例えば、ブレーキディスク)と、回転軸線の周りに回転しないように支持された摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)及び押圧装置(例えば、ホイールシリンダ)とを有している。押圧装置はナックルにより支持されたキャリパ支持部材のような静止部材と、静止部材に対し摺動し摩擦部材を回転部材に押圧する変位部材(例えば、キャリパ及びピストン)とを含んでいる。静止部材及び変位部材の摺動部は潤滑剤としてのグリースにて潤滑されている。

0003

ところで、自動車などの車両が走行すると、空気が車両に摩擦接触する状態にて流れることに起因して車両に静電気が発生する。また、車輪の回転に伴ってタイヤの各部が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すこと、エンジン及びブレーキ装置などにおいて構成部品相対運動することなどによっても、静電気が発生する。

0004

車両は導電性が低いタイヤによって大地から実質的に電気絶縁された状態にあるため、車両に静電気が発生すると、電荷(一般的には正の電荷)が車体などに帯電する。電荷が車体などに帯電するとラジオノイズが生じ易くなるため、車両に帯電した電荷を低減する構造が従来研究され、種々の構造が提案されている。

0005

例えば、下記の特許文献1には、インナレース部材と、アウタレース部材と、これらのレース部材の間に介装された複数の転動体とを有する軸受装置であって、一方のレース部材に接触する弾性部材を含むシール装置を有し、軸受装置の内部が導電性グリースにて充填された軸受装置が記載されている。

0006

上述のように、制動力発生装置においても静止部材及び変位部材の摺動部を潤滑するグリースが使用されており、このグリースにも電荷が帯電すると考えられる。よって、下記の特許文献1に記載された軸受装置の構成に習い、制動力発生装置内の静止部材及び変位部材の摺動部を潤滑するグリースとして、導電性を有するグリースを使用することが考えられる。

先行技術

0007

特開2006−234093号公報
特開2008−181694号公報

0008

〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載された構成を静止部材及び変位部材の摺動部の潤滑に適用すれば、グリースは導電性を有するので、グリースが導電性を有しない場合に比して、グリースから静止部材及び変位部材へ電荷を移動させ易くすることができる。しかし、電荷が車体などに帯電している状況においては、静止部材及び変位部材の周囲の部材にも電荷が帯電し、それら周囲の部材の帯電量も高い。そのため、静止部材及び変位部材から周囲の部材へ電荷を移動させることができないので、グリースに帯電する電荷を効果的に低減することができない。静止部材及び変位部材から周囲の部材へ電荷を移動させるためには、例えば上記特許文献2に記載された静電気除去装置のような特別な装置により、周囲の部材に帯電する電荷をアーシングによって除去する必要がある。

0009

本願発明者が行った実験的研究により、静電気除去装置のような特別な装置により静止部材及び変位部材から周囲の部材へ電荷を移動させなくても、空気イオン変換型自己放電式除電器によって電荷を空気中へ放電させることにより除去できることが解った。

0010

本発明は、本願発明者が得た上記知見に基づき、制動力発生装置における上記問題を解決すべくなされたものである。そして、本発明の主要な課題は、静電気除去装置のような特別な装置を要することなく、制動力発生装置内のグリースに帯電する電荷を除去し、これにより電荷の帯電に起因してグリースの粘性が高くなって粘性抵抗が高くなることを防止することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕

0011

本発明によれば、車輪と共に回転軸線の周りに回転する回転部材と、前記回転軸線の周りに回転しないように支持された摩擦部材及び押圧装置とを有し、前記押圧装置はナックルにより支持された静止部材と、前記静止部材に対し摺動し前記摩擦部材を支持して前記回転部材に押圧する変位部材とを含み、前記静止部材及び前記変位部材の摺動部は潤滑剤にて潤滑された車両の制動力発生装置であって、前記回転部材、前記摩擦部材、前記静止部材及び前記変位部材の少なくとも何れかである特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられた車両の制動力発生装置が提供される。

0012

前記自己放電式除電器は、前記特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、前記自己放電式除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、前記負の空気イオンを前記特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、前記特定の部材の帯電量を低下させることにより、前記潤滑剤の帯電量を低下させるよう構成された空気イオン変換型自己放電式除電器である。

0013

車体などに電荷が帯電すると制動力発生装置内のグリースのような潤滑剤に電荷が帯電する理由及びオイルに電荷が帯電すると潤滑剤の粘性が高くなる原因は必ずしも明確ではないが、主な理由及び原因は以下の通りであると考えられる。制動力発生装置は、車輪と共に回転軸線の周りに回転する回転部材と、回転軸線の周りに回転しないように支持された摩擦部材及び押圧装置とを有している。押圧装置はナックルにより支持された静止部材と、静止部材に対し摺動し摩擦部材を支持して回転部材に押圧する変位部材とを含んでいる。

0014

よって、車体などに電荷が帯電すると、電荷が車輪から車輪支持部材を経て回転部材へ移動すると共に、ナックルから静止部材へ移動する。静止部材に帯電する電荷の量が多くなると、それらの電荷の一部が潤滑剤及び変位部材へ移動し、その結果潤滑剤に電荷が帯電する。潤滑剤に電荷が帯電すると、潤滑剤の分子の自由度を低下させ、このことが潤滑剤の粘性を高くすると推定される。なお、回転部材及び変位部材に帯電する電荷の量が多くなると、それらの電荷の一部が摩擦部材へ移動し、その結果摩擦部材にも電荷が帯電する。

0015

上記の構成によれば回転部材、摩擦部材、静止部材及び変位部材の少なくとも何れかである特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられている。この除電器は、その周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、負の空気イオンを特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、特定の部材の帯電量を低下させる。よって、制動力発生装置内の潤滑剤に帯電する電荷が特定の部材へ移動することにより潤滑剤の帯電量が低下するので、潤滑剤の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり潤滑剤の粘性抵抗が高くなることを防止することができる。

0016

なお、上記の構成によれば、複雑な構造の静電気除去装置は不要であり、静電気除去装置を導線によりバッテリマイナス端子及び車体に接続することも不要である。また、自己放電式除電器は、特定の部材に帯電する電荷を利用して所謂自己放電を行い得る例えば薄い導電体であってよいので、静電気除去装置を設置する場合のような大きいスペースは不要である。但し、本発明の制動力発生装置が組み込まれた車両に、静電気除去装置が設置されてもよい。

0017

本発明によれば、上記の構成において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキディスクであり、前記摩擦部材はブレーキパッドであり、前記押圧装置はフローティング式の押圧装置であり、前記静止部材はキャリパ支持部材であり、前記変位部材は前記回転軸線に平行な軸線に沿って前記キャリパ支持部材に対し摺動可能なキャリパと、前記キャリパに対し摺動して前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスクに押圧するピストンとを含み、前記特定の部材は前記ブレーキディスク、前記ブレーキパッド、前記キャリパ支持部材及び前記キャリパの少なくとも何れかであってよい。

0018

上記の構成によれば、制動力発生装置はフローティングキャリパディスク型の制動力発生装置である。特定の部材はブレーキディスク、ブレーキパッド、キャリパ支持部材及びキャリパの少なくとも何れかであり、自己放電式除電器はこれらの部材の少なくとも何れかに設けられている。よって、自己放電式除電器による除電によって特定の部材の帯電量を低下させることにより、フローティングキャリパ式ディスク型の制動力発生装置内の潤滑剤に帯電する電荷が特定の部材へ移動するので、潤滑剤の帯電量を低下させることができる。

0019

また、本発明によれば、上記の構成において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキディスクであり、前記摩擦部材はブレーキパッドであり、前記押圧装置は対向ピストン式の押圧装置であり、前記静止部材はキャリパであり、前記変位部材は前記ブレーキディスクの両側に配置され且つ前記キャリパに対し前記回転軸線に平行な軸線に沿って摺動可能な少なくとも二つのピストンを含み、前記ピストンは前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスクに押圧し、前記特定の部材は前記ブレーキディスク、前記ブレーキパッド及び前記キャリパの少なくとも何れかであってよい。

0020

上記の構成によれば、制動力発生装置は対向ピストンキャリパ式ディスク型の制動力発生装置である。特定の部材はブレーキディスク、ブレーキパッド及びキャリパの少なくとも何れかであり、自己放電式除電器はこれらの部材の少なくとも何れかに設けられている。よって、自己放電式除電器による除電によって特定の部材の帯電量を低下させることにより、対向ピストンキャリパ式ディスク型の制動力発生装置内の潤滑剤に帯電する電荷が特定の部材へ移動するので、潤滑剤の帯電量を低下させることができる。

0021

また、本発明によれば、上記の構成において、前記回転部材は前記回転軸線の周りに回転するブレーキドラムであり、前記摩擦部材はブレーキシューであり、前記静止部材は前記ブレーキシューを相対変位可能に支持するホイールシリンダおよび前記押圧装置を固定的に支持するアンカを備えた支持部材であり、前記特定の部材は前記ブレーキドラム、前記ブレーキシュー、前記支持部材の少なくとも何れかであってよい。

0022

上記の構成によれば、制動力発生装置はドラム型の制動力発生装置である。特定の部材はブレーキドラム、ブレーキシュー、支持部材の少なくとも何れかであり、自己放電式除電器はこれらの部材の少なくとも何れか設けられている。よって、自己放電式除電器による除電によって特定の部材の帯電量を低下させることにより、ドラム型の制動力発生装置内の潤滑剤に帯電する電荷が特定の部材へ移動するので、潤滑剤の帯電量を低下させることができる。

0023

また、本発明によれば、上記の構成において、前記自己放電式除電器は、外周の側面に多数の微小凹凸を有する導電性の金属箔と、該金属箔の一方の面に付着された接着剤の層とを有し、前記接着剤の層による接着により前記特定の部材に固定されていてよい。

0024

上記の構成によれば、特定の部材の表面に除電を行う金属箔を接着により容易に固定することができる。更に、金属箔は、全面に亘り粘着剤の層を介して特定の部材に密着するので、特定の部材から金属箔への電荷の移動を効率的に行わせることができ、除電の効果を高くすることができる。

図面の簡単な説明

0025

フローティングキャリパ式ディスクブレーキに適用された本発明の第一の実施形態にかかる制動力発生装置の概要を示す断面図である。
図1に示された制動力発生装置の具体的な例を分解して示す斜視図である。
接着前の自己放電式除電器を示す拡大断面図である。
自己放電式除電器による除電のメカニズムを示す模式的な説明図であり、(A)及び(B)はそれぞれ断面図及び平面図である。
対向ピストンキャリパ式ディスクブレーキに適用された本発明の第二の実施形態にかかる制動力発生装置の概要を示す断面図である。
自己放電式除電器による除電が行われない従来の制動力発生装置における目標制動力Fbt及び目標制動圧Pbtの変化の例と、それらに対応する実際の制動力Fb及び実際の制動圧Pbの変化を誇張して示す説明図である。
第一又は第二の実施形態における目標制動力Fbt及び目標制動圧Pbtの変化の例と、それらに対応する実際の制動力Fb及び実際の制動圧Pbの変化をて示す説明図である。
リーディングトレーリングドラムブレーキに適用された本発明の第三の実施形態にかかる制動力発生装置の概要を示す断面図である。
ブレーキドラムを除去した状態にて制動力発生装置の概要を示す正面図である。

実施例

0026

以下に添付の図を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。

0027

[第一の実施形態]
図1は、フローティングキャリパ式ディスクブレーキに適用された本発明の第一の実施形態にかかる制動力発生装置10の概要を示す断面図、図2は、図1に示された制動力発生装置10の具体的な例を分解して示す斜視図である。

0028

これらの図に於いて、符号12は回転軸線14の周りに回転する車輪を示しており、車輪12はホイール部材16と、ホイール部材16の外周のリム部16Rに装着されたタイヤ18とを含んでいる。制動力発生装置10は、車輪12と共に回転軸線14の周りに回転する回転部材であるブレーキディスク20と、摩擦部材であるブレーキパッド22及び24と、ブレーキディスク20にブレーキパッド22及び24を押圧する押圧装置26とを有している。

0029

周知のように、ホイール部材16及びブレーキディスク20は、内周部にてボルト締結によりアクスルハブ28のフランジ部に一体的に締結されている。車輪12は駆動輪であり、アクスルハブ28は、サスペンションアーム(図示せず)などにより車体に接続されたナックル30により、軸受32を介して回転軸線14の周りに回転可能に支持されている。更に、アクスルハブ28は、回転軸線14に沿って延在するアクスル(図示せず)に嵌合し、アクスルと一体的に回転軸線14の周りに回転する。

0030

なお、本明細書において説明する部材は、特に構成材料について言及する部材を除き、鋼などの導電性を有する金属にて形成されている。更に、ブレーキディスク20以外の金属製の部材の大気に曝される部位は、耐久性を向上させるべく、塗装されており、表面は非導電性塗膜にて覆われている。

0031

押圧装置26は、フローティング式の押圧装置であり、キャリパ支持部材(キャリパベース)34と、ブレーキディスク20の外周部を跨ぐように延在するキャリパ36と、ピストン38とを含んでいる。キャリパ支持部材34は、ナックル30に連結されており、ナックル30に対し運動しない静止部材として機能する。キャリパ36は、回転軸線14の周りの周方向隔置された一対のスライドピン40の内端部を支持しており、スライドピン40は回転軸線14に平行な軸線42に沿って延在している。スライドピン40はキャリパ支持部材34に設けられたスライドピン孔44に軸線42に沿って往復摺動可能に挿入されている。

0032

なお、図示の実施形態においては、キャリパ36は、ブレーキディスク20に対し車両横方向内側に位置する主要部とブレーキディスク20に対し車両横方向外側に位置する補助部とが一体に接合されることにより形成されている。しかし、キャリパ36は、主要部及び補助部が一体に形成されてもよい。このことは後述の第二の実施形態のキャリパ36についても同様である。

0033

図2に示されているように、スライドピン40の内端部はキャリパ36のフランジ部36Fに設けられた支持孔46に挿入されている。更に、フランジ部36Fに対しキャリパ支持部材34とは反対の側から、スライドピン40の内端部に設けられたボルト孔48に固定ボルト49がねじ込まれ、これによりスライドピン40の内端部はフランジ部36Fに固定されている。図1において太い実線にて示されているように、スライドピン40及びスライドピン孔44の摺動部、即ちスライドピン40の円筒状の表面及びスライドピン孔44の壁面は、潤滑剤としてのグリース50にて潤滑されている。よって、キャリパ36は、回転軸線14に平行な軸線42に沿ってキャリパ支持部材34及びナックル30に対し摺動可能な一つの変位部材として機能する。

0034

キャリパ36は、回転軸線14に平行な軸線52に沿って延在し且つ車両横方向外側へ向けて開口するするシリンダ孔54を有している。ピストン38は、軸線52に沿って往復摺動可能にシリンダ孔54に挿入され、シリンダ孔54と共働してホイールシリンダ室56を形成している。よって、ピストン38は、軸線52に沿ってキャリパ36に対し摺動可能な他の一つの変位部材として機能する。ホイールシリンダ室56には、ポート58を経て図には示されていないブレーキアクチュエータから高圧ブレーキオイル60が給排されるようになっている。

0035

ブレーキパッド22及び24は、それぞれ金属製の裏板22P及び24Pと、摩擦材にて形成されそれぞれ裏板22P及び24Pに一体的に固定された摩擦材22A及び24Aとを有している。摩擦材22A及び24Aは、それぞれ裏板22P及び24Pに対しブレーキディスク20の側に位置し、ブレーキディスク20に対向している。ブレーキパッド22は、ブレーキディスク20に対し車両横方向外側にてキャリパ36の内面に取り付けられており、アウタパッドとして機能する。ブレーキパッド24は、ブレーキディスク20に対し車両横方向内側、即ちピストン38の側に配置されており、インナパッドとして機能する。

0036

ピストン38は車両横方向外側へ向けて開いたカップ形をなし、開口端外端)にてブレーキパッド24の裏板24Pを支持している。ピストン38の外端部とシリンダ孔54の開口部との間には、ゴム製のシリンダブーツ62が配置されており、シリンダブーツ62はピストン38の外端部の周りに環状に延在している。ピストン38及びシリンダ孔54の摺動部はグリース66にて潤滑されている。ピストン38の外端部及びシリンダ孔54の開口部とシリンダブーツ62との間にも、グリース66が適用されている。

0037

以上の通り構成された制動力発生装置10によって制動力が発生され、車輪12が制動される際には、高圧のブレーキオイル60がポート58を経てホイールシリンダ室56へ供給される。ピストン38がキャリパ36に対し図1において右方へ摺動し、ブレーキパッド24をブレーキディスク20に押圧する。ブレーキパッド24及びピストン38はブレーキディスク20から押圧の反力を受けるが、ホイールシリンダ室56の容積は減少しない。よって、スライドピン40がキャリパ支持部材34に対し図1において左方へ摺動することにより、キャリパ36はキャリパ支持部材34及びブレーキディスク20に対し図1において左方へ移動する。その結果、キャリパ36はブレーキパッド22をブレーキディスク20に押圧する。

0038

よって、ピストン38はキャリパ36と共働して、ブレーキディスク20の両側においてブレーキパッド22及び24を実質的に同一の押圧力にてブレーキディスク20に押圧する押圧装置26として機能する。ブレーキパッド22及び24とブレーキディスク20との間に摩擦力による制動力が発生され、その制動力はブレーキディスク20からホイール部材16へ伝達され、これにより車輪12が制動される。

0039

逆に、制動力発生装置10による制動力の発生が解除され、車輪12の制動が解除される場合には、ホイールシリンダ室56内の高圧のブレーキオイル60の一部がポート58を経て排出される。ピストン38はキャリパ36に対し図1において左方へ摺動し、ブレーキディスク20に対するブレーキパッド24の押圧を解除する。ブレーキパッド24及びピストン38はブレーキディスク20から押圧の反力を受けなくなるので、スライドピン40はキャリパ支持部材34に対し図1において右方へ摺動する。

0040

よって、キャリパ36はキャリパ支持部材34及びブレーキディスク20に対し図1において右方へ移動し、その結果キャリパ36はブレーキパッド22をブレーキディスク20に押圧しなくなる。従って、ブレーキパッド22及び24は、ブレーキディスク20に押圧されなくなるので、ブレーキパッド22及び24とブレーキディスク20との間に摩擦力が発生しなくなり、よって制動力が車輪12に与えられなくなる。

0041

なお、ホイールシリンダ室56内のブレーキオイル60の圧力が標準の圧力(例えば大気圧)であるときには、キャリパ36ピストン38はキャリパ支持部材34及びブレーキディスク20に対し図1に示された標準位置非制動位置)に位置する。よって、ブレーキパッド22及び24は、ブレーキディスク20から僅かに隔置され、又はブレーキディスク20に押圧されることなくブレーキディスクに当接した状態になる。

0042

図1に示されているように、ブレーキディスク20の段差部20Sの円筒状の外面には、短冊状をなす自己放電式除電器70Aが周方向に延在するよう接着により固定されている。ブレーキパッド24の裏板24Pの上面及び下面には、短冊状をなす自己放電式除電器70Bが実質的に周方向に延在するよう接着により固定されている。キャリパ支持部材34のスライドピン40を受け入れる部位の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器70Cが接着により固定されている。図1においては、除電器70Cは図示の便宜上径方向に延在するよう表示されているが、図2に示されているように、除電器70Cは軸線42に沿って延在していることが好ましい。

0043

キャリパ36の各フランジ部36Fには、短冊状をなす自己放電式除電器70Dが実質的に径方向に延在するよう接着により固定されている。キャリパ36の径方向外側の表面及び径方向内側の表面には、それぞれ短冊状をなす自己放電式除電器70E及び70Fが径方向及び軸線52に垂直に延在するよう接着により固定されている。更に、キャリパ36の車両横方向外側の端面には、短冊状をなす自己放電式除電器70Gが径方向及び軸線52に垂直に延在するよう接着により固定されている。除電器70Gはブレーキパッド22の裏板22Pの外面(車両横方向外側の面)に固定されてもよい。

0044

自己放電式除電器70A〜70Gは同一の構造を有している。よって、接着前の除電器70Aの断面を示す図3を参照して除電器70Aについてのみ説明する。除電器70Aは、導電性の金属箔72に導電性の粘着剤74が付着され、粘着剤74を覆う剥離紙76が粘着剤74に取り付けられた複合シートが所定の大きさ及び形状に剪断されることにより形成されている。除電されるべき部材に対する除電器70Aの固定は、剥離紙76を剥取り、金属箔72を粘着剤74にて部材に接着することにより行われる。

0045

なお、制動力発生装置10の作動中には、自己放電式除電器70A〜70Gが固定されたブレーキディスク20などの部材は、摩擦熱により高温になる。よって、粘着剤74は、耐熱性を有し、高温においても除電器が対応する部材に固定された状態を維持する。必要ならば、除電器を対応する部材に固定するための補助手段として、ビス及び保持板などの機械的固定手段が使用されてもよい。更に、除電器は、粘着剤を使用することなくビス及び保持板などの機械的固定手段により、除電されるべき部材に固定されてもよい。

0046

後に詳細に説明するように、金属箔72の主として側面72A、即ち金属箔の厚さ方向に沿う面が、後述の除電現象における放電面として機能する。よって、金属箔72の側面72Aは、除電現象が効率的に行われるよう、微小な突起部のような多数の凸部72Bを有することが好ましい。また、金属箔72の表面72C(図3の上面)に表面粗さを増大させる加工が施されることにより、金属箔72の表面に微小な突起部のような多数の凸部が形成されてもよい。

0047

後に詳細に説明するように、金属箔72は導電性を有する任意の金属にて形成されてよいが、アルミニウム、金、銀、銅又はそれらの合金にて形成されることが好ましい。特に、この実施形態のように、除電器が金属部材に固定される場合には、除電器の金属箔は、金属部材を構成する金属材料よりも高い導電性を有することが好ましい。更に、金属箔72の側面が十分に放電面として機能するに足る厚さを有すると共に、曲面にも柔軟に対応するよう変形させて固定することができるよう、金属箔の厚さは約50〜200μm程度であることが好ましい。

0048

なお、除電器70Aの平面形状は、短冊状の長方形に限定されず、長方形以外の多角形円形又は楕円形のような任意の形状であってよいが、廃棄される部分がないよう剪断することができる形状、例えば長方形、正方形ひし形及び六角形などであることが好ましい。また、除電器70Aの大きさは、それが適用される部位に応じて適宜設定されてよいが、除電器70Aが例えば長方形である場合には、短辺が数mm〜十数mm程度であり、長辺が数十mm〜100mm程度であってよい。

0049

前述のように、車両が走行すると、車両に正の電荷が帯電するので、制動力発生装置10を構成するキャリパ支持部材34及びキャリパ36などの金属部材にも正の電荷が帯電する。金属部材に正の電荷が帯電し、電荷の量が高くなると、電荷の一部が金属部材に接する油材、即ちブレーキオイル60及びグリース50、66へ移動する。その結果、油材の帯電量も高くなって、その粘性が高くなる。油材の粘性が高くなると、制動力発生装置10が作動する際の油材の粘性抵抗も高くなる。よって、キャリパ支持部材34及びキャリパ36などの金属部材が除電器70Aなどによって除電されることにより、ブレーキオイル60及びグリース50、66の帯電量が低下されることが好ましい。

0050

図4は、除電器70Aによる除電のメカニズムを示す模式的な説明図であり、除電器70Aによる除電は、図7に示されたメカニズムにより行われると推定される。なお、図4において、「+」及び「−」はそれぞれ正及び負の電荷又はイオンを示し、「0」は電荷が0であること、即ち電気的に中和された状態にあることを示している。また、実線の矢印は空気の流動を示し、破線の矢印は電荷又はイオンの移動を示している。

0051

空気は正の電荷を帯びているが、ブレーキディスク20における正の電荷の帯電量が非常に多くなると、除電器70Aの周囲、特に多数の凸部72Bを有する金属箔72の側面72Aの周囲において、空気が所謂コロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される。正の空気イオンは、ブレーキディスク20に帯電する正の電荷との間に作用する斥力により、ブレーキディスク20から遠ざかるよう移動する。これに対し、負の空気イオンは、ブレーキディスク20に帯電する正の電荷との間に作用するクーロン力によって引き寄せられることにより、ブレーキディスク20に近づくよう移動し、ブレーキディスク20に帯電する正の電荷は負の空気イオンに近づくよう移動する。

0052

その結果、負の空気イオンと正の電荷との間において電気的中和が生じ、負の空気イオン及び正の電荷が消滅し、空気の電荷が0になる。以上の現象は繰り返し連続的に生じるので、ブレーキディスク20に帯電する正の電荷が低減されることによりブレーキディスク20が除電される。なお、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象などは、ブレーキディスク20の帯電量が高いほど活発になり、よって、除電の作用は帯電量が高いほど活発になると推定される。また、除電器70Aによる除電は、図4に示されているように、一方向に空気が流動する状況に限られない。更に、図4に示されているように、除電器が板状の部材に固定される場合には、板状の部材に対し除電器とは反対の側においても除電が行われる。

0053

本願発明者が行った実験的研究の結果によれば、除電器70Aの金属箔72(厚さ200μmのアルミ箔)が前述の寸法の長方形又はこれと同程度の大きさの他の形状である場合には、上記除電の効果が及ぶ面方向の範囲は、金属箔72の中央Pcから半径50mm程度の範囲である。また、上記除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲は、上記面方向の除電の効果が及ぶ範囲内にて金属箔72の貼着面から数mm〜十数mm程度の範囲である。なお、除電の効果が及ぶ範囲は、正の電荷の帯電量などの状況に応じて変化する。ブレーキディスク20などの部材に対する除電器70A〜70Gの接着面は、それぞれ対応する除電器による除電の効果が及ぶ範囲内にある。なお、本願発明者が行った実験的研究により、上記メカニズムによる除電には温度依存性がなく、自己放電式除電器は高温においても有効な除電作用を発揮する。

0054

除電器70Aはブレーキディスク20の段差部20Sの円筒状の外面に固定されているので、除電器70Aによりブレーキディスク20における電荷の帯電量が低減される。除電器70Bはブレーキパッド24の裏板24Pの上面及び下面に固定されているので、除電器70Bによりブレーキパッド24の裏板24Pにおける電荷の帯電量が低減され、これにより摩擦材24Aにおける電荷の帯電量も低減される。

0055

除電器70Cはキャリパ支持部材34のスライドピン40を受け入れる部位の表面に固定されているので、除電器70Cによりスライドピン40を受け入れる部位における電荷の帯電量が低減され、これによりグリース50における電荷の帯電量も低減される。除電器70Dはキャリパ36のフランジ部36Fに固定されているので、除電器70Dによりフランジ部36F及びスライドピン40における電荷の帯電量が低減され、このことによってもグリース50における電荷の帯電量が低減される。

0056

除電器70E及び70Fはそれぞれキャリパ36の径方向外側の表面及び径方向内側の表面に固定されているので、除電器70E及び70Fによりキャリパ36における電荷の帯電量が低減され、これによりグリース66における電荷の帯電量も低減される。更に、除電器70Gはキャリパ36の車両横方向外側の端面に固定されているので、除電器70Gによりキャリパ36の車両横方向外側の部位における電荷の帯電量が低減される。よって、ブレーキパッド22の裏板22Pにおける電荷の帯電量が低減されると共、摩擦材22Aにおける電荷の帯電量も低減される。

0057

なお、キャリパ支持部材34のように塗装された金属部材の場合には、塗膜にも電荷が帯電するが、除電器に近い塗膜に帯電する電荷は除電器へ移動することによって低減される。また、金属部材に帯電する電荷は、塗膜を通過して除電器へ移動することによって低減される。更に、除電器から離れた部位の塗膜に帯電する電荷は、一旦、金属部材へ移動して金属部材内を移動し、金属部材から塗膜を通過して除電器へ移動する。

0058

以上の説明から解るように、第一の実施形態によれば、制動力発生装置10内のグリース50及び66に正の電荷が過剰に帯電することを防止することができる。よって、グリース50及び66の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなることを防止し、これによりグリース50及び66によって潤滑されるスライドピン40などの摺動運動が円滑に行われる状況を確保することができる。

0059

特に、第一の実施形態によれば、スライドピン40及びキャリパ支持部材34の摺動部を潤滑するグリース50、及びピストン38及びキャリパ36の摺動部を潤滑するグリース66の両者に正の電荷が過剰に帯電することが防止される。従ってグリース50及び66の一方についてのみ電荷の過剰帯電が防止される場合に比して、制動力発生装置10内における摺動運動を円滑に行わせることができる。

0060

更に、第一の実施形態によれば、押圧装置26はフローティング式の押圧装置である。即ち、スライドピン40がキャリパ支持部材34に対し摺動することにより、キャリパ36はキャリパ支持部材34及びナックル30に対し変位すると共に、ピストン38はキャリパ36に対し摺動により変位する。従って、第一の実施形態から、本発明によれば、キャリパ支持部材が静止部材であり、キャリパ及びピストンがそれぞれキャリパ支持部材及びキャリパに対し摺動により変位する変位部材である場合にも、変位部材の摺動部のグリースにおける過剰の電荷の帯電を防止することができることが解る。

0061

[第二の実施形態]
図5は、対向ピストンキャリパ式ディスクブレーキに適用された本発明の第二の実施形態にかかる制動力発生装置10の概要を示す断面図である。なお、図5において、図1に示された部材に対応する部材には、図1において付された同一の符号が付されている。特に、ブレーキディスク20の両側に配置され互いに鏡像の関係をなす部材には、図1において付された符号の数字と同一の数字にL及びRが付けられた符号が付されている。

0062

この実施形態においては、押圧装置26は第一の実施形態におけるキャリパ支持部材34及びスライドピン40を有していない。キャリパ36は、車両横方向内側の部分36Lと、ブレーキディスク20の外周部の仮想中心平面Pに対し部分36Lと鏡像の関係をなす車両横方向外側の部分36Rとを有し、内側の部分36L及び外側の部分36Rは一体的に接合されている。キャリパ36は、内側の部分36Lにてナックル30に連結されており、ナックル30に対し運動しない静止部材として機能する。

0063

内側の部分36L及び外側の部分36Rには、第一の実施形態におけるとシリンダ孔54などと実質的に同一構造が設けられている。即ち、内側の部分36Lは、回転軸線14に平行な軸線52に沿って延在し且つ車両横方向外側へ向けて開口するするシリンダ孔54Lを有している。シリンダ孔54Lには、ピストン38Lが軸線52に沿って往復摺動可能に挿入され、シリンダ孔54Lと共働してホイールシリンダ室56Lを形成している。

0064

ピストン38Lは車両横方向外側へ向けて開いたカップ形をなし、開口端にてブレーキパッド24の裏板24Pを支持している。ピストン38Lの外端部とシリンダ孔54Lの開口部との間には、ゴム製のシリンダブーツ62Lが配置されており、シリンダブーツ62Lはピストン38Lの外端部の周りに環状に延在している。ピストン38L及びシリンダ孔54Lの摺動部はグリース66にて潤滑されている。ピストン38Lの外端部及びシリンダ孔54Lの開口部とシリンダブーツ62Lとの間にも、グリース66が適用されている。

0065

同様に、外側の部分36Rは、軸線52に沿って延在し且つ車両横方向内側へ向けて開口するするシリンダ孔54Rを有している。シリンダ孔54Rには、ピストン38Rが軸線52に沿って往復摺動可能に挿入され、シリンダ孔54Rと共働してホイールシリンダ室56Rを形成している。ホイールシリンダ室56Rは内部通路68によりホイールシリンダ室56Lと接続されており、内部通路68はポート58と連通している。よって、ホイールシリンダ室56L及び56Rに対する高圧のブレーキオイル60の給排は、ポート58及び内部通路68を経て行われる。

0066

ピストン38Rは車両横方向内側へ向けて開いたカップ形をなし、開口端にてブレーキパッド22の裏板22Pを支持している。ピストン38Rの外端部とシリンダ孔54Rの開口部との間には、ゴム製のシリンダブーツ62Rが配置されており、シリンダブーツ62Rはピストン38Rの外端部の周りに環状に延在している。ピストン38R及びシリンダ孔54Rの摺動部はグリース66にて潤滑されている。ピストン38Rの外端部及びシリンダ孔54Rの開口部とシリンダブーツ62Rとの間にも、グリース66が適用されている。

0067

以上の通り構成された制動力発生装置10によって制動力が発生され、車輪12が制動される際には、高圧のブレーキオイル60がポート58及び内部通路68を経てホイールシリンダ室56L及び56Rへ供給される。ピストン38Lがキャリパ36の内側の部分36Lに対し図5において右方へ摺動し、ブレーキパッド24をブレーキディスク20に押圧する。同様に、ピストン38Rがキャリパ36の外側の部分36Rに対し図5において左方へ摺動し、ブレーキパッド22をブレーキディスク20に押圧する。その結果、ブレーキディスク20はブレーキパッド22及び24により挾圧され、それらの間の摩擦力により制動力が発生される。制動力はブレーキディスク20からホイール部材16へ伝達され、これにより車輪12が制動される。

0068

逆に、制動力発生装置10による制動力の発生が解除され、車輪12の制動が解除される場合には、ホイールシリンダ室56L及び56R内の高圧のブレーキオイル60の一部が内部通路68及びポート58を経て排出される。ピストン38Lはキャリパ36に対し図1において左方へ摺動し、ブレーキディスク20に対するブレーキパッド24の押圧を解除する。同様に、ピストン38Rはキャリパ36に対し図1において右方へ摺動し、ブレーキディスク20に対するブレーキパッド22の押圧を解除する。従って、ブレーキパッド22及び24は、ブレーキディスク20に押圧されなくなるので、ブレーキパッド22及び24とブレーキディスク20との間に摩擦力が発生しなくなり、制動力が車輪12に与えられなくなる。

0069

よって、キャリパ36の内側の部分36L及びピストン38Lは、互いに共働してブレーキパッド24をブレーキディスク20に押圧する押圧装置26の一部として機能する。同様に、キャリパ36の外側の部分36R及びピストン38Rは、互いに共働してブレーキパッド22をブレーキディスク20に押圧する押圧装置26の一部として機能する。

0070

図5に示されているように、ブレーキディスク20の段差部20Sの円筒状の外面には、第一の実施形態と同様に、短冊状をなす自己放電式除電器70Aが径方向に垂直に延在するよう接着により固定されている。ブレーキパッド24の裏板24Pの外面(車両横方向内側の表面)及びブレーキパッド22の裏板22Pの上面及び下面には、それぞれ短冊状をなす自己放電式除電器70BL及び70BRが実質的に径方向に延在するよう接着により固定されている。

0071

キャリパ36の内側の部分36L及び外側の部分36Rの径方向外側の表面には、それぞれ短冊状をなす自己放電式除電器70EL及び70ERが径方向及び軸線52に垂直に延在するよう接着により固定されている。同様に、キャリパ36の内側の部分36L及び外側の部分36Rの径方向外側の表面には、それぞれ短冊状をなす自己放電式除電器70FL及び70FRが径方向及び軸線52に垂直に延在するよう接着により固定されている。第一の実施形態における自己放電式除電器70C、70D及び70G対応する除電器は固定されていない。

0072

第一の実施形態の場合と同様に、ブレーキディスク20に固定された除電器70Aにより、ブレーキディスク20に於ける電荷の帯電量が低減される。除電器70BL及び70BRはそれぞれブレーキパッド24及び22の裏板24P及び22Pに固定されている。よって、除電器70BL及び70BRによりブレーキパッド24及び22の裏板24P及び22Pに於ける電荷の帯電量が低減され、これにより摩擦材24A及び22Aに於ける電荷の帯電量も低減される。

0073

除電器70EL及び70ERはそれぞれキャリパ36の内側の部分36L及び外側の部分36Rの径方向外側の表面に固定されている。同様に、除電器70FL及び70FRはキャリパ36の内側の部分36L及び外側の部分36Rの径方向外側の表面に固定されている。よって、除電器70E、70ER、70FL及び70FRにより、キャリパ36に於ける電荷の帯電量が低減され、これによりグリース66に於ける電荷の帯電量も低減される。

0074

以上の説明から解るように、第二の実施形態によれば、制動力発生装置10内のグリース66に正の電荷が過剰に帯電することを防止することができる。よって、グリース66の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなることを防止し、これによりグリース66によって潤滑されるピストン38L及び38Rなどの摺動運動が円滑に行われる状況を確保することができる。

0075

特に、第二の実施形態によれば、押圧装置26は対向ピストン式の押圧装置である。即ち、キャリパ36はナックル30に対し変位せず、ブレーキディスク20の両側においてピストン38L及び38Rがキャリパ36に対し摺動により変位する。従って、第二の実施形態から、本発明によれば、キャリパが静止部材であり、一対のピストンがキャリパに対し摺動により変位する変位部材である場合にも、ピストンの周りのグリースにおける過剰の電荷の帯電を防止することができることが解る。

0076

また、本願発明者が行った実験的研究により、ブレーキディスク20などに帯電する正の電荷が制動力発生装置10の応答性に影響することが解った。即ち、ブレーキディスク20などに正の電荷が帯電すると、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に静電気による斥力が作用する。また、ブレーキパッド24及び22がブレーキディスク20に押圧されて摩擦摺動する状況が継続すると、摩擦材22A及び24Aの構成材料によっては、摩擦材に帯電する電荷が正の電荷から負の電荷に変化する。この状況が発生すると、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に静電気による引力が作用する。

0077

第一及び第二の実施形態によれば、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に作用する静電気による斥力及び引力が、制動力発生装置10の応答性に与える影響を軽減することができる。以下にこの点について、図6及び図7を参照して更に詳細に説明する。

0078

図6及び図7は、それぞれ自己放電式除電器による除電が行われない従来の制動力発生装置及び第一又は第二の実施形態における目標制動力Fbt及び目標制動圧Pbtの変化の例と、それに対応する実際の制動力Fb及び実際の制動圧Pbの変化を誇張して示している。特に、図6及び図7において、運転者制動操作量に対応する目標制動力Fbt及び目標制動圧Pbtは、時点t1において0から増大し始め、時点t2から時点t3まで一定であり、時点t3において減少し始め、時点t4において0になるとする。

0079

従来の制動力発生装置の場合には、ブレーキディスク20などに電荷が帯電し、電荷の帯電量が多くなると、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に作用する斥力が高くなる。そのため、時点t1において運転者が制動操作を開始し、目標制動圧Pbtの増大に則して実際の制動圧Pbを増大させても、暫くはブレーキパッド24及び22をブレーキディスク20に押し付けることができず、実際の制動力Fbは0のままになる。

0080

運転者はこの状況に対処すべく、制動操作量を高い増大率にて増大させる。その結果、実際の制動圧Pbが目標制動圧Pbtの増大率よりも高い増大率にて増大し、時点t2よりも早い時間領域において目標制動圧Pbtよりも高い値になる。よって、実際の制動力Fbは制動開始初期には目標制動力Fbtよりも低くなり、その後目標制動力Fbtよりも高くなり易い。

0081

また、時点t3において目標制動圧Pbtの減少に則して実際の制動圧Pbが低減されても、暫くはブレーキパッド24及び22とブレーキディスク20とがそれらの間の引力に起因して互いに押圧した状態を継続し、実際の制動力Fbは減少しない。運転者は車両の減速度が希望するようには減少しないので、制動操作量を高い低下率にて低下させる。その結果、実際の制動圧Pbが目標制動圧Pbtの減少率よりも高い減少率にて減少し、これに対応して実際の制動力Fbは目標制動力Fbtよりも高い減少率にて減少する。よって、実際の制動力Fbは制動終了初期には目標制動力Fbtよりも高くなり、その後目標制動力Fbtよりも低くなり易い。

0082

これに対し、第一及び第二の実施形態によれば、自己放電式除電器による除電により、ブレーキディスク20及びブレーキパッド24、22における電荷の帯電量をも低減することができる。よって、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に作用する静電気による斥力及び引力を低減することができるので、斥力及び引力がブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間の押圧力に与える影響を低減することができる。従って、図7に示されているように、それぞれ目標制動圧Pbt及び目標制動力Fbtに対する実際の制動圧Pb及び実際の制動力Fbの追従性を向上させることができる。

0083

特に、回生制動が行われる車両においては、車両の運動制御などの制動力の制御の開始時には、回生制動力が等価な摩擦制動力すり替えられ、逆に制動力の制御の終了時には、摩擦制動力の一部が等価な回生制動力にすり替えられる。しかし、ブレーキディスク20等に電荷が帯電し、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に静電気による斥力及び引力が作用すると、回生制動力及び摩擦制動力を円滑にすり替えることができず、減速ショックが生じ易い。

0084

これに対し、第一及び第二の実施形態によれば、除電によって、ブレーキディスク20とブレーキパッド24及び22との間に作用する静電気による斥力及び引力を低減することができる。よって、回生制動が行われる車両において、回生制動力及び摩擦制動力を円滑にすり替えることができるので、減速ショックが生じること及び車両全体の制動力が不自然に変化することを防止することができる。

0085

[第三の実施形態]
図8は、リーディングトレーリング式ドラムブレーキに適用された本発明の第三の実施形態にかかる制動力発生装置80の概要を示す断面図、図9は、ブレーキドラムを除去した状態にて制動力発生装置80の概要を示す正面図である。なお、図8において、図1に示された部材に対応する部材には、図1において付された符号と同一の符号が付されている。

0086

これらの図に於いて、制動力発生装置80は、リーディングトレーリング式ドラムブレーキであり、車輪12と共に回転軸線14の周りに回転する回転部材であるブレーキドラム82を有している。制動力発生装置80は、更に、摩擦部材である一対のブレーキシュー84及び86と、ブレーキドラム82にブレーキシュー84及び86を押圧するホイールシリンダ装置108を含む押圧装置88とを有している。

0087

周知のように、ブレーキドラム82は、円形の深状をなし、回転軸線に垂直な実質的に円環板状のベース部82Bと、ベース部82Bの外周部と一体に接続されベース部82Bに垂直に延在する円筒部82Cとを有している。ベース部82Bは、ホイール部材16と共にボルト締結によりアクスルハブ28のフランジ部に一体的に締結されており、円筒部82Cはベース部82Bに対し車両横方向内側に位置している。この実施形態における車輪12は従動輪であり、アクスルハブ28のスリーブ部28Sには、ナックル30と一体をなすスピンドル30Sが挿通されている。アクスルハブ28は、スピンドル30Sにより軸受32を介して回転軸線14の周りに回転可能に支持されている。

0088

円筒部82Cの径方向内側には、回転軸線に垂直な実質的に円環板状のバックプレート90が配置されている。図には示されていないが、バックプレート90は、ボルト締結によりナックル30に一体的に取り付けられており、バックプレート90の外周部は、ベース部82Bとは軸線方向反対側の円筒部82Cの車両横方向内側の端部から僅かに径方向内側へ隔置されている。よって、バックプレート90は支持部材として機能し、ブレーキドラム82はバックプレート90に対し回転軸線14の周りに回転する。

0089

ブレーキシュー84及び86は、回転軸線14に対し車両の前後方向の両側にて、ブレーキドラム82の円筒部82Cの径方向内側に配置されている。ブレーキシュー84及び86は、それぞれ金属製のシュー本体92及び94と、摩擦材にて形成された摩擦材96及び98とを有している。

0090

シュー本体92及び94は、摩擦材支持部92S及び94Sと、リブ部92L及び94Lとを有している。摩擦材支持部92S及び94Sは、実質的に円筒部82Cに沿って円弧状に延在し且つ回転軸線14に沿って延在する板状をなしている。リブ部92L及び94Lは、それぞれ摩擦材支持部92S及び94Sと一体に形成され、回転軸線14に垂直な平面に沿って円弧状に延在している。摩擦材96及び98は、それぞれ摩擦材支持部92S及び94Sの径方向外側の面に一体的に固定されており、ブレーキドラム82の円筒部82Cの内面に対向している。

0091

シュー本体92及び94は、それぞれリブ部92L及び94Lの下端部に挿通されたピン100及び102により、回転軸線14に平行な軸線100A及び102Aの周りに揺動可能に支持されている。それぞれリブ部92L及び94Lとピン100及び102との間の摺動部は、グリース104により潤滑されている。ピン100及び102は、バックプレート90に固定されたピン支持体アンカー)106に固定されている。なお、ピン100及び102は、それらの間隔を調整可能なシューアジャスタにより支持されていてもよい。

0092

シュー本体92及び94の自由端(上端)の間には、ホイールシリンダ装置108がバックプレート90に固定的に取り付けられた状態にて配置されている。シュー本体92及び94の自由端よりも下端側には、リターンスプリング110が配置され、リブ部92L及び94Lに連結されている。よって、ブレーキシュー84及び86は、リターンスプリング110のばね力によりピン100及び102を支点に互いに近づく方向へ付勢されている。

0093

周知のように、ホイールシリンダ装置108はピストン−シリンダ装置の構造を有し、シリンダ室に対しブレーキオイルが給排されると、伸縮により両端部間の距離が増減する。ホイールシリンダ装置108の一端及び他端は、例えばピンにより、それぞれシュー本体92のリブ部92L及びシュー本体94のリブ部94Lに相対的に揺動可能に連結されている。ホイールシリンダ装置108が伸縮すると、その両端に対しリブ部92L及び94Lが僅かに揺動し、それらの連結部が摺動する。よって、ホイールシリンダ装置108の両端とリブ部92L及び94Lとの間の連結部は、グリース112により潤滑されている。

0094

特に、ホイールシリンダ装置108が伸張すると、ブレーキシュー84及び86の上端部は互いに離れる方向へ駆動され、ブレーキシュー84及び86はそれぞれピン100及び102を支点に互いに離れる方向へ揺動せしめられる。その結果、摩擦材支持部92S及び94Sがブレーキドラム82の円筒部82Cの内面に押し付けられる。よって、ホイールシリンダ装置108は、ピン100及び102と共働してブレーキシュー84及び86をブレーキドラム82に押圧する押圧装置88を構成している。

0095

図には示されていない車両が前進する際に、ブレーキドラム82が図9において矢印にて示された方向へ回転するとする。ブレーキシュー84はピン100に対しブレーキドラム82の回転方向進み側にてブレーキドラム82に摩擦接触する。逆に、ブレーキシュー86はピン102に対しブレーキドラム82の回転方向遅れ側にてブレーキドラム82に摩擦接触する。よって、ブレーキシュー84及び86はそれぞれリーディングブレーキシュー及びトレーリングブレーキシューとして機能する。

0096

制動力発生装置80により制動力が発生される場合には、ホイールシリンダ装置108のシリンダ室へ高圧のブレーキオイルが供給され、ホイールシリンダ装置108が伸張せしめられる。ブレーキシュー84及び86はピン100及び102の周りに互いに離れる方向へ揺動せしめられるので、摩擦材96及び98がブレーキドラム82の円筒部82Cの内面に押圧される。よって、摩擦材96及び98と円筒部82Cの内面との間に発生する摩擦力によってブレーキドラム82の回転に抗するトルクが発生され、そのトルクが車輪12へ制動トルクとして伝達されることにより、車輪12が制動される。

0097

逆に、制動力発生装置80による制動力が解除される場合には、ホイールシリンダ装置108のシリンダ室から高圧のブレーキオイルの一部が排出され、ホイールシリンダ装置108が収縮せしめられる。ブレーキシュー84及び86はリターンスプリング110のばね力によりピン100及び102の周りに互いに近づく方向へ付勢させているので、ブレーキドラム82の円筒部82Cの内面に対する摩擦材96及び98の押圧力が低下する。よって、摩擦材96及び98と円筒部82Cの内面との間に発生する摩擦力が低下し、ブレーキドラム82の回転に抗するトルクも低下するので、車輪12へ伝達されるトルクが低下して車輪12の制動力が低下する。

0098

この実施形態においては、図8に示されているように、ブレーキドラム82の外面には、回転軸線14の周りに90°隔置された位置に、短冊状をなす四つの自己放電式除電器120Aが径方向に垂直に延在するよう接着により固定されている。図9に示されているように、ブレーキシュー84及び86のリブ部92L及び94Lには、短冊状をなす自己放電式除電器120Bが長手方向に延在するよう接着により固定されている。

0099

図8及び図9に示されているように、バックプレート90の外面(車両横方向内側の表面)には、ホイールシリンダ装置108が設けられた位置に、短冊状をなす自己放電式除電器120Cが径方向に垂直に延在するよう接着により固定されている。更に、バックプレート90の外面には、ピン支持体106が設けられた位置に、短冊状をなす自己放電式除電器120Dが径方向に垂直に延在するよう接着により固定されている。なお、除電器120A〜120Dは第一の実施形態の除電器70A〜70Gと同様の構造を有している。

0100

除電器120Aはブレーキドラム82の外面に固定されているので、除電器120Aによりブレーキドラム82における電荷の帯電量が低減される。除電器120Bはブレーキシュー84及び86のリブ部92L及び94Lに固定されているので、除電器120Bにより摩擦材支持部92S及び94Sにおける電荷の帯電量が低減され、これにより摩擦材96及び98における電荷の帯電量も低減される。

0101

除電器120Cはホイールシリンダ装置108が設けられた位置にてバックプレート90の外面に固定されている。よって、除電器120Cによりバックプレート90及びホイールシリンダ装置108における電荷の帯電量が低減され、これによりホイールシリンダ装置108の両端とリブ部92L及び94Lとの間の連結部のグリース112における電荷の帯電量も低減される。ホイールシリンダ装置108はシリンダとこれに往復動可能に嵌合するピストンとを有し、これらはグリースにて潤滑されている。よって、除電器120Cによりバックプレート90及びホイールシリンダ装置108における電荷の帯電量が低減されることにより、ホイールシリンダ装置108内のグリースにおける電荷の帯電量も低減される。

0102

更に、除電器120Dはピン支持体106が設けられた位置にてバックプレート90の外面に固定されている。よって、除電器120Dによりバックプレート90及びピン支持体106における電荷の帯電量が低減され、これによりピン100及び102とピン支持体106との間のグリース104における電荷の帯電量も低減される。

0103

以上の説明から解るように、第三の実施形態によれば、制動力発生装置80内のグリース104、112及びホイールシリンダ装置108内のグリースに正の電荷が過剰に帯電することを防止することができる。よって、グリース104、112及びホイールシリンダ装置108内のグリースの粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなることを防止し、これによりブレーキシュー84及び86の揺動運動が円滑に行われる状況を確保することができる。

0104

また、第三の実施形態においても、互いに摩擦接触することによって摩擦力による制動力を発生する回転部材としてのブレーキドラム82及び摩擦部材としてのブレーキシュー84、86の両方に帯電する正の電荷が低減される。よって、ブレーキドラム82とブレーキシュー84、86との間に作用する静電気による斥力及び引力を低減することができる。従って、第一及び第二の実施形態の場合と同様に、ブレーキドラム82とブレーキシュー84、86との間に作用する静電気による斥力及び引力が、制動力発生装置80の応答性に与える影響を軽減することができる。更に、回生制動が行われる車両において、回生制動力及び摩擦制動力を等価に移行させることができるので、減速ショックが生じること及び車両全体の制動力が不自然に変化することを抑制することができる。

0105

なお、上述の第一及び第二の実施形態に係る制動力発生装置10及び第三の実施形態に係る制動力発生装置80について、本願発明者が行った実験により、以下の効果を確認することができた。即ち、自己放電式除電器70Aなどが設けられていない場合には、制動力発生装置10及び80内のグリース50などの電位は数百乃至数千ボルト程度にまで上昇した。これに対し、第一乃至第三の実施形態の構成によれば、グリース50などの電位は数十ボルト程度にまでしか上昇せず、グリース50などの適正な粘性を確保することができた。

0106

以上の説明から解るように、各実施形態における自己放電式除電器70Aなどの除電器は、所謂イオン分離式の非アース型の自己放電式除電器である。即ち、除電器70Aなどは、コロナ放電により空気を正の空気イオンと負の空気イオンとに分離し、制動力発生装置10及び80の構成部材に帯電する正の電荷と負の空気イオンとの電気的中和によって除電を行う。よって、グリースに接する部材から電荷をアーシングによって除去するための特別の装置及び配線を必要としない。更に、前述の特許文献2に記載された静電気除去装置が使用される場合に比して、制動力発生装置10及び80における除電のための構造を単純化すると共に、除電を達成するために必要なコストを大幅に低減することができる。

0107

特に、第一乃至第三の実施形態によれば、互いに摩擦接触することによって摩擦力による制動力を発生する回転部材及び摩擦部材の両方に帯電する正の電荷が低減される。よって、回転部材及び摩擦部材の一方に帯電する正の電荷しか低減されない場合に比して、回転部材と摩擦部材との間に作用する静電気による斥力及び引力を効果的に低減することができる。

0108

また、第一乃至第三の実施形態によれば、ホイールシリンダ装置を構成するキャリパ36のような部材、ホイールシリンダ装置108又はそれに接続されたバックプレート90のような部材に帯電する正の電荷が除電器による除電によって低減される。よって、ホイールシリンダ装置に給排されるブレーキオイルに帯電する正の電荷も低減され、ブレーキオイルの粘性が高くなることを防止することができる。従って、ホイールシリンダ装置内におけるピストンの円滑な往復動を確保することができるので、このことによっても制動力発生装置10及び80の円滑な作動を確保することができる。

0109

更に、第一乃至第三の実施形態によれば、除電器は、導電性の金属箔72に導電性の粘着剤74が付着されたテープの形態をなし、除電されるべき部材に対する除電器の固定は、金属箔72を粘着剤74にて部材に接着することにより行われる。よって、除電されるべき部材の表面に除電を行う金属箔を接着により容易に固定することができる。更に、粘着剤の層は導電性を有するので、粘着剤の層が導電性を有しない場合に比して、特定の部材から金属箔への電荷の移動を効率的に行わせ、これにより除電の効果を高くすることができる。なお、粘着剤の層の厚さが数十〜数百μm程度であれば、粘着剤の層が導電性を有していなくても、電荷は特定の部材から金属箔へ移動することができる。よって、粘着剤の層は導電性を有していなくてもよい。

0110

以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。

0111

例えば、上述の第一及び第二の実施形態においては、自己放電式除電器70A〜70Dがブレーキディスク20などに固定されているが、除電器70A〜70Dの何れかが省略されてもよい。同様に、第三の実施形態においては、自己放電式除電器120A〜120Dがブレーキドラム82などに固定されている。除電器120A〜120Dの何れかが省略されてもよい。

0112

また、除電器が固定される位置、数及び延在方向は、上述の各実施形態における位置、数及び延在方向に限定されない。例えば、第一の実施形態における除電器70E及び70Fは、軸線52に対し車両の前後方向の側にてキャリパ36の表面に固定されてもよい。また、各実施形態において、径方向に垂直に延在するよう固定された除電器が径方向に沿って延在するよう固定されてもよい。

0113

また、上述の各実施形態においては、回転部材に摩擦部材を押圧する押圧装置26及び88は、ブレーキオイルの給排により作動するホイールシリンダ装置であるが、押圧装置は電磁力により駆動される電磁式の押圧装置であってもよい。

0114

また、上述の第一及び第二の実施形態においては、車輪12は駆動輪であるが、第一及び第二の実施形態の制動力発生装置10が従動輪に適用されてもよい。同様に、第三の実施形態においては、車輪12は従動輪であるが、第三の実施形態の制動力発生装置80が駆動輪に適用されてもよい。

0115

更に、上述の第三の実施形態においては、ブレーキシュー84及び86の支持構造はピンカー型である。しかし、ブレーキシューの支持構造はアジャスタアンカー型又はフローティングアンカー型であってもよい。また、制動力発生装置80はリーディングトレーリング式ドラムブレーキに適用されているが、ツーリーディング式ドラムブレーキに適用されてもよい。更に、制動力発生装置80はユニサーボ型のドラムブレーキであるが、二つのホイールシリンダ装置を有するデュオサーボ型のドラムブレーキに適用されてもよい。

0116

10…制動力発生装置、12…車輪、16…軸受、20…ブレーキディスク、22、24…ブレーキパッド、26…押圧装置、34…キャリパ支持部材、36…キャリパ、40…スライドピン、50…グリース、70A〜70D…自己放電式除電器、80…制動力発生装置、82…ブレーキドラム、84、86…ブレーキシュー、90…バックプレート、104…グリース、120A〜120D…自己放電式除電器

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