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技術 クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

出願人 日本製鉄株式会社日本パーカライジング株式会社
発明者 森陽一郎落合忠昭湯淺健正山本祐補山口英宏渡邉大輔遠藤智博
出願日 2016年1月29日 (5年4ヶ月経過) 出願番号 2016-015100
公開日 2016年8月18日 (4年9ヶ月経過) 公開番号 2016-148109
状態 特許登録済
技術分野 金属の化成処理 その他の表面処理
主要キーワード 所定物性 形状最適化 機能性表面処理 損失正接tanδ 高抵抗部位 どぶ漬け 皮膜密度 カット数
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年8月18日)のものです。
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図面 (4)

課題

解決手段

合金化溶融亜鉛めっき鋼板の少なくとも片面に、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを反応させた、構造中に環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)とを含む造膜成分(X)と、りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)とからなるインヒビター成分(Y)と、を含有する表面処理層(Z)を有し、表面処理層(Z)に含まれるカチオン性ポリウレタン樹脂が所定物性を有し、造膜成分(X)中のカチオン性ポリウレタン樹脂の固形重量割合が40〜80%、有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂の固形分重量比C/Dが0.25〜1.5であるクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

概要

背景

一般的に金属材料表面への密着性に優れ、金属材料表面に耐食性耐指紋性などを付与する技術として、金属材料表面に、クロム酸重クロム酸又はそれらの塩を主成分として含有する処理液によりクロメート処理を施す方法、りん酸塩処理を施す方法、有機樹脂皮膜処理を施す方法、などが知られており、実用に供されている。その中でも、自動車用鋼板には、りん酸亜鉛処理の他に、あらかじめ有機樹脂皮膜処理を施した亜鉛系めっき鋼板も実用化されている。

従来、自動車用防錆鋼板としては、特許文献1などのような、亜鉛粉末含有塗膜を10〜20μmの膜厚で形成させた防錆塗装鋼板ジンクロメタル)が使用されていた。しかしながら、この防錆塗装鋼板の亜鉛粉末含有塗膜は、プレス成形時に著しい皮膜剥離が生じ、これが金型堆積して欠陥プレス割れの原因となるばかりでなく、防錆皮膜が剥離した部分の耐食性が劣化してしまうという問題があった。

そこで近年では、すでに、欧州自動車メーカーでは、シーラーワックスなどの副資材の削減・省略を狙いとして、亜鉛めっき鋼板の表面にクロメート皮膜を形成し、さらに亜鉛粉末などの導電性金属粉を含有させた4〜7μm程度の塗膜を形成させた有機被覆鋼板を採用しているケースがある。しかしながら、6価クロムを含有するクロメート処理を施す必要があること、プレス加工時の皮膜剥離や剥離後の耐食性の問題などについては、解決されていないのが実状である。

最近では、自動車などに適用される防錆鋼板として、例えば特許文献2〜4に示されるようなものが提案され、また、特許文献5には、亜鉛系合金めっき鋼板の表面に有機樹脂とりん酸もしくはフッ化物主体とする化成処理を施し、その表面に有機樹脂、導電性顔料及び防錆顔料からなる有機塗膜を形成した防錆鋼板が示されている。しかし、特許文献2〜4の防錆鋼板は、いずれもクロメート処理を施したり、6価クロム系の防錆顔料を使用しているため、環境面で問題がある。また、特許文献5の防錆鋼板は、クロムフリー系ではあるが、依然として十分な耐食性や溶接性を有していない。

概要

相反する電気的特性である良電着塗装性と良溶接性の両立を達成したクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提供。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の少なくとも片面に、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを反応させた、構造中に環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)とを含む造膜成分(X)と、りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)とからなるインヒビター成分(Y)と、を含有する表面処理層(Z)を有し、表面処理層(Z)に含まれるカチオン性ポリウレタン樹脂が所定物性を有し、造膜成分(X)中のカチオン性ポリウレタン樹脂の固形重量割合が40〜80%、有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂の固形分重量比C/Dが0.25〜1.5であるクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。なし

目的

本発明は、金属板の少なくとも片面に、環境負荷性の高い6価クロムを含まない表面処理層が形成された、一時防錆性潤滑性、密着性などの性能に加え、相反する電気的特性である良電着塗装性と良溶接性の両立を達成し、かつ現在広く利用されているりん酸亜鉛処理を凌駕する優れた耐食性を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

合金化溶融亜鉛めっき鋼板の少なくとも片面に、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを配合し反応させて得られ構造中に環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)とを含む造膜成分(X)と、りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)とからなるインヒビター成分(Y)と、を含有する表面処理層(Z)を有し、かかる表面処理層(Z)に含まれる成分において、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)が損失弾性率E“の最大ピーク温度(T1)が−50℃から−15℃、さらに貯蔵弾性率E‘と損失弾性率E“の比で表される損失正接tanδの分散ピークが二つ以上観測されず、かつ前記損失正接の分散ピーク温度(T2)が−50℃から0℃であり、前記造膜成分(X)中の前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形重量割合が40%から80%、前記有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量比C/Dが0.25から1.5であることを特徴とするクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

請求項2

前記りん酸(J)およびりん酸マグネシウム(K)由来のりんの固形分重量が前記表面処理層(Z)全体の重量の0.1〜12.0%である請求項1に記載のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

請求項3

前記クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に形成された表面処理層(Z)が、0.5〜5.0g/m2の皮膜量を有する請求項1または2に記載のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板

請求項4

前記表面処理層(Z)が、平均粒子径が0.05μmから10μmである体質顔料防錆顔料および導電性顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の機能性粒子(E)を含有し、当該機能性粒子(E)1種類あたりの付着量が、30mg/m2から2000mg/m2である請求項1から3のいずれか一項に記載のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

請求項5

前記機能性粒子(E)が、りん酸金属塩微粒子カーボンブラック微粒子シリカおよびこれらの微粒子のいずれか一つを核にして、当該微粒子表面に機能性表面処理が施された微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1から4のいずれか一項に記載のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

請求項6

請求項1から5のいずれか一項に記載の表面処理層に含まれる成分を含有する水系表面処理剤を塗布し、50〜250℃の到達温度で乾燥させる工程にて当該表面処理層を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法。

技術分野

0001

本発明は、金属板の少なくとも片面に、環境負荷性の高い6価クロムを含まない表面処理層が形成された、一時防錆性潤滑性密着性などの性能に加え、相反する電気的特性である良電着塗装性と良溶接性両立を達成し、かつ現在広く利用されているりん酸亜鉛処理を凌駕する優れた耐食性を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

一般的に金属材料表面への密着性に優れ、金属材料表面に耐食性や耐指紋性などを付与する技術として、金属材料表面に、クロム酸重クロム酸又はそれらの塩を主成分として含有する処理液によりクロメート処理を施す方法、りん酸塩処理を施す方法、有機樹脂皮膜処理を施す方法、などが知られており、実用に供されている。その中でも、自動車用鋼板には、りん酸亜鉛処理の他に、あらかじめ有機樹脂皮膜処理を施した亜鉛系めっき鋼板も実用化されている。

0003

従来、自動車用防錆鋼板としては、特許文献1などのような、亜鉛粉末含有塗膜を10〜20μmの膜厚で形成させた防錆塗装鋼板ジンクロメタル)が使用されていた。しかしながら、この防錆塗装鋼板の亜鉛粉末含有塗膜は、プレス成形時に著しい皮膜剥離が生じ、これが金型堆積して欠陥プレス割れの原因となるばかりでなく、防錆皮膜が剥離した部分の耐食性が劣化してしまうという問題があった。

0004

そこで近年では、すでに、欧州自動車メーカーでは、シーラーワックスなどの副資材の削減・省略を狙いとして、亜鉛めっき鋼板の表面にクロメート皮膜を形成し、さらに亜鉛粉末などの導電性金属粉を含有させた4〜7μm程度の塗膜を形成させた有機被覆鋼板を採用しているケースがある。しかしながら、6価クロムを含有するクロメート処理を施す必要があること、プレス加工時の皮膜剥離や剥離後の耐食性の問題などについては、解決されていないのが実状である。

0005

最近では、自動車などに適用される防錆鋼板として、例えば特許文献2〜4に示されるようなものが提案され、また、特許文献5には、亜鉛系合金めっき鋼板の表面に有機樹脂とりん酸もしくはフッ化物主体とする化成処理を施し、その表面に有機樹脂、導電性顔料及び防錆顔料からなる有機塗膜を形成した防錆鋼板が示されている。しかし、特許文献2〜4の防錆鋼板は、いずれもクロメート処理を施したり、6価クロム系の防錆顔料を使用しているため、環境面で問題がある。また、特許文献5の防錆鋼板は、クロムフリー系ではあるが、依然として十分な耐食性や溶接性を有していない。

先行技術

0006

特公昭47−6882号公報
特開平10−44307号公報
特開平9−276785号公報
特開平10−043677号公報
特開2005−288730号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、金属板の少なくとも片面に、環境負荷性の高い6価クロムを含まない表面処理層が形成された、一時防錆性、潤滑性、密着性などの性能に加え、相反する電気的特性である良電着塗装性と良溶接性の両立を達成し、かつ現在広く利用されているりん酸亜鉛処理を凌駕する優れた耐食性を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の少なくとも片面に、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを配合し反応させて得られ構造中に環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)とを含む造膜成分(X)と、りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)とからなるインヒビター成分(Y)と、を含有する表面処理層(Z)を有し、
かかる表面処理層(Z)に含まれる成分において、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)が損失弾性率E“の最大ピーク温度(T1)が−50℃から−15℃、さらに貯蔵弾性率E‘と損失弾性率E“の比で表される損失正接tanδの分散ピークが二つ以上観測されず、かつ前記損失正接の分散ピーク温度(T2)が−50℃から0℃であり、前記造膜成分(X)中の前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形重量割合が40%から80%、前記有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量比C/Dが0.25から1.5であることを特徴とするクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
また、前記りん酸(J)およびりん酸マグネシウム(K)由来のりんの固形分重量が前記表面処理層(Z)全体の重量の0.1〜12.0%であってもよい。
また、前記クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に形成された表面処理層(Z)が、0.5〜5.0g/m2の皮膜量を有していてもよい。
また、前記表面処理層(Z)が、平均粒子径が0.05μmから10μmである体質顔料、防錆顔料および導電性顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の機能性粒子(E)を含有し、当該機能性粒子(E)1種類あたりの付着量が、30mg/m2から2000mg/m2であってもよい。
また、前記機能性粒子(E)が、りん酸金属塩微粒子カーボンブラック微粒子シリカおよびこれらの微粒子のいずれか一つを核にして、当該微粒子表面に機能性表面処理が施された微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
更に、本発明は、前記表面処理層に含まれる成分を含有する水系表面処理剤を塗布し、50〜250℃の到達温度で乾燥させる工程にて当該表面処理層を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法である。

発明の効果

0009

本発明のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、一時防錆性、潤滑性、密着性などの性能に加え、相反する電気的特性である良電着塗装性と良溶接性の両立を達成し、かつ現在広く利用されているりん酸亜鉛処理を凌駕する優れた耐食性を有する。

図面の簡単な説明

0010

塗装付き廻り性を評価する際に用いる4枚ボックスを示す斜視図である。
塗装付き廻り性の評価方法を示す説明図である。
塗装付き廻り性の評価方法を示す別の説明図である。
D3(1分散ピーク)とD11(2分散ピーク)の損失正接tanδ/温度のチャートである。

0011

以下の順で、本発明を詳述する。
・クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板(各成分、配合、付着量)
・クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
・クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の用途

0012

≪クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板≫
本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の少なくとも片面に、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを配合し反応させて得られ構造中に環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)とを含む造膜成分(X)と、りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)とを含むインヒビター成分(Y)と、を含有する表面処理層(Z)を有し、
かかる表面処理層(Z)に含まれる成分において、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)が損失弾性率E“の最大ピーク温度(T1)が−50℃から−15℃、さらに貯蔵弾性率E‘と損失弾性率E“の比で表される損失正接tanδの分散ピークが二つ以上観測されず、かつ前記損失正接の分散ピーク温度(T2)が−50℃から0℃であり、前記造膜成分(X)中の前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量割合が40%から80%、前記有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量比C/Dが0.25から1.5であることを特徴とするクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。以下、表面処理層(Z)を構成する各成分及び配合について詳述する。

0013

<各成分>
{造膜成分(X)}
(有機ケイ素化合物(C))
造膜成分(X)の一必須成分は、有機ケイ素化合物(C)である。有機ケイ素化合物(C)は、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを配合し反応させて得られ、構造中に環状シロキサン結合を有する。

0014

まず、有機ケイ素化合物(C)の一原料であるシランカップリング剤(A)及びシランカップリング剤(B)について説明する。まず、シランカップリング剤(A)は、分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する限り特に限定するものではないが、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。次に、シランカップリング剤(B)は、分子中にグリシジル基を少なくとも1つ有する限り特に限定するものではないが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを例示することができる。

0015

好ましくは、有機ケイ素化合物(C)は、分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)を固形分重量比〔(A)/(B)〕が0.5〜1.7の割合で配合し反応させて得られる化合物である。シランカップリング剤(A)と(B)の固形分重量比〔(A)/(B)〕が0.5未満であると、有機ケイ素化合物(C)の疎水性および自己架橋性が高くなるため、表面処理層(Z)を形成するための水系処理剤の安定性が低下し好ましくない。固形分重量比〔(A)/(B)〕が1.7を超えると、有機ケイ素化合物(C)の親水性およびカチオン性が高くなりすぎ、得られる表面処理層(Z)の耐水性および耐食性が低下するため好ましくない。固形分重量比〔(A)/(B)〕は、より好ましくは0.6〜1.5であり、最も好ましくは0.7〜1.3である。

0016

また、前記有機ケイ素化合物(C)は構造中に環状シロキサン結合を有する。有機ケイ素化合物(C)の構造中に含まれる「環状シロキサン結合」とは、Si−O−Si結合が連続する構成を有し、且つSiとOの結合のみで構成され、Si−Oの繰り返し数が3〜8の環状構造を指す。「鎖状シロキサン結合」とは、Si−O−Si結合が連続する構成を有し、且つSiとOの結合のみで構成され、Si−Oの繰り返し数が3〜8の間であって環状構造を有さないものを指す。本発明に係る有機ケイ素化合物(C)は、構造中に環状シロキサン結合を有することを必須とする。構造中に環状シロキサン結合を有していないと、造膜成分のバリア性が低くなり、耐食性が低下するものと推定される。

0017

前記環状シロキサン構造存在割合は、FT−IR反射法による環状シロキサン結合を示す1090〜1100cm−1の吸光度(c1)と鎖状シロキサン結合を示す1030〜1040cm−1の吸光度(c2)の比〔c1/c2〕が1.0〜2.0であることが最も好ましい。前記比〔c1/c1〕が1.0〜2.0であると、環状構造によるバリア性と鎖構造による柔軟性の双方をバランスよく備えることができ、耐食性や皮膜密着性など全ての性能が向上する。また、樹脂分子と環状シロキサン結合部の絡合により、より強靭で緻密な皮膜が形成される。

0018

有機ケイ素化合物(C)は、好ましくは、分子内に下記一般式[1]
(式1)

0019

(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基を表す)で表される官能基(a)を2個以上と、水酸基(官能基(a)に含まれるものとは別個のもの)及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基(b)を1個以上と、を含有する。

0020

有機ケイ素化合物(C)の分子内に官能基(a)の数が2個以上あると、金属板表面と表面処理層(Z)との密着性、有機ケイ素化合物(C)の自己架橋性が向上し、皮膜形成能が高まる。官能基(a)のR1、R2及びR3の定義におけるアルコキシ基の炭素数は、特に制限されないが、1から6であるのが好ましく、1から4であるのがより好ましく、1又は2であるのが最も好ましい。

0021

有機ケイ素化合物(C)の分子内に官能基(b)が1個以上あると、表面処理層(Z)と電着塗装などの上層塗膜との密着性が向上するとともに、表面処理層(Z)を形成するための水系処理剤中における有機ケイ素化合物(C)の安定性が向上する。

0022

前記有機ケイ素化合物(C)の環状シロキサン構造の存在割合や、官能基(a)、(b)は、例えば、島津製作所社製フーリエ変換赤外分光光度計IRPrestiqe−21や日本電子社製核磁気共鳴装置(NMR)JNM−ECXシリーズなどで測定することができる。

0023

有機ケイ素化合物(C)はまた、重量平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量は、特に限定するものではないが、TOF−MS法による直接測定およびクロマトグラフィー法による換算測定のいずれを用いて測定してもよい。好ましくは、重量平均分子量はGFC(ゲルフィルタレーションクロマトグラフィー)を用い、分子量標準物質としてエチレングリコールを用いて測定される。この方法で求めた重量平均分子量が1000未満であると、有機ケイ素化合物(C)の水溶解性が高くなるため、形成された表面処理層(Z)の耐水性や耐食性が低下する傾向がある。一方、重量平均分子量が10000を超えると、有機ケイ素化合物(C)の水中への溶解性または分散性が低下する傾向があり、表面処理層(Z)を形成するための水系処理剤の安定性が損なわれることがある。有機ケイ素化合物(C)の重量平均分子量は、1300〜6000であることが好ましい。

0024

有機ケイ素化合物(C)の製造方法は、特に限定するものではないが、一例として、pHを4に調整した水に、シランカップリング剤(A)とシランカップリング剤(B)を順次添加し、所定時間攪拌する方法が挙げられる。シランカップリング剤(A)を添加すると水溶液発熱するため、前もって水を冷却しておき、添加してから所定時間冷却し続け、一定の温度範囲にて製造することによって、有機ケイ素化合物(C)における環状シロキサン結合と鎖状シロキサン結合の存在割合を制御することができる。

0025

(カチオン性ポリウレタン樹脂(D))
造膜成分(X)の一必須成分は、カチオン性ポリウレタン樹脂(D)である。本発明の表面処理層(Z)を形成するための水系表面処理剤中に配合するカチオン性ポリウレタン樹脂(D)における「カチオン性」は分子構造中に下記一般式(I)〜(IV)に示すカチオン性官能基を有することを意味する。かかるカチオン性官能基の量はカチオン性ポリウレタン樹脂(D)が本発明の金属表面処理剤中に溶解もしくは分散状態で安定に存在し得る量であればよい。

0026

前記一般式(I)〜(IV)で表される基の式中、R1、R2、R3、R6及びR7は互いに独立に水素原子、炭素数1〜10好ましくは1〜6の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基又は炭素数1〜10好ましくは1〜6の直鎖もしくは分枝鎖のヒドロキシアルキル基を表し、R4及びR5は互いに独立に炭素数2〜10好ましくは2〜6の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基を表し、A−及びB−は水酸イオン又は酸イオンを表す。

0027

また、前記一般式(I)〜(IV)において、R1、R2、R3、R6及びR7が表す炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基エチル基プロピル基イソプロピル基ブチル基、イソブチル基ペンチル基ヘキシル基、ヘプチル基オクチル基、ノニル基、デシル基等が、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基等が挙げられる。

0028

また、一般式(III)及び(IV)において、R4及びR5が表す、炭素数2〜10のアルキレン基としては、エチレン基プロピレン基トリメチレン基テトラメチレン基ペンタメチレン基ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−エチルヘキシレン基デカメチレン基等が挙げられる。

0029

また、一般式(II)及び(IV)において、A−及びB−が表す酸イオンとしては、ハロゲンイオン塩素イオン臭素イオンフッ素イオン等)、硫酸イオン硝酸イオン、りん酸イオン等の無機酸イオン、酢酸イオンギ酸イオン等の有機酸イオンが挙げられる。また本発明で用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(D)は水溶性のもの又は水系エマルジョン形態のものである。

0030

前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)としては、ポリエーテルポリオールポリエステルポリオールポリカーボネートポリオール等のポリオール脂肪族、脂環式もしくは芳香族ポリイソシアネートとの縮重合物であるウレタン樹脂において、用いるポリオールの一部として、(置換)アミノ基を有するポリオール(例えば、N,N−ジメチルアミノジメチロールプロパンなど)を用いることによって得られる。ポリエーテルポリオールとしてはジエチレングリコールトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールポリエチレンプロピレングリコールなどが例示される。ポリエステルポリオールとしてはアルキレン(例えば炭素数1〜6)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールネオペンチルグリコールヘキサメチレングリコール等)、ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパングリセリン等のポリオールとコハク酸グルタル酸アジピン酸、セバチン酸、フタル酸イソフタル酸テレフタル酸トリメリット酸等の多塩基酸との重縮合によって得られる末端に水酸基を有するポリエステルポリオールなどが例示される。脂肪族、脂環式もしくは芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネートジフェニルメタンジイソシアネートキシリレンジイソシアネートジシクロヘキシルメタンジイソシアネートシクロヘキシレンジイソシアネートヘキサメチレンジイソシアネートリジンジイソシアネート等が例示される。

0031

また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)は、その損失弾性率E“の最大ピーク温度(T1)は−50℃から−15℃である。ここで損失弾性率E“の最大ピーク温度(T1)とは、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)を用い、周波数10Hz、昇温速度20℃/分で、損失弾性率(E“)が頂点を示した温度を意味する。T1がこの範囲にあると、樹脂フロー性が向上し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の凸部と凹部での表面処理層(Z)の膜厚が異なる現象が生じ、電着塗装時水素発生起点となるため電着塗装性、とくに付き回り性が改善する。より好ましいT1の範囲としては−45℃〜−20℃である。

0032

また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)は、貯蔵弾性率E‘と損失弾性率E“の比で表される損失正接tanδの分散ピークが二つ以上観測されず、かつ前記損失正接の分散ピーク温度(T2)が−50℃から0℃であることが好ましい。ここで損失正接の分散ピーク温度(T2)とは、前記動的粘弾性測定装置を用い、周波数10Hz、昇温速度20℃/分での貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)を測定し、その損失正接(tanδ)のピーク温度を意味する。また、損失正接tanδの分散ピーク温度が(T2)が前記範囲で一つであることの定義は、ベースラインに対して0.05以上のtanδ変化が二つ以上ないことを指す。前記損失正接tanδの分散ピーク温度が(T2)が前記範囲で一つであると、成膜した皮膜において海島構造発現しなくなり、部分的な高抵抗部位がなくなることで皮膜全体抵抗がさがるため溶接性が著しく向上する。加えて、前記造膜成分(X)中の前記カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量割合が40%から80%である場合、造膜成分(X)のtanδピーク温度は、樹脂(D)のそれに依存する。このため、本発明の表面処理層(Z)に適した物性が失われることなく、溶接性と電着塗装性が向上する。より好ましいT2の範囲としては、−40℃〜−10℃である。

0033

{インヒビター成分(Y)}
本発明の表面処理層(Z)は、りん酸(J)及びりん酸マグネシウム(K)をインヒビター成分として含有する。りん酸(J)や、りん酸マグネシウム(K)のカウンターアニオンとしてのりん酸として、例えばオルトりん酸、メタりん酸、ポリりん酸(特にピロりん酸、トリりん酸等のオルトりん酸多量体など)などが挙げられる。

0034

<配合>
次に、表面処理層(Z)の配合について詳述する。

0035

{造膜成分(X)}
(造膜成分(X)量)
表面処理層における造膜成分(X)量は、固形分重量割合で50%〜99.7%であることが好適である。

0036

(カチオン性ポリウレタン樹脂(D)量)
カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の造膜成分(X)中の割合において、固形分重量割合で40%から80%であり、40〜70%であることが好ましい。造膜成分(D)中のカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の割合がこの範囲にあると、カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の優れた特性を失うことなく、もう一方の必須成分である有機ケイ素化合物(C)により素材との密着性が改善され、絡合効果による皮膜密度向上効果により耐食性が向上する。

0037

(C/D比率
有機ケイ素化合物(C)とカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分重量比C/Dは、0.25から1.5であり、0.4〜1.5であることが好適である。前記固形分重量比C/Dがこの範囲にあると、有機ケイ素化合物(C)による密着性付与や皮膜の緻密さが増すことによる耐食性付与、適切なカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の配合により、本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の特性が発現し、電着塗装性と溶接性に優れる皮膜を得ることができる。

0038

{インヒビター成分(Y)}
インヒビター(Y)量)
本発明の表面処理層(Z)に含有されるりん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)との含有割合において、前記りん酸(J)由来及び前記りん酸マグネシウム(K)由来の合計りんの固形分重量が前記表面処理層(Z)全体の0.1〜12%であることが好ましい。また、0.11〜9.6%がより好適であり、0.7〜6.4%が最も好適である。前記含有割合がこの範囲であると、耐食性が向上する。0.1%未満であると添加効果が発現せず、12.0%より多いと耐水性が低下して耐食性が低下する傾向にある。

0039

(J/K比率)
りん酸(J)とりん酸マグネシウム(K)との固形分重量比J/Kは、0.2〜1.5が好適である。前記固形分重量比J/Kがこの範囲にあると、りん酸による耐水性低下やりん酸マグネシウムによる処理液の安定性低下を抑制することができるため、これらによる耐食性付与効果が十分に得られる。

0040

{機能性粒子(E)}
表面処理層(Z)には、平均粒子径が0.05μmから10μmである体質顔料、防錆顔料および導電性顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の機能性粒子(E)が含有されることが好ましい。ここで、顔料の平均粒子径は、レーザー回析散乱粒子径分布測定装置(型名:LA−920、株式会社堀場製作所製)で測定した結果であり、測定数5個の粒子径平均値を平均粒子径とした。かかる体質顔料としては、例えば、水分散性シリカフュームドシリカ炭酸カルシウムなどが挙げられる。このような体質顔料を含有することで、皮膜強度が上昇し、加工性が改善するが、皮膜の抵抗が上昇し、溶接性が低下する傾向がある。かかる防錆顔料としては、例えば、(1)りん酸ジルコニウム、りん酸亜鉛、りん酸鉄、りん酸アルミニウムなどのりん酸系防錆顔料、(2)モリブデン酸カルシウムモリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系防錆顔料、(3)酸化バナジウムなどのバナジウム系防錆顔料などが挙げられる。このような防錆顔料を含有することで、塗装後のキズ部耐食性が向上するが、皮膜の抵抗が上昇し、溶接性が低下する傾向がある。一方、導電性顔料としては、例えば、カーボンブラック微粒子などが挙げられる。このような導電性顔料を添加することで皮膜の抵抗が下がり、溶接性は向上するが、耐食性が低下する可能性がある。

0041

また、前記機能性粒子(E)が、りん酸金属塩微粒子、カーボンブラック微粒子、シリカおよびこれらの微粒子のいずれか一つを核にして、当該微粒子表面に機能性表面処理が施された微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。りん酸金属塩微粒子は防錆顔料として、カーボンブラック微粒子は導電性顔料として、シリカは体質顔料として、もっとも効果的に前記効果を発現する。また各々の粒子形状最適化がなされたものは、各々が持つ弊害の抑制を目的としたもので、この形状最適化がなされているものがより好ましい。かかる形状最適化としては、例えば、鎖状化処理などが挙げられる。ここで、鎖状とは、球状粒子の導電性顔料と棒状粒子の導電性顔料とが連結された状態を意味し、鎖状化処理とは、鎖状にする処理を意味する。

0042

<付着量>
(皮膜量)
クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に形成された表面処理層(Z)は、0.5〜5.0g/m2の皮膜量を有することが好ましい。前記表面処理層(Z)の皮膜重量がこの範囲であると、耐食性と溶接性、電着塗装性の全てを満足することができるが、1.0〜3.0g/m2であることがこれらの性能が最も良くなるためより好ましい。

0043

(機能性粒子(E)の付着量)
前記機能性粒子(E)は、添加による弊害を有するため前記機能性粒子(E)の付着重量は、30mg/m2から2000mg/m2であることが好ましく、100mg/m2から500mg/m2であることがより好ましい。前記機能性顔料(E)の付着重量がこの範囲にあると、それぞれの有する効果を発現し、前記弊害が許容できる程度になる。

0044

≪クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法≫
本発明のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面に、表面処理層に含まれる成分を含有する水系表面処理剤を塗布し、50〜250℃の到達温度で乾燥させる工程にて製造することができる。ここで、本発明にいう合金化溶融亜鉛めっき鋼板とは、溶融亜鉛浴鉄板どぶ漬けし、エアワイパー等で目付け調整をした後に炉でその鉄板を加熱することでめっき層中において鉄と亜鉛とを合金化し、めっき層自体の耐食性を向上させた鋼板をいう。塗布方法は、特に限定されず、一般に公知の塗装方法、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、エアースプレーエアーレススプレー、浸漬などを利用する方法が可能である。50〜250℃の到達温度で乾燥を行うことにより形成することができる。乾燥のための到達温度が50℃未満であると、下地処理剤溶媒が完全に揮発しないため好ましくない。250℃を超えると、下地処理剤にて形成された皮膜の有機鎖の一部が分解するため好ましくない。到達温度は、70℃〜150℃であることがより好ましく、100℃〜140℃であることが最も好ましい。

0045

本発明に用いる表面処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、塗工性を向上させるためのレベリング剤水溶性溶剤、金属安定化剤エッチング抑制剤などを使用することが可能である。レベリング剤としては、ノニオンまたはカチオン界面活性剤として、ポリエチレンオキサイドもしくはポリプロピレンオキサイド付加物アセチレングリコール化合物などが挙げられる。水溶性溶剤としては、エタノールイソプロピルアルコールt−ブチルアルコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類エチレングリコールモノブチルエーテルエチレングリコールモノエチルエーテルなどのセロソルブ類、酢酸エチル酢酸ブチルなどのエステル類アセトンメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。金属安定化剤としては、EDTA、DTPAなどのキレート化合物が挙げられる。エッチング抑制剤としては、エチレンジアミントリエチレンテトラミングアニジンおよびピリミジンなどのアミン化合物類が挙げられる。特に一分子内に2個以上のアミノ基を有するものが金属安定化剤としても効果があり、より好ましい。尚、本発明に用いる亜鉛めっき系鋼板には、加工性、防錆能力に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いることが好ましい。

0046

≪クロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の用途≫
本発明の前記表面処理層を有するクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、カチオン電着塗装溶接の用途に有用である。

0047

次に、実施例により本発明を更に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0048

実験には合金化溶融亜鉛めっき鋼板(目付け量45g/m2)を使用した。めっきを施した金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。合金化溶融亜鉛めっき鋼板はシリケートアルカリ脱脂剤のファインクリーナー4336(日本パーカライジング(株)製)を用いて、濃度20g/L、温度60℃の条件で2分間スプレー処理し、純水で30秒間水洗したのちに乾燥したものを使用した。

0049

表1に使用した有機ケイ素化合物(C)を示す。なお、有機ケイ素化合物(C)は、酢酸にてpH4に調整したイオン交換水に、表1に示すシランカップリング剤を、記載の組み合わせ及び配合比率で順次添加し、所定の温度(製造時の開始温度最高温度併記する)に制御しながら撹拌し、固形分が20%の有機ケイ素化合物水溶液を得た。得られた有機ケイ素化合物の平均の分子量、及びFT−IR反射法による環状シロキサン結合を示す1090〜1100cm−1の吸光度(c1)と鎖状シロキサン結合を示す1030〜1040cm−1の吸光度(c2)の比〔c1/c2〕を表1に示す。なお、〔c1/c2〕はシランカップリング剤を反応させる時の反応温度により制御した。製造時最高温度を低くすることで、c1/c2、すなわち環状シロキサン結合の存在割合は高くなる。製造時最高温度は製造開始時温度により制御できる。

0050

0051

表2に使用した市販のカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の詳細を示す。カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の損失弾性率(E“)および損失正接tanδは、(フィルム化条件)動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)を用い、周波数10Hz、昇温速度20℃/分を用いて算出した。表3に使用したりん酸化合物(J)を、表4に使用した機能性顔料(E)を示す。ここで、図4は、D3(1分散ピーク)とD11(2分散ピーク)の損失正接tanδ/温度のチャートである。

0052

0053

0054

0055

表5および6に本発明のクロムフリー合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面処理層(Z)の組成と、比較として作成した本発明の範囲には含まれない比較用表面処理層の組成を示す。尚、表4中のE1及びE7は、WO2010/07072に準じた表面処理である。また、表4中のE6は、特表2009−503182に準じた表面処理である。

0056

0057

表7に用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板と表面処理層(Z)もしくは比較用表面処理層の組合せと、皮膜重量と塗布後の焼付け時到達板温度を示す。なお、G40からG48の顔料の付着量は300mg/m2であり、G51及びG54が100mg/m2、G52及びG55が300mg/m2、G53及びG56が1000mg/m2である。

0058

0059

評価試験
<密着性>
1mm碁盤目にカットした部分をエリクセン試験機にて7mm押し出した後にテープ剥離し、密着性の評価を残個数割合(残個数カット数:100個)にて行った。
評価基準
◎=100%
○=20%未満95%以上
△=90%以上、95%未満
×=90%未満

0060

<加工性>
試験片を30mm×300mmのサイズに切断し、ドロービード試験ビード先端1mmR、荷重500kgf、ビード高さ4mm、ダイス肩1mmR、温度30℃)を行い、摺動部のキズの状態を観察し、下記の基準で評価した。
◎=キズがまったく無い
○=一部キズがある
△=全面にキズがある
×=破断する

0061

<溶接性>
先端径5mm、R40のCF型Cr-Cu電極を用い、加圧力1.96kN、溶接電流8kA、通電時間12サイクル/50Hzにてスポット溶接連続打点性試験を行い、ナゲット径が3√t(tは板厚)を切る直前打点数を求めた。以下の評価点を用いてスポット溶接性優劣を評価した。
評価
◎:打点数が3000点以上
○:200点以上、3000点未満
△:200点未満
×:ナゲットが生成せず1点も溶接できない

0062

<電着塗装性>
供試材を70mm×150mmに切り出し、アルカリ脱脂(日本パーカライジング製、FC−E2001にて40℃、3分浸漬)、化成処理(日本パーカライジング製、PB-SX35にて40℃、3分浸漬)を行い、それを4枚用意し、その内3枚に直径8mmの円形の穴を形成した。穴の位置は金属板の短辺方向では中心で、長辺方向では一方の短辺から垂直方向に50mm(穴の中心と一方の短辺との最短距離が50mm)、他方の短辺から垂直方向に100mmである位置とした。そして、これらの4枚の金属板と3枚の塩化ビニル板とを用いて、図1に示す4枚ボックスを形成した。図1において4枚の金属板12、13、14、15は平行であり、これらの間のクリアランスは全て20mmであり、金属板12、13、14は穴10を有するものであり、金属板15は穴を有さないものである。ここで、金属板12の金属板13と逆の面をA面とした。また、金属板15の金属板14の側の面をG面とした。

0063

そして、図1に示すように4枚の金属板の全ての長辺に接するように2枚の塩化ビニル板(21、22)の各々を粘着テープ接着し、さらに一方の短辺の全てに接するように1枚の塩化ビニル板(23)を粘着テープで接着した。このようにして4枚ボックス1を形成した。この4枚ボックスは、本発明における「袋構造部を有する金属材料」に相当する。

0064

次に、4枚ボックス1と対極2とを、図2および図3に示すように配置した。すなわち、対極2に近い側に穴10を形成した金属板12がくるように4枚ボックスを配置した。そして、4枚の金属板全てを短絡するように配線した。図2は金属板の短辺方向の中心おける断面を示しており、図3は斜視図である。なお、図3では塩化ビニル板(21、22、23)を示していない。また、対極2としては、片面(4枚ボックス側と逆の面)を絶縁テープシールした70×150×0.5mmのステンレス板(SUS304)を用いた。そして、塗料関西ペイント社製GT-10HT」)の液面を金属板および対極が90mm浸漬される位置に制御した。塗料の温度は28℃に保持し、塗料はスターラーにて撹拌した。

0065

このような状態で、対極を陽極とした陰極電解法により、4枚ボックスの金属板の表面に塗膜を電解析出させた。具体的な電解条件は、整流器を用い、所定の電圧にて180秒間陰極電解した。電圧は4枚ボックスのA面上での塗膜の膜厚が20μmになるように調整した。そして、電解後それぞれの金属板を水洗した後、170℃で20分間焼き付け、塗膜を形成させた。そして、A面およびG面に形成された塗膜の膜厚を、電磁式膜厚計を用いて測定し、G/Aを求め、下記の基準で評価した。
◎=G/Aが0.7以上
○=G/Aが0.5〜0.7未満
△=G/Aが0.3〜0.5未満
×=G/Aが0.3未満

0066

電着後耐食性>
供試材を70mm×150mmに切り出し、アルカリ脱脂(日本パーカライジング製、FC−E2001にて40℃、3分浸漬)、化成処理(日本パーカライジング製、PB−SX35にて40℃、3分浸漬)、カチオン電着塗装(関西ペイント社製「GT-10HT、膜厚20μm、170℃20分焼付)を行った。これを、塩温水浸漬試験を1000hr行ったのちに、塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間の合計8時間を1サイクルとしたサイクル腐食試験を実施した。塩水噴霧の条件はJIS-Z2371に準拠した。乾燥条件は、温度60℃、湿度30%RH以下とし、湿潤条件は、温度50℃、湿度95%RH以上とした。赤錆発生面積を調べ、下記の基準で評価した。
◎=赤錆面積10%未満
○=赤錆面積10〜30%未満
△=赤錆面積30〜50%未満
×=赤錆面積50%以上

0067

<安定性>
各実施例および比較例の処理剤を40℃オーブン中で所定時間保管した後、これを用いて耐食性および電着塗装性の評価を行い、作液後常温で7日以内の処理剤を使用した場合と比較して、性能の低下が見られない最大の保管時間を下記の評価基準で評価した。
◎=保管時間2ヶ月で性能の低下が見られない。
○=保管時間2ヶ月では性能の低下が見られたが、保管時間1ヶ月では性能の低下が見られない。
△=保管時間1ヶ月では性能の低下が見られたが、保管時間14日では性能の低下が見られない。
×=保管時間14日で性能(評点)の低下が見られた。

0068

表8〜表15に、表7に示した実施例および比較例の前記評価試験結果を示す。

0069

0070

0071

0072

0073

0074

0075

0076

0077

表8より、本発明の必須成分である有機ケイ素化合物(C)、カチオン性ポリウレタン樹脂(D)、りん酸化合物(J)のいずれかを含まないもの(それぞれ比較例1、比較例2、比較例3)、有機ケイ素化合物(C)が必須の2種類のシランカップリング剤を含まないもの(比較例4)、有機ケイ素化合物(C)に環状シロキサン結合を含まないもの(比較例5)は、耐食性、密着性、加工性、電着塗装性の少なくとも一つが、すべてを本発明の範囲内である実施例1と比較して劣る結果であった。

0078

表9より、カチオン性ポリウレタン樹脂の物性に関して、損失弾性率のピーク温度(T1)と損失正接tanδ分散ピーク温度(T2)の両方が好適範囲である実施例1から9は、T1が−50を下回る比較例6と比較して耐食性と加工性が優れる。同様に、T2が二つ現れる比較例7と比較すると溶接性が、T1が−50を下回り、T2が二つ現れる比較例8と比較すると加工性、溶接性の2つが、T2が−15を上回る比較例9と比較すると電着塗装性が優れ、カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の損失弾性率のピーク温度(T1)と損失正接tanδ分散ピーク温度(T2)が本発明の範囲にあることで優れた性能を有することがわかる。これは前述のように、T1が本発明の好適範囲にあると、樹脂のフロー性が向上し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の凸部と凹部での表面処理層(Z)の膜厚が異なる現象が生じ、電着塗装時の水素発生起点となるため電着塗装性、とくに付き回り性が改善するためと推定さ、同様に損失正接tanδの分散ピーク温度が(T2)が本発明の好適範囲で一つであると、成膜した皮膜において海島構造が発現しなくなり、部分的な高抵抗部位がなくなることで皮膜全体の抵抗がさがるため溶接性が著しく向上するためと推定される。

0079

表10よりカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の配合割合において、本発明の好適範囲内において優れた性能を有することがわかる。カチオン性ポリウレタン樹脂(D)の配合割合が少なくなると、電着塗装性がやや低下するものの耐食性が改善する。逆にカチオン性ポリウレタン樹脂(D)の配合割合が多くなると耐食性がやや低下する。この配合割合が本発明の範囲外である比較例10は密着性と電着塗装性が、比較例11は加工性と電着塗装性が著しく不芳である。

0080

表11より、りん酸(J)およびりん酸マグネシウム(K)においては、その割合J/Kは最適な範囲を持ち、もっとも好ましいのは0.6/2.6から1.9/1.3であることが分かる。この範囲であると、特に耐食性と塗装密着性が優れ、処理液液安定性も良好である。また、表12よりりん酸(J)およびりん酸マグネシウム(K)の総量に関しては、1.6〜6.4が最良な範囲であり、これよりも少なくなると耐食性、密着性、加工性が、この範囲よりも多くなると密着性、加工性、処理液安定性が低下する。

0081

表13より本発明の有機ケイ素化合物(C)において、環状シロキサン結合の割合(c1/c2)が好適な範囲である実施例1や上限の実施例28は、下限である実施例24や比較例05と比較して特に耐食性に優れ、加工性と密着性も良好である。また、シランカップリング剤(A)とシランカップリング剤(B)の配合比率A/Bが本発明の好適範囲内である実施例33〜35は、最適な範囲を下回る実施例31〜32と比較して電着塗装性と安定性が優れ、最適な範囲を上回る実施例36〜37と比較して耐食性と電着塗装性が優れる。また、分子量が最適範囲の実施例1は下限である実施例38と比較して耐食性が優れ、上限である実施例39と比較して密着性と安定性に優れる。

0082

表14より本発明の表面処理層(Z)に対して添加する機能性顔料において、体質顔料であるコロイダルシリカ気相シリカを添加した実施例40、41は、未添加の実施例1と比較して、溶接性と安定性がやや低下するものの加工性が改善する。また、導電性顔料であるカーボンブラックを添加した実施例44、45において、両方とも密着性はやや低下するが、カーボンブラックの形状最適化を行っている実施例45は、表面処理を行っていない実施例44で見られる耐食性の低下や処理剤の安定性低下が見られず、良好な性能を有する。本発明の最適な粒子径よりも小さいコロイダルシリカを用いると、実施例40で確認された加工性の改善効果が見られない。また本発明の最適な粒子径よりも大きいりん酸亜鉛を用いた実施例47はすべての性能が低下する。

0083

表15より、本発明の表面処理層(Z)を有すると、各皮膜量(実施例49〜56)において、本発明の好適範囲であると、全ての評価項目において十分な性能を有することがわかる。

実施例

0084

以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。

0085

1 4枚ボックス
2対極
10 穴
12、13、14、15金属板
21、22、23塩化ビニル板

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