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技術 モータ用グリース封入軸受

出願人 NTN株式会社
発明者 近藤涼太川村隆之伊藤元博
出願日 2015年1月16日 (5年10ヶ月経過) 出願番号 2015-006738
公開日 2016年7月25日 (4年3ヶ月経過) 公開番号 2016-133144
状態 特許登録済
技術分野 潤滑剤 ころがり軸受 電動機、発電機の外枠
主要キーワード 鉄系金属部材 内部辺 ブロワーモータ モータ用マグネット 相互溶解度 換気扇用 回転軸先端 油膜厚
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年7月25日)のものです。
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図面 (3)

課題

水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止しつつ、高温耐久性静音性に優れ、回転トルクも低くなるモータ用グリース封入軸受を提供する。

解決手段

モータ用グリース封入軸受1は、モータ回転子13の回転軸11を支持するものであり、転動体の周囲に、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含むグリース組成物封入され、上記基油が、エステル油を必須成分として基油全体に対して50質量%をこえて含み、かつ、40℃における動粘度が30〜70mm2/sであり、上記増ちょう剤が、脂肪族ジウレア化合物であり、上記アルカノールアミンが、基油および増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部含まれる。

概要

背景

自動車などに用いられる電装機器モータ電気自動車ハイブリッド自動車駆動用モータサーボモータステッピングモータなどの産業機械用モータ、その他の家電用モータなどの各種モータでは、小型化などが進められている。これに合わせて、モータの回転子を支持するモータ用軸受の小型化も進められている。そのため、モータ用軸受を構成する部材に負荷される接触面圧が高くなる傾向にある。また、モータの回転の高速化も進められており、モータの起動の際および停止の際において、モータ用軸受の回転の加減速が大きくなる傾向にある。さらに、高温寿命延長や、回転トルクの低減、静音性の向上なども含めた高性能化が求められている。

これらのモータ用軸受(転がり軸受)は、転動体周囲にグリース封入されて潤滑されている。しかし、上記の小型化や高性能化の要求に伴なう使用条件の過酷化により、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるおそれがある。この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、グリースの分解などによって発生する水素が原因の水素脆性と考えられている。例えばグリースが分解して水素が発生し、それが転がり軸受の鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が起きると考えられる。

水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、接触要素間が油膜分断される弾性流体潤滑と考えられる条件でも、交番せん断応力が最大になる転がり表層内部辺りに亀裂が発生、伝播して早期剥離に至る。また、水がグリースに混入する条件下、すべりを伴う条件下、通電が起きる条件下などで使用されると、水あるいはグリースが分解して水素が発生しやすくなり、それが鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする上記の早期剥離が起きやすくなると考えられる。

このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を抑制する方法として、例えば、グリースに不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)や、ビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、軸受転走面が鉄系金属軸受鋼で構成されることから、鉄との相互溶解度を考慮し、グリース組成物アルミニウムケイ素チタンタングステンモリブデンクロムコバルトなどの金属粉末を配合する方法も提案されている(特許文献3参照)。

また、従来、転がり軸受に用いるグリース組成物において、親水性有機インヒビターとして親水性基変性されたアルカノールアミン誘導体を配合したものが知られている(特許文献4参照)。このアルカノールアミン誘導体は、ドデカン酸セバシン酸などの二塩基酸ホウ酸などの酸と、ジエタノールアミンアミノテトラゾールジエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミンとの塩である。

その他、耐熱性機械的安定性耐水性防錆性耐荷重性難燃性などに優れた潤滑剤組成物として、鉱油合成油からなる基油に、第三リン酸カルシウムと、ジエタノールアミン類などのグリース構造安定化剤を配合したものが提案されている(特許文献5参照)。

概要

水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止しつつ、高温耐久性と静音性に優れ、回転トルクも低くなるモータ用グリース封入軸受を提供する。モータ用グリース封入軸受1は、モータの回転子13の回転軸11を支持するものであり、転動体の周囲に、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含むグリース組成物が封入され、上記基油が、エステル油を必須成分として基油全体に対して50質量%をこえて含み、かつ、40℃における動粘度が30〜70mm2/sであり、上記増ちょう剤が、脂肪族ジウレア化合物であり、上記アルカノールアミンが、基油および増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部含まれる。

目的

本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止しつつ、高温耐久性と静音性に優れ、回転トルクも低くなるモータ用グリース封入軸受の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

モータ回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、該軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けられるシール部材とを有し、前記転動体の周囲にグリース組成物封入してなり、前記グリース組成物が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、前記基油が、エステル油を必須成分として基油全体に対して50質量%をこえて含む油であり、かつ、該基油の40℃における動粘度が30〜70mm2/sであり、前記増ちょう剤が、脂肪族ジウレア化合物であり、前記アルカノールアミンが、前記基油および前記増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部含まれることを特徴とするモータ用グリース封入軸受。

請求項2

前記アルカノールアミンが、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであることを特徴とする請求項1記載のモータ用グリース封入軸受。

請求項3

前記アルカノールアミンが、ジエタノールアミンであることを特徴とする請求項2記載のモータ用グリース封入軸受。

請求項4

前記基油は、前記エステル油とポリα−オレフィン油との混合油であり、基油全体に対して前記エステル油を70質量%以上含むことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のモータ用グリース封入軸受。

請求項5

前記モータ用グリース封入軸受が深溝玉軸受であり、産業機械用電装機器用、または電気自動車駆動用のモータの回転子を支持するものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のモータ用グリース封入軸受。

技術分野

0001

本発明は、グリース潤滑されるモータ用グリース封入軸受に関し、特に産業機械用電装機器用、電気自動車駆動用モータなどに使用される転がり軸受に関する。

背景技術

0002

自動車などに用いられる電装機器用モータ、電気自動車ハイブリッド自動車駆動用モータサーボモータステッピングモータなどの産業機械用モータ、その他の家電用モータなどの各種モータでは、小型化などが進められている。これに合わせて、モータの回転子を支持するモータ用軸受の小型化も進められている。そのため、モータ用軸受を構成する部材に負荷される接触面圧が高くなる傾向にある。また、モータの回転の高速化も進められており、モータの起動の際および停止の際において、モータ用軸受の回転の加減速が大きくなる傾向にある。さらに、高温寿命延長や、回転トルクの低減、静音性の向上なども含めた高性能化が求められている。

0003

これらのモータ用軸受(転がり軸受)は、転動体周囲にグリース封入されて潤滑されている。しかし、上記の小型化や高性能化の要求に伴なう使用条件の過酷化により、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるおそれがある。この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、グリースの分解などによって発生する水素が原因の水素脆性と考えられている。例えばグリースが分解して水素が発生し、それが転がり軸受の鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が起きると考えられる。

0004

水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、接触要素間が油膜分断される弾性流体潤滑と考えられる条件でも、交番せん断応力が最大になる転がり表層内部辺りに亀裂が発生、伝播して早期剥離に至る。また、水がグリースに混入する条件下、すべりを伴う条件下、通電が起きる条件下などで使用されると、水あるいはグリースが分解して水素が発生しやすくなり、それが鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする上記の早期剥離が起きやすくなると考えられる。

0005

このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を抑制する方法として、例えば、グリースに不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)や、ビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、軸受転走面が鉄系金属軸受鋼で構成されることから、鉄との相互溶解度を考慮し、グリース組成物アルミニウムケイ素チタンタングステンモリブデンクロムコバルトなどの金属粉末を配合する方法も提案されている(特許文献3参照)。

0006

また、従来、転がり軸受に用いるグリース組成物において、親水性有機インヒビターとして親水性基変性されたアルカノールアミン誘導体を配合したものが知られている(特許文献4参照)。このアルカノールアミン誘導体は、ドデカン酸セバシン酸などの二塩基酸ホウ酸などの酸と、ジエタノールアミンアミノテトラゾールジエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミンとの塩である。

0007

その他、耐熱性機械的安定性耐水性防錆性耐荷重性難燃性などに優れた潤滑剤組成物として、鉱油合成油からなる基油に、第三リン酸カルシウムと、ジエタノールアミン類などのグリース構造安定化剤を配合したものが提案されている(特許文献5参照)。

先行技術

0008

特開平3−210394号公報
特開2005−42102号公報
特開2008−266424号公報
特開平11−279578号公報
特開2008−156624号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、近年のモータの小型化や高性能化の要求に伴なう使用条件の更なる過酷化により、従来の特許文献1や特許文献2のような、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では、上記剥離現象などを防ぐ対策として不十分になってきている。特に、モータでは回転時の静音性が求められるところ、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートのような固体微粉末を添加する方法では静音性に劣るおそれがある。

0010

小型化などに伴なう転動体と軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大は、該部分における油膜切れ(潤滑不良)を起こしやすくする。軸受摺動面における油膜厚さが薄くなるほど、上記剥離現象は起こりやすい。特に、上述の過酷化された環境下などでは、摺動面の潤滑が、境界潤滑条件となり油膜厚さはサブミクロンオーダー(0.1μm以下)となる。このような環境下では、例えば、特許文献3のように、鉄との相互溶解度が一定以上の金属粉末を用いる場合でも、その粒子径などによっては摺動面に十分に介入できず、効果が得られないおそれがある。

0011

特許文献4のように、従来の一般的な転がり軸受用グリース組成物において、アルカノールアミン塩が配合されているものはあるが、アルカノールアミン単体での上記剥離現象の防止能力については検討がなされていない。また、特許文献5に記載されるグリース組成物についても、上記剥離現象の防止能力については検討がなされておらず、必須成分の具体的な組み合わせによっては、上述の静音性の問題など、寧ろ悪影響を与える場合もある。単に上記剥離現象を防止するのみではなく、同時にモータに要求される高性能化の要求(高温寿命の延長、回転トルクの低減、静音性の向上)を満たすことは容易ではない。

0012

本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止しつつ、高温耐久性と静音性に優れ、回転トルクも低くなるモータ用グリース封入軸受の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0013

本発明のモータ用グリース封入軸受は、モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、該軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、上記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けられるシール部材とを有し、上記転動体の周囲にグリース組成物を封入してなり、上記グリース組成物が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、上記基油が、エステル油を必須成分として基油全体に対して50質量%をこえて含む油であり、かつ、該基油の40℃における動粘度が30〜70mm2/sであり、上記増ちょう剤が、脂肪族ジウレア化合物であり、上記アルカノールアミンが、上記基油および上記増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部含まれることを特徴とする。

0014

上記アルカノールアミンが、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであることを特徴とする。特に、ジエタノールアミンであることを特徴とする。

0015

上記基油は、上記エステル油とポリα−オレフィン油との混合油であり、基油全体に対して上記エステル油を70質量%以上含むことを特徴とする。

0016

上記モータ用グリース封入軸受が深溝玉軸受であり、産業機械用、電装機器用、または電気自動車駆動用のモータの回転子を支持するものであることを特徴とする。

発明の効果

0017

本発明のモータ用グリース封入軸受は、封入するグリース組成物について、基油として40℃における動粘度が30〜70mm2/sのエステル油等を、増ちょう剤として脂肪族ジウレア化合物を用いた所定のベースグリースに、添加剤としてアルカノールアミンを配合した構成とすることで、水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止でき、同時に、高温耐久性および静音性に優れ、回転トルクも低くなる。

0018

このため、本発明のモータ用グリース封入軸受は、産業での利用分野が極めて広く、各種の機器に使用できる。例えば、喚起扇用モータ、燃料電池用ブロアモータクリーナモータファンモータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業機械用モータ、自動車のスタータモータ電動パワーステアリングモータステアリング調整用チルトモータワイパーモータパワーウィンドウモータなどの電装機器用モータ、電気自動車駆動用モータ、などの回転子を支持する軸受として好適に利用できる。

図面の簡単な説明

0019

本発明のモータ用グリース封入軸受の一実施例を示す深溝玉軸受の断面図である。
本発明のモータ用グリース封入軸受を用いたモータの断面図である。

0020

モータ用グリース封入軸受において、水素脆性による転走面での剥離などを防止すべく、潤滑に供するグリースについて鋭意検討を行なった結果、所定の基油と増ちょう剤を用いたグリースにアルカノールアミンを添加剤として配合することにより、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止でき、かつ、高温耐久性および静音性に優れ、回転トルクも低くなることを見出した。

0021

転がり軸受において、転動体と軌道輪、転動体と保持器などの鉄系金属部材同士が、潤滑油またはグリースに接触しながら転がり接触・摺動する場合、鉄系金属部材同士の接触面(主に転走面)において、油膜が殆ど無くなり、部分的に金属同士の表面が直接触れ合っているような状態である境界潤滑条件となる場合がある。近年のモータ用グリース封入軸受では、上述のとおり、転動体と軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大により、油膜切れを起こしやすくなっている。このように、転走面における過酷条件下(境界潤滑条件)で油膜が薄くなる場合であっても、摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において、アルカノールアミンが吸着などすることで、鉄系金属新生面とグリースとの直接接触を防止できる。これにより、静音性に悪影響を与えることなく、グリースの分解による水素の発生を抑制して、水素脆性による特異な剥離を防止できると考えられる。

0022

本発明のモータ用グリース封入軸受に用いるグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、添加剤であるアルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩および無機酸のアルカリ土類金属塩を含まない。ここで、無機酸としては、リン酸オルトリン酸)、塩酸硝酸硫酸、ホウ酸などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、リチウムナトリウムカリウムカルシウムストロンチウムバリウムなどが挙げられる。具体的には、第三リン酸カルシウム(オルトリン酸のカルシウム塩)などが挙げられる。

0023

上記グリース組成物に用いるアルカノールアミンとしては、モノイソプロパノールアミンモノエタノールアミン、およびモノn−プロパノールアミンなどの一級アルカノールアミン、N−アルキルモノエタノールアミン、およびN−アルキルモノプロパノールアミンなどの二級アルカノールアミントリエタノールアミンシクロヘキシルジエタノールアミン、トリ(n−プロパノール)アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジアルキルエタノールアミン、およびN−アルキル(又はアルケニル)ジエタノールアミンなどの三級アルカノールアミンが挙げられる。また、アルカノール基の数により、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンに分類されるが、本発明では複数のヒドロキシル基(アルカノール基)とアミノ基のキレート作用により、鉄イオンを挟み込み、鉄系金属新生面の露出を防止しやすいことから、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンを用いることが好ましい。

0024

上記の中でも、基油との相溶性と剥離現象の防止能力に優れ、入手性にも優れることから、下記式(1)のN−アルキル(又はアルケニル)ジエタノールアミンを用いることが好ましい。

0025

0026

式中のR1は、炭素原子数1〜20の直鎖もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を示す。また、炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。具体的な化合物としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−ペンチルジエタノールアミン、N−ヘキシルジエタノールアミン、N−ヘプチルジエタノールアミン、N−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミンなどが挙げられる。

0027

アルカノールアミンは、1種単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルカノールアミンは、室温および使用温度で液状またはペースト状のものが好ましい。また、溶剤などに分散された状態であってもよい。このようなアルカノールアミンを用いることで、軸受の静音性に悪影響を与えない。また、転走面の油膜が薄くなる場合でも該部分に入り込みやすい。アルカノールアミンの動粘度としては、40℃において10〜100mm2/sが好ましく、40℃において40〜70mm2/sがより好ましい。

0028

アルカノールアミン(三級ジエタノールアミン)の市販品としては、例えば、ADEKA社製のアデカキクルーブFM−812、アデカキクルーブFM−832などが挙げられる。

0029

上記グリース組成物におけるアルカノールアミンの配合割合は、基油と増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部とする。この範囲内であると、水素脆性による特異な剥離を防止できる。10重量部をこえると、鉄との反応性が高くなりすぎて腐食摩耗が生じる等のおそれがある。好ましくは1〜10重量部であり、より好ましくは2〜8重量部である。

0030

上記グリース組成物の基油は、40℃における動粘度が30〜70mm2/sであり、より好ましくは30〜60mm2/sである。40℃における動粘度が30mm2/s 未満の場合は粘度が低すぎて油膜切れを起こしやすくなり、また油の蒸発も多くなる。一方、40℃における動粘度が70mm2/s より高いと、軸受の回転トルクが上昇するため、モータ駆動の際における動力損失が大きくなり、発熱も大きくなる。なお、基油として混合油を用いる場合は、該混合油の動粘度が上記範囲内であることが好ましい。

0031

また、上記グリース組成物の基油は、合成油であるエステル油を必須成分として基油全体に対して50質量%をこえて含む油である。エステル油を主成分として含むことで優れた高温耐久性を維持できる。基油全体に対するエステル油の割合は、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。なお、エステル油のみからなる基油(エステル油100質量%)であってもよい。

0032

エステル油は、分子内にエステル基を有し室温で液状を示す化合物であり、例えば、ポリオールエステル油、リン酸エステル油ポリマーエステル油芳香族エステル油炭酸エステル油ジエステル油などが挙げられる。これらの中でも、芳香族エステル油またはポリオールエステル油が好ましい。

0033

芳香族エステル油は、芳香族多塩基酸またはその誘導体と、高級アルコールとの反応で得られる化合物が好ましい。芳香族多塩基酸としては、トリメリット酸ビフェニルトリカルボン酸ナフタレントリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸ピロメリット酸ビフェニルテトラカルボン酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸、またはこれらの酸無水物などの誘導体が挙げられる。高級アルコールとしては、オクチルアルコールデシルアルコールなどの炭素数4以上の脂肪族1価アルコールが好ましい。芳香族エステル油の例としては、トリオクチルトリメリテートトリデシルトリメリテートテトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。

0034

ポリオールエステル油は、ポリオールと一塩基酸との反応で得られる分子内にエステル基を複数個有する化合物が好ましい。ポリオールに反応させる一塩基酸は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。なお、オリゴエステルの場合には二塩基酸を用いてもよい。ポリオールとしては、トリメチロールプロパンペンタエリスリトールジペンタエリスリトールネオペンチルグリコール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。一塩基酸としては、炭素数4〜18の1価の脂肪酸が挙げられる。例えば、吉草酸カプロン酸カプリル酸エナント酸ペラルゴン酸カプリン酸ウンデカン酸ラウリン酸ミリスチン酸パルミチン酸牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸パルミトレイン酸ペトロセリン酸オレイン酸エライジン酸アスクレピン酸、バクセン酸ソルビン酸リノール酸リノレン酸サビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。ポリオールエステル油の例としては、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなどが挙げられる。

0035

その他、ジエステル油の例としては、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペートジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ3−エチルヘキシルセバケートなどが挙げられる。

0036

基油には、他の合成油や鉱油を含んでもよい。特に、ポリ−α−オレフィン油(以下、「PAO」ともいう)を含めた混合油とすることが好ましい。より具体的には、エステル油とPAOとの混合油とし、該混合油全体に対してエステル油を70質量%以上(PAOは30質量%以下)含む構成とすることが好ましい。PAO(合成炭化水素油)は、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。

0037

上記グリース組成物の増ちょう剤は、ウレア化合物のうち、脂肪族ジウレア化合物とする。ウレア化合物は、ポリイソシアネート成分モノアミン成分とを反応して得られる。脂肪族ジウレア化合物は、ポリイソシアネート成分としてジイソシアネートを用い、モノアミン成分として脂肪族モノアミンのみを用いて得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネートトリレンジイソシアネートジフェニルジイソシアネートジフェニルメタンジイソシアネートオクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミンオクチルアミンドデシルアミンヘキサデシルアミンオクタデシルアミンステアリルアミンオレイルアミンなどが挙げられる。脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤とすることで、静音性および低トルク性満足しやすい。

0038

基油に増ちょう剤を配合してベースグリースが得られる。本発明におけるベースグリースは、基油中で上記ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製することが好ましい。ベースグリース中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40質量%、好ましくは3〜25質量%である。増ちょう剤の含有量が1質量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40質量%をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。

0039

上記グリース組成物の作製方法としては、まず、基油にアルカノールアミンを配合し、この基油を用いて増ちょう剤を作製する方法、アルカノールアミンを除いてグリース組成物を調整した後にこれに分散液を加える方法のいずれであってもよい。アルカノールアミンがアミノ基を含むので、基油中で上記ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させてベースグリースを作製した後に、アルカノールアミンを添加することが好ましい方法である。

0040

上記グリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220)は、200〜350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。

0041

本発明のモータ用グリース封入軸受に用いるグリース組成物中において、アルカノールアミンは、酸との塩のように反応生成物の形ではなく、そのままの状態で存在している。よって、他の添加剤として、脂肪酸などのアルカノールアミンと塩を形成するような添加剤は含まないようにする。上記グリース組成物には、このような本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物などの酸化防止剤ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤ポリメタクリレートポリスチレンなどの粘度指数向上剤二硫化モリブデングラファイトなどの固体潤滑剤金属スルホネート多価アルコールエステルなどの防錆剤エステルアルコールなどの油性剤、他の摩耗防止剤などが挙げられる。これらを単独で、または2種類以上組み合せて添加できる。また、本発明では、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデンなどの有機モリブデン化合物を配合しない構成とする場合でも、水素脆性による転走面での剥離を防止できる。

0042

また、上記グリース組成物には、基油に溶解しない固体粉末を含有しないことが好ましい。なお、基油に溶解しないとは、例えば、溶解後の全重量に対して、0.5質量%の固体粉末を基油に加えて撹拌し、これを70℃×24時間保持後に目視で観察した結果、基油中に不溶解分析出している固体粉末をいう。不溶解分が析出していると基油が透明にならず、固体粉末がコロイド状態、あるいは懸濁状態になり、目視で判断できる。このような固体粉末としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、コバルト、金、銀、銅、イットリウムジルコニウムイリジウムパラジウム白金ロジウムルテニウムハフニウムタンタル、タングステン、レニウムオスミウムなどの金属粉末が挙げられる。本発明は、これらの金属粉末を配合しなくとも、アルカノールアミン(液状またはペースト状)を配合することで水素脆性による転走面での剥離を防止できる。

0043

モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受の一例を図1に示す。図1は、グリース組成物が封入されている深溝玉軸受の断面図である。深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5が設けられている。また、外輪3などに固定されるシール部材6が、内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。このグリース組成物7が、上述した、所定の基油と増ちょう剤を用いたグリースにアルカノールアミンを添加剤として配合したグリース組成物である。

0044

本発明のモータ用グリース封入軸受を適用したモータの一例を図2に示す。図2はモータの構造の断面図である。モータは、ジャケット9の内周壁に配置されたモータ用マグネットからなる固定子10と、回転軸11に固着された巻線12を巻回した回転子13と、回転軸11に固定された整流子14と、ジャケット9に支持されたエンドフレーム17に配置されたブラシホルダ15と、このブラシホルダ15内に収容されたブラシ16と、を備えている。上記回転軸11は、深溝玉軸受1と、該軸受1のための支持構造とにより、ジャケット9に回転自在に支持されている。該軸受1が本発明のモータ用グリース封入軸受である。

0045

本発明のモータ用グリース封入軸受として、図1に示す深溝玉軸受のほか、アンギュラ玉軸受円筒ころ軸受円すいころ軸受自動調心ころ軸受針状ころ軸受スラスト円筒ころ軸受スラスト円すいころ軸受スラスト針状ころ軸受スラスト自動調心ころ軸受なども使用できる。これらの中で高速回転での回転精度、耐荷重性、低コストを備える、深溝玉軸受を用いることが好ましい。

0046

本発明のモータ用グリース封入軸受を適用できるモータとしては、換気扇用モータ、燃料電池用ブロアモータ、クリーナモータ、ファンモータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業機械用モータ、自動車のスタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調整用チルトモータ、ブロワーモータ、ワイパーモータ、パワーウィンドウモータなどの電装機器用モータ、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータなどが挙げられる。また、水素脆性による軸受転走面での剥離を起こしやすい環境で使用される他のモータにも適用できる。

0047

本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。

0048

実施例1〜5、比較例1〜8
まず、表1に示す配合で基油を単独で、または、混合して調整した。次に、この基油の半量に、表1に示す割合で、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製ミリオネートMT、以下「MDI」と記す)を溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させベースグリースを得た。これに添加剤を表1に示す配合割合で加えてさらに十分撹拌した。その後、三本ロール均質化し、供試グリースを得た。添加したアルカノールアミンは、いずれもジエタノールアミン(ADEKA社製アデカキクルーブFM−812)である。

0049

得られたグリースについて急加減速試験音響測定試験高温高速試験、回転トルク試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。

0050

<急加減速試験>
モータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受(内輪・外輪・鋼球は軸受鋼SUJ2)に上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、室温雰囲気下、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm〜18000rpmで運転条件を設定し、試験軸受(6203)内に0.5Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器振動設定値以上になって停止する時間(剥離発生寿命(h))を計測した。結果を表1に併記する。

0051

<高温高速試験>
深溝玉軸受(6204)に上記グリースを1.8g(軸受全空間容積の約38体積%)封入し、軸受外輪外径部温度150℃、ラジアル荷重67N、アキシャル荷重67Nの下で10000rpmの回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間を高温寿命(h)として測定した。結果を表1に併記する。

0052

<音響試験>
上記グリースを封入した転がり軸受(軸受寸法内径8mm、外径22mm、幅7mm)を用意して、この軸受に2.0Nのアキシャル荷重を加え、1800rpmで3分間運転し、振動値(H−BAND)を測定した。結果を表1に併記する。

0053

<回転トルク試験>
深溝玉軸受(6204)に上記グリースを1.8g封入し、回転数8000rpm、室温雰囲気下、アキシャル荷重39.2Nで回転させた。回転開始してから60分後、軸受で発生する回転トルクの平均値(mNm)を算出した。結果を表1に併記する。

0054

実施例

0055

表1に示すように、所定のベースグリースにアルカノールアミン(ジエタノールアミン)を配合した各実施例は、剥離発生寿命時間を延長しつつ、高温耐久性および静音性に優れ、回転トルクも低く維持できた。

0056

本発明のモータ用グリース封入軸受は、水素脆性による軸受転走面での剥離を効果的に防止しつつ、高温耐久性と静音性に優れ、回転トルクも低くなるので、産業機械用モータ、電装機器用モータ、電気自動車駆動用モータの回転子を支持する軸受として好適に利用できる。

0057

1深溝玉軸受(モータ用グリース封入軸受)
2内輪
3外輪
4転動体
5保持器
6シール部材
7グリース組成物
8a、8b 開口部
9ジャケット
10固定子
11回転軸
12巻線
13回転子
14整流子
15ブラシホルダ
16ブラシ
17 エンドフレーム

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