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技術 高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 佐々木俊輔勝村龍郎牛田裕己加藤康
出願日 2015年1月16日 (5年11ヶ月経過) 出願番号 2015-006805
公開日 2016年7月25日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2016-132789
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 焼入れ焼戻し熱処理 最終熱間 エネルギー価格 中空素材 装置負荷 肉厚中心 加熱炉温度 レデューサ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年7月25日)のものです。
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図面 (4)

課題

低温靭性が優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管を製造する方法の提供。

解決手段

フェライト相と残部をオーステナイト相もしくはマルテンサイト相もしくはその両方を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、加熱及び熱間加工中の鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、更に前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1200℃以下の温度域で施す高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

概要

背景

近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田深層油田)や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田や、さらには厳しい気象環境の極における油田やガス田等において、エネルギー資源開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される鋼材には、高強度で、かつ優れた耐食性耐サワー性)や、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた材質を有することが要求されている。また、鋼管肉厚薄肉から厚肉まで様々なものが要求されている。

従来から、炭酸ガスCO2、塩素イオンCl−等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する鋼材として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が多く使用されている。しかし、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼はサワー環境において十分な耐食性を持たないため、最近ではC量を低減し、Cr量Ni量を増加させた2相ステンレス鋼の使用も拡大している。

例えば、特許文献1には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、mass%で、C:0.005〜0.050%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管を、850℃以上の温度に再加熱し空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことにより、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さが654MPa以上の油井用高強度ステンレス鋼管を得ることができるとしている。これにより、高強度で、CO2やCl−を含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかも−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有する鋼管であるとしている。

概要

低温靭性が優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管を製造する方法の提供。フェライト相と残部をオーステナイト相もしくはマルテンサイト相もしくはその両方を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、加熱及び熱間加工中の鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、更に前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1200℃以下の温度域で施す高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

目的

本発明は、低温靭性が優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管を製造する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

フェライト相と残部をオーステナイト相もしくはマルテンサイト相もしくはその両方を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程δフェライト単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1200℃以下の温度域で施すことを特徴とする低温靭性に優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

請求項2

前記鋼素材が、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項1に記載の高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

請求項3

前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜D群A群:Al:0.002〜0.050%B群:Cu:3.5%以下、W:3.5%以下、REM:0.3%以下C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上D群:Ca:0.01%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、継目無鋼管の製造方法に係り、とくに低温靭性に優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法に関する。なお、高強度とは降伏強さが654MPa以上であり、低温靭性に優れるとは、−10℃におけるシャルピー試験吸収エネルギーが50J以上のものをいう。

背景技術

0002

近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田深層油田)や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田や、さらには厳しい気象環境の極における油田やガス田等において、エネルギー資源開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される鋼材には、高強度で、かつ優れた耐食性耐サワー性)や、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた材質を有することが要求されている。また、鋼管肉厚薄肉から厚肉まで様々なものが要求されている。

0003

従来から、炭酸ガスCO2、塩素イオンCl−等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する鋼材として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が多く使用されている。しかし、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼はサワー環境において十分な耐食性を持たないため、最近ではC量を低減し、Cr量Ni量を増加させた2相ステンレス鋼の使用も拡大している。

0004

例えば、特許文献1には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、mass%で、C:0.005〜0.050%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管を、850℃以上の温度に再加熱し空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことにより、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さが654MPa以上の油井用高強度ステンレス鋼管を得ることができるとしている。これにより、高強度で、CO2やCl−を含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかも−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有する鋼管であるとしている。

先行技術

0005

特許第5109222号公報

発明が解決しようとする課題

0006

高深度の油井に用いられる部材用鋼管として、最近では、2相ステンレス鋼管も多用されるようになっている。2相ステンレス鋼管の製造においては、多くの場合において熱間加工中もフェライト相とオーステナイト相の2相域状態であることが多く、加熱保持温度や加熱時間よって相分率が異なるが、特に高温域ではフェライトの相分率が高いことが多い。フェライト粒高温保持時での粒成長が早く、初期結晶粒径や熱間加工により分断した結晶粒成長粗粒化が起こりやすい。粗粒化を生じた組織は熱間加工時変形能を悪化させる。また、特に厚肉材では肉厚中心部に歪を付与しにくいためフェライト粒の分断ができず、高温加熱熱間圧延中加工発熱により高温に保持された際に粗大化した粒が製品時に残存しやすい。連結した粗大なフェライト粒はき裂伝播経路となるため、フェライト相の多い高温で圧延された鋼管における肉厚中央部(低歪部)では低温靭性が低下する。また、フェライト粒の粗大化は鋼管の強度にも影響し、特に鋼管の降伏強さが低下する。そのため、2相域で熱間圧延を行うステンレス鋼管の製造においては熱間圧延条件やその後の熱処理における温度管理を適切なものにしなければ所望の特性が得られない。

0007

特許文献1に記載された技術は、素材の高温加熱時や熱間加工時の温度管理についての言及は無い。とくに、特許文献1に記載された技術では、高温加熱時や熱間圧延中の温度管理による鋼管の特性向上、とくに低温靭性の向上についての言及はない。

0008

かかる従来技術の状況に鑑み、本発明は、低温靭性が優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管を製造する方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、2相ステンレス鋼材の靭性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、靭性改善に最も有効な方法は、フェライト相組織の微細化であるということに思い至った。

0010

そこで、高周波加熱装置を使用し、熱間でδフェライト相を含む2相域となる2相ステンレス鋼を加熱した際に生じるフェライト相の粒成長について調査した。図2は、2相ステンレス鋼を昇温過程で(δA−100℃)に600s間保持してからδフェライト相単相になる温度(δA)を超える温度に急激(10℃/s)に昇温し15s間保持した後、急冷して組織を凍結し、δフェライト粒径を測定した結果である。図2に示す通り、2相ステンレス鋼はδAを超える温度に加熱されると、わずか15sであってもδフェライト粒が急激に粒成長する。図3は、同様に2相ステンレス鋼をδA以下の温度に加熱し、該加熱温度で3600s間保持した後、急冷することで組織を凍結し、δフェライト粒径を測定した結果である。図3に示す通り、(δA−100℃)以上の温度で3600s以上保持された2相ステンレス鋼は急激にδフェライトの粒成長が生じているのに対して、加熱保持温度が(δA−100℃)未満では非常に微細な粒が維持されていた。また、保持時間を3600sより短くした場合には、粒成長に必要な元素拡散が追いつかず、(δA−100℃)より高い温度であっても比較的微細な組織を保っていた。

0011

すなわち、熱間でδフェライト相を含む2相域となる2相ステンレス鋼においては、通常、高温域では、δフェライト相の分率が上昇し、特に高温で且つ長時間保持するδとフェライト結晶粒が急激に粒成長する。一方で、より短時間で低温に加熱された場合はδフェライト結晶粒の粒成長が抑えられる。特に、(δA−100℃)以上の高温域では、3600sを超えて保持されるとδフェライト結晶粒が粗大化し、また、δフェライト相単相となる高温域では更に短い時間でδフェライト相の粒成長が生じるため、鋼素材(以下、被加工材ともいう)の温度、加熱保持時間を適切に制御すれば、その後の熱間圧延を施した鋼管のδフェライト粒を細粒に保つことができ、容易に組織の微細化が達成できることに思い至った。

0012

そこで、更なる研究を行ない、2相ステンレス継目無鋼管の組織微細化のためには、図1に示す継目無鋼管製造プロセスにおいて加熱装置1で鋼素材を加熱し、熱間加工する際に、加熱、熱間加工中の前記鋼素材の最高温度が昇温過程でδフェライト相単相になる温度(δA)を超えないようにするとともに、前記鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上となる時間を3600s以下とし、且つ、熱間加工装置2による最終熱間加工を1200℃以下の温度で終了することでフェライト粒を細粒に制御でき、その後、適切な焼入れ焼戻し熱処理を加えることでステンレス継目無鋼管の肉厚中心位置においても低温靭性が顕著に向上するという知見を得た。

0013

本発明は、かかる知見に基づき、更なる検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)フェライト相と残部をオーステナイト相もしくはマルテンサイト相もしくはその両方を含む組織を有する2相ステンレス継目無鋼管の製造方法であって、鋼素材を加熱した後、熱間加工を施して所定形状の継目無鋼管とするにあたり、前記加熱および前記熱間加工中の前記鋼素材の最高到達温度を1000℃以上δA(昇温過程でδフェライト相単相になる温度)以下とし、かつ前記鋼素材の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下とし、さらに前記熱間加工の最終加工を前記鋼素材の外表面温度で1200℃以下の温度域で施すことを特徴とする低温靭性に優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(2)前記鋼素材が、質量%で、
C :0.050%以下、 Si:1.00%以下、
Mn:0.20〜1.80%、 Cr:15.5〜18.0%、
Ni:1.5〜5.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
V :0.02〜0.20%、 N :0.01〜0.15%、
O :0.006%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする(1)に記載の高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(3)前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜D群
A群:Al:0.002〜0.050%
B群:Cu:3.5%以下、W:3.5%以下、REM:0.3%以下
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
D群:Ca:0.01%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする(2)に記載の高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法。

発明の効果

0014

本発明によれば、低温靭性に優れた高強度2相ステンレス継目無鋼管を、容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、初期組織の粗大化を防ぐことで、比較的少ない加工量でも2相ステンレス継目無鋼管のフェライト粒径を微細に保つことができ、肉厚中心部の加工量を大きくすることができない厚肉鋼管においても、肉厚中心部の低温靭性の向上が図れるという効果がある。

図面の簡単な説明

0015

継目無鋼管を製造するプロセスを示す図である。
2相ステンレス鋼をδAを超える温度に加熱し、15s間保持した際、加熱温度がδフェライト粒の成長に及ぼす影響を示す図である。
2相ステンレス鋼をδA以下の温度に加熱し、3600s間保持した際、加熱温度がδフェライト粒の成長に及ぼす影響を示す図である。

0016

本発明に係る継目無鋼管は、図1に示す加熱装置1と熱間加工装置2とをこの順に配設した装置列を用いて、前記加熱装置1で鋼素材を加熱し、その後熱間加工工程を経て製造される。

0017

本発明で使用する加熱装置1は、鋳片、鋼片等の鋼素材を所定温度に加熱できる加熱炉であればよく、とくに限定する必要はない。例えば、回転炉床式加熱炉ウォーキングビーム式加熱炉等の常用の加熱炉がいずれも適用できる。また、誘導加熱方式の加熱炉としてもよい。

0018

本発明で使用する熱間加工装置2は、通常、鋼素材を所定寸法の継目無鋼管とする場合に適用する熱間加工装置がいずれも適用できる。例えば、穿孔圧延装置、および縮径圧延矯正圧延等の通常公知の圧延装置が例示できる。好ましい装置列の一例を図1に示す。

0019

熱間加工装置2の一つである穿孔圧延装置21は、加熱された鋼素材に穿孔圧延を施し中空素材とすることができる穿孔圧延装置であればよく、例えば、バレル形ロールコーン型ロール等を用いるマンスマン傾斜式穿孔機熱間押出式穿孔機等の、通常公知の穿孔圧延装置がいずれも適用できる。また、熱間加工装置2の一つである圧延装置22は、中空素材に加工を施し所定形状の継目無鋼管とすることができる装置であればよく、目的に応じて、例えば、エロンゲータ221、穿孔された中空素管を薄く長く延ばすプラグミル222、素管内外表面を滑らかにするリーラ(図示せず)、所定寸法に整えるサイジングミル223の順で配置された圧延装置、あるいは中空素管を所定寸法の鋼管とするマンドレルミル(図示せず)、若干の圧下を行ない外径、肉厚を調整するレデューサ(図示せず)を配置した圧延装置等の、通常公知の熱間加工装置がいずれも適用できる。

0020

本発明に係る製造方法では、加熱装置1による加熱および熱間加工装置2による熱間加工工程において、鋼素材(以下、熱間加工工程では被加工材ともいう)の温度がδA(昇温過程でδフェライト相単相となる温度)を超えないようにする。鋼素材(被加工材)の温度がδフェライト相単相域になると、隣り合うフェライト結晶粒の間に存在した異なる結晶構造を持つ第二相が無くなり、隣り合うフェライト粒同士が原子再配列のみで容易に粒成長を開始する。そのため、鋼素材(被加工材)の最高到達温度をδA以下とした。なお、エネルギーコスト低減の観点から好ましくは(δA−50℃)以下である。

0021

一方、鋼素材(被加工材)の最高到達温度が1000℃を下回ってその後の熱間加工に供されると、δフェライトより強度の高い第二相の分率が大きくなりすぎて、圧延負荷が増大するばかりでなく、軟質なδフェライト相に歪が集中し、熱間加工中に延性破壊を生じ製品疵の原因となる。そのため、鋼素材(被加工材)の最高到達温度の下限を1000℃に限定した。なお、好ましくは1100℃以上である。

0022

また、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間が3600sを超えて長くなると、δフェライト粒の成長抑制に有効なδフェライトの粒界に存在するオーステナイトなどの第二相が減少し、δフェライト粒の成長が容易に生じる。すなわち、δフェライト粒界、またはδフェライト粒界の3重点に存在し、δフェライトの粒成長を抑制するのに重要な役割を有する第二相の量、つまり分率は該第二相を形成する元素拡散律速されるため、温度上昇中の鋼素材(被加工材)の前記第二相の分率は平衡状態でのその分率より大きくなっている。しかし、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間が長くなると、第二相を形成する元素の拡散が追いつき、第二相の分率が減少することに加え、特にδフェライトの粒成長抑制に有効なδフェライト粒界に存在する第二相が減少し、残存した第二相もδフェライト粒界の3重点に球状の形態で偏在するようになるため、隣り合うδフェライト粒の界面同士が接触し、粒成長が容易になる。そのため、鋼素材(被加工材)の温度が(δA−100℃)以上になる時間を3600s以下に限定した。なお、好ましくは900s以下である。

0023

加熱された鋼素材は、ついで、熱間加工装置で、所定の形状に加工される。この際、最終の熱間加工を被加工材の表面の平均温度が1200℃以下まで低下した後に終了する。

0024

熱間加工終了温度が1200℃超えでは、その後の冷却中に熱間加工により付与した歪の緩和細粒化したδフェライト相の粒成長が起きて熱間加工後の鋼管の低温靭性が低下する。このため、最終熱間加工温度を1200℃以下と限定する。なお、最終熱間加工温度が低温になりすぎると変形抵抗の増大による装置負荷の増大や疵の発生につながるため、好ましくは、最終熱間加工温度は900〜1200℃である。

0025

なお、δA(昇温過程でδフェライト単相となる温度)は熱平衡計算により算出しても良いし、加熱中の熱膨張曲線を測定し、δフェライト単相となった際に生じる熱膨張曲線の変曲点を測定しても良い。

0026

次に、本発明に係る高強度2相ステンレス継目無鋼管の組成限定理由について説明する。

0027

本発明の適用により効果が発揮される鋼素材は、比較的低温でδフェライト相単相となり、かつ、常温における製品時にδフェライト相が残存する組成を有する鋼素材であり、
「質量%で、
C :0.050%以下、 Si:1.00%以下、
Mn:0.20〜1.80%、 Cr:15.5〜18.0%、
Ni:1.5〜5.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
V :0.02〜0.20%、 N :0.01〜0.15%、
O :0.006%以下
を含み、
あるいはさらに次A群〜D群
A群:Al:0.002〜0.050%
B群:Cu:3.5%以下、W:3.5%以下、REM:0.3%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
D群:Ca:0.01%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材」である。

0028

以下、組成限定理由について説明する。なお、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。

0029

C:0.050%以下
Cは、マルテンサイト相の生成量に影響を与える重要な元素であり、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.050%を超えて含有すると、Ni含有による焼戻時の鋭敏化が増大する。耐食性の観点からはCは少ないほうが望ましい。このようなことから、Cは0.050%以下に限定した。なお、好ましくは0.030〜0.050%である。

0030

Si:1.00%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、0.05%以上含有することが望ましい。1.00%を超える含有は、耐食性を低下させ、さらに熱間加工性をも低下させる。このため、Siは1.00%以下に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.30%である。

0031

Mn:0.20〜1.80%
Mnは、オーステナイト相分率を増大する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.20%以上の含有を必要とする。一方、1.80%を超えて含有すると、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.20〜1.80%に限定した。なお、好ましくは0.20〜1.00%である。

0032

Cr:15.5〜18.0%
Crは、保護皮膜を形成し耐食性を向上させる主要元素であり、同時にフェライト相の相分率を増大する作用を持つ元素である。このような効果を得るためには、15.5%以上の含有を必要とする。一方、18.0%を超えて多量に含有すると、強度が低下する。このため、Crは15.5〜18.0%に限定した。なお、好ましくは16.0〜18.0%である。

0033

Ni:1.5〜5.0%
Niは、保護膜を補修し、耐食性を高める作用を有する元素であり、同時にオーステナイト相の相分率を増大する作用を持つ元素である。さらに靭性を向上させる元素でもある。このような効果は1.5%以上の含有で認められる。一方、5.0%を超えて含有すると、材料コストが高騰する上に、強度が低下する。このため、Niは1.5〜5.0%に限定した。なお、好ましくは2.5〜4.5%である。

0034

Mo:1.0〜3.5%
Moは、Cl−による孔食に対する抵抗性を増加させる元素である。このような効果を得るためには、1.0%以上含有することが望ましい。一方、3.5%を超える多量の含有は、強度が低下するとともに、材料コストが高騰する。このため、Moは1.0〜3.5%に限定した。なお、好ましくは2.0〜3.5%である。

0035

V:0.02〜0.20%
Vは、強度を増加させるとともに、耐食性を改善する元素である。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Vは0.02〜0.20%に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。

0036

N:0.01〜0.15%
Nは、耐孔食性を著しく向上される元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超えて含有すると、種々の窒化物を形成し靭性を低下させる。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。

0037

O:0.006%以下
Oは、鋼中では酸化物として存在し、各種特性に悪影響を及ぼす。このため、できるだけ低減することが望ましい。とくに、Oが0.006%を超えて多量に含有すると、熱間加工性、靭性、耐食性の低下が著しくなる。このため、Oは0.006%以下に限定した。

0038

上記した成分が基本の成分であるが、基本成分に加えてさらに、選択元素として、次A群〜D群
A群:Al:0.002〜0.050%
B群:Cu:3.5%以下、W:3.5%以下、REM:0.3%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
D群:Ca:0.01%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することができる。

0039

A群:Al:0.002〜0.050%
A群:Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.002%以上含有することが好ましいが、0.050%を超えて含有すると、靭性に悪影響を及ぼす。このため、含有する場合には、0.002〜0.050%に限定することが好ましい。なお、Al無添加の場合には、不可避的不純物として0.002%未満程度が許容される。

0040

B群:Cu:3.5%以下、W:3.5%以下、REM:0.3%以下
B群:Cu、W、REMは、保護皮膜を強固にし、鋼中への水素侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める。このような効果はCu:0.5%以上、W:0.5%以上、REM:0.001%以上の含有で顕著となる。しかし、Cu:3.5%、W:3.5%、REM:0.3%をそれぞれ超えて含有すると靭性が低下する。このため、含有する場合には、Cu、Wはそれぞれ3.5%以下、REMは0.3%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくはCu:0.8〜1.2%、W:0.8〜1.2%、REM:0.001〜0.010である。

0041

C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
C群:Nb、Ti、Zrはいずれも、強度や熱間加工性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果は、Nb:0.03%以上、Ti:0.03%以上、Zr:0.03%以上の含有で認められる。一方、Nb:0.2%、Ti:0.3%、Zr:0.2%をそれぞれ超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合は、Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下に、それぞれ限定することが好ましい。

0042

D群:Ca:0.01%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
D群:Ca、Bは、多相域圧延時の熱間加工性を向上させ、製品疵を抑制する作用をもち、必要に応じて1種または2種を含有できる。このような効果は、Ca:0.0005%以上、B:0.0005%以上の含有で顕著となるが、Ca:0.01%、B:0.01%を超えて含有すると、耐食性が低下する。このため、含有する場合には、Ca:0.01%以下、B:0.01%以下に限定することが好ましい。

0043

上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としてはP:0.03%以下、S:0.005%以下が許容できる。

0044

上記した組成を有する鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はない。転炉電気炉等、常用の溶製炉を使用して、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で、鋳片(丸鋳片)としたものを鋼素材とすることが好ましい。なお、鋳片を熱間圧延して所定寸法の鋼片として鋼素材としてもよい。また、造塊−分塊圧延法で鋼片とし、鋼素材としてもなんら問題はない。

0045

なお、上記した説明は、加熱装置による加熱温度、保持時間、および熱間加工装置による熱間加工時の鋼素材(被加工材)の最高到達温度、高温域での保持時間、および最終熱間加工を施す温度について説明したが、最終熱間加工後に鋼管を熱処理等で1000℃以上の温度に昇温する場合においても粒成長を抑制する観点から前記本発明に係る手段(1)に記載の限定条件を適用し、最高到達温度と保持時間を限定することが望ましい。例えば、本発明の製造方法で製造された継目無鋼管に焼入れ、焼戻し熱処理を施す場合においても、1000℃以上の温度へ昇温する際、加熱温度と保持時間が前記(1)を満たす条件で加熱・保持することで粒成長が抑制でき所望の機械的特性を得られることを確認している。

0046

また、温度の測定は、直接接触式、または放射温度計に代表される非接触式温度計を用いて行えば良い。また、測定したタイミングでの温度から伝熱解析等で導かれる最高到達温度と温度履歴によって温度管理を行っても構わない。また、温度制御の方法も加熱炉温度管理や圧延速度制御、冷媒を用いた方法のいずれを利用しても良い。

0047

上記した製造方法で得られる2相ステンレス継目無鋼管は、上記した組成と、δフェライト相を有し、マルテンサイト相と、あるいはさらに残留オーステナイト相からなる組織とを有する2相ステンレス継目無鋼管となる。なお、残留オーステナイト相は、面積率で25%以下である。このような組織を有する2相ステンレス継目無鋼管は、降伏強さ:654MPa以上の高強度と、肉厚中心位置でのシャルピー衝撃試験試験温度:−10℃での吸収エネルギー(vE−10)が50J以上となる優れた低温靭性を有する高強度2相ステンレス継目無鋼管となる。

0048

つぎに、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。

0049

表1に示す組成の溶鋼を、電炉で溶製し、孔型圧延を行い、径58mmの丸鋼片(鋼素材)とした。次に、図1に示す装置列を利用して、これら丸鋼片を加熱装置1に装入し、加熱した後、熱間加工装置2(穿孔圧延装置、定型圧延装置)で累積減面率60%の熱間加工(仕上げ肉厚7.5mm)を施し、放冷して継目無鋼管を得た。得られた継目無鋼管に焼入れ焼戻し熱処理を施したのち、試験片採取し、組織観察引張試験衝撃試験を実施した。なお、加熱、熱間加工中の鋼素材(被加工材)の温度測定および得られた継目無鋼管の試験方法はつぎの通りとした。
(1)温度測定
継目無鋼管製造時の温度は加熱炉での温度、圧延終了直後鋼管内面温度、および最終熱間加工温度の3点を測定した。なお、加熱および熱間加工中の温度履歴については接触式熱電対による測定温度を基に伝熱解析により導いた。また、δフェライト単相になる温度(δA)については予め加熱過程の熱膨張曲線を測定し、δフェライトへの変態が完了し、膨張曲線曲率が変化した点を使用した。
各丸鋼片(鋼素材)のδA、および、各鋼管製造時の鋼素材の最高到達温度、(δA−100℃)以上の温度域における保持時間、最終加工温度を表2に示す。

0050

(2)組織観察
得られた継目無鋼管から、組織観察用試験片を採取し、管軸方向に直交する断面と平行な断面の肉厚中心部を研磨した後、ビレラ腐食後の組織を観察し、フェライトーマルテンサイト組織であることを確認した。
また、鋼管内外表面における割れ発生の有無、および割れが発生している場合にはその程度を評価した。割れ深さが1.0mm以上のものの発生箇所が5箇所以上である場合を「有・多」とし、それ未満である場合を「有・少」と評価した。

0051

(3)引張試験
得られた継目無鋼管の肉厚中心から、管軸方向が引張方向となるように、丸棒引張試験片平行部6mmφ×GL20mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS(降伏強さは0.2%伸びでの強度)を求めた。
(4)衝撃試験
得られた継目無鋼管の肉厚中心から、管軸方向と直交する方向(C方向)と平行である方向(L方向)が試験片長手方向となるように、Vノッチ試験片(ハーフサイズ)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−10℃における吸収エネルギー(vE−10)を測定した。なお、試験片は各3本とし、それらの平均値を当該鋼板の吸収エネルギーとした。

0052

得られた結果を表3に示す。

0053

0054

0055

実施例

0056

本発明で提案した加熱、熱間加工条件を適用し、好ましい製造条件で製造された継目無鋼管(ここでは、本発明例という)はいずれも、肉厚中心位置においても組織の微細化ができ、降伏強さ:654MPa以上の高強度であるにもかかわらず、試験温度:−10℃における吸収エネルギーが50J以上の優れた低温靭性を有している。一方、本発明の加熱、熱間加工条件を利用しないため、好ましい製造条件の範囲を外れる継目無鋼管は、組織が微細化できず、所望の高靭性と高強度を確保できていない。

0057

1加熱装置
2熱間加工装置
21穿孔圧延装置
22圧延装置
221エロンゲータ
222プラグミル
223 サイジングミル

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