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課題
解決手段
概要
背景
概要
直流母線において行うモータ電流検出を、より高精度に実行可能にする。制御部(40)は、所定の更新タイミングにおいて、直流母線より検出されたモータ電流値を用いて、インバータ回路(13)を制御する。所定の更新タイミングにおけるモータ電流値(id,iq)は、電流値補正部(45)において、複数回の検出タイミングにおいて検出されたモータ電流値(id(n),iq(n))を用いた補正演算によって、算出される。これにより、所定の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が算出される。
目的
本発明では、電力変換装置において、直流母線において行うモータ電流検出を、より高精度に実行可能にすることを目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
交流電源(20)の出力を全波整流するコンバータ回路(11)と、上記コンバータ回路(11)の出力ノードの間に接続されたコンデンサ(C)と、上記コンバータ回路(11)の出力を、複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作によって、交流に変換してモータ(30)に供給するインバータ回路(13)と、上記インバータ回路(13)の入力である直流母線より、上記モータ(30)に流れるモータ電流値を検出する電流検出部(54)と、上記電流検出部(54)によって検出されたモータ電流値を用いて、所定の更新タイミングにおいて、上記複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作の制御を行う制御部(40)とを備え、上記制御部(40)は、上記所定の更新タイミングにおけるモータ電流値(id,iq)を、複数回の検出タイミングにおいて検出されたモータ電流値(id(n),iq(n))を用いた補正演算を行うことによって、算出する電流値補正部(45)を備えていることを特徴とする電力変換装置。
請求項2
請求項1において、上記電流値補正部(45)は、上記所定の更新タイミング直前の第1検出タイミング、および、上記第1検出タイミング以前の第2検出タイミングにおけるモータ電流値と、上記第2検出タイミングから上記第1検出タイミングまでの間における平均モータ電圧と、上記第1検出タイミングから上記所定の更新タイミングまでの間における平均モータ電圧と、上記モータ(30)の機器定数とを用いて、上記補正演算を行うことを特徴とする電力変換装置。
請求項3
請求項4
技術分野
背景技術
0002
家電製品に搭載されているインバータでは、モータのセンサレスベクトル制御に必要となるモータ電流の検出を安価に行うために、直流母線にシャント抵抗を挿入した電流検出回路が利用されている(1シャント電流検出方式)。非特許文献1では、直流母線からモータ電流を検出する原理が示されている。
0004
特開2002−51589号公報
先行技術
発明が解決しようとする課題
0006
直流部に大容量の電解コンデンサを用いたインバータでは、安定状態においてモータ電流の振幅はほぼ一定となっている。このモータ電流を、センサレスベクトル制御に一般的に用いられるdq軸(回転座標)で見ると、d軸電流およびq軸電流は変動の少ない直流となる。
0007
これに対して、特許文献1に示されたような電解コンデンサレスインバータにおいては、d軸電流およびq軸電流は交流電源の2倍の周波数で常に変動している。これは、力率と電源高調波を改善するためである。
0008
そして、PWMインバータでは、時間平均が指令電圧と等しくなるようなパルス状の電圧が出力される。パルス電圧の波高値は直流部の電圧にほぼ等しい。そのため、平均電圧により制御されるモータ電流は、PWM周期間において単調な変化とはならず、出力されているパルス電圧波形の変化により増減を繰り返した電流波形となる。仮に、PWM周期間の平均電圧により単調変化する電流を平均電流とした場合、平均電流と増減を繰り返す実電流とは、PWM周期の始点と終点ではほぼ一致するが、それ以外では偏差を生じる。平均電流と実電流との偏差をリプルと呼ぶとして、リプルは直流母線にも表れる。リプルの影響を少なく電流検出を行えるのは、零ベクトルの中央であるが、零ベクトル期間は直流母線にモータ電流が表れない。このため、直流母線電流からモータ電流検出を行う以上、リプルが混入することは避けられない。
0009
また、大容量電解コンデンサを用いたインバータに比べて、電解コンデンサレスインバータでは、電源高調波の制御を行うために高い電流制御応答が必要となる。この点において、電流リプルの電流制御に対する影響は、電解コンデンサレスインバータの方が大きい。
0010
本発明では、電力変換装置において、直流母線において行うモータ電流検出を、より高精度に実行可能にすることを目的とする。
課題を解決するための手段
0011
上記の課題を解決するため、第1の発明は、電力変換装置であって、
交流電源(20)の出力を全波整流するコンバータ回路(11)と、
上記コンバータ回路(11)の出力ノードの間に接続されたコンデンサ(C)と、
上記コンバータ回路(11)の出力を、複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作によって、交流に変換してモータ(30)に供給するインバータ回路(13)と、
上記インバータ回路(13)の入力である直流母線より、上記モータ(30)に流れるモータ電流値を検出する電流検出部(54)と、
上記電流検出部(54)によって検出されたモータ電流値を用いて、所定の更新タイミングにおいて、上記複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作の制御を行う制御部(40)とを備え、
上記制御部(40)は、
上記所定の更新タイミングにおけるモータ電流値(id,iq)を、複数回の検出タイミングにおいて検出されたモータ電流値(id(n),iq(n))を用いた補正演算を行うことによって、算出する電流値補正部(45)を備えている。
0012
この構成により、インバータ回路(13)における複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作は、制御部(40)によって、所定の更新タイミングにおいて、制御される。制御部(40)は、インバータ回路(13)の入力である直流母線より検出されたモータ電流値を用いて、複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作を制御する。そして、所定の更新タイミングにおけるモータ電流値は、電流値補正部(45)において、複数回の検出タイミングにおいて検出されたモータ電流値を用いた補正演算によって、算出される。これにより、所定の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が算出されるので、例えば電解コンデンサレスインバータによる制御において、より高精度の高調波抑制を行うことが可能になる。
0013
また、第2の発明は、第1の発明において、上記電流値補正部(45)は、上記所定の更新タイミング直前の第1検出タイミング、および、上記第1検出タイミング以前の第2検出タイミングにおけるモータ電流値と、上記第2検出タイミングから上記第1検出タイミングまでの間における平均モータ電圧と、上記第1検出タイミングから上記所定の更新タイミングまでの間における平均モータ電圧と、上記モータ(30)の機器定数とを用いて、上記補正演算を行う。
0014
この構成により、所定の更新タイミングにおけるモータ電流値の補正演算は、直前の第1検出タイミング、および、第1検出タイミング以前の第2検出タイミングにおけるモータ電流値と、第2検出タイミングから第1検出タイミングまでの間における平均モータ電圧と、第1検出タイミングから所定の更新タイミングまでの間における平均モータ電圧と、モータの機器定数とを用いて、行われる。これにより、所定の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が確実に算出される。
0018
この構成により、電解コンデンサレスインバータ制御において、より高精度の高調波抑制を実現することができる。
発明の効果
0019
本発明によると、制御部がインバータ回路の制御を実行する所定の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が算出される。これにより、例えば電解コンデンサレスインバータによる制御において、より高精度の高調波抑制を行うことが可能になる。
図面の簡単な説明
0020
実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図
図1の電力変換装置における制御部の構成例
電流値補正部の動作例を示すタイミングチャート
電圧ベクトルとスイッチング素子のスイッチング状態との関係を示すテーブル
モータ電流値の補正演算の処理の流れを示すフローチャート
実施例
0021
以下、実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
0022
図1は実施形態に係る電力変換装置(10)の構成例を示している。電力変換装置(10)は、入力交流電圧(この例では、単相の交流電源(20)から供給された電源電圧(Vin))を所定の出力交流電圧に変換してモータ(30)に供給するものであり、コンバータ回路(11)と、直流リンク部(12)と、インバータ回路(13)と、制御部(40)とを備えている。例えば、モータ(30)は、IPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)によって構成され、空気調和機の圧縮機(図示を省略)を駆動する。
0023
〈コンバータ回路〉
コンバータ回路(11)は、リアクトル(L)を介して交流電源(20)に接続され、交流電源(20)からの電源電圧(Vin)を全波整流する。この例では、コンバータ回路(11)は、ブリッジ状に結線された4個のダイオード(D1,D2,D3,D4)を備えている。すなわち、コンバータ回路(11)は、ダイオードブリッジ回路によって構成されている。
0024
〈直流リンク部〉
直流リンク部(12)は、コンバータ回路(11)の一対の出力ノードの間に接続されたコンデンサ(C)を有し、コンバータ回路(11)の出力(すなわち、全波整流された電源電
圧(Vin))を入力して直流電圧(Vdc)を生成する。直流電圧(Vdc)は、電源電圧(Vin)の周波数に応じて脈動する。
0025
ここで、電源電圧(Vin)の周波数に応じた脈動成分が直流電圧(Vdc)に含まれている理由について説明する。直流リンク部(12)のコンデンサ(C)の容量値は、コンバータ回路(11)の出力をほとんど平滑化することができない一方で、インバータ回路(13)のスイッチング動作に起因するリプル電圧(スイッチング周波数に応じた電圧変動)を抑制することができるように、設定されている。具体的には、コンデンサ(C)は、一般的な電力変換装置においてコンバータ回路(11)の出力の平滑化に用いられる平滑コンデンサ(例えば、電解コンデンサ)の容量値の約0.01倍の容量値(例えば、数十μF程度)を有する小容量コンデンサ(例えば、フィルムコンデンサ)によって構成されている。このようにコンデンサ(C)が構成されているので、直流リンク部(12)においてコンバータ回路(11)の出力がほとんど平滑化されず、その結果、電源電圧(Vin)の周波数に応じた脈動成分(具体的には、電源電圧(Vin)の周波数の2倍の周波数を有する脈動成分)が直流電圧(Vdc)に残留することになる。例えば、直流電圧(Vdc)は、その最大値がその最小値の2倍以上になるように脈動している。
0026
〈インバータ回路〉
インバータ回路(13)は、その一対の入力ノードが直流リンク部(12)のコンデンサ(C)の両端に接続され、直流リンク部(12)によって生成された直流電圧(Vdc)をスイッチング動作により出力交流電圧に変換してモータ(30)に供給する。この例では、インバータ回路(13)は、三相の出力交流電圧をモータ(30)に供給するために、ブリッジ結線された6つのスイッチング素子(Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn)と、6つの還流ダイオード(Dup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwn)とを有している。詳しく説明すると、インバータ回路(13)は、2つのスイッチング素子を互いに直列に接続してなる3つのスイッチングレグを備え、3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(Sup,Svp,Swp)と下アームのスイッチング素子(Sun,Svn,Swn)との中点が、モータ(30)の各相のコイル(u相,v相,w相のコイル)にそれぞれ接続されている。また、6つのスイッチング素子(Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn)には、6つの還流ダイオード(Dup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwn)がそれぞれ逆並列に接続されている。
0027
〈各種検出部〉
また、この例では、電力変換装置(10)は、電源位相検出部(51)と、直流電圧検出部(52)と、シャント抵抗(53)と、モータ電流検出部(54)と、モータ角周波数検出部(62)と、モータ位相検出部(63)とをさらに備えている。
0028
電源位相検出部(51)は、電源電圧(Vin)の位相角(電源位相(θin))を検出する。直流電圧検出部(52)は、直流リンク部(12)の直流電圧(Vdc)の電圧値を検出する。モータ角周波数検出部(62)は、モータ(30)の電気角の回転角周波数(モータ角周波数(ω))を検出する。モータ位相検出部(63)は、モータ(30)の回転子磁極位置(図示を省略)の電気角(モータ位相(θe))を検出する。
0029
モータ電流検出部(54)は、モータ(30)の各相に流れるモータ電流(u相電流(iu),v相電流(iv),w相電流(iw))の電流量を検出する。シャント抵抗(53)は、負荷(モータ(30))からの電流が流れ込む位置に配置されている。この例では、シャント抵抗(53)は、インバータ回路(13)の負側の直流母線とコンバータ回路(12)の負側ノード(より詳しくはコンデンサ(C)よりもモータ(30)寄りのノード)との間に設けられている。このシャント抵抗(53)にモータ(30)からの電流が流れると、シャント抵抗(53)の両端には電圧差が生じ、モータ電流検出部(54)は、シャント抵抗(53)の両端間の電圧を検出することで相電流(iu,iv,iw)を算出することができる。
0030
〈制御部〉
制御部(40)は、インバータ回路(13)のスイッチング動作を制御してインバータ回路(13)の出力(出力交流電圧)を制御する。これにより、モータ(30)の駆動が制御される。この例では、モータ(30)は、ベクトル制御により制御される。制御部(40)は所定の周期(以下、更新周期(Tc)と呼ぶ)でPWM出力(G)の更新を行う。
0031
図2は制御部(40)の構成例である。制御部(40)は、マイクロコンピュータ(図示は省略)とそれを動作させるプログラムを含み、スイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作の制御を行うことによってインバータ回路(13)の電流制御を行う。すなわち、制御部(40)によってインバータ回路(13)の出力が制御されて、モータ(30)の駆動が制御される。モータ(30)の駆動の制御には、例えばd−q軸ベクトル制御が用いられる。本実施形態の制御部(30)は、速度制御部(41)、乗算器(42)、dq電流指令値生成部(43)、座標変換部(44)、電流値補正部(45)、dq軸電流制御部(46)、及びPWM演算部(47)を備えている。
0032
速度制御部(41)は、モータ(30)の回転角周波数(ω)と、回転角周波数の指令値(ω*)との偏差を求める。そして、速度制御部(41)は、その偏差を比例・積分演算(PI演算)し、その演算結果を電流指令値(im*)として乗算器(42)に出力する。
0033
乗算器(42)は、交流電源(20)における電圧(Vin)の位相角(θin)の正弦値の絶対値(|sin(θin)|)と、電流指令値(im*)とを乗算し、乗算結果を駆動電流指令値(idq*)として出力する。
0034
dq電流指令値生成部(43)は、駆動電流指令値(idq*)と、モータ(30)に流す電流の位相(β)の指令値(β*)とから、d軸電流指令値(id*)及びq軸電流指令値(iq*)を求め、それらをdq軸電流制御部(46)に出力する。具体的にdq電流指令値生成部(43)は、指令値(β*)の正弦値(-sinβ*)に駆動電流指令値(idq*)を乗じてd軸電流指令値(id*)を生成し、指令値(β*)の余弦値(cosβ*)に駆動電流指令値(idq*)を乗じてq軸電流指令値(iq*)を生成する。
0035
座標変換部(44)は、モータ(30)の電気角(θe)と、インバータ回路(13)の相電流(iu,iv,iw)とから、d軸電流値(id(n))とq軸電流値(iq(n))を算出する。なお、nは整数であり、検出タイミングの番号を示す。
0036
電流値補正部(45)は、座標変換部(44)から出力されたd軸電流値(id(n))およびq軸電流値(iq(n))を用いて補正演算を行い、PWM出力(G)の更新に用いるd軸電流値(id)およびq軸電流値(iq)を算出する。ここでの補正演算の詳細については、後述する。電流値補正部(45)は、d軸電流値(id(n))およびq軸電流値(iq(n))などを一時的に記憶するメモリ(45a)と、メモリ(45a)に記憶されたd軸電流値(id(n))およびq軸電流値(iq(n))などを用いて補正演算を行う演算部(45b)とを備えている。
0037
dq軸電流制御部(46)は、d軸電流指令値(id*)とd軸電流値(id)との偏差、及び、q軸電流指令値(iq*)とq軸電流値(iq)との偏差がそれぞれ小さくなるように、d軸の電圧指令値(Vd*)とq軸の電圧指令値(Vq*)を生成し、PWM演算部(47)に出力する。
0038
PWM演算部(47)には、d軸及びq軸の電圧指令値(Vd*,Vq*)と、直流リンク電圧(Vdc)と、モータ(30)の電気角(θe)とが入力される。PWM演算部(47)は、これらの値に基づいて、インバータ回路(13)の各スイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作を制御する制御信号(G)(PWM出力)を生成してインバータ回路(13)に出力する。この例では、PWMのキャリアは三角波であり、スイッチング素子のスイッチング周波数はキャリア周波数と同じになる。PWM出力の更新は、三角波の山および谷で行われ、PWM出力の更新周期はキャリア周期の2分の1となる。
0039
<電流値補正部(45)における補正演算>
d軸q軸それぞれのモータ電圧方程式は、以下のとおりである。
Vd = p(Ld・id) + Ra・id - ωLq・iq
Vq = p(Lq・iq) + Ra・iq + ωLd・id + ωφa
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
Ra:電機子抵抗
φa:永久磁石による電機子錯交磁束
p:微分演算子
0040
ここで、PWM出力の更新タイミングをt(n’)とし、d軸電流値およびq軸電流値の検出タイミングのうち更新タイミングt(n’)直前の検出タイミングをt(n)(第1検出タイミングに相当)、検出タイミングt(n)の前々回の検出タイミングをt(n-2)(第2検出タイミングに相当)とする。t(n-2)〜t(n’)の期間において、ω,Ld,Lq,Ra,φaが一定であると仮定する。また、 t(n-2)〜t(n’)の期間において、t(n) よりも前に出力した電圧をVd0, Vq0とし、t(n)よりも後に出力した電圧をVd1, Vq1とする。すると、上式は以下のように表すことができる。
Ld (id(n)-id(n-2))/(t(n)-t(n-2)) = Vd0 - Ra・id(n) + ωLq・iq(n)
Ld (id(n’)-id(n))/(t(n’)-t(n)) = Vd1 - Ra・id(n) + ωLq・iq(n)
Lq (iq(n)-iq(n-2))/(t(n)-t(n-2)) = Vq0 - Ra・iq(n) - ωLd・id(n) - ωφa
Lq (iq(n’)-iq(n))/(t(n’)-t(n)) = Vq1 - Ra・iq(n) - ωLd・id(n) - ωφa
上の式より、更新タイミングt(n’)におけるd軸電流id(n’)およびq軸電流iq(n’)は、次のように表すことができる。
id(n’) = id(n)
+ (id(n)-id(n-2))(t(n’)-t(n))/(t(n)-t(n-2))
+ (t(n’)-t(n))(vd1-vd0) /Ld …(1)
iq(n’) = iq(n)
+ (iq(n)-iq(n-2))(t(n’)-t(n))/(t(n)-t(n-2))
+ (t(n’)-t(n))(vq1-vq0) /Lq …(2)
ここでは、電流値補正部(45)は、上式(1),(2)に従って補正演算を行う。
0041
図3は本実施形態における電流値補正部(45)の動作例を示すタイミングチャートである。図3では、インバータ回路13の各スイッチング素子(Sup,…,Swn)のスイッチングパターンを電圧ベクトルで表示している。図4は電圧ベクトルV0〜V7と各スイッチング素子(Sup,…,Swn)のスイッチング状態の関係を示すテーブルである。図4では、シャント抵抗(53)(抵抗値R[Ω])の電圧値を併せて示している。
0042
図3の動作例では、制御部(40)は、PWMタイマカウンタが最小値または最大値となるタイミングにおいて、PWM出力(G)を更新するものとしている。すなわち、更新タイミングt(n’)は、PWMタイマカウンタが最小値または最大値となるタイミングに設定されている。また、制御部(40)は、電圧ベクトルV4,V5の切り替わりの前後において、d軸電流値およびq軸電流値を検出している。すなわち、検出タイミングt(n)は電圧ベクトルV4,V5の切り替わりのタイミングに設定されている。
0043
q軸電流の補正演算について説明する。なお、d軸電流の補正演算は、q軸電流の補正演算と同様であるため、詳細な説明は省略する。
0044
まず、検出タイミング間の電流変化を算出する(図3の(1))。ここでは、前々回の検出タイミングt(n-2)におけるq軸電流値iq(n-2)と、更新タイミングt(n’)の直前の検出タイミングt(n)におけるq軸電流値iq(n)との差(iq(n-2)-iq(n))を求める。そして、算出した差、すなわち検出タイミング間の電流変化による補正値を算出する(図3の(2))。ここでは、差(iq(n-2)-iq(n))に、時間比(t(n’)-t(n))/(t(n)-t(n-2))を乗じる。
0045
また、検出タイミング間の平均電圧を算出する(図3の(3))。ここでは、前々回の検出タイミングt(n-2)から直前の検出タイミングt(n)までの期間のq軸電圧Vqの平均電圧Vq0を求める。さらに、直前の検出タイミングt(n)と更新タイミングt(n’)との間の平均電圧Vq1を算出する(図3の(4))。そして、平均電圧の偏差(Vq1-Vq0)を算出し(図3の(5))、算出した平均電圧の偏差による補正値を算出する(図3の(6))。ここでは、偏差(Vq1-Vq0)に(t(n‘)-t(n))/Lqを乗じる。Ldはモータ(30)の機器定数から得られる。
0046
そして、直前の検出タイミングで検出したq電流値iq(n)に、図3の(2)で算出した検出タイミング間の電流変化による補正値と、図3の(6)で算出した平均電圧の偏差による補正値とを加算する。これにより、上述の式(1),(2)に従った補正が行われる。
0047
図5は上述したモータ電流値の補正演算の処理の流れを示すフローチャートである。ここではq軸電流の補正演算を例にとって説明するが、d軸電流の補正演算についても、処理の流れは同様である。まず、検出タイミング間の電流変化を算出し(S1)、算出した電流変化による補正値を算出する(S2)。また、検出タイミング間の平均電圧を算出する(S3)とともに、直前の検出タイミングと更新タイミングとの間の平均電圧を算出する(S4)。そして、その平均電圧の偏差を算出し(S5)、算出した平均電圧の偏差による補正値を算出する(S6)。そして、ステップS2,S6で算出した補正値を用いて、直前の検出タイミングにおいて検出したq軸電流の電流値を補正する。
0048
このような補正により、所定の更新タイミングt(n’)において、モータ電流リプルが抑制されるよう補正されたd軸電流(id)およびq軸電流(iq)を得ることができる。
0049
以上のように本実施形態によると、インバータ回路(13)における複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作は、制御部(40)によって、所定の更新タイミングにおいて、制御される。制御部(40)は、シャント抵抗(50)の両端間電圧から検出されたモータ電流値を用いて、複数のスイッチング素子(Sup,…,Swn)のオンオフ動作を制御する。そして、所定の更新タイミングにおけるモータ電流値は、複数回の検出タイミングにおいて検出されたモータ電流値を用いた補正演算によって、算出される。これにより、所定の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が算出されるので、電解コンデンサレスインバータによる制御において、より高精度の高調波抑制を行うことが可能になる。
0050
なお、本実施形態では、更新タイミングにおけるモータ電流値の補正演算に、直前の検出タイミング、および、前々回の検出タイミングにおける電流値と電圧値を用いたが、これに限られるものではない。例えば、直前の検出タイミングおよび前回の検出タイミングにおける電流値と電圧値を用いてもよいし、直前の検出タイミングを含む過去3回以上の検出タイミングにおける電流値と電圧値を用いてもかまわない。ただし、直前の検出タイミング、および、前々回の検出タイミングにおける電流値と電圧値を用いることによって、誤差の少ない演算を行うことができ、更新タイミング前の電流変化が的確に反映されたモータ電流値を得ることができる。
0051
誤差の少ない演算を行うことができる理由は、以下のとおりである。PWMインバータから出力される電圧ベクトルは、出力電圧位相に応じて刻々と変化する。電圧ベクトルの変化は、更新周期内に出力される各電圧ベクトルに対応したスイッチング状態の継続時間の変化として表れる。電圧ベクトル継続時間が変化することで、電流検出タイミングである電圧ベクトルの切り替わりタイミングは、更新周期内の全てのタイミングを取り得る。このため、更新タイミング直前の検出タイミングと前回の検出タイミングとの時間間隔は、検出に要する時間を除いて、最短でゼロに近づく。時間間隔が短い検出値を用いて演算を行うと、式(1),(2)における電流変化量のS/N比が低くなる。したがって、演算誤差が大きくなる。
0052
一方、更新タイミング直前の検出タイミングと前々回の検出タイミングとの時間間隔は、検出に要する時間を除いて、最短で更新周期(キャリア周期の2分の1)となる。一定以上の時間間隔が確保された検出値を用いて演算を行うと、式(1),(2)における電流変化量のS/N比が高くなる。したがって、誤差の小さい演算が可能になる。
0053
また、式(1),(2)には、ω,Ra,φaが含まれていない。つまり、正確なω,Ra,φaが分からなくても、電流の演算が可能となる。
0054
また、本実施形態では、シャント抵抗を用いて直流母線の負側より電流検出を行うものとしたが、本発明はこれに限られるものではない、例えば、CTを用いてもよいし、直流母線の正側より検出してもよい。
0055
また、本実施形態では、q軸電流およびd軸電流について補正演算を行うものとしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、q軸電流およびd軸電流の一方について、本実施形態で示した補正演算を行うものとしてもよい。
0056
また、本実施形態では、電解コンデンサレスインバータ制御の構成を前提としたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、直流リンク部に大容量の電解コンデンサを用いたインバータに適用することも可能である。この場合でも、PWM出力の更新タイミングにおいて、より精度の高いモータ電流値が算出されるので、モータ制御の精度が向上する。
0057
本発明は、電力変換回路において、直流母線において行うモータ電流検出をより高精度に実行するのに有用である。
0058
11コンバータ回路
13インバータ回路
20交流電源
30モータ
40 制御部
45電流値補正部
53シャント抵抗
54電流検出部
Cコンデンサ
Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn スイッチング素子
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