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課題

単純な組成太陽光エネルギーを効率よく吸収するとともに、沸点に達する前から効率よく蒸気を発生する流体を提供する。

解決手段

水にTiNナノ粒子を分散させた流体は、照射された太陽光の80%以上を吸収して熱に変換することができる。また、光照射によりナノ粒子だけが局所的に昇温することでその周囲の水が沸騰することから、流体全体が比較的低温でも同じ温度の水に比べて大量の水蒸気を発生する。なお、太陽光を良く吸収するナノ粒子であればTiN以外でも使用でき、またナノ粒子の分散媒水外液体でもよい。本発明の太陽光吸収流体は太陽光を熱に高い効率で変換する媒体としてだけではなく、低温で効率よく蒸留することにも応用可能である。

概要

背景

近年、自然エネルギーを有効に利用することによって二酸化炭素発生量を低減し、また化石燃料原子力の利用を削減するため、周知のとおり、各種の材料や装置の研究・開発が盛んに進められている。例えば太陽光エネルギーを利用するために各種の太陽電池が開発され、一部実用化が進んでいる。しかしながら、太陽電池の生産には高度の技術が必要とされることから製造コストが高くなるために、特殊な環境以外では各種の優遇処置を講じない限り既存の発電方式競合することは困難である。

太陽光から直接発電する代わりに、太陽光により流体昇温させてそこに熱を一旦蓄積し、蒸気を発生させる、その熱を他の場所へ輸送する、あるいはそのまま蓄積させておいて後で利用するという形態についても、発電から一般家庭用給湯設備まで、多様な装置が開発されている(例えば、特許文献1〜特許文献5等を参照)。しかし、この種の装置は太陽光エネルギーの利用効率が比較的低い、太陽光を効率よく取り込むために装置構成が複雑化する等の問題があった。

太陽光エネルギーを高い効率で流体に直接吸収させるため、金属または金属酸化物ナノ粒子溶媒中に分散させた流体に直接太陽光照射することが提案されている(特許文献6)。しかしながら、特許文献6は「銅、酸化銅ニッケル、その他、任意の金属種単体又は酸化物のナノ粒子」を使用できると記載しているものの、実際には金属または金属酸化物のナノ粒子の太陽光吸収率物質毎に異なることに基づいて、具体的にどのような材料のナノ粒子を選択すべきか、またその材料を選択する際の一般的な基準は何かについては何の考慮も払っていない。

また、特許文献7には、カーボンナノ粒子等の熱吸収性粒子気体中に分散させたエアゾルに太陽光を照射することで熱吸収性粒子を発熱させて周囲の気体を昇温させ、以て当該気体中での化学反応を促進することが開示されている。しかしながら、気体は液体に比べて熱容量が極めて小さいために太陽光エネルギーの蓄積やその移送用媒体としては不適切であり、従って本特許文献でも、気体をその場で昇温させてその中の化学反応を促進するという、熱の蓄積や移送とは別の用途・目的に上記現象を利用している。

蒸留は液体を蒸発させることが必要であるため、大きなエネルギーを必要とする。このエネルギーの全部または一部を太陽光で供給することができればエネルギーの節約に有効である。例えば海水等のそのままでは飲用に適さない水から淡水を製造する際の蒸留処理太陽熱を利用することは、特許文献3等に記載されている。しかし、太陽光はエネルギー密度がそれほど大きくないため、実用規模の蒸留に太陽光エネルギーを利用しようとすると、受光設備が大規模になる等の問題があった(特許文献5、特許文献8及び特許文献9等を参照)。

概要

単純な組成で太陽光エネルギーを効率よく吸収するとともに、沸点に達する前から効率よく蒸気を発生する流体を提供する。 水にTiNナノ粒子を分散させた流体は、照射された太陽光の80%以上を吸収して熱に変換することができる。また、光照射によりナノ粒子だけが局所的に昇温することでその周囲の水が沸騰することから、流体全体が比較的低温でも同じ温度の水に比べて大量の水蒸気を発生する。なお、太陽光を良く吸収するナノ粒子であればTiN以外でも使用でき、またナノ粒子の分散媒水外の液体でもよい。本発明の太陽光吸収流体は太陽光を熱に高い効率で変換する媒体としてだけではなく、低温で効率よく蒸留することにも応用可能である。

目的

本発明の課題は、従来技術の問題点を解消し、太陽光のエネルギーを高い効率で吸収して蓄積できるとともに、製造が容易かつ低価格の太陽光吸収流体を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

液体窒化チタンナノ粒子を分散させた流体であって、照射された光エネルギーを吸収して蓄積する太陽光吸収流体。

請求項2

前記窒化チタンの半径が10nm以上200nm以下である、請求項1に記載の太陽光吸収流体。

請求項3

前記液体が水である、請求項1または2に記載の太陽光吸収流体。

請求項4

前記窒化チタンナノ粒子を0.1重量%以上分散させた、請求項1から3の何れかに記載の太陽光吸収流体。

請求項5

複素誘電率実部が−20以上0以下であり、虚部が0以上20以下である金属の窒化物ホウ化物または炭化物のナノ粒子を液体中に分散させた流体であって、照射された太陽光エネルギーを吸収して蓄積する太陽光吸収流体。

請求項6

前記ナノ粒子が窒化ジルコニウム窒化ハフニウム窒化タンタル炭化チタン炭化タングテンホウ化ランタンホウ化チタンからなる群から選ばれた少なくとも一のナノ粒子である、請求項5に記載の太陽光吸収流体。

請求項7

前記ナノ粒子の半径が10nm以上200nm以下である、請求項5または6に記載の太陽光吸収流体。

請求項8

前記液体が水である、請求項5から7の何れかに記載の太陽光吸収流体。

請求項9

前記ナノ粒子を0.1重量%以上分散させた、請求項5から8の何れかに記載の太陽光吸収流体。

請求項10

誘電率の実部が−20以上0以下であり、虚部が0以上20以下であるナノ粒子を蒸留対象の液体に分散させ、前記前記ナノ粒子を分散させた液体への太陽光照射による加熱を行う蒸留方法

請求項11

前記ナノ粒子の半径は10nm以上200nm以下である、請求項10に記載の蒸留方法。

技術分野

0001

本発明は太陽光を効率よく吸収して蓄積する流体に関し、特に液体中に光吸収率の高いナノ粒子を分散させた太陽光吸収流体に関する。また、そのようなナノ粒子を蒸留処理対象の液体中に分散して太陽光を照射することによって蒸留を行う方法にも関する。

背景技術

0002

近年、自然エネルギーを有効に利用することによって二酸化炭素発生量を低減し、また化石燃料原子力の利用を削減するため、周知のとおり、各種の材料や装置の研究・開発が盛んに進められている。例えば太陽光エネルギーを利用するために各種の太陽電池が開発され、一部実用化が進んでいる。しかしながら、太陽電池の生産には高度の技術が必要とされることから製造コストが高くなるために、特殊な環境以外では各種の優遇処置を講じない限り既存の発電方式競合することは困難である。

0003

太陽光から直接発電する代わりに、太陽光により流体を昇温させてそこに熱を一旦蓄積し、蒸気を発生させる、その熱を他の場所へ輸送する、あるいはそのまま蓄積させておいて後で利用するという形態についても、発電から一般家庭用給湯設備まで、多様な装置が開発されている(例えば、特許文献1〜特許文献5等を参照)。しかし、この種の装置は太陽光エネルギーの利用効率が比較的低い、太陽光を効率よく取り込むために装置構成が複雑化する等の問題があった。

0004

太陽光エネルギーを高い効率で流体に直接吸収させるため、金属または金属酸化物のナノ粒子を溶媒中に分散させた流体に直接太陽光を照射することが提案されている(特許文献6)。しかしながら、特許文献6は「銅、酸化銅ニッケル、その他、任意の金属種単体又は酸化物のナノ粒子」を使用できると記載しているものの、実際には金属または金属酸化物のナノ粒子の太陽光吸収率物質毎に異なることに基づいて、具体的にどのような材料のナノ粒子を選択すべきか、またその材料を選択する際の一般的な基準は何かについては何の考慮も払っていない。

0005

また、特許文献7には、カーボンナノ粒子等の熱吸収性粒子気体中に分散させたエアゾルに太陽光を照射することで熱吸収性粒子を発熱させて周囲の気体を昇温させ、以て当該気体中での化学反応を促進することが開示されている。しかしながら、気体は液体に比べて熱容量が極めて小さいために太陽光エネルギーの蓄積やその移送用媒体としては不適切であり、従って本特許文献でも、気体をその場で昇温させてその中の化学反応を促進するという、熱の蓄積や移送とは別の用途・目的に上記現象を利用している。

0006

蒸留は液体を蒸発させることが必要であるため、大きなエネルギーを必要とする。このエネルギーの全部または一部を太陽光で供給することができればエネルギーの節約に有効である。例えば海水等のそのままでは飲用に適さない水から淡水を製造する際の蒸留処理に太陽熱を利用することは、特許文献3等に記載されている。しかし、太陽光はエネルギー密度がそれほど大きくないため、実用規模の蒸留に太陽光エネルギーを利用しようとすると、受光設備が大規模になる等の問題があった(特許文献5、特許文献8及び特許文献9等を参照)。

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の課題は、従来技術の問題点を解消し、太陽光のエネルギーを高い効率で吸収して蓄積できるとともに、製造が容易かつ低価格の太陽光吸収流体を提供することにある。また、太陽光のエネルギーを使用して蒸留を行う際の太陽光エネルギーの利用効率を向上させることもその課題とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明の一側面によれば、液体に窒化チタンナノ粒子を分散させた流体であって、照射された光エネルギーを吸収して蓄積する太陽光吸収流体が与えられる。
ここで、前記窒化チタンの半径が10nm以上200nm以下であってよい。
また、前記液体が水であってよい。
また、前記窒化チタンナノ粒子を0.1重量%以上分散させてよい。
本発明の他の局面によれば、複素誘電率実部が−20以上0以下であり、虚部が0以上20以下である金属の窒化物ホウ化物または炭化物のナノ粒子を液体中に分散させた流体であって、照射された太陽光エネルギーを吸収して蓄積する太陽光吸収流体が与えられる。
ここで、前記ナノ粒子が窒化ジルコニウム窒化ハフニウム窒化タンタル炭化チタン炭化タングテンホウ化ランタンホウ化チタンからなる群から選ばれた少なくとも一のナノ粒子であってよい。
また、前記ナノ粒子の半径が10nm以上200nm以下であってよい。
また、前記液体が水であってよい。
また、前記ナノ粒子を0.1重量%以上分散させてよい。
本発明の更に他の局面によれば、複素誘電率の実部が−20以上0以下であり、虚部が0以上20以下であるナノ粒子を蒸留対象の液体に分散させ、前記ナノ粒子を分散させた液体への太陽光照射による加熱を行う蒸留方法が与えられる。
ここで、前記ナノ粒子の半径は10nm以上200nm以下であってよい。

発明の効果

0009

本発明の太陽光吸収流体は組成製法が単純・容易であるにもかかわらず、高い太陽光エネルギー吸収効率を示す。更には、ナノ粒子を分散させる液体が水などのように蒸発しやすいものである場合には、当該液体を単独で加熱した場合に比べて低温から蒸気を盛んに発生させることができるため、蒸留などに応用した場合に、従来よりも低温で蒸留が可能となり、この点でも太陽光エネルギーの利用効率が向上する。

図面の簡単な説明

0010

本発明の一実施形態の太陽光吸収流体の原理概念的に示す図。
本発明の一実施例の太陽光吸収流体に使用したTiNナノ粒子の300nm〜2000nmの波長域内における複素誘電率の実部及び虚部の値の変化を示すグラフ
本発明の一実施例の太陽光吸収流体に使用したTiNナノ粒子の(a)低解像度及び(b)高解像度透過型電子顕微鏡像
上記TiNナノ粒子の太陽光吸収率を正規化したグラフを、太陽光スペクトルと重ねて示すグラフ。
上記TiNナノ粒子を水中に分散させた状態で表面積測定装置を使用して測定したTiNナノ粒子の直径の分布を示すヒストグラム
上記TiNナノ粒子を水中に分散させた本発明の一実施例の太陽光吸収流体及び純水をそれぞれ透明容器に入れてソーラーシミュレータで照射した実験結果を示す一連写真
上記TiNナノ粒子を水中に分散させた本発明の一実施例の太陽光吸収流体をソーラーシミュレータで照射したときの、太陽光吸収流体の重量減少(水の蒸発量)の時間変化を示すグラフ。
上記TiNナノ粒子を水中に分散させた本発明の一実施例の太陽光吸収流体と純水とを、両者の温度が同じになる照射条件でソーラーシミュレータで照射したときの、太陽光吸収流体及び純水の重量減少(水の蒸発量)の時間変化を比較して示すグラフ。
TiNナノ粒子、Auナノ粒子及びカーボンナノ粒子を水に分散させた際の吸収効率の波長による変化を示す図。

0011

本発明の一実施形態によれば、図1に模式的に示すように、窒化チタンなどの太陽光スペクトルに対する吸収率が高く、また化学的物理的に安定性の高い金属の窒化物、ホウ化物または炭化物のナノ粒子を液体中に分散させた太陽光吸収流体が提供される。この液体としては比熱が大きくまた入手が極めて容易であることから、通常は水を利用するのが便利であるが、太陽光吸収流体の用途等に応じてそれ以外の各種の液体から適宜選択することができる。この太陽光吸収流体に太陽光が照射されると、分散されているナノ粒子が照射された太陽光を吸収して発熱することで、太陽光のエネルギーにより流体を昇温させ、またナノ粒子を分散させている液体にその熱を蓄積することができる。

0012

分散させるナノ粒子に求められる好適な条件としては、粒子の半径の範囲及び複素誘電率の実部及び虚部の範囲等がある。ナノ粒子の半径は10nm以上200nm以下が太陽光の吸収率の点から好ましい。ただし、この範囲の端点を境として特性が急激に変化するわけではないので、この範囲からある程度外れても、もう一つの条件である複素誘電率の好適な範囲への適合性が高ければ全体として光の吸収率は比較的高くなる。ナノ粒子の複素誘電率については、その実部が−20以上0以下であり、かつ虚部が0以上20以下であれば、光の吸収率が高くなるので好ましい。しかし、本発明における吸収対象である太陽光では、大きなエネルギーを持っている波長範囲はほぼ300〜2500nmと広いが、ナノ粒子材料の複素誘電率は波長依存性波長分散)があるため、この条件を波長範囲全体に渡って満たすという意味で完全な材料はまだ発見できていない。従って、液体中に分散するナノ粒子としては、できるだけ広い波長範囲でこの条件を満たすものを選択することになるが、その一つとして窒化チタン(TiN)ナノ粒子が挙げられる。図2に波長300nm〜2000nmの範囲内でのTiNの複素誘電率の実部(淡灰色)及び虚部(黒色)の変化を示す。このグラフからわかるように、TiNでは上記条件(実部が−20以上0以下、かつ虚部が0以上20以下)を満たす波長範囲は太陽光スペクトルの範囲の一部である500nm〜1600nm(波長範囲幅1100nm)、短波長端付近での実部のわずかなうねりにより実部が僅かに正になっている個所も光の吸収域が良好な波長範囲に含めれば300nm〜1600nm(波長範囲幅1300nm)である。このように、本発明で使用するナノ粒子は、太陽光スペクトル波長域中の少なくとも一部において、複素誘電率の実部及び虚部が上記条件を満たすことが好ましい。また、太陽光スペクトル中でエネルギーが特に大きな500nm〜1000nmの範囲全域で複素誘電率の実部及び虚部が上記条件を満たせば更に好ましい。

0013

もちろん、TiN以外のナノ粒子も、入手や製造の容易さ、価格、光吸収効率、本発明の太陽光吸収流体として所定の用途に使用した場合の各種の適合性等に応じて適宜選択することができる。具体的には窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化タンタル(TaN)などの金属窒化物、炭化チタン(TiC)、炭化タングズテン(WC)などの金属カーバイド、ホウ化ランタン(LaB6)、ホウ化チタン(TiB2)などの金属ホウ化物などが挙げられる。これらのナノ粒子は上記材料から選択された単一の材料のナノ粒子であってもよいし、あるいは複数の材料のナノ粒子を混合したものであってもよい。例えば光吸収率の高い波長範囲の異なる複数の材料を選択して、これらの複数の材料からそれぞれナノ粒子を作製し、これらの材料が互いに異なるナノ粒子を液体中に分散することができる。これにより、単一の材料からなるナノ粒子を分散させた場合よりも太陽光スペクトル中のより広い範囲で高い光吸収を実現することができる。

0014

このようなナノ粒子を水等の液体中に分散させることによって太陽光吸収流体が得られる。ナノ粒子を液体中に投入して攪拌超音波照射するだけで容易に分散する場合もあるが、もしそれだけでは簡単に分散しない場合には、分散を補助するための他の物質を投入したり、あるいは光吸収性に大きな悪影響を与えないのであればナノ粒子の表面処理を行ったりこのナノ粒子に分散性の良い他の材料を付加する等の各種の対策が可能である。あるいは、所望のナノ粒子を分散させている他の液体を対象とする液体と混合したり、所望の液体中でナノ粒子を作製することで最初から分散状態にあるナノ粒子を得ることもできる。本発明は上述した、またこれ以外の任意の方法で得られた太陽光吸収流体を包含するものであることに注意されたい。

0015

また、液体中に分散するナノ粒子の量については、もちろん量を少なくしていっても分散量に応じて照射される光を吸収するが、あまり少量ではナノ粒子を分散させていない液体に比べて顕著な違いが出ない。従って、太陽光吸収流体中に占めるナノ粒子の割合は0.1重量%以上とするのが好ましい。もちろん、この0.1重量%よりも低濃度の場合に本発明の効果がなくなるわけではなく、それなりの太陽光吸収が行なわれる。従って、目的、用途、使用環境等の諸条件により、例えば0.02重量%以上や0.05重量%以上といった別の濃度範囲が好ましいこともある。

0016

本発明で使用するナノ粒子は既知の多様な方法で作成することができる。一例を挙げれば以下で説明する本発明の実施例で使用するTiNナノ粒子は、熱プラズマ法原料熱プラズマで蒸発させてからクエンチ急冷)する)によって作製することができる。この方法は当業者に周知のものであるため、本願ではこれ以上具体的に説明しないが、必要に応じて非特許文献1、非特許文献2等を参照されたい。

0017

このようにして得られた本発明の太陽光吸収流体は、それ自体が高い太陽光吸収率を有するため、光を吸収して発熱する部材を流体を循環させるパイプ等の外部やあるいは流体容器透明窓の反対側の内面に太陽光を受けて発熱する材料を塗布や貼付等によって設置する等の構造が不要となる。これにより、本発明の太陽光吸収流体を使用した太陽光吸収装置の構造が簡単となるだけではなく、液体自体が発熱するため熱が外部に失われにくく、太陽光の利用効率が良くなる。使用するナノ粒子及びそれを分散させる液体を適宜選択することにより、入射した太陽光エネルギーを熱に変換する効率が80%以上とすることもできる。当該80%以上の効率は、TiNナノ粒子を水に分散させた太陽光吸収流体にソーラーシミュレータで光を照射し、照射した光エネルギーに対する水温上昇及び水蒸気発生に使用されたエネルギーの比を求めることで算出したものである。

0018

更に、本発明の太陽光吸収流体では、太陽光照射を受けて流体全体が一様に発熱するのではなく、上述したように、流体に占める体積としてはごく僅かな個々のナノ粒子が極めて局所的に発熱して高温となる傾向がある。そのため、流体全体の温度がナノ粒子を分散している液体の沸点よりもかなり低くても、流体内部の上述の極めて局所的な領域が周囲に比べて高温となるために当該領域から液体の蒸気が発生する(図1参照)。もちろん、ナノ粒子近傍で発生したこのような蒸気が全て液体表面から出ていくわけではないが、凝縮する前に太陽光吸収流体表面に到達した蒸気はこの流体外部に放出される。従って、ナノ粒子を混合しない分散用の液体を同じ温度まで加熱した場合に比較すると、本発明の太陽光吸収流体の方が大量の蒸気を発生することができる。この特徴を利用することにより、海水や汚水の蒸留等、蒸気を発生させることによって溶液中の特定成分濃縮あるいは除去する処理(本願ではこれらの処理を何れも蒸留と呼ぶ)を従来に比較して低温で行うことができるようになるから、このような蒸留装置エネルギー利用効率を改善することができるようになる。なお、蒸留のための熱エネルギーを太陽光だけから供給して良いし、あるいは一部の熱エネルギーを他の熱源から供給してもよい。例えば、蒸留対象の液体を主に他の熱源からの熱で蒸留温度まで加熱し、太陽光は蒸留を維持するための主なエネルギー源として利用して良い。

0019

その他、温排水等の排熱を利用した熱起電力発電システムにおいて、上記サイズや複素誘電率の条件を満たすナノ粒子を温水等の昇温された液体中に分散させて太陽光を照射する装置を追加することで、当該液体の温度を上昇させて発電素子に加わる温度差を大きくし発電効率を向上させることもできる。また、本発明の太陽光吸収流体を用いた熱収集回路を用い、昇温された流体を外気に触れさせる代わりに、ヒートポンプ熱交換器に接触させることで、より高効率かつ大きなエネルギーを利用することもできる。

0020

また、本発明ではソーラーシミュレータ等の、発光スペクトルを太陽光に合わせた光源からの光も太陽光であるとすることに注意されたい。

0021

[TiNナノ粒子と水を使用した太陽光吸収流体]
以下のようにしてTiNナノ粒子を水に分散させた太陽光吸収流体を作製して評価した。

0022

実施例で使用したTiNナノ粒子は熱プラズマ法によって作製したものであり、その直径は約28nmであった。その透過型電子顕微鏡TEM)で観察した結果である倍率の異なる2枚のTEM像図3に示す。なお、上に述べたTiNナノ粒子の直径は一次粒子(単一の一次粒子を図3(b)の高倍率TEM像に示す)の直径である。また、そのようなTiNナノ粒子の一次粒子がある程度まとまった二次粒子図3(a)の低倍率TEM像中に示されている。

0023

このTiNナノ粒子の正規化した吸収スペクトル黒線)を太陽光スペクトルの短波長側(淡灰色)とともに図4に示す。更に、このTiNナノ粒子を水中に分散させた状態で表面積測定装置で測定されたTiNナノ粒子の直径の分布を示すヒストグラムを図5に示す。ここで、使用したTiNナノ粒子の一次粒子の直径が約28nmであったにもかかわらず、図5中には平均直径が約120nmであるとの記載がある。このような違いが出るのは、水中ではTiNナノ粒子は一次粒子が互いに孤立した状態で分散しているのではなく、いくつかの一次粒子がある程度凝集した二次粒子を形成しており、また図5に使用した測定結果を得るための測定方法では、このように凝集した二次粒子の直径が得られるためである。また、本発明の作用である光吸収を考える場合には個々の粒子としては二次粒子を考えるのが適切であるため、本発明においてナノ粒子の好適な大きさを論ずる場合には、太陽光吸収流体中に分散している状態で二次粒子を形成しているのであれば、当該二次粒子の大きさを使用する。

0024

このTiNナノ粒子を水に約0.1重量%分散させて作製した太陽光吸収流体を透明容器に収容して、太陽光の代用としてAM1.5の光を発生するソーラーシミュレータで光照射を行った。光の放射強度は1500W/m2、室温は23℃とした。また、比較対象として同じ量の純水を形状及びサイズが同じである別の透明容器に収容して、同じ照射条件となるようにして光照射を行った。その照射前(0分)、照射開始から5分経過時点(5分)、10分経過時点(10分)及び15分経過時点(15分)における両容器外観を示す写真を図6に示す。

0025

これらの写真中の2つの容器内の流体を比較すると、写真中で奥側に置かれた容器中の純水が透明であることはもちろんであるが、手前側の容器中のTiNナノ粒子を0.1重量%という僅かな量分散させた光吸収流体は濃黒色を呈している。これは、水中のTiNナノ粒子が少なくとも可視領域の光についてはどの波長でも高い吸光度を示すことを意味している。

0026

次に、時間の経過を追って太陽光吸収流体の入っている手前側の容器の見え方を観察すると、5分経過時点では容器壁曇りがやや増えたように見えるだけであるが、10分経過時点では容器壁内面に細かな水滴が一面に付着していることがはっきりわかった。15分経過時点ではこのような水滴がさらに大きく成長していた。この状態で太陽光吸収流体と純水との比較を容易にするために、これら2つの容器を左右に並置した状態の写真を15分経過時点の写真の上側に示す。この写真により比較を行ったところ、純水側容器は太陽光吸収流体と同じ光を同じ時間照射したにもかかわらず、その内壁には水滴の付着が認められなかった。この結果から、実施例で作製したTiNナノ粒子を分散した太陽光吸収流体は、0.1重量%という低濃度であるにもかかわらず、別に光吸収材を容器の外壁近傍に取り付けたり、あるいは容器内に収容しなくても、太陽光吸収流体単独で高い効率で太陽光を吸収して昇温したこと、及び太陽光照射により短時間のうちにかなりの量の水蒸気が発生したことが確認できた。

0027

このように、本発明の太陽光吸収流体は光吸収・発熱用の部材を別途必要とせず、液体自体が太陽光を高い効率で吸収して熱の形で蓄積することができるため、例えばこのような流体を太陽光照射下で透明なパイプ等の透明流路に流すという極めて簡単な装置構成を利用して、高い効率で太陽光エネルギーを集めることができる。

0028

次に、本発明の太陽光吸収流体に光を照射することによる蒸発量を測定した結果を図7に示す。これは、20mgのTiNナノ粒子を10mlの純水に分散させた太陽光吸収流体(図7中のキャプションでは「TiN0.2wt%」)を上部が解放された容器(開口部面積7cm2、光の照射面積25cm2)に収容し、AM1.5のソーラーシミュレータを用い、室温23℃において1000W/m2の照度で光を照射しながら、照射開始時点からの蒸発量を測定したものである。更に、比較のため、同量の純水のみを同じ容器に入れて同じ照射条件で蒸発量を測定した結果も示した。両者を比較することにより、同じ条件で光照射を行った場合に、純水と比較して本発明の太陽光吸収流体の方が遙かに大きな蒸発量を示すことが確認できた。

0029

上述のような同一の照射条件でTiNナノ粒子分散水と純水を比較すると、前者のほうがよく光を吸収するため水温が高くなる。そのため、前者のほうが大きな蒸発量を示す理由は水温が高いことに起因するとも考えられる。そのため、TiNナノ粒子分散水と純水への照射光強度をそれぞれ896W/m2、1273W/m2として約1時間放置してどちらの水温も32度で一定になった状態を得た。なお、この実験ではどちらも20mlの液体を開口部面積15.9cm2の容器にいれた。図8に水の蒸発量の時間変化を示す。水温がどちらも一定であるにも関わらず、TiNナノ粒子分散水のほうが多くの水蒸気を発生していることがわかる。このことから、TiNナノ粒子分散水の温度があまり上昇しないうちから、ナノ粒子を分散していない同種の液体に比べて同一の温度で大きな蒸発速度を持つことが確認できた。

0030

このように、本発明によれば、ナノ粒子を分散させている液体の沸点よりも低い温度において、ナノ粒子を分散させていない場合に比べて速い速度で当該液体を蒸発させることができるため、蒸留等をより低温で行うことができ、従って蒸留等の際のエネルギーの損失を低減させることが可能となる。

0031

図9に、半径が50nmのTiN、Au及びカーボンのナノ粒子をそれぞれ1個水に分散させた状態での光吸収効率Qabsの波長による変化を計算した結果のグラフを示す。また、各部グラフには光吸収効率を波長について積分した値もそれぞれ示す。なお、この計算に当たって使用したこれらのナノ粒子の複素誘電率のデータについてはそれぞれ非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5に記載のものを使用した。

0032

図9中のグラフを比較すれば、これら三種類の物質により、また同じ材料であっても波長が異なることで、光吸収効率Qabsは大きく変化することがわかる。光吸収効率Qabsは(また、光散乱や透過も)物質の複素誘電係数によって支配される。例えば、半径50nmのAuナノ粒子の場合、700nm以上の近赤外光に対して光(電磁場)との相互作用が弱くなり、光吸収効率Qabsは小さくなる(光散乱効率Qscatも同じく小さくなる)。

0033

基本的には波長に対してプロットした光吸収効率Qabsの面積が大きい方が(つまり、Qabsを波長について積分した値が大きい方が)広い波長範囲にわたって太陽光を多く吸収する。従って、当該積分値が本発明の太陽光吸収流体の効率に最も大きく影響する。これに加えて光散乱効率Qscatが大きいと、光がナノ粒子分散溶液内に入ればより効率よくナノ粒子に吸収されるが、同時に光が溶液に入射するときの反射散乱が大きくなる。今の段階では光散乱効率Qscatの影響を定量的に評価できていないが、定性的に言えば、光散乱効率Qscatが大きいと太陽光吸収流体内での光吸収効率が上がり、太陽光吸収流体の層を浅くできる。しかしながら、光散乱効率Qscatの増大は、一方では太陽光が太陽光吸収流体に入射する際の反射や散乱成分を増やしてしまうことにつながるため、特にQscatの値(積分値ではない)が1以上の場合は材料選択の際に注意が必要である。

実施例

0034

図9に示した計算結果を上の観点で評価すれば、これら三種類の物質中では、本発明の太陽光のスペクトル中で広い範囲にわたって高い光吸収効率を示す(従って、光吸収効率の積分値が大きい)TiNナノ粒子が太陽光吸収流体用のナノ粒子として最適であり、その次がカーボンナノ粒子、Auナノ粒子が一番性能が落ちるという結論となる。また、Auナノ粒子は高価であり、本発明の応用分野には不向きである。なお、他の金属を使用した場合、そのような金属は通常はAuよりも安定性が低いため、やはり本発明に使用するナノ粒子としては不適切である。カーボンナノ粒子については、図9に示した通り、ある程度高い太陽光吸収能力を有することがわかったが、それでもまだ不十分である。その理由の一つは、炭素は複素誘電率の実部が可視光と近赤外光の範囲では負にならず、−20以上0以下という条件を満足しないからである。

0035

以上詳細に説明したように、本発明によれば、簡単な組成・構成で太陽光のエネルギーを熱の形で流体に移転し蓄積することができ、また各種の蒸留の効率を向上させることができるため、広い技術分野での利用が期待できる。

0036

特開2013−83235号公報
特開2009−156537号公報
特開2013−215653号公報
特表2014−531351号公報
特開2013−155993号公報
特開2010−144957号公報
特表2005−511467号公報
登録実用新案第3140396号公報
登録実用新案第3090763号公報

先行技術

0037

http://www.nisshineng.co.jp/powder_proccesing/nano/index.html
日本エアロゾル学会 エアロゾル研究 第29巻 pp. 98-103 (2014)
Naik, Gururaj V., et al. "Titanium nitride as a plasmonic material for visible and near-infrared wavelengths." Optical Materials Express 2.4 (2012): 478-489.
P. Johnson and R. Christy, “Optical constants of the noble metals,” Phys. Rev. B6, 4370-4379 (1972).
PALIK, Edward D. (ed.). Handbook of optical constants of solids. Academic press, 1998.

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