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技術 モールド製造用アルミニウム原型、モールドとその製造方法、および成形体

出願人 三菱ケミカル株式会社日本軽金属株式会社
発明者 尾野本広志小澤覚中井祐介北浩昭白井孝太岡田浩
出願日 2015年1月8日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2015-002423
公開日 2016年7月11日 (3年0ヶ月経過) 公開番号 2016-125129
状態 特許登録済
技術分野 表面反応による電解被覆 プラスチック等の成形用の型
主要キーワード 先鋭形 各観察点 釣鐘形状 重合反応性化合物 立体形 ロータス効果 溶出効果 鍛錬成形比
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年7月11日)のものです。
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図面 (7)

課題

表面品質が高く、結晶粒模様視認しにくいモールドを得ることができ、加工性に優れたモールド製造用アルミニウム原型、該モールド製造用アルミニウム原型を用いて得られるモールドとその製造方法、および該モールドを用いて得られる成形体の提供。

解決手段

複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造に用いられるアルミニウム原型であって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材塑性加工してなり、マグネシウム含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するモールド製造用アルミニウム原型を用いる。

概要

背景

近年、微細加工技術の進歩により、成形体の表面にナノスケール微細凹凸構造を付与することが可能となった。ナノスケールの微細凹凸構造は、例えばモスアイ効果と呼ばれる反射防止機能や、ロータス効果と呼ばれる撥水機能のように、構造由来の機能が発現することから、ナノスケールの微細凹凸構造の産業上の利用が盛んに図られている。

成形体の表面に微細凹凸構造を付与する技術は様々である。これらのうち、金型モールド)の表面に形成された微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法は、簡便かつ少ない工程で成形体の表面に微細凹凸構造を付与できるため、工業生産に適している。近年、微細凹凸構造を表面に有する大面積のモールドを簡便に製造する方法として、アルミニウム原型陽極酸化することによって複数の細孔を有する酸化皮膜陽極酸化ポーラスアルミナ)を利用する方法が注目されている。

アルミニウム原型の表面に陽極酸化処理を施し、この表面をモールドとして転写物を製造する場合、モールド表面がそのまま転写物に反映されるため、モールドの表面品質が重要である。
モールドの表面品質に影響を与えるものとして、アルミニウム原型中の「第2相粒子」、「結晶粒組織結晶粒度結晶方位)」や、アルミニウム原型素材の「鏡面加工性」が挙げられている。
なお、「第2相粒子」とは、アルミニウム母相とは異なる相を形成する粒子のことであり、例えばアルミニウム合金中の鉄(Fe)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)系化合物などが挙げられる。

一般的に、第2相粒子等の異物がアルミニウム原型の表面に存在すると、異物付近で陽極酸化が阻害され、陽極酸化処理時に不連続な凸部を形成したり、第2相粒子が脱落して凹み状欠陥を形成したりして、モールドの表面に欠陥が生じやすくなる。表面に欠陥が生じたモールドを用いて転写すると、モールドの欠陥部分に該当する転写部分が不連続の凹凸となり、通過光散乱し、転写物の反射防止性が低下することとなる。

そのため、モールドの表面の欠陥になりうるアルミニウム原型中の第2相粒子は極力少ないことが望ましい。第2相粒子を少なくするためには、第2相粒子の由来となる元素を添加せず、かつ不純物が少ない高純度アルミニウムを用いればよい。
しかし、高純度のアルミニウムは、モールドとして使用するには強度が低く切削研磨加工性が悪い。そこで、通常は、アルミニウムの強度を高めて加工性を向上させるために、アルミニウム原型素材中へ異種元素を添加する(例えば特許文献1参照)。

また、アルミニウム原型は、例えばアルミニウムを溶解して鋳造し、アルミニウム原型素材とした後、アルミニウム原型素材に塑性加工および熱処理を施して製造されるが、高純度のアルミニウムを用いた場合、鋳造組織が大きくなり、塑性加工による組織微細化が難しくなる傾向にある。このようなアルミニウム原型を陽極酸化すると、酸化皮膜にもアルミニウムの結晶粒模様が形成され、この結晶粒模様が転写物にも転写されるため、転写物の見た目が損なわれることとなる。そこで、アルミニウムの溶湯に微細化剤(例えばアルミニウム−チタン−ホウ素合金(Al−Ti−B系合金))を添加することで鋳造組織を微細にする。
しかし、高純度のアルミニウムの場合は微細化しにくく、微細化剤の添加量が増える傾向にある。そのため、微細化剤に起因した第2相粒子(例えば二ホウ化チタン(TiB2))が増加し、モールドの表面品質が損なわれる。

そこで、加工性を向上させることを目的として、アルミニウムに対する固溶限の高いマグネシウムを0.5〜3.0質量%添加することで微細化剤の使用を低減し、第2相粒子の生成を抑える方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。

概要

表面品質が高く、結晶粒模様が視認しにくいモールドを得ることができ、加工性に優れたモールド製造用アルミニウム原型、該モールド製造用アルミニウム原型を用いて得られるモールドとその製造方法、および該モールドを用いて得られる成形体の提供。複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造に用いられるアルミニウム原型であって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなり、マグネシウムの含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するモールド製造用アルミニウム原型を用いる。なし

目的

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面品質が高く、結晶粒模様が視認しにくいモールドを得ることができ、加工性に優れたモールド製造用アルミニウム原型、該モールド製造用アルミニウム原型を用いて得られるモールドとその製造方法、および該モールドを用いて得られる成形体を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造に用いられるアルミニウム原型であって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材塑性加工してなり、マグネシウム含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有する、モールド製造用アルミニウム原型。

請求項2

前記複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織からなる部分が鏡面化されている、請求項1に記載のモールド製造用アルミニウム原型。

請求項3

鉄およびチタンの含有量の合計が50質量ppm以下である、請求項1または2に記載のモールド製造用アルミニウム原型。

請求項4

ビッカース硬度が25HV以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモールド製造用アルミニウム原型。

請求項5

請求項1〜4のいずれか一項に記載のモールド製造用アルミニウム原型の被加工面を電解液中、定電圧下陽極酸化して、前記被加工面に酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程(a)と、前記酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を前記被加工面に形成する酸化皮膜除去工程(b)と、前記細孔発生点が形成された被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、前記細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を前記被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程(c)と、を含む、モールドの製造方法。

請求項6

前記第2の酸化皮膜形成工程(c)の後、酸化皮膜を溶解する溶液にモールド製造用アルミニウム原型を浸漬して細孔の径を拡大させる孔径拡大処理工程(d)と、前記孔径拡大処理工程(d)の後、前記第2の酸化皮膜形成工程(c)と孔径拡大処理工程(d)とを繰り返す繰り返し工程(e)と、をさらに含む、請求項5に記載のモールドの製造方法。

請求項7

複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドであって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなり、マグネシウムの含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するモールド製造用アルミニウム原型の該表面に、周期可視光波長以下である複数の細孔を有する酸化皮膜が形成された、モールド。

請求項8

表面に存在する、直径が4μm以上の凹み状欠陥の数が60個/mm2以下である、請求項7に記載のモールド。

請求項9

微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、前記微細凹凸構造が、請求項7または8に記載のモールドの表面の微細凹凸構造の反転構造である、成形体。

請求項10

表面に、直径が100μm以上の欠陥が存在しない、請求項9に記載の成形体。

技術分野

0001

本発明は、モールド製造用アルミニウム原型、モールドとその製造方法、および成形体に関する。

背景技術

0002

近年、微細加工技術の進歩により、成形体の表面にナノスケール微細凹凸構造を付与することが可能となった。ナノスケールの微細凹凸構造は、例えばモスアイ効果と呼ばれる反射防止機能や、ロータス効果と呼ばれる撥水機能のように、構造由来の機能が発現することから、ナノスケールの微細凹凸構造の産業上の利用が盛んに図られている。

0003

成形体の表面に微細凹凸構造を付与する技術は様々である。これらのうち、金型(モールド)の表面に形成された微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法は、簡便かつ少ない工程で成形体の表面に微細凹凸構造を付与できるため、工業生産に適している。近年、微細凹凸構造を表面に有する大面積のモールドを簡便に製造する方法として、アルミニウム原型を陽極酸化することによって複数の細孔を有する酸化皮膜陽極酸化ポーラスアルミナ)を利用する方法が注目されている。

0004

アルミニウム原型の表面に陽極酸化処理を施し、この表面をモールドとして転写物を製造する場合、モールド表面がそのまま転写物に反映されるため、モールドの表面品質が重要である。
モールドの表面品質に影響を与えるものとして、アルミニウム原型中の「第2相粒子」、「結晶粒組織結晶粒度結晶方位)」や、アルミニウム原型素材の「鏡面加工性」が挙げられている。
なお、「第2相粒子」とは、アルミニウム母相とは異なる相を形成する粒子のことであり、例えばアルミニウム合金中の鉄(Fe)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)系化合物などが挙げられる。

0005

一般的に、第2相粒子等の異物がアルミニウム原型の表面に存在すると、異物付近で陽極酸化が阻害され、陽極酸化処理時に不連続な凸部を形成したり、第2相粒子が脱落して凹み状欠陥を形成したりして、モールドの表面に欠陥が生じやすくなる。表面に欠陥が生じたモールドを用いて転写すると、モールドの欠陥部分に該当する転写部分が不連続の凹凸となり、通過光散乱し、転写物の反射防止性が低下することとなる。

0006

そのため、モールドの表面の欠陥になりうるアルミニウム原型中の第2相粒子は極力少ないことが望ましい。第2相粒子を少なくするためには、第2相粒子の由来となる元素を添加せず、かつ不純物が少ない高純度アルミニウムを用いればよい。
しかし、高純度のアルミニウムは、モールドとして使用するには強度が低く切削研磨加工性が悪い。そこで、通常は、アルミニウムの強度を高めて加工性を向上させるために、アルミニウム原型素材中へ異種元素を添加する(例えば特許文献1参照)。

0007

また、アルミニウム原型は、例えばアルミニウムを溶解して鋳造し、アルミニウム原型素材とした後、アルミニウム原型素材に塑性加工および熱処理を施して製造されるが、高純度のアルミニウムを用いた場合、鋳造組織が大きくなり、塑性加工による組織微細化が難しくなる傾向にある。このようなアルミニウム原型を陽極酸化すると、酸化皮膜にもアルミニウムの結晶粒模様が形成され、この結晶粒模様が転写物にも転写されるため、転写物の見た目が損なわれることとなる。そこで、アルミニウムの溶湯に微細化剤(例えばアルミニウム−チタン−ホウ素合金(Al−Ti−B系合金))を添加することで鋳造組織を微細にする。
しかし、高純度のアルミニウムの場合は微細化しにくく、微細化剤の添加量が増える傾向にある。そのため、微細化剤に起因した第2相粒子(例えば二ホウ化チタン(TiB2))が増加し、モールドの表面品質が損なわれる。

0008

そこで、加工性を向上させることを目的として、アルミニウムに対する固溶限の高いマグネシウムを0.5〜3.0質量%添加することで微細化剤の使用を低減し、第2相粒子の生成を抑える方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。

先行技術

0009

特許第4531131号公報
国際公開第2011/030850号

発明が解決しようとする課題

0010

しかしながら、特許文献2に記載の方法では使用を低減したとはいえ、微細化剤を添加するため、必ずしもモールドの表面品質を満足するものではなかった。
このように、アルミニウム原型の加工性の向上や鋳造組織の微細化のために、種々の元素や微細化剤を添加すると、これらは第2相粒子となり、モールドの表面品質が損なわれる。しかし、微細化剤等を添加しないとアルミニウム原型の強度が不足し、加工が困難となる。また、モールドに結晶粒模様が形成されやすくなり、転写物の外観が損なわれる。

0011

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面品質が高く、結晶粒模様が視認しにくいモールドを得ることができ、加工性に優れたモールド製造用アルミニウム原型、該モールド製造用アルミニウム原型を用いて得られるモールドとその製造方法、および該モールドを用いて得られる成形体を提供する。

課題を解決するための手段

0012

本発明は以下の態様を有する。
[1] 複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造に用いられるアルミニウム原型であって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなり、マグネシウムの含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有する、モールド製造用アルミニウム原型。
[2] 前記複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織からなる部分が鏡面化されている、[1]に記載のモールド製造用アルミニウム原型。
[3] 鉄およびチタンの含有量の合計が50質量ppm以下である、[1]または[2]に記載のモールド製造用アルミニウム原型。
[4]ビッカース硬度が25HV以上である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のモールド製造用アルミニウム原型。

0013

[5] [1]〜[4]のいずれか1つに記載のモールド製造用アルミニウム原型の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、前記被加工面に酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程(a)と、前記酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を前記被加工面に形成する酸化皮膜除去工程(b)と、前記細孔発生点が形成された被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、前記細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を前記被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程(c)と、を含む、モールドの製造方法。
[6] 前記第2の酸化皮膜形成工程(c)の後、酸化皮膜を溶解する溶液にモールド製造用アルミニウム原型を浸漬して細孔の径を拡大させる孔径拡大処理工程(d)と、前記孔径拡大処理工程(d)の後、前記第2の酸化皮膜形成工程(c)と孔径拡大処理工程(d)とを繰り返す繰り返し工程(e)と、をさらに含む、[5]に記載のモールドの製造方法。

0014

[7] 複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドであって、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなり、マグネシウムの含有量が0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、かつ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するモールド製造用アルミニウム原型の該表面に、周期可視光波長以下である複数の細孔を有する酸化皮膜が形成された、モールド。
[8] 表面に存在する、直径が4μm以上の凹み状欠陥の数が60個/mm2以下である、[7]に記載のモールド。
[9] 微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、前記微細凹凸構造が、[7]または[8]に記載のモールドの表面の微細凹凸構造の反転構造である、成形体。
[10] 表面に、直径が100μm以上の欠陥が存在しない、[9]に記載の成形体。

発明の効果

0015

本発明によれば、表面品質が高く、結晶粒模様が視認しにくいモールドを得ることができ、加工性に優れたモールド製造用アルミニウム原型、該モールド製造用アルミニウム原型を用いて得られるモールドとその製造方法、および該モールドを用いて得られる成形体を提供できる。

図面の簡単な説明

0016

モールドの製造工程を示す断面図である。
モールドの表面に形成された細孔形状を例示する断面図である。
モールドの表面に形成された細孔形状の他の例を示す断面図である。
モールドの表面に形成された細孔形状の他の例を示す断面図である。
成形体の製造装置の一例を示す構成図である。
成形体の一例を示す断面図である。
(a)はアルミニウム原型表面の凹み状欠陥の電子顕微鏡写真であり、(b)は、凹み状欠陥のEDSスペクトルであり、(c)は凹み状欠陥の周辺部のEDSスペクトルである。

0017

本明細書において、「アルミニウム原型素材」とは、マグネシウムが添加されたアルミニウムを鋳造し、塑性加工する直前アルミニウム合金のことである。
また、「アルミニウム原型」とは、アルミニウム原型素材を塑性加工した後、必要に応じて熱処理・切削等を行い、陽極酸化処理を施す直前のアルミニウム合金のことをいう。
また、「モールド」とは、アルミニウム原型が陽極酸化処理された後のものをいう。
また、「細孔」とは、モールドの表面の酸化皮膜に形成された微細凹凸構造の凹部のことをいう。
また、「周期」は、隣接する細孔同士中心間距離(細孔の間隔)を意味する。
また、「突起」とは、モールドまたは成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凸部のことをいう。
また、「微細凹凸構造」は、凸部または凹部の平均間隔がナノスケールである構造を意味する。
また、「(メタアクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
また、「活性エネルギー線」は、可視光線紫外線電子線、プラズマ熱線赤外線等)等を意味する。

0018

「モールド製造用アルミニウム原型」
本発明のモールド製造用アルミニウム原型(以下、単に「アルミニウム原型」という。)は、複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造に用いられる原型である。
アルミニウム原型の形状は特に限定されず、板状、円柱状、円筒状など、モールドとして使用可能な形状であればどのような形状であってもよい。特に、円柱状や円筒状などのロール状であれば、モールドとして用いたときに表面の微細凹凸構造を連続して転写でき、生産性よく転写物(成形体)を製造できる。

0019

本発明のアルミニウム原型は、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなる。アルミニウム原型が、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなるものであることにより、第2相粒子の生成が抑制される。よって、本発明のアルミニウム原型を陽極酸化して得られるモールドの表面に凹み状欠陥が形成されにくく(すなわち、モールドの表面品質が高まり)、表面欠陥の少ない成形体を製造できる。

0020

また、本発明のアルミニウム原型は、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有する。複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有することで、アルミニウム原型の強度が高まり、加工性が向上する。加えて、微細化剤を添加せずにアルミニウム原型素材を塑性加工しても、鋳造組織が大きくなりにくく、塑性加工による組織の微細化が可能となる。よって、アルミニウム原型を陽極酸化したときに酸化皮膜にアルミニウムの結晶粒模様が形成されにくく、結晶粒模様が視認しにくいモールドが得られる。

0021

また、本発明のアルミニウム原型は、アルミニウムとマグネシウム(Mg)とを含有する。また、アルミニウム原型は、アルミニウムおよびMg以外の元素を含有していてもよい。
アルミニウム原型中のMgの含有量は、0.01〜3.00質量%であり、アルミニウムおよびMg以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下であり、残りがアルミニウムである。

0022

第2相粒子の生成を抑えるために高純度のアルミニウムを選択すると、鋳造組織および塑性加工・熱処理による再結晶組織において、両方の結晶粒が粗くなりやすい。また、高純度のアルミニウムは軟らかいため強度が低く、加工性に劣る。一般的に、これらの問題を解消するため、アルミニウムに合金元素を添加して鋳造が行われるが、合金元素に起因した第2相粒子が生成しやすくなる。
そこで、本発明者らはアルミニウムに対する固溶限が広く、かつ、第2相粒子を生成しにくいMgに着目した。アルミニウムにMgを添加して鋳造すると、固溶強化により硬度が高まり、鏡面切削性、鏡面研磨性の向上が期待できる。また、Mgはアルミニウムに添加される元素の中では一般的なものであるため、安価に添加できるメリットがある。

0023

ただし、Mgには以下の問題があった。
(i)Mgはシリカ(Si)等の他元素と結合し第2相粒子の総量を増加させてしまう。
(ii)Mgは固溶しやすいが、特定の濃度・温度域で第2相粒子を生成する場合がある。
(iii)アルミニウムへのMgの添加量が増えると変形抵抗が大きくなるため、鍛造等の塑性加工の費用が増加してしまう。

0024

そのため、アルミニウム原型中のMgの含有量、およびアルミニウムおよびMg以外の元素の含有量には上限がある。
具体的には、Mgの含有量は3.00質量%以下である。Mgの含有量が3.00質量%を超えると、固溶強化による変形抵抗が大きくなり、鍛造等の塑性加工の費用が増加してしまう。また、アルミニウム原型の強度を高め、加工性を向上させる観点から、Mgの含有量は0.01質量%以上である。
アルミニウム原型中のMgの含有量は、鋳造前のアルミニウムへ添加するMgの添加量によって調節できる。

0025

Mg以外の不純物は、アルミニウム中にほとんど固溶せず単独でも第2相粒子の原因となる元素(鉄(Fe)等)や、高温では固溶するものの室温では第2相粒子として析出する元素(銅(Cu)等)などがある。また、鋳造時の結晶粒微細化のために、微細化剤(例えばAl−Ti−B系合金)をわずかでも添加すると、この微細化剤に起因する第2相粒子(TiB2等)が発生し、モールドの表面品質を損なう。そのため、アルミニウムおよびMg以外の元素の含有量は、合計で150質量ppm以下とする。これにより、第2相粒子の生成が抑制され、モールドの表面品質が高まる。
ここで、アルミニウムおよびMg以外の元素とは、Fe、Ti、Si、Cu、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)をいう。

0026

また、アルミニウム原型中に、アルミニウムよりも標準酸化還元電位の高い元素が含まれていると、表面に直径が数μm程度の凹み状の欠陥(凹み状欠陥)が生じることがある。特にアルミニウム原型を陽極酸化する前に研磨処理を行うと、前記凹み状欠陥が生じやすい。これは、研磨によってアルミニウム原型の表面の皮膜が取り除かれた状態で研磨液(水)と接触するため、腐食反応が進行しやすくなるためであると考えられる。

0027

凹み状欠陥を表面に有するアルミニウム原型を陽極酸化すると、得られるモールド表面にも同様の凹み状欠陥が形成されることとなる。このようなモールドの表面を転写して成形体を製造すると、成形体の表面にも前記凹み状欠陥が転写される。一般的に、前記凹み状欠陥の直径が数μm程度であれば目視での認識が困難であるため、通常の用途ではこのような欠陥を表面に有するアルミニウム原型を陽極酸化して、モールドとして用いても特段問題が生じることはないと考えられる。

0028

しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、凹み状欠陥が表面に形成されたモールドを用いてナノインプリントを行うと、凹み状欠陥を起点に離型不良が発生し、樹脂残りが発生しやすくなることが分かった。一度樹脂残りが発生すると、この樹脂上にさらに樹脂が堆積しやすくなる(すなわち、樹脂残りが繰り返されやすくなる)。このようなモールドを用いて成形体を製造すると、成形体の表面に視認されるような直径が50〜100μm程度の大きな欠陥が発生する場合がある。特に、凹み状欠陥の直径が4μm以上であると、このような大きな欠陥の発生に繋がりやすい。このように、凹み状欠陥が極めて大きな問題となることがあり、特に、微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルム等を製造するためのモールドとして用いる場合は、直径が4μm以上の凹み状欠陥の数が少ないモールドを用いることが望まれる。
なお、欠陥の形状が円形でない場合、凹み状欠陥の上面視における、前記欠陥の外接円の直径を「欠陥の直径」という。

0029

本発明者らがこの凹み状欠陥が生じる原因を調べるため、欠陥内部及び周辺部の元素分析を行ったところ、アルミニウム以外の元素として例えばFeが存在することが明らかとなった。図7(a)〜(c)は、SEM−EDS(日本電子社製、「JSM−6060」)を用い、加速電圧:15kV、無蒸着条件で、凹み状欠陥1、および凹み状欠陥1の内部とその周辺部2の元素分析を行った結果を示す図である。
Feの標準酸化還元電位は−0.44であり、アルミニウムの標準酸化還元電位の−1.68よりも高いため(標準酸化還元電位 第4版電気化学便覧電気化学協会編より)、アルミニウム中にFeが存在すると、両元素間で電池反応、すなわちアルミニウムの腐食が進行し、アルミニウムが溶出していく。その結果、アルミニウム原型の表面上に、凹み状の欠陥が形成されると推定される。

0030

凹み状欠陥を抑制する手段としては、凹み状欠陥の原因となる、アルミニウムよりも標準酸化還元電位の高い不純物の濃度を減らすことが最も効果的である。
アルミニウムよりも標準酸化還元電位の高い不純物としては、上述したFe以外にも、Tiが挙げられる。
凹み状欠陥を抑制する観点から、アルミニウム原型中のFeおよびTiの含有量は合計で50質量ppm以下が好ましい。

0031

凹み状欠陥の数は、アルミニウム原型または該アルミニウム原型を陽極酸化して得られるモールドの表面の顕微鏡観察等によって確認し計測することができる。計測に用いる顕微鏡としては、光学顕微鏡レーザー顕微鏡、電子顕微鏡などが挙げられる。
なお、アルミニウム原型の形状などにより、アルミニウム原型やモールドの表面を直接観察しにくい場合は、モールド表面を転写した転写物(成形体)の表面に存在する欠陥(転写したものは凸状欠陥となる)を観察してもよい。
このようにして観察される欠陥のなかでも、特に直径が4μm以上の凹み状欠陥(または凸状欠陥)の数は、1mm2あたり60個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。欠陥の数は少ない方が好ましいため、下限値は設定されない。

0032

また、本発明のアルミニウム原型の表面(具体的には、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織からなる部分)は鏡面化されていることが好ましく、研磨により鏡面化されていることが特に好ましい。表面が研磨により鏡面化されたアルミニウム原型を陽極酸化して得られるモールドを用いて製造された成形体は、対象物に貼り付けたときにモアレが発生しにくい。

0033

また、本発明のアルミニウム原型のビッカース硬度は、25HV以上であることが好ましい。ビッカース硬度が25HV以上であれば、加工性がより向上するため、所望の形状に加工しやすく、表面を鏡面化することも容易となる。

0034

<モールド製造用アルミニウム原型の製造方法>
アルミニウム原型は、通常、鋳造工程と塑性加工工程を経て製造される。また、必要に応じて塑性加工工程の後に、熱処理工程、機械加工工程を行ってもよい。
以下、アルミニウム原型の製造方法の一例について、具体的に説明する。

0035

(鋳造工程)
鋳造工程は、アルミニウムにMgを添加して溶解し、溶湯を鋳造してアルミニウム原型素材を得る工程である。
溶湯には、微細化剤を添加しない。ここで、微細化剤としては、Al−Ti−B系合金、アルミニウム−チタン−炭素合金(Al−Ti−C系合金)など、アルミニウムの鋳造組織を微細化するために用いられる公知の微細化剤が挙げられる。
Mgの添加量は、アルミニウム原型中のMgの含有量が0.01〜3.00質量%となる量である。

0036

(塑性加工工程)
塑性加工工程は、アルミニウム原型素材を塑性加工する工程である。アルミニウム原型素材を塑性加工することにより、鋳造組織が微細化する。
塑性加工としては、圧延鍛造、押出鍛造自由鍛造などが挙げられる。
圧延鍛造や押出鍛造の場合、加工方向が限られているため鋳塊の結晶粒が加工方向に延びた繊維状組織となってしまう。この繊維状組織は陽極酸化処理後のモールドから転写物に転写され、模様として視認されやすくなる傾向にある。結晶粒模様が視認しにくいモールドを得るためには、2方向以上から塑性加工が加えられた結晶組織(複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織)となることが重要である。
一方、自由鍛造は加工方向を自由に選べるため、異方性が無いランダムな組織、すなわち複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を形成できる。
よって、本発明のアルミニウム原型を製造するには、塑性加工として自由鍛造を採用することが好ましい。

0037

自由鍛造は、粗い鋳造組織を破壊し微細均一化を主目的とする熱間鍛造と、熱間鍛造により微細均一化した組織を複数の方向からさらに微細化することを主目的とする冷間鍛造とに大別される。
自由鍛造としては、熱間鍛造が好ましく、熱間鍛造と冷間鍛造との組み合わせがより好ましい。
なお、自由鍛造に供する前に、アルミニウム原型素材を所望の大きさに切り出しておいてもよい。切り出されたアルミニウム原型素材を「鍛造素材」ともいう。

0038

熱間鍛造:
高純度のアルミニウムのインゴットは、粗大不均一な組織になりやすく、このインゴットの粗大不均一な組織を破壊し、微細均一組織を得るために熱間鍛造を行う。
なお、熱間鍛造に供する前に、鍛造素材を加熱炉装入し、400〜500℃に加熱することが好ましい。このときの加熱温度は、組織を微細均一にする上で重要である。このときの加熱温度が500℃を超えると、熱間鍛造時の再結晶粒が粗大化しやくなり、逆に400℃に達しない加熱温度ではインゴットの粗大な組織の痕跡が不均一に残りやすくなるとともに、鍛造時の変形抵抗が大きくなり、割れが発生しやすくなる。加熱保持は、温度の均一化を図るために1時間程度行われる。

0039

次いで、400〜500℃に加熱された鍛造素材を自由鍛造処理して、鍛造品を製造する。
鍛錬成型比は大きくとった方がインゴットの粗大不均一組織が残りにくく、(1/2U−2S)または(2S−1/2U)を1サイクルとした場合、2サイクル以上が好ましく、3サイクル以上がより好ましく、4サイクル以上がさらに好ましい。ここで、「1/2U」や「2S」という表記はJIS G 0701にて定義されており、「1/2U」とは鍛錬成形比1/2の据込鍛錬を示し、「2S」とは鍛錬成形比2の実体鍛錬を示す。この据込鍛錬と実体鍛錬の順序は問わず、逆になってもよい。ただし、この鍛造サイクル数が多い場合、鍛造品の温度低下が大きくなるため、再結晶温度を下回りやすくなる。熱間鍛造中に350℃を下回った場合、400℃以上に再加熱することが好ましい。

0040

冷間鍛造:
冷間鍛造は、熱間鍛造で得られた組織をさらに微細化するため、および歪みを蓄積高強度化するために行う。鍛造素材は室温またはそれ以下の温度まで冷却しておく。鍛造素材を型鍛造によって上下方向に潰し、鍛造品を製造する。または、自由鍛造によって鍛造品を製造することもできる。しかし、鍛錬成型比が高すぎる場合、鍛造時に割れが入るため(1.5S−2/3U)を1サイクルとした場合、2〜3サイクルが好ましい。
冷間鍛造時には加工熱により鍛造材の温度が上昇する。歪の開放が顕著となる200℃を超えた場合は水冷空冷等により冷却するのが好ましく、さらに150℃以下に保つのがより好ましい。

0041

冷間鍛造を繰返し行うことにより、結晶粒の伸長方向が一定ではなく、また結晶粒界が明確でない加工組織とすることができる。この熱間鍛造および冷間鍛造で達せられる結晶組織を「複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織」と称する。

0042

(熱処理工程)
熱処理工程は、塑性加工したアルミニウム原型素材を熱処理(焼鈍)する工程である。
従来、塑性加工後に結晶組織を微細化するため熱処理を行い再結晶組織としていた。しかし、熱処理により再結晶を起こさせると、微細な結晶組織が得られるが、表面の結晶粒の粒界は単純になる。
ところで、モールドの製造において後述の陽極酸化工程で形成される酸化皮膜は結晶方位ごとに形成速度が異なる。そのため微細凹凸構造の突起高さは結晶方位ごとにわずかに異なる。この突起の高さのわずかな違いに起因して、転写物では結晶粒ごとに反射色が異なり、結晶粒界の模様が視認されてしまう。この反射色の模様は、結晶粒界が単純な再結晶組織であることより、塑性変形によって結晶粒界が複雑に入り組んだ、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織であることの方が、転写物上で模様が視認しづらいため好ましい。
また、アルミニウム原型において、再結晶組織よりも複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織の方が比較的強度が高く、加工性に優れる。

0043

よって、本発明においては、必要に応じて塑性加工工程の後に熱処理工程を行ってもよいが、熱処理工程を行う場合は、再結晶化が起きる温度(260℃)よりも低い温度で熱処理することが好ましい。
ただし、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するアルミニウム原型を製造しやすい点では、塑性加工工程の後に熱処理工程を行わないことが特に好ましい。

0044

(機械加工工程)
機械加工工程は、塑性加工工程後(または必要に応じて熱処理工程後)のアルミニウム原型素材を機械加工する工程である。
機械加工とは、アルミニウム原型素材の表面を電解研磨することなく、物理的に切削および/または研磨して鏡面化することである。特に、アルミニウム原型素材の表面(具体的には、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織からなる部分)を研磨することが好ましく、切削した後に研磨することがより好ましい。
切削方法としては特に限定されない。
研磨方法としては、固定砥粒研磨加工、遊離砥粒研磨加工などが挙げられる。また、被加工物の表面を腐食あるいは溶出効果などの化学的作用をもつ研磨液を併用してもよい。

0045

作用効果
以上説明した本発明のアルミニウム原型は、微細化剤が添加されていないアルミニウム原型素材を塑性加工してなり、かつアルミニウム原型中のMgの含有量が3.00質量%以下であり、アルミニウムおよびMg以外の元素の含有量の合計が150質量ppm以下である。よって、本発明のアルミニウム原型は、モールド表面の凹み状欠陥の原因となる第2相粒子の形成を抑制でき、表面品質の高いモールドが得られる。
また、Mgの含有量が0.01質量%以上であるため、本発明のアルミニウム原型は強度が高く、加工性にも優れる。
さらに、本発明のアルミニウム原型は、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有するので、結晶粒模様が視認しにくいモールドが得られる。

0046

以下に、本発明のアルミニウム原型の表面を陽極酸化することによって、周期(細孔の間隔)が可視光の波長以下である複数の細孔からなる微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドおよびその製造方法の一例について、図を参照しながら説明する。

0047

「モールドとその製造方法」
<モールドの製造方法>
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(a)〜(c)を有し、下記の工程(d)、(e)をさらに有することが好ましい。
工程(a):本発明のアルミニウム原型の被加工面(被陽極酸化面)を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、前記被加工面に酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程(a)。
工程(b):前記酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を前記被加工面に形成する酸化皮膜除去工程(b)。
工程(c):前記細孔発生点が形成された被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、前記細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を前記被加工面に形成する第2の酸化皮膜形成工程(c)。
工程(d):前記第2の酸化皮膜形成工程(c)の後、酸化皮膜を溶解する溶液にアルミニウム原型を浸漬して細孔の径を拡大させる孔径拡大処理工程(d)。
工程(e):前記孔径拡大処理工程(d)の後、前記第2の酸化皮膜形成工程(c)と孔径拡大処理工程(d)とを繰り返す繰り返し工程(e)。

0048

工程(a)〜(e)を有する方法によれば、アルミニウム原型の被加工面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が周期的に形成され、その結果、微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。
なお、工程(a)の前に、アルミニウム原型の被加工面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
また、細孔の配列の規則性はやや低下するが、モールドの表面を転写した材料の用途によっては工程(a)を行わず、工程(c)から行ってもよい。
以下、各工程を詳細に説明する。

0049

(工程(a))
第1の酸化皮膜形成工程(a)では、アルミニウム原型の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、図1(a)に示すように、アルミニウム原型10の被加工面に、細孔12を有する酸化皮膜14を形成する(第1の酸化皮膜形成工程(a))。陽極酸化の初期に形成される酸化皮膜14は、細孔12の位置や大きさが不均一で規則性はやや落ちるであるが、酸化皮膜14が厚くなるとともに、徐々に細孔の配列の規則性が増していく。
電解液としては、酸性電解液アルカリ性電解液が挙げられ、酸性電解液が好ましい。酸性水溶液としては、無機酸類硫酸、リン酸等)、有機酸類シュウ酸マロン酸酒石酸コハク酸リンゴ酸クエン酸等)が挙げられ、硫酸、シュウ酸、リン酸が特に好ましい。これらの酸性水溶液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

0050

シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。

0051

硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を25〜30Vとすることにより、周期が63nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向があり、周期が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。

0052

工程(a)において、アルミニウム原型に印加する電圧の条件は、40〜180Vが好ましく、40〜160Vがより好ましく、40〜120Vが最も好ましい。工程(a)において、アルミニウム原型に印加する電圧が、40V以上であれば、周期が100nmを超える酸化皮膜を、簡便に形成できるため好ましい。また、アルミニウム原型に印加する電圧が180V以下であれば、電解液を低温に維持する装置や、アルミニウム原型の背面に冷却液噴射するなどの特殊な手法を用いる必要がなく、簡便な装置で陽極酸化することができるため好ましい。

0053

工程(a)において、アルミニウム原型に印加する電圧は、陽極酸化工程の最初から最後まで一定であってもよく、途中で変化させてもよい。途中で電圧を変化させる場合は、段階的に電圧を上昇させてもよく、連続的に電圧を上昇させてもよい。
また、アルミニウム原型に電圧を印加した直後の電流密度が10mA/cm2以下となる場合、40V以上の最高電圧を最初から印加してもよい。または、40V未満の電圧で初期の陽極酸化を行い、段階的にまたは連続的に電圧を上昇させ、最終的に電圧を40〜180Vの範囲となるよう調整してもよい。ここで、「最高電圧」とは、工程(a)における電圧の最高値を意味し、工程(a)の終了時の電圧と一致する。

0054

また、段階的に電圧を上昇させる場合、一定時間同じ電圧で保持してもよく、一時的に電圧を低下してもよい。また、電圧の昇圧速度が0.05〜5V/sとなるように経時的に連続して電圧が上昇するようにしてもよい。
電圧を一時的に低下させる場合、一時的に電圧が0Vになってもよいが、陽極酸化の途中で電圧が0Vになると、陽極にかかっていた電場が解消される。そのため、途中で電圧が0Vになった後に電圧を上昇させて再度電場をかけたとき、アルミニウム原型と酸化皮膜が部分的に剥離して、酸化皮膜の厚さが不均一になることがある。よって、途中で電圧が0Vにならないように陽極酸化を行うことが好ましい。
ここで、「一定時間」とは、1〜10分間のことを意味する。
また、任意の電圧から次の電圧へと昇圧する際の昇圧速度は特に制限されず、瞬時に昇圧してもよいし、徐々に昇圧してもよい。ただし、電圧を急激に昇圧する場合、アルミニウム原型に流れる電流密度が瞬間的に増大し、ヤケが生じる場合がある。一方、昇圧速度が遅すぎると、電圧を上昇させている間に、酸化皮膜が厚く形成されてしまう場合がある。従って、電圧の昇圧速度は0.05〜5V/sが好ましい。連続的に電圧を上昇させる場合の昇圧速度についても同様である。

0055

工程(a)においてアルミニウム原型に電圧を印加して陽極酸化を行う時間は、3〜600秒間が好ましく、30〜180秒間がより好ましい。アルミニウム原型に電圧を印加する時間が3〜600秒間であれば、アルミニウム原型表面の酸化皮膜の厚さを0.01〜0.8μmに制御しやすいため好ましい。
アルミニウム原型表面の酸化皮膜の厚さが0.01μm未満では、細孔の深さも0.01μmに満たないため、モールドとして用いた場合、得られる成形体が十分な反射防止性能を示さないおそれがある。酸化皮膜の厚さが0.8μm超では、酸化皮膜が厚くなる分だけ細孔も深くなるため、モールドとして用いた場合、離型不良を起こしやすくなるおそれがある。

0056

(工程(b))
工程(a)の後、工程(a)により形成された酸化皮膜14を除去することにより、図1(b)に示すように、除去された酸化皮膜14の底部(バリア層と呼ばれる)に対応する周期的な窪み、すなわち、細孔発生点16を形成する(酸化皮膜除去工程(b))。
形成された酸化皮膜14を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点16を形成することで、最終的に形成される細孔の規則性を向上させることができる(例えば、益田、「応用物理」、2000年、第69巻、第5号、p.558参照。)。

0057

酸化皮膜14を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液によって除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
工程(b)においては、酸化皮膜14の一部を除去しても構わないが、酸化皮膜14を完全に除去することで、より規則性の高い細孔を形成することができる。

0058

(工程(c))
細孔発生点16が形成されたアルミニウム原型10の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、細孔発生点16に対応した細孔12を有する酸化皮膜14を再び形成する(第2の酸化皮膜形成工程(c))。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度電解液温度化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
これにより、図1(c)に示すように、円柱状の細孔12が形成された酸化皮膜14を形成できる。工程(c)においても、陽極酸化を長時間施すほど、深い細孔を得ることができるが、例えば反射防止物品などの光学用の成形体を製造するためのモールドを製造する場合には、ここでは0.01〜0.5μm程度の酸化皮膜を形成すればよく、工程(a)で形成するほどの厚さの酸化皮膜を形成する必要はない。

0059

(工程(d))
工程(c)の後、工程(c)で形成された細孔12の径を拡大させる孔径拡大処理を行って、図1(d)に示すように、細孔12の径を図1(c)の場合よりも拡径する(孔径拡大処理工程(d))。
孔径拡大処理の具体的方法としては、酸化皮膜を溶解する溶液にアルミニウム原型10を浸漬して、工程(c)で形成された細孔12の径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。工程(d)の時間を長くするほど、細孔の径は大きくなる。

0060

(工程(e))
再度、工程(c)を行って、図1(e)に示すように、細孔12の形状を径の異なる2段の円柱状とし、その後、再度、工程(d)を行う。このように工程(c)と工程(d)を繰り返すことにより、細孔12の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔12からなる微細凹凸構造が形成された陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールド18を得ることができる。

0061

工程(c)および工程(d)の条件、例えば、陽極酸化の時間および孔径拡大処理の時間を適宜設定することにより、様々な形状の細孔を形成することができる。よって、モールドから製造しようとする物品の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。また、このモールドが反射防止膜等の反射防止物品を製造するものである場合には、このように条件を適宜設定することにより、細孔の周期や深さを任意に変更できるため、最適な屈折率変化を設計することも可能となる。

0062

具体的には、同じ条件で工程(c)と工程(d)とを繰り返せば、例えば図2に示すモールド18のような略円錐形状の細孔12が形成され、工程(c)と工程(d)の処理時間を適宜変化させることで、例えば図3に示すモールド18のような逆釣鐘形状の細孔12や、図4に示すモールド18のような先鋭形状の細孔12等を適宜形成できる。

0063

工程(e)における繰り返し回数は、回数が多いほどより滑らかなテーパー形状の細孔を形成でき、工程(c)と工程(d)との合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の径が減少する傾向にあり、このようなモールドから反射防止膜等の反射防止物品を製造した場合、その反射率低減効果が劣る可能性がある。

0064

本発明のモールドの製造方法によれば、アルミニウム原型の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が比較的規則的に配列して形成され、その結果、微細凹凸構造を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)が表面に形成されたモールドを製造できる。

0065

なお、モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。
離型処理の方法としては、例えば、リン酸エステルポリマーシリコーン系ポリマーフッ素ポリマー等をコーティングする方法、フッ素化合物蒸着する方法、フッ素系表面処理剤またはフッ素シリコーン系表面処理剤をコーティングする方法等が挙げられる。

0066

また、以上の説明では、第2の酸化皮膜形成工程(c)の後に孔径拡大処理工程(d)を実施することで、開口部から深さ方向に径が縮小する細孔を形成する場合について例示したが、工程(c)の後に必ずしも工程(d)を行わなくてもよい。その場合には、形成される細孔は円柱状となるが、このようなモールドにより製造された微細凹凸構造を備える光学用途の成形体であっても、この構造からなる層が低屈折率層として作用し、反射を低減する効果は期待できる。

0067

また、上述したモールドの製造方法により得られたモールドからは、直接、光学用途の成形体等の製品を製造できるが、このモールドを原型としてまずレプリカを作製し、このレプリカから光学用途の成形体を製造してもよい。また、このレプリカを原型として再度レプリカを作製してそのレプリカから光学用途の成形体を製造してもよい。レプリカの作製方法としては、例えば、原型上にニッケル、銀等による薄膜無電界めっきスパッタ法等により形成し、次いでこの薄膜を電極として電気めっき(電鋳法)を行って、例えばニッケルを堆積させた後、このニッケル層を原型から剥離して、レプリカとする方法等が挙げられる。

0068

<モールド>
こうして製造されたモールドは、多数の周期的な細孔が形成された結果、表面に微細凹凸構造を有するものとなる。そして、この微細凹凸構造における細孔の周期が可視光の波長以下であると、いわゆるMoth−Eye構造となり、有効な反射防止機能を発現する。なお、可視光とは、波長が400nm以上780nm以下の波長の光のことを意味する。
細孔の周期は、図2に示すように、微細凹凸構造の細孔(凹部)12の中心からこれに隣接する凹部(細孔)の中心までの距離(中心間距離)(図中のp)を6点測定し、これらの値を平均したものである。

0069

細孔の周期が可視光の波長より大きいと可視光の散乱が起こるため、十分な反射防止機能は発現せず、反射防止膜等の反射防止物品の製造には適さない。
細孔の周期は、可視光の波長以下が好ましく、150〜600nmがより好ましい。細孔の周期が150nm以上であれば、モールドの表面を転写して得られる成形体(反射防止物品等)の反射防止性能を損なうことなく耐擦傷性能を向上でき、かつ突起同士の合一に起因する成形体の白化を抑制することができる。細孔の周期が600nm以下であれば、モールドの表面の転写によって得られた成形体の表面(転写面)において可視光の散乱が起こりにくくなり、十分な反射防止機能が発現するため、反射防止膜等の反射防止物品の製造に適する。

0070

モールドが反射防止膜等の反射防止物品を製造するものである場合には、細孔の周期が可視光の波長以下であるとともに、細孔の深さが50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。細孔の深さが50nm以上であれば、モールドの表面の転写により形成された成形体の表面、すなわち転写面の反射率が低下し、反射防止性能を十分に発揮できる。
細孔の深さは、図2に示すように、微細凹凸構造の細孔(凹部)12の開口部から最深部までの距離(図中のDep)を10点測定する操作を任意の2箇所で行い、各観測点平均値をさらに平均したものである。

0071

また、モールドの細孔のアスペクト比(深さ/周期)は0.25以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.75以上がさらに好ましく、1.0以上がさらに好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.8以上が特に好ましく、2.0以上が最も好ましい。また、アスペクト比は4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。アスペクト比が0.25以上であれば、反射率が低い転写面を形成できる。特にアスペクト比が1.0以上であれば、入射角依存性波長依存性も十分に小さくなる。アスペクト比が4.0より大きいと転写面の機械的強度が低下する傾向がある。

0072

モールドの形状は、板状でもあってもよく、円柱状や円筒状等のロール状であってもよいが、連続的に表面に微細凹凸構造を有する成形体を製造する観点から、ロール状であることが好ましい。

0073

<作用効果>
以上説明した本発明のモールドの製造方法によれば、上述した本発明のアルミニウム原型を用いてモールドを製造するので、表面品質が高く、アルミニウムの結晶粒模様が視認しにくいモールドが得られる。具体的には、表面に存在する、直径が4μm以上の凹み状欠陥の数が60個/mm2以下であり、結晶粒模様が視認しにくいモールドが得られる。
また、本発明のモールドは、表面品質が高く(具体的には、表面に存在する、直径が4μm以上の凹み状欠陥の数が60個/mm2以下であり)、結晶粒模様が視認しにくい。よって、本発明のモールドからは、凸状欠陥や結晶粒模様が少ない、外観が良好な転写物(成形体)を製造できる。

0074

「成形体」
本発明のモールドを用いることによって、このモールドの表面の微細凹凸構造が転写された転写面を有する成形体を製造できる。モールドの微細凹凸構造(細孔)を転写して製造された成形体は、その表面にモールドの微細凹凸構造の反転構造(突起)が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
以下、成形体の製造方法の一例について説明する。

0075

<成形体の製造方法>
モールドの微細凹凸構造を転写する方法としては、例えば、モールドと成形体本体(透明基材)の間に未硬化活性エネルギー線硬化性樹脂組成物充填し、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が接触した状態で、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後にモールドを離型する方法が好ましい。これによって、成形体本体の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造が形成された成形体を製造できる。得られた成形体の微細凹凸構造は、モールドの微細凹凸構造の反転構造となる。

0076

(成形体本体)
成形体本体(透明基材)としては、活性エネルギー線の照射を、該成形体本体を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。成形体本体の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂ポリエチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂塩化ビニル樹脂ABS樹脂スチレン樹脂ガラス等が挙げられる。
成形体本体の形状としては、フィルムシート射出成形品プレス成形品等が挙げられる。

0077

(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
モールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する方法として、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、モールドと成形体本体の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したモールド上に成形体本体をラミネートする方法、あらかじめ成形体本体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してモールドにラミネートする方法等が挙げられる。

0078

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。上記の他に、用途に応じて非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよく、増粘剤レベリング剤紫外線吸収剤光安定剤熱安定剤溶剤無機フィラー等の各種添加剤がさらに含まれていてもよい。

0079

重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマーオリゴマー反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー多官能モノマーが挙げられる。

0080

ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート誘導体メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリルスチレン誘導体スチレンα−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

0081

ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、二官能性モノマーエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニルプロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタンジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンメチレンビスアクリルアミド等)、三官能モノマーペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等)、四官能以上のモノマー(コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応合物、ジペンタリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等)、二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

0082

カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基オキセタニル基オキサゾリル基ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。

0083

分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマーなどが挙げられる。

0084

活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。

0085

光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、カルボニル化合物ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンメチルフェニルグリオキシレートエチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、硫黄化合物テトラメチルチウラムモノスルフィドテトラメチルチウラムジスルフィド等)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

0086

電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンチオキサントン(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

0087

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、重合反応性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。一方、活性エネルギー線重合開始剤が10質量部を超えると、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。

0088

非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂スチレン系樹脂ポリウレタン樹脂セルロース樹脂ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物アルキルシリケート化合物などが挙げられる。

0089

アルコキシシラン化合物としては、RxSi(OR’)yで表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシランジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどが挙げられる。

0090

アルキルシリケート化合物としては、R1O[Si(OR3)(OR4)O]zR2で表されるものが挙げられる。R1〜R4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。具体的にはメチルシリケートエチルシリケートイソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケートなどが挙げられる。

0091

(製造装置)
微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば、図5に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(成形体本体)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を供給する。

0092

ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。

0093

ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、例えば図6に示すような成形体40を得る。

0094

活性エネルギー線照射装置28としては、例えば、高圧水銀ランプメタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cm2程度である。

0095

以上説明した成形体の製造方法によれば、本発明のモールドを用いることによって、このモールドの微細凹凸構造の反転構造を表面に有する成形体を一工程で簡便に製造することができる。

0096

<成形体>
このようにして製造された成形体40は、図6に示すように、フィルム42(成形体本体)の表面に硬化樹脂層44が形成されたものである。
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
本発明のモールドを用いた場合の成形体40の表面の微細凹凸構造は、モールドの酸化皮膜の表面の微細凹凸構造を転写して形成されたもの(すなわち、モールドの表面の反転構造)であり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の突起46を有する。

0097

微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。

0098

なお、本発明の成形体は、図示例の成形体40に限定はされない。例えば、微細凹凸構造は、硬化樹脂層44を設けることなく、熱インプリント法によってフィルム42の表面に直接形成されていてもよい。ただし、ロール状モールド20を用いて効率よく微細凹凸構造を形成できる点から、硬化樹脂層44の表面に微細凹凸構造が形成されていることが好ましい。

0099

<作用効果>
以上説明した本発明の成形体は、上述した本発明のアルミニウム原型を陽極酸化処理して得られるモールドを用いて製造される。本発明のモールドは、表面の凹み状欠陥が抑制され、アルミニウムの結晶粒模様が視認しにくいので、該モールドより得られる成形体は、凸状欠陥が少なく(好ましくは直径が100μm以上の欠陥が表面に存在せず)、結晶粒模様も少なく、外観が良好である。

0100

<用途>
本発明の成形体は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
成形体がシート状またはフィルム状の場合には、反射防止膜として、例えば、画像表示装置テレビ携帯電話ディスプレイ等)、展示パネルメーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材自動車ミラー看板メガネレンズ等、雨、水、蒸気等に曝されるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
成形体が立体形状の場合には、用途に応じた形状の成形体本体を用いて成形体を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。

0101

また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して、本発明の成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明の成形体から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX複写機スキャナ等のイメージセンサーカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に本発明の成形体を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器光受光部分等に本発明の成形体を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
また、本発明の成形体は、上述した用途以外にも、光導波路レリーフホログラム光学レンズ偏光分離素子等の光学用途や、細胞培養シートとしての用途に展開できる。

0102

以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各種測定、評価は、以下の方法にて行った。

0103

アルミニウム金型組成分析
アルミニウム金型の組成は、固体発光分光分析法によって分析した。

0104

<加工方向の確認>
アルミニウム原型の表面を適度に研磨した後、HCl:HNO3:HF=75:25:5のエッチング液にてエッチングし、外観観察によって複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織の有無を確認し、以下の評価基準にて評価した。
○:複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を確認できた。
×:複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を確認できない。

0105

<アルミニウム原型の硬度の測定>
アルミニウム原型の硬度の測定にはビッカース硬度計(荷重5kg)を用いて、5点以上を測定しその平均値を求めた。
一般的に硬度が高い素材の方が平坦仕上げ易いため、硬度を鏡面研磨性の指標とした。硬度が高いほど、鏡面研磨性が高いことを意味する。

0106

<アルミニウム原型の加工性の評価>
アルミニウム原型を切削して評価用サンプルを得る際の加工性について、以下の評価基準にて評価した。
○:硬度が25HV以上であった。
×:硬度が25HV未満であった。

0107

<モールドの細孔の測定>
酸化皮膜が表面に形成されたモールドの一部を切り取って、表面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−6701F」)を用いて、加速電圧3.00kVで1万倍に拡大して観察した。細孔の周期(平均間隔)は一直線上に並んだ6個の細孔の中心間距離を平均して求めた。
また、モールドの一部を異なる2箇所から切り取って、それぞれの縦断面に白金を1分間蒸着し、同じく電解放出型走査電子顕微鏡を用いて加速電圧3.00kVで観察した。各断面サンプルを5万倍に拡大して観察し、観察範囲で10個の細孔の深さを測定し、平均した。この測定を2点で行い、各観察点の平均値をさらに平均して細孔の平均深さを求めた。

0108

<成形体の突起の測定>
成形体(フィルム)の表面に白金を10分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−6701F」)を用いて、電圧3.00kVで1万倍に拡大して観察した。突起の周期(平均間隔)は一直線上に並んだ6個の突起(凸部)の中心間距離を平均して求めた。
また、成形体の一部を異なる2箇所から切り取って、それぞれの縦断面に白金を10分間蒸着し、同じく電解放出型走査電子顕微鏡を用いて加速電圧3.00kVで観察した。各断面サンプルを5万倍に拡大して観察し、観察範囲で10個の突起の高さを測定し、平均した。この測定を2点で行い、各観察点の平均値をさらに平均して突起の平均高さを求めた。

0109

<成形体の外観評価
(欠陥の確認)
成形体の外観を目視にて観察し、0.8mm以上の欠陥の数を計測し、以下の評価基準にて評価した。
○:成形体の表面の0.30m2中、欠陥が3個未満である。
×:成形体の表面の0.30m2中、欠陥が3個以上である。

0110

(結晶粒模様の確認)
成形体の外観を目視にて観察し、結晶粒模様の有無を確認し、以下の評価基準にて評価した。
○:結晶粒模様を確認できない。
×:結晶粒模様を確認できた。

0111

<モアレの発生の確認>
成形体をスライドガラスに貼り合わせた後に、白を表示させた市販のタブレット解像度1280×800)上に配し、回転させることでモアレの発生を目視にて確認し、以下の評価基準にて評価した。
○:モアレを確認できない。
×:モアレを確認できた。

0112

ヘイズの測定>
成形体のヘイズは、JIS K 7361−1に準拠したヘイズメータ(日本電色工業社製、「NDH2000」)を用いて測定した。

0113

「実施例1」
<アルミニウム原型の製造>
純度99.996質量%のアルミニウムに0.10質量%のMgを添加し溶解した。この溶湯を鋳造して鋳塊(アルミニウム原型素材)とした。
この鋳塊から400mm×430mm×500mmの大きさのアルミニウム原型素材を切り出し、これを鍛造素材とした。
この鍛造素材を369℃まで加熱し1.3S−2/3U−1.5S−2/3Uの1回目の熱間鍛造を行い325℃にて終えた。
次いで、30℃まで冷却後、2.9S−水冷−1.7S水冷1.3Sの冷間鍛造を行い、外径φ240mm−内径φ130mm×2733Lの形状とし120℃にて終えた。
その後、熱処理は行わず、冷間鍛造後の鍛造素材をアルミニウム原型Aとした。
得られたアルミニウム原型Aを切削し、さらに表面を研磨して、評価用サンプル(φ240mm×20mm)を得た。

0114

評価用サンプルについて組成分析を行ったところ、アルミニウムの純度が99.90質量%であり、Mgの含有量が0.10質量%であり、Siの含有量が12質量ppmであり、Feの含有量が5質量ppmであり、Cuの含有量が1質量ppmであり、Tiの含有量が1質量ppmであり、Fe、Ti、Si、Cu、Mn、Cr、Znの含有量の合計が37質量ppmであった。なお、アルミニウムの純度とMgの含有量は、小数点桁目四捨五入した。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルの硬度を測定したところ、32HVであった。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルについて、加工方向の確認を行い、加工性を評価した。結果を表1に示す。

0115

「実施例2」
<アルミニウム原型の製造>
Mgの添加量を0.29質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム原型Bを製造し、評価用サンプルを得た。

0116

評価用サンプルについて組成分析を行ったところ、アルミニウムの純度が99.71質量%であり、Mgの含有量が0.29質量%であり、Siの含有量が11質量ppmであり、Feの含有量が4質量ppmであり、Cuの含有量が1質量ppmであり、Tiの含有量が10質量ppmであり、Fe、Ti、Si、Cu、Mn、Cr、Znの含有量の合計が47質量ppmであった。なお、アルミニウムの純度とMgの含有量は、小数点3桁目を四捨五入した。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルの硬度を測定したところ、38HVであった。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルについて、加工方向の確認を行い、加工性を評価した。結果を表1に示す。

0117

「比較例1」
<アルミニウム原型の製造>
純度99.996質量%のアルミニウムに0.97質量%のMgを添加し溶解した。この溶湯に、微細化剤(Al−Ti−B系合金)を添加して鋳造して鋳塊(アルミニウム原型素材)とした。
この鋳塊から331mm×331mm×500mmの大きさのアルミニウム原型素材を切り出し、これを鍛造素材とした。
この鍛造素材を369℃まで加熱し0.75U−(1.5S−2/3U)×3サイクルの1回目の熱間鍛造を行い325℃にて終えた。
次いで、30℃まで冷却後、(1.5S−2/3U)×2サイクル−3.1Sの冷間鍛造を行い、φ245mm×1180mm巾の形状とし173℃にて終えた。
冷間鍛造後の鍛造素材を300℃にて600分間熱処理し、アルミニウム原型Cとした。
得られたアルミニウム原型Cを切削し、さらに表面を研磨して、評価用サンプル(φ240mm×20mm)を得た。

0118

評価用サンプルについて組成分析を行ったところ、アルミニウムの純度が98.96質量%であり、Mgの含有量が0.97質量%であり、Siの含有量が14質量ppmであり、Feの含有量が9質量ppmであり、Cuの含有量が3質量ppmであり、Tiの含有量が6質量ppmであり、Fe、Ti、Si、Cu、Mn、Cr、Znの含有量の合計が48質量ppmであった。なお、アルミニウムの純度とMgの含有量は、小数点3桁目を四捨五入した。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルの硬度を測定したところ、32HVであった。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルについて、加工方向の確認を行い、加工性を評価した。結果を表1に示す。

0119

「比較例2」
<アルミニウム原型の製造>
冷間鍛造後に熱処理を行わなかった以外は、比較例1と同様にしてアルミニウム原型Dを製造し、評価用サンプルを得た。
評価用サンプルの組成分析の結果、硬度の測定結果、加工方向の確認結果、および加工性の評価結果を表1に示す。

0120

「比較例3」
<アルミニウム原型の製造>
Mgの添加量を0.29質量%に変更し、かつ冷間鍛造の後に400℃にて120分間熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム原型Eを製造し、評価用サンプルを得た。
評価用サンプルの組成分析の結果、硬度の測定結果、加工方向の確認結果、および加工性の評価結果を表1に示す。

0121

「比較例4」
<アルミニウム原型の製造>
純度99.97%のアルミニウムを溶解し、DC鋳造にて鋳造して鋳塊(アルミニウム原型素材)とした。
この鋳塊から500mm×500mm×500mmの大きさのアルミニウム原型素材を切り出し、これを鍛造素材とした。
この鍛造素材を414℃まで加熱し(2S−1/2U)×2サイクルの1回目の熱間鍛造を行い354℃にて終えた。次いで393℃に再加熱を行った後に(2S−1/2U)×2サイクルの2回目の熱間鍛造を行い323℃にて終えた。
次いで、32℃まで冷却後、(2S−1/2U)×2サイクルの冷間鍛造を行い、φ250mm×300mm×360mmの形状とした。
冷間鍛造後の鍛造素材を340℃にて60分間熱処理し、アルミニウム原型Fとした。
得られたアルミニウム原型を切削し、さらに表面を研磨して、評価用サンプル(20mm×250mm×300mm)を得た。

0122

評価用サンプルについて組成分析を行ったところ、アルミニウムの純度が99.97質量%であり、Mgの含有量が0.00質量%であり、Siの含有量が78質量ppmであり、Feの含有量が83質量ppmであり、Cuの含有量が35質量ppmであり、Tiの含有量が1質量ppmであり、Fe、Ti、Si、Cu、Mn、Cr、Znの含有量の合計が213質量ppmであった。なお、アルミニウムの純度とMgの含有量は、小数点3桁目を四捨五入した。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルの硬度を測定したところ、18HVであった。結果を表1に示す。
また、評価用サンプルについて、加工方向の確認を行い、加工性を評価した。結果を表1に示す。

0123

0124

表1から明らかなように、Mgを添加し、かつ微細化剤を添加せずにアルミニウムを鋳造して得られたアルミニウム原型素材を塑性加工した各実施例のアルミニウム原型A、Bは、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有していた。該アルミニウム原型A、Bは、硬度が高く、加工性にも優れていた。
一方、アルミニウム原型素材を塑性加工した後に熱処理を行った比較例1、3、4のアルミニウム原型C、E、Fは、再結晶組織が形成されており、複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有していなかった。特に、比較例3、4のアルミニウム原型E、Fは、硬度が低く、加工性に劣っていた。

0125

「実施例3」
<モールドの製造>
実施例1にて得られたアルミニウム原型Aを、外径:205mm、内径:155mm、長さ:350mmの円筒状に切断した。次いで、被加工面の算術平均粗さRaが0.03μm以下となるように表面に鏡面切削加工を行い、その後、被加工面の算術平均粗さRaが0.002μm以下となるように表面に鏡面研磨加工をさらに行い(機械加工)、円筒状のアルミニウム原型を得た。
このアルミニウム原型を用い、以下のようにしてモールドを製造した。

0126

工程(a):
0.3Mのシュウ酸水溶液を15.7℃に温度調整し、これにアルミニウム原型を浸漬して、40Vで3分間陽極酸化することで、細孔を有する酸化皮膜を形成した。

0127

工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸を混合した70℃の水溶液中に4時間以上浸漬して酸化皮膜を溶解除去し、陽極酸化の細孔発生点となる窪みを露出させた。

0128

工程(c):
細孔発生点を露出させたアルミニウム原型を、再び工程(a)と同一条件下において、40Vで60秒間陽極酸化して、酸化皮膜をアルミニウム原型の表面に再び形成した。

0129

工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、5質量%リン酸の水溶液(30℃)中に9分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。

0130

工程(e):
前記工程(c)と前記工程(d)をさらに交互に4回繰り返した。最後に工程(d)を行った。すなわち、工程(c)を合計で5回行い、工程(d)を合計で5回行った。

0131

その後、脱イオン水洗浄し、さらに表面の水分をエアーブローで除去し、周期100nm、平均深さ約200nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されたロール状モールドを得た。

0132

<成形体の製造>
このようにして得られたロール状モールドを図5に示す製造装置に設置し、以下のようにして成形体を製造した。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、以下の組成のものを用いた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中化学社製):25質量部、
ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬社製):25質量部、
・エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製):25質量部、
ポリエチレングリコールジアクリレート(東亜合成社製):25質量部、
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製):1質量部、
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製):0.5質量、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(日本ケミカルズ社製):0.1質量部。

0133

図5に示すように、ロール状モールド20を、冷却水用流路を内部に設けた機械構造用炭素鋼製の軸心(図示略)にはめ込んだ。
次いで、活性エネルギー硬化性樹脂組成物をタンク22から所定の温度で供給ノズル(図示略)を介して、ニップロール26とロール状モールド20との間にニップされているフィルム42(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、東洋紡社製、「A4300」)上に供給した。この際、空気圧シリンダ24によりニップ圧が調整されたニップロール26によりニップされ、ロール状モールド20の細孔(凹部)内にも活性エネルギー性硬化性樹脂組成物が充填された。
毎分7.0mの速度でロール状モールド20を回転させながら、活性エネルギー性硬化性樹脂組成物がロール状モールド20とフィルム42との間に挟まれた状態で、活性エネルギー線照射装置28(240W/cmの紫外線照射装置)から紫外線を照射し、活性エネルギー性硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂層44を形成した後、剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離して、周期が100nm、突起の高さが150nmの微細凹凸構造を表面に有する成形体40を得た。
得られた成形体について外観を評価し、モアレの発生を確認し、ヘイズを測定した。結果を表2に示す。

0134

また、鏡面研磨加工での腐食反応で生じる凹み状欠陥を調べるため、製造した成形体の表面を電子顕微鏡により観察し、凸状欠陥の数を計測した。
その結果、直径が4μm以上の凸状欠陥は0個/mm2以下であり、100μm以上の大きな欠陥も存在していなかった。

0135

「実施例4」
実施例2にて得られたアルミニウム原型Bを、外径:205mm、内径:155mm、長さ:350mmの円筒状に切断した。次いで、被加工面の算術平均粗さRaが0.03μm以下となるように表面に鏡面切削加工を行い、その後、被加工面の算術平均粗さRaが0.002μm以下となるように表面に鏡面研磨加工をさらに行い(機械加工)、円筒状のアルミニウム原型を得た。
このアルミニウム原型を用いた以外は、実施例3と同様にしてモールドおよび成形体を製造した。
得られた成形体について外観を評価し、モアレの発生を確認し、ヘイズを測定した。結果を表2に示す。
また、得られた成形体の表面を電子顕微鏡により観察したところ、直径が4μm以上の凸状欠陥は0個/mm2以下であり、100μm以上の大きな欠陥も存在していなかった。

0136

「比較例5〜7」
比較例1で得られたアルミニウム原型C、比較例2で得られたアルミニウム原型D、比較例4で得られたアルミニウム原型Fを、それぞれ外径:205mm、内径:155mm、長さ:350mmの円筒状に切断した。次いで、被加工面の算術平均粗さRaが0.03μm以下となるように表面に鏡面切削加工を行い、その後、被加工面の算術平均粗さRaが0.002μm以下となるように表面に鏡面研磨加工をさらに行い(機械加工)、円筒状のアルミニウム原型を得た。
このアルミニウム原型を用いた以外は、実施例3と同様にしてモールドおよび成形体を製造した。
得られた成形体について外観を評価し、モアレの発生を確認し、ヘイズを測定した。結果を表2に示す。
また、得られた成形体の表面を電子顕微鏡により観察したところ、比較例5、6で得られた成形体の場合は、直径が4μm以上の凸状欠陥は0個/mm2以下であり、100μm以上の大きな欠陥も存在していなかった。一方、比較例7で得られた成形体の場合は、直径が4μm以上の凸状欠陥は64個/mm2であり、50μm以上の大きな欠陥もモールド1周あたり5個観察された。

0137

「比較例8、9」
比較例1で得られたアルミニウム原型C、比較例4で得られたアルミニウム原型Fを、それぞれ外径:205mm、内径:155mm、長さ:350mmの円筒状に切断した。次いで、被加工面の算術平均粗さRaが0.03μm以下となるように表面に鏡面切削加工を行い(機械加工)、円筒状のアルミニウム原型を得た。
このアルミニウム原型を用いた以外は、実施例3と同様にしてモールドおよび成形体を製造した。
得られた成形体について外観を評価し、モアレの発生を確認し、ヘイズを測定した。結果を表2に示す。
また、得られた成形体の表面を電子顕微鏡により観察したところ、比較例8で得られた成形体の場合は、直径が4μm以上の凸状欠陥は0個/mm2以下であり、100μm以上の大きな欠陥も存在していなかった。一方、比較例9で得られた成形体の場合は、直径が4μm以上の凸状欠陥は64個/mm2であり、50μm以上の大きな欠陥もモールド1周あたり5個観察された。

0138

実施例

0139

表2から明らかなように、各実施例で得られた成形体は、欠陥が少なく、結晶粒模様も確認されず、良好な外観を有していた。また、モアレが発生しにくく、ヘイズも低かった。
対して、微細化剤が添加されたアルミニウム原型素材を塑性加工したアルミニウム原型C、Dを用いた比較例5、6の場合、成形体の表面に0.8mm以上の欠陥が3個以上存在しており、外観の品質に劣っていた。
複数の方向から塑性加工が加えられた結晶組織を表面に有さないアルミニウム原型Fを用いた比較例7の場合、成形体の表面に結晶粒模様が確認された。また、比較例7で用いたアルミニウム原型Fは、表1に示すように加工性に劣っていた。
比較例8、9の場合、アルミニウム原型を鏡面化せずにモールドの製造に供したため、得られた成形体はモアレが発生した。特に、比較例8の成形体は、表面に0.8mm以上の欠陥が3個以上存在しており、ヘイズも高かった。一方、比較例9の成形体は、表面に結晶粒模様が確認された。

0140

本発明のアルミニウム原型によれば、表面品質が高く、結晶粒模様が視認しにくいモールドを得ることができ、加工性にも優れる。本発明のアルミニウム原型を使用することで外観欠陥が少なく、結晶粒模様の目立たない見た目に美しい転写物(成形体)を製造することができる。

0141

10モールド製造用アルミニウム原型
12 細孔
14酸化皮膜
16細孔発生点
18 モールド
20ロール状モールド
40成形体
42フィルム(成形体本体)
44硬化樹脂層
46 突起

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