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技術 蓄熱材組成物、蓄熱装置及び蓄熱方法

出願人 パナソニック株式会社
発明者 鈴木基啓町田博宣竹口伸介椎健太郎平沢泉森岡想
出願日 2015年9月14日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2015-180590
公開日 2016年6月20日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2016-108535
状態 特許登録済
技術分野 熱効果発生材料 再生式熱交換装置;蓄熱プラント、その他
主要キーワード 中央筐体 線材状 ピークα ピークβ 銀電極間 蓄熱組成物 熱エネルギー量 潜熱量
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年6月20日)のものです。
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図面 (10)

課題

室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる新規蓄熱材組成物を提供する。

解決手段

糖アルコールと、過冷却安定化剤と、を含有し、前記過冷却安定化剤は、(i)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩、(ii)前記塩をモノマーとするポリマー、又は(iii)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000〜400万の分子量を有するポリマー、である、蓄熱材組成物。前記糖アルコールがエリストトールである蓄熱材組成物。過冷却を解除するために一対の電極間電圧印加して、蓄熱材組成物の過冷却を解除し、糖アルコールの凝固に伴って発生する熱の一部を回収する方法。

概要

背景

熱エネルギー産業用又は家庭用に用いる場合、必要な熱エネルギー量に対して過剰なエネルギー量が発生することがある。また、熱エネルギーの発生時期と熱エネルギーが必要になる時期とが異なることもある。そこで、発生した熱エネルギーを有効に利用するために、蓄熱材を用いて熱エネルギーを一時的に蓄えることが知られている。

蓄熱材として、顕熱蓄熱材及び潜熱蓄熱材が知られている。潜熱蓄熱材は、物質融解などの相変化を利用する蓄熱材である。潜熱蓄熱材は、顕熱蓄熱材の蓄熱密度よりも高い蓄熱密度を有する。また、潜熱蓄熱材は、相変化時の温度が一定であるので、潜熱蓄熱材から熱エネルギーを安定した温度で取り出せるという利点を有する。潜熱蓄熱材を用いて蓄熱を行う場合、潜熱蓄熱材が加熱されて潜熱蓄熱材が液体状態になる。その後、潜熱蓄熱材は、潜熱蓄熱材が液体状態に維持されるように、保温される。潜熱蓄熱材を結晶化(凝固)させることによって、潜熱蓄熱材に蓄えられた熱を必要な時期に取り出すことができる。

糖アルコールは、比較的大きい融解潜熱を有するので、比較的少ない容量で効率的に熱を蓄えることができる物質として知られている。また、糖アルコールは、毒性を示さず安全な物質である。糖アルコールは、物質固有の温度(融点)で融解するものの、一旦融解すると、融点を下回っても凝固せずに、流動可能な状態、いわゆる過冷却状態になることが知られている。そこで、糖アルコールを含有する潜熱蓄熱材を加熱して液体状態にした後に過冷却状態に保って蓄熱することが検討されている。この場合、糖アルコールを含有する潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除することによって、潜熱蓄熱材に蓄えられた熱を取り出すことができる。

特許文献1には、糖アルコール及びポリエーテル変性シリコーンを含有する蓄熱材組成物が記載されている。蓄熱材組成物にポリエーテル変性シリコーンが含有されていると、糖アルコールの分子同士が結合することが妨げられ、糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制される。これにより、蓄熱材組成物の結晶化開始温度を低下させて、過冷却の促進を可能にしている。例えば、特許文献1において、実施例1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、48.0℃である。

概要

室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる新規な蓄熱材組成物を提供する。糖アルコールと、過冷却安定化剤と、を含有し、前記過冷却安定化剤は、(i)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩、(ii)前記塩をモノマーとするポリマー、又は(iii)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000〜400万の分子量を有するポリマー、である、蓄熱材組成物。前記糖アルコールがエリストトールである蓄熱材組成物。過冷却を解除するために一対の電極間電圧印加して、蓄熱材組成物の過冷却を解除し、糖アルコールの凝固に伴って発生する熱の一部を回収する方法。

目的

そこで、本開示は、室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる新規な蓄熱材組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

糖アルコールと、過冷却安定化剤と、を含有し、前記過冷却安定化剤は、(i)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩、(ii)前記塩をモノマーとするポリマー、又は(iii)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000以上400万以下の分子量を有するポリマー、である、蓄熱材組成物

請求項2

前記塩がカルボン酸塩である、又は、前記ポリマーがポリカルボン酸塩である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項3

前記塩が、酢酸ナトリウム酢酸アンモニウム酢酸カリウム、又はアクリル酸ナトリウムである、請求項2に記載の蓄熱材組成物。

請求項4

前記ポリマーが、ポリアクリル酸ナトリウムである、請求項2に記載の蓄熱材組成物。

請求項5

前記塩が、塩化物である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項6

前記塩化物が、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムである、請求項5に記載の蓄熱材組成物。

請求項7

前記塩が、水酸化物である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項8

前記水酸化物が、水酸化ナトリウムである、請求項6に記載の蓄熱組成物

請求項9

前記塩が、硝酸塩である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項10

前記硝酸塩が、硝酸ナトリウム又は硝酸銀である、請求項9に記載の蓄熱材組成物。

請求項11

前記塩が、炭酸水素塩である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項12

前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウムである、請求項11に記載の蓄熱材組成物。

請求項13

前記塩が、安息香酸塩である、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項14

前記安息香酸塩が、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムである、請求項13に記載の蓄熱材組成物。

請求項15

前記ポリマーが、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の蓄熱材組成物。

請求項16

前記糖アルコールが、エリスリトールである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の蓄熱材組成物。

請求項17

請求項1〜16のいずれか1項に記載の蓄熱材組成物と、前記蓄熱材組成物に接触して配置されている一対の電極と、を備え、前記一対の電極のうち少なくとも一方が銀若しくは銀化合物を含み、又は、前記蓄熱材組成物は前記蓄熱材組成物が液体状態であるときに銀イオンを含み、前記蓄熱材組成物が液体状態かつ過冷却状態であるときに、前記蓄熱材組成物の過冷却状態が解除されるように前記一対の電極間電圧印加される、蓄熱装置

請求項18

請求項1〜16のいずれか1項に記載の蓄熱材組成物の温度を、前記糖アルコールの融点以上の温度に上昇させて、固体状態の前記糖アルコールを融解させ、前記蓄熱材組成物の温度を前記糖アルコールの融点未満の温度に保ち、かつ、前記蓄熱材組成物を過冷却状態に保ち、前記糖アルコールを凝固させ、前記糖アルコールの凝固に伴って前記蓄熱材組成物から放出される熱の少なくとも一部を回収する、ことを含む、蓄熱方法

技術分野

0001

本開示は、蓄熱材組成物、この蓄熱材組成物を用いた蓄熱装置、及びこの蓄熱材組成物を用いた蓄熱方法に関する。

背景技術

0002

熱エネルギー産業用又は家庭用に用いる場合、必要な熱エネルギー量に対して過剰なエネルギー量が発生することがある。また、熱エネルギーの発生時期と熱エネルギーが必要になる時期とが異なることもある。そこで、発生した熱エネルギーを有効に利用するために、蓄熱材を用いて熱エネルギーを一時的に蓄えることが知られている。

0003

蓄熱材として、顕熱蓄熱材及び潜熱蓄熱材が知られている。潜熱蓄熱材は、物質融解などの相変化を利用する蓄熱材である。潜熱蓄熱材は、顕熱蓄熱材の蓄熱密度よりも高い蓄熱密度を有する。また、潜熱蓄熱材は、相変化時の温度が一定であるので、潜熱蓄熱材から熱エネルギーを安定した温度で取り出せるという利点を有する。潜熱蓄熱材を用いて蓄熱を行う場合、潜熱蓄熱材が加熱されて潜熱蓄熱材が液体状態になる。その後、潜熱蓄熱材は、潜熱蓄熱材が液体状態に維持されるように、保温される。潜熱蓄熱材を結晶化(凝固)させることによって、潜熱蓄熱材に蓄えられた熱を必要な時期に取り出すことができる。

0004

糖アルコールは、比較的大きい融解潜熱を有するので、比較的少ない容量で効率的に熱を蓄えることができる物質として知られている。また、糖アルコールは、毒性を示さず安全な物質である。糖アルコールは、物質固有の温度(融点)で融解するものの、一旦融解すると、融点を下回っても凝固せずに、流動可能な状態、いわゆる過冷却状態になることが知られている。そこで、糖アルコールを含有する潜熱蓄熱材を加熱して液体状態にした後に過冷却状態に保って蓄熱することが検討されている。この場合、糖アルコールを含有する潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除することによって、潜熱蓄熱材に蓄えられた熱を取り出すことができる。

0005

特許文献1には、糖アルコール及びポリエーテル変性シリコーンを含有する蓄熱材組成物が記載されている。蓄熱材組成物にポリエーテル変性シリコーンが含有されていると、糖アルコールの分子同士が結合することが妨げられ、糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制される。これにより、蓄熱材組成物の結晶化開始温度を低下させて、過冷却の促進を可能にしている。例えば、特許文献1において、実施例1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、48.0℃である。

先行技術

0006

特開2011−153206号公報

発明が解決しようとする課題

0007

特許文献1によれば、蓄熱材組成物に含有されている糖アルコールの過冷却状態を室温又は室温に近い温度で安定的に保つ新規な技術を検討する余地がある。そこで、本開示は、室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる新規な蓄熱材組成物を提供する。

課題を解決するための手段

0008

本開示にかかる、蓄熱材組成物は、
糖アルコールと、
過冷却安定化剤と、を含有し、
前記過冷却安定化剤は、
(i)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩、
(ii)前記塩をモノマーとするポリマー、又は
(iii)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000以上400万以下の分子量を有するポリマー、であるものである。

発明の効果

0009

本開示は、室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる蓄熱材組成物を提供する。

図面の簡単な説明

0010

図1は、本開示の蓄熱方法における蓄熱材組成物の状態変化を模式的に説明する図を示す。
図2は、本開示の蓄熱方法を行うための蓄熱システムの構成図を示す。
図3(a)は、エリスリトールのみを含有するサンプルのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルを示す。図3(b)は、エリスリトール及び酢酸ナトリウムを含有するサンプルのNMRスペクトルを示す。図3(c)は、エリスリトール及び硝酸ナトリウムを含有するサンプルのNMRスペクトルを示す。
図4(a)は、図3(a)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。図4(b)は、図3(b)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。図4(c)は、図3(c)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。
図5(a)は、図3(a)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。図5(b)は、図3(b)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。図5(c)は、図3(c)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。
エリスリトールと酢酸ナトリウム又は硝酸ナトリウムとの相互作用を説明する図。
図7は、本開示の実施形態に係る蓄熱装置の断面図を示す。
図8は、本開示の実施形態に係る蓄熱装置の断面図を示す。
図9は、本開示の蓄熱方法を説明するフローチャートを示す。

0011

糖アルコールを含有する蓄熱材組成物を用いた蓄熱システムにおいて、熱が必要になる時期が訪れるまで蓄熱材組成物を過冷却状態に保つことが望ましい。しかし、例えば、自動車内燃機関廃熱又はボイラーの廃熱を熱源として蓄熱を行う場合、蓄熱材組成物が熱を蓄えている期間(蓄熱材組成物が過冷却状態である期間)に、蓄熱材組成物の温度が室温又は室温に近い温度まで低下する可能性がある。その結果、熱が必要になる時期が訪れる前に糖アルコールが結晶化(凝固)する可能性がある。そこで、室温又は室温近い温度でも過冷却状態を安定的に保つことができる蓄熱材組成物が求められている。

0012

本発明者らは、特許文献1に記載された蓄熱材組成物とは異なる、糖アルコールを含有する新規な蓄熱材組成物について検討した。本発明者らは、所定の過冷却安定化剤を蓄熱材組成物に含有させると、糖アルコールと過冷却安定化剤との相互作用によって糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制され、室温又は室温に近い温度(例えば、25℃〜60℃)で過冷却状態を保つことができることを見出した。本発明者らはこの知見に基づいて鋭意検討を重ね、本開示の蓄熱材組成物が得られた。

0013

本開示の第1態様の蓄熱材組成物は、
糖アルコールと、
前記糖アルコールを液体状態かつ過冷却状態に維持する過冷却安定化剤と、を含有し、
前記糖アルコールを液体状態かつ過冷却状態に維持する前記過冷却安定化剤は、
(i)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩、
(ii)前記塩をモノマーとするポリマー、又は
(iii)20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000以上400万以下の分子量を有するポリマー、であるものである。

0014

第1態様によれば、糖アルコールと過冷却安定化剤との相互作用によって糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制されるので、蓄熱材組成物が室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる。

0015

第2態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩がカルボン酸塩である、又は、前記ポリマーがポリカルボン酸塩であってもよい。

0016

第3態様において、例えば、第2態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム酢酸カリウム、又はアクリル酸ナトリウムであってもよい。

0017

第4態様において、例えば、第2態様にかかる蓄熱材組成物の前記ポリマーが、ポリアクリル酸ナトリウムであってもよい。

0018

第5態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、塩化物であってもよい。

0019

第6態様において、例えば、第5態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩化物が、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムであってもよい。

0020

第7態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、水酸化物であってもよい。

0021

第8態様において、例えば、第7態様にかかる蓄熱材組成物の前記水酸化物が、水酸化ナトリウムであってもよい。

0022

第9態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、硝酸塩であってもよい。

0023

第10態様において、例えば、第9態様にかかる蓄熱材組成物の前記硝酸塩が、硝酸ナトリウム又は硝酸銀であってもよい。

0024

第11態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、炭酸水素塩であってもよい。

0025

第12態様において、例えば、第11態様にかかる蓄熱材組成物の前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウムであってもよい。

0026

第13態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記塩が、安息香酸塩であってもよい。

0027

第14態様において、例えば、第13態様にかかる蓄熱材組成物の前記安息香酸塩が、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムであってもよい。

0028

第15態様において、例えば、第1態様にかかる蓄熱材組成物の前記ポリマーが、ポリエチレングリコールであってもよい。

0029

第16態様において、例えば、第1態様〜第15態様にかかる蓄熱材組成物の前記糖アルコールが、エリスリトールであってもよい。

0030

第17態様にかかる蓄熱装置は、
第1態様〜第16態様のいずれか一つに記載の蓄熱材組成物と、
前記蓄熱材組成物に接触するように配置されている一対の電極と、を備え、
前記一対の電極のうち少なくとも一方が銀若しくは銀化合物を含み、又は、前記蓄熱材
組成物は前記蓄熱材組成物が液体状態であるときに銀イオンを含み、
前記蓄熱材組成物が液体状態かつ過冷却状態であるときに、前記蓄熱材組成物の過冷却
状態が解除されるように前記一対の電極間電圧印加される、ものである。

0031

一対の電極間に電圧を印加して蓄熱材組成物の過冷却を解除する技術は、特公昭64−8260号公報に記載されているように、イオン結合を有する酢酸ナトリウム3水塩を含む蓄熱材組成物には有効である。しかし、この技術を糖アルコールのみを含む蓄熱材組成物に適用しても、蓄熱材組成物の過冷却状態を容易に解除することはできないと考えられる。なぜなら、糖アルコールは高い電気絶縁性を有し、その電気伝導性はかなり低いので、一対の電極間への電圧の印加によって糖アルコールの過冷却を解除するのに十分なエネルギーを付与することは容易ではないと考えられるからである。これに対し、第17態様にかかる蓄熱装置によれば、前記一対の電極のうち少なくとも一方が銀若しくは銀化合物を含む、又は、前記蓄熱材組成物は前記蓄熱材組成物が液体状態であるときに銀イオンを含む。このため、一対の電極間に電圧を印加することよって糖アルコールを含む蓄熱材組成物の過冷却状態を容易に解除することができる。

0032

第18態様にかかる蓄熱方法は、
第1態様〜第16態様のいずれか1つに記載の蓄熱材組成物の温度を、前記糖アルコールの融点以上の温度に上昇させて、固体状態の前記糖アルコールを融解させ、
前記蓄熱材組成物の温度を前記糖アルコールの融点未満の温度に低下させて前記蓄熱材組成物を液体状態かつ過冷却状態とし、
前記蓄熱材組成物の温度を前記糖アルコールの融点未満の温度に保ち、かつ、前記蓄熱材組成物を過冷却状態に保ち、
前記糖アルコールを凝固させ、
前記糖アルコールの凝固に伴って前記蓄熱材組成物から放出される熱の少なくとも一部を回収する、工程を備えた、ものである。

0033

(実施の形態1)
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本開示の一例に関するものであり、本開示はこれらに限定されるものではない。

0034

<蓄熱材組成物>
本開示の蓄熱材組成物は、糖アルコールと、過冷却安定化剤とを含有している。過冷却安定化剤は、例えば、20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである塩又はその塩をモノマーとするポリマーである。過冷却安定化剤がこのような塩又はポリマーであると、糖アルコールと過冷却安定化剤との相互作用によって、糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制される。その結果、蓄熱材組成物が室温又は室温に近い温度で過冷却状態を安定的に保つことができる。

0035

過冷却安定化剤が塩である場合、その塩は、その塩の20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であり、かつ、1価のアニオンである限り、特に制限されないが、例えば、カルボン酸塩、塩化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸水素塩又は安息香酸塩である。過冷却安定化剤であるカルボン酸塩は、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、又はアクリル酸ナトリウムである。酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、及びアクリル酸ナトリウムの、20℃の水100mLに対する溶解度は、それぞれ、32.0g、37.0g、256g、及び30g以上である。過冷却安定化剤である塩化物は、例えば、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムである。塩化ナトリウム及び塩化カルシウムの、20℃の水100mLに対する溶解度は、それぞれ、36.0g及び74.7gである。過冷却安定化剤である水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウムである。水酸化ナトリウムの、20℃の水100mLに対する溶解度は、109.4g過冷却安定化剤である硝酸塩は、例えば、硝酸ナトリウム又は硝酸銀である。硝酸ナトリウム及び硝酸銀の、20℃の水100mLに対する溶解度は、それぞれ、91.9g及び217.2gである。過冷却安定化剤である炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素ナトリウムの、20℃の水100mLに対する溶解度は、9.6gである。過冷却安定化剤である安息香酸塩は、例えば、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムである。安息香酸ナトリウム及び安息香酸カリウムの、20℃の水100mlに対する溶解度は、それぞれ、62.7g及び70.7gである。過冷却安定化剤である炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素ナトリウムの、20℃の水100mlに対する溶解度は、9.6gである。

0036

過冷却安定化剤がポリマーである場合、そのポリマーは、例えば、カルボン酸塩をモノマーとするポリカルボン酸塩である。過冷却安定化剤であるポリカルボン酸塩は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムである。ポリアクリル酸ナトリウムの分子量は、特に制限されないが、例えば、2700〜70000である。本明細書において用いられる用語「分子量」は、「粘度平均分子量」を意味する。

0037

また、過冷却安定化剤は、20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるアルコールをモノマーとする、7000以上の分子量を有するポリマーであってもよい。この場合、過冷却安定化剤であるポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールである。このポリマーの分子量は、例えば、7000〜400万である。なお、エチレングリコールは、20℃の水100mLに対して任意に混和する。

0038

蓄熱材組成物は、上述した過冷却安定化剤のうち1種類を単独で含有していてもよいし、上述した過冷却安定化剤のうち2種類以上を含有していてもよい。

0039

本開示の蓄熱材組成物に含有される糖アルコールは、特に制限されないが、例えば、エリスリトール、キシリトールアラビトールソルビトールマンニトールスレイトールガラクチトール、又はペンタエリスリトールである。これらを単独で用いてもよいし、これらの糖アルコールのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよい。自動車の内燃機関の廃熱又はボイラーの廃熱を熱源として蓄熱を行う場合、蓄熱材組成物に含まれる糖アルコールの融点は、80℃〜200℃であることが望ましい。安定性、安全性、低吸湿量、及び高潜熱量などの特性を考慮すると、本開示の蓄熱材組成物に含有される糖アルコールは、望ましくは、エリスリトールである。

0040

蓄熱材組成物がより多くの熱を蓄えることができるように、蓄熱材組成物ができるだけ多くの糖アルコールを含有していることが望ましい。換言すると、蓄熱材組成物に含有される過冷却安定化剤の質量は少ないことが望ましい。この観点から、蓄熱材組成物に含有される過冷却安定化剤の質量Wsと蓄熱材組成物に含有される糖アルコールの質量Waとの比(Ws/Wa)は、例えば、0.3以下であり、望ましくは0.2以下であり、より望ましくは0.1以下であり、さらに望ましくは、0.05以下である。Ws/Waの値の下限は、蓄熱材組成物が室温又は室温に近い温度で過冷却状態を保つことができる限り、特に制限されない。

0041

本開示の蓄熱材組成物は、糖アルコール及び過冷却安定化剤以外の成分を含んでいてもよい。本開示の蓄熱材組成物は、例えば、粘度調整剤を含有していてもよい。また、本開示の蓄熱材組成物は、糖アルコール及び過冷却安定化剤のみを含有していてもよい。

0042

蓄熱材組成物は、糖アルコールの粉体と、過冷却安定化剤の粉体とを混合することによって調製できる。または、蓄熱材組成物は、糖アルコールの融点以上の温度に加熱されて液体状態となった糖アルコールに過冷却安定化剤を加えてスターラーなどで撹拌することによって調製されてもよい。

0043

<蓄熱方法>
次に、上述の蓄熱材組成物を用いた蓄熱方法の一例を説明する。この蓄熱方法は、蓄熱工程と、過冷却保持工程と、過冷却解除工程と、熱回収工程とを備えている。これらの工程によって、蓄熱材組成物の状態は、図1に示すように変化する。この蓄熱方法は、例えば、図2に示す蓄熱システム100を用いて行われる。

0044

蓄熱システム100は、蓄熱装置10と、ポンプ16と、三方弁18と、熱源装置20と、熱出力装置22と、流路25とを備えている。流路25は、熱源装置20から蓄熱装置10に熱媒体が供給され、かつ、熱媒体が蓄熱装置10から熱源装置20に戻るように形成されている。また、流路25は、熱出力装置22から蓄熱装置10に熱媒体が供給され、かつ、熱媒体が蓄熱装置10から熱出力装置22に戻るように形成されている。ポンプ16及び三方弁18は、流路25に設けられている。ポンプ16の働きにより、熱源装置20と蓄熱装置10との間で熱媒体が循環し、又は、熱出力装置22と蓄熱装置10との間で熱媒体が循環する。三方弁18が制御されることによって、熱源装置20と蓄熱装置10との間で熱媒体が循環する状態と、熱出力装置22と蓄熱装置10との間で熱媒体が循環する状態とが切り替えられる。

0045

蓄熱装置10は、容器12と、蓄熱材組成物14と、内部流路15と、過冷却解除手段24と、を備えている。蓄熱材組成物14は、上述した本開示の蓄熱材組成物である。蓄熱材組成物14は、容器12に収容されている。容器12は、例えば、伝熱性を有する密閉容器である。また、内部流路15は、熱源装置20又は熱出力装置22から蓄熱装置10の内部に供給された熱媒体のための流路である。内部流路15の少なくとも一部は、容器12の外周面によって形成されている。すなわち、熱媒体は、容器12の外周面に接触しながら内部流路15を流れる。これにより、内部流路15を流れている熱媒体と容器12の内部の蓄熱材組成物14との間で熱交換を生じさせることができる。過冷却解除手段24は、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの過冷却状態を解除できる限り特に制限されず、公知の過冷却解除手段を用いることができる。過冷却解除手段24は、例えば、蓄熱材組成物14を局所的に冷却する冷却器放電装置、又は超音波発生装置である。

0046

蓄熱工程は、容器12に収容されている蓄熱材組成物14の温度を、容器12が熱媒体の流れから受熱することによって、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの融点以上の温度(例えば、130℃)に上昇させて、蓄熱材組成物14に含有されている固体状態の糖アルコールを融解させる工程である。図1に示すように、蓄熱工程が行われる前の蓄熱材組成物14は、例えば、固体状態の糖アルコールと、過冷却安定化剤の溶液とが共存する固液共存状態である。蓄熱工程において、固体状態の糖アルコールが融解し、蓄熱材組成物14が液体状態(液体状態の糖アルコールと過冷却安定化剤の溶液との混合物)になる。この場合、熱源装置20から蓄熱装置10に熱媒体が供給され、かつ、熱媒体が蓄熱装置10から熱源装置20に戻るように三方弁18が制御される。ポンプ16の作動により、図2において実線の矢印で示すように熱媒体が熱源装置20と蓄熱装置10との間を循環する。このとき、蓄熱装置10の内部では、熱媒体が内部流路15を流れ、容器12が熱媒体の流れから受熱する。熱媒体は、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの融点以上の温度を有する。熱媒体は、例えば、オイルである。熱媒体は、熱源装置20において、例えば、自動車の内燃機関の廃熱又はボイラーの廃熱によって加熱されている。これにより、蓄熱材組成物14の温度を蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの融点以上の温度に上昇させることができる。その結果、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールが融解する。このようにして、蓄熱材組成物14に潜熱の形態で熱を蓄えることができる。

0047

図1に示すように、過冷却保持工程は、容器12の内部で、蓄熱材組成物14の温度を蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの融点未満の温度に保ち、かつ、蓄熱材組成物14を過冷却状態に保つ工程である。過冷却保持工程は、蓄熱工程の終了後に行われる。蓄熱工程の実施中にポンプ16が停止することによって蓄熱工程が終了する。ポンプ16が停止すると、熱源装置20から蓄熱装置10への熱媒体の供給が停止され、蓄熱材組成物14の温度が蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの融点未満に低下して、過冷却保持工程に移行する。蓄熱材組成物14の温度は、例えば、室温又は室温に近い温度(例えば、25℃〜60℃)まで低下する。蓄熱材組成物14の過冷却安定化剤によって蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの結晶化(凝固)が抑制されるので、蓄熱材組成物14を液体状態(過冷却状態)に保つことができる。なお、過冷却保持工程において、外気温度の変化などによって蓄熱材組成物14の温度が低下しすぎることを防止するために、所定の温度を有する熱媒体を蓄熱装置10の内部に供給して蓄熱材組成物14を所定の温度まで温めてもよい。

0048

図1に示すように、過冷却解除工程は、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールを凝固させる工程である。過冷却解除工程において、例えば、過冷却解除手段24の働きにより蓄熱材組成物14の過冷却状態が解除される。これにより、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールが結晶化(凝固)する。また、過冷却解除手段24を省略して、熱出力装置22から低温の熱媒体を供給することによって、蓄熱材組成物14の過冷却状態が解除されてもよい。

0049

熱回収工程は、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの凝固に伴って蓄熱材組成物14から放出される熱の少なくとも一部を、熱媒体の流れが容器12から受熱することによって回収する工程である。熱回収工程は、過冷却解除工程と並行して行われる。熱回収工程において、熱出力装置22から蓄熱装置10に熱媒体が供給され、かつ、熱媒体が蓄熱装置10から熱出力装置22に戻るように三方弁18が制御される。ポンプ16の作動により、図2において破線の矢印で示すように熱媒体が熱出力装置20と蓄熱装置10との間を循環する。熱媒体は、例えば、オイルである。熱媒体は、蓄熱材組成物14の温度よりも低い温度を有する。蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの凝固に伴って蓄熱材組成物14から放出される熱によって容器12が加熱される。蓄熱装置10の内部では、熱媒体が内部流路15を流れ、熱媒体の流れが容器12から受熱する。容器12から受熱した熱媒体は、熱出力装置22に供給される。これにより、蓄熱材組成物14に含有されている糖アルコールの凝固に伴って蓄熱材組成物14から放出される熱の少なくとも一部が回収される。回収された熱は、熱出力装置22において、暖房又は給湯などの用途に利用される。

0050

蓄熱材組成物14を容器12に収容せず流動させて蓄熱を行うことも考えられる。しかし、糖アルコールの含有量踏まえると、蓄熱工程前の蓄熱材組成物14の流動性はあまり高くないと考えられる。このため、蓄熱材組成物14を容器12に収容した状態で、上記のように、蓄熱工程、過冷却保持工程、過冷却解除工程、及び熱回収工程を行うことが望ましい。なお、本開示の蓄熱材組成物は、上記の蓄熱システム100のみならず、他のシステムにおいても使用可能である。

0051

実施例により本開示の蓄熱材組成物をより詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。

0052

<過冷却安定性の評価方法
まず、実施例、比較例、又は参考例に係る蓄熱材組成物の過冷却安定性の評価方法について説明する。実施例、比較例、又は参考例に係る蓄熱材組成物では、糖アルコールとしてエリスリトール(日本ガーリック社製)を用いた。130℃に設定された乾燥炉に、実施例、比較例、又は参考例に係る蓄熱材組成物が調製されたガラス製のサンプル瓶を入れて、エリスリトールを融解させた。その後、乾燥炉の温度を0.83℃/分の降温速度最低で25℃まで低下させた。このとき、実施例、比較例、又は参考例に係る蓄熱材組成物の温度を測定し、エリスリトールの固相が生成された時点の蓄熱材組成物の温度を結晶化開始温度と定めた。ここで、蓄熱材組成物の温度が上昇したことに基づいて、エリスリトールの固相が生成されたと判断した。蓄熱材組成物の結晶化開始温度が低いほど、蓄熱材組成物が過冷却状態をより安定的に保つことができると評価できる。

0053

<実施例A1>
ガラス製サンプル瓶に、エリスリトール3.0g(日本ガーリック社製)と、酢酸ナトリウム0.03gとを入れて混合することによって実施例A1の蓄熱材組成物を調製した。表1に実施例A1の蓄熱材組成物の結晶化開始温度を示す。

0054

<実施例A2〜A10>
ガラス製のサンプル瓶に入れる酢酸ナトリウムの量を表1の通り変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A2〜A10に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例A2〜A10に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表1に示す。なお、以下の表において、結晶化開始温度の欄の「25(<24h)」という表記は、蓄熱材組成物の温度を25℃で24時間保った場合に、エリスリトールの固相が24時間以内に生成されたことを意味する。また、以下の表において、結晶化開始温度の欄の「25(>24h)」という表記は、蓄熱材組成物の温度を25℃で24時間以上保っても、エリスリトールの固相が生成されなかったことを意味する。

0055

0056

<実施例B1〜B5>
酢酸ナトリウムの代わりに、酢酸アンモニウムを表2に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例B1〜B5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例B1〜B5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表2に示す。

0057

0058

<実施例C1〜C5>
酢酸ナトリウムの代わりに、酢酸カリウムを表3に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例C1〜C5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例C1〜C5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表3に示す。

0059

0060

<実施例D1〜D5>
酢酸ナトリウムの代わりに、アクリル酸ナトリウムを表4に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例D1〜D5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例D1〜D5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表4に示す。

0061

0062

<実施例E1〜E5>
酢酸ナトリウムの代わりに、ポリアクリル酸ナトリウム(分子量:2700〜7500)を表5に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例E1〜E5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例E1〜E5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表5に示す。

0063

0064

<実施例F1〜F5>
酢酸ナトリウムの代わりに、ポリアクリル酸ナトリウム(分子量:2.2万〜7万)を表6に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例F1〜F5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例F1〜F5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表6に示す。

0065

0066

<実施例G1〜G10>
酢酸ナトリウムの代わりに、塩化ナトリウムを表7に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例G1〜G10に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例G1〜G10に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表7に示す。

0067

0068

<実施例H1〜H3>
酢酸ナトリウムの代わりに、硝酸ナトリウムを表8に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例H1〜H3に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例H1〜H3に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表8に示す。

0069

0070

<実施例I1〜I7>
酢酸ナトリウムの代わりに、炭酸水素ナトリウムを表9に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例I1〜I7に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例I1〜I7に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表9に示す。

0071

0072

<実施例J1〜J5>
酢酸ナトリウムの代わりに、ポリエチレングリコール(分子量7300〜9300)を表10に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例J1〜J5に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例J1〜J5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表10に示す。

0073

0074

<実施例K1〜K7>
酢酸ナトリウムの代わりに、ポリエチレングリコール(分子量30万〜50万)を表11に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例K1〜K7に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例K1〜K7に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表11に示す。

0075

0076

<実施例L1〜L6>
酢酸ナトリウムの代わりに、ポリエチレングリコール(分子量350万〜400万)を表12に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして実施例L1〜L6に係る蓄熱材組成物を調製した。実施例L1〜L6に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表12に示す。

0077

0078

<比較例A1>
ガラス製サンプル瓶に、エリスリトール3.0g(日本ガーリック社製)のみを入れて比較例A1の蓄熱材組成物を調製した。比較例A1の蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、62.1℃であった。

0079

<比較例B1〜B5>
酢酸ナトリウムの代わりに、硫酸ナトリウムを表13に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして比較例B1〜B5に係る蓄熱材組成物を調製した。比較例B1〜B5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表13に示す。なお、20℃の水100mLに対する硫酸ナトリウムの溶解度は、19.1gであるが、アニオンである硫酸イオンは2価である。

0080

0081

<比較例C1〜C5>
酢酸ナトリウムの代わりに、リン酸水素ナトリウムを表14に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして比較例C1〜C5に係る蓄熱材組成物を調製した。比較例C1〜C5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表14に示す。なお、20℃の水100mLに対するリン酸水素ナトリウムの溶解度は、7.7gであり、アニオンであるリン酸水素イオンは2価である。

0082

0083

<参考例1〜3>
酢酸ナトリウムの代わりに、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製、商品名:KF−354L)を表15に示す含有量でガラス製のサンプル瓶に入れた以外は、実施例A1と同様にして参考例1〜3に係る蓄熱材組成物を調製した。参考例1〜3に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度を表15に示す。

0084

0085

表1〜表12に示すように、いずれの実施例に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度が、比較例A1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度よりもかなり低い。このため、いずれの実施例に係る蓄熱材組成物が、室温又は室温に近い温度(例えば、25℃〜60℃)で過冷却状態を安定的に保つことができることが示された。また、実施例A1、G1、K1、及びL1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、参考例1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度よりも低く、実施例A2、G2、I1、K2、及びL2に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、参考例2に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度よりも低い。さらに、実施例A4、B1、C1、D1、E1、F1、G4、H1、J1、K4、及びL4に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、参考例3に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度よりも低い。このため、本開示の結晶化安定剤を含有する蓄熱材組成物は、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを過冷却安定化剤とする蓄熱材組成物と比べて、過冷却状態をより安定的に保つことができることが示唆された。

0086

比較例B1〜B5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度及び比較例C1〜C5に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度は、比較例A1に係る蓄熱材組成物の結晶化開始温度よりも高い。このため、20℃の水100mLに対する溶解度が9g未満の塩を過冷却安定化剤として用いること、及び、20℃の水100mLに対する溶解度が9g以上であるが、アニオンが2価である塩を過冷却安定化剤として用いることは難しいことが示唆された。

0087

<過冷却安定化メカニズムの検討>
本開示の蓄熱材組成物が、過冷却安定化剤を含有することによって過冷却状態を安定的に保つメカニズムについて検討した。エリスリトール20mgを、30重量%の重水と70重量%の重DMSO(Dimethyl sulfoxide)とからなる重溶媒(780mg)に溶解させ、サンプル1を得た。酢酸ナトリウムとエリスリトールとを同じ重量で混合した混合試料(20mg)を、30重量%の重水と70重量%の重DMSO(Dimethyl sulfoxide)とからなる重溶媒(780mg)に溶解させ、サンプル2を得た。また、酢酸ナトリウムに代えて、硝酸ナトリウムを用いた以外は、サンプル2と同様にして、サンプル3を得た。NMR装置(Bruker社製、製品名:AVANCE 500)を用いて、サンプル1〜3のそれぞれについて、13C−NMR分析を行った。その結果を、図3〜5に示す。図3(a)は、エリスリトールのみを含有するサンプルのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルを示す。図3(b)は、エリスリトール及び酢酸ナトリウムを含有するサンプルのNMRスペクトルを示す。図3(c)は、エリスリトール及び硝酸ナトリウムを含有するサンプルのNMRスペクトルを示す。図4(a)は、図3(a)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。図4(b)は、図3(b)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。図4(c)は、図3(c)のNMRスペクトルのピークα付近の拡大図を示す。図5(a)は、図3(a)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。図5(b)は、図3(b)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。図5(c)は、図3(c)のNMRスペクトルのピークβ付近の拡大図を示す。

0088

図4及び図5に示すように、サンプル2及びサンプル3のピークα及びピークβは、それぞれ、サンプル1のピークα及びピークβよりも図の右側(高磁場側)にシフトしている。サンプル2のピークα及びピークβは、それぞれ、サンプル3のピークα及びピークβよりも図の右側(高磁場側)にシフトしている。ピークα及びピークβの高磁場側へのシフトが大きいほど、エリスリトールと酢酸ナトリウム又は硝酸ナトリウムとの相互作用が大きいと考えられる。すなわち、酢酸ナトリウムは、硝酸ナトリウムに比べてエリスリトールとより大きな相互作用を示すと考えられる。図6に示すように、エリスリトールと酢酸ナトリウムとが共存する場合、酢酸イオンがエリスリトールのヒドロキシル基と相互作用する。また、エリスリトールと硝酸ナトリウムとが共存する場合、硝酸イオンがエリスリトールのヒドロキシル基と相互作用する。ここで、図6に示すように、酢酸イオンは、硝酸イオンに比べて、エリスリトールのヒドロキシル基の水素原子プロトン化して引き寄せやすい。換言すると、酢酸イオンとエリスリトールとの相互作用に伴う共鳴は、硝酸イオンとエリスリトールとの相互作用に伴う共鳴に比べて、図6の右側の状態により偏った状態で平衡になりやすい。

0089

表1、表8、図4、及び図5に示す結果から、高磁場側へのシフト量の大きさ(相互作用の大きさ)が、エリスリトールの結晶化を抑制する効果に関連していると考えられる。すなわち、エリスリトールと過冷却安定化剤との相互作用が大きいほど、エリスリトールの結晶化(凝固)が抑制され、過冷却が促進されると考えられる。

0090

(実施形態2)
以下、実施形態2に係る蓄熱装置について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態と第2実施形態とで共通する構成要素については、同一の符号および名称を付して説明を省略する。なお、以下の説明は本開示の一例に関するものであり、本開示はこれらに限定されるものではない。

0091

図7に示すように、本開示の蓄熱装置27は、蓄熱材組成物14と、一対の電極26とを備える。蓄熱材組成物14は、糖アルコールと、過冷却安定化剤とを含む。過冷却安定化剤は、20℃の水100mlに対する溶解度が9g以上の塩である。一対の電極26は、蓄熱材組成物14に接触するように配置されている。一対の電極26のうち少なくとも一方が銀若しくは銀化合物を含み、又は、蓄熱材組成物14は蓄熱材組成物14が液体状態であるときに銀イオンを含む。蓄熱装置27において、蓄熱材組成物14が液体状態かつ過冷却状態であるときに、蓄熱材組成物の過冷却状態が解除されるように一対の電極26間に電圧が印加される。例えば、図7に示すように、一対の電極26のそれぞれが、配線によって直流電源21aに電気的に接続されており、一対の電極26の少なくとも一方と直流電源21aとの間にスイッチ23が配置されている。スイッチ23が閉じられることにより、一対の電極26間に電圧が印加される。なお、図8に示すように、一対の電極26のそれぞれが、配線によって交流電源21bに電気的に接続されていてもよい。

0092

図7に示すように、蓄熱装置27は、例えば、容器12、中央筐体30、端部材31a、端部材31b、整流部材40a、及び整流部材40bをさらに備える。容器12は伝熱性を有する材料でできた容器であり、蓄熱材組成物14が容器12の内部に収容されている。中央筐体30は断熱性を有する材料でできた筒状の筐体である。中央筐体30の内部空間には、蓄熱材組成物14が収容された複数の容器12が配置されている。中央筐体30の内部空間において、複数の容器12の外周面及び中央筐体30の内周面によって内部流路15が形成されている。内部流路15は、蓄熱材組成物14に熱を付与するための熱媒体又は蓄熱材組成物14から熱を回収するための熱媒体にとっての流路である。中央筐体30の一方の端部に端部材31aが固定され、中央筐体30の他方の端部に端部材31bが固定されている。端部材31a及び端部材31bは、それぞれ、漏斗状の部材であり、中央筐体30に向かって拡大する空間を形成している。端部材31a及び端部材31bによって、熱媒体の流入口又は流出口が形成されている。また、中央筐体30の一方の端部で端部材31aの内側に整流部材40aが固定されており、中央筐体30の他方の端部で端部材31bの内側に整流部材40bが固定されている。整流部材40a及び整流部材40bは、それぞれ、複数の貫通孔を有する板状の部材であり、熱媒体の流れを整える働きをする。

0093

一対の電極26は、中央筐体30の外側に露出した外側部分と、中央筐体30の内部空間で複数の容器12を貫通しながら延びている内側部分とを有する。なお、蓄熱装置27が複数の容器12を備える場合、一対の電極26が複数の容器12のうちの一つに収容された蓄熱材組成物14に接触するように、蓄熱装置27が複数対の電極22を備えていてもよい。この場合、複数対の電極22は、例えば、直流電源21aに対して電気的に並列に接続される。一対の電極26の、蓄熱材組成物14に接触している部分同士の距離は、特に制限されないが、例えば、1mm〜15mmである。

0094

一対の電極26のうち少なくとも一方が銀又は銀化合物を含む場合、例えば、一対の電極26の表面のうち少なくとも蓄熱材組成物14と接触する部分に銀若しくは銀化合物が存在している。図7に示すように、一対の電極26が直流電源21aに接続されている場合、一対の電極26のうち直流電源21aの高電位側に接続されている電極(正極)が銀又は銀化合物を含んでいることが望ましい。これにより、正極が銀又は銀化合物を含まず、かつ、一対の電極26のうち直流電源21aの低電位側に接続されている電極(負極)が銀又は銀化合物を含んでいる場合に比べて、蓄熱材組成物14の過冷却状態をより小さいエネルギーで解除できる。また、図8に示すように、一対の電極26が交流電源21bに接続されている場合、一対の電極26のいずれもが銀又は銀化合物を含んでいてもよい。なお、一対の電極26のうち少なくとも一方に含まれる銀化合物は、例えば、塩化銀である。一対の電極26の形状は特に制限されないが、例えば、板材状又は線材状である。

0095

蓄熱材組成物14が液体状態であるときに銀イオンを含む場合、蓄熱材組成物14は、例えば、液体状態の糖アルコールに可溶な銀化合物を含む。このような銀化合物は、例えば、硝酸銀又は酢酸銀である。このような銀化合物は、過冷却安定化剤として蓄熱材組成物14に含まれていてもよく、過冷却安定化剤以外の成分として蓄熱材組成物14に含まれていてもよい。この場合、一対の電極26は、銀及び銀化合物を含んでいなくてもよく、例えば、銅などの銀以外の金属又は炭素を含む電極であってもよい。

0096

次に、蓄熱装置27を用いた蓄熱方法の一例を説明する。図9に示すように、本開示の蓄熱方法は、工程S1、工程S2、工程S3、工程S4、及び工程S5を備える。工程S1は、蓄熱材組成物14に含まれる糖アルコールが固体状態である蓄熱装置27を準備する工程である。工程S2は、蓄熱材組成物14の温度を、蓄熱材組成物14に含まれる糖アルコールの融点以上の温度に上昇させて、固体状態の糖アルコールを融解させる蓄熱工程である。工程S2は、例えば、蓄熱材組成物14に含まれる糖アルコールの融点より高い温度を有する熱媒体が端部材31aから端部材31bへ向かって内部流路15を通過するように熱媒体を蓄熱装置27の内部に供給することによって行われる。

0097

工程S3は、蓄熱材組成物14の温度を糖アルコールの融点未満の温度に保ち、かつ、蓄熱材組成物14を過冷却状態に保つ過冷却保持工程である。工程S3において、蓄熱材組成物14が、蓄熱材組成物14の結晶化開始温度を超え、かつ、糖アルコールの融点未満である温度を有するように、蓄熱材組成物14の温度が保たれる。例えば、工程S3において、糖アルコールの融点から蓄熱材組成物14の温度を差し引いた過冷却度が、19℃〜90℃の範囲に収まるように、蓄熱材組成物14の温度が保たれることが望ましい。また、温度範囲で糖アルコールの過冷却状態が保たれるように、蓄熱材組成物14に過冷却安定化剤が含まれることが望ましい。

0098

工程S4は、蓄熱材組成物14が液体状態かつ過冷却状態であるときに、蓄熱材組成物14の過冷却状態が解除されるように一対の電極26に電圧を印加する過冷却解除工程である。工程S4は、例えば工程S3に続いて行われる。工程S4において、例えば、スイッチ23が閉じられ、直流電源21aによって直流電圧が一対の電極26に印加され、又は、交流電源21bによって交流電圧が一対の電極26に印加される。これにより、蓄熱材組成物14に電気的な刺激が加わり、準安定的な過冷却状態が解除され、エネルギー的に安定な結晶状態(固体状態)への相変化が開始される。その結果、蓄熱材組成物14に蓄えられた熱が放出される。

0099

一対の電極26に印加される電圧の大きさは、例えば、1〜3Vである。なお、蓄熱材組成物14に水が含まれる可能性がある。この場合、一対の電極26に電圧が印加されることによって水の電気分解が生じることを避けることが望ましい。この観点から、一対の電極26に印加される電圧の大きさは、1.23V以下であることが望ましい。一対の電極26に交流電圧を印加する場合、両振幅は、例えば1.0Vpp〜6.0Vppである。また、交流電圧の周波数は、特に制限されないが、イオンの移動速度の制約を考慮すると、10Hz以下であることが望ましい。

0100

工程S5は、蓄熱材組成物14の過冷却状態の解除に伴って蓄熱材組成物14から放出される熱の少なくとも一部を回収する熱回収工程である。工程S5は、一対の電極26への電圧の印加によって蓄熱材組成物14の過冷却状態が解除された直後に行われる。すなわち、工程S5は、工程S4の直後に行われる。工程S5は、例えば、蓄熱材組成物14の温度よりも低い温度を有する熱媒体が端部材31aから端部材31bへ向かって内部流路15を通過するように熱媒体を蓄熱装置27の内部に供給することによって行われる。

0101

[実施例]
実施例により本開示の蓄熱装置及び蓄熱方法をより詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。

0102

<過冷却安定性の評価>
3.0gのエリスリトール(日本ガーリック社製)を入れたガラス製のサンプル瓶を、130℃の内部温度に設定した乾燥炉に入れ、エリスリトールを融解させた。その後、乾燥炉の設定温度を130℃から0.83℃/分の速度で降温させた。ここで、エリスリトールの固相が生成されたときのサンプル瓶中のエリスリトールの温度は、62.1℃であった。なお、サンプル瓶中のエリスリトールの温度が上昇したことに基づいてエリスリトールに固相が生成されたと判断した。

0103

3.0gのエリスリトール(日本ガーリック社製)を入れたガラス製のサンプル瓶を複数本準備し、各サンプル瓶に、過冷却安定化剤として、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、硝酸銀、又は炭酸水素ナトリウムを、エリスリトールの質量Waに対する過冷却安定化剤の質量Wsの比率Ws/Waが0.01以上となるように加えた。エリスリトールと各過冷却安定化剤を含むサンプル瓶を130℃の内部温度に設定した乾燥炉に入れ、エリスリトールを融解させた。その後、乾燥炉の設定温度を130℃から0.83℃/分の速度で最低で25℃まで降温させた。いずれのサンプル瓶においても、サンプル瓶中の混合物の温度が62.1℃を下回る温度でエリスリトールの固相が生成された。例えば、酢酸ナトリウムを0.03g加えたサンプル瓶では、サンプル瓶中の混合物の温度が28.6℃に低下したときにエリスリトールの固相が生成された。また、酢酸ナトリウムを0.12g加えたサンプル瓶では、サンプル瓶中の混合物の温度が25℃まで低下してから24時間以内にエリスリトールの固相が生成された。このように、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、硝酸銀、又は炭酸水素ナトリウムが糖アルコールを含む蓄熱材組成物の結晶化開始温度を低下させ、糖アルコールを含む蓄熱材組成物の過冷却状態を安定化させることが確認された。

0104

<実施例1>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.55g及び酢酸ナトリウム0.44gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極線径:1.5mm)をエリスリトール及び酢酸ナトリウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、実施例1に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を84℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから120秒後にサンプル瓶中において結晶核の生成が目視により確認された。その後、一対の銀電極への電圧の印加を停止し、129℃の雰囲気においてエリスリトールをさらに完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから46秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0105

<実施例2>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.51g及び酢酸カリウム0.26gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び酢酸カリウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、実施例2に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を74℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから81秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0106

<実施例3>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.02g及び塩化ナトリウム0.22gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び塩化ナトリウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、実施例3に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから33秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。その後、一対の銀電極への電圧の印加を停止し、129℃の雰囲気においてエリスリトールをさらに完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を69℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから14秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0107

<実施例4>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.38g及び塩化カルシウム0.23gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び塩化カルシウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、実施例4に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を74℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから22秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0108

<実施例5>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.33g及び水酸化ナトリウム0.25gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び水酸化ナトリウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、実施例5に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を74℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから62秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。その後、一対の銀電極への電圧の印加を停止し、129℃の雰囲気においてエリスリトールをさらに完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を69℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し1.8Vの電圧を印加した。一対の銀電極への電圧の印加を開始してから11秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0109

<実施例6>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.16g及び硝酸銀0.04gを添加し、さらに、線材状の一対の炭素電極(線径:2.0mm)をエリスリトール及び硝酸銀の混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の炭素電極間の距離は、約3mm〜5mmであった。このようにして、実施例6に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の炭素電極を直流電源に接続し2Vの電圧を印加した。一対の炭素電極への電圧の印加を開始してから81秒後にサンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0110

<実施例7>
6ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール5.5g及び炭酸水素ナトリウム0.14gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び炭酸水素ナトリウムの混合物に約5mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3mm〜5mmであった。このようにして、実施例7に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を64℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を交流電源に接続し交流電圧(両振幅:6Vpp、周波数:0.1Hz)を2分間印加した。サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成が目視により確認された。

0111

<比較例1>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール9.25gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトールに約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3mm〜5mmであった。このようにして、比較例1に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。また、3Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。

0112

<比較例2>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.38g及び酢酸ナトリウム0.38gを添加し、さらに、線材状の一対の銅電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び酢酸ナトリウムの混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銅電極間の距離は、約3mm〜5mmであった。このようにして、比較例2に係る蓄熱装置を作製した。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銅電極を直流電源に接続し2Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を69℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銅電極を直流電源に接続し2Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。

0113

<比較例3>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.38g及び酢酸銅0.03gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び酢酸銅の混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3mm〜5mmであった。このようにして、比較例3に係る蓄熱装置を作製した。なお、酢酸銅の、20℃の水100mlに対する溶解度は7.2gである。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃に保った状態で、一対の銀電極に2.5Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。

実施例

0114

<比較例4>
9ccのガラス製のサンプル瓶に、エリスリトール8.31g及び塩化銀0.32gを添加し、さらに、線材状の一対の銀電極(線径:1.5mm)をエリスリトール及び塩化銀の混合物に約10mm浸漬させた。このとき、一対の銀電極間の距離は、約3〜5mmであった。このようにして、比較例4に係る蓄熱装置を作製した。なお、塩化銀の、20℃の水100mlに対する溶解度は0.2mg以下である。次に、129℃の雰囲気においてエリスリトールを完全に融解させた。次に、サンプル瓶中の混合物の温度を79℃まで低下させた。このとき、サンプル瓶中の混合物は、液体状態を保っており、過冷却状態であった。次に、一対の銀電極を直流電源に接続し2Vの電圧を2分間印加したが、サンプル瓶中においてエリスリトールの結晶核の生成は確認されなかった。

0115

本開示の一態様の蓄熱材組成物は、種々の蓄熱装置又はシステムにおいて使用できる。本開示の一態様の蓄熱材組成物は、特に、25℃〜60℃の環境下でも、過冷却状態を安定的に保つことができるので、例えば、自動車の内燃機関又はボイラーの廃熱などを熱源とする蓄熱装置に利用してもよい。

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