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技術 耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法

出願人 愛知製鋼株式会社
発明者 安達裕司杉浦孝佳
出願日 2014年11月26日 (5年3ヶ月経過) 出願番号 2014-239248
公開日 2016年5月30日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 2016-098432
状態 特許登録済
技術分野 熱処理 金属質材料の表面への固相拡散 巻き掛け変速機 プーリ
主要キーワード 点検補修 研磨仕上げ加工 Si高 スチールバンド 拡散期 部材強度 粗形状 丸棒形状
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (4)

課題

大幅なコストアップを伴うことなく耐摩耗性を向上させることが可能な耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法を提供する。

解決手段

化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.70〜0.90質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織トルースタイト面積率が0.70%以下である浸炭部材とする。また、Cr含有率、表面炭素濃度は、焼入相当直径Dとの関係で、式1、式2を満足する。

概要

背景

概要

大幅なコストアップを伴うことなく耐摩耗性を向上させることが可能な耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法を提供する。化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.70〜0.90質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織トルースタイト面積率が0.70%以下である浸炭部材とする。また、Cr含有率、表面炭素濃度は、焼入相当直径Dとの関係で、式1、式2を満足する。

目的

本発明によれば、製造性に優れ、優れた耐摩耗性を有する浸炭部材及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

摺動面を有する浸炭部材であって、化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、および、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなるとともに、上記Cr含有率(質量%)は、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係が、下記式1を満足しており、Cr≧0.02×D+0.95(但し、D(mm)は25〜90mm)・・・式1上記摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度CPが0.70〜0.90質量%の範囲内であって、かつ焼入相当直径D(mm)との関係で、下記式2を満足し、CP≧0.003×D+0.58(但し、D(mm)は25〜90mm、0.003×D+0.58<0.70の場合は、CP≧0.70)・・・式2最表面から深さ50μmまでにおける組織トルースタイト面積率が0.70%以下であることを特徴とする耐摩耗性に優れた浸炭部材。

請求項2

請求項1に記載の浸炭部材は、CVTシーブであることを特徴とする耐摩耗性に優れた浸炭部材。

請求項3

鋼部材炭素侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れ焼戻しする熱処理工程と、該熱処理工程を経た鋼部材の表面のうち、摺動面であって耐摩耗性を必要とする部位の表面に、前記浸炭処理工程により生成された浸炭異常層を除去する異常層除去工程を有する耐摩耗性に優れた浸炭部材の製造方法であって、上記鋼部材として、化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、および、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、かつ、上記Cr含有率(質量%)が、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係で、下記式1を満足する鋼を用い、Cr≧0.02×D+0.95(但し、D(mm)は25〜90mm)・・・式1浸炭処理及び熱処理工程後異常層除去工程前の段階において、表面の浸炭異常層を除く部分に、下記式2を満足し、かつ0.70〜0.90%の範囲内である表面炭素濃度CP(質量%)が存在する表面層を生成させ、CP≧0.003×D+0.58(但し、D(mm)は25〜90mm、0.003×D+0.58<0.70の場合は、CP≧0.70)・・・式2異常層除去工程において、表面に上記式2を満足する表面炭素濃度CP(mm)を有する表面層が残存する状態となるように、表面の浸炭異常層を除去することを特徴とする耐摩耗性に優れた浸炭部材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法に関する。

0002

鋼材は、使用目的によって、表面だけを硬質で耐摩耗性のある状態にする一方、中心部分を柔軟性と靱性富む状態にして用いられることがある。このような鋼材の用途としては、例えば、ベルト式無段変速機(以下、「ベルト式CVT」という。)のプーリーを構成するCVTシーブなどの摺動面を有する浸炭部材がある。CVTシーブは、金属ベルトと常に摺動する摺動面を有しており、これらの摺動面を有する浸炭部材は、その摺動面には高い耐摩耗性が要求される。

0003

従来、鋼材の表面硬化法としては、浸炭焼入れ処理がよく知られている。浸炭焼入れ処理は、加工性のよい低炭素鋼機械加工等した後、浸炭性雰囲気ガス中オーステナイト化する温度まで加熱する熱処理により表面層炭素拡散により増加させ、その後焼入れすることにより、表面層を内部より高硬度硬化させる処理である。これまで、上記CVTシーブ等の鋼部材に耐摩耗性を付与するため、浸炭焼入れ処理が広く行われてきた。

0004

浸炭焼入れ処理により、処理前に比べれば大幅に耐摩耗性を向上させることが可能であるが、ユーザー要求レベルは時間の経過とともにますます高度となっており、従来の浸炭焼入れ処理により普通に到達できる耐摩耗性のレベルを超えて性能を高めることが要求されるようになってきた。

0005

これに対し、本発明の出願人は、特許文献1、2に記載の通り、表面層に存在するトルースタイトの量を面積率で整理し、この値と耐摩耗性の関係を調査した結果、耐摩耗性を高めるためには、最表面に生成するトルースタイトが大きく影響しており、深さ50μmまでの範囲における表面層のトルースタイト面積率を1%以下とする必要があることを明らかにした。

0006

具体的には、特許文献1では、0.50%以上の高Siとして熱軟化抵抗性の向上を図るとともに、耐摩耗性改善のためにNbを添加し、浸炭処理直前の固溶Nbを0.01%以上とすることで、表面層のトルースタイト面積率を1%以下とし、耐摩耗性を改善できることを提案したものである。

0007

また、特許文献2では、特許文献1と同様に高Siとして熱軟化抵抗性の向上を図るとともに、高Si高Crとした場合の浸炭性の低下を浸炭期カーボンポテンシャルを1.3%以上とすることで、特許文献1と同様に浸炭後の表面層のトルースタイト面積率を1%以下とし、耐摩耗性を改善できることを提案したものである。

先行技術

0008

特開2011−185415号公報
特開2012−207247号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、前記従来技術は、以下の点で問題がある。
すなわち、特許文献1には明確な記載はないが、特許文献2と同様に0.50%以上に高Siとすることを特徴としており、Si量が0.2〜0.3%程度のJISG4053に規定されているCr鋼やCr−Mo鋼と比較すると、浸炭性が低下するという問題がある。従って、浸炭処理時に通常の条件では、表面炭素濃度が十分に上昇せず、特許文献2にも記載されているように、浸炭期のカーボンポテンシャルを高めての処理が必要となる。浸炭処理は、多数の鋼材を同じ処理炉で連続して行う場合が多く、このように一部の鋼種に限定して浸炭条件を変えて処理しなければならないとすると、生産性が低下し、コスト増の原因になるという問題がある。また、カーボンポテンシャルを高めて処理すると、が発生しやすくなり、使用する浸炭処理炉点検補修維持費用が高くなるという問題がある。また、高Siとすることは、冷鍛性等の加工性が低下するという問題もある。

0010

さらに、特許文献1では、希少元素であるNbの使用が必須となるとともに固溶量制御管理が必要になり、大量生産して品質を安定に管理することが難しくなるという問題がある。

0011

本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、通常のSi量であって、JISのCr鋼等の既存の肌焼鋼で普通に行われている浸炭条件で浸炭処理することができ、希少元素であるNbを添加することなく、前記特許文献に記載の鋼と同等の耐摩耗性を確保できる浸炭部材及びその製造方法を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

0012

浸炭性の低下を防止するには、浸炭性を阻害する元素であるSiを前記特許文献に記載の鋼に比べ、低減しなければならない。しかし、Siは従来から熱軟化抵抗を向上する元素として知られており、単純に低減すると浸炭性は向上するかもしれないが、摺動面における部材使用中の温度上昇を原因とする硬度低下が大きくなり、結果として耐摩耗性が低下してしまう。そこで、本発明者等は、Si含有率を変化させた場合の表面層のトルースタイト面積率と耐摩耗性との関係を詳しく調査した。その結果、最表面から深さ50μmまでにおけるトルースタイト面積率を、前記した高Si鋼に適用する場合よりもさらに低減し、0.70%以下まで低減すれば、Si含有率の低減による熱軟化抵抗の低下による影響を考慮しても、前記高Si鋼と同等の耐摩耗性を得ることができることを確認した。しかし、このような低いトルースタイト面積率に安定して制御することは困難を伴う。そこで、低いトルースタイト面積率に確実に制御可能とするための方策についてさらに検討した結果、0.70%以下のトルースタイト面積率を達成するには、単純な成分の最適化のみでは困難であり、製造する浸炭部材の寸法に応じて適切なCr含有率及び表面炭素濃度に制御するとともに、浸炭異常層除去時の除去量の最適化が必要であることを見出し、本発明を完成したものである。その結果、優れた耐摩耗性を維持しつつ、低Siとすることが可能になったことにより、浸炭性をJISG4053に規定されているCr鋼、Cr−Mo鋼と同等レベルに改善でき、浸炭性を改善しつつ優れた耐摩耗性を維持することに成功したものである。

0013

すなわち、第1の発明は、摺動面を有する浸炭部材であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、および、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなるとともに、上記Cr含有率(質量%)は、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係が、下記式1を満足しており、
Cr≧0.02×D+0.95(但し、D(mm)は25〜90mm)・・・式1
上記摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度CPが0.70〜0.90質量%の範囲内であって、かつ焼入相当直径D(mm)との関係で、下記式2を満足し、
CP≧0.003×D+0.58(但し、D(mm)は25〜90mm、0.003×D+0.58<0.70の場合は、CP≧0.70)・・・式2
最表面から深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が0.70%以下であることを特徴とする耐摩耗性に優れた浸炭部材にある。

0014

また、第2の発明は、鋼部材に炭素を侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れ焼戻しする熱処理工程と、該熱処理工程を経た鋼部材の表面のうち、摺動面であって耐摩耗性を必要とする部位の表面に、前記浸炭処理工程により生成された浸炭異常層を除去する異常層除去工程を有する浸炭部材の製造方法であって、
上記鋼部材として、化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、および、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、かつ、上記Cr含有率(質量%)が、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係で、下記式1を満足する鋼を用い、
Cr≧0.02×D+0.95(但し、D(mm)は25〜90mm)・・・式1
浸炭処理及び熱処理工程後異常層除去工程前の段階において、表面の浸炭異常層を除く部分に、下記式2を満足し、かつ0.70〜0.90%の範囲内である表面炭素濃度CP(質量%)が存在する表面層を生成させ、
CP≧0.003×D+0.58(但し、D(mm)は25〜90mm、0.003×D+0.58<0.70の場合は、CP≧0.70)・・・式2
異常層除去工程において、表面に上記式2を満足する表面炭素濃度CP(mm)を有する表面層が残存する状態となるように、表面の浸炭異常層を除去することを特徴とする耐摩耗性に優れた浸炭部材の製造方法にある。

発明の効果

0015

第1の発明である浸炭部材では、先願に比べSi含有率を低くした結果、熱軟化抵抗が低下するが、その一方で表面から深さ50μmまでにおける組織中のトルースタイトの面積率が、先願では1%以下としていたのに対し、本発明ではさらに低減して0.70%以下としている。その結果、JIS鋼と同レベルのSi量であるにもかかわらず、優れた耐摩耗性を得ることができる。しかしながら、製造する浸炭部材のサイズが大きくなるほど、表面層に生成するトルースタイト面積率が高くなる傾向にあり、浸炭部材の寸法によっては、狙いのトルースタイト面積率に制御できないおそれが生じる。そこで、本発明では、狙いとする低いトルースタイト面積率を達成可能とするために、製造する浸炭部材の寸法とトルースタイト面積率減少に寄与できるCr含有率との関係の条件式を明確にするとともに、製造する浸炭部材の寸法に応じて表面炭素濃度を適切に調整した浸炭部材とすることで、狙いとする低いトルースタイト面積率への制御を可能とし、広い寸法範囲で優れた耐摩耗性を確保できるようにしている。また、JIS鋼レベルのSi含有率とした結果、浸炭性、加工性の低下を回避でき、製造性にも優れた浸炭部材を提供できる。

0016

第2の発明である浸炭部材の製造方法では、製造する浸炭部材の寸法の違いによる表面層のトルースタイト面積率への影響を考慮し、上記した化学成分を有し、かつ前記した式1を満足するようにCrが含有された鋼材を用い、表面層の浸炭異常層の部分を除く部分の表面炭素濃度が式2を満足するように浸炭処理を行い、その後、式2を満足する表面層が残存するように浸炭異常層を除去する。その結果、製造する浸炭部材の寸法に関係なく、表面層のトルースタイト面積率を確実に低く制御することが可能となり、先願のようにSiを増量することなく優れた耐摩耗性を確保可能な浸炭部材の製造方法を提供できる。そして、第2の発明ではJIS鋼と比べSiを増量していないので、特許文献2に記載の発明のように、高濃度浸炭を行う必要がなく、製造性にも優れた製造方法を提供できる。

0017

このように、本発明によれば、製造性に優れ、優れた耐摩耗性を有する浸炭部材及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0018

ベルト式無段変速機(ベルト式CVT)の構成を示す説明図である。
実験例における摩耗試験の方法を示す説明図である。
実施例2におけるトルースタイト面積率と摩耗量の関係を示すグラフ

0019

本発明である浸炭部材の化学成分は、上記のように、質量%で、C:0.10〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.45〜3.00%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなるとともに、上記Cr含有率(%)は、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係が、前記式1を満足している。以下に、各成分の限定理由につき説明する。なお、上記化学成分は、浸炭処理の影響が及んでいる表面層部分を除いた鋼内部における母材の化学成分である。

0020

C:0.10〜0.28%
Cは、強度を確保するための基本元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するために、0.10%以上添加する。添加量が多くなりすぎると被削性、冷鍛性等の加工性が低下するため、C含有率の上限を0.28%とする。

0021

Si:0.15〜0.35%
Siは、内部硬さの確保に効果のある元素であるとともに、熱による軟化抵抗性を高めるのに有効な重要元素であるが、増量すると前記した通り浸炭性が低下し、浸炭処理後に狙い通りの表面炭素濃度が得られなくなるおそれがある。本発明ではJISG4053で規定された鋼と同等の浸炭性を維持することを重視し、含有範囲をJIS鋼と同じ0.15〜0.35%とする。これにより特許文献2に記載のように、浸炭時にJIS鋼を浸炭処理する際と比べて、浸炭期において高いカーボンポテンシャルに設定しなくても、狙いの表面炭素濃度を得ることができ、かつSi増量による冷鍛性、被削性等の加工性の低下も回避できる。

0022

Mn:0.30〜1.50%
Mnは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するために、0.30%以上添加する。その一方で、Mnの含有率が高くなりすぎると被削性の低下や、残留オーステナイトの増加による表面硬化層における硬さ低下が懸念されるため、Mn含有率の上限を1.50%とする。

0023

P:0.035%以下
Pは、結晶粒界偏析して疲労強度を低下させるため、上限を0.035%とする。Pは製造上の不純物として不可避に含有される元素であるが、精錬により極力低減することが好ましい。

0024

S:0.035%以下
Sは、被削性向上に有効であるが、含有率が高くなりすぎると硫化物系介在物が増加し、それが疲労破壊の起点となって強度低下を招く。そのため、S含有率の上限を0.035%とする。

0025

Cr:1.45〜3.00%
Crは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するのに役立つ。また、浸炭後の表面のトルースタイトの発生を低減し、優れた耐摩耗性を確保するための必須元素である。従って、本発明は、少なくとも1.45%以上の含有が必要である。さらに、最表面から深さ50μmにおけるトルースタイトは、製造する浸炭部材の寸法が大きくなるほど、生成量が増加し、耐摩耗性への悪影響が大きくなる傾向となるため、Crは、前記下限以上に含有するだけでなく、さらに後述の式1を満足するように含有させる必要がある。しかしながら、Crの添加量が多くなりすぎると硬さが高くなって冷鍛性、被削性等の加工性が低下するため、上限を3.00%とする。

0026

Mo:0.80%以下(0%を含む)
Moは、トルースタイトの低減に対しCrよりもさらに効果的な元素である。さらに、強度、靱性を向上させるのに有効な元素でもある。しかしながら、Moは、添加するために必要な合金鉄の価格が高騰することがあるとともに、通常の価格で比較しても、他の元素と比較して高価であるため、基本的には無添加とし、それを前提にトルースタイト面積率を狙いの値以下に抑制できるCr含有率の範囲を定めている。従って、添加する場合でも、その添加量は必要最小限の量とするのが良い。しかし、添加しすぎても効果が飽和するので、その上限を0.80%とする。

0027

Al:0.020〜0.060%
Alは、脱酸処理に必要なだけでなく、浸炭処理後の結晶粒の粗大化防止効果を得るために有効な元素であり、この効果を得るために0.020%以上添加する。しかしながら、Alの含有率が高くなりすぎるとその効果が飽和するとともに酸化物系介在物が増加し、それが疲労破壊の起点となって疲労強度が低下するおそれが高まるため、その上限を0.060%とする。

0028

N:0.0080〜0.0250%
Nは、製造上不可避に含有される元素であるが、鋼中でAlと結合し生成するAlNがピン止め効果として働くことにより、浸炭時の加熱を原因とする結晶粒の粗大化を防止する効果を得ることができる。そして、この効果を得るために、0.0080%以上含有させる。しかしながら、N含有率が高くなりすぎるとその効果が飽和するとともに窒化物が鋼中に増加して疲労強度低下の原因となるため、その上限を0.0250%とする。

0029

Cr≧0.02×D+0.95(但し、D(mm)は25〜90mm)・・・式1
本発明では、優れた耐摩耗性の確保を可能とするため、表面層のトルースタイト面積率を0.70%以下としているが、表面層のトルースタイトは、浸炭部材の寸法が大きくなるほど生成量が多くなる傾向にある。従って、製造する浸炭部材の寸法に合わせて、トルースタイトの発生量抑制に効果のあるCr含有率を調整することが不可欠である。具体的には、浸炭部材の焼入相当直径D(mm)との関係で、式1を満足するようにCrを含有させる必要がある。ここで、焼入相当直径D(mm)は、製造する浸炭部材のサイズを判断する数値として用いている。すなわち、実際に製造する浸炭部材は、単純な丸棒形状ではないため、同じ材質丸棒試験片を準備し、同じ条件で焼入処理した後に、実際に処理する浸炭部材を焼入した場合とほぼ同等の内部硬さが得られる丸棒試験片の直径のことを焼入相当直径D(mm)と定義したものである。従って、D(mm)の値は、実験により容易に求めることができる。なお、本発明で実際に対象となる部品の寸法を考慮し、D(mm)の範囲は25〜90mmとしている。従って、式1は、Dが25〜90mmの範囲で適用可能な式である。この点は、後述の式2も同様である。

0030

次に、本発明の浸炭部材の化学成分以外の条件について説明する。
本発明の浸炭部材は、既に詳細に説明した通り、他の部材と摺動し、優れた耐摩耗性を有する摺動面を備えている。この種の浸炭部材としては、例えば、CVTシーブ、アウターインナーレース類、歯車などを例示することができ、特にベルト式の無段変速機用として用いられるCVTシーブに適用するとよい。CVTシーブは、低コスト化要請が大きい上、摺動面に対して高い耐摩耗性が要求される部材である。それに対し、本発明は、カーボンポテンシャルを特別に高めに設定することなく製造できるため、コストを安価とすることができ、本発明の効果を十分に発揮することができる。

0031

また、上記浸炭部材は、その摺動面に浸炭異常層がない。浸炭異常層は、浸炭処理時の表面の粒界酸化等により生成される層であり、耐摩耗性を低下させる層である。上記浸炭部材は、減圧浸炭等、酸化されない雰囲気で浸炭する等の浸炭条件が選択されることによって浸炭異常層が生成されないように製造することも可能ではあるが、通常の大量生産に適した浸炭設備での製造では、浸炭異常層が発生するのが普通であるので、その後に仕上げ加工を実施し、これにより浸炭異常層がない状態とする必要がある。これにより浸炭異常層が確実に除去され、優れた耐摩耗性を確保することができる。

0032

また、上記浸炭部材は、前記した通り、表面炭素濃度が質量%で0.70〜0.90%の範囲内にある。下限を0.70%としたのは、高い表面硬度を得て優れた耐摩耗性を確保することと、表面硬化層において、トルースタイトの発生を極力低減するのに、0.70%以上とすることが必要となるためであり、上限を0.90%としたのは、表面硬化層内の粒界析出する炭化物が増加して、部材強度が損なわれやすくなるためである。なお、上記表面炭素濃度は、EPMAにより測定することができる。また、前記した通り、本発明では、浸炭異常層を除去するため、除去後においても表面炭素濃度が0.70%以上となるように、除去量は、浸炭異常層が除去できる範囲で、できるだけ少なめに調整する必要がある。

0033

なお、トルースタイトは、前記した通り浸炭部材のサイズが大きくなるほど、表面層における生成量が多くなる傾向となるため、単純な化学成分と表面炭素濃度の制御のみでは、0.70%以下という非常に少ないレベルに制御することが難しくなる場合が生じる。そのため、本発明では、下記式2に記載の通り、製造する浸炭部材のサイズが大きくなるほど、表面炭素濃度であるCP(質量%)が高めになるように浸炭処理する。
CP≧0.003×D+0.58(但し、D(mm)は25〜90mm、0.003×D+0.58<0.70の場合は、CP≧0.70)・・・式2
これにより、低いトルースタイト面積率を確実に達成することができる。

0034

また、上記浸炭部材は、繰返し説明している通り、上記摺動面の最表面から深さが50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が0.70%以下である。前記した通り、本発明では、SiをJIS規格の肌焼鋼に比べて増量していないので、前記特許文献に記載の鋼に比べ熱軟化抵抗が低下し、前記特許文献と同じであるトルースタイトの面積率が1%以下のレベルでは、十分な耐摩耗性を確保することができないおそれがある。前記した通り、Siを増量しないことによる熱軟化抵抗低下分による影響を補うため、本発明では、トルースタイト面積率をさらに厳しく0.70%以下まで低減することにより、SiをJISG4053で規定された鋼に比べ増量することなく、前記特許文献2に記載の浸炭部材と比べて同等以上の耐摩耗性を確保できることを見出したものである。なお、上記トルースタイトの面積率は、上記摺動面の断面を観察し、画像解析することにより算出することができる。ここで、トルースタイトの面積率は、表面から深くなるほど高くなる傾向となるので、浸炭異常層の除去量をできるだけ少なめとしなければならないという点は、表面炭素濃度の箇所で説明した内容と全く同じである。

0035

次に、本発明である浸炭部材の製造方法について説明する。本発明である浸炭部材の製造方法は、鋼部材に炭素を侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れ焼戻しする熱処理工程と、該熱処理工程を経た鋼部材の表面のうち、摺動面であって耐摩耗性を必要とする部位の表面に、浸炭処理工程により生成された浸炭異常層を除去する異常層除去工程を有している。浸炭処理に供する鋼部材は、例えば、鍛造熱間鍛造冷間鍛造)や機械加工等によって、上述した化学成分を有する鋼材を所望形状に成形したものなどを好適に用いることができる。例えば、焼入れ処理後に仕上げ加工を行う場合には、上記鋼部材として上述した化学成分を有する鋼材を予め粗形状粗加工したものなどを好適に用いることができる。

0036

ここで、上記浸炭部材の製造方法では、浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャルの設定が、処理後の浸炭部材の品質に大きく影響する。前記した特許文献2の発明では、Siが浸炭性を大きく低下させる元素であるにもかかわらず、熱軟化抵抗の向上を重視し、Si増量による浸炭性の低下に対する対策については、1.3%以上という高いカーボンポテンシャルで処理することを提案していた。しかし、本発明とは別に、従来のJIS規格の肌焼鋼は、通常のカーボンポテンシャルで処理することになることから、従来鋼の浸炭処理を行った後に前記特許文献2に記載の鋼を浸炭処理する際には、浸炭処理炉の条件変更を行う必要が生じ、変更には、一定の時間が必要となることから、生産性の点で問題があった。本発明では、このような2つの特許文献に記載の発明の問題点を考慮して、前記した通り、Si含有率は、JIS規格の肌焼鋼と同レベルである0.15〜0.35%としているので、浸炭期のカーボンポテンシャルは、通常のJIS鋼(SCM420カーボン等)を処理する場合と同レベルである0.90〜1.10%の処理で問題がない。従って、浸炭条件を微調整する必要性が生じる可能性はあるものの、JIS鋼を浸炭処理した直後であっても、連続して浸炭処理することができる。なお、本発明では、Siと同様に浸炭性低下の原因となるCrについて、JIS鋼に比べ多量に含有させることを特徴としているが、Siに比べると浸炭性低下への影響は小さく、Siの増量を伴わないことが前提のCrの増量であれば、浸炭期のカーボンポテンシャルを高めなくても、狙いの表面炭素濃度を得ることが可能なことを確認したものである。

0037

また、上記浸炭部材の製造方法では、浸炭処理時の拡散期におけるカーボンポテンシャルが0.80%以上とされることが好ましい。拡散期のカーボンポテンシャルが0.80%以上であると、浸炭部材の摺動面等における表面炭素濃度を0.70〜0.90質量%の範囲内に収めやすくなる。逆に、拡散期のカーボンポテンシャルが0.80%未満の場合は、他の本発明の条件を満足していても、表面炭素濃度が低めにはずれる可能性があるので、注意が必要である。一方、拡散期のカーボンポテンシャルの上限は、特に限定されるものではないが、拡散期のカーボンポテンシャルが過度に高くなると、粒界炭化物の析出により部材強度が損なわれやすくなる。よって、拡散期のカーボンポテンシャルの上限は、好ましくは、0.90%であるとよい。

0038

但し、本発明では、浸炭部材のサイズが大きくなるほど、表面層のトルースタイト面積率が大きくなりやすくなることを考慮し、前記した式2を満足するように表面炭素濃度が若干高めとなるように浸炭処理する必要がある。従って、浸炭部材のサイズが大きくなるほど、拡散期のカーボンポテンシャルを若干高めとする等の調整を行うことが好ましい。

0039

また、浸炭処理後浸炭異常層を除去することになるため、異常層除去工程後に確実に式2を満足する表面炭素濃度を有する層が残るように処理することが不可欠である。従って、浸炭処理工程後異常層除去工程前の段階において、式2を満足する表面炭素濃度からなる表面層が少なくとも0.20mm以上の厚さで残存した状態となるように浸炭条件(カーボンポテンシャル、浸炭処理時間等)を調整して処理することが好ましい。

0040

なお、上記浸炭処理工程における他の条件としては、例えば、ガス浸炭処理減圧浸炭処理にて浸炭処理温度900℃〜1000℃、浸炭期の時間1h〜4h、拡散期の時間1h〜4hなどを例示することができる。

0041

また、上記浸炭処理工程後の熱処理工程では、例えば、800〜900℃に保持した後、油焼入れガス冷却等の各種の焼入れを行い、さらに、上記焼入れ後浸炭部材の靭性を高めるための焼もどし処理を行う。焼戻し処理の条件としては、例えば、130〜160℃の温度で、保持時間1h〜1.5hなどを例示することができる。

0042

さらに、本発明である浸炭部材の製造方法では、熱処理工程後、摺動面であって、耐摩耗性を必要とする部位の表面に生成された浸炭異常層を除去する異常層除去工程が実施される。従って、浸炭処理時に表面の粒界酸化等によって浸炭異常層が発生した場合であっても、本異常層除去工程によって除去されるため、摺動面である表面層を、耐摩耗性に優れた層とすることができる。なお、焼入焼戻し後においては、浸炭部材を最終寸法に仕上るため、仕上加工が行われることが多い。従って、異常層除去工程を、この仕上げ加工によって実施し、浸炭異常層がない状態としても当然の如く構わない。この工程の実施により、浸炭異常層が確実に除去され、優れた耐摩耗性を有する浸炭部材を確実に得ることができる。

0043

なお、熱処理工程後に仕上げ加工からなる異常層除去工程を含む場合、仕上げ加工としては、例えば、切削研磨などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて実施することができる。上記仕上げ加工により生じた浸炭異常層を確実に取り除くことができ、かつ異常層除去工程後に表面炭素濃度が0.70〜0.90%である表面層が残存する除去量に適切に調整して、行うことが必要である。異常層除去工程時の除去量は、適用される浸炭条件によっても変動するが、通常50〜300μm程度である。但し、表面炭素濃度は表面から深くなるほど低下し、トルースタイト面積率は、逆に表面から深くなるほど高くなるので、新しい部品の生産を開始する際には、あらかじめ試作テストを行う等により、除去量を浸炭異常層が除去できる範囲の中で、できるだけ少ない量に調整することが、本発明による効果を確実に得るために必要不可欠となる。

0044

以上説明した通りの工程で製造することにより、表面炭素濃度が0.70〜0.90%の範囲内であって、かつ式2を満足し、最表面から深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が0.70%以下である浸炭部材を得ることができる。

0045

以下、本発明である耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法の特徴を実施例を示すことにより、明らかにする。

0046

本例では、浸炭部材としてベルト式CVTのシーブを想定した。すなわち、図1に示すように、ベルト式CVT1は、入力プーリー201と出力プーリー202と、入力プーリー201および出力プーリー202に巻き掛けられた金属製のベルト3とを備える。入力プーリー201および出力プーリー202は、それぞれ円錐状の摺動面21を備えたシーブ2を2つ組み合わせて構成されている。シーブ2の摺動面21は、スチールバンド32に係合させた多数のエレメント31によって構成された金属ベルト3と常に摺動する状態で使用される。金属ベルト3に付与される張力は高く、金属製のエレメント31と接触する摺動面21は非常に高い面圧を繰り返し受けながら摩耗しやすい状態で使用される。そのため、シーブ2の摺動面21には高い耐摩耗性が要求される。

0047

(実施例1)
まず、最初に実施例1として、化学成分、試験片直径、浸炭条件等によりトルースタイト面積率がどう変化するかを調べた結果について説明する。

0048

素材鋼の準備)
素材鋼として、表1に示す化学成分を有する各種の鋼を後述する方法により準備した。このうち、鋼No.1〜6が式1を除き、本発明の成分の条件を満足する開発鋼であり、鋼No.7、8がトルースタイト面積率に大きく影響するCr含有率が低い比較鋼であり、鋼No.9が浸炭性に大きく影響するSi含有率が高い比較鋼であり、鋼No.10が従来鋼であるSCM420である。

0049

0050

次に、各素材鋼から各浸炭前試験片を作製するとともに、各浸炭前試験片に対して浸炭処理、焼入れ焼もどし及び浸炭異常層除去のための仕上げ加工を行い、各浸炭後試験片を作製した。

0051

(浸炭前試験片の作製)
各素材鋼は、電気炉にて溶解し、冷却後得られた鋼塊を1200℃で直径がφ33、φ58、φ85、φ100の4種類の寸法に鍛伸した。次いで、得られた各鍛伸品に対して900℃で1時間保持した後、炉冷するという条件の焼なまし処理を行った。次いで、得られた各焼きなまし品を切削加工し、後述の表2に示す4種類の外径+0.20mmの寸法(長さは120mm一定)となるよう、円柱状の各浸炭前試験片を作製した。

0052

(浸炭処理、焼入れ、焼もどし、仕上げ加工)
各浸炭前試験片に対して浸炭処理、焼入れ、焼もどし、仕上げ加工を行った。具体的には、先ず、各浸炭前試験片を加熱昇温し、950℃の温度で6時間保持するガス浸炭処理を行った。この際、上記浸炭処理は、浸炭期のカーボンポテンシャルを1.00%、処理時間を3時間とした。また、拡散期のカーボンポテンシャルを後述する表2の通りとし、拡散期の時間は3時間とした。

0053

次いで、上記浸炭処理後、850℃まで温度を下げて1時間保持し、130℃で油焼入れを行った。次いで、上記油焼入れ後、160℃の温度に1時間保持する焼もどしを行った。次いで、上記焼もどし後、削り代0.1mmの研磨仕上げ加工を表面に施し、浸炭異常層を除去(研磨仕上げ加工後に浸炭異常層が存在しないことを確認)した。以上により、後述の表2に示す外径寸法からなる円柱状の各浸炭後試験片を作製した。なお、この削り代0.1mmの設定は、事前予備実験をし、浸炭異常層を除去可能であって、かつ比較的少なめの削り代であることを確認し、設定したものである。

0054

次に、その後、得られた各浸炭後試験片に対して、表面炭素濃度、トルースタイト面積率を測定した。

0055

(表面炭素濃度)
各浸炭後試験片の表面炭素濃度をEPMAにより測定した。

0056

(トルースタイトの面積率)
各浸炭後試験片の表面(仕上げ加工後の表面)から深さ50μmまでの断面を観察し、画像解析ソフトを用いて、トルースタイトの面積率を測定した。
以下、表2に浸炭処理条件とともに各種試験結果を示す。なお、表2に記載の式1、式2の値は、試験片直径から求めた式の右辺の値である。

0057

0058

表2に示す比較例のうち、試験No.11〜14は、Cr含有率が式1の条件を満足しておらず、試験片寸法に適したCr含有率に調整された鋼を使用していないため、表面層のトルースタイト面積率が0.70%超となったものである。

0059

試験No.15〜19は、成分、式1は満足するものの、拡散期のカーボンポテンシャルが最適条件より低めの設定となっていたため、表面炭素濃度が式2の条件を満足しておらず、トルースタイト面積率が0.70%超となったものである。

0060

試験No.20、21は、Cr含有率が低く、式1も満足しない供試材を使用したため、トルースタイト面積率が0.70%超となったものである。

0061

試験No.22は、Si含有率が0.50%と高いにもかかわらず、浸炭期のカーボンポテンシャルをJIS鋼を浸炭処理する際と同レベルである1.00%で浸炭した結果、浸炭後に表面炭素濃度が十分に上昇せず、トルースタイト面積率も高いものである。

0062

また、従来例であるJISのSCM420を用いて、浸炭処理を行った試験片は、試験No.20、21と同様に、Cr含有率が低く式1も満足しないため、トルースタイト面積率が非常に高くなったものである。

0063

これに対して、本発明の条件を全て満足する実施例である試験No.1〜10は、浸炭に供した素材鋼の化学成分が、式1を含めて本発明の規定範囲内であり、表面炭素濃度が式2を満足するように、浸炭処理及び浸炭異常層の除去を行っているので、表面層のトルースタイトの面積率を0.70%以下という低い値に確実に調整することができた。

0064

(実施例2)
次に、実施例2として、得られた表面層のトルースタイト面積率と耐摩耗性能との関係を評価した実験結果を示す。

0065

(摩耗試験)
実施例1の実験結果により、トルースタイト面積率を0.70%以下に調整するための適切な条件についての把握が可能となったので、本実施例では、トルースタイト面積率が変化した場合に耐摩耗性能がどう変化するかを以下の実験により確認した。

0066

摩耗試験片は、実施例1と同様な方法にて、浸炭異常層除去前の試験片直径がφ26.2の試験片とφ26.8の試験片の2種類の円柱状試験片を、鋼No.1〜5、7、8の供試材を用いて作製(カーボンポテンシャルは、浸炭期1.00%、拡散期0.85%で固定)し、最後に仕上げ加工として、表面研磨により浸炭異常層除去を行った。この浸炭異常層除去の際に、φ26.2の試験片については、表面除去量を0.1mm、φ26.8の試験片については、表面除去量を0.4mmとし、最終的にφ26.0の試験片を準備した。なお、全ての試験片について、浸炭異常層は完全に除去されていることを、摩耗試験片のうち、後述の摩耗試験にて相手方ローラ6と接触しない部分の断面を顕微鏡観察することにより確認するとともに、表面層のトルースタイト面積率を実施例1と同様の方法で測定した。同時に表面硬さを確認したが、全て750HV以上で、硬さの面では耐摩耗性が低下する可能性のない試験片を用いて、以下の評価を行った。

0067

摩耗試験は、図2に示すように、浸炭後試験片5と外径φ130の相手方ローラ6とを用い、2ローラ接触試験により行った。この試験は、浸炭後試験片5と相手方ローラ6との周速度を異なる速度とし、滑り接触負荷を与え、摺動面を摩耗させる試験である。試験条件は、浸炭後試験片5の回転数2000rpm、接触面圧1250MPa、滑り率−5%、潤滑油CVTフルードという条件とした。本試験の評価は、摺動面の摩耗量によって行い、摩耗量が10μm以下の場合を耐摩耗性に優れると判断した。

0068

評価結果を表3と図3に示す。図3は、表3の結果をグラフプロットしたものである。

0069

0070

表3より以下のことがわかる。
試験No.29〜33は、式1を含む供試材の化学成分が、本発明の条件を満足する鋼No.1〜5の供試材を用いた試験結果であるが、浸炭後の仕上げ加工時の表面研磨量が0.4mmと適正な範囲より大きすぎたため、浸炭異常層除去後の表面炭素濃度が低く、かつ表面層のトルースタイト面積率が高めにはずれた試験片である。そして、摩耗試験による摩耗量は、トルースタイト面積率が高めとなった影響で、全て10μm超となり、耐摩耗性が劣るものである。

0071

試験No.34、35は、供試材として、Cr含有率が本発明の範囲を低めにはずれている鋼No.7、8を用いた試験片であるため、浸炭異常層除去時に除去量は0.1mmと問題なく、表面炭素濃度も適正な範囲内であるにもかかわらず、トルースタイト面積率が高くなり、その結果、摩耗量が大きくなり、耐摩耗性が劣るものである。

0072

以上の比較例の試験結果に対し、本発明の条件を満足する実施例である試験No.24〜28の耐摩耗性評価結果は、式1を含めて本発明の条件を満足する供試材を用い、適切な仕上げ加工によって、浸炭異常層除去後に式2を満足する表面炭素濃度を確保し、かつ0.70%以下のトルースタイト面積率に調整された結果、摩耗量は全て10μm未満となり、優れた耐摩耗性を確保できることが確認できた。なお、図3は、表3の結果をグラフにプロットしたものである。この結果から明らかなように、耐摩耗性は、浸炭により表面硬さが一定以上(本実施例では750HV以上)の高硬度を確保している場合であっても、トルースタイト面積率が高い場合には、優れた耐摩耗性を得ることができないことがわかる。

0073

上記から、本発明によれば、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面等の耐摩耗性に優れた浸炭部材及びその製造方法を提供できることがわかる。

実施例

0074

以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変を行うことが可能である。

0075

1ベルト式無段変速機(ベルト式CVT)
2CVTシーブ
21摺動面
201入力プーリー
202出力プーリー
3ベルト
31エレメント
32 スチールバンド

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