図面 (/)
課題
静止中の前後接触角を判断して設定することで、計算精度を高めることが可能なシミュレーション方法を提供する。
解決手段
流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法であって、液滴Lに接したガスGの流速ベクトルが、液滴Lが付着する固体壁Wの法線ベクトルと同方向となる場合は、固体壁Wに対する液滴Lの接触角θを静止後退接触角θrsと定義し、液滴Lに接したガスGの流速ベクトルが、固体壁Wの法線ベクトルと逆方向になる場合は接触角θを静止前進接触角θasと定義するステップと、液滴Lの表面張力をσとした場合、表面張力σから導かれる液滴Lの固体壁Wへの付着力σx(cosθas−cosθrs)に対し、液滴LがガスGから受ける力が上回った場合に接触角θrs,θasを運動後退接触角θrd,θadに切り替えるステップとを有する。
概要
背景
従来より、混相流のシミュレーションを行う技術が知られている。
この種のシミュレーション技術としては、基板の状態毎に基板の領域を区分し、領域ごとに接触角θの関数である流体の移動速度式を設定することにより、液滴の挙動を時系列で把握し、計算時間の短縮化を図るものがある(特許文献1参照)。また、接触角が濡れ性パラメータとして組み込まれた気液二相流解析により、解析面上での複数の液滴の濡れ広がり及び合一を解析するものもある(特許文献2参照)。さらに、多孔体の気孔率分布が複数の気孔率ピークを有するとき、各気孔率ピークに適する分布を有する各層が積層配置されて構成させるものをモデル化し、それに応じて、気体・液体透過率を算出し、多孔体の圧力損失を算出することで、実験結果との適合性のよい計算を可能としたものも知られている(特許文献3参照)。
また、二相流計算(VOF)の高速化のために二次元計算を行う手法やインク放出のような流体の流れを解くために臨界角の大小で移動を判断し、表面張力を修正する技術も知られている(特許文献4,5参照)。
概要
静止中の前後接触角を判断して設定することで、計算精度を高めることが可能なシミュレーション方法を提供する。流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法であって、液滴Lに接したガスGの流速ベクトルが、液滴Lが付着する固体壁Wの法線ベクトルと同方向となる場合は、固体壁Wに対する液滴Lの接触角θを静止後退接触角θrsと定義し、液滴Lに接したガスGの流速ベクトルが、固体壁Wの法線ベクトルと逆方向になる場合は接触角θを静止前進接触角θasと定義するステップと、液滴Lの表面張力をσとした場合、表面張力σから導かれる液滴Lの固体壁Wへの付着力σx(cosθas−cosθrs)に対し、液滴LがガスGから受ける力が上回った場合に接触角θrs,θasを運動後退接触角θrd,θadに切り替えるステップとを有する。
目的
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、静止中の前後接触角を判断して設定することで、計算精度を高めることが可能なシミュレーション方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法であって、第一相に接した第二相の流速ベクトルが、前記第一相が付着する固体壁の法線ベクトルと同方向となる場合は、前記固体壁に対する前記第一相の接触角θを静止後退接触角θrsと定義し、前記第一相に接した前記第二相の流速ベクトルが、前記固体壁の法線ベクトルと逆方向になる場合は前記接触角θを静止前進接触角θasと定義するステップと、前記第一相の表面張力をσとした場合、表面張力σから導かれる前記第一相の前記固体壁への付着力σ(cosθas−cosθrs)に対し、前記第一相が前記第二相から受ける力が上回った場合に前記接触角θrs,θasを運動後退接触角θrd,θadに切り替えるステップとを有するシミュレーション方法。
技術分野
0001
本発明は、流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法に関する。
背景技術
0002
従来より、混相流のシミュレーションを行う技術が知られている。
0003
この種のシミュレーション技術としては、基板の状態毎に基板の領域を区分し、領域ごとに接触角θの関数である流体の移動速度式を設定することにより、液滴の挙動を時系列で把握し、計算時間の短縮化を図るものがある(特許文献1参照)。また、接触角が濡れ性パラメータとして組み込まれた気液二相流解析により、解析面上での複数の液滴の濡れ広がり及び合一を解析するものもある(特許文献2参照)。さらに、多孔体の気孔率分布が複数の気孔率ピークを有するとき、各気孔率ピークに適する分布を有する各層が積層配置されて構成させるものをモデル化し、それに応じて、気体・液体透過率を算出し、多孔体の圧力損失を算出することで、実験結果との適合性のよい計算を可能としたものも知られている(特許文献3参照)。
0004
また、二相流計算(VOF)の高速化のために二次元計算を行う手法やインク放出のような流体の流れを解くために臨界角の大小で移動を判断し、表面張力を修正する技術も知られている(特許文献4,5参照)。
先行技術
0005
特開2010−67029号公報
特開2012−212833号公報
特開2008−276357号公報
特開2013−171367号公報
特開2003−285428号公報
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
0008
上記目的を達成するために、本発明のシミュレーション方法は、
流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法であって、
第一相に接した第二相の流速ベクトルが、前記第一相が付着する固体壁の法線ベクトルと同方向となる場合は、前記固体壁に対する前記第一相の接触角θを静止後退接触角θrsと定義し、前記第一相に接した前記第二相の流速ベクトルが、前記固体壁の法線ベクトルと逆方向になる場合は前記接触角θを静止前進接触角θasと定義するステップと、
前記第一相の表面張力をσとした場合、表面張力σから導かれる前記第一相の前記固体壁への付着力σ(cosθas−cosθrs)に対し、前記第一相が前記第二相から受ける力が上回った場合に前記接触角θrs,θasを運動後退接触角θrd,θadに切り替えるステップとを有する。
0009
このシミュレーション方法によれば、気液二相流シミュレーションにおいて、流路内の第一相を第二相で吹き飛ばす場合に、第一相の静止中の前後接触角を判断して設定することで、第一相の静止状態から運動状態への遷移を正しく設定でき、計算精度を高めて実験との乖離を抑制することができる。
発明の効果
0010
本発明のシミュレーション方法によれば、静止中の前後接触角を判断して設定することで、計算精度を高めることができる。
図面の簡単な説明
0011
本実施形態に係るシミュレーション方法を行うシミュレーション装置の概略ブロック図である。
本実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。
燃料電池の流路内の液滴をガス流れで吹き飛ばす場合の二相流計算によるシミュレーションと実験値とを比較するグラフである。
固体壁に付着した液滴を示す模式図である。
固体壁に付着した液滴を示す模式図である。
固定壁に付着した液滴における界面速度と接触角との関係を示す図である。
固定壁に付着した液滴における界面速度と接触角との関係を示す図である。
実施例
0012
以下、本発明に係るシミュレーション方法の実施形態について図面を参照して説明する。
0013
まず、シミュレーション装置の一例を説明する。
0014
図1は、本実施形態に係るシミュレーション方法を行うシミュレーション装置の概略ブロック図である。
0015
図1に示すように、シミュレーション装置100は、全体の動作を制御するCPU110を中心として、RAM120、ROM130、HDD140、出力インターフェース(I/F)150、入力インターフェース(I/F)160を備える。また、シミュレーション装置100は、出力I/F150に接続された表示部170、入力I/F160に接続された入力デバイスとしてのキーボード162、及びポインティングデバイスとしてのマウス164を備える。HDD140には、シミュレーションを実行するためのシミュレーションプログラムPGが格納されている。
0016
このシミュレーション装置100は、燃料電池の単セルが有する流路における気液二相流の挙動をシミュレーションするためのシミュレーション装置である。このシミュレーション装置100において、キーボード162およびマウス164を用いてシミュレーションプログラムPGを起動すると、CPU110がシミュレーションプログラムPGをRAM120に読み出して実行することにより、流路における気液二相流の挙動がシミュレーションされる。
0017
次に、上記のシミュレーション装置100によって、流路内における気液二相流のシミュレーションを行うシミュレーション方法について説明する。
0018
図2は、本実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。図3は、燃料電池の流路内の液滴をガス流れで吹き飛ばす場合の二相流計算によるシミュレーションと実験値とを比較するグラフである。図4は、固体壁に付着した液滴を示す模式図である。図5は、固体壁に付着した液滴を示す模式図である。図6は、固定壁に付着した液滴における界面速度と接触角との関係を示す図である。
0019
シミュレーション装置100は、流路を流れるガスと生成水からなる液滴との気液二相流における移動境界の挙動をシミュレーションする。シミュレーション装置100は、境界面の解析方法として公知の技術であるVOFモデル(Volume of Fluid)を採用する。
0021
ここで、燃料電池の流路内の液滴をガス流れで吹き飛ばすような場合、排水に必要なガス圧力は、図3に示すように、従来手法による二相流計算で求めたガス圧Paに対して、実験ではある程度のガス圧(流速)が必要となり、計算で求めたガス圧Paよりも大きなガス圧Pbとなる。
0022
このように、燃料電池の流路内の液滴をガス流れで吹き飛ばすような二相流計算において、従来手法では、液滴の静止状態から運動状態への遷移を正しく設定することができず、実験との乖離が大きかった。
0023
このような実験との乖離が生じる理由としては、次のようなことが考えられる。
(1)液滴が動きやすくなるのは、液滴の前後接触角を定義できないことから液滴に抗力が発生しないこととなるため。
(2)VOF法では、液滴の接触角は設定するべきものであり、計算の途中で直接算出できないため。
(3)VOF法では、液滴の体積分率αの保存式を解き、一般的にはα=0.5を気液界面と定義するが、気液界面を保存させているわけではないので、計算によっては気液界面が拡散して暖昧になるため。
0024
このため、本実施形態では、VOFモデルによる二相計算において、計算精度を高めて実験との乖離を抑えるために、気液界面を明確に構築した次のような計算処理を行う。
0025
ステップS11
図4に示すように、固体壁Wに付着した第一相(液相)である液滴Lに接した第二相(気相)であるガスGの流速ベクトルと固体壁Wの法線ベクトルとの方向が同方向であるか否かを判定するベクトル判定ステップを行う。
0026
ステップS12
ベクトル判定ステップにおいて、ガスGの流速ベクトルが固体壁Wの法線ベクトルと同方向(図4中Va参照)である場合(ステップS11:Yes)、予め定義した固体壁Wに対する液滴Lの接触角θを、静止後退接触角θrsに定義する。
0027
ステップS13
ベクトル判定ステップにおいて、ガスGの流速ベクトルが固体壁Wの法線ベクトルと逆方向(図4中Vb参照)である場合(ステップS11:No)、予め定義した固体壁Wに対する液滴Lの接触角θを、静止前進接触角θasに定義する。
0028
ステップS14
図5に示すように、液滴Lの表面張力σから求められる固体壁Wへの液滴Lの付着力Fw(Fw=σ(cosθas−cosθrs)と、液滴LがガスGから受ける力Fgとを比較し、液滴Lの付着力Fwに対してガスGから受ける力Fgが上回るか否かを判定する付着力判定ステップを行う。なお、液滴Lの付着力Fwに対してガスGから受ける力Fgが上回らない場合は、接触角θrs,θasはそのままとする。
0029
ステップS15
付着力判定ステップにおいて、液滴Wの付着力Fwに対してガスGから受ける力Fgが上回る場合(ステップS14:Yes)、接触角θrs,θasを運動後退接触角θrd,θadに切り替える。
0030
上記のステップS11〜S15の計算処理を行うことで、図6に示すように、液滴Lの静止中の前後接触角が定義され、液滴Lの静止状態から運動状態への遷移が正しく設定される。なお、接触角θrs,θas、運動後退接触角θrd,θadの求め方は、次のとおりである。すなわち、流路にある液滴に対してガス流れ(加圧)を作用させ、その様子を画像で観察し、液滴が動く直前の画像から接触角θrs,θasを求め、液滴が動いた画像から運動後退接触角θrd,θadを求める。
0031
以上、説明したように、本実施形態に係るシミュレーション方法によれば、気液二相流シミュレーションにおいて、流路内の第一相である液滴Lを第二相であるガスGで吹き飛ばす場合に、液滴Lの静止中の前後接触角を判断して設定することで、液滴Lの静止状態から運動状態への遷移を正しく設定でき、計算精度を高めて実験との乖離を抑制することができる。
0032
なお、図7に示すように、接触角、界面速度の関数形を、界面速度がゼロとなる付近で急激に立ち上がるよう定義することで(図7中A部参照)、流速により液滴Lの界面速度が生じた際に、接触角θを接触角θas,θrsとすることができる。これにより、液滴Lの抗力が生じることで、液滴Lの動きを抑制することができる。
0033
A:ガス(第二相)
Fg:第二相から受ける力
Fw:付着力
L:液滴(第一相)
W:固体壁
θ:接触角
θrs:静止後退接触角
θas:静止前進接触角
θrd,θad:運動後退接触角
σ:表面張力