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技術 高強度制振鋼及び該鋼を含んで構成される制振機能装置

出願人 有限会社TKテクノコンサルティング有限会社MTS
発明者 小舞忠信土井良彦
出願日 2014年11月6日 (5年8ヶ月経過) 出願番号 2014-237087
公開日 2016年5月23日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-089265
状態 特許登録済
技術分野 歯車・カム 防振装置 ベルト・チェーン 伝動装置 直線運動をする物品用の軸受 ころがり軸受 鋼の加工熱処理
主要キーワード 省力化装置 振動抑制材 定常走行速度 非磁性鋼材 実機検証 加工仕上がり 突出し長 フライホイール軸
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図面 (20)

課題

高強度制振鋼及び該鋼を含んで構成される制振機能装置を提供する。

解決手段

炭素0.10重量%以下、シリコン0.10〜3.0重量%、マンガン3.0〜18.0重量%、クロム3.0〜20.0重量%、窒素0.10〜1.20重量%を含んで成る鋼であって、積層欠陥エネルギーSFEが20(mJ/m2)以下の条件を満たす化学組成の鋼を溶製し、所定の熱処理条件冷却条件及び冷間加工条件を満たす製造方法によって、イプシロンマルテンサイト及び積層欠陥体積%が5〜50体積%、鋼の硬さ(Hv)が350〜700となるようにする。

概要

背景

本発明になる高強度制振鋼を切削工具に用いる場合、超硬合金に並ぶ、或いは、それを超える耐びびり性を発揮させるためには、制振性能に加えて高い強度が必要である。本発明になる高強度制振鋼の制振性に優れた特性を生かして、リニアガイド装置ボールねじ、低反発鋼球軸受歯車伝動装置チエーン伝動装置ばね装置組合せ計量装置超電導体用冷媒容器及び振動抑制機能付き回転体に適用する場合には、構成する部品信頼性、耐摩耗性及び軽量化の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。

切削工具において、切削時のびびりを抑制する手段として、例えば、特許文献1は、制振性材料と超硬合金を複合させて制振性と剛性を発揮させる技術を提案している。また、特許文献2は、工具ホルダの内部に粘弾性物質又はダンパーで支持する技術を提案している。ここで、特許文献1及び2に例示される方法は、振動吸収機能を持たせる構造が極めて複雑であり、また、耐久信頼性が不十分であるという問題がある。このことから、材料自体が高強度でかつ制振性能をもつ制振性切削工具が求められている。

リニアガイド装置又はボールねじにおいて、特許文献3は、ボールナット部分に制振金属をはめ込むことによってボール衝突音を低減する方法を提案している。しかしながら、特許文献3による方法は、ボールねじの構造が複雑となり実用性と信頼性が劣る。特許文献4は、リニアガイド摺動面の表面粗さを小さくする技術を開示している。しかしながら、特許文献4による方法は、研磨などの工程が必要なので、コストが高くなるという欠点がある。制振性に優れた鋼を、リニアガイド装置又はボールねじに適用するためには、構成する部品の信頼性、耐摩耗性の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。

低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置及びばね装置において、制振性に優れた鋼を上記装置に適用するためには、構成する部品の信頼性、耐摩耗性の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。前述の高い強度を得るためには、炭素含有量の高い、S45C等、或いは、SCM440やSUS440Cを焼き入れ・焼き戻し処理をして所望の強度を得る方法が一般的である。しかしながら、これらの材料には制振性能はない。

磁気浮上列車は、高速走行時に車両側超電導磁石は、地上の浮上、推進用コイルの間隔から決まる振動を受けることになる。500km/hrの定常走行速度においては、約300Hzの振動が超電導磁石に発生する。このような超電導磁石の振動は、自身の発熱だけでなく内挿及び外装容器への振動となり、冷媒への発熱・蒸発となり、冷却効果が失われことになる。この対策として、特許文献5においては、超電導磁石の冷却容器に制振性のある部品を配することによって、容器の振動を低減する技術を開示している。しかしながら、特許文献5に記載している技術は、制振部材を冷却容器に取付けるので、構造が複雑となりその保守点検が容易でない。従って、冷却容器自体が、外部からの振動を吸収し低減できる材料が求められている。この材料は、非磁性であり、かつ、車両軽量化の観点から、制振性に加えて高強度が求められている。

フライホイール式電力貯蔵装置は、高効率、高容量の充電発電装置である。この場合においても上記と同様に、充電・発電のために回転する回転子ステータとの間の磁気反発力による振動・騒音が発生する。この振動を抑制可能な制振機能を有するフライホイール軸等の材料が求められている。

交流発電機の回転子は、発電のために回転する回転子とステータとの間の磁気反発力による振動・騒音が発生する。特許文献6においては、上記の振動・騒音を抑制するために、非磁性鋼材振動抑制材(例えば、SUS304)が配置されている。しかしながら、上記の振動抑制材は材料の強度のみによって振動を抑制するものである。この材料自体が振動吸収能と所望の強度を有するものであれば、更なる、装置全体の軽量化が可能となることが期待できる。

制振性のある材料としては、鋳鉄、Mn−Cu合金、Mg−Zr合金、Mg−Ni合金、Al−Zn合金、Fe−Al−Cr合金、Ni−Ti合金、Cu−Al−Ni合金等が知られている。これらの内、鋳鉄やMg系合金は強度が低いという欠点がある。Mn−Cu系合金は、強度が低い上に100℃以上では減衰能極端に減少する欠点がある。Fe−Al−Cr合金は、歪によって制振性が低下するという欠点がある。これらの材料は、制振性能は比較的優れているが、高価な元素を多く含んでいるため、合金材料の価格上昇となるので本願の用途には不適である。

本発明者の一人は、特許文献7に示すような、制振性能に優れたFe−Si−Mn−Cr合金(以下、「制振性に優れた特許鋼」という。)を提案して特許登録されている。この「制振性に優れた特許鋼」は、炭素質量パーセントが0.001〜0.20%、シリコンの質量パーセントが0.10〜3.0%、マンガンの質量パーセントが18.0未満%、クロムの質量パーセントが20.0%以下、アルミニウムの質量パーセントが0.001〜0.10%、残部が、鉄及び不可避的不純物を含んで成る鋼である。この鋼は、その機械的性質及び製造方法はステンレス鋼と同等であり、かつ、制振性に優れているので、参考に値する材料である。

上記の「制振性に優れた特許鋼」は、溶体化熱処理後に急速冷却して更に冷間加工を加える工程を採用しているので、制振性と同時に強度が上昇するが、本願の用途に要請されている優れた耐びびり性、耐摩耗性又は軽量化を満足するには、まだ、強度が不足している。

特許文献8は、高窒素高マンガン鋼であるが、冷間加工後も非磁性を維持するために、窒素含有量を高くすることによってオーステナイト相を安定にしている。特許文献8に記載している鋼は、制振性発現に必要なε—Ms相又は積層欠陥を生成していないので制振鋼ではない。

概要

高強度制振鋼及び該鋼を含んで構成される制振機能装置を提供する。炭素0.10重量%以下、シリコン0.10〜3.0重量%、マンガン3.0〜18.0重量%、クロム3.0〜20.0重量%、窒素0.10〜1.20重量%を含んで成る鋼であって、積層欠陥エネルギーSFEが20(mJ/m2)以下の条件を満たす化学組成の鋼を溶製し、所定の熱処理条件冷却条件及び冷間加工条件を満たす製造方法によって、イプシロンマルテンサイト及び積層欠陥の体積%が5〜50体積%、鋼の硬さ(Hv)が350〜700となるようにする。

目的

本発明は、優れた制振性能を有すると同時に耐摩耗性に優れた高強度制振鋼及びこの高強度制振鋼を含んで構成される切削工具、リニアガイド装置、低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、組合せ計量装置、超電導体用冷媒容器、振動抑制機能付き回転体等の制振機能を有する部品又は装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

炭素質量百分率[%C]を0.001〜0.10[%]、シリコンの質量百分率[%Si]を0.10〜3.0[%]、マンガンの質量百分率[%Mn]を3.0〜18.0未満[%]、クロムの質量百分率[%Cr]を3.0〜20.0[%]、窒素の質量百分率[%N]を0.10〜1.20[%]、残部が鉄及び不可避的不純物を含み、数式1によって計算される積層欠陥エネルギーSFE)(mJ/m2)が、数式2を満足することを特徴とする高強度制振鋼。ここで、数式1において、[%Ni]は、ニッケル重量百分率である。[%N]は、窒素質量百分率である。

請求項2

モリブデンの質量百分率[%Mo]が0.01〜3.0[%]であることを特徴とする請求項1に記載された高強度制振鋼。

請求項3

製造工程として、第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、第3工程として、800〜1100℃で、1〜60分間、溶体化熱処理をする工程、第4工程として、強度付与のために、300〜800℃で加工率5〜50%の温間加工する工程、第5工程として、700〜850℃で5〜30分間のクロム窒化物析出熱処理をする工程、第6工程として、制振性発現及び強度付与のために、冷間加工率5〜50%の冷間加工をする工程、を含む工程を施して製造されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載された高強度制振鋼。

請求項4

X線回折法によって測定されたイプシロンマルテンサイト相及び積層欠陥体積パーセント[%ε−Ms相]が、数式3を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載された高強度制振鋼。

請求項5

片持ち梁法によって測定した制振性を表す損失係数(η)が、数式4を満足することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した高強度制振鋼。

請求項6

鋼の硬さが、ビッカース硬度(Hv)で350〜700であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載した高強度制振鋼。

請求項7

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする切削工具又は削岩ビット

請求項8

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするリニアガイド装置

請求項9

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする低反発鋼球又は軸受

請求項10

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする歯車伝動装置

請求項11

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするチエーン伝動装置

請求項12

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするばね装置

請求項13

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするパーツフィーダー装置。

請求項14

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする組合せ計量装置食品製造梱包装置

請求項15

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする超電導体冷媒容器

請求項16

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする電力貯蔵装置フライホイール

請求項17

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする発電機の回転子

請求項18

請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする制振機能付部品又は装置。

技術分野

0001

本発明は、高強度でかつ制振性に優れた高強度制振鋼及び該鋼を含んで構成される、切削工具、削岩支持具リニアガイド装置ボールねじ、低反発鋼球軸受歯車伝動装置チエーン伝動装置ばね装置組合せ計量装置超電導体用冷媒容器及び振動抑制機能付き回転体等の制振機部品又は装置に関するものである。

背景技術

0002

本発明になる高強度制振鋼を切削工具に用いる場合、超硬合金に並ぶ、或いは、それを超える耐びびり性を発揮させるためには、制振性能に加えて高い強度が必要である。本発明になる高強度制振鋼の制振性に優れた特性を生かして、リニアガイド装置、ボールねじ、低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、組合せ計量装置、超電導体用冷媒容器及び振動抑制機能付き回転体に適用する場合には、構成する部品の信頼性、耐摩耗性及び軽量化の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。

0003

切削工具において、切削時のびびりを抑制する手段として、例えば、特許文献1は、制振性材料と超硬合金を複合させて制振性と剛性を発揮させる技術を提案している。また、特許文献2は、工具ホルダの内部に粘弾性物質又はダンパーで支持する技術を提案している。ここで、特許文献1及び2に例示される方法は、振動吸収機能を持たせる構造が極めて複雑であり、また、耐久信頼性が不十分であるという問題がある。このことから、材料自体が高強度でかつ制振性能をもつ制振性切削工具が求められている。

0004

リニアガイド装置又はボールねじにおいて、特許文献3は、ボールナット部分に制振金属をはめ込むことによってボール衝突音を低減する方法を提案している。しかしながら、特許文献3による方法は、ボールねじの構造が複雑となり実用性と信頼性が劣る。特許文献4は、リニアガイド摺動面の表面粗さを小さくする技術を開示している。しかしながら、特許文献4による方法は、研磨などの工程が必要なので、コストが高くなるという欠点がある。制振性に優れた鋼を、リニアガイド装置又はボールねじに適用するためには、構成する部品の信頼性、耐摩耗性の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。

0005

低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置及びばね装置において、制振性に優れた鋼を上記装置に適用するためには、構成する部品の信頼性、耐摩耗性の観点から、制振性能に加えて高い強度が必要である。前述の高い強度を得るためには、炭素含有量の高い、S45C等、或いは、SCM440やSUS440Cを焼き入れ・焼き戻し処理をして所望の強度を得る方法が一般的である。しかしながら、これらの材料には制振性能はない。

0006

磁気浮上列車は、高速走行時に車両側超電導磁石は、地上の浮上、推進用コイルの間隔から決まる振動を受けることになる。500km/hrの定常走行速度においては、約300Hzの振動が超電導磁石に発生する。このような超電導磁石の振動は、自身の発熱だけでなく内挿及び外装容器への振動となり、冷媒への発熱・蒸発となり、冷却効果が失われことになる。この対策として、特許文献5においては、超電導磁石の冷却容器に制振性のある部品を配することによって、容器の振動を低減する技術を開示している。しかしながら、特許文献5に記載している技術は、制振部材を冷却容器に取付けるので、構造が複雑となりその保守点検が容易でない。従って、冷却容器自体が、外部からの振動を吸収し低減できる材料が求められている。この材料は、非磁性であり、かつ、車両軽量化の観点から、制振性に加えて高強度が求められている。

0007

フライホイール式電力貯蔵装置は、高効率、高容量の充電発電装置である。この場合においても上記と同様に、充電・発電のために回転する回転子ステータとの間の磁気反発力による振動・騒音が発生する。この振動を抑制可能な制振機能を有するフライホイール軸等の材料が求められている。

0008

交流発電機の回転子は、発電のために回転する回転子とステータとの間の磁気反発力による振動・騒音が発生する。特許文献6においては、上記の振動・騒音を抑制するために、非磁性鋼材振動抑制材(例えば、SUS304)が配置されている。しかしながら、上記の振動抑制材は材料の強度のみによって振動を抑制するものである。この材料自体が振動吸収能と所望の強度を有するものであれば、更なる、装置全体の軽量化が可能となることが期待できる。

0009

制振性のある材料としては、鋳鉄、Mn−Cu合金、Mg−Zr合金、Mg−Ni合金、Al−Zn合金、Fe−Al−Cr合金、Ni−Ti合金、Cu−Al−Ni合金等が知られている。これらの内、鋳鉄やMg系合金は強度が低いという欠点がある。Mn−Cu系合金は、強度が低い上に100℃以上では減衰能極端に減少する欠点がある。Fe−Al−Cr合金は、歪によって制振性が低下するという欠点がある。これらの材料は、制振性能は比較的優れているが、高価な元素を多く含んでいるため、合金材料の価格上昇となるので本願の用途には不適である。

0010

本発明者の一人は、特許文献7に示すような、制振性能に優れたFe−Si−Mn−Cr合金(以下、「制振性に優れた特許鋼」という。)を提案して特許登録されている。この「制振性に優れた特許鋼」は、炭素質量パーセントが0.001〜0.20%、シリコンの質量パーセントが0.10〜3.0%、マンガンの質量パーセントが18.0未満%、クロムの質量パーセントが20.0%以下、アルミニウムの質量パーセントが0.001〜0.10%、残部が、鉄及び不可避的不純物を含んで成る鋼である。この鋼は、その機械的性質及び製造方法はステンレス鋼と同等であり、かつ、制振性に優れているので、参考に値する材料である。

0011

上記の「制振性に優れた特許鋼」は、溶体化熱処理後に急速冷却して更に冷間加工を加える工程を採用しているので、制振性と同時に強度が上昇するが、本願の用途に要請されている優れた耐びびり性、耐摩耗性又は軽量化を満足するには、まだ、強度が不足している。

0012

特許文献8は、高窒素高マンガン鋼であるが、冷間加工後も非磁性を維持するために、窒素含有量を高くすることによってオーステナイト相を安定にしている。特許文献8に記載している鋼は、制振性発現に必要なε—Ms相又は積層欠陥を生成していないので制振鋼ではない。

先行技術

0013

特許第4512677号公報特許第4136977号公報特開2003−194176号公報特開2006−105197号公報特開平6−333733号公報特許第3907806号公報特許第4984272号公報特許第4120354号公報

発明が解決しようとする課題

0014

本発明は、優れた制振性能を有すると同時に耐摩耗性に優れた高強度制振鋼及びこの高強度制振鋼を含んで構成される切削工具、リニアガイド装置、低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、組合せ計量装置、超電導体用冷媒容器、振動抑制機能付き回転体等の制振機能を有する部品又は装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

以下に、課題を解決するための手段の要点を示す。
(1)本発明は、本発明者らが一貫して研究してきた高マンガン鋼において、熱誘起又は加工誘起イプシロンマルテンサイト相(以下、「ε—Ms相」という。)又は積層欠陥(金属の結晶構造の形態を云う専門用語である。)を適切に生成させて制振性能を発現させる技術を基としている。
(2)本発明は、窒素含有量を高くすることによって、冷間加工、又は、温間加工によって、第1段目の鋼の強度アップを計る。
(3)本発明は、高窒素含有鋼においては、固溶窒素はオーステナイトを安定にするので、クロム窒化物析出処理を行うことによって、固溶窒素をクロム窒化物の形に変えることを重要な要件としている。これによって、所望のε—Ms相又は積層欠陥の体積パーセントを得ることができる。
(4)本発明は、最終工程の冷間加工によって、制振発現に必要なε—Ms相、又は積層欠陥を生成させると同時に、第2段目の強度アップを計る。

0016

本出願に係る発明は、[特許請求の範囲]の[請求項1]〜[請求項18]に記載した事項により特定される。
[特許請求の範囲]
[請求項1]
炭素の質量百分率[%C]を0.001〜0.10[%]、
シリコンの質量百分率[%Si]を0.10〜3.0[%]、
マンガンの質量百分率[%Mn]を3.0〜18.0未満[%]、
クロムの質量百分率[%Cr]を3.0〜20.0[%]、
窒素の質量百分率[%N]を0.10〜1.20[%]、
残部が鉄及び不可避的不純物を含み、
数式1によって計算される積層欠陥エネルギーSFE)(mJ/m2)が、数式2を満足することを特徴とする高強度制振鋼。


ここで、数式1において、[%Ni]は、ニッケルの質量百分率である。
[請求項2]
モリブデンの質量百分率[%Mo]が0.01〜3.0[%]であることを特徴とする請求項1に記載された高強度制振鋼。
[請求項3]
製造工程として、
第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、
第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、
第3工程として、900〜1100℃で、1〜60分間、溶体化熱処理をする工程、
第4工程として、強度付与のために、300〜800℃で加工率5〜50%の温間加工する工程、
第5工程として、700〜850℃で5〜30分間のクロム窒化物析出熱処理をする工程、
第6工程として、制振性発現及び強度付与のために、冷間加工率5〜50%の冷間加工をする工程、
を含む工程を施して製造されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載された高強度制振鋼。
[請求項4]
X線回折法によって測定されたイプシロン・マルテンサイト相及び積層欠陥の体積パーセント[%ε−Ms相]が、数式3を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載された高強度制振鋼。

[請求項5]
片持ち梁法によって測定した制振性を表す損失係数(η)が、数式4を満足することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した高強度制振鋼。

[請求項6]
鋼の硬さが、ビッカース硬度(Hv)で350〜700であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載した高強度制振鋼。
[請求項7]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする切削工具又は削岩支持具。
[請求項8]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするリニアガイド装置又はボールねじ装置
[請求項9]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする低反発鋼球又は軸受。
[請求項10]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする歯車伝動装置。
[請求項11]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするチエーン伝動装置。
[請求項12]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするばね装置。
[請求項13]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とするパーツフィーダー装置。
[請求項14]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする組合せ計量装置、食品製造梱包装置
[請求項15]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする超電導体冷媒容器
[請求項16]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする電力貯蔵装置フライホイール
[請求項17]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする発電機の回転子。
[請求項18]
請求項1乃至6の何れかに記載された高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする制振機能付部品又は装置。

実施例

0017

以下に、本発明に係わる高強度制振鋼について具体的に説明する。
図1に、本発明に係わる高強度制振鋼の製造プロセスを示す。

0018

本発明の請求項1において、シリコンの質量百分率を0.10〜3.0[%Si]、マンガンの質量百分率を3.0〜18.0未満[%Mn]としている。これは、良好な制振性発現能を持ちながら、微量のシリコンを添加することによってマンガン含有量を低く抑えることができることを開示している。即ち、熱処理或いは冷間加工によってε−Ms相が生成し易い度合いを示す積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)の関係式(数式1)において、マンガンの項は−1.2×[%Mn]であり、シリコンの項は−13×[%Si]であることから、シリコンはマンガンの約十倍のSFEの低下効果があることを示している。即ち、SFEを20mJ/m2以下に保持する上で、微量の0.10〜3.0[%Si]のシリコン添加によってマンガン質量百分率を18.0未満[%Mn]と少なく抑えられている。これは、高マンガン鋼において、優れた熱間加工性及び冷間加工性を得るために極めて重要な発明である。即ち、マンガン質量百分率が18.0[%Mn]以上では熱間加工性及び冷間加工性が悪くなり製造コストが上がるためである。
ここで、積層欠陥エネルギーを20mJ/m2以下としたのは、急速冷却によるε−Ms相をより生成し易しくするためであり、この値が20mJ/m2を超えるとε−Ms相の生成が不十分となるためであり、好ましくは、10mJ/m2以下である。更に、シリコンの質量百分率を0.10[%Si]以上としたのは、0.10[%Si]以下ではシリコン添加効果が見られないためであり、3.0[%Si]以上はシリコンによる固溶体硬化によって材料が硬くなり過ぎるためであり、好ましくはシリコン質量百分率0.5〜1.5[%Si]である。
本発明の請求項1において、クロム質量百分率3.0〜20.0[%Cr]としている。これは、本発明の基本となるオーステナイト相(以下、「γ−相」という。)の生成に関するものである。クロム質量百分率が20.0[%Cr]を超える領域ではγ−相とフェライト相(以下、「α−相」という。)の2相が生成するので、クロム質量百分率を20.0[%Cr]以下、好ましくは、15.0[%Cr]以下とする。クロムの下限については、積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)(数式1)を20(mJ/m2)以下とする条件を満たす範囲を設定すればよい。これによって、クロムとマンガンの相乗効果によって効果的にγ−相を生成させる領域を広くとることができる。ニッケルのγ−相生成の役割をシリコン、マンガン及びクロムが効果的に果しているので、制振性発現の観点からは高価なニッケルは必ずしも必要なくなっている。即ち、本発明においては、制振性発現以外の必要がない限り、ニッケルの意図的な添加の必要はない。

0019

本発明の請求項1において、窒素の質量百分率を0.10〜1.20[%N]としている。これは、窒素含有量を高くした鋼に冷間加工及び熱処理又は温間加工を施すことによって、鋼の強度を上げることを目的にしている。窒素の含有量が、0.10[%N]未満では、窒素の効果が小さいためであり、1.20[%]を超えると窒素に起因するブローホール欠陥が発生する恐れがあるためである。好ましくは、窒素の質量百分率は、0.2〜0.8[%N]である。

0020

本発明の請求項1において、炭素の質量百分率を0.001〜0.10[%C]としている。炭素の質量百分率が0.10[%C]を超えるとクロム炭化物析出処理をしても、良好なε—Ms相が得られないためである。

0021

本発明の請求項2において、モリブデンの質量百分率を0.01〜3.0[%]としている。これは、モリブデンは、鋼の急速冷却による焼入れ硬化によって強度アップを発揮する元素であり、かつ、本発明に係るε—Ms相の生成には影響を及ぼさない元素である。従って、本発明の高強度制振鋼の適用先によって適宜使い分けることが得策である。具体的に述べると、切削工具(請求項7)、リニアガイド装置(請求項8)、低反発鋼球又は軸受(請求項9)及び歯車伝動装置(請求項10)には、焼き入れ硬化が要請される用途であるので、モリブデン添加は極めて有効である。

0022

一方、チエーン伝動装置(請求項11)、ばね装置(請求項12)及び超電導体用冷媒容器(請求項15)への適用には、モリブデン添加は、必ずしも必須ではい。モリブデンは、希少元素であり高価なので、上記のように使い分けることが得策である。これが、モリブデンに関して、別に、請求項2として請求した理由である。

0023

本発明の請求項3において、
第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、
第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、
第3工程として、900〜1100℃で、1〜60分間、溶体化熱処理をする工程、
第4工程として、300〜800℃で加工率1〜50%の温間加工する工程、
第5工程として、700〜850℃で5〜30分間のクロム窒化物析出熱処理をする工程、
第6工程として、制振性発現及び強度付与のために、冷間加工率5〜50%の冷間加工をする工程、
を施して製造することを主張している。

0024

ここで、重要なのは、第3工程乃至第6工程である。
以下、工程毎に説明する。
第3工程として、900〜1100℃で、1〜60分間、溶体化熱処理をした後、冷却する工程、を主張している。第3工程は、所謂、固溶体化熱処理であり、熱処理温度を900〜1100℃としたのは、900℃未満の温度では冷間加工歪除去及びオーステナイト化が不十分となるためであるために制振性発現が不十分となるためであり、1100℃を超えるとオーステナイト結晶粒度が粗大化して機械的性質が不良となるためである。

0025

第4工程として、強度付与のために、300〜800℃で加工率1〜50%の温間加工する工程、を主張している。
即ち、窒素の重量百分率0.10〜1.20[%N]の鋼に、300〜800℃で加工率1〜50%の温間加工することにより、鋼の強度を上昇させることができることを主張している。ここで、加工率50%を超えると鋼の延性が損なわれるためであり、1%未満では強度の上昇効果が少ないためである。

0026

第5工程として、700〜850℃で5〜30分間のクロム窒化物析出熱処理をした後、急速冷却をする工程を主張している。窒素の重量百分率0.10〜1.20[%N]の鋼は、冷間加工又は温間加工によって強度を上昇する効果がある。その反面、本発明に必要なε—Ms相の生成には阻害要因になっている。そこで、第5工程として、クロム窒化物析出熱処理を施すことが必須である。ここで、熱処理温度を700〜850℃としたのは、700℃未満の温度では、クロム窒化物が生成しないためであり、850℃を超えるとクロム窒化物の再溶解が起こるためである。クロム窒化物析出処理を行うとε—Ms相が生成するが、同時にα’−Ms相も析出するので、弱い磁性を帯びるようになる場合がある。

0027

第6工程として、制振性発現及び強度付与のために、冷間加工率50%以下の冷間加工を施すことを主張している。この工程は、最終製品の制振性と機械的性質を決めるものなので、用途に応じて選択しなければならない。制振性の観点からは、5〜20%の冷間加工において最良の状態となり、その後冷間加工が増すと逆に制振性が劣化する。ここで、冷間加工率を50%以下としているのは、50%を超えると、ε—Ms相が多すぎて制振性の発現が逆に阻害され、同時に、鋼の強度はあがるが延性が劣化するためである。好ましい冷間加工率は5〜20%である。

0028

本発明の請求項4において、X線回折法によって測定されたε−Ms相及び積層欠陥の体積百分率が5〜50体積%であることを開示している。これは、本発明の基本的な制振発現の必要条件である金属組織、即ち、ε−Ms相の定量的表現であり、5体積%未満では制振性が不十分となるためであり、50体積%を超えると ε−Ms相が相互に絡みあって逆に制振特性を低下させることが分かったものである。好ましくは、ε−Ms相の体積百分率が10〜40体積%である。

0029

本発明の請求項5において、片持ち梁方式によって測定された損失係数(η)が0.005〜0.10であることを開示しているが、これは制振性に優れた鋼材としての基本的な条件である。ここで、本発明になる鋼材の振動減衰能は振動歪依存が大きいので、損失係数(η)測定方法は、振動歪みを約10−4以上にする必要があるため、これを可能にする方法として片持ち梁方式を選択した。測定値においては、損失係数(η)が0.005未満であると制振性鋼としての振動減衰機能が不十分であるためであり、0.10を超えるための製造条件では鋼材の機械的性質が上記記載の用途に適さなくなるためである。

0030

本発明の請求項6において、本発明に係る高強度鋼の硬さが、ビッカース硬度(Hv)で350〜700であることを主張している。ここで、ビッカース硬度(Hv)を350〜700とするのは、Hvが350未満であると本発明の用途に強度が不足であるためであり、Hvが700を超えると鋼の延性が劣るためである。このましくは、Hv:400〜500である。

0031

本発明の請求項7〜請求項18において、本発明に係る高強度制振鋼を含んで構成されることを特徴とする切削工具、削岩支持具、リニアガイド装置、低反発鋼球又軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、超電導体用冷媒容器及び振動抑制機能付き回転体等の制振機能を有する部品又は装置を個々に請求項として主張している。本発明に係る高強度制振鋼を上記部品或いは装置に適用すると、それぞれが、どのような特性を新規に発揮するかについては、実施例によって個々に説明する。

発明の効果

0032

本発明に係る高強度制振鋼を切削工具、削岩支持具、リニアガイド装置、低反発鋼球、軸受、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、超電導体用冷媒容器又は振動抑制機能付き回転体等に適用すると、稼働中に発生する振動を抑制することができるので作業効率が向上し、稼働中の振動を抑制するので、エネルギー損失を少なくする省エネルギー部品となることが期待できる。

0033

以下、本発明を実施例によって説明する。

0034

実験例1として、表1に示す組成の鋼を溶製した。
ここで、表1に記載されていない元素について説明する。
不可避的不純物である、リン(P)及び硫黄(S)はいずれも0.01質量%以下とした。ニッケル(Ni)及びアルミニウム(Al)は、意図的には添加しなかった。比較例10(SUS304)は、表1の化学組成の他に、Niを8[%Ni]添加した市販品である。比較例11(SCM440)は、高炭素焼入れ鋼である。
この材料の積層欠陥エネルギーSFEを数式1によって計算した。
これを1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工によって、13.5mmφの丸鋼を作製した。次に、真空中で1050℃、1時間の溶体化熱処理を行った後に急速冷却した。これを、強度付与を目的として、700℃で加工率30%の温間加工を施して11.0mmφの丸鋼を作製した。さらに、800℃×30分でクロム窒化物析出処理を施した後急速冷却した。
そして、制振付与及び第2段の強度付与を目的にして、10%の冷間引抜加工をして、最終的に10.0mmφの丸鋼を得た。
片持ち梁方式によって損失係数(η)を測定した。振動部長さを50mmとして、先端に加速度センサを取付けて、衝撃を与え自由減衰時間及び振動周波数を測定して損失係数(η)を求めた。このときの振動歪は10−4レベルであった。
硬さ及び磁性を測定した。結果を[表1]にまとめた。
総合評価として、良好(○)及び不可(×)の記号によって表わした。

0035

0036

以下、表1について詳述する。
本発明例1〜14は、シリコンを本発明の推奨範囲内である0.10〜3.0[%Si]、マンガンを3〜17[%Mn]、クロムを5〜19[%Cr]、窒素を0.10〜1.20[%N]を添加し、クロム窒化物析出処理を行った例である。何れも、SFE値が20mJ/m2以下でありε−Ms相体積%は本発明の請求範囲内であるので、損失係数(η)は良好である。また、実施例1〜14において、図2に示すように、最終製品丸鋼の硬さは窒素の添加量に従って上昇していることが確認できた。
ここで、本発明例8においては、シリコンを1.00[%Si]を添加しているので、各々、マンガンが3.0[%Mn]、クロムが9.0[%Cr]でも、SFEの条件を満たしているので良好な制振性を示すことが確認できた。
本発明例9においては、シリコンを1.00[%Si]を添加しているので、各々、マンガンが12.0[%Mn]、クロムが3.0[%Cr]でも、SFEの条件を満たしているので良好な制振性を示すことが確認できた。
本発明例1〜14全てに窒素を0.10[%N]以上添加して、温間加工によって硬さを高めて、後に、クロム窒化物析出熱処理を施しているので、図3に示すように、ε—Ms相の生成が確認されている。
比較例1〜7及び比較例10〜11については、窒素が0.01[%N]なので、いずれも硬さが不足している。
比較例1は、SFE、ε−Ms相体積%及び損失係数(η)の指標からの判断では、良好(○)であるが、マンガン量が19.0[%Mn]と高いために材料が硬くなり冷間加工性の観点から量産出来ないので総合評価は不可である。
マンガンと冷間加工性については、実施例3の項において詳述する。
比較例2は、シリコン量が不足しているので制振性が不良である。
比較例3は、シリコン量が過大なので、材料が硬く加工コスト高いので実生産ができない。
比較例4は、炭素量が過大のため、制振性が不良である。
比較例5は、マンガン量が不足しているため制振性が不良である。
比較例6は、クロム量が過大のため、母相がγ−相及びα−相の2相域となっているために、ε−Ms相の生成量が少ないので制振性も不十分である。
比較例7は、窒素量が0.01[%N]なので、硬さが不足している。
比較例8は、窒素を1.30[%N]と添加しているが、鋼の凝固時に窒素に起因するブローホールが発生するので、鋼の内部に欠陥が発生し品質上問題がある。この種の欠陥は、[表1]に記載した評価指標には表れてこない。
比較例9は、窒素を0.49[%N]と添加しているが、クロム窒化物析出処理をしていないので、固溶窒素[%N]が多くなり、オーステナイト相が安定となり、ε—Ms相が生成しないので、制振性はない。
本発明例14は、比較例7にクロム窒化物析出処理を施すことにより制振鋼とした例であり、図3がこれを示している。
比較例10は、市販のSUS304であるが、マンガンが少ないので制振性はない。
比較例11は、焼入れ焼き戻しによって硬さを得る炭素鋼である。母相がフェライト相の高強度鋼であり、制振性能は無い。

0037

更に、表1をグラフ化した、図4図5及び図6によって詳述する。
図4は、SFEとε‐Ms相体積%との関係を示す。SFEが20(mJ/m2)以下において所望のε‐Ms相体積%を生成する。図5は、ε‐Ms相体積%と損失係数(η)との関係を示す。ε‐Ms相体積%が、5体積%以上が必要である。
図6は、[%Mn]とε‐Ms相との関係を示す図である。マンガンの質量パーセントの範囲は、3[%Mn]以上が必要であり、冷間加工性の観点から、18[%Mn]未満である。

0038

図7に示す片持ち梁方式の振動試験装置によって、表1における本発明例1と比較例11(市販の工具鋼)の制振性の比較を行った。図8は、その振動減衰時間軸波形であり、同時に共振周波数計測することができる。
この減衰波形より、損失係数(η)は5及び6式によって求めることができる。
対数減衰率(α) α=1/n・Ln(A0/An) ・・・・(5)
損失係数(η) η=α/π ・・・・(6)
ここで、AnはAoからn周期目振動振幅である。

0039

実施例2は、請求項3に記載されている第6工程に関するものである。
実施例1における本発明例1の組成の鋼を用いた。これを1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工によって、13.5mmφの丸鋼を作製した。次に、真空中で1050℃、1時間の溶体化熱処理を行った後に急速冷却した。これを、強度付与を目的とした、加工率30%で冷間加工を施して11.2mmφの丸鋼を作製した。さらに、800℃、30分にてクロム窒化物析出処理を施した後に急速冷却した。
これに、1,5,10,20,30,40,50,60%の冷間加工を行った。
表2は、上記の冷間加工を施した各々の試験片の機械的性質、硬さ、損失係数(η)を測定した結果である。図9は、表2をグラフ表示したものである。
第6工程は、最終製品の制振性と機械的性質を決めるものなので、用途に応じて選択しなければならない。制振性の観点からは、5〜20%の冷間加工において最良の状態となり、その後冷間加工が増すと逆に制振性が劣化する。材料の強度が重要な用途には、制振性を犠牲にすることになるが冷間加工率を30%以下が推奨される。冷間加工が50%を超えると、ε—Ms相が多すぎて制振性の発現が逆に阻害される。

0040

0041

実施例3は、本発明の制振性に優れた鋼の冷間加工性の評価に関するものである。
表3は、特許文献6に記載した表1における本発明例1(Mn:17[%Mn])、本発明例8(Mn:8[%Mn])、比較例1(Mn:19[%Mn])及びSUS304(Mn:1[%Mn])のマンガン質量含有率[%Mn]の異なる鋼について、試験圧延機(ワークロール径85mmφの4段圧延機)によって、
2.0mmから約0.03mm厚までの冷間圧延における中間熱処理回数と次の熱処理が必要となるまでの冷間圧延率を測定したものである。
本発明例1又は8は、2.0mmから約0.03mmまでに中間熱処理回数は3回であり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は63〜70%である。これはSUS304(比較例10)と同等であることが確認され、実生産可能との総合評価である。これに対して、比較例1(Mn:19[%Mn])は、9回の中間熱処理が必要となり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は35%である。これは、実生産における冷間加工のコストが過大となるために実用化が阻害されていることが明白に示されている。

0042

0043

実施例4は、請求項7に係るものである。
表1に記載した本発明例1の素材図10に示すボーリングバイトに加工した。
比較例Aは、耐びびり性の優れた超硬合金、比較例Bは、一般の切削工具に用いられているクロム・モリブデン鋼(SCM440)である。この時の被削材は、S45C、切削条件としては、Vc=70mm/min、加工代ap=0.2mmである。切削工具は、10mm径(D)であり、突出し長さを3D〜7Dに変化させた時のびびり評価を行った。
切削加工におけるびびり評価を行った結果を表4に示す。
結果を表4に示すように、本発明例1は、突出し長さ60mm(6D)の条件において、比較例A(超硬合金)に匹敵する優れた耐びびり性を示すことが確認できた。
本発明に係る高強度制振鋼を削岩支持具に適用すると、削岩びびりが軽減されたので、削岩効率が向上した。

0044

0045

実施例5は、請求項8に係るものである。
本発明に係る高強度制振鋼を図11のようなリニアガイドに適用した。結果を表5及び図12に示す。本発明例1は、比較例11(SCM440)に対して5dBの稼働中における騒音低減効果が確認できた。図12に示すように、リニアガイドの稼働中の騒音周波数は1〜4kHzであり、本発明の高強度制振鋼の制振効果を発揮する周波数帯である。また、本発明例は、比較例11(従来品)と同等の耐摩耗性を示すことが確認された。

0046

0047

実施例6は、請求項9に係るものである。
実施例1の表1における本発明1の素材を用いて、図13に示す製造工程によって、直径10mmの鋼球を作製した。図14は、低反発鋼球の自由落下試験も模式的に表したものである。図15は、軸受の外観写真である。表6は、低反発鋼球及び軸受に適用した結果である。低反発鋼球の反発指標を示す対数減衰率(α)は表6に示すように優れている。また、軸受に適用した時の、回転エネルギー損失を比較した結果は、回転エネルギー損失を約20%低減するという極めて優れた効果が確認できた。

0048

0049

実施例7は、請求項10に係るものである。
実施例1の表1における本発明1及び比較例11の素材を用いて、図16に示す歯車を作成した。表7は、その適用例である。稼働中の騒音を大幅に低減する効果を確認した。また、耐摩耗性は従来材と同等であることが確認された。

0050

0051

実施例8は、請求項11に関するものである。
実施例1の表1における本発明1及び比較例10の素材を用いて、図17に示すチエーンを作成した。表8は、適用例であり、稼働中の騒音を大幅に低減する効果を確認した。また、耐摩耗性は従来材(ステンレス・チエーン)大幅に優れているので、摩耗に起因するチェーン寿命が改善された。

0052

0053

実施例9は、請求項12に関するものである。
実施例1の表1における本発明1及び比較例11の素材を用いて、図18に示すコイルばねを作成した。図19サージング発生の比較したものである。本発明例は、高次周波数共振現象が抑えられている。

0054

実施例10は、請求項13に関するものである。
実施例1の表1における本発明例1及び比較例11の素材を用いて、図20に示すパーツフィーダを作成した。表9は、パーツフィーダの稼働時の騒音レベルパーツ損傷率及び総合評価である。パーツフィーダのボール部の振動が抑制されるので、騒音レベルが抑制されると同時に、パーツへの振動衝撃が軽減されるので、パーツの損傷率が低減した、

0055

0056

実施例11は、請求項14に関するものである。
例えば、組合せ計量装置(図21)は、食品関係の計量に威力を発揮している。
例えば、ポテトチップソーセージのように、一つの重さが定まりにくく形状も不揃いでも、定められた重さを取り分け袋詰めにする装置である。1分間に100回以上の計量ができるので、従来は人手による人海戦術しか方法がなかったので、所謂、百人力省力化装置である。しかしながら、SUS304製のボックスの開け閉めやシュートからの騒音が高いという問題点がある。
この装置に、表1の本発明例1を適用して、比較例10(従来材)との稼働中の騒音を測定・比較した結果を表10に示す。その結果、職場環境の改善に効果を発揮することが確認できた。この技術は、物の衝突等に起因する騒音を発生する食品製造・梱包装置においても同様の効果が期待できる。

0057

0058

実施例12は、請求項15に関するものである。
磁気浮上列車(リニア鉄道)においては、500km/hrの高速度で走行する場合、約300Hzの振動が超電導磁石に発生して、液体ヘリウム液体窒素超電導維持用冷却媒体振動エネルギーによって蒸発気体化する。この現実的な対策として、強力な冷凍機によって気化して冷媒を液化して冷却容器に戻す装置を稼働させている。特許文献5は、一つの対策として、図22及び図23に示すような制振装置を提案している。
本願になる「高強度制振鋼」は、特許文献5の示す効果と同様な対策技術となることが期待される。

0059

実施例13は、請求項16に関するものである。
太陽光風力自然エネルギーを利用する場合、発電電力の変動を負荷平準化するための大容量電力貯蔵設備が必要となる。このために、図24に示すような超電導磁気浮上フライホイール式電力貯蔵が提案されている。フライホイールの3000rpmの高速回転に起因する振動による蓄電効率低減対策が求められている。例えば、特許文献10は、装置全体をダンパーで支持する方法を提案している。非特許文献1は、フライホイールが回転時に発生する振動を計測している。これによると、1kHz以上に振動が発生することが報告されている。
図25に示すように、本願の発明になる「高強度制振鋼」は、この周波数領域への振動吸収能に優れていることが分っているので、例えば、フライホイール・シャフトへの適用によって、充発電効率の向上が期待できる。

0060

実施例14は、請求項17に関するものである。
図26に示すように、発電のために回転する回転子とステータの間の磁気反力による振動・騒音を抑制するために、非磁性鋼材の振動抑制体が設置されている。この振動抑制体は、凹型の複雑形状なので、高精度・高歩留りの効率的製造方法が求められる。本願の発明になる「高高度制振鋼」をこの部分に使用すると、更なる発電機の高性能・軽量化が期待できる。

参考技術文献

0061

特開2013−150499田中賢太他、「低コスト志向したフライホイール電力平準化システム実機検証」、長岡技術科学大学、SPC−13−038

0062

本発明に係る高強度制振鋼を、切削工具、削岩支持体、リニアガイド装置、ボールねじ、低反発鋼球、軸受、ボールベアリング、歯車伝動装置、チエーン伝動装置、ばね装置、組合せ計量装置、超電導体用冷媒容器、振動抑制機能付き回転体等の制振機能を有する装置に適用すると、稼働中に発生する騒音を抑制することができると同時に騒音源の振動を抑制するので、エネルギー損失を少なくし省エネルギー部品となることが期待できるので産業利用上の効果が大きい。

図面の簡単な説明

0063

高強度制振鋼の製造工程実験例1における窒素含有量と最終製品鋼の硬さの関係クロム窒化物析出処理有無と金属組織の関係SFEとε‐Ms相体積%との関係 ε‐Ms相体積%と損失係数(η)との関係マンガン質量%とε‐Ms相体積%及び冷間加工性との関係片持ち梁方式の振動試験装置振動減衰時間軸波形、共振周波数(本発明例1及び比較例11)冷間加工率と硬さ、制振性、鋼の延性との関係切削工具の例リニアガイド装置の例 リニアガイド装置の稼働時に発生する振動高強度で制振性を有する低反発鋼球の製造工程 低反発鋼球の自由落下試験軸受の例歯車の例チエーンの例 ばねの例サージングの発生比較パーツフィーダの例組合せ計量装置の例磁気浮上列車の駆動部と制振装置の例 制振装置有無と冷媒容器の振動の比較フライホイール式電力貯蔵装置の例フライホイールの回転時に発生する振動とモデル試験結果発電機の回転子と振動抑制体の例

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