図面 (/)

技術 接着性細胞の培養方法

出願人 株式会社フコク
発明者 金龍森村孝史吉田孝夫
出願日 2014年11月7日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2014-227586
公開日 2016年5月23日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-086774
状態 特許登録済
技術分野 微生物・酵素関連装置 微生物、その培養処理
主要キーワード 袋状容器内 剥離抵抗性 mm水柱 コンタミネーション防止 気体注入 樹脂製袋 押さえ面 液体排出
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年5月23日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (14)

課題

袋状容器を用いた簡易な方法で効率よく接着性細胞を培養できる接着性細胞の培養方法を提供する。

解決手段

細胞培養面22となる容器壁21を備えた袋状容器2に接着性細胞及び液体培地を含む液状収容物6を封入して接着性細胞を培養する培養方法であり、袋状容器2を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物6の流動を抑制し、この状態を維持して接着性細胞が細胞培養面22に接着することを促し、または、接着した細胞剥離することを抑制しながら接着性細胞を培養し、その後、袋状容器2に気体注入して、袋状容器2の液状収容物6の排出又は袋状容器2へ新たな液状収容物6の注入を行う。

概要

背景

従来、接着性細胞培養容器として、一般に、スチレン製の組織培養シャーレまたは組織培養用フラスコが使用されている。これらの容器培養面を形成するスチレン樹脂自体は疎水性であり、接着性細胞は、接着し難く、その結果、細胞はきわめて増殖しにくく、死滅してしまうことも多い。
ところが、組織培養用のシャーレまたはフラスコは、紫外線照射処理またはプラズマ処理等により、培養面を親水化して接着性細胞が培養面に接着するのを容易にしている。

また、袋状容器を利用した細胞を培養する容器が市販されているが、これらのほとんどが、浮遊性細胞を培養するものである。これらの袋状容器は、一般に、柔軟性を有するオレフィン系樹脂により形成されており、内面が疎水性で、その接触角は90°近傍または90°以上であり、一般的に、接着性細胞培養用容器としては適していないと考えられており、通常、これを接着性細胞の培養に使用することはない。
しかし、袋状容器は、閉鎖系で培養できるというメリットがあり、これを接着性細胞の培養に使用しようとする幾つかの試みがなされている。

これらの試みの中で、スチレン製のシャーレまたはフラスコと同じように、袋状容器の内面、すなわち、培養面を紫外線照射処理またはコロナ放電処理等により表面処理して親水化し、接着性細胞が接着しやすい培養面を提供するものがある。例えば、特許文献1では、フィルム表面に紫外線照射して親水化した後で、親水化した面が内面になるように2枚のフィルムを重ね合わせ、周縁シールして接着性細胞培養用の袋状容器を形成している。また、特許文献2及び3では、フィルム表面をコロナ放電処理した後で、親水化した面が内面になるように2枚のフィルムを重ね合わせ、周縁をシールして接着性細胞培養用の袋状容器を形成している。

ところが、これらの何れの方法も、袋状容器の内面すなわち培養面になる面を外気に晒した状態で表面処理しなければならず、その時に、培養面への異物、細菌の付着を避けるのが困難であった。例えば、インフレーション成形によれば、内面に異物、細菌のないフィルムを容易に形成できるが、折角インフレーション成形しても、表面処理するために、将来培養面になる面を外気に晒さなければならず、同面に異物、細菌が付着することを避けるのが困難である。

また、もう一つの問題点として、ポリエチレンのような柔軟性の高いオレフィン系の樹脂の場合、経時的に、表面処理の劣化が生じやすいという欠点もあり、製品としての具現化が難しく、今もって、商品として汎用化されない理由の一つでもあると考える。

また、袋状容器は、その柔軟さにより、収容した液体の形にならうように変形するので、移動時に生じる小さな慣性力でも反復する波が発生し、これが容器内での前記液状収容物に流れを生じさせて、細胞が接着するのを阻害し、または、接着した細胞が剥離するのを助長する。この傾向は、袋状容器の容量に対して前記液状収容物の量が少ない時に強くでるので、袋状容器の容量に比べて前記液状収容物の量が著しく少ない接着性細胞の培養においては、細胞が接着するのを阻害し、または、接着した細胞をより剥離する傾向が強くなる。これも、袋状容器での接着性細胞の培養をさらに困難としていた。

概要

袋状容器を用いた簡易な方法で効率よく接着性細胞を培養できる接着性細胞の培養方法を提供する。細胞培養面22となる容器壁21を備えた袋状容器2に接着性細胞及び液体培地を含む液状収容物6を封入して接着性細胞を培養する培養方法であり、袋状容器2を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物6の流動を抑制し、この状態を維持して接着性細胞が細胞培養面22に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制しながら接着性細胞を培養し、その後、袋状容器2に気体注入して、袋状容器2の液状収容物6の排出又は袋状容器2へ新たな液状収容物6の注入を行う。

目的

これらの試みの中で、スチレン製のシャーレまたはフラスコと同じように、袋状容器の内面、すなわち、培養面を紫外線照射処理またはコロナ放電処理等により表面処理して親水化し、接着性細胞が接着しやすい培養面を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

細胞培養面となる容器壁を備えた袋状容器接着性細胞及び液体培地を含む液状収容物封入して接着性細胞を培養する培養方法であって、前記袋状容器を押圧して内圧を上昇させることで前記液状収容物の流動を抑制し、この状態を維持して前記接着性細胞が前記細胞培養面に接着することを促し、または、接着した細胞剥離することを抑制しながら前記接着性細胞を培養し、その後、前記袋状容器に気体注入して、前記袋状容器の液状収容物の排出又は前記袋状容器に新たな液状収容物の注入を行う、接着性細胞の培養方法。

請求項2

前記細胞培養面を前記気体に晒した状態で、前記袋状容器の液状収容物の排出又は前記袋状容器に新たな液状収容物の注入を行う、請求項1に記載の接着性細胞の培養方法。

請求項3

前記袋状容器の底面側の容器壁に対向する容器壁が前記細胞培養面となるように、前記袋状容器を反転させた後、前記袋状容器に気体を注入する、請求項1又は2に記載の接着性細胞の培養方法。

技術分野

0001

本発明は、袋状容器を用いて接着性細胞を培養する方法に関する。

背景技術

0002

従来、接着性細胞の培養容器として、一般に、スチレン製の組織培養シャーレまたは組織培養用フラスコが使用されている。これらの容器培養面を形成するスチレン樹脂自体は疎水性であり、接着性細胞は、接着し難く、その結果、細胞はきわめて増殖しにくく、死滅してしまうことも多い。
ところが、組織培養用のシャーレまたはフラスコは、紫外線照射処理またはプラズマ処理等により、培養面を親水化して接着性細胞が培養面に接着するのを容易にしている。

0003

また、袋状容器を利用した細胞を培養する容器が市販されているが、これらのほとんどが、浮遊性細胞を培養するものである。これらの袋状容器は、一般に、柔軟性を有するオレフィン系樹脂により形成されており、内面が疎水性で、その接触角は90°近傍または90°以上であり、一般的に、接着性細胞培養用容器としては適していないと考えられており、通常、これを接着性細胞の培養に使用することはない。
しかし、袋状容器は、閉鎖系で培養できるというメリットがあり、これを接着性細胞の培養に使用しようとする幾つかの試みがなされている。

0004

これらの試みの中で、スチレン製のシャーレまたはフラスコと同じように、袋状容器の内面、すなわち、培養面を紫外線照射処理またはコロナ放電処理等により表面処理して親水化し、接着性細胞が接着しやすい培養面を提供するものがある。例えば、特許文献1では、フィルム表面に紫外線照射して親水化した後で、親水化した面が内面になるように2枚のフィルムを重ね合わせ、周縁シールして接着性細胞培養用の袋状容器を形成している。また、特許文献2及び3では、フィルム表面をコロナ放電処理した後で、親水化した面が内面になるように2枚のフィルムを重ね合わせ、周縁をシールして接着性細胞培養用の袋状容器を形成している。

0005

ところが、これらの何れの方法も、袋状容器の内面すなわち培養面になる面を外気に晒した状態で表面処理しなければならず、その時に、培養面への異物、細菌の付着を避けるのが困難であった。例えば、インフレーション成形によれば、内面に異物、細菌のないフィルムを容易に形成できるが、折角インフレーション成形しても、表面処理するために、将来培養面になる面を外気に晒さなければならず、同面に異物、細菌が付着することを避けるのが困難である。

0006

また、もう一つの問題点として、ポリエチレンのような柔軟性の高いオレフィン系の樹脂の場合、経時的に、表面処理の劣化が生じやすいという欠点もあり、製品としての具現化が難しく、今もって、商品として汎用化されない理由の一つでもあると考える。

0007

また、袋状容器は、その柔軟さにより、収容した液体の形にならうように変形するので、移動時に生じる小さな慣性力でも反復する波が発生し、これが容器内での前記液状収容物に流れを生じさせて、細胞が接着するのを阻害し、または、接着した細胞が剥離するのを助長する。この傾向は、袋状容器の容量に対して前記液状収容物の量が少ない時に強くでるので、袋状容器の容量に比べて前記液状収容物の量が著しく少ない接着性細胞の培養においては、細胞が接着するのを阻害し、または、接着した細胞をより剥離する傾向が強くなる。これも、袋状容器での接着性細胞の培養をさらに困難としていた。

先行技術

0008

特開2009−27944号公報
特開平3−160984号公報
特開平6−9756号公報

発明が解決しようとする課題

0009

そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、一般に、未処理のままでは接着性細胞が培養できないと言われてきた素材により形成された培養面を有する容器、すなわち、接着性細胞が接着し難い培養面を有し、かつ、袋状の容器であっても、接着性細胞の接着性亢進させて培養でき、しかも、接着した細胞が容易に剥離しない培養方法を見出し、本出願人は、先に特願2014−166243明細書で上記の培養方法を提案している。

0010

この培養方法は、細胞培養面となる容器壁を備えた袋状容器に、接着性細胞と液体培地とを含む液状収容物を封入し、容器壁を載置する載置面を有する第1部材と容器壁に対向する容器壁を押さえ押さえ面を有する第2部材とを備えた形状保持手段に袋状容器をセットして、載置面と押さえ面とで袋状容器を押圧して当該容器の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液状収容物の流動を抑制し、この状態を保持することで、接着性細胞が細胞培養面に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制して、培養性能を向上するものである。
この培養方法により、袋状容器の内面を表面処理することなく接着性細胞の培養ができるので、袋状容器を使用した閉鎖系での接着性細胞の培養が可能となった。

0011

しかしながら、上述した袋状容器を用いた培養方法では、培地交換の際などに、容器内の液体培地を排出して容器内部が空になると、細胞培養面となる容器壁とこの容器壁に対向する容器壁とが接触し、この接触で細胞培養面に接着している細胞が剥離して、その後の培養が不能になることがあった。
特に、本出願人が提案している新たな培養方法にあっては、接着性細胞と液体培地とを含む液状収容物を封入した袋状容器を押圧することで、当該容器の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液状収容物の流動を抑制した状態を保持しているため、容器内の液体培地を排出して容器内部が空になると、細胞培養面となる容器壁とこの容器壁に対向する容器壁とが当接し、この当接で細胞培養面に接着している細胞が剥離するおそれがより高かった。
また、内部が空の袋状容器、すなわち、細胞培養面となる容器壁とこの容器壁に対向する容器壁とが接触または当接している袋状容器に、新たな液体培地を注入すると、注入される液体培地の流動で、細胞培養面に接着している細胞が剥離するおそれがあった。
さらに、培養された細胞を回収する際、液体培地を排出した空の容器内に洗浄液剥離液を注入するが、細胞培養面に接着している細胞の細胞間結合が解かれる前に、容器内に注入される洗浄液や剥離液の流動で、細胞接着面に接着している細胞の一部が膜状に捲かれて剥離するおそれがあり、分散した状態での細胞の回収が困難となることがあった。
そのため、袋状容器を用いた接着性細胞の培養は、浮遊性細胞の培養に比べて効率が悪いという問題点があった。
また、上述した袋状容器を用いた培養方法において、容器内の液体培地を排出せずに、新たな液体培地等を注入する場合であっても、細胞接着面に接着している細胞の剥離を抑制できることが望ましい。

0012

そこで、本発明は、袋状容器を用いた簡易な方法で、効率よく接着性細胞を培養できる接着性細胞の培養方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

上記目的を達成する本発明の接着性細胞の培養方法は、細胞培養面となる容器壁を備えた袋状容器に接着性細胞及び液体培地を含む液状収容物を封入して接着性細胞を培養する培養方法であって、袋状容器を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物の流動を抑制し、この状態を維持して接着性細胞が細胞培養面に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制しながら接着性細胞を培養し、その後、袋状容器に気体を注入して、袋状容器の液状収容物の排出又は袋状容器に新たな液状収容物の注入を行う。

0014

本発明において培養し得る接着性細胞は、担体に接着していなければ、増殖できなかったり、死滅したりしてしまう細胞を含むのはもちろんのこと、世代または環境により、担体に接着しなくても成育または増殖可能な細胞であっても、担体に接着させて培養することで何らかの効果を期待して培養する細胞も含まれる。

0015

本発明で使用する袋状容器は、例えば重ね合わされた2枚のフィルムまたはシートの周縁がシールまたは密封された封筒様の形態であって、内容物の形状によって外形が容易に変形する容器であってもよい。また袋状容器は、液状収容物の形状に倣って変形する程度の柔軟性を有する容器であり、例えば、当該容器を移動する時に生じる小さな慣性力で、液状収容物が容器壁と共に変形可能な容器であってもよい。

0016

この袋状容器の細胞培養面とは、細胞が接着して成育または増殖する面であり、容器壁の内面自体であってもよく、細胞の接着性を向上する表面処理を施した面や細胞の接着性を向上する物質を存在させた面などであってもよい。
本発明において袋状容器に注入する気体は、コンタミネーション防止の処理が施された気体が好適であり、その注入量は、袋状容器内の液状収容物を排出して容器内部が空になったときに、細胞培養面となる容器壁とこの容器壁に対向する容器壁との間に気体を存在させることで、両容器壁の接触または当接が回避できる量とするのが好適である。

0017

本発明の接着性細胞の培養方法では、袋状容器を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物の流動を抑制するには、容器壁を載置する載置面を有する第1部材と、容器壁に対向する容器壁を押さえる押さえ面を有する第2部材と、を備えた形状保持手段を用い、この形状保持手段に袋状容器をセットし、載置面と押さえ面とで袋状容器を押圧するのが好適である。
袋状容器の内圧を押圧により上昇させると、袋状容器の容器壁に張力が生じ、袋状容器内の液状収容物があたかも周囲を剛体で覆われたかのようになり、容器壁近傍の流動性が失われる。接着性細胞の培養では、一般に培地量が少ないので、液状収容物は狭い隙間に押し込められたような状態になり、全ての液状収容物の近傍が容器壁で占められるようになって、液状収容物全体としての流動が抑制される。
それ故、この状態を維持することによって、接着性細胞の接着性を亢進させて培養でき、また、細胞培養面に接着した細胞が容易に剥離することを抑制でき、この状態で接着性細胞を良好に培養することができる。

0018

本発明の接着性細胞の培養方法では、細胞培養面を袋状容器に注入した気体に晒した状態で、袋状容器の液状収容物の排出又は袋状容器への新たな液状収容物の注入を行うのが好適である。その場合、袋状容器に気体を注入した後に、底面側の容器壁に対向する容器壁が細胞培養面となるように袋状容器を反転させてもよく、袋状容器を反転させた後、袋状容器に気体を注入してもよい。後者によれば細胞培養面上の接着性細胞をより安定に保つことができる。

発明の効果

0019

本発明の接着性細胞の培養方法によれば、袋状容器を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物の流動を抑制した状態を維持できるので、接着性細胞の接着性を亢進させて培養でき、また、細胞培養面に接着した細胞が容易に剥離することを抑制できる。
そして、培地交換、細胞の回収などのために、袋状容器の液状収容物の排出や注入を行う際には、袋状容器に気体を注入してから行うので、容器内の液状収容物を排出して容器内部が空になっても、細胞培養面となる容器壁とこの容器壁に対向する容器壁との間に気体が存在するため、この気体の存在により両容器壁の接触または当接が回避できる。よって、両容器壁の接触または当接による接着性細胞の剥離を防止することができる。

0020

また、細胞培養面を袋状容器中の気体に晒した状態で、液状収容物の排出又は注入を行えば、細胞培養面に接着した接着性細胞と流動する液状収容物との干渉を避けることができる。そのため、液状収容物の流動による接着性細胞の剥離を防止することができ、より好適である。
従って、袋状容器を用いた簡易な方法で、足場依存性の高い接着性細胞を効率よく培養することが可能である。

図面の簡単な説明

0021

本発明の実施形態において液状収容物を収容した袋状容器を培養用トレイにセットした状態を示す斜視図である。
図1の一部を断面で示した一部断面図である。
図1の培養用トレイの分解斜視図である。
(a)乃至(e)は、液状収容物の排出方法の一例を説明する図である。
(a)乃至(e)は、液状収容物の注入方法の一例を説明する図である。
(a)乃至(c)は、液状収容物の注入方法の他の例を説明する図である。
(a)乃至(d)は、液状収容物の排出方法の他の例を説明する図である。
(a)乃至(e)は、液状収容物の排出方法のさらに他の例を説明する図である。
(a)乃至(g)は、液状収容物の追加方法を説明する図である。
実施例1における細胞の状態を示す顕微鏡写真であり、(a)は細胞播種から24時間経過後の状態を示し、(b)は細胞播種から4日後の状態を示す。
比較例1における細胞の状態を示す顕微鏡写真であり、(a)は細胞播種から24時間経過後の状態を示し、(b)は細胞播種から4日後の状態を示す。
実施例2における細胞の状態を示す顕微鏡写真であり、(a)は細胞播種から4日後の状態を示し、(b)は細胞回収時の剥離直後の状態を示す。
比較例2における細胞の状態を示す顕微鏡写真であり、(a)は細胞播種から4日後の状態を示し、(b)は細胞回収時の剥離直後の状態を示す。

0022

以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の培養方法では、図1乃至図3に示すように、細胞培養面22となる容器壁21を備えた袋状容器2に、接着性細胞と液体培地とを含む液状収容物6を封入して、容器壁21を載置する載置面31を有する第1部材3と前記容器壁21に対向する容器壁21を押さえる押さえ面42を有する第2部材4とを備えた形状保持手段1に袋状容器2をセットし、載置面31と押さえ面42とで袋状容器2を押圧して当該袋状容器2の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液状収容物6の流動を抑制し、この状態を保持してインキュベートすることで、接着性細胞が細胞培養面22に接着することを促し、または、接着した細胞が剥離することを抑制して、培養性能を向上する。なお、本発明において、液状収容物は液体収容物を含むものとする。

0023

[液状収容物]
本実施形態の液状収容物6は、袋状容器2に収容され、流動性を有する液体である。培養開始時に収容される液状収容物6は、接着性細胞、液体培地を主成分とする液体であって、これに、血清、その他の添加剤指示薬等が含まれていても構わない。培養開始又は培養終了後に注入される液状収容物6は、例えば液体培地、接着性細胞やその浮遊液緩衝液生理食塩水等の洗浄液、トリプシンコラゲナーゼ等の細胞剥離液、各種指示薬などであり、これらの1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。

0024

[袋状容器]
本実施形態の袋状容器2は、互いに対向する一対の容器壁21,21間に収容空間が形成された扁平形状の樹脂製袋状容器である。周囲には収容空間と外部とを連通するためのポート23及びチューブ24が設けられている。チューブ24の端部は、液状収容物6を収容空間内に収容または排出する際に、シリンジや他のチューブ等を接続できるとともに密封可能な接続部25となっている。

0025

ここで、柔軟性を有するとは、例えば液状収容物6を収容した状態で一部を支持した際、自重により容器壁21が変形する程度の柔軟性を有することを意味し、好ましくは、容器壁21の変形により、容器内への気体の出入りなしに、収容されている液状収容物6の略全量を排出可能な程度の柔軟性を意味する。

0026

袋状容器2の各容器壁21,21はそれぞれ樹脂により形成されており、培養時に載置面31に接面する容器壁21の内面が細胞培養面22となる。細胞培養面22は培養時に接着性細胞が接着し易い材料からなる容器壁21の表面であってもよく、容器壁21の表面に細胞の接着性を向上する表面処理が施された面であってもよい。さらに細胞の接着性を向上する表面処理が施されていない接着性細胞が接着し難い面であってもよい。

0027

ここで、細胞の接着性を向上する表面処理とは、例えば、袋状容器2の容器壁21を構成する樹脂フィルム樹脂成形品の表面に、紫外線照射、コロナ放電プラズマ放電電子線などの高エネルギー電磁波や粒子線照射することで、樹脂表面に親水性官能基または極性基を生じさせる処理である。

0028

なお、袋状容器2の容器壁21の少なくとも一部、好ましくは全部が、細胞の成育に必要な酸素の供給と細胞の代謝産物二酸化炭素の排出とを行えるガス透過性を有しているのがよい。容器壁21に要求されるガス透過性は、容器内に収容される細胞の種類と細胞の目標増殖数、培養目的、培養容器の寸法によって大幅に変わるので、一概に数値限定できるものではなく、培養目的に合わせて、容器壁の素材、容器壁の面積、容器壁の厚さを選定して調整すればよい。また、収容空間内の細胞の形、細胞の状態、培養の進み具合等を顕微鏡等で観察可能な程度の透明性を有しているのがよい。

0029

この実施形態の容器壁21を構成する材料としては、例えば低密度ポリエチレン樹脂低密度直鎖状ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体、及び、これらの混合物により形成されたフィルムまたはシート、さらには、前記素材を少なくとも細胞培養面22に用いた多層フィルムまたはシートなどの樹脂材料が挙げられる。

0030

[形状保持手段]
本実施形態の形状保持手段1は、液状収容物6が封入された袋状容器2を載置面31と押さえ面42とで押圧して袋状容器2の内圧を上昇させ、この内圧の上昇により液状収容物6の流動を抑制する手段である。この形状保持手段1は、インキュベートの間連続して袋状容器2を保持するだけでなく、そのまま細胞培養中の各操作を行える構造となっている。

0031

この形状保持手段1は図3に示すように、トレイ状の第1部材3と袋状容器2を押圧可能に付勢部材43が設けられた第2部材4と、第1部材3と第2部材4の距離を保持し、押圧状態を維持するための蓋体5から構成されている。第1部材3と蓋体5は、第1部材3に設けられた突起52と蓋体5に設けられた突起受け51により第1部材3に固定される。

0032

第1部材3は、袋状容器2を載置する載置面31と、袋状容器2に連結されたチューブ24等の引出口32を有している。載置面31は平面状に設けられており、培養時には略水平に維持され、袋状容器2は、載置面31に一方の容器壁21が当接した状態で載置される。なお、載置面31は、必ずしも平坦面である必要はなく、多少の凹凸があってもよい。また、載置面31に、後述する通気孔と同様の通気孔を設けてもよい。

0033

第2部材4は、押さえ板41と付勢部材43からなり、押さえ板41は、載置面31に対向して配置される押さえ面42を有し、バネ等の付勢部材43が組み込まれたピン44を介して蓋体5に移動可能に支持され、且つ、蓋体5から離間する方向に付勢されている。
袋状容器2を第一部材3に載置して蓋体5を閉じ、突起52と突起受け51で第1部材3と蓋体5を固定することで、載置面31に載置された一方の容器壁21に対向する他方の容器壁21を押さえ面42で押圧する。

0034

押さえ板41及び押さえ面42の形状は袋状容器2を押圧できれば特に限定されないが、押さえ板41と当接する容器壁21のガス透過性を確保するために、押さえ板41には複数の通気孔45を設けたり、通気性を有する材料により形成したりすることができる。

0035

形状保持手段1の第1部材3、蓋体5、押さえ板41は、保持中に袋状容器2が変形することを防止できる程度の強度を有する。例えば、これらを硬質な材料により形成するのが好ましい。また、インキュベート期間中に保持された袋状容器2の内部を観察し易くするため、透明性を有する材料により形成されているのがよい。

0036

このような形状保持手段1では、液状収容物6を収容した袋状容器2を第1部材3の載置面31と押さえ板41の押さえ面42との間に配置することで、付勢部材43の付勢力に応じて載置面31と押さえ面42とで袋状容器2を押圧して容器の内圧を上昇させた状態で保持することができる。

0037

[培養方法]
次に、このような袋状容器2及び形状保持手段1を用いて接着性細胞を培養する方法について説明する。

0038

まず、予め液体培地を収容した袋状容器2と、予め接着性細胞の細胞浮遊液充填したシリンジを準備する。袋状容器2のチューブ24の接続部25に前記シリンジを接続して、チューブ24を経由して袋状容器2内に接着性細胞の細胞浮遊液を注入し、チューブ24を密封して、接着性細胞と液体培地とを含む液状収容物6を封入した袋状容器2を作製する。このとき袋状容器2の収容空間内には気体が入らない方がよい。容器内での気体の移動は液状収容物6に流れを生じさせるからである。

0039

図1乃至図3に示すように、袋状容器2の一方の容器壁21を第1部材3の載置面31に載置し、他方の容器壁21に押さえ板41の押さえ面42を当接させて蓋体5を閉じる。すなわち、袋状容器2を形状保持手段1に横に寝かした状態でセットする。

0040

袋状容器2は、セットされた状態では、付勢部材43の付勢力に応じて載置面31と押さえ面42とで押圧され、これにより容器の内圧が上昇する。容器内の内圧が上昇すれば、容器壁21に接液面と平行方向の張力が生じ、袋状容器2は、あたかもその容器壁21が剛体であるかのように一定の形状に保持される。
袋状容器2内の液状収容物6は、容器壁21が剛体のように維持されることで、慣性力によって袋状容器2を変形させることができず、すなわち、液状収容物6は移動する余地がないので、流動が規制される。
この実施形態では、このようにして細胞培養面22近傍の液状収容物6の流動を阻止し、または、制限した状態で接着性細胞を培養する。

0041

袋状容器2の内圧は、慣性力の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、液状収容物6の質量、袋状容器2の移動時の加速度、または、袋状容器2が受ける振動の強さについては、大きければ大きいほど内圧を高く設定する。すなわち、液状収容物6の慣性力による袋状容器2の変形を抑えられるだけの内圧を袋状容器2に与える。
また、培養操作上、袋状容器2を傾斜させたり、反転させたりする場合には、収容空間の高低差により生じる液圧の変化に対して容器壁が実質的に変形しない程度に加圧する。この実施形態では、袋状容器2を反転させても液状収容物6を収容した袋状容器2の形状が保たれる内圧にしている。

0042

接着性細胞は、自ら生産し、容器壁21の細胞培養面22に付着させた接着成分を介して細胞培養面22に接着し、初めて生育、または、増殖する。そのため、接着性細胞と細胞培養面22との位置関係を保持するだけでなく、細胞が生産した接着成分を、周囲に拡散させずに、接着細胞とその近傍の細胞培養面22周辺に集中して保持することが望ましい。

0043

培地の流動性を規制することで、接着性細胞と細胞培養面22との位置関係を保持し、細胞が生産した接着成分を周囲に拡散させずに、接着細胞とその近傍の細胞培養面22周辺に集中して保持する。これにより接着性細胞が細胞培養面22に接着し易くなる。

0044

細胞培養面22においては、細胞培養面22近傍の液状収容物6が流動すれば、細胞培養面22に接着した細胞は、液状収容物6から大きな摩擦力剪断力を受けて剥離することがあり、培養容器が袋状容器の場合には、容器壁21の変形によっても細胞が剥離することがある。

0045

特に、培養後期においては、細胞が増殖して密集し、細胞相互の接着が進行し、細胞培養面22に膜状の細胞集合体を形成する。この状況下で、液状収容物6から大きな摩擦力や剪断力を受けると、その力は、膜状の細胞集合体の端に集中し、端から捲れて巻き込みながら剥離し、利用不可能な細胞塊を形成する。
ところが、この実施形態では、培地の流動性を規制するため、培養後期まで、剥離せずに、利用可能な細胞形態を維持しながら培養することができる。

0046

接着性細胞の細胞培養面22への接着性は、細胞種及び細胞培養面22の材質により様々であるので、接着性細胞が影響を受ける液状収容物6の流動の程度は様々である。そのため本実施形態の培養方法では、容器壁21の変形を阻止または制限しない培養方法と比較し、次の2点が明らかであれば、細胞培養面22近傍の液状収容物6の流動を阻止し、または、制限しているとみなすことができる。
第1の点は、液状収容物6の流動性が低下していることであり、第2の点は、その液状収容物6の流動性よりも細胞の細胞培養面22への接着性若しくは増殖性が勝っていること、または、細胞培養面22に接着した細胞の剥離抵抗性が勝っていることである。

0047

本実施形態では、このように袋状容器2の内圧を上昇させた状態を維持しつつインキュベートする。ここでは袋状容器2をセットした形状保持手段1を、載置面31が略水平となるようにインキュベータ内静置して、所定温度で所定時間保持することで行う。
これにより、載置面31に当接させた一方の容器壁21の内面側である細胞培養面22に接着性細胞が接着して培養される。

0048

インキュベート期間中には、細胞の形、細胞の状態、培養の進み具合等を顕微鏡で観察するなど、袋状容器2を移動させて各種の操作が行われることがある。その場合でも、形状保持手段1に袋状容器2をセットした状態を維持したまま各種の操作を行えることが好ましい。
ここでは、インキュベートとは、培養容器を細胞および培養液と共にインキュベータ内に静置することを意味し、インキュベート期間とは、細胞の播種から細胞の取り出しまでの一連のインキュベートが終了するまでの期間を意味し、この期間には、細胞の観察、培地または添加剤の追加または交換等により、インキュベートを一時的に中断する期間も含まれる。

0049

本実施形態における培養方法では、このようにしてインキュベートして接着性細胞を袋状容器2の細胞培養面22に接着または増殖させ、所定期間経過した後で液体培地を交換し、継続してインキュベートすることを1乃至複数回繰り返す。

0050

液体培地を交換するには、例えば図4及び図5に示すようにして行うことができる。この実施形態では、液体培地を交換するための一連の操作を、袋状容器2を形状保持手段1にセットした状態のまま、即ち、載置面31と押さえ面42とで袋状容器2を押圧した状態のままで行う。
ここでは液状収容物6を封入した袋状容器2を形状保持手段1にセットされた状態でインキュベートした後、図4に示す液状収容物の排出方法により、液状収容物6を排出する。

0051

まず、図4(a)に示すように、袋状容器2のチューブ24の接続部25にシリンジ17を接続し、(b)に示すように、袋状容器2を形状保持手段1ごとゆっくりと上下反転させ、細胞培養面22を上側に配置する。
図4(c)に示すように、シリンジ17によりチューブ24から袋状容器2内に気体を注入する。これにより液状収容物6の液面を細胞培養面22に接着した細胞から離間させる。
次に、図4(d)に示すように、液状収容物6の液面を細胞培養面に接着した細胞から離間させた状態を維持しつつ、シリンジ17によりチューブ24から袋状容器2の液状収容物6を排出する。このとき気体は、袋状容器2内に残存させ、袋状容器2が形状保持手段1の載置面31と押さえ面42とで押圧されていても、この気体の存在により、両容器壁21,21が当接しないように維持する。なお、袋状容器2内への気体の注入に関しては、以下に示す実施形態においても、同様である。
その後、図4(e)に示すように、シリンジ17をチューブ24から取り外す。

0052

次に、図5に示す液状収容物の注入方法により、新たな液体培地等を含有する新たな液状収容物6を注入する。ここでは、図5(a)に示すように、新たな液状収容物6が収容されたシリンジ17を袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続する。
そして、図5(b)に示すように、袋状容器2内に気体が残存したままの状態で、シリンジ17によりチューブ24から袋状容器2内に新たな液状収容物6を注入する。このとき液状収容物6の液面を、細胞培養面22に接着した細胞から離間させた状態を維持しつつ液状収容物6を注入する。

0053

次に、図5(c)に示すように、シリンジ17によりチューブ24から袋状容器2内の気体を排出することで、細胞培養面22に接着している接着性細胞を新たな液状収容物6と接触させ、袋状容器2内が液状収容物6で略満たされた状態にする。
そして図5(d)に示すように、袋状容器2を形状保持手段1ごと再びゆっくりと上下反転させ、細胞培養面22を下側に配置し、その後(e)に示すように、シリンジ17をチューブ24から取り外す。これにより培地交換を終了する。

0054

このような培地交換後は、再び、図2に示すように、形状保持手段1を載置面31が略水平となるようにインキュベータ内に静置し、その状態を維持して再びインキュベートする。そして、1回乃至複数回のインキュベート及び培地交換を経て、細胞培養面で十分に接着性細胞を培養した後、培養された接着性細胞を回収する。

0055

次に、培養された接着性細胞を回収する方法について説明する。
接着性細胞を回収するには、培地交換の操作と同じく、図4(a)乃至(e)に示す液状収容物の排出方法により、袋状容器2にシリンジ17を接続して袋状容器2を上下反転させ、細胞培養面22を上側に配置し、袋状容器2内に気体を注入して液状収容物6の液面を細胞培養面22に接着した細胞から離間させる。そして袋状容器2の液状収容物6を排出し、シリンジ17を取り外すことで、液状収容物6の排出を行う。

0056

次に、図6(a)乃至(c)に示す他の液状収容物の注入方法により、液状収容物6としての細胞剥離液を注入する。
ここでは図6(a)に示すように、細胞剥離液が収容されたシリンジ17を袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し、(b)に示すように、袋状容器2内の気体が存在する状態で、シリンジ17によりチューブ24から袋状容器2内に細胞剥離液を注入する。このとき、細胞剥離液の液面を細胞培養面22に接着した細胞から離間させた状態を維持しつつ細胞剥離液を注入する。

0057

そして図6(c)に示すように、袋状容器2を形状保持手段1とともに再びゆっくりと上下反転させ、細胞培養面22を下側に配置することで、細胞培養面22に接着した細胞に細胞剥離液を接触させるとともに分散状態とし、細胞剥離液に懸濁した状態で接着性細胞を回収する。
その後、他の容器等を利用して固液分離し、洗浄液を用いて十分に洗浄した後、分離して回収する。これにより培養された接着性細胞の回収操作を完了する。

0058

作用効果
以上のような本実施形態の接着性細胞の培養方法によれば、培養時には、袋状容器2を押圧して内圧を上昇させることで、液状収容物6の流動を抑制した状態を維持できるので、接着性細胞の接着性を亢進させて培養でき、また、細胞培養面22に接着した細胞が容易に剥離することを抑制できる。

0059

そして、培地交換時や細胞の回収時に袋状容器2の液状収容物6の排出や注入を行う際には、袋状容器2に気体を注入してから行うので、袋状容器2内の液状収容物6を排出して容器内部が空になっても、細胞培養面22となる容器壁21とこの容器壁21に対向する容器壁21との間に気体が存在するため、この気体の存在により両容器壁21,21の当接が回避できるので、両容器壁21,21の当接による、細胞培養面22に接着している接着性細胞の剥離を防止することができる。
特に、この実施形態では、袋状容器2に気体を注入して細胞培養面22を気体に晒した状態で、液状収容物6の排出や注入を行うので、細胞培養面22に接着した接着性細胞と流動する液状収容物6との干渉を避けることができるため、液状収容物6の流動による接着性細胞の剥離を防止することができる。

0060

液状収容物6の排出時に比べ、液状収容物6の注入時には、注入されて流動する液状収容物6に細胞が接触すると大きな摩擦力や剪断力が作用する。そのためこの実施形態では、液状収容物6の注入時に、細胞培養面22を袋状容器2中の気体に晒して行うことが特に好適である。

0061

[変形例]
なお、上記実施形態は本発明の範囲内で適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、液状収容物6の注入操作と液状収容物6の排出操作とを複数回行い、それぞれに本発明を適用した例について説明したが、何れか1回の操作に本発明を適用することができる。
さらに、液状収容物6の注入操作と液状収容物6の排出操作の双方を行う必要はなく、液状収容物6の注入操作だけであっても、液状収容物6の排出操作だけであっても本発明の範囲内である。

0062

上記実施形態では、液状収容物6の注入時と液状収容物6の排出時とで、それぞれ気体の注入及び反転操作を行ったが、何れか一方でのみ気体を注入して細胞培養面22を気体に晒してもよく、さらに反転操作を全く行わなくてもよい、
例えば液状収容物6の排出を穏やかに行うことで細胞の剥離を防止できるのであれば、図7(a)に示すように、袋状容器2のチューブ24の接続部25にシリンジ17を接続し、図7(b)に示すように、シリンジ17により袋状容器2内に気体を注入し、図7(c)に示すように、そのまま反転させることなくシリンジ17により袋状容器2の液状収容物6を排出させることも可能である。
この場合も、気体を注入してから液状収容物6を排出させるため、この気体の存在により両容器壁21,21の当接が回避できるので、両容器壁21,21の当接による接着性細胞の剥離を防止することができる。
しかも袋状容器2内に気体が存在していれば、容器壁21,21同士が離間しているため、袋状容器2内の液状収容物6を完全に排出することが容易となる。
さらに、このように液状収容物6を排出させた後、反転させて図5或いは図6に示される液状収容物の注入方法により液状収容物6を収容することも可能である。

0063

上記実施形態では、液状収容物6の排出操作で容器を反転させる場合、気体注入前に反転させた例と液体排出後に反転させる例について説明したが、図8(a)に示すように、袋状容器2のチューブ24の接続部25にシリンジ17を接続し、図8(b)に示すように、シリンジ17により袋状容器2内に気体を注入し、図8(c)に示すように、袋状容器2を反転させ、その後に図8(d)に示すように、シリンジ17により袋状容器2の液状収容物6を排出させることも当然に可能である。

0064

上記実施形態では、培養開始後に液状収容物6を注入する場合には、袋状容器2内に既に収容されている液状収容物6の排出操作の後で新たな液状収容物6を注入したが、袋状容器2内に収容されている液状収容物6の排出操作無しで、例えば液体培地のような液状収容物6を追加することも可能である。
例えば図9(a)に示すように、シリンジ17を接続し、図9(b)に示すように、袋状容器2を上下反転させ、図9(c)に示すように、気体を注入して細胞培養面22を気体に晒した状態にする。この状態で図9(d)に示すように、袋状容器2内に気体を残存させたまま、新たな液状収容物6が収容されたシリンジ17を袋状容器2に接続し、液状収容物6を注入して追加する。その後、図9(e)に示すように、シリンジ17により袋状容器2内の気体を排出し、図9(f)に示すように、再び袋状容器2反転させて細胞培養面22を下側に配置して、図9(g)に示すように、シリンジ17を取り外して、液状収容物6を追加することもできる。

0065

上記実施形態では、細胞を回収する際、袋状容器2内に液状収容物6を注入して接着性細胞の懸濁液の状態で回収したが、特に限定されるものではなく、懸濁液にすることなく細胞培養面22に接着した接着性細胞のままで回収することも可能である。

0066

上記実施形態では、図5のように、細胞培養面22を気体に晒した状態で液体培地等の液状収容物6を注入し、気体を排出させて細胞培養面22の接着性細胞を液状収容物6に接触させ、その後に袋状容器2を上下反転させる例について説明したが、気体を排出する前に袋状容器2をゆっくり上下反転させることで、細胞の剥離を抑制できれば、上下反転後に気体を排出することも可能である。

0067

上記実施形態では、袋状容器2を押圧して内圧を上昇させることで液状収容物6の流動を抑制するために、図1乃至図3に示すような形状保持手段1を用いた例について説明したが、袋状容器2を押圧するための手段や、袋状容器2の形状を安定化させるための手段は何ら限定されない。例えば、形状保持手段として、第1部材としてのトレイ本体3及び第2部材としての押さえ板4を備えた培養用トレイの例によらず、容器壁を載置する載置面31と、容器壁を押さえて内圧を上昇させる押さえ面42と、を備えたものであれば適宜使用可能である。

0068

上記実施形態では、一つの形状保持手段1に一つの袋状容器2を保持して、培養を行った例について説明したが、袋状容器2の数や袋状容器2を保持する部材の数は、任意に設定可能である。例えば、複数の形状保持手段1にそれぞれ一つの袋状容器2を保持させてもよく、一つの形状保持手段1に複数の袋状容器2を保持させることも可能である。さらに複数の形状保持手段1や複数の袋状容器2の配置などについても適宜設定可能である。

0069

上記実施形態では、袋状容器2として、接着性細胞が接着し難い材料からなり、細胞の接着性を向上する表面処理が施されていない容器壁21を備えたものを使用し、液状収容物6の排出又は注入を行いつつ、接着性細胞を培養し得るが、本発明は、例えば細胞培養面22を表面処理し、接着性細胞が接着し易い容器壁21を備えた袋状容器2を使用して、より効率よく接着性細胞を培養することも勿論可能である。
上記実施形態では、袋状容器2の細胞培養面22を構成する側の容器壁21として、平坦な内面形状を有するものを例示したが、この容器壁21の内面の面方向に複数の凹部を設け、各凹部の底面がそれぞれ細胞培養面22となるように構成することも可能である。

0070

以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
図1乃至図3に示すような袋状容器2及び形状保持手段1を用い、接着性細胞を培養した。

0071

(培養準備)
接着性細胞は、正常ヒト新生児包皮線維芽細胞クラボウ社製)を使用した。
液体培地は線維芽細胞用合成培地EIDF(+)(ニプロ社製、商標)を用い、牛胎児血清を5wt%となるように添加し、調製した。

0072

袋状容器2は、エチレン酢酸ビニル共重合体(東ソー社製ウルトラセン630(商標))をインフレーション成形により形成した厚さ0.14mmのシートからなる一対の容器壁21,21を有し、容器壁21,21間に形成される収容空間の最大幅及び最大長さが5cm×10cmで、細胞培養面22の面積は約50cm2であった。なお、細胞培養面22は、接着性細胞が接着し易くなる表面処理が施されておらず、細胞培養面22の水の接触角は93度であった。

0073

(細胞播種)
袋状容器2に予め前記液体培地に25mlの液状収容物6を封入しておき、細胞浮遊液をシリンジで注入することで、細胞播種濃度が5000cell/cm2となるように接着性細胞を播種し、同時に、袋状容器2内に空気が残留しないように、混入した空気を除去した。この時、袋状容器2の二つの容器壁21,21間の寸法は外寸で約5mmであった。

0074

袋状容器2を横に寝かせた状態で形状保持手段1にセットし、一対の容器壁21,21を載置面31と押さえ面42とで押圧した。セット状態では袋状容器2の内圧は、300mm水柱であった。

0075

培養過程
袋状容器2を形状保持手段1にセットした状態のまま、インキュベータに収容し、37℃、二酸化炭素濃度5%、湿度95%以上の加湿下で、4日間インキュベートした。
インキュベート期間中には、袋状容器2を形状保持手段1にセットした状態のまま、インキュベータから取り出して顕微鏡により細胞の接着状態を観察した。
また、インキュベート期間中には、図4に示す液状収容物の排出方法と図5に示す液状収容物の注入方法とを使用した培地交換方法により、培養開始3日目に培地交換を1回行った。この培地交換では、液状収容物20mlを抜き取って廃棄し、新たに20mlの新鮮培地を注入した。

0076

インキュベート期間経過後図4に示す液状収容物の排出方法と図6に示す液状収容物の注入方法とを使用した細胞回収方法により、細胞を取り出した。
10mlの無菌空気の入ったシリンジを袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し、細胞培養面22が上側になるように袋状容器2を形状保持手段1ごとゆっくりと反転し、袋状容器2に空気を注入して、袋状容器2の液状収容物6の液面を細胞培養面22に接着した細胞から離間させてから、チューブ24を介して袋状容器2の液状収容物6をゆっくりと抜き出した
その後、細胞剥離液としてPBSで10倍希釈したトリプシン(0.25%Trypsin-EDTAGibco)3mlを収容したシリンジを袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し替えて、袋状容器2内にゆっくりと細胞剥離液を注入した。次に、ゆっくりと反転して細胞培養面22が下側になるように戻して、すなわち、細胞剥離液が細胞面にゆっくりと、均一に広がるようにして、細胞剥離液と細胞を接触させた。

0077

1分後、細胞分散用の液体として、PBS10mlを収容したシリンジを袋状容器2のチューブ24の接続部25に接続し替えて、袋状容器2内にゆっくりとPBSを注入し、細胞を分散させてからシリンジに抜き出し、回収した。

0078

培養結果
細胞播種から24時間経過後と4日後の細胞回収直前の顕微鏡写真を、図10(a)と図10(b)に示す。また、細胞の生育状態の評価及び細胞濃度を表1に示す。
図10(a)より、細胞播種から24時間後、殆どの細胞が細胞培養面に接着していて、細胞の凝集は見られなかった。また、図10(b)より、4日後の細胞回収直前においては、コンフルとなっていたが、捲れて巻きながら剥離するもの、剥離して細胞塊になったものは見られなかった。そのため、トリプシンによる回収操作で、細胞を個々に分散した状態で回収することができ、細胞数計数もできた。表1より、回収された細胞総数は、細胞播種時より十分に増加しており、細胞が順調に増殖したことが確認できた。

0079

[比較例1]
形状保持手段1を用いずに、液状収容物6を封入した袋状容器2を平らアクリル板上に、押圧をかけずに載置して培養したが、細胞が浮遊して細胞塊を形成していたため、培地交換及び細胞回収操作を行うことができなかった。
このため、実施例1で行った3日目の培地交換及び4日後の回収操作は行っていないが、それ以外については、全て実施例1と同様に接着性細胞を培養した。

0080

細胞播種から24時間経過後と4日後の細胞回収直前の顕微鏡写真を図11(a)と図11(b)に示す。また、細胞の生育状態の評価及び細胞濃度を表1に示す。
図11(a)より、細胞播種から24時間後、細胞培養面22に接着している細胞もあるが、その数は少なく、細胞培養面22に接着せずに浮遊して細胞の凝集塊を形成するものもあった。また、図11(b)より、4日後においては、接着している細胞は見られず、少し大きくなった細胞の凝集塊がまばらに見られた。量的な観点から見て、これは、細胞塊が増殖した結果ではなく、播種した細胞が凝集した結果と考えられる。
なお、この細胞塊は、トリプシンで処理しても個々の細胞に分散しないので、細胞数の特定にまで至らなかった。

0081

0082

[実施例2]
実施例1で培養した接着性細胞を、図6に示す液状収容物の注入方法によりトリプシンで処理して回収した。
細胞播種から4日後と細胞回収時の剥離直後との観察結果を示す顕微鏡写真を図12(a)及び図12(b)に示す。
図12(a)、図12(b)から明らかな通り、4日後殆どの接着性細胞が細胞培養面に接着していて凝集なども見られず、回収時の剥離直後には、細胞が分散した状態で剥離していた。また細胞回収濃度が十分に増加しており細胞が増殖していて、効率よく回収できた。さらに回収された細胞の一部を使用した継代も可能であった。

0083

[比較例2]
袋状容器の反転及び気体の注入を行わずに、ゆっくりと細胞剥離液を注入して細胞回収を行う他は、全て実施例2と同様に接着性細胞を培養して回収した。
培養結果として、細胞播種から4日後の観察結果を示す顕微鏡写真を図13(a)及び図13(b)に示す。

実施例

0084

図13(a)から明らかなとおり、比較例2では4日後には、実施例2と同程度に接着性細胞が細胞培養面に接着していて凝集なども見られなかった。しかし図13(b)のように、回収時の剥離直後には、細胞が一部膜状に剥離していた。そのため、膜状に剥離した部分の細胞は分散状態にできず、細胞数の計数は不可能であった。また、継代も不可能であった。

0085

1形状保持手段
2袋状容器
3 第1部材
4 第2部材
5蓋体
6液状収容物
21容器壁
22細胞培養面
23ポート
24チューブ
25 接続部
31 載置面
32引出口
41押さえ板
42押さえ面
43付勢部材
44ピン
45通気孔
51突起受け
52 突起

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ