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技術 肺炎球菌における発現プロモーター

出願人 国立大学法人山口大学
発明者 荻野英賢長谷川明洋
出願日 2014年10月28日 (6年1ヶ月経過) 出願番号 2014-219149
公開日 2016年5月19日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 2016-082934
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理
主要キーワード 複数視野 C領域 画像統合 B領域 微分干渉像 D領域 部分切断 溶血毒
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年5月19日)のものです。
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図面 (10)

課題

これまで大腸菌など一般的な細菌では高発現系の開発が進んでいるが、肺炎球菌は基本的な発現システムが異なるため、一般的な細菌の高発現系を肺炎球菌で利用しても、肺炎球菌で高発現させることができない。肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現できるプロモーターの提供。

解決手段

(a)131bpからなる特定の塩基配列(SP)を含有するポリヌクレオチド;(b)上記の塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチド;の(a)又は(b)に示すポリヌクレオチドからなるプロモーター。

概要

背景

肺炎は日本における死亡原因の9.9%を占め、がん心疾患に次ぐ第3位の疾患である。そして、市中における肺炎原因菌としてもっとも頻度が高いのが肺炎球菌である。

この肺炎球菌は通性嫌気性グラム陽性双球菌である。肺炎球菌は様々な病原性因子溶血毒IgA分解酵素など)を持ち、特に莢膜による宿主免疫細胞貪食細胞)からの回避及び補体が形成する膜侵襲複合体からの防御が、宿主定着(感染)に重要である。莢膜は単純構造のため抗原性が弱く濾胞B細胞によるT細胞依存性の抗体生産が行なわれず、親和性の高いIgG抗体産生B細胞が発現しない。代わりに、漿膜腔に局在するB1細胞や脾臓辺縁帯B細胞によるT細胞非依存性抗体産生が行なわれ、親和性の低いIgM抗体による応急的な免疫防御機構誘導する。IgM抗体が肺炎球菌莢膜に結合すると、補体系及び細胞性免疫賦活化して肺炎球菌を駆除することができるが、本抗体産生機構においてはメモリーB細胞が作られないために長期の「免疫記憶」が起こらず、肺炎球菌による再感染の危険を常にはらんでいる。さらに、肺炎球菌の莢膜は判明しているだけでも90種類以上に及ぶため、一度肺炎球菌感染を起こしても、異なる血清型のものに感染する可能性がある。

このように肺炎球菌は巧みな免疫回避機構により感染を成立させるため、免疫機能衰え高齢者や免疫機能が未発達乳幼児においては特に危険な細菌である。さらに、近年、第一選択薬として用いられるβ−lactam系の抗生物質耐性の肺炎球菌が報告されており、治療が難しくなってきている。現在、易感染者における効果的な感染予防のために、肺炎球菌の莢膜多糖を主成分とするワクチン及び莢膜多糖にアジュバントを付加したワクチンが開発されている。これらワクチンは海外での効果的な肺炎球菌感染予防実績を有し、我が国においても数年前に認可され、ワクチン接種が広まりつつある。

肺炎球菌の病原性を理解するためには、肺炎球菌内で病原因子遺伝子発現を調節し解析することが必要である。これまでに外来遺伝子を細胞内で発現させるためのプロモーターは、ヒトや大腸菌において、いくつか実用化されている。例えば、CMV−IEプロモーターは、ヒトに不顕性感染するサイトメガロウイルス由来のプロモーターであり、哺乳類細胞におけるタンパク質高発現のために使用される一般的なプロモーターである(非特許文献1参照)。細菌に関しては、多様な大腸菌株に対応可能なプロモーターとして、tacプロモーター(非特許文献2参照)が広く用いられている。tacプロモーターは、大腸菌由来のtrpプロモーターとlacプロモーターを組み合わせたプロモーターで、大腸菌に目的のタンパク質を発現させる際に有用である。しかし、肺炎球菌においては、CMV−IEプロモーターやtacプロモーターのような一般的な高発現プロモーターは実用化されていない。そのため、肺炎球菌の肺組織内での定着機構や宿主の免疫系を回避する機構の解析など、肺炎球菌の性状機能解析がこれまで思うように進んでいないのが現状である。したがって、肺炎球菌内で標的分子を高発現できるような効率的な発現系の開発が求められていた。

概要

これまで大腸菌など一般的な細菌では高発現系の開発が進んでいるが、肺炎球菌は基本的な発現システムが異なるため、一般的な細菌の高発現系を肺炎球菌で利用しても、肺炎球菌で高発現させることができない。肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現できるプロモーターの提供。(a)131bpからなる特定の塩基配列(SP)を含有するポリヌクレオチド;(b)上記の塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチド;の(a)又は(b)に示すポリヌクレオチドからなるプロモーター。

目的

本発明の課題は、肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現できるプロモーターを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

以下の(a)又は(b)に示すポリヌクレオチドからなるプロモーター。(a)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子発現しうるポリヌクレオチド;

請求項2

配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドが、配列番号3に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項1記載のプロモーター。

請求項3

請求項1又は2記載のプロモーターを含む組換えベクター

請求項4

請求項3記載の組換えベクターが導入された肺炎球菌の形質転換体

技術分野

0001

本発明は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)において下流に連結した目的遺伝子発現しうるポリヌクレオチドからなるプロモーターに関する。

背景技術

0002

肺炎は日本における死亡原因の9.9%を占め、がん心疾患に次ぐ第3位の疾患である。そして、市中における肺炎原因菌としてもっとも頻度が高いのが肺炎球菌である。

0003

この肺炎球菌は通性嫌気性グラム陽性双球菌である。肺炎球菌は様々な病原性因子溶血毒IgA分解酵素など)を持ち、特に莢膜による宿主免疫細胞貪食細胞)からの回避及び補体が形成する膜侵襲複合体からの防御が、宿主定着(感染)に重要である。莢膜は単純構造のため抗原性が弱く濾胞B細胞によるT細胞依存性の抗体生産が行なわれず、親和性の高いIgG抗体産生B細胞が発現しない。代わりに、漿膜腔に局在するB1細胞や脾臓辺縁帯B細胞によるT細胞非依存性抗体産生が行なわれ、親和性の低いIgM抗体による応急的な免疫防御機構誘導する。IgM抗体が肺炎球菌莢膜に結合すると、補体系及び細胞性免疫賦活化して肺炎球菌を駆除することができるが、本抗体産生機構においてはメモリーB細胞が作られないために長期の「免疫記憶」が起こらず、肺炎球菌による再感染の危険を常にはらんでいる。さらに、肺炎球菌の莢膜は判明しているだけでも90種類以上に及ぶため、一度肺炎球菌感染を起こしても、異なる血清型のものに感染する可能性がある。

0004

このように肺炎球菌は巧みな免疫回避機構により感染を成立させるため、免疫機能衰え高齢者や免疫機能が未発達乳幼児においては特に危険な細菌である。さらに、近年、第一選択薬として用いられるβ−lactam系の抗生物質耐性の肺炎球菌が報告されており、治療が難しくなってきている。現在、易感染者における効果的な感染予防のために、肺炎球菌の莢膜多糖を主成分とするワクチン及び莢膜多糖にアジュバントを付加したワクチンが開発されている。これらワクチンは海外での効果的な肺炎球菌感染予防実績を有し、我が国においても数年前に認可され、ワクチン接種が広まりつつある。

0005

肺炎球菌の病原性を理解するためには、肺炎球菌内で病原因子遺伝子発現を調節し解析することが必要である。これまでに外来遺伝子を細胞内で発現させるためのプロモーターは、ヒトや大腸菌において、いくつか実用化されている。例えば、CMV−IEプロモーターは、ヒトに不顕性感染するサイトメガロウイルス由来のプロモーターであり、哺乳類細胞におけるタンパク質高発現のために使用される一般的なプロモーターである(非特許文献1参照)。細菌に関しては、多様な大腸菌株に対応可能なプロモーターとして、tacプロモーター(非特許文献2参照)が広く用いられている。tacプロモーターは、大腸菌由来のtrpプロモーターとlacプロモーターを組み合わせたプロモーターで、大腸菌に目的のタンパク質を発現させる際に有用である。しかし、肺炎球菌においては、CMV−IEプロモーターやtacプロモーターのような一般的な高発現プロモーターは実用化されていない。そのため、肺炎球菌の肺組織内での定着機構や宿主の免疫系を回避する機構の解析など、肺炎球菌の性状機能解析がこれまで思うように進んでいないのが現状である。したがって、肺炎球菌内で標的分子を高発現できるような効率的な発現系の開発が求められていた。

先行技術

0006

SchmidtEV, Christoph G, Zeller R, Leder P. Mol Cell Biol. (1990) 10(8): 4406-4411
de BoerHA, Comstock LJ, Vasser M. Proc Natl Acad Sci U S A (1983) 80(1): 21-25

発明が解決しようとする課題

0007

これまで大腸菌など一般的な細菌では高発現系の開発が進んでいるが、肺炎球菌は基本的な発現システムが異なるため、一般的な細菌の高発現系を肺炎球菌で利用しても、肺炎球菌で高発現させることができない。そこで、本発明の課題は、肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現できるプロモーターを提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

発明者らは、肺炎球菌において活性の高いプロモーターを探索するなかで、肺炎球菌の病原性因子のひとつとして知られているPspAタンパク質のプロモーターを用いれば、肺炎球菌内で目的タンパク質発現誘導できると考えた。このPspAタンパク質は肺炎球菌の病原性因子のひとつであり、細胞表面分子である。このPspAタンパク質を欠損させると感染宿主内で貪食されやすくなり病原性が低下することが知られており、肺炎球菌内での発現が確実なタンパク質である。

0009

そこで、肺炎球菌GTC261株のクロモソームテンプレートとしてPspAタンパク質のプロモーター部位(配列番号1)をPCR増幅し、さらに、pmCherryプラスミドクロンテック社製)をテンプレートとしてmCherryをコードする遺伝子をPCRで増幅し、これらのPCR産物を利用して図1に示す組換え大腸菌・肺炎球菌シャトルベクターpLS5-HSG398-PpspA-mCherry(PpspA-mCherry)を作製した。さらに、かかる組換え大腸菌・肺炎球菌シャトルベクターを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。その結果、赤色蛍光を発する複数の大腸菌JM109株が得られた。次に、肺炎球菌における赤色蛍光タンパク質mCherryの発現を確認するため、赤色蛍光を発した大腸菌JM109株から発現プラスミドを抽出して肺炎球菌を形質転換したが、図2に示すように、lacプロモーターの下流にmCherryを連結した発現プラスミド(lac_promoter-mCherry:作製方法は後述)を肺炎球菌に導入した場合と同様、赤色蛍光を強く発する肺炎球菌は得られなかった。この結果から、肺炎球菌で目的分子の発現誘導を試みる場合、理論的に可能であると考えられるプロモーターを用いても効率のよい発現を誘導することが難しいことが明らかとなった。そのため、肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現させるためには、新規のプロモーターの発見が必要であると考え、肺炎球菌のクロモソームを制限酵素部分切断してスクリーニングを行ったところ、得られた膨大な断片の中から肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現させることが可能な配列を見いだし、本発明を完成した。

0010

すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。
(1)(a)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチド;の(a)又は(b)に示すポリヌクレオチドからなるプロモーター。
(2)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドが、配列番号3に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドであることを特徴とする上記(1)記載のプロモーター。
(3)上記(1)又は(2)記載のプロモーターを含む組換えベクター
(4)上記(3)記載の組換えベクターが導入された肺炎球菌の形質転換体

発明の効果

0011

本発明のプロモーターは、肺炎球菌内で下流に連結した目的遺伝子を高発現できるという効果を奏する。かかるプロモーターを用いることで、目的遺伝子がコードするタンパク質の解析、肺炎球菌の肺組織内での定着機構や宿主の免疫系を回避する機構の解析など、肺炎球菌の性状・機能解析を行うことが可能となる。

図面の簡単な説明

0012

PspAタンパク質のプロモーター部位及び赤色蛍光タンパク質mCherryをコードする配列を含む大腸菌・肺炎球菌シャトルベクターpLS5-HSG398-PpspA-mCherry(PpspA-mCherry)のマップを示す。
lacプロモーター又はPspAプロモーターの下流にmCherryを連結した発現プラスミドを肺炎球菌に導入して培養し、蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。(a)がlac_promoter-mCherry、(b)がPpspA-mCherryを導入した場合であり、それぞれ左が微分干渉像、右が蛍光像である。
(a)pLS21、(b)pHSG398、及び(c)pLS5-HSG398 rev-mCherry revのマップを示す。
断片S-mCherryに挿入されたクロモソーム断片の配列を示す図である。
pLS5-HSG398 revのマップを示す。
ベクターpLS5-HSG398 revにlacプロモーター及びmCherry遺伝子を導入したpLS5-HSG398 rev-Plac-mCherry(lac_promoter-mCherry)のマップを示す。
実施例1で得られた断片S-mCherry、及びコントロールとしてlac_promoter-mCherryを肺炎球菌に導入し、LBG平板培地及びTSBY平板培地で培養して蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。
pLS5-HSG398-rev-Sp-mCherry(Sp-mCherry)のマップを示す。
断片Sのうち、図4に示すB領域上流非コード領域の配列(Sp)を含むプラスミド(Sp-mCherry)を肺炎球菌に導入し、TSBY平板培地で培養して蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。

0013

本発明のプロモーターとしては、(a)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチド;の(a)又は(b)に示すポリヌクレオチドからなるプロモーターであれば特に制限されず、かかる肺炎球菌は肺炎双球菌肺炎レンサ球菌とも呼ばれ、肺炎の原因となるグラム陽性の双球菌である。

0014

本発明において、プロモーターとは、目的遺伝子配列の上流に配置され、RNAポリメラーゼが結合することにより、下流に配置された遺伝子の発現の制御に関わる領域の塩基配列を意味し、エンハンサー領域リボソーム結合領域の塩基配列を含んでもよい。

0015

本発明における配列番号2に示す塩基配列は肺炎球菌のクロモソームを制限酵素Sau3AIで処理して得られた断片に含まれていた配列であり、配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、配列番号2に示す塩基配列を含有している限り特に制限されず、配列番号3に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドを挙げることができ、下流に連結した目的遺伝子を発現しうるかぎり、上流又は下流に構造遺伝子の全部又は一部や、マーカー遺伝子や、micro RNAなどの他の塩基配列を含んでいてもよく、また、配列番号2に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドや、配列番号3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドでもよい。

0016

本発明において、配列番号2に示す塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、肺炎球菌において下流に連結した遺伝子を発現しうるポリヌクレオチドにおける「ストリンジェントな条件下」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、より具体的には、70%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件であり、例として、通常のサザンハイブリダイゼーション洗浄条件である65℃、1×SSC、0.1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件を挙げることができる。

0017

また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、DNA又はRNAなどの核酸プローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラークローニング、ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular cloning, A laboratory manual)、第3版、第6章に記載の方法で行うことができる。

0018

上記肺炎球菌において、下流に連結した目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチドとしては、肺炎球菌において下流に作動可能に連結した目的遺伝子を発現しうる限り特に制限されないが、たとえばlacプロモーターを用いた場合と比較して、目的遺伝子を2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上発現させるポリヌクレオチドを挙げることができる。

0019

目的遺伝子の発現は、たとえば、プロモーターの下流に、mCherry、GFPなどの蛍光遺伝子を作動可能に連結した組換えポリヌクレオチドを肺炎球菌に導入し、得られた形質転換体を、終濃度1.5%寒天末、5%脱繊維血液を加えたTSBY平板培地に塗布して37℃、5%CO2の環境で一晩培養したときの蛍光強度を測定・解析することによって求めることができる。また、蛍光強度の測定・解析は、画像統合ソフトNIS-elements(ニコン社製)などの市販のソフトを用いることによって行うことができる。

0020

上記目的遺伝子としては、用途に合わせて全長の遺伝子でも、その一部でもよい。また、その由来はいかなる生物から単離された遺伝子でも、遺伝子工学的に作製された人工的な遺伝子でもよい。

0021

本発明の組換えベクターに用いるベクターとしては、本発明のプロモーターを含み、該プロモーターの下流に作動可能に組み込んだ目的遺伝子を発現できるものであれば特に制限されず、直鎖状でも環状でもよく、自立複製可能であるものや、染色体中へ組込み可能であるものが好ましく、また、ターミネーターなどの制御配列選択マーカーを含有しているものを用いてもよい。

0022

本発明の組換えベクターが導入された肺炎球菌としては、本発明の組換えベクターが導入された肺炎球菌の形質転換体を意味する。本発明の組換えベクターの肺炎球菌への導入方法としては特に制限されず、酢酸リチウム法、リポフェクション法、リン酸カルシウム共沈殿法、リポソーム法、DEAEデキストラン法などの化学的方法ウイルスベクターを利用する方法、細胞融合法などの生物学的方法エレクトロポレーション法マイクロインジェクション法遺伝子銃法、超音波遺伝子導入法などの物理的方法;などの公知の方法を例示することができる。

0023

本発明の組換えベクターを含む肺炎球菌の形質転換体を培養することで、目的遺伝子がコードするタンパク質を効率よく生産することができる。培養方法としては肺炎球菌の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。例えば、本発明の組換えベクターが導入された肺炎球菌を37℃前後、pH7前後、5%CO2の環境で培養することができる。目的遺伝子がコードするタンパク質は培養液又は破砕した肺炎球菌から回収することができ、かかる回収する方法としては、公知のタンパク質の回収方法、例えば、遠心分離、次いで、ゲルろ過イオン交換アフィニティなどのクロマトグラフィーにより回収する方法を挙げることができる。

0024

[mCheryを発現しうる肺炎球菌の作製]
肺炎球菌において発現能力が高いプロモーターを探索するために、肺炎球菌のクロモソームを制限酵素で部分切断し、mCherryをコードする遺伝子を含む大腸菌・肺炎球菌シャトルベクターに挿入して発現プラスミドを作製し、かかる発現プラスミドを大腸菌及び肺炎球菌に導入してmCherryの発現を調べた。

0025

(大腸菌・肺炎球菌シャトルベクター)
大腸菌はJM109株を用い、肺炎球菌はGTC261株を用いた。大腸菌・肺炎球菌シャトルベクターはpLS5-HSG398 rev-mCherry revを用いた。上記シャトルベクターは、pLS21(ATCC67492)のEcoRI断片とpHSG398のEcoRI断片を結合し、HindIII切断部位にmCherry遺伝子(Z2522N:pmCherry由来、タカラバイオ社製)を挿入して作製した。かかるシャトルベクターは、大腸菌の複製開始点(origin of replication)、肺炎球菌の複製開始領域(repA/B/D)をもつ。さらに、クロラムフェニコール耐性遺伝子テトラサイクリン耐性遺伝子、サンゴ由来の赤色蛍光タンパク質遺伝子mCherryを含んでいる。pLS21、pHSG398及びpLS5-HSG398 rev-mCherry revのマップを図3に示す。

0026

(発現プラスミドの作製)
上記シャトルベクターpLS5-HSG398 rev-mCherry rev 50ngに、制限酵素BamHI(15U/μl)0.5μlとCIP(10−30U/μl)0.125μlを加えて30℃で60分間反応させた(反応系50μl)。また、肺炎球菌GTC261株のクロモソーム500ngに制限酵素Sau3AI(10U/μl)を128倍に希釈したものを1μl加え、37℃で60分間反応させた(反応系50μl)。反応後に酵素失活処理を行い、シャトルベクターの反応液と肺炎球菌クロモソームの反応液を混合してエタノール沈殿処理を行った。濃縮及び乾燥させた上記反応液混合物にT4 DNA Ligase(350U/μl)を1μl添加して16℃で一晩反応させて(反応系10μl)、発現プラスミド(肺炎球菌クロモソーム断片ライブラリー)を作製した。

0027

(大腸菌への発現プラスミドの導入)
井上・野島法(Inoue H, Nojima H, Okayama H. Gene(1990) 96(1):23-28)により作製した大腸菌JM109株コンピテントセル100μlを、上述で作製した、ライゲーション処理後の発現プラスミド溶液に加え、中に30分間静置した。その後、42℃の環境に45秒間静置した。5分間氷中に置いた後、LBG液体培地(終濃度2%LB培地、終濃度0.1% glucose)を1ml加えて37℃で1時間静置し、テトラサイクリン(終濃度20μg/ml)を含むLBG平板培地(LBG液体培地に終濃度1.5%寒天末を添加)に全量を塗布し、30℃で二晩培養した。

0028

(発現プラスミドの抽出)
適度な大きさになったコロニーを蛍光顕微鏡で観察し、赤色蛍光を発した40個のコロニーを、それぞれ各々テトラサイクリン(終濃度20μg/ml)を含むLBG液体培地5mlに植え継いで30℃で一晩培養した。吸光度計を用いて濁度が1を超えていることを確認した後、一晩培養液を遠心し集菌してから、QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kit(Qiagen社製)を用いて、mCherryを発現した大腸菌JM109由来の発現プラスミド(以下、「JM109由来mCherry発現プラスミド」ともいう)を抽出し、40種類の発現プラスミドを得た。

0029

(肺炎球菌へのJM109由来mCherry発現プラスミドの導入)
肺炎球菌におけるmCherryの発現を確認するため、肺炎球菌へ40種類のJM109由来mCherry発現プラスミドをそれぞれ導入した。まず、対数増殖期にある肺炎球菌(GTC261株)1mlを、HCl(終濃度10mM)とグリシン(終濃度20mM)を加えたTSBY液体培地(終濃度3% Soybean−Casein Digest Broth、終濃度0.5% Yeast extract)100mlに移して37℃で3時間培養した。培養液は吸光度計を用いて濁度0.1程度まで肺炎球菌が増殖したことを確認した。培養液にNaOH(終濃度10mM)を加えて中和した後、4℃、7000rpm、5分間遠心した。菌体をTB(Transfer Buffer、終濃度4.88%glucose、終濃度10mM MgCl2、pH6.5)で3回洗い、TB800μlに懸濁した。このTB懸濁菌液200μlに上記抽出した40種類のJM109由来mCherry発現プラスミド75−225ngをそれぞれ添加したものをエレクトロポレーション用のキュベット(0.2cmギャップ)に注ぎ、MicroPulser(Bio-Rad社製)により2.9kVの電流を3.70〜3.90ms流した。次にキュベット内の菌液に1mlのTSBY液体培地を加えて37℃で1時間培養した。この培養液を250μl分取し、新しいTSBY液体培地750μlに加え、37℃で2時間培養した。その後、培養液を全量が各1mlとなるように1/10と1/1000濃度に希釈し、TSBY平板培地(TSBY培地に終濃度1.5%寒天末、5%脱繊維羊血液、終濃度0.5μg/mlテトラサイクリン添加)に全量塗布した。塗布した肺炎球菌は37℃、5%CO2の環境で一晩培養した。適度な大きさになったそれぞれのコロニーを蛍光顕微鏡で観察し、赤色蛍光を発しているコロニー、すなわち肺炎球菌でmCherryを強く発現している株(GTC261−S株)が得られた。なお、GTC261−S株に導入したJM109由来mCherry発現プラスミドを、以後「断片S-mCherry」ともいう。

0030

[クロモソーム断片のシークエンス解析]
断片S-mCherryに挿入されたクロモソーム断片を含む領域をPCRで増幅し、シークエンス解析を行った。

0031

PCR法
上記「発現プラスミドの抽出」で得た断片S-mCherry 200ngにつきPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μl)0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer10μl、dNTP Mixture(2.5mM each)4μl、配列番号4に示すプライマーseq Fと配列番号5に示すプライマーseq R(10pmol/μl)各1μlを加えて、50μl系で反応を行った。アニーリング伸長時の温度と反応時間は各々適切なものを選択した。PCR反応後のDNAは、精製、濃度測定を行い、シークエンス解析に使用した。

0032

(シークエンス解析)
上述で得られたPCR反応後のDNA、すなわち断片S-mCherryに挿入されたクロモソーム断片とmCherry遺伝子の一部を含む範囲の配列をシークエンス解析した。すでに塩基配列が解析されたゲノムから相同性の高い配列を探すため、解析で得られた配列を、BLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastn&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome)で相同性検索した。

0033

(シークエンス解析結果)
シークエンス解析の結果、断片S-mCherryに挿入されたクロモソーム断片の配列は、配列番号3に示す塩基配列(図4)であることが明らかとなった。かかる結果より、配列番号3に示す塩基配列は肺炎球菌において目的遺伝子を発現しうるポリヌクレオチドであることが明らかとなった。なお、以下、配列番号3に示す塩基配列を、以後「断片S」ともいう。また、BLASTによる相同検索の結果、配列番号3に示す塩基配列のうち、1〜453番目の塩基配列のA領域はUvrABCシステムタンパク質A(UvrABC system protein A)、585〜818番目の塩基配列のB領域は推定トランスポーター(putative transporter)、958〜1530番目の塩基配列のC領域はCorA様Mg2+トランスポータータンパク質(CorA-like Mg2+ transporter protein)、1542〜1995番目の塩基D領域は推定膜タンパク質(putative membrane protein:S protein)をコードしていることが明らかとなった。

0034

[断片Sを含むプラスミドで形質転換した肺炎球菌における蛍光強度の測定]
実施例1の結果より、断片S-mCherryに挿入されたクロモソーム断片は配列番号3に示す断片Sであることが明らかとなった。そこで、断片Sの肺炎球菌におけるプロモーター活性を調べるために、実施例1で得られた断片S-mCherryを実施例1と同様の方法で肺炎球菌に導入し、TSBY平板培地で培養して蛍光顕微鏡で観察した。コントロールとしてベクターpLS5-HSG398 revにlacプロモーター及びmCherry遺伝子を導入したプラスミド(lac_promoter-mCherry)を以下に示す方法で調製し、上記と同様に肺炎球菌に導入し、TSBY平板培地で培養して蛍光顕微鏡で観察した。なお、lac_promoter-mCherryを導入した肺炎球菌の培養においては、IPTG無しの群とIPTGを100μMとなるように加えた培地で培養した群の2群で行った。断片S-mCherryを導入した肺炎球菌の培養においては、IPTG無しである。

0035

(lac_promoter-mCherryの作製)
pmCherryプラスミド(クロンテック社製)をテンプレートとし配列番号6に示すプライマーPlac-mCherry Fと配列番号7に示すプライマーPlac-mCherry Rを用いてPCRを行い、Plac-mCherry断片を得た。得られたPCR産物は制限酵素BglIIとSacIで切断した。また、pLS21プラスミド(ATCC6749)とpHSG398プラスミド(クロンテック社製)に基づき作製したpLS5-HSG398 revを制限酵素BamHIとSacIで切断した。pLS5-HSG398 revのマップを図5に示す。

0036

制限酵素処理済みのPlac-mCherry断片とベクターpLS5-HSG398 revを混合し、T4 DNA Ligase(350U/μl)を1μl添加して16℃で一晩反応させた(反応系10μl)。ライゲーション産物を上述の井上・野島法により作製した大腸菌JM109コンピテントセルに混合して大腸菌JM109へ遺伝子導入し、大腸菌JM109を形質転換した。得られたコロニーから上述のプラスミドの抽出と同様の方法でプラスミドを抽出し、pLS5-HSG398 rev-Plac-mCherry(lac_promoter-mCherry)プラスミド(図6)を得た。

0037

蛍光観察
培養した培地を蛍光顕微鏡で観察し、赤色蛍光がみられたコロニーを3つ選択し、プレパラートを作製した。蛍光顕微鏡でプレパラート上の菌の写真露光時間2秒で複数視野撮影し、写真上の100個の菌について輝度を測定・解析した。100個の菌の輝度の平均値から背景部分の輝度を引いた値を、そのプラスミドを持った菌の蛍光強度とした。輝度の測定・解析には画像統合ソフトNIS-elements(ニコン社製)を使用した。

0038

(結果)
各プラスミドを導入した肺炎球菌における蛍光強度を表1に、蛍光顕微鏡写真図7示す。図7において、(a)、(b)がlac_promoter-mCherryを導入した肺炎球菌、(c)が断片S-mCherryを導入した肺炎球菌である。また、蛍光強度の数値はNIS-elementsを用いて測定した際の実測値で、1pixelあたりの「輝度」を表す。

0039

0040

表1及び図7に示すように、断片S-mCherryを導入した肺炎球菌では、lac_promoter-mCherryで形質転換した肺炎球菌と比較して、IPTG無しに対して7倍以上、IPTG100μMに対して5倍以上も蛍光強度が高く、断片Sは肺炎球菌内でmCherry遺伝子を高発現させることが明らかとなった。

0041

[断片Sの一部を含むプラスミドで形質転換した肺炎球菌における蛍光強度の測定]
断片Sには、図4に示すようにタンパク質をコードするA〜D領域が含まれていることから、B領域の上流の非コード領域の配列(Sp:配列番号2)が肺炎球菌において下流に連結した目的遺伝子の発現に大きく関与していると考えられた。そこで、上記断片Sのうち、配列番号2に示されるSpを含むプラスミド(Sp-mCherry)を以下の方法で作製して肺炎球菌を形質転換し、蛍光強度を測定した。

0042

GTC261株のクロモソームをテンプレートとし配列番号8に示すプライマーSp Fと配列番号9に示すプライマーSp Rを用いてPCRを行い、Sp断片を得た。得られたPCR産物は制限酵素SphIとNdeIで切断した。また、pmCherryプラスミド(クロンテック社製)をテンプレートとし配列番号10に示すプライマーmCherry Fと配列番号11に示すプライマーmCherry Rを用いてPCRを行い、Sp断片の下流に挿入するmCherry断片を得た。得られたPCR産物は制限酵素NdeIとBamHIで切断した。さらに、ベクターpLS5-HSG398 revを制限酵素SphIとBamHIで切断した。

0043

得られた制限酵素処理済みのSp断片、mCherry断片及びベクターpLS5-HSG398 revを混合し、T4 DNA Ligase(350U/μl)を1μl添加して16℃で一晩反応させた(反応系10μl)。ライゲーション産物を上述の井上・野島法により作製した大腸菌JM109コンピテントセルに混合して大腸菌JM109へ遺伝子導入し、大腸菌JM109を形質転換した。得られたコロニーから上述のプラスミドの抽出と同様の方法でプラスミドを抽出し、pLS5-HSG398-rev-Sp-mCherry(Sp-mCherry)プラスミド(図8)を得た。

0044

上述で作製したSp-mCherryを用いて実施例1と同様の方法で肺炎球菌GTC261株を形質転換し、実施例2と同様の方法で培養し、蛍光強度を測定した。結果を表2及び図9に示す。

0045

実施例

0046

(結果)
表2及び図9に示すように、Sp-mCherryを導入した肺炎球菌においても強い蛍光強度が観察され、Spは肺炎球菌内でmCherry遺伝子を高発現させることが明らかとなった。

0047

本発明のプロモーターは肺炎球菌内で目的遺伝子を高発現できることから、肺炎球菌の肺組織内での定着機構や宿主の免疫系を回避する機構の解析、又は肺炎球菌の病原因子を標的としたワクチン開発の分野において利用可能である。

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