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技術 回転電機の制御装置

出願人 株式会社デンソー
発明者 中山英明藤井淳
出願日 2015年6月24日 (4年0ヶ月経過) 出願番号 2015-126941
公開日 2016年5月16日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2016-082863
状態 特許登録済
技術分野 交流電動機の制御一般
主要キーワード 振幅上限値 多重巻線 指令電力 ベクトル軌跡 電圧位相指令値 高電位側スイッチ 入出力トルク 巻線群
関連する未来課題
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図面 (12)

課題

簡易な制御で界磁巻線型の交流回転電機における電力効率の改善を行う。

解決手段

界磁巻線11を有するロータ12と、電機子巻線群10a,10bを有するロータ13とを備えるモータ10に適用され、界磁巻線11に流す界磁電流を制御する制御装置40であって、電機子巻線群10a,10bには、所定の印加電圧印加されており、ロータ12の回転に伴い電機子巻線群10a,10bに生じる誘起電圧振幅と印加電圧の振幅との偏差所定値以下となる界磁電流最小値に界磁電流を制御する。

概要

背景

近年、自動車スタータ及び発電機として、スタータの機能及び発電機の機能を兼ね備えるISG(Integrated Starter Generator)が用いられている。さらに、ISGとして、界磁巻線型の交流回転電機が用いられている。このような車載回転電機は、電力効率の改善が求められている。界磁巻線型の交流回転電機について、電力効率の改善を目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献1)。

概要

簡易な制御で界磁巻線型の交流回転電機における電力効率の改善を行う。界磁巻線11を有するロータ12と、電機子巻線群10a,10bを有するロータ13とを備えるモータ10に適用され、界磁巻線11に流す界磁電流を制御する制御装置40であって、電機子巻線群10a,10bには、所定の印加電圧印加されており、ロータ12の回転に伴い電機子巻線群10a,10bに生じる誘起電圧振幅と印加電圧の振幅との偏差所定値以下となる界磁電流最小値に界磁電流を制御する。

目的

本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡易な制御で界磁巻線型の交流回転電機における電力効率の改善を行うことを目的とする

効果

実績

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請求項1

界磁巻線(11)を有する回転子(12)と、電機子巻線(10a,10b)を有する固定子(13)とを備える回転電機(10)に適用され、前記界磁巻線に流す界磁電流を制御する制御装置(40)であって、前記電機子巻線には、所定の印加電圧印加されており、前記回転子の回転に伴い前記電機子巻線に生じる誘起電圧振幅と前記印加電圧の振幅との偏差所定値以下となる第1界磁電流に前記界磁電流を制御することを特徴とする回転電機の制御装置。

請求項2

dq軸座標系上において前記電機子巻線に流れる電流をd軸電流及びq軸電流の組から成る電流ベクトルで表す場合に、前記印加電圧の振幅を一定値とする円弧状の前記電流ベクトルの軌跡である電圧制限円とd軸との交点におけるd軸電流が0以下になるように、前記界磁電流を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。

請求項3

前記回転電機の入出力トルク又は入出力電力指令値が所定値よりも大きくなった場合に、前記界磁電流を前記第1界磁電流より大きな第2界磁電流に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機の制御装置。

請求項4

前記電機子巻線に流れるd軸電流に基づいて、前記第2界磁電流の大きさを制御することを特徴とする請求項3に記載の回転電機の制御装置。

請求項5

dq軸座標系上において前記電機子巻線に流れる電流をd軸電流及びq軸電流の組から成る電流ベクトルで表す場合に、前記印加電圧の振幅を一定値とする円弧状の前記電流ベクトルの軌跡である電圧制限円において、前記d軸電流の目標値である目標電流を設定し、前記d軸電流の検出値の絶対値が前記目標電流の絶対値を超えたことを条件として、前記界磁電流を前記第2界磁電流に制御することを特徴とする請求項4に記載の回転電機の制御装置。

請求項6

前記電圧制限円において、前記電機子巻線に流れるq軸電流が最大となる頂点よりq軸側に前記電流ベクトルが属するように、前記目標電流を設定することを特徴とする請求項5に記載の回転電機の制御装置。

請求項7

電力効率重視する場合に、前記入出力トルク又は前記入出力電力の指令値の変動に対する応答性を重視する場合に比べて、前記電圧制限円において前記頂点側に前記電流ベクトルが属するように、前記目標電流を設定することを特徴とする請求項6に記載の回転電機の制御装置。

請求項8

前記電力効率を重視する場合に、前記電圧制限円において前記頂点よりq軸側のd軸の範囲の中央より前記頂点側に前記電流ベクトルが属するように、前記目標電流を設定することを特徴とする請求項7に記載の回転電機の制御装置。

請求項9

前記応答性を重視する場合に、前記電圧制限円において前記頂点よりq軸側のd軸の範囲の中央より前記q軸側に前記電流ベクトルが属するように、前記目標電流を設定することを特徴とする請求項7又は8に記載の回転電機の制御装置。

請求項10

dq軸座標系上において前記電機子巻線に流れる電流をd軸電流及びq軸電流の組から成る電流ベクトルで表す場合に、前記印加電圧の振幅を一定値とする円弧状の前記電流ベクトルの軌跡である電圧制限円において、前記d軸電流の目標値である目標電流を設定し、前記回転電機には、前記電機子巻線に対して電力入出力を行うインバータが接続されており、前記電機子巻線に流れる電流の振幅である電流振幅の上限値である振幅上限値を、前記インバータから前記電機子巻線に対して入出力可能な電流の振幅の最大値に設定し、前記電流振幅が前記振幅上限値を超えないように、前記目標電流を設定することを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。

請求項11

前記電流振幅が前記振幅上限値を超えないように設定された前記目標電流に基づいて、前記入出力トルク又は前記入出力電力が最大となるように、前記第2界磁電流を設定することを特徴とする請求項10に記載の回転電機の制御装置。

請求項12

前記振幅上限値と前記目標電流との偏差が所定値以下になった場合、前記電流振幅を前記振幅上限値としつつ、かつ、前記電流ベクトルの位相が小さくなるように前記第2界磁電流を減少させることで、前記入出力トルク又は前記入出力電力が最大となるように、前記第2界磁電流を設定することを特徴とする請求項11に記載の回転電機の制御装置。

請求項13

前記電圧制限円において、前記電機子巻線に流れるq軸電流が最大となる頂点に、前記電流ベクトルが達するまで、前記第2界磁電流を減少させることを特徴とする請求項12に記載の回転電機の制御装置。

請求項14

前記印加電圧の振幅は一定とされており、前記印加電圧の位相を調整することで、前記回転電機の入出力トルク又は入出力電力を制御することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。

請求項15

前記入出力トルク又は前記入出力電力と、前記入出力トルク又は前記入出力電力の指令値との偏差を入力値とするとともに、前記印加電圧の位相を操作量とし、前記偏差を小さくするようにPID制御を行うことを特徴とする請求項14に記載の回転電機の制御装置。

請求項16

前記入出力トルク又は前記入出力電力の指令値に基づいて、前記PID制御におけるゲインを設定することを特徴とする請求項15に記載の回転電機の制御装置。

技術分野

0001

本発明は、界磁巻線型の回転電機を制御する制御装置に関する。

背景技術

0002

近年、自動車スタータ及び発電機として、スタータの機能及び発電機の機能を兼ね備えるISG(Integrated Starter Generator)が用いられている。さらに、ISGとして、界磁巻線型の交流回転電機が用いられている。このような車載の回転電機は、電力効率の改善が求められている。界磁巻線型の交流回転電機について、電力効率の改善を目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献1)。

先行技術

0003

特許第4662119号公報

発明が解決しようとする課題

0004

特許文献1に記載の技術では、モータの回転速度が遅い場合には、固定子電流及び界磁電流を大きくすることで発電電力を確保する。そして、回転速度が速くなるにつれて、固定子電流を小さくすることで銅損を削減しつつ、界磁電流を大きいままで維持することで発電電力を確保する。その後、回転速度がさらに高まるにつれて、界磁電流を下げることで鉄損を削減しつつ、固定子電流を大きくすることで発電電力を確保する。

0005

ここで、特許文献1に記載の技術では、出力トルク又は発電電力と回転速度とを入力値とし、固定子電流と界磁電流とを出力値とするマップが必要であり、膨大なテスト及び記憶容量が必要となる。また、固定子電流と界磁電流とを同時に制御するため、制御が複雑化する。

0006

本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡易な制御で界磁巻線型の交流回転電機における電力効率の改善を行うことを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、界磁巻線(11)を有する回転子(12)と、電機子巻線(10a,10b)を有する固定子(13)とを備える回転電機(10)に適用され、前記界磁巻線に流す界磁電流を制御する制御装置であって、前記電機子巻線には、所定の印加電圧印加されており、前記回転子の回転に伴い前記電機子巻線に生じる誘起電圧振幅と前記印加電圧の振幅との偏差所定値以下となる第1界磁電流に前記界磁電流を制御することを特徴とする。

0008

本願の発明者は、誘起電圧と印加電圧とが近づくと、固定子の電機子巻線に流れる相電流の振幅が小さくなることを発見した。この発見に基づいて、誘起電圧と印加電圧との差が所定値以下となるように界磁電流を制御する。これにより、相電流の振幅が小さくなり、電機子巻線に電流が流れることで発生する電力損失を低減することができる。このように、簡易な制御で界磁巻線型の交流回転電機における電力効率の改善を行うことが可能になる。

図面の簡単な説明

0009

本実施形態の電気的構成図。
dq軸電流の界磁電流特性を表す図。
印加電圧を変化させた場合のdq軸電流振幅−界磁電流特性を表す図。
界磁電流を変化させた場合のdq電流振幅出力特性を表す図。
界磁電流−トルク特性を表す図。
dq軸座標系における印加電圧一定のベクトル軌跡及びトルク一定のベクトル軌跡を表す図。
制御装置の機能を表す機能ブロック図。
軸電流目標値の設定による応答性及び電力効率の変化を表す図。
界磁電流目標値の選択処理を表すフローチャート
本実施形態の動作を表す図。
変形例におけるd軸電流目標値及び界磁電流参照値の設定を表す図。

実施例

0010

以下、本発明にかかる制御装置を車載主機としてエンジンを備える車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。

0011

図1に示すように、モータ10は、多相多重巻線を有する巻線界磁型回転電機であり、具体的には、3相2重巻線を有する巻線界磁型同期モータである。本実施形態では、モータ10として、スタータ及びオルタネータ(発電機)の機能を統合したISG(Integrated Starter Generator)を想定している。特に本実施形態では、エンジン20の初回始動に加えて、所定の自動停止条件成立する場合にエンジン20を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合にエンジン20を自動的に再始動させるアイドリングストップ機能を実行する場合にも、モータ10がスタータとして機能する。

0012

モータ10を構成するロータ12(回転子)は、界磁巻線11を備え、また、エンジン20のクランク軸20aと動力伝達が可能とされている。本実施形態において、ロータ12は、ベルト21を介してクランク軸20aに連結(より具体的には直結)されている。

0013

モータ10のステータ13(固定子)には、2つの電機子巻線群(以下、第1巻線群10a、第2巻線群10b)が巻回されている。巻線群10a,10bに対して、ロータ12が共通とされている。第1巻線群10a及び第2巻線群10bのそれぞれは、異なる中性点を有する3相巻線からなる。なお、本実施形態では、第1巻線群10aを構成する巻線のそれぞれのターン数N1と、第2巻線群10bを構成する巻線のターン数N2とを等しく設定している。

0014

モータ10には、第1巻線群10a及び第2巻線群10bのそれぞれに対応した2つのインバータ(以下、第1インバータINV1、第2インバータINV2)が電気的に接続されている。詳しくは、第1巻線群10aには、第1インバータINV1が接続され、第2巻線群10bには、第2インバータINV2が接続されている。第1インバータINV1及び第2インバータINV2のそれぞれには、共通の直流電源である高圧バッテリ22が並列接続されている。高圧バッテリ22には、昇圧型DCDCコンバータ23によって昇圧された低圧バッテリ24の出力電圧印加可能とされている。低圧バッテリ24(例えば、鉛蓄電池)の出力電圧は、高圧バッテリ22(例えば、リチウムイオン蓄電池)の出力電圧よりも低く設定されている。

0015

第1インバータINV1は、第1のU,V,W相高電位側スイッチSUp1,SVp1,SWp1と、第1のU,V,W相低電位側スイッチSUn1,SVn1,SWn1との直列接続体を3組備えている。U,V,W相における上記直列接続体の接続点は、第1巻線群10aのU,V,W相の端子に接続されている。本実施形態では、各スイッチSUp1〜SWn1として、NチャネルMOSFETを用いている。そして、各スイッチSUp1〜SWn1にはそれぞれ、ダイオードDUp1〜DWn1が逆並列に接続されている。なお、各ダイオードDUp1〜DWn1は、各スイッチSUp1〜SWn1のボディーダイオードであってもよい。また、各スイッチSUp1〜SWn1としては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。

0016

第2インバータINV2は、第1インバータINV1と同様に、第2のU,V,W相高電位側スイッチSUp2,SVp2,SWp2と、第2のU,V,W相低電位側スイッチSUn2,SVn2,SWn2との直列接続体を3組備えている。U,V,W相における上記直列接続体の接続点は、第2巻線群10bのU,V,W相の端子に接続されている。本実施形態では、各スイッチSUp2〜SWn2として、NチャネルMOSFETを用いている。そして、各スイッチSUp2〜SWn2にはそれぞれ、ダイオードDUp2〜DWn2が逆並列に接続されている。なお、各ダイオードDUp2〜DWn2は、各スイッチSUp2〜SWn2のボディーダイオードであってもよい。また、各スイッチSUp2〜SWn2しては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。

0017

第1,第2インバータINV1,INV2の高電位側の端子(各高電位側スイッチのドレイン側の端子)には、高圧バッテリ22の正極端子が接続されている。低電位側の端子(各低電位側スイッチのソース側の端子)には、高圧バッテリ22の負極端子が接続されている。

0018

界磁巻線11には、界磁回路36によって直流電圧が印加可能とされている。界磁回路36は、界磁巻線11に印加する直流電圧を調整することにより、界磁巻線11に流れる界磁電流Ifを制御する。

0019

本実施形態にかかる制御システムは、回転角センサ30、電圧センサ31、界磁電流センサ32、及び相電流検出部33を備えている。回転角センサ30は、モータ10の回転角電気角θ)を検出する回転角検出手段である。電圧センサ31は、第1,第2インバータINV1,INV2の電源電圧を検出する。界磁電流センサ32は、界磁巻線11に流れる界磁電流Ifを検出する。相電流検出部33は、第1巻線群10aの各相電流固定座標系における第1巻線群10aに流れる電流)と、第2巻線群10bの各相電流を検出する。なお、回転角センサ30としては、例えばレゾルバを用いることができる。また、界磁電流センサ32及び相電流検出部33としては、例えば、カレントトランス抵抗器を備えるものを用いることができる。

0020

上記各種センサ検出値は、制御装置40に取り込まれる。制御装置40は、中央処理装置(CPU)やメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行するソフトウェア処理手段である。制御装置40は、モータ10の制御量をその指令値に制御すべく、これら各種センサの検出値に基づき、第1インバータINV1及び第2インバータINV2を操作する操作信号を生成して出力する。ここで、力行時におけるモータ10の制御量は、クランク軸20aに出力される出力トルクTであり、その指令値は、指令トルクT*である。また、回生時におけるモータ10の制御量は、発電によってモータ10から出力される出力電力P(回生時における発電電力)であり、その指令値は、指令電力P*である。なお、力行時において、モータ10に入力される入力電力P(力行時における消費電力)をモータ10の制御量としてもよいし、回生時において、クランク軸20aから入力される入力トルクT(発電に伴うロストルク)をモータ10の制御量としてもよい。

0021

制御装置40は、界磁巻線11に流れる界磁電流If及び巻線群10a,10bに流れる相電流を調整することで、モータ10の出力電力Pを指令電力P*に近づける制御を行うことができる。ここで、ロータ12の界磁巻線11は、ステータ13の電機子巻線群10a,10bに比べて、ターン数が多く、リアクタンス値が大きく、回路時定数が大きい。このため、界磁電流Ifを調整して、モータ10の出力電力Pを指令電力P*に近づける制御を実施すると応答性が低下する。また、力行時も同様に、界磁電流Ifを調整して、モータ10の出力トルクTを指令トルクT*に近づける制御を実施すると応答性が低下する。

0022

そこで、本実施形態の制御装置40は、巻線群10a,10bに印加される電圧(印加電圧)の振幅Vaを一定値にするとともに印加電圧の位相δを調整することで、回生時には、モータ10の出力電力Pを指令電力P*に近づける制御を実施するとともに、力行時には、モータ10の出力トルクTを指令トルクT*に近づける制御を実施する。

0023

そして、制御装置40は、印加電圧の調整に加えて、界磁回路36から出力される界磁電流Ifを調整することで、巻線群10a,10bに電流が流れることにともなう銅損を小さくする制御を行う。なお、図1には、第1インバータINV1の各スイッチSUp1〜SWn1を操作する信号を第1操作信号gUp1〜gWn1として示し、第2インバータINV2の各スイッチSUp2〜SWn2を操作する信号を第2操作信号gUp2〜gWn2として示している。なお、上記界磁回路36は、制御装置40に内蔵されていてもよいし、制御装置40に対して外付けされていてもよい。

0024

以下、図2〜6を用いて、回生時を前提として、出力電力P、印加電圧の振幅Va、印加電圧の位相δ、界磁電流If、入力トルクT、及び、dq軸電流Idqの関係を説明する。なお、以下の説明において、出力電力Pを入力電力P、入力トルクTを出力トルクTとして適宜読み替えることで力行時の説明となるため、力行時の説明は省略する。

0025

図2に、出力電力Pを所定の指令電力P*で一定値とする条件下における、印加電圧の振幅Vaを一定値(48V)としたときの、界磁電流Ifとdq軸電流Idqとの関係を示す。図2(a)と図2(b)とでは、モータ10の回転速度が異なっている。ここで、P=T×ωという関係を有する。Pは出力電力、Tは入力トルク、ωはモータ10の角速度である。また、dq軸電流Idqは、相電流検出部33によって検出される巻線群10a,10bに流れる相電流を座標変換することで得られものである。

0026

所定の第1回転速度RS1における界磁電流Ifとdq軸電流Idqの電流振幅Iaとの関係を図2(a)に示す。また、dq軸電流Idqのq軸電流Iqとd軸電流Idとの関係を図2(b)に示す。q軸電流Iqとd軸電流Idとの組によって表されるベクトルの絶対値が電流振幅Iaである。ここで、界磁電流Ifが2Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。また、界磁電流Ifが2Aから減少又は増加すると、電流振幅Iaが増加する。つまり、界磁電流Ifが2Aとなるときに、巻線群10a,10bに相電流が流れることにともなう電力損失が最小値となる。

0027

所定の第2回転速度RS2(RS2=2・RS1)における界磁電流Ifとdq軸電流Idqの電流振幅Iaとの関係を図2(c)に示す。また、q軸電流Iqとd軸電流Idとの関係を図2(d)に示す。出力電力Pが一定値である条件において、回転速度が第1回転速度RS1から第2回転速度RS2となり2倍となることで、入力トルクTは半減している。界磁電流Ifが1Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。また、界磁電流Ifが1Aから減少又は増加すると、電流振幅Iaが増加する。つまり、界磁電流Ifが1Aとなるときに、巻線群10a,10bに電流が流れることにともなう電力損失が最小値となる。

0028

図3に、出力電力Pを所定の指令電力P*で一定とする条件下における印加電圧の振幅Vaと、界磁電流Ifと、電流振幅Iaとの関係を示す。図3(a)と図3(b)とでは、モータ10の回転速度が異なっている。

0029

所定の第1回転速度RS1における印加電圧の振幅Vaと、界磁電流Ifと、電流振幅Iaとの関係を図3(a)に示す。印加電圧の振幅Vaが48Vの場合、界磁電流Ifが2Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。印加電圧の振幅Vaが36Vの場合、界磁電流Ifが1.5Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。印加電圧の振幅Vaが24Vの場合、界磁電流Ifが1Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。なお、印加電圧の振幅Vaが12Vの場合、界磁電流Ifが約1.2A以下となるときに、出力電力Pを満たせなくなっている。

0030

所定の第2回転速度RS2における印加電圧の振幅Vaと、界磁電流Ifと、電流振幅Iaとの関係を図3(b)に示す。印加電圧の振幅Vaが48Vの場合、界磁電流Ifが1Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。印加電圧の振幅Vaが36Vの場合、界磁電流Ifが0.75Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。印加電圧の振幅Vaが24Vの場合、界磁電流Ifが0.5Aとなるときに、電流振幅Iaが最小値となる。なお、印加電圧の振幅Vaが12Vの場合、界磁電流Ifが約1.2A以下となるときに、出力電力Pを満たせなくなっている。

0031

ここで、印加電圧の振幅Vaが大きいほど、電流振幅Iaの最小値が小さくなっている。つまり、印加電圧の振幅Vaを大きくし、かつ、最適な界磁電流Ifを流すことで、電流振幅Iaを最小にすることができ、巻線群10a,10bに電流が流れることにともなう電力損失を最小値とすることができる。

0032

図4に印加電圧の振幅Vaを一定値(48V)とする条件下において、界磁電流If及び電圧位相δを変更した場合の、界磁電流Ifと、出力電力Pと、電流振幅Iaとの関係を示す。図4(a)と図4(b)とでは、モータ10の回転速度が異なっている。

0033

所定の第1回転速度RS1における界磁電流Ifと、出力電力Pと、電流振幅Iaとの関係を図4(a)に示す。出力電力Pが約5000W以下の領域において、界磁電流Ifが2Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力電力Pが約5000Wより大きい領域において、界磁電流Ifが3Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力電力Pが約8000Wより大きい領域において、界磁電流Ifが4Aのときに電流振幅Iaが最小となる。

0034

所定の第2回転速度RS2(RS2=2・RS1)における界磁電流Ifと、出力電力Pと、電流振幅Iaとの関係を図4(b)に示す。出力電力Pが約2500W以下の領域において、界磁電流Ifが1Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力電力Pが約2500Wより大きい領域において、界磁電流Ifが1.5Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力電力Pが約4000Wより大きい領域において、界磁電流Ifが2Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力が約6000Wより大きい領域において、界磁電流Ifが3Aのときに電流振幅Iaが最小となる。出力電力Pが約9000Wより大きい領域において、界磁電流Ifが4Aのときに電流振幅Iaが最小となる。

0035

例えば、回転速度が第1回転速度RS1である図4(a)の場合、出力電力Pが約5000Wより小さい領域では、界磁電流Ifを2Aに設定する。出力電力Pが約5000W以上かつ約8000Wより小さい領域では、界磁電流Ifを3Aに設定する。出力電力Pが約8000Wより大きい領域では、界磁電流Ifを4Aに設定する。このように出力電力Pに応じて界磁電流Ifを設定することで、電流振幅Iaを最小にしつつ、出力電力Pを上げることができる。なお、出力電力Pの変化にあわせて、界磁電流Ifを連続的に変化させてもよい。

0036

また、発明者は、印加電圧の振幅Vaを一定値(37.5V)とし、回転速度を一定値(3000rpm)とし、かつ、出力電力Pを一定値(500W)とした条件下での界磁電流Ifと入力トルクTとの関係を実験により得た。その実験により得られた界磁電流Ifと入力トルクTとの関係を図5に示す。界磁電流Ifが約0.75Aとなるときに、入力トルクTが最小になり、界磁電流Ifが約0.75Aより大きくなるか、又は、小さくなると、発電に寄与しない無効な入力トルクTが大きくなる。

0037

ここで、If=0.25Aのとき、誘起電圧の振幅Vbは16.8V、If=0.5Aのとき、誘起電圧の振幅Vbは27.9V、If=0.75Aのとき、誘起電圧の振幅Vbは36.7V、If=1Aのとき、誘起電圧の振幅Vbは42.1V、If=1.25Aのとき、誘起電圧の振幅Vbは52.1Vであった。つまり、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとがほぼ一致するとき(Va=37.5V,Vb=36.7V)に、指令電力P*を満たす入力トルクTが最小値となるという結果が得られた。

0038

以上の特性に基づいて、制御装置40は、印加電圧の振幅Vaを最大値、即ち、昇圧型DCDCコンバータ23の出力電圧の最大値(48V)に設定する。印加電圧の振幅Vaを最大値に設定することで、相電流が巻線群10a,10bに流れることにともなう銅損を小さくすることができる。また、制御装置40は位相δを調整することで、回生時には、モータ10の出力電力Pを指令電力P*に近づける制御を行い、力行時には、モータ10の出力トルクTを指令トルクT*に近づける制御を行う。さらに、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが一致するように界磁電流Ifを設定する。

0039

図6に印加電圧の振幅Vaを最大値(48V)で固定し、かつ、界磁電流Ifを誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが一致するように設定した条件下での、dq軸座標系上におけるq軸電流Iqとd軸電流Idとの組み合わせから成る電流ベクトル円弧状の軌跡電圧制限円)を示す。また、指令電力P*が一定の場合のq軸電流Iqとd軸電流Idとの組み合わせから成る電流ベクトルの直線状の軌跡を示す。電圧制限円と、指令電力P*が一定の直線状のベクトル軌跡との交点が、印加電圧の振幅Va及び指令電力P*を満たすq軸電流Iqとd軸電流Idとの組み合わせを表す。

0040

モータ10の回転速度が所定の第1回転速度RS1の場合の電圧制限円と指令電力P*が一定の電流ベクトル軌跡図6(a)に示す。図6(a)に示す条件下では、界磁電流Ifが2Aに設定されている。また、モータ10の回転速度が所定の第2回転速度RS2(RS2=2・RS1)の場合の電圧制限円と指令電力P*が一定の電流ベクトル軌跡を図6(b)に示す。図6(b)に示す条件下では、界磁電流Ifが1Aに設定されている。

0041

図6(b)を図6(a)と比較すると、回転速度が2倍になるとともに、界磁電流Ifが半減しているため、ほぼ同じq軸電流Iqで、同一の電力出力可能となっている。また、回転速度が2倍になることで、図6(b)の電圧制限円の半径図6(b)の電圧制限円の半径に比べて半減している。

0042

d軸電流Idは、
Id=[−φ(If)+√{(Va/ω)^2−(Lq・Iq)^2}]/Ld
として得ることができる。φ(If)は、界磁電流Ifにより生じる鎖交磁束であり、ωは回転速度、Lqはq軸インダクタンス、Ldはd軸インダクタンスである。Id=Iq=0とすると、
ω・φ(If)=Va
となる。また、ω・φ(If)=ω・Lf・Ifは、誘起電圧の振幅と等しい。なお、Lfは界磁巻線11のインダクタンスである。つまり、誘起電圧の振幅ω・φ(If)と印加電圧の振幅Vaとが等しい場合に、電圧制限円の右端が原点と重なる。

0043

電圧制限円の右端が原点(Id,Iq)=(0,0)と重なる場合に、電圧制限円と、指令電力P*が一定の直線状の電流ベクトル軌跡との交点も原点に近くなる。また、その交点におけるd軸電流Idが約0となる。このため、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとの偏差が所定値以下となる界磁電流に界磁電流Ifを制御することで、電流振幅Iaを小さくすることができる。本実施形態では、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが一致する界磁電流最小値If_min(第1界磁電流)に界磁電流Ifを制御する。

0044

しかしながら、界磁電流Ifを界磁電流最小値If_minで一定とすると、出力電力Pの最大値は、電圧制限円の頂点のq軸電流Iqによって制限されることになる。そこで、制御装置40は、指令電力P*又は指令トルクT*が所定値よりも大きくなった場合に、界磁電流Ifが界磁電流最小値If_minから大きくなるように、界磁電流Ifを制御する。界磁電流Ifを界磁電流最小値If_min以上の値に制御することで、電圧制限円とd軸との交点(電圧制限円の右端)におけるd軸電流Idが0以下になる。具体的には、d軸電流Idに基づいて、界磁電流参照値If_c(第2界磁電流)を算出する。さらに、所定のd軸電流目標値Id*(目標電流)を設定し、指令電力P*又は指令トルクT*の増加にともなって増加するd軸電流Idの絶対値がd軸電流目標値Id*の絶対値を超える場合に、界磁電流Ifが界磁電流参照値If_cとなるように制御する。

0045

図7に制御装置40の機能を表す機能ブロック図を示す。本実施形態の制御装置40は、指令トルクT*が入力され、モータ10のトルクTを指令トルクT*に近づける制御を行う。

0046

偏差算出手段41は、回生時には、指令電力P*を満たす指令トルクT*と入力トルクTの推定値とが入力され、その偏差を算出する。また、力行時には、指令トルクT*と出力トルクTの推定値とが入力され、その偏差を算出する。ここで、トルクTの推定値は、トルク推定値算出手段42によって、ステータ13に流れる電流Id,Iqの検出値、界磁電流Ifの検出値、及び、モータ10の回転速度に基づいて算出される。

0047

指令トルクT*とトルクTの推定値との偏差は、PID制御手段43に入力される(PID: Proportional Integral Derivative)。PID制御手段43の出力値が電圧位相指令値δ*に相当する。電圧位相指令値δ*は、位相制限手段44によって上下限が制限され、変調器45に入力される。変調器45は、インバータINV1,INV2から出力される電圧位相δ(印加電圧と相電流との位相差)が電圧位相指令値δ*となるように操作信号gUp1〜gWn1,gUp2〜gWn2を出力する。つまり、指令トルクT*とトルクTとの偏差を入力値とするとともに、電圧位相δを操作量とし、指令トルクT*とトルクTとの偏差を小さくするようにPID制御を実施する。また、出力トルクTに応じて、PID制御手段43のゲインが設定される。具体的には、出力トルクT又は出力電力Pの変動が大きいような出力トルクT又は出力電力Pの領域において、PID制御手段43のゲインを大きく設定することで、変動に対する応答性を向上させることができる。

0048

偏差算出手段46は、d軸電流の検出値Idとd軸電流目標値Id*とが入力され、その偏差を算出する。目標値設定手段47によるd軸電流目標値Id*の設定方法については後に詳述する。d軸電流の検出値Idとd軸電流目標値Id*との偏差は、PID制御手段48に入力される。PID制御手段48の出力値が界磁電流参照値If_cに相当する。目標値選択手段49には、界磁電流参照値If_cと界磁電流最小値If_minとが入力され、いずれか一方が界磁電流目標値If*として選択される。最小値設定手段50は、モータ10の回転速度及びトルクTを入力値とするマップを用いて、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが一致するような値に界磁電流最小値If_minを設定する。また、目標値選択手段49による界磁電流目標値If*の選択については後に詳述する。

0049

偏差算出手段51には、界磁電流目標値If*と界磁電流の検出値Ifとが入力され、その偏差を算出する。界磁電流目標値If*と界磁電流の検出値Ifとの偏差は、PID制御手段52に入力される。PID制御手段52の出力値が界磁電圧指令値Vf*に相当する。

0050

ここで、図8を用いて目標値設定手段47によるd軸電流目標値Id*について説明を行う。図8(a)に、d軸電流目標値Id*を電圧制限円の中心寄りに設定した場合の電圧制限円を示し、図8(b)に、d軸電流目標値Id*を電圧制限円の右端寄りに設定した場合の電圧制限円を示す。ここで、電圧制限円において、q軸電流Iqが最大となる頂点よりq軸側に電流ベクトルが属するようにd軸電流目標値Id*を設定している。

0051

図8(a)における界磁電流Ifは、図8(b)における界磁電流Ifより小さく設定されている。界磁電流Ifを大きく設定するほど電圧制限円はq軸から負の方向に遠ざかることになる。

0052

また、図8(a)におけるトルクTと、図8(b)におけるトルクTとは同一である一方、図8(a)における界磁電流Ifが図8(b)における界磁電流Ifより小さい。トルクTは、q軸電流Iq及び界磁電流Ifに比例するため、同一のトルクTを実現するためのq軸電流Iqが、図8(b)と比較して図8(a)において大きくなっている。

0053

図8(a)のようにd軸電流目標値Id*を電圧制限円の中心寄り(頂点側)に設定することで、q軸電流Iqを大きくすることができ、小さい界磁電流Ifで所定のトルクTを実現することができる。小さい界磁電流Ifが設定されることで、トルクTへの寄与が低いd軸電流Idを抑制することができ、電力効率が向上する。一方で、現在のトルクTと最大トルクとの差、即ち、q軸電流Iqの現在値とq軸電流Iqの最大値との差が小さいため、トルクTを指令トルクT*に追従させるために、界磁電流Ifを増加させる必要が生じる。界磁電流Ifは相電流に比べて応答性が低いため、トルクTの応答性が低下する。

0054

図8(b)のようにd軸電流目標値Id*を電圧制限円の右端寄り(q軸側)に設定することで、q軸電流Iqが小さくなり、所定のトルクTを実現するために界磁電流Ifが大きく設定される。大きい界磁電流Ifが設定されることで、q軸電流Iqの変化に伴うトルクTの変化が大きくなるとともに、現在のトルクTと最大トルクとの差が大きくなり、トルクTの変化に対する応答性が向上する。一方で、トルクTに寄与しないd軸電流Idが大きくなるため、電力効率が低下する。

0055

そこで、本実施形態では、電力効率を重視する場合に、指令トルクT*の変動に対する応答性を重視する場合に比べて、電圧制限円において頂点側に軸電流ベクトルが属するようにd軸電流目標値Id*を設定する。電圧制限円の右端におけるd軸電流Idの大きさは、(−Lf・If+Va/ω)/Ldである。また、電圧制限円の中心におけるd軸電流Idの大きさは、−Lf・If/Ldである。つまり、d軸インダクタンスLd、及び、界磁巻線11のインダクタンスLfを予め取得しておき、界磁電流If、印加電圧の振幅Va、及び、回転角速度ωの検出値を取得すれば、電圧制限円の右端及び中心におけるd軸電流Idを算出することができる。

0056

目標値設定手段47は、d軸電流目標値Id*を
Id*=α×(−Lf・If/Ld)+(1−α)×{(−Lf・If+Va/ω)/Ld}
と設定する。例えば、αを0にすると、d軸電流目標値Id*は電圧制限円の右端に重なる。また、αを1にすると、d軸電流目標値Id*は電圧制限円の頂点に重なる。また、αを0.5にすると、d軸電流目標値Id*は電圧制限円の右端と頂点との中点に重なる。つまり、電力効率を重視する場合、頂点よりq軸側のd軸の範囲における中央より頂点側に属するようにαを0.5より大きい値に設定する。また、出力トルクTの応答性、及び、出力電力Pの応答性を重視する場合、頂点よりq軸側のd軸の範囲における中央より右端側に属するようにαを0.5以下の値に設定する。

0057

目標値選択手段49による界磁電流目標値If*の選択について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。

0058

テップS01において、界磁電流目標値If*として、界磁電流最小値If_minが選択されているか否かを判定する。界磁電流目標値If*として界磁電流最小値If_minが選択されている場合(S01:YES)、ステップS02において、d軸電流Idの絶対値がd軸電流目標値Id*の絶対値を超えているか否かを判定する。d軸電流Idの絶対値がd軸電流目標値Id*の絶対値を超えている場合(S02:YES)、ステップS03において、d軸電流Idとd軸電流目標値Id*との偏差に基づいて、界磁電流参照値If_cを算出する。そして、ステップS04において、界磁電流目標値If*として界磁電流参照値If_cを選択して処理を終了する。ステップS02において、d軸電流Idの絶対値がd軸電流目標値Id*の絶対値以下の場合(S02:NO)、そのまま処理を終了する。

0059

一方、界磁電流目標値If*として、界磁電流参照値If_cが選択されている場合(S01:NO)、ステップS05において、電圧制限円の右端(−Lf・If+Va/ω)/Ldが0以下であるか否かを判定する。電圧制限円の右端が0以上であると判定されると(S05:YES)、ステップS06において、モータ10の回転速度及び出力電力P又は出力トルクTを入力値とするマップを用いて、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが一致するような界磁電流最小値If_minを算出する。ステップS07において、界磁電流目標値If*として、界磁電流最小値If_minを選択し、処理を終了する。電圧制限円の右端が0より小さい場合(S05:NO)、そのまま処理を終了する。

0060

ここで、ステップS02におけるd軸電流Idとd軸電流目標値Id*の絶対値との比較において、d軸電流Idの絶対値と、d軸電流目標値Id*の絶対値から許容値ΔIを引いた値|Id*−ΔI|とを比較し、|Id|>|Id*|−ΔIが成立した場合に、界磁電流目標値If*として界磁電流参照値If_cを選択する構成としてもよい。このような処理を行うことで、出力電力P及び出力トルクTの応答性を向上することができる。

0061

図10に指令トルクT*が所定値T1から所定値T2に変化する場合のdq軸電流Idqの変化、及び、界磁電流目標値If*の変化を示す。

0062

図10(b)の時刻t1において、指令トルクT*が所定値T1から上昇し始める。指令トルクT*の上昇に伴って、図10(a)に示すように、q軸電流Iqが増加し始めるとともに、d軸電流Idの絶対値が増加し始める(図10(c)の状態)。

0063

図10(a)の時刻t2において、d軸電流Idがd軸電流目標値Id*に達する。これにより、図10(b)に示すように、界磁電流参照値If_cが界磁電流最小値If_minより大きくなり、界磁電流目標値If*が増加し始める(図10(d)の状態)。

0064

図10(a)の時刻t3において、界磁電流目標値If*の増加に界磁回路36の時定数に相当する時間遅れて、界磁電流Ifが増加し始める。このため、指令トルクT*に追従するためのq軸電流Iqが減少し始めるとともに、d軸電流Idの絶対値が減少し始める(図10(e)の状態)。

0065

図10(b)の時刻t4において、指令トルクT*が所定値T2に達する。これにより、q軸電流Iq、d軸電流Id及び界磁電流Ifの変化が停止する(図10(f)の状態)。

0066

以下、本実施形態の効果を述べる。

0067

本願の発明者は、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとが近づくと、相電流(dq軸電流Idq)の振幅Iaが最小となることを発見した。この発見に基づいて、誘起電圧の振幅Vbと印加電圧の振幅Vaとの差が所定値以下となるように界磁電流Ifを制御する。これにより、電流振幅Iaが小さくなり、相電流が流れることで発生する電力損失(銅損)を低減することができる。このように、簡易な制御でモータ10における電力効率の改善を行うことが可能になる。

0068

具体的には、界磁電流Ifを、電圧制限円とd軸との交点におけるd軸電流Idが0になるような界磁電流最小値If_min、又は、電圧制限円とd軸との交点におけるd軸電流Idが0以下になるような界磁電流参照値If_cとなるように制御を行う。

0069

界磁電流Ifを界磁電流最小値If_minに固定すると、電機子巻線群10a,10bと鎖交する鎖交磁束の大きさが固定される。ここで、モータ10の出力トルクT及び出力電力Pは、電機子巻線群10a,10bに流れる電流と、鎖交磁束によって決定される。このため、鎖交磁束が制限されると、出力トルクT及び出力電力Pの最大値が制限されることになる。そこで、出力トルクT又は出力電力Pの指令値である指令トルクT*又は指令電力P*が所定値よりも大きくなった場合に、界磁電流Ifを界磁電流最小値If_minより大きな界磁電流参照値If_cに設定する構成にした。これにより、電力損失を抑制しつつ、出力トルクT及び出力電力Pの最大値が制限されることを防ぐことができる。

0070

d軸電流Idの増加に伴って、相電流が流れることによって生じる電力損失が大きくなる。そこで、d軸電流Idに基づいて界磁電流参照値If_cの大きさを設定することで、d軸電流Idの増加に伴う電力損失を抑制することが可能になる。

0071

出力トルクTや出力電力Pの増加に伴って、d軸電流Idは増加する。ここで、d軸電流目標値Id*を設定し、d軸電流Idの検出値がd軸電流目標値Id*を超えたことを条件として、界磁電流目標値Ifとして界磁電流参照値If_cを選択する構成とした。これにより、出力トルクT又は出力電力Pを指令トルクT*又は指令電力P*に近づけつつ、電流振幅Iaが大きくなることを抑制することができる。

0072

電圧制限円の頂点よりq軸側にd軸電流目標値Id*を設定した。このようにd軸電流目標値Id*を設定することで、出力トルクT又は出力電力Pを一定値とするベクトル軌跡と電圧制限円との交点と、原点との距離が短くなる。つまり、電流振幅Iaが大きくなることを抑制することができる。

0073

出力トルクT及び出力電力Pは、主としてq軸電流Iqに応じて変化する。そこで、電力効率を重視する場合、指令トルクT*又は指令電力P*の変動に対する応答性を重視する場合に比べて、電圧制限円においてd軸電流Idに対するq軸電流Iqの変化が大きくなるように、d軸電流目標値Id*を設定する。

0074

具体的には、電力効率を重視する場合に、電圧制限円において、頂点と右端との中点から頂点側にd軸電流目標値Id*を設定する。このような設定を行うことで、q軸電流Iqの値が大きくなり、界磁電流Ifの値が小さくなる。そして、界磁電流Ifの値が小さくなることで、dq電流の振幅が小さくなり、電力効率を向上させることができる。

0075

また、応答性を重視する場合に、電圧制限円において、頂点と右端との中点からq軸側にd軸電流目標値Id*を設定する。このような設定を行うことで、d軸電流Idに対するq軸電流Iqの変化が大きくなる。

0076

印加電圧の振幅Vaを一定としつつ、印加電圧の位相δを調整することで、出力トルクT及び出力電力Pを制御する構成とした。このような構成にすることで制御を簡易化できる。また、例えば、印加電圧(昇圧型DCDCコンバータ23及びインバータINV1,INV2のデューティ)を最大値とすることで、電流振幅Iaを低減することができ、電力効率が向上する。

0077

(その他の実施形態)
・上記実施形態では、印加電圧の振幅Vaと誘起電圧の振幅Vbとの偏差が0になるように界磁電流目標値If*の設定を行う構成とした。これを変更し、印加電圧の振幅Vaと誘起電圧の振幅Vbとの偏差が所定値以下となるように界磁電流目標値If*の設定を行う構成としてもよい。

0078

・界磁電流目標値If*を常に界磁電流最小値If_minとする制御を行ってもよい。この場合、出力電力P及び出力トルクTの最大値が小さくなる一方、電力効率を向上させることができる。

0079

・界磁電流参照値If_cは、指令トルクT*とトルクTの偏差に基づいて設定してもよい。

0080

・印加電圧の振幅Vaを最大値で固定する構成としたが、これを変更してもよい。

0081

・制御装置は、指令電力P*が入力され、モータ10の入出力電力Pを指令電力P*に近づける制御を行うものであってもよい。この場合、指令電力P*と入出力電力Pとの偏差を入力値とするとともに、電圧位相δを操作量とし、指令電力P*と入出力電力Pとの偏差を小さくするようにPID制御を実施する。

0082

・さらに、上記実施形態を下記のように変更してもよい。

0083

電流振幅Iaが、その上限値である振幅上限値IaMAXを超えないように、d軸電流目標値Id*を設定する構成とする。ここで、振幅上限値IaMAXは、第1,第2インバータINV1,INV2から電機子巻線群10a,10bに対して入出力可能な電流の振幅の最大値に設定されている。このような制御を行うことで、インバータINV1,INV2と電機子巻線群10a,10bとの間で過剰な電流が流れ、スイッチSUp1〜SWn2などに損傷が生じることを抑制できる。

0084

さらに、電流振幅Iaが振幅上限値IaMAXを超えないように設定されたd軸電流目標値Id*に基づいて、トルクT(又は電力P)が最大となるように、界磁電流目標値If*を設定する構成とする。なお、トルクTは、図10に示すように、T=Lf・If・Iqとして表すことができる。このような構成にすることで、電流振幅Iaが、振幅上限値IaMAXを超えないように制御しつつ、トルクT(又は電力P)を最大化することが可能になる。

0085

具体的には、振幅上限値IaMAXとd軸電流目標値Id*との偏差が所定値以下になった場合(即ち、d軸電流目標値Id*が振幅上限値IaMAXに近づいた場合)、電流振幅Iaを振幅上限値IaMAXとしつつ、電流ベクトルの位相が小さくなるように界磁電流参照値If_c(第2界磁電流)を減少させることで、トルクT(又は電力P)が最大となるように、界磁電流参照値If_cを設定する。さらに具体的には、d軸電流Idとq軸電流Iqとの組み合わせである電流ベクトルが電圧制限円の頂点に達するまで、界磁電流参照値If_cを減少させる。これにより、トルクT(又は電力P)が最大となるように、界磁電流目標値If*を設定することができる。

0086

図11を用いて、本変形例におけるd軸電流目標値Id*及び界磁電流参照値If_cの設定を説明する。d軸電流目標値Id*が増加することで、振幅上限値IaMAXに近づいた場合、電流振幅Iaが振幅上限値IaMAXとなるようにd軸電流目標値Id*を設定する(破線)。さらに、界磁電流参照値If_cを減少させることで、電圧制限円をq軸側に移動させる。界磁電流Ifが減少する一方で、q軸電流Iqが増加することで、トルクTが増加していく。そして、電流ベクトルが電圧制限円の頂点に達するまで、界磁電流Ifを下げるように調整する(実線)。これにより、トルクTを最大とすることができる。

0087

10a…第1巻線群、10b…第2巻線群、11…界磁巻線、12…ロータ、13…ステータ、40…制御装置。

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