図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
河川橋や高架橋等の種々の橋梁では、架設後の維持管理の一環として定期的に点検を行い、構成部材の劣化の状況や損傷を確認している。橋梁の点検は、点検員が部材に接近して目視するいわゆる近接点検が一般的である。
橋梁には、例えば床版の下面や、床版の下面に配置された鋼鈑桁の主桁と主桁の間の部分等のように、点検員の接近が困難な部位が存在する。このような部位の近接点検を行うために、床版の下面の桁に沿って仮設足場を配置して点検員を主桁や床版に接近させたり、高所作業車を用いて点検員を床版の下面に接近させたりしている。
しかしながら、床版の下面に仮設足場を配置する場合、大きな手間とコストがかかる不都合がある。また、床版の下面を作業車で点検する場合、大型車両である車両本体を床版上に停止させて道路の一部を占有する必要があり、道路の交通に影響を与える不都合がある。
このような不都合を解消するため、カメラを搭載し、橋梁の桁の下端部に係合して走行するように構成された作業台車が提案されている。例えば、特許文献1に記載の作業台車は、作業台車に揺動自在に取り付けられた複数のアームの先端に鼓状の車輪をそれぞれ設け、これらの鼓状の車輪で橋梁のI型鋼材からなる桁の下フランジの両端縁を挟み込み、上記車輪を駆動して作業台車を桁に沿って走行させている。作業台車は、車輪による走行とカメラの動作が遠隔操作され、橋梁の所定の部位に接近してカメラで撮影を行う。これにより、遠隔位置の点検員がカメラの映像を視認して、橋梁を点検している。
特許文献2に記載の橋梁点検装置では、橋梁の桁に沿って架設される2本のワイヤロープと、このワイヤロープ上を走行する台車と、台車に搭載した点検機器とを用いて、橋梁を点検している。台車は、走行車輪の他に、桁の下フランジに接触する反力車輪を備えている。反力車輪は、ダンパー装置によって下フランジに押圧され、これに伴う反力により走行車輪がワイヤロープに押圧され、桁に沿って台車を確実に移動させている。
概要
橋梁の構造による移動の制限を少なくし、橋梁の下面部分を確実に点検することができる橋梁検査ロボットシステムを提供する。第1及び第2懸垂台車11,12は、4つの車輪41〜44、第1〜第3変位部46〜48を有する。第1〜第3変位部46〜48は、第1車輪41〜第3車輪43を下フランジ30cの上面に接触させた走行位置と、下フランジ30cの上面から退避させた退避位置との間で変位させる。障害物センサ14からの障害物検出信号により、第1〜第3変位部46〜48は第1〜第3車輪41〜43を走行位置から退避位置に変位させる。カメラ15は、レール13に移動自在に取り付けられ、橋梁の下面部分を撮影する。画像処理部は、カメラ15からの撮影データに基づき橋梁の損傷の種別、位置、サイズ等を特定する。
目的
本発明は、橋梁の構造による移動の制限を少なくして、橋梁の下面部分を確実に点検することができる橋梁検査ロボットシステムを提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
請求項1
下フランジを有する複数の主桁を前記主桁の長手方向に直交する方向に離間して並べてなる橋梁を検査する橋梁検査ロボットシステムにおいて、前記主桁の長手方向に離間して配置され、前記下フランジの上面に当接して走行する第1車輪及び第2車輪、前記第1車輪及び前記第2車輪を個別に前記下フランジの上面に接触させる走行位置と、前記下フランジの上面から退避した退避位置との間で変位させる第1変位部及び第2変位部を有し、前記主桁に取り付けられる第1懸垂台車及び第2懸垂台車と、前記第1懸垂台車及び前記第2懸垂台車の走行方向前方の障害物を検出し、前記第1変位部又は第2変位部により前記第1車輪又は前記第2車輪を走行位置から退避位置に変位させる障害物検出部と、前記第1懸垂台車及び前記第2懸垂台車を連結するレールと、前記レールに移動自在に取り付けられ、前記橋梁の下面部分を撮影するカメラと、前記カメラの撮影データに基づき前記橋梁の損傷部を特定する画像処理部とを備える橋梁検査ロボットシステム。
請求項2
請求項3
請求項4
前記画像処理部は、複数の視差に基づき前記複数の主桁間にある部材の位置を前記カメラ本体からの距離として検出し、前記懸垂台車及びカメラ台車の移動距離に基づき前記部材の三次元座標位置を特定し、前記三次元座標位置に基づき前記部材を回避する前記カメラ本体の撮影位置を特定する請求項3記載の橋梁検査ロボットシステム。
請求項5
前記画像処理部は、前記懸垂台車の走行方向前方にある前記障害物を検出する障害物検出機能を有し、前記障害物検出機能により前記障害物検出部を構成する請求項3又は4記載の橋梁検査ロボットシステム。
請求項6
前記第1懸垂台車及び前記第2懸垂台車は、前記下フランジの下面に接触する下面接触車輪を有する請求項1から5いずれか1項記載の橋梁検査ロボットシステム。
請求項7
請求項8
技術分野
背景技術
0002
河川橋や高架橋等の種々の橋梁では、架設後の維持管理の一環として定期的に点検を行い、構成部材の劣化の状況や損傷を確認している。橋梁の点検は、点検員が部材に接近して目視するいわゆる近接点検が一般的である。
0003
橋梁には、例えば床版の下面や、床版の下面に配置された鋼鈑桁の主桁と主桁の間の部分等のように、点検員の接近が困難な部位が存在する。このような部位の近接点検を行うために、床版の下面の桁に沿って仮設足場を配置して点検員を主桁や床版に接近させたり、高所作業車を用いて点検員を床版の下面に接近させたりしている。
0004
しかしながら、床版の下面に仮設足場を配置する場合、大きな手間とコストがかかる不都合がある。また、床版の下面を作業車で点検する場合、大型車両である車両本体を床版上に停止させて道路の一部を占有する必要があり、道路の交通に影響を与える不都合がある。
0005
このような不都合を解消するため、カメラを搭載し、橋梁の桁の下端部に係合して走行するように構成された作業台車が提案されている。例えば、特許文献1に記載の作業台車は、作業台車に揺動自在に取り付けられた複数のアームの先端に鼓状の車輪をそれぞれ設け、これらの鼓状の車輪で橋梁のI型鋼材からなる桁の下フランジの両端縁を挟み込み、上記車輪を駆動して作業台車を桁に沿って走行させている。作業台車は、車輪による走行とカメラの動作が遠隔操作され、橋梁の所定の部位に接近してカメラで撮影を行う。これにより、遠隔位置の点検員がカメラの映像を視認して、橋梁を点検している。
0006
特許文献2に記載の橋梁点検装置では、橋梁の桁に沿って架設される2本のワイヤロープと、このワイヤロープ上を走行する台車と、台車に搭載した点検機器とを用いて、橋梁を点検している。台車は、走行車輪の他に、桁の下フランジに接触する反力車輪を備えている。反力車輪は、ダンパー装置によって下フランジに押圧され、これに伴う反力により走行車輪がワイヤロープに押圧され、桁に沿って台車を確実に移動させている。
先行技術
0007
特開2003−119721号公報
特開2013−194457号公報
発明が解決しようとする課題
0008
例えば高速道路の橋梁は橋脚、鋼鈑桁、床版などから構成されているものがある。橋脚は、橋梁の長手方向に離間して配置され、鋼鈑桁、床版などを受ける基礎部材である。橋脚の上面には鋼鈑桁が配される。鋼鈑桁は、複数の主桁とこれらを繋ぐ横桁、対傾構などから構成され、上部に例えば鉄筋コンクリート製の床版が固定される。主桁は、複数のI型鋼材を添接板で連結して構成されている。I型鋼材は、垂直板とこれの上下端に配されるフランジとからI型に構成されている。添接板はボルトナットによる締結や、溶接等によりI型鋼材に取り付けられている。対傾構は複数の部材を例えば三角形に組み合わせた構造である。
0009
このように鋼鈑桁は、主桁の間に横桁や対傾構の各種補強部材が架設される他に、長手方向に添接板やその固定ボルト等が一定間隔で配されている。このため、特許文献1のような台車を用いて橋梁の下面等を撮影しようとしても、これらの各種補強部材や添接板などが台車の進行を妨げてしまうという問題がある。例えば、主桁の垂直板の側面に垂直補剛材が設けられている場合がある。この垂直補剛材は、垂直板に直交する方向に延在されて、下フランジの縁端に達する幅を有することがある。このような場合に、特許文献1の作業台車では、下フランジの両端縁を挟み込む車輪が垂直補剛材を乗り越えることが困難であり、その結果、主桁に沿って走行する範囲が制限されるという問題がある。また、カメラに支持部材を設けてカメラを台車の上方へ突出させて鋼鈑桁の内部を撮影しようとする場合に、支持部材が各種補強部材に当たってしまい、作業台車の進行の障害となってしまう。
0010
更に、特許文献1の作業台車は、鼓状の車輪が係合する下フランジの厚みが大きい場合に、車輪の係合が解除されやすい問題がある。このため、下フランジの厚みよりも大きくなる添接板による接合部分で車輪が脱落してしまうおそれがある。
0011
特許文献2のように、ワイヤロープを用いて作業台車を走行させる場合には、各種補強部材を避けるようにワイヤロープを主桁に平行に設ける必要がある。このため、点検員が鋼鈑桁の近くまで行き、点検対象の鋼鈑桁を目視により確認し、且つこれらの各種補強部材を避けつつ、ワイヤロープを張る必要がある。このように点検作業の前の予備作業であるワイヤロープ張り作業に、時間と手間を要するという問題がある。
0012
本発明は、橋梁の構造による移動の制限を少なくして、橋梁の下面部分を確実に点検することができる橋梁検査ロボットシステムを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0013
本発明の橋梁検査ロボットシステムは、下フランジを有する複数の主桁を主桁の長手方向に直交する方向に離間して並べてなる橋梁を検査する。橋梁検査ロボットシステムは、第1懸垂台車及び第2懸垂台車と、障害物検出部と、レールと、カメラと、画像処理部とを備える。第1懸垂台車及び第2懸垂台車は、第1車輪及び第2車輪と、第1変位部及び第2変位部とを有し、主桁に取り付けられる。第1車輪及び第2車輪は主桁の長手方向に離間して配置され、主桁の下フランジの上面に当接して主桁の長手方向に走行する。第1変位部及び第2変位部は、第1車輪及び第2車輪を個別に走行位置及び退避位置に変位させる。なお、退避位置とは、懸垂台車の走行時に車輪が障害物に当たることなく走行の障害とならない位置を言う。走行位置では、第1車輪又は第2車輪を、下フランジの上面に接触させる。退避位置では、第1車輪又は第2車輪を下フランジの上面から退避させる。障害物検出部は、第1懸垂台車及び第2懸垂台車の走行方向前方の障害物を検出し、第1変位部又は第2変位部により第1車輪又は第2車輪を走行位置から退避位置に変位させる。レールは、第1懸垂台車及び第2懸垂台車に取り付けられ、これらを連結する。カメラは、レールに移動自在に取り付けられる。画像処理部は、カメラの撮影データに基づき橋梁の損傷部を特定する。
0014
なお、カメラは、カメラ本体と、カメラを昇降させる昇降部と、昇降部をレール上で移動させる走行台とを有することが好ましい。この場合には、カメラを橋梁の下面部の任意位置にセットすることができ、死角の無い画像を得ることができる。
0016
画像処理部は、複数の視差に基づき複数の主桁間にある部材の位置をカメラ本体からの距離として検出し、懸垂台車及びカメラ台車の移動距離に基づき部材の三次元座標位置を特定し、三次元座標位置に基づき部材を回避するカメラ本体の撮影位置を特定することが好ましい。この場合には、各種補強部材を無くした透視画像を得ることができる。
0017
画像処理部は、懸垂台車の走行方向前方にある障害物を検出する障害物検出機能を有し、障害物検出機能により障害物検出部を構成することが好ましい。この場合には、懸垂台車の障害物を回避するための障害物センサとして利用することができる。
0018
第1懸垂台車及び第2懸垂台車は、下フランジの下面に接触する下面接触車輪を有することが好ましい。この場合には、第1車輪及び第2車輪を確実に下フランジの上面に接触させることができる他に、第1車輪又は第2車輪が退避位置になった時に懸垂台車の姿勢が保持されるため、安定した走行が可能になる。
0020
障害物の主桁長手方向長さに比べて、懸垂台車に主桁長手方向に離間して配される第1車輪及び第2車輪の主桁長手方向でのオフセット長さが長いことが好ましい。この場合には、一方の車輪が障害物を退避している間に、他方の車輪が主桁の下フランジに接触しているため、懸垂台車が主桁から脱落することなく、確実に移動させることができる。
発明の効果
0021
本発明によれば、橋梁の構造による移動の制限を少なくして、橋梁の下面部分を確実に点検することができる。
図面の簡単な説明
0022
本発明の橋梁検査ロボットシステムの橋梁検査状態を示す正面図である。図である。
懸垂台車とカメラの動きを示す正面図である。
懸垂台車の一部を切り欠いて示す正面図である。
懸垂台車の車輪の配置とカメラ台車とを示す平面図である。
カメラを示す斜視図である。
他の実施形態における懸垂台車の車輪の配置とカメラ台車とを示す平面図である。
実施例
0023
図1に示すように、本発明の橋梁検査ロボットシステム10は、第1懸垂台車11及び第2懸垂台車12と、レール13と、障害物センサ(障害物検出部)14(図4参照)と、カメラ15と、画像処理部16(図3参照)とを備える。
0024
検査対象の橋梁20は、例えば橋脚21、鋼鈑桁22、鉄筋コンクリート製の床版23から構成されており、橋脚21の上に鋼鈑桁22により床版23が固定されている。以下、説明の便宜上、橋梁長手方向をX軸方向とし、橋梁長手方向に直交する幅方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向として説明する。
0025
図2及び図3に示すように、鋼鈑桁22は、橋梁20の長手方向に配される複数の主桁25と、これら主桁25を繋ぐ横桁(図示省略)や対傾構26などの補強部材とから構成されている。主桁25は、複数のI型鋼材30を添接板31により連結して構成されている。I型鋼材30は、垂直板30aの上端に上フランジ30b、下端に下フランジ30cを配した断面がI型に構成されている。添接板31は図示省略のボルトナットによる締結や、溶接等によりI型鋼材30に取り付けられており、I型鋼材30同士をX軸方向に連結する。
0026
対傾構26はL型鋼材27、取付板28等を用いて三角形を基本とする補強部材として構成されている。対傾構26の他にI型鋼材30の間には、荷重分散横桁、補強横桁などの各種部材が配されているが、これらの図示は省略している。
0027
図4に示すように、第1懸垂台車11は、矩形状の基台40と、基台40に取り付けられる第1〜第3車輪41〜43と、下面接触車輪44と、連結ブロック45(図2参照)とを有する。第1〜第3車輪41〜43は、第1〜第3変位部46〜48により、図2及び図3に実線で示す走行位置と、二点鎖線で示す退避位置との間で変位する。なお、本実施形態では、予め予想される全ての障害物に対して退避可能なように最大開き角度となる一定位置を退避位置としている。しかし、障害物に対して各車輪41〜43が当たることが無い位置であればよく、障害物のサイズに応じて退避位置(退避角度)を変更してもよい。
0028
図4に示すように、第1車輪41,第2車輪42は、基台40の一方の側縁部近くで前端側及び後端側の角部近くに設けられている。第3車輪43は、基台40の他方の側縁部近くでX方向中間位置に設けられている。左右の車輪は、例えば第1車輪41と第3車輪43との間、第3車輪43と第2車輪42との間で、互いにX軸方向にずらして配置されている。ずらし長さ(オフセット長さ)L2は、X軸方向での障害物長さL1よりも、長く設定されている。このオフセット長さL2を有することにより、一方の側縁部の車輪、例えば第1車輪41が障害物である添接板31を回避するために退避位置になっている時には、一方の残りの車輪、例えば第2車輪42や他方の側縁部の車輪、例えば第3車輪43は下フランジ30cの上面に確実に当接する。これにより、常に二点で懸垂されるので、下フランジ30cから懸垂台車11,12が脱落することを阻止する。また、下面接触車輪44が下フランジ30cの下面に接触しているので、懸垂台車11,12が傾斜することなく水平姿勢が維持される。
0029
図3に示すように、下面接触車輪44は、基台40の中央部に支持ブラケット50により取り付けられている。支持ブラケット50は、下面接触車輪44を回転自在に保持し、且つ下フランジ30cの下面に向けて下面接触車輪44を図示省略のコイルバネ等により押圧する。支持ブラケット50は、第1〜第3変位部46〜48のように、変位することはない。
0030
各車輪41〜44はモータを内蔵しており、第1コントローラ51の制御により各車輪41〜44が同期して回転する。これにより、第1懸垂台車11は下フランジ30cから下方に懸垂した状態でX方向に走行する。なお、モータ内蔵型車輪の代わりに、外部モータにより各車輪41〜44を回転させてもよい。
0031
第1変位部46は、車輪保持ブラケット55と、車輪保持ブラケット55を揺動自在に保持する揺動部56とを有する。車輪保持ブラケット55は、下フランジ30cの上面に対して第1車輪41が垂直に接するようにL字状に折り曲げられている。第1変位部46の揺動部56は、図示省略のモータにより車輪保持ブラケット55を揺動させて、第1車輪41を下フランジ30cの上面に接触させる走行位置(実線表示)と、下フランジ30cの上面から退避した退避位置(二点鎖線表示)との間で変位させる。他の第2変位部47(図4参照)、第3変位部48も、第1変位部46と同じに構成されている。以下の説明において、同じ構成部材には同じ符号を付して重複した説明を省略している。第2懸垂台車12も、第1懸垂台車11と同じに構成されている。なお、車輪41〜43の配置は第1懸垂台車11とは左右が逆になっている。
0032
図4に示すように、第1懸垂台車11、第2懸垂台車12には、各車輪41〜43の走行方向前方の障害物を検出する障害物センサ14が設けられている。障害物センサ14は、車輪41〜43が乗り越えることができない高さを有する障害物、例えば添接板31や取付ボルトナット等を検出する。障害物センサ14は、アクチュエータにより機械的に障害物を検出するものや、光学的、磁気的、その他の方法で障害物を検出することができるものが用いられる。
0033
図2に示すように、第1懸垂台車11及び第2懸垂台車12には、レール13が連結ブロック45を介し着脱自在に取り付けられている。レール13は、第1懸垂台車11及び第2懸垂台車12を連結し、二つの主桁25間に架け渡される。図1に示すように、レール13は、主桁25の間隔L3よりも長い全長L4を有し、第1懸垂台車11及び第2懸垂台車12の一方又は両方から橋梁20の幅方向(Y方向)に突出している。
0034
カメラ15は、カメラ本体70と、保持部71と、昇降部72と、カメラ台車73とを有する。図5に示すように、カメラ本体70は二眼カメラから構成されており、複数の撮影レンズ70aがY方向に並べて設けられる。カメラ本体70は保持部71により昇降部72の上端に取り付けられている。保持部71は、Y軸を中心としてカメラ本体70を例えば270°の角度範囲で回転させ、且つZ軸を中心としてカメラ本体70を例えば270°の角度範囲で回転させる。なお、これらの回転角度範囲は適宜変更してよく、要するにカメラ本体70の姿勢を代えて、橋梁20の下面部の全域を死角無く撮影することができればよい。
0035
カメラ本体70は、通常のカメラに比べて高機能化されている。例えば、LEDなどの高輝度照明器70bを有し、且つ例えば1/500秒以上の高速でシャッタ制御されることにより、カメラブレの影響が抑えられる。また、光学シフト方式などのブレ補正制御機能を有し、カメラブレの影響が抑えられる。更に、高感度撮影機能を有しノイズが低減される他に、測光エリアや制御プログラムの改良により、高精度露光制御機能によって野外の暗部での明るさ変動に対応可能にしている。二眼機能により奥行き情報を得て障害物を除去する画像処理が確実に行われる。また、二眼機能の適切な基線長さの選定と点検前校正の簡易化により、損傷部の長さを正確に測定することができる。
0036
図2に示すように、昇降部72はカメラ台車73に取り付けられ、カメラ本体70を鉛直方向(Z軸方向)で移動自在に保持する。昇降部72の昇降ストロークは、例えば2mである。最下降時には、カメラ台車73の凹部73a(図4参照)内にカメラ本体70の下部が収納される。この収納時には、カメラ本体70が、鋼鈑桁22の各種部材に当接することが無い位置に保持される。カメラ本体70は、最下降状態において、鋼鈑桁22の下面部分の全体を視野に入れることができる視野角を有し、更にズーム機能も有する。また、最上昇時には、床版23の下面に接近することができる。
0037
図4及び図5に示すように、カメラ台車73は、2本のレール13間に取り付けられ、レール13上を移動する。カメラ台車74の前端部及び後端部には、レール13の一部が挿入されるレール溝73bが形成されている。カメラ台車73は、レール13を自走できる構造であれば良く、移動方式は特に限定はされない。例えば、駆動車輪、ラックアンドピニオン、ワイヤによる牽引、ボールネジなどによりレール13を走行する。なお、実施形態では2本のレール13としているが、これは1本のレールや3本以上のレールでも良い。レール13の断面形状も矩形に限られることなく、円形や楕円形、その他の多角形であってもよい。また、レール13によるカメラ台車43の保持案内方式も特に図示のものに限定されるものではなく、他の保持案内方式を用いても良い。
0038
図2に示すように、本実施形態では、懸垂台車11,12が走行する主桁25の間(内側)のみならず、懸垂台車11,12が走行する主桁25の外側も撮影が可能なように、主桁25を超えてレール13上を移動する。このため、懸垂台車11,12の連結ブロック45がカメラ台車73の走行の障害にならないように、懸垂台車11,12の下方にレール13が取り付けられている。なお、懸垂台車11,12へのレール13の取り付けは、カメラ台車73の走行の障害にならない構造であれば良く、両持ち構造の他に片持ち構造であってもよい。レール13の両端には、カメラ台車73がレール13から脱落することがないように、ストッパ13aが取り付けられている。
0039
カメラ本体70はカメラ台車73の凹部73a内に収納可能にされており、昇降部72が最下端まで下降すると、カメラ本体70が凹部73a内に入る。このカメラ本体70の収納状態では、懸垂台車11,12の下部をカメラ台車73が通り抜けることができ、主桁25の内側から外側に移動し、主桁25の外側部分を撮影することができる。なお、カメラ本体70は凹部73a内に必ずしも収納する必要はなく、昇降部72が最下位まで下降した状態で、カメラ本体70の最上部位が、主桁25間に存在する各種補強部材の最下部位よりも下側に位置していれば良い。
0040
図3に示すように、第1懸垂台車11の基台40には、第1コントローラ51が内蔵されている。第1コントローラ51は各懸垂台車11,12、カメラ本体70、保持部71、昇降部72、カメラ台車73などの各部を制御する他に、カメラ本体70からの画像データを点検者の手元にある第2コントローラ52に送信する。画像データは、有線又は無線方式で送信される。これら第1コントローラ51及び第2コントローラ52によりコントローラが構成される。
0041
第2コントローラ52は、図1に示すように例えばノートパソコン等から構成されている。第2コントローラ52は、ディスプレイ52a、キーボード52b、演算処理部52c(図3参照)を有する他に、データ通信部52dやUSBポート等を有する。USBポートには必要に応じてジョイステック等の操作部材が接続されている。演算処理部52cは、所定のアプリケーションがインストールされることにより、画像処理部16や、懸垂台車11,12、カメラ台車73、昇降部72、保持部71を操作させるための制御部75や、モード切換部76として機能する。図3にはこの機能ブロックが図示されている。
0042
第2コントローラ52は、キーボード52bやジョイステック等の操作部材の操作を受けて制御信号を発生させ、第1コントローラ51に制御信号を送り、各部を遠隔操作する。画像処理部16は、第1コントローラ51から送られてきた画像データを加工して、ディスプレイ52aにカメラ本体70からのスルー画像を表示する。この他に、第1コントローラ51からの画像データに基づき、各種補強部材の検出及び位置の特定、損傷部の検出、サイズ、位置の特定を行う。
0043
モード切換部76は、入力操作に応じて点検の自動モード及び手動モードを切り換える。自動モードでは、予め決められた手順に従い懸垂台車11,12及びカメラ台車73を移動させ、橋梁20の下面部分を撮影し、画像処理により各種補強部材及び損傷部を特定し、各種補強部材の位置、損傷部のサイズや評価などを記憶する。
0044
なお、予め設定しておくことにより、一定サイズ以上の損傷部を検出した時には、アラームを発して点検者に報知することもできる。この場合には、点検者は自動モードを中断して手動モードに切り換え、ズーム撮影や撮影角度を変えた撮影を行う。
0045
また、予め要点検箇所をマップデータとしておおよその位置を入力しておくことにより、これらの要点検箇所が撮影可能な状態になった時にアラームを発して、点検者に報知することもできる。更には、二眼カメラの視差画像を用いて3D表示画像も作成する。
0046
以下、本発明の橋梁検査ロボットシステム10の作用を説明する。点検員は、梯子などにより橋梁20の下側に設けられている作業踊り場に降りることができる。作業踊り場では、検査対象の橋梁20の複数の主桁25それぞれに懸垂台車11,12が取り付けられる。この後に、カメラ台車73が取り付けられたレール13が懸垂台車11,12に取り付けられる。各種コネクタを接続した後に、自動モードを選択し、点検を指示すると、予め決められたプログラムに基づき各部が動作して、点検が自動で行われる。
0047
自動点検では、橋脚21間の点検対象の主桁25の下フランジ30c上でX軸方向に懸垂台車11,12を往復させ、カメラ本体70により点検対象部位を撮影する。先ず行き工程で、撮影可能な範囲(床版23の下面全面と、主桁25の上フランジ30b下面、垂直部の側面の一部)をカメラ本体70の姿勢を変えずに、動画及び必要に応じて静止画を得る。また、この行き工程中に得られた複数の画像データを画像処理して、各種補強部材のXYZ軸上での座標位置(三次元座標位置)を特定する。座標位置の特定では、先ず、横桁、対傾構26、垂直部材などの補強部材が画像認識される。次に、認識した各補強部材について、複数の視差に基づきXYZ軸方向での各補強部材の位置をカメラ本体からの距離として求める。求めた距離データとカメラ本体70の位置データとに基づき、各補強部材の位置を三次元座標位置として特定する。カメラ本体70の位置データは、懸垂台車11,12やカメラ台車73の移動距離に基づき特定することができる。移動距離は、各モータの回転数や、各車輪41〜43の回転数などに基づき求めることができる。
0048
また、画像処理により各種補強部材を削除した透視画を橋梁20下部の撮影可能範囲内で得る。この複数の透視画を画像合成して、点検対象エリアの床版下面の全体画像を生成する。この全体画像に対して、周知の画像処理、例えばHaar-like特徴量(矩形領域の平均明度の差分値として求められるスカラ量であり、明度勾配の強度を表す)を用いたAdaBoost(Adaptive Boosting)による検出処理等の画像処理を行うことにより、損傷が疑われる箇所(損傷候補)を検出する。この場合、事前に用意した損傷/非損傷画像の特徴量から、学習により「損傷/非損傷」を判別する画像処理系を構築する。同様にして、点検対象エリアの主桁25の上フランジ面及びこれに連続する垂直面の一部について、透視画を画像合成して、点検対象エリアの第1回の撮影により得られる範囲で主桁25の全体画像を生成する。この全体画像から、損傷候補を検出する。同様にして、点検対象エリアの各補強部材の全体画像を生成し、この全体画像から損傷候補を検出する。
0049
損傷は、腐食、亀裂、塗布膜割れなどがある。これらの損傷は他の正常部位に比べて色が変化したり、部分的に膨らんだり、亀裂が発生したりしており、これらの色や形状の変化に基づき損傷部の種別を特定する。また、損傷部のエリアの大きさから、損傷部のサイズを特定し、このサイズに応じて損傷程度を評価する。これらの画像認識や損傷程度の評価の判定精度は、事前に用意した損傷/非損傷画像の特徴量の学習効果により高められており、損傷の有無やサイズ、評価が確実に行われる。
0050
戻り工程では、行き工程で得られた各補強部材の位置に基づき、点検対象エリアの床版23の下面、主桁25の内側面(上フランジ30b下面、垂直部の側面、下フランジ30cの上面)が写る複数の撮影点を特定する。この特定点に戻り工程の戻り時に、順次カメラ本体70を位置させるように、懸垂台車11,12、カメラ台車73、昇降部72、保持部71を制御する。これにより、行き工程で撮影が不可能であった部分につき、撮影データを補充し、点検対象エリア内で死角の無い撮影が行われる。この撮影データに基づき、行き工程と同じようにして、行き工程では死角であった部分につき撮影データが補充される。これにより、点検対象エリアの床版23の全体の透視画像、点検対象エリアの主桁25の上フランジ面、垂直面、下フランジ面の全体の透視画像、点検対象エリアの各補強部材全体の画像などを取得する。これらの全体画像から損傷候補を検出し、損傷データを得る。
0051
また、損傷候補に対しては必要に応じてズーム撮影等を行い、損傷部のサイズ及び形状を計測し、損傷の種別を特定し、判定精度を上げる。そして、損傷部の座標位置と共に損傷種別や損傷画像を損傷データとして記憶する。損傷部の座標位置の特定は、各懸垂台車11,12、カメラ台車73、昇降部72の移動量や保持部71の変位量に基づき行われる。
0052
点検調書作成モードでは、予め記憶されている所定の点検調書フォーマット文書に、損傷データを嵌め込んで点検調書を自動作成する。作成された点検調書は、点検員が確認して、編集や修正を加えることができる。自動取得した損傷データに基づき所定のフォーマットの点検調書文書に損傷データが嵌め込み合成されることにより、自動的に点検調書が作成されるため、点検者の作業時間を大幅に短縮することができる。
0053
カメラ本体70の視野はカメラ本体70を複数の主桁25間の中央に配置した時に、橋梁20の床版23の下面及び主桁25の垂直部が写る範囲とされている。なお、複数の主桁25間のY方向長さ(桁間長さ)が長くて一つの撮影画面範囲内に全体が写らない場合には、Y方向に撮影点を複数設けて、分割撮影し、得られた分割撮影画像を合成して、橋梁20の床版23の下面及び主桁25の垂直部が写るように撮影する。
0054
なお、各補強部材の位置検出や損傷の検出に用いる画像は、動画データであっても、静止画データであってもよい。また、静止画は動画の1フレームから静止画を得てもよいし、複数のフレームの画像合成から得てもよい。
0055
以上のように、本実施形態では、X方向に懸垂台車11,12を移動させて、橋脚21の一方から他方への移動で、橋梁20の下面部分全体の概略画像が得て、この概略画像に基づき各種補強部材の位置情報を取得し、各種補強部材を削除した透視画像に基づき損傷候補を検出し、戻り工程で損傷候補をズーム撮影などにより撮影して損傷の有無、損傷部のサイズや種別等を精度よく判定することができる。
0056
上記実施形態では、行き工程で補強部材の位置を特定し、戻り工程で、補強部材の位置に基づき最適な撮影位置を特定し、この特定位置で損傷の有無等の特定用撮影データを得たが、行き工程で補強部材の位置と損傷部とを特定してもよい。この場合には、一定距離移動して画像データを取得した後に、この画像データに基づき補強部材の位置特定や損傷の有無、サイズ、評価を行う。なお、行き工程中には若干の戻り工程が含まれるが、行き工程中の全行程を戻ることはないので、その分だけ点検に要する時間を短縮することができる。
0057
カメラ本体70は、複数の視差画像を得る二眼カメラであることが好ましいが、二眼カメラを用いることなく、一眼カメラの移動による視差を用いて、補強部材や損傷を特定してもよい。また、一眼カメラによる場合に、撮影光軸を例えばZ軸に固定し、撮影光軸に凸面鏡を配したり、魚眼レンズを用いたりして、360°全方向を撮影してもよい。この場合には、歪んで得られる全周画像を周知の画像処理により歪みを無くした後に、補強部材や損傷を特定することが好ましい。
0058
上記実施形態では、懸垂台車11,12に障害物センサ14を設けて障害物検出部を構成したが、これに代えて、又は加えて、カメラ本体70による画像データに基づき、懸垂台車11,12の前方の障害物、例えば添接板31やボルトナット等を検出してもよい。
0059
上記実施形態では、車輪41〜43を退避位置と走行位置とで揺動させるタイプとしたが、下フランジ30cの上方に、走行車輪を退避させるエリアがある場合には、障害物を乗り越えるように走行車輪を上昇させて退避位置にしてもよい。
0060
上記実施形態では、各懸垂台車11,12に、左右に第1〜第3車輪41〜43を設けたが、懸垂台車11,12はレール13により一体化されるため、内側に位置する第3車輪43は省略し、左右の第1車輪41,第2車輪42のみで、懸垂台車11,12を支持してもよい。この場合には、障害物に対して退避位置にする車輪は必ず一つとして、他の3個の車輪は常に走行位置に保持する。また、第1車輪41を基台40の一方の側縁部に第2車輪42を基台40の他方の側縁部に設けてもよい。
0061
上記実施形態では、車輪41〜44を用いて、懸垂台車11,12を走行させたが、例えば、三角形の各頂点を丸く形成した略三角形状の車輪を設け、この車輪の外周面に無端ベルトを回転自在に設けて、無端ベルトの回転により懸垂台車11,12を走行させてもよい。この場合には、障害物がある場合には、略三角形状の車輪が回転することで障害物を乗り越え、走行することができる。したがって、変位部46〜48を用いて各車輪41〜43を退避位置にする退避回数を減らすことができ、走破性能を上げることができる。
0062
上記実施形態では、第1懸垂台車11及び第2懸垂台車12を、走行位置と退避位置との間で変位可能な第1〜第3車輪41〜43と、下フランジ30cの下面に接触して回転する下面接触車輪44とから構成したが、この他に、図6に示す第2実施形態のように、左右の変位可能な車輪総数を4個として第1〜第3車輪41〜43の他に第5車輪66と第4変位部67とを設け、更に安定した走行を実現させてもよい。この場合にも、左右の車輪は、障害物のX軸方向長さL1よりも、そのオフセット長さL2を長く設定する。なお、図示は省略したが、左右の車輪は2個に限定されることなく、それぞれ3個以上としてもよい。
0063
上記実施形態では、二眼カメラを用いたが、この他に、赤外線カメラ等を更に設けて、点検を行ってもよい。また、懸垂台車11,12に、ロボットハンド等を設けて、腐食が進行している部位に叩くなどの点検処理を付加してもよい。この場合には、腐食の進行状態の確認を確実に行うことができる。更には、ロボットハンドを用いて異物の除去や回収を行ってもよい。この場合には、回収箱や落下防止ネットなどを用いて、異物の落下を阻止する。また、ロボットハンドの先端に吸引チューブを設けて、粉塵などを吸い取ってもよい。更には、空気吹き出しと吸引とを別ノズルを用いて行い、吹き出しノズルにより粉塵を吹き飛ばし、この吹き飛ばした粉塵を吸引ノズルにより回収してもよい。
0064
本発明の検査対象となる橋梁20は、河川、海洋及び陸上のいずれの位置に配置された橋梁も該当する。橋梁の用途も限定されることなく、人道橋、道路橋及び鉄道橋のいずれの用途でもよい。また、鋼鈑桁22を例にして説明したが、下フランジ30cを有する複数の桁を有する橋梁であればよく、構造形式や材料などは特に限定されない。
0065
10橋梁検査ロボットシステム
11 第1懸垂台車
12 第2懸垂台車
13レール
14障害物センサ
15カメラ
20橋梁
21橋脚
22鋼鈑桁
23床版
25主桁
30I型鋼材
30c下フランジ
31添接板
40基台
41〜44,66車輪
45連結ブロック
46〜48,67変位部
56揺動部
70 カメラ本体
71 保持部
72昇降部
73カメラ台車