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図面 (9)

課題

タウタンパク質凝集阻害剤を提供する。また、タウタンパク質凝集阻害剤を含有するタウオパチー治療薬または予防薬、および、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法を提供する。

解決手段

フルオロ色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、タウタンパク質凝集阻害剤によって解決される。また、(1)ヒトタウタンパク質を神経細胞発現する遺伝子組換えショウジョウバエを準備するステップと、(2)前記遺伝子組換えショウジョウバエに候補化合物投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定するステップとを含む、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法によって解決される。

概要

背景

現在、日本はかつて無いスピードで人口の高齢化進展しており、それと共にアルツハイマー病を中心とする認知症患者の数も増えつつある。現時点での認知症患者数は約200万人と推定され、今後高齢化とともに患者数は増加すると見積もられている。これらの認知症の患者の介護は、経済的にも大きな負担となることから、一日も早い有効な治療法確立が急務である。現在、アルツハイマー型認知症治療として、コリンエステラーゼ阻害薬NMDA阻害薬などを用いて一時的に認知症の症状を改善する対症療法が行われているものの、その効果は極めて限定的であり、アルツハイマー病の発症および進行を抑制する根本療法の確立が強く望まれている。

アルツハイマー病の根本療法を確立するためには、アルツハイマー病の発症機序解明が必要である。アルツハイマー病患者に共通してみられる病理学的特徴としては、(1)脳の萎縮、(2)斑状アミロイド蓄積物(老人斑)の形成、(3)神経細胞内における繊維状の塊(神経原線維変化:neurofibrillary tangle(NFT))の形成の3つが知られている。また、老人斑の形成はアミロイドβ凝集蓄積によって、NFTの形成はタウタンパク質の凝集・蓄積によって、それぞれ引き起こされることが知られている。これらの知見に基づいて、アミロイドβおよびタウタンパク質のコンフォメーション変化がアルツハイマー病の発症の発端であるとする、アミロイド仮説およびタウ仮説が、特に有力な仮説として提唱されている。

タウタンパク質は、神経細胞の、主に軸索内に多量に存在する微小管結合タンパク質であり、微小管間の架橋を形成して微小管の重合促進と安定化に寄与する、神経軸索の機能に必須のタンパク質である。これまでに、神経細胞内に凝集したタウタンパク質の異常蓄積が特徴的に認められる神経変性疾患が複数知られており、これらの疾患群は「タウオパチー」と総称される。タウオパチーには、アルツハイマー病の他、前頭側頭葉変性症ピック病大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺などが含まれるが、いずれの疾患も共通して認知症状を呈することが知られている。また、タウ遺伝子突然変異に起因する家族性前頭側頭葉変性症(FTDP−17)では、タウタンパク質の異常蓄積とそれに伴う神経変性が見られ、タウタンパク質の変異自体が認知症状の発症の直接的な原因であることが明らかにされている。これらの知見から、アルツハイマー病を含むタウオパチーの発症機序には共通して、タウタンパク質の凝集・異常蓄積が重要であることが予測されており、タウタンパク質の凝集阻害剤の探索が、アルツハイマー病の根本的治療予防薬の開発につながり得るものとして期待されている。

タウタンパク質の凝集抑制作用を有する化合物として、メチレンブルー報告されている(特許文献1)。メチレンブルーは酸化活性を有する化合物であり、タウタンパク質を酸化修飾することによりタウタンパク質の凝集を抑制することが示唆されている(非特許文献1、2)。また、近年、本発明者らは、酸化活性を有する化合物であるアロキサンをタウオパチーモデルマウス投与すると、脳内のタウタンパク質の蓄積が減少することを報告した(非特許文献3)。しかし、アロキサンは毒性が強く、膵臓β細胞障害することが知られているため、薬剤としての使用は困難である。また、メチレンブルーについても、短期間の投与であれば一定の安全性が担保されているものの、長期間の投与においては慢性毒性が懸念されることが知られている(特許文献2)。そのため、タウタンパク質の凝集抑制作用を有し、かつ、副作用が少なく安全性に優れた化合物の探索が、アルツハイマー病の根本的治療・予防薬を開発する上での極めて重要な課題となる。

これまでに、数多くのタウオパチーモデルマウスが報告されており、それらは薬剤の候補となる化合物を試験するために非常に有用である。しかし、大量の候補化合物を試験するには相当数のマウスが必要となるため、多大な時間的・経済的コストがかかることが問題となる。そこで、ライフサイクルが短く、安価かつ容易に飼育することができるショウジョウバエモデル動物として用いることができれば、候補化合物の大規模スクリーニングには有益である。しかし、ヒトタウタンパク質を過剰発現させたタウオパチーモデルショウジョウバエでは、神経変性が見られる一方で、NFTの形成は確認できないことが報告されており(非特許文献4)、この報告からは、ショウジョウバエにおいてはNFTの形成とは異なるメカニズムによって神経変性が起こることが示唆された。そのため、ショウジョウバエモデルは、タウタンパク質の凝集・蓄積を評価するための系としては適当でなく、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニングには適しないものとして従来理解されていた。

概要

タウタンパク質凝集阻害剤を提供する。また、タウタンパク質凝集阻害剤を含有するタウオパチーの治療薬または予防薬、および、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法を提供する。フルオロ色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、タウタンパク質凝集阻害剤によって解決される。また、(1)ヒトタウタンパク質を神経細胞に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを準備するステップと、(2)前記遺伝子組換えショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定するステップとを含む、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法によって解決される。 なし

目的

本発明は、従来技術の諸問題を解消し、アルツハイマー病をはじめとするタウオパチーの根本的な予防・治療方法を提供する

効果

実績

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請求項1

フルオロ色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、タウタンパク質凝集阻害剤

請求項2

前記フルオロン色素がローズベンガルである、請求項1に記載のタウタンパク質凝集阻害剤。

請求項3

請求項1または2に記載のタウタンパク質凝集阻害剤を含有する、タウオパチー治療薬または予防薬

請求項4

前記タウオパチーがアルツハイマー病である、請求項3に記載の治療薬または予防薬。

請求項5

(1)ヒトタウタンパク質を神経細胞発現する遺伝子組換えショウジョウバエを準備するステップと、(2)前記遺伝子組換えショウジョウバエに候補化合物投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定するステップとを含む、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法

請求項6

(4)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、生存率を測定するステップをさらに含む、請求項5に記載のスクリーニング方法。

請求項7

(5)野生型ショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(6)前記(5)で候補化合物を投与された野生型ショウジョウバエについて、運動機能および/または生存率を測定するステップとをさらに含む、請求項5または6に記載のスクリーニング方法。

請求項8

前記ヒトタウタンパク質が2N4R型アイソフォームである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

技術分野

0001

本発明は、タウタンパク質凝集阻害剤に関する。本発明は、特には、タウタンパク質凝集阻害剤を含有するタウオパチー治療薬または予防薬、および、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法に関する。

背景技術

0002

現在、日本はかつて無いスピードで人口の高齢化進展しており、それと共にアルツハイマー病を中心とする認知症患者の数も増えつつある。現時点での認知症患者数は約200万人と推定され、今後高齢化とともに患者数は増加すると見積もられている。これらの認知症の患者の介護は、経済的にも大きな負担となることから、一日も早い有効な治療法確立が急務である。現在、アルツハイマー型認知症治療として、コリンエステラーゼ阻害薬NMDA阻害薬などを用いて一時的に認知症の症状を改善する対症療法が行われているものの、その効果は極めて限定的であり、アルツハイマー病の発症および進行を抑制する根本療法の確立が強く望まれている。

0003

アルツハイマー病の根本療法を確立するためには、アルツハイマー病の発症機序解明が必要である。アルツハイマー病患者に共通してみられる病理学的特徴としては、(1)脳の萎縮、(2)斑状アミロイド蓄積物(老人斑)の形成、(3)神経細胞内における繊維状の塊(神経原線維変化:neurofibrillary tangle(NFT))の形成の3つが知られている。また、老人斑の形成はアミロイドβ凝集蓄積によって、NFTの形成はタウタンパク質の凝集・蓄積によって、それぞれ引き起こされることが知られている。これらの知見に基づいて、アミロイドβおよびタウタンパク質のコンフォメーション変化がアルツハイマー病の発症の発端であるとする、アミロイド仮説およびタウ仮説が、特に有力な仮説として提唱されている。

0004

タウタンパク質は、神経細胞の、主に軸索内に多量に存在する微小管結合タンパク質であり、微小管間の架橋を形成して微小管の重合促進と安定化に寄与する、神経軸索の機能に必須のタンパク質である。これまでに、神経細胞内に凝集したタウタンパク質の異常蓄積が特徴的に認められる神経変性疾患が複数知られており、これらの疾患群は「タウオパチー」と総称される。タウオパチーには、アルツハイマー病の他、前頭側頭葉変性症ピック病大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺などが含まれるが、いずれの疾患も共通して認知症状を呈することが知られている。また、タウ遺伝子突然変異に起因する家族性前頭側頭葉変性症(FTDP−17)では、タウタンパク質の異常蓄積とそれに伴う神経変性が見られ、タウタンパク質の変異自体が認知症状の発症の直接的な原因であることが明らかにされている。これらの知見から、アルツハイマー病を含むタウオパチーの発症機序には共通して、タウタンパク質の凝集・異常蓄積が重要であることが予測されており、タウタンパク質の凝集阻害剤の探索が、アルツハイマー病の根本的治療・予防薬の開発につながり得るものとして期待されている。

0005

タウタンパク質の凝集抑制作用を有する化合物として、メチレンブルー報告されている(特許文献1)。メチレンブルーは酸化活性を有する化合物であり、タウタンパク質を酸化修飾することによりタウタンパク質の凝集を抑制することが示唆されている(非特許文献1、2)。また、近年、本発明者らは、酸化活性を有する化合物であるアロキサンをタウオパチーモデルマウス投与すると、脳内のタウタンパク質の蓄積が減少することを報告した(非特許文献3)。しかし、アロキサンは毒性が強く、膵臓β細胞障害することが知られているため、薬剤としての使用は困難である。また、メチレンブルーについても、短期間の投与であれば一定の安全性が担保されているものの、長期間の投与においては慢性毒性が懸念されることが知られている(特許文献2)。そのため、タウタンパク質の凝集抑制作用を有し、かつ、副作用が少なく安全性に優れた化合物の探索が、アルツハイマー病の根本的治療・予防薬を開発する上での極めて重要な課題となる。

0006

これまでに、数多くのタウオパチーモデルマウスが報告されており、それらは薬剤の候補となる化合物を試験するために非常に有用である。しかし、大量の候補化合物を試験するには相当数のマウスが必要となるため、多大な時間的・経済的コストがかかることが問題となる。そこで、ライフサイクルが短く、安価かつ容易に飼育することができるショウジョウバエモデル動物として用いることができれば、候補化合物の大規模スクリーニングには有益である。しかし、ヒトタウタンパク質を過剰発現させたタウオパチーモデルショウジョウバエでは、神経変性が見られる一方で、NFTの形成は確認できないことが報告されており(非特許文献4)、この報告からは、ショウジョウバエにおいてはNFTの形成とは異なるメカニズムによって神経変性が起こることが示唆された。そのため、ショウジョウバエモデルは、タウタンパク質の凝集・蓄積を評価するための系としては適当でなく、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニングには適しないものとして従来理解されていた。

0007

国際公開第96/30766号
国際公開第02/03972号

先行技術

0008

Akoury,E. et al., Angew.Chem.Int.Ed.Engl., Vol.52, pp.3511−3515 (2013)
Crowe,A. et al., J.Biol.Chem., Vol.288, pp.11024−11037 (2013)
Yoshiike,Y. et al., Aging Cell, Vol.11, pp.51−62 (2012)
Wittmann,C.W. et al., Science, Vol.293, pp.711−714 (2001)

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、従来技術の諸問題を解消し、アルツハイマー病をはじめとするタウオパチーの根本的な予防・治療方法を提供することを目的としてなされたものである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、鋭意研究の結果、従来の知見に反し、タウタンパク質を過剰発現させたショウジョウバエにおいて、タウタンパク質の凝集・蓄積が見られることを初めて確認し、さらに、凝集タウタンパク質の蓄積量と運動機能障害の程度との間に相関が見られることを初めて見出した。本発明者らは、この新規発見に基づき、ショウジョウバエモデルを用いたタウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法を確立することに成功した。さらに、前記スクリーニング方法を用いて、フルオロ色素がタウタンパク質凝集阻害剤として有用であることを見出した。

0011

すなわち、本発明は、一実施形態によれば、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、タウタンパク質凝集阻害剤を提供するものである。

0012

前記フルオロン色素は、ローズベンガルであることが好ましい。

0013

また、本発明は、一実施形態によれば、上記タウタンパク質凝集阻害剤を含有する、タウオパチーの治療薬または予防薬を提供するものである。

0014

前記タウオパチーは、アルツハイマー病であることが好ましい。

0015

また、本発明は、一実施形態によれば、(1)ヒトタウタンパク質を神経細胞に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを準備するステップと、(2)前記遺伝子組換えショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定するステップとを含む、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法を提供するものである。

0016

前記スクリーニング方法は、(4)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、生存率を測定するステップをさらに含むことが好ましい。

0017

前記スクリーニング方法は、(5)野生型ショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(6)前記(5)で候補化合物を投与された野生型ショウジョウバエについて、運動機能および/または生存率を測定するステップとをさらに含むことが好ましい。

0018

前記ヒトタウタンパク質は、2N4R型アイソフォームであることが好ましい。

発明の効果

0019

本発明に係るタウタンパク質凝集阻害剤は、アルツハイマー病治療薬として第3相臨床試験が現在進行中であるメチレンブルーと同様にタウタンパク質の凝集を有効に阻害することができ、かつ、メチレンブルーよりも副作用が少なく安全性に優れている。さらに、本発明に係るタウタンパク質凝集阻害剤は、タウタンパク質の凝集を阻害することにより、タウオパチーに見られる認知症状を改善することができるため、アルツハイマー病をはじめとするタウオパチーの根本的な予防・治療方法を提供することが可能となる。

0020

また、本発明に係るタウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法により、大量の候補化合物について、迅速かつ安価なハイスループットスクリーニングを行うことが可能となる。

図面の簡単な説明

0021

ヒトタウタンパク質を複眼特異的に発現するショウジョウバエ(gmr/Y;hTau/+)における凝集タウの蓄積を、イムノブロットにより定量した結果を示す図である。
ヒトタウタンパク質を複眼特異的に発現するショウジョウバエ(gmr/Y;hTau/+)における可溶性タウを、イムノブロットにより定量した結果を示す図である。
ヒトタウタンパク質を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)における、凝集タウタンパク質の蓄積量と運動機能障害の程度との相関を示す図である。
ヒトタウタンパク質を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)にローズベンガルを投与した場合の凝集タウ蓄積阻害効果を示す図である。
ヒトタウタンパク質を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)にローズベンガルを投与した場合の運動機能改善効果を示す図である。
ヒトタウタンパク質を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)にローズベンガルを投与した場合の生存率を確認した図である。
野生型ショウジョウバエにローズベンガルを投与した場合の生存率を確認した図である。
野生型ショウジョウバエにローズベンガルを投与した場合の運動機能を確認した図である。
ヒトタウタンパク質を脳キノコ体神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ(mb/Y;hTau/+)にローズベンガルを投与した場合の嗅覚記憶改善効果を示す図である。

0022

以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。

0023

本発明は、第一の実施形態によれば、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、タウタンパク質凝集阻害剤である。

0024

「タウタンパク質」(以降、本明細書では単に「タウ」とも記載する)には、ヒトタウ遺伝子から発現される6種類の野生型タウのスプライスバリアント、すなわち、0N3R型アイソフォーム、1N3R型アイソフォーム、2N3R型アイソフォーム、0N4R型アイソフォーム、1N4R型アイソフォームおよび2N4R型アイソフォームの他、これらと同等の生理機能が維持されていることを限度として、これらの変異体ホモログなどが含まれる。

0025

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤は、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩を含んでなる。

0026

「フルオロン色素」は、別名「ヒドロキシキサンテン系色素」とも呼ばれ、分子内にキサンテン環を有するキサンテン系色素のうち、キサンテン環に直接結合するアミンまたはその誘導体を有しないキサンテン系色素の総称である(H.J.Conn’s Biological stains: a handbook on thenature and uses of the dyes employed in the biological laboratory、Williams&Wilkins、第9版、1977年)。本実施形態におけるフルオロン色素には、特に限定されないが、例えば、ローズベンガル(赤色105号)、エオシンY(赤色230号−(1))、エオシンB、エチルエオシンメルブロミンマーキュロクロム)、ピロガロールレッドブロモピロガロールレッド、エリスロシン(赤色3号)、フロキシン(赤色104号)、フルオレセイン(黄色201号)、ウラニン(黄色202号−(1))、ジブロモフルオレセイン(橙色201号)、ジクロロフルオレセイン、4,5,6,7−テトラクロロフルオレセインジフルオロフルオレセイン(オレゴングリーン)、フルオレセインイソチオシアネートFITC)、カルボキシフルオレセインなどが挙げられる。本実施形態におけるフルオロン色素は、好ましくはローズベンガルである。

0027

本実施形態において使用されるフルオロン色素は、従来公知の種々の化学合成方法により合成することができる。また、本実施形態において使用されるフルオロン色素が市販されている場合には、市販品を使用することもできる。市販品は、例えばシグマアルドリッチ社メルク社、東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社などから購入することができる。

0028

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤には、フルオロン色素を含んでなるものの他、フルオロン色素の薬学的に許容される塩を含んでなるものが包含される。

0029

本実施形態において、「薬学的に許容される」とは、薬剤の使用に際して有害ではないことを意味する。本実施形態における薬学的に許容される塩とは、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩マグネシウム塩またはカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩アンモニアメチルアミンジメチルアミントリメチルアミンジシクロヘキシルアミントリス(ヒドロキシメチルアミノメタンエタノールアミンN−メチルグルカミン、L−グルカミンなどのアミン付加塩リジンまたはアルギニンなどの塩基性アミノ酸付加塩などが挙げられる。

0030

本実施形態において、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩は、これらから選ばれる単独または2以上の混合物を、タウタンパク質凝集阻害剤の有効成分とすることができる。本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤は、有効成分のみから構成されてもよいが、一般的には、さらに任意の成分として、薬学的に許容される公知の希釈液担体賦形剤などを含んでもよい。

0031

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤を製造するには、定法に従って、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩を、必要に応じて上記公知の希釈液、担体、賦形剤などと組み合わせて製剤化すればよい。タウタンパク質凝集阻害剤において、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩は、有効成分として、各形態に応じた範囲で適切な摂取量となるように含有されればよい。タウタンパク質凝集阻害剤において、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩は、その投与量が、通常成人日当たり0.001mg/kg(体重)以上、好ましくは0.01mg/kg(体重)以上となるように、薬剤中の含有量が決定されることが好ましいが、かかる範囲には限定されず、患者の症状、年齢性別などにより適宜調整されることが可能である。投与量の上限は、1日当たり、100mg/kg(体重)以下が好ましく、10mg/kg(体重)以下がより好ましい。

0032

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤は、種々の剤型に製剤化することができ、剤型としては、例えば、錠剤カプセル剤顆粒剤散剤シロップ剤懸濁剤、座剤、軟膏クリーム剤ゲル剤貼付剤吸入剤注射剤などが挙げられる。したがって、本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤は、経口投与腹腔内投与、皮内投与、静脈内投与筋肉内投与、脳内投与など、種々の方法により投与することができる。

0033

タウタンパク質凝集阻害剤を経口用製剤とする場合は、例えば、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤などの固形剤とすることができる。この場合には、適切な添加物、例えば、デンプン乳糖白糖マンニットカルボキシメチルセルロースコーンスターチ無機塩などの添加剤や、さらに所望により結合剤崩壊剤、潤沢剤、着色剤香料などを配合することができる。固形剤を錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖ゼラチンヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または溶性もしくは腸溶性物質フィルム被覆してもよい。または、タウタンパク質凝集阻害剤の経口用製剤は、例えばシロップ剤などの液剤とすることができ、この場合には、滅菌水生理食塩水エタノールなどを担体として使用し得る。さらに所望により、懸濁剤などの補助剤甘味剤風味剤防腐剤などを添加してもよい。

0034

タウタンパク質凝集阻害剤を非経口用製剤とする場合は、例えば、注射剤や直腸投与剤などの液剤とすることができる。この場合には、常法により、有効成分を注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液注射用植物油ゴマ油落花生油大豆油トウモロコシ油プロピレングリコールポリエチレングリコールなどの希釈剤に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤無痛化剤などを加えることにより調製することができる。また、固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。

0035

また、タウタンパク質凝集阻害剤の非経口用製剤は、例えば、マイクロカプセルなどの徐放性製剤することができ、脳内に直接投与することもできる。徐放性製剤は、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。好ましい担体としては、例えば、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物ポリグリコール酸コラーゲンポリオルトエステルポリ乳酸などの、生物分解性生物適合性ポリマーを用いることができる。また、担体としてリポソームを用いることもできる。好ましいリポソームは、特に限定されないが、ホスファチジルコリンコレステロールおよびPEG誘導体ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって精製され調製されたものであってよい。

0036

さらに、本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤には、所望により、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの薬学的に許容される添加物や他の治療薬を含有させることができる。

0037

また、タウタンパク質凝集阻害剤の製剤化に際しては、安定化剤を配合することが好ましい。安定化剤としては、例えば、アルブミングロブリン、ゼラチン、マンニトールグルコースデキストランエチレングリコールなどが挙げられる。

0038

製剤中に含有される有効成分の量は、種々の条件、例えば抽出溶媒の種類、使用した溶媒の使用量等によっても変動する。そのため、有効成分の量は、上記好ましい摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。

0039

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤の投与対象となる動物は、例えば、マウス、ラットウサギイヌウシブタヒツジ非ヒト霊長類、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。

0040

本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤は、脳におけるタウタンパク質の凝集・蓄積を抑制することができるため、タウタンパク質の凝集・蓄積と関連する神経変性疾患の治療や予防などの用途に有用である。本実施形態のタウタンパク質凝集阻害剤のタウタンパク質凝集阻害効果は、例えば、タウタンパク質を過剰発現させたモデル動物にタウタンパク質凝集阻害剤を投与し、公知の手順により、脳組織生化学的または病理学的に解析することにより確認することができる。

0041

本発明は、第二の実施形態によれば、上記タウタンパク質凝集阻害剤を含有する、タウオパチーの治療薬または予防薬である。本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬は、フルオロン色素またはその薬学的に許容される塩から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるタウタンパク質凝集阻害剤と、任意の成分とを含有する。ここでいう任意の成分は、通常の医薬品成分であってよく、通常用いられている各種形態、例えば、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤などとして調製される。また、本実施形態によるタウオパチーの治療薬または予防薬は、任意の成分として、タウオパチーの治療または予防のための他の有効成分をさらに含有してもよい。

0042

「タウオパチー」とは、神経変性疾患のうち、神経細胞内に凝集したタウタンパク質の異常蓄積が特徴的に認められる神経変性疾患の総称である。タウオパチーとしては、限定されるものではないが、例えば、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ダウン症候群、嗜銀顆粒性認知症、神経原線維変化優位型認知症、パーキンソン認知症複合などが挙げられる。

0043

本実施形態において、「治療」とは、タウオパチーに罹患した動物において、その疾患の病態の進行および悪化を阻止または緩和することを意味し、その疾患を完全に治癒することのみならず、その疾患の諸症状を緩和することをも含む。また、「予防」とは、タウオパチーに罹患するおそれのある動物において、その罹患を未然に防ぐことを意味する。

0044

本実施形態の治療薬または予防薬の対象となるタウオパチーは、好ましくはアルツハイマー病である。「アルツハイマー病」には、いわゆるアルツハイマー病(孤発性アルツハイマー病)の他、家族性(遺伝性)アルツハイマー病も包含される。

0045

本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬の投与対象となる動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。

0046

本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬におけるフルオロン色素またはその薬学的に許容される塩の添加量は、組成物の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であればよい。例えば、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。

0047

本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬は、経口的または非経口的に摂取されることができ、好ましくは、経口的に摂取される。

0048

本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬は、タウオパチー患者の脳内におけるタウタンパク質の凝集および蓄積を阻害することができるため、タウオパチーの発症機序を標的としたタウオパチーの根本的な治療または予防のために有用である。また、本実施形態のタウオパチーの治療薬または予防薬は、食品添加物としても使用されるローズベンガルなどのフルオロン色素を有効成分とするため、副作用が少なく安全性に優れている。

0049

本発明は、第三の実施形態によれば、(1)ヒトタウタンパク質を神経細胞に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを準備するステップと、(2)前記遺伝子組換えショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定するステップとを含む、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング方法である。本実施形態のスクリーニング方法は、タウタンパク質の凝集・蓄積を阻害できる化合物を、タウオパチーの根本的な治療または予防のために有用なタウタンパク質凝集阻害剤として取得できるものである。

0050

本実施形態のスクリーニング方法は、ヒトタウタンパク質を神経細胞に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを作製して使用する。以降、本明細書では、ヒトタウタンパク質を神経細胞に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを、「ヒトタウ神経発現ショウジョウバエ」と記載する。

0051

本実施形態におけるヒトタウ神経発現ショウジョウバエには、ショウジョウバエ属(Drosophila)の任意のハエを用いることができるが、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いることが好ましい。

0052

本実施形態におけるヒトタウ神経発現ショウジョウバエは、例えば、当分野において十分に確立されたGAL4−UAS発現系を用いて作製することができる。具体的には、転写因子であるGAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統と、GAL4の標的配列であるUASの下流にヒトタウ遺伝子を組み込んだベクターを導入したショウジョウバエ系統とを交配させることにより、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエを作製することができる。

0053

UASの下流にヒトタウ遺伝子を組み込んだベクターを導入したショウジョウバエ系統は、すでに存在する系統を入手して用いてもよいし、従来公知の方法により、例えばpUASTなどの形質転換ベクターにヒトタウ遺伝子を組み込んだものを、ショウジョウバエのに導入して作製してもよい。ヒトタウ遺伝子には、ヒト野生型タウの6種類のスプライスバリアント、すなわち、0N3R型アイソフォーム、1N3R型アイソフォーム、2N3R型アイソフォーム、0N4R型アイソフォーム、1N4R型アイソフォームおよび2N4R型アイソフォームをコードするcDNAを用いることができる他、タウオパチーとの関連が知られるタウ変異体をコードするcDNAを用いてもよい。本実施形態において用いるヒトタウは、好ましくは2N4R型アイソフォームである。

0054

UASの下流にヒトタウ遺伝子を組み込んだベクターを導入したショウジョウバエ系統として、すでに存在する系統を使用する場合には、例えば、ヒト2N4R型アイソフォームをコードするcDNAが導入されたショウジョウバエ系統としては、yw:UAS−hTau/TM3(未発表、国立長寿医療研究センター創薬モデル動物開発研究プロジェクトチーム津田玲生プロジェクトリーダー)、UAS−hTau、UAS−hTauS2A(S262A/S356A)およびUAS−hTauS11A(S46A/T50A/S199A/S202A/S205A/T212A/S214A/T231A/S235A/S396A/S404A)(Chatterjee,S. et al., Hum.Mol.Genet.,18:164−177(2009))、UAS−hTau:FLAGおよびUAS−hTau:STA:FLAG(S238A/T245A)(Kosmidis,S. et al., J.Neurosci.,30:464−477(2010))など;ヒト0N3R型アイソフォームをコードするcDNAが導入されたショウジョウバエ系統としては、UAS−hTau(Williams,DW. et al., J.Comp.Neurol.,428:630−640(2000))、UAS−hTau(Cowan,CM. et al., Acta Neuropathol.,120:593−604(2010))など;ヒト1N4R型アイソフォームをコードするcDNAが導入されたショウジョウバエ系統としては、UAS−hTau(Folwell,J. et al., Exp.Neurol.,223:401−409(2010))など;ヒト0N4R型アイソフォームをコードするcDNAが導入されたショウジョウバエ系統としては、UAS−hTau、UAS−hTauV337MおよびUAS−hTauR406W(Wittmann,CW. et al., Science,293:711−714(2001))、UAS−hTauR406W/S2A(S262A/S356A)およびUAS−hTauR406W/S202A(Nishimura,I. et al., Cell,116:671−682(2004))、UAS−hTauT111A/T153A、UAS−hTauT175A/T181A、UAS−hTauT199A/T217A、UAS−hTauS202A/S205A、UAS−hTauT212A、UAS−hTauS214A、UAS−hTauT231A/S235A、UAS−hTauS396A/S404A、UAS−hTauS422AおよびUAS−hTauAP5(S202A/S205A/T212A/T231A/S235A)(Steinhilb,ML. et al., Mol. Biol. Cell,18:5060−5068(2007))、UAS−hTauAP(T111A/T153A/T175A/T181A/S199A/S202A/S205A/T212A/S214A/T217A/T231A/S235A/S396A/S404A/S422A)(Steinhilb,ML. et al., J.Neurosci.Res.,85:1271−1278(2007))、UAS−hTauS262A(Iijima−Ando,K. et al., Hum.Mol.Genet.,19:1930−1938(2010))、UAS−hTauE14(T111E/T153E/T175E/T181E/S199E/S202E/S205E/T212E/T217E/T231E/S235E/S396E/S404E/S422E)(Khurana,V. et al., Curr.Biol.,16:230−241(2006));UAS−hTauK44Q/R230QおよびUAS−hTau44−230(Reinecke,JB. et al.,PLoS ONE,6:e23865(2011));UAS−hTau1−421(Khurana,V. et al., PLoS Genet.,6:e1001026(2010))などを用いることができる。

0055

GAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統は、すでに存在する系統を入手して用いてもよいし、従来公知の方法により、神経細胞特異的プロモーターエンハンサーの下流にGAL4遺伝子を組み込んだベクターを導入して作製してもよい。神経細胞特異的プロモーター/エンハンサーには、特に限定されないが、例えば、elav、Appl、R57C10などを用いることができ、好ましくは、elavを用いることができる。

0056

GAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統として、すでに存在する系統を使用する場合には、例えば、GAL4を神経細胞特異的に発現する系統であるelavC155−gal4系統(Lin,D.M. et al., Neuron,13:507−523(1994))、appl−gal4系統(Torroja,L. et al., Curr.Biol.,9:489−492(1999))、R57C10−gal4系統(Henry,GL. et al., Nucl.AcidsRes.,40:9691−9704(2012))など;GAL4を脳キノコ体の神経細胞特異的に発現する系統であるmb247−gal4系統(Schulz,RA. et al., Oncogene,12:1827−1831(1996))、201Y−gal4系統およびc739−gal4系統(O’Dell,K.M.C. et al., Neuron,15:55−61(1995));30Y−gal4系統およびc747−gal4系統(Yang,M.Y. et al., Neuron,15:45−54(1995))、c309−gal4系統、OK107−gal4系統、c772−gal4系統、c492−gal4系統および238y−gal4系統(Connolly,J.B. et al., Science,274:2104−2107(1996))、NP7175−gal4系統(Tanaka,N.K. et al., Curr.Biol.,14:449−457(2004))、NP6649−gal4系統、NP3208−gal4系統、NP3061−gal4系統、NP1131−gal4系統、NP65−gal4系統、およびNP2748−gal4系統(Yoshihara,M. et al., Dros.Inf.Serv.,83:199−202(2000))、MZ1489−gal4系統(Ito,K. et al., Dev.Genes Evol.,204:284−307(1995))、1471−gal4系統(Isabel,G. et al., Science,304:1024−1027(2004))、H24−gal4系統および17d−gal4系統(Martin,J.R. et al., Learn.Mem.,5:179−191(1998))、D52H−gal4系統(Qiu,Y. et al., Genes Dev.,7:1447−1458(1993))、c320−gal4系統(Krashes,M.J. et al., J.Neurosci.,28:3103−3113(2008))、103y−gal4系統(Tettamanti,M. et al., Dev.Genes Evol.,207:242−252(1997))などを用いることができる。

0057

上記のショウジョウバエ系統は、例えば、京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター(http://www.dgrc.kit.ac.jp/)や、ブルーミントンショウジョウバエストックセンター(http://flystocks.bio.indiana.edu/)などの国内外の公共ストックセンターから入手することができる。

0058

本実施形態におけるヒトタウ神経発現ショウジョウバエは、ヒトタウを神経細胞に発現し、脳内に凝集したタウが蓄積する。凝集タウの蓄積は、ショウジョウバエの脳組織から抽出したサルコシル不溶性画分中に存在するタウタンパク質を検出および定量することにより確認することができる。サルコシル不溶性タウの検出および定量は、例えば抗ヒトタウ抗体を用いたイムノブロッティングなどにより行うことができる。

0059

次いで、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエに対し、候補化合物を投与する。候補化合物には、合成化合物ペプチド性化合物核酸、抗体などが挙げられ、これらの候補化合物は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。

0060

候補化合物をショウジョウバエに投与するには、種々の濃度の候補化合物を、に添加して摂取させればよい。餌に添加される候補化合物の濃度は、化合物の種類により異なるが、例えば、0.1mM〜100mMの範囲で適宜選択することができる。候補化合物の投与は、例えば1分間〜6ヶ月間にわたって行うことができる。

0061

次いで、候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、運動機能を測定する。本実施形態におけるヒトタウ発現ショウジョウバエは、脳組織中の凝集タウの蓄積量と相関して運動機能が低下するため、運動機能を測定することによって、脳組織中の凝集タウの蓄積の度合いを評価することができる。運動機能の測定は、例えば、当分野において十分に確立された方法であるクライミングアッセイにより、負の重力走性(負の走地性)を評価することによって行うことができる。運動機能の測定は、ショウジョウバエの行動目視で観察することのみによって行うことができるため、脳組織からサルコシル不溶性タウを抽出して定量するよりもはるかに容易かつ迅速に、ショウジョウバエの脳組織における凝集タウの蓄積の度合いを評価することが可能である。

0062

候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエの運動機能が向上または低下したかどうかを判定するためには、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエの運動機能の測定を並行して実施して比較してもよいし、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエについて過去に実施した運動機能の測定値と比較してもよい。

0063

本実施形態のスクリーニング方法において、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエと比較して運動機能が有意に向上した場合には、ショウジョウバエの脳組織における凝集タウの蓄積量が減少していることが理解され、当該候補化合物は、タウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価することができる。一方、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエと比較して運動機能に変化が見られないまたは低下した場合には、ショウジョウバエの脳組織における凝集タウの蓄積量が減少していないことが理解され、当該候補化合物は、タウタンパク質凝集阻害剤として有望ではないと評価することができる。

0064

本実施形態のスクリーニング方法は、さらに、(4)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエについて、生存率を測定するステップを含んでもよい。遺伝子組換えショウジョウバエの生存率に対する候補化合物の影響を確認することにより、候補化合物の毒性を評価することができる。ステップ(4)は、ステップ(1)〜(3)の結果から、タウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価された候補化合物について実施することが好ましい。

0065

候補化合物を投与された遺伝子組換えショウジョウバエの生存率が向上または低下したかどうかを判定するためには、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエについて並行して生存率の測定を並行して実施して比較してもよいし、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエについて過去に実施した生存率の測定結果と比較してもよい。

0066

本実施形態のスクリーニング方法において、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエと比較して生存率に変化が見られないまたは向上した場合には、当該候補化合物の毒性が低いことが理解され、当該候補化合物は、タウオパチーの治療または予防のために使用するタウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価することができる。一方、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換えショウジョウバエと比較して生存率が低下した場合には、当該候補化合物の毒性が高いことが理解され、当該候補化合物は、タウタンパク質凝集阻害効果に優れていたとしても、タウオパチーの治療または予防のために使用するタウタンパク質凝集阻害剤としては適当でないと評価することができる。

0067

本実施形態のスクリーニング方法は、さらに、(5)野生型ショウジョウバエに候補化合物を投与するステップと、(6)前記(5)で候補化合物を投与された野生型ショウジョウバエについて、運動機能および/または生存率を測定するステップとを含んでもよい。ステップ(5)および(6)は、好ましくは、ステップ(1)〜(3)の結果から、タウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価された候補化合物について実施することができ、特に好ましくは、ステップ(1)〜(4)の結果から、タウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価された候補化合物について実施することができる。野生型ショウジョウバエの運動機能および生存率に対する候補化合物の影響を確認することにより、候補化合物の毒性をより正確に評価することができる。なお、ステップ(1)〜(6)の番号は、各ステップの実施の順番を限定するものではなく、例えば、ステップ(5)および(6)を実施した後に、ステップ(4)を実施してもよい。

0068

候補化合物を投与された野生型ショウジョウバエの運動機能および/または生存率が向上または低下したかどうかを判定するためには、候補化合物を投与しなかった野生型ショウジョウバエの運動機能および/または生存率の測定を並行して実施して比較してもよいし、候補化合物を投与しなかった野生型ショウジョウバエについて過去に実施した運動機能および/または生存率の測定結果と比較してもよい。

0069

本実施形態のスクリーニング方法において、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった野生型ショウジョウバエと比較して運動機能および/または生存率に変化が見られないまたは向上した場合には、当該候補化合物の毒性が低いことが理解され、当該候補化合物は、タウオパチーの治療または予防のために使用するタウタンパク質凝集阻害剤として有望であると評価することができる。一方、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった野生型ショウジョウバエと比較して運動機能および/または生存率が低下した場合には、当該候補化合物の毒性が高いことが理解され、当該候補化合物は、タウタンパク質凝集阻害効果に優れていたとしても、タウオパチーの治療または予防のために使用するタウタンパク質凝集阻害剤としては適当でないと評価することができる。

0070

以下に実施例を挙げ、本発明についてさらに説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。

0071

<1.材料および方法>
(1)ヒトタウ発現ショウジョウバエの作製および飼育
ヒトタウタンパク質を複眼特異的に発現する遺伝子組換えショウジョウバエ、ヒトタウタンパク質を神経細胞特異的に発現する遺伝子組換えショウジョウバエ、および、ヒトタウタンパク質を脳キノコ体の神経細胞特異的に発現する遺伝子組換えショウジョウバエを、GAL4−UAS発現系を用いて作製した。ヒトタウ遺伝子(hTau)がGAL4結合エンハンサー配列(UAS)の下流に挿入されたUAS−hTau系統には、yw:UAS−hTau/TM3(未発表、国立長寿医療研究センター創薬モデル動物開発研究プロジェクトチーム、津田玲生プロジェクトリーダーより供与)を用いた。GAL4を複眼特異的に発現するショウジョウバエ系統には、gmr−gal4系統(Hay,BA. et al., Development,120:2121−2129(1994)、国立長寿医療研究センター創薬モデル動物開発研究プロジェクトチーム、津田玲生プロジェクトリーダーより供与)を用いた。GAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統には、elavC155−gal4系統(Lin,D.M. et al., Neuron,13:507−523(1994)、国立長寿医療研究センター創薬モデル動物開発研究プロジェクトチーム、津田玲生プロジェクトリーダーより供与)を用いた。GAL4を脳キノコ体の神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統には、mb247−gal4系統(Schulz,RA. et al., Oncogene,12:1827−1831(1996)、国立長寿医療研究センター創薬モデル動物開発研究プロジェクトチーム、津田玲生プロジェクトリーダーより供与)を用いた。UAS−hTau系統と上記の組織特異的gal4系統をそれぞれ交配し、F1子孫をヒトタウ複眼発現ショウジョウバエ(gmr/Y;hTau/+)、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)、または、ヒトタウキノコ体神経発現ショウジョウバエ(mb/Y;hTau/+)として得た。

0072

羽化後1〜3日のオスのF1ショウジョウバエを、温度25±3℃、湿度60±10%、12時間の明暗サイクルの環境下において飼育した。その際、非投与群については通常の餌を、メチレンブルーまたはローズベンガル投与群については終濃度1mMのメチレンブルー(和光純薬工業株式会社製)またはローズベンガル(和光純薬工業株式会社製)を添加した餌を与え、2週間に1回、新しい餌の入ったバイアル移し替えた。なお、終濃度1mMのメチレンブルー添加した餌をショウジョウバエが毎日1.5μL摂取する(すなわち480ng/日のメチレンブルーを摂取する)として(Ja,WW. et al., Proc.Nat.Acad.Sci.USA.,104:8253−8256(2007))、ハエの体表面積体高mm体重0.5mgから見積もった場合、換算されるヒト(体重60kg、Km値=37)が摂取するメチレンブルーの量は、約150mg/日となる(換算方法は、Mosteller,RD., N.Engl.J.Med.,317:1098(1987)およびReagan−Shaw,S. et al.,FASEB J.,22:659−661(2008)を参照)。これは、メチレンブルーの第3相臨床試験における用量(150〜250mg/日)とほぼ同等の投与量である。

0073

(2)凝集タウの定量
上記(1)の条件にて1ヶ月飼育したショウジョウバエについて、炭酸ガスによる麻酔下において頭部を切断し、上にて、約20匹の頭部/1.5mLチューブとなるように回収し、その後、−80℃にて凍結保存した。各チューブに、5μL/頭部のTBS緩衝液(10mMのTris,150mMのNaCl(pH7.4),1mMのEDTA,1mMのEGTA)を添加し、ホモジナイズ後、超遠心し(24,000g、20分、2℃)、上清を別のチューブに回収した。これをサンプルバッファー(120mMのTris(pH6.8),10%の2−メルカプトエタノール,4%のSDS,20%のグリセロール,0.02%のブルモフェノールブルー)と混合して調製したものを、TBS可溶性画分サンプルとした。一方、上清を取り除いた後のペレットに、ショ糖入りのTBS(10mMのTris,800mMのNaCl(pH7.4),1mMのEGTA,10%のスクロース)を添加し、再度ホモジナイズ後、超遠心し(24,000g、20分、2℃)、上清を別の超遠心用チューブに回収した。この上清にサルコシル(終濃度1%(w/v))を加え、室温で3時間インキュベートした。その後、超遠心し(420,000g、1時間、4℃)、上清を除去して得られたペレットにサンプルバッファーを添加して懸濁したものを、サルコシル不溶性画分サンプルとした。タウタンパク質は、凝集していない状態ではTBS可溶性画分に分離され、凝集して不溶化した状態ではサルコシル不溶性画分に分離される。

0074

TBS可溶性画分サンプルおよびサルコシル不溶性画分サンプルを、それぞれSDS−PAGEに供し、電気泳動後、ニトロセルロース膜転写し、イムノブロットを行うことにより、サンプル中のタウを検出・定量した。TBS可溶性画分サンプル中のタウは、抗タウ抗体(tau5、ライフテクノロジーズ社製、1:1000)を一次抗体抗マウス抗体(Peroxidase−conjugated AffiniPure Donkey Anti−MouseIgG(H+L)、ジャソンイムノリサーチラボラトリーズ社製、1:1000)を二次抗体として用いて、イムノブロットを行った。検出は、NovexECLHRP Chemiluminescent Substrate Reagent Kit(ライフテクノロジーズ社製)を用いて行った。サルコシル不溶性画分サンプル中のタウは、抗タウ抗体(JM抗体、Takashima,A. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1998,95(16):9637−9641、国立長寿医療研究センター分子基盤研究部、高島明彦部長より供与、1:1000)を一次抗体、抗ウサギ抗体(Peroxidase−conjugated AffiniPure Donkey Anti−Rabbit IgG(H+L)、ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社製、1:1000)を二次抗体として用いて、イムノブロットを行った。検出は、イムノスターLD(和光純薬工業株式会社製)により行った。検出されたバンド画像解析ソフト(ImageJ 1.36b、アメリカ国立衛生研究所製)により数値化し、各群のタウ量を比較定量した。

0075

(3)運動機能の測定
ショウジョウバエの運動機能は、クライミングアッセイを行い、負の重力走性を評価することにより行った。クライミングアッセイは、以下の条件により行った。ショウジョウバエを餌が入っていない空のバイアルに移し、バイアルを叩いてショウジョウバエを底面に落とした後、ショウジョウバエがバイアルの壁面を登る様子をビデオ撮影した。ショウジョウバエを底面に落としてから10秒後に、バイアルの底から3cmの高さに引かれた線よりも下にいたショウジョウバエを「上に登れなかったハエ」とし、同線よりも上にいたショウジョウバエを「上に登ったハエ」として、それぞれの匹数を数えた。バイアル中のショウジョウバエの総数を100%として、上に登ることができたショウジョウバエの割合を算出した。

0076

(4)生存率の算定
上記(1)の条件にてショウジョウバエを飼育し、3日ごとに生存しているショウジョウバエの匹数を数え、生存率を算定した。

0077

(5)嗅覚記憶の解析
ショウジョウバエの記憶試験として、匂いと電気ショックを組み合わせた弁別学習試験を行った。ショウジョウバエの嫌いな2種類の匂い物質(3−オクタノールおよび4−メチルシクロヘキサノール)を用い、いずれか一方の匂い(匂い1)を、電気ショック(60Vのパルス電流/5秒間隔)を与えながら1分間嗅がせた。45秒間の休憩を挟み、次いで、もう一方の匂い(匂い2)を電気ショックを与えずに1分間嗅がせた。これにより、ショウジョウバエは、最初に嗅いだ匂い1を危険な匂いとして学習する。学習の1分30秒後、匂い1を入れた容器と匂い2を入れた容器を同時に与え、ショウジョウバエがどちらの匂いを選択するかを観察した。匂い1を入れた容器と匂い2を入れた容器の間にショウジョウバエを置き、匂い1を入れた容器に移動したショウジョウバエの数と匂い2を入れた容器に移動したショウジョウバエの数とが等しい場合の記憶スコアを0%とし、全てのショウジョウバエが匂い2を入れた容器に移動した場合の記憶スコアを100%として定義した。その後、匂いと電気ショックとの組み合わせを交換して同様の試験を行い、この結果と最初の結果との平均値を求め、これを1回の試験結果とした。

0078

<2.ヒトタウ複眼発現ショウジョウバエにおける凝集タウの蓄積>
上記(1)で作製したヒトタウ複眼発現ショウジョウバエ(gmr/Y;hTau/+)における凝集タウの蓄積について、上記(2)の手順により定量した。凝集タウの定量は、非投与群とメチレンブルー投与群について行った。両群の凝集タウの蓄積量の比較定量は、非投与群の数値を100%として行った。

0079

結果を図1および図2に示す。非投与群から調製したサンプルでは、TBS可溶性画分だけでなく、サルコシル不溶性画分においても強いシグナルが観察された(図1(a)および図2(a))。この結果から、ショウジョウバエにおいてヒトタウを過剰発現させることにより、凝集タウの蓄積が起こることが確認された。また、メチレンブルー投与群から調製したサンプルでは、凝集タウの蓄積が有意に減少することが示された(図1(b))。メチレンブルーは、タウ凝集抑制作用を有することが知られており、タウを標的としたアルツハイマー治療薬として、現在、第3相臨床試験が進行中である。この結果から、メチレンブルーの投与により、ショウジョウバエにおいてタウの凝集を抑制できることが示された。このように、ヒトタウを過剰発現させたショウジョウバエが、タウの凝集を評価するための動物モデルとなり得ることが示唆された。

0080

<3.ヒトタウ神経発現ショウジョウバエを用いたタウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング系の確立>
次いで、上記(1)で作製したヒトタウ神経発現ショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)について、上記(3)の手順により、運動機能を評価した。さらに、上に登ったハエ群と、上に登れなかったハエ群とを回収し、それぞれの群について、上記(2)の手順により、脳内における凝集タウの蓄積を定量した。両群の凝集タウの蓄積量の比較定量は、上に登れなかったハエ群の数値を100%として行った。

0081

結果を図3に示す。上に登れなかったショウジョウバエでは、上に登ったショウジョウバエよりも、脳における凝集タウの蓄積量が多いことが確認された。この結果から、脳における凝集タウの蓄積量と相関して、ショウジョウバエの運動機能が低下することが示された。

0082

このように、ヒトタウを過剰発現させたショウジョウバエの脳において、タウの凝集・蓄積が見られること、および、凝集タウの蓄積量と運動機能障害の程度との間に相関が見られることが初めて確認された。以上の結果から、ヒトタウを神経細胞に過剰発現させたショウジョウバエの運動機能を測定することによる、タウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニングが可能であることが示された。

0083

<4.ヒトタウ神経発現ショウジョウバエを用いたタウタンパク質凝集阻害剤のスクリーニング>
上記3で確立したスクリーニング系を用いて、フルオロン色素であるローズベンガルのタウタンパク質凝集阻害効果を評価した。上記(1)で作製したヒトタウ神経発現ショウジョウバエ(elav/Y;hTau/+)について、ローズベンガル投与群と、非投与群(陰性対照)と、メチレンブルー投与群(陽性対照)とを準備し、上記(2)の手順により、脳内における凝集タウの蓄積を定量した。各群の凝集タウの蓄積量の比較定量は、非投与群の数値を100%として行った。また、上記(3)の手順により、上記各群の運動機能を測定した。

0084

結果を図4および図5に示す。ローズベンガル投与群は、メチレンブルー投与群と同様に、脳内における凝集タウの蓄積量が減少することが確認された(図4)。また、ローズベンガル投与群は、メチレンブルー投与群と同様に、運動機能の回復が見られることが確認された(図5)。以上の結果から、ローズベンガルがメチレンブルーと同様のタウタンパク質凝集阻害効果を有し、タウタンパク質凝集阻害剤として使用し得るものであることが示唆された。

0085

<5.ローズベンガルの毒性評価
メチレンブルーは、タウ凝集抑制作用を有する一方で、長期間の投与における慢性毒性が懸念されている。そこで、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエまたは野生型ショウジョウバエに対しローズベンガルまたはメチレンブルーを投与し、上記(4)の手順により、それぞれの生存率を算定して比較することにより、ローズベンガルの毒性を評価した。対照には、非投与群のショウジョウバエを用いた。

0086

結果を図6および図7に示す。メチレンブルーを投与した場合には、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエと野生型ショウジョウバエのいずれも、生存率が大きく低下した。これに対し、ローズベンガルを投与した場合には、ヒトタウ神経発現ショウジョウバエの生存率は、非投与群のショウジョウバエに準じた生存率であった(図6)。一方で、ローズベンガルの投与によっては、生存率に有意な変化が見られないことが明らかになった(図7)。この結果から、ローズベンガルはメチレンブルーよりも毒性が低いタウタンパク質凝集阻害剤であることが示された。

0087

さらに、野生型ショウジョウバエについて、非投与群、メチレンブルー投与群またはローズベンガル投与群の運動機能を、上記(3)の手順により測定した。

0088

結果を図8に示す。メチレンブルー投与群では、上に登れたハエの割合が大きく減少したのに対し、ローズベンガル投与群では、上に登れたハエの割合はまったく減少しなかった。この結果からも、ローズベンガルはメチレンブルーよりも毒性が低く、副作用が少ないものであることが示された。

0089

以上の結果から、ローズベンガルは、メチレンブルーよりも低毒性であり、副作用が少ないことが理解され、臨床医薬の開発に適したタウタンパク質凝集阻害剤であることが示唆された。

0090

<6.ローズベンガル投与による嗅覚記憶の改善>
ヒトタウ発現ショウジョウバエにローズベンガルを投与してタウの凝集を阻害した場合に、ショウジョウバエの学習記憶能力に変化が見られるかどうかを、上記(1)で作製したヒトタウキノコ体神経発現ショウジョウバエ(mb/Y;hTau/+)を用いて、上記(5)の手順により試験した。ローズベンガルは、1週間にわたり投与した。また、対照として、野生型ショウジョウバエの非投与群とローズベンガル投与群を作製し、同様に試験した。

0091

結果を図9に示す。ヒトタウキノコ体神経発現ショウジョウバエは、野生型ショウジョウバエに比べて著しく低い嗅覚記憶を示したが、ローズベンガルを投与すると、嗅覚記憶が有意に改善されることが示された。一方、野生型ショウジョウバエにおいては、非投与群とローズベンガル投与群との間で嗅覚記憶に有意な変化は認められなかった。この結果から、ローズベンガルは、凝集タウの蓄積を阻害することによって記憶能力改善できることが理解され、ローズベンガルがアルツハイマー病などのタウオパチーの治療薬として有用であることが示唆された。

実施例

0092

このように、ローズベンガルを含むフルオロン色素は、アルツハイマー病を含むタウオパチーの発症機序である凝集タウタンパク質の異常蓄積を阻害でき、タウオパチーに見られる認知症状を改善することができ、かつ、副作用が少なく安全性に優れており、タウオパチーの根本的治療薬・予防薬の開発に有用であることが示された。

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