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技術 1,4−ジオキサン分解菌の培養方法、培地、1,4−ジオキサン分解菌を利用する1,4−ジオキサン処理方法

出願人 大成建設株式会社国立大学法人大阪大学学校法人北里研究所
発明者 山本哲史斎藤祐二池道彦黒田真史清和成井上大介
出願日 2015年3月5日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2015-043804
公開日 2016年5月16日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 2016-077284
状態 特許登録済
技術分野 酵素,微生物の固定化,処理 微生物、その培養処理 固体廃棄物の処理 生物学的処理一般 嫌気,嫌気・好気又は生物に特徴ある処理
主要キーワード 大規模設備 滅菌設備 ジオキサン濃度 ジエチレングリコール濃度 開発室 水環境中 汚染環境 全有機炭素量
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図面 (9)

課題

1,4−ジオキサン分解菌の効率的な培養方法を提供する。

解決手段

ジエチレングリコールを含有する培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。

概要

背景

1,4−ジオキサンは、下記式(1)で表される環状エーテルである。1,4−ジオキサンは、水や有機溶媒との相溶性に優れており、主に有機合成反応溶剤として使用されている。

2010年度の日本国における1,4−ジオキサンの製造・輸入量は、約4500t/年であり、約300t/年が環境中へ放出されたと推測される。1,4−ジオキサンは、水溶性であるため、水環境中へ放出されると広域に拡散してしまう。また、揮発性固体への吸着性光分解性加水分解性生分解性がいずれも低いため、水中からの除去が困難である。1,4−ジオキサンは急性毒性及び慢性毒性を有する上、発がん性も指摘されていることから、1,4−ジオキサンによる水環境汚染は、人や動植物に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そのため、日本国では、水道水質基準(0.05mg/L以下)、環境基準(0.05mg/L以下)及び排水基準(0.5mg/L以下)により、1,4−ジオキサンの規制がなされている。

従来の活性汚泥法活性炭吸着法等の処理方法では、水中から1,4−ジオキサンを十分に除去することができない。過酸化水素を添加してのオゾン処理(O3/H2O2)、紫外線照射下でのオゾン処理(O3/UV)、放射線超音波照射下でのオゾン処理等、複数の物理化学的酸化方法を併用する促進酸化法においてのみ、1,4−ジオキサン処理の有効性が確認されている。しかし、促進酸化法はイニシャルコストおよびランニングコストが高いことから普及に至っていない。また、非特許文献1では、1,4−ジオキサン以外の有機物が存在すると、促進酸化法による1,4−ジオキサンの処理効率が低下すると報告されている。

低コストかつ安定的に1,4−ジオキサンを含む水を処理する方法が求められており、特許文献1、非特許文献2では、1,4−ジオキサン分解菌による生物処理が提案されている。

1,4−ジオキサン分解菌は、1,4−ジオキサンを単一炭素源として分解及び資化可能な菌と、テトラヒドロフランなどの他の成分の存在下で共代謝反応によって1,4−ジオキサンの分解を行う菌との2種に大別される。非特許文献3、4では、これらの1,4−ジオキサン分解菌が有するTHFモノオキシゲナーゼが1,4−ジオキサンの分解に関与していることが報告されている。THFモノオキシゲナーゼは、多様な炭化水素類初発酸化を担っている可溶性鉄(II)モノオキシゲナーゼ(SDIMO)の一種分類されており、SDIMOには他にメタンプロパンモノオキシゲナーゼ等が含まれている(非特許文献5)。また、非特許文献6では、THFモノオキシゲナーゼ以外のSDIMOを有する菌も1,4−ジオキサンを分解する可能性のあることが報告されている。

1,4−ジオキサン分解菌は増殖が極めて遅く、他の微生物混入していると他の微生物が優先的に増殖してしまうため、1,4−ジオキサン分解菌を培養するには、他の雑菌が混入しないように、事前培養装置培地を十分に滅菌する必要がある。滅菌処理には、オートクレーブを用いる蒸気滅菌オーブン等で加熱する乾熱滅菌ガンマ線を用いる放射線滅菌エチレンオキサイドガスを用いる化学滅菌等の方法がある。しかし、滅菌のための設備が大規模になりすぎる、エネルギーコストがかかりすぎる、使用する薬品量が膨大となりコスト・安全性の点で問題がある等、いずれの滅菌方法も、大規模スケールで行うことは困難である。そのため、実際の1,4−ジオキサン汚染現場で必要とされるだけの大量の1,4−ジオキサン分解菌を供給するのは困難である。

概要

1,4−ジオキサン分解菌の効率的な培養方法を提供する。ジエチレングリコールを含有する培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。

目的

特開2008−306939号公報


K. KOSAKA, H. YAMADA, S.MATSUI, and K. SHISHIDA: The effects of the co-existing compoundson the decomposition of micropollutants using the ozone/hydrogen peroxide process. Water Sci. Technol., 42, pp.353-361, 2000.
清和成、池道彦:1,4−ジオキサン分解菌を用いた汚染地下水の生物処理・浄化技術の可能性,用水と廃水,Vol.53, No.7, 2011.
H. MASUDA, K. McCLAY, R. J. STEFFAN, and G. J. ZYLSTRA: Biodegradation of tetrahydrofuran and 1,4-dioxane by soluble diiron monooxygenase in Pseudonocardiasp. strain ENV478. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 22(5), pp. 312-316, 2012.
A. GROSTERN, C. M. SALES, W.-Q. ZHUANG, O. ERBILGIN, and L. ALVAREZ-COHEN: Glyoxylate metabolism is a key feature of the metabolic degradation of 1,4-dioxane by Pseudonocardiadioxanivorans strain CB1190. Appl. Environ. Microbiol., 78(9), pp. 3298-3308, 2012.
N. V. COLEMAN, N. B. BUI, and A. J. HOLMES: Soluble di-iron monooxygenase gene diversity in soils, sediments and ethane enrichments. Environ. Microbiol., 8(7), pp. 1228-1239, 2006.
S. MAHENDRA, and L. ALVAREZ-COHEN: Kinetics of 1,4-dioxane biodegradation by monooxygenase-expressing bacteria. Environ. Sci. Technol., 40(17), pp. 5435-5442, 2006.






1,4−ジオキサン分解菌の効率的な培養方法を提供する

効果

実績

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請求項1

ジエチレングリコールを含有する培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法

請求項2

前記培地が液体培地であることを特徴とする請求項1に記載の培養方法。

請求項3

前記ジエチレングリコールの濃度が0.01mg/L〜100g/Lであることを特徴とする請求項2に記載の培養方法。

請求項4

前記培地が、コーンスティープリカーカザミノ酸酵母エキスペプトンの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の培養方法。

請求項5

前記1,4−ジオキサン分解菌が、Mycobacterium sp. D11(受託番号:NITEBP−01926)、Pseudonocardia sp. D17(受託番号:NITEBP−01927)、Pseudonocardia dioxanivorans CB1190の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の培養方法。

請求項6

液体培地を供給しながら、該液体培地の供給量同量培養液を取り出す連続培養であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の培養方法。

請求項7

ジエチレングリコールを含有することを特徴とする培地。

請求項8

液体培地であることを特徴とする請求項7に記載の培地。

請求項9

前記ジエチレングリコールの濃度が0.01mg/L〜100g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の培地。

請求項10

コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ペプトンの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の培地。

請求項11

1,4−ジオキサンを含む水に、請求項1〜6のいずれかに記載の培養方法で培養した1,4−ジオキサン分解菌を注入することを特徴とする水処理方法

請求項12

前記1,4−ジオキサン分解菌とともに、ジエチレングリコールを注入することを特徴とする請求項11に記載の水処理方法。

請求項13

1,4−ジオキサンを含む土壌に、請求項1〜6のいずれかに記載の培養方法で培養した1,4−ジオキサン分解菌を注入することを特徴とする土壌処理方法

請求項14

前記1,4−ジオキサン分解菌とともに、ジエチレングリコールを注入することを特徴とする請求項13に記載の土壌処理方法。

請求項15

請求項1〜6のいずれかに記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌。

請求項16

請求項15に記載の1,4−ジオキサン分解菌を固定化した固定化担体

請求項17

1,4−ジオキサンを含む水、または土壌に、ジエチレングリコールを注入し、前記1,4−ジオキサンを含む水、または土壌に存在する1,4−ジオキサン分解菌の増殖を促進することを特徴とする1,4−ジオキサン処理方法

技術分野

0001

本発明は、1,4−ジオキサン分解菌培養方法培地、1,4−ジオキサン分解菌を利用する1,4−ジオキサン処理方法に関する。

背景技術

0002

1,4−ジオキサンは、下記式(1)で表される環状エーテルである。1,4−ジオキサンは、水や有機溶媒との相溶性に優れており、主に有機合成反応溶剤として使用されている。

0003

0004

2010年度の日本国における1,4−ジオキサンの製造・輸入量は、約4500t/年であり、約300t/年が環境中へ放出されたと推測される。1,4−ジオキサンは、水溶性であるため、水環境中へ放出されると広域に拡散してしまう。また、揮発性固体への吸着性光分解性加水分解性生分解性がいずれも低いため、水中からの除去が困難である。1,4−ジオキサンは急性毒性及び慢性毒性を有する上、発がん性も指摘されていることから、1,4−ジオキサンによる水環境汚染は、人や動植物に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そのため、日本国では、水道水質基準(0.05mg/L以下)、環境基準(0.05mg/L以下)及び排水基準(0.5mg/L以下)により、1,4−ジオキサンの規制がなされている。

0005

従来の活性汚泥法活性炭吸着法等の処理方法では、水中から1,4−ジオキサンを十分に除去することができない。過酸化水素を添加してのオゾン処理(O3/H2O2)、紫外線照射下でのオゾン処理(O3/UV)、放射線超音波照射下でのオゾン処理等、複数の物理化学的酸化方法を併用する促進酸化法においてのみ、1,4−ジオキサン処理の有効性が確認されている。しかし、促進酸化法はイニシャルコストおよびランニングコストが高いことから普及に至っていない。また、非特許文献1では、1,4−ジオキサン以外の有機物が存在すると、促進酸化法による1,4−ジオキサンの処理効率が低下すると報告されている。

0006

低コストかつ安定的に1,4−ジオキサンを含む水を処理する方法が求められており、特許文献1、非特許文献2では、1,4−ジオキサン分解菌による生物処理が提案されている。

0007

1,4−ジオキサン分解菌は、1,4−ジオキサンを単一炭素源として分解及び資化可能な菌と、テトラヒドロフランなどの他の成分の存在下で共代謝反応によって1,4−ジオキサンの分解を行う菌との2種に大別される。非特許文献3、4では、これらの1,4−ジオキサン分解菌が有するTHFモノオキシゲナーゼが1,4−ジオキサンの分解に関与していることが報告されている。THFモノオキシゲナーゼは、多様な炭化水素類初発酸化を担っている可溶性鉄(II)モノオキシゲナーゼ(SDIMO)の一種分類されており、SDIMOには他にメタンプロパンモノオキシゲナーゼ等が含まれている(非特許文献5)。また、非特許文献6では、THFモノオキシゲナーゼ以外のSDIMOを有する菌も1,4−ジオキサンを分解する可能性のあることが報告されている。

0008

1,4−ジオキサン分解菌は増殖が極めて遅く、他の微生物混入していると他の微生物が優先的に増殖してしまうため、1,4−ジオキサン分解菌を培養するには、他の雑菌が混入しないように、事前培養装置や培地を十分に滅菌する必要がある。滅菌処理には、オートクレーブを用いる蒸気滅菌オーブン等で加熱する乾熱滅菌ガンマ線を用いる放射線滅菌エチレンオキサイドガスを用いる化学滅菌等の方法がある。しかし、滅菌のための設備が大規模になりすぎる、エネルギーコストがかかりすぎる、使用する薬品量が膨大となりコスト・安全性の点で問題がある等、いずれの滅菌方法も、大規模スケールで行うことは困難である。そのため、実際の1,4−ジオキサン汚染現場で必要とされるだけの大量の1,4−ジオキサン分解菌を供給するのは困難である。

0009

特開2008−306939号公報

先行技術

0010

K. KOSAKA, H. YAMADA, S.MATSUI, and K. SHISHIDA: The effects of the co-existing compoundson the decomposition of micropollutants using the ozone/hydrogen peroxide process. Water Sci. Technol., 42, pp.353-361, 2000.
清和成、池道彦:1,4−ジオキサン分解菌を用いた汚染地下水の生物処理・浄化技術の可能性,用水と廃水,Vol.53, No.7, 2011.
H. MASUDA, K. McCLAY, R. J. STEFFAN, and G. J. ZYLSTRA: Biodegradation of tetrahydrofuran and 1,4-dioxane by soluble diiron monooxygenase in Pseudonocardiasp. strain ENV478. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 22(5), pp. 312-316, 2012.
A. GROSTERN, C. M. SALES, W.-Q. ZHUANG, O. ERBILGIN, and L. ALVAREZ-COHEN: Glyoxylate metabolism is a key feature of the metabolic degradation of 1,4-dioxane by Pseudonocardiadioxanivorans strain CB1190. Appl. Environ. Microbiol., 78(9), pp. 3298-3308, 2012.
N. V. COLEMAN, N. B. BUI, and A. J. HOLMES: Soluble di-iron monooxygenase gene diversity in soils, sediments and ethane enrichments. Environ. Microbiol., 8(7), pp. 1228-1239, 2006.
S. MAHENDRA, and L. ALVAREZ-COHEN: Kinetics of 1,4-dioxane biodegradation by monooxygenase-expressing bacteria. Environ. Sci. Technol., 40(17), pp. 5435-5442, 2006.

発明が解決しようとする課題

0011

1,4−ジオキサン分解菌の効率的な培養方法を提供する。

課題を解決するための手段

0012

1.ジエチレングリコールを含有する培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
2.前記培地が液体培地であることを特徴とする1.に記載の培養方法。
3.前記ジエチレングリコールの濃度が0.01mg/L〜100g/Lであることを特徴とする2.に記載の培養方法。
4.前記培地が、コーンスティープリカーカザミノ酸酵母エキスペプトンの少なくとも1種を含有することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の培養方法。
5.前記1,4−ジオキサン分解菌が、Mycobacterium sp. D11(受託番号:NITEBP−01926)、Pseudonocardia sp. D17(受託番号:NITE BP−01927)、Pseudonocardia dioxanivorans CB1190の少なくとも1種であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の培養方法。
6.液体培地を供給しながら、該液体培地の供給量同量培養液を取り出す連続培養であることを特徴とする2.〜5.のいずれかに記載の培養方法。
7.ジエチレングリコールを含有することを特徴とする培地。
8.液体培地であることを特徴とする7.に記載の培地。
9.前記ジエチレングリコールの濃度が0.01mg/L〜100g/Lであることを特徴とする8.に記載の培地。
10.コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ペプトンの少なくとも1種を含有することを特徴とする7.〜9.のいずれかに記載の培地。
11.1,4−ジオキサンを含む水に、1.〜6.のいずれかに記載の培養方法で培養した1,4−ジオキサン分解菌を注入することを特徴とする水処理方法
12.前記1,4−ジオキサン分解菌とともに、ジエチレングリコールを注入することを特徴とする11.に記載の水処理方法。
13.1,4−ジオキサンを含む土壌に、1.〜6.のいずれかに記載の培養方法で培養した1,4−ジオキサン分解菌を注入することを特徴とする土壌処理方法
14.前記1,4−ジオキサン分解菌とともに、ジエチレングリコールを注入することを特徴とする13.に記載の土壌処理方法。
15.1.〜6.のいずれかに記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌。
16.15.に記載の1,4−ジオキサン分解菌を固定化した固定化担体
17.1,4−ジオキサンを含む水、または土壌に、ジエチレングリコールを注入し、
前記1,4−ジオキサンを含む水、または土壌中に存在する1,4−ジオキサン分解菌の増殖を促進することを特徴とする1,4−ジオキサン処理方法。

発明の効果

0013

本発明の培養方法により、1,4−ジオキサン分解菌を効率よく増やすことができる。他の微生物が存在しても、1,4−ジオキサン分解菌を優先的に増やすことができ、滅菌設備が不要なため、大規模設備にて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことが可能であり、下水処理場工場排水処理施設、汚染現場等における1,4−ジオキサン処理に必要とされる大量の1,4−ジオキサン分解菌を供給することができる。培養した1,4−ジオキサン分解菌を水、または土壌に注入するだけで1,4−ジオキサンを処理することができるため、簡便で低コストに1,4−ジオキサンを処理することができる。

0014

1,4−ジオキサンで汚染された水、または土壌に、ジエチレングリコールを注入することで、汚染環境下に従来存在している分解菌の増殖を促進し、分解菌を優先的に増やすことができる。そして、分解菌の菌体量が増えることにより、分解菌による1,4−ジオキサン処理を促進することができる。ジエチレングリコールを加えるだけでよいため、非常に低コストである。また、従来存在している分解菌を増やすだけであるため、生態系への影響を抑えることができる。

図面の簡単な説明

0015

標準活性汚泥法における汚染水処理フロー図。
1,4−ジオキサン分解菌におけるジエチレングリコール存在下での増殖性を示す図。
1,4−ジオキサン分解菌における1,4−ジオキサン分解活性経時変化を示す図。
(右)ジエチレングリコール、(左)グルコースを含有する培養液中で1,4−ジオキサン分解菌を培養中のリアクター写真
培養液中のジエチレングリコール濃度と1,4−ジオキサン分解菌のΔ菌体濃度の関係を示す図。
1,4−ジオキサン分解菌の培養中に、コーンスティープリカーを添加した時の1,4−ジオキサン分解活性の経時変化を示す図。
1,4−ジオキサン分解菌の培養中に、コーンスティープリカーを添加した時のジエチレングリコール濃度と菌体濃度の経時変化を示す図。
ジエチレングリコールを添加した液体培地中における土壌試料1〜7の培養前後(0日、6日後)におけるSDIMO遺伝子のPCR増幅産物電気泳動の結果を示す図。

0016

以下に、本発明を詳細に説明する。

0017

本発明は、ジエチレングリコールを含有する培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やすことを特徴とする。

0018

従来、1,4−ジオキサン分解菌(以下、分解菌という。)を増やすには、他の微生物が混入しないように、事前に十分に滅菌する必要があった。
本発明は、分解菌が、ジエチレングリコール存在下で他の微生物よりも優れた増殖性を示すという、これまでに知られていない全く新規な知見に基づくものである。分解菌が、ジエチレングリコール存在下で増殖性に優れている理由は不明であるが、分解菌は、他の微生物よりもジエチレングリコールを炭素源として利用する能力に優れているため、ジエチレングリコール存在下で優先的に増殖することができると推測される。そのため、ジエチレングリコール存在下では、他の微生物が生息していても分解菌を増やすことができる。すなわち、ジエチレングリコール存在下では、他の微生物を滅菌することなく、分解菌を増やすことができる。

0019

ジエチレングリコールは、下記式(2)で表されるグリコールである。

0020

分解菌は自然界に存在しており、1,4−ジオキサンで汚染された水中や土壌中から採取した汚泥等を、炭素源として1,4−ジオキサンのみを含む培地で培養することでスクリーニングすることができる。分解菌は、1,4−ジオキサンを単一炭素源として分解及び資化可能な菌と、テトラヒドロフランなどの他の成分の存在下で共代謝反応によって1,4−ジオキサンの分解を行う菌との2種に大別される。本発明で使用する分解菌としては特に制限されないが、1,4−ジオキサンを単一炭素源として利用する菌が好ましく、Mycobacterium sp. D11、Pseudonocardia sp. D17、Mycobacterium sp.D6、Pseudonocardia dioxanivorans CB1190、Afipia sp. D1、Mycobacterium sp. PH-06、などが好ましい。これらの中で、1,4−ジオキサンの分解能が比較的高いPseudonocardia sp. D17、Mycobacterium sp. D11及びPseudonocardia dioxanivorans CB1190が好ましい。

0021

Mycobacterium sp. D11、Pseudonocardia sp. D17は、それぞれ受託番号NITEBP−01926、受託番号NITE BP−01927として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ足2−5−8(郵便番号292−0818))に、2014年8月29日付で国際寄託されている。
Pseudonocardia dioxanivorans CB1190(以下、CB1190株という。)は、米国ATCCから購入することができる(ATCC 55486)。また、米国ATCCの他に、JCM(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室)やドイツのDSMにおいても購入可能である。

0022

分解菌を増やす条件は、ジエチレングリコールが存在する環境下であれば特に制限されない。例えば、液体培地、固体培地が挙げられる。また、滅菌処理されておらず、他の微生物が存在していてもよい。培地としては、分解菌を培養できるものであれば特に限定されず、MGY培地やCGY培地等の公知の培地に、ジエチレングリコールを添加したものを使用することができる。
分解菌を大量に増やすためには液体培地を使用することが好ましく、液体培地を供給しながら、液体培地の供給量と同量の分解菌を含む培養液を取り出す連続培養で1,4−ジオキサン分解菌を増やすことがさらに好ましい。

0023

分解菌を増やす際のジエチレングリコール濃度は特に限定されないが、液体培地であれば0.01mg/L以上100g/L以下が好ましい。ジエチレングリコール濃度の下限値は、1g/L以上であることがより好ましく、5g/L以上であることがさらに好ましく、10g/L以上であることが最も好ましい。ジエチレングリコール濃度の上限値は60g/L以下であることがより好ましく、30g/L以下であることがさらに好ましく、20g/L以下であることが最も好ましい。また、固体培地であれば0.1wt%以上10wt%以下が好ましい。

0024

分解菌を増やす際には、分解菌の活動に必要な無機物質有機物質を添加することができる。微生物の活動量は、必要な栄養素等の因子のうち、最も少ない因子によって制限されるので、不足する栄養素を添加することで、増殖を促進することができる。添加する無機物質としては特に制限されず、K2HPO4、(NH4)2SO4、MgSO4・7H2O、FeCl3、CaCl2、NaClなどが挙げられる。

0025

添加する有機物質としては、特に制限されないが、コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ペプトンが好ましい。ジエチレングリコール以外の有機物質を添加することで分解菌の増殖速度を早くすることができる。ジエチレングリコールと、ジエチレングリコール以外の添加する有機物質との重量比は、60:40〜99:1であることが好ましく、70:30〜98:2であることがより好ましく、75:25〜95:5であることがさらに好ましく、80:20〜90:10であることが最も好ましい。

0026

分解菌の培養は15〜45℃で行うことが好ましい。20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が最も好ましい。また、pHは5〜8が好ましく、6〜8がより好ましい。培養時間は、必要な菌体量が得られるならば、特に制限されない。閉鎖系で分解菌を増やす場合、3〜30日間が好ましい。

0027

本発明の培養方法は、他の微生物を滅菌することなく分解菌を増やすことができ、滅菌装置が不要である。そのため、大規模スケールでの培養が容易であり、下水処理場や工場排水処理施設、汚染土壌処理現場等での1,4−ジオキサン処理に必要な大量の菌体を供給することができる。

0028

培養した分解菌を、1,4−ジオキサンで汚染された水に注入し、好気的環境下とすることで、分解菌による1,4−ジオキサンの生物処理を行うことができる。一般的な下水工場排水等の水は栄養塩類を含んでいることが多いが、栄養塩類の濃度が低ければ必要な栄養塩類を注入することで、分解菌の代謝・資化による1,4−ジオキサン処理を促進することができる。また、分解菌とともにジエチレングリコールを注入することで、他の微生物も存在する水中においても分解菌の1,4−ジオキサン分解活性を維持することができる。なお、ジエチレングリコールは、生分解性に優れており環境中で素早く分解されるため、ジエチレングリコールによる環境への負荷は非常に小さい。

0029

図1に、曝気槽を用いる標準活性汚泥法における汚染水処理フローを示す。標準活性汚泥法では、曝気槽において有用微生物による生物処理を行っている。曝気槽には、散気管が配設されており、散気管から気泡曝気槽内の水に供給され、この気泡から水中に酸素が溶解し、有用微生物による代謝・資化により、有機物が処理される。曝気槽は好気的環境下であるため、曝気槽に分解菌を注入するだけで、汚染水中に含まれる1,4−ジオキサンを処理することができる。図1には、分解菌を含む培養液を注入するフローを示したが、連続培養により取り出した培養液を連続的に注入してもよい。また、培養液ではなく、培養液からろ別等した分解菌をそのまま、または、分解菌を樹脂等に固定化した固定化担体として注入してもよい。

0030

培養した分解菌を曝気槽に注入するだけで、1,4−ジオキサン処理を行うことができるため、従来の標準活性汚泥法で用いられる設備をほとんどそのまま活用することができる。本発明の培養方法は、滅菌処理のための設備や薬品が不要なため、イニシャルコスト、ランニングコストともに抑えることができる。そのため、本発明の培養方法で培養した分解菌による生物処理法は、複数の酸化剤を用いる促進酸化法と比較して低コストである。また、分解菌の培養装置も市販のものをそのまま利用することができるため、低コストである。

0031

培養した分解菌を、1,4−ジオキサンで汚染された土壌中に注入して1,4−ジオキサンを処理することができる。通常の土壌処理方法は、現場プラント建設、土壌の掘削無害化、埋め戻し等、膨大な手間とコストが必要であるが、本発明の方法では、土壌中に分解菌を注入するだけで1,4−ジオキサンを生物処理することができる。一般に土壌中には栄養素が不足しているため、分解菌とともにジエチレングリコールを注入することが好ましい。また、無機物質、及び/又は有機物質等、必要な栄養素を注入してもよい。

0032

上記したように、分解菌は自然界に存在している。1,4−ジオキサンで汚染された水、または土壌にジエチレングリコールを注入することにより、自然界に存在する分解菌の増殖を促進し、分解菌を優先的に増やすことができる。分解菌の菌体量が増えると、分解菌による1,4−ジオキサン処理が促進される。ジエチレングリコールを加えるだけでよく、分解菌を培養する必要がないため、非常に低コストである。また、従来存在している分解菌を増やすだけであり、新たな分解菌を移入することがないため、生態系への影響を抑えることができる。

0033

次に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。

0034

「実施例1」
CB1190株、D11株、D17株を1,4−ジオキサン分解菌として使用した。1,4−ジオキサンを500mg/Lの濃度で含むCGY培地(カシトン:5g/L、グリセリン:5g/L、酵母エキス:1g/L)を用いて各分解菌を10日間培養した。培養後、遠心分離機にて集菌・洗浄し、菌体を20mLの生理食塩水と混合したものを植菌液とした。なお、植菌液は、分光光度計を用いて濁度統一したもの(OD600:およそ10)を用いた。

0035

300mL容量のバッフル付の三角フラスコに液体培地(培地組成:K2HPO4:1g/L、(NH4)2SO4:1g/L、NaCl:50mg/L、MgSO4・7H2O:200mg/L、FeCl3:10mg/L、CaCl2:50mg/L、pH:7.3)を100mL加え、オートクレーブで滅菌した。その後、1g/Lになるように所定濃度ジエチレングリコール溶液を添加した後、植菌液を1mL加えて28℃、120rpmにて回転振盪培養を9日間行った。

0036

培養終了後に吸引濾過にて培養液中の菌体をろ物として回収し、105℃で一晩乾燥した後、菌体重量を測定し菌体濃度(mg-dry cell/L)を求めた。培養9日目の菌体濃度から初期菌体濃度を差し引いたΔ菌体濃度により、菌体の増殖性を評価した。

0037

図2に各分解菌のジエチレングリコール存在下での増殖性を示す。すべての分解菌において菌体濃度が増加しており、分解菌がジエチレングリコールを炭素源として利用し、増殖できることを確認できた。特に、D17株は非常に高い増殖性を示した。

0038

「実施例2」
D17株を、MGY培地(Malt Extract:10g/L、グルコース:4g/L、Yeast Extract:4g/L)で2週間培養した。
1,4−ジオキサンを含む実地下水(pH:7.38、1,4−ジオキサン:0.16mg/L、リン酸イオン:0.08mg/L、全窒素:36.5mg/L、全有機炭素量:11mg/L、化学的酸素要求量:33mg/L)に、硫酸アンモニウムおよびリン酸水素二カリウムをそれぞれ1g/Lの濃度になるように添加した後、ジエチレングリコールを20g/Lになるように加えて培養液を作成した。
この培養液650mLを1L容量のリアクターに加え、D17株を添加して(菌体濃度:157mg−dry cell/L)、6日間培養を行った。培養中は、28℃、pH7.0に制御し、0.65L/minのエアレーションを行った。

0039

「比較例1」
ジエチレングリコールをグルコースとした以外は実施例2と同様にして、分解菌を培養した。

0040

「1,4−ジオキサン分解活性の測定1」
実施例2、比較例1の培養液から、それぞれ1mLサンプリングし、1,4−ジオキサン分解活性を測定した。サンプリングは培養開始直後と、培養開始してから1〜6日目に行った。分解活性の測定方法は以下のとおりである。

0041

100mL容量のバッフル付の三角フラスコに、100mg/Lの1,4−ジオキサンを含む液体培地(培地組成:K2HPO4:1g/L、(NH4)2SO4:1g/L、NaCl:50mg/L、MgSO4・7H2O:200mg/L、FeCl3:10mg/L、CaCl2:50mg/L、pH:7.3)19mLと、サンプリングした培養液1mLを加え、28℃、120rpmにて24時間、回転振盪培養を行った。なお、三角フラスコは全部で3本用意し、同様の手順で試験を実施した。

0042

培養終了後の溶液中の1,4−ジオキサン濃度ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所:GC/MS−QP2010PLUS、TURBOMATRIX HS40)にて測定した。また、培養液を添加しないブランク系も同様の手順にて試験を実施し、下記の式にて、1,4−ジオキサンの分解活性を求めた。本測定方法において、分解活性は、1mlの培養液が24時間で分解した1,4−ジオキサンの量を表す。測定結果相加平均値(n=3)を図3に示す。また、培養3日目のリアクターの写真を図4に示す。図4において、右がジエチレングリコールを用いた実施例2、左がグルコースを用いた比較例1のリアクターである。

0043

1,4−ジオキサン分解活性(mg−1,4−Dioxane/mL−培養液)
=(C0−C24)×20mL/1000mL
C0(mg/L):培養液を添加していないブランク系を、24時間回転振盪培養した後の1,4−ジオキサン濃度。
C24(mg/L):培養液を添加した系を、24時間回転振盪培養した後の1,4−ジオキサン濃度。

0044

ジエチレングリコールを炭素源とする実施例2は、培養開始直後0.04であった分解活性が日数の経過とともに上昇し、培養6日目には1.63まで上昇した。加熱等の滅菌処理を行っていないため、実地下水中に生息していた他の微生物は滅菌されていないが、分解活性が上昇していることから、ジエチレングリコール存在下でD17株が優先的に増殖していることが明らかとなった。また、図4(右)に示すように、培養3日目の培養液は若干白濁していたが、透明性を有していた。

0045

グルコースを炭素源とする比較例1は、培養期間中の分解活性は0.15〜0.29の範囲で変動したものの、分解活性の上昇は認められなかった。これは、D17株が実地下水中に存在している他の微生物よりもグルコースを利用する能力に劣るため、D17株が増殖できなかったためである。また、培養液は徐々に濁り始め、3日目の培養液は、図4(左)に示すように著しく白濁した。これは、その他の微生物が優先的に増殖したためである。

0046

培養6日目の分解活性は、実施例2が1.63、比較例1が0.20と、実施例2は比較例1に比べて8倍以上優れていた。これは、D17株が他の微生物と比べて、ジエチレングリコールを炭素源として利用する能力に優れており、D17株の菌体量が増加したためであると考えられる。

0047

「実施例3」
300mL容量のバッフル付の三角フラスコに、1g/Lジエチレングリコールを含む液体培地(培地組成:K2HPO4:1g/L、(NH4)2SO4:1g/L、NaCl:50mg/L、MgSO4・7H2O:200mg/L、FeCl3:10mg/L、CaCl2:50mg/L、pH:7.3)を100mL加え、事前にMGY培地で培養したD17株を植菌して(初期菌体濃度:111mg−dry cell/L)、28℃、120rpmにて7日間、回転振盪培養を行った。

0048

「実施例4」
液体培地中のジエチレングリコールの濃度を5g/Lとした以外は実施例3と同様にして、分解菌を培養した。
「実施例5」
液体培地中のジエチレングリコールの濃度を10g/Lとした以外は実施例3と同様にして、分解菌を培養した。
「実施例6」
液体培地中のジエチレングリコールの濃度を20g/Lとした以外は実施例3と同様にして、分解菌を培養した。
「実施例7」
液体培地中のジエチレングリコールの濃度を30g/Lとした以外は実施例3と同様にして、分解菌を培養した。

0049

「菌体濃度測定」
培養終了後、吸引濾過にて培養液中の菌体をろ物として回収し、105℃で一晩乾燥した後、回収した菌体重量を測定した。測定した菌体重量値から、菌体濃度(mg−dry cell/L)を求めた。なお、各実施例では、同様の試験系を2本準備し、その平均値菌体密度とした。培養7日目の菌体濃度から初期菌体濃度を差し引いたΔ菌体濃度により、菌体の増殖性を評価した。図5にΔ菌体濃度を示す。

0050

エチレングルコール濃度が1g/L〜10g/Lと濃くなるにつれて、菌体濃度が上昇した。ジエチレングリコール濃度が10g/L〜30g/Lである実施例5〜7では、ジエチレングリコール濃度が大きくなっても菌体濃度がほとんど変わらなかった。実施例5〜7の培養終了後のpHを測定したところ、pHが3.42〜3.91を示しており、pH低下によって増殖が阻害されたため、菌体濃度が同程度となったと推測される。

0051

「実施例8」
実施例2で用いた1,4−ジオキサンを含む実地下水に、硫酸アンモニウムおよびリン酸水素二カリウムをそれぞれ1g/Lの濃度になるように添加した後、10g/Lになるように所定濃度のジエチレングリコール溶液を加えて培養液を作成した。
この培養液8Lを10L容量のリアクターに加え、D17株を添加して(初期菌体濃度:43.2mg−dry cell/L)、4L/minのエアレーションを行いながら、28℃にて9日間培養した。また、培養4日目に、コーンスティープリカーを濃度が5g/Lになるように一度のみ添加した。なお、培養期間中は、pH7.0±0.2に制御した。

0052

「1,4−ジオキサン分解活性の測定2」
培養液から1mLサンプリングし、1,4−ジオキサン分解活性を上記「1,4−ジオキサン分解活性の測定1」と同様にして測定した。サンプリングは培養開始直後と、培養開始してから1、2、3、4、5、7、9日目に行った。なお、4日目のサンプリングは、CSLを添加する直前に行った。測定結果を図6に示す。

0053

「ジエチレングリコール濃度の測定」
上記「1,4−ジオキサン分解活性の測定2」でサンプリングした培養液中のジエチレングリコール濃度を、高速液体クロマトグラフィー(Waters Alliance 2695検出器RID)を用いて測定した。
「菌体濃度の測定」
培養開始直後と、培養開始してから4日目と9日目に培養液を150mLサンプリングし、メスシリンダーにて正確に100mL取った後、吸引濾過にて菌体をすべて回収・洗浄し、105℃で一晩乾燥した。なお、4日目のサンプリングは、コーンスティープリカーを添加する直前に行った。その後、乾燥重量を測定し、菌体濃度として算出した。
ジエチレングリコール濃度、および菌体濃度の経時変化を図7に示す。

0054

培養直後の分解活性は0.02と小さかったが、培養1日目の分解活性は0.38、培養4日目の0.93まで上昇した。コーンスティープリカーを添加してから24時間後である培養5日目の分解活性は1.61と大きく上昇し、7日目、9日目の分解活性は1.73であった。7日目以降の分解活性は、実際にはさらに上昇しているが、1,4−ジオキサン濃度が定量限界値未満まで低下したため、正確な活性値として算出できなかった。このことから、コーンスティープリカーを添加することで、1,4−ジオキサンの分解活性が高まることが確かめられた。なお、本試験方法での1,4−ジオキサンの仕込み濃度は100mg/Lであり、ブランク系での減少を考慮した分解活性値の上限は約1.73である。

0055

ジエチレングリコール濃度は、試験開始から4日目までは緩やかに減少した。培養4日目以降はジエチレングリコール濃度の低下が早まっており、コーンスティープリカーを添加することで、ジエチレングリコールの資化速度、すなわち、分解菌の増殖速度が早くなったことを確認した。
菌体濃度は、培養0日目では94mg−dry cell/L、4日目では288mg−dry cell/Lであったが、培養9日目には2043mg−dry cell/Lと増加した。そのためジエチレングリコール以外の有機物質を添加することで分解菌を高濃度に含む培養液を得られることが明らかとなった。

0056

「実施例9」
1,4−ジオキサン汚染サイトの異なる場所から採取した7種類の土壌において、ジエチレングリコールを添加した培地での培養によるSDIMO保有菌の増殖を調査した。なお、SDIMO保有菌の増殖を、SDIMOをコードする遺伝子(SDIMO遺伝子)に由来する約420bpのPCR増幅産物の増加によって評価した。
90mlの液体培地(培地組成:K2HPO4:1g/L、(NH4)2SO4:1g/L、NaCl:50mg/L、MgSO4・7H2O:200mg/L、FeCl3:10mg/L、CaCl2:50mg/L、pH:7.0)を入れた300ml三角フラスコに、湿重量10gの土壌を投入し、ジエチレングリコールを終濃度20g/Lになるように添加して、28℃、120rpmで回転振盪培養を行った。

0057

ジエチレングリコール添加直後および6日後に5mlを採取し、遠心分離(10,000×g、4℃、5分)によって上清を除去した後、土壌0.5g(湿重量)からDNAを回収した。DNA抽出には土壌DNA抽出キット(株式会社ニッポンジーン製、商品名:ISOIL for BeadsBeating)を用い、抽出したDNAはDNAフラグメント精製キット東洋紡株式会社製、商品名:MagExtractor−PCR& Gel Clean up−)を用いて精製した。

0058

SDIMO遺伝子の検出は、上記非特許文献5に記載されたプライマーセット[NVC57,NVC66]を用いたPCRによって行った。このプライマーセットを用いたPCRにより、試料中にSDIMO遺伝子が存在する場合には約420bpのPCR増幅産物が特異的に増幅される。PCRの反応系は50μl(SapphireAmp Fast PCR Master Mix(タカラバイオ株式会社製)25μl、プライマー各0.5μM、DNA1μl、滅菌超純水にて50μlにメスアップ)とし、PCR増幅は、94℃、5分の熱変性の後、94℃、30秒の熱変性、57℃、30秒のアニーリング、72℃、1分の伸長を35サイクル繰り返し、最後に72℃、5分の伸長を行う条件で実施した。PCR後のサンプルは、1.5%アガロースゲルを用いた電気泳動(100V、30分)を行い、SYBR Green Iにより15分間染色した後、紫外線照射して、約420bpのPCR増幅産物の有無と強度を調べた。図8にジエチレングリコールを添加した液体培地中における土壌試料1〜7の培養前後(0日、6日後)におけるSDIMO遺伝子のPCR増幅結果を示す。なお、図8において、Mで示されるレーンは、DNAラダーマーカー(タカラバイオ株式会社製、商品名:100bp DNA ladder)、Pで示されるレーンは1,4−ジオキサン資化菌であるPseudonocardia sp. D17のDNA、Nで示されるレーンはDNAなしのネガティブコントロールである。

実施例

0059

培養前の土壌では、多くの場合に約420bpのPCR増幅産物はごく僅かに検出されたのみであった。一方、培養後の土壌では、全ての試料において約420bpのPCR増幅産物が明確に検出された。培養前後における約420bpのPCR増幅産物量を比較すると、培養前に増幅産物量が多かった土壌試料4以外では、培養後に増幅産物量が顕著に増えていることが確認された。以上の結果から、ジエチレングリコールを用いて培養することで、土壌中にごく僅か存在するSDIMO保有菌が優先的に増殖したことが確認できた。すなわち、1,4−ジオキサンで汚染された水、または土壌に、ジエチレングリコールを注入することで、汚染環境下に従来存在している分解菌を優先的に増やすことができ、分解菌の菌体量が増えることで1,4−ジオキサン処理の分解を促進できることが確かめられた。

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