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技術 エンコーダの軸受構造およびこれを用いたエンコーダ

出願人 ハイデンハイン株式会社
発明者 高寺潤
出願日 2014年10月6日 (6年1ヶ月経過) 出願番号 2014-205542
公開日 2016年5月12日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 2016-075336
状態 特許登録済
技術分野 軸受の取付、その他 感知要素の出力の伝達及び変換 ころがり軸受 軸受の他の付属品(センサ等)
主要キーワード 回転体回転 軸受接触面 デジタルパルス信号 応力緩和溝 直接応力 塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤 エンコーダ軸 滑り現象
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年5月12日)のものです。
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図面 (7)

課題

使用する部材の熱膨張係数の違いに起因する接着層の増大現象と、それに伴うラジアル方向の予圧の増加によるトルクリップルの発生を抑制できる構造のエンコーダ軸受およびそれを用いたエンコーダを提供する。

解決手段

本体1とアキシアル方向に並んで配置された一対の軸受3a,3bと回転軸4とを有し、前記本体1の各軸受との接触面には、前記軸受3a,3bの外輪31と転動体33との接触点331からラジアル方向に延ばした直線lの前記軸受接触面との交点位置333に所定のギャップtを形成する応力緩和溝8が形成されているエンコーダの軸受構造とこの軸受構造を有するエンコーダとした。

概要

背景

エンコーダは、例えば回転円板や直線状のスケールの状態を電気信号に変換する。例えば、光学式ロータリーエンコーダでは発光素子発光した光が回転円板を透過し、受光素子にて受光した信号を信号処理部で矩形波状のデジタルパルス出力信号へ変換している。

ロータリーエンコーダは、回転体変位角変位量、回転量などを測定するために回転軸と、この回転軸に固定された円板状の符号板とを有するが、このような回転機構を支持するための軸受機構をも必然的に具備することになる。

エンコーダなどに要求される高精度で円滑な回転を保証するためには、一般的に玉軸受あるいはころ軸受などの転がり軸受が用いられる。通常転がり軸受を支持母体に取り付ける場合、寿命などに著しい悪影響を与えるグルーブと称する滑り現象の発生や振動の発生を防ぐため、嵌め合い面にしめしろを与えて取り付けられる。軸受にはラジアル方向、アキシアル方向内部隙間が存在するが、耐久性耐荷重性を向上させるためこれらの隙間を制限する必要がある。一般に、耐久性、耐荷重性を向上させるには、アキシアル方向に予圧を加えることが必要であり、これによりラジアル方向のしめしろが調整される。

ロータリーエンコーダの軸受は、一般には前記内部の符号板などの構造体を支持するだけなので、大きな耐荷重性を必要としない。このため、上記しめしろもあまり大きな荷重を想定して調整されたものではない。しかし、近年装置の小型化、軽量化と共に極力部品点数を減らし、共用できる構造部材は極力共用するような設計が行われている。このため、エンコーダの軸受にも、装置内部の他の機構の軸受としても機能できるような性能が求められる場合がある。

しかし、従来のエンコーダの軸受は予定荷重が軽量であり、そのまま他の機構の軸受としても共有した場合、予定荷重を超えてしまい、ぐらつきが生じ、高精度な回転が保証できなくなる恐れがある。そこで、ある程度の荷重負担予測される場合には、予めしめしろを増やすために、アキシアル方向の予圧を高く設定し、耐荷重性を向上させている。

図6は従来のエンコーダの基本構成を示す半裁断面図である。この図では右半分を省略しているが、実際には図の右端軸を中心にして左右対称に同様の構造が現れる。図示のエンコーダは、本体102と、一対の軸受103a、103bと、この軸受103a、103b間に配置されたスペーサー107と、前記軸受103a、103bに支持された回転軸104とを有する。また、回転軸104のフランジ部分には回転位置などを検出するための符号板105が取り付けられ、この符号板105の上には僅かに離間して符号板内の符号パターンを検出するセンサー回路素子が搭載された回路基板106が配置されている。

この従来のエンコーダは、上述のように軸受103a,103bに対してアキシアル方向にしめしろが調整され、予圧と称するある程度の圧力がかけられている。この場合のしめしろは一般に回転軸に軸受を組み立てるときに設定され、例えば次のように予圧が加えられる。先ず回転軸のフランジ(軸受取り付け部位)と反対側から第1の軸受を挿入して取り付け、前記第1の軸受と回転軸とを接着し、次いでスペーサーを第1の軸受のフランジと反対側に取り付け、次に第2の軸受を第1の軸受同様に回転軸に挿入して取り付け、軸受挿入側から第1の軸受と第2の軸受に対して決められた予圧(加重)を加え、前記第2の軸受と回転軸とを接着し、接着剤硬化した後、予圧を解除し組み立てを完了する。このとき、第1の軸受と第2の軸受は予圧が加えられた状態で固定されているので、両者の間には予圧が加えられた状態が維持されていることになる。

一般に軸受の耐荷重を増加させる場合、アキシアル方向のしめしろを増加させて対応することになる。このように、しめしろを増加させた軸受は、組み立て時の検査では問題がないものが、最終工程を終えて出荷した後、ユーザ先などで回転軸のトルク変動を生じることがある。このトルク変動は、エンコーダの回転軸に生じる負荷の変動であり、連結されているモーター回転むらを誘発させたり、高精度なエンコーダの検出精度に影響を与える恐れもある。また、軸受自体に不規則な負荷がかかり、時間の経過とともに振動を生じたり、摩耗を生じたりして、寿命にも悪影響を及ぼす可能性もある。

特開2010−032290号公報(特許文献1)には軸受外周に配置され、その外周面30には中央部に環状の溝が形成された軸受保持筒21を有するエンコーダが開示されている。しかし、この外周面30の溝構造は、ねじ孔41を貫通したねじ42が当接して固定するためのものであり、軸受に与える予圧や応力については一切記載されていない。

特開2011−226642号公報(特許文献2)には高い測定精度を確実且つ永続的に達成できる角度測定装置構造ユニットを得ることを目的として、軸Zを中心とした回転動作を測定する基準尺2が付いたシャフト1を含んでいる角度測定装置用構造ユニットが開示されている。また、シャフト1の外周には螺旋状の溝が形成されている。
しかし、この文献の段落0027には次のように記載されている「潤滑剤はラジアル方向に、隙間4.3の中で内輪3.1の側面側に沿って中空空間4.4に入り込むが、その中空空間はシャフト1の外周に沿って延伸すると共に、加えて収容容積を増大するために螺旋形状空間4.41も含んでいる。それにより中空空間4.4は即ち、ラジアル方向で転がり軸受3の内輪3.1とシャフト1が境界となっている」。つまり、螺旋形状空間4.41は潤滑剤を滞留させる容積を増大するために形成されたものであり、予圧を低減するものではない。

米国特許4089570号(特許文献3)には、ハウジング壁とハウジング壁に回転可能に支持されたシャフトとの間の半径方向および軸方向の応力をともに吸収することを目的とした分解・組み立ての容易なジャーナル軸受に関する軸方向に割れた軸受を持つジャーナル軸受が開示されている。

このジャーナル軸受は、2個の対称な半体から構成され、おのおのが半径方向および軸方向の応力をともに吸収するようになっている。このジャーナル軸受を構成するのは、シャフトに固定した2軸方向に接した内側リングおよびシャフトと同心なハウジング壁に固定した2個の軸方向に接した外側リングである。内側リングは、外側リングの内周面の接触領域と係合するボールまたはローラー用の座を形成する。外側リングは、上記の座からは軸方向の内方または外方にオフセットしている。第1例としては、ハウジング壁には環状凹部を、外周リングの突き合わせ部の軸方向の長さが等しい周溝と一致させる。第2例としては、内側リングをつき合わせて環状凹部を形成し、シャフト上の軸方向の長さの等しい周溝と一致させる。上記何れの例においても、一致させた2個の矩形断面の環状溝10には、プラスチック製の破断することができる保持リング7を挿置する。保持リング7の軸方向の長さは環状溝の軸方向の長さ以下である。

しかし、この文献に記載されたジャーナル軸受は、一般的な軸受形状とは異なる特殊な形状をしており汎用性に欠ける。また、外側軸受ハウジングの間には環状溝10が形成されているが、外側軸受自体がこの環状溝10の一部を構成する形状になっている。しかも、この環状溝10は軸方向に接して配置された一対の外側リングの中間部に形成されている。さらに、環状溝10は回転体21a,21bの内側リング2a’、2b’と外側リング2a”,2b”の接点を結ぶ直線の延長線上に存在し、前記回転体回転体21a,21bの外側リング2a”,2b”との接点からラジアル方向に延ばした直線上にはない。

概要

使用する部材の熱膨張係数の違いに起因する接着層の増大現象と、それに伴うラジアル方向の予圧の増加によるトルクリップルの発生を抑制できる構造のエンコーダの軸受およびそれを用いたエンコーダを提供する。本体1とアキシアル方向に並んで配置された一対の軸受3a,3bと回転軸4とを有し、前記本体1の各軸受との接触面には、前記軸受3a,3bの外輪31と転動体33との接触点331からラジアル方向に延ばした直線lの前記軸受接触面との交点位置333に所定のギャップtを形成する応力緩和溝8が形成されているエンコーダの軸受構造とこの軸受構造を有するエンコーダとした。

目的

米国特許4089570号(特許文献3)には、ハウジング壁とハウジング壁に回転可能に支持されたシャフトとの間の半径方向および軸方向の応力をともに吸収することを目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

本体とアキシアル方向に並んで配置された一対の軸受回転軸とを有し、前記本体の各軸受との接触面には、前記軸受の外輪転動体との接触点からラジアル方向に延ばした線の前記軸受接触面との交点位置に所定のギャップを形成する応力緩和溝が形成されているエンコーダ軸受構造

請求項2

少なくとも本体と回転軸との熱膨張係数が異なる請求項1のエンコーダの軸受構造。

請求項3

前記本体と軸受との間には、熱硬化形の接着層が形成されている請求項1または2のエンコーダの軸受構造。

請求項4

前記応力緩和溝のアキシアル方向の幅は少なくとも軸受のアキシアル方向の幅の1/3以上である請求項1〜3のいずれかのエンコーダの軸受構造。

請求項5

請求項1〜4のエンコーダの軸受構造を有するエンコーダ。

技術分野

0001

本発明は、モーター等の回転駆動装置やこれにより回転駆動される機構回転位置回転数などを測定するエンコーダ回転軸を支持する軸受構造と、この軸受構造を有するエンコーダに関するものである。

背景技術

0002

エンコーダは、例えば回転円板や直線状のスケールの状態を電気信号に変換する。例えば、光学式ロータリーエンコーダでは発光素子発光した光が回転円板を透過し、受光素子にて受光した信号を信号処理部で矩形波状のデジタルパルス出力信号へ変換している。

0003

ロータリーエンコーダは、回転体変位角変位量、回転量などを測定するために回転軸と、この回転軸に固定された円板状の符号板とを有するが、このような回転機構を支持するための軸受機構をも必然的に具備することになる。

0004

エンコーダなどに要求される高精度で円滑な回転を保証するためには、一般的に玉軸受あるいはころ軸受などの転がり軸受が用いられる。通常転がり軸受を支持母体に取り付ける場合、寿命などに著しい悪影響を与えるグルーブと称する滑り現象の発生や振動の発生を防ぐため、嵌め合い面にしめしろを与えて取り付けられる。軸受にはラジアル方向、アキシアル方向内部隙間が存在するが、耐久性耐荷重性を向上させるためこれらの隙間を制限する必要がある。一般に、耐久性、耐荷重性を向上させるには、アキシアル方向に予圧を加えることが必要であり、これによりラジアル方向のしめしろが調整される。

0005

ロータリーエンコーダの軸受は、一般には前記内部の符号板などの構造体を支持するだけなので、大きな耐荷重性を必要としない。このため、上記しめしろもあまり大きな荷重を想定して調整されたものではない。しかし、近年装置の小型化、軽量化と共に極力部品点数を減らし、共用できる構造部材は極力共用するような設計が行われている。このため、エンコーダの軸受にも、装置内部の他の機構の軸受としても機能できるような性能が求められる場合がある。

0006

しかし、従来のエンコーダの軸受は予定荷重が軽量であり、そのまま他の機構の軸受としても共有した場合、予定荷重を超えてしまい、ぐらつきが生じ、高精度な回転が保証できなくなる恐れがある。そこで、ある程度の荷重負担予測される場合には、予めしめしろを増やすために、アキシアル方向の予圧を高く設定し、耐荷重性を向上させている。

0007

図6は従来のエンコーダの基本構成を示す半裁断面図である。この図では右半分を省略しているが、実際には図の右端軸を中心にして左右対称に同様の構造が現れる。図示のエンコーダは、本体102と、一対の軸受103a、103bと、この軸受103a、103b間に配置されたスペーサー107と、前記軸受103a、103bに支持された回転軸104とを有する。また、回転軸104のフランジ部分には回転位置などを検出するための符号板105が取り付けられ、この符号板105の上には僅かに離間して符号板内の符号パターンを検出するセンサー回路素子が搭載された回路基板106が配置されている。

0008

この従来のエンコーダは、上述のように軸受103a,103bに対してアキシアル方向にしめしろが調整され、予圧と称するある程度の圧力がかけられている。この場合のしめしろは一般に回転軸に軸受を組み立てるときに設定され、例えば次のように予圧が加えられる。先ず回転軸のフランジ(軸受取り付け部位)と反対側から第1の軸受を挿入して取り付け、前記第1の軸受と回転軸とを接着し、次いでスペーサーを第1の軸受のフランジと反対側に取り付け、次に第2の軸受を第1の軸受同様に回転軸に挿入して取り付け、軸受挿入側から第1の軸受と第2の軸受に対して決められた予圧(加重)を加え、前記第2の軸受と回転軸とを接着し、接着剤硬化した後、予圧を解除し組み立てを完了する。このとき、第1の軸受と第2の軸受は予圧が加えられた状態で固定されているので、両者の間には予圧が加えられた状態が維持されていることになる。

0009

一般に軸受の耐荷重を増加させる場合、アキシアル方向のしめしろを増加させて対応することになる。このように、しめしろを増加させた軸受は、組み立て時の検査では問題がないものが、最終工程を終えて出荷した後、ユーザ先などで回転軸のトルク変動を生じることがある。このトルク変動は、エンコーダの回転軸に生じる負荷の変動であり、連結されているモーターに回転むらを誘発させたり、高精度なエンコーダの検出精度に影響を与える恐れもある。また、軸受自体に不規則な負荷がかかり、時間の経過とともに振動を生じたり、摩耗を生じたりして、寿命にも悪影響を及ぼす可能性もある。

0010

特開2010−032290号公報(特許文献1)には軸受外周に配置され、その外周面30には中央部に環状の溝が形成された軸受保持筒21を有するエンコーダが開示されている。しかし、この外周面30の溝構造は、ねじ孔41を貫通したねじ42が当接して固定するためのものであり、軸受に与える予圧や応力については一切記載されていない。

0011

特開2011−226642号公報(特許文献2)には高い測定精度を確実且つ永続的に達成できる角度測定装置構造ユニットを得ることを目的として、軸Zを中心とした回転動作を測定する基準尺2が付いたシャフト1を含んでいる角度測定装置用構造ユニットが開示されている。また、シャフト1の外周には螺旋状の溝が形成されている。
しかし、この文献の段落0027には次のように記載されている「潤滑剤はラジアル方向に、隙間4.3の中で内輪3.1の側面側に沿って中空空間4.4に入り込むが、その中空空間はシャフト1の外周に沿って延伸すると共に、加えて収容容積を増大するために螺旋形状空間4.41も含んでいる。それにより中空空間4.4は即ち、ラジアル方向で転がり軸受3の内輪3.1とシャフト1が境界となっている」。つまり、螺旋形状空間4.41は潤滑剤を滞留させる容積を増大するために形成されたものであり、予圧を低減するものではない。

0012

米国特許4089570号(特許文献3)には、ハウジング壁とハウジング壁に回転可能に支持されたシャフトとの間の半径方向および軸方向の応力をともに吸収することを目的とした分解・組み立ての容易なジャーナル軸受に関する軸方向に割れた軸受を持つジャーナル軸受が開示されている。

0013

このジャーナル軸受は、2個の対称な半体から構成され、おのおのが半径方向および軸方向の応力をともに吸収するようになっている。このジャーナル軸受を構成するのは、シャフトに固定した2軸方向に接した内側リングおよびシャフトと同心なハウジング壁に固定した2個の軸方向に接した外側リングである。内側リングは、外側リングの内周面の接触領域と係合するボールまたはローラー用の座を形成する。外側リングは、上記の座からは軸方向の内方または外方にオフセットしている。第1例としては、ハウジング壁には環状凹部を、外周リングの突き合わせ部の軸方向の長さが等しい周溝と一致させる。第2例としては、内側リングをつき合わせて環状凹部を形成し、シャフト上の軸方向の長さの等しい周溝と一致させる。上記何れの例においても、一致させた2個の矩形断面の環状溝10には、プラスチック製の破断することができる保持リング7を挿置する。保持リング7の軸方向の長さは環状溝の軸方向の長さ以下である。

0014

しかし、この文献に記載されたジャーナル軸受は、一般的な軸受形状とは異なる特殊な形状をしており汎用性に欠ける。また、外側軸受ハウジングの間には環状溝10が形成されているが、外側軸受自体がこの環状溝10の一部を構成する形状になっている。しかも、この環状溝10は軸方向に接して配置された一対の外側リングの中間部に形成されている。さらに、環状溝10は回転体21a,21bの内側リング2a’、2b’と外側リング2a”,2b”の接点を結ぶ直線の延長線上に存在し、前記回転体回転体21a,21bの外側リング2a”,2b”との接点からラジアル方向に延ばした直線上にはない。

先行技術

0015

特開2010−032290号公報
特開2011−226642号公報
米国特許第4089570号公報

発明が解決しようとする課題

0016

解決しようとする問題点は、使用する部材の熱膨張係数の違いに起因する接着層の増大現象に伴う意図しないラジアル方向の予圧の増加と、それに伴うトルクリップルの発生を抑制できる構造のエンコーダの軸受およびそれを用いたエンコーダを提供することである。

課題を解決するための手段

0017

本発明者は上記問題点について原因を究明すべく軸受構造の分析、検討を行った。その結果、トルク変動には以下のような、メカニズムが働いていることを突き止めた。上記のような構造の軸受を有するエンコーダを製造する場合、図3に示すように、軸受103a,103bとエンコーダ本体102との間に接着剤を塗布して接着層を形成し、これにより軸受103a,103bを強固に固定している。ここで、図3〜5は軸受103a,103bに塗布された接着剤の様子を示した一部拡大図であり、理解に不要な構造物や詳細な構造は省略している。

0018

前記接着剤は、硬化の際に加熱工程が必要であり、接着剤塗布後これらの構造物は一定の温度で加熱される。ところが、エンコーダは多くの場合、本体102、軸受103a,103b、回転軸104の何れか、あるいは何れもが異なる材料で形成されている。一般に、本体102はアルミニウム、回転軸104は鉄、軸受はステンレス、鉄、クロム鋼ニッケルクロムモリブデン鋼ステンレス鋼等様々なものが用いられる。これらの材料は熱膨張係数が異なり、上記加熱処理を行うと軸受103a,103bが収容される空間の内、ラジアル方向で本体102と回転軸104間の空間長が長くなる。

0019

すると、図4に示すように接着層109が形成されているラジアル方向の間隙広がり、これに伴うかたちで接着層109がラジアル方向に延び、接着層の厚みが増した状態で硬化してしまう。その後冷却されると、前記ラジアル方向の間隙は元の状態まで狭まる方向に作用する。しかし、接着層109の膜厚図4に示した状態まで拡大して硬化しているので、多少圧縮されたとしても図5に示すように、図3の接着剤塗布時の厚みより増している。このため、この接着層の厚さの増加分が軸受に対するラジアル方向の圧力を増加させ、余計なしめしろを加えることになる。この余計なしめしろは、軸受に過剰な予圧を与え、その結果回転動作に影響を与える。その顕著なものとして、トルクリップルと称する、特定の回転位置で生じるリップル状のトルク変動があり、これが精密で円滑な回転動作を阻害する要因となっていた。

0020

上記目的は、以下の本発明の構成により達成される。
(1)本体とアキシアル方向に並んで配置された一対の軸受と回転軸とを有し、
前記本体の各軸受との接触面には、前記軸受の外輪転動体との接触点からラジアル方向に延ばした線の前記軸受接触面との交点位置に所定のギャップを形成する応力緩和溝が形成されているエンコーダの軸受構造。
(2)少なくとも本体と回転軸との熱膨張係数が異なる上記(1)のエンコーダの軸受構造。
(3)前記本体と軸受との間には、熱硬化形の接着層が形成されている上記(1)または(2)のエンコーダの軸受構造。
(4)前記応力緩和溝のアキシアル方向の幅は少なくとも軸受のアキシアル方向の幅の1/3以上である上記(1)〜(3)のいずれかのエンコーダの軸受構造。
(5)上記(1)〜(4)のエンコーダの軸受構造を有するエンコーダ。

発明の効果

0021

本発明によれば、意図しないラジアル方向の予圧の増加を抑制し、トルクリップルの発生を抑制可能な構造のエンコーダの軸受およびそれを用いたエンコーダを提供できるという利点がある。

図面の簡単な説明

0022

図1は本発明の軸受構造の基本構成を示す半裁断面図である。(実施例1)
図2は本発明の軸受構造の要部の基本構成を示す半裁断面図である。(実施例1)
図3は軸受と本体間に形成された接着層の様子を示した一部拡大図である。
図4は軸受と本体間に形成された接着層の様子を示した一部拡大図である。
図5は軸受と本体間に形成された接着層の様子を示した一部拡大図である。
図6は従来のエンコーダの要部の基本構成を示す半裁断面図である。

0023

本発明のエンコーダの軸受構造は、例えば図1に示すように、本体1とアキシアル方向(図中Y方向)に並んで配置された一対の軸受3a,3bと回転軸4とを有し、前記本体の各軸受との接触面である軸受接触面には、前記軸受の外輪と転動体との接触点331からラジアル方向(図中X方向)に延ばした線の前記軸受接触面との交点位置に所定のギャップを形成する応力緩和溝8が形成されているものである。

0024

上記のように、トルクリップルは軸受に加えられるラジアル方向の意図しない過大な予圧が原因である。そして、それは本体と軸受の隙間が増えたときに接着層の厚さが増し、再度本体と軸受の隙間が減少することで生じることが判明した。このため、本体、接着層、軸受の何れかに、この予圧を上手く逃がす構造を形成することで過剰な予圧を緩和することができる。

0025

軸受周辺のラジアル方向の応力は、本体−接着層−外輪−転動体−内輪−軸受という経路で伝達される。ここで、外輪−転動体−内輪の経路を更に詳細に見ると、転動体と外輪、内輪間はそれぞれ転動体と外輪、内輪との接触点を介して応力が伝達される。通常アキシアル方向にもしめしろが設定されているため、前記外輪と内輪との接触点を結ぶ線は転動体中心を通るラジアル方向の直線に対して傾斜している。一対の軸受では、中間にあるスペーサーによりアキシアル方向のしめしろが設定されるため、傾斜した接触点を結ぶ線は上下対称になる。

0026

図1はこのような、エンコーダの軸受構造を示した一部半裁断面図である。図では右半分を省略しているが、実際には図の右端に対して左右対称に同様の構造が現れる。図示の軸受構造は、本体2と、一対の軸受3a、3bと、この軸受3a、3b間に配置されたスペーサー7と、前記軸受3a、3bに支持された回転軸4とを有する。なお、回転軸4のフランジ41には回転位置などを検出するための図示しない符号板が取り付けられる。

0027

一対の軸受3a,3bは、外輪31と内輪32とこれらの間に球状の転動体33を有する。各軸受3a,3bの外輪31は、スペーサー7により、それぞれ上、下方向に応力が加えられており、軸受3aの外輪31は上方向、軸受3bの外輪31は下方向にずれるように偏在している。このため、各軸受3a,3bの転動体33はいずれも外輪31のスペーサー側に接触している。これとは逆に内輪32と転動体33では、スペーサーから離れる側の位置で接触している。つまり、転動体の接触点のうち、外輪側の接触点331は一対の軸受の中間に近い位置、内輪側の接触点332は一対の軸受の中間から離れる位置にあり、これらを結ぶ線は傾斜している。

0028

本発明では、前記外輪側の接触点331から、ラジアル方向(図中X方向)に延ばした直線と本体の軸受接触面との交点部分に、軸受と接触して直接応力を伝達する本体部材が存在しなように、軸受を囲む周方向に延びる帯状の溝構造である応力緩和溝8を形成している。つまり、帯状の応力緩和溝8を形成すると本体1と軸受3a,3bとの間に溝内の空間である間隙tが生じる。このように、本体と軸受の接触点との間に帯状の間隙を設けることで、外輪31から転動体33の接触点331を介して応力が直接軸受側に伝達されるのを防止し、転動体に加えられる過剰な応力を緩和することができる。

0029

応力緩和溝は帯状に軸受との接触面に沿って本体の周方向に形成される。周方向に延在する帯状の溝構造は、少なくとも外輪31と転動体33との接触点331から、ラジアル方向に延ばした直線lと、本体の軸受接触面との交わる位置333に存在していることが必要である。この位置333に溝構造を形成することで、本体と転動体間で前記接触点331を介して直接的に応力が伝達されるのを防ぐことができ、応力が緩和される。

0030

応力緩和溝は、上記の関係を満足するものであれば、ある程度自由に設定することができる。しかしながら、その一端は一対の軸受のアキシアル方向(図中Y方向)における中間部、つまりスペーサー側の端部と同位置を最外部とし、他端は前記一端側から軸受の1/2〜2/3までの間の距離にあるようにするとよい。つまり、本体と軸受との接する部位は、前記間隙部分は除かれるため前記スペーサー側である中間位置から離れた反対側の1/3以上の部分が本体と接していればよい。

0031

応力緩和溝の深さ、あるいは本体と軸受外周面との間隙の距離tは0.08〜2mm程度、より好ましくは0.1〜1.3mm程度である。溝の深さが前記範囲より浅いと、本発明の作用を発揮するのが困難になってくる。溝の深さが前記範囲より深いと、嫌気性の接着剤を用いた場合、間隙に存在する空気が接着剤に悪影響を及ぼすことがある。

0032

上記図1では省略しているが本体と軸受との間には接着層が形成されている。上記のように接着層の膜厚の増加により、過剰な予圧が発生するが、接着層は軸受構造の信頼性、長期に渡る性能維持担保するためには必要であり、接着層を形成して固定する必要がある。接着層の厚さとしては、使用する接着剤の種類にもよるが、通常10〜40μm、好ましくは20〜30μm程度である。

0034

これらのなかでも、エポキシ樹脂系接着剤(Epoxy resin adhesives)、フェノール樹脂系接着剤(Phenolic resin adhesives)、ポリイミド系接着剤(Polyimide adhesives、PI系接着剤)、ポリベンズイミダソール接着剤(Polybenzimidazole adhesives、PBI系接着剤)等が好ましく、特にアクリル樹脂系の嫌気性接着剤が好ましい。また、接着剤の硬化に加熱処理が必要場合には加熱処理を行ってもよい、加熱温度として通常80℃以上である。

0035

軸受構造を構成する部品は、少なくとも本体、軸受および回転軸の何れか、あるいは何れもが異なる材料で形成されている。例えば、本体はアルミニウム、回転軸は鉄、軸受はステンレス、鉄、クロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼等が用いられる。これらの材料は熱膨張係数が異なり、加熱処理を行うと、本体内部に軸受が収容される空間の内、軸受が配置される部分においてラジアル方向で本体と回転軸間の空間長が長くなる。主な材料の熱膨張係数(熱膨張率)としては、例えばアルミニウム23×10-6K(℃)、鉄・鋼12.1×10-6K(℃)、クロム6.8×10-6K(℃)、ステンレス鋼[SUS304]17.3×10-6K(℃)等である。

0036

本発明におけるトルクリップルとは、回転軸の任意の回転位置において急峻に変化するトルク変動である。軸受を一定速度で回転運動させると、時間軸または回転位置に対するトルク変動をトルク変動曲線として記録できる。このトルク変動曲線において、前記トルク変動部位の曲線は電気パルスに類似し、オーバーシュートアンダーシュートが形成される。トルク変動幅としては、±0.6〜1.5[mNm]程度であるが、変動幅は小さい方が好ましい。トルクリップルは軸受内の各転動体により発生すると考えられ、通常転動体が1周すると転動体の個数分発生する。このことから、軸受の外輪が応力で変形した箇所を転動体が通過するときにトルクリップルが発生すると考えられる。

0037

本発明のエンコーダは、上記の軸受構造を有するものであれば、光学式、磁気式誘導式などを問わず適用することができる。重要なことは、軸受に対してある程度以上の予圧を加えていることである。本発明が特に有効とされる予圧は、アキシアル方向に通常加えられている予圧の数倍以上である。

0038

次に、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。図2は本発明の1実施例であるエンコーダシステムの構成例を示した半裁断面図である。図では右半分を省略しているが、実際には図の右端に対して左右対称に同様の構造が現れる。図示の軸受構造は、本体2と、アキシアル方向に並んで配置された一対の軸受3a、3bと、この軸受3a、3b間に配置されたスペーサー7と、前記軸受3a、3bに支持された回転軸4とを有する。回転軸4のフランジ41には回転位置などを検出するための符号板5が取り付けられている。また、符号板上部には、符号板に形成された符号パターンを読み取るためのセンサーや電気処理を行う電気素子等を搭載した回路基板が配置される。

0039

一対の軸受3a,3bは、外輪31と内輪32とこれらの間に球状の転動体33を有する。各軸受3a,3bの外輪31は、スペーサー7により、それぞれ上、下方向に応力が加えられており、軸受3aの外輪31は上方向、軸受3bの外輪31は下方向にずれるように偏在し、アキシアル方向のしめしろを与えている。これにより各軸受3a,3bの転動体33はいずれも外輪31の中間方向側、つまりスペーサー側に接触している。これとは逆に内輪32と転動体33は、中間方向とは逆のスペーサーから離れる側の位置で接触している。つまり、転動体の接触点のうち、外輪側の接触点331は一対の軸受の中間に近い位置、内輪側の接触点332は一対の軸受の中間から離れる位置にあり、これらを結ぶ線は傾斜している。

0040

前記外輪側の接触点331から、ラジアル方向に延ばした直線と本体の軸受接触面との交点部分には帯状の応力緩和溝8が形成されている。そして、応力緩和溝8により本体1と軸受3a,3bとの間に間隙tが生じている。溝構造である応力緩和溝8は帯状に軸受との接触面に沿って本体の周方向に形成されている。周方向に延在する帯状の応力緩和溝8は、少なくとも外輪と転動体との接触点から、ラジアル方向に延ばした直線と、本体の軸受接触面との交わる位置に存在している。つまり、この部分には溝8による間隙tが存在するようになっている。

0041

溝構造の一端は一対の軸受のアキシアル方向における中間部、つまりスペーサー7側の端部と同位置を最外部とし、他端は前記一端側から軸受の幅の1/2の位置にまで達している。溝の深さtは0.1−1.3mmの範囲で最適な間隙となるように設定した。このような溝を形成することで、トルクリップルを軽減ないし検出不能状態にすることができた。

0042

このエンコーダの動作を簡単に説明すると、駆動装置等の回転軸が回転すると、それに接続されているエンコーダ軸4も追従して同様に動作する。このとき、エンコーダ軸4に取り付けられている符号板5も同様に動作する。一般にガラスなどの透明部材で形成された符号板5には回転に伴って変化して所定の信号を発生するような符号パターンが形成されいる。符号板近傍に配置された発光素子が発した光が、この符号板5上の符号パターンを透過して符号板状に配置されている回路基板に入射すると前記符号パターンに対応した信号を生じる。そして、符号板の動作に応じて出力信号が変化する。

0043

受光素子から生じる信号はアナログ信号であるが、回路基板上に搭載されている素子回路により、波形整形等の必要な信号処理が行われ、矩形波状のデジタルパルス信号に変換される。このとき、例えば受光素子を複数設け、それらの位置を調整することで、例えば90°位相のずれた信号を作り出すことができる。これらの信号は一般にA相、B相の位相差2信号として出力され、インクリメンタル信号とされる。A相、B相の位相差2信号は回転方向により位相が逆転するので、回転する変位量と回転方向を計測することができ、さらにこれらの信号を電気的に積算カウントしたり、別途回転信号を出力させることで回転数も計測することができる。

実施例

0044

また、絶対位置を検出することが可能なアブソリュートパターンが形成された符号板を配置し、これらの符号板の符号を検出可能な位置に単独あるいは複数個検出器を配置して、1回転以内の絶対位置値信号を検出するようにしてもよい。また、このとき1回転を検出するための符号板と検出器を別途設け、これらにより1回転を検出するようにすると、容易に1回転以内の絶対値と回転数を検出することができる。また、この1回転検出のデータを活用することで検出ミスや動作不良の検出も可能である。

0045

本発明のエンコーダの軸受構造は、回転軸と本体との間に一対の軸受を有する構造のエンコーダであれば、その測定態様にかかわらず様々なタイプのエンコーダに適用することができる。また、嫌気性で熱硬化形の接着剤を用いて軸受を本体に固定し、かつ軸受と本体の材料の熱膨張率が異なる軸受構造に有効であるが、それ以外でも軸受のラジアル方向に高い応力が加えられるエンコーダに適用することも可能である。

0046

2 本体
3a,3b軸受
4回転軸
5符号板
6回路基板
7スペーサー
8応力緩和溝
31外側リング
32内側リング
33転動体
41フランジ
331,332接触点
102 本体
103a,103b 軸受
104 回転軸
105 符号板
106 回路基板
107 スペーサー

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