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技術 口腔内の乾燥状態の評価方法

出願人 花王株式会社
発明者 平石牧子羽根岡舞
出願日 2014年9月26日 (6年2ヶ月経過) 出願番号 2014-197360
公開日 2016年5月9日 (4年7ヶ月経過) 公開番号 2016-070702
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 酵素、微生物を含む測定、試験 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 各測定量 分析メソッド 平均測定 ミキサー装置 ネバネバ 平均測定値 評価対象者 対比結果
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

口腔内乾燥状態客観的かつ正確に評価することのできる評価方法に関する。

解決手段

唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする、口腔内の乾燥状態の評価方法。

概要

背景

口腔内乾燥感とは、口腔内疾患等の原因の有無に関わらず、口腔内において乾燥状態が生じている際に自覚され得る不快感を広く意味するものであり、ドライマウスとも称される。口腔内で生じているこうした乾燥状態を放置すると、次第に口の中でネバネバする感触が生じたり、口臭が強くなったりするおそれがあり、う蝕歯周病等の原因にもなり得る上、感染症等にも罹患しやすくなってしまい、特に高齢者においては、口の動作や味覚が鈍化して会話食事にも悪影響を及ぼすおそれもある。そのため、口腔内で乾燥状態が生じていることを早期に発見することが望まれる。

従来より、このような口腔内の乾燥状態を改善するには、唾液分泌を促進することが有効であるとの視点立ち、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、プロタミン加水分解物を有効成分とする唾液分泌促進剤が開示されており、また特許文献2には、唾液分泌に関連付けられる障害治療又は予防するための、シアル酸を含む組成物が提案されている。さらに特許文献3には、口腔乾燥症治療用組成物として、オリーブ油等を有効成分とする技術が提案されている。

概要

口腔内の乾燥状態を客観的かつ正確に評価することのできる評価方法に関する。唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする、口腔内の乾燥状態の評価方法。

目的

本発明は、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする、口腔内の乾燥状態の評価方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする、口腔内乾燥状態評価方法

請求項2

指標とするタンパク質の測定量に、さらに口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られる評価尺度を用いる、請求項1に記載の口腔内の乾燥状態を評価する方法。

請求項3

次のステップ(A)〜(D):(A)複数の被験者の口腔内から唾液採取し、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を求めるステップ、(B)ステップ(A)における被験者を、口腔内の乾燥感感じる被験者と乾燥感を感じない被験者とに二分化するステップ、(C)ステップ(B)において二分化した被験者について、ステップ(A)において求めたタンパク質の測定量を指標として含む評価尺度を得るステップ、及び(D)評価対象者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質の測定量を求め、ステップ(C)において得られた評価尺度を元に、評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価するステップを含む、請求項1又は2に記載の口腔内の乾燥状態を評価する方法。

請求項4

ステップ(C)において得る評価尺度が、二分化された一方の口腔内の乾燥感を感じる被験者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布と、二分化された他方の口腔内の乾燥感を感じない被験者を対象として測定した口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られるものである、請求項3に記載の口腔内の乾燥状態を評価する方法。

請求項5

指標とするタンパク質が、複数の被験者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質であり、かつ複数の被験者を口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者とに二分化した際、乾燥感を感じる被験者の唾液中の測定量が乾燥感を感じない被験者の唾液中の測定量よりも有意に少ないタンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔内の乾燥状態の評価方法。

請求項6

指標とするタンパク質が、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチンインデュシブルプロテインから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の口腔内の乾燥状態の評価方法。

技術分野

0001

本発明は、口腔内乾燥状態評価方法に関する。

背景技術

0002

口腔内の乾燥感とは、口腔内疾患等の原因の有無に関わらず、口腔内において乾燥状態が生じている際に自覚され得る不快感を広く意味するものであり、ドライマウスとも称される。口腔内で生じているこうした乾燥状態を放置すると、次第に口の中でネバネバする感触が生じたり、口臭が強くなったりするおそれがあり、う蝕歯周病等の原因にもなり得る上、感染症等にも罹患しやすくなってしまい、特に高齢者においては、口の動作や味覚が鈍化して会話食事にも悪影響を及ぼすおそれもある。そのため、口腔内で乾燥状態が生じていることを早期に発見することが望まれる。

0003

従来より、このような口腔内の乾燥状態を改善するには、唾液分泌を促進することが有効であるとの視点立ち、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、プロタミン加水分解物を有効成分とする唾液分泌促進剤が開示されており、また特許文献2には、唾液分泌に関連付けられる障害治療又は予防するための、シアル酸を含む組成物が提案されている。さらに特許文献3には、口腔乾燥症治療用組成物として、オリーブ油等を有効成分とする技術が提案されている。

先行技術

0004

特開2010−265217号公報
特表2011−519896号公報
特表2010−519279号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、口腔内の環境や乾燥感を自覚する程度には個人差があり、また口腔内で乾燥が発生するメカニズム自体も複雑であるので、唾液の分泌量が多くても呼吸によって多くの水分が失われ、依然として乾燥状態が改善していないことも十分に想定される。そのため、本発明者らは、日常生活に特に支障のない健常者においては、必ずしも口腔内の乾燥状態と唾液量は相関しないという知見に基づき、唾液の量や水分量を測定することによっては、口腔内の乾燥状態を正確に把握できるとは限らないとの考えに至り、新たな評価方法が必要であることに着目した。

0006

したがって、本発明は、口腔内の乾燥状態を客観的かつ正確に評価することのできる評価方法に関する。

課題を解決するための手段

0007

そこで本発明者らが種々検討したところ、口腔内が乾いていると感じている場合、唾液中に存在するタンパク質の量が変動していることが判明し、これを用いることによって、より実情に即した精度の高い評価方法が実現できることを見出した。

0008

すなわち、本発明は、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする、口腔内の乾燥状態の評価方法を提供するものである。
好ましくは、本発明は、指標とするタンパク質の測定量に、さらに口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られる評価尺度を用いる方法である。
また、本発明は、次のステップ(A)〜(D):
(A)複数の被験者の口腔内から唾液を採取し、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を求めるステップ、
(B)ステップ(A)における被験者を、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者とに二分化するステップ、
(C)ステップ(B)において二分化した被験者について、ステップ(A)において求めたタンパク質の測定量を指標として含む評価尺度を得るステップ、及び
(D)評価対象者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質の測定量を求め、ステップ(C)において得られた評価尺度を元に、評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価するステップ
を含む、口腔内の乾燥状態の評価方法を提供するものである。

発明の効果

0009

本発明の評価方法によれば、個人差による種々の影響を最大限に抑えながら、口腔内の乾燥感についての実感に基づき、口腔内の乾燥状態を実情に即して客観的かつ正確に評価することができる。

図面の簡単な説明

0010

実施例1で得られた、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者に二分化した唾液中の各タンパク質の平均測定量を示す図である。図1(a)はシスタチン−SNの平均測定量、図1(b)はヒスタチン−1の平均測定量、図1(c)はリゾチームの平均測定量、図1(d)はプロラクチンインデュシブルプロテインの平均測定量を示す。
実施例3で得られた、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者に二分化した唾液中の各タンパク質の測定量の分布を示す図である。図2(a)はシスタチン−SNの測定量の分布、図2(b)はヒスタチン−1の測定量の分布、図2(c)はリゾチームの測定量の分布、図2(d)はプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量の分布を示す。
図3(a)は、実施例4で得られた、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者について、シスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量と唾液量との対比結果を示す図であり、図3(b)は、実施例4で得られた、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者について、シスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量と粘膜剥離量との対比結果を示す図である。
実施例4で得られた、シスタチン−SN、リゾチーム及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量とプロテアーゼ活性との対比結果を示す図である。
実施例5で得られた、図2(a)〜(d)の測定量の分布に口腔内の粘膜剥離量を関連付けた各測定量の分布を示す図である。図5(a)はシスタチン−SNの測定量の分布、図5(b)はヒスタチン−1の測定量の分布、図5(c)はリゾチームの測定量の分布、図5(d)はプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量の分布を示す。

0011

以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔内の乾燥状態の評価方法は、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を指標とする。
ヒトの唾液中には、個人差があるものの、種々のタンパク質が存在する。かかるタンパク質としては、例えば、口腔内において抗菌作用をもたらすタンパク質、潤滑作用保護作用をもたらすタンパク質、免疫作用をもたらすタンパク質、及び菌付抑制作用をもたらすタンパク質等が挙げられ、これらのタンパク質は、口腔内環境を良好に維持するのに寄与している。
本発明では、客観的かつ正確な評価を可能とする観点から、複数の被験者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質の測定量を指標とするのが好ましい。かかるタンパク質の測定量とは、唾液1μLあたりのタンパク質濃度を元にした値を意味し、質量%表示とした値や、基準値との差異指数表示とした値をも含む。唾液中のタンパク質を測定する方法としては、プロテオーム解析を用いる方法や、ELISA法電気泳動法等の市販の測定キット等を用いた方法、或いはエイブラソン(Abrahamson)の方法(MethodsEnzymol,244,p685−700,1994年)が挙げられる。

0012

唾液中に存在するタンパク質としては、より具体的には、α−アミラーゼ(α−Amylase;AMY)、シスタチン−D(Cystatin−D;Cys.D)、シスタチン−SA(Cystatin−SA;Cys.SA)、シスタチン−SN(Cystatin−SN;Cys.SN)、ヒスタチン−1(Histatin−1;HTN1)、ヒスタチン−3(Histatin−3;HTN3)、ラクトフェリン(Lactotransferrin;LTF)、リゾチーム(Lysozyme;LYZ)、ムチン5B(Mucin 5B;MUC5B)、ムチン7(Mucin 7;MUC7)、ポリメリックイムノグロブリンレセプター(Polymeric immunoglobulin receptor;PIGR)、プロラクチン−インデュシブルプロテイン(Prolactin−inducible protein;PIP)、スタテリン(Statherin;STATH)、ラクトペルオキシダーゼ(Lactoperoxidase;LPO)、ミエロルオキシダーゼ(Myeloperoxidase;MPO)、β−ディフェンシン−1(β−defensin−1;BD−1)、プロリンリッチプロテイン(Proline−rich protein;PRP)、カタラーゼ(Catalase;CAT)、カリクレイン−1(Kallikrein−1;KLK1)等が挙げられる。

0013

なお、本発明において、唾液を採取する被験者としては、歯周病等の口腔内疾患に罹患していない者や、病院に通うような疾患がない者、或いは病院等の指示により処方された薬を服用していない者、いわゆる健常者を対象とすることが好ましい。なお、疾患としては、歯周病のほか、シェーングレン症候群を含む自己免疫性炎症性疾患甲状腺疾患等の唾液に影響を与えるものが挙げられる。唾液を採取する被験者としては、より正確な評価を可能とする観点から、さらに血中酸素低下による唾液中のタンパク質が減少するおそれのある喫煙習慣者を除外した者を対象とするのが好ましい。ここで喫煙習慣者とは、現在継続して喫煙している喫煙習慣のある者であり、例えば、過去に喫煙したが1年以上喫煙していない者は、喫煙習慣者に含めないこともできる。また性別年齢等によっても、口腔内の環境が異なることから、目的に応じて選別するのが好ましい。そのためには、予め被験者を採用するにあたり、各個人に関する性別、年齢、喫煙の有無、及び歯周病等の疾患の有無等の属性に関する情報を取得し、取捨選択するのが好ましい。すなわち、まず喫煙習慣のある者や歯周病等の疾患のある者は除外し、その他性別や年齢等については、混在させたり限定したりすればよい。

0014

本発明は、唾液中に存在する、これらのタンパク質の1種又は2種以上の測定量を指標とすることによって、口腔内の乾燥状態を評価する方法であり、好ましくは、指標とするタンパク質の測定量に、さらに口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られる評価尺度を用いる方法である。
本発明は、より具体的には、次のステップ(A)〜(D):
(A)複数の被験者の口腔内から唾液を採取し、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を求めるステップ、
(B)ステップ(A)における被験者を、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者とに二分化するステップ、
(C)ステップ(B)において二分化した被験者について、ステップ(A)において求めたタンパク質の測定量を指標として含む評価尺度を得るステップ、及び
(D)評価対象者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質の測定量を求め、ステップ(C)において得られた評価尺度を元に、評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価するステップ
を含む方法であるのが好ましく、さらにステップ(C)において得る評価尺度は、二分化された一方の口腔内の乾燥感を感じる被験者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布と、二分化された他方の口腔内の乾燥感を感じない被験者を対象として測定した口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られるものであるのがより好ましい。

0015

ステップ(A)では、複数の被験者の口腔内から唾液を採取し、唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量を求める。タンパク質の測定量を評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価する際の指標とするには、具体的には、予め複数の被験者の口腔内から採取した唾液を分析するとともに、唾液の採取時に口腔内の乾燥状態を確認し、かかる唾液中に含まれる所望のタンパク質の量を測定した値と、確認した口腔内の乾燥状態とを関連付け、指標化する必要がある。そのため、まずはステップ(A)により、その指標の元となる、採取した唾液中に存在するタンパク質の量を測定する。口腔内の唾液を採取するにあたっては、予め口腔内を清浄化するのが好ましい。これにより、口腔内における必要以上の汚れ等を除去することが可能となり、より正確なタンパク質の測定量を求めることができるとともに、口腔内の乾燥状態への影響を最小限に抑制して実情に即した確認を可能にすることができる。客観的かつ正確な指標とする観点から、口腔内を清浄化した後、唾液の採取時及び口腔内の乾燥状態の確認時まで、口腔内を一定時間安静状態に保っておくのが好ましい。

0016

口腔内を安静状態に保つには、具体的には、唾液を採取する前及び口腔内の乾燥状態を確認する前、例えば唾液を採取する1〜2時間前から唾液を採取するまでの間、唾液分泌に影響を与える行為を禁止することが好ましい。これにより、唾液分泌が影響を受けて変動することで、採取する唾液中におけるタンパク質の種類や量が変動するのを有効に防止して、求めるタンパク質の測定量を、確認した口腔内の乾燥状態と連動した値とし、口腔内の乾燥状態を評価する上での実情に即した指標とすることができる。

0017

唾液分泌に影響を与える行為としては、口腔内への刺激自律神経系への刺激、人体への刺激が挙げられる。口腔内への刺激としては、具体的には、例えば、飲食、口腔内清掃、開口、喫煙等が挙げられる。口腔内清掃としては、歯ブラシを用いた歯磨き行為や、洗口剤または水を口腔内に含んだ後、口腔内の汚れが落ちるよう含漱し、次いで水を吐き出す行為等が挙げられる。また自律神経系への刺激としては、具体的には、例えば、薬の服用が挙げられる。人体への刺激としては、具体的には、例えば、激しい運動、長時間にわたる睡眠極端温度変化等が挙げられる。
したがって、唾液中のタンパク質の測定量、及び確認した口腔内の乾燥状態の客観性や正確性を高める観点から、これらの行為を可能な限り禁止することが好ましい。

0018

採取した唾液は、より正確なタンパク質の測定量を得る観点から、速やかに上で保存してもよく、或いは撹拌した後に冷却し、その後遠心分離して得られた唾液の上清回収し、かかる上清に存在するタンパク質を測定するのが好ましい。かかる撹拌方法としては、ボルテックスミキサーロータリーミキサー等のミキサー装置を用いる方法、ピペットを用いたピペッティング方法、容器等を用いるタッピング方法等を用いることができる。また遠心分離をする際には、超遠心分離機冷却用遠心分離機等の遠心分離機を用いることができる。
なお、タンパク質の測定量は、複数の被験者の口腔内から採取した各唾液中に存在する量を平均して求めてもよく、複数の被験者の口腔内から採取した唾液全量中に存在する量から求めてもよい。

0019

ステップ(B)では、上記ステップ(A)における被験者を、口腔内の乾燥感を感じる被験者(以下、「該当者」ともいう)と乾燥感を感じない被験者(以下、「非該当者」ともいう)とに二分化する。これにより、後述するステップ(C)において得られる評価尺度を元に、評価対象者の唾液中に存在するタンパク質の測定量から、評価対象者の口腔内の乾燥状態を客観的かつ正確に評価することができる。

0020

複数の被験者を該当者と非該当者とに二分化した際、口腔内の乾燥状態の客観性や正確性を高める観点から、唾液中における測定量を指標とするタンパク質として、唾液中に存在する複数種類のタンパク質のなかから、該当者の唾液中の測定量が非該当者の唾液中の測定量よりも有意に少ない1種又は2種以上のタンパク質を選択するのが好ましい。かかるタンパク質としては、具体的には、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、後述するステップ(C)において得る評価尺度を、口腔内の乾燥感を感じる被験者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布とする観点から、ヒスタチン−1、及びリゾチームから選ばれる1種又は2種がより好ましい。さらに、後述するステップ(C)において得る評価尺度を、二分化された一方の口腔内の乾燥感を感じない被験者を対象として測定した口腔内の粘膜剥離量を用いることにより得られる、口腔内の乾燥感を感じる被験者と乾燥感を感じない被験者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布とする観点から、シスタチン−SN、及びヒスタチン−1から選ばれる1種又は2種がより好ましい。

0021

有意に少ないタンパク質を選択するにあたり、例えば、Mann−Whitney U Testを行うことにより、統計学的な有意差を求めて判断するのが好ましい。

0022

ステップ(C)では、上記ステップ(B)において二分化した被験者について、ステップ(A)において求めたタンパク質の測定量を指標として含む評価尺度を得て、ステップ(D)において、評価対象者の口腔内から採取した唾液中に存在するタンパク質の測定量を求め、ステップ(C)において得られた評価尺度を元に、評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価する。なお、ステップ(D)における評価対象者の口腔内から唾液を採取する方法、及び唾液中のタンパク質の測定方法等については、上述と同様の方法を用いることができる。

0023

本発明の評価方法がこれらステップ(C)及びステップ(D)を含むことにより、評価対象者の唾液中に存在するタンパク質の測定量のみで、かかる評価対象者の口腔内の乾燥状態について、乾燥感を感じるか或いは感じないかの評価対象者の自覚の有無にかかわらず、客観的に評価することができる。ステップ(C)において求めるタンパク質の測定量の指標としては、例えば、二分化した被験者におけるタンパク質の測定量の平均値や分布、散布図等が挙げられる。なかでも、評価対象者の口腔内の乾燥状態を客観的かつ正確に評価する観点から、二分化した被験者におけるタンパク質の測定量の分布を用いるのが好ましい。

0024

例えば、タンパク質の測定量の指標として、二分化した被験者におけるタンパク質の測定量の平均値を用い、これを評価尺度とする場合、具体的には、まず非該当者のタンパク質の測定量の平均値X、及び該当者のタンパク質の測定量の平均値Yを求める。次に、評価対象者のタンパク質の測定量を求め、かかる値の平均値X及び平均値Yとの各々の差から、X又はYのいずれの値の方に近似しているかを判別することにより、評価対象者の口腔内が乾燥状態であるか、或いは乾燥状態ではないかを評価することができる。
また、該当者のタンパク質の測定量の平均値Yと、該当者のタンパク質の測定量の平均値Yについての標準偏差σYを求める。次に評価対象者のタンパク質の測定量を求め、評価対象者のタンパク質の測定量が平均値Y以下である場合には評価対象者を「乾いている」と評価し、評価対象者のタンパク質の測定量が(平均値Y+標準偏差σY)よりも小さいが平均値Yよりも大きい場合には評価対象者を「乾いているおそれがある」と評価することができる。

0025

また、非該当者のうち、特にタンパク質の測定量の少ない被験者においては、自覚がないだけで実際には乾燥状態である可能性が高い一方、該当者においてはほぼ全員(90%の該当者)が客観的にも乾燥状態であると確認される。そのため、例えば、タンパク質の測定量の指標として、二分化した被験者におけるタンパク質の測定量の分布を用い、これを評価尺度とする場合、評価対象者の口腔内の乾燥状態についてより確実な評価を得る観点から、二分化した被験者の一方である、該当者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布を用いるのが好ましい。

0026

具体的には、例えば、図2(a)〜(d)にも示すように、被験者数43人について、「口の中が乾いている」の症状の自覚の有無(有:乾いている、無:乾いていない)を確認して該当者及び非該当者に二分化し、各々について求めたシスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量を分布化する。これらの分布より、上記該当者は、いずれのタンパク質の測定量も低い値を示すことがわかる。したがって、評価対象者について、上記から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質の測定量を求め、その値を該当者の各タンパク質の測定量の分布に当てはめることにより、評価対象者の口腔内における乾燥状態を評価することができる。例えば、評価対象者のシスタチン−SNの測定量(実施例にも記載するように、一定ペプチド量に対する解析対象タンパク質の相対定量値から算出される、採取唾液中の解析対象タンパク質濃度相当量)が3.9×107であるとき、図2(a)の該当者の分布に当てはめると、かかる値には該当者がいないため、評価対象者の口腔内は乾燥状態ではないと評価することができる。また、評価対象者のシスタチン−SNの測定量が2.8×106であるとき、図2(a)の該当者の分布に当てはめると、かかる値には被験者数5人中に該当者が2人存在するため、約40%の確率で評価対象者の口腔内は乾燥状態であると評価することができる。この際、上記タンパク質の測定量の分布を曲線化し、これに評価対象者のタンパク質の測定量を当てはめてもよい。
なお、測定するタンパク質の種類が複数である場合、それら複数のタンパク質の測定量を用いてロジスティック回帰分析等を行うことにより、口腔内が乾燥状態である確率(%)を求めてもよい。

0027

また、本発明において、指標とするタンパク質の測定量に、さらに口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られる評価尺度を用いるには、上記ステップ(C)において、さらに二分化された一方の被験者である非該当者を対象として測定した口腔内の粘膜剥離量を用い、該当者及び非該当者の双方における唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布と関連付けることにより得られる評価尺度を用いればよい。非該当者のうち、特にタンパク質の測定量の少ない被験者においては、自覚がないだけで実際には乾燥状態である可能性が高く、本発明者らにより、かかる被験者については口腔内の粘膜剥離量が多い傾向にあることが判明し、これを指標とするタンパク質の測定量に関連付けることにより、さらに精度を高めた評価が可能となる。

0028

例えば、被験者数43人について、「口の中が乾いている」の症状の自覚の有無を確認し、各々シスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量を求め、「口の中が乾いている」と自覚症状のある該当者のシスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量から、タンパク質の測定量の少ない「該当者」のタンパク質の範囲(量の上限)を各々のタンパク質について得る。例えば、「該当者」のタンパク質の量(平均値Y+標準偏差σY×2)を上限とした場合には、シスタチン−SNの量の上限は1.36×107、ヒスタチン−1の量の上限は9.49×105となる。

0029

次に、非該当者について、前記の「該当者」のタンパク質の範囲である非該当者(低測定量者)と、前記の「該当者」のタンパク質の範囲よりも大きい非該当者(高測定量者)に振り分け、各々の平均唾液量を求めてみたところ、図3(a)に示すように、非該当者のうち低測定量者の唾液量は、該当者の唾液量よりもかなり多く、かつ非該当者のうち高測定量者の唾液量と同等若しくはそれ以上の量であることがわかる。一方、同じ被験者について、粘膜剥離量を測定し、同様にして平均粘膜剥離量を求めてみたところ、図3(b)に示すように、非該当者のうち低測定量者の粘膜剥離量は、非該当者のうち高測定量者の粘膜剥離量よりもかなり多いものの、該当者の粘膜剥離量とは同等若しくはそれ以上の量であることがわかる。すなわち、該当者と同等に粘膜剥離量が多いこれら非該当者は、十分に口腔内が乾燥状態にあると考えられるものの、唾液量が多いために乾燥感を自覚しにくい傾向にあると推認される。
なお、口腔内の粘膜剥離量を測定する方法としては、例えば、蒸留水含嗽させた後に吐出させて得た吐出液洗口吐出液)を用いて、撹拌し懸濁させた一定量の洗口吐出液を遠心分離し、その上清を除去し、残った沈殿物の重量を測定する方法が挙げられる。

0030

このように、口腔内における乾燥感を感じないと判断しつつもタンパク質の測定量が低いこれらの非該当者については、本来乾燥感を感じる該当者として分類することが好ましく、評価対象者の口腔内の乾燥状態について、口腔内の環境や乾燥感の自覚における個人差を加味した、より客観的な評価が実現できると考えられる。

0031

ステップ(C)において、二分化された一方の口腔内の乾燥感を感じる被験者の唾液中に存在する1種又は2種以上のタンパク質の測定量の分布と、二分化された他方の口腔内の乾燥感を感じない被験者を対象として測定した口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより評価尺度を得る場合、具体的には、例えばタンパク質としてシスタチン−SNを用いる場合、まず、予め「該当者」の粘膜剥離量を測定し、その平均値nを求める。次に、図2(a)のシスタチン−SNの測定量の分布において、タンパク質が低測定量(例えば、平均値Y+標準偏差σY×2以下=1.36×107以下)を示した非該当者について、粘膜剥離量を測定する。次いで、上記非該当者の粘膜剥離量が平均値n以上である非該当者を該当者に振り分けて、図5(a)に示すような、該当者におけるタンパク質の測定量の分布を再構築補正)する。かかる再構築した分布を評価尺度とし、ステップ(D)において求めた評価対象者のタンパク質の測定量をこれに当てはめることによって、評価対象者の口腔内の乾燥状態を評価することができる。
なお、非該当者を該当者に振り分けるときの「該当者となる粘膜剥離量の基準値又は下限値」は、平均値nを用いるほか、該当者の粘膜剥離量の中央値、或いは該当者の90%以上が含まれる粘膜剥離量が挙げられ、平均値nを用いることが好ましい。すなわち、口腔内の粘膜剥離量を関連付けることにより得られる評価尺度とは、該当者となる粘膜剥離量の基準値又は下限値であり、かかる尺度よりも粘膜剥離量が多い場合に、該当者に振り分けて、該当者におけるタンパク質の測定量の分布を再構築することができる。

0032

このように、本発明の評価方法によれば、口腔内における乾燥感の自覚の有無のみに因らず、口腔内の乾燥状態を客観的かつ正確に把握することができるので、口腔内が現実に乾燥しはじめていることを早期に発見し、口腔内環境の改善、例えば保湿効果の高い口腔用組成物の使用、保湿効果の高い口腔用ケア製品の使用や使い方等を提案し、口腔内環境の改善を図り、口の中が粘いたり口の中が滑らかでないといった口の中の不快な症状の改善を図り、しいては口臭の改善、う蝕や歯周病等の予防にも寄与することができる。

0033

以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

0034

[実施例1]
全身疾患や喫煙習慣及び重篤口腔疾患を認めない40代及び50歳代の男性43名(平均年齢47.8±4.5歳)を被験者とした。各被験者には問診用紙又はコンピューター画面により性別、年齢、喫煙習慣の有無(現在喫煙の習慣がある場合、又は1年以内に喫煙を継続して行っていた場合を「有」とした)、歯周病等の疾患の指摘を受けたことの有無、通院の有無、薬の服用の有無を入力して、情報を取得した。さらに、各被験者について、歯科衛生士により歯周溝の深さ、う蝕の有無を測定し情報を取得した。これらの各被験者の情報はコンピューターに入力し保存した。
各被験者とも試験前日に口腔内清掃を行い、試験当日起床時から飲食及び口腔内清掃を禁止させた。座位で10分間安静を保った後、50mL遠沈管(IWAKI)に入れた6mLの蒸留水(大塚製薬)を30秒間含嗽した後吐出させ、洗口吐出液を採取した。次いで、かかる50mL遠沈管に、吐唾法による10分間の安静時における全唾液を採取した。

0035

次いで、採取した唾液を試験管ミキサー(柴田科学製、TTM-1型)で約30秒撹拌した後、速やかに氷上に置き、これ以降の操作は氷上で行った。採取した唾液を、遠心分離機(日立工機 CF15R)を用いて、回転子の回転速度3000rpm、4℃で10分間の遠心分離に処した。遠心分離後、上清を回収した。採取した唾液の一部を用い、Advanced Protein Assay(5X conc)(Cytoskeleton社製)にて唾液の総タンパク質濃度を測定した。標準物質アルブミンとした。

0036

続いて、当日に口腔内で自覚された不調や不快の症状の自覚の有無を2件法(複数選択式)にて回答させるアンケートを実施し、全21症状のうち、「自覚有り」と回答した被験者の割合(該当率)が全対象者の20%以上であった症状を評価対象として決定した。

0037

次いで、下記に示す方法にしたがって各測定を行い、評価対象として決定した5つの症状について解析した。具体的には、各症状の該当者(自覚あり)と非該当者(自覚なし)との間で、Mann−WhitneyのU検定有意水準5%未満)を行い、各測定値を比較した。

0038

《採取した唾液を用いた測定》
採取した唾液について、15000rpm、4℃で10分間遠心分離を行った。得られた上清について、限外濾過膜ミリポア社製、カットオフ値:3000)を用いて脱塩濃縮処理を行った。濃縮サンプル90μLに、還元液(100mMジチオトレイトールシグマ社製)、100mMトリスバッファー(シグマ社製))5μLを加え、56℃で45分間インキュベートを行った。さらに、アルキル化液(3mMヨードアセトアミド和光純薬社製)、100mMトリスバッファー(シグマ社製))を5μL加え、遮光条件で室温下、30分間インキュベートした。さらに、トリプシン液(3%トリプシン(プロメガ社製)、5mM塩化カルシウム(和光純薬社製)、100mMトリスバッファー(シグマ社製))を100μL加え、37℃で16時間消化を行い、2μLの10%トリフルオロ酢酸(和光純薬社製)を加えて反応を停止させた。これにより唾液のタンパク質測定の前処理サンプルを調製した。なお、ここで用いた試薬は、全てHPLCグレード高速液体クロマトグラフ用の純度)のものである。

0039

唾液に含まれるタンパク質のうち、抗菌作用や免疫作用,プロテアーゼ阻害作用等が知られている11種類のタンパク質について,前処理済み唾液サンプルをLC−MSにて分析し,対象タンパク質由来ペプチドピーク面積値をそのタンパク質の相対定量値とした。具体的には,前処理後試料タンパク濃度をLC−UV(LC:nanoAcquity UPLC,UV検出器:Acquity TUV(Waters))にて算出し,各試料についてタンパク質1μgをLC−MS(LC:Ultimate 3000 RSLCnano System(Dionex),MS:TripleTOF 5600+(AB SCIEX))にて分析した。
この際、Analyst TF 1.6ソフトウェアを用いて、2.5時間の分析メソッドSCAN測定した。次いでMultiQuant 2.1ソフトウェアを用いて、解析対象タンパク質由来のペプチドの抽出イオンクロマトグラムからピーク面積を算出し、各タンパク質の相対定量値として得た。なお、解析対象タンパク質由来のペプチド及びそのm/z値として、以下のものを用いた。

0040

Cys.SN:IIPGGIYNADLNDEWVQR ;m/z 1037.0237, m/z 691.6848
Cys.SA:IIEGGIYDADLNDER;m/z 846.9074
HTN1:EFPFYGDYGSNYLYDN;m/z 982.4047, m/z 655.2722
HTN3:SNYLYDN;m/z 444.6903
LTF:DGAGDVAFIR;m/z 510.7591
PIGR:NADLQVLKPEPELVYEDLR;m/z 1121.0917
MUC5B:AQAQPGVPLR;m/z 518.7983
MUC7:LPPSPNNPPK;m/z 530.7929
LYZ:STDYGIFQINSR;m/z 700.8439
PIP:TYLISSIPLQGAFNYK;m/z 907.9880, m/z 605.6611
STATH:FGYGYGPYQPVPEQPLYPQPYQPQYQQYTF;m/z 1215.2330, m/z 911.6767

0041

得られた各タンパク質の相対定量値に唾液総タンパク質濃度を乗じて、各タンパク質濃度相当量の測定値を得た。
各被験者の唾液1μLあたりの各タンパク質濃度の値を用い、非該当者の各タンパク質濃度の平均値に対する該当者の各タンパク質濃度の平均値を求め、結果を表1に示す。

0042

また、各々唾液量及びプロテアーゼ活性についても測定した。唾液量は、採取前と採取直後の採取遠沈管の風袋重量を測定し、その差分を算出することにより測定した。プロテアーゼ活性は唾液上清を用いて次の手順により測定した。
まず、96ウェルプレートに唾液上清100μLとリン酸緩衝生理食塩水PBS)100μLを添加し、30秒間攪拌した。その後、酵素基質となるBoc−Phe−Ser−Arg−MCA(3107−v; (株)ペプチド研究所製)を2μL添加し(終濃度100μM)、37℃で10分間インキュベートした。蛍光分光光度計励起波長380nm、吸収波長460nm;モレキュラーデバイス社製)を用いて、反応の進行に伴う蛍光強度の増加を測定し、酵素反応の強さは基質から遊離するAMC(7−amino−4−methylcoumarin)量で評価し、唾液のプロテアーゼ活性とした。得られたプロテアーゼ活性の測定結果から求めた、非該当者の平均値に対する該当者の平均値を表2に示す。

0043

《採取した洗口吐出液を用いた測定》
採取した洗口吐出液を15000rpm、4℃で15分間遠心分離し、遠心上清を除去した後、沈渣の質重量を計測し、口腔粘膜剥離量とした。
結果を表2に示す。
なお、該当者の平均値について、非該当者の平均値を1とした平均指数で表示した。

0044

さらに、各被験者の口腔内を診察して、DMF、GI、BOP及びPDの歯科臨床指標値を下記の方法により求めた。
結果を表3に示す。
なお、該当者の平均値について、非該当者の平均値を1とした平均指数で表示した。

0045

《DMF:う蝕経験》
う蝕に罹患している歯をD(未処置歯)、う蝕が原因で抜去された歯をM(喪失歯)、う蝕に罹患したが処置が終了している歯をF(処置歯)とし、WHOの口腔診査法(1971)に基づき、全歯について健全歯・未処置歯・処置歯の種別を判定し、その合計をう蝕履歴のある歯の数として算出した。
《GI:歯肉炎指数
上顎右側の側切歯第一大臼歯上顎左側の第一小臼歯下顎右側の第一小臼歯、並びに下顎左側の側切歯、第一大臼歯の6本の歯の表裏2箇所ずつ、合計24部位の歯肉腫れおよび出血の程度を目視で判定した。歯肉炎指数(正常な歯肉を0、軽度の炎症で出血が見られない場合を1、中程度の炎症を2、重度の炎症を3とする)で評価し、全24部位の平均値を算出した。
《PD:歯周ポケットの深さ》
全歯の表裏の歯肉溝に歯周ポケットプローブを挿入し、先端が歯肉溝底に達した際のプローブの挿入深さを目視で判定し、全部位の平均値を算出した。
《BOP:プロービング後の歯肉出血指数》
全歯の表裏のPDの測定後に歯周プローブを抜き出し、歯肉溝から一時的に出血があるかどうかを目視で判定した。歯肉出血指数(出血がない場合を0、点状の出血がみられる場合を1、線状の出血がみられる場合を2)で評価し、全部位の平均値を算出した。

0046

0047

0048

0049

表1〜2によれば、口腔内で自覚された不調や不快の症状のうち、「口の中が乾いている」と口腔内の乾燥感を訴えた該当者(全対象者中の20.9%)において、シスタチン−SN(Cys.SN)、ヒスタチン−1(HTN1)、リゾチーム(LYZ)、プロラクチン−インデュシブルプロテイン(PIP)の各タンパク質の濃度が有意に低かったのに対し、唾液量は少ない傾向が見られたものの、有意差はなかった。また、その他の症状と唾液や洗口吐出液における測定値との関連性については、「口の中がネバネバする」と訴えた該当者(全対象者中の32.6%)において、唾液量が有意に低かったことが認められた程度であった。
このことから、「口の中が乾いている」の該当者において、概ね唾液量が低い傾向にあったため、口腔内の乾燥感との関連性を積極的に否定することはできなかったものの、これらは必ずしも相関しないことが確認された。また、口腔内の乾燥状態を実情に即して忠実に評価するにあたり、唾液中に存在するタンパク質のなかでも、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインから選ばれる1種又は2種以上の測定量を指標とするのが好ましいこともわかった。

0050

表3によれば、「口の中が乾いている」と口腔内の乾燥感を訴えた該当者は、歯科臨床指標値においては非該当者との差が見られなかったことから、口腔内の乾燥感は、必ずしも口腔疾患には因らない不快な一症状であることも確認された。
なお、こうした口腔内の乾燥感は、唾液量が少ないことのみに由来する不快な症状ではなく、唾液の質的変化による口腔内を保護する作用の低下が影響を及ぼしているものとも推定される。

0051

[実施例2]
実施例1において採用した被験者について求めた、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量を元に、非該当者の平均値X及び該当者の平均値Yを算出し、さらに標準偏差σYを算出した。結果を図1(a)(シスタチン−SN)、図1(b)(ヒスタチン−1)、図1(c)(リゾチーム)、及び図1(d)(プロラクチン−インデュシブルプロテイン)に示すとともに、求めた平均値Y及び標準偏差σYの値、並びにこれらの値を元に算出した平均値Y+標準偏差δYの値を表4に示す。

0052

図1(a)〜(d)からも明らかなように、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインのいずれにおいても、非該当者に比べ、該当者の平均測定値が低い値を示すことがわかる。

0053

《乾燥評価1》
次に、評価対象者として、表5に示す評価者X、評価者Y、及び評価者Zについて、実施例1と同様にして唾液の採取を行い、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定値を求めた。かかる値を表4に示す値と照らし合わせ、平均値Y未満に該当する場合を口腔内が「乾いている」とし、平均値Y以上であって平均値Y+標準偏差δY以下までに該当する場合を口腔内が「乾いているおそれ」があるとし、それ以外を「問題なし」として評価した。なお、「口の中が乾いている」の自覚の有無についても回答させ、問診結果として得た。
評価結果を表5に示す。

0054

0055

[実施例3]
実施例1において採用した被験者について求めた、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量を元に、該当者及び非該当者に二分化した分布を作製した。
結果を図2(a)(シスタチン−SN)、図2(b)(ヒスタチン−1)、図2(c)(リゾチーム)、及び図2(d)(プロラクチン−インデュシブルプロテイン)に示す。
図2(a)〜(d)の結果より、該当者の測定値は概して低い値を示しているのに対し、非該当者は高い値を示すもののほか、該当者と同程度に低い値を示す者が存在することがわかる。

0056

《乾燥評価2》
次に、評価対象者として、実施例2において採用した評価者X、評価者Y、及び評価者Zについて、求めたシスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定値を図2(a)〜(d)に示す該当者の分布に当てはめ、評価した。
上記問診結果ともに、評価結果を表6に示す。

0057

0058

[実施例4]
実施例1において採用した被験者について、さらに上記方法にしたがって唾液量(g/分)、粘膜剥離量(mg/mL)、及びプロテアーゼ活性(intensity)を測定した。次いで、非該当者について、シスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの各々の平均値Yを境に高測定量者と低測定量者に分類し、各々粘膜剥離量、粘膜剥離量、及びプロテアーゼ活性の各平均値を求めた。
シスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量と唾液量の平均値との対比結果を図3(a)に示し、シスタチン−SN及びヒスタチン−1の測定量と粘膜剥離量の平均値との対比結果を図3(b)に示す。さらに、シスタチン−SN、リゾチーム及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定量とプロテアーゼ活性との対比結果を図4に示す。

0059

図3(a)〜(b)の結果からも明らかなように、非該当者であり、かつタンパク質が低測定量者であると、唾液量が該当者よりも多いものの、粘膜剥離量は該当者と同等若しくはそれ以上に多いことから、かかる非該当者の大半は口腔内が乾燥状態であると判断し得ることがわかる。さらに、図4の結果からも明らかなように、非該当者であり、かつタンパク質低測定量者であると、プロテアーゼ活性も高い値を示すことがわかる。

0060

[実施例5]
実施例3で得られた図2(a)〜(d)、及び実施例4で測定した粘膜剥離量の値を基に、該当者及び非該当者の双方における各タンパク質測定量の分布を再構築(補正)した。
具体的には、まず「該当者」の粘膜剥離量の平均値nを求めた。次いで、各タンパク質測定量の平均値Y+標準偏差δY×2の値を算出し、かかる値以下のタンパク質測定量である「非該当者」の粘膜剥離量を基に、平均値n以上である非該当者を該当者に振り分けて、図2(a)〜(d)の分布を再構築(補正)した。
各タンパク質測定量の平均値Y+標準偏差δY×2の値、及び粘膜剥離量の平均値nを表7に示すとともに、図2(a)〜(d)を再構築した分布を各々図5(a)〜(d)に示す。

0061

0062

《乾燥評価3》
次に、評価対象者として、実施例2において採用した評価者X、評価者Y、及び評価者Zについて、求めたシスタチン−SN、ヒスタチン−1、リゾチーム、及びプロラクチン−インデュシブルプロテインの測定値を図5(a)〜(d)に示す該当者の再構築後(補正後)の分布に当てはめ、評価した。
上記問診結果ともに、評価結果を表8に示す。

0063

実施例

0064

上記乾燥評価3の結果からも明らかなように、評価者Xは自覚症状がないものの、唾液中におけるタンパク質量が少ない上に粘膜剥離量も多く、明らかに口腔内が乾燥していると評価すべきであることがわかる。
一方、評価者Yは明らかに口腔内が乾燥していないと評価することで足り、評価者Zは自覚症状もある上、粘膜剥離量も多く、総じてタンパク質量が少ないと判断し得ることから、口腔内が乾燥していると評価するのが妥当であることがわかる。
これらの結果からして、上記乾燥評価3は、上記乾燥評価1〜2よりもさらに客観的かつ正確な評価に基づき、見落としがちな口腔内の乾燥予備を拾い上げることも可能である。

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