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課題
解決手段
概要
背景
産業廃棄物の焼却処理設備において、焼却炉の内壁面には、高温の有害ガスから炉壁を保護するために、耐火材が内張りされている。この耐火材は、炉の使用に伴って損傷を受けるため、定期的な交換が必要となる。
耐火材が損傷する要因としては、
(1)耐火材の耐熱温度以上の条件で操業することにより耐火材自体が溶融したり、温度条件の急激な変化により耐火材がヒートショックを受けたりする、熱による損傷
(2)回転炉などの内壁面に使用された場合、機械的応力が周期的にかかることによる割れ等が発生したり、接触する原料との磨耗で耐火材が削り取られたりする、機械的損傷
(3)原料が溶融等を起こして耐火材内部へ侵入することにより、耐火材の組成変化を起こし、耐熱性や強度が失われる、化学的損傷
等がある。
これらの要因に対して耐火材を保護し、損傷を抑えるために、従来は、燃焼温度を低く抑えたり、比較的損傷を受けにくい高級耐火材を使用するという対策をとっていた。あるいは、一般耐火材を使用して、損傷したらその都度取り替えていた。
ところが、燃焼温度を低く抑えると、処理速度が低下するだけでなく、燃焼ガスの臭気除去が困難になり、ガス処理を安全に行うためのコストが高くなる。また、損傷を受けにくい高級耐火材を使用しても、耐用年数には限度があり、費用が嵩む。さらに、一般耐火材を使用する場合、損傷する毎に頻繁に取り替えなければならず、費用や手間がかかるだけでなく、取り替える間は廃棄物の焼却処理が中断される等の不具合が生じる。
概要
固形の産業廃棄物を焼却処理する際、簡易且つ低コストで、しかも廃棄物の焼却処理を中断せずに、耐火材の損傷を抑制する。固形の産業廃棄物を焼却処理する方法において、焼却処理前に、廃棄物に対して1質量%以上の消石灰またはそれと同量のカルシウムを含有するカルシウム含有物質を添加し、混合した後に焼却処理を行う。カルシウム含有物質を添加することで焼却灰の塩基度が上がり、焼却灰の融点が上昇するため、耐火材内部に侵食しにくくなり、耐火材の延命化につながる。
目的
本発明は、固形の産業廃棄物を焼却処理する際、簡易且つ低コストで、しかも廃棄物の焼却処理を中断せずに、耐火材の損傷を抑制することを目的とする
効果
実績
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この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
産業廃棄物の焼却処理設備において、焼却炉の内壁面には、高温の有害ガスから炉壁を保護するために、耐火材が内張りされている。この耐火材は、炉の使用に伴って損傷を受けるため、定期的な交換が必要となる。
0003
耐火材が損傷する要因としては、
(1)耐火材の耐熱温度以上の条件で操業することにより耐火材自体が溶融したり、温度条件の急激な変化により耐火材がヒートショックを受けたりする、熱による損傷
(2)回転炉などの内壁面に使用された場合、機械的応力が周期的にかかることによる割れ等が発生したり、接触する原料との磨耗で耐火材が削り取られたりする、機械的損傷
(3)原料が溶融等を起こして耐火材内部へ侵入することにより、耐火材の組成変化を起こし、耐熱性や強度が失われる、化学的損傷
等がある。
0004
これらの要因に対して耐火材を保護し、損傷を抑えるために、従来は、燃焼温度を低く抑えたり、比較的損傷を受けにくい高級耐火材を使用するという対策をとっていた。あるいは、一般耐火材を使用して、損傷したらその都度取り替えていた。
0005
ところが、燃焼温度を低く抑えると、処理速度が低下するだけでなく、燃焼ガスの臭気除去が困難になり、ガス処理を安全に行うためのコストが高くなる。また、損傷を受けにくい高級耐火材を使用しても、耐用年数には限度があり、費用が嵩む。さらに、一般耐火材を使用する場合、損傷する毎に頻繁に取り替えなければならず、費用や手間がかかるだけでなく、取り替える間は廃棄物の焼却処理が中断される等の不具合が生じる。
先行技術
0007
特開2002−174419号公報
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
0010
上記問題を解決するため、本発明は、固形の産業廃棄物を焼却処理する方法において、焼却処理前に、廃棄物に対して1質量%以上の消石灰またはそれと同量のカルシウムを含有するカルシウム含有物質を添加し、混合した後に焼却処理を行うことを特徴とする、固形産業廃棄物の焼却処理方法を提供する。
0012
また、焼却処理を行う焼却炉に内張りされている耐火材の耐熱温度が1000℃以上でもよい。
発明の効果
0013
本発明によれば、簡易な方法且つ低コストで、廃棄物の焼却処理を中断することなく、耐火物の損傷を抑制することができる。
図面の簡単な説明
0014
本発明の実施例にかかる廃棄物処理設備の構成を示す概略図である。
0015
以下、本発明の実施の形態を説明する。
0016
従来、廃棄物の焼却処理を行う焼却炉であるロータリーキルンに内張りされた耐火材は、損傷により、通常7〜8ヶ月で補修を行う必要が生じていた。本発明者らは、その主な原因が、廃棄物の焼却灰の塩基度が平均約0.3と低いために、焼却灰の融点が低く、焼却灰が溶融することで、耐火材が構造スポーリングを起こすためであると考えた。
0017
そして、焼却処分する固形廃棄物中にカルシウム含有物質を添加し、焼却灰の塩基度を上げることで融点を高くすれば、耐火材内部への侵食を起こしにくくなることを見出した。そこで、本発明は、耐火材で内張りした焼却炉を用いて廃棄物を燃焼させる際、焼却前の廃棄物に対して1質量%以上の消石灰またはそれと同量のカルシウムを含有するカルシウム含有物質を添加することとした。
0018
廃棄物にカルシウム含有物質を添加して塩基度が上がれば、焼却灰の融点が上昇し、焼却灰が溶融しにくくなる。これにより、焼却灰溶融物の耐火材への浸透が抑制され、耐火材の構造スポーリングが起こりにくくなる。すなわち、耐火材の損傷を抑制し、寿命を延ばすことができる。十分な効果を得るためには、焼却灰の塩基度を平均0.4以上とすることが好ましい。なお、塩基度とは、焼却灰中のCaOとSiO2との質量%の比(CaO(質量%)/SiO2(質量%))のことである。ただし、塩基度は2.0以下に抑えることが望ましい。塩基度が2.0を超えると、溶融温度の上昇により溶融エネルギー原単位が著しく増加し、炉内温度が想定以上に上昇して焼却灰が溶融した場合、流動性が極めて高くなり、浸透による耐火材の損傷が大きくなってしまうためである。
0019
焼却灰の塩基度(平均0.4以上)は、いわゆる傾向管理によりなされる。焼却灰は多数のものがあって、成分は必ずしも同様ではなく、焼却灰自体の塩基度は0.2〜1程度に大きく変化する。また、その処理は日々、大量に連続してなされるため、焼却灰の成分を常に監視することは生産的ではない。そこで、1日に一回程度でよいので、焼却灰の塩基度を測定し、その焼却灰について塩基度を調整するアルカリ量を設定し、その日の各処理予定の固形廃棄物への添加量とする。なお、焼却灰のサンプリング方法として、例えば、4時間ごとに1回、1日あたりで計6回のサンプリングを実施し、1日分計6点のサンプルを混合後に縮分する事で、当該日の代表サンプルとすることが出来る。これでも、この日の中では、塩基度が必ずしも0.4以上と常になるとは限らないが、日々この操作を繰り返すことで、長期間でみれば塩基度が0.4以上の傾向となる傾向管理の実施となり、耐火材の損耗を抑制できる。
0020
カルシウム含有物質としては、消石灰や炭酸カルシウム、石膏の他、カルシウムが含有されているその他の粉体や泥状のものでもよい。また、これらを2種以上混合したものでも構わない。廃棄物内に均一に混合することにより溶融を防ぐという観点から、これらのカルシウム含有物質は、粒子状のものや溶液状、スラリー状であることが好ましい。例えば炭酸カルシウムの場合には、平均粒子径50μm以下であることが好ましい。
0021
このようなカルシウム含有物質を、焼却処分する固形の産業廃棄物中に投入し、均一に攪拌した後、廃棄物を焼却炉で焼却することにより、発生する焼却灰の塩基度が上がり、焼却灰の融点が上昇する。そのため、耐火材内部に溶融(侵食)しにくくなり、耐火材の延命化につながる。
0022
本発明は、廃棄物の酸化ケイ素含有量が10質量%の場合に、殊に効果的である。さらに、焼却炉に内張りされている耐火材の耐熱温度が1000℃以上の場合に効果的である。
0023
このように、本発明は、固形の産業廃棄物を焼却処理する際、カルシウム含有物質を添加するという極めて簡易な方法により、耐火材の損傷を抑制することができる。これにより、耐火材の寿命を延ばし、交換サイクルを延ばすことができ、コストや手間を削減できる。しかも、耐火材に対して、表面を保護材で被覆処理する等の作業を行わないので、その作業による焼却処理中断の必要もない。したがって、焼却炉の停止に伴う温度低下によって起こる燃焼ガスの臭気やダイオキシンの発生機会を減らすことができる。
0024
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
0025
廃棄物にカルシウム含有物質を添加した後に焼却する本発明の焼却処理方法と、カルシウム含有物質を添加せずに焼却する従来の焼却処理方法とを実施した際の、耐火材の肉厚の変化および焼却灰の塩基度を測定した。
0026
図1は、廃棄物処理設備1の構成の概要であり、図中の矢印は、廃棄物の流れを示す。廃棄物はショベルカー2で運搬され、スキップコンベア3に投入された後、エプロンコンベア4、スライドゲート5を介して、焼却炉であるロータリーキルン6に投入される。ロータリーキルン6は、直径4.9m、長さ14mのものを使用した。
0027
2007年1月15日〜2007年7月10日の約6ヶ月間、廃棄物にカルシウム含有物質を添加せずに焼却炉を使用し、焼却炉に内張りされた耐火材(Al2O3:89%、SiO2:4%、Cr2O3:5%)の肉厚の測定を行った。なお、耐火材の肉厚測定は、耐火材に直径80〜100mmの円筒形の穴を開け、穴部分の厚さを計測することで実施した。焼却処理は、廃棄物をロータリーキルン6に6〜10t/h投入し、ロータリーキルン6内において、900〜1100℃で約1時間焼却した。耐火材の肉厚測定結果は表1に示す通りであり、肉厚の減肉速度は平均24.9mm/月であった。
0028
0029
また、1週間に1回、蛍光X線分析を行い、得られたCa、Si濃度から換算してCaO、SiO2濃度を算出し、焼却灰の塩基度を求めた。なお、蛍光X線分析は、アワーズテック株式会社製の蛍光X線分析装置「OURSTEX160」を使用して行い、本測定の前には予め標準物質による検量を実施した。焼却灰の塩基度は0.20〜0.49の範囲で推移し、約6ヶ月間の平均は0.33であった。
0030
次に、2012年10月19日〜2013年5月1日の約6.5ヶ月間、本発明の実施例として、廃棄物に消石灰を投入した後、焼却炉で焼却し、焼却炉に内張りされた耐火材(Al2O3:83%、SiO2:6%、Cr2O3:10%)の肉厚の測定を行った。
0031
まず、焼却処分する固形の廃棄物144〜200tをピットにて作製後、消石灰を廃棄物に対して2質量%投入した。ピット内の廃棄物を自動ショベルですくい、廃棄物中の消石灰が均一になるように、ショベルカーで約1時間攪拌した。廃棄物は、湿量基準で水分量28.4〜64.7%のものを用い、pH7〜11に調整した。
0032
消石灰を添加した廃棄物を、ショベルカー2で廃棄物処理設備1まで運搬し、図1に示すスキップコンベア3、エプロンコンベア4、スライドゲート5を介して、ロータリーキルン6に6〜10t/h投入した。そして、ロータリーキルン6内において、900〜1100℃で約1時間焼却処理を行った。
0033
耐火材の肉厚測定結果は表2に示す通りであり、肉厚の減肉速度は平均11.3mm/月となった。
0034
0035
また、1日に1回、蛍光X線分析を行い、焼却灰の塩基度を求めた。焼却灰の塩基度は0.27〜0.72の範囲で推移し、約6.5ヶ月間の平均は0.48であった。
実施例
0036
本発明を適用することにより、塩基度の平均値が高くなるとともに、耐火材の減肉速度が大幅に低下した。すなわち、従来に比べて耐火材の寿命が長くなり、補修または取り替えのサイクルを2倍以上延ばすことができるようになった。
0037
本発明は、廃棄物の焼却炉の耐火材の劣化を低減する方法として適用できる。
0038
1廃棄物処理設備
2ショベルカー
3スキップコンベア
4エプロンコンベア
5スライドゲート
6 ロータリーキルン