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技術 リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法

出願人 富田製薬株式会社
発明者 北村直之津村勇多宮城大輔小西征則
出願日 2014年9月29日 (5年1ヶ月経過) 出願番号 2014-197727
公開日 2016年5月9日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2016-069745
状態 特許登録済
技術分野 無機繊維 医療用材料 歯科用製剤 りん、その化合物
主要キーワード 円形状板 結晶相転移 CP量 本複合材料 外観性状 リン酸水素カルシウム水和物 CP含有量 ゼータ電位測定装置
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (11)

課題

本発明の目的は、簡易な手法によって、HApとβ-TCPの含有比を所望の範囲に制御でき、しかも組成が均一なリン酸カルシウムの繊維状成型体の製造技術を提供することである。

解決手段

リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造に使用される紡糸原液として、カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸分散剤とを含むスラリーを使用し、当該紡糸原液に含まれるカルシウム原子の量とリン原子の量の比率を調節することによって、製造される繊維状成型体中のHApとβ-TCPの含有比を制御でき、更には繊維状成型体の組成を均一にできる。

概要

背景

現在、生体材料として金属、高分子セラミックス等が使用されているが、その中でもリン酸カルシウム系セラミックス生体組織直接結合するという金属や高分子にはない性質(生体親和性)を有し、人工骨人工関節コーティング歯科用インプラント分野等で広く使用されている。特に、リン酸カルシウム系セラミックスの中でも、ハイドロキシアパタイト(以下、HApと表記することもある)及びβ型リン酸三カルシウム(以下、β-TCPと表記することもある)は生体材料として多く利用されている。

従来、HApを用いた骨充填材としては、粉末状、顆粒状、ブロック状、繊維状等の様々な形態の成型体が開発されているが、粉末状や顆粒状では充填材自身が体液により押し出されたり、術部位の変形によって術部から移動してしまうという問題があり、更にブロック状では複雑な形状をとりにくいという加工性の問題や術部位細部に適用できないといった問題があった。一方、繊維状の成型体では、空隙部の細部にまで充填できる点や、充填後に繊維が絡まって術部位から移動することが殆どない点で、他の剤型に比べて有利である。

また、リン酸カルシウムを生体材料として使用する場合、体内で吸収され、自家組織置換されることが望ましいと考えられている。HApは、生体への親和性が高く、補填材として高い強度を有しているが生体への吸収性が低いという特徴を持っている。一方、β-TCPは、HApと同様に生体への親和性が高く、優れた吸収性を有しているが、補填した材料は骨再生が成されるまでの期間に少しずつ溶出してしまい、補填時の密度や形態を十分に保つことができないという特徴をもっている。このように、HAp及びβ-TCPはそれぞれ優れた利点を有していることから、リン酸カルシウムに含まれるHApとβ-TCPの含有比生体内での骨形成速度及び分解速度に影響を与える重要なパラメーターになっている(非特許文献1)。そのため、リン酸カルシウムを生体材料として使用する場合、適用する生体部位によっては高い強度が必要になるケースがあり、その場合はHAp含有比が高い方が望ましく、逆に高い吸収性が求められるケースではβ-TCP含有比が高いことが望ましい。そこで、リン酸カルシウムを生体材料として製造する際には、求められる特性に応じてHApとβ-TCPの含有比を調節することが求められている。

一方、リン酸カルシウム中のHApとβ-TCPの含有比の制御は、製造原料として使用するHAp及びβ-TCPの配合比を調整することによって行うことができる。しかしながら、このような方法では、原料として使用されるHApとβ-TCPの比を厳密に制御し、更に粒度分布嵩密度等の物性の異なるこれら原料を均一に混合する必要がある。そのため、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造において、繊維状に成型しつつHApとβ-TCPの含有比を高度に制御することを容易に実施できないのが現状である。

一方、リン酸カルシウムの繊維状成型体を製造する技術については、従来、種々検討されている。例えば、特許文献1には、熱可塑性高分子表面にハイドロキシアパタイトを析出させてリン酸カルシウムファイバーを製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1には、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

また、特許文献2には、水不溶性カルシウム塩を形成するイオン性有機高分子化合物と水僅溶性リンカルシウムと水とを含む紡糸原液水溶性カルシウム塩を含有する水溶液からなる硬化液中で紡糸して水不溶性有機高分子化合物と水僅溶性リン酸カルシウムとの複合紡糸体を形成し、得られた複合紡糸体を所望の形状に成型して焼成することによって、アパタイト繊維体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2の方法では、水溶性カルシウム塩を含有する硬化液中で、紡糸原液を紡糸して硬化させる工程を採用しているため、製造される繊維体の表面と内部の反応差等が生じ、組成均一性が得られない可能性がある。そのため、特許文献2の方法では、組成の均一な繊維体を得るには、水不溶性のカルシウム塩、イオン性有機高分子化合物、水僅溶性リン酸カルシウム、及び硬化液の種類、濃度、反応速度等、反応条件を高度に制御する必要があり、商業的な製造への適用に障壁がある。更に、特許文献2でも、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

更に、特許文献3には、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを複数のダイから吐出しながらスラリーブロー法により繊維状に成形することにより繊維状リン酸カルシウム成形体を製造する方法が開示されている。特許文献3の方法では、リン酸カルシウムを分散させたスラリーをスラリーブロー法によって成型しているため、製造された繊維の表面及び内部の組成は均一であることが予想されるが、特許文献3でも、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

概要

本発明の目的は、簡易な手法によって、HApとβ-TCPの含有比を所望の範囲に制御でき、しかも組成が均一なリン酸カルシウムの繊維状成型体の製造技術を提供することである。リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造に使用される紡糸原液として、カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸分散剤とを含むスラリーを使用し、当該紡糸原液に含まれるカルシウム原子の量とリン原子の量の比率を調節することによって、製造される繊維状成型体中のHApとβ-TCPの含有比を制御でき、更には繊維状成型体の組成を均一にできる。なし

目的

本発明の目的は、簡易な手法によって、HApとβ-TCPの含有比を所望の範囲に制御でき、しかも組成が均一なリン酸カルシウムの繊維状成型体の製造技術を提供する

効果

実績

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請求項1

カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸分散剤とを含む紡糸原液を使用して紡糸を行う第1工程、及び前記第1工程で得られた繊維状成型体焼成する第2工程を含むことを特徴とする、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法。

請求項2

前記カルシウム及びリンを含む化合物が、ハイドロキシアパタイト及びβ型リン酸三カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。

請求項3

前記紡糸原液においてリン原子の量に対するカルシウム原子の量のモル比が1.50〜1.67である、請求項1又は2に記載の製造方法。

請求項4

前記第2工程が、100〜400℃で1時間以上の条件で焼成を行った後に、更に400〜1200℃で0.1時間以上の条件で焼成が行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

請求項5

リン酸カルシウムの繊維状成型体におけるハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウムの含有比を制御する方法であって、紡糸体の製造に使用される紡糸原液の組成を、カルシウムとリンを含む化合物と、バインダーと、リンオキソ酸系分散剤と、カルボン酸系分散剤とを含むように設定し、且つ繊維状成型体に備えさせるべきハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウムの含有比に応じて、前記紡糸原液中のリン原子の量とカルシウム原子の量を調節することを特徴とする、制御方法

技術分野

0001

本発明は、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、ハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウム含有比を所望の範囲に制御でき、且つ組成が均一なリン酸カルシウムの繊維状成型体を製造する方法に関する。また、本発明は、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造においてハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウムの含有比を制御する方法に関する。

背景技術

0002

現在、生体材料として金属、高分子セラミックス等が使用されているが、その中でもリン酸カルシウム系セラミックス生体組織直接結合するという金属や高分子にはない性質(生体親和性)を有し、人工骨人工関節コーティング歯科用インプラント分野等で広く使用されている。特に、リン酸カルシウム系セラミックスの中でも、ハイドロキシアパタイト(以下、HApと表記することもある)及びβ型リン酸三カルシウム(以下、β-TCPと表記することもある)は生体材料として多く利用されている。

0003

従来、HApを用いた骨充填材としては、粉末状、顆粒状、ブロック状、繊維状等の様々な形態の成型体が開発されているが、粉末状や顆粒状では充填材自身が体液により押し出されたり、術部位の変形によって術部から移動してしまうという問題があり、更にブロック状では複雑な形状をとりにくいという加工性の問題や術部位細部に適用できないといった問題があった。一方、繊維状の成型体では、空隙部の細部にまで充填できる点や、充填後に繊維が絡まって術部位から移動することが殆どない点で、他の剤型に比べて有利である。

0004

また、リン酸カルシウムを生体材料として使用する場合、体内で吸収され、自家組織置換されることが望ましいと考えられている。HApは、生体への親和性が高く、補填材として高い強度を有しているが生体への吸収性が低いという特徴を持っている。一方、β-TCPは、HApと同様に生体への親和性が高く、優れた吸収性を有しているが、補填した材料は骨再生が成されるまでの期間に少しずつ溶出してしまい、補填時の密度や形態を十分に保つことができないという特徴をもっている。このように、HAp及びβ-TCPはそれぞれ優れた利点を有していることから、リン酸カルシウムに含まれるHApとβ-TCPの含有比が生体内での骨形成速度及び分解速度に影響を与える重要なパラメーターになっている(非特許文献1)。そのため、リン酸カルシウムを生体材料として使用する場合、適用する生体部位によっては高い強度が必要になるケースがあり、その場合はHAp含有比が高い方が望ましく、逆に高い吸収性が求められるケースではβ-TCP含有比が高いことが望ましい。そこで、リン酸カルシウムを生体材料として製造する際には、求められる特性に応じてHApとβ-TCPの含有比を調節することが求められている。

0005

一方、リン酸カルシウム中のHApとβ-TCPの含有比の制御は、製造原料として使用するHAp及びβ-TCPの配合比を調整することによって行うことができる。しかしながら、このような方法では、原料として使用されるHApとβ-TCPの比を厳密に制御し、更に粒度分布嵩密度等の物性の異なるこれら原料を均一に混合する必要がある。そのため、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造において、繊維状に成型しつつHApとβ-TCPの含有比を高度に制御することを容易に実施できないのが現状である。

0006

一方、リン酸カルシウムの繊維状成型体を製造する技術については、従来、種々検討されている。例えば、特許文献1には、熱可塑性高分子表面にハイドロキシアパタイトを析出させてリン酸カルシウムファイバーを製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1には、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

0007

また、特許文献2には、水不溶性カルシウム塩を形成するイオン性有機高分子化合物と水僅溶性リンカルシウムと水とを含む紡糸原液水溶性カルシウム塩を含有する水溶液からなる硬化液中で紡糸して水不溶性有機高分子化合物と水僅溶性リン酸カルシウムとの複合紡糸体を形成し、得られた複合紡糸体を所望の形状に成型して焼成することによって、アパタイト繊維体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2の方法では、水溶性カルシウム塩を含有する硬化液中で、紡糸原液を紡糸して硬化させる工程を採用しているため、製造される繊維体の表面と内部の反応差等が生じ、組成の均一性が得られない可能性がある。そのため、特許文献2の方法では、組成の均一な繊維体を得るには、水不溶性のカルシウム塩、イオン性有機高分子化合物、水僅溶性リン酸カルシウム、及び硬化液の種類、濃度、反応速度等、反応条件を高度に制御する必要があり、商業的な製造への適用に障壁がある。更に、特許文献2でも、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

0008

更に、特許文献3には、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを複数のダイから吐出しながらスラリーブロー法により繊維状に成形することにより繊維状リン酸カルシウム成形体を製造する方法が開示されている。特許文献3の方法では、リン酸カルシウムを分散させたスラリーをスラリーブロー法によって成型しているため、製造された繊維の表面及び内部の組成は均一であることが予想されるが、特許文献3でも、HApとβ-TCPの含有比を制御する手法については開示されていない。

0009

越 琢磨ら、ハイドロキシアパタイト/β型リン酸三カルシウム複合材料力学的特性及び生体活性能評価 日本複合材料学会誌、383(2012)、116−126頁

先行技術

0010

特開2004−160157号公報
特開2013−150794号公報
特開平7−187623号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明の目的は、簡易な手法によって、HApとβ-TCPの含有比を所望の範囲に制御でき、しかも組成が均一なリン酸カルシウムの繊維状成型体の製造技術を提供することである。

課題を解決するための手段

0012

本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造に使用される紡糸原液として、カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸分散剤とを含むスラリーを使用し、当該紡糸原液に含まれるカルシウム原子の量とリン原子の量の比率を調節することによって、製造される繊維状成型体中のHApとβ-TCPの含有比を制御でき、更には繊維状成型体の組成を均一にできることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。

0013

即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸系分散剤とを含む紡糸原液を使用して紡糸を行う第1工程、及び
前記第1工程で得られた繊維状成型体を焼成する第2工程
を含むことを特徴とする、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法。
項2. 前記カルシウム及びリンを含む化合物が、ハイドロキシアパタイト及びβ型リン酸三カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の製造方法。
項3. 前記紡糸原液においてリン原子の量に対するカルシウム原子の量のモル比が1.50〜1.67である、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記第2工程が、100〜400℃で1時間以上の条件で焼成を行った後に、更に400〜1200℃で0.1時間以上の条件で焼成が行われる、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. リン酸カルシウムの繊維状成型体におけるハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウムの含有比を制御する方法であって、
紡糸体の製造に使用される紡糸原液の組成を、カルシウムとリンを含む化合物と、バインダーと、リンオキソ酸系分散剤と、カルボン酸系分散剤とを含むように設定し、且つ
繊維状成型体に備えさせるべきハイドロキシアパタイトとβ型リン酸三カルシウムの含有比に応じて、前記紡糸原液中のリン原子の量とカルシウム原子の量を調節することを特徴とする、制御方法

発明の効果

0014

本発明によれば、リン酸カルシウムの繊維状成型体に求められる強度や生体吸収性に応じて、HApとβ-TCPの含有比を調整することができるので、治療目的や治療個所等に応じた生体材料を製造することが可能になっている。そのため、本発明は、例えば、テーラーイド治療等に使用される生体インプラント材料を提供する技術として好適に使用できる。また、本発明によれば、リン酸カルシウムの繊維状成型体の組成(HApとβ-TCPの含有比)を均一にできるので、高品質な生体材料を提供することもできる。

図面の簡単な説明

0015

紡糸原液に配合したリンオキソ酸系分散剤の濃度と、焼成後の繊維状成型体のβ-TCPの含有量の関係を示す図である。
実施例1で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例2で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例3で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例4で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例5で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例6で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例7で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例8で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例9で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。
実施例10で得られた焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果である。

0016

1.リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法
本発明の製造方法は、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法であって、カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸系分散剤とを含む紡糸原液を使用して紡糸を行う第1工程、及び前記第1工程で得られた繊維状成型体を焼成する第2工程を含むことを特徴とする。以下、本発明の製造方法について詳述する。

0017

[紡糸原液]
本発明の製造方法では、紡糸原液として、カルシウム及びリンを含む化合物と、バインダーと、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸系分散剤とを含む分散液を使用する。以下、本発明で使用する紡糸原液に配合する成分、製造する繊維状成型体のHApとβ-TCPの含有比に応じた紡糸原液の組成調節等について説明する。

0018

(カルシウム及びリンを含む化合物)
紡糸原液には、繊維状成型体のカルシウム源及びリン源として、カルシウム及びリンを含む化合物を配合する。カルシウム及びリンを含む化合物としては、カルシウム原子及びリン原子を含んでいることを限度として特に制限されないが、例えば、HAp、β-TCP、無水リン酸水素カルシウムリン酸水素カルシウム水和物リン酸水素カルシウム、α型メタリン酸カルシウム、β型メタリン酸カルシウム、γ型メタリン酸カルシウム、α型ピロリン酸カルシウム、β型ピロリン酸カルシウム、γ型ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、α型リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウムリン酸四カルシウム等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらカルシウム及びリンを含む化合物の中でも、HAp及びβ-TCPの少なくとも1種を使用することが好ましい。

0019

また、カルシウム及びリンを含む化合物の性状についても特に制限されないが、紡糸原液中での当該化合物の分散性を高め、製造される繊維状成型体の表面及び内部の組成をより一層均一にするという観点から、微粒子状であることが好ましい。また、カルシウム及びリンを含む化合物が微粒子状であれば、焼結時の密度が高くなり、繊維状成型体の強度を良好にすることもできる。カルシウム及びリンを含む化合物が微粒子状である場合、その平均粒子径として、具体的には20μm以下、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.1〜2μmが挙げられる。ここで、平均粒子径については、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される値である。

0020

また、カルシウム及びリンを含む化合物の紡糸原液中の濃度については、特に制限されないが、例えば、5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは25〜50重量%が挙げられる。このような濃度を充足することによって、得られる繊維状成型体の強度を良好にしつつ、紡糸原液の粘性を適度な範囲にして紡糸工程を容易に実施することが可能になる。

0021

(バインダー)
紡糸原液には、紡糸性を備えさせるために、バインダーを含有する。バインダーの種類については、特に制限されないが、好ましくは可食性水溶性多糖類が挙げられる。バインダーとして使用できる可食性の水溶性多糖類として、具体的には、プルラン寒天カラギナンアルギン酸アルギン酸塩類キサンタンガムデキストランローカストビーンガムグアーガムペクチングルコマンナンデンプンコラーゲンゼラチンカラヤガムキチンキトサンポリビニルアルコールヒドロキシプロピルセルロースカルボキシメチルセルロースタマリンドガムアラビアガム等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのバインダーの中でも、紡糸原液への溶解性と紡糸原液に適した粘性を付与することを考慮すると、好ましくはプルランが挙げられる。

0022

また、バインダーの紡糸原液中の濃度については、特に制限されないが、例えば、5〜40重量%、好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%が挙げられる。このような濃度を充足することによって、紡糸原液の紡糸性が高められ、紡糸工程を容易に実施することが可能になる。

0023

(カルボン酸系分散剤)
カルボン酸系分散剤とは、カルボキシル基を有し、カルシウム及びリンを含む化合物に吸着又は接着可能であって、カルシウム及びリンを含む化合物を紡糸原液中で分散させる化合物である。紡糸原液中で、カルボン酸系分散剤は、カルシウム及びリンを含む化合物に吸着又は接着した状態で、カルボキシル基による電荷の反発や立体障害によってカルシウム及びリンを含む化合物同士の分散性、又はカルシウム及びリンを含む化合物粒子表面の濡れ性を高める役割を示す。

0024

カルボン酸系分散剤の液性については、特に制限されないが、精製水に10重量%となるように添加した際に、pH3〜12、好ましくはpH5〜10、更に好ましくはpH6〜8を示すものが挙げられる。

0025

また、カルボン酸系分散剤としては、無機粒子を分散させるために用いられている公知のものを使用すればよいが、例えば、カルボキシル基を含む界面活性剤、カルボキシル基を含む水溶性ポリマー、カルボキシル基を含む低分子化合物等が挙げられる。カルボン酸系分散剤の好適な例として、カルボキシル基を含む界面活性剤、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含むポリマー等が挙げられる。これらのカルボン酸系分散剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、カルボン酸系分散剤は、金属カチオンを含まないものが好ましい。

0026

カルボン酸系分散剤としては、商品名「セルナD-305」(中京油脂株式会社製)、商品名「SNディスパーサント5468」(サンノプコ株式会社製)等の市販品があり、本発明ではこれらの市販品を好適に使用することができる。

0027

また、カルボン酸系分散剤の紡糸原液中の濃度については、繊維状成型体に備えさせるべきHAp及びβ-TCPの含有比に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0超〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、更に好ましくは0.3〜30重量%が挙げられる。

0028

(リンオキソ酸系分散剤)
リンオキソ酸系分散剤は、リン原子にヒドロキシル基オキソ基が結合しているリンオキソ酸の残基(以下、リンオキソ酸残基)を有し、リン酸カルシウム粒子に吸着又は接着可能であって、カルシウム及びリンを含む化合物を紡糸原液中で分散させる化合物である。紡糸原液中で、リンオキソ酸系分散剤は、リン酸カルシウム粒子に吸着又は接着した状態で、リンオキソ酸残基による電荷の反発や立体障害によってリン酸カルシウム粒子同士の分散性又はリン酸カルシウム粒子表面の濡れ性を高める役割を示す。

0029

リンオキソ酸系分散剤の液性については、特に制限されないが、精製水に5重量%となるように添加した際に、pH3〜12、好ましくはpH5〜10、更に好ましくはpH6〜8を示すものが挙げられる。

0030

また、リンオキソ酸系分散剤としては、無機粒子を分散させるために用いられている公知のものを使用すればよいが、例えば、リンオキソ酸残基を含む界面活性剤、リンオキソ酸残基を含むポリマー等が挙げられる。より具体的には、オルトリン酸亜リン酸ホスホン酸亜ホスホン酸ホスフィン酸亜ホスフィン酸ホスフェン酸、亜ホスフェン酸、ピロリン酸、次リン酸、イソ次リン酸等の残基を構造中に有するもので具体的にはポリリン酸メタリン酸、ジメタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、イソメタリン酸等が挙げられる。これらのリンオキソ酸系分散剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、リンオキソ酸系分散剤は、金属カチオンを含まず、カルシウムやマグネシウム等金属カチオンによる分散阻害効果を弱める作用を持つものが好ましい。本発明で使用されるリンオキソ酸系分散剤の好適な一例として、ホスホン酸残基を含むポリマーが挙げられる。

0031

リンオキソ酸系分散剤としては、商品名「SNディスパーサント2060」(サンノプコ株式会社製)、商品名「ヘキサメタりん酸ナトリウム」(和光純薬工業株式会社製)等の市販品があり、本発明ではこれらの市販品を使用することができる。

0032

また、リンオキソ酸系分散剤の紡糸原液中の濃度については、繊維状成型体に備えさせるべきHAp及びβ-TCPの含有比に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0超〜40重量%以下、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.3〜10重量%が挙げられる。

0033

(その他の成分)
本発明で使用される紡糸原液には、必要に応じて、前記カルシウム及びリンを含む化合物以外のカルシウム塩を含んでいてもよい。特に、前記カルシウム及びリンを含む化合物としてβ-TCPを使用する場合には、当該化合物以外のカルシウム塩を配合することによって、製造される繊維状成型体のHAp含有比を増加させることが可能になる。このようなカルシウム塩の種類については、特に制限されないが、例えば、硝酸カルシウム酸化カルシウム水酸化カルシウム塩化カルシウム炭酸カルシウムシュウ酸カルシウムクエン酸カルシウム乳酸カルシウム硫酸カルシウム等が挙げられる。これらのカルシウム塩は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。

0034

また、本発明で使用される紡糸原液には、分散媒として溶媒が含まれる。紡糸原液に配合される溶媒は、バインダー、カルボン酸系分散剤及びリンオキソ酸系分散剤を溶解又は可溶化させ得ることを限度として特に制限されないが、例えば、水、極性有機溶媒等が挙げられる。特に、水は、廃液処理が容易であり、製造設備排気装置が不要であるため、安全性や製造コストの観点から、紡糸原液に使用される溶媒として好適である。

0035

紡糸原液中の溶媒の濃度については、特に制限されないが、例えば5〜80重量%好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは30〜50重量%が挙げられる。

0036

(紡糸原液の組成設定に基づくHAp及びβ-TCPの含有比の調節)
本発明の製造方法では、前記紡糸原液の組成を調節することによって、製造される繊維状成型体中のHApとβ-TCPの含有比を制御することが可能になる。具体的には、前記紡糸原液に含まれるカルシウム原子とリン原子の比率に応じて、製造される繊維状成型体中のHApとβ-TCPの含有比を制御することができる。従って、製造される繊維状成型体において備えさせるべきHApとβ-TCPの含有比に応じて、前記紡糸原液に含まれるリン原子の量とカルシウム原子の量の比率を設定すればよい。ここで、紡糸原液に含まれるリン原子の量は、前記カルシウム及びリンを含む化合物に含まれるリン原子と、前記リンオキソ酸系分散剤に含まれるリン原子の合計量である。また、紡糸原液に含まれるカルシウム原子の量は、前記カルシウム及びリンを含む化合物に含まれるカルシウム原子と、必要に応じて添加されるカルシウム塩(前記カルシウム及びリンを含む化合物以外)に含まれるカルシウム原子の合計量である。

0037

より具体的には、紡糸原液中のリン原子の量に対するカルシウム原子の量のモル比(以下、「Ca/P比」と表記することもある)が高い程、製造される繊維状成型体中のHAp量が多くβ-TCP量が少なくなり、また、当該Ca/P比が低い程、製造される繊維状成型体中のHAp量が少なくβ-TCP量が多くなる。例えば、後述する実施例に示されているように、紡糸原液に含まれるリン原子の総量に対するカルシウム原子の総量のモル比(以下、「Ca/P比」と表記することもある)を1.64に設定すると、製造される繊維状成型体におけるHap含有量を85.9重量%且つβ-TCP含有量を14.1重量%に制御でき、また、紡糸原液中のCa/P比を1.53に設定すると、製造される繊維状成型体におけるHAp含有量を21.0重量%且つβ-TCP含有量を79.0重量%に制御することが可能になっている。

0038

かかる点を踏まえて、紡糸原液中のCa/P比は、例えば1.50〜1.67、好ましくは1.50〜1.66の範囲内で、製造される繊維状成型体において備えさせるべきHApとβ-TCPの含有比に応じて設定すればよい。

0039

紡糸原液中のCa/P比は、紡糸原液に配合するカルシウム及びリンを含む化合物の種類とリンオキソ酸系分散剤の種類に応じて、これらの含有量を適宜設定することによって調節できる。

0040

(紡糸原液の調製)
紡糸原液の調製方法については、特に制限されないが、前記カルシウム及びリンを含む化合物を均一に分散させるために、当該化合物と、カルボン酸系分散剤と、リンオキソ酸系分散剤とを溶媒中に添加して十分に混合した後に、バインダーを添加して混合することが好ましい。また、バインダーの添加は、バインダーを溶媒に溶解又は可溶化させてバインダー溶液を調製し、当該バインダー溶液を添加することによって行ってもよい。

0041

紡糸原液を調製する際の温度条件については、特に制限されないが、例えば、0〜100℃、好ましくは10〜80℃、更に好ましくは20〜50℃が挙げられる。このような温度条件であれば、溶媒の揮発や、バインダー、カルボン酸系分散剤、及びリンオキソ酸系分散剤の分解を抑制することができる。

0042

紡糸原液を調製する装置については、特に制限されないが、例えば、容器自体が回転、振動揺動する容器回転型装置;容器内に入れた羽根が回転する機械撹拌型装置ねじれた管内に粉体を流す無撹拌型装置;高速回転する高速せん断衝撃型装置;遠心力による材料対流撹拌する遊星式攪拌型装置等が挙げられる。これらの装置の中でも、遊星式攪拌型装置、特に脱泡機能を備えた遊星式撹拌型装置は、紡糸原液中の微細気泡の生成を抑制でき、繊維状成型体において気泡に起因する空隙の発生を抑制できるので、好適に使用される。

0043

[紡糸工程]
本発明の製造方法において、前記紡糸原液を紡糸する方法については、特に制限されず、従来公知の無機繊維紡糸方法を採用すればよいが、例えば、紡糸原液を、ロータに供給し、ロータの遠心力により繊維化する方法(スピニング法)、高速空気水蒸気で紡糸原液吹き飛ばすことにより繊維化する方法(ブローイング法)等が挙げられる。スピニング法としては、具体的には、フォーススピニング法やエレクロンスピニング法等が挙げられる。また、ブローイング法としては、例えば、特開昭61−174460号公報に記載の装置を用いて、ダイから噴射した紡糸原液を赤外線ヒーターにより水分を除去してネット型ドラム回収する方法等が挙げられる。

0044

[焼成工程]
前記紡糸原液を用いて紡糸された繊維状成型体は、焼成工程に供される。焼成工程を行うことによって、繊維状成型体中のバインダー、カルボン酸系分散剤、及びリンオキソ酸系分散剤の除去;HAp及びβ-TCPの結晶相形成;繊維状成型体の強度、溶解性、繊維径の制御等を行うことが可能になる。

0045

焼成工程の条件については、特に制限されないが、焼成条件を変えた2段階での焼成を行うことが好ましい。2段階の焼成方法としては、具体的には、100〜400℃、好ましくは250℃〜350℃で1時間以上、好ましくは12〜24時間の条件で1段階目の焼成を行った後に、400〜1200℃、好ましくは500℃〜1150℃で0.1時間以上、好ましくは0.5〜10時間の条件で2段階目の焼成を行う方法が挙げられる。なお、2段階目の焼成は、1段階目の焼成よりも高い温度で行えばよく、例えば、2段階目の焼成温度が1段階目の焼成温度よりも300℃程度以上高くなるように設定すればよい。このような条件で焼成することにより、HAp中の水酸基消失や、β-TCPのα-TCPへの結晶相転移を抑制しつつ、バインダー及び分散剤を焼失させることが可能になる。

0046

[繊維状成型体]
本発明の製造方法では、繊維状成型体をモノフィラメントとして製造してもよく、またマルチフィラメントとして製造してもよい。

0047

また、本発明の製造方法で得られた繊維状成型体は、骨補填材再生治療材料用の足場材料、人工骨、人工歯等の生体インプラント材料に好適に用いられる他、医薬品、歯磨き剤フィルター抗菌剤吸着剤触媒触媒担体化粧品等に使用することもできる。

0048

また、本発明の製造方法で得られた繊維状成型体は、更に、造粒圧縮等の成型処理に供して、顆粒状、球状、プレート状、ブロック状等に成形することもできる。

0049

2.HAp及びβ-TCPの含有比の制御方法
本発明の制御方法は、リン酸カルシウムの繊維状成型体におけるHApとβ-TCPの含有比を制御する方法であって、紡糸体の製造に使用される紡糸原液の組成を、カルシウムとリンを含む化合物と、バインダーと、リンオキソ酸系分散剤と、カルボン酸系分散剤とを含むように設定し、且つ繊維状成型体に備えさせるべきHApとβ-TCPの含有比に応じて、前記紡糸原液中のカルシウム原子の量とリン原子の量の比率を調節することを特徴とする。

0050

本発明の制御方法は、リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造において、繊維状成型体に備えさせるべきHApとβ-TCPの含有比を制御する方法であり、具体的には、繊維状成型体に備えさせるべきHApとβ-TCPの含有比を決定する第1工程、及び当該第1工程で決定されたHApとβ-TCPの含有比に基づいて、前記紡糸原液中のカルシウム原子の量とリン原子の量の比率を調節する第2工程を経て実施される。

0051

本発明の制御方法によって設定された組成の紡糸原液は、前述する紡糸工程及び焼成工程に供することによって、目的のHApとβ-TCPの含有比を有するリン酸カルシウムの繊維状成型体が製造される。

0052

本発明の制御方法において、使用される紡糸原液の各成分の種類や濃度、繊維状成型体におけるHApとβ-TCPの含有比を制御するための紡糸原液の組成の調節方法等については、前記「1.リン酸カルシウムの繊維状成型体の製造方法」の欄に記載の通りである。

0053

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。

0054

実施例1〜4
1.繊維状成型体の製造
HApスラリー(富田製薬株式会社製;HApの平均粒子径1.8μm、固形分量45.4重量%)を30.0g、リンオキソ酸系分散剤(「SNディスパーサント2060」、サンノプコ株式会社製、リン含有量7.4重量%)を表1に示す濃度となる量、カルボン酸系分散剤(「セルナD-305」、中京油脂株式会社製)を表1に示す濃度となる量をそれぞれ正確に量りとり、50mL容器に加えボルテックスにて5分間撹拌した。撹拌後50mLビーカーに移し、マグネチックスターラーにて室温で15分間撹拌した。次いで、日本薬局方プルランを4.26g添加し、スターラーにて15分間室温撹拌混合した。これを紡糸原液とした。

0055

この紡糸原液を7cm2の円形状板2枚に塗り(1枚の円形状板に紡糸原液が約0.1ml/cm2となる量)、紡糸原液を挟むように2枚の円形状板を重ねあわせた。次いで、2枚の円形状板を引き離し、紡糸原液が糸状になる瞬間にエアーブローにて乾燥(ヘアドライヤー;1200W、50−60Hz)を行い、繊維状成型体を得た。乾燥後の繊維状成型体を下記焼成条件で焼成を行った。
(焼成条件)
320℃まで24時間で昇温した(昇温温度:13.3℃/hr)後に、320℃にて1時間保持した。その後1000℃まで13.6時間(50℃/hr)で昇温した後に1000℃にて2時間焼成した。

0056

0057

2.繊維状成型体及び紡糸原液の性能の評価
<繊維状成型体のHApとβ-TCPの含有量の測定>
焼成後の繊維状成型体について、HApとβ-TCPの含有量を測定した。HApとβ-TCPの含有量の測定は以下の方法にて行った。先ず、アパタイトHAP単斜晶(和光純薬工業株式会社製)及びアパタイトβ-TCP三方晶(和光純薬工業株式会社製)をそれぞれ1000℃で焼成した後、所定の割合(β-TCP=0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、3.0重量%、5.0重量%、8.0重量%、15.0重量%、20.0重量%、50.0重量%)になるように混合して標準サンプルを作成した。次に標準サンプルを粉末X線回析装置によりβ-TCP由来シグナル(2θ/θ=31.2°付近)の積分強度を測定し、β-TCP含有量(混合量)及び積分強度比から検量線を作成した。焼成後の繊維状成型体を粉末X線回折装置によりβ-TCP由来のシグナル(2θ/θ=31.2°付近)の積分強度を測定し、前記検量線を使用してHAp及びβ-TCPの含有量を算出した。また、焼成後の繊維状成型体のCa/P比に関しては以下の式にて算出した。
Ca/P=((10x/1004)+(3y/310))/((6x/1004)+(2y/310))
x:HApの含有量(重量%)
y:β-TCPの含有量(重量%)

0058

<繊維状成型体の外観性状の観察>
焼成後の繊維状成型体について、電子顕微鏡にて外観性状の観察を行った。

0059

<紡糸原液の分散性の評価>
バインダーを配合しなかったこと以外は、前記紡糸原液と同組成となる分散液を調製した。当該分散液200μLに精製水を加えて正確に10mL(50倍希釈)として、評価用分散液を調製した。この評価用分散液のゼータ電位を測定した。ゼータ電位の測定は、ゼータ電位測定装置(大塚電子株式会社製)及び12μl容フローセルを用いて行った。

0060

<紡糸原液のpHの評価>
バインダーを配合しなかったこと以外は、前記紡糸原液と同組成となる分散液を調製した。当該分散液200μLに精製水を加えて正確に10mLとして、評価用分散液を調製した。この評価用分散液のpHを、pHメーターを用いて測定した。

0061

<紡糸原液の紡糸性の評価>
前記紡糸原液を用いた紡糸工程時に、紡糸原液の紡糸性を以下の判定基準に従って評価した。
紡糸性の判定基準
○:紡糸工程において紡糸原液の糸引きが確認され、紡糸できた。
×:紡糸工程において紡糸原液の糸引きが不十分であり、紡糸できなかった。

0062

3.結果
焼成後の繊維状成型体のHAp及びβ-TCPの含有量、紡糸原液のpH及び分散性(ゼータ電位)、並びに紡糸原液の紡糸性を評価した結果を表2に示す。また、紡糸原液に配合したリンオキソ酸系分散剤の含有量と、焼成後の繊維状成型体のβ-TCPの含有量の関係を図1に示す。更に、焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果を図2〜5に示す。これら結果から、実施例1〜4のいずれでも、紡糸原液の紡糸性が優れており、繊維状成型体を製造できることが確認された。また、紡糸原中のCa/P比と、焼成後の繊維状成型体のβ-TCP含有量に高い相関性が認められ、紡糸原中のCa/P比をコントロールすることにより、繊維状成型体のβ-TCP含有量を調節できることも確認された。

0063

0064

実施例5〜7
1.繊維状成型体の製造、並びに繊維状成型体及び紡糸原液の紡糸性の評価
紡糸原液中のリンオキソ酸系分散剤及びカルボン酸系分散剤を表3に示す濃度に設定したこと以外は、前記実施例1と同条件で繊維状成型体の製造を行った。また、前記実施例1と同条件で、繊維状成型体の評価及び紡糸原液の性能評価を行った。

0065

0066

2.結果
焼成後の繊維状成型体のHAp及びβ-TCPの含有量、紡糸原液のpH及び分散性(ゼータ電位)、並びに紡糸原液の紡糸性を評価した結果を表4に示す。更に、焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果を図6〜8に示す。これら結果から、カルボン酸系分散剤を併用することで分散性が向上し、紡糸可能となることが確認できた。また、紡糸原液中のリンオキソ酸系分散剤濃度を7.2重量%以上に設定し、更にカルボン酸系分散剤を併用させた場合(実施例6及び7)においても、両分散剤は互いに分散効果阻害することなく、かつ紡糸原液の分散性(ゼータ電位)が良好で紡糸が可能であり、β-TCPが100重量%の繊維状成型体を製造できた。

0067

0068

実施例8及び9
1.繊維状成型体の製造、並びに繊維状成型体及び紡糸原液の紡糸性の評価
紡糸原液の調製において、表5に示す種類及び含有量のリンオキソ酸系分散剤及びカルボン酸系分散剤を使用したこと以外は、前記実施例1と同条件で繊維状成型体の製造を行った。なお、実施例9で使用したヘキサメタリン酸ナトリウムのリン含有量は30.55重量%である。また、前記実施例1と同条件で、繊維状成型体の評価及び紡糸原液の性能評価を行った。

0069

0070

2.結果
焼成後の繊維状成型体のHAp及びβ-TCPの含有量、紡糸原液のpH及び分散性(ゼータ電位)、並びに紡糸原液の紡糸性を評価した結果を表6に示す。更に、焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果を図9及び10に示す。これら結果から、リンオキソ酸系分散剤又はカルボン酸系分散剤の種類を変更した場合でも、紡糸原液中のCa/P比をコントロールすることにより、繊維状成型体β-TCP含有量を制御できることが確認できた。

0071

0072

実施例10
1.繊維状成型体の製造、並びに繊維状成型体及び紡糸原液の紡糸性の評価
紡糸原液中のリンオキソ酸系分散剤及びカルボン酸系分散剤を表7に示す含有量に設定したこと以外は、前記実施例1と同条件で繊維状成型体の製造を行った。また、前記実施例1と同条件で、繊維状成型体の評価及び紡糸原液の性能評価を行った。更に、以下の方法で、繊維状成型体の組成均一性を測定した。

0073

<繊維状成型体の組成均一性の測定>
乾燥後(焼成前)の繊維状成型体をランダムに3か所からサンプリングし、それぞれ実施例1と同様の条件で焼成した。焼成後の各繊維状成型体について、前記と同様の方法でβ-TCP含有量を算出し、各β-TCP含有量の相対標準偏差(CV値)を算出した。

0074

0075

2.結果
焼成後の繊維状成型体のHAp及びβ-TCPの含有量、紡糸原液のpH及び分散性(ゼータ電位)、紡糸原液の紡糸性、繊維状成型体の組成均一性を評価した結果を表8に示す。また、焼成後の繊維状成型体の外観性状を観察した結果を図11に示す。これら結果から、リンオキソ酸系分散剤及びカルボン酸系分散剤を併用することによって紡糸原液の分散性を向上させ、繊維状成型体の組成の均一性を向上させ得ることが確認できた。

0076

0077

比較例1及び2
紡糸原液中のリンオキソ酸系分散剤及びカルボン酸系分散剤を表9に示す含有量に設定したこと以外は、前記実施例1と同条件で繊維状成型体の製造を行った。また、前記実施例1と同条件で、紡糸原液の性能評価を行った。更に、前記実施例10と同条件で、繊維状成型体の組成均一性の測定を行った。

0078

0079

2.結果
紡糸原液のpH及び分散性(ゼータ電位)、紡糸原液の紡糸性、繊維状成型体の組成均一性を評価した結果を表10に示す。これら結果から、ゼータ電位の絶対値が27.4以上、より好ましくはゼータ電位が‐27.4より大きく6.4未満の場合では、紡糸原液の高粘度でかつ糸引きは確認されず、紡糸が困難になることが確認できた。また、分散剤としてカルボン酸系分散剤のみを用いた場合(比較例1)では紡糸が困難であり、リンオキソ酸系分散剤のみを用いた場合(比較例2)では繊維状成型体の組成が不均一であったことから、分散剤としてカルボン酸系分散剤とリンオキソ酸系分散剤を併用することによって、紡糸性と繊維状成型体の組成の均一性の両立が可能になることが確認された。

実施例

0080

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