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技術 心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイス

出願人 エヌヴィーティーアーゲー
発明者 マルコスチェントラエミーリアカヴァ
出願日 2015年9月25日 (4年5ヶ月経過) 出願番号 2015-188966
公開日 2016年5月9日 (3年10ヶ月経過) 公開番号 2016-067931
状態 特許登録済
技術分野 補綴
主要キーワード 尖頭アーチ 弁デバイス 球根形状 各係合アーム 立体形 バスケット状 円筒管状 例示的実施
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイスを提供する。

解決手段

本発明は、心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイス10;100;200;300であって、圧縮状態から拡張状態へと拡張するよう構成されたデバイス10;100;200;300に関する。本発明によるデバイスは、互いに固定的に接続されている(i)心房内固定ステント部12および(ii)弁保持ステント部14から成るステント要素11ならびに弁要素18を含む。弁保持ステント部14が本来の弁の弁輪に接触することなく、弁輪の内側に配置されるよう、心房内固定ステント部12はバルーン状の形状13を、弁保持ステント部14は円筒状の形状15を有する。

概要

背景

哺乳類心臓は、4つの部屋、すなわち血液で満たされる部屋である2つの心房と、ポンプとして機能する部屋である2つの心室とを含む。哺乳類の心臓には、心臓を通る血液を通常一方向にのみ流れさせる4つの心臓弁があり、各弁は両側の血圧の差に応じて開閉する。

心臓内の4つの主な弁として、僧帽弁とも呼ばれる二尖弁、および三尖弁が挙げられる。これらの弁はそれぞれ、上部に位置する心房と下部に位置する心室との間に位置していることから、房室(AV)弁と呼ばれる。さらに、心臓から出る動脈内に位置する大動脈弁および肺動脈弁が挙げられる。僧帽弁および大動脈弁は左心に、三尖弁および肺動脈弁は右心に位置する。

弁には弁すなわちカスプが存在し、各弁はそれぞれ3つの弁尖を有しているが、僧帽弁の弁尖は2つである。

僧帽弁および三尖弁はそれぞれ、心房と心室との間に位置しており、収縮期における心室から心房への逆流を防ぐ。これらの弁は、腱索によって心室壁と結ばれており、この腱索が弁の反転を防いでいる。腱索は乳頭筋につながっており、この乳頭筋に引っ張られることで弁がしっかり支えられる。乳頭筋および腱索は、共に弁下組織として知られている。弁下組織は、弁が閉じる際の心房内への逸脱を防止する機能を有する一方、弁の開閉には全く影響を及ぼさず、弁の開閉は、弁を隔てた圧較差によってのみ起こる。

拡張期に、左心房に血液が満ちて左心房側からの圧力が上昇すると(前負荷)、正常に機能している僧帽弁は開く。心房の内圧左心室の内圧よりも高くなると僧帽弁は開く。僧帽弁の開放により、血液の左心室への受動的な流れが促進される。拡張期は、最終的に左心房から左心室に移動した血液の20%を放出する心房収縮によって終了するが、心房収縮の終了時には僧帽弁が閉じ、血流の逆流を防ぐ。

弁の障害としてはいくつかの種類が知られており、例えば、硬化または融合した弁尖が心臓弁の適切な開放を妨げ、心臓弁が完全に開放されない狭窄症や、弁のフラップがスムーズにまたは均一に閉じず、密閉すべき心腔内へと逆に落ち込む逸脱症などが挙げられる。

弁逆流(逆流)もよく見られる問題であり、心臓弁がしっかり閉じない場合、密閉が果たせず、血液が弁を通って後方漏出する。この病態弁閉鎖不全症とも呼ばれる)は、心臓のポンプ効率を低下させる。心臓が収縮する際、血液は適切な順方向へ送り出されるが、損傷した弁を通って逆方向へも流れざるを得ない。漏れが悪化するにつれ、心臓は漏れを起こしている弁を補うためにより激しく拍動する必要があり、また、身体の他の部位へ流れる血液が少なくなることもある。このような病態は、障害を有する弁によって、三尖弁逆流、肺動脈弁逆流、僧帽弁逆流、または大動脈弁逆流と呼ばれる。

僧帽弁逆流、すなわち左心室が収縮する際に血液が僧帽弁を通って左心室から左心房へ漏れ出す異常は、弁の異常としては一般的なものであり、心臓弁膜症を患っている成人の24%、75人口の7%に見られる。重度症候性僧帽弁逆流または左室機能障害もしくは左室拡張を伴った重度の無症候性僧帽弁逆流には、外科的治療推奨される。変性による重度の僧帽弁逆流の外科的治療において、僧帽弁修復の結果のほうが優れていることが証明されたため、僧帽弁置換から僧帽弁修復へと発展してきた。

弁修復および僧帽弁置換は、低侵襲処置を用いて実現されてきた。低侵襲性アプローチが望まれるのは、相当な割合の患者、特に高齢であったり、深刻な併存疾患や重度の左室機能障害を有する患者には手術心臓切開手術)が推奨されないという事実に関連している。

様々な経皮技術が出現し、それぞれ異なる開発段階にある。僧帽弁修復または僧帽弁置換における現在の経皮技術としては、例えば経皮的僧帽弁置換、僧帽弁の接合の改善、接合端部における経皮的僧帽弁修復(ひだ形成)、経皮的腱索修復、経皮的僧帽弁形成、および左心室の再成形などが挙げられる。

しかしながら、これらの様々な経皮的修復アプローチからは、僧帽弁の外科的修復と同等の有効性はいまだ得られていない。

経皮的僧帽弁置換の技術は、修復が成功する可能性の低い、一部の患者群にとっては考えられる選択肢であるが、この技術は大きな課題を有している。僧帽弁輪は、非対称鞍形であり、様々な僧帽弁逆流の病因に対してそれぞれ異なる固定方法の設計が必要になる可能性がある。さらに、残された本来の弁組織によって左室流出路閉塞が起こる可能性があり、弁周囲の漏れもまた、問題を引き起こす可能性がある。

例えば、国際公開第2013/178335号明細書では、僧帽弁逆流などの心臓弁の機能不全を改善または治療するための埋め込み型デバイスであって閉鎖体に接続された当接バンドを含むデバイスが開示されており、この当接バンドは、心房内で1つのループを形成していることにより心臓内壁に接し、デバイスを心房内に取り付けるものである。

さらに、米国特許第2014/0121763号明細書では、自己拡張するフレームと2以上の係合アームとを含む人工僧帽弁が開示されている。自己拡張するフレームは、弁を有している。各係合アームは、本来の僧帽弁尖に相当する。この人工器官は、固定手段取付部も含む。この取付部に固定手段が取り付けられ、心臓内で人工器官が固定される。

上記のことから、心臓弁逆流を効果的に治療することができるとともに、心臓に対する外傷的影響が最小である人工心臓弁がいまだ必要とされている。

概要

心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイスを提供する。本発明は、心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイス10;100;200;300であって、圧縮状態から拡張状態へと拡張するよう構成されたデバイス10;100;200;300に関する。本発明によるデバイスは、互いに固定的に接続されている(i)心房内固定ステント部12および(ii)弁保持ステント部14から成るステント要素11ならびに弁要素18を含む。弁保持ステント部14が本来の弁の弁輪に接触することなく、弁輪の内側に配置されるよう、心房内固定ステント部12はバルーン状の形状13を、弁保持ステント部14は円筒状の形状15を有する。

目的

本発明によると、デバイス10は、本来の弁の弁輪70より小さな直径d3を有する弁20を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイス(10;100;200;300)であって、該デバイス(10;100;200;300)は、圧縮状態から拡張状態へと拡張するように構成され、ステント要素(11)と弁要素(18)とを含み、ステント要素(11)が、(i)心房内固定ステント部(12)および(ii)弁保持ステント部(14)から成り、心房内固定ステント部(12)が弁保持ステント部(14)に固定的に接続され、心房内固定部(12)が、デバイス(10)の拡張状態においてバルーン状の形状(13)を有し、処置される心臓(50)の心房(56;54)と心室(57;55)との間に位置する本来の心臓弁(60;66)の弁輪(70)の直径(71)より大きい直径(d1)を有し、デバイス(10;100;200;300)の拡張状態において処置される心臓(50)の心房(56;54)内で半径方向の力によってデバイス(10)を固定するのに適した寸法および構成を有し、弁保持ステント部(14)が、デバイス(10;100;200;300)の拡張状態において、実質的に円筒状の形状(15)を有し、この円筒形状は直径(d3)を有し、直径(d3)が、拡張状態において本来の心臓弁(60;66)の弁輪(70)の直径(71)より小さいため、本来の心臓弁(60;66)の弁輪(70)と弁保持ステント部(14)とが接触することなく、本来の心臓弁(60;66)がその機能を維持できること、ならびに弁要素(18)が、スカート部(19)および弁部(20)を含み、スカート部(19)が弁保持ステント部(14)の外側に装着され、弁部(20)が弁保持ステント部(14)の内側に装着されていることを特徴とするデバイス。

請求項2

弁要素が、埋設後、本来の心臓弁(60;66)の機能を置換することも損なうこともなく、その機能を補助するような寸法および構成で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項3

心房内固定ステント部(12)および弁保持ステント部(14)が一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項4

心房内固定ステント部(12)が、心臓(50)の心房(54;56)内に、心房壁(54a;56a)と少なくとも部分的に接触するよう固定可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項5

弁要素(18)のスカート部(19)および弁部(20)が、同一の材料、好ましくは心膜で作製されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項6

弁要素(18)が二尖弁または三尖弁であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項7

ステント要素(11)が形状記憶材料、好ましくはニチノールで作製されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項8

ステント要素(11)がレーザー切断されたステント要素であること、および/またはワイヤーを用いて作られていることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項9

心房内固定ステント部(12)および/または弁保持ステント部(14)が編み組まれたまたは他の方法で交差させたワイヤー(30)から作製されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項10

心房内固定ステント部(12)および/または弁保持ステント部(14)がワイヤーループ(32)から作製されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項11

弁保持ステント部(14)の実質的に円筒である形状(15)の直径(d3)が、デバイス(10;100;200;300)の拡張状態において、円筒の長さ(l)方向に沿って実質的に一定していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

請求項12

僧帽弁逆流および/または三尖弁逆流から選択される心臓弁逆流の治療に使用するための、請求項1〜11のいずれかに記載のデバイス(10;100;200;300)。

技術分野

0001

本発明は、心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイス、および心臓弁、好ましくは僧帽弁における疾患またはその他の機能不全を治療するためのそのようなデバイスの使用に関する。

背景技術

0002

哺乳類心臓は、4つの部屋、すなわち血液で満たされる部屋である2つの心房と、ポンプとして機能する部屋である2つの心室とを含む。哺乳類の心臓には、心臓を通る血液を通常一方向にのみ流れさせる4つの心臓弁があり、各弁は両側の血圧の差に応じて開閉する。

0003

心臓内の4つの主な弁として、僧帽弁とも呼ばれる二尖弁、および三尖弁が挙げられる。これらの弁はそれぞれ、上部に位置する心房と下部に位置する心室との間に位置していることから、房室(AV)弁と呼ばれる。さらに、心臓から出る動脈内に位置する大動脈弁および肺動脈弁が挙げられる。僧帽弁および大動脈弁は左心に、三尖弁および肺動脈弁は右心に位置する。

0004

弁には弁すなわちカスプが存在し、各弁はそれぞれ3つの弁尖を有しているが、僧帽弁の弁尖は2つである。

0005

僧帽弁および三尖弁はそれぞれ、心房と心室との間に位置しており、収縮期における心室から心房への逆流を防ぐ。これらの弁は、腱索によって心室壁と結ばれており、この腱索が弁の反転を防いでいる。腱索は乳頭筋につながっており、この乳頭筋に引っ張られることで弁がしっかり支えられる。乳頭筋および腱索は、共に弁下組織として知られている。弁下組織は、弁が閉じる際の心房内への逸脱を防止する機能を有する一方、弁の開閉には全く影響を及ぼさず、弁の開閉は、弁を隔てた圧較差によってのみ起こる。

0006

拡張期に、左心房に血液が満ちて左心房側からの圧力が上昇すると(前負荷)、正常に機能している僧帽弁は開く。心房の内圧左心室の内圧よりも高くなると僧帽弁は開く。僧帽弁の開放により、血液の左心室への受動的な流れが促進される。拡張期は、最終的に左心房から左心室に移動した血液の20%を放出する心房収縮によって終了するが、心房収縮の終了時には僧帽弁が閉じ、血流の逆流を防ぐ。

0007

弁の障害としてはいくつかの種類が知られており、例えば、硬化または融合した弁尖が心臓弁の適切な開放を妨げ、心臓弁が完全に開放されない狭窄症や、弁のフラップがスムーズにまたは均一に閉じず、密閉すべき心腔内へと逆に落ち込む逸脱症などが挙げられる。

0008

弁逆流(逆流)もよく見られる問題であり、心臓弁がしっかり閉じない場合、密閉が果たせず、血液が弁を通って後方漏出する。この病態弁閉鎖不全症とも呼ばれる)は、心臓のポンプ効率を低下させる。心臓が収縮する際、血液は適切な順方向へ送り出されるが、損傷した弁を通って逆方向へも流れざるを得ない。漏れが悪化するにつれ、心臓は漏れを起こしている弁を補うためにより激しく拍動する必要があり、また、身体の他の部位へ流れる血液が少なくなることもある。このような病態は、障害を有する弁によって、三尖弁逆流、肺動脈弁逆流、僧帽弁逆流、または大動脈弁逆流と呼ばれる。

0009

僧帽弁逆流、すなわち左心室が収縮する際に血液が僧帽弁を通って左心室から左心房へ漏れ出す異常は、弁の異常としては一般的なものであり、心臓弁膜症を患っている成人の24%、75人口の7%に見られる。重度症候性僧帽弁逆流または左室機能障害もしくは左室拡張を伴った重度の無症候性僧帽弁逆流には、外科的治療推奨される。変性による重度の僧帽弁逆流の外科的治療において、僧帽弁修復の結果のほうが優れていることが証明されたため、僧帽弁置換から僧帽弁修復へと発展してきた。

0010

弁修復および僧帽弁置換は、低侵襲処置を用いて実現されてきた。低侵襲性アプローチが望まれるのは、相当な割合の患者、特に高齢であったり、深刻な併存疾患や重度の左室機能障害を有する患者には手術心臓切開手術)が推奨されないという事実に関連している。

0011

様々な経皮技術が出現し、それぞれ異なる開発段階にある。僧帽弁修復または僧帽弁置換における現在の経皮技術としては、例えば経皮的僧帽弁置換、僧帽弁の接合の改善、接合端部における経皮的僧帽弁修復(ひだ形成)、経皮的腱索修復、経皮的僧帽弁形成、および左心室の再成形などが挙げられる。

0012

しかしながら、これらの様々な経皮的修復アプローチからは、僧帽弁の外科的修復と同等の有効性はいまだ得られていない。

0013

経皮的僧帽弁置換の技術は、修復が成功する可能性の低い、一部の患者群にとっては考えられる選択肢であるが、この技術は大きな課題を有している。僧帽弁輪は、非対称鞍形であり、様々な僧帽弁逆流の病因に対してそれぞれ異なる固定方法の設計が必要になる可能性がある。さらに、残された本来の弁組織によって左室流出路閉塞が起こる可能性があり、弁周囲の漏れもまた、問題を引き起こす可能性がある。

0014

例えば、国際公開第2013/178335号明細書では、僧帽弁逆流などの心臓弁の機能不全を改善または治療するための埋め込み型デバイスであって閉鎖体に接続された当接バンドを含むデバイスが開示されており、この当接バンドは、心房内で1つのループを形成していることにより心臓内壁に接し、デバイスを心房内に取り付けるものである。

0015

さらに、米国特許第2014/0121763号明細書では、自己拡張するフレームと2以上の係合アームとを含む人工僧帽弁が開示されている。自己拡張するフレームは、弁を有している。各係合アームは、本来の僧帽弁尖に相当する。この人工器官は、固定手段取付部も含む。この取付部に固定手段が取り付けられ、心臓内で人工器官が固定される。

0016

上記のことから、心臓弁逆流を効果的に治療することができるとともに、心臓に対する外傷的影響が最小である人工心臓弁がいまだ必要とされている。

課題を解決するための手段

0017

本発明によれば、上記の目的およびその他の目的は、心臓弁逆流を治療するための埋め込み型デバイスであって、圧縮状態から拡張状態へと拡張するように構成され、(i)心房内固定ステント部および(ii)弁保持ステント部から成るステント要素を含むデバイスによって達成される。心房内固定ステント部は、弁保持ステント部に固定的に接続され、デバイスの拡張状態においてバルーン形状バルーン状形状を有し、処置される心臓の心房と心室との間に位置する本来の心臓弁の弁輪の直径より大きい直径(d1)を有し、拡張状態において処置される心臓の心房内で半径方向の力によってデバイスを固定するのに適した寸法および構成を有している。さらに、弁保持ステント部は、デバイスの拡張状態において、実質的に円筒状の形状を有し、その長さ(l)に沿って好ましくは一定した直径d3を有する。直径d3は、拡張状態において本来の心臓弁の弁輪の直径より小さいため、本来の心臓弁の弁輪と弁保持ステント部とが接触することなく、本来の心臓弁はその機能を維持できる。本発明によれば、前記埋め込み型デバイスは、スカート部および弁部を含む弁要素をさらに含み、スカート部は弁保持ステント部の外側に装着され、弁部は弁保持ステント部の内側に装着されている。

0018

本発明による埋め込み型デバイスを、心臓弁逆流、特に僧帽弁逆流の治療に使用する場合、治療対象である患者の心臓内に、確実かつ簡便にデバイスを配置することができる。この埋め込み型デバイスは、固定ステント部によって患者の心臓の心房内、好ましくは左心房内に固定されるが、弁保持ステント部は弁輪の内方に保持されるため、デバイスが本来の弁輪構造に接触することは回避され、機能不全の弁は、開閉が可能であれば、その状態の許す範囲で機能を果たすことができる。このことが可能であるのは、埋め込み型デバイスの弁保持部の直径が、本来の弁の直径より小さいためである。

0019

心房内固定ステント部は、上述のように、バルーン形状またはボール形状を有する自己拡張可能な固定要素であり、左心房の腔内に配置され、半径方向の力により心房内に固定される。心房内部の主腔は略球状の生体構造であるため、この要素は、ボール内ボールが半径方向に圧力を加えるような配置を利用して、弁輪の内側の腔において弁輪構造に接触することなく、埋設された弁、厳密には弁保持ステント部を保持するために必要な安定性を保持する。

0020

この配置では、完全には閉じない本来の弁は置換されず、本来の弁尖は、埋め込み型デバイスの弁と同様に、拡張期には開いて血液を制限なく左心室に流入させる。収縮期、すなわち、左心室が収縮する際は、本来の弁は埋設前と同様に閉じることができ、同様に埋め込み型デバイスの弁も閉じる。埋め込み型デバイスの弁はスペーサーとして機能し、本来の僧帽弁尖の接合を強化する。すなわち、収縮期の間、本来の弁尖は、閉じるか、または埋め込み型デバイスの弁保持部に当接し、一方、埋め込み型デバイスの弁は弁輪の内側で閉じる。このように、収縮期の心房と左心室との間の適切な閉鎖保証される。

0021

したがって、本発明によるデバイスを用いることにより、僧帽弁を置換する方法と僧帽弁の接合を強化する方法との組合せを含む、心臓弁逆流を治療するための効果的なハイブリッドソリューションが提供される。

0022

明細書中、「バルーン状の」は、任意の球根形状または丸みを帯びた形状を含むことを意味し、一端が先細っていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。したがって、「バルーン状の」形は、球形状またはボール状の形状を含む。

0023

本明細書中、一般的な理解と同様に、「ステント」は、円筒状、管状、またはその他の形状の、半径方向に拡張可能金属フレームまたは金属体を含むことを意味し、したがって、人工器官に剛性、拡張力、または支持をもたらす任意のデバイスまたは構造体を含む。一方「ステントグラフト」は、ステントと、それに結合されたグラフト材料とを含む人工器官を表し、グラフト材料は、ステントグラフトの長さの少なくとも一部にわたって、液密または実質的に液密な管腔を形成する。ステント/ステントグラフトの本体は、処置される血管/器官へ挿入され、適切な位置で、拡張されるかまたは自己拡張することにより固定され、血管/器官の管腔を広がった状態で維持するか、またはステントを含む人工器官を固定する。

0024

本発明によるデバイスのステント部材およびステント要素の金属フレームは、レーザー切断されていてもよく、織られていてもよく、編み組まれていてもよく、編まれていてもよく、別の方法で相互に結合させた金属メッシュを含んでいてもよい。

0025

ステントおよび/またはステントグラフトは、一般に、例えば、自己拡張する物質で作製された、一連のステント要素、または個別に見れば1つのワイヤーフレームを含む。

0026

これに関して、肺静脈によってからの血液が左心房へ送られるよう、固定ステント部は被覆されないか、または少なくとも部分的に被覆されないよう設計されることに留意されたい。このように、左心房への血流が心房内ステント部によって妨げられないようにすることが不可欠である。

0027

弁保持ステント部は、複数で金属メッシュを形成する金属リング単体であってもよく、このとき、該複数のリングは、その周が蛇行しており、弁保持ステント部の長手軸沿い/長手方向に連続的に配置され、側面から見た形状は、デバイスの近位端と遠心端とに交互に向く尖頭アーチを有するZ字型である。このように、金属リングは、弁のスカート部を介して間接的に結合される。

0028

本明細書中、「実質的に円筒状の」、「実質的に円筒状の形」、および「実質的に円筒状の形状」の表現は、長さを有し、かつ実質的に円形の断面を有する任意の立体形状を意味する。弁保持ステント部が実質的に円筒状の形状を保持する限り、上記形状には、断面が例えば楕円放物線、または双曲線である形状も含まれ、断面は必ずしも規則的な外周を有する必要はなく、不規則円周も含む。また、「実質的に円筒状の」という表現を用いた場合、処置対象である弁の弁輪の解剖学的形状に一致する形状または実質的に一致する形状が含まれる。

0029

同様に、弁保持ステント部の実質的に円筒状である形状の直径に関する表現「実質的に一定した」は、一般に、円筒形の直径が円筒の長さ全体にわたってほぼ同一であることを意味するが、生産上の事情による直径のわずかな変動があってもよいことは、当業者にとっては明らかであろう。

0030

本発明のデバイスの構成要素、すなわち、固定ステント部と弁を含む弁保持ステント部とから成るステント要素は、使用目的に合わせて、また患者の心臓の状態ならびに形状および寸法に応じて、様々なサイズ(すなわち、長さ、直径など)に形成することができる。固定ステント部の直径は、埋め込み型デバイスを心房内に確実に固定できるよう、拡張された状態で心房の直径よりも大きいことが好ましい。

0031

本発明の好ましい一実施形態によると、埋め込み型デバイスのステント要素は自己拡張型であり、本発明のデバイスは、哺乳動物の心臓へ導入するための圧縮状態から拡張状態へと心臓内で変形できるように構成されている。

0032

好ましい一実施形態によると、本発明の弁要素は、デバイスの埋設後、本来の心臓弁の機能を置換することも損なうこともなく、その機能を補助するような寸法および構成で形成されている。

0033

本明細書中、「本来の心臓弁の機能」は、心臓弁が閉じる範囲内での心臓弁、好ましくは僧帽弁の開閉を意味する。「心臓弁が閉じる範囲内」とは、本来の心臓弁の機能が損なわれている場合、すなわち本発明による埋め込み型デバイスを埋設する以前などにおいては、本来の心臓弁が適切に閉じず、漏れや心臓弁逆流を起こす状態であることを意味する。しかしながら、本発明によるデバイスを埋設すると、疾患のある心臓弁の弁尖が埋め込み型デバイスの弁保持ステント部に当接することは明らかであるが、該弁尖はなお運動を行うことができる。

0034

本発明による埋め込み型デバイスの別の一実施形態によると、心房内固定ステント部と弁保持ステント部とは、一体的に形成されている。

0035

この実施形態によると、心房内固定ステント部および弁保持ステント部は、一体物として製造されている。この実施形態は、製造工程が簡略になる点で、異なる2つのステント部から組み立てられたステント要素を含むデバイスに比べて有利である。一体物としてのステント要素が好ましいが、2以上の部品を接合または連結したステント要素を含む実施形態も実現可能であり、本発明の意図に含まれる。

0036

本発明によるデバイスの別の一実施形態によると、心房内固定ステント部は、心臓の心房内に、心房壁と少なくとも部分的に接触する状態で固定することができる。

0037

前述のように、拡張可能な心房内固定ステント部は、デバイスの拡張状態において、治療される患者の心臓の心房内において拡張し、デバイス全体を心臓内に固定または定着させる。心房内固定デバイスが適切な寸法を有することにより、固定ステント部は、拡張するとすぐに、少なくとも部分的に心房壁に当接して自体を固定し、それによってデバイスの他の部分も固定する。その結果、ステント要素の弁保持ステント部は、弁輪の内側に、本来の弁輪構造に接触することのない状態で配置され、固定される。

0038

別の好ましい一実施形態によると、本発明によるデバイスにおいて、弁要素のスカート部および弁部は、同一の材料、好ましくは哺乳動物の心膜で作製されている。

0039

したがって、好ましい一実施形態において、生体弁およびスカートは、動物の心膜(具体的にはブタウシウマの心膜)から、またはヒトの心臓もしくは血管の本来の弁尖から選択される材料を含むか、またはそのような材料から成る。

0040

本発明による弁の別の好ましい一実施形態において、弁要素は二尖弁または三尖弁を含む。

0041

健康なヒトの三尖弁は、3つの弁尖すなわちカスプを含み、これらはそれぞれの位置にちなんで、前尖中隔尖、および後尖名付けられている。したがって、一態様によると、ステントグラフト部材上に取り付けられたステント弁における弁も3つの弁尖を含み、三尖弁に相当する。しかし一方で、2つの弁尖のみを有する弁、すなわち「二尖」構造の弁、または1つの弁尖のみを有する弁、すなわち単尖弁であっても、本発明による埋め込み型デバイスと共に使用することができる。

0042

ヒト僧帽弁は、2つの弁尖、すなわち半円形である前尖および四角形である後尖を有する。

0043

前述のように、このような弁は、ヒトまたは動物のドナーから作製することができる。これらは、例えば、ヒトもしくは任意の哺乳動物の心膜、または心臓もしくは血管の本来の弁尖から作製されてもよく、意図した目的に好適なその他の生体材料から作製されてもよい。一般に、このような弁もまた、機械弁に対して、生物学的な弁または生体弁と呼ばれる。

0044

別の一実施形態によると、本発明によるデバイスにおいて、ステント要素は、形状記憶材料、好ましくはニチノールで作製されている。ニチノールは、埋め込み型医療デバイスに適していることが証明され、様々な医療器具に使用されてきた。

0045

本発明によるデバイスの好ましい一実施形態において、ステント要素は、レーザー切断されたステント要素であってもよく、かつ/またはワイヤー、好ましくはニチノール製ワイヤーを用いて作られていてもよい。

0046

これに関して、心房内固定ステント部および/または弁保持ステント部は、編み組まれたまたは他の方法で交差させたワイヤーから作製されていることが好ましく、ニチノール製であることが好ましい。

0047

また別の一実施形態によると、心房内固定ステント部および/または弁保持ステント部は、ワイヤーループから作製されている。

0048

この実施形態において、固定ステント部は、バスケット状の形状を有し、この形状はワイヤーループによって形作られている。これに関して、ループの数は3〜15であることが好ましく、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11であることが好ましい。

0049

本発明のデバイスの別の一態様によると、該デバイスはさらに、視覚化要素、具体的には放射線不透過マーカーを含み、視覚化要素は、該デバイスのステント要素の1以上の箇所に取り付けられている。

0050

本明細書中、「視覚化要素」は、該デバイスの正確な留置を容易にする、デバイスに取り付けられたり、あるいは別の方法でデバイスに備えられる任意の補助器具を意味する。本発明の一態様によると、これらの視覚化要素は、例えば金、タンタル白金などの任意の好適な材料を含んでいるか、またはそのような材料から成る放射線不透過性マーカーである。

0051

別の一態様によると、本発明によるデバイスにおいて、弁保持ステント部の実質的に円筒である形状の直径(d3)は、デバイスの拡張状態において、円筒の長さ(l)方向に沿って実質的に一定している。

0052

本発明はまた、僧帽弁逆流および/または三尖弁逆流から選択される心臓弁逆流の治療に使用するための、上記で詳述した本発明によるデバイスに関する。すなわち、本発明はさらに、心臓弁逆流を治療するための本発明のデバイスの使用に関し、また心臓弁逆流を治療するための、上記で詳述した本発明による埋め込み型デバイスを埋設する工程を含む方法に関する。

0053

カテーテルによる送達の場合、本発明による方法は、埋め込み型デバイスを含む送達カテーテルを挿入する工程も含んでいてもよく、該埋め込み型デバイスは、送達カテーテルに装填されて、治療を必要とする、すなわち心臓弁逆流を患っている対象者の心臓に挿入される際は、圧縮状態にある。

0054

治療を必要とする、すなわち心臓弁逆流を患っている患者または対象者は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。

0055

冒頭に述べたように、心臓弁逆流とは、心臓が血液を拍出する際に心臓弁が適切に閉じない状態となっている、心臓の病状の1つである。したがって、僧帽弁逆流とは、左心室が収縮する際に血液が僧帽弁を通って左心室から左心房へ漏れ出す異常な漏出である。この心臓障害の症状は、患者が疾患過程のどの段階にあるかに依存する。急性僧帽弁逆流を患っている患者には、非代償性鬱血性心不全兆候と症状、すなわち息切れ肺水腫起座呼吸、および発作性夜間呼吸困難、ならびに低心拍出量状態すなわち運動耐性の低下を示唆する症状が見られる。

0056

本発明はまた、哺乳動物における三尖弁逆流を治療するための本発明のデバイスの使用、ならびに、哺乳動物における三尖弁逆流を治療するための方法であって、それを必要とする患者の本来の三尖弁を置換または補助するために心臓内の位置に本発明のデバイスを送達および/または埋設する工程を含む方法に関する。

0057

本発明によるデバイスは、外科的に埋設することまたは経カテーテル法によって送達することができる。後者、すなわち経カテーテル法において、本発明によるデバイスは、好適な配置カテーテルに装填され、後退可能なシースまたはチューブまたは同様のものによって圧縮される。該配置カテーテルは、三尖弁または僧帽弁の置換または補助を必要とする患者の心臓へ挿入される。

0058

三尖弁を処置する場合、本発明によるデバイスが圧縮状態で装填されている該配置カテーテルは、右心房で固定ステント部が、弁輪の内側で弁保持ステント部が拡張されるように、頚静脈を経由して上大静脈、右心房へと進められ、配置される。あるいは、本発明によるデバイスが圧縮状態で装填されている該配置カテーテルは、大腿静脈を経由して下大静脈、右心房へと進められる。正確な位置づけは、例えば、本発明による埋め込み型デバイス内に存在する視覚化要素によって、監視することができる。

0059

正確に位置づけされると、シースまたはその他の圧縮手段は、後退させられることにより本発明のデバイスを段階的に解放し、その動作によって該デバイスのステント部材が上大静脈および下大静脈内それぞれにおいて拡張し、該デバイスが固定される。

0060

僧帽弁を処置する場合、本発明によるデバイスが圧縮状態で装填されている該配置カテーテルは、左心房で固定ステント部が、弁輪の内側の位置で弁保持ステント部が拡張されるように、心尖部を経由して左心室へ、次いで僧帽弁を通って左心房へと進められ、配置される。また、圧縮されたデバイスは、左心房で固定ステント部が、弁輪の内側の位置で弁保持ステント部が拡張されるように、大腿静脈または頚静脈を経由して右心房へ、次いで中隔を経由して左心房へと導入され、配置されてもよい。さらに、圧縮されたデバイスは、左心房で固定ステント部を、弁輪の内側の位置で弁保持ステント部を拡張するため、小さな外科的開胸部から肺静脈(右上、右下、左下、または左上肺静脈)、左心房へと導入され、配置されてもよい。

0061

本発明のさらなる利点および特徴について、以下の記述および添付図において説明する。

0062

前述の特徴および以下にさらに説明する特徴は、それぞれ記載の特定の組合せだけでなく、その他の組合せやそれら単独でも本発明の範囲を逸脱することなく使用できることは理解されるであろう。

図面の簡単な説明

0063

本発明の前述の特徴および以下にさらに説明する特徴を、図に示す。

0064

ヒトの心臓の略図である。

0065

心臓の左心房内の正しい位置に留置された本発明によるデバイスの例示的な実施形態の略図である。

0066

本発明によるデバイスの様々なデザインを示す、種々の例示的実施形態(A〜D)の略図である。

実施例

0067

図1に、右心房54と、右心室55と、左心房56と、左心室57とを有するヒトの心臓50を示す。また、右心房54を経由して心臓50に入る上大静脈52の一部および下大静脈53の一部を示す。

0068

より詳細には、上大静脈52は、右心房54の上後部に開口して上半身からの血液を戻し、その開口部52aは下前方を向いている。開口部52aは弁を有さない。

0069

上大静脈52より大きい直径を有する下大静脈53は、右心房54の最下部に開口して下半身からの血液を戻す。その開口部53aは上後方を向いており、未発達な弁、すなわち下大静脈弁ユースタキオ弁、図示せず)によって保護されている。

0070

右心室55は、三角形状であり、右心房54から心臓50の尖端59近くまで広がっている。

0071

右房室口(図1に図示せず)は、右心房54と右心室55とを連絡する長円形の大きな開口であり、三尖弁60によって保護されている。

0072

肺動脈62の開口部61は、円形状であり、房室口の左上部に位置する。開口部61は、肺動脈弁63によって保護されている。

0073

三尖弁60は、3つの略三角形の弁尖(cusp(カスプ)/segment/leaflet)64、すなわち前尖、中隔尖、後尖から成る。これらの底部は、房室口を囲む線維輪図1に図示せず)につながっており、互いに連結して連続した環状の薄膜を形成している。また、これらの心房側の表面は心房54からの血流に向いており、心室側の表面は心室55の壁面に向いている。該弁尖の尖端および縁は、腱索(図1に図示せず)につながっている。

0074

前述のように、三尖弁の機能は、血液の右心房54への逆流を防ぐことである。矢印70および矢印71は、右心房54への通常の血流を示す。

0075

左心房56は、右心房54より小さい。左心室57は、右心室55より長く、より円錐形に近い。左房室口僧帽弁口図1に図示せず)は、大動脈口65の左側に位置しており、二尖弁すなわち僧帽弁66で保護されている。

0076

大動脈口65は、円形状の開口であり、房室口の右前部にある。その開口部は、3つの大動脈弁67によって保護されている。参照番号68は、大動脈を示す。

0077

僧帽弁66は、左側の心房腔すなわち左心房56と左心室57とを隔てており、前述のように、心室57と左心房56との間の解剖学的接合部を構成する僧帽弁輪70を有する房室弁である。該弁輪70は、弁尖組織(図示せず)の付着部としての機能も果たす。

0078

正常な僧帽弁66は、左心室57が弛緩する際(拡張期)に開き、これによって、左心房56から流入する血液が減圧状態にある左心室57を満たす。収縮期、すなわち、左心室57が収縮する際には、該心室57内の圧力が増加し、僧帽弁66は閉じる。これにより、左心房56への血液の漏出が防止され、左心室から出た血液は全て大動脈弁67を通って確実に大動脈68へ、さらに全身へと送り出される。僧帽弁の適切な機能は、弁輪70、弁尖、および弁下組織(いずれも図1に図示せず)間の複雑な相互作用に依存する。

0079

僧帽弁66は、2つの弁尖(図示せず)、すなわち前尖および後尖を有する。前述のように、前尖は半円形であり、後尖は四角形である。前尖の動きにより、左心室57への流入路と左心室57からの流出路との重要な境界が決定される。前尖は弁輪の円周の5分の2に付いており、一方、後尖は弁輪の円周の約5分の3に付いている。後尖は、通常、弁尖を3つのスカラップに分割する明瞭な2つの切れ目を有し、これらのスカラップはP1、P2、P3と呼ばれる。前尖におけるこれらに対応する3つの部分は、A1、A2、A3と呼ばれる。これらの切れ目は、収縮期における後尖の開放を助長する。

0080

弁尖の心房側の表面には、2つの領域、すなわち周辺の滑らかな領域と中心部の接合領域とが存在する。これら2つの領域は、心房側から見られる、2つの弁尖の間の緩やかに湾曲した接合線によって分けられる。

0081

僧帽弁66および三尖弁60が完全に閉鎖しない場合、それぞれ僧帽弁66の逆流および三尖弁60の逆流が起こり、血液が心房56および心房54へと逆方向へ漏れ出す。

0082

本発明によるデバイスにより、心臓弁逆流、特に僧帽弁逆流が治療される。本発明によるデバイスの例示的な実施形態における配置を、添付する図2に示す。

0083

図2は、図1に示した心臓の略図を示す。わかりやすくするために、図1の参照番号の一部のみを示し、図上にわずかな違いはあるが、ヒトの心臓50の、図1と同じ特徴を示すものである。

0084

図2からわかるように、本発明によるデバイス10は、ヒトの心臓50に拡張状態で留置されている。このデバイスの詳細を図3Aに示す。以下、図2および図3A(〜図3D)をいずれも参照しながら説明する。わかりやすくするために、図2では、図3に示すデバイスの特徴の一部のみを示しているが、特徴は同じである。

0085

図2において、本発明による例示的な埋め込み型デバイス10(図3Aに詳細を示す。図3B、図3C、および図3Dに示す他の形状のデバイス100、200、300であってもよい)は、心臓50の左心房56内に拡張された状態で配置されている。

0086

埋め込み型デバイス10は、心房内固定ステント部12および弁保持ステント部14から成るステント要素11を含み、心房内固定ステント部12および弁保持ステント部14は、互いに固定的に接続されており、一体的に形成、すなわち、一体物として製造されていることが好ましい。

0087

デバイス10の拡張状態において、ステント要素11の心房内固定ステント部12は、バルーン状の形状13、すなわち、いわゆる球状またはボール状の形状を有し、ステントフレームまたはステントメッシュ16から作製されている。ステントフレームまたはステントメッシュ16は、ニチノール管またはニチノールワイヤーから、レーザー切断または織り合せもしくは編み組みによって作製されていることが好ましい。

0088

心房内固定ステント部12は、その最も外側の境界17で、左心房56の壁(図示せず)に接触し、本来の弁66の弁輪70と接触することなく、左心房内に前記デバイスを確実に固定する。このことは、最も広いあるいは最も大きい円周の直径d1が弁輪70の直径71より大きい、ステント要素11の心房内固定ステント部12と、自体の長さlに沿って一定した直径D3を有する円筒形状15を有し、かつ直径D3が本来の心臓弁66の弁輪70の直径より小さい弁保持ステント部14とにより実現される。弁保持ステント部14は、心房内固定ステント部12が弁輪に接触せず、かつ弁輪内に達しない状態で、該心房内固定ステント部12上に取り付けられている。

0089

また、弁保持ステント部14は、その直径d3が本来の弁66の弁輪70の直径より小さいことから、弁輪70に接触しない。そのため、残存している、本来の弁66の不完全な閉運動は、維持される。

0090

上述のように、弁保持ステント部14は、一定した直径d3を有する円筒形状15を有する。弁保持ステント部14には、弁要素18が取り付けられている。弁要素18は、スカート部19および弁部20を含み、スカート部19は弁保持部14の外側に、弁部20は弁保持ステント部14の内側に取り付けられている。弁要素18は、任意好適な材料から作られていてよく、好ましくは心膜である。弁部20は、例えば三尖弁部、二尖弁部、または単尖弁部20であってよく、例えば哺乳動物由来であってよい。

0091

弁部20が本来の弁の機能を有すること、すなわち、本来の弁と同様に開閉できることが理解されるであろう。そのため、本発明のデバイス10、100、200、300を埋設すると、本来の1つの(僧帽)弁66の代わりに、いわば2つの弁、すなわち本来の弁とデバイス10、100、200、300の弁20とが開閉する。結果として、弁要素18は、本来の僧帽弁66の閉鎖を補助することになる。

0092

本発明によると、デバイス10は、本来の弁の弁輪70より小さな直径d3を有する弁20を提供する。この弁20は、弁輪の内側に配置されることになるが、その位置づけは、左心房56内に配置され、ステント要素11の半径方向の力により該心房56内に固定される、球状の自己拡張型心房内固定ステント部12によってなされる。心房内部の主腔は略球状の生体構造であるため、ボール内のボールが半径方向に圧力を加えるような配置を利用した、本発明によるデバイス10、100、200、300の心房内固定ステント部12は、弁輪の内側の腔において弁輪構造70に接触することなく、埋設された弁デバイス10、100、200、300を保持するために必要な安定性を提供する。

0093

このハイブリッドソリューション、すなわち(僧帽)弁の置換と接合強化とを合わせたソリューションは、いわゆるスペーサー技術の欠点、すなわち血栓形成やスペーサーによる狭窄症状も解決する。

0094

本発明によるデバイス10、100、200、300は、例えば経カテーテル法によって埋設してもよく、外科的に埋設してもよい。カテーテルを使用する場合、本発明によるデバイス10、100、200、300は、圧縮状態でカテーテルに装填される。この圧縮状態はチューブまたはシース(図示せず)によって維持されるが、チューブまたはシースは、デバイス10、100、20、300を覆った状態で、該デバイスを圧縮しながら誘導される。本発明によるデバイス10、100、200、300を装填したカテーテルは、患者の血管を介して心臓へ導入されてもよい。僧帽弁に適用する場合、左室心尖を経由し、僧帽弁を通って左心房へ導入する直接的な心尖アクセスも可能であるが、大腿静脈アクセスおよび頚静脈アクセスの後に経中隔で左心房へ導入してもよく、小開胸部より肺静脈を介して導入してもよい。三尖弁に適用する場合、下大静脈または上大静脈を通って右心房へ導入する大腿静脈アクセスまたは頚静脈アクセスが可能である。それぞれの心房において、シースを撤去回収すると、拡張可能なデバイス10、100、200、300は拡張して拡張状態となり、心房壁に当接し、心房壁に押しつけられた状態となる。その結果、デバイス10、100、200、300の心房内固定ステント部12は、心房56内に固定され、一方、弁保持ステント部14は弁輪の内側に配置され、その位置で弁要素18が本来の弁66を補助する。

0095

図3B、図3C、および図3Dは、本発明によるデバイスの例示的な実施形態100、200、300を示す。これらはそれぞれ異なるよう製造されているが、同一の形状を有しており、該形状は、バルーン形状の心房内固定ステント部12に円筒状の弁保持ステント部14が取り付けられていることを特徴とする。

0096

図3Bは、心房内固定ステント部が円周方向にジグザグ状曲折するステントリングから作製される実施形態を示す。これらのステントリングは別の(ニチノール)ワイヤーによって縦方向に結合され、1つのステントフレームとなる。

0097

図3Cは、心房内固定ステント部12のバルーン形状が、外側に向かって(すなわち凸状に)指のように曲げられた金属線、好ましくはニチノールワイヤーで作製される実施形態を示す。

0098

図3Dは、心房内固定ステント部12が、金属線を織り合せまたは編み組みによって球状またはボール状とすることで作製される実施形態を示す。

0099

図3A〜図3Dに示す異なる実施形態における弁保持ステント部12は、実質的には同様に作製される、円筒管状のステントフレームである。

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