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技術 Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法

出願人 国立大学法人信州大学
発明者 新井進西村晃一
出願日 2015年8月7日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2015-156859
公開日 2016年4月21日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 2016-056447
状態 特許登録済
技術分野 電気鍍金;そのための鍍金浴 電気メッキ方法,物品 その他の表面処理 電池用電極の担体または集電体 電池の電極及び活物質
主要キーワード 電流規制 Sn系めっき 銅析出物 表面SEM像 電析物 排出作用 ナノピラー ナノ構造材料
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題

リチウムイオン電池の負極の集電体としての利用が検討されている、Sn或いはSn-Ag等のSn系金属がめっき表面又は内部に保持された銅三次元ナノ構造体の製造方法の提供。

解決手段

基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、銅三次元ナノ構造体に、置換Snめっき、あるいは置換Sn-Ag合金めっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSnあるいはSn-Ag合金を析出させる工程と、を備えるSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。なお、置換Snめっき、あるいは置換Sn-Ag合金めっきにかえて、電解Snめっき、電解Sn-Ag合金めっきを銅三次元ナノ構造体に施して、銅三次元ナノ構造体上にSnあるいはSn-Ag合金を析出させることも可能であるSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。

概要

背景

ナノ構造材料リチウムイオン電池キャパシタの分野で注目を集めている。特に、銅三次元ナノ構造材料はリチウムイオン電池の負極の集電体としての利用が期待されている。
銅三次元ナノ構造材料として、アルミナ酸化膜鋳型とした銅ナノピラーがある。銅ナノピラー上にFe3O4を電析させた電極は100サイクルを超えても容量の劣化が抑えられることが報告されている(非特許文献1)。また、銅ナノピラー上にSnやSn-Ni合金を電析させることで、Snの欠点である充放電の際の大きな体積膨張収縮による電極からの滑落を防ぎ、良好なサイクル特性を示す報告もある(非特許文献2)。
しかしながら、銅ナノピラーの作製工程は複雑であり、より簡易な銅三次元ナノ構造材料の作製が望まれている。本発明者は、よりシンプルな方法を用いた銅三次元ナノ構造物の作製について報告している(非特許文献3)。

リチウムイオン電池の負極材料としては、Snはグラファイトの約3倍の比容量を有することから、Snを負極の活物質とすることが検討され、Sn−Cu、Sn−NiといったSn合金を負極の活物質に使用することについても多くの研究がなされている(特許文献1等)。また、Sn合金としてSn-Ag合金を負極の活物質として使用した例が報告されている(非特許文献4、5)。

概要

リチウムイオン電池の負極の集電体としての利用が検討されている、Sn或いはSn-Ag等のSn系金属がめっき表面又は内部に保持された銅三次元ナノ構造体の製造方法の提供。基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、銅三次元ナノ構造体に、置換Snめっき、あるいは置換Sn-Ag合金めっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSnあるいはSn-Ag合金を析出させる工程と、を備えるSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。なお、置換Snめっき、あるいは置換Sn-Ag合金めっきにかえて、電解Snめっき、電解Sn-Ag合金めっきを銅三次元ナノ構造体に施して、銅三次元ナノ構造体上にSnあるいはSn-Ag合金を析出させることも可能であるSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。

目的

しかしながら、銅ナノピラーの作製工程は複雑であり、より簡易な銅三次元ナノ構造材料の作製が望まれている

効果

実績

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請求項1

Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法であって、基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、前記銅三次元ナノ構造体に、置換Snめっきあるいは電解Snめっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSnを析出させる工程と、を備えることを特徴とするSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。

請求項2

Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法であって、基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、前記銅三次元ナノ構造体に、置換Sn-Ag合金めっきあるいは電解Sn-Ag合金めっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSn-Ag合金を析出させる工程と、を備えることを特徴とするSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。

請求項3

基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程として、めっき浴添加剤としてポリアクリル酸を使用し、めっき浴におけるポリアクリル酸の濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、前記基材の表面に電解めっきを施すことを特徴とする請求項1または2記載のSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法。

請求項4

前記めっき浴のポリアクリル酸の濃度cを、1×10-4 M<c<5×10-4 Mの範囲に設定することを特徴とする請求項3記載の銅三次元ナノ構造体の製造方法。

請求項5

基材上に、銅からなる板状体ランダム交錯した形態となる銅三次元ナノ構造体が形成され、前記板状体の表面にSn系金属が担持されていることを特徴とする電池負極材料

請求項6

前記Sn系金属として、Snが担持されていることを特徴とする請求項5記載の電池の負極材料。

技術分野

0001

本発明は、Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法及び電池負極材料に関する。

背景技術

0002

ナノ構造材料リチウムイオン電池キャパシタの分野で注目を集めている。特に、銅三次元ナノ構造材料はリチウムイオン電池の負極の集電体としての利用が期待されている。
銅三次元ナノ構造材料として、アルミナ酸化膜鋳型とした銅ナノピラーがある。銅ナノピラー上にFe3O4を電析させた電極は100サイクルを超えても容量の劣化が抑えられることが報告されている(非特許文献1)。また、銅ナノピラー上にSnやSn-Ni合金を電析させることで、Snの欠点である充放電の際の大きな体積膨張収縮による電極からの滑落を防ぎ、良好なサイクル特性を示す報告もある(非特許文献2)。
しかしながら、銅ナノピラーの作製工程は複雑であり、より簡易な銅三次元ナノ構造材料の作製が望まれている。本発明者は、よりシンプルな方法を用いた銅三次元ナノ構造物の作製について報告している(非特許文献3)。

0003

リチウムイオン電池の負極材料としては、Snはグラファイトの約3倍の比容量を有することから、Snを負極の活物質とすることが検討され、Sn−Cu、Sn−NiといったSn合金を負極の活物質に使用することについても多くの研究がなされている(特許文献1等)。また、Sn合金としてSn-Ag合金を負極の活物質として使用した例が報告されている(非特許文献4、5)。

0004

特開2006−100244号公報

先行技術

0005

P. L. Taberna, S. Mitra, P. Poizot, P. Simon and J.-M. Tarascon, Nature Materials, 5, 567-573 (2006).
J. Hassoun, S. Panero et al., Advanced Materials, 19 (12), 1632-1635 (2007)
S. Arai and T. Kitamura, ECS Electrochemistry Letters, 3 (5), D7-D9 (2014).
Jingtian Yin, Masashi Wada, Seiji Yoshida, Kouji Ishihara, Shigeo Tanase and Tetsuo Sakai, Journal of The Electrochemical Society, 150 (8) A1129-A1135 (2003).
J. O . Besenhard , J. Yang, M. Winter, Journal of Power Sources 68 (1997) 87-90

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、内部に複雑な空隙が形成された銅三次元ナノ構造体上へのSnめっき、あるいはSn-Ag合金めっきを施すことにより、銅三次元ナノ構造体の内部にSnあるいはSn-AgといったSn系金属が保持された銅三次元ナノ構造体の製造方法及びリチウムイオン電池等の電池の負極材料を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法であって、基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、前記銅三次元ナノ構造体に、置換Snめっきあるいは電解Snめっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSnを析出させる工程とを備えることを特徴とする。

0008

また、本発明は、Sn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法であって、基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、前記銅三次元ナノ構造体に、置換Sn-Ag合金めっきあるいは電解Sn-Ag合金めっきを施し、前記銅三次元ナノ構造体上にSn-Ag合金を析出させる工程とを備えることを特徴とする。

0009

なお、置換めっきあるいは電解めっきにより、銅三次元ナノ構造体上にSnあるいはSn-Ag合金を析出させるとは、銅三次元ナノ構造体を構成する銅の板状体の表面にSnあるいはSn-Ag合金を析出させる意である。SnあるいはSn-Ag合金は交錯した板状体によって形成される三次元構造体の内部の板状体の表面にも析出する。

0010

また、本発明に係るSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法においては、基材の表面に銅三次元ナノ構造体を形成する工程として、めっき浴添加剤としてポリアクリル酸を使用し、めっき浴におけるポリアクリル酸の濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、前記基材の表面に電解めっきを施すことにより、基材上に確実に銅三次元ナノ構造体を形成することができる。
また、前記めっき浴のポリアクリル酸の濃度cを、1×10-4 M<c<5×10-4 Mの範囲に設定することにより、さらに確実に銅三次元ナノ構造体を形成することができる。

0011

また、本発明に係る電池の負極材料は、基材上に、銅からなる板状体がランダムに交錯した形態となる銅三次元ナノ構造体が形成され、前記板状体の表面にSn系金属が担持されていることを特徴とする。
前記Sn系金属とは、Snの他に、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Bi合金、Sn-Pb合金等のSn合金を含む意味である。

発明の効果

0012

本発明に係るSn系金属を保持する銅三次元ナノ構造体の製造方法によれば、銅三次元ナノ構造の内部にSn系金属が保持された銅三次元ナノ構造体を得ることができる。また、本発明に係る電池の負極材料は、リチウムイオン電池の負極材料として好適に利用することができる。

図面の簡単な説明

0013

電解めっきにより作製した銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
電解めっきにより作製した銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
めっき浴に添加するポリアクリル酸の添加量を変えたときの銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
銅三次元ナノ構造体の表面に置換Snめっきを施したサンプルの表面SEM像である。
銅三次元ナノ構造体の表面に置換Snめっきを施したサンプルの表面SEM像である。
銅三次元ナノ構造体の表面に置換Snめっきを施したサンプルの表面SEM像である。
置換Snめっきを行ったサンプルの断面SEM像である。
置換Snめっきにより析出したSnの析出量の時間経過を示すグラフである。
置換Snめっきを施したサンプルのXRD測定結果を示すグラフである。
銅三次元ナノ構造体に置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルの表面SEM像である。
銅三次元ナノ構造体に置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルの表面SEM像である。
置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルの断面SEM像である。
置換Sn-Ag合金めっきにより析出したSn-Agの析出量の時間経過を示すグラフである。
置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルのXRD測定結果を示すグラフである。
銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Agめっきを施したサンプルの表面SEM像である。
銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Agめっきを施したサンプルの断面SEM像である。
銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Ag合金めっきを施す前後の断面SEM像である。
電解Sn-Ag合金めっきを施したサンプルのXRD試験結果を示すグラフである。
銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Ag合金めっきを施したサンプルを負極に使用して充放電サイクル試験を行った結果を示すグラフである。
電解Snめっきを施したサンプルの表面のSEM像である。
電解Snめっきを施したサンプルの断面のSEM像である。
サンプルの断面SEM像(a)、Cuの断面マッピング(b)、Snの断面マッピング(c)の測定結果を示す図である。
銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施したサンプルを負極に使用し、充放電速度を変えて充放電試験を行った結果を示すグラフである。
銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施したサンプルを負極に使用し、充放電速度を5Cとして充放電試験を行った結果を示すグラフである。
銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施したサンプルを負極に使用し、放電容量を600mAh/gとして充放電試験を行った結果を示すグラフである。

実施例

0014

(銅三次元ナノ構造体の製法
銅三次元ナノ構造体は、薄い(厚さ数十nm)板状の電析物がランダムに交錯した形態に形成された構造体であり、電解めっき法を利用して作製することができる。銅三次元ナノ構造体の作製方法において特徴的な点は、めっき浴に添加するポリアクリル酸の量にある。
図1、2は、銅めっき浴(CuSO4・5H2O :0.85M、H2SO4 :0.55M)に添加剤としてポリアクリル酸(分子量5000)を添加して銅板表面にめっきしためっき膜表面のSEM像を示す。図1は、電流規制法、通電量60C cm-2、電流密度0.5Adm-2とした場合、図2は、電流密度を1Adm-2とした場合である。

0015

図1(a)〜(d)、図2(a)〜(d)とも、ポリアクリル酸の添加量を、それぞれ(a):2×10-6 M、(b):2×10-5 M、(c):2×10-4 M、(d):2×10-3 Mとした場合である。
図1、2(a)、(b)、(d)を見ると、めっき膜は、表面に若干の凹凸は見られるものの、めっき膜全体として平滑である。
これに対し、図1(c)、図2(c)のめっき膜(ポリアクリル酸:2×10-4 M)は、特異的にめっき膜の表面が粗面となっている。図1(c)の拡大像を見ると、薄い板状の電析物がランダムに交錯して形成されたナノ構造体であることがわかる。
この実験結果は、電解銅めっき法により銅三次元ナノ構造体を形成するためのポリアクリル酸のモル濃度cが、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲にあることを示唆する。

0016

図3は、上述した例と同様の銅めっき浴を使用し、添加剤としてポリアクリル酸(分子量5000)を使用し、通電量27C cm-2、電流密度1Adm-2とした銅めっき膜の表面SEM像と断面SEM像である。ポリアクリル酸の添加量は、図3(a):0 M、(b):1×10-4 M、(c):3×10-4 M、(d):5×10-4 M、(e):2×10-3Mである。
図3から、ポリアクリル酸の添加量が0M(図3(a))と2×10-3M(図3(e))のサンプルについては、めっき膜が円滑膜に形成され、析出物が交錯した構造が見られない。一方、ポリアクリル酸の添加量が1×10-4 M、3×10-4M、5×10-4Mである図3(b)、(c)、(d)のサンプルについては、板状の銅析出物がランダムに交錯して重なり合い、内部に空隙が形成された構造(銅三次元ナノ構造体)となっている。
この実験結果は、銅三次元ナノ構造体を形成するためのポリアクリル酸の添加量としてさらに好適な範囲cが、1×10-4 M<c<5×10-4 Mであることを示している。

0017

(置換Snめっき)
銅の基材にめっきより銅三次元ナノ構造体を形成したCu板に置換Snめっき法によりSnめっきを施す実験を行った。
まず、下記のめっき条件により、Cu板の表面に銅三次元ナノ構造体を形成した。
めっき浴CuSO4・5 H2O :0.85 M H2SO4 :0.55 M
添加剤ポリアクリル酸(PA-5000) :3.0×10-4M
電流規制法電流密度:1Adm-2通電量:63C
アノード:含リンCu板カソード:純Cu板
温度:室温攪拌なし

0018

次に、銅三次元ナノ構造体を形成したCu板に下記のめっき条件により置換Snめっきを施した。
めっき浴Sn2P2O7 :0.1M K4P2O7:0.4M CS(NH2)2:5M HCl:適量
pH:5 温度:90℃めっき時間10s〜30min

0019

図4、5、6に、上記めっき条件により、銅三次元ナノ構造体の表面に置換Snめっきを施したサンプルの表面SEM像を示す。図4は、めっき時間0s、10s、30s、図5はめっき時間1min、2min、5min、図6はめっき時間10min、20min、30minのめっき膜の表面状態を示す。
めっき時間が1〜30s程度では、析出物はよくわからないが、めっき時間が1min程度になると、銅からなる板状体の表面に粒状に析出物(Sn)が付着していることがわかる。めっき時間が5min程度になると、銅の板状体の表面に均一にSnが析出している。このときの析出したSnの厚さは500nm程度である。めっき時間がさらに長くなると、表面に析出したSnの厚さが厚くなり、めっき時間が20min程度になると、板状体の中間にSnが入り込み、板状体が交錯した形態が崩れてくる。

0020

図7は、上記置換Snめっきを0s、30s、1min行ったサンプルの断面SEM像である。
0sのサンプルは置換Snめっきを施していないサンプルであり、この断面SEM像は、銅三次元ナノ構造体は、めっき膜の厚さ方向の内部にまで銅からなる板状体が交錯した状態で形成されていることを示す。
めっき時間30sとめっき時間1minの断面SEM像から、Snは銅からなる板状体の内部にも析出していることがわかる。

0021

図8は置換Snめっきにより析出したSnの析出量の時間経過を示したグラフである。置換Snめっきを開始した後、600秒程度経過するまでは、時間とともにSnの析出量が大きく増加するのに対し、1200秒程度経過した以降は、Snの析出が飽和していく傾向が見られる。

0022

図9は、置換Snめっきを施したサンプルについてのXRD測定結果を示す。めっき時間10s程度で、すでにSn(Cu6Sn5)が析出している。XRDプロフィールは、めっき時間が経過するとともに、Snの析出量が増大していることを示す。
すなわち、上述した置換Snめっきにより、銅三次元ナノ構造体の表面にSnが析出したことが確かめられた。

0023

(置換Sn-Ag合金めっき)
置換Snめっきの実験で使用したものと同一の方法により形成した銅三次元ナノ構造体の表面に、下記のめっき条件により置換Sn-Ag合金めっきを施す実験を行った。
めっき浴K4P2O7:0.4MKI:1.5M Sn2P2O7 :0.1M AgI:0.008M
CS(NH2)2:1〜5M HCl:適量
pH:5 温度:90℃めっき時間10s〜5min

0024

図10、11は、上記めっき条件で、銅三次元ナノ構造体に置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルの表面SEM像である。図10は、めっき時間0s、10s、30s、図11は、めっき時間1min、2min、5minのめっき膜の状態を示す。
図10、11に示すように、置換Sn-Ag合金めっきを施すことにより、銅からなる板状体の表面に粒状にSn-Ag合金が析出し、めっき時間が経過するとともに、板状体の表面に析出する粒が成長していることがわかる。なお、図中に表面に析出したSn-Ag合金のAgの含有量を示した。

0025

図12は、めっき時間0s、1min、5minのときのめっき膜の断面SEM像である。めっき時間5minの断面SEM像を見ると、めっき膜の内部にもSn-Ag合金が析出していることがわかる。

0026

図13は置換Sn-Ag合金めっきにより析出したSn-Agの析出量の時間経過を示したグラフである。めっき開始後、120秒経過までは徐々にSn-Agの析出量が増大するのに対し、120秒経過後はさほどSn-Agの析出量が増大しない傾向が見られる。

0027

図14は置換Sn-Ag合金めっきを施したサンプルについてのXRD測定結果を示す。めっき開始後、10s、30s程度でSn-Ag合金(Ag3Sn)が析出している。また、めっき時間が経過するとともにSn-Ag合金の析出量が増大することがわかる。なお、XRD測定結果から、めっき膜中にSn(Cu6Sn5)も析出していることがわかる。

0028

(電解Sn-Ag合金めっき)
銅三次元ナノ構造体を形成した被めっき物(Cu板)に電解めっき法により、電解Sn-Ag合金めっきを施す実験を行った。銅三次元ナノ構造体は下記のめっき条件により形成した。
めっき浴CuSO4・5 H2O :0.85 M H2SO4 :0.55 M
添加剤ポリアクリル酸(PA-5000) :3.0×10-4M
電流規制法電流密度:1Adm-2通電量:34C、14C
アノード:含リンCu板カソード:純Cu板
温度:室温攪拌なし
上記条件は置換Snめっきで使用した銅三次元ナノ構造体のめっき条件と通電量のみ、異なる。

0029

銅三次元ナノ構造体を形成したCu板に、下記のめっき条件により電解Sn-Agめっきを施した。
めっき浴K4P2O7:1M Sn2P2O7:0.25MKI:2M AgI:0.02M
電流規制法電流密度:0.07Adm-2 温度:室温通電量:7C

0030

図15は、上記条件で銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Agめっきを施したサンプルの表面SEM像であり、図16は断面SEM像である。通電量34Cと14Cの2種類の銅三次元ナノ構造体を形成したサンプルについて示している。
図15、16から、銅三次元ナノ構造体の銅からなる板状体の表面に粒状に析出物(Sn-Ag)が付着していることがわかる。銅三次元ナノ構造体の表面に付着しているSn-Ag析出物は、三次元の複雑な形態となっている。
図17に、銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Ag合金めっきを施す前後の断面SEM像を示す。上記条件で電解Sn-Ag合金めっきを施したサンプルは、銅三次元ナノ構造体の内部にまでSn-Ag合金が析出していることがわかる。

0031

図18は、電解Sn-Ag合金めっきを施したサンプルのXRD試験結果を示す。図18上段のグラフがめっきを施す前のサンプル、下段のグラフが電解Sn-Ag合金めっきを施した後のサンプルのグラフである。電解Sn-Agめっきを施したことにより、Sn-Ag合金(Ag3Sn)が析出したことがわかる。

0032

図19は、銅三次元ナノ構造体に電解Sn-Ag合金めっきを施したサンプルを負極材に使用して、2電極式コインセルを用いて充放電サイクル試験を行った結果を示す。充放電試験の結果は、1stサイクルから5thサイクルまで充放電試験を行った結果、充放電特性が劣化しない結果が得られ、良好な充放電特性が改善できる可能性を示している。
図15、16を見ると、板状体の表面に析出したSn-Ag合金は、めっきの深部よりもめっきの表面部分により多く析出しているように見える。充放電試験結果は、めっきの表面部分にSn-Ag合金が析出していても、Sn-Ag合金の固着性が良好であること、銅三次元ナノ構造体の緩衝作用により、Sn-Ag合金の剥落が防止されることを示唆する。

0033

(電解Snめっき)
電解めっき法により、銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施す実験を行った。銅三次元ナノ構造体は、下記のめっき条件により形成した。
めっき浴CuSO4・5 H2O :0.5 M H2SO4 :0.85 M
添加剤ポリアクリル酸(PA-5000) :3.0×10-4M
電流規制法電流密度:1Adm-2通電量:38C
アノード:Cu板カソード:Cu板(3×3.3cm2)
温度:25±1℃
時間:380sec

0034

銅三次元ナノ構造体を形成したCu板に下記のめっき条件により電解Snめっきを施した。
カソード:銅三次元ナノ構造体を形成したCu板(3×3.3cm2)
アノード:Sn板
めっき浴K4P2O7:1.0M Sn2P2O7:0.25M PEG-600:0.002M HCHO:0.005M
電流規制法電流密度:0.1Adm-2通電量:3C(理論厚さ0.25μm)
時間:300sec
温度:25±1℃

0035

図20は上記電解Snめっき条件により電解Snめっきを施したサンプルの表面(銅三次元ナノ構造体の表面)のSEM像である。銅三次元ナノ構造体の表面にSnが塊状に析出している状態は観察されない。
図21は電解Snめっきを施した銅三次元ナノ構造体の断面SEM像である。基材の銅板上に銅三次元ナノ構造体が形成され、断面方向から見てもSnが塊状に析出している状態は観察されない。
図22はサンプルの断面元素マッピングの測定結果を示す。図22(a)が断面SEM像、図22(b)がCuの断面マッピング、図22(c)がSnの断面マッピングである。この元素マッピングの測定結果は、銅三次元ナノ構造体の内部に均一にスズが析出していることを示す。
この実験結果は、上述した方法により、銅三次元ナノ構造体に内部を含めて均一にSnが析出されたことを示している。

0036

図23は、銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施したサンプルを負極に使用した2電極式コインセルを使用し、充放電速度を0.5C、1.0C、2.0C、5.0Cとして充放電試験を行った結果を示す。図23に示すように、充放電速度が増大すると放電容量は低下するが、300サイクル経過時であっても放電容量は安定している。
図24は、上記試験とは別のサンプルについて、充放電速度を5Cとして2000サイクルの充放電試験を行った結果を示す。放電容量は開始直後に200mAh/g程度に低下した後、徐々に増大し、2000サイクル経過後も400mAh/g程度の容量を維持している。
図25は、充放電容量の上限を600mAh/gに制限して300サイクルまで充放電試験を行った結果を示す。図25に示すように、300サイクル経過時まで完全に安定した放電容量が得られ、300サイクル経過時における充放電特性も劣化していない。

0037

このように、銅三次元ナノ構造体に電解Snめっきを施した負極を使用することにより充放電特性が改善され、充放電を繰り返した場合でも特性が劣化しなかった理由としては、活物質としてSnを利用することによりリチウムイオン吸排作用が効率的になされるようになったこと、リチウムイオンを吸排することでSnが膨張−収縮する作用が銅三次元ナノ構造体の緩衝作用によって効果的に緩和されるとともに、銅の板状体が交錯した内部の隙間にSnが包含されることにより、負極からSnが剥落する問題が抑制されたためと考えられる。

0038

なお、上記実験例では、銅三次元ナノ構造体の板状体の表面にSnあるいはSn-Ag合金を析出した例を示したが、これら以外のSn系めっき(Sn-Cu合金めっき、Sn-Bi合金めっき、Sn-Pb合金めっき)についても同様な方法によってめっきすることが可能である。

0039

本発明に係る置換Snめっき、置換Sn-Ag合金めっき、あるいは電解Snめっき、電解Sn-Ag合金めっきによれば、SnあるいはSn-Ag合金を、銅からなる三次元ナノ構造体の板状体の表面と構造体の内部に析出させることができるから、SnあるいはSn-Ag合金が膨張・収縮を繰り返しても、ナノ構造体が備える空隙の作用により、SnあるいはSn-Ag合金の膨張・収縮作用が緩和され、SnあるいはSn-Ag合金が剥落することを効果的に防止することが可能であり、リチウムイオン電池の負極材として有効に利用することが可能である。
また、銅三次元ナノ構造体はきわめて比表面積が大きいから、銅三次元ナノ構造体にSnあるいはSn-Ag合金を取り込むことにより、リチウムイオンの吸蔵排出作用を効率的に行うことができ、高効率の負極材として好適に利用することが可能である。

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