図面 (/)

技術 タンパク質、融合タンパク質の製造法及び精製法

出願人 国立大学法人岡山大学
発明者 飛松孝正山本祐也
出願日 2014年9月11日 (6年2ヶ月経過) 出願番号 2014-185689
公開日 2016年4月21日 (4年7ヶ月経過) 公開番号 2016-054718
状態 特許登録済
技術分野 微生物による化合物の製造 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 弱アルカリ性条件 弱アルカリ性条件下 フタル酸緩衝液 バンド位置 ペニシリンアシラーゼ DNB アスパラギン酸デカルボキシラーゼ カテコールオキシダーゼ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年4月21日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (10)

課題

組換えタンパク質不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造することが可能な手法を提供することを目的とする。

解決手段

(a)調節可能な会合力を有するペプチド可溶性タンパク質N末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、(b)形質転換体を回収し、ペプチド領域同士が強い会合力を発揮する条件の水溶液中にて細胞破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、(c)該沈殿画分を、ペプチド領域同士が会合能を失うか又は会合力が弱くなる水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程、を含む、組換えタンパク質の製造方法。

概要

背景

従来、生物関連製品の主要部分であるタンパク質酵素の製造は、それをコードする遺伝子が単離されている場合にはこれを大腸菌などの微生物に導入し、目的のタンパク質や酵素を発現蓄積させるといった生物学的手法が利用されている。

しかしながら、異種タンパク質微生物細胞内で発現/蓄積させた際に不成功に終わるケースも多い。その原因は生成効率を挙げようとした場合に特に顕著である。すなわち、生合成された異種タンパク質が微生物細胞内で不溶性封入体を形成し、不活性なタンパク質として蓄積する場合があり、活性を保持する目的のタンパク質や酵素を得ることができないという問題があった。

当該問題を解決すべく、Bacillus thuringiensisが生産するCryタンパク質C末端ペプチドを目的のタンパク質に付加し、この融合タンパク質を大腸菌などの微生物に生産させることによって、当該融合タンパク質は活性を保持したまま微生物細胞内で封入体として蓄積でき、また当該融合タンパク質をアルカリ性水溶液緩衝液)に可溶化させ、活性を保持したまま回収できることが報告されている(特許文献1)。

しかしながら、当該手法は融合タンパク質の可溶化のためにアルカリ性の水溶液を用いていることから、この処理の過程不活化されるタンパク質が少なくない。

また別の方法として、親和性タグ(例えばヒスチジンタグ等)を目的のタンパク質に付加し、この融合タンパク質を大腸菌などの微生物に生産させ、そして当該融合タンパク質をアフィニティーカラムを用いて精製し、活性を保持したまま目的のタンパク質を回収する方法が報告されている(特許文献2)。

しかしながら、アフィニティーカラムは非常に高価であり、また該融合タンパク質のアフィニティーカラムへの吸着及びアフィニティーカラムからの溶出は長時間を要することから、当該手法は効率的な手法とはいえなかった。

したがって、当該分野においては依然として、目的のタンパク質や酵素を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造する方法が切望されている。

一方、腸内細菌がもつ、ジオールデヒドラターゼの遺伝子(非特許文献1)を大腸菌に大量発現させると、当該酵素は低溶解性でほとんどの酵素が活性を保持したまま沈殿画分中に存在・回収することが可能であるが、溶液に1%Brij35を加えることにより当該酵素を可溶化できることが示されている(非特許文献2)。

このジオールデヒドラターゼの低溶解性という性質には、当該酵素を構成するα、β及びγのサブユニットのうち、βサブユニットのN末端20アミノ酸残基とγサブユニットのN末端16アミノ酸残基が必須であることが確認されている(非特許文献3)。

また、本発明者らはこれまでに、ジオールデヒドラターゼの等機能酵素で、ジオールデヒドラターゼと高いアミノ酸配列相同性をもつ、高溶解性の酵素であるグリセロールデヒドラターゼについて、当該酵素を構成するα、β及びγのサブユニットのうち、βサブユニットのN末端とγサブユニットのN末端を、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基とγサブユニットのN末端33アミノ酸残基でそれぞれ改変することによって、当該グリセロールデヒドラターゼを低溶解性化できることを確認し、報告している(特許文献3、非特許文献4)。

概要

組換えタンパク質を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造することが可能な手法を提供することを目的とする。(a)調節可能な会合力を有するペプチドを可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、(b)形質転換体を回収し、ペプチド領域同士が強い会合力を発揮する条件の水溶液中にて細胞破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、(c)該沈殿画分を、ペプチド領域同士が会合能を失うか又は会合力が弱くなる水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程、を含む、組換えタンパク質の製造方法。なし

目的

本発明は、組換えタンパク質を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造することが可能な手法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

組換えタンパク質の製造方法であって、(a)調節可能な会合力を有するペプチド可溶性タンパク質N末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、(b)形質転換体を回収し、ペプチド領域同士が強い会合力を発揮する条件の水溶液中にて細胞破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、(c)該沈殿画分を、ペプチド領域同士が会合能を失うか又は会合力が弱くなる水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程、を含む、上記方法。

請求項2

以下の工程(a)〜(c)を含む、請求項1に記載の方法:(a)ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチドとジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドからなる群から選択されるペプチドが、可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、(b)形質転換体を回収し、弱酸性中性域pH値を有する塩の水溶液中にて細胞を破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、(c)該沈殿画分を中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程。

請求項3

融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端又はC末端いずれか一方に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加され、ならびに該可溶性タンパク質のC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、請求項1又は2に記載の方法。

請求項5

融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチドが付加され、ならびに該可溶性タンパク質のC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、請求項4に記載の方法。

請求項6

工程(b)において、回収された形質転換体を、pH5〜pH8を有する塩の水溶液中にて細胞を破砕する、請求項2〜5いずれか1項に記載の方法。

請求項7

工程(b)における塩の水溶液が50〜3000mMの塩を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。

請求項8

工程(c)において、回収された沈殿画分体を、pH6〜pH10を有する水溶液中に懸濁する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。

請求項9

工程(c)における水溶液が、0.1〜300mMの濃度にて塩を含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

工程(c)における水溶液が界面活性剤を含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット又はγのサブユニットに由来するペプチドを付加することにより、溶解性改変された可溶性タンパク質の製造及び精製方法に関する。

背景技術

0002

従来、生物関連製品の主要部分であるタンパク質酵素の製造は、それをコードする遺伝子が単離されている場合にはこれを大腸菌などの微生物に導入し、目的のタンパク質や酵素を発現蓄積させるといった生物学的手法が利用されている。

0003

しかしながら、異種タンパク質微生物細胞内で発現/蓄積させた際に不成功に終わるケースも多い。その原因は生成効率を挙げようとした場合に特に顕著である。すなわち、生合成された異種タンパク質が微生物細胞内で不溶性封入体を形成し、不活性なタンパク質として蓄積する場合があり、活性を保持する目的のタンパク質や酵素を得ることができないという問題があった。

0004

当該問題を解決すべく、Bacillus thuringiensisが生産するCryタンパク質C末端ペプチドを目的のタンパク質に付加し、この融合タンパク質を大腸菌などの微生物に生産させることによって、当該融合タンパク質は活性を保持したまま微生物細胞内で封入体として蓄積でき、また当該融合タンパク質をアルカリ性水溶液緩衝液)に可溶化させ、活性を保持したまま回収できることが報告されている(特許文献1)。

0005

しかしながら、当該手法は融合タンパク質の可溶化のためにアルカリ性の水溶液を用いていることから、この処理の過程不活化されるタンパク質が少なくない。

0006

また別の方法として、親和性タグ(例えばヒスチジンタグ等)を目的のタンパク質に付加し、この融合タンパク質を大腸菌などの微生物に生産させ、そして当該融合タンパク質をアフィニティーカラムを用いて精製し、活性を保持したまま目的のタンパク質を回収する方法が報告されている(特許文献2)。

0007

しかしながら、アフィニティーカラムは非常に高価であり、また該融合タンパク質のアフィニティーカラムへの吸着及びアフィニティーカラムからの溶出は長時間を要することから、当該手法は効率的な手法とはいえなかった。

0008

したがって、当該分野においては依然として、目的のタンパク質や酵素を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造する方法が切望されている。

0009

一方、腸内細菌がもつ、ジオールデヒドラターゼの遺伝子(非特許文献1)を大腸菌に大量発現させると、当該酵素は低溶解性でほとんどの酵素が活性を保持したまま沈殿画分中に存在・回収することが可能であるが、溶液に1%Brij35を加えることにより当該酵素を可溶化できることが示されている(非特許文献2)。

0010

このジオールデヒドラターゼの低溶解性という性質には、当該酵素を構成するα、β及びγのサブユニットのうち、βサブユニットのN末端20アミノ酸残基とγサブユニットのN末端16アミノ酸残基が必須であることが確認されている(非特許文献3)。

0011

また、本発明者らはこれまでに、ジオールデヒドラターゼの等機能酵素で、ジオールデヒドラターゼと高いアミノ酸配列相同性をもつ、高溶解性の酵素であるグリセロールデヒドラターゼについて、当該酵素を構成するα、β及びγのサブユニットのうち、βサブユニットのN末端とγサブユニットのN末端を、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基とγサブユニットのN末端33アミノ酸残基でそれぞれ改変することによって、当該グリセロールデヒドラターゼを低溶解性化できることを確認し、報告している(特許文献3、非特許文献4)。

0012

WO2010/013789
EP0282042
特開2006−296420号公報

先行技術

0013

Tobimatsu Tら、J.Biol.Chem.,270,7142−7148(1995)
Tobimatsu Tら、Arch.Biochem.Biophys.347,132−140(1997)
Tobimatsu Tら、Biosci.Biotechnol.Biochem.,69,455−462(2005)
Tobimatsu Tら、Arch.Microbiol,191,199−206(2009)

発明が解決しようとする課題

0014

本発明は、組換えタンパク質を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造することが可能な手法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

いくつかの可溶性タンパク質は塩析などによる沈殿化と可溶化を繰り返すことで容易に精製できることが知られているが、この手法は限られたタンパク質に対してのみ用いることができる手法である。この塩析などによる可溶性タンパク質の沈殿化は可溶性タンパク質の集合による巨大分子化によるものであることから、タンパク質が安定に存在できる中性域から弱アルカリ性の条件下で可溶性タンパク質の解離会合を制御する手段を開発すれば、可溶性タンパク質の集合を制御することで沈殿化と洗浄、可溶化という単純な操作で可溶性タンパク質を簡便かつ効率的に回収する手法を開発できると考え開発に取り組んだ。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する20アミノ酸残基を少なくとも含むペプチドとジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の連続する16アミノ酸残基を少なくとも含むペプチドからなる群から選択されるペプチド同士が会合する能力をもち、その会合の強さが塩濃度及び/又は中性域から弱アルカリ性のpH値によって大きく変化することを見出した。さらに、それらを付加した可溶性タンパク質の解離会合も塩濃度及び/又は中性域から弱アルカリ性のpH値によって制御できることを見出した。これらの発想発見とを集約することにより、つまり、調節可能な会合力を有するこれらのペプチドを可溶性タンパク質のN末端及び/又はC末端に付加することによって、当該タンパク質の水溶液に対する溶解性を、塩濃度及び/又は中性域から弱アルカリ性のpH値によって調節することができ、これによって当該タンパク質を不活性化することなく、簡便かつ効率的に回収できる、本発明を完成するに至った。

0016

すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1]組換えタンパク質の製造方法であって、
(a)調節可能な会合力を有するペプチドを可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、
(b)形質転換体を回収し、ペプチド領域同士が強い会合力を発揮する条件の水溶液中にて細胞破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、
(c)該沈殿画分を、ペプチド領域同士が会合能を失うか又は会合力が弱くなる水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程、
を含む、上記方法。
[2] 以下の工程(a)〜(c)を含む、[1]の方法:
(a)ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチドとジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドからなる群から選択されるペプチドが、可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、
(b)形質転換体を回収し、弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液中にて細胞を破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、
(c)該沈殿画分を中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程。
[3] 融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端又はC末端いずれか一方に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、[1]又は[2]の方法。
[4] 融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加され、ならびに該可溶性タンパク質のC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、[1]又は[2]の方法。
[5] 融合タンパク質が、可溶性タンパク質のN末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチドが付加され、ならびに該可溶性タンパク質のC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチド又はγサブユニットのN末端の連続する60アミノ酸残基を含むペプチドが付加されてなる、[4]の方法。
[6] 工程(b)において、回収された形質転換体を、pH5〜pH8を有する塩の水溶液中にて細胞を破砕する、[2]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 工程(b)における塩の水溶液が50〜3000mMの塩を含む、[2]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 工程(c)において、回収された沈殿画分体を、pH6〜pH10を有する水溶液中に懸濁する、[2]〜[7]のいずれかの方法。
[9] 工程(c)における水溶液が、0.1〜300mMの濃度にて塩を含む、[2]〜[8]のいずれかの方法。
[10] 工程(c)における水溶液が界面活性剤を含む、[2]〜[9]のいずれかの方法。

発明の効果

0017

本発明によれば、組換えタンパク質を不活性化することなく、簡便かつ効率的に製造することが可能な手法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0018

図1は、(A)N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したICDHの発現ベクター[pET21b(Nb60−ICDH−Nb60)]、並びに(B)N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したGSTの発現ベクター[pNEX(Nb60−GST−Nb60)]の模式図である。
図2は、大腸菌で大量発現させた大腸菌野生型イソシトレートデヒドロゲナーゼ(ICDH)の、50mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)中における可溶性及び不溶性の解析結果を示す写真図である。各レーンは左より順に以下のとおりである。H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)。ICDHのバンド位置を矢印で示す。
図3は、大腸菌で大量発現させた、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドが付加された大腸菌キメラICDHの50mMリン酸カリ緩衝液中における可溶性及び不溶性の解析結果を示す写真図である。各レーンは、M:タンパク質分子マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)である。(1):リン酸カリ緩衝液(pH8.0)中で細胞を破砕したもの、(2)リン酸カリ緩衝液(pH7.0)中で細胞を破砕したもの、(3)リン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞を破砕したもの。大腸菌キメラICDHのバンド位置を矢印で示す。
図4は、大腸菌で大量発現させた、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドが付加された大腸菌キメラICDHの沈殿画分(不溶性画分)からの精製結果を示す写真図である。(A)の各レーンは左より順に以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)、w1:洗浄画分1、w2:洗浄画分2、W−P:洗浄後の沈殿画分。(B)の各レーンは左より順に以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:50mM炭酸カリ緩衝液(pH9.0)による抽出画分1、ex2:50mM炭酸カリ緩衝液(pH9.0)による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分。(C)の各レーンは左より順に以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:10mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)による抽出画分1、ex2:10mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分、矢印:大腸菌キメラICDHのバンド位置をそれぞれ示す。
図5は、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドが付加された大腸菌キメラICDHを大量発現させた大腸菌から調製した、洗浄後の沈殿画分(不溶性画分)から、10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)でキメラICDHを抽出する時に使用する溶液の量の効果の解析結果を示す写真図である。各レーンは、M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)、w1:洗浄画分1、w2:洗浄画分2、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)による抽出画分1、ex2:10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分である。(1)沈殿の3倍体積の緩衝液を用いて抽出、(2)沈殿の14倍体積の緩衝液を用いて抽出、矢印:大腸菌キメラICDHのバンドの位置を示す。
図6は、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドが付加された大腸菌キメラICDHを大量発現させた大腸菌から調製した、洗浄後の沈殿画分(不溶性画分)からの抽出において、1%Brij35による抽出促進効果の解析結果を示す写真図である。(A)の各レーンは左より順に以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)、w1:洗浄画分1、w2:洗浄画分2、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:100mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)/1%Brij35による抽出画分1、ex2:100mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)/1%Brij35による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分。(B)の各レーンは左より順に以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:100mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)による抽出画分1、ex2:100mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分。
図7は、大腸菌で大量発現させた野生型グルタチオン−S−転移酵素(GST)の50mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)中における可溶性及び不溶性の解析結果を示す写真図である。各レーンは左より順に以下のとおりである。H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)。タンパク質分子量マーカーのサイズと位置をゲルの左に示す。GSTのバンド位置を矢印で示す。
図8は、大腸菌で大量発現させた、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドを有するキメラGST酵素の各50mM緩衝液中における可溶性及び不溶性の解析結果を示す写真図である。(1):リン酸カリ緩衝液(pH7.0)中で細胞を破砕したもの、(2)リン酸カリ緩衝液(pH6.5)中で細胞を破砕したもの、(3)リン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞を破砕したもの。各レーンは、M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)である。矢印はキメラGST酵素のバンド位置を示す。
図9は、大腸菌で大量発現させた、N末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドを有し、かつC末端にジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドを有するキメラGST酵素の各50mM緩衝液中における可溶性及び不溶性の解析結果を示す写真図である。(1):リン酸カリ緩衝液(pH7.0)中で細胞を破砕したもの、(2)リン酸カリ緩衝液(pH6.5)中で細胞を破砕したもの、(3)リン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞を破砕したもの。各レーンは、M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)である。矢印はキメラGST酵素のバンド位置を示す。
図10は、大腸菌で大量発現させた、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドを有するキメラGSTの沈殿画分(不溶性画分)からの精製結果を示す写真図である。各レーンは以下のとおりである。M:タンパク質分子量マーカー(サイズをゲルの左に記す)、H:細胞破砕液、S:上清画分(可溶性画分)、P:沈殿画分(不溶性画分)、w1:洗浄画分1、w2:洗浄画分2、W−P:洗浄後の沈殿画分、ex1:10mMリン酸カリ緩衝液による抽出画分1、ex2:10mMリン酸カリ緩衝液による抽出画分2、Ex−P:抽出後に残った沈殿画分。(1)pH8.0の緩衝液で抽出したもの、(2)pH7.0の緩衝液で抽出したもの。矢印はキメラGST酵素のバンド位置を示す。

0019

本発明は、組換えタンパク質である可溶性タンパク質の効率的な製造方法に関するものであって、調節可能な自己会合力を有するペプチドが可溶性タンパク質に付加されてなる融合タンパク質を、ペプチドの自己会合力を調節して、沈殿化及び可溶化して回収することを含む。

0020

本発明は、以下の工程(a)〜(c)を含む:
(a)調節可能な会合力を有するペプチドを可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、
(b)形質転換体を回収し、ペプチド領域同士が強い会合力を発揮する条件の水溶液中にて細胞を破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、
(c)該沈殿画分を、ペプチド領域同士が会合能を失うか又は会合力が弱くなる水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程。

0021

一実施形態において、本発明は以下の工程(a)〜(c)を含む:
(a)ジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の連続する少なくとも20アミノ酸残基を含むペプチドとジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の連続する少なくとも16アミノ酸残基を含むペプチドからなる群から選択されるペプチドが、可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、
(b)形質転換体を回収し、弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液中にて細胞を破砕し、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、
(c)該沈殿画分を中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液中に懸濁し、該融合タンパク質を抽出し、可溶性画分中にある該融合タンパク質を回収する工程。

0022

本発明において「可溶性タンパク質」とは、水溶性又は親水性のタンパク質であればよく、特に限定はされず、いずれの可溶性タンパク質であってもよい。また、可溶性タンパク質には、水溶性又は親水性のタンパク質である限り、一以上のタンパク質及び/又はペプチドをさらに含むキメラタンパク質も含まれる。本発明における「可溶性タンパク質」としては、好ましくは2量体以上のタンパク質、より好ましくは少なくともホモ2量体以上のタンパク質を構成する単量体を利用することができる。単量体が多量体化することによって、付加されたジオールデヒドラターゼのβサブユニット又はγサブユニットに由来するペプチドの効果が高まり、当該タンパク質の回収がより容易となる。本発明において利用可能な「可溶性タンパク質」としては、例えば、グルコースオキシダーゼヘミセルラーゼラクターゼ、L−アミノ酸アミノ基転移酵素芳香族アミノ酸アミノ基転移酵素や分岐鎖アミノ酸アミ基転移酵素を含む)、D−アミノ酸アミノ基転移酵素、カテコールオキシダーゼチロシナーゼβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−キシロシダーゼデアミダーゼグルコースイソメラーゼグルコース−6−リン酸イソメラーゼペニシリンアシラーゼリパーゼアルコールデヒドロゲナーゼアルデヒドデヒドロゲナーゼα−グルコシダーゼα‐アミラーゼグルコアミラーゼプルラナーゼセルラーゼデオキシリボヌクレアーゼデキストラナーゼフィターゼパーオキシダーゼDNAポリメラーゼアスパルターゼグルタミンアスパラギン合成酵素アスパラギン酸デカルボキシラーゼチロシンフェノールリアーゼトリプトファナーゼ、シスラインスルヒドラーゼグリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼトリプトファン合成酵素トリアシルグリセロールリパーゼ、αガラクトシダーゼβガラクトシダーゼペクチナーゼグルタミナーゼ等が挙げられるが、これらに限定はされない。

0023

本発明において、「調節可能な自己会合力を有するペプチド」としては、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット及び/又はγサブユニットに由来するペプチドが挙げられる。

0024

本発明において、「ジオールデヒドラターゼ」とは、当技術分野通常用いられる意味を有し、すなわち、1,2−ジオール脱水して対応するアルデヒド及び水へ変換する反応を、アデノシルコバラミン補酵素B12)依存的に触媒する活性を有する酵素である。ジオールデヒドラターゼは、60kDa、30kDa及び19kDaの3つのサブユニット(それぞれαサブユニット、βサブユニット及びγサブユニット)を含む。ジオールデヒドラターゼにおいては、α、β、γサブユニットと補酵素が会合することにより、酵素活性が発揮される。

0025

ジオールデヒドラターゼは、上記酵素活性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属及びListeria属等に属する細菌に由来するものが挙げられる。

0026

本発明においては、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット及び/又はγサブユニットに由来するペプチドを、上記可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に付加することによって、可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させることができる。

0027

ジオールデヒドラターゼのβサブユニット及びγサブユニットのアミノ酸配列及び各サブユニットをコードする遺伝子の塩基配列は、公開されたデータベース、例えば、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)に登録されており(例えば、アクセッション番号:D45071等)、本発明においてはこれらを利用することができる。例えば、本発明において、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、また、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるものを利用することができる。

0028

ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドは、ジオールデヒドラターゼの低溶解性に関与することが公知である(Tobimatsu Tら、Biosci.Biotechnol.Biochem.,69,455−462(2005))、そのN末より連続する少なくとも20個のアミノ酸残基を含んでいればよく、当該ペプチドの大きさはアミノ酸残基の数にして25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、50個以上、55個以上、60個以上、65個以上、70個以上、80個以上、90個以上、100個以上、又はそれ以上の範囲より適宜選択することができる。

0029

好ましくは本発明において、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列における1〜25番目、1〜30番目、1〜40番目、1〜50番目、1〜60番目、1〜70番目、1〜80番目、1〜90番目、又は1〜100番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、特に好ましくは1〜60番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列(配列番号3)からなる。また、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドには、これらの特定のアミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失置換、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列からなり、かつ可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドや、前述の特定のアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有し、かつ可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドも含まれる。アミノ酸配列の比較は公知の手法によって行うことができ、例えば、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等を例えば、デフォルトの設定で用いて実施できる。

0030

ジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドは、ジオールデヒドラターゼの低溶解性に関与することが公知である(Tobimatsu Tら、前出)、そのN末より連続する少なくとも16個のアミノ酸残基を含んでいればよく、当該ペプチドの大きさはアミノ酸残基の数にして20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、50個以上、55個以上、60個以上、65個以上、70個以上、80個以上、90個以上、100個以上、又はそれ以上の範囲より適宜選択することができる。

0031

好ましくは本発明において、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列における1〜20番目、1〜25番目、1〜30番目、1〜40番目、1〜50番目、1〜60番目、1〜70番目、1〜80番目、1〜90番目、又は1〜100番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、特に好ましくは1〜60番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列(配列番号4)からなる。また、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドには、これらの特定のアミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列からなり、かつ可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドや、前述の特定のアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有し、かつ可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドも含まれる。

0032

本発明における融合タンパク質は、可溶性タンパク質のN末端及びC末端の両方又はいずれか一方に、上記ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチド及びγサブユニットに由来するペプチドより選択されるペプチドが付加されてなる。N末端及びC末端に付加されるペプチドの種類(由来、長さ、配列等)はそれぞれ独立して選択することができ、例えば、N末端及びC末端が共にβサブユニット(又はγサブユニット)に由来するペプチドであってもよいし、N末端はβサブユニットに由来するペプチドであり、かつC末端はγサブユニットに由来するペプチドであってもよいし、N末端はγサブユニットに由来するペプチドであり、かつC末端はβサブユニットに由来するペプチドであってもよく、また、N末端及びC末端に付加されるペプチドの長さや配列はそれぞれ独立して選択することができ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、本発明における融合タンパク質は、N末端にβサブユニットに由来するペプチド又はγサブユニットに由来するペプチドを、かつC末端にβサブユニットに由来するペプチド又はγサブユニットに由来するペプチドをそれぞれ有し、より好ましくは、N末端にβサブユニットに由来するペプチドを、かつC末端にβサブユニットに由来するペプチドをそれぞれ有する。

0033

本発明における融合タンパク質は、一般的な遺伝子組み換え手法を用いて製造することができる。すなわち、可溶性タンパク質をコードする遺伝子のN末側及びC末側のそれぞれ又はいずれか一方に、ジオールデヒドラターゼの上記サブユニット由来のペプチドをコードする遺伝子を連結してなる、融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを作製し、これを用いて宿主形質転換し、得られた形質転換体を培養して当該融合タンパク質を発現させることによって行うことができる。

0034

融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターは、遺伝子工学的手法を用いて製造することができる。例えば、可溶性タンパク質及び、ジオールデヒドラターゼを発現することが公知である細胞や細菌より、例えばMarmur法(Marmur J、J.Mol.Biol.,3,208−218(1961))により全DNAを抽出する。公開されたデータベース、例えば、GenBankにアクセスすることによって入手可能である可溶性タンパク質、ジオールデヒドラターゼのサブユニットの公知塩基配列を基にプライマーを設計し、上記DNAを鋳型としてPCRを行い、可溶性タンパク質をコードする遺伝子、ジオールデヒドラターゼの上記サブユニット由来のペプチドをコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることができる。

0035

例えば、本発明において、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットをコードする遺伝子は、配列番号5で表される塩基配列からなり、また、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットをコードする遺伝子は、配列番号6で表される塩基酸配列からなるものを利用することができる。

0036

好ましくは本発明において、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドをコードする遺伝子は、当該ペプチドのN末から1〜25番目、1〜30番目、1〜40番目、1〜50番目、1〜60番目、1〜70番目、1〜80番目、1〜90番目、又は1〜100番目のアミノ酸残基からなるペプチドをコードする塩基配列を含み、特に好ましくは1〜60番目のアミノ酸残基からなるペプチドをコードする塩基配列(配列番号7)からなる。また、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドをコードする遺伝子には、可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドをコードする限り、前述の特定の塩基配列において1〜20個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入された塩基配列を有するものや、前述の特定の塩基配列の全部もしくは一部と相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するものや、前述の特定の塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性する塩基配列を有するものも含まれる。

0037

また、好ましくは本発明において、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドをコードする遺伝子は、当該ペプチドのN末から1〜20番目、1〜25番目、1〜30番目、1〜40番目、1〜50番目、1〜60番目、1〜70番目、1〜80番目、1〜90番目、又は1〜100番目のアミノ酸残基からなるペプチドをコードする塩基配列を含み、特に好ましくは1〜60番目のアミノ酸残基からなるペプチドをコードする塩基配列(配列番号8)からなる。さらに、また、ジオールデヒドラターゼのγサブユニットに由来するペプチドをコードする遺伝子には、可溶性タンパク質の弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液に対する溶解性を低減させる機能を有するポリペプチドをコードする限り、前述の特定の塩基配列において1〜20個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入された塩基配列を有するものや、前述の特定の塩基配列の全部もしくは一部と相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するものや、前述の特定の塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性する塩基配列を有するものも含まれる。

0038

なお、ここで塩基配列の一部とは、各塩基配列の一部分の塩基配列であって、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせるのに十分な塩基配列の長さを有するものであり、例えば、少なくとも50塩基、好ましくは少なくとも75塩基、より好ましくは少なくとも100塩基の配列である。また、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、すなわち、各塩基配列に対し高い配列同一性(80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドがハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、このような条件は、当該分野において周知慣用な手法、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法プラークハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ法又はサザンブロットハイブリダイゼーション法などにおいて、具体的には、ポリヌクレオチドを固定化したメンブランを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline SodiumCitrate;150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)溶液を用い、65℃でメンブランを洗浄することにより達成できる。また、塩基配列の比較は公知の手法によって行うことができ、例えば、上記BLAST等を例えば、デフォルトの設定で用いて実施できる。

0039

可溶性タンパク質をコードする遺伝子と、ジオールデヒドラターゼの上記サブユニット由来のペプチドをコードする遺伝子を所定の順序で連結することによって、融合タンパク質をコードする遺伝子を得ることができる。各遺伝子は隣接する遺伝子と直接連結してもよいし、リンカーをコードする遺伝子を介して、間接的に連結してもよい。リンカーは、トロンビンファクターXa等のプロテアーゼによって認識・切断され得る配列を有するものが好ましい。このようなリンカーを含めることによって、得られた融合タンパク質より、必要に応じて、ジオールデヒドラターゼのサブユニットに由来するペプチドを除去することができる。

0040

融合タンパク質をコードする遺伝子は、宿主に適合性を有する適当な発現ベクターに、プロモーター及び/又はその他の制御配列と機能し得るかたちで連結して挿入する。ここで「機能し得るかたちで連結して挿入する」とは、当該発現ベクターが導入された細胞において、プロモーター及び/又はその他の制御配列の制御の下、融合タンパク質が発現されるように、プロモーター及び/又はその他の制御配列を連結してベクターに組み込むことを意味する。

0041

発現ベクターは、宿主に適合性を有するものであればよく特に限定はされないが、例えば大腸菌での発現を目的とした場合は、lacZプロモーター(Ward et.al.,Nature 341:544−546,1989)、araBプロモーター(Better et.al.,Science 240:1041−1043,1988)、又はT7プロモーター等を有するベクターを例示することができ、pGEX−5X−1(GEヘルスケアバイオサイエンス)、「QIAexpress system」(キアゲン)、pEGFP、及びpET等が挙げられる。また、発現ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。

0042

他のベクターとしては、例えば哺乳動物由来の発現ベクター(例えばpcDNA3(ライフテクノロジーズ)や、pEGF−BOS(Nucleic Acids.Res.18(17):5322,1990)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac−to−BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えばpHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えばpZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば「Pichia Expression Kit」(ライフテクノロジーズ)、pNV11、SP−Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えばpPL608、pKTH50)等が挙げられる。

0043

CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulligan et.al.,Nature 277:108,1979)、MMLV−LTRプロモーター、EF1プロモーター(Mizushima et.al.,Nucleic AcidsRes.18:5322,1990)、CMVプロモーター等を持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば薬剤ネオマイシン、G418等)耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えばpMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13等が挙げられる。また、アデノウイルスベクター(例えばpAdexlcw)やレトロウイルスベクター(例えばpZIPneo)等も利用することができる。

0044

また、発現ベクターには複製開始点として、ポリオーマウィルスアデノウィルスウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のために、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。

0045

発現ベクターが導入される宿主としては特に制限はなく、例えば大腸菌や種々の真核細胞等を用いることが可能である。真核細胞を使用する場合、例えば動物細胞、植物細胞真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle,et.al.,Nature 291:358−340,1981)、あるいは昆虫細胞、例えばSf9、Sf21、Tn5が挙げられる。CHO細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr−CHO(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220,1980)やCHO K−1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 60:1275,1968)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。植物細胞としては、例えばニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が挙げられる。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が挙げられる。原核細胞を使用する場合、細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、例えばJM109、DH5α、HB101、XL1Blue、BL21等が挙げられ、その他、枯草菌等が挙げられる。

0046

宿主への発現ベクターの導入(形質転換)は公知の一般的な手法により行うことができ、例えば塩化カルシウム法エレクトロポレーション法(Chu,G.et.al.,Nucl.Acid Res.15:1311−1326,1987)、リン酸カルシウム法(Chen,C.and Okayama,H.Mol.Cell.Biol.7:2745−2752,1987)、DEAEデキストラン法(Lopata,M.A.et.al.,Nucl.AcidsRes.12:5707−5717,1984、Sussman,D.J.and Milman,G.Mol.Cell.Biol.4:1642−1643,1985)、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム)を用いた方法、リポフェクチン法(Derijard,B.Cell 7:1025−1037,1994、Lamb,B.T.et.al.,Nature Genetics5:22−30,1993、Rabindran,S.K.et.al.,Science 259:230−234,1993)、レトロウイルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウィルス法等により等の方法を用いることができる。

0047

得られた形質転換体は、宿主の培養に適した培地(例えば、pHは5.0〜8.0、好ましくは5.5〜7.5)中にて、例えば、温度は約10〜約80℃、好ましくは約15〜約50℃、さらに好ましくは約30℃〜約40℃にて、5分〜96時間、好ましくは10分〜72時間、培養することができる。必要に応じて培地の交換通気攪拌を加えてもよい。

0048

培養終了後、形質転換体を弱酸性〜中性域のpH値を有する適当な塩の水溶液に懸濁させて充分破砕した後、懸濁液を遠心分離し、融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する。

0049

「塩」としては、例えば、陽イオンアルカリ金属(例えば、リチウムナトリウムカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウムマグネシウム等)、アンモニウム等であり、陰イオン硫酸イオンリン酸イオン酢酸イオンクエン酸イオン炭酸イオン塩化イオン硝酸イオン、等である塩が挙げられ、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウムリン酸マグネシウム硫酸リチウム硫酸ナトリウム硫酸マグネシウム硫酸アンモニウム塩化リチウム塩化ナトリウム塩化カリウム等が挙げられる。弱酸性〜中性域のpH値を有する「塩の水溶液」としては、上記塩を含む水溶液であればよく特に限定されないが、例えば、緩衝液として用いられる、リン酸塩緩衝液リン酸ナトリウム緩衝液リン酸カリウム緩衝液)、酢酸緩衝液クエン酸緩衝液マロン酸緩衝液、フタル酸緩衝液フマル酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液グリセロールリン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、ホウ酸緩衝液酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、MES(2−(N−Morpholino)ethanesulfonic acid)緩衝液、Bistris(Bis(2−hydroxyethyl)imino−tris−(hydroxymethyl)methane)緩衝液、PIPES(Piperazine−N−N’−bis(2−ethane−sulfonic acid))緩衝液、MOPS(3−(N−Morpholine)propanesulfonic acid)緩衝液、HEPES(N−2−Hydroxyethylpiperazine−N’−ethane sulfonic acid)緩衝液、等も利用することができる。塩の水溶液のpH値は、弱酸性〜中性域であればよく、好ましくは中性域より選択することができ、例えば、pH3.0〜8.0、好ましくは5.0〜8.0、さらに好ましくは6.5〜8.0の範囲より選択することができる(4℃における測定値)。塩の水溶液のpH値をこれらの範囲とすることによって、融合タンパク質の水溶液中への溶解を低減することができる。塩の水溶液のpH値は、融合タンパク質の大部分(例えば、懸濁液中の融合タンパク質の総量の5割を超える量、6割以上、7割以上、8割以上、9割以上、又はそれ以上の量)が沈殿画分中に得られる値を選択することができる。

0050

また、水溶液の塩の濃度は、例えば、50mM〜5000mM、好ましくは、50〜3000mM、さらに好ましくは50mM〜1000mMの範囲より選択することができる。弱酸性〜中性域の塩の水溶液の塩濃度を高めることによって、融合タンパク質が沈殿画分中に得られる量を増すことができる。水溶液の塩濃度は、融合タンパク質の大部分(例えば、懸濁液中の融合タンパク質の総量の5割を超える量、6割以上、7割以上、8割以上、9割以上、又はそれ以上の量)が沈殿画分中に得られる値を選択することができる。

0051

形質転換体の破砕は、一般的な細胞破砕方法を用いることができ、例えば、超音波フレンチプレス乳鉢ホモジナイザーガラスビーズ等を用いた処理方法を利用することができる。

0052

弱酸性〜中性域のpH値を有する塩の水溶液中にて破砕した形質転換体を含む懸濁液を遠心分離することによって、水溶液中への溶解性が低い融合タンパク質を沈殿画分中に回収することができると共に、この操作により可溶性成分夾雑物)は除去することができる。必要に応じて、得られた沈殿画分を、再び同じ水溶液中に懸濁して遠心分離し、沈殿画分を回収する操作(洗浄操作)を一又は複数回行ってもよい。

0053

次いで、得られた沈殿画分を、中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液に懸濁し、融合タンパク質を可溶化・抽出した後、懸濁液を遠心分離し、融合タンパク質を含む可溶性画分(上清画分)を回収する。

0054

ここで中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する「水溶液」としては、タンパク質精製に一般にもちいられる水系の緩衝液であればよく特に限定はされない。また、適当な濃度の塩を含んでいても良い。中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液としては、例えば、炭酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、グリセロールリン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、PIPES(Piperazine−N−N’−bis(2−ethane−sulfonic acid))緩衝液、MOPS(3−(N−Morpholine)propanesulfonic acid)緩衝液、HEPES(N−2−Hydroxyethylpiperazine−N’−ethane sulfonic acid)緩衝液、Tricine(N−Tris(hydroxymethyl)methylglycine)緩衝液、Glycylglycine緩衝液、TAPS(N−Tris(hydroxymethyl)methyl−3−aminopropanesulfonic acid)緩衝液、Glycine緩衝液、等を利用することができる。

0055

水溶液のpH値は、中性域〜弱アルカリ性であればよく、例えば、6.0〜10.0、さらに好ましくは7.0〜9.0の範囲より選択することができる。水溶液のpH値を大きくすることによって、融合タンパク質の水溶液中への溶解性を高めることができる。水溶液のpH値は、融合タンパク質の大部分(例えば、懸濁液中の融合タンパク質の総量の5割を超える量、6割以上、7割以上、8割以上、9割以上、又はそれ以上の量)が可溶性画分(上清画分)中に得られる値を選択することができる。

0056

また、中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液の塩濃度は、低塩濃度が好ましく、例えば、0.1〜300mM、好ましくは1mM〜200mM、さらに好ましくは5mM〜150mMの範囲より選択される濃度とすることができる。水溶液の塩濃度を低く設定することによって、融合タンパク質が可溶性画分(上清画分)中に得られる量を増すことができる。

0057

中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液の用量は、融合タンパク質を十分に溶解できる量であればよく、特に限定はされないが、得られた沈殿画分の体積の1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、10倍以上、12倍以上、14倍以上、16倍以上、18倍以上、又はそれ以上とすることができる。

0058

また中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液にはさらに界面活性剤を加えることができる。界面活性剤を加えるによって、融合タンパク質が可溶性画分(上清画分)中に得られる量を増すことができる。界面活性剤としては、例えば、Brij35、Triton X−100等の非イオン性界面活性剤デオキシコール酸ナトリウム等のステロイド骨格を有する界面活性剤、2−(シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)等の両性界面活性剤を利用することができる。界面活性剤は水溶液に対して、例えば、0.2重量%〜3重量%、好ましくは0.5重量%〜1重量%の範囲より選択する量にて添加することができる。

0059

中性域〜弱アルカリ性のpH値を有する水溶液中に融合タンパク質を懸濁し、遠心分離して可溶性画分(上清画分)を回収することによって、当該水溶液中への溶解性を有する融合タンパク質を可溶性画分(上清画分)中に回収することができると共に、この操作により非可溶性成分(夾雑物)は除去することができる。

0060

得られた可溶性画分(上清画分)より融合タンパク質を、タンパク質の精製で一般的に使用されている手法を用いて、さらに精製することができる。精製方法としては、特に限定されることなく、例えばクロマトグラフィーカラムフィルター限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出蒸留免疫沈降ポリアクリルアミドゲル電気泳動等電点電気泳動法透析再結晶等を適宜選択、組み合わせて用いることができる。クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィー疎水性クロマトグラフィーゲル濾過逆相クロマトグラフィー吸着クロマトグラフィー等を利用することができる。

0061

また、得られた融合タンパク質は、必要に応じて、可溶性タンパク質以外の領域、すなわち、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットに由来するペプチドを、除去してもよい。

0062

一実施形態において、本願発明は以下の工程を含むことができる:
(a)可溶性タンパク質のN末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の60アミノ酸残基を含むペプチドもしくはジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の60アミノ酸残基を含むペプチドが付加され、かつ該可溶性タンパク質のC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端の60アミノ酸残基を含むペプチドもしくはジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端の60アミノ酸残基を含むペプチドがそれぞれ付加されてなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む形質転換体を培養する工程、
(b)形質転換体を回収し、pH6.0〜8.0、好ましくはpH6.5〜8.0を有する塩の水溶液(例えば、リン酸塩緩衝液)中にて細胞を破砕し得られた懸濁液を遠心分離して、該融合タンパク質を含む沈殿画分を回収する工程、ならびに、
(c)該沈殿画分をpH6.0〜10.0、好ましくは7.0〜9.0を有する低塩濃度の水溶液(例えば、リン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液)中に懸濁し、該融合タンパク質を水溶液中に可溶化・抽出し、遠心分離して、該融合タンパク質を含む可溶性画分を回収する工程、
を含む、上記方法。ここで、工程(b)において、塩の水溶液は、塩濃度を50mM〜3000mM、好ましくは50mM〜1500mMとすることができる。また、工程(c)において、水溶液は、塩濃度を0.1mM〜300mM、好ましくは5mM〜50mMとすることができ、及び/又は、界面活性剤を含めることができる。

0063

以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。

0064

大腸菌イソシトレートデヒドロゲナーゼ(ICDH)とグルタチオン−S−転移酵素(GST)は可溶性酵素である。特に、GSTは溶解性の低いタンパク質に結合させることによって、当該タンパク質を可溶性画分に存在させることを可能とする高溶解性タグタンパク質の一つである。以下の実験においては、ICDH及びGSTを可溶性タンパク質のモデルとして使用し、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットやγサブユニットのN末端の60アミノ酸残基からなるペプチドを付加することによる、タンパク質/酵素の低溶解性化の効果を評価した。

0065

実施例1:大腸菌ICDHの低溶解性化
大腸菌K12株MC1655株ゲノムを鋳型として、PCRによりICDH遺伝子のタンパク質コーディング領域を増幅した。得られた遺伝子を発現ベクターpET21b(Novagen)のBamHIサイトをBglIIに変換し、このベクター(pET21BdB)のNdeI−BglIIサイトに導入し、発現ベクターpET21BdB(ICDH)を構築した。

0066

次に、このpET21BdB(ICDH)ICDHを鋳型として、PCRにより終止コドンをもたないICDH遺伝子のタンパク質コーディング領域を増幅した。得られた遺伝子をpET21bのNdeI−BamHIサイトに導入した後、更にICDHのBamHI−EcoRIサイト間とNdeIサイトとにジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドをコードするDNA断片をそれぞれ挿入することで、N末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合し、更にICDHのC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラICDHをコードするDNAを含み、当該キメラICDHを発現する発現ベクターpET21b(Nb60−ICDH−Nb60)を構築した(図1(A))。

0067

得られた発現ベクターを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、LB培地にて30℃で振盪培養し、対数増殖期後期に1mMIPTGを添加して6時間振盪培養して、キメラICDHの発現を誘導した。

0068

次いで、得られた培養液を遠心分離して菌体を分離し、2倍体積の50mMリン酸カリ緩衝液(KPB)を加えた後に超音波処理で細胞を破砕した。その細胞破砕液を遠心分離して、得られた上清画分(可溶性画分)と沈殿画分(不溶性画分)とをSDS−PAGEにて電気泳動し、ICDHのバンドの濃さより、上清画分及び沈殿画分におけるICDHの分布を確認した。対照には、N末端及びC末端のいずれにも、ジオールデヒドラターゼのβサブユニットが融合されていない野生型大腸菌ICDHをコードするDNAを含み、当該野生型ICDHを発現する発現ベクターであるpET21BdB(ICDH)を用いた。

0069

野生型大腸菌ICDHを大量発現させた組換え体大腸菌の培養液を上記のとおり、50mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)に懸濁して細胞破砕して遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離しSDS−PAGEにて電気泳動したところ、発現させたほとんどの野生型ICDHが上清画分(可溶性画分)に存在することが確認された(図2、レーンS)。

0070

これに対して、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラICDHを大量発現させた大腸菌の培養液を、以下の(1)〜(3)のいずれかの緩衝液に懸濁して細胞破砕し、遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離して11%SDS−PAGEにて電気泳動した:(1)50mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)、(2)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)、(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl。

0071

結果、いずれの緩衝液を用いた場合においても、ほとんどのキメラICDHが沈殿画分に存在していた(図3)。それらの中でも特に、(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞破砕した場合に最も多くのキメラICDH酵素が沈殿画分に確認された(図3、(3)のレーン沈殿画分P)。これらの結果は、可溶性タンパク質のN末端及びC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドを付加することによって、当該タンパク質を低溶解性化できること、また低溶解性化の程度は用いる緩衝液のpH値や塩濃度によって調整できることを示す。

0072

実施例2:大腸菌ICDHの簡便な精製
次に、上記のとおり、培養液を50mMリン酸カリ緩衝液(KPB)/300mM KClに懸濁して細胞破砕し、遠心分離して得られた沈殿画分からのキメラICDHの可溶化・抽出と精製を試みた。

0073

まず、上記のとおり、培養液について細胞破砕し、遠心分離して得られたキメラICDHを含む沈殿画分を50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液を用いて2回洗浄した。この洗浄画分には少量のキメラICDHが検出されたが(図4(A)、レーンw1(洗浄画分1),w2(洗浄画分2))、ほとんどは沈殿画分に存在した(図4(A)、レーンW−P(洗浄後沈殿画分))。

0074

この沈殿画分を、以下の(1)、(2)のいずれかの緩衝液(沈殿の3倍体積)に懸濁し、遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離して11%SDS−PAGEにて電気泳動した:
(1)50mM炭酸カリウム緩衝液(pH9.0)、(2)10mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)。

0075

結果、(1)、(2)のいずれの緩衝液を用いた場合においても、上清画分中にほとんどのキメラICDH酵素を可溶化・抽出することができ(図4(B),(C)のレーンex1(抽出画分1)及びex2(抽出画分2))、沈殿画分中に含まれるキメラICDH酵素は大きく減少した(図4(B),(C)のレーンEx−P(抽出後の沈殿画分))。

0076

次に、沈殿画分に存在するキメラICDHが生物活性を保持するか否かを確認した。ICDH活性の測定は公知の手法(Stokkeら、Extremophiles 11,481−493,2007)に従って、NADP+とD−イソクエン酸とを用いて行った。細胞破砕及び洗浄を50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KClにて行った場合、沈殿画分にて検出されるICDH活性は全体(上清画分+沈殿画分)の70%であった。この沈殿画分から2回の10mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)にて抽出・回収された酵素は全体の56%であった。また、抽出後の沈殿画分には全体の1%以下のICDH活性しか認められなかった。

0077

次に、同様に調製した洗浄後の沈殿画分(図5、レーンW−P)を以下の(1)、(2)のいずれかの量の10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)に懸濁し、遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離して11%SDS−PAGEにて電気泳動した:
(1)沈殿の3倍体積、(2)沈殿の14倍体積。

0078

結果、(1)、(2)のいずれの緩衝液を用いた場合においても、上清画分中にほとんどのキメラICDH酵素が可溶化・抽出することができ(図5(1),(2)のレーンex1(抽出画分1)及びex2(抽出画分2))、沈殿画分中に含まれるキメラICDH酵素は大きく減少した(図5(1),(2)のレーンEx−P(抽出後の沈殿画分))。特に、抽出に用いる溶液量を増やすと回収率が向上することが示された。

0079

次に、10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)にて抽出された酵素活性を測定することで酵素の回収率を求めた。沈殿の3倍体積の10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)を用いた場合の回収率は63%、沈殿の14倍体積の10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)を用いた場合の回収率は71%であった。

0080

これらの結果より、N末端及びC末端に、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドを付加することによって、低溶解性化された可溶性タンパク質は、中性域〜弱アルカリ性条件(pH7〜9程度)下にて、及びさらに低塩濃度下にて、可溶化・抽出することが可能であることが示された。

0081

実施例3:大腸菌ICDHの可溶化に対するBrij35の効果
次に、同様に調製した洗浄後の沈殿画分(図6、レーンW−P)からのキメラICDHの可溶化をBrij35が促進するかを見た。

0082

まず、上記のとおり、培養液について細胞破砕し、遠心分離して得られたキメラICDHを含む沈殿画分を50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液を用いて2回洗浄した。得られた沈殿画分を、以下の(1)、(2)のいずれかの緩衝液(4倍体積)に懸濁し、遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離して11%SDS−PAGEにて電気泳動した:
(1)100mMリン酸カリ緩衝液(pH8)/1% Brij35、(2)100mMリン酸カリ緩衝液(pH8)。

0083

結果、沈殿画分から可溶性画分に抽出できたタンパク質(図6レーンex1(抽出画分1)及びex2(抽出画分2))の量を比較すると、(1)の100mMリン酸カリ緩衝液(pH8)/1% Brij35を用いた場合の方が(2)の100mMリン酸カリ緩衝液(pH8)のみの場合に比べてより多くのキメラICDHが可溶性画分に得られた。この結果より、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチドをN末端及びC末端に付加することによって低溶解性化された可溶性タンパク質は、Brij35の添加により溶解性が増加することが示された。

0084

実施例4:グルタチオン−S−転移酵素の低溶解性化
グルタチオン−S−転移酵素(GST)の公知の発現ベクターであるpNEX(特開2006−296420号公報)を用いて、グルタチオン−S−転移酵素のN末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合し、更にグルタチオン−S−転移酵素のC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチド又はジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラGSTをコードするDNAを含み、当該キメラGSTを発現する発現プラスミドpNEX(Nb60−GST−Nb60)(図1(B))及びpNEX(Nb60−GST−Ng60)を構築した。

0085

得られた発現ベクターを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、LB培地にて30℃で振盪培養し、対数増殖期後期に1mMIPTGを添加して6時間振盪培養して、キメラGSTの発現を誘導した。

0086

次いで、得られた培養液を遠心分離することで菌体を分離し、2倍体積の50mMリン酸カリ緩衝液(KPB)を加えた後に超音波処理で細胞を破砕した。その細胞破砕液を遠心分離して、得られた上清画分(可溶性画分)と沈殿画分(不溶性画分)とをSDS−PAGEにて電気泳動し、キメラGSTのバンドの濃さより、上清画分及び沈殿画分における当該キメラGSTの分布を確認した。対照には、N末端及びC末端のいずれにも、ジオールデヒドラターゼのβサブユニット及びγサブユニットが融合されていない野生型GSTをコードするDNAを含み、当該野生型GSTを発現する発現ベクターであるpNEXを用いた。

0087

野生型GSTを大量発現させた組換え体大腸菌の培養液を上記のとおり、50mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)に懸濁して細胞破砕して遠心分離を行い上清画分と沈殿画分に分離し11%SDS−PAGEにて電気泳動したところ、発現させたほとんどの野生型GSTが可溶性画分に存在していた(図7、レーンS)。

0088

また、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラGSTについても、当該キメラGSTを大量発現させた組換え体大腸菌を細胞破砕する際に加えた緩衝液(50mMリン酸カリ緩衝液)のpHが8.0であると、キメラGSTの多くが可溶性画分に存在することが確認された。

0089

そこで、細胞破砕する際に加える緩衝液緩衝液のpHをより酸性側にしたもの、すなわち(1)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)、(2)50mMリン酸カリ緩衝液(pH6.5)、あるいは、緩衝液の塩濃度を更にあげたもの、すなわち(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KClに代えて同様の操作を行った。

0090

結果、いずれの条件でも多くのキメラGSTが沈殿画分において検出された(図8、レーンS)。それらの中でも特に、(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞破砕した場合に最も多くのキメラGST酵素が沈殿画分に確認された(図8、(3)のレーンP)。

0091

次に、沈殿画分に存在するキメラGSTが生物活性を保持するか否かを確認した。GST活性の測定は公知の手法(Habigら、MethodsEnzymol.22:398−405,1981)に従って、還元型グルタチオンと1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(1−chloro−2,4−dinitrobenzene;CDNB)とを用いて行った。

0092

結果、上清画分だけでなく沈殿画分においてもGST活性が検出され、当該活性は電気泳動で見られたバンドの濃さに相関することが確認された。細胞破砕する際に加える緩衝液を(1)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)、(2)50mMリン酸カリ緩衝液(pH6.5)、又は(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KClにした場合、沈殿画分にて検出されるGST活性は全体(上清画分+沈殿画分)の、69%、71%、及び93%となり、(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞破砕した場合に最も多くのGST活性が沈殿画分に確認された。

0093

一方、N末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合し、C末端側にジオールデヒドラターゼのγサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラGSTについては、当該キメラGSTを大量発現させた組換え体大腸菌を細胞破砕する際に加えた緩衝液(50mMリン酸カリ緩衝液)のpHが8.0であると、キメラGSTの多くが可溶性画分に存在することが確認された。

0094

そこで、細胞破砕する際に加える緩衝液のpHをより酸性側にしたもの、すなわち(1)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)、(2)50mMリン酸カリ緩衝液(pH6.5)、あるいは、緩衝液の塩濃度を更にあげたもの、すなわち(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KClに代えて同様の操作を行った。

0095

結果、いずれの条件でも多くのキメラGSTが沈殿画分において検出された(図9、レーンP)。それらの中でも特に、(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞破砕した場合に最も多くのキメラGST酵素が沈殿画分に確認された(図9、(3)のレーンP)。

0096

次いで、上記と同様に上清画分と沈殿画分に存在するGST活性を測定したところ、細胞破砕に用いる緩衝液を(1)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)、(2)50mMリン酸カリ緩衝液(pH6.5)、又は(3)50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KClにした場合、沈殿画分にて検出されるGST活性は全体(上清画分+沈殿画分)の、61%、60%、及び70%となり、(3)50mM リン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中で細胞破砕した場合に最も多くのGST活性が沈殿画分に確認された。

0097

これらの結果は、高可溶性タンパク質であるGSTであってもそのN末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニット由来のペプチド、及びC末端にジオールデヒドラターゼのβ又はγサブユニット由来のペプチドを付加することによって、当該タンパク質を低溶解性化できること、またその低溶解性化の程度は用いる緩衝液のpH値や塩濃度によって調整できることを示す。また、低溶解性化されたタンパク質であっても、生物活性を保持していることが示された。

0098

実施例5:グルタチオン−S−転移酵素の簡便な精製
上記のとおり、N末端及びC末端にジオールデヒドラターゼのβサブユニットのN末端60アミノ酸残基からなるペプチドを融合したキメラGST酵素を大量発現させた大腸菌を、50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液中にて細胞破砕し、遠心分離して得られた沈殿画分より、キメラGST酵素の精製と可溶化を試みた。

0099

まず、得られた沈殿画分を50mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)/300mM KCl溶液を用いて2回洗浄し、可溶性の不純物を取り除いた。この洗浄画分には少量のキメラGST酵素が検出されたものの(図10のレーンw1及びw2)、ほとんどのキメラGST酵素は沈殿画分中にて回収できた。

0100

次にこの沈殿画分をpH8.0の10mMリン酸カリウム緩衝液中に懸濁・抽出したところと、ほとんどのキメラGST酵素が可溶化して、単一バンドとして抽出・精製することができた(図10(1)のレーンex1及びex2)。

0101

更に、上記沈殿画分を10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)中に懸濁・抽出した場合、遠心沈殿画分(不溶性画分)に存在していたキメラGST酵素のほとんどが高純度に可溶化して抽出されることが確認できた((図10(2)のex1とex2)。

0102

次に、抽出された酵素活性を測定することで酵素の回収率を求めた。10mMリン酸カリ緩衝液(pH8.0)を用いた場合の回収率は53%、10mMリン酸カリ緩衝液(pH7.0)を用いた場合の回収率は55%であった。

実施例

0103

これらの結果より、N末端及びC末端に、ジオールデヒドラターゼのサブユニット由来のペプチドを付加することによって、低溶解性化された可溶性タンパク質は、中性域〜弱アルカリ性条件下にて、及びさらに低塩濃度下にて、可溶化・抽出することが可能であることが示された。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ