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技術 大気中の常在菌を活用し無肥料および無農薬で野菜を栽培する畑の造成方法

出願人 横内猛
発明者 横内猛
出願日 2014年9月2日 (7年2ヶ月経過) 出願番号 2014-178155
公開日 2016年4月11日 (5年7ヶ月経過) 公開番号 2016-049081
状態 特許登録済
技術分野 植物の栽培
主要キーワード 実証データ 成長具合 事業報告 樹枝状体 技術指導 梅雨明け レッドオーク 耕作放棄地
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

本発明は、農作物大気中に常在する微生物との共生関係により、農作物を無肥料栽培するため、必要なの構造および造成方法を提供することを第一の目的とする。 さらに、無農薬で栽培でき、かつ、畑に灌水する必要もなく、かつ、単一作物連作できる栽培方法を提供することを第二の目的とする。

解決手段

高さ35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの成形する無肥料および無農薬の野菜栽培に適した畑の造成方法。マメ科植物またはアブラナ科植物を用いて共生微生物繁殖させることを含む前記造成方法。

概要

背景

現代農業化学肥料の利用により土壌汚染破壊の問題が起き、病虫害への対策が不可欠となっている。一般的には、対策としてより強力な農薬の開発、あるいは病虫害に強い遺伝子組み換え技術の開発が進められている。

一方、肥料や農薬を使用する農法への批判反省から、無肥料および無農薬で農作物栽培する「自然農法」(あるいは「自然栽培」)を実践する農業者が1900年代初期に登場し、実績を示し始めている。初期の提唱者としては、福岡正信氏(非特許文献1)、岡田茂吉氏(非特許文献2)が著名で、近年では、奇跡のリンゴと呼ばれる無農薬リンゴの栽培に成功した木則氏(非特許文献3)の取り組みが各方面から注目されている。

しかし、肥料(化学肥料および有機肥料)を使用せずに農産物を栽培する技術は、ごく一部の実践者が成功しているのみであり、その仕組みは解明されていないため、現状では再現が困難な技術であると考えられている。

また近年、植物の生態に関する研究が進み、従来の農学分野で通説とされる考え方とは異なる、新しい説が公開されている。

(植物の栄養吸収の形態)
たとえば、一般的な園芸ガイドには、植物を育てるうえで最も大切な要件として「NPK」が紹介されている。それぞれ、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の元素記号を現したもので、肥料の三大要素ともいわれている。このうち、窒素分は土壌中にほとんどなく、植物を大きく成長させるために、窒素肥料がとくに重要であると考えられている。
また、植物は根から養分を吸収しているわけであるが、従来の考え方によると、無機物の形態でしか吸収できないとされている。窒素栄養であれば、硝酸態窒素(NO3-)もしくはアンモニア態窒素(NH3+-N)という形態である。この考え方により、無機物の窒素栄養を柱とする化学肥料が広く世界中で利用されることとなった。
一方、1980年代から、一部の研究者により、植物が有機物であるアミノ酸の形態で窒素栄養を吸収している可能性について、実証研究が盛んに行われ、さまざまな実証データが公開されるようになった。

当初、日本の主食である米を中心に研究され、イネ科植物がアミノ酸を吸収して順調に生育することが確認された。その後、非特許文献9、p25第3章第5節では、従来の研究成果に加え、イネ科以外の植物についてアミノ酸を吸収するかどうか検証した結果がまとめられている。具体的には、イネ、コムギダイズチンゲンサイキュウリに各種アミノ酸投与し、生育状況を調べた。20種類のアミノ酸のなかで、とくにグルタミン酸は各野菜に共通して、化学肥料と同等以上の生育を示したことなどが報告されている。

(植物の根の働き)
また、植物の根の働きは、水分や養分を吸収し、かつ地上部支えていることが一般的に知られている。しかし、根から養分を放出していることは、ほとんど知られていない。以下は非特許文献4、p88からの引用である。
このように根からはいろいろな形で有機物が放出されている。その放出量は無菌状態のときよりも有菌状態のときのほうが多い。有菌状態では作物光合成同化した炭素の12〜40%が根から放出されるという。土壌の飢え微生物にとって、これは絶好のエサであり、当然根の周囲に群がる。また、根の防御機能破れる菌にとっては、根の内部はもっとエサのある空間である。
こうして、養分欠乏と微生物の生活空間の両面から根圏という考えが生まれた。根圏とは、根そのものと、根の影響のおよぶ根周囲の土壌(根圏土壌)とからなる。
*光合成で同化した炭素とはブドウ糖などの糖類を指す

根圏とは根から約1mm以内の圏域を指し、根圏に生息するある種の微生物と植物は、緊密な共生関係を結び養分交換を行っていると考えられる。植物と微生物の共生の形態は、根やなどに微生物が直接接する接触型と、根圏で養分をやり取りする非接触型があり、植物と微生物の共生という場合、どちらも含まれる。

(アミノ酸を合成する微生物)
微生物には、空気中の窒素を材料にしてアミノ酸を合成する種類が存在する。窒素固定菌と呼ばれ、植物への窒素栄養の供給に重要な役割を果たしている。以下は、非特許文献8、p19からの引用である。
窒素養分は植物にとって必須であり、 植物が生育する上では最も欠乏しやすい元素である。特に農業において窒素養分は、収量や品質に大きな影響を及ぼすため、農業者による肥培管理の中心となっている。
自然界では窒素施肥は行われていないが、植物は土壌等から窒素養分を吸収し、生育しており、その給源のほとんどは窒素固定であると考えられる。窒素固定は、微生物がATPを用いて大気中のN2ガスアンモニアまで還元して体内で同化するものである。植物は微生物が同化した窒素を吸収したり、共生関係にある場合はアミノ酸やウレイドなどの形態で直接、微生物から供給されていることが明らかにされている。
*ウレイドとは尿素態窒素のことである

(植物と微生物の共生関係)
植物が海から上に進出したのは、約4億年前のデボン紀だと考えられている。当時、地表に植物の養分となる物質はほとんど存在していなかった。そこで、植物は多様な働きをもつ微生物との共生によって繁殖可能となり、長い年月をかけて地表に広大森林を形成していった。とくに、土壌に含まれるリンやカリウムを植物が吸収できる形に変える真菌類との共生関係があったことは、古代植物の化石調査などから判明している。

植物が海から陸上に進出する際の状況について、以下は非特許文献5、p76からの引用である。
植物と微生物の関係は、今に始まったことではない。この地球上に最初に生物が発生したのは35億年前のこと、その後細菌のような核のない生物、原核生物時代がつづいた。それからさらに20〜25億年たって、原生動物藻類菌類などの核のある生物、真核生物が現れたとされている。シダトクサなどの陸上植物祖先出現したのは、わずか4億年前のことで、当時の水辺はすでに微生物におおわれていたはずである。いわば、陸上植物は、生まれたその瞬間から微生物にとりかこまれており、微生物のスープのなかで育ったともいえよう。
新しく生まれた植物は、必ず微生物の洗礼をうける。あるものはおそわれて死滅し、あるものは防御手段を獲得して生き残ったことだろう。植物は環境の変化に適応するだけでなく、他の生物の攻撃にも耐えて、次第に抵抗力を強め、微生物の中から毒性の弱いものを選んでとり込み、共生する方向へと進化した。微生物の中にも相手を殺して奪うだけでなく、植物と共生して栄養をとる方向へと進化したグループが現れた。
植物と微生物の共生関係をみると、共生現象が成り立つというのは、双方の争いが終末に到達したことを意味しているように思える。植物の生活法とその進化からみて、植物にとって共生という生活法はしごく当たり前のことであり、少なくとも自然状態にあるかぎり、植物は本質的に共生生物なのである。

植物と共生関係を結ぶ微生物としては、大きく真菌類と細菌類の2グループに分かれる。まず真菌類は、一般にカビと呼ばれる微生物で、発酵に使われる酵母や、食料として栽培されるキノコ真菌である。
酵母を除く真菌の特徴は、糸状菌とも呼ばれ、菌糸を伸ばし、成長とともに胞子を飛ばして繁殖することである。また真菌のほとんどが好気性菌である。好気性菌とは、酸素消費して生命活動を営む微生物をいう。植物との共生においては、おもに土壌中のミネラルを体内に取り込み、植物が吸収できる形態に変えたうえで植物に提供している。

細菌類は、バクテリアとも呼ばれ、細胞分裂して繁殖する。細菌には、好気性菌と嫌気性菌のどちらも存在する。嫌気性菌とは、酸素を消費せずに生命活動を営む微生物をいう。
とくに細菌のなかには、空気中の窒素を固定し、アミノ酸を合成する窒素固定菌が存在し、痩せた土壌において植物と共生し、無肥料で農産物を栽培するための重要な働きを担っている。窒素固定菌のなかには、根粒菌と呼ばれ、植物の根に直接侵入して共生するリゾビウム属が知られている。とくに植物と微生物の共生については、ダイズの根粒菌が例示されることが多い。
一方、植物の根には接触せず、根圏に生息し、窒素固定をするアゾトバクター属がある。非接触型の窒素固定菌は、アゾトバクター属以外にも多数存在すると推測されており、これらの窒素固定菌群が、多様な植物との共生関係に深くかかわっていると考えられる。

アゾトバクター属について、以下は非特許文献7からの引用である。
検索語:アゾトバクター
解説:土壌中、水中に広く分布し、自然界の有機物を消費して窒素固定を行う好気性細菌。非共生的窒素固定菌であるアゾトバクターによる窒素固定の効率は、1gの炭水化物消費量について5〜20mgの窒素であって、共生的窒素固定細菌である根粒菌の1/10以下である。近年、植物根および葉圏において、アゾトバクターなどの窒素固定菌が分布していることがわかり、これらの細菌は植物の分泌する有機物を消費して窒素固定を行い、固定された窒素はいずれ植物に吸収利用され、一種の緩い共生関係にあるものと考えられている。
以上
*ここでいう「非共生的窒素固定菌」とあるのは、植物の根の中に侵入する根粒菌との対比で使われており、非接触型窒素固定菌と同じ意味である。

植物と微生物の共生関係において、微生物側のメリットは、植物が光合成によって作り出すブドウ糖などの糖類を得ることである。植物は、光合成によってつくり出したブドウ糖をセルロースデンプンなどに変化させ、自らの成長に使っている。一方、つくり出したブドウ糖の12〜40%は根から放出している(非特許文献5、P98)。根から放出されたブドウ糖は、根圏に生息するあらゆる微生物の栄養源となり、微生物はその見返りとして植物の養分となるさまざまな物質を生成していると考えられる。(図1)

このほか、微生物の働きを農業に役立てる研究が各方面で進められている。特許文献1は、窒素固定機能を持つバチルス属細菌を培養した成長促進剤により、イネ科植物の育成に効果を得ようとするものである。特許文献2は、法面を緑化する工法として、粉砕した資材基盤にして大気中の窒素固定菌を誘導し、植生の窒素栄養分を供給する方法である。特許文献3は、光合成細菌などの有用微生物群EM菌)を利用することにより、通常より少量の有機物を投入するだけで農産物を栽培する方法である。特許文献4は、植物性原料および動物性原料を含む特定の原料を発酵させる微生物資材の発明である。効果は、施肥によってバランスを崩した土壌の改善により、農産物の品質を向上させ、あるいは、汚染物質地下水脈への流出を防止することである。
これら特許文献1〜4は、いずれも特定の微生物を培養または誘導し利用するものであり、さらに培養または誘導するため、特定の資材を必要としている。
特許文献5は、無肥料栽培の収穫物について、収穫量が激減してしまうので、収益性が悪化してしまい農業経営が成り立たなくなる欠点が生じてしまうと指摘している。

概要

本発明は、農作物と大気中に常在する微生物との共生関係により、農作物を無肥料で栽培するため、必要なの構造および造成方法を提供することを第一の目的とする。 さらに、無農薬で栽培でき、かつ、畑に灌水する必要もなく、かつ、単一作物を連作できる栽培方法を提供することを第二の目的とする。高さ35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの成形する無肥料および無農薬の野菜栽培に適した畑の造成方法。マメ科植物またはアブラナ科植物を用いて共生微生物を繁殖させることを含む前記造成方法。

目的

本発明は、大気中に常在する微生物を活用し、肥料および農薬を一切使用することなく、健康で食味の良い農産物を栽培することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

高さ35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの成形し無肥料および無農薬野菜栽培に適した造成方法

請求項2

高さ35〜50cm、幅(上面)100〜130cmの畝の形状を特徴とする請求項1に記載の造成方法。

請求項3

畝の成形後、更に、自然に生えてくる雑草類の根を残して、地上部を刈り取る作業を含む請求項1または2のいずれか1項に記載の造成方法。

請求項4

更に、マメ科植物繁殖させることを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の造成方法。

請求項5

マメ科植物としてアルファルファ(和名:ムラサキウマゴヤシ)を繁殖させることを含む請求項4に記載の造成方法。

請求項6

更に、アブラナ科植物を繁殖させることを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の造成方法。

請求項7

アブラナ科植物としてミズナを繁殖させることを含む請求項6に記載の造成方法。

請求項8

請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で造成した畑において野菜栽培する方法。

請求項9

野菜としてスイカまたは、メロンまたは、カボチャをつくる請求項8に記載の栽培方法

請求項10

肥料を使用しない請求項8または9のいずれか1項に記載の栽培方法。

請求項11

農薬を使用しない請求項8〜10のいずれか1項に記載の栽培方法。

請求項12

灌水をしない請求項8〜11のいずれか1項に記載の栽培方法。

請求項13

同一作物連作する請求項8〜12のいずれか1項に記載の栽培方法。

技術分野

0001

本発明は、大気中に常在する微生物活用し、肥料および農薬を一切使用することなく、健康で食味の良い農産物栽培することを目的とする造成方法に関する。

背景技術

0002

現代農業化学肥料の利用により土壌汚染破壊の問題が起き、病虫害への対策が不可欠となっている。一般的には、対策としてより強力な農薬の開発、あるいは病虫害に強い遺伝子組み換え技術の開発が進められている。

0003

一方、肥料や農薬を使用する農法への批判反省から、無肥料および無農薬で農作物を栽培する「自然農法」(あるいは「自然栽培」)を実践する農業者が1900年代初期に登場し、実績を示し始めている。初期の提唱者としては、福岡正信氏(非特許文献1)、岡田茂吉氏(非特許文献2)が著名で、近年では、奇跡のリンゴと呼ばれる無農薬リンゴの栽培に成功した木則氏(非特許文献3)の取り組みが各方面から注目されている。

0004

しかし、肥料(化学肥料および有機肥料)を使用せずに農産物を栽培する技術は、ごく一部の実践者が成功しているのみであり、その仕組みは解明されていないため、現状では再現が困難な技術であると考えられている。

0005

また近年、植物の生態に関する研究が進み、従来の農学分野で通説とされる考え方とは異なる、新しい説が公開されている。

0006

(植物の栄養吸収の形態)
たとえば、一般的な園芸ガイドには、植物を育てるうえで最も大切な要件として「NPK」が紹介されている。それぞれ、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の元素記号を現したもので、肥料の三大要素ともいわれている。このうち、窒素分は土壌中にほとんどなく、植物を大きく成長させるために、窒素肥料がとくに重要であると考えられている。
また、植物は根から養分を吸収しているわけであるが、従来の考え方によると、無機物の形態でしか吸収できないとされている。窒素栄養であれば、硝酸態窒素(NO3-)もしくはアンモニア態窒素(NH3+-N)という形態である。この考え方により、無機物の窒素栄養を柱とする化学肥料が広く世界中で利用されることとなった。
一方、1980年代から、一部の研究者により、植物が有機物であるアミノ酸の形態で窒素栄養を吸収している可能性について、実証研究が盛んに行われ、さまざまな実証データが公開されるようになった。

0007

当初、日本の主食である米を中心に研究され、イネ科植物がアミノ酸を吸収して順調に生育することが確認された。その後、非特許文献9、p25第3章第5節では、従来の研究成果に加え、イネ科以外の植物についてアミノ酸を吸収するかどうか検証した結果がまとめられている。具体的には、イネ、コムギダイズチンゲンサイキュウリに各種アミノ酸投与し、生育状況を調べた。20種類のアミノ酸のなかで、とくにグルタミン酸は各野菜に共通して、化学肥料と同等以上の生育を示したことなどが報告されている。

0008

(植物の根の働き)
また、植物の根の働きは、水分や養分を吸収し、かつ地上部支えていることが一般的に知られている。しかし、根から養分を放出していることは、ほとんど知られていない。以下は非特許文献4、p88からの引用である。
このように根からはいろいろな形で有機物が放出されている。その放出量は無菌状態のときよりも有菌状態のときのほうが多い。有菌状態では作物光合成同化した炭素の12〜40%が根から放出されるという。土壌の飢えた微生物にとって、これは絶好のエサであり、当然根の周囲に群がる。また、根の防御機能破れる菌にとっては、根の内部はもっとエサのある空間である。
こうして、養分欠乏と微生物の生活空間の両面から根圏という考えが生まれた。根圏とは、根そのものと、根の影響のおよぶ根周囲の土壌(根圏土壌)とからなる。
*光合成で同化した炭素とはブドウ糖などの糖類を指す

0009

根圏とは根から約1mm以内の圏域を指し、根圏に生息するある種の微生物と植物は、緊密な共生関係を結び養分交換を行っていると考えられる。植物と微生物の共生の形態は、根やなどに微生物が直接接する接触型と、根圏で養分をやり取りする非接触型があり、植物と微生物の共生という場合、どちらも含まれる。

0010

(アミノ酸を合成する微生物)
微生物には、空気中の窒素を材料にしてアミノ酸を合成する種類が存在する。窒素固定菌と呼ばれ、植物への窒素栄養の供給に重要な役割を果たしている。以下は、非特許文献8、p19からの引用である。
窒素養分は植物にとって必須であり、 植物が生育する上では最も欠乏しやすい元素である。特に農業において窒素養分は、収量や品質に大きな影響を及ぼすため、農業者による肥培管理の中心となっている。
自然界では窒素施肥は行われていないが、植物は土壌等から窒素養分を吸収し、生育しており、その給源のほとんどは窒素固定であると考えられる。窒素固定は、微生物がATPを用いて大気中のN2ガスアンモニアまで還元して体内で同化するものである。植物は微生物が同化した窒素を吸収したり、共生関係にある場合はアミノ酸やウレイドなどの形態で直接、微生物から供給されていることが明らかにされている。
*ウレイドとは尿素態窒素のことである

0011

(植物と微生物の共生関係)
植物が海から上に進出したのは、約4億年前のデボン紀だと考えられている。当時、地表に植物の養分となる物質はほとんど存在していなかった。そこで、植物は多様な働きをもつ微生物との共生によって繁殖可能となり、長い年月をかけて地表に広大森林を形成していった。とくに、土壌に含まれるリンやカリウムを植物が吸収できる形に変える真菌類との共生関係があったことは、古代植物の化石調査などから判明している。

0012

植物が海から陸上に進出する際の状況について、以下は非特許文献5、p76からの引用である。
植物と微生物の関係は、今に始まったことではない。この地球上に最初に生物が発生したのは35億年前のこと、その後細菌のような核のない生物、原核生物時代がつづいた。それからさらに20〜25億年たって、原生動物藻類菌類などの核のある生物、真核生物が現れたとされている。シダトクサなどの陸上植物祖先出現したのは、わずか4億年前のことで、当時の水辺はすでに微生物におおわれていたはずである。いわば、陸上植物は、生まれたその瞬間から微生物にとりかこまれており、微生物のスープのなかで育ったともいえよう。
新しく生まれた植物は、必ず微生物の洗礼をうける。あるものはおそわれて死滅し、あるものは防御手段を獲得して生き残ったことだろう。植物は環境の変化に適応するだけでなく、他の生物の攻撃にも耐えて、次第に抵抗力を強め、微生物の中から毒性の弱いものを選んでとり込み、共生する方向へと進化した。微生物の中にも相手を殺して奪うだけでなく、植物と共生して栄養をとる方向へと進化したグループが現れた。
植物と微生物の共生関係をみると、共生現象が成り立つというのは、双方の争いが終末に到達したことを意味しているように思える。植物の生活法とその進化からみて、植物にとって共生という生活法はしごく当たり前のことであり、少なくとも自然状態にあるかぎり、植物は本質的に共生生物なのである。

0013

植物と共生関係を結ぶ微生物としては、大きく真菌類と細菌類の2グループに分かれる。まず真菌類は、一般にカビと呼ばれる微生物で、発酵に使われる酵母や、食料として栽培されるキノコ真菌である。
酵母を除く真菌の特徴は、糸状菌とも呼ばれ、菌糸を伸ばし、成長とともに胞子を飛ばして繁殖することである。また真菌のほとんどが好気性菌である。好気性菌とは、酸素消費して生命活動を営む微生物をいう。植物との共生においては、おもに土壌中のミネラルを体内に取り込み、植物が吸収できる形態に変えたうえで植物に提供している。

0014

細菌類は、バクテリアとも呼ばれ、細胞分裂して繁殖する。細菌には、好気性菌と嫌気性菌のどちらも存在する。嫌気性菌とは、酸素を消費せずに生命活動を営む微生物をいう。
とくに細菌のなかには、空気中の窒素を固定し、アミノ酸を合成する窒素固定菌が存在し、痩せた土壌において植物と共生し、無肥料で農産物を栽培するための重要な働きを担っている。窒素固定菌のなかには、根粒菌と呼ばれ、植物の根に直接侵入して共生するリゾビウム属が知られている。とくに植物と微生物の共生については、ダイズの根粒菌が例示されることが多い。
一方、植物の根には接触せず、根圏に生息し、窒素固定をするアゾトバクター属がある。非接触型の窒素固定菌は、アゾトバクター属以外にも多数存在すると推測されており、これらの窒素固定菌群が、多様な植物との共生関係に深くかかわっていると考えられる。

0015

アゾトバクター属について、以下は非特許文献7からの引用である。
検索語:アゾトバクター
解説:土壌中、水中に広く分布し、自然界の有機物を消費して窒素固定を行う好気性細菌。非共生的窒素固定菌であるアゾトバクターによる窒素固定の効率は、1gの炭水化物消費量について5〜20mgの窒素であって、共生的窒素固定細菌である根粒菌の1/10以下である。近年、植物根および葉圏において、アゾトバクターなどの窒素固定菌が分布していることがわかり、これらの細菌は植物の分泌する有機物を消費して窒素固定を行い、固定された窒素はいずれ植物に吸収利用され、一種の緩い共生関係にあるものと考えられている。
以上
*ここでいう「非共生的窒素固定菌」とあるのは、植物の根の中に侵入する根粒菌との対比で使われており、非接触型窒素固定菌と同じ意味である。

0016

植物と微生物の共生関係において、微生物側のメリットは、植物が光合成によって作り出すブドウ糖などの糖類を得ることである。植物は、光合成によってつくり出したブドウ糖をセルロースデンプンなどに変化させ、自らの成長に使っている。一方、つくり出したブドウ糖の12〜40%は根から放出している(非特許文献5、P98)。根から放出されたブドウ糖は、根圏に生息するあらゆる微生物の栄養源となり、微生物はその見返りとして植物の養分となるさまざまな物質を生成していると考えられる。(図1

0017

このほか、微生物の働きを農業に役立てる研究が各方面で進められている。特許文献1は、窒素固定機能を持つバチルス属細菌を培養した成長促進剤により、イネ科植物の育成に効果を得ようとするものである。特許文献2は、法面を緑化する工法として、粉砕した資材基盤にして大気中の窒素固定菌を誘導し、植生の窒素栄養分を供給する方法である。特許文献3は、光合成細菌などの有用微生物群EM菌)を利用することにより、通常より少量の有機物を投入するだけで農産物を栽培する方法である。特許文献4は、植物性原料および動物性原料を含む特定の原料を発酵させる微生物資材の発明である。効果は、施肥によってバランスを崩した土壌の改善により、農産物の品質を向上させ、あるいは、汚染物質地下水脈への流出を防止することである。
これら特許文献1〜4は、いずれも特定の微生物を培養または誘導し利用するものであり、さらに培養または誘導するため、特定の資材を必要としている。
特許文献5は、無肥料栽培の収穫物について、収穫量が激減してしまうので、収益性が悪化してしまい農業経営が成り立たなくなる欠点が生じてしまうと指摘している。

0018

特開2014-096996号公報
特開2010-070963号公報
特開2001-292636号公報
特開2013-141419号公報
特開2013-212087号公報

先行技術

0019

福岡正信著、「自然農法〜わら一本の革命秋社、1983年5月
岡田茂吉著、「無肥料栽培法」日本五六七教会、1949年7月
木村秋則編集、「木村秋則と自然栽培の世界」日本経済新聞社、2010年6月
西尾道徳著、「土壌微生物基礎知識」農文協、1989年2月
小川眞著、「作物と土をつなぐ共生微生物」農文協、1987年8月
成澤彦著、「エンドファイトの働き方と使い方〜作物守る共生微生物」農文協、2011年12月。
「世界大百科事典第2版」平凡社、1998年10月。
有機農業標準栽培技術指導書作成委員会著、「有機栽培技術の手引果樹編〕」日本土壌協会、2013年3月。
二瓶直登著、「植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究」福島県農業総合センター研究報告第2号、2009年11月16日受理
赤尾勝一郎、佐伯雄一著、「サツマイモサトウキビ内生する窒素固定細菌による固定窒素の量的評価」科学研究費採択事業報告書、2004〜2007年。 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/16380053/2007/6/ja.ja.html

発明が解決しようとする課題

0020

肥料や農薬に頼らない農業技術に関しては、植物の成長に有効な微生物の研究が進んでいる。しかし、すでに述べたように、いずれも特定の微生物を培養または誘導し利用するものであり、さらに培養または誘導するため、特定の資材を必要としている。
また、無肥料栽培は収穫量が激減し、収益性が悪化するとされる。

0021

前記課題を解決するため、本発明は、農作物と大気中に常在する微生物との共生関係により農作物を無肥料および無農薬で栽培するための、必要な畑の構造および造成方法を提供することを第一の目的とする。さらに本発明は、無農薬で栽培でき、かつ、畑に灌水する必要もなく、かつ、単一作物を連作できる栽培方法を提供することを第二の目的とする。

課題を解決するための手段

0022

前項の課題を解決するための手段として、以下に示す方法を提供する。
(態様1)
高さ35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの成形し無肥料および無農薬の野菜栽培に適した畑の造成方法。
(態様2)
高さ35〜50cm、幅(上面)100〜130cmの畝の形状を特徴とする態様1に記載の造成方法。
(態様3)
畝の成形後、更に、自然に生えてくる雑草類の根を残して、地上部を刈り取る作業を含む態様1または2のいずれか1項に記載の造成方法。
(態様4)
更に、マメ科植物を繁殖させることを含む態様1〜3のいずれか1項に記載の造成方法。
(態様5)
マメ科植物としてアルファルファ(和名:ムラサキウマゴヤシ)を繁殖させることを含む態様4に記載の造成方法。
(態様6)
更に、アブラナ科植物を繁殖させることを含む態様1〜5のいずれか1項に記載の造成方法。
(態様7)
アブラナ科植物としてミズナを繁殖させることを含む態様6に記載の造成方法。
(態様8)
態様1〜7のいずれか1項に記載の方法で造成した畑において野菜を栽培する方法。
(態様9)
野菜としてスイカまたは、メロンまたは、カボチャをつくる態様8に記載の栽培方法。
(態様10)
肥料を使用しない態様8または9のいずれか1項に記載の栽培方法。
(態様11)
農薬を使用しない態様8〜10のいずれか1項に記載の栽培方法。
(態様12)
灌水をしない態様8〜11のいずれか1項に記載の栽培方法。
(態様13)
同一作物を連作する態様8〜12のいずれか1項に記載の栽培方法。

発明の効果

0023

特定の高さと幅を有する畝を成形することにより、大気中に常在し植物と有益に共生するあらゆる微生物を効果的に繁殖させることが可能となり、農作物を無肥料および無農薬で栽培することができる。
更に、水はけの悪い粘土質の畑であったり、あるいは痩せた耕作放棄地であったりしても、畑の状態に応じて、雑草または、マメ科植物または、アブラナ科植物を繁殖させることにより、共生微生物を効果的に繁殖させ、農作物を無肥料および無農薬で栽培することができる。

0024

更に、本発明により、農薬による防除が不要となり、かつ、畑に灌水する必要がなく、かつ、単一作物を連作することができる。また、十分な収穫量を得ることができる。

図面の簡単な説明

0025

図1は、植物と微生物の共生関係を表したもので、植物は光合成によりブドウ糖を生成し、約半分もの量を根から放出している。一方、微生物はそのブドウ糖を得ることで、土壌中のミネラルや、空気中の窒素から合成したアミノ酸、ビタミンホルモンなどを植物に提供している。
図2は、共生微生物群を繁殖しやすい環境にするための畑の構造を示すものである。高さ35〜70cm、幅60〜200cmの畝を立てることにより、水はけが良く、通気性の良い構造になる。これにより、表土に漂着した共生微生物が繁殖しやすくなる。
図3は、共生微生物群を繁殖させるため、畝に生えてくる植物を定期的に刈り取り、溝に落としていく。これにより、植物の根茎発達するだけでなく、溝に落とした植物をカビが分解し、畝の側面から菌糸を伸ばし始める。そのことにより、土壌の水はけ、通気性が一層良くなり、共生微生物群の繁殖に有利に働く。
図4は、マメ科のアルファルファを掘り出し、根を観察した写真である。一般に、マメ科植物には根粒がつくとされるが、実験農場におけるアルファルファには根粒菌が認められなかった。
図5は、高畝を成形したのち、共生微生物群が繁殖するプロセスについて、植物と微生物の共生関係の変化という観点で示した。
図6は、肥料栽培における植物と微生物の関係について示した。肥料栽培においては、植物と微生物は共生関係ではなく、微生物が有機物を分解して、一方的に養分を植物に送る関係になる。また、化学肥料のみを利用する場合は、ごく一部の細菌が化学肥料を可給態にする役割を担っているものの、ほぼ微生物の関与はない。むしろ、化学肥料や有機肥料の多用により、腐敗菌が増殖し、硫化水素やアンモニアなど毒性の強い物質が作られる弊害がある。
図7は、実施例1の圃場A、2011年秋の様子。
図8は、圃場A、2012年7月の様子。右からトウモロコシ、キュウリがある程度成長している。中央から左側にアルファルファが繁殖している。
図9は、以下に示すとおりである。 a 圃場A、2012年11月14日のミズナの様子。雑草も発しているのがわかる。 b 圃場A、2012年11月22日のミズナの様子。雑草の成長が止まり、ミズナが成長している。 c 圃場A、2012年12月5日のミズナの様子。雑草の成長が止まったままであり、ミズナがさらに成長している。 d 圃場A、2012年12月16日のミズナの様子。雑草は依然として成長せず、ミズナはベビーリーフとして出荷できる大きさに成長した。
図10は、市街地駐車場一角に、アブラナ科野菜であるレッドマスタードが大きく育っている。2012年11月8日撮影
図11は、レッドマスタードは、厳しい真のなか、さらに大きく育っている。2013年1月12日撮影。
図12は、圃場A、2013年4月の様子。収穫後のミズナが再生し、花を咲かせているほか、アルファルファもびっしり再生している。
図13は、以下に示すとおりである。a 圃場A、2013年の梅雨明けまで、トウモロコシは順調に成長した。しかし梅雨明け後は乾燥が激しく、ほとんど実が成らなかった。 b 圃場A、2013年、干ばつに強いといわれるミニトマトは、10月まで収穫できた。 c 圃場A、2013年、ナスは少雨のためあまり成長しなかった。 d 圃場A、2013年、カボチャは小さな実を1個収穫でき、約130粒の種を採種した。
図14は、以下に示すとおりである。 a 圃場A、2013年、前年に自家採種した小玉サイズのスイカの種から、大玉スイカが実った。 b 圃場A、2013年8月17日、6.2kgの大玉スイカを収穫。このほか、大玉スイカは2個収穫でき、いずれも食味は良かった。この3個から約1,200粒の種を採種した。 c 大玉スイカは、中身もしっかり種が詰まっており、食味も大変よかった。 d 圃場A、2013年、前年に自家採種したメロンの種から、さらに品質が向上したネットメロンが実った。 e ネットメロンは、18個収穫したうち、9個は食味が良く、9個は甘くならなかった。このうち、最も大きく、食味の良いメロンから約330粒の種を採種した。
図15は、以下に示すとおりである。 a 圃場A、2013年10月8日のミズナの様子。9月24日に種を播き、順調に発芽した。 b 圃場A、2013年10月8日のルッコラの様子。9月24日に種を播き、順調に発芽した。
図16は、以下に示すとおりである。 a 圃場A、2013年10月14日のミズナの様子。順調に生育している。 b 圃場A、2013年10月14日のルッコラの様子。順調に生育している。
図17は、圃場A、2013年10月14日、ルッコラとともに雑草が生えているが、雑草は発芽したまま成長が止まっている。
図18は、圃場A、2013年11月11日、ミズナはさらに成長し、そのまま出荷できる状態にまでなった。
図19は、圃場B、2011年5月、まとまった雨が降ると冠水し、1週間も水が引かない状態だった。
図20は、圃場B、2011年秋、さまざまな野菜の種を播いたものの、ほとんど成長せず、冬になるとすべて枯れた。
図21は、通水性および通気性を高めるための畝の設計図
図22は、2013年、水はけの悪い圃場は、すべて高畝を成形した。
図23は、圃場B、2012年3月、ほぼ全面がゴロゴロとした石のように固い土質だった。
図24は、圃場B、2012年のから秋にかけて、葦やその他の雑草が伸びると、草刈機を使って刈り取り、溝に落とした。
図25は、圃場B、2013年春になると、ゴロゴロとした石のような土が、サラサラになった。
図26は、圃場B、2013年夏から秋にかけて、ところどころにアルファルファが生えてきた。7月9日撮影。
図27は、圃場B、2014年春、高畝の成形に加え、夏場保湿のため、マルチを張って作付けの準備をする。ここに、自家採種したスイカ、メロン、カボチャの種を直播した。
図28は、以下に示すとおりである。 a 圃場B、2014年4月中旬から時期をずらして6月初旬にかけて種まきしたスイカも、勢いよく成長している。 b 圃場B、2012年7月に入り、スイカが順次結実し、順調に大きくなっている。 c 圃場B、2014年7月、カボチャの実が次々と結実し、大きく実っている。 d 圃場B、2014年7月、カボチャは全体的に旺盛に生育している。 e 圃場B、2014年5月に種を播いたメロンは、7月初まで順調に生育した。7月2日撮影。その後長雨が続き、急速に枯れはじめた。

0026

大気中には多様な真菌や細菌が常在菌として混在している。真菌は胞子を飛ばし、細菌は微粒子に付着して浮遊し、常に地表に漂着している。微生物の種類は判明しているだけでも数万種類といわれており、常在菌を個別に特定することは事実上不可能である。しかし、農業という観点から、その働きによって以下のように、2つのグループに分類することができる。
第1群:有機物を分解する微生物群
第2群:植物と共生する微生物群
地上の生態系は、4億年という長い時間をかけて拡大し、現在の地表は多様な動植物に満ちあふれている。そのため、動植物の遺体を素早く分解し、生態系の環をスムーズに回していくため、第1群の働きが大変重要である。現代において微生物とは、特別な条件がない限り、第1群を指している。
一方、第2群の微生物群は、地表に生命が存在しない4億年前に植物と共生し、以来、地表に広大な森林をもたらす重要な役割を担っていた。しかし現在、地表は多くの植物で覆われており、かつてほどの必要性はなくなっている。そのため、常在菌のうち共生微生物の割合は極めて小さいものと推測される。

0027

しかし、非特許文献5が示すように、「自然状態にあるかぎり、植物は本質的に共生生物である」ならば、どのような植物であろうと何らかの微生物との共生により成長できるはずである。そして実験の結果、農作物と共生する微生物は、大気中に浮遊しており、畑を一定の形状に成形することにより、農作物と強い共生関係を結ぶことが判明し、本発明に至る。

0028

植物と共生関係を結ぶ微生物としては、真菌、細菌ともに重要である。とくに窒素固定菌は、好気性菌に分類されるものが多く、また、酸素の消費量がとても多いため、畑の形状を整える際、通気性を高める特段の配慮をする必要がある。

0029

大気中の共生微生物群が耕作地に漂着した際、これらを効果的に繁殖させるためには、通水性、通気性をより高く保つ構造が重要である。すなわち図2のように、高さ35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの畝を成形することにより、共生微生物群が繁殖しやすくなる。
一般の耕作地では、通水性、通気性を高めるための高畝は、通常は高さ15〜20cmで、最大で高さ30cmまでとされている。たとえば、ヤンマーやクボタなどの農業機械メーカーのサイトには、高畝の成形機について紹介されているが、いずれも畝の高さは最大で30cmに設定されている。

0030

畝の成形に関して従来の農業の常識では、なるべく低くすることが優先される。なぜなら、肥料は水分といっしょに作物に吸収されるため、高畝にして乾燥しすぎると肥料効果が薄れ、かえって作物の成長を阻害するからである。さらに、畝の高さが高くなればなるほど、作業効率も悪くなる。
そのため、肥料を使うことが前提になっている従来の栽培方法では、高さが30cmを超える畝の成形は想定されていない。
しかし、肥料を一切使用しない本発明においては、好気性の共生微生物の繁殖を最優先としており、肥料栽培ほどの水分を必要としない。むしろ従来の耕作地よりも通気性を重視しているため、想定外の高畝の成形が重要となる。

0031

また、土壌の状態によっては、畝の成形前に共生微生物群がある程度繁殖している可能性も考えられる。そこで、畝の成形ができた時点で、一般野菜の種を播き、成長具合を観察する。野菜の種類は何でも良いが、マメ科およびアブラナ科の種を含めるようにする。一般野菜が十分に成長するようであれば、そのまま農作物の作付が可能であると判断される。逆に、共生微生物群が繁殖していない場合、一般野菜は発芽しないか、または発芽してもほとんど成長しない。

0032

一般野菜が育たない土壌の場合、畝を成形したのち、放置したままでは、共生微生物群の繁殖にあまり大きな効果は認められない。とくに痩せ地で水はけが悪い畑の場合、共生微生物群を効果的に繁殖させるには、以下の通り手順よく導く必要がある。
第一に、35〜70cm、幅(上面)60〜200cmの畝を成形する。
第二に、その畝に自然に生える雑草類を成長させる。次に草刈機もしくは使い、刈り取って、畝と畝の間の溝に落とす(図3)。草を刈るタイミングとしては、花が咲く前後が効果的である。雑草類の根は引き抜かず、そのまま残す。
第三に、畝にマメ科植物の種を播き、畝全体に繁殖させる。畝全体に繁殖するまで、根を残し、地上部を刈り取って溝に落とす作業を繰り返す。マメ科植物が畝全体に繁殖すると、土壌中に共生微生物群が一定量繁殖しているとみなされる。
第四に、アブラナ科植物の種を播き、畝全体に繁殖させる。十分に繁殖するまで、根を残し、地上部を刈り取って溝に落とす作業を繰り返す。アブラナ科植物が畝全体に繁殖すると、共生微生物群が十分に繁殖しているとみなされ、他のさまざまな野菜類の栽培が可能となる。このことにより、肥料や農薬を一切使うことなく、豊富な農産物を確保することが可能となる。
ただし、畑の水はけの状態に応じて、前記手順の第二〜第四を同時か、もしくはいずれかを実施してもよい。

0033

前記手順の根拠と、具体的な造成方法について以下に述べる。まず、大気中に浮遊する共生微生物群を繁殖させる畝を成形する。図2は畝の断面であり、この形状を得るため、畝にする部分の両側に溝を掘る作業が第一である。使用する道具は、スコップでも可能であるが、溝堀り用の管理機を使用すると効率よく溝を掘ることができる。溝の幅は、図3のように、畝に生えた雑草を刈り取って溝に落としていくことを考慮し、60cm以上の幅を確保することが望ましい。

0034

溝の深さ(畝の高さ)は35〜70cmであるが、農作業の効率や共生微生物群の繁殖しやすさを考慮して、35〜50cmがより効果的である。

0035

畝幅(上面)は60〜200cmであるが、これは土壌の水はけによって最適値が異なる。水はけがよい場合は畝幅を広く取り、逆に水はけが悪い場合は畝幅を狭く取る。畝幅が狭い場合は乾燥し過ぎる可能性がある。逆に広い場合は水が抜けず、好気性菌を主体とする共生微生物群が窒息してしまう。大雨によって畑が冠水した場合、6時間以上水引けない場合は、好気性菌のほとんどが死滅すると考えられる。
そのため、雨水が抜けやすく、かつ乾燥し過ぎない幅にすることが望ましい。目安としては、畝幅が100cm以下の場合、急激に乾燥するために植物が育ちにくい傾向が認められる。逆に130cm以上の場合、雨水が抜けにくい傾向が認められる。よって、通水性、通気性、さらには保水性を確保するためには、畝幅100〜130cmがより効果的であると考えられる。

0036

畝が成形できたら、マメ科、アブラナ科を含む一般野菜の種をランダムに播く。そのまましばらく放置し、生育状況を観察する。一般野菜が成長しない場合、その土地に生える雑草をそのまま成長させる。関東地方の場合、年間を通して3月後半から少しずつ雑草が生え始め、5月に入るころになると旺盛に成長する。雑草が花を咲かせる前後、十分成長していると判断されたとき、根を残し、地上部を草刈機あるいは鎌で刈り取り、溝に落としていく。雑草は、刈り取られると、刺激を受けてさらに成長速度が増すとともに、根が発達する。同時に、雑草と共生する微生物も繁殖する。

0037

どんなに痩せた土地であっても、都会コンクリートの隙間であっても、雑草は繁殖する。これは、VA菌根菌と窒素固定エンドファイトとの共生関係によるものだと考えられる。植物の養分として三大要素と呼ばれているN(窒素)P(リン)K(カリウム)のうち、リンとカリウムはVA菌根菌によって、窒素栄養はエンドファイトによって供給されるのである。

0038

VA菌根菌とは、Vesicle(のう状体)やArbuscule(樹枝状体)をつくる真菌のことで、のう状態と樹枝状態を意味する英語頭文字を使った菌根菌である。菌根菌は植物の根に直接侵入し、養分の交換を行っている真菌を意味する。VA菌根菌は、他の糸状菌よりも菌糸を長く伸ばすことができ、痩せた土壌の広範囲からリンやカリウムなどの必須ミネラルを植物に供給することができる。全国の土壌に広く存在する土壌の常在菌である。

0039

窒素固定エンドファイトとは、空気中の窒素を固定し、アミノ酸を合成する能力を持ち、かつ、植物の体内に寄生している細菌である。エンドファイトは、中を意味するエンド(endo)と植物を意味するファイト(phyte)の合成語で、日本語では内生菌とも言われる。近年、エンドファイトの研究が進み、植物の免疫機能強化したり、窒素固定したりするさまざまなエンドファイトが発見されている。このことにより、窒素固定菌がいない痩せ地であっても、雑草類が繁殖する仕組みが解明されてきたのである。

0040

通水性および通気性が保たれた畝で雑草が十分に繁殖すると、次第にマメ科植物が育つようになる。マメ科植物には、アルファルファ、ルーピン、ダイズ、カラスノエンドウレンゲクローバーヘアリベッチなどさまざまな種類がある。このなかで、アルファルファは多年草で、根を深く地中に伸ばす習性があるため、通水性および通気性をさらに良くする効果も期待できる。ただし、その他の種類でも共生微生物群を繁殖させる働きがある。とくに、カラスノエンドウ、レンゲ、クローバーは、人為的に種を播かなくても、野生種が繁殖してくるので、それを待つのも良い。

0041

雑草類の次にマメ科植物が育つようになる意味は、本発明を実施するうえで特に重要である。以下は非特許文献5、p42からの引用である。
根粒をつけた植物が育つと、根粒菌の働きで次第に土の中の窒素量がふえ、菌根菌が増殖すると、リンなどのミネラルが可溶化して菌体に集まる。植物が葉や枝を落とすと微生物や小動物が集まって、増殖し、次第に地表に有機物がふえる。分解が始まると土が柔らかくなり、養分もふえ、生物も多くなり、植物も育つようになる。いったん、この物質循環の流れの環が動き出すと、自動的に環が大きくなり、生態系が育ち始める。この環を回すきっかけをつくっているのが根粒菌や菌根菌のような共生微生物であり、その役割は極めて大きい。

0042

前記の引用は、マメ科のダイズを例に解説しているものであるが、マメ科植物には、土壌中のVA菌根菌(真菌)と窒素固定菌(細菌)の両者とうまく共生する能力が備わっていることを意味している。すなわち、マメ科植物が繁殖しているということは、土壌に窒素固定菌が繁殖していることを証明しているのである。そして、マメ科植物が育つようになった土壌は、それ以降、微生物だけでなく、土壌中の小動物や地表の昆虫も含め、生態系の環が回り始めることを示している。

0043

マメ科植物の中でもダイズが根粒菌と共生関係を結ぶことは広く知られている。一方で、アルファルファやカラスノエンドウ、クローバーなどは、根粒を持たずに成長することがある。このときは、アゾトバクターなどの非接触型の窒素固定菌と共生していると考えられる。図4は、痩せた耕作放棄地で生育し始めたアルファルファを掘り出した写真である。根粒はなく、窒素栄養の獲得のために非接触型の窒素固定菌と共生していると考えられる。

0044

非接触型の窒素固定菌が生成するアミノ酸は、植物だけでなく、他の微生物の栄養分としても活用される。すなわち、非接触型の窒素固定菌が繁殖することによって、大気中から地表に漂着する多様な微生物も、ともに繁殖することができるようになる。つまり、植物にとって必要なさまざまな養分を生成する共生微生物群が繁殖し始めるということである。

0045

マメ科植物が十分に育つようになった段階で、次にアブラナ科の植物の種を播く。アブラナ科の植物としてはミズナ、コマツナ、ルッコラ、キャベツハクサイカブダイコンなど多くの種類がある。このうち、葉菜類、とくにミズナの利用が効果的である。

0046

アブラナ科植物は、VA菌根菌および根粒菌のどちらとも共生しない特徴を持つ。つまり、接触型の微生物とは共生しない植物である。微生物との共生関係としては、ミネラルは非接触型の真菌類から、アミノ酸などの窒素化合物は非接触型の細菌類から調達している。土壌中にこれらの共生微生物群が繁殖している場合、アブラナ科植物は順調に成長する。逆に、アブラナ科植物が成長しているならば、そこに共生微生物群が十分に繁殖していると考えられる。この段階になれば、他の野菜も栽培することが可能となる。

0047

高畝の成形から共生微生物群が繁殖するプロセスを図に示したものが図5である。ただし、図5は、長年の耕作放棄地のように、土壌中に有機物も微生物も乏しい痩せた土地であることが前提になったものである。

0048

肥料栽培を行っている畑を無肥料栽培に転換する場合は、共生微生物群を繁殖させることは難しい。図6は、肥料栽培における農産物と微生物の関係を示したものである。肥料栽培の場合、土壌中に繁殖している微生物は、有機物や無機物を分解する微生物群であり、一方的に植物に対して養分を供給していて、植物との共生関係はほとんどない。
さらに、土壌中に有機物があり、分解型の微生物群が繁殖している場合、窒素固定菌などの共生微生物は働かないことが知られている。

0049

以下は、非特許文献8、p19からの引用である。
窒素固定は、土壌中の窒素濃度が高い時には行われない。これは窒素固定の主体であるニトロゲナーゼ酵素活性阻害ベルやニトロゲナーゼ遺伝子の発現レベルなど、各段階において制御されているためである。つまり土壌中の硝酸態窒素やアンモニア態窒素濃度が高いと微生物は窒素固定を無理に行わず、土壌中の無機イオンを吸収するのである。
さらに無機態窒素濃度が高い時には、窒素固定菌であっても脱窒を行い土壌中の無機態窒素濃度レベル下げるものまで存在する。

0050

従って、肥料栽培から無肥料栽培に転換するためには、土壌中の化学肥料成分または有機物、さらに分解型の微生物を可能な限り取り除く必要がある。転換に要する期間は、それまでに投入した肥料の種類や量によって異なるが、これまでの実践者の経験から、5年から10年かかると考えられている。

0051

有機物などの肥料分を除くためには、吸肥力の高い作物を栽培する方法が通例である。具体的にはイネ科の作物で、小麦もしくは大麦を栽培することで、土壌中の肥料分を抜く期間が早くなると考えられている。これに、本発明の高畝を併用することにより、転換期間は5年より早くなると考えられる。

0052

また、本発明は大気中の常在菌のうち、植物と有益に共生するあらゆる微生物をそのまま選別することなく繁殖させ、さらに、一切の資材を人為的に投入せずに栽培する方法であるので、特許文献1〜4の方法とは、前提条件および目的が異なるものである。
さらに、特許文献5では、無肥料栽培は収益性が悪化すると指摘している。肥料栽培から無肥料栽培に転換した場合、共生微生物は繁殖しにくく、収量が一時的に激減する場合がある。しかし、本発明の造成方法により従来の肥料栽培並かそれ以上の収量が得られる。

0053

(比較例1)
千葉県柏市において、2011年5月より無肥料および無農薬栽培の実験を開始した。実験地は5か所で合計約15,000m2である。このうち、水はけの良い畑1,954m2(以降圃場Aとする)と、水はけの悪い畑3,123m2(以降圃場Bとする)について経過をたどる。いずれも10年以上の耕作放棄地である。

0054

(圃場A、2011年の経過)
圃場Aは、それまで定期的に耕起されていたため、5月の時点では畑に何も生えていなかった。そこで、どのような植物が育つか種を播いて様子を観察した。使用した品種はアルファルファ(マメ科)、エンバク(イネ科)、ブロッコリー(アブラナ科)、ケール(アブラナ科)、キャノーラ(アブラナ科)、レッドマスタード(アブラナ科)、ルッコラ(アブラナ科)、ビートアカザ科)、ホウレンソウ(アカザ科)、レッドオークキク科)である。
また、この時点では大気中の常在菌を活用する発想はなく、高畝の成形も一切実施していない。

0055

どの品種も発芽は確認できたが(図7)、ほとんどが枯れて消失した。夏までにメヒシバ(イネ科)などの雑草類が生えてきた。秋に再び前記の種を播いた。春のときよりも、多少は成長しているものがあったが、大きいものでも背丈が10cmに満たないまま成長は止まり、冬までにほとんどが枯れた。

0056

(圃場A、2012年の経過)
年明け以降、真冬の間、畑にはほとんど何も生えていなかった。しかし、3月下旬になると、ところどころマメ科のアルファルファが新芽を出すのを確認できた。アルファルファは多年草で、冬に地上部は枯れてしまうが、翌年の春になると新芽を出して成長する特徴を持つ。
すなわち、前年に播いた植物のうち、アルファルファのみがある程度繁殖したということになる。その後、夏にかけて、雑草類は前年に比べて非常に多く繁殖したものの、一方で全体の面積の約1/4にあたる約500m2でアルファルファが繁殖した。春にアブラナ科、アカザ科、キク科の野菜類の種も一部に播いたが、これらは前年と同様に、ほとんど育たなかった。

0057

6月、アルファルファが繁殖しているところを刈り取り、耕起してスイカ(ウリ科)、メロン(ウリ科)、キュウリ(ウリ科)、カボチャ(ウリ科)、トウモロコシ(イネ科)の定植した。いずれも種苗会社の種を購入して苗を作ったものである。梅雨明け前まで順調に生育したものの(図8)、梅雨明け後、ほとんど成長が止まった。8月にはほとんどの株が枯れた。しかし、小玉サイズのスイカを1個、直径10cmほどのメロンを1個収穫できたので、種を採種しておいた。

0058

10月になると、アルファルファの占める割合は約1/2の約1,000m2に広がった。そこで、アルファルファが最も良く茂っている場所を選び、刈り取ったのち耕起してミズナ(アブラナ科)の種を播いた。そこで、これまでに見たことのない現象が起きた(図9-a〜d)。10月28日に種を播いたところ、数日後にミズナだけでなく、雑草類も一斉に発芽した。ところが、雑草類は発芽したまま成長が止まり、ミズナだけが成長し始めたのである。従来の農学の常識では、野菜と雑草が同時に発芽した場合、どちらも成長するか、もしくは雑草のほうが旺盛に繁殖すると考えられている。
しかし、ここでは、明らかにミズナだけが順調に成長した。背丈が10cmを超えたころを見計らい、ベビーリーフとして収穫し、約50kgを出荷することができた。ベビーリーフの作付けに関しては、雑草が発芽した場合、野菜と交じってしまうため、収穫が困難とされる。たとえ収穫しても、雑草を選別して取り除くことがほぼ不可能だからである。ところが、圃場Aの場合、ミズナだけが成長したので、問題なく収穫できたのである。

0059

もともと、肥料を一切使用していない畑での事象である。従って、ミズナが成長した要因としては、土壌中の微生物との共生関係が考えられた。さらにこの畑においては、微生物資材を人為的に加えたこともないため、大気中の常在菌のうち、ミズナの成長に深くかかわる微生物が畑に漂着し、繁殖している可能性が浮上した。さらにその微生物は、雑草とは共生せず、野菜と共生する特徴を持つという仮説に至る。

0060

この仮説に関しては、圃場Aでの事象だけでなく、2012年の11月から翌年の春にかけて、関連する別の事象を確認した。千葉県柏市の市街地に、農機具や種を保管する事務所があり、そこから約15m離れた駐車場脇のスペースで、レッドマスタード(アブラナ科)が1株育っているのを確認した(図10)。これは、事務所に保管していた種が風で飛ばされ、この場所で発芽したものと推測される。ここは園芸用のスペースではなく、駐車している車の排気ガスがかかる位置のスペースである。雑草が生えるたびに地主がきれいに引き抜いて管理していた。ところが、一般野菜であるレッドマスタードが、10月ごろに一粒発芽し、みるみる成長していったのである。真冬になっても成長は止まらず、ついに翌年の春まで成長を続けた(図11)。

0061

肥料を入れたことはない駐車場脇のスペースであるが、ここは水はけがよく、大雨になっても冠水しない土壌である。雑草が生えては地主が引き抜く作業を繰り返してきたが、10年以上の長い時間が経過するうちに、レッドマスタードと共生する微生物群が繁殖したという仮説が導き出された。さらに、これらの微生物は、大気中の常在菌であり、わずかながら常に地面に漂着していたのではないかと推測された。

0062

(実施例1)
(圃場A、2013年の経過)
ミズナは収穫後にも枯れることなく、3月から葉が再生してきた。また、ミズナを作付していない場所では、アルファルファは前年にも増して勢い良く再生した(図12)。圃場Aは5か所の実験圃場のなかで、唯一水はけが良い畑であるが、一方、水はけの悪い圃場Bを含む他の畑では、試験的に播いた野菜類だけでなく、アルファルファもほとんど育たなかった。それらの事実を考慮し、植物と微生物の共生関係について以下の通り仮説を立てた。
1.野菜と共生する微生物は好気性菌が柱になっている。そのため、畑には通水性と通気性の確保が必要である。
2.共生微生物は大気中に浮遊する常在菌である。
3.アルファルファ(マメ科)が育つ環境には、共生微生物が繁殖し始めている。
4.さらにアブラナ科植物が育つ環境であれば、共生微生物が十分に繁殖している。
5.共生微生物が十分に繁殖していれば、さまざまな野菜が育つようになる。

0063

前記の仮説の検証のため、夏野菜を作付することにした。圃場Aはもともと水はけが良いが、仮説に従ってさらに通水性、通気性を高めるため、畝の高さを35〜40cm、畝幅(上面)を150〜200cmとし、5月の連休明けに、アルファルファ、ミズナを刈り取り、耕起したのちにトウモロコシ、ミニトマト、ナス、カボチャ、スイカ、メロンを作付した。

0064

いずれも順調に発芽し、梅雨明け直後まで問題なく成長した(図13-a〜d)。とくに、ミズナの後に作付した野菜のほうが、生育状態が良かった。しかし、2013年は千年猛暑と呼ばれる異常気象で、関東地方は例年より15日早い7月6日に梅雨明けし、異例の乾燥と高温が続いた。圃場Aに灌水設備はなく、トウモロコシ、ナスは成長が鈍り、ほとんど実が成らなかった。干ばつに強いといわれるミニトマトはやや成長が鈍ったものの、こちらは10月まで、順調に実を着けた。また、カボチャは1個収穫できた。カボチャからは、約130粒の種を採種した。これらはいずれも購入した種を直播した野菜である。

0065

このほか、スイカとメロンは、前年に自家採種した種を播いたもので、梅雨明け後も順調に生育した。このうち、スイカは6.2kgを頭に、大玉サイズを3個収穫。そのほか小玉サイズは10個収穫できた。いずれも食味は良好であった。また、メロンは18個収穫でき、うち9個は食味が良好だった。スイカは大玉3個から自家採種して約1,200粒を確保できた。メロンは最も大きく食味の良かった1個から約330粒採種した(図14-a〜e)。

0066

無肥料栽培の場合、種苗会社の種を購入してもある程度は生育するが、自家採種した種の場合、異常気象などの変化にも適応する強さを持つことがわかった。とくに、同一作物の自家採種かつ連作によって、品質が向上することが認められた。

0067

夏野菜が終わり、10月には秋冬野菜としてミズナ、ルッコラ(アブラナ科)、ビート、ホウレンソウ(以上アカザ科)、グリーンレタス(キク科)をそれぞれ作付した。発芽はどれも良好であったが、ビート、ホウレンソウ、グリーンレタスは生育にばらつきが見られた。一方、ミズナ、ルッコラは発芽後も順調に生育した(図15-a〜b)、
図16-a〜b)。また、前年に見られたように、ミズナ、ルッコラの畝では、雑草も発芽したものの、やはり発芽後すぐに成長が止まったのを確認した(図17)。その後もミズナ、ルッコラはよく成長し、とくにミズナは、この年にはさらに勢いがあった(図18)。ミズナは自家採種した種ではなく、購入した種を使用したが、連作による生育の向上が認められた。

0068

圃場Aにおける3年間の栽培実験の結果、大気中の常在菌のうち、夏野菜(ウリ科、ナス科、イネ科)やアブラナ科野菜と共生し、人為的に肥料を投入することなく野菜を成長させる微生物が存在することは明らかである。これらの微生物がその他の野菜類あるいは果樹と共生し、無肥料栽培を実現しうるかは今後の課題として残されているが、少なくとも夏野菜およびアブラナ科野菜との共生によって、農業経営が成立する規模で栽培可能であることを示した。

0069

(比較例2)
水はけの悪い圃場Bは、もともと田んぼにするために粘土質の土を埋め立てた土地であるが、一度も米を作付けしたことがない土地である。2011年5月の時点では、一面葦で覆われていた。そこで、まず葦を刈り取り、全面耕起したうえで、圃場Aと同様に種を播き、生育経過を観察した。

0070

(圃場B、2011年の経過)
梅雨の時期は、雨が降ると一部は冠水し(図19)、全体が水田のようにぬかるむ状態であった。播いた種は、一部は発芽するものの、冠水するたびに消滅した。夏になると、雑草もあまり生えず、葦が再生してきた。秋に入るころ、葦を刈り取り、再び耕起してミズナ、ケール、レッドマスタード(いずれもアブラナ科)を播いてみた。どれも発芽はしたものの(図20)、背丈が10cm以下のままで、ほとんどが冬を前に枯れた。

0071

(圃場B、2012年の経過)
年が明け、3月になっても、圃場Aのようにマメ科のアルファルファが再生することもなく、前年に播いた種は全滅したことが確認された。圃場Aと圃場Bの違いは水はけであり、通水性および通気性の確保が重要であることがわかった。
圃場Bは、とくに水はけが悪かったため、通水性および通気性を確保するため、思い切った高畝を成形することにした。基本的な形としては、高さ35〜50cm、畝幅60cmを基準とし(図21)、高さは最大70cm、畝幅は最大200cmまでの範囲で、さまざまな形の畝を成形した(図22)。通常の栽培方法では、高さ30cmまでを高畝と呼び、これ以上の高さに成形することはない。理由は、通気性は良くなる反面、乾燥が激しくなり、作物の成長を阻害するからである。しかし、水はけの悪い状態では、一切の作物が育たないという状況から、従来の枠を超えた思い切った対策が必要であるとの結論に達した。

0072

圃場Bは粘土質で、乾燥すると土が固く締まった。高畝を立てるために、溝堀り用の管理機を使ったが、土が固いために鉄製の爪が入らず、まず鍬で土を起こし、次に管理機を使って溝堀りした。その際、地面から10cmも掘ると、ゴロゴロした石のような塊の土であった(図23)。

0073

高畝を成形したあと、前年と同じようにさまざまな種を播き、様子を観察した。しかし、播いた種のほとんどが消滅した。また、葦も一部で再生したほか、前年には見られなかった雑草類が旺盛に繁殖した。そこで、何度か雑草を草刈機で刈り取り、溝に落として、その後の経過を観察した(図24)。

0074

夏を過ぎると、一部の畝では土の塊がボロボロと崩れるようになり、一年を経過するころ、サラサラの状態にまで変化した(図25)。これは、高さ35〜50cm、畝幅(上面)が100〜130cmの畝で顕著に起きた変化である。幅が100cmより狭かったり、高さが50cmより高かったりする場合は乾燥が激しく、雑草もあまり生えなかった。また130cmより広い畝では、水が抜けずに、雑草類の成長が思わしくなかった。そして、どちらの場合も土の質はあまり変化しなかった。このことにより、一定の形の畝を成形すると、通水性および通気性、さらに保水性のバランスが良くなり、大気中から漂着する微生物が繁殖しやすい環境になるものと推測された。

0075

(圃場B、2013年の経過)
2012年は、常識を超えた高畝を成形したことによって、土の状態が劇的に変化した。しかし、アルファルファをはじめ、野菜類はほとんど育たなかった。一方、もともと水はけの良い圃場Aでは、アルファルファが繁殖し、続いてミズナが成長した。この結果を受け、2013年は、圃場Bの畝幅(上面)を100〜130cmに統一し、なおかつアルファルファに特化して種まきし、経過を観察した。

0076

春から夏にかけて雑草は大いに繁殖したが、アルファルファもところどころで育ち始めた(図26)。その後も土壌改良に集中し、畝に生えた雑草やアルファルファを定期的に刈り取り、溝に落とす作業を繰り返した。

0077

(実施例2)
(圃場B、2014年の経過)
スイカやメロンなどが収穫できた圃場Aは、2014年春に地主に返却することになったため、栽培実験は、圃場Bを中心に実施することになった。3月の時点で、アルファルファが育った範囲は、約3,000m2のうち約500m2で、決して十分に改良されているとはいえない状態であった。しかし、少なくともアルファルファが伸びている周辺には、共生微生物群がある程度繁殖していると推測されることから、スイカとメロンおよびカボチャに絞って栽培実験を試みた。これらの野菜は、いずれも自家採種した種である。スイカ、メロンは3代目、カボチャは2代目である。
自家採種した種のほうが適応しやすいと判断したもので、まだ土壌改良が十分とはいえず、なおかつ農作物が一度も育ったことのない圃場Bにおいて、可能な限り順調に栽培できることを目指した。
また、前年の圃場Aの経過から、アブラナ科のミズナを作付するほうが望ましいと考えたが、ミズナの種は自家採種していないこと、さらにアブラナ科野菜は秋に作付するほうが時期的に適していることを考慮し、夏野菜であるスイカ、メロン、カボチャに特化することにした。

0078

前年の夏は異常気象といわれるほど乾燥と高温が続いたため、2014年は高畝にマルチを張り、乾燥時の保湿をはかった(図27)。2014年は、単一作物を大量に栽培することが目標である。そこで、4月中旬から6月初旬にかけて、時期をずらしながら種を播いた。スイカ約300株、メロン約200株、カボチャ約10株でいずれもほぼ順調に発芽した。

0079

しかし、2014年は例年にない長雨と大雨に見舞われた。畑の一部は、35〜50cmの溝が数日にわたって冠水した。そのため、生育状況にばらつきが出てきた。その中で、冠水を免れた畝のスイカ、カボチャは順調に生育した。スイカは小玉から中玉サイズ(2〜4kg)が約300個収穫できたほか、カボチャは大玉サイズ(2〜3kg)が13個収穫できた。メロンは順調に成長していたが、もともと雨に弱い品種であり、大雨の影響を強く受けたため、7月22日の梅雨明け後、ほとんど生育が止まった。
図28-a〜e)

実施例

0080

以上のことから、高畝に成形したあとにマメ科植物であるアルファルファが繁殖すると、十分とはいえなくとも、共生微生物群がある程度繁殖していることは確実である。さらに、野菜が発芽すると、直ちにその周辺に存在する共生微生物群と共生関係が結ばれる。野菜類は、発芽したばかりでも光合成によってブドウ糖を生成し、根から放出を始める。それによって共生微生物群はアミノ酸やビタミン、ホルモン、ミネラルを野菜に供給し始める。初めは少量の養分交換から始まるが、シーソーゲームのように互いに補完する形で成長し、植物と共生微生物群の生態系が拡大しながら回り始めると考えられるのである。

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