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技術 肺炎球菌表面タンパク質Aを含む肺炎球菌ワクチン

出願人 国立大学法人大阪大学
発明者 明田幸宏朴貞玉大石和徳
出願日 2015年12月4日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2015-237366
公開日 2016年4月7日 (4年7ヶ月経過) 公開番号 2016-047842
状態 特許登録済
技術分野 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 化合物または医薬の治療活性 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬
主要キーワード 労働科学 研究費 レギュラ カバー率 対象菌株 非含有条件 HBs抗原 使用実績
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図面 (9)

課題

肺炎球菌表層タンパク質抗原であるPspAの組み合わせの中から、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答誘導可能なクレードの組み合わせまたは菌株の組み合わせを見出し、PspAをベースとする新規肺炎球菌ワクチンを提供すること。

解決手段

少なくともファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントと、ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントとを含む融合タンパク質、特に以下の(1)〜(3)のいずれかの融合タンパク質を含有する肺炎球菌ワクチン。(1)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質(2)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質(3)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質

概要

背景

肺炎球菌は主要な呼吸器病原性細菌であり、小児成人髄膜炎敗血症を含む侵襲性感染症(Invasive pneumococcal disease:IPD)や市中肺炎惹起する。現行肺炎球菌ワクチン抗原は本菌の血清型を決定する莢膜ポリサッカライドであり、現在までに少なくとも93血清型が存在することが知られている。
2000年に米国で小児用ワクチンとして無毒化ジフテリアトキシン(CRM197)をポリサッカライド抗原に結合させた7価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV7)が導入された。PCV7導入後にワクチン含有の7血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症は明らかに減少したものの、小児および成人における非ワクチン含有血清型である血清型19AなどによるIPD症例の増加の問題が浮上してきた。このため、2010年にPCV7にさらに6血清型の莢膜多糖体を抗原として追加した13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV13)が導入され、既に米国では小児、成人において承認されている。

一方で、Croneyらは、PCV13接種前の2002〜2010年の間に発症した米国アラバマ州の小児侵襲性感染症由来肺炎球菌株を集めて大規模調査を行ったところ、PCV13に含有される血清型は60%しか含んでおらず、残りの40%の菌株にはPCV13に含まれない17血清型が含まれていた(非特許文献1)。我が国でも2011年から小児に対するPCV7接種の公費助成が開始されたが、2012年には米国と同様に非ワクチン含有血清型によるIPDの増加が報告されている(非特許文献2)。現行ワクチンに非ワクチン血清型莢膜多糖体を抗原として追加し続けることは非現実的であり、このことは莢膜多糖体をベースとする現行の肺炎球菌ワクチンの限界示唆するものであると言える。

以上のような現行肺炎球菌ワクチンの欠点を補う目的で、肺炎球菌表層タンパク質抗原の一つである肺炎球菌表面タンパク質A(Pneumococcal surface protein A、以下「PspA」と記す。)が、新規肺炎球菌ワクチン抗原として注目されている。PspAは図1に示す各ドメインからなる構造を有しており、PspAのα−へリックスおよびプロリンリッチ領域には肺炎球菌に対して感染防御作用を示す抗体が認識する抗原エピトープが存在することが知られている(非特許文献3,4)。PspAは、その抗原エピトープ領域の遺伝子配列により、大きく3つのファミリー分類され、さらに6つのクレードと呼ばれる亜群に分類される。臨床より分離される肺炎球菌のPspAファミリーは、ファミリー1および2で98%以上を占める(非特許文献5)。PspAは病原因子としても働き、肺炎球菌菌体表面への補体C3の結合を阻害することが知られており(非特許文献6)、一方で、抗PspA特異抗体は、PspAの持つ補体阻害活性に対して拮抗的に作用し、本菌に対する感染防御活性を示すことが知られている(非特許文献7,8)。この感染防御活性は、異なるPspAファミリーを交差認識する抗体によっても起こることが報告されている(非特許文献9)。一方、異なるPspAの交差反応性には多様性があるため(非特許文献10,11)、より広域な交差反応を示すファミリー1とファミリー2に属するクレードの組み合わせを選別することは、PspAをベースとするワクチンの開発に重要と考えられる。

PspAタンパク質が、肺炎球菌感染に対するワクチンの免疫学的活性成分として有用であることは、例えば特許文献1、2に記載されている。
非特許文献12では、ファミリー1クレード1のPspAとファミリー2クレード4のPspAとの融合タンパク質、およびファミリー1クレード1のPspAとファミリー2クレード3のPspAとの融合タンパク質のワクチン効果が検討されている。また、非特許文献13では、ファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード4のPspAとの融合タンパク質のワクチン効果が検討されている。しかし、これら2つの文献に記載のPspA融合タンパク質については、クレード5および6のPspAを発現する肺炎球菌に対するワクチン効果や、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対するワクチン効果は評価されておらず、未だ実用化されたとの報告はない。

概要

肺炎球菌表層タンパク質抗原であるPspAの組み合わせの中から、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答誘導可能なクレードの組み合わせまたは菌株の組み合わせを見出し、PspAをベースとする新規な肺炎球菌ワクチンを提供すること。少なくともファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントと、ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントとを含む融合タンパク質、特に以下の(1)〜(3)のいずれかの融合タンパク質を含有する肺炎球菌ワクチン。(1)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質(2)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質(3)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質なし

目的

本発明は、肺炎球菌表層タンパク質抗原であるPspAの組み合わせの中から、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答を誘導可能なクレードの組み合わせまたは菌株の組み合わせを見出し、PspAをベースとする新規な肺炎球菌ワクチンを提供する

効果

実績

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請求項1

少なくともファミリークレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aと、クレード3、クレード4およびクレード5からなる群より選択されるファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aを非経口投与する肺炎球菌ワクチンであって、前記ファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aは、少なくともプロリンリッチ領域とα−へリックス領域を含み生体に対して肺炎球菌感染症感染防御免疫誘導できる部分であり、前記ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aは、少なくともプロリンリッチ領域とα−へリックス領域を含み生体に対して肺炎球菌感染症の感染防御免疫を誘導できる部分であることを特徴とする肺炎球菌ワクチン。

請求項2

含有する肺炎球菌表面タンパク質Aが、以下の(i)〜(iii)のいずれかである請求項1に記載の肺炎球菌ワクチン。(i)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード3のみ(ii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード4のみ(iii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード5のみ

請求項3

ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aが、D39、WU2、E134、EF10197、EF6796、BG9163およびDBL5からなる群より選択される肺炎球菌株由来であることを特徴とする請求項1または2に記載の肺炎球菌ワクチン。

請求項4

ファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aを発現する肺炎球菌が、TIGR4、BG8090またはAC122由来であり、ファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aが、EF5668、BG7561、BG7817またはBG11703由来であり、ファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aが、ATCC6303またはKK910由来であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。

請求項5

アジュバントを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。

請求項6

肺炎球菌以外の病原体に対するワクチン成分を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。

技術分野

0001

本発明は、肺炎球菌表面タンパク質Aを含む肺炎球菌ワクチンに関するものである。

背景技術

0002

肺炎球菌は主要な呼吸器病原性細菌であり、小児成人髄膜炎敗血症を含む侵襲性感染症(Invasive pneumococcal disease:IPD)や市中肺炎惹起する。現行の肺炎球菌ワクチン抗原は本菌の血清型を決定する莢膜ポリサッカライドであり、現在までに少なくとも93血清型が存在することが知られている。
2000年に米国で小児用ワクチンとして無毒化ジフテリアトキシン(CRM197)をポリサッカライド抗原に結合させた7価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV7)が導入された。PCV7導入後にワクチン含有の7血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症は明らかに減少したものの、小児および成人における非ワクチン含有血清型である血清型19AなどによるIPD症例の増加の問題が浮上してきた。このため、2010年にPCV7にさらに6血清型の莢膜多糖体を抗原として追加した13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV13)が導入され、既に米国では小児、成人において承認されている。

0003

一方で、Croneyらは、PCV13接種前の2002〜2010年の間に発症した米国アラバマ州の小児侵襲性感染症由来肺炎球菌株を集めて大規模調査を行ったところ、PCV13に含有される血清型は60%しか含んでおらず、残りの40%の菌株にはPCV13に含まれない17血清型が含まれていた(非特許文献1)。我が国でも2011年から小児に対するPCV7接種の公費助成が開始されたが、2012年には米国と同様に非ワクチン含有血清型によるIPDの増加が報告されている(非特許文献2)。現行ワクチンに非ワクチン血清型莢膜多糖体を抗原として追加し続けることは非現実的であり、このことは莢膜多糖体をベースとする現行の肺炎球菌ワクチンの限界示唆するものであると言える。

0004

以上のような現行肺炎球菌ワクチンの欠点を補う目的で、肺炎球菌表層タンパク質抗原の一つである肺炎球菌表面タンパク質A(Pneumococcal surface protein A、以下「PspA」と記す。)が、新規肺炎球菌ワクチン抗原として注目されている。PspAは図1に示す各ドメインからなる構造を有しており、PspAのα−へリックスおよびプロリンリッチ領域には肺炎球菌に対して感染防御作用を示す抗体が認識する抗原エピトープが存在することが知られている(非特許文献3,4)。PspAは、その抗原エピトープ領域の遺伝子配列により、大きく3つのファミリー分類され、さらに6つのクレードと呼ばれる亜群に分類される。臨床より分離される肺炎球菌のPspAファミリーは、ファミリー1および2で98%以上を占める(非特許文献5)。PspAは病原因子としても働き、肺炎球菌菌体表面への補体C3の結合を阻害することが知られており(非特許文献6)、一方で、抗PspA特異抗体は、PspAの持つ補体阻害活性に対して拮抗的に作用し、本菌に対する感染防御活性を示すことが知られている(非特許文献7,8)。この感染防御活性は、異なるPspAファミリーを交差認識する抗体によっても起こることが報告されている(非特許文献9)。一方、異なるPspAの交差反応性には多様性があるため(非特許文献10,11)、より広域な交差反応を示すファミリー1とファミリー2に属するクレードの組み合わせを選別することは、PspAをベースとするワクチンの開発に重要と考えられる。

0005

PspAタンパク質が、肺炎球菌感染に対するワクチンの免疫学的活性成分として有用であることは、例えば特許文献1、2に記載されている。
非特許文献12では、ファミリー1クレード1のPspAとファミリー2クレード4のPspAとの融合タンパク質、およびファミリー1クレード1のPspAとファミリー2クレード3のPspAとの融合タンパク質のワクチン効果が検討されている。また、非特許文献13では、ファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード4のPspAとの融合タンパク質のワクチン効果が検討されている。しかし、これら2つの文献に記載のPspA融合タンパク質については、クレード5および6のPspAを発現する肺炎球菌に対するワクチン効果や、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対するワクチン効果は評価されておらず、未だ実用化されたとの報告はない。

0006

特公平6−504446号公報
特表2000−503676

先行技術

0007

Croney CM, CoatsMT, NahmMHet al. 2012. PspA family distribution, unlike capsular serotype, remains unaltered following introduction of the heptavalent pneumococcal conjugate vaccine. Clin Vaccine Immunol. 19:891-896.
厚生労働科学研究費補助金医薬品・医薬機器レギュラトリーサイエンス総合事業.「新しく開発されたHib,肺炎球菌、ロタウイルス、HPV等の各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究」小児侵襲性感染症由来肺炎球菌の疫学解析.柴山恵吾.p46-53. 平成24年3月
McDaniel LS, Ralph BA, McDanielDOet al. 1994. Localization of protection-eliciting epitopes on PspA of Streptococcus pneumonia between amino acid residues 192 and 260. Microb Pathog. 17:323-37.
Daniels CC, Coan P, King J et al. 2010. The proline-rich region of pneumococcal surface proteins A and C contains surface-accessible epitopes common to all pneumococci and elicits antibody-mediated protection against sepsis. Infect Immun. 78:2163-2172.
HollingsheadSK, Becker R, Briles DE. 2000. Diversity of PspA: mosaic genes and evidence for past recombination in Streptococcus pneumoniae. Infect Immun. 68:5889-5900.
TuAH, Fulgham RL, McCrory MA et al. 1999. Pneumococcal surface protein A inhibits complement activation by Streptococcus pneumoniae. Infect Immun. 67: 4720-4724.
Ezoe H, Akeda Y, Piao Z, Aoshi T, Koyama S, Tanimoto T, Ken J. Ishii KJ, Oishi K. 2011. Intranasal vaccination with pneumococcal surface protein A plus poly(I:C) protects against secondary pneumococcal pneumonia in mice. Vaccine 29:1754-1761.
Piao Z, Oma K, Ezoe H, Akeda Y, Tomono K, Oishi K. 2011. Comparative effects of toll-like receptor agonists on a low dose PspA intranasal vaccine against fatal pneumococcal pneumonia in mice. J Vaccines Vaccin 2:1, htt://dx.doi.org/10.4172/2157-7560.1000113
Ren B, Szalai AJ, Hollingshead SK et al. 2004. Effects of PspA and antibodies to PspA on activation and deposition of complement on the pneumococcal surface. Infect Immun. 72:114-122.
Darrieux M, Moreno AT, FerreiraDMet al. 2008. Recognition of pneumococcal isolates by antisera raised against PspA fragments different clades. J Med Microbiol. 57:273-278.
Moreno AT, Oliveira ML, Ferreira DM et al. 2010. Immunization of mice with single PspA Fragments induces Antibodies capable of mediating complement deposition on different pneumococcal strains and cross-protection. Clin Vaccine Immunol. 17:439-446.
M. Darrieux, E. N. Miyaji, D. M. Ferreira, L. M. Lopes, A. P. Y. Lopes, B. Ren, D. E. Briles, S. K. Hollingshead, and L. C. C. Leite. 2007. Fusion Proteins Containing Family 1 and Family 2 PspA Fragments Elicit Protection against Streptococcus pneumoniae That Correlates with Antibody-Mediated Enhancement of Complement Deposition. Infect Immun. 75: 5930-5938.
Wei Xin, Yuhua Li, Hua Mo, Kenneth L. Roland, and Roy Curtiss III. 2009. PspA Family Fusion Proteins Delivered by Attenuated Salmonella enterica Serovar Typhimurium Extend and Enhance Protection against Streptococcus pneumonia. Infect Immun. 77: 4518-4528.

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、肺炎球菌表層タンパク質抗原であるPspAの組み合わせの中から、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答誘導可能なクレードの組み合わせまたは菌株の組み合わせを見出し、PspAをベースとする新規な肺炎球菌ワクチンを提供することを課題とする。特に、複数のPspAを組み合わせた融合タンパク質において、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答を誘導可能な単一のタンパク質抗原を見出し、新規な肺炎球菌ワクチンを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]少なくともファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質A(ただし、肺炎球菌Rx1株由来の肺炎球菌表面タンパク質Aおよび肺炎球菌St435/96株由来の肺炎球菌表面タンパク質Aを除く)の全長またはそのフラグメントと、ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントとを含む融合タンパク質を含有することを特徴とする肺炎球菌ワクチン。
[2]ファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aがクレード2であることを特徴とする前記[1]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[3]融合タンパク質が、以下の(1)〜(3)のいずれかである前記[2]に記載の肺炎球菌ワクチン。
(1)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質
(2)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質
(3)少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aとを含む融合タンパク質
[4]融合タンパク質が、以下の(4)〜(6)のいずれかである前記[3]に記載の肺炎球菌ワクチン。
(4)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
(5)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
(6)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
[5]肺炎球菌表面タンパク質Aのフラグメントが、少なくともプロリンリッチ領域の全部または一部を含むことを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。
[6]肺炎球菌表面タンパク質Aのフラグメントが、プロリンリッチ領域の全部または一部およびそれに隣接するα−へリックス領域の全部または一部からなることを特徴とする前記[5]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[7]ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aが、D39、WU2、E134、EF10197、EF6796、BG9163およびDBL5からなる群より選択される肺炎球菌株由来であることを特徴とする前記[2]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[8]ファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aを発現する肺炎球菌が、TIGR4、BG8090またはAC122由来であり、ファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aが、EF5668、BG7561、BG7817またはBG11703由来であり、ファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aが、ATCC6303またはKK910由来であることを特徴とする前記[3]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[9]融合タンパク質が、配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする前記[1]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[10]少なくともファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントと、クレード3、クレード4およびクレード5からなる群より選択されるファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントとを含有することを特徴とする肺炎球菌ワクチン。
[11]含有する肺炎球菌表面タンパク質Aが、以下の(i)〜(iii)のいずれかである前記[10]に記載の肺炎球菌ワクチン。
(i)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード3のみ
(ii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード4のみ
(iii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード5のみ
[12]アジュバントを含むことを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。
[13]肺炎球菌以外の病原体に対するワクチン成分を含むことを特徴とする前記[1]〜[12]のいずれかに記載の肺炎球菌ワクチン。

発明の効果

0010

本発明により、広域な交差反応を示し、広範囲の臨床分離肺炎球菌株に対して免疫応答を誘導可能な肺炎球菌ワクチンを提供することができる。本発明の肺炎球菌ワクチンの接種により、小児および成人に対して肺炎球菌感染症感染防御免疫を誘導することができる。

図面の簡単な説明

0011

PspAタンパク質の構造を示す図である。
実施例1で作製した3種類の融合PspAタンパク質の構造を示す図であり、(A)はPspA2+4、(B)はPspA2+5、(C)はPspA3+2の構造を示す図である。
(A)は各融合PspAタンパク質のSDS−PAGEの結果を示す図であり、(B)は各融合PspAタンパク質のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
各融合PspAタンパク質を免疫したマウスから得られた免疫血清IgGのPspAクレードが異なる肺炎球菌表面への結合能を測定した結果を示す図である。
各融合PspAタンパク質を免疫したマウスにPspAクレードが異なる肺炎球菌を感染させ、感染後2週間の生存率を観察した結果を示す図であり、(A)はBG9739を2×107CFU、(B)はWU2を2×107CFU、(C)はTIGR4を5×106CFU、(D)はKK1162を1×108CFU、(E)はATCC6303を5×105CFU感染させた結果である。
各融合PspAタンパク質を免疫したマウスから得られた免疫血清中IgGの臨床分離肺炎球菌株への結合能を測定した結果を示す図であり、(A)はPspA2+4による免疫血清、(B)はPspA2+5による免疫血清、(C)はPspA3+2による免疫血清の結果である。
PspA2単独、PspA3単独、PspA2とPspA3、PspA3+2融合タンパク質をそれぞれ免疫したマウスから得られた免疫血清中の抗PspA抗体価を測定した結果を示す図である。
アジュバントとしてCpGおよびAlumの併用またはCpGの単独を使用し、3種類の融合PspAタンパク質(PspA2+4、PspA2+5、PspA3+2)を免疫したマウスから得られた免疫血清中の抗PspA抗体価を測定した結果を示す図である。
アジュバントとしてAlumの各濃度を単独で用い、PspA3+2融合タンパク質を免疫したマウスから得られた免疫血清中の抗PspA抗体価を測定した結果を示す図である。

0012

〔肺炎球菌ワクチン〕
本発明は、少なくともファミリー1のPspAの全長またはそのフラグメントと、ファミリー2のPspAの全長またはそのフラグメントとを含む融合タンパク質を含有する肺炎球菌ワクチンを提供する。ただし、前記非特許文献13に記載のファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード4のPspAとの融合タンパク質に用いられた肺炎球菌Rx1株由来のPspA(ファミリー1クレード2)を含む融合タンパク質は本発明から除かれる。また、前記非特許文献12に記載の融合タンパク質において、ファミリー1クレード1のPspAとして用いられた肺炎球菌St435/96株(非特許文献12およびMiyaji EN et al., Infect Immun. 70: 5086-5090, 2002.のTABLE1参照)由来のPspA(ファミリー1クレード1)を含む融合タンパク質も本発明から除かれる。肺炎球菌St435/96株のPspAをコードする遺伝子の一部およびそのアミノ酸配列は、アクセッション番号AY082387でGenBank等のデータベース登録されている。本明細書の以下の記載において、「ファミリー1のPspA」にはRx1株およびSt435/96株由来のPspAは含まれない。

0013

本発明の肺炎球菌ワクチン(以下「本発明のワクチン」と記す)が含有する融合タンパク質(以下「本発明の融合タンパク質」と記す場合がある)は、少なくともファミリー1のPspAおよびファミリー2のPspAを含むものであればよい。本発明の融合タンパク質は、3種以上のPspAを含むものでもよく、PspA以外のタンパク質や莢膜ポリサッカライド(例えばキャリアータンパク質莢膜ワクチン抗原等)を含むものでもよい。好ましくは、2種類のPspAからなる融合タンパク質、すなわちファミリー1のPspAとファミリー2のPspAからなる融合タンパク質である。また、融合タンパク質は、タグ配列ベクター由来配列、制限酵素由来配列等のPspA以外のアミノ酸配列を含んでいてもよい。

0014

本発明の融合タンパク質において、融合する各タンパク質の順序は限定されず、例えば、ファミリー1およびファミリー2の2種類のPspAの融合タンパク質の場合、N末端側がファミリー1でC末端側がファミリー2の順でもよく、逆にN末端側がファミリー2でC末端側がファミリー1の順でもよい。3種以上のPspAの融合タンパク質の場合やPspA以外のタンパク質を含む場合も同様に、順序は限定されない。

0015

本発明の融合タンパク質には、ファミリーおよびクレードが既に同定されている肺炎球菌由来のPspAを好適に用いることができる。また、ファミリーおよびクレードが未同定の肺炎球菌由来のPspAを用いる場合は、ファミリーおよびクレードを同定した後に用いることが好ましい。PspAのファミリーおよびクレードは、PspA遺伝子のα−ヘリックス領域およびプロリンリッチ領域を含むと予想される部分をPCR増幅し、塩基配列を決定し、得られた塩基配列中プロリンリッチ領域の上流約400bpの塩基配列を、クレードが既に同定されているPspA遺伝子の塩基配列と比較することにより確認することができる。具体的には、当該部分の塩基配列と表1または2に示している任意のPspA遺伝子の塩基配列との相同性が97〜100%であれば同一クレードと判断する。クレード1または2に同定されたPspAはファミリー1、クレード3または4または5に同定されたPspAはファミリー2、クレード6に同定されたPspAはファミリー3と判断する(参考文献:非特許文献5、Swiatlo E, Brooks-Walter A, Briles DE, McDaniel LS. Oligonucleotides identity conserved and variable regions of pspA and pspA-like sequences of Streptococcus pneumonia. Gene 1997, 188:279-284.)。また、ファミリー1およびファミリー2に特異的なプライマーを用いてPspA遺伝子を増幅し、PCR産生物のサイズが約1000bpであればファミリー1と判断し、PCR産生物のサイズが約1200bpであればファミリー2と判断することができる(参考文献:Vela Coral MC, Fonseca N, Castaneda E, DiFabio JL, HollingsheadSK, Briles DE. Pneumococcal surface protein A of invasive Streptococcus pneumonia isolates from Colombian children. Emerg Infect Dis 2001, 7:832-6.)。

0016

ファミリーおよびクレードが同定されている肺炎球菌としては、例えば表1および表2に記載の肺炎球菌が挙げられ、これらの肺炎球菌(Rx1を除く)由来のPspAはいずれも本発明の融合タンパク質に好適に用いることができる。

0017

0018

0019

本発明の融合タンパク質において、ファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aはクレード2であることが好ましい。より好ましくは以下の(1)〜(3)の融合タンパク質である。
(1)少なくともファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード3のPspAとを含む融合タンパク質
(2)少なくともファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード4のPspAとを含む融合タンパク質
(3)少なくともファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード5のPspAとを含む融合タンパク質
さらに好ましくは以下の(4)〜(6)の融合タンパク質である。
(4)ファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード3のPspAからなる融合タンパク質
(5)ファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード4のPspAからなる融合タンパク質
(6)ファミリー1クレード2のPspAとファミリー2クレード5のPspAからなる融合タンパク質
また、ファミリー2のPspAはクレード3であることが好ましい。したがって、本発明のワクチンとしては、上記(1)または(4)の融合タンパク質を含有することが好ましい。

0020

融合タンパク質に用いるPspAは、全長でもよくそのフラグメントでもよい。融合タンパク質を構成する2種以上のPspAの全部が全長でもよく、全長とフラグメントの混合でもよく、全部がフラグメントでもよい。PspAは図1に示した通り、シグナル配列(signal sequence)、α−へリックス(α-Helix)、プロリンリッチ(Proline-rich)、コリン結合(Choline binding)およびC末端尾部(C-terminal tail)の各領域からなるタンパク質(前駆体)として発現し、そこからシグナル配列が切断されて成熟PspAになる。したがって、全長PspAは、図1に示したPspAからシグナル配列の領域を除いた部分を意味する。本発明の融合タンパク質に用いるPspAのフラグメントは、全長PspAの一部からなるものであって、生体に対して肺炎球菌感染症の感染防御免疫を誘導できるものであれば特に限定されないが、プロリンリッチ領域の全部または一部を含むことが好ましい。また、PspAのフラグメントは、プロリンリッチ領域と隣接するα−へリックス領域の全部または一部を含むものであってもよい。さらに、PspAのフラグメントは、C末端尾部領域を含まないことが好ましく、コリン結合領域およびC末端尾部領域を含まないことがより好ましい。すなわち、本発明の融合タンパク質に用いるPspAのフラグメントは、プロリンリッチ領域の一部のみからなるもの、プロリンリッチ領域の全部のみからなるもの、プロリンリッチ領域の一部と隣接するα−へリックス領域の一部からなるもの、プロリンリッチ領域の一部と隣接するα−へリックス領域の全部からなるもの、プロリンリッチ領域の全部と隣接するα−へリックス領域の一部からなるもの、およびプロリンリッチ領域の全部とα−へリックス領域の全部からなるもののいずれかであることが好ましい。より好ましくは、プロリンリッチ領域の全部とα−へリックス領域の全部からなるフラグメントである。

0021

PspAの各領域は、Yotherら(Yother J, Briles DE. 1992. Structural properties and evolutionary relationships of PspA, a surface protein of Streptococcus pneumoniae, as revealed by sequence analysis. J. Bacteriol. 174: 601-609)の報告に準じて決定することができる。具体的には、α−へリックス領域は、Rx1株由来PspAでは、二次構造予測プログラムを用いてα−へリックス構造を持つと予測された領域(第1位〜第288位)からシグナル配列(第1位〜第31位)を除いた領域であり、このアミノ酸配列と高い相同性を示す領域と定義することができる。プロリンリッチ領域は、α−へリックス領域とコリン結合領域の間に位置し、プロリン残基が頻繁に出現する領域と定義することができる。コリン結合領域は、Rx1株由来PspAでは、比較的高度に保存された20アミノ酸(TGWLQVNGSWYYLNANGAMA(配列番号24)を基本とする)からなる繰り返し配列が10回存在する領域であり、このアミノ酸配列と高い相同性を示す領域と定義することができる。C末端尾部領域は、コリン結合領域に存在する最終繰り返し配列の直後からC末端のストップコドンまでの領域と定義することができる。

0022

PspAのフラグメントの長さは、生体に対して免疫応答を誘導可能な長さであれば特に限定されない。少なくとも27残基以上であることが好ましく、108残基以上であることがより好ましく、300残基以上であることがさらに好ましい(参考文献:Daniels CC, Coan P, King J,Hale J, Benton KA, Briles DE, HollingsheadSK. The Proline-Rich Region of Pneumococcal Surface Proteins A and C Contains Surface-Accessible Epitopes Common to All Pneumococci and Elicits Antibody-Mediated Protection against Sepsis. Infect. Immun.2010. 78: 2163-2172.)。

0023

ファミリー1クレード2のPspAとしては、例えば、肺炎球菌株D39、WU2、E134、EF10197、EF6796、BG9163、DBL5などに由来するPspAが好ましい。より好ましくはD39またはWU2由来のPspAである。ファミリー2クレード3のPspAとしては、肺炎球菌株TIGR4、BG8090、AC122などに由来するPspAが好ましい。より好ましくはTIGR4由来のPspAである。ファミリー2クレード4のPspAとしては、肺炎球菌株EF5668、BG7561、BG7817、BG11703などに由来するPspAが好ましい。より好ましくはEF5668由来のPspAである。ファミリー2クレード5のPspAとしては、肺炎球菌株ATCC6303、KK910などに由来するPspAが好ましい。より好ましくはATCC6303由来のPspAである。

0024

本発明の融合タンパク質は、D39由来PspAとEF5668由来PspAの組み合わせ、D39由来PspAとATCC6303由来PspAの組み合わせ、またはWU2由来PspAとTIGR4由来PspAの組み合わせが好ましい。なかでもWU2由来PspAとTIGR4由来PspAの組み合わせがより好ましく、N末端側がTIGR4由来PspAでC末端側がWU2由来PspAの組み合わせがさらに好ましい。
さらに、本発明の融合タンパク質は、配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることが好ましい。なかでも配列番号5で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなる融合タンパク質がより好ましい。

0025

配列番号1で表されるアミノ酸配列は、D39由来PspAとEF5668由来PspAとの融合タンパク質であり、N末端側からポリヒスチジンタグを含むベクター由来配列、D39のPspAのアミノ酸配列(Accession No. ABJ54172, 619aa)の第32位〜第401位、EcoRI認識塩基配列由来配列、EF5668のPspAのアミノ酸配列(Accession No. AAC62252, 653aa)の第32位〜第454位が順に連結したアミノ酸配列である。
配列番号3で表されるアミノ酸配列は、D39由来PspAとATCC6303由来PspAとの融合タンパク質であり、N末端側からポリヒスチジンタグを含むベクター由来配列、D39のPspAのアミノ酸配列(Accession No. ABJ54172, 619aa)の第32位〜第401位、EcoRI認識塩基配列由来配列、ATCC6303のPspAの部分アミノ酸配列(Accession No.AF071820, 461aa)の第32位〜第461位が順に連結したアミノ酸配列である。
配列番号5で表されるアミノ酸配列は、TIGR4由来PspAとWU2由来PspAとの融合タンパク質であり、N末端側からポリヒスチジンタグを含むベクター由来配列、TIGR4のPspAのアミノ酸配列(Accession No. AAK74303, 744aa)の第32位〜第524位、EcoRI認識塩基配列由来配列、WU2のPspAの部分アミノ酸配列(Accession No. AAF27710, 415aa)の第32位〜第409位が順に連結したアミノ酸配列である。

0026

配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。「1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。このような変異タンパク質は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在するタンパク質を単離精製したものであってもよい。また、実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列が挙げられる。配列番号3または5で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列も同様である。

0027

配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなる融合タンパク質としては、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質と実質的に同質の活性を有する融合タンパク質が好ましい。実質的に同質の活性としては、広範囲の肺炎球菌株に対して免疫応答を誘導する活性が挙げられ、この活性が、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質と同等(例えば、約0.5〜20倍、好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましい。配列番号3または5で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなる融合タンパク質も同様である。

0028

本発明の融合タンパク質は、公知の遺伝子工学的手法により、本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子を発現可能に挿入した組み換え発現ベクター構築し、これを適当な宿主細胞に導入して組み換えタンパク質として発現させ、精製することにより製造することができる。また、本発明の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子と公知のin vitro転写翻訳系(例えば、ウサギ網状赤血球コムギ胚芽または大腸菌由来無細胞タンパク質合成系等)を用いて、製造することができる。

0029

本発明のワクチンは、アジュバントを含まなくても肺炎球菌に対して免疫応答を誘導することができる点で有用性が高い。ただし本発明のワクチンは、1種以上のアジュバントを含んでいてもよい。本発明のワクチンがアジュバントを含む場合、公知のアジュバントの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウムリン酸アルミニウム硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩またはその組み合わせ)、フロイントアジュバント(完全または不完全)、TLRリガンド(例えば、CpG、Poly(I:C)、Pam3CSK4など)、BAY、DC−chol、pcpp、モノホスホリル脂質A、QS−21、コレラ毒素ホルミルメチオニルペプチドなどが挙げられる。好ましくは、アルミニウムアジュバント、TLRリガンドまたはこれらの組み合わせである。
本発明のワクチンがアジュバントを含む場合、アジュバントの配合量は、本発明の融合タンパク質に対する免疫応答を非特異的に高める量であれば特に限定されず、アジュバントの種類等により適宜選択すればよい。例えば、アルミニウムアジュバント(水酸化アルミニウム)およびCpGを併用する場合、本発明の融合タンパク質に対して質量比でアルミニウムアジュバントが約1〜100倍量、CpGが約1〜50倍量を配合することが好ましい。

0030

本発明のワクチンは、さらに肺炎球菌以外の病原体に対するワクチン成分を含んでいてもよい。すなわち、本発明は肺炎球菌に対するワクチン成分であるの上記本発明の融合タンパク質と肺炎球菌以外の病原体に対するワクチン成分とを含む混合ワクチンを提供する。肺炎球菌以外の病原体に対するワクチン成分は特に限定されず、例えば既に混合ワクチンとして使用実績のあるワクチン成分が挙げられる。具体的には、例えば、ジフテリアトキソイド百日咳トキソイド百日咳菌抗原、破傷風トキソイド不活化ポリオウイルス弱毒麻疹ウイルス、弱毒風疹ウイルス、弱毒ムンプスウイルスインフルエンザ菌b型ポリサッカライド抗原、B型肝炎ウイルスHBs抗原、不活化A型肝炎ウイルス抗原などが挙げられる。

0031

現在使用されている混合ワクチンとしては、ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン(DPTワクチン)、ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ混合ワクチン(DPT−IPVワクチン)、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)、麻疹・風疹・おたふく風邪ワクチン(MMR)、インフルエンザ菌b型・B型肝炎ウイルスワクチン、A型肝炎ウイルス・B型肝炎ウイルスワクチン、ジフテリア・百日咳・破傷風・B型肝炎ウイルス・不活化ポリオワクチンなどが挙げられ、これらの混合ワクチンの成分に、本発明の肺炎球菌ワクチンの成分である融合タンパク質を追加することが好ましい。

0032

本発明のワクチンは、経口投与または非経口投与より投与することができる。非経口投与としては、例えば腹腔内投与皮下投与、皮内投与、筋肉内投与静脈内投与鼻腔内投与経皮投与経粘膜投与などが挙げられる。好ましくは、非経口投与であり、より好ましくは、皮内投与、皮下投与または筋肉内投与である。

0033

本発明のワクチンは、本発明の融合タンパク質と薬学的に許容される担体、さらに添加剤を適宜配合して製剤化することができる。具体的には錠剤被覆錠剤丸剤散剤顆粒剤カプセル剤液剤懸濁剤乳剤等の経口投与用製剤注射剤輸液坐剤軟膏パッチ剤等の非経口投与用製剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤結合剤pH調整剤崩壊剤吸収促進剤滑沢剤着色剤矯味剤香料等の各種添加剤が挙げられる。

0034

経口投与用固形製剤に用いられる添加剤としては、例えば、ラクトースマンニトールグルコース微結晶セルローストウモロコシデンプン等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロースポリビニルピロリドンメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の結合剤;トウモロコシデンプン等の分散剤繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;グルタミン酸アスパラギン酸等の溶解補助剤;安定剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースメチルセルロース等のセルロース類ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等の水溶性高分子白糖粉糖ショ糖果糖ブドウ糖乳糖還元麦芽糖水アメ粉末還元麦芽糖水アメブドウ糖果糖液糖果糖ブドウ糖液糖ハチミツソルビトールマルチトール、マンニトール、キシリトールエリスリトールアスパルテームサッカリンサッカリンナトリウム等の甘味剤、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等のコーティング剤等が挙げられる。
経口投与用の液体製剤は、一般的に用いられる希釈剤に溶解、懸濁又は乳化されて製剤化される。希釈剤としては、例えば、精製水エタノール、それらの混液等が挙げられる。さらにこの液剤は、湿潤剤懸濁化剤乳化剤、甘味剤、風味剤芳香剤保存剤緩衝剤等を含有していてもよい。

0035

経口投与用の注射剤に用いられる添加剤としては、例えば、塩化ナトリウム塩化カリウムグリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等の等張化剤リン酸緩衝液酢酸緩衝液ホウ酸緩衝液炭酸緩衝液クエン酸緩衝液トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等の緩衝剤;パラオキシ安息香酸メチルパラオキシ安息香酸エチルパラオキシ安息香酸プロピルパラオキシ安息香酸ブチルクロロブタノールベンジルアルコール塩化ベンザルコニウムデヒドロ酢酸ナトリウムエデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等の保存剤;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の増粘剤亜硫酸水素ナトリウムチオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムアスコルビン酸ジブチルヒドロキシトルエン等の安定化剤塩酸水酸化ナトリウムリン酸酢酸等のpH調整剤等が挙げられる。また注射剤には、適当な溶解補助剤、例えば、エタノール等のアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルコールポリソルベート80ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、リソレシチンプルロニックポリオール等の非イオン界面活性剤等をさらに配合してもよい。注射剤等の液状製剤は、凍結保存または凍結乾燥等により水分を除去して保存することもできる。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。

0036

本発明のワクチンは、免疫系を有するあらゆる動物(ヒト、非ヒト)を投与対象とすることができる。例えば、ヒト、サルウシウマブタヒツジヤギイヌネコモルモットラット、マウス等の哺乳動物ニワトリ、アヒルガチョウ等の鳥類が挙げられる。本発明のワクチンは、ヒトの小児および成人を対象とすることが好ましい。
本発明のワクチンの投与回数および投与間隔は特に限定されない。例えば、単回投与でもよく、約2日〜約8週間の間隔で複数回投与してもよい。
ワクチン投与量は、投与対象、投与方法などにより異なるが、1回投与量を約0.01μg〜約10mgとすることが好ましく、約0.1μg〜約1mgとすることがより好ましく、約1μg〜約0.1mgとすることがさらに好ましい。
本発明には、本発明のワクチンの有効量を動物に投与することを含む、肺炎球菌感染症の予防または治療方法が含まれる。

0037

本発明のワクチンは、従来の莢膜多糖体を抗原とするコンジュゲート肺炎球菌ワクチンと比較して、以下の点で優位性がある。
1)単一の融合タンパク質抗原のみで広範なタイプの肺炎球菌株に対して効果を示す。
2)タンパク質抗原であることから、キャリアータンパク質との融合ステップが不要であり生産コストが安価である。
3)タンパク質抗原であることから、キャリアータンパク質非存在状態で、小児および成人のどちらに対しても感染防御免疫を誘導できる。
4)単一の融合タンパク質を用いており、複数の抗原を混合する必要性がない。
5)融合タンパク質(ワクチン抗原)1種の精製を行うだけでよく、製造プロセスが容易であり、製造コストが抑制できる。

0038

本発明には、少なくともファミリー1クレード2のPspAの全長またはそのフラグメントと、クレード3、クレード4およびクレード5からなる群より選択されるファミリー2のPspAの全長またはそのフラグメントとを含有することを特徴とする肺炎球菌ワクチンが含まれる。すなわち、少なくともクレード2のPspAとクレード3のPspAを含む肺炎球菌ワクチン、少なくともクレード2のPspAとクレード4のPspAを含む肺炎球菌ワクチン、少なくともクレード2のPspAとクレード5のPspAを含む肺炎球菌ワクチンである。本形態の肺炎球菌ワクチンは、上記3通りの組み合わせのPspAを別々のタンパク質として含有してもよい。本形態の肺炎球菌ワクチンは、上記3通りの組み合わせのPspAを別々のタンパク質として含有してもよいこと以外は、上記本発明の融合タンパク質を含有する肺炎球菌ワクチンと同様に実施することができる。

0039

上記3通りの組み合わせのPspAが別々のタンパク質である場合、肺炎球菌ワクチンが含有するPspAは以下の(i)〜(iii)のいずれかであることが好ましい。
(i)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード3のみ
(ii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード4のみ
(iii)ファミリー1クレード2およびファミリー2クレード5のみ

0040

上記3通りの組み合わせのPspAが別々のタンパク質である場合、フラグメントに含まれる好ましい領域は、上記融合タンパク質に用いるフラグメントと同じである。好ましいPspAを発現する肺炎球菌株の種類は、融合タンパク質の説明に記載した菌株と同じである。具体的には、クレード2のPspAとしては、配列番号25で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号26で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質が好ましい。クレード3のPspAとしては、配列番号27で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質が好ましい。クレード4のPspAとしては、配列番号28で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質が好ましい。クレード5のPspAとしては、配列番号29で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質が好ましい。

0041

配列番号25で表されるアミノ酸配列は、D39由来PspA(アミノ酸配列を配列番号30に、コードする遺伝子の塩基配列を配列番号31にそれぞれ示す)のα−へリックス領域の全長とプロリンリッチ領域の全長からなるタンパク質であり、D39のPspAのアミノ酸配列(配列番号30)の第32位〜第401位に該当する。
配列番号26で表されるアミノ酸配列は、WU2由来PspA(部分アミノ酸配列を配列番号32に、コードする遺伝子の塩基配列を配列番号33にそれぞれ示す)のα−へリックス領域の全長とプロリンリッチ領域の全長からなるタンパク質であり、WU2のPspAの部分アミノ酸配列(配列番号32)の第32位〜第409位に該当する。
配列番号27で表されるアミノ酸配列は、TIGR4由来PspA(アミノ酸配列を配列番号34に、コードする遺伝子の塩基配列を配列番号35にそれぞれ示す)のα−へリックス領域の全長とプロリンリッチ領域の全長からなるタンパク質であり、TIGR4のPspAのアミノ酸配列(配列番号34)の第32位〜第524位に該当する。
配列番号28で表されるアミノ酸配列は、EF5668由来PspA(アミノ酸配列を配列番号36に、コードする遺伝子の塩基配列を配列番号37にそれぞれ示す)のα−へリックス領域の全長とプロリンリッチ領域の全長からなるタンパク質であり、EF5668のPspAのアミノ酸配列(配列番号36)の第32位〜第454位に該当する。
配列番号29で表されるアミノ酸配列は、ATCC6303由来PspA(部分アミノ酸配列を配列番号38に、コードする遺伝子の塩基配列を配列番号39にそれぞれ示す)のα−へリックス領域の全長とプロリンリッチ領域の全長からなるタンパク質であり、ATCC6303のPspAのアミノ酸配列(配列番号38)の第32位〜第461位に該当する。

0042

配列番号25〜29のいずれかで表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるタンパク質は、前述の配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列と同様である。

0043

ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在することができる。ポリヌクレオチドは、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA二本鎖RNAまたはDNAと RNAとのハイブリッドのいずれであってもよい。一本鎖の場合は、コード鎖(センス鎖)または非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、その5’側または3’側でタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。さらに、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。

0044

本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質を構成する2種以上のPspAをコードするポリヌクレオチドをそれぞれ取得して、これを結合することにより作製することができる。融合タンパク質を構成する各PspAをコードするポリヌクレオチドは、それぞれ公知のDNA合成法やPCR法等によって、別々に取得することができる。具体的には、例えば、本発明の融合タンパク質を構成する各PspAのアミノ酸配列に基づいて、各アミノ酸のコドンを適宜選択して塩基配列をデザインし、市販のDNA合成機を用いて化学合成することができる。また、公知のデータベース(GenBank等)から目的のPspAをコードする遺伝子の塩基配列情報を取得し(表1および表2のアクセッション番号参照)、所望のPspAをコードする領域を増幅するためのプライマーを設計し、当該PspAを発現する肺炎球菌のゲノムDNAを鋳型にしてPCR等を行うことにより、所望のDNA断片を大量に取得できる。融合タンパク質を構成する各PspAをコードするポリヌクレオチドが得られたら、これを遺伝子工学的に結合することにより、本発明のポリヌクレオチドを作製することができる。

0045

配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号6で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。

0046

〔発現ベクター〕
本発明は、上記本発明の融合タンパク質を製造するために使用される発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むものであれば特に限定されないが、RNAポリメラーゼ認識配列を有するプラスミドベクター(pSP64、pBluescriptなど)が好ましい。発現ベクターの作製方法としては、プラスミドファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。ベクターの具体的な種類は限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択することができる。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明のポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明のポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。本発明の発現ベクターを用いて形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、培養物などから慣用的な手法(例えば、濾過遠心分離細胞破砕ゲル濾過クロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィーアフィニティークロマトグラフィーなど)に従って、本発明の融合タンパク質を回収、精製することができる。

0047

発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられ、大腸菌(Escherichia coli)および他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。

0048

宿主細胞は特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌等の細菌、酵母出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)などが挙げられる。上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。

0049

形質転換体
本発明は、上記本発明の発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。本発明の形質転換体は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含む。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞として例示した各種微生物、植物または動物が挙げられる。本発明の形質転換体は、本発明の融合タンパク質の製造に好適に使用することができる。これらの形質転換体は、本発明の融合タンパク質を安定的に発現するものであることが好ましいが、一過性に発現するものでもよい。

0050

本発明には、さらに以下の各発明が含まれる。
[1]少なくともファミリー1の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントと、ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aの全長またはそのフラグメントとを含むことを特徴とする融合タンパク質。
[2]以下の(1)〜(3)のいずれかである前記[1]に記載の融合タンパク質。
(1)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード3の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
(2)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード4の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
(3)ファミリー1クレード2の肺炎球菌表面タンパク質Aとファミリー2クレード5の肺炎球菌表面タンパク質Aからなる融合タンパク質
[3]ファミリー2の肺炎球菌表面タンパク質Aがクレード3であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の融合タンパク質。
[4]肺炎球菌表面タンパク質Aのフラグメントが、少なくともプロリンリッチ領域の全部または一部を含むことを特徴とする前記[1]に記載の融合タンパク質。
[5]肺炎球菌表面タンパク質Aのフラグメントが、プロリンリッチ領域の全部または一部およびそれに隣接するα−へリックス領域の全部または一部からなることを特徴とする前記[4]に記載の融合タンパク質。
[6]配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする前記[1]に記載の融合タンパク質。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[8]前記[7]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[9]前記[8]に記載の発現ベクターが導入された形質転換体。
[10]肺炎球菌ワクチンを製造するための前記[1]〜[6]のいずれかに記載の融合タンパク質の使用。
[11]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の融合タンパク質を含むことを特徴とする肺炎球菌ワクチン。
[12]さらにアジュバントを含むことを特徴とする前記[11]に記載の肺炎球菌ワクチン。
[13]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の融合タンパク質の有効量を動物に投与することを含む、肺炎球菌感染症の予防または治療方法。
[14]肺炎球菌感染症の予防または治療に使用するための前記[1]〜[6]のいずれかに記載の融合タンパク質。

0051

以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0052

〔実施例1:融合PspAタンパク質の作製〕
表3に示した肺炎球菌のうち、D39、TIGR4、EF5668、ATCC6303およびWU2由来のPspAを用いて、図2(A)、(B)および(C)に示した3種類の融合PspAタンパク質を作製した。全ての遺伝子クローニング操作はE.coli DH5αを用いて行った。E.coli DH5αはLB培地(1% bacto tryptone, 0.5% yeast extract, 0.5% NaCl)で培養を行い、必要時には、終濃度30μg/mlとなるようカナマイシンをLB培地に添加した。

0053

0054

各菌株のPspAのN末端側のα−へリックスおよびプロリンリッチ領域をコードするDNA断片を、表4に示したプライマーを用いて各菌株のゲノムDNAを鋳型としてPCRにて増幅し、得られたPCR産物をpET28a(+)ベクターに挿入して、融合PspAタンパク質発現ベクターを作製した。具体的には、以下のとおりである。

0055

0056

5’末端側に制限酵素NdeI認識配列、3’末端側にEcoRI認識配列が付加されている肺炎球菌D39(プライマーP1およびP2)またはTIGR4(プライマーP7およびP8)由来のPspAPCR産物をpET28a(+)ベクターの制限酵素切断部位NdeIおよびEcoRI認識サイトに挿入した。さらに、D39由来PspAが挿入されているpET28a(+)ベクターの制限酵素EcoRIおよびXhoI認識サイトに、5’末端側に制限酵素EcoRI認識配列、3’末端側にXhoI認識配列が付加された肺炎球菌EF5668(プライマーP3およびP4)あるいはATCC6303(プライマーP5およびP6)由来のPspA PCR産物をそれぞれ挿入し、D39およびEF5668由来PspA融合タンパク質PspA2+4、D39およびATCC6303PspA融合タンパク質PspA2+5を発現する2種の発現ベクターを作製した。また、TIGR4由来PspA PCR産物が挿入されているpET28a(+)ベクターの制限酵素EcoRIおよびXhoI認識サイトに、5’末端側に制限酵素EcoRI認識配列、3’末端側にXhoI認識配列が付加されたWU2(プライマーP9およびP10)由来PspA PCR産物を挿入し、TIGR4およびWU2由来PspA融合タンパク質PspA3+2を発現するベクターを作製した。これら3種類の融合遺伝子(PspA2+4遺伝子、PspA2+5遺伝子およびPspA3+2遺伝子)について、DNAシークエンサーによりそれぞれ塩基配列を確認し、それぞれ配列番号2、4および5で表される塩基配列であることを確認した。

0057

作製した各融合PspAタンパク質発現ベクターをE.coliBL21(DE3)にそれぞれ形質転換し、これをカナマイシン30μg/mlを含むLB培地にて37℃で震盪培養した。吸光度OD600nmが約0.8になった培養液に、IPTG(終濃度0.5mM)を添加し、さらに3時間震盪培養を続け、融合PspAタンパク質を大量発現させた。回収した菌体から融合PspAタンパク質を抽出し、N末端に存在するポリヒスチジンタグを用いて、Ni2+アフィニティークロマトグラフィーおよびゲルろ過法により精製した。精製した融合タンパク質はSDS−PAGE(図3A参照)および抗PspA抗体を用いたウエスタンブロッティング(図3B参照)により、目的の融合タンパク質であることを確認した。

0058

〔実施例2:融合PspAタンパク質免疫血清中IgGの各PspAクレード肺炎球菌表面への結合能〕
(1)融合PspAタンパク質によるマウスの免疫
融合PspAタンパク質(PspA2+4、PspA2+5またはPspA3+2)0.1μgとアジュバント(CpGK3 2.5μgおよびAlum 5.0μg)をLPSフリーPBSで調製し、6週齢の♀のC57/BL6jマウスに皮下接種した。同じ免疫グループあたり5匹のマウスを用いた。接種は、1週間おきに合計3回行った。最終免疫(3回目の接種)から1週間後に採血し、血清を得た。

0059

(2)免疫血清中IgGの肺炎球菌表面への結合能の測定
肺炎球菌は、PspAクレード1〜6の6種類を用いた。具体的には、クレード1の菌株としてBG9739、クレード2の菌株としてWU2、クレード3の菌株としてTIGR4、クレード4の菌株としてKK1162、クレード5の菌株としてATCC6303、クレード6の菌株としてBG6380を用いた(表3参照)。肺炎球菌は、THY培地(Todd-Hewitt broth supplemented with 0.5% yeast extract)で培養し、対数増殖期の培養液にグリセロールが終濃度25%になるよう添加し、これを−80℃で冷凍保存したものを使用した。
血液寒天培地で一晩培養した肺炎球菌株を、血液寒天培地で4〜5時間継代培養した後、肺炎球菌をPBSにて収集した。約107CFUの肺炎球菌溶液90μlと10μlの免疫血清(同じ免疫グループの混合血清)を37℃で30分間反応させた。さらにFITC標識抗マウスIgGヤギ抗体と反応させた後、洗浄遠心し、菌体に結合する蛍光強度フローサイトメトリー法で測定した。

0060

(3)結果
結果を図4に示した。結合率は、菌数10000個当たりの免疫血清中IgG結合菌数を%で表した。PspA3+2の免疫血清は、クレード1〜5のいずれの肺炎球菌株に対しても高い結合性を示した。PspA2+4およびPspA2+5の免疫血清は、クレード3のTIGR4に対しては若干低い結合性を示したが、これ以外のクレードの肺炎球菌株に対しては、高い結合性を示した。クレード6のBG6380に対しては、PspA2+5が高い結合性を示した。

0061

〔実施例3:融合PspAタンパク質免疫によるマウス致死的肺炎モデルでの感染防御効果
(1)実験方法
実施例2と同様の方法でマウスに融合PspAタンパク質の免疫を行った。アジュバント単独投与マウスを陰性コントロールとした。最終免疫(3回目の接種)の2週間後にマウスにPspAのクレード1〜5を発現する以下の肺炎球菌株(表3参照)を経鼻接種し、マウス致死的肺炎モデルを作製した。マウス一匹に対して、BG9739(クレード1)は2×107CFU、WU2(クレード2)は2×107CFU、TIGR4(クレード3)は5×106CFU、KK1162(クレード4)は1×108CFU、ATCC6303(クレード5)は5×105CFUの致死的な菌量を感染させた。1群の匹数は10匹または8匹(BG9739感染グループのPspA2+5群、KK1162感染グループの陰性コントロール群およびPspA3+2群、ATCC6303感染グループの陰性コントロール群)とした。
免疫マウスへの肺炎球菌感染後、2週間にわたってその生存率を観察した。生存率の違いについてはKaplan−Meier log−rank testを用いて解析を行った。P値が0.05より小さい場合に有意差があるとした。

0062

(2)結果
結果を図5に示した。図5中の*はワクチン投与群におけるマウスの生存率をアジュバント投与群と比較し、有意差が示され、P値が0.05より小さい場合を表し、**は同様の比較で有意差が示され、P地が0.01より小さい場合を表す。(A)はBG9739(クレード1)、(B)はWU2(クレード2)、(C)はTIGR4(クレード3)、(D)はKK1162(クレード4)、(E)はATCC6303(クレード5)の結果である。PspA3+2による免疫マウスでは、PspAクレード1〜5の肺炎球菌株のいずれを感染させた場合でも有意な生存率の改善が認められた。PspA2+4による免疫マウスおよびPspA2+5による免疫マウスでは、PspAクレード2、4または5の肺炎球菌株を感染させた場合に有意な生存率の改善が認められた。

0063

〔実施例4:免疫血清中IgGの臨床分離肺炎球菌株への結合能の測定〕
(1)実験方法
実施例2で得られた各融合PspAタンパク質の免疫血清を用いて、免疫血清中IgGの臨床分離肺炎球菌株への結合能を測定した。対象菌株を臨床分離肺炎球菌株に変更した以外、実施例2と同様に行った。
なお、臨床分離肺炎球菌株のPspAファミリーおよびクレードの同定方法は、以下のように行った。すなわち、下記のプライマーLSM12およびSKH2を用いて各臨床分離肺炎球菌株のゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行い、PCR産物のシークエンス解析を行った。プロリンリッチ領域の上流約400bpの塩基配列を、ファミリーおよびクレードが同定されているPspAの塩基配列と比較し、同定を行った(参考文献:Pimenta FC, Ribeiro-Dias F, Brandileone MC et al. 2006. Genetic diversity of PspA types among nasopharyngeal isolates collected during an ongoing surveillance study of children in Brazil. J Clin Microbiol. 44:2838-43.)。
LSM12:CCGGATCCAGCGTCGCTATCTTAGGGGCTGGTT(配列番号17)
SKH2:CCACATACCGTTTTCTTGTTTCCAGCC(配列番号18)

0064

(2)評価基準および結果
前述したように、肺炎球菌菌体表層に存在するPspAタンパク質に対する免疫血清中IgGの結合が、感染防御効果に必須であることから、肺炎球菌へのIgG結合能を基準に様々な臨床分離肺炎球菌株に対する各融合PspAタンパク質のカバー率を評価した。
結果を図6に示した。図6中、括弧内は使用した臨床分離肺炎球菌株の血清型およびPspAクレードを示す。(A)のPspA2+4による免疫血清、(B)のPspA2+5による免疫血清、(C)のPspA3+2による免疫血清のいずれにおいても、ほぼ全ての臨床分離肺炎球菌株(97.0%)に対するIgG結合能(結合率10%以上)を示した。

0065

〔実施例5:PspAタンパク質免疫血清中の抗PspA抗体価の測定〕
(1)各クレードのPspA抗原タンパク質の作製
クレード1〜5の各PspAのα−ヘリックス領域およびプロリンリッチ領域からなるタンパク質を組み換えタンパク質として作製し、抗原タンパク質とした。クレード1としてBG9739、クレード2としてD39、クレード3としてTIGR4、クレード4としてEF5668、クレード5としてATCC6303由来のPspAを使用した。各クレードのPspA抗原タンパク質の発現ベクターを、以下のように作製した。

0066

すなわち、5’末端側に制限酵素NdeI認識配列、3’末端側にXhoI認識配列が付加されたα−へリックスおよびプロリンリッチ領域をコードするDNA断片をPCRにて増幅した。PCRプライマーとして、BG9739にはプライマーP11およびP12、D39にはプライマーP1およびP13、TIGR4にはプライマーP7およびP14、EF5668にはプライマーP15およびP4、ATCC6303にはプライマーP7およびP6を用いた。得られたPCR産物を、pET28a(+)ベクターの制限酵素切断部位NdeIおよびXhoI認識サイトに挿入した。これらのベクターをE.coliBL21(DE3)にそれぞれ形質転換し、これをカナマイシン30μg/mlを含むLB培地にて37℃で震盪培養した。吸光度OD600nmが約0.8になった培養液に、IPTG(終濃度0.5mM)を添加し、さらに3時間震盪培養を続け、PspA抗原タンパク質を大量発現させた。回収した菌体からPspA抗原タンパク質を抽出し、N末端に存在するポリヒスチジンタグを用いて、Ni2+アフィニティークロマトグラフィーおよびゲルろ過法により精製した。精製したPspA抗原タンパク質はSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングにより、目的のタンパク質であることを確認した。

0067

(2)抗原によるマウスの免疫
抗原には、上記により得られたクレード2のPspA抗原タンパク質(PspA2)、クレード3のPspA抗原タンパク質(PspA3)および実施例1で作製した融合PspAタンパク質(PspA3+2)を使用した。6週齢の♀のC57/BL6jマウスを1群あたり5匹ずつ以下の5群に分けた。
・PspA3+PspA2投与群(PspA3 0.05μg、PspA2 0.05μgおよびアジュバントを投与)
・PspA3+2投与群(PspA3+2 0.1μgおよびアジュバントを投与)
・PspA2投与群(PspA2 0.1μgおよびアジュバントを投与)
・PspA3投与群(PspA3 0.1μgおよびアジュバントを投与)
・PspA3+2投与群(PspA3+2 4.0μgを投与)
アジュバントにはCpGK3 2.5μgおよびAlum 5.0μgを用いた。LPSフリーのPBSで抗原溶液を調製し、マウスに皮下接種した。接種は、1週間おきに合計3回行った。最終免疫(3回目の接種)から1週間後に採血し、血清を得た。

0068

(3)ELISA
各クレードの精製PspA抗原タンパク質を5μg/mlに調製し、96ウェルプレートに100μl/ウェルずつ添加した。これを一晩4℃に静置し、抗原をプレートコーティングした。プレートをPBST(0.05% Tween20含有PBS)で洗浄し、段階希釈した免疫血清サンプルを50μl/ウェルずつ添加し、37℃で30分間静置した。続いて、各ウェルをPBSTで洗浄し、2000倍に希釈したアルカリホスファターゼ標識抗マウスIgGヤギ抗体を100μl/ウェルずつ添加し、室温、遮光下で45分間静置した。その後、OD405nmの吸光度を測定した。陰性コントロールの吸光度を引いた吸光度が0.1になる希釈倍率をLog2で示し、これを血清中に含まれる抗PspA抗体価とした。

0069

(4)結果
結果を図7に示した。PspA2単独ではクレード3に対する抗体価が低く、PspA3単独ではクレード1、2、4および5に対する抗体価が低くかった。PspA2とPspA3を併用すると、クレード1〜5のいずれに対しても高い抗体価を示した。PspA2とPspA3の融合タンパク質(PspA3+2)は、PspA2とPspA3の併用よりいずれのクレードに対しても同等もしくは高い抗体価を示した。さらにPspA2とPspA3の融合タンパク質(PspA3+2)は、アジュバントを併用しなくても高濃度で免疫することにより、いずれのクレードに対しても高い抗体価を示すことが明らかになった。この結果から、融合PspAタンパク質は、別々のタンパク質としての投与と比較して同等あるいは高い抗体価が得られ、さらにアジュバントを併用しなくても高い抗体価が得られるので、肺炎球菌ワクチンの抗原として非常に有用であることが示された。

0070

〔実施例6:アジュバントの検討(その1)〕
アジュバントとして、CpGおよびAlumの併用またはCpGの単独使用における効果について検討した。
(1)マウスの免疫
抗原には実施例1で作製した3種類の融合PspAタンパク質(PspA2+4、PspA2+5、PspA3+2)を使用し、アジュバントにはCpGおよびAlumの併用またはCpGの単独を使用した。以下の6群を設けた。
・PspA2+4 0.1μg+CpGK3 2.5μg
・PspA2+4 0.1μg+CpGK3 2.5μg+Alum 5.0μg
・PspA2+5 0.1μg+CpGK3 2.5μg
・PspA2+5 0.1μg+CpGK3 2.5μg+Alum 5.0μg
・PspA3+2 0.1μg+CpGK3 2.5μg
・PspA3+2 0.1μg+CpGK3 2.5μg+Alum 5.0μg
LPSフリーのPBSで抗原溶液を調製し、マウスに皮下接種した。接種は、1週間おきに合計3回行った。最終免疫(3回目の接種)から1週間後に採血し、血清を得た。

0071

(2)ELISA
実施例5と同様の方法でELISAを行い、血清中に含まれる抗PspA抗体価を求めた。

0072

(3)結果
結果を図8に示した。図8中の*は、同じクレードのPspA抗原に対するAlum含有群の抗体価がAlum非含有群に比べ有意に高く、P値が0.05より小さい場合を表し、**は同様の比較で有意に高く、P値が0.01より小さい場合を表す。PspA2+4では、Alum非含有条件でクレード2,4,5に対する抗体価が高く、クレード1,3に対する抗体価が低かったが、Alumの添加によってクレード1,3に対する抗体価の上昇が認められた。PspA2+5ではAlum非含有条件で特にクレード1,3に対する抗体価が低く、Alumの添加によってもクレード3に対する抗体価は低値のままであった。PspA3+2ではAlum非含有条件でクレード1に対する抗体価が低値であったが、Alumの添加によって全てのクレードに対する高い抗体価が認められた。この結果から、本条件下では、Alumの添加によってPspAに対する特異抗体価の上昇が確認され、また、融合型PspAが、全てのクレードのPspAに対する高い特異抗体価を誘導することが明らかとなった。

0073

〔実施例7:アジュバントの検討(その2)〕
アジュバントとして、CpGとAlumの併用ではなく、Alumを単独で用いた場合の効果について検討した。
(1)マウスの免疫
抗原には実施例1で作製した融合PspAタンパク質(PspA3+2)を使用し、アジュバントにはAlumを使用した。以下の3群を設けた。
・PspA3+2 0.1μg+Alum 5.0μg
・PspA3+2 0.1μg+Alum 25.0μg
・PspA3+2 0.1μg+Alum 50.0μg
LPSフリーのPBSで抗原溶液を調製し、マウスに皮下接種した。接種は、1週間おきに合計3回行った。最終免疫(3回目の接種)から1週間後に採血し、血清を得た。

0074

(2)ELISA
実施例5と同様の方法でELISAを行い、血清中に含まれる抗PspA抗体価を求めた。

0075

(3)結果
結果を図9に示した。Alum単独の使用でも、クレード1〜5のいずれに対しても高い抗体価を示した。また、投与量を併用の場合と同じ5.0μgにしても、併用の場合とほぼ同等の抗体価を示した。

0076

〔参考例1:日本における臨床分離肺炎球菌に存在するPspAファミリーの分布
日本で分離された成人侵襲性肺炎球菌感染症由来の肺炎球菌73株におけるPspAファミリーおよびクレードの分布を調べた。PspAファミリーおよびクレードの同定は、実施例4に記載の方法と同様に、プロリンリッチ領域の上流約400bpの塩基配列を、ファミリーおよびクレードが同定されているPspAの塩基配列と比較することにより行った。

0077

結果を表5に示した。145株中145株がPspAファミリー1または2を保有していた。また、成人用23価肺炎球菌ワクチンPPV23(23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine)によってカバーされる血清型を持つ分離株は126株(86.9%)、PCV7およびPCV13でカバーされる血清型を持つ分離株はそれぞれ57株(39.3%)、108株(74.5%)であった。

0078

実施例

0079

なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

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