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技術 信号処理装置、信号処理方法、サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法

出願人 KYB株式会社
発明者 窪田友夫奥村昌利
出願日 2014年8月19日 (6年4ヶ月経過) 出願番号 2014-166575
公開日 2016年3月31日 (4年9ヶ月経過) 公開番号 2016-041569
状態 特許登録済
技術分野 車体懸架装置
主要キーワード 時間ピーク 仮想信号 輪ばね 対角関係 サスペンション変位 マトリクスパラメータ 減少特性 片振幅
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年3月31日)のものです。
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図面 (20)

課題

センサ失陥時にも適正なサスペンション制御を継続することができる信号処理装置信号処理方法サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法を提供する。

解決手段

信号処理装置20は、サスペンション制御装置用の信号処理装置であって、第1の判定部41を具備する。第1の判定部41は、車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号のうちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動を判定するように構成される。

概要

背景

従来から、車両のサスペンションシステムとして、スカイフック理論に基づいて、サスペンションアクティブに制御することにより、乗り心地および操縦定性両立させるようにしたアクティブサスペンションシステムがある。アクティブサスペンションシステムの方式の1つであるセミアクティブサスペンションステムは、減衰力(厳密には減衰特性可変ショックアブソーバダンパ)を用い、車体や車輪制振が必要なときにその減衰特性を可変に制御するものである。

ダンパの減衰力は、ばね下が振動した時、車輪の上下方向の速度にほぼ比例する。このため、このような状況下では車輪の上下方向の振動速度制御指標として、ダンパの減衰力を制御することが一般的である。例えば特許文献1には、ダンパ変位センサで検出されたダンパ変位を時間微分することで、ダンパ速度を算出し、このダンパ速度を用いてダンパに供給する目標電流を算出する例が記載されている。

概要

センサ失陥時にも適正なサスペンション制御を継続することができる信号処理装置信号処理方法サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法を提供する。信号処理装置20は、サスペンション制御装置用の信号処理装置であって、第1の判定部41を具備する。第1の判定部41は、車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号のうちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動を判定するように構成される。

目的

本発明の目的は、センサ失陥時にも適正なサスペンション制御を継続することができる信号処理装置、信号処理方法、サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

サスペンション制御装置用の信号処理装置であって、車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号のうちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、前記第1の輪のばね下振動を判定する第1の判定部を具備する信号処理装置。

請求項2

請求項1に記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記複数の検出信号のうち、最も大きいばね下振動に関する情報を含む検出信号を選択する信号処理装置。

請求項3

請求項1または2に記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記1つの検出信号に基づいて、前記第1の輪のばね下振動に関する第1の状態信号を生成する信号処理装置。

請求項4

請求項3に記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記第1の状態信号として、ON/OFF信号を生成する信号処理装置。

請求項5

請求項3に記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記第1の状態信号として、前記第1の輪のばね下振動レベルに応じて変化する連続信号を生成する信号処理装置。

請求項6

請求項5に記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記第1の状態信号に、前記ばね下振動レベルの上限値および下限値の少なくとも一方を設定する信号処理装置。

請求項7

請求項3〜6のいずれか1つに記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記第1の状態信号として、片振幅の信号を生成する信号処理装置。

請求項8

請求項1〜7のいずれか1つに記載の信号処理装置であって、前記第1の判定部は、前記第1の輪の回転速度に関する検出信号、前記第1の輪のばね下加速度に関する検出信号、前記第1の輪のばね上加速度に関する検出信号、および前記第1の輪のサスペンション変位に関する検出信号、のいずれか2つ以上を取得する信号処理装置。

請求項9

請求項1〜8のいずれか1つに記載の信号処理装置であって、車両に設置された複数のセンサから取得した、第2の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、前記第2の輪のばね下振動を判定し、前記第2の輪のばね下振動に関する第2の状態信号を生成する第2の判定部をさらに具備する信号処理装置。

請求項10

請求項9に記載の信号処理装置であって、前記第2の輪は、前記第1の輪と左右反対の輪である信号処理装置。

請求項11

請求項9に記載の信号処理装置であって、前記第2の判定部は、前記第1の信号と同一の形態で前記第2の状態信号を生成する信号処理装置。

請求項12

請求項2〜11のいずれか1つに記載の信号処理装置であって、前記複数の検出信号は、信号レベル時間変化が相互に異なる第1および第2の検出信号を少なくとも含み、前記第1の判定部は、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との交差部を平滑化する平滑化処理部を有する信号処理装置。

請求項13

車両に設置された複数のセンサから、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号を取得し、取得した前記複数の検出信号のうちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、前記第1の輪のばね下振動を判定する信号処理方法

請求項14

車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、前記第1の輪のばね下振動を判定し、前記第1の輪のばね下振動に関する第1の状態信号を生成する第1の判定部と、前記車両に設定された複数のセンサから取得した、第2の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、前記第2の輪のばね下振動を判定し、前記第2の輪のばね下振動に関する第2の状態信号を生成する第2の判定部と、前記第1および第2の状態信号に基づいて、前記第1の輪に設置された第1のダンパと、前記第2の輪に設置された第2のダンパとを相互に協調制御するための制御信号を生成する制御部とを具備するサスペンション制御装置。

請求項15

車両に設置された複数のセンサを用いて第1の輪のばね下振動状態を判定し、前記第1の輪のばね下振動状態に基づいて、前記第1の輪のばね下振動と、前記第1の輪と左右反対の第2の輪のばね下振動とを相互に協調制御するサスペンション制御方法。

技術分野

0001

本発明は、車両の各輪のばね下振動を判定する信号処理装置信号処理方法サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法に関する。

背景技術

0002

従来から、車両のサスペンションシステムとして、スカイフック理論に基づいて、サスペンションアクティブに制御することにより、乗り心地および操縦定性両立させるようにしたアクティブサスペンションシステムがある。アクティブサスペンションシステムの方式の1つであるセミアクティブサスペンションステムは、減衰力(厳密には減衰特性可変ショックアブソーバダンパ)を用い、車体や車輪制振が必要なときにその減衰特性を可変に制御するものである。

0003

ダンパの減衰力は、ばね下が振動した時、車輪の上下方向の速度にほぼ比例する。このため、このような状況下では車輪の上下方向の振動速度制御指標として、ダンパの減衰力を制御することが一般的である。例えば特許文献1には、ダンパ変位センサで検出されたダンパ変位を時間微分することで、ダンパ速度を算出し、このダンパ速度を用いてダンパに供給する目標電流を算出する例が記載されている。

先行技術

0004

特開2006−273222号公報

発明が解決しようとする課題

0005

サスペンション制御システムにおいては、各輪のばね下振動を検出する専用のセンサが個々の輪に設置されるのが一般的である。しかしながら、当該専用のセンサが失陥した場合、当該輪のサスペンション制御に大きな支障をきたしてしまう。また、センサ失陥時の対応として、フェールセーフ用の制御則を準備しておくことも必要となる。

0006

以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、センサ失陥時にも適正なサスペンション制御を継続することができる信号処理装置、信号処理方法、サスペンション制御装置およびサスペンション制御方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明の一形態に係る信号処理装置は、サスペンション制御装置用の信号処理装置であって、第1の判定部を具備する。
上記第1の判定部は、車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号のうちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動を判定するように構成される。

0008

上記信号処理装置によれば、1つのセンサが失陥したとしても、他のセンサで第1の輪のばね下振動に関する情報を取得することができるため、フェールセーフ用の制御則を必要とすることなく、当該第1の輪に対する適正なばね下振動状態を判定することができる。

0009

上記複数の検出信号は、第1の輪に設置された複数のセンサの検出信号であってもよいし、他の輪の影響も含まれるセンサの検出信号を含んでもよい。あるいは、各輪のばね下振動情報を同時に取得可能なセンサの検出信号を含んでもよい。

0010

上記第1の判定部は、上記複数の検出信号のうち、最も大きいばね下振動に関する情報を含む検出信号を選択するように構成されてもよい。
これにより、ばね下振動に関する情報としてより信頼性の高い情報を選択することが可能となる。

0011

上記第1の判定部は、上記1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動に関する第1の状態信号を生成するように構成されてもよい。
上記第1の状態信号は、典型的には、各輪のダンパを制御する制御装置へ入力される。制御装置は、第1の状態信号に基づいて、第1の輪のばね下振動を制御するための制御信号を生成するように構成される。

0012

上記第1の状態信号の形態は特に限定されず、ON/OFF信号であってもよいし、上記第1の輪のばね下振動レベルに応じて変化する連続信号であってもよい。上記連続信号には、上記ばね下振動レベルの上限値および下限値の少なくとも一方が設定されてもよい。

0013

上記第1の状態信号は、片振幅の信号であってもよい。これにより、セミアクティブ制御に適した状態信号を生成することができる。
なお、第1の状態信号は、両振幅の信号であってもよい。この場合、上記制御装置において片振幅に変換されてもよいし、両振幅信号のまま、例えばダンパのアクティブ制御に用いられてもよい。

0014

上記複数のセンサには、例えば、車輪速センサ、ばね下加速度センサ、ばね上加速度センササスペンション変位センサなどが含まれる。第1の判定部は、これらいずれか2つ以上のセンサの検出信号を取得し、その中から1つの検出信号を選択することができる。

0015

上記信号処理装置は、第2の判定部をさらに具備してもよい。上記第2の判定部は、車両に設置された複数のセンサから取得した、第2の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第2の輪のばね下振動を判定し、上記第2の輪のばね下振動に関する第2の状態信号を生成するように構成される。

0016

典型的には、上記第2の輪として、第1の輪と左右反対の輪が適用される。第1の輪および第2の輪は、前輪であってもよいし、後輪であってもよい。

0017

この場合、第2の状態信号は、第1の状態信号と形態的に同一に生成されることにより、左右輪に対して共通の制御アルゴリズムでばね下制御を実現できるとともに、左右輪で制御特性相違を防止することができる。

0018

上記複数の検出信号は、信号レベル時間変化が相互に異なる第1および第2の検出信号を少なくとも含んでもよい。この場合、上記第1の判定部は、上記第1の検出信号と上記第2の検出信号との交差部を平滑化する平滑化処理部を有してもよい。
これにより、ハイセレクト処理による振動レベルの急変を防止し、ダンパに対する円滑な減衰力制御を実現することが可能となる。

0019

本発明の一形態に係る信号処理方法は、車両に設置された複数のセンサから、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号を取得することを含む。
取得した上記複数の検出信号のうちいずれか1つが選択される。
選択した1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動が判定される。

0020

本発明の一形態に係るサスペンション制御装置は、第1の判定部と、第2の判定部と、制御部とを具備する。
上記第1の判定部は、車両に設置された複数のセンサから取得した、第1の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第1の輪のばね下振動を判定し、上記第1の輪のばね下振動に関する第1の状態信号を生成する。
上記第2の判定部は、上記車両に設定された複数のセンサから取得した、第2の輪のばね下振動に関する情報を含む複数の検出信号うちいずれか1つを選択し、選択した1つの検出信号に基づいて、上記第2の輪のばね下振動を判定し、上記第2の輪のばね下振動に関する第2の状態信号を生成する。
上記制御部は、上記第1および第2の状態信号に基づいて、上記第1の輪に設置された第1のダンパと、上記第2の輪に設置された第2のダンパとを相互に協調制御するための制御信号を生成する。

0021

本発明の一形態に係るサスペンション制御方法は、車両に設置された複数のセンサを用いて第1の輪のばね下振動状態を判定することを含む。
上記第1の輪のばね下振動状態に基づいて、上記第1の輪のばね下振動と、上記第1の輪と左右反対の第2の輪のばね下振動とが相互に協調制御される。

発明の効果

0022

本発明によれば、センサ失陥時にも適正なサスペンション制御を継続することができる。

図面の簡単な説明

0023

独立懸架式サスペンション装置の概略図である。
車軸懸架サスペンション装置の概略図である。
本発明の第1の実施形態に係るサスペンション制御装置の構成を示すブロック図である。
上記サスペンション制御装置における信号生成部および制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
上記制御部におけるばね下制御指令演算部の機能を説明するブロック図である。
上記サスペンション制御装置の機能ブロック図である。
上記サスペンション制御装置の車両への適用例を説明する概略図である。
上記サスペンション制御装置の典型的な制御フローである。
上記サスペンション制御装置の一適用例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の一適用例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の一適用例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の他の適用例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の他の適用例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の他の適用例を説明する図である。
本発明の第2の実施形態に係るサスペンション制御装置を示すブロック図である。
上記サスペンション制御装置の一作用を説明する図である。
図15のサスペンション制御装置の典型的な制御フローである。
本発明の第3の実施形態に係るサスペンション制御装置を示すブロック図である。
図18のサスペンション制御装置における制御の一例を示す説明図である。
図18のサスペンション制御装置における制御の他の例を示す説明図である。
図18のサスペンション制御装置の典型的な制御フローである。
本発明の第4の実施形態に係るサスペンション制御装置を示すブロック図である。
車両に搭載される各種センサの配置例を説明する模式図である。
本発明の一実施形態における状態信号の一形態を示す図である。
上記状態信号の他の形態を説明する図である。
上記状態信号の他の形態を説明する図である。
上記状態信号の他の形態を説明する図である。
上記状態信号の他の形態を説明する図である。
上記状態信号の生成方法を説明する図である。
上記状態信号の他の生成方法を説明する図である。
上記状態信号の他の生成方法を説明する図である。
各種センサの配置例を説明する車両の平面図である。
上記状態信号の取得方法を説明する図である。
上記状態信号の他の取得方法を説明する図である。
各種センサの他の配置例を説明する車両の平面図である。
ばね下振動情報の検出例を説明する図である。
各種センサの他の配置例を説明する車両の平面図である。
各種センサの他の配置例を説明する車両の平面図である。
上記サスペンション制御装置の他の構成例を示すブロック図である。
上記サスペンション制御装置の一作用を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の一処理例を説明する図である。
上記処理例を説明する図である。
上記サスペンション制御装置の他の処理例を説明する図である。
上記処理例を比較例とともに説明する図である。
上記処理例を他の比較例とともに説明する図である。

実施例

0024

以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ここでは、セミアクティブサスペンション制御を例に挙げて、本実施形態のサスペンション制御装置およびサスペンション制御方法を説明する。

0025

<セミアクティブサスペンション制御の概要
まず、セミアクティブサスペンション制御の概要について説明する。図1は、独立懸架式サスペンション装置の基本構成を示す概略図である。

0026

図1に示すように、サスペンション装置は、各車輪(左前輪FL左後輪RL、右前輪FRおよび右後輪RR)と車体Vとの間にそれぞれ配置され、主として、車体に対して車輪を搖動可能に支持するサスペンションアームS11と、車重支えスプリングS12と、スプリングの振動を減衰させるダンパ(ショックアブソーバ)S13とを有する。

0027

セミアクティブサスペンション制御においては、ダンパS13に減衰力可変のダンパ装置が用いられ、例えば、車輪の制振が必要なときにダンパS13の減衰特性が可変に制御される。減衰力の制御指標としては、典型的には、車輪の上下方向における振動レベル(ばね下振動レベル)が用いられ、当該振動速度に応じて最適な減衰力が算出され、算出された減衰力を設定するための制御信号がダンパS13に出力される。各ダンパS13は、対応する車輪の振動レベルに応じて、個々に制御される。

0028

ところで、上述のようなセミアクティブサスペンション制御を各輪に適用すると、ばね下が振動した輪は減衰力が高まり振動が抑えられるが、その輪の振動(またはその振動を抑える反力)は、他の輪にも少なからず影響することになる。例えば、ばね下であれば、車軸やスタビライザを経由して左右反対輪に影響が及び、ばね上であれば、車体はほぼ剛体みなすことができるため、その輪以外の輪にも影響が及ぶことになる。

0029

一方、ばね下振動の他輪への影響は必ずしも大きくないため、ばね下振動レベルに対して減衰力特性を大きく設定するための閾値を他輪では超えない場合も多い。そうすると、ばね下が振動した輪のみ減衰力が高く設定されることで、その輪の振動は抑制されることになるが、他輪は必ずしも減衰力が高く設定されないため、小さな振動が持続してしまうおそれがある。この場合、各輪でのばね下振動の減衰感が異なるなどの違和感が発生してしまうことになる。

0030

また、上記のように、ある1輪のみ減衰力を高める場合、減衰力の反力はどこが受け持つのかを考える必要がある。ある1輪のばね下が振動した場合、ダンパの減衰力でその振動を抑えようとすると、その反力は自輪のばね下以外に、車軸やスタビライザ経由で反対輪のばね下、そしてばね上も受け持つことになる。そして、ばね上で反力を受け持つということは、車体の重心がどこにあるかにも依存するが、基本的には残りの3輪全てのばね上に影響する。

0031

このように、車軸やスタビライザ経由、またはばね上経由で全ての輪に反力(またはその反力による動き)が影響することを考慮すると、残りの輪の減衰力が低い場合、ばね下が振動している輪の振動を抑えるために減衰力を高めても、その反力を受け持つ部材が動きやすくなっているため、効率的に振動を抑えることができず、振動エネルギの一部が他輪に逃げてしまうことになる。このようなことからも、ある1輪が振動しており、その振動を抑えるためにその輪のみ減衰力を高めるというのは、必ずしも効率的な制振法であるとは言えない。

0032

このような観点で図1に示すサスペンション装置を再度参照すると、スタビライザがなく、更にばね上が動かないという条件であれば、例えば左輪FL(RL)のばね下振動が右輪FR(RR)のばね下振動に影響するということは、理論的にあり得ない。一方、図2に示すように、左右輪が車軸S21およびスタビライザS22で接続されている車軸懸架式サスペンション装置においては、左輪FL(RL)のばね下振動が右輪FR(RR)のばね下振動に影響することは明らかである。

0033

図1において、ばね上が動くと仮定すると、左輪FL(RL)のばね下が振動した場合、左輪ばね上も少なからずばね下振動周波数で動くため、この影響で右輪FR(RR)のばね上も少なからずばね下振動周波数で動くことになる。そして、右輪ばね上が動けばサスペンションが作動するため、そのサスペンションの反力が右輪ばね下に影響する。さらに、ばね下とばね上の固有振動周波数が異なるため、ばね上共振も誘発され、左輪のばね下振動のみならず、ばね上共振による影響でも右輪のサスペンションやばね下が動くことになる。ただし、これらの動きは当然、左輪に対しては小さな動きとなる。

0034

また、実際には図1に示したような独立懸架式でもスタビライザが設置されていることが多く、このスタビライザ経由で、左輪のばね下振動は、右輪のばね下に、ばね上経由以上の振動伝達ゲインを持って伝わっていくことになる。

0035

さらに、フロントリアではトレッド幅レバー比、ばね上分担質量などが異なっているため、各種振動を抑制するために必要な減衰力は一意に決まらない。このため、実車適合チューニング)時は、実車官能評価結果に基づいて、フロントとリアの減衰力をそれぞれ調整することになる。

0036

以上のような状況に鑑み、本実施形態に係るサスペンション制御装置は、ある1輪でばね下振動が発生した場合でも、複数輪でばね下振動が発生した場合でも、各輪のばね下振動抑制効率を高めつつ、ばね上振動の発生も抑制しつつ、車両フィーリングも良好なものとすることを狙いとしている。

0037

<第1の実施形態>
図3は、本発明の一実施形態に係るサスペンション制御システムを示すブロック図である。本実施形態のサスペンション制御システム100は、車両、典型的には4輪自動車に採用され得る。

0038

[全体構成]
サスペンション制御システム100は、複数のセンサ類を含む検出部10と、サスペンション制御装置20と、各車輪に取り付けられた複数のダンパ30とを有する。

0039

検出部10は、例えば、複数のばね上加速度センサ、各輪に取り付けられた複数の変位センサ、各輪に取り付けられた複数の車輪速センサ等、車両の挙動に関連する情報を与える各種のセンサを備える。
複数のばね上加速度センサは、例えば車体(シャーシ)の任意の個所にそれぞれ取り付けられ、各輪のばね上加速度または複数の輪に共通のばね上加速度を検出する。変位センサは、例えば車体とサスペンションアームの間に取り付けられ、これらの相対変位、つまり、ばね上とばね下との相対変位(サスペンション変位)を検出する。車輪速センサは、車輪の回転速度を検出し、例えばホイールハブに取り付けられる。

0040

なお、検出部10は、ばね上加速度センサ、変位センサおよび車輪速センサの他、あるいはこれらのセンサに代えて、ばね下加速度センサ等を含んでもよい。これらのセンサの種類はあくまで一例であり、車種によってその仕様が異なることもある。また、センサ数やセンサの取り付け位置等も車種によって適宜設定される。さらに、上記すべてのセンサが1つの車両に搭載される場合に限られない。例えば、ばね下加速度センサおよび変位センサのうち、いずれか一方が1つの車両に搭載されることが多い。

0041

ダンパ30には、例えば減衰力(厳密には減衰特性または減衰係数)可変方式のダンパが採用され得る。減衰特性可変方式のダンパの種類として、例えば磁気粘性流体方式、比例ソレノイド方式、電気粘性流体方式等がある。磁気粘性流体方式、比例ソレノイド方式の場合、制御指令値電流値であり、電気粘性流体方式の場合、それは電圧値である。以下に登場する「電流値」という文言は、このような趣旨から、「電圧値」に置き換え可能である。

0042

各輪のダンパ30の振動減衰特性は、制御部50から出力される制御信号(ばね下制御指令)の入力を受けることで、それぞれ独立に制御され、制御された振動減衰特性によって各輪のばね下振動を減衰させる。

0043

[サスペンション制御装置]
サスペンション制御装置20は、検出部10からの各種の検出値に基づいて各輪のばね下振動状態を判定し、これらの判定結果に基づいて各ダンパ30の減衰力あるいは減衰特性を制御するための制御信号(制御指令)を生成するように構成される。
以下、サスペンション制御装置20の詳細について説明する。

0044

サスペンション制御装置20は、信号生成部40と、制御部50とを有する。サスペンション制御装置20は、典型的には、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現され得る。CPUに代えて、またはこれに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)等が用いられてもよい。ROMには、制御部50において実行されるサスペンション制御プログラム、そのプラグラムの実行に必要な制御パラメータ(ゲインマトリクスG11〜G44(図6))などが格納される。信号生成部40および制御部50は、同一のユニットで構成されてもよいし、別個のユニットで構成されてもよい。

0045

(信号生成部)
信号生成部40は、検出部10から各輪のばね下振動情報を含む検出信号を取得し、各輪のばね下振動状態を判定して、各輪のばね下振動に関する状態信号をそれぞれ生成する、「信号処理装置」を構成する。生成された各輪の状態信号は、制御部50へ出力される。
ここで、ばね下振動情報とは、ばね下振動に関する情報をいい、ばね下の振動状況を判定するための基になる信号である。ばね下振動情報は、何らかのセンサ信号そのものであってもよいし、センサ信号を加工した情報であってもよい。

0046

ばね下振動状態の判定(ばね下振動判定)の方法は、特に限定されず、検出部10の出力の形態などに応じて適宜設定することが可能である。例えば、検出部10の出力がON/OFF信号であれば、ばね下振動情報がある閾値を超えることでONとし、規定時間継続したらOFFとすればよい。また、検出部10の出力が時間変動する信号であれば、例えばばね下振動レベルなどを算出し、その値を制御部50へ出力すればよい。
なお、ばね下振動情報として、既にばね下振動レベルが情報として存在するのであれば、ばね下振動判定を省略することもできる。

0047

(制御部)
制御部50は、信号生成部40から出力された各輪の状態信号に基づいて、各輪についてばね下制御指令(制御信号)をそれぞれ算出し、各輪に対応するダンパ30各々に出力するように構成される。

0048

図4は、信号生成部40および制御部50の典型的な構成を概略的に示すブロック図である。

0049

図4に示すように、信号生成部40は、単輪ごとにばね下振動状態を判定するように構成される。すなわち、信号生成部40は、右前輪のばね下振動を判定するFR輪ばね下振動判定部41と、左前輪のばね下振動を判定するFL輪ばね下振動判定部42と、右後輪のばね下振動を判定するRR輪ばね下振動判定部43と、左後輪のばね下振動を判定するRL輪ばね下振動判定部44とを有する。

0050

同様に、制御部50は、単輪ごとに、ばね下制御指令を生成するように構成される。すなわち、制御部50は、右前輪のばね下制御指令を生成するFR輪ばね下制御指令演算部51と、左前輪のばね下制御指令を生成するFL輪ばね下制御指令演算部52と、右後輪のばね下制御指令を生成するRR輪ばね下制御指令演算部53と、左後輪のばね下制御指令を生成するRL輪ばね下制御指令演算部54とを有する。

0051

各振動判定部41〜44は、検出部10の出力から、対象とする輪のばね下振動状態の判定に必要な情報をそれぞれ取得して、当該各輪のばね下振動状態に関連する状態信号をばね下制御指令演算部51〜54へそれぞれ出力する。
なお、各輪のばね下振動情報の具体的な取得方法については後述する。

0052

制御部50は、各輪のばね下振動に関する状態信号に基づいて、複数の輪各々に設置された複数のダンパ30を相互に協調制御するための制御信号を生成するように構成される。

0053

本実施形態において、制御部50は、自輪だけでなく他の輪のばね下振動に関する情報に基づいて、各輪のダンパの減衰力を制御するためのばね下制御指令を生成する。すなわち図4に示すように、各制御指令演算部51〜54は、各ばね下振動判定部41〜44から各輪のばね下振動に関する情報をそれぞれ取得し、他の輪のばね下振動状態を参照しつつ、自輪のばね下振動の減衰力を決定するばね下制御指令をそれぞれ出力する。

0054

各ダンパの協調制御を実現するため、制御部50は、FR輪のダンパ30の振動減衰特性を制御するばね下制御指令IFR(第1の制御指令)と、FR輪とは左右反対のFL輪のダンパ30の振動減衰特性を制御するばね下制御指令IFL(第2の制御指令)とを個別かつ同時(厳密な同時でなくてもよい)に生成するとともに、これら各ばね下制御指令の間に所定の相関をもたせるように構成される。

0055

上記所定の相関とは、典型的には、乗り心地や車体のロール抑制などの制御の目的に応じて、FR輪のダンパ30の振動減衰特性とFL輪のダンパ30の振動減衰特性との間で所定の大小関係をもたせたり、各ダンパの振動減衰特性を同一にしたりすることをいう。これらの相関は、後述するように、ばね下制御指令の演算に用いられる制御パラメータ(ゲインマトリクスにおける各ゲインの相関)によって決定される。上記制御パラメータは、車種や車速運転モードなどによって適宜設定され、固定値であってもよいし、車速などによって変更し得る可変値であってもよい。

0056

また、上記所定の相関は、上述のようにFR輪とFL輪との間のみならず、RR輪とRL輪との間にも適用可能である。さらに、上記所定の相関は、フロント(FR輪、FL輪)とリア(RR輪、RL輪)との間、あるいは、相互にダイアゴナルな関係を有する車輪間(FR輪とRL輪、または、FL輪とRR輪)に適用されてもよい。

0057

本実施形態では、各ばね下振動制御指令演算部51〜54は、各ばね下振動判定部41〜44から入力される各輪のばね下振動レベルにそれぞれ所定のゲインを乗算し、上記各輪のばね下振動レベルと上記所定のゲインとの乗算値の中から最も大きい乗算値を選択し、これを基に自輪のばね下制御指令を生成する。

0058

図5は、FR輪ばね下制御指令演算部51の機能を説明するブロック図である。
ばね下振動判定部41〜44から出力される各輪のばね下振動レベル(状態信号)をそれぞれWFR、WFL、WRRおよびWRLとすると、FR輪ばね下制御指令演算部51は、ばね下振動レベルWFR、WFL、WRRおよびWRLにそれぞれ所定のゲインG1、G2、G3およびG4を乗算し、これらの乗算値(G1・WFR、G2・WFL、G3・WRR、G4・WRL)の中から最も大きい値を選択し(ハイセレクト処理)、選択した値に基づいてFR輪ばね下制御指令IFRを生成する。

0059

なお、ゲインG1〜G4は、0を含む任意の正の実数とされ、車種や仕様などによって適宜設定される。ゲインG1〜G4は、固定値であってもよいが、後述するように車種や車速、運転モードなどによって手動あるいは自動で変更可能な可変値であってもよい。

0060

例えば、ばね下振動判定部41〜44の出力がON/OFF信号である場合には、ONが1、OFFが0という出力に設定されることで、G1〜G4はゲインでありながら、ばね下制御指令の値そのものとなり、後はハイセレクト処理により最大値を算出すればよい。そして、ばね下振動判定部41〜44の出力が変動する信号である場合には、G1〜G4はゲインとしてそのまま取扱い、その後ハイセレクト処理を行って最大値を算出すればよい。
以上のように、ばね下振動判定部41〜44の出力がON/OFF信号でも、変動する信号でも、FR輪ばね下制御指令演算部51としては同じ構成で対応することが可能である。

0061

FL輪ばね下制御指令演算部52、RR輪ばね下制御指令演算部53およびRL輪ばね下制御指令演算部54もまた、上述のFR輪ばね下制御指令演算部51と同様に構成される。

0062

ここで、本来の数学的な表記方法ではないが、ハイセレクト演算のマトリクス表記を仮に{}×[]とすると、制御部50は図6のように表現することができる。本明細書では、制御の概要を理解し易くするために、各輪のばね下制御指令演算部51〜54において算出されるばね下制御指令ばね下制御指令IFR、IFL、IRR、IRRの演算式を便宜的に以下のように定義する。
IFR=max(G11WFR、G12WFL、G13WRR、G14WRL)・・・(1)
IFL=max(G21WFR、G22WFL、G23WRR、G24WRL)・・・(2)
IRR=max(G31WFR、G32WFL、G33WRR、G34WRL)・・・(3)
IRL=max(G41WFR、G42WFL、G43WRR、G44WRL)・・・(4)

0063

例えば、上記(1)式において、max(G11WFR、G12WFL、G13WRR、G14WRL)は、ばね下振動レベルとゲインとの乗算値(G11WFR、G12WFL、G13WRR、G14WRL)の中から選択される最大値を意味する。FR輪ばね下制御指令演算部51は、当該最大値を、FR輪に対するばね下制御指令IFRとして生成する。
FL輪、RR輪およびRL輪ばね下制御指令演算部52〜54も同様に、上記(2)〜(4)式に基づいて、FL輪、RR輪およびRL輪に対するばね下制御指令IFL、IRR、IRLをそれぞれ生成する。

0064

4行4列のGマトリクスを構成するゲインG11、G12、G13、G14、G21、G22、G23、G24、G31、G32、G33、G34、G41、G42、G43、G44は、上述のG1〜G4と同様に、各輪に対するばね下制御指令の間に所定の相関をもたせるためのものである。これらゲインG11〜G44の値は特に限定されず、実現しようとする車両フィーリングによって適宜設定される。

0065

図7は、矢印方向に前進する車両の各輪を示す概略平面図である。
ばね下制御指令IFR、IFL、IRRおよびIRLは、それぞれ、FR輪、FL輪、RR輪およびRL輪のダンパ30を、目的とする減衰力(減衰特性)に設定するための電流値であり、本実施形態では、これら制御指令の値が大きいほど、高い減衰力(減衰特性)に調整される。ばね下制御指令IFR、IFL、IRRおよびIRLは、典型的には、図示しない電流制御回路およびパルス幅変調回路などを介して、電流値として各ダンパ30へ出力される。

0066

図8は、サスペンション制御装置20において実行される制御フローの一例を示している。
信号生成部40は、検出部10から各種センサ信号を読み込み、各輪のばね下振動情報を取得する(ステップ101)。次に、信号生成部40は、取得した各輪のばね下振動情報を判定し、各輪についてのばね下振動に関する状態信号をそれぞれ生成し、これら状態信号を制御部50へ出力する(ステップ102)。
なお、ばね下振動情報の判定方法の詳細については後述する。

0067

続いて、制御部50は、各輪のばね下振動情報に基づいて各輪についてのばね下制御指令を演算する。具体的には、制御部50は、入力された各輪の状態信号に所定のゲインG11〜G44(図6)をそれぞれ乗算し、各ばね下制御指令演算部51〜54において各乗算値のハイセレクト演算(上記式(1)〜(4))を実行することで、各輪についてのばね下制御指令IFR、IFL、IRR、IRLをそれぞれ生成し、各ダンパ30へ出力する(ステップ103,104)。ばね下制御指令IFR、IFL、IRR、IRLは、制御部50のメモリに格納されたプログラムの実行によって生成される。

0068

上述のように、4行4列のGマトリクスを構成するゲインG11〜G44は、各輪に対するばね下制御指令の間に所定の相関をもたせるためのものである。前後の左右輪が相互に対称である場合、典型的には、G11=G22、G12=G21、G13=G24、G14=G23、G31=G42、G32=G41、G33=G44、G34=G43、に設定される。上記に加えて、G11=G22=G33=G44と設定されてもよい。
なお、左右の輪が相互に対称である場合とは、左右の輪に同一のばね下制御指令を出力したときに当該左右各輪の振動減衰特性がそれぞれ同等である場合をいう。

0069

協調制御の対象となる輪は特に限定されず、典型的には、前または後の左右輪あるいは全輪とされる。協調制御の目的も特に限定されず、乗り心地やロール対策など、車種や仕様に応じて適宜選択される。以下、ゲインG11〜G44の異なるいくつかの適用例を挙げて、本実施形態の作用効果について説明する。

0070

(適用例1:左右輪同時制御
例えばFL輪のばね下が振動した場合、上述のように、FR輪のばね下やばね上も少なからず振動する。このときのFL輪およびFR輪のばね下制御指令である電流値をそれぞれIFL(第1の制御指令)、IFR(第2の制御指令)とすると、ゲインG11(第1のゲイン)、G12(第2のゲイン)、G21(第3のゲイン)、G22(第4のゲイン)との大小関係によって、以下のように異なる作用が得られる。
なお、ここではフロント(前輪)について説明するが、リア(後輪)についても同様となる。また、説明を分かり易くするため、この例では2行2列のゲインマトリクスを用いるものとする。各ゲイン(G11〜G22)の値、各ばね下振動レベル(WFR(第1の状態信号)、WFL(第2の状態信号))の値は、それぞれ単純な整数とするが、勿論これらに限られない。

0071

(1−1:G12<G22)
図9Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を示し(G11=G22=10、G12=G21=1)、図9Bは、FL輪のばね下振動レベルWFLを一定とし、FR輪のばね下振動レベルWFRが段階的に増加したときの、各輪のばね下制御指令の変化を示している。

0072

FR輪およびFL輪ばね下制御指令演算部51,52は、上述したハイセレクト処理により、FR輪およびFL輪に対するばね下制御指令IFR、IFLをそれぞれ生成する。

0073

具体的には、FR輪ばね下制御指令演算部51(第1の制御指令演算部)は、FR輪のばね下振動レベルWFR(第1の状態信号)とゲインG11(第1のゲイン)との乗算値(G11・WFR)と、FL輪のばね下振動レベルWFL(第2の状態信号)とゲインG12(第2のゲイン)との乗算値(G12・WFL)との中から選択される最大値に基づいて、FR輪に設置されたダンパ30(第1のダンパ)の振動減衰特性を電気的に制御するばね下制御指令IFR(第1の制御指令)を生成する。

0074

一方、FL輪ばね下制御指令演算部52(第2の制御指令演算部)は、FR輪のばね下振動レベルWFR(第1の状態信号)とゲインG21(第3のゲイン)との乗算値(G21・WFR)と、FL輪のばね下振動レベルWFL(第2の状態信号)とゲインG22(第4のゲイン)との乗算値(G22・WFL)との中から選択される最大値に基づいて、FL輪に設置されたダンパ30(第2のダンパ)の振動減衰特性を電気的に制御するばね下制御指令IFL(第2の制御指令)を生成する。

0075

その結果、FR輪のばね下振動レベルWFRが0のときでも、図9Bに示すように、FR輪に対してゲインG12の値に対応する有意なばね下制御指令が生成される。このように本実施形態においては、FRおよびFL輪の少なくとも一方のばね下振動を検出したとき、振動している輪(FL輪)だけでなく、振動していない輪(FR輪)についてもばね下制御指令IFR、IFLが生成される。これにより両輪のばね下振動の減衰力が高まり、FL輪の制振制御の反力に起因するFR輪のばね下振動の誘発が抑制され、上記反力によるFR輪への影響が低減される。

0076

FR輪にばね下振動が発生すると、図9Bに示すように、FR輪ばね下制御指令演算部51におけるハイセレクト処理により、FR輪のばね下振動レベルWFRの上昇分にゲインG12の値に比例した大きさのばね下制御指令IFRが生成される。

0077

本例においては、FR輪のばね下振動レベルWFRがFL輪のばね下振動レベルWFLよりも小さい場合、G12<G22の相関によって、IFR<IFLの相関が得られる。これにより、ばね下振動の大きさはFL輪が大きくFR輪は小さいため、乗り心地をできる限り悪化させずに、FR、FL輪ともに必要最小限の減衰力で両輪のばね下振動を抑制することができる。G22とG12との差は特に限定されず、FR輪のばね下振動を抑制するためにIFRの値が0とならなければよい(ゲインG12が0でなければよい)。

0078

FR輪のばね下振動レベルWFRがFL輪のばね下振動レベルWFLと同等になると、ばね下制御指令演算部51,52におけるハイセレクト処理の結果、両輪について相互に同一の大きさのばね下制御指令IFR、IFLが生成される(図9B)。したがって、同一の振動レベルで振動する両輪に対しては相互に同等の制振制御が実行されるため、乗り心地の低下が防止される。

0079

一方、FR輪のばね下振動レベルWFRがFL輪のばね下振動レベルWFLよりも大きくなると、ばね下制御指令演算部51,52におけるハイセレクト処理の結果、各輪に対するばね下制御指令の大きさが上述の例とは逆転し、IFR>IFLの相関を有することになる。このことは、FL輪の振動レベルがFR輪の振動レベルよりも高い場合でも、FR輪の振動レベルがFL輪の振動レベルよりも高い場合でも、本例においては、それぞれについて等価な制御を実行可能であることを意味する。

0080

(1−2:G12>G22)
図10Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を示し(G11=G22=1、G12=G21=10)、図10Bは、FL輪のばね下振動レベルWFLを一定とし、FR輪のばね下振動レベルWFRが段階的に上昇したときの、各輪のばね下制御指令の変化を示している。

0081

FR輪およびFL輪ばね下制御指令演算部51,52は、上述したハイセレクト処理により、FR輪およびFL輪に対するばね下制御指令IFR、IFLをそれぞれ生成する。その結果、FR輪のばね下振動レベルがFL輪のばね下振動レベルよりも小さい場合は、IFR>IFLの関係を満たすばね下制御指令が生成される。

0082

FL輪のばね下は大きく振動しており、FR輪のばね下は少ししか振動していない状況では、左右輪で同じ電流値を出力しても、ダンパ速度が小さいFR輪では大きな減衰力を発生させることができない。このため、ばね上の振動がFR輪に伝わりやすくなり、ロール挙動が発生しやすくなる。
そこで、G12とG22との間に、G12>G22という相関をもたせることで、FR輪の動きを大きく抑制することができ、これによりロール挙動を抑制しやすくすることができる。G12とG22との差は特に限定されず、FL輪のばね下振動を抑制するためにIFLの値が0とならなければよい(ゲインG22が0でなければよい)。

0083

なお、FR輪のばね下振動レベルがFL輪のばね下振動レベルよりも大きくなった場合、各輪に対するばね下制御指令の大きさが上述の例とは逆転し、IFR<IFLの相関を有することになる。このことは、FL輪の振動レベルがFR輪の振動レベルよりも高い場合でも、FR輪の振動レベルがFL輪の振動レベルよりも高い場合でも、本例においても、それぞれについて等価な制御を実行可能であることを意味する。
また、両輪のばね下振動レベルが同一である場合は、上述の例と同様に、IFR=IFLの関係を満たすばね下制御指令が生成される。

0084

(1−3:G12=G22)
図11Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を示し(G11=G12=G21=G22=10)、図11Bは、FL輪のばね下振動レベルWFLを一定とし、FR輪のばね下振動レベルWFRが段階的に上昇したときの、各輪のばね下制御指令の変化を示している。

0085

この例では、G12およびG22がG12=G22という相関をもつため、FR輪のばね下振動レベルに関係なく、IFL=IFRという相関が得られる。これにより、一般ユーザの多くが慣れしんできた、減衰力可変タイプではないコンベンショナルなダンパと同じような車両挙動にすることができる。
また、本例では、各輪のばね下制御指令IFR、IFLの大きさは、各輪のばね下振動レベルのうち最も大きい値に基づいて算出されることになる。

0086

以上のように、FL輪のばね下が振動した場合、FR輪の電流指令はゼロではない電流値を適用しつつ、その大きさはFL輪の電流指令と比較して、小さくても、同じでも、大きくても、それぞれメリットがある。
このように自輪のダンパおよびその左右反対輪のダンパを相互に協調制御することにより、これら各輪のばね下振動を効率よく抑制したり、ロールを抑制したりすることが可能となり、所望とする車両フィーリングを実現することができる。また、各輪に対するばね下制御指令を同時に生成、出力するため、各輪のばね下制御を同時に実行することができ、これにより、各輪における制御タイムラグに起因する車両フィーリングの悪化を防止することができる。

0087

特に、本実施形態では、左右輪それぞれの制御アルゴリズムは、基本的に同じ(対称)になるように設定される(具体的には、ゲインG11とG22、および、ゲインG12とG21とが相互に同一となるように設定される)。これにより、一方の輪のばね下制御指令と他方の輪のばね下制御指令とが相互に所定の協調制御を実現するように統一化されるため、目的とする車両フィーリングを安定して実現することが可能となる。

0088

また、ばね下制御指令IFR、IFLの生成に際して、各輪のばね下振動レベルWFR、WFLと所定のゲインG11〜G22との乗算値の中から選択された最大値が用いられるため、乗り心地やロール抑制、車両フィーリングなどの制御の目的に応じて、ばね下振動が発生している輪を速やかに安定化させつつ、他の輪の振動を効率よく制御することができる。

0089

(適用例2:全輪同時制御)
FL輪ばね下が振動した場合、車両の重心位置にも依存するが、ばね上の動きはロールが励起されるとともに、相互に対角であるRR輪とFL輪とが大きく動くダイアゴナルな動きも比較的大きく励起されることになる。なお、FL輪のみが振動するような場合は、バウンスピッチは、ばね上の他の振動と比較して励起されにくい。
このような状況も考慮すると、全輪同時に制御することが好ましく、その手法としては、以下のような例が考えられる。ここでも、ばね下振動輪はFL輪とする。また、説明を分かり易くするため、本例においても各ゲイン(G11〜G44)の値、各ばね下振動レベル(WFR、WFL、WRR、WRL)の値は、それぞれ単純な整数とするが、勿論これらに限られない。実際には、車体の重心位置や前後輪におけるトレッド幅、レバー比の相違などを考慮して各ゲインが設定される。

0090

(2−1:G12=G22、G32=G42)
図12Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を、図12Bは、各輪のばね下制御指令の大きさの一例をそれぞれ示している。
FR輪およびFL輪ばね下制御指令演算部51,52は、上記(1)、(2)式により、FR輪およびFL輪に対するばね下制御指令IFR、IFLをそれぞれ生成する。

0091

すなわち、FR輪ばね下制御指令演算部51は、FR輪のばね下振動レベルWFR(第1の状態信号)とゲインG11(第1のゲイン)との乗算値(G11・WFR)と、FL輪のばね下振動レベルWFL(第2の状態信号)とゲインG12(第2のゲイン)との乗算値(G12・WFL)と、RR輪のばね下振動レベルWRR(第3の状態信号)とゲインG13(第5のゲイン)との乗算値(G13・WRR)と、RL輪のばね下振動レベルWRL(第4の状態信号)とゲインG14(第6のゲイン)との乗算値(G14・WRL)との中から選択される最大値に基づいて、第1のばね下制御指令IFRを生成する。

0092

一方、FL輪ばね下制御指令演算部52は、FR輪のばね下振動レベルWFR(第1の状態信号)とG21(第3のゲイン)との乗算値(G21・WFR)と、FL輪のばね下振動レベルWFL(第2の状態信号)とゲインG22(第4のゲイン)との乗算値(G22・WFL)と、RR輪のばね下振動レベルWRR(第3の状態信号)とゲインG23(第7のゲイン)との乗算値(G23・WRR)と、RL輪のばね下振動レベルWRL(第4の状態信号)とゲインG24(第8のゲイン)との乗算値(G24・WRL)との中から選択される最大値に基づいて、第2のばね下制御指令IFLを生成する。

0093

なお、RR輪およびRL輪ばね下制御指令演算部53,54は、上記(3)、(4)式により、RR輪およびRL輪に対するばね下制御指令IRR、IRLをそれぞれ生成する。

0094

この例によれば、ゲインG11〜G44の相関によって、IFL、IFR、IRLおよびIRRの間に、IFL=IFR、IRL=IRRという相関が与えられる。これは、ばね下振動抑制のフィーリングを、減衰力可変タイプではないコンベンショナルダンパと同じようにしつつ、ロールやダイアゴナルなばね上の挙動も、同時に抑制することを狙いとする。この例によれば、コンベンショナルなダンパと同じような車両挙動にすることができる。
なお、本例においては、IFLおよびIRLは、同一の値とされるが、相互に異なる値であってもよい。

0095

(2−2:G12<G22、G32>G42)
図13Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を、図13Bは、各輪のばね下制御指令の大きさの一例をそれぞれ示している。
この例によれば、ゲインG11〜G44の相関によって、IFL、IFR、IRLおよびIRRの間に、IFL>IFR、IRL<IRRという相関が与えられる。これは、乗り心地を悪化させずにフロントのばね下振動のみを抑制しつつ、ばね上のダイアゴナルな挙動を抑制することを狙いとする。この場合は、IRLの値が0であってもよい。

0096

(2−3:G12>G22、G42≦G32)
図14Aは、本例におけるゲインマトリクスの一例を、図14Bは、各輪のばね下制御指令の大きさの一例をそれぞれ示している。
この例によれば、ゲインG11〜G44の相関によって、IFL、IFR、IRLおよびIRRの間に、IFL<IFR、IRL≦IRRという相関が与えられる。これにより、ばね上のロールとダイアゴナルな挙動を優先的に抑制することができる。この場合も、IRLの値が0であってもよい。
IFL<IFR、IRL=IRRという相関が得られるゲインマトリクスの値および各輪の制御指令の大きさの一例を図14Cに示す。

0097

本例において、フロントとリアの電流指令の大きさの違いは、レバー比や分担荷重の違いにより単純には比較できないが、例えば、IFLはばね下振動を抑制できるレベルの電流指令を設定し、残りの輪はかなり大きな電流指令に設定することができる(リアは、IRL<IRRでもよいし、IRL=IRRでもよいが、例えば図14Cに示すように、それぞれの値が大きくなるようにゲインG31、G32、G41、G42を設定する)。これにより、ばね上の4点支持のうち3点が拘束されるような状態になるため、振動輪であるFL輪のばね上が結果的に動きにくくなり、車体をフラットに保つことが可能となる。

0098

以上のように自輪のダンパおよびその左右反対輪のダンパだけでなく、これらの対角関係にある他の輪を相互に協調制御することにより、各輪のばね上振動を効率よく抑制することが可能となり、車両フィーリングのさらなる向上を実現することができる。
また、各輪に対するばね下制御指令を同時に生成、出力するため、各輪のばね下制御を同時に実行することができ、これにより、各輪における制御タイムラグに起因する車両フィーリングの悪化を防止することができる。

0099

なお、適用例1と同様に、左右輪のばね下が同じ大きさで振動した場合は、フロントとリアでそれぞれ左右輪のばね下制御指令の大きさは同じとなる。
本適用例についてFL輪が振動した場合を説明してきたが、適用例1と同様に、左右対称輪が振動した場合には考え方を逆にすればよい。
また、以上の説明では、主たる振動輪をフロント輪として説明したが、主たる振動輪がリア輪である場合には、ゲインG33、G34、G43、G44、あるいは、これらにゲインG13、G14、G23、G24を加えたそれぞれの相関を設定すればよい。

0100

以上のように、自輪のダンパだけでなく、その左右反対輪のダンパおよびダイアゴナルな関係を有する輪のダンパをも相互に協調制御することにより、これら各輪のばね下振動、あるいはばね上振動を効率よく抑制することが可能となり、所望とする車両フィーリングを実現することができる。

0101

<第2の実施形態>
図15は、本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置の概略ブロック図である。

0102

上述のように、適用例1(左右輪同時制御)および適用例2(全輪同時制御)によれば、対象とする各輪の振動(ばね下振動、あるいは、ばね上振動)を協調的に制御するようにしているため、各輪の振動を効率よく抑制することができる。
一方、上記適用例1,2には、ばね上の動きを抑制するために、ばね下振動輪以外の輪の制御指令を大きく設定するケースが存在する。このような制御を適用した場合、各輪で大きな制御指令が選択されてしまい、乗り心地悪化というデメリット顕在化するおそれがある。

0103

そこで本実施形態においては、図15に示すように、制御部50の後段に、上限リミッタ処理部60(リミッタ処理部)をさらに備える。
上限リミッタ処理部60は、各輪のばね下振動の大きさに応じて、減衰力特性が大きくなる方向の上限リミッタ値を各制御指令について個別に設定することが可能に構成される。これにより、制御指令が必要以上に大きくなり過ぎるのを防止することが可能となる。あるいは、制御指令が、出力可能な電流値以上の制御指令(電流指令)になるのを防止することができる。

0104

上限リミッタ処理部60には、図15に示すように、各輪のばね下振動レベルが入力されてもよい。この場合、上限リミッタ処理部60は、各輪のばね下振動の大きさ(振動レベル)をモニタし、ばね下振動が大きくなる輪に対する制御指令を、当該ばね下振動が大きくなるにつれて減衰力特性が小さくなる方向に漸減させるように構成される。これにより、協調制御している輪の全てでばね下振動レベルが大きい場合に、不必要に上記全ての輪の制御指令が大きくなってしまうのを防止することができる。

0105

図16は、ばね下振動の大きさとばね下制御指令の上限リミッタ値との関係の一例を示す図である。縦軸のL1,L2はそれぞれ、ばね下制御指令の大きさ(電流値)であって、例えば、L1は、ロール抑制のために、ばね下振動レベルが小さくても大きな減衰力を出すために必要なレベルを示し、L2は、ばね下振動の抑制に必要な減衰力の最小レベルを示している。
図示の例では、ばね下振動がある一定の範囲にあるときに上限リミッタ値を直線的に減少させている。このように上限値減少開始レベルを設定することで、目的とする車両挙動を確保しつつ、車両フィーリングの悪化防止を図ることができる。上限リミッタ値の減少特性は直線的なものに限られず、ステップ状であってもよいし、二次曲線的なものであってもよい。

0106

なお、上限リミッタ処理部60は、制御部50の後段に設置される例に限られず、例えば、制御部50の中に組み込まれてもよい。また、上限リミッタ処理部60に取り込まれる各輪のばね下振動レベルは、各輪の車輪速情報であってもよい。

0107

図17は、本実施形態におけるサスペンション制御装置において実行される制御フローの一例を示している。
信号生成部40は、検出部10から各種センサ信号を読み込み、各輪のばね下振動情報を取得する(ステップ201)。次に、信号生成部40は、取得した各輪のばね下振動情報を判定し、各輪についてのばね下振動に関する状態信号をそれぞれ生成し、これら状態信号を制御部50へ出力する(ステップ202)。
続いて、制御部50は、入力された各輪の状態信号に所定のゲインG11〜G44(図6)をそれぞれ乗算し、得られた各乗算値をハイセレクト演算する(ステップS203)。
そして、上限リミッタ処理部60は、各輪のばね下振動レベルを算出あるいは取得し(ステップ205)、ばね下振動レベルに応じた制御指令の上限リミッタ処理を実行した後、各輪についてのばね下制御指令を出力する(ステップ206)。

0108

<第3の実施形態>
図18は、本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置の概略ブロック図である。

0109

求められる車両フィーリングは、車両ごとに異なるが、1つの車両でも車速によって求められる車両フィーリングが異なってくる。また、減衰力可変方式のダンパを搭載した車両では、ソフト、ノーマルスポーツなどのモードセレクトが用意されているものも多く、このような場合には、これらのモードセレクトによって求められる車両フィーリングが異なってくる。したがって、車速や運転モードによって、ばね下振動の協調制御の態様を可変にすることで、さまざまなニーズに対応することが可能となる。

0110

そこで本実施形態のサスペンション制御装置は、上記モードセレクトを検出するモード検出部や、車両の車速を検出する車速検出部を備え、制御部50は、検出された運転モードあるいは車速に応じて、ゲインG11〜G44の値を可変に制御するように構成される。これにより、運転モードや車速に応じた快適な車両フィーリングを得ることが可能となる。

0111

運転モードは、例えば運転席に設置されたモード切替スイッチの出力に基づいて判定される。
車速は、典型的には、各輪に設置された車輪速センサの出力に基づいて算出され、車速検出部は、図示しない演算装置によって構成される。当該演算装置は、サスペンション制御装置の一部(例えば信号生成部40内)に構成されてもよいし、サスペンション制御装置とは異なる制御装置(例えばブレーキ制御装置)内に構成されてもよい。

0112

取得された運転モード情報車速情報は、図18に示すように、制御部50および上限リミッタ処理部60の少なくとも1つに入力される。制御部50は、運転モード情報あるいは車速情報に基づいて、ばね下制御指令IFR、IFL、IRR、IRLの相関を決定するゲインG11〜G44を変更し、上限リミッタ処理部60は、運転モード情報あるいは車速情報に基づいて、各ばね下制御指令の上限値を変更する。

0113

本実施形態では、運転モードおよび車速の双方を参照して、制御部50および上限リミッタ処理部60の設定が変更されるように構成されるが、運転モードおよび車速のいずれか一方のみが参照されてもよい。ゲインやリミッタ値などの設定パラメータは、例えば、運転モード依存の場合はモードに応じた固定値を設定し、車速依存の場合は車速に応じて変化させる。例えば、スポーツモードが選択されたときや車速が大きいときほど、ロール挙動の抑制をメインとした制御パラメータが設定され、ソフトモードが選択されたときや車速が小さいときほど、ばね下振動の抑制をメインとした制御パラメータが設定される。

0114

運転モード情報や車速情報は、制御部50あるいは上限リミッタ処理部60に代えて、またはこれらに加えて、信号生成部40に入力されてもよい。この場合、信号生成部40は、各輪のばね下振動に関する状態信号を、運転モードや車速に基づいて生成する。これにより、制御部50において運転モード情報や車速情報を反映したばね下制御指令を生成することができる。

0115

制御部50は、車両の速度が第1の速度域においては、ゲインG12(第2のゲイン)をゲインG22(第4のゲイン)よりも小さい値に設定し、かつ、車両の速度が高くなるに従ってゲインG12(第2のゲイン)とG22(第4のゲイン)との差を小さくするように構成されてもよい。
一方、制御部50は、車両の速度が上記第1の速度域以上の第2の速度域においては、ゲインG12(第2のゲイン)をゲインG22(第4のゲイン)以上の値に設定し、かつ、車両の速度が高くなるに従ってゲインG12(第2のゲイン)とゲインG22(第4のゲイン)との差を大きくするように構成されてもよい。
これにより、車速が高くなるにつれて、車両フィーリングを乗り心地重視からロール対策重視に移行させることができる。

0116

ゲインG12、G22の可変制御の一例を図19に示す。ゲインG12は当初、ゲインG22よりも小さい値に設定される。
図19に示す可変制御例では、制御部50は、車速が高くなるに従ってゲインG12の値を上昇させつつ、ゲインG22の値を下降させるように構成される。これにより、第1の速度域V1においてはゲインG12とG22との差が小さくなり、第2の速度域V2においては、ゲインG12とG22との大きさの関係が逆転し、車速が高くなるに従って、ゲインG12とG22との差が大きくなる。

0117

ゲインG12とG22のうち、いずれか一方を固定し、他方を変化させてもよい。図20に示す可変制御例では、制御部50は、ゲインG22を固定し、ゲインG12を車速が高くなるにつれて上昇させるように構成される。

0118

図21は、本実施形態におけるサスペンション制御装置において実行される制御フローの一例を示している。
信号生成部40は、検出部10から各種センサ信号と運転モード情報とを読み込み、各輪のばね下振動情報を取得する(ステップ301,302)。次に、信号生成部40は、これらの情報を基に各輪のばね下振動情報を判定し、各輪についてのばね下振動に関する状態信号を生成し、これら状態信号を制御部50へ出力する(ステップ303)。
続いて、制御部50は、入力された各輪の状態信号に、車速や運転モードに応じて設定された所定のゲインG11〜G44をそれぞれ乗算し、得られた各乗算値をハイセレクト演算することで、各輪のばね下振動レベルを算出する(ステップS304〜306)。
そして、上限リミッタ処理部60は、各輪のばね下振動レベルや車速、運転モードを算出あるいは取得し、これらに応じた制御指令の上限リミッタ処理を実行した後、各輪についてのばね下制御指令を出力する(ステップ307,308)。

0119

<第4の実施形態>
図22は、本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置の概略ブロック図である。

0120

複数輪のばね下振動を協調制御する上で、車両の全ての輪のばね下振動情報が得られることが理想とされるが、センサの配置によっては、例えばフロントまたはリアのどちらかは左右共通のばね下振動情報しか得られない場合があり得る。例えば、リアには左右輪ともサスペンション変位センサやばね下加速度センサが取り付けられておらず、リア左右輪の中央にのみばね上加速度センサが設置されているような場合がある。この場合、ばね上加速度センサからばね下振動成分を抽出し、この情報をRR輪とRL輪の共通ばね下振動情報として取り扱うことで、上述と同様なばね下協調制御を実現することができる。

0121

本実施形態では、図22に示すように、信号生成部40は、リア輪ばね下振動判定部45を有する。リア輪ばね下振動判定部45は、RR輪およびRL輪の共通ばね下振動情報を取得し、これらリア輪のばね下振動状態を判定し、リア輪に共通の状態信号(WRR/RL)を生成する。制御部50は、リア輪の共通の状態信号(WRR/RL)からリア輪のばね下制御指令(IRR、IRL)を算出するための4行3列のGマトリクスを有する。リア輪のばね下制御指令は、目的とする車両フィーリングに応じて異ならせてもよく、この場合、当該目的に応じて、例えばゲインG31〜G33、G41〜G43の相関がそれぞれ決定される。
なお、リア輪に共通のばね下制御指令(IRR/RL)が生成されてもよく、この場合のGマトリクスは3行3列で構成される。

0122

<第5の実施形態>
[信号生成部の詳細]
続いて、信号生成部40の詳細について説明する。

0123

(ばね下振動情報の取得)
まず、ばね下振動情報の取得方法について説明する。信号生成部40は、検出部10から取得したばね下振動情報に基づいて、各輪のばね下振動に関する状態信号をそれぞれ生成する(図3)。

0124

図23は、車輪のばね下振動情報を取得可能な各種センサおよびその配置例を示している。なお図23において、図1と対応する部分については同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。

0125

車輪のばね下振動情報を取得可能なセンサとして、例えば、ばね下加速度センサ11と、変位センサ12と、車輪速センサ13と、ばね上加速度センサ14が挙げられる。

0126

ばね下加速度センサ11は、例えば、サスペンションアームS11に設置される。ばね下加速度センサ11は、ばね下振動情報をダイレクト計測していることになるため、センサによる検出値をそのまま、あるいはその積分値を、ばね下振動情報として利用することができる。
なお、厳密には、ばね上の振動や路面成分も少なからず重畳し、さらにはサスペンションの前後左右の振動や高周波ノイズなども含まれるため、ばね下共振周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)を通過させると、ばね下振動情報としてのS/Nが更に向上する。

0127

変位センサ12は、例えば、車体VとサスペンションアームS11との間に設置される。変位センサ12は、ばね上とばね下の相対変位(サスペンション変位)を計測していることになるため、その検出信号には、ばね上とばね下の両方の振動成分が重畳する。このため、ばね下共振周波数帯域を通過するBPFを通過させることで、ばね下振動情報のみを得ることができる。

0128

車輪速センサ13は、車輪の回転速度を計測する。車輪のばね下が振動すると、その回転速度も変動する。このため、上述と同様に、ばね下共振周波数帯域を通過するBPFを挿入し、ばね下振動に起因する成分のみを抽出すれば、ばね下振動情報のみを得ることができる。

0129

ばね上加速度センサ14は、ばね上(車体V)の加速度を計測する。ばね上には、ばね下振動に伴う影響がサスペンション経由で伝達するため、ばね上加速度センサにもばね下振動情報が表れる。そこで、上述と同様に、ばね下共振周波数帯域を通過するBPFを挿入し、ばね下振動に起因する成分のみを抽出すれば、ばね下振動情報のみを得ることができる。

0130

なお、上記4つのセンサの検出値として、少なくとも1回以上微分あるいは積分した値を利用しても問題ないことは言うまでもない。
また、ばね下振動情報を得られればよいため、例えばスプリングS12の歪みを計測したり、エアばねであればエア圧を計測したり、ダンパS13では作動油の流量や内圧を計測したりすることでも、それらの計測信号からばね下振動情報を抽出することができる。

0131

(状態信号の入力例)
次に、信号生成部40で生成された状態信号の制御部50への入力形態について説明する。

0132

図24は、ON/OFF信号である状態信号の制御部50(ばね下制御演算部51〜54)への入力波形(信号生成部40の出力波形)を示している。
所定以上の振動レベルを検出したときにON、それ以外のときにOFFとなるようにすることで、所定以上の振動レベルの有無を示すことができる。振動レベルの大きさは、例えば、ONの継続時間で示すことができる。
ONを1、OFFを0と設定すると、上述のように、制御部50における各輪のばね下制御指令の生成に必要なマトリクスパラメータが設定しやすくなる。なお、このON/OFF信号の変化率に制限を設けたり、フィルタを設けたりすることで、制御指令の急変防止を図ってもよい。

0133

図25は、変動する信号に対して上下限値を設定した状態信号の制御部50(ばね下制御演算部51〜54)への入力波形を示している。
上限値を1、下限値を0と設定すると、上記と同様に、制御部50における各輪のばね下制御指令の生成に必要なマトリクスパラメータが設定しやすくなる。
ON/OFF信号ではなく、ばね下振動レベルに応じて変動する連続信号であるため、振動の大きさに応じてきめ細かな制御が可能となる。また、上下限値が設定されたとしても、その間は振動レベルに応じて変動することになるため、制御指令の急変を防止する役目も果たす。なお、上下限値のうち、どちらかだけが設定されてもよいし、必ずしも、0〜1に正規化される必要もない。

0134

図26は、変動する信号をそのまま状態信号として用いたときの入力波形を示している。この場合も、数値を何らかの基準で正規化してもよい。

0135

次に、図24図26の各種信号の生成方法について説明する。
図27は、ばね下振動状態を検出するセンサ11〜14(図23)のいずれか1つの検出信号から、ばね下振動成分を抽出した波形の一例を示している。図28は、図27の絶対値波形である。図29は、図28の波形から、図24に示したようなON/OFF信号を生成するための方法を示したものである。

0136

図29を参照して、絶対値波形がばね下振動ON閾値を超えると、ばね下振動判定がONとなり、ONの状態から絶対値波形がばね下振動ON閾値を下回ると、判定はONのまま、ばね下振動半周期を最大としたカウンタカウントアップを開始する。このカウントアップ中に絶対値が閾値を上回れば、カウンタはリセットされる。一方、カウンタ値がばね下振動半周期に達する間に絶対値が閾値を上回ることがなければ、その時点で判定がOFFとなる。このようなアルゴリズムによって、検出部10から取得したばね下情報から、各輪のばね下振動状態を判定することができる。
なお、ON/OFF判定結果の生成方法は、上記手法に限定されるものではない。

0137

図30は、図28に示す絶対値波形の包絡線で表された振動レベルの概念図である。このような振動レベル情報を用いれば、図25を参照して説明したような判定を容易に行うことができ、図25の上下限値設定をなくせば、図26の入力として設定することができる。
また、例えば図31に示すように、センサ検出値の振動レベルの大きさに応じて、制御部50へ入力される状態信号の振動レベルを補正することもできる。更にフィルタなどで、振動レベルを遅延させるなどしてもよい。
なお、絶対値波形を規定時間ピークホールドし、規定時間後にその値を漸減させ、これらの処理の途中で絶対値波形が上回れば、値が大きい方を採用するという手法も適用可能である。このような手法も、結局は振動の大きさを評価しているため、振動レベルと同じ概念である。

0138

ここで、ダンパのセミアクティブ制御は、典型的には、ダンパのバルブ開度を調整するものである。最終的な電流指令は、ゼロを含むプラスの値となり、マイナスの電流値は利用されない。よって、セミアクティブ制御の場合、ダンパに入力されるばね下電流指令は、片振幅となるのがほとんどである。
なお、アクティブ制御の場合は、プラスマイナス両方の電流値を制御するものである。
また、図6を参照して説明した制御部50のGマトリクス(G11〜G44)は、基本的に一定ゲインであるため、最終制御指令が片振幅であることを考慮すると、Wマトリクス(WFR、WFL、WRR、WRL)も片振幅に設定する必要がある。
したがって、上述したような振動波形の絶対値の包絡線で表された片振幅の振動レベル情報は、セミアクティブ制御指令を実行する上で、制御部50(ばね下制御指令演算部51〜54)へ入力される状態信号として好適な入力形態とされる。
なお、各状態信号は、両振幅であってもよく、この場合は、例えば、各ばね下制御指令演算部51〜54において片振幅に変換される。また、両振幅の状態信号を出力することで、例えば、アクティブ制御用のばね下制御指令の算出が可能となる。

0139

上述した状態信号の形態は、各ばね下振動判定部41〜44において同一であることが好ましく、これにより各輪(特に左右輪)に対して共通の制御アルゴリズムでばね下制御を実現できるとともに、各輪で制御特性の相違を防止することができる。

0140

(状態信号の生成方法)
続いて、ばね下振動情報を取得するセンサの種類や配置などを考慮した、信号生成部40における状態信号(WFR、WFL、WRR、WRLに相当)の生成方法について説明する。

0141

図32は、各輪(FR,FL,RR,RL)のばね下振動情報を取得するための各種センサの配置例を示している。各センサが図示の位置に常に配置される必要はなく、車種などに応じてセンサの種類、センサ数、センサ位置などが適宜される。

0142

ばね下加速度センサ11、変位センサ12および車輪速センサ13は、個々の輪に対応して配置されることが多い。ばね下加速度センサ11および変位センサ12の双方が搭載されてもよいが、いずれか一方のみが搭載されることが多い。車輪速センサ13は、典型的には、ブレーキ制御システムなどの他の車両制御システム付属のものが用いられる。
ばね上加速度センサ14は、個々の輪のばね上に配置されてもよいし、FL輪とFR輪との間、あるいは、RL輪とRR輪との間に配置されてもよい。図中、ばね上加速度センサ14は6個示されているが、これらの位置は図示の例に限られず、各々破線で示した領域内のいずれかに配置されることが多い。更に、図示する6個のばね上加速度センサ14のうち、平面的に見て同一直線上にない任意の3個のばね上加速度センサ14が選択されることもある。なお後述するように、平面的に見て同一直線上にない任意の3個のばね上加速度センサ14がランダムに配置される場合についても検討する。

0143

(配置例1:全輪にばね下加速度センサまたは変位センサが設置される場合)
この例では、基本的には、ばね下加速度センサ11または変位センサ12の検出情報を用いて、各輪のばね下振動情報が算出され、その情報に基づいて、各輪について図24図26に示したような形態の状態信号がそれぞれ生成され、各ばね下制御指令演算部51〜54へ入力される(図4)。
なお、近年の車両のほとんどは、車輪速センサ13によって全輪の車輪速が検出されるため、これらの車輪速からもばね下振動情報を算出し、その情報に基づいて、各輪の状態信号を生成するようにしてもよい。

0144

本実施形態では、ばね下加速度センサ11または変位センサ12で検出されるばね下振動情報と、車輪速センサ13で検出される検出されるばね下振動情報とのうち、いずれか1つのばね下振動情報を選択して、各輪の状態信号をそれぞれ生成するように構成されている。

0145

すなわち、変位センサやばね下加速度センサを用いると、ばね下振動情報の算出精度は非常に高いが、センサ失陥時の対応として、フェールセーフ用の制御則を準備しなければならない。一方、変位センサやばね下加速度センサからの情報を車輪速情報と併用して利用することで、仮に変位センサやばね下加速度センサが失陥しても、車輪速センサ情報で制御を継続できるというメリットがある。

0146

このとき、失陥したセンサから取得した情報の処理が、図24に示すON/OFF信号ではONにならないように、図25および図26に示す変動する波形信号であれば振動レベルが大きくならないようにすることが好ましい。通常、センサ失陥時は、出力がゼロになったり、出力範囲の上限または下限に張り付いて(固定されて)しまったりすることが多い。このため、当該失陥したセンサからばね下振動情報を算出する際、低周波成分を除去できるハイパスフィルタHPF)あるいはバンドパスフィルタ(BPF)処理や、何らかのオフセット処理をしておくとよい。これにより、仮にフェール検出ができなかったり、フェール検出が遅れたりしても、当該失陥したセンサによる判定は常にOFFまたはゼロになり、正常なセンサ(例えば車輪速センサ)の出力に基づく判定が自動的に優先されることになるため、センサ失陥時の機能継続がさらに高次元で補償されることになる。

0147

また、変位センサやばね下加速度センサで検出されたばね下振動情報と車輪速センサで検出されたばね下振動情報とのうち、いずれか1つのばね下振動情報を選択するようにすることで、フェールセーフ用の制御則を必要とすることなく、当該輪に対する適正なばね下振動状態を判定することができる。また、複数のばね下振動情報を基に状態信号を算出する場合と比較して、状態信号の生成アルゴリズムを簡素化することができるとともに、あるセンサに失陥が生じた場合、当該失陥が生じたセンサの出力の影響を受けることなく、適正なばね下振動状態の判定を行うことができるというメリットがある。

0148

例えば図33に示すように、変位センサで検出されるばね下振動情報と車輪速センサで検出されるばね下振動情報とはほぼ同様な波形を有するため、一方のセンサが失陥したとしても、波形をほとんど変えることなく、ばね下振動情報を取得することができる。
これに対して、複数のセンサ出力の平均をとって当該輪のばね下振動を判定する場合、失陥が生じたセンサの異常値も判定結果に反映されることになるため、例えば図34に示すように出力が半分になったり、性能劣化が生じたりして、適正なばね下振動判定を行うことが不可能となる。

0149

さらに、複数のセンサから取得した複数のばね下振動情報のうち、最も大きいばね下振動に関する情報を含む検出信号を選択(ハイセレクト)するようにすれば、ばね下振動に関する情報としてより信頼性の高い情報を選択することが可能となる。また、上述のように複数輪のばね下振動の協調制御を実行する上では、ばね下振動の比較的大きな輪の制振制御を可能としつつ、各輪のばね下振動を効率よく抑制することができるばね下制御指令の生成に大きく貢献することが可能となる。

0150

なお、変位センサやばね下加速度センサから計算されるばね下振動情報と、車輪速センサから計算されるばね下振動情報とは、それぞれ単位系が異なっているため、ハイセレクトするときに単純に比較することができない。そこで、これらは同じばね下振動が発生した際に、例えば、ほぼ同等レベルのばね下振動情報になるようにゲインを少なくともどちらかに掛けて補正したり、ON/OFF判定などの閾値をそれぞれで調整したりすることが好ましい。

0151

(配置例2:フロント左右輪にのみ変位センサまたはばね下加速度センサが設置される場合)
図35に示すように、フロントには変位センサ12またはばね下加速度センサ11のどちらかが左右輪とも設置されており、リアにはこれらのセンサが設置されていない場合を考える。この例では、ばね上加速度センサ14は、図35に示すように、平面的に見てフロント左右輪の中間およびリア各輪の直上にそれぞれ設置される。

0152

フロント輪の処理(FR輪、FL輪のばね下振動判定および状態信号の生成)は、上述の配置例1と同様である。

0153

リア輪の処理は、各輪のばね上加速度センサ14の信号からばね下振動情報を抽出し、ばね下振動判定を行ってばね下制御演算部53,54(図4)へ出力するのが基本となる。

0154

このとき、ばね下振動情報を、ばね下部位(サスペンションの相対部位も含む)で検出するのか、ばね上部位で検出するのかによって、その検出レベルが異なる。具体的には、図36に示すように、例えばダンパの減衰力をソフトにすると、ばね下は非常に振動しやすくなるため、ばね下は大きく振動するが、ばね上には伝達しにくくなっているため、ばね上でばね下振動を検出しようとすると、その検出レベルは小さな値になってしまう。逆に、ダンパの減衰力をハードにすると、ばね下が動きにくくなるため、ばね下はあまり振動しないが、ばね上への伝達率上がり、ばね上でばね下振動情報を検出しようとすると、その検出レベルは相対的に大きな値になる。

0155

このため、ダンパの減衰力はほぼダンパへの制御指令に比例するため、本実施形態のようにダンパの減衰力を電流で制御する場合には、電流指令や実電流値などの減衰力特性の大きさを判定できる情報を参照するのが好ましい。そして、ばね上加速度センサ14からばね下振動情報を算出する際に、ダンパの減衰力特性の大きさ情報に基づいて、ばね下振動レベルの補正を行うことにより、リアのばね下振動情報の算出精度を向上させることが可能となる。

0156

一方、ばね上加速度センサ14は、変位センサ12やばね下加速度センサ11と比較すると、やはり、ばね下振動情報の算出精度が十分高いとは言えない。このため、このようなセンサ配置のケースでは、フロント輪のばね下振動情報をリア輪へプレビューするのが好ましい。また、リア各輪の車輪速センサ13の情報も利用し、当該車輪速情報と、リア各輪のばね上加速度センサ14で検出されるばね下振動情報と、フロント輪のばね下振動情報とによるばね下振動判定のハイセレクト結果に基づいて、リア各輪の状態信号を生成するようにしてもよい。これにより、ばね下振動判定の精度向上やセンサ失陥時の対応などのメリットが向上する。

0157

(配置例3:3つのばね上加速度センサのみが設置される場合)
変位センサやばね下加速度センサが設置されていない場合は(車輪速センサの設置は任意)、図37に示すように、フロント各輪の直上およびリア左右輪の中間に計3つのばね上加速度センサ14が設置されるのが好ましい。

0158

フロント輪については、例えば、配置例2で説明したように、ばね上加速度センサ14の出力と、車輪速センサの出力とを用いて、フロント各輪のばね下振動判定および状態信号の生成を行えばよい。

0159

一方、リア輪については、主としてリア左右輪の中央に設置されたばね上加速度センサ14の検出値が用いられる。当該加速度センサ14には、リア左右輪両方のばね下振動情報が含まれるが、ばね下振動がちょうど左右逆相で動いていたりすると、これらのばね上中央に設置されている加速度検出値は、理論上ゼロになってしまう。

0160

そこで、リア中央のばね上加速度センサ14から得たばね下振動情報は、基本的にはリア左右輪それぞれ共通のばね下振動情報として取り扱う一方、同時に各輪の車輪速情報からばね下情報も併用することで、更に信頼性が高まる。また、フロントのばね下振動情報(ばね上加速度と車輪速の両方)をリアへプレビューすることで、更に信頼性を高めることができる。
本例におけるセンサの配置例によって取得される各輪のばね下振動情報は、例えば、図22に示した制御部50を備えるサスペンション制御装置に適用可能である。

0161

(配置例4:3つのばね上加速度センサがランダムに設置される場合)
複数のばね上加速度センサが、各輪に対応して設置されるとは限られず、図38に示すように、車体上のランダムな位置に設置される場合がある(車輪速センサの設置は任意)。このときの各輪のばね下振動情報を取得方法について説明する。

0162

車輪速センサ13が設置される場合、単純には、これら車輪速センサ13の出力に基づいて各輪のばね下振動情報を取得することができる。
一方、各々のばね上加速度センサ14は、各輪のばね上を通じて当該各輪のばね下振動情報を間接的に取得する。したがって、これらばね上加速度センサ14の出力と車輪速センサ13の出力とに基づいて、各輪のばね下振動情報を取得することも不可能ではないが、いずれの輪のばね下情報であるかを区別することができないため、以下に述べるように各輪共通のばね下振動情報として取得することが好ましい。

0163

車輪速センサ13が設置されていない場合、ばね上加速度センサ14のみで各輪のばね下振動情報を取得する必要がある。この場合、3つのばね上加速度センサ14において、それぞればね下振動周波数成分を抽出してばね下振動判定を行い、それらの判定結果の最大値を選択し、その結果を用いて4輪全てに共通する状態信号を生成することができる。この場合、図39に示すように制御部50(ばね下制御指令演算部51〜54)には共通の状態信号が入力されることで、各輪のダンパ30に出力されるばね下制御指令が生成されることになる。

0164

この例では、各輪に対するばね下制御指令がすべて同一の状態信号を基に生成されるため、コンベンショナルなダンパと同じフィーリングを得るためなどの制御目的に応じた制御部50のゲインマトリクスG11〜G44の値を設定しておくことで、各輪のばね下振動を協調的に制御することができる。また、この例によれば、各輪のばね下振動情報を取得するためのセンサの必要数を大幅に削減することができるため、各ダンパに対するセミアクティブ制御を低コストで実現することが可能となる。

0165

(平滑ハイセレクト処理)
上述のように、本実施形態の信号生成部40(ばね下振動判定部41〜44)は、各輪の状態信号を生成するに際して、典型的には、車輪速センサ、ばね下加速度センサ、ばね上加速度センサ等の複数のセンサで検出されたばね下振動情報の最大値を選択するように構成される(図33参照)。このようなハイセレクト処理を信号レベルの時間変化が相互に異なる2つのセンサ信号に基づいて実行する例を図40を参照して説明すると、2つの信号A,Bが交差する時刻T0までの時間は信号Aの振動レベルが選択され、時刻T0以降の時間は信号Bの振動レベルが選択されることになる。
ここで、図40に示すように、時刻T0の前後で信号A,Bの振動レベルの変化率が過大に異なると、状態信号(およびこれに基づいて生成されるばね下制御指令)の急変を招き、ダンパに対する円滑な減衰力制御が困難になる結果、車両フィーリングが悪化するおそれがある。
このような問題を解消するため、例えば図41に概念的に示すように、平滑ハイセレクト処理を実行することが好ましい。

0166

本実施形態の信号生成部40(ばね下振動判定部41〜44)は、信号A,Bの交差部を平滑化する平滑ハイセレクト処理部(平滑処理部)を有する。
図41は、平滑ハイセレクト処理を説明する概念図である。この処理においては、図41に示すように、時刻T0の前後の所定時刻T1,T2の間に、信号A,Bの振動レベルの変化を平滑化する仮想信号線Scが設定され、時刻T1〜T2にハイセレクトされる振動レベルとして、仮想信号線Sc上の振動レベルが選択される。これにより、ハイセレクト処理による振動レベルの急変を防止し、ダンパに対する円滑な減衰力制御を実現することが可能となる。

0167

仮想信号線Scの設定方法の一例について説明する。
信号Aと信号Bとの偏差をε、偏差εに対する平滑化閾値をδとすると、仮想信号線Scは、偏差εの絶対値が閾値δ以下の領域において、信号A,Bから選択される最大値に、図42に示す加算値αを加算することで設定される。図42に示す加算値αは、以下の式(9)によって表現できる。
α=(|ε|−δ)2/(4δ) ・・・(5)
ただし、加算値αは、上記式(5)で表される値に限定されず、適宜の値が採用されてもよい。

0168

平滑ハイセレクトの対象とされる検出信号は2つの信号に限られず、3つ以上の信号であってもよい。この場合、図43に示すように、複数信号から最大値信号と2番目信号(2番目に大きい信号)を抽出し、これらを図41の信号A,Bと見立てて、図42(式(5))の加算値αの加算処理を実行すればよい。これは、偏差εの絶対値に対して加算値αを設定しているため、最大値信号と2番目信号に対して適用しても同じ結果が得られることに起因している。

0169

以上のように、複数の検出信号から上述の平滑ハイセレクト処理を実行することで、状態信号およびこれに基づいて生成されるばね下制御指令の急変を緩和することができる。これにより、減衰力の急変が抑制され、車両フィーリングあるいは乗り心地の低下を防止することが可能となる。このような処理を実現するため、各ばね下振動判定部41〜44に、上記処理を実行する「平滑ハイセレクト処理部」を組み込めばよい。
なお、当該平滑ハイセレクト処理は、信号生成部40に代えて、制御部50(ばね下制御指令演算部51〜54)に組み込まれてもよい。この場合、各輪の状態信号の中からハイセレクトすることで生成されるばね下制御指令の急変を抑制することができるため、上述と同様の作用効果を得ることができる。

0170

なお、最大値信号の急変を緩和するために、信号A,Bの最大値信号をローパスフィルタLPF)に通すことで平滑化することも考えられる。しかしこの場合は、位相遅れが生じるというデメリットがあり、制御に遅れが生じて、制振不足による車両フィーリングの悪化を招くおそれがある。
これに対して上述の平滑ハイセレクト処理によれば、上記位相遅れの問題を解消でき、制御に遅れを生じさせることなく適正な制振制御を実現することが可能である。

0171

例えば図44および図45に、信号Aと信号Bのハイセレクトに伴う平滑化を、平滑ハイセレクト処理(破線)とLPF処理実線)で実施した場合の比較結果を示す。図44は、LPFによる平滑化時に、位相遅れがほとんど発生しないようにフィルタの遅れを小さくした場合を示し、図45は、LPFによる平滑化効果を平滑ハイセレクト処理と同レベルになる程度までフィルタの遅れを大きくした場合を示している。
図44より、LPFによる平滑化では、位相遅れを小さくしようとすると、平滑化の効果がほとんどないことがわかる。そして図45より、平滑化の効果を大きくしようとすると、位相遅れが大きくなってしまうことがわかる。
これにより、平滑ハイセレクト処理は、位相遅れを全く発生させずに、ハイセレクト時の急変を緩和(平滑化)することができるというメリットがあることがわかる。

0172

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。

0173

例えば以上の実施形態では、ばね下協調制御の対象輪として、フロントまたはリアの左右2輪、あるいは、全ての輪を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、対角関係にある一組の2輪、あるいは、左右片側の前後2輪を対象として、ばね下協調制御を行ってもよい。

0174

また以上の実施形態では、信号生成部40において各輪のばね下振動状態が、複数のセンサ信号からハイセレクトされた信号を基に判定され、当該判定を基に生成された状態信号が制御部50に入力されることで、各輪のばね下制御指令を生成するように構成されたが、これに限られない。すなわち、制御部50に入力される各輪の状態信号は、各輪に専用に設置されたセンサ信号のみを用いて生成されたものであってもよく、このような場合においても制御部50において複数輪を相互に協調制御するためのばね下制御指令を生成することができる。

0175

同様に、複数のセンサ信号からハイセレクトされた信号を基に判定され、当該判定を基に生成された状態信号は、複数輪を相互に協調制御するためのばね下制御指令を生成する制御部50に入力される場合に限られない。すなわち、複数輪協調制御を目的としない制御部を備えたサスペンション制御装置においても、本実施形態の信号生成部40を適用することが可能である。

0176

10…検出部
11…ばね下加速度センサ
12…変位センサ
13…車輪速センサ
14…ばね上加速度センサ
20…サスペンション制御装置
30…ダンパ
40…信号生成部
41〜44…ばね下振動判定部
50…制御部
51〜54…ばね下制御指令演算部
60…上限リミッタ処理部
100…サスペンション制御システム

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