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技術 高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 山下賢井海和也
出願日 2014年7月18日 (6年5ヶ月経過) 出願番号 2014-147995
公開日 2016年2月8日 (4年10ヶ月経過) 公開番号 2016-022501
状態 特許登録済
技術分野 溶接用非金属材料(フラックス) アーク溶接一般 溶接材料およびその製造
主要キーワード チップ角度 後退角α スコット結線 化学反応容器 電源特性 ベント角 火力発電ボイラ ベンド角
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題

Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、初層高温割れを抑制することができる溶接方法を提供する。

解決手段

C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え、0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である溶接ワイヤと、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制した溶接フラックスとを組み合わせて用いることを特徴とする高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法である。

概要

背景

火力発電ボイラタービン脱硫改質重油分解)用の化学反応容器リアクタ)は、高温高圧運転されるため、材料としては、1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼などが適用されている。近年、重油の有効利用や石油精製において、さらなる高能率化が求められており、8質量%以上のCrを含有する高Cr系CSEF鋼の適用が検討されている。高Cr系CSEF鋼には、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験協会)規格やASME(American Society of Mechanical Engineers:米国機械協会)規格に規定されるSA387Gr.91、SA213Gr.T91等がある。

火力発電ボイラやタービン、リアクタは、鍛造リングパイプ曲げ加工鋼板を適宜組み合わせて溶接される。ちなみに鍛造リングは、板厚150〜450mm、最大外径7m弱、全長数〜数10mにもなる。火力発電ボイラやタービン、リアクタの溶接方法としては、被覆アーク溶接TIG溶接サブマージアーク溶接が用いられる。また、火力発電ボイラやタービン、リアクタは、構造上、溶接部分の割合が大きくなるため、溶接材料の低減、溶接の高能率化が強く求められている。

一般的に、溶接材料の低減に対しては、開先幅を狭く、かつ、開先角度を小さくした狭開先を用いる方法がある。また、高能率化に対しては、サブマージアーク溶接が、他の溶接方法と比較して高能率であることから多用されている。しかし、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接では、開先幅を狭くしたり、開先角度を小さくする方法はいずれも、溶接時の高温割れに対しては、不利な条件となる。サブマージアーク溶接における高温割れを抑制し、溶接の高能率化を図る技術としては、以下のような技術が開示されている。

例えば、特許文献1には、所定量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、NbおよびNを含有し、MnおよびNiの総量を所定量に規制すると共に、P、S、Cu、Ti、Al、B、W、CoおよびOを所定量に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤが開示されている。そして、特許文献1では、Cを0.070〜0.150質量%とし、かつ、P、Sをいずれも0.010質量%以下に規制することによって、高温割れを抑制している。

また、特許文献2には、所定量のC、Mn、Cr、Mo、Ni、V、Nb、AlおよびNを含有し、かつ、SiおよびOを所定量に限定したワイヤと、所定量のCaF2、CaOおよびMgOの1種または2種、Al2O3およびZrO2の1種または2種、Alを含有し、かつ、SiO2を所定量に限定した溶接フラックスとを組み合わせて溶接を行う9Cr−1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法が開示されている。そして、特許文献2では、Cを0.01〜0.15wt%、Alを0.005〜1.5wt%、Siを0.05wt%以下としたワイヤと、SiO2を5wt%以下(Siを実質的に含有せず)、CaF2を25〜70wt%とした溶接フラックスとを組み合わせることで、高温割れを抑制している。

概要

高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、初層の高温割れを抑制することができる溶接方法を提供する。C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え、0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である溶接ワイヤと、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制した溶接フラックスとを組み合わせて用いることを特徴とする高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法である。なし

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、初層の高温割れを抑制することができる溶接方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え、0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である溶接ワイヤと、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制した溶接フラックスとを組み合わせて用いることを特徴とする高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法

請求項2

溶接ワイヤがさらに、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Nb、W、Co、Bの群から選択される1種類以上を含有し、そのとき、Mn:2.20質量%以下、Ni:1.00質量%以下、Cr:10.50質量%以下、Mo:1.20質量%以下、V:0.45質量%以下、Nb:0.080質量%以下、W:2.0質量%以下、Co:3.0質量%以下、B:0.005質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法。

技術分野

0001

本発明は、高Cr系CSEF(Creep Strength-Enhanced Ferritic:クリープ強度強化フェライト)鋼のシングルサブマージアーク溶接方法に関する。

背景技術

0002

火力発電ボイラタービン脱硫改質重油分解)用の化学反応容器リアクタ)は、高温高圧運転されるため、材料としては、1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo鋼、2.25Cr−1.0Mo−V鋼などが適用されている。近年、重油の有効利用や石油精製において、さらなる高能率化が求められており、8質量%以上のCrを含有する高Cr系CSEF鋼の適用が検討されている。高Cr系CSEF鋼には、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験協会)規格やASME(American Society of Mechanical Engineers:米国機械協会)規格に規定されるSA387Gr.91、SA213Gr.T91等がある。

0003

火力発電ボイラやタービン、リアクタは、鍛造リングパイプ曲げ加工鋼板を適宜組み合わせて溶接される。ちなみに鍛造リングは、板厚150〜450mm、最大外径7m弱、全長数〜数10mにもなる。火力発電ボイラやタービン、リアクタの溶接方法としては、被覆アーク溶接TIG溶接サブマージアーク溶接が用いられる。また、火力発電ボイラやタービン、リアクタは、構造上、溶接部分の割合が大きくなるため、溶接材料の低減、溶接の高能率化が強く求められている。

0004

一般的に、溶接材料の低減に対しては、開先幅を狭く、かつ、開先角度を小さくした狭開先を用いる方法がある。また、高能率化に対しては、サブマージアーク溶接が、他の溶接方法と比較して高能率であることから多用されている。しかし、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接では、開先幅を狭くしたり、開先角度を小さくする方法はいずれも、溶接時の高温割れに対しては、不利な条件となる。サブマージアーク溶接における高温割れを抑制し、溶接の高能率化を図る技術としては、以下のような技術が開示されている。

0005

例えば、特許文献1には、所定量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、NbおよびNを含有し、MnおよびNiの総量を所定量に規制すると共に、P、S、Cu、Ti、Al、B、W、CoおよびOを所定量に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤが開示されている。そして、特許文献1では、Cを0.070〜0.150質量%とし、かつ、P、Sをいずれも0.010質量%以下に規制することによって、高温割れを抑制している。

0006

また、特許文献2には、所定量のC、Mn、Cr、Mo、Ni、V、Nb、AlおよびNを含有し、かつ、SiおよびOを所定量に限定したワイヤと、所定量のCaF2、CaOおよびMgOの1種または2種、Al2O3およびZrO2の1種または2種、Alを含有し、かつ、SiO2を所定量に限定した溶接フラックスとを組み合わせて溶接を行う9Cr−1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法が開示されている。そして、特許文献2では、Cを0.01〜0.15wt%、Alを0.005〜1.5wt%、Siを0.05wt%以下としたワイヤと、SiO2を5wt%以下(Siを実質的に含有せず)、CaF2を25〜70wt%とした溶接フラックスとを組み合わせることで、高温割れを抑制している。

先行技術

0007

特許第4476018号公報
特許第2529843号公報

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、従来の技術では、高Cr系CSEF鋼のサブマージアーク溶接において、以下の問題がある。
特許文献1の改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤにおいては、ワイヤ径が2.4mmφと細径ワイヤであるがために、アーク広がりに乏しく融合不良が発生しやすくなって健全な溶接部が得られない。また、ワイヤ径を4.0mmφに太径化してサブマージアーク溶接を行うと高温割れが発生する。

0009

特許文献2の9Cr−1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法においては、ワイヤおよび溶接フラックスが低Si設計であるため、初層ビート形状やなじみ性が劣化して、積層溶接部に融合不良やスラグ巻込みを引き起こす。すなわち、溶接部の健全性が低下する。

0010

一般的に、溶接能率を高めるためには、溶接入熱を上げる、すなわち、溶接電流アーク電圧を高め、溶接速度を低めにすることによって可能となる。しかし、溶接入熱を上げると、特に狭開先では溶込み形状がなし型となりやすく、高温割れの発生リスクが高まる。ここで問題となる高温割れは、溶着金属中に含まれるP、S、Si、Nbによる低融点化合物凝固時にデンドライト間やオーステナイト結晶粒界偏析し、さらに溶接収縮ひずみが加わって発生するいわゆる高温割れである。そのため、高温割れの抑制策として、溶接材料の化学成分調整、具体的には、P、S等の不純物超高純度EHP:Extra High Purity)溶解で100ppm以下に抑えることは効果的である。しかしながら、超高純度溶解は、電子ビーム溶解や専用の特殊炉壁耐火材を使わざるを得ないことから経済的に難点がある。このため一般的な不純物レベルでも高温割れの発生を抑制できる技術が求められている。

0011

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接において、初層の高温割れを抑制することができる溶接方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、高Cr系CSEF鋼の初層サブマージアーク溶接金属の高温割れについて鋭意原因究明を行った。その結果、高Cr系CSEF鋼の初層サブマージアーク溶接金属の高温割れは、高Cr系CSEF鋼母材から希釈によって溶接金属へCがピックアップされ、このことによって溶融金属融点が低下して、高温割れが発生することを突き止めた。ちなみに、高Cr系CSEF鋼のC含有量は、ASTMA182 Gr.F91は0.08〜0.12質量%、Gr.F92は0.07〜0.13質量%、Gr.F122は0.07〜0.14質量%、Gr.F911は0.09〜0.13質量%である。

0013

さらに、鋭意研究を進めた結果、C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え0.30質量%以下を含有するワイヤと、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制したフラックスを組み合わせてサブマージアーク溶接を行うことによって、溶接能率、溶接部の健全性を確保した上で、初層の高温割れを抑制できることを見出した。

0014

なお同研究では、特にワイヤに関して、308Lや309Lといったオーステナイト系ステンレスインコネル625、インコネル82、ハステロイといったNi基の成分系のワイヤについても検討した。結論として、このような成分系のワイヤは、初層に積層される溶接金属が高Ni組成になることから、高Cr系CSEF鋼溶接継手に対して適用することはできないと判断した。

0015

そこで、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え、0.30質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である溶接ワイヤと、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制した溶接フラックスとを組み合わせて用いることを特徴とする。

0016

かかる溶接方法によれば、特定の組成を有する溶接ワイヤと特定の組成を有する溶接フラックスとを組み合わせて、シングルサブマージアーク溶接を行うことによって、母材からのCのピックアップによる初層の高温割れを抑制させることが可能となる。

0017

また、本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、溶接ワイヤがさらに、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Nb、W、Co、Bの群から選択される1種類以上を含有し、そのとき、Mn:2.20質量%以下、Ni:1.00質量%以下、Cr:10.50質量%以下、Mo:1.20質量%以下、V:0.45質量%以下、Nb:0.080質量%以下、W:2.0質量%以下、Co:3.0質量%以下、B:0.005質量%以下であることが好ましい。

0018

かかる溶接方法によれば、溶接ワイヤに特定の元素を含有させることによって、さらに靱性を改善したり、クリープ破断強度を向上させること等が可能となる。

発明の効果

0019

本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、初層の高温割れ、すなわち、最初の1層1パス目の高温割れを抑制することができる。

図面の簡単な説明

0020

本発明の溶接方法における狭開先の形状、溶接金属の初層の形態を示す断面図である。
本発明の溶接方法におけるチップ溶接チップ)の形状を示す正面図である。
図2に示すチップの側面図である。
図2に示すチップのチップ先端部側の端面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。
本発明の溶接方法におけるチップの形状を示す正面図である。

0021

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の溶接方法は、高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法である。特に、図1に示すような、狭開先における初層溶接、特に1層1パス目の溶接に好適に用いられる。

0022

<母材>
本発明のシングルサブマージアーク溶接方法は、母材(被溶接材)として高Cr系CSEF鋼を対象とするものである。ここで、高Cr系CSEF鋼とは、8質量%以上のCrを含有するCSEF鋼のことをいう。高Cr系CSEF鋼には、各種の規格がある。例えば、ASTM規格やASME規格に規定されたSA387Gr.91、Gr.122、Gr.92、Gr.911およびSA213Gr.T91、EN規格(European standards欧州規格)に規定されたX10CrMoVNb9−1、並びに火力技術規準に規定された火SFAF28、火SFVAF29、火STBA28、火STPA28、火SCMV28等がある。

0023

好ましい母材の化学成分としては、所定量のC、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Nを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。あるいはさらに所定量のCu、B、W、Coを含有してもよい。具体的には、C:0.07〜0.14質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.70質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.015質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:8.00〜11.50質量%、Mo:0.25〜1.10質量%、V:0.15〜0.35質量%、Nb:0.04〜0.10質量%、N:0.03〜0.10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。さらにCu:1.70質量%以下、B:0.060質量%以下、W:2.50質量%以下、Co:3.0質量%以下を含有してもよい。

0024

<溶接ワイヤ>
本発明のシングルサブマージアーク溶接方法で用いる溶接ワイヤは、C:0.05質量%未満、N:0.055質量%以下、Si:0.05質量%を超え、0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である。以下、各構成の数値限定理由について説明する。

0025

(溶接ワイヤのC:0.05質量%未満)
初層の高温割れは、母材希釈によって溶融金属のCが過剰となり、溶融金属の融点が低下することによって引き起こされる。本発明が対象とする高Cr系CSEF鋼は、クリープ強度を確保するために高C含有率設計となっている。調査の結果、初層サブマージアーク溶接の母材希釈率は50%前後にまでなることが判明した。溶接条件調整による母材希釈の低減はある程度可能ではあるが、施工バラツキも考慮した溶接材料の成分設計が不可避である。以上のことから、溶接ワイヤのC含有量を0.05質量%未満とする。

0026

(溶接ワイヤのN:0.055質量%以下)
N(窒素)は、高Cr系CSEF鋼およびその溶接金属においては、クリープ強度向上に有効に作用する元素として知られている。しかしながら、0.055質量%を超えて、過剰に含有すると、スラグ焼付きが発生する。このため、溶接ワイヤのN含有量は、0.055質量%以下とする。溶接ワイヤのN含有量の好ましい上限は0.05質量%である。

0027

(溶接ワイヤのSi:0.05質量%を超え、0.50質量%以下)
Siは、溶融金属の粘性を調整してビード形状を整える作用を有する。しかし、Si含有量が0.05質量%以下であると、その効果が得られず、なじみ性が劣化して、ビード形状が不良となる。一方、Si含有量が0.50質量%を超えると、スラグ焼付きが発生して、スラグ除去が困難となる。このため、溶接ワイヤのSi含有量は、0.05質量%を超え、0.50質量%以下とする。溶接ワイヤのSi含有量の好ましい上限は0.48質量%以下、より好ましい上限は0.45質量%以下である。

0028

以上説明したC、N、Siが溶接ワイヤの組成の必須の規定である。その他の成分として、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Nb、W、Co、Bの群から選択される1種類以上を含有させることができる。このとき、各元素を含有させるときは、以下に説明する範囲で含有させることが好ましい。

0029

Mnは、脱酸剤として作用し、溶着金属中の酸素量を低減して靱性を改善する効果がある。また、Mnは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ−フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。しかし、溶接ワイヤのMn含有量が2.20質量%を超えると、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのMn含有量は2.20質量%以下が好ましく、2.15質量%以下がより好ましい。

0030

Niは、Mnと同様にオーステナイト生成元素であり、溶接金属におけるδ−フェライトの残留による靱性劣化を抑制する効果がある。しかし、溶接ワイヤのNi含有量が1.00質量%を超えると、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのNi含有量は1.00質量%以下が好ましく、0.95質量%以下がより好ましい。

0031

Crは、本発明に係る溶接方法の母材である高Cr系CSEF鋼の主要元素であり、母材に耐酸化性および高温強度を付与するために不可欠な元素であり、溶接ワイヤにも含有させることが好ましい。しかし、Crはフェライト生成元素であり、10.50質量%を超えて過剰に含有すると、δ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのCr含有量は10.50質量%以下が好ましく、10.45質量%以下がより好ましい。

0032

Moは、固溶強化元素であり、クリープ破断強度を向上させる効果がある。しかし、Moはフェライト生成元素であるため、1.20質量%を超えて過剰に含有すると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのMo含有量は1.20質量%以下が好ましく、1.18質量%以下がより好ましい。

0033

Vは、析出強化元素であり、炭窒化物として析出して、クリープ破断強度を向上させる効果がある。しかし、Vはフェライト生成元素でもあり、0.45質量%を超えて過剰に含有すると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのV含有量は0.45質量%以下が好ましく、0.40質量%以下がより好ましい。

0034

Nbは、固溶強化および窒化物として析出して、クリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。しかし、Nbはフェライト生成元素でもあり、0.080質量%を超えて過剰に含有すると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのNb含有量は0.080質量%以下が好ましく、0.078質量%以下がより好ましい。

0035

Wは、マトリックスの固溶強化と微細炭化物析出によって、クリープ破断強度の安定化に寄与する元素である。しかし、Wはフェライト生成元素でもあるため、2.0質量%を超えて過剰に含有すると、溶接金属におけるδ−フェライトの残留を引き起こし、溶接金属の靱性が劣化する。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのW含有量は2.0質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がより好ましく、1.7質量%以下がさらに好ましい。

0036

Coは、δフェライトの残留を抑制する元素である。しかし、Coを3.0質量%を超えて過剰に含有すると、Ac1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり、組織安定化処理ができなくなる。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのCo含有量は3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下がさらに好ましい。

0037

Bは、微量含有により炭化物を分散・安定化させ、クリープ破断強度を高める効果がある。しかし、Bを0.005質量%を超えて過剰に含有すると、高温割れを引き起こす。したがって、前記の効果を十分に得るためには、溶接ワイヤのB含有量は0.005質量%以下が好ましく、0.003質量%以下がより好ましく、0.0015質量%以下がさらに好ましい。

0038

PおよびSは、それぞれ高温割れ感受性を高める元素である。P含有量が0.015質量%を超える場合、または、S含有量が0.010質量%を超える場合、耐高温割れ性が劣化する。したがって、溶接ワイヤのP含有量は0.015質量%以下に規制することが好ましく、0.010質量%以下がより好ましい。また、溶接ワイヤのS含有量は0.010質量%以下に規制することが好ましく、0.009質量%以下がより好ましい。

0039

溶接ワイヤの成分の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Al、Tiなどが挙げられる。

0040

<溶接フラックス>
本発明のシングルサブマージアーク溶接方法で用いる溶接フラックスは、CaF2:2〜30質量%、CaO:2〜20質量%、MgO:20〜40質量%、Al2O3:5〜25質量%、SiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算)を含有し、BaO:25質量%以下、ZrO2:10質量%以下、TiO2:5質量%未満に規制している。以下、各構成の数値限定理由について説明する。

0041

(溶接フラックスのCaF2:2〜30質量%)
CaF2は、スラグの融点を下げて流動性を高め、ビード形状を整える作用がある。しかし、溶接フラックス中のCaF2含有量が2質量%未満では、十分な効果を得ることができず、ビード形状不良が発生する。一方、フラックス中のCaF2含有量が30質量%超では、アークが不安定となり、ビード表面ポックマークと呼ばれる円形の凹みが発生して、表面性状が劣化する。本発明が対象とする高Cr系CSEF鋼の初層ビードでは、特にこの傾向が顕著であり、これらビード形状不良やビード表面性状不良は、積層するビードへ多大な悪影響を及ぼす。このため、溶接フラックスのCaF2の含有量は、2〜30質量%とする。溶接フラックスのCaF2の含有量の好ましい下限は3質量%であり、好ましい上限は29質量%である。

0042

(溶接フラックスのCaO:2〜20質量%)
CaOは、スラグの粘性を調整してビード形状を整える効果がある。CaOは、後述するMgOやBaOと同様に、耐火性の高い成分であり、スラグの融点を降下させるCaF2を含有する本発明のようなフラックスにおいては、溶融特性を調整してビード形状を整えるのに極めて有効である。しかし、溶接フラックス中のCaOの含有量が2質量%未満ではこの効果が得られずビード形状不良となる。一方、溶接フラックス中のCaOの含有量が20質量%を超えると、溶接フラックスの耐火性が高まり溶けにくくなるため、ビード表面性状が劣化する。このため、溶接フラックスのCaOの含有量は、2〜20質量%とする。溶接フラックスのCaOの含有量の好ましい下限は5質量%であり、好ましい上限は17質量%である。

0043

(溶接フラックスのMgO:20〜40質量%)
MgOも、スラグの粘性を調整してビード形状を整える効果がある。スラグ剥離性を向上させるのに有効である。また、CaOやBaOと同様に、MgOは耐火性の高い成分であり、スラグの融点を降下させるCaF2を多量に含有する本発明の溶接フラックスにおいては、溶融特性を調整してビード形状を整えるのに極めて有効である。しかし、溶接フラックスのMgOの含有量が20質量%未満では、この効果が得られず、ビード形状不良となる。一方、MgOの含有量が40質量%を超えると、溶接フラックスの耐火性が高まり溶けにくくなるため、ビード表面性状が劣化する。このため、溶接フラックスのMgOの含有量は、20〜40質量%とする。溶接フラックスのMgOの含有量の好ましい上限は35質量%である。

0044

(溶接フラックスのAl2O3:5〜25質量%)
Al2O3は、アークの集中性と安定性を高めるとともに、CaOとは逆に、スラグの融点を高めて流動性を調整し、ビード形状を整える効果がある。しかし、溶接フラックスのAl2O3の含有量が5質量%未満では、この効果が得られず、アークが不安定となりスパッタが増加するとともに、ビード形状とビード表面性状が劣化する。一方、溶接フラックスのAl2O3の含有量が25質量%を超えると、スラグの焼付きが発生してしまう。本発明が対象とする高Cr系CSEF鋼は遅れ割れ防止の観点から、軟鋼や2.25Cr−1Mo鋼のような低合金耐熱鋼と比較して、予熱パス間温度を高めとせざるを得ない。このため、特にスラグが焼付きやすくなる傾向にある。スラグの焼付きは、積層するビードへ多大な悪影響を及ぼす。このため、溶接フラックスのAl2O3の含有量は、5〜25質量%とする。溶接フラックスのAl2O3の含有量の好ましい下限は8質量%であり、好ましい上限は22質量%である。

0045

(溶接フラックスのSiおよびSiO2の合計:5〜25質量%(SiO2換算))
SiO2は、スラグの粘性を増加させ、特にビード止端部のなじみ性を改善する。一方、過剰に添加すると、スラグの融点が低下してビード表面性状が劣化するとともに、スラグが過度に脆くなってしまい、連続的な均一剥離がなされず、ビード表面に部分的に強固なスラグ焼付きを引き起こす。これらは、溶接フラックス中に脱酸剤として適宜添加されるSiや、溶接フラックス造粒時に固着剤として使用する水ガラス中のSiO2も同様である。このため、これらを含めてフラックス中のSiおよびSiO2の含有量を制限する必要がある。よって、フラックスのSiおよびSiO2の合計の含有量を、SiO2換算で5〜25質量%とする。溶接フラックスのSiおよびSiO2の合計の含有量の好ましい上限は20質量%である。

0046

(溶接フラックスのBaO:25質量%以下)
BaOは、CaOと同様に、スラグの粘性を調整して、ビード形状を整える効果がある。さらに、スラグ自体の脆さを改善する効果があり、結果としてスラグ焼付きを抑制する。しかし、過剰に含有すると溶接フラックスの耐火性が高まり、溶けにくくなるため、ビード表面性状が劣化する。このため、溶接フラックスのBaOの含有量は、25質量%以下とする。溶接フラックスのBaOの含有量の好ましい上限は22質量%である。

0047

(溶接フラックスのZrO2:10質量%以下)
ZrO2も、Al2O3同様、スラグの融点を高めて流動性を調整してビード形状を整える効果がある。しかし、過剰に含有するとフラックスの耐火性が高まり、溶けにくくなるため、ビード表面性状が劣化する。このため、溶接フラックスのZrO2の含有量は、10質量%以下とする。

0048

(溶接フラックスのTiO2:5質量%未満)
TiO2は、スラグのビードへの被覆性を高める作用を有する。しかし過剰に含有するとスラグ焼付きを引き起こす。このため、溶接フラックスのTiO2の含有量は、5質量%未満とする。

0049

以上が溶接フラックスの組成の必須の規定である。これらの成分は、単独物質、これらの成分を含有する化合物鉱石および溶融フラックスの形態で添加することができる。例えばCaF2は蛍石、CaOは石灰および溶融フラックス、MgOはマグネシアクリンカおよび溶融フラックス、Al2O3はアルミナおよび溶融フラックス、SiO2はカリ長石ソーダ長石および溶融フラックス等として添加してもよい。また溶接フラックスには上記成分の他に、合金成分および溶接作業性を調整するために、合金粉末酸化物および弗化物を適宜添加することができる。

0050

本発明の高Cr系CSEF鋼のシングルサブマージアーク溶接方法は、前記の溶接ワイヤと溶接フラックスの組成の規定に加えて、溶接ワイヤの送給速度、溶接速度、単位溶接長当り溶着量を所定のものとすることが好ましい。以下、溶接方法における種々の溶接条件について説明する。

0051

(溶接ワイヤの送給速度V:50〜120g/min)
溶接ワイヤの送給速度Vが、50g/minを下回ると、溶接電流が低すぎてアークが不安定となり、溶込不良が発生するおそれがある。一方、溶接ワイヤの送給速度Vが120g/minを上回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生するおそれがある。このため、溶接ワイヤの送給速度Vは、50〜120g/minとすることが好ましい。

0052

(溶接速度v:20〜60cm/min)
溶接速度vが、20cm/minを下回ると、溶着量が多すぎて高温割れが発生するおそれがある。一方、溶接速度vが60cm/minを上回ると溶融金属の供給が間に合わず、ビード形状が不安定となって融合不良やスラグ巻きが発生するおそれがある。このため、溶接速度vは、20〜60cm/minとすることが好ましい。

0053

(単位溶接長当りの溶着量:1.8〜4.5g/cm)
単位溶接長当りの溶着量は、溶接ワイヤの送給速度/溶接速度によって計算される。単位溶接長当りの溶着量が1.8g/cmを下回ると、溶着量が少なすぎて溶接効率が劣化するおそれがある。一方、単位溶接長当りの溶着量が4.5g/cmを上回ると溶着量が過剰となるため、溶融金属の凝固収縮量が過大かつ溶込み形状もなし形になるため、凝固収縮のかかる方向が最終凝固部に対し垂直となって高温割れが発生するおそれがある。このため、単位溶接長当りの溶着量は、1.8〜4.5g/cmとすることが好ましい。溶接電流及びアーク電圧は、上記ワイヤ送給速度を適正範囲にコントロールする一手段として調整される。

0054

ここでチップ/母材間距離チップ形状チップ角度について説明する。
前記のように高Cr系CSEF鋼と共材のサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤは、1.25Cr−0.5Mo鋼、2.25Cr−1Mo鋼、2.25Cr−1Mo−V鋼用ソリッドワイヤと比較して電気抵抗が高く、このためジュール発熱量が大となり溶着量が多くなる。すなわち同じ溶接電流であっても溶着量が多い。ジュール発熱量はチップ/母材間距離が長くなるほど大となる。チップ/母材間距離が20mm未満では、チップ先端がアークによって溶損するおそれがある。チップ/母材間距離が40mmを超えると、溶着量が過剰となるおそれがある。したがってチップ/母材間距離を20〜40mm、より好ましくは25〜35mmに管理することが好ましい。

0055

チップ形状は、直管状やベンド角材状、あるいは特公昭62−58827号公報のFig.3bに示されるような形状でも構わず、ワイヤ送給性給電位置安定化を確保する観点から適宜選択される。ベンド角材状のチップの一例を図2図4に示す。溶接ワイヤ送給を阻害しない範囲でチップ30を曲げることは、給電位置を安定化させ、結果として溶接ワイヤ送給速度を安定化する。

0056

チップ角度は、図5図7図8図10に示すように、母材10の表面に対して垂直な線と、溶接ワイヤ40が最終的にチップ30から突出する部分であるチップ先端部30aでの軸線とがなす角度である。そして、チップ角度は、溶接アークによる溶接ワイヤの加熱度合を左右し、結果として溶接ワイヤ送給速度を増減させる。具体的には、同じ溶接電流、同じチップ母材間距離Lであれば、チップ角度が前進角βの場合(図6図9参照)の方が後退角αの場合(図5図8参照)よりもワイヤ送給速度が増加する。そして、チップ角度は、後退角αが60°までの範囲、前進角βが60°までの範囲に管理することが、溶接ワイヤ送給速度を安定化させるために好ましい。

0057

さらに溶接ワイヤ径電源特性極性、板厚、開先形状について説明する。
溶接ワイヤ径は3〜5mmφの中から適宜選択する。3mmφ未満では施工能率が損なわれるおそれがある。5mmφを超えると、本発明の工夫を図っても高温割れが抑制できないおそれがある。電源特性は垂下特性定電圧特性いずれでも構わない。極性はDCEP、ACのいずれでも構わない。

0058

本発明の溶接方法は、前記のように火力発電ボイラやタービン、リアクタを好適な溶接対象とする。したがって、母材板厚は150〜450mmが好ましい。しかしながら、本発明の溶接方法は、母材板厚が150mm未満の溶接への適用も可能である。同様に、本発明の溶接方法は、母材開先形状として図1に示すような狭開先(I開先)を好適な溶接対象とする。しかしながら、本発明の溶接方法は、図示しないV結線スコット結線によるタンデム溶接V開先、X開先への適用、開先充填剤の使用を排除するものではない。

0059

初層、あるいは初層とこれに積層する上盛層の除去について説明する。
本発明の溶接方法は、図1に示す初層21のみを好適な溶接対象とする初層シングルサブマージ溶接方法である。しかしながら、本発明の溶接方法は、図示しないが、初層21のみならず、初層21に溶接金属をさらに積層して溶接する場合においても、適用可能である。
初層、あるいは初層とこれに積層する上盛層(具体的には、初層を1層目としたときの2層目、3層目など)は、要求される継手性能によって、ガウジング機械加工等で除去することができる。

0060

以下、本発明の範囲に入る実施例(No.1〜14)について、その効果を本発明の範囲から外れる比較例(No.15〜48)と比較して説明する。
表1に示す化学成分の母材を3種類用意した。図1に示すように、この母材10について、板厚tが250mm、溝底曲率半径Rが10mm、開先角度θが4°の狭開先を機械加工で形成して試験体20とした。
また、表2に示す化学成分の溶接ワイヤを17種類使用した。ワイヤ径は4.0mmφである。また、表3に示す粒度、化学成分の溶接フラックスを27種類使用した。なお、表2、表3中、本発明の規定を満たさないものは数値下線を引いて示した。

0061

0062

0063

0064

図1に示す試験体20の狭開先内を、表2に記載の溶接ワイヤと表3に記載の溶接フラックスを用いて、溶接ワイヤ送給速度および溶接速度を変化させ、サブマージアーク溶接を実施した。溶接ワイヤ送給速度は、溶接電流、溶接速度を変化させることによりコントロールした。
溶接条件は以下のとおりである。また、その他の条件は表4に示す。

0065

(溶接条件)
チップ:図2(a)〜(c)に示す先端曲りチップ30(ベント角材状チップ)
電極特性:垂下特性
電極極性:ACシングル
溶接姿勢:下向き
積層方法:初層1層1パス

0066

0067

評価方法
この溶接を行った試験体20について、溶接終了後目視にて、高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークを評価した。高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークの各評価方法は以下のとおりである。

0068

(1)高温割れ
溶接ビードスタートエンド部を除外した300mmの範囲で、50mmごとの断面でマクロ組織を観察した。計5つの断面全てで、割れが発生していない場合を○(良好)、割れが発生した場合を×(不良)と判定した。

0069

(2)なじみ性
溶接ビードのスタート、エンド部を除外した300mmの範囲で、50mmごとの断面でマクロ組織を観察した。計5つの断面全てでビード止端形状が滑らかな場合を良好(○)、それ以外を不良(×)と判定した。

0070

(3)ビード形状
ビード形状の評価は、目視で溶接線方向のビード余盛高さを観察して、滑らかなビードが形成された場合を良好(○)、形成されたビードが粗く、溶接線方向で凹凸が大きかった場合を不良(×)と判定した。

0071

(4)ビード表面性状
溶接ビードのスタート、エンド部を除外した300mmの範囲で、目視で溶接線方向のリップル波目)の粗密有無を観察して、粗密のないものを良好(○)、粗密のあるものを(×)と判定した。

0072

(5)スラグ焼付き
溶接終了後のビード表面に付着したフラックスをハンマーで3回たたき、スラグが容易に剥離した場合を良好(○)、剥離しなかった場合を不良(×)と判定した。

0073

(6)ポックマーク
溶接ビードのスタート、エンド部を除外した300mmの範囲で、目視にてビード表面のポック発生個数計測して、ポックマークが5個以下を良好(○)、6個以上を不良(×)と判定した。

0074

各実施例、比較例の高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークの評価結果を表5、表6に示した。なお、表6中、本発明の規定を満たさないものは下線を引いて示した。

0075

0076

0077

表5に示すように、実施例1〜14は、本発明の範囲を満たしており、高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークのいずれにおいても優れていた。これに対して、比較例15〜48は、本発明の範囲を満たしていないため、高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークのいずれか1つ以上において、性能に劣るところがあった。

0078

比較例15〜23は、溶接ワイヤの化学組成が本発明から外れているものであり、高温割れ、なじみ性、ビード形状、スラグ焼付きのいずれか1つ以上において、性能に劣っていた。比較例24〜36は、溶接フラックスの化学組成が本発明から外れているものであり、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークのいずれか1つ以上において、性能に劣っていた。比較例37〜48は、溶接ワイヤの化学組成と溶接フラックスの化学組成が本発明から外れているものであり、高温割れ、なじみ性、ビード形状、ビード表面性状、スラグ焼付き、ポックマークのいずれか1つ以上において、性能に劣っていた。

実施例

0079

以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。

0080

10母材(被溶接材)
20試験体
21初層
30チップ
30aチップ先端部
40 溶接ワイヤ

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