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技術 成膜装置

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 佐藤貴康佐藤羊治橘和孝
出願日 2014年7月11日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2014-143532
公開日 2016年2月4日 (4年2ヶ月経過) 公開番号 2016-020518
状態 特許登録済
技術分野 物理蒸着
主要キーワード 多角形筒状 密閉面 内部冷却構造 導電セラミック 絶縁シール部材 円環溝 ターゲット表 未溶融粒子
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

処理物を収容する内部空間を有する筒状の蒸発源と、内部空間を密閉する閉塞部材とを備え、アーク放電によって蒸発源から放出されたイオンを処理物の表面に堆積させて成膜する成膜装置において、放電を安定させ、閉塞部材に発生するジュール熱を抑制する。

解決手段

蒸発源1の内部空間1Aの電子eが流入することのできる接地又は正電圧かけられた補助電極3が、蒸発源1の内壁面1aに沿って備えられている。

概要

背景

アークイオンプレーティング(Arc Ion Plating:以下AIPと略称する)法は、真空アーク放電を利用して固体材料蒸発させるイオンプレーティング法一種であり、蒸発した材料のイオン化率が高く、密着性に優れた皮膜を形成することができる成膜方法である。

AIP法では、真空雰囲気においてターゲット蒸発源)をカソード陰極)とし、アノード陽極)との間で真空アーク放電を発生させ、ターゲット表面の材料を蒸発及びイオン化させ、負のバイアス電圧印加したワーク(処理物)表面にイオン堆積させることによって皮膜を形成する。

AIP法による成膜に用いられる成膜装置の一例として、図6に示すように、筒状の蒸発源901と、該蒸発源901の内部を密閉空間とする閉塞部材902の密閉面とで容器を形成し、真空状態の容器内で蒸発源を放電させることによって、容器内に配置した処理物Wの表面に皮膜を生成する装置が提案されている(例えば、下記特許文献1を参照)。

概要

処理物を収容する内部空間を有する筒状の蒸発源と、内部空間を密閉する閉塞部材とを備え、アーク放電によって蒸発源から放出されたイオンを処理物の表面に堆積させて成膜する成膜装置において、放電を安定させ、閉塞部材に発生するジュール熱を抑制する。蒸発源1の内部空間1Aの電子eが流入することのできる接地又は正電圧かけられた補助電極3が、蒸発源1の内壁面1aに沿って備えられている。

目的

本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状の蒸発源の内部空間を密閉する閉塞部材に発生するジュール熱を抑制することにある

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

処理物を収容する内部空間を有する筒状の蒸発源と、前記内部空間を密閉する閉塞部材とを備え、アーク放電によって前記蒸発源から放出されたイオンを前記処理物の表面に堆積させて成膜する成膜装置であって、前記内部空間の電子が流入することのできる接地又は正の電圧かけられた補助電極が、前記蒸発源の内壁面に沿って備えられていることを特徴とする成膜装置。

請求項2

前記蒸発源は、カソードであり、前記閉塞部材及び前記補助電極は、内部冷却構造を有するアノードであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。

請求項3

前記補助電極は、前記内部空間にプロセスガスを供給するガス流路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。

請求項4

前記補助電極は、前記蒸発源のアークスポットの近傍に前記ガス流路のガス排出口を有し、前記アークスポットの周辺に前記プロセスガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。

請求項5

前記蒸発源の材料は、チタン又はチタン合金であり、前記プロセスガスは、アセチレンを含むことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。

請求項6

前記蒸発源と前記補助電極との間に、両者間の放電を防止するシールド部材が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の成膜装置。

請求項7

前記シールド部材は、前記蒸発源及び前記補助電極に対して絶縁されていることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。

技術分野

0001

本発明は、例えばアークイオンプレーティング法に用いられる成膜装置に関する。

背景技術

0002

アークイオンプレーティング(Arc Ion Plating:以下AIPと略称する)法は、真空アーク放電を利用して固体材料蒸発させるイオンプレーティング法一種であり、蒸発した材料のイオン化率が高く、密着性に優れた皮膜を形成することができる成膜方法である。

0003

AIP法では、真空雰囲気においてターゲット蒸発源)をカソード陰極)とし、アノード陽極)との間で真空アーク放電を発生させ、ターゲット表面の材料を蒸発及びイオン化させ、負のバイアス電圧印加したワーク(処理物)表面にイオン堆積させることによって皮膜を形成する。

0004

AIP法による成膜に用いられる成膜装置の一例として、図6に示すように、筒状の蒸発源901と、該蒸発源901の内部を密閉空間とする閉塞部材902の密閉面とで容器を形成し、真空状態の容器内で蒸発源を放電させることによって、容器内に配置した処理物Wの表面に皮膜を生成する装置が提案されている(例えば、下記特許文献1を参照)。

先行技術

0005

特開2013−36106号公報

発明が解決しようとする課題

0006

特許文献1に記載された成膜装置では、真空状態の容器内で蒸発源を放電させて処理物の表面に薄膜を形成する際の成膜効率簡易な構成で向上させることができる。この成膜装置では、カソードである蒸発源を筒状に形成し、その開口部を閉塞部材で閉塞する構成としている。閉塞部材は、例えば接地され、アノードとして機能する。そのため、容器内で発生した電子が閉塞部材に流入して電流が生じ、閉塞部材がジュール加熱されて高温になる場合がある。この場合、例えば、閉塞部材と蒸発源との間のシール材が熱によって劣化する虞がある。

0007

本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状の蒸発源の内部空間を密閉する閉塞部材に発生するジュール熱を抑制することにある。

課題を解決するための手段

0008

前記目的を達成すべく、本発明の成膜装置は、処理物を収容する内部空間を有する筒状の蒸発源と、前記内部空間を密閉する閉塞部材とを備え、アーク放電によって前記蒸発源から放出されたイオンを前記処理物の表面に堆積させて成膜する成膜装置であって、前記内部空間の電子が流入することのできる接地又は正の電圧かけられた補助電極が、前記蒸発源の内壁面に沿って備えられていることを特徴とする。

0009

本発明の成膜装置が備える筒状の蒸発源の内部空間は、閉塞部材によって密閉された密閉空間であり、アーク放電によって蒸発源の内壁面から発生したイオンが放出される空間である。蒸発源の内部空間は、例えば適宜の真空装置によって高真空状態にされる。蒸発源の材料は、処理物に形成する皮膜の材料に応じて選択され、特に限定されないが、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)等を用いることができる。高真空状態にされた蒸発源の内部空間には、適宜のガス供給手段によって、例えばN2(窒素)、Ar(アルゴン)、炭化水素等のプロセスガスが供給される。

0010

蒸発源に外部電源から放電電圧を加え、蒸発源の内部空間に収容した処理物にバイアス電源によってバイアス電圧を加え、閉塞部材を接地する。これにより、蒸発源をカソード、閉塞部材をアノードとしてアーク放電が生じ、蒸発源の内壁面のアークスポットに高密度の電流が集中してイオンが放出される。この時、副次的に蒸発源の内部空間に電子が放出される。閉塞部材には、蒸発源の内部空間でイオンを処理物の表面に堆積させて成膜する際に、内部空間に放出された電子が流入する。

0011

例えば、前記特許文献1に記載されたような従来の成膜装置では、図6に示すように、アースとなるアノードが、蒸発源901を密閉する閉塞部材902のみであるため、アノードの面積不足して長時間の放電が不安定になる場合がある。また、蒸発源901の内部空間の電子eが閉塞部材902に集中的に流入して電流が生じ、閉塞部材902がジュール加熱される。すると、長時間の放電で閉塞部材902が高温になり、例えば、Oリングガスケットテフロンシート)等、閉塞部材902と蒸発源901との間の真空を保持するシール部材が、熱によって損傷する虞がある。

0012

これに対し、本発明の成膜装置には、蒸発源の内部空間から電子を流入させる補助電極が、蒸発源の内壁面に沿って備えられている。すなわち、補助電極は、例えば接地され、又は、蒸発源の電圧よりも低い正電圧が加えられることで、閉塞部材と同様にアノードとして機能し、補助電極がなければ閉塞部材に流入する電子の一部を受け入れる。これにより、従来よりも閉塞部材に流入する電子を減少させて閉塞部材に生じる電流を減少させ、閉塞部材に発生するジュール熱を抑制することができる。

0013

すなわち、本発明の成膜装置において、前記蒸発源は、カソードであり、前記閉塞部材及び前記補助電極は、内部冷却構造を有するアノードである。これにより、補助電極によって従来よりもアノードの面積を増加させ、蒸発源の内部空間におけるアーク放電を安定させることができる。

0014

前記補助電極は、蒸発源の内部空間にプロセスガスを供給するガス流路を備えてもよい。これにより、蒸発源の内壁面に沿って配置されて電子が流入しやすく、比較的高温になりやすい補助電極及びその周辺の部材を、プロセスガスによって積極的に冷却して温度上昇を抑制することができる。すなわち、プロセスガスを供給するガス流路が閉塞部材及び補助電極の内部冷却構造として機能する。したがって、補助電極及びその周辺の部材の熱変形を効果的に抑制することができる。また、補助電極の周辺の真空を保持するためのシール部材等の損傷を防止することができ、例えばOリング、ガスケット等のシール部の耐熱温度を低下させることができる。

0015

また、前記補助電極は、蒸発源のアークスポットの近傍に前記ガス流路のガス排出口を有し、蒸発源のアークスポットにプロセスガスを供給するようにしてもよい。これにより、高真空状態の蒸発源の内部空間において、アークスポットの近傍に効果的にプラズマを生成してアーク放電を安定させることができる。

0016

ここで、前記蒸発源の材料として、例えば、Ti又はTi合金を用いる場合には、C2H2(アセチレン)を含むプロセスガスを用いることが好ましい。これにより、蒸発源の内壁面にTiよりも融点が高いTiC(炭化チタン)が生成されやすくなる。蒸発源の内部空間には、アーク放電によって、蒸発源の金属材料のイオンだけでなく、副次的に溶融金属粒子であるドロップレットが放出される。このドロップレットが処理物の表面の皮膜に混入すると皮膜の表面粗さが悪化する虞がある。しかし、蒸発源の内壁面にTiよりも融点が高いTiCが生成されると、Tiから発生するドロップレットと比較して、ドロップレットの粒径小径化することができる。したがって、処理物の皮膜の表面粗さを小さくすることができる。

0017

また、前記蒸発源と前記補助電極との間に、両者間の放電を防止するシールド部材を配置してもよい。アノードである補助電極をカソードである蒸発源の内壁面に沿って配置すると、アノードとカソードとが近接して直接放電が発生し、蒸発源を構成する金属材料のイオンを処理物の表面に効率よく堆積させることができなくなる虞がある。そこで、シールド部材によって蒸発源と補助電極との間の放電を防止することで、蒸発源を構成する金属材料のイオンを処理物の表面に効率よく堆積させることができる。

0018

ここで、シールド部材は、蒸発源及び補助電極に対して絶縁することができる。具体的には、例えば、電気絶縁性を有する絶縁部材を介してシールド部材を補助電極、蒸発源、又は閉塞部材に固定する。ここで、シールド部材は、接地されていない。これにより、シールド部材は、蒸発源及び補助電極に対して電気的に絶縁され、蒸発源の内部空間のプラズマと同電位にすることができ、蒸発源と補助電極との間の放電を効果的に防止することができる。

発明の効果

0019

以上の説明から理解できるように、本発明の成膜装置によれば、補助電極が閉塞部材と同様にアノードとして機能し、補助電極がなければ閉塞部材に流入する電子の一部を受け入れるので、従来よりも閉塞部材に流入する電子を減少させて閉塞部材に生じる電流を減少させ、閉塞部材に発生するジュール熱を抑制することができる。

図面の簡単な説明

0020

本発明による成膜装置の実施の形態を示した概略的な分解斜視図である。
図1に示す成膜装置の一部の拡大断面図である。
(a)はTiCから発生するドロップレットを示す概念図であり、(b)はTiから発生するドロップレットの概念図である。
図2に示す成膜装置の変形例を示す拡大断面図である。
(a)から(d)は、補助電極の変形例を示す概略的な斜視図である。
従来の成膜装置の拡大断面図である。

実施例

0021

以下、図面を参照して本発明の成膜装置をその実施形態に基づいて説明する。

0022

図1は、本発明による成膜装置100の実施の形態を示した概略的な分解斜視図である。図2は、図1に示した成膜装置100の一部の拡大断面図である。

0023

本発明による成膜装置100は、処理物Wを収容する内部空間1Aを有する筒状の蒸発源1と、内部空間1Aを密閉する閉塞部材2A,2Bとを備え、アーク放電によって蒸発源1から放出されたイオンiを処理物Wの表面に堆積させて成膜する装置である。本発明による成膜装置100は、蒸発源1の内部空間1Aの電子eが流入することのできる接地又は正電圧がかけられた補助電極3が、蒸発源1の内壁面1aに沿って備えられていることを最大の特徴としている。以下、本発明による成膜装置100の実施の形態について説明する。

0024

蒸発源1は、例えば円筒状に形成され、内側に内部空間1Aを有している。蒸発源1の材料は、処理物Wの表面に形成する皮膜の材質によって選択され、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)等の金属材料が用いられる。本実施形態の成膜装置100は、蒸発源1の材料はTiである。蒸発源1は、外部電源ESに接続されて放電電流が供給され、アーク放電によって金属材料のイオンiを内部空間1Aに放出する。蒸発源1は、高さ方向の両端すなわち中心軸Cに沿う方向の両端が開放されている。なお、蒸発源1は、円筒状に限られず、例えば、楕円筒状角筒状、多角形筒状等、任意の断面形状の筒状に形成することができ、一端のみが開放された有底筒状に形成することもできる。

0025

閉塞部材2A,2Bは、筒状の蒸発源1の開口を封止して、蒸発源1の内部空間1Aを密閉する板状の部材である。閉塞部材2A,2Bは、例えば、導電性を有する金属材料によって製作されている。本実施形態の成膜装置100は、蒸発源1の上下の開口を密閉する一対の閉塞部材2A,2Bを備えている。上側の閉塞部材2Aと蒸発源1との間には、絶縁性及びシール性を有する絶縁シール部材4が配置され、下側の閉塞部材2Bと蒸発源1との間にも、図示を省略する同様の絶縁シール部材が配置され、上下の閉塞部材2A,2Bと蒸発源1との間が絶縁されて封止されている。

0026

上下の閉塞部材2A,2Bは、それぞれ接地されている。なお、蒸発源1が有底筒状に形成されている場合には、蒸発源1の一端の開口を密閉する1つの接地された閉塞部材2A又は閉塞部材2Bのみを備えることになる。閉塞部材2A,2B及び絶縁シール部材4によって密閉され、密閉空間となった蒸発源1の内部空間1Aは、図示を省略する適宜の真空装置によって高真空状態にされる。なお、図示は省略するが、上下の閉塞部材2A,2Bの径方向外側、又は、上側の閉塞部材2Aの上方と下側の閉塞部材2Bの下方に電磁コイルを配置し、蒸発源1の内部空間1Aに放出されたイオンiに対して蒸発源1の径方向の中心に向かう電磁力を作用させる磁界を生成する。

0027

補助電極3は、閉塞部材2A,2Bによって密閉された蒸発源1の内部空間1Aに収容されている。補助電極3は、例えば、導電性を有するAu(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等の金属材料又はその合金によって製作されている。補助電極3は、例えば接地され、又は、外部電源に接続されて所定の正電圧が加えられることで、蒸発源1の内部空間1Aに存在する電子eを流入させる。補助電極3は、例えば、上側の閉塞部材2Aの下面に、適宜の方法により固定することができる。

0028

補助電極3は、例えば、蒸発源1の中心軸Cに平行な中心軸Cを有する筒状に形成され、蒸発源1の内部空間1Aに収容されることで、蒸発源1の内壁面1aに沿って配置されている。本実施形態では、補助電極3は、蒸発源1と同様に円筒形であり、蒸発源1と共通の中心軸Cを有している。補助電極3は、蒸発源1の内壁面1aに近接させて配置されている。例えば、蒸発源1の内側に配置した補助電極3の外径を、蒸発源1の内径の1/2以上とすることで、補助電極3を蒸発源1の内壁面1aに沿って近接させて配置することができる。

0029

本実施形態の補助電極3は、蒸発源1の内部空間1AにプロセスガスGを供給するガス流路3aを備えている。ガス流路3aは、補助電極3の側面の上端部にガス導入口3bを有し、補助電極3の下端にガス排出口3cを有している。ガス導入口3bには、図示を省略する適宜のガス供給手段からプロセスガスGを供給するための配管5が接続される。配管5は、例えば絶縁シール部材4を気密に貫通し、ガス導入口3bに接合されている。配管5は、蒸発源1の外部で水冷してもよい。

0030

ガス供給手段から配管5を介してガス導入口3bに供給するプロセスガスGとしては、例えば、例えばN2(窒素)、Ar(アルゴン)、炭化水素等のガスを用いることができる。また、蒸発源1の材料が、例えばTi又はTi合金である場合には、プロセスガスGは、C2H2(アセチレン)を含むことが好ましい。本実施形態の成膜装置100の蒸発源1の材料はTiであるため、プロセスガスGは、C2H2を含んでいる。

0031

ガス流路3aは、例えば、補助電極3の全周に亘って連続的する円環溝状の流路であってもよく、補助電極3の中心軸Cに平行で補助電極3の全周に亘って所定の間隔で配置された複数のガス流路3aであってもよい。ガス排出口3cは、例えば、前者のガス流路3aの場合、補助電極3の全周に亘って連続的する円環状の開口であってもよく、後者のガス流路3aの場合、補助電極3の全周に亘って所定の間隔で配置された複数の開口であってもよい。

0032

補助電極3は、例えば、上側の閉塞部材2Aから筒状の蒸発源1の中心軸Cに沿って下方に延びるように設けられている。これにより、補助電極3は、蒸発源1のアークスポットASの近傍にガス流路3aのガス排出口3cを有し、蒸発源1のアークスポットASの周辺、すなわちアークスポットAS及びその近傍にプロセスガスGを供給する。

0033

本実施形態の成膜装置100では、蒸発源1と補助電極3との間に、両者間の放電を防止するシールド部材6が配置されている。シールド部材6は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料によって製作されている。本実施形態において、シールド部材6は、蒸発源1及び補助電極3と同様に円筒状に形成され、蒸発源1の内径よりも小さく、補助電極3の外径よりも大きい径を有している。

0034

シールド部材6は、蒸発源1及び補助電極3に対して電気的に絶縁されている。具体的には、シールド部材6は、例えば、蒸発源1と閉塞部材2Aとの間の絶縁シール部材4に固定されて保持されている。すなわち、シールド部材6は、蒸発源1と補助電極3との間に絶縁部材を介して配置されている。なお、蒸発源1と補助電極3との間の放電の危険性が低いと考えられる場合には、シールド部材6を省略することができる。

0035

以下、本実施形態の成膜装置100の作用について説明する。

0036

成膜装置100によって処理物Wの表面に成膜するには、まず、蒸発源1の内部空間1Aに処理物Wを収容し、蒸発源1の内部空間1Aを上下の閉塞部材2A,2Bによって絶縁シール部材4を介して密閉する。これにより、例えば、上側の閉塞部材2Aの下面に固定された補助電極3が、蒸発源1の内壁面1aに沿って配置される。また、絶縁シール部材4に固定されたシールド部材6が、蒸発源1と前記補助電極3との間に配置される。また、処理物Wは、図示を省略する適宜の保持構造によって保持され、上下の閉塞部材2A,2B及び蒸発源1と電気的に絶縁された状態で、バイアス電源BSに接続される。

0037

次に、真空装置によって蒸発源1の内部空間1Aを高真空状態にして、ガス供給手段から補助電極3のガス流路3aを介して蒸発源1の内部空間1AにプロセスガスGを供給する。そして、バイアス電源BSによって、例えば−300Vから−500V程度のバイアス電圧を処理物Wに加え、外部電源ESによって、例えば約30Vの電圧を蒸発源1に加えて約55Aの放電電流を蒸発源1に供給する。また、閉塞部材2A,2B及び補助電極3を接地する。

0038

これにより、アーク放電が生じ、蒸発源1の内壁面1aのアークスポットASに高密度の電流が集中して蒸発源1の金属材料のイオンiが放出され、処理物Wの表面にイオンiが堆積して成膜される。なお、アーク放電によって蒸発源1からイオンiが放出されるときには、同時に電子eが放出される。

0039

図6は、本実施形態の成膜装置100の図2に示す拡大断面図に相当する、従来の成膜装置900の拡大断面図である。

0040

従来の成膜装置900では、アーク放電によって蒸発源901から放出された電子eが、閉塞部材902に集中的に流入して電流が生じ、閉塞部材902がジュール加熱される。すると、長時間の放電で閉塞部材902が高温になり、例えば、Oリング、ガスケット(テフロンシート)等、閉塞部材902と蒸発源901との間の真空を保持するシール部材が、熱によって損傷する虞がある。また、アースとなるアノードが閉塞部材902のみであるため、アノードの面積が不足して長時間の放電が不安定になる場合がある。

0041

これに対し、本実施形態の成膜装置100は、蒸発源1の内部空間1Aから電子eを流入させる補助電極3が、蒸発源1の内壁面1aに沿って配置されている。すなわち、補助電極3は、接地されることで閉塞部材2A,2Bと同様にアノードとして機能し、補助電極3がなければ閉塞部材2A,2Bに流入する電子eの一部を受け入れる。これにより、従来よりも閉塞部材2A,2Bに流入する電子eを減少させて閉塞部材2A,2Bに生じる電流を減少させ、閉塞部材2A,2Bに発生するジュール熱を抑制することができる。

0042

なお、補助電極3を接地する代わりに、蒸発源1に加える電圧よりも低い正電圧を補助電極3に加えてもよい。この場合、補助電極3に電子eを集めて、より多くの電子eを蒸発源1の内部空間1Aから補助電極3に流入させることができる。

0043

すなわち、本実施形態の成膜装置100において、蒸発源1はカソードであり、閉塞部材2A,2B及び補助電極3はアノードである。これにより、補助電極3によって、従来よりもアノードの面積を増加させ、蒸発源1の内部空間1Aにおけるアーク放電を安定させることができる。すなわち、アークスポットASに近い位置に、接地され、又は、正電位にされたアノード電極としての補助電極3を設置することで、電子eの流れがスムーズになり、アーク放電が安定する。

0044

また、補助電極3は、蒸発源1の内部空間1AにプロセスガスGを供給するガス流路3aを備えている。これにより、蒸発源1の内壁面1aに沿って配置され、電子eが流入しやすく、比較的高温になりやすい補助電極3及びその周辺の部材を、プロセスガスGによって積極的に冷却して、温度上昇を抑制することができる。これにより、アノードである補助電極3が空冷され、補助電極3の周辺に配置された絶縁シール部材4の損傷や熱変形、及び、アノードである補助電極3及び閉塞部材2A,2Bの損傷や熱変形を防止することができる。すなわち、プロセスガスGを供給するガス流路3aが閉塞部材2A,2B及び補助電極3の内部冷却構造として機能する。

0045

本来、高真空状態の蒸発源1の内部空間1Aでは、プロセスガスGの対流による熱伝導は生じない。しかし、アノードとしての補助電極3の内部にプロセスガスGを流すことで、補助電極3の内部でプロセスガスGを対流させて熱伝導を生じさせ、補助電極3の温度上昇を抑制することができる。したがって、補助電極3及びその周辺の絶縁シール部材4等の熱変形及び損傷を効果的に抑制することができる。また、例えばOリング、ガスケット等である絶縁シール部材4の耐熱温度を低下させることができる。

0046

さらに、プロセスガスGをガス流路3aに供給する配管5を、蒸発源1の外部空間で水冷することで、配管5を冷却し、配管5を介して補助電極3を冷却することができる。また、配管5内を流れるプロセスガスGを冷却し、プロセスガスGによる補助電極3の冷却効果を向上させることができる。

0047

また、補助電極3は、蒸発源1のアークスポットASの近傍にガス流路3aのガス排出口3cを有し、蒸発源1のアークスポットASにプロセスガスGを供給している。これにより、高真空状態の蒸発源1の内部空間1Aにおいて、アークスポットASの近傍に効果的にプラズマを生成してアーク放電を安定させることができる。

0048

蒸発源1の内部空間1Aには、アーク放電によって、蒸発源1の金属材料のイオンiや電子eだけでなく、蒸発源1の内壁面1aの金属材料が溶融及び飛散して凝固した金属粒子であるドロップレットが放出される。このドロップレットが処理物Wの表面の皮膜に混入すると皮膜の表面粗さが悪化する虞がある。

0049

図3(a)は、蒸発源1の内壁面1aのTiCから発生するドロップレットdを示す概念図であり、図3(b)は、蒸発源1の内壁面1aのTiから発生するドロップレットDの概念図である。

0050

本実施形態の成膜装置100では、蒸発源1の材料としてTiを用い、補助電極3のガス流路3aからC2H2を含むプロセスガスGを供給している。C2H2は、プラズマで分解されてC2H2→2C+H2の反応が生じ、蒸発源1の内壁面1aでTi+C→TiCの反応が生じ、蒸発源1の内壁面1aにTiよりも融点が高いTiCが生成されやすくなる。蒸発源1の内壁面1aにTiCが生成されると、Tiと比較してアーク放電によって金属材料が溶融する量及び範囲が減少し、溶融池が小さくなる。したがって、蒸発源1の内壁面1aにTiCが生成されると、Tiから発生するドロップレットDと比較して、未溶融粒子を含むドロップレットdの粒径を小径化することができる。

0051

このように、ドロップレットdの粒径を小径化することで、処理物Wの皮膜の表面粗さを小さくすることができる。例えば、C2H2を供給しない場合の皮膜の算術平均粗さRaが0.1程度であった場合に、C2H2を供給することで、算術平均粗さRaを0.06程度に低下させ、皮膜の表面粗さを約40%程度小さくすることができる。また、閉塞部材2A,2Bと蒸発源1のドロップレットによる汚染が抑制され、付着したドロップレットの除去を容易にすることができ、除去の頻度を低下することができる。

0052

アノードである補助電極3は、カソードである蒸発源1の内壁面1aに沿って配置され、例えば、アノードとカソードとの間には、30V程度の電位差が生じている。通常であれば、補助電極3と蒸発源1との間にグロー放電は生じないが、何らかの異常によりグロー放電が発生する虞がある。このような直接放電が発生すると、蒸発源1を構成する金属材料のイオンiを処理物Wの表面に効率よく堆積させることができなくなる。

0053

しかし、本実施形態の成膜装置100では、蒸発源1と前記補助電極3との間に、両者間の放電を防止するシールド部材6が配置されている。これにより、シールド部材6によって蒸発源1と補助電極3との間の放電を防止して、蒸発源1を構成する金属材料のイオンiを処理物Wの表面に効率よく堆積させることができる。

0054

ここで、シールド部材6は、電気絶縁性を有する絶縁シール部材4を介して補助電極3及び蒸発源1に固定され、接地されていない。これにより、シールド部材6は、蒸発源1及び補助電極3に対して電気的に絶縁され、蒸発源1の内部空間1Aのプラズマと同電位にすることができ、蒸発源1と補助電極3との間の放電を効果的に防止することができる。

0055

以上、図面を用いて本発明の成膜装置を実施の形態に基づいて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。

0056

図4は、前述の実施形態で説明した成膜装置100の変形例を示す、図2に対応する拡大断面図である。

0057

本変形例の成膜装置200は、上側の閉塞部材2Aと絶縁シール部材4との間に覗き窓7を有する点で、前述の実施形態で説明した成膜装置100と異なっている。本変形例の成膜装置200のその他の点は、前述の実施形態の成膜装置100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明は省略する。覗き窓7は、例えば、円筒状の金属材料の本体部7Aの一部に、耐熱性透光性を有する材料によって設けられている。円筒状の本体部7A及び覗き窓7は、例えば、上側の閉塞部材2Aに固定されている。このように、覗き窓7を設けることで、処理物Wの表面の成膜状態を確認し、蒸発源1及び閉塞部材2A,2Bの表面の汚染状態を確認することができる。

0058

また、前述の実施形態で説明した成膜装置100では、ガス流路3aを備える円筒状の補助電極3を備える例について説明したが、補助電極3の構成は、前述の実施形態の構成に限定されない。すなわち、補助電極3は、ガス流路3aを有さなくてもよい。この場合、蒸発源1の内部空間1AにプロセスガスGを供給するノズル等を、別途、設けることができる。

0059

また、補助電極3がガス流路3aを有さない場合には、耐熱性を向上させるために、補助電極3の材料として、例えば、Mo(モリブデン)以外の高融点金属であるW(タングステン)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)等や、それらの耐熱合金であるハステロイ商標)、インコネル(商標)、NiCrAlY、或いは、導電セラミックであるWC(タングステンカーバイド)、TiN、サーメット黒鉛等を用いることができる。また、補助電極3として、Alなどの電極材料の表面に導電性の高いAu、Ag、Cuなどをメッキしたものを用いてもよい。

0060

図5(a)から(d)は、前述の実施形態の成膜装置100が備える補助電極3の変形例を示す斜視図である。

0061

図5(a)に示すように、補助電極3の外周に複数の溝3dを形成することで、熱変形時の歪み量を少なくすることができるだけでなく、放熱特性を向上させることができる。また、溝3dの代わりに複数のスリットを設けても、同様の効果を得ることができる。

0062

図5(b)に示すように、補助電極3の厚みは、高さ方向すなわち中心軸Cに沿って変化させてもよい。この場合、プラズマに接する端部すなわちアークスポットASに近い端部に近づく程、厚みを厚くすることで、補助電極3の熱変形を抑制することができる。

0063

図5(c)に示すように、補助電極3の表面に、例えば、ショットブラスト等により凹凸を形成することで、補助電極3の放熱性を向上させることができる。また、図5(d)に示すように、補助電極3は、円筒ではなく、円形に配置された複数の棒状、柱状、又は針形状の部材であってもよい。これにより、補助電極3の放熱性を向上させ、材料の使用量を抑制することができる。

0064

また、前述の実施形態では、筒状の蒸発源1の上下の開口が閉塞部材2A,2Bによって密閉され、上側の閉塞部材2Aに隣接して補助電極3を配置する例について説明したが、補助電極3は、上下を逆にして下側の閉塞部材2Bに固定してもよい。また、補助電極3は、上側の閉塞部材2A及び下側の閉塞部材2Bの双方に設けてもよい。すなわち、補助電極3の配置は、上下に依存しない。

0065

1蒸発源、1a内壁面、1A 内部空間、2A,2B閉塞部材、3補助電極、3aガス流路、3cガス排出口、6シールド部材、100成膜装置、ASアークスポット、e電子、Gプロセスガス、iイオン、W 処理物

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