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概要
背景
高血圧症有病者は収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上、または血圧を下げる薬を服用している者と定義されている。厚生労働省の平成18年国民健康・栄養調査結果によると、高血圧症有病者は約3,970万人と推定され、40〜74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧症有病者となっている。しかしながら、高血圧には自覚症状がないため、症状がほとんどないままに動脈硬化や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳卒中などを引き起こす恐れがある。
高血圧の原因として、レニン‐アンギオテンシン系は重要な因子であると考えられている。このレニン‐アンギオテンシン系は血液量の保持と、血圧を上げる働きにより血液の循環を正常に保とうとする調節機構である。腎臓では血圧や血中ナトリウム濃度によってレニンを分泌する。レニンは血中のアンギオテンシノーゲンに作用し、アンギオテンシンI(AI)を遊離する。AIは血管内皮細胞膜にあるアンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンII(AII)に変換される。AIIは強力な血管収縮作用があり、血圧を上昇させる。さらに、AIIは副腎にも作用してアルドステロンの生成・分泌を促進させ、血圧を上昇させる。従って、降圧剤ではACEを阻害し、AIIの産生を抑えるACE阻害薬が用いられている。
ACEに対する阻害活性を持つペプチドとしては、特許文献1に示される大豆タンパク質、特許文献2に示される卵白アルブミンの加水分解物などからの単離により得られているものがある。他にも特許文献3のように米麹及び米麹水抽出物からACE阻害活性を持つペプチドが得られたり、特許文献4のように酒粕や米焼酎粕からACE阻害活性を持つペプチドが得られているものがある。
概要
目的
本発明の主たる課題は、安価な原料を用い、かつ短時間で製造可能なACE阻害剤、及び、そのACE阻害剤を含む含有物を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
0001
本発明は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)に対して阻害活性を有するACE阻害剤、及び、そのACE阻害剤を含む含有物に関する。
背景技術
0002
高血圧症有病者は収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上、または血圧を下げる薬を服用している者と定義されている。厚生労働省の平成18年国民健康・栄養調査結果によると、高血圧症有病者は約3,970万人と推定され、40〜74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧症有病者となっている。しかしながら、高血圧には自覚症状がないため、症状がほとんどないままに動脈硬化や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳卒中などを引き起こす恐れがある。
0003
高血圧の原因として、レニン‐アンギオテンシン系は重要な因子であると考えられている。このレニン‐アンギオテンシン系は血液量の保持と、血圧を上げる働きにより血液の循環を正常に保とうとする調節機構である。腎臓では血圧や血中ナトリウム濃度によってレニンを分泌する。レニンは血中のアンギオテンシノーゲンに作用し、アンギオテンシンI(AI)を遊離する。AIは血管内皮細胞膜にあるアンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンII(AII)に変換される。AIIは強力な血管収縮作用があり、血圧を上昇させる。さらに、AIIは副腎にも作用してアルドステロンの生成・分泌を促進させ、血圧を上昇させる。従って、降圧剤ではACEを阻害し、AIIの産生を抑えるACE阻害薬が用いられている。
0004
ACEに対する阻害活性を持つペプチドとしては、特許文献1に示される大豆タンパク質、特許文献2に示される卵白アルブミンの加水分解物などからの単離により得られているものがある。他にも特許文献3のように米麹及び米麹水抽出物からACE阻害活性を持つペプチドが得られたり、特許文献4のように酒粕や米焼酎粕からACE阻害活性を持つペプチドが得られているものがある。
先行技術
0005
特開平7−70180号公報
特開平5−331190号公報
特開2008−247888号公報
特開2008−308445号公報
発明が解決しようとする課題
0006
しかしながら、特許文献1や2のように加水分解を伴うものでは、高価な酵素を使用するとともに、酵素の至適pHに合わせるために有機酸や塩酸を加える必要があるため工程が複雑となるので、製造コストの増大及び製造工程の複雑化を招くことになる。特許文献3のように米麹からACE阻害活性を持つペプチドを抽出する場合は、米麹の培養に多くの時間が必要となるため、製造に要する時間が長くなり、製造コストの増大を招くことになる。また、特許文献4では、酒粕や米焼酎粕にセルラーゼを作用させる第1工程、その第1工程により得られる混合物から液体画分を除去する第2工程、さらに、第2工程により得られる固形分に中性プロアーゼや酸性プロアーゼを作用させる第3工程を行っているので、工程数も多く、製造工程が複雑となるだけでなく、製造に要する時間が長くなり、製造コストの増大を招くことになる。また、ACE阻害剤を製造するに当たり、セルラーゼ、中性プロアーゼや酸性プロアーゼが必要となる。
0007
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、安価な原料を用い、かつ短時間で製造可能なACE阻害剤、及び、そのACE阻害剤を含む含有物を提供する点にある。
課題を解決するための手段
0008
本発明の第1特徴構成は、酒粕及び焼酎粕の少なくとも一方に水を加えた混合物を10〜500MPaの圧力条件にて加圧処理を行うことで得られるACEに対して阻害活性を有するACE阻害剤である点にある。
0009
本特徴構成によれば、酒粕及び焼酎粕は米酒や焼酎製造時の副次産物であるので、原料を安価に取得できる。酒粕及び焼酎粕の少なくとも一方に水を加えた混合物に加圧処理を施すだけで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分を抽出してACE阻害剤を製造できるので、その製造工程が簡易なものとなり、しかも、その製造に要する時間も短くなり、製造コストの低減を図ることができる。また、加圧処理を施すことで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出だけでなく、殺菌も行うことができる。そして、食品として用いられる酒粕及び焼酎粕のみを原料としているので、得られたACE阻害剤をそのまま飲食品として用いることもできる。
0010
本発明の第2特徴構成は、前記加圧処理における温度条件を、0〜80℃としている点にある。
0011
本特徴構成によれば、このような温度条件にて加圧処理を行うことで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出と殺菌をより一層効果的に行うことができる。
0012
本発明の第3特徴構成は、前記加圧処理における温度条件を、50〜70℃としている点にある。
0014
本発明の第4特徴構成は、前記加圧処理に要する時間条件を、1〜48時間としている点にある。
0015
本特徴構成によれば、このような時間条件にて加圧処理を行うことで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出と殺菌をより一層効果的に行うことができる。
0016
本発明の第5特徴構成は、前記加圧処理に要する時間条件を、2〜16時間としている点にある。
0017
本特徴構成によれば、このような時間条件にて加圧処理を行うことで、酒粕及び焼酎粕の少なくとも一方からの収率が高く且つACE阻害率も高いACE阻害剤を得ることができることを実験にて確認できた。
0018
本発明の第6特徴構成は、前記加圧処理における圧力条件を、25Mpa以上としている点にある。
0019
本特徴構成によれば、このような圧力条件にて加圧処理を行うことで、酒粕及び焼酎粕の少なくとも一方からの収率が高く且つACE阻害率も高いACE阻害剤を得ることができることを実験にて確認できた。
0020
本発明の第7特徴構成は、上述の第1〜6特徴構成の何れか1つに記載のACE阻害剤を含む含有物である点にある。
0021
本特徴構成によれば、ACE阻害剤を含有する含有物とすることで、その含有物を高血圧の予防や改善のための物品、例えば、飲食品として用いることができる。
図面の簡単な説明
0022
酒粕水抽出物粉末の各濃度における阻害率を示す表
各濃度の阻害率から作製した阻害曲線を示すグラフ
各処理温度における酒粕水抽出物粉末の収率と阻害率を示すグラフ
各処理圧力における酒粕水抽出物粉末の収率と阻害率を示すグラフ
各処理時間における酒粕水抽出物粉末の収率と阻害率を示すグラフ
酒粕水抽出物粉末に含まれる生菌数を示す表
実施例
0023
本発明に係る、ACE(アンジオテンシン変換酵素)に対して阻害活性を有するACE阻害剤の実施形態について説明する。
0024
〔ACE阻害剤の製造工程〕
ACE阻害剤の製造工程について説明する。本工程では、まず、酒粕及び焼酎粕の少なくも一方に等量から10倍量の水を加え、それをフィルムなどに封入し、適当な加圧装置による加圧処理を行うことで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出と殺菌をする。そして、加圧処理後の懸濁液から遠心分離や濾過といった公知の方法で清澄液を抽出し、酒粕水抽出物(この酒粕水抽出物がACE阻害剤に相当する)とする。また、必要に応じて酒粕水抽出物を公知の方法で濃縮や粉末化することができる。ちなみに、上述の工程では、酒粕及び焼酎粕の少なくも一方に水を加えた混合物に対して加圧処理を行うようにしているが、酒粕と焼酎粕を適宜配合されたものに水を加えた混合物に対して加圧処理を行うようにしてもよい。また、酒粕や焼酎粕には、熟成させた踏み込み粕や、粉末化したものを用いることも可能である。
0025
このように、酒粕または焼酎粕に水を加えた混合物に対して、加圧処理を施すことにより、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出と酒粕や焼酎粕に内在する酵母や麹などの殺菌を同時に行うことが出来るため、製造工程の単純化が可能である。
0026
本工程における加圧処理において、その圧力条件は好ましくは10〜500MPa、より好ましくは25Mpa以上としている。また、加圧する時間条件については好ましくは1〜48時間、より好ましくは2〜16時間としている。加圧処理において、温度条件は特に限定されないが、好ましくは0〜80℃、より好ましくは50〜70℃としている。
0027
これらの条件で加圧処理を行うことで、高いACE阻害率を持つ酒粕水抽出物を高収率で得られるとともに、一層効果的に殺菌も行うことができる。
0028
加圧処理したものを遠心、濾過などで固形物を除くことで酒粕水抽出物を得る。遠心はバッチ式の遠心又は連続式の遠心など、一般的な遠心分離方法を広く用いることができる。濾過は漏斗と濾紙による通常の濾過、ブフナー漏斗を用いた減圧吸引式の濾過など公知の濾過方法を広く用いることができる。
0030
〔酒粕水抽出物の調製〕
(実施例1)
酒粕500gに対して純水を1000mL加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置SHP100−50A((株)シナダ)に入れ、60℃、100MPa、18時間の加圧処理を行った。加圧処理液をマイクロ冷却遠心機((株)久保田製作所)を用いて5,000g、5分間の遠心分離をして酒粕水抽出物を得た。酒粕水抽出物はさらに凍結乾燥機((株)宝製作所)を用いて凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を115g得た。この時、酒粕からの収率は23%であった。
0031
(比較例1)
酒粕500gに対して純水を700mL加えて、懸濁した。懸濁液を実施例1と同様の条件で、遠心分離、凍結乾燥を行い、酒粕水抽出物粉末を5g得た。この時、酒粕からの収率は1%であった。
0032
(比較例2)
酒粕500gに対して純水を700mL加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置に入れ、50℃、100MPa、8時間40分の加圧処理を行った。加圧処理液を実施例1と同様の条件で遠心分離、凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を45g得た。この時、酒粕からの収率は9%であった。
0033
(比較例3)
酒粕500gに対して純水を700mL加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置に入れ、50℃、100MPa、12時間の加圧処理を行った。加圧処理液を実施例1と同様の条件で遠心分離、凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を69g得た。この時、酒粕からの収率は14%であった。
0034
実施例1と比較例1〜3の結果より、加圧処理を施していない比較例1では酒粕水抽出物粉末の収率が1%であるのに対して、加圧処理を施した実施例1、比較例2、3では、酒粕水抽出物粉末の収率が顕著に増加していることが明らかである。加圧処理の温度条件を50℃とした比較例2、3に対して、温度条件を60℃とした実施例1では、酒粕水抽出物粉末の収率が増加する傾向が見られる。加圧処理の時間条件についても、8時間40分とした比較例2に対して、時間条件を12時間とした比較例3では、酒粕水抽出物粉末の収率が増加する傾向が見られる。
0035
このように、加圧処理を施すことにより、酒粕水抽出物粉末の収率が顕著に増加することが明らかであり、また、加圧処理の温度や時間を増やすことによって、収率が増加する傾向があることが分かる。
0036
〔酒粕水抽出物粉末のACE阻害活性測定〕
ACE阻害活性の測定には、ACEKIT — WST(DOJINDO)を用いた。実施例1で作製した酒粕水抽出物粉末を5mg/mL、1mg/mL、200μg/mL、40μg/mL、8μg/mL、1.6μg/mL、0.32μg/mLに調製した。各濃度の酒粕水抽出物粉末をキットの各溶液と混和し、450nmの吸収波長の差をポジティブコントロール及びネガティブコントロールと比較した。吸収波長の測定には、MTP—310 Lab吸光マイクロプレートリーダ(コロナ電気(株))を用いた。阻害率は(ポジティブコントロール‐サンプルの吸光度)/(ポジティブコントロール‐ネガティブコントロール)×100で算出した。また、各濃度の阻害率から阻害曲線を作製し、その近似式から算出した阻害率が50%となる酒粕水抽出物濃度を求めた。反応時のサンプルの終濃度は、調整時のサンプル濃度の1/3であるので、阻害曲線から求めた濃度の1/3をIC50とした。
0038
各濃度の阻害率から作製した阻害曲線を図2に示している。図2の阻害曲線の近似式から、50%阻害率を示すサンプル濃度は179μg/mLと算出された。IC50は阻害曲線から求めた濃度の1/3であるため、酒粕水抽出物粉末のIC50は59.7μg/mLとなる。
0039
〔酒粕水抽出物作製における加圧処理での最適条件の検討〕
清酒粕を凍結乾燥し、粉末化することで得た清酒粕末を用いた実験により、酒粕水抽出物を作製する際の加圧処理における最適な条件を検討したので、以下、これらの各条件の検討について説明する。
0040
〔最適な温度条件の検討〕
(実施例2)
清酒粕末200gに純水1000mLを加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置に入れ、圧力条件を100MPaとし且つ時間条件を4時間として圧力条件と時間条件を一定条件とした上で、温度条件(処理温度)を30〜70℃に変化させて加圧処理を行った。加圧処理液を実施例1と同様の条件で遠心分離、凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を作製した。各処理温度で得られた酒粕水抽出物粉末はACEKIT — WSTを用いて、250μg/mLでの阻害率を測定した。
0041
この実施例2における各処理温度での酒粕水抽出物粉末収率と250μg/mLにおけるACE阻害率を図3に示す。処理温度を上昇させると、その処理温度に依存して粉末の収率は上昇した。一方で、ACE阻害活性(ACE阻害率)に関しては、処理温度が50℃から上昇し、処理温度が60℃で最も高くなり、処理温度が60℃のときに他の温度よりACE阻害活性(ACE阻害率)が有意に高くなる(P<0.05)。
0042
加圧処理における温度条件としては、0〜80℃が好ましいが、図3の実験結果から、50〜70℃が最適な条件と考えられ、この最適な温度条件にて加圧処理を行うことで、収率が高く且つACE阻害率も高い酒粕水抽出物粉末(ACE阻害剤)を得ることができ、しかも、殺菌も効果的に行うことができる。
0043
〔最適な圧力条件の検討〕
(実施例3)
清酒粕末200gに純水1000mLを加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置に入れ、温度条件を60℃とし且つ時間条件を4時間として温度条件と時間条件を一定条件とした上で、圧力条件(処理圧力)を常圧〜100MPaに変化させて加圧処理を行った。加圧処理液を実施例1と同様の条件で遠心分離、凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を作製した。各処理圧力で得られた酒粕水抽出物粉末はACEKIT — WSTを用いて、250μg/mLでの阻害率を測定した。
0044
この実施例3における各処理圧力での酒粕水抽出物粉末収率と250μg/mLにおけるACE阻害率を図4に示す。収率に関しては、75MPaまで上昇する傾向にあったが、常圧〜100MPaの範囲ではいずれも有意な差はなかった。ACE阻害活性に関しては、25MPaにおいて常圧のものよりACE阻害活性(ACE阻害率)が有意に高くなり(P<0.05)、100MPaで最大となった。
0045
加圧処理における圧力条件としては、10〜500MPaが好ましいが、図4の実験結果から、25MPa以上が最適な条件と考えられ、この最適な圧力条件にて加圧処理を行うことで、収率が高く且つACE阻害率も高い酒粕水抽出物粉末(ACE阻害剤)を得ることができる。
0046
〔最適な温度条件の検討〕
(実施例4)
清酒粕末200gに純水1000mLを加えてフィルムに入れ、シーラーで密閉した。フィルムを高圧装置に入れ、温度条件を60℃とし且つ圧力条件を100MPaとして温度条件と圧力条件を一定条件とした上で、時間条件(処理時間)を0.5〜16時間に変化させて加圧処理を行った。加圧処理液を実施例1と同様の条件で遠心分離、凍結乾燥し、酒粕水抽出物粉末を作製した。各圧力で得られた酒粕水抽出物粉末はACEKIT — WSTを用いて、250μg/mLでの阻害率を測定した。
0047
この実施例4における各処理時間での酒粕水抽出物粉末収率と250μg/mLにおけるACE阻害率を図5に示す。収率に関しては、16時間まで上昇する傾向にあったが、8時間以上では有意な上昇はなかった。ACE阻害活性(ACE阻害率)に関しては、2時間から上昇し、4時間以上で略一定となり、2時間未満とは有意な差が見られた(P<0.05)。
0048
加圧処理における時間条件としては、1〜48時間が好ましいが、図5の実験結果から、2〜16時間が最適な条件と考えられ、この最適な時間条件にて加圧処理を行うことで、収率が高く且つACE阻害率も高い酒粕水抽出物粉末(ACE阻害剤)を得ることができる。
0049
(比較例4)
比較例1に用いた清酒粕末の250μg/mLにおけるACE阻害率をACEKIT — WSTを用いて求めた。このときの阻害率は42%であった。
0050
上述の如く、図3〜図5に示すように、実施例2〜4の実験結果から、ACE阻害に対して最適な酒粕水抽出物粉末を得るための加圧処理の各条件は、温度条件を60℃とし、圧力条件を100MPaとし、時間条件を4時間とする条件が最適であることが明らかとなった。この条件で加圧処理を行うことで作製された酒粕水抽出物粉末の250μg/mLにおけるACE阻害率は約80%である。よって、比較例4で求めた加圧処理を行っていない清酒粕末のACE阻害率(42%)と比較すると非常に高い効果があると考えられる。さらに、収率を向上させるためには、温度条件を60℃とし、圧力条件を100MPaとし、時間条件を8時間以上として加圧処理を行うことが好ましいと考えられる。
0051
〔酒粕水抽出物粉末の生菌数測定〕
生菌数検査には、比較例3で作製した酒粕水抽出物粉末を用いた。一般細菌数検査については、滅菌水で希釈した粉末溶液1mLを3MペトリフィルムACプレート(住友スリーエム(株))に塗布し、プレートを35℃にセットしたインキュベーターで48時間培養後、コロニー数を計測することにより行った。大腸菌数検査については、滅菌水で希釈した粉末溶液1mLを3MペトリフィルムRCCプレート(住友スリーエム(株))に塗布し、プレートを35℃にセットしたインキュベーターで24時間培養後、コロニー数を計測することにより行った。カビ・酵母数検査については、滅菌水で希釈した粉末溶液1mLを3MペトリフィルムYMプレート(住友スリーエム(株))に塗布し、プレートを25℃にセットしたインキュベーターで5日間培養後、コロニー数を計測することにより行った。
0052
図6は酒粕水抽出物粉末に含まれる生菌数を表している。酒粕水抽出物粉末では大腸菌やカビ・酵母は検出されなかった。一般細菌は検出されたものの数は少なく、食品として用いる場合には問題はないと考えられる。また、カビと酵母が検出されなかったことから、変色や変質の恐れがなく、保存性が向上したと考えられる。
0053
上述の如く、酒粕及び焼酎粕の少なくとも一方に水を加えた混合物を10〜500MPaの圧力条件にて加圧処理を行うことで得られる酒粕水抽出物は、ACEに対して阻害活性を有するACE阻害剤であることが言える。しかも、加圧処理を行うことで、ACEに対して阻害活性を有する有効成分の抽出を効果的に行うことができるとともに、酒粕水抽出物の殺菌も同時に行うことができる。
0054
このような酒粕水抽出物(ACE阻害剤)を含有する含有物を高血圧の予防や改善のための飲食品として用いることができる。例えば、粕水抽出物(ACE阻害剤)を含有する栄養補助食品、すなわちサプリメントとして用いたり、酒粕水抽出物粉末(ACE阻害剤)を各種の飲料に溶かした飲料として用いることができる。
0055
本発明は、安価な原料を用い、かつ短時間で製造可能な各種のACE阻害剤、及び、そのACE阻害剤を含む各種の含有物に適応可能である。
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