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技術 感染性インフルエンザウイルスの産生

出願人 サノフィ・パスツール
発明者 イザベル・ルガステロワジュリー・メディナキャサリン・モステ
出願日 2013年7月29日 (5年11ヶ月経過) 出願番号 2015-524755
公開日 2015年10月29日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2015-530875
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤
主要キーワード 溶液番号 派生製品 合計強度 成分条件 保有体 関連業者 内側周 南半球
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題・解決手段

本発明は、細胞に適当な一式発現ベクター遺伝子導入することにより生成した感染性インフルエンザウイルスシードCHO細胞を感染させる、インフルエンザ感染性ウイルス産生方法に関する。本発明はまた、感染性ウイルスの産生方法、特に、本発明による方法において使用することのできる、組換えカセット、および前記組換えカセットを含むベクターに関する。

概要

背景

インフルエンザウイルスは、動物およびヒトを冒して、公衆衛生および経済上の問題を引き起こす、一般に「フル(flu)」の名で呼ばれる、接触感染性の高い呼吸器疾患の原因因子である。インフルエンザウイルスは、一本鎖マイナスRNA分節からなる分節化したゲノムを有するエンベロープ型RNAウイルスである。インフルエンザウイルスは、3つの型:インフルエンザA、インフルエンザB、およびインフルエンザCウイルス包含する。インフルエンザAおよびBウイルスは、毎年5万人を越える死をもたらすヒトインフルエン流行の原因である(非特許文献1)。インフルエンザAウイルスは、ヒトおよび広範な種類の動物(ブタウマイヌネコなど)の両方に感染し、最大の自然保有体は、野生水鳥であるが、インフルエンザBウイルスは、一部には、B/NS1タンパク質に他の種の生得免疫応答打ち消す能力がないことが理由で、主にヒトに限定され(非特許文献2)、インフルエンザCウイルスは、ヒトおよびブタから単離される。

A型ウイルスは、球形または糸状の形状を有し、大きさは約80〜150nmである。脂質二重層からなるウイルスエンベロープは、宿主細胞原形質膜由来である。宿主抗体にとっての主なターゲットである、表面糖タンパク質HAヘマグルチニン)およびNA(ノイラミニダーゼ)から形成される針状体は、このエンベロープに挿入されている。同じく膜に埋め込まれているM2タンパク質は、主にウイルスの脱キャプシド(decapsidation)の際に機能するイオンチャネルである。マトリックスタンパク質M1は、脂質二重層、およびリボ核タンパク質(RNP)と関連する、ウイルスの内側周辺に位置する。このタンパク質は、RNPの核−細胞質輸送において基本的な役割を有する。キャプシドにおいて、vRNA分節は、ウイルスゲノム転写、複製、およびキャプシド形成に必要なシグナルを含有する非コード5’および3’末端を保有する。PA(ポリメラーゼ酸性)、PB1(ポリメラーゼ塩基性タンパク質1)、PB2(ポリメラーゼ塩基性タンパク質2)、NP(核タンパク質)、HA、NA、M、およびNS(非構造タンパク質)と呼ばれる、インフルエンザAウイルスの8つのvRNAは、選択的スプライシングによって、1種またはそれ以上のタンパク質をコードする。PA分節は、PAタンパク質をコードし;PB1分節は、PB1、PB1−F2、およびPB1−N40タンパク質をコードし;NP分節は、NPタンパク質をコードし;HA分節は、HAタンパク質をコードし;NA分節は、NAタンパク質をコードし;M分節は、M1およびM2タンパク質をコードし;NS分節は、非構造タンパク質NS1およびNS2またはNEP(vRNPの核輸送)をコードする。vRNAは、1単量体あたり24のヌクレオチドを結合するNPに巻き付けられており、ポリメラーゼ複合体がRNA分子の2つの末端に結合して、ヘアピン構造を形成している。この複合体は、PB1、PB2、およびPAからなる。RNA、NP、およびポリメラーゼの組合せによって、リボ核タンパク質(RNP)複合体が形成される。

B型ウイルスは、NAに加えて、タンパク質M2のようなIII型構造を有する、NBと呼ばれる糖タンパク質を有する。

C型ウイルスは、多官能性表面糖タンパク質「ヘマグルチニン−エステラーゼ融合タンパク質」(HEF)1種類だけを有する。

したがって、A型およびB型ウイルスのゲノムは、8つのウイルスRNA(vRNA)を含有しているが、インフルエンザウイルスC型のゲノムは、7つしか含有していない。

インフルエンザAウイルスは、表面のウイルス糖タンパク質性質に従って、別個亜型、すなわち、現在は、ヘマグルチニン(HA)(H1〜H17)およびノイラミニダーゼ(NA)(N1〜N9)にも分けられる。

インフルエンザウイルスを孵化鶏卵において成長させることができたという、1936年のBurnetによる発見によって、その特性の研究が可能になり、不活化ワクチンの開発が可能になった(非特許文献3)。世界保健機関(WHO)が述べているとおり、ワクチン接種は、感染の予防に最も有効な手段である。幸運なことに、70年以上にわたり、安全で有効なワクチン入手可能になっている。季節性インフルエンザワクチンは、抗原改変のために1年に2回(北半球について1回および南半球について1回)更新される、異なるインフルエンザ型および亜型(A/H1N1、A/H3N2、およびB)を含有する。このため、WHOは、世界インフルエンザサーベイランスネットワークGISN)を連係して働かせて、インフルエンザウイルスの疫学モニターしている。翌シーズンのワクチンに含めるウイルスが決定されたならば、ニューヨーク医科大学(NYMC、US)、国立生物学的製剤研究所(NIBSC、UK)、CSLグループ(オーストラリア)、および国立感染症研究所(NMD、日本)のようなWHO協力センターによって、高成長シードウイルス株候補が準備されなければならない(非特許文献4)。次いで、ワクチン株が、製造業者によって、、MDCK、またはVero細胞系において増幅される(非特許文献5)。現在、MDCK(非特許文献6)、Vero(非特許文献7)、およびPER.C6(登録商標)(非特許文献8)が、規制上の要件を満たす3種の細胞系であり、インフルエンザAおよびBウイルスを首尾よく確実に複製させることが示されている。3種の細胞系はすべて、無血清培地において成長するように順応している(非特許文献9)。

インフルエンザウイルスの細胞への導入(感染の第1のステップ)は、インフルエンザヘマグルチニン(HA)表面タンパク質と特定の細胞表面受容体特異的相互作用を介して起こる。インフルエンザウイルスに特異的な宿主細胞膜受容体は、シアリルラクトサミン鎖(シアル酸[Sia]α2−3/6ガラクトース[Gal]β1−4/3N−アセチグルコサミン)の炭水化物構造でできている(非特許文献10)。ヒトインフルエンザウイルスは、Sia2−6Gal結合を含有している細胞受容体優先的に結合するのに対し、鳥ウイルスは、Sia2−3Gal受容体に優先的に結合する(非特許文献9)。2種のウイルスが同じ細胞に感染するとき、再集合体(reassortant)と呼ばれる、異なる組合せのゲノムvRNAが生じる場合がある。この特性は、ターゲット循環ウイルスのHAおよびノイラミニダーゼ(NA)タンパク質の抗原特性を、A/プエルトリコ/8/34(PR8)(H1N1)と呼ばれる、卵に順応させたウイルスの好都合成長特性内部遺伝子)と組み合わせる、インフルエンザAワクチンの産生に使用されてきた。残念なことに、所望される高収量ウイルスを導き出すことにおける成功は、予測できない。加えて、一部の株は、検証されていない細胞系において単離されている場合、規制当局によって祖先ワクチン株として受理されないので、使用することができない(非特許文献11)。インフルエンザB型ウイルスに関しては、ごく最近まで、A/PR/8/34(H1N1)ウイルスの成長特性を備えるBウイルスは、特定されていなかった。したがって、流行性循環(または季節的)Bウイルスは、孵化鶏卵の感染にそのまま使用され、Bワクチン株の収量を向上させるのに、数回の継代が必要であった(非特許文献12)。

1999年以来、感染性インフルエンザウイルスをすべてクローン化ウイルスcDNAから生成することを可能にする、プラスミドに基づいた逆遺伝学技術のおかげで、スピードおよび安全性に関してかなりの改善が実現された(非特許文献13)。8つのvRNA、ならびに、少なくとも、転写に必要となるポリメラーゼタンパク質複合体よび核タンパク質(NP)の発現を誘発し得る一式のプラスミドに基づく、異なる系が開発された。ポリメラーゼタンパク質複合体およびNPは、それぞれ、4つの追加プラスミドを遺伝子導入する、またはRNAポリメラーゼI(POL1)およびII(POL2)を介したvRNAとmRNA両方の合成を可能にする双方向性プロモーターを有するプラスミドを使用することにより、発現させることもできる(非特許文献14)。遺伝子導入されるプラスミドの合計数は、戦略一方向性であるか双方向性かに応じて16(非特許文献15)または12(非特許文献13)から8(非特許文献16)まで、またプラスミドがいくつかのvRNAをコードする場合、3(非特許文献17)から1(非特許文献18)まで、様々となり得る。

現在の逆遺伝学系は、PER.C6(登録商標)(非特許文献5)、CEP(ニワトリ胚初代)細胞またはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)(非特許文献18)、293T細胞単独(非特許文献15)またはMDCKでさらに増幅させるもの(非特許文献16;非特許文献19)、Vero細胞単独(非特許文献11;非特許文献17)またはMadin−Darbyウシ腎臓(MDBK)でさらに増幅させるもの(非特許文献13)、CEP細胞またはCEF(非特許文献20;非特許文献21)の使用に基づく。

逆遺伝学法によるウイルスの産生に細胞系の混合物が使用されるとき、最も効率的に遺伝子導入することのできる細胞系が、感染性インフルエンザウイルスの生成を担うものとみなされ、他の細胞系は、感染性ウイルスの増加に寄与する。インフルエンザvRNAの産生を可能にするプラスミドでは、ヒトRNA POL Iプロモーターが一般に使用されるので、ヒトおよびサル細胞が、逆遺伝学系において遺伝子導入される細胞系として使用するのに最も適当な細胞系である。しかし、イヌまたはニワトリ起源とするPOL Iプロモーターを、それぞれイヌまたは鳥細胞において使用することもできる(非特許文献22;非特許文献23)。一方、ウイルスタンパク質をコードするmRNAの産生を可能にするプラスミドは、通常、どんな真核細胞においても働き得るサイトメガロウイルス(CMV)またはβアクチンPOLIIプロモーターを含有している(非特許文献15;非特許文献19)。

ほとんどの場合、上述の逆遺伝学系において、細胞は通常、遺伝子導入の直前に、血清含有培地で培養して、異なる細胞型活発な成長を確実にする。さらに、感染培地中に、ブタを起源とするトリプシンも使用して、感染後のウイルス増殖を維持する。十分なウイルスを得るために、最初の遺伝子導入工程の後に、卵または細胞での数回の増幅が必要となる場合もある。

汎流行性A/H1N1(2009)ウイルスによって、インフルエンザAウイルスが集団の中で広まり得るスピードが実証され、逆遺伝学による再集合体産生を加速させる必要が明示された。すなわち、主な課題は、最小限の時間で多量の用量のワクチンが産生されて、理想的にはウイルスの拡散より速く、世界中に分配されるのを確実にすることである。

クローン化に使用される従来の手法には、制限酵素が必要となる。しかし、制限部位は、多くの場合、vRNAに相補的な異なるインフルエンザcDNAに存在し、ベクター改変またはウイルスゲノム突然変異誘発の実行が必要となる。逆遺伝学目的で、vRNAに相補的なインフルエンザcDNAをクローン化するために、簡略化された組換え手法が以前に開発されている(非特許文献24;非特許文献25)。相同組換えには、2つのDNA分子間の同一DNA配列の領域における切断および再結合過程が伴い、その結果として遺伝物質の新たな組合せが生じる(非特許文献26)。以前に記載されているこうした組換えクローン化系は、ヒトPOLIプロモーターとターミネーターの間にインフルエンザA分節のコンセンサス5’(Uni13)および3’(Uni12)保存非コード末端を含む、25ヌクレオチド組換えカセットに基づく。こうした系は、任意のインフルエンザAゲノムの迅速かつ直接的なクローン化を可能にする。しかし、インフルエンザBゲノムのvRNA5’および3’非コード末端のヌクレオチド配列は、インフルエンザAウイルスと異なるので、インフルエンザBゲノムは、この組換えカセットに基づいてクローン化することができない。

したがって、RNAウイルスゲノム、詳細には、インフルエンザA、B、およびCゲノムを、可能な限り速やかにかつ効率的にクローン化する万能な手法を開発することも求められている。

概要

本発明は、細胞に適当な一式の発現ベクターを遺伝子導入することにより生成した感染性インフルエンザウイルスのシードCHO細胞を感染させる、インフルエンザの感染性ウイルスの産生方法に関する。本発明はまた、感染性ウイルスの産生方法、特に、本発明による方法において使用することのできる、組換えカセット、および前記組換えカセットを含むベクターに関する。

目的

すなわち、主な課題は、最小限の時間で多量の用量のワクチンが産生されて、理想的にはウイルスの拡散より速く、世界中に分配されるのを確実にすることである

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

a)細胞一式発現ベクター遺伝子導入して、感染性インフルエンザウイルスシードを生成する工程、b)CHO細胞を感染性インフルエンザウイルスの前記シードで感染させる工程を含む、感染性インフルエンザウイルスの産生方法

請求項2

工程a)における細胞が、霊長類起源の細胞である、霊長類起源の細胞とCHO細胞の混合物である、またはCHO細胞からなる、請求項1に記載の方法。

請求項3

霊長類起源の細胞がVero細胞である、請求項2に記載の方法。

請求項4

前記CHO細胞がCHO−K1細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

前記一式の発現ベクターが、−少なくともインフルエンザPB1、PB2、PA、およびNPタンパク質をコードしているmRNA発現を可能にする発現ベクターと、−少なくともインフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAvRNA、または対応するcRNAの発現を可能にする発現ベクターとを含み、前記一式の発現ベクターの発現によって、(i)該インフルエンザvRNAを含有しているリボ核タンパク質複合体(RNP)の形成、および(ii)前記遺伝子導入細胞中での感染性インフルエンザウイルスの生成が可能になると理解される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

(i)インフルエンザPB1、PB2、PA、およびNPタンパク質をコードしているmRNAの発現を可能にする前記発現ベクターが、異なる4つの一方向性プラスミドを含み、各プラスミドは、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターの制御下にある、PB1、PB2、PA、およびNPインフルエンザタンパク質から選択される4種の別個タンパク質の1つをコードしているmRNAに相補的cDNAを含有しており、(ii)インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAvRNA、または対応するcRNAの発現を可能にする前記発現ベクターが、異なる8つの一方向性プラスミドを含み、各プラスミドは、RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、前記PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAインフルエンザvRNAから選択される8つの別個のvRNA、または対応するcRNAに相補的なcDNAを含有している、請求項5に記載の方法。

請求項7

RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、前記インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAvRNA、または対応するcRNAの1つに相補的なcDNAを含有している前記各プラスミドが、センス鎖の5’から3’に、a)RNAポリメラーゼIまたはT7RNAポリメラーゼに結合するプロモーターと;b)センス鎖の5’から3’に、−認識配列の外側に切断部位を有し、粘着末端を生じる、第1の制限酵素の逆方向相補的認識配列;−認識配列の内側に切断部位を有する第2の制限酵素の制限部位;−認識配列の内側に切断部位を有する第3の制限酵素の制限部位;および−認識配列の外側に切断部位を有し、粘着末端を生じる、前記第1の制限酵素の認識配列を含み、前記第2および第3の制限酵素は異なる、組換えカセットと;c)−該プロモーターがRNAポリメラーゼIに結合するとき、前記ターミネーター配列は、肝炎デルタリボザイム配列であり;−該プロモーターがT7RNAポリメラーゼに結合するとき、前記ターミネーター配列は、T7ポリメラーゼターミネーター配列であると理解される、ターミネーター配列とを含むベクターに前記cDNA配列クローン化することによって得たものである、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記ベクターが、配列番号:1の配列を含む、請求項7に記載の方法。

請求項9

前記一式の発現ベクターが、異なる8つの双方向性プラスミドを含み、各プラスミドは、2つのプロモーターの制御下にある、前記PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAインフルエンザvRNAから選択される8つの別個のvRNAの1つに相補的なcDNAを含有しており、前記第1のプロモーターは、ポリメラーゼIに結合し、前記第2のプロモーターは、ポリメラーゼIIに結合し、前記一式の発現ベクターの発現によって、(i)該インフルエンザvRNAを含有しているリボ核タンパク質複合体(RNP)の形成、および(ii)前記遺伝子導入細胞中での感染性インフルエンザウイルスの生成が可能になると理解される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

産生される感染性インフルエンザウイルスが、A型またはB型インフルエンザウイルスである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

請求項11

産生される感染性インフルエンザウイルスが、再集合体感染性インフルエンザウイルスであり、その遺伝物質は、少なくとも2種のドナーウイルスの遺伝物質を組み合わせた結果として得られる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。

請求項12

ドナーウイルスが、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)(A/PR/8/34)、B/Lee/40、またはB/パナマ/45/90のうちの1つである、請求項11に記載の方法。

請求項13

産生される感染性インフルエンザウイルスがキメラウイルスである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

請求項14

前記キメラウイルスが、キメラインフルエンザHAおよび/またはNAvRNAを含有している、請求項13に記載の方法。

請求項15

キメラインフルエンザHAvRNAおよび/またはNAvRNAが、季節性または汎流行性ウイルスからのHAvRNAの1つもしくはそれ以上のドメインまたはNAvRNAの1つもしくはそれ以上のドメインと、別のドナーウイルスからのHAvRNAの1つもしくはそれ以上のドメインまたはNAvRNAの1つもしくはそれ以上のドメインとを含み、前記季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからのHAvRNAの少なくとも1つのドメインは、前記季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからのHA1および/またはHA2のような、HAの抗原性外部ドメインをコードしているmRNAの領域に相補的であり、前記季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからのNAvRNAの少なくとも1つのドメインは、前記季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからのNAの抗原性外部ドメインをコードしているmRNAの領域に相補的である、請求項14に記載の方法。

請求項16

前記方法を、無血清培地または無動成分条件において完全に実行する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。

請求項17

a)請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法によってインフルエンザウイルスを産生する工程と;b)感染性インフルエンザウイルスを、CHO細胞中で増加させた後収穫する工程と、c)収穫した感染性インフルエンザウイルスを精製する工程と、d)場合により、精製したウイルスを不活化する工程と、e)精製したウイルスを薬学的に許容される担体と混合する工程とを含む、インフルエンザワクチン組成物調製方法

請求項18

請求項5〜9のいずれか1項で定義したとおりの一式の発現ベクターを含むCHO細胞。

請求項19

CHO−K1細胞である、請求項18に記載のCHO細胞。

請求項20

センス鎖の5’から3’に、−RNAポリメラーゼIまたはT7RNAポリメラーゼに結合するプロモーターと;−センス鎖の5’から3’に、−認識配列の外側に切断部位を有し、粘着末端を生じる、第1の制限酵素の逆方向相補的認識配列;−認識配列の内側に切断部位を有する第2の制限酵素の制限部位;−認識配列の内側に切断部位を有する第3の制限酵素の制限部位;および−認識配列の外側に切断部位を有し、粘着末端を生じる、前記第1の制限酵素の認識配列を含み、前記第2および第3の制限酵素は異なる、組換えカセットと;−該プロモーターがRNAポリメラーゼIに結合するとき、前記ターミネーター配列は、肝炎デルタリボザイム配列であり、−該プロモーターがT7RNAポリメラーゼに結合するとき、前記ターミネーター配列は、T7ポリメラーゼターミネーター配列であると理解される、−ターミネーター配列とを含むベクター。

請求項21

前記プロモーターが、げっ歯類RNAポリメラーゼIまたはヒトRNAポリメラーゼIに結合する、請求項20に記載のベクター。

請求項22

組換えカセットの前記第1の制限酵素が、BbsIまたはSapIであり、組換えカセットの前記第2および第3の制限酵素が、NotIおよびSbfIからなる群から選択される、請求項20または21に記載のベクター。

請求項23

前記組換えカセットが、配列番号:2の配列からなる、請求項20〜22のいずれか1項に記載のベクター。

請求項24

配列番号:1の配列を含む、請求項20〜23のいずれか1項に記載のベクター。

請求項25

再集合体RNAウイルス逆遺伝学によって産生する方法において使用するための、請求項20〜24のいずれか1項に記載のベクター。

技術分野

0001

本発明は、細胞に適当な一式発現ベクター遺伝子導入することにより生成した感染性インフルエンザウイルスシードCHO細胞を感染させる、インフルエンザ感染性ウイルス産生方法に関する。本発明はまた、感染性ウイルスの産生方法、特に、本発明による方法において使用することのできる、組換えカセット、および前記組換えカセットを含むベクターに関する。

背景技術

0002

インフルエンザウイルスは、動物およびヒトを冒して、公衆衛生および経済上の問題を引き起こす、一般に「フル(flu)」の名で呼ばれる、接触感染性の高い呼吸器疾患の原因因子である。インフルエンザウイルスは、一本鎖マイナスRNA分節からなる分節化したゲノムを有するエンベロープ型RNAウイルスである。インフルエンザウイルスは、3つの型:インフルエンザA、インフルエンザB、およびインフルエンザCウイルス包含する。インフルエンザAおよびBウイルスは、毎年5万人を越える死をもたらすヒトインフルエン流行の原因である(非特許文献1)。インフルエンザAウイルスは、ヒトおよび広範な種類の動物(ブタウマイヌネコなど)の両方に感染し、最大の自然保有体は、野生水鳥であるが、インフルエンザBウイルスは、一部には、B/NS1タンパク質に他の種の生得免疫応答打ち消す能力がないことが理由で、主にヒトに限定され(非特許文献2)、インフルエンザCウイルスは、ヒトおよびブタから単離される。

0003

A型ウイルスは、球形または糸状の形状を有し、大きさは約80〜150nmである。脂質二重層からなるウイルスエンベロープは、宿主細胞原形質膜由来である。宿主抗体にとっての主なターゲットである、表面糖タンパク質HAヘマグルチニン)およびNA(ノイラミニダーゼ)から形成される針状体は、このエンベロープに挿入されている。同じく膜に埋め込まれているM2タンパク質は、主にウイルスの脱キャプシド(decapsidation)の際に機能するイオンチャネルである。マトリックスタンパク質M1は、脂質二重層、およびリボ核タンパク質(RNP)と関連する、ウイルスの内側周辺に位置する。このタンパク質は、RNPの核−細胞質輸送において基本的な役割を有する。キャプシドにおいて、vRNA分節は、ウイルスゲノム転写、複製、およびキャプシド形成に必要なシグナルを含有する非コード5’および3’末端を保有する。PA(ポリメラーゼ酸性)、PB1(ポリメラーゼ塩基性タンパク質1)、PB2(ポリメラーゼ塩基性タンパク質2)、NP(核タンパク質)、HA、NA、M、およびNS(非構造タンパク質)と呼ばれる、インフルエンザAウイルスの8つのvRNAは、選択的スプライシングによって、1種またはそれ以上のタンパク質をコードする。PA分節は、PAタンパク質をコードし;PB1分節は、PB1、PB1−F2、およびPB1−N40タンパク質をコードし;NP分節は、NPタンパク質をコードし;HA分節は、HAタンパク質をコードし;NA分節は、NAタンパク質をコードし;M分節は、M1およびM2タンパク質をコードし;NS分節は、非構造タンパク質NS1およびNS2またはNEP(vRNPの核輸送)をコードする。vRNAは、1単量体あたり24のヌクレオチドを結合するNPに巻き付けられており、ポリメラーゼ複合体がRNA分子の2つの末端に結合して、ヘアピン構造を形成している。この複合体は、PB1、PB2、およびPAからなる。RNA、NP、およびポリメラーゼの組合せによって、リボ核タンパク質(RNP)複合体が形成される。

0004

B型ウイルスは、NAに加えて、タンパク質M2のようなIII型構造を有する、NBと呼ばれる糖タンパク質を有する。

0005

C型ウイルスは、多官能性表面糖タンパク質「ヘマグルチニン−エステラーゼ融合タンパク質」(HEF)1種類だけを有する。

0006

したがって、A型およびB型ウイルスのゲノムは、8つのウイルスRNA(vRNA)を含有しているが、インフルエンザウイルスC型のゲノムは、7つしか含有していない。

0007

インフルエンザAウイルスは、表面のウイルス糖タンパク質性質に従って、別個亜型、すなわち、現在は、ヘマグルチニン(HA)(H1〜H17)およびノイラミニダーゼ(NA)(N1〜N9)にも分けられる。

0008

インフルエンザウイルスを孵化鶏卵において成長させることができたという、1936年のBurnetによる発見によって、その特性の研究が可能になり、不活化ワクチンの開発が可能になった(非特許文献3)。世界保健機関(WHO)が述べているとおり、ワクチン接種は、感染の予防に最も有効な手段である。幸運なことに、70年以上にわたり、安全で有効なワクチン入手可能になっている。季節性インフルエンザワクチンは、抗原改変のために1年に2回(北半球について1回および南半球について1回)更新される、異なるインフルエンザ型および亜型(A/H1N1、A/H3N2、およびB)を含有する。このため、WHOは、世界インフルエンザサーベイランスネットワークGISN)を連係して働かせて、インフルエンザウイルスの疫学モニターしている。翌シーズンのワクチンに含めるウイルスが決定されたならば、ニューヨーク医科大学(NYMC、US)、国立生物学的製剤研究所(NIBSC、UK)、CSLグループ(オーストラリア)、および国立感染症研究所(NMD、日本)のようなWHO協力センターによって、高成長シードウイルス株候補が準備されなければならない(非特許文献4)。次いで、ワクチン株が、製造業者によって、、MDCK、またはVero細胞系において増幅される(非特許文献5)。現在、MDCK(非特許文献6)、Vero(非特許文献7)、およびPER.C6(登録商標)(非特許文献8)が、規制上の要件を満たす3種の細胞系であり、インフルエンザAおよびBウイルスを首尾よく確実に複製させることが示されている。3種の細胞系はすべて、無血清培地において成長するように順応している(非特許文献9)。

0009

インフルエンザウイルスの細胞への導入(感染の第1のステップ)は、インフルエンザヘマグルチニン(HA)表面タンパク質と特定の細胞表面受容体特異的相互作用を介して起こる。インフルエンザウイルスに特異的な宿主細胞膜受容体は、シアリルラクトサミン鎖(シアル酸[Sia]α2−3/6ガラクトース[Gal]β1−4/3N−アセチグルコサミン)の炭水化物構造でできている(非特許文献10)。ヒトインフルエンザウイルスは、Sia2−6Gal結合を含有している細胞受容体優先的に結合するのに対し、鳥ウイルスは、Sia2−3Gal受容体に優先的に結合する(非特許文献9)。2種のウイルスが同じ細胞に感染するとき、再集合体(reassortant)と呼ばれる、異なる組合せのゲノムvRNAが生じる場合がある。この特性は、ターゲット循環ウイルスのHAおよびノイラミニダーゼ(NA)タンパク質の抗原特性を、A/プエルトリコ/8/34(PR8)(H1N1)と呼ばれる、卵に順応させたウイルスの好都合成長特性内部遺伝子)と組み合わせる、インフルエンザAワクチンの産生に使用されてきた。残念なことに、所望される高収量ウイルスを導き出すことにおける成功は、予測できない。加えて、一部の株は、検証されていない細胞系において単離されている場合、規制当局によって祖先ワクチン株として受理されないので、使用することができない(非特許文献11)。インフルエンザB型ウイルスに関しては、ごく最近まで、A/PR/8/34(H1N1)ウイルスの成長特性を備えるBウイルスは、特定されていなかった。したがって、流行性循環(または季節的)Bウイルスは、孵化鶏卵の感染にそのまま使用され、Bワクチン株の収量を向上させるのに、数回の継代が必要であった(非特許文献12)。

0010

1999年以来、感染性インフルエンザウイルスをすべてクローン化ウイルスcDNAから生成することを可能にする、プラスミドに基づいた逆遺伝学技術のおかげで、スピードおよび安全性に関してかなりの改善が実現された(非特許文献13)。8つのvRNA、ならびに、少なくとも、転写に必要となるポリメラーゼタンパク質複合体よび核タンパク質(NP)の発現を誘発し得る一式のプラスミドに基づく、異なる系が開発された。ポリメラーゼタンパク質複合体およびNPは、それぞれ、4つの追加プラスミドを遺伝子導入する、またはRNAポリメラーゼI(POL1)およびII(POL2)を介したvRNAとmRNA両方の合成を可能にする双方向性プロモーターを有するプラスミドを使用することにより、発現させることもできる(非特許文献14)。遺伝子導入されるプラスミドの合計数は、戦略一方向性であるか双方向性かに応じて16(非特許文献15)または12(非特許文献13)から8(非特許文献16)まで、またプラスミドがいくつかのvRNAをコードする場合、3(非特許文献17)から1(非特許文献18)まで、様々となり得る。

0011

現在の逆遺伝学系は、PER.C6(登録商標)(非特許文献5)、CEP(ニワトリ胚初代)細胞またはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)(非特許文献18)、293T細胞単独(非特許文献15)またはMDCKでさらに増幅させるもの(非特許文献16;非特許文献19)、Vero細胞単独(非特許文献11;非特許文献17)またはMadin−Darbyウシ腎臓(MDBK)でさらに増幅させるもの(非特許文献13)、CEP細胞またはCEF(非特許文献20;非特許文献21)の使用に基づく。

0012

逆遺伝学法によるウイルスの産生に細胞系の混合物が使用されるとき、最も効率的に遺伝子導入することのできる細胞系が、感染性インフルエンザウイルスの生成を担うものとみなされ、他の細胞系は、感染性ウイルスの増加に寄与する。インフルエンザvRNAの産生を可能にするプラスミドでは、ヒトRNA POL Iプロモーターが一般に使用されるので、ヒトおよびサル細胞が、逆遺伝学系において遺伝子導入される細胞系として使用するのに最も適当な細胞系である。しかし、イヌまたはニワトリ起源とするPOL Iプロモーターを、それぞれイヌまたは鳥細胞において使用することもできる(非特許文献22;非特許文献23)。一方、ウイルスタンパク質をコードするmRNAの産生を可能にするプラスミドは、通常、どんな真核細胞においても働き得るサイトメガロウイルス(CMV)またはβアクチンPOLIIプロモーターを含有している(非特許文献15;非特許文献19)。

0013

ほとんどの場合、上述の逆遺伝学系において、細胞は通常、遺伝子導入の直前に、血清含有培地で培養して、異なる細胞型活発な成長を確実にする。さらに、感染培地中に、ブタを起源とするトリプシンも使用して、感染後のウイルス増殖を維持する。十分なウイルスを得るために、最初の遺伝子導入工程の後に、卵または細胞での数回の増幅が必要となる場合もある。

0014

汎流行性A/H1N1(2009)ウイルスによって、インフルエンザAウイルスが集団の中で広まり得るスピードが実証され、逆遺伝学による再集合体産生を加速させる必要が明示された。すなわち、主な課題は、最小限の時間で多量の用量のワクチンが産生されて、理想的にはウイルスの拡散より速く、世界中に分配されるのを確実にすることである。

0015

クローン化に使用される従来の手法には、制限酵素が必要となる。しかし、制限部位は、多くの場合、vRNAに相補的な異なるインフルエンザcDNAに存在し、ベクター改変またはウイルスゲノム突然変異誘発の実行が必要となる。逆遺伝学目的で、vRNAに相補的なインフルエンザcDNAをクローン化するために、簡略化された組換え手法が以前に開発されている(非特許文献24;非特許文献25)。相同組換えには、2つのDNA分子間の同一DNA配列の領域における切断および再結合過程が伴い、その結果として遺伝物質の新たな組合せが生じる(非特許文献26)。以前に記載されているこうした組換えクローン化系は、ヒトPOLIプロモーターとターミネーターの間にインフルエンザA分節のコンセンサス5’(Uni13)および3’(Uni12)保存非コード末端を含む、25ヌクレオチド組換えカセットに基づく。こうした系は、任意のインフルエンザAゲノムの迅速かつ直接的なクローン化を可能にする。しかし、インフルエンザBゲノムのvRNA5’および3’非コード末端のヌクレオチド配列は、インフルエンザAウイルスと異なるので、インフルエンザBゲノムは、この組換えカセットに基づいてクローン化することができない。

0016

したがって、RNAウイルスゲノム、詳細には、インフルエンザA、B、およびCゲノムを、可能な限り速やかにかつ効率的にクローン化する万能な手法を開発することも求められている。

先行技術

0017

Rossmanら、2011、Virology、411(2):229〜236
Sridharanら、2010、J Biol Chem、285(11):7852〜7856
De Onaら、1995、J Clin Microbiol、33(7):1948〜1949
Gerdilら、2003、Vaccine、21(16):1776〜1779
Koudstaalら、2009、Vaccine、27(19):2588〜2593
Treeら、2001、Vaccine、19(25〜26):3444〜3450
Kistnerら、1998、Vaccine、16(9〜10):960〜968
Pauら、2001、Vaccine、19(17〜19):2716〜2721
Coussensら、2011、Vaccine、29(47):8661〜8668
Suzukiら、2011、Adv Exp Med Biol、705:443〜452
Nicolsonら、2005、Vaccine、23(22):2943〜2952
Iwatsuki−Horimotoら、2008、Virus Res、135(1):161−165
Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682
Jacksonら、2011、J Gen Virol、92(第1部):1〜17
Neumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350
Hoffmannら、2002、Vaccine、20(25〜26):3165〜3170
Neumannら、2005、Proc Natl Acad Sci USA、102(46):16825〜16829
Zhangら、2009、J Virol、83(18):9296〜9303
Schickliら、2001、Philos Trans R Soc Lond Biol Sci、356(1416):1965〜1973
Legasteloisら、2007、Influenza Other Respi Viruses、1(3):95〜104
Whiteleyら、2007、Influenza Other Respi Viruses、1(4):157〜166
Massinら、2005、J Virol、79(21):13811〜13816
Murakamiら、2008、82(3):1605〜1609
Stechら、2008、Nucleic Acid Res、36(21):e139
Wangら、2008、J Virol Methods、151(1):74〜78
Wattら、1985、Proc Natl Acad Sci、82:4768〜4772

発明が解決しようとする課題

0018

本発明の目的は、とりわけ、新たな循環インフルエンザウイルスが特定され、流行性または汎流行性インフルエンザの原因になり得るであろうとき、インフルエンザワクチンの産生を、最適化された安全な条件で推進および/または加速する、有用なツールおよび方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0019

この趣旨で、本発明の主題は、再集合体またはキメラウイルスを含めた、多様な(a large panel of)感染性A型およびB型ウイルス、詳細には、逆遺伝学によって生成されたウイルスを産生する新たな方法に関する。こうした方法によって、インフルエンザウイルスをより安全な条件で製造することがより容易になる。別の態様では、本発明は、逆遺伝学法の実施に有用なツールであることが証明された、A型またはB型ウイルスからのどの型のインフルエンザRNA断片のクローン化も可能にする、万能組換えベクターを提供する。

0020

定義
「プロモーター」または「プロモーター配列」とは、細胞中に存在するRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することのできるDNA調節領域である。本発明を定義する目的では、プロモーター配列は、その3’末端において、転写開始部位境界とし、上記バックグラウンドで検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数塩基または要素を含むように、上流(5’方向)に伸長する。プロモーター内配列には、転写開始部位(たとえば、ヌクレアーゼS1を用いたマッピングによって好都合に定義される)、ならびにRNAポリメラーゼへの結合を担うタンパク質結合ドメインコンセンサス配列)が見出される。プロモーターは、エンハンサーおよびリプレッサー配列を含む、他の発現制御配列と動作的に関連付けられる場合もある。たとえば、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター(ヒトRNA POLIプロモーター)は、ヒトRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターであり、鳥RNAポリメラーゼIプロモーターは、鳥RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターであり、またはT7ポリメラーゼプロモーターは、バクテリオファージT7のRNAポリメラーゼに結合するプロモーターである。

0021

用語「ベクター」、「クローニングベクター」、および「発現ベクター」とは、DNA(たとえば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入して、宿主を形質転換させ、導入された配列の発現(たとえば、転写および翻訳)が促進されるようにすることのできる媒体を意味する。ベクターには、プラスミド、ファージ組換えウイルスファージミドトランスポゾン、および人工染色体などが含まれ;これらについて、以下でより詳細に論述する。

0022

ベクターは、典型的には外来DNAが挿入されている、微生物のDNAを含む。DNAの一分節を別のDNA分節に挿入する一般的な手段には、DNAを制限部位と呼ばれる特定の部位(特定のヌクレオチド群)で切断(cleave)する、制限酵素と呼ばれる酵素の使用が伴う。一般に、外来DNAは、ベクターDNAの1つまたはそれ以上の制限部位において挿入され、次いで、ベクターによって、宿主細胞に、伝達性ベクターDNAと共に運搬される。発現ベクターなどの、挿入または加えられたDNAを有するDNAの分節または配列は、「DNA構築物」と呼ぶこともできる。一般的な型のベクターは、「プラスミド」であり、プラスミドは、一般に、付加的(外来)DNAを容易に受け入れることができ、適切な宿主細胞に容易に導入することのできる、通常は細菌起源である二本鎖DNA自己完結した分子である。プラスミドベクターは、多くの場合、コードDNAおよびプロモーターDNAを含有し、外来DNAの挿入に適する1つまたはそれ以上の制限部位と、通常は終結配列とを有する。コードDNAは、特定のタンパク質もしくは酵素の特定のアミノ酸配列またはウイルスのvRNA分節をコードしているDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始、調節、または別な形で媒介もしくは制御するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子からのものでも、または異なる遺伝子からのものでもよく、同じ生物または異なる生物いずれからのものでもよい。プラスミドおよび真菌ベクターを始めとする多数のベクターが、様々な真核生物および原核生物宿主における複製および/または発現について記載されている。非限定的な例として、pKKプラスミド(Clontech)、pUCプラスミド、pETプラスミド(Novagen,Inc.、Madison、WI)、pRSETもしくはpREPプラスミド(Invitrogen、San Diego、CA)、またはpMALプラスミド(New England Biolabs、Beverly、MA)、pVAX1プラスミド(Life technology、Cergy Pontoise、FR)および適当な多くの宿主細胞が挙げられ、本明細書で開示もしくは引用され、または別の形で関連業者に知られている方法を使用する。組換えクローニングベクターは、多くの場合、1つまたはそれ以上の複製系、宿主中での選択のための1つまたはそれ以上のマーカー、たとえば、抗生物質耐性、および1つまたはそれ以上の発現カセットを含む。組換えクローニングベクターは、Peubezら、2010、Microbial Cell Factories、9:65に記載の系などの、無抗生物質選択系を収容してもよい。

0023

本明細書で使用するとき、用語「プライマー」とは、オリゴヌクレオチドの機能を指す。プライマーは、典型的にはターゲット配列とのハイブリッド形成後にオリゴヌクレオチドを伸長させることによりターゲット配列を増幅するのに使用されるオリゴヌクレオチドである。

0024

「RNAポリメラーゼII」とは、真核生物において、DNAのmRNAまたはmRNA前駆体への転写を触媒する酵素を意味する。

0025

「RNAポリメラーゼI」とは、真核生物において、DNAのリボソームRNArRNA)またはrRNA前駆体への転写を触媒する酵素を意味する。

0026

用語「一方向性プラスミド」とは、1つの転写カセットだけを含有しているDNAプラスミドを意味し、転写カセットが、RNAポリメラーゼIに結合するポリメラーゼプロモーターを含有する場合、前記DNAのrRNAへの転写を可能にし、または転写カセットがRNAポリメラーゼIIに結合するポリメラーゼプロモーターを含有する場合、前記DNAのmRNAへの転写を可能にする。たとえば、このようなプラスミドとして、Neumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350、およびUS2009/0246830またはUS2011/0143424に記載のものが挙げられる。

0027

用語「双方向性プラスミド」とは、2つの転写カセットを含有しているDNAプラスミドを意味し、第1の転写カセットがRNAポリメラーゼIに結合するポリメラーゼプロモーターを含有し、第2の転写カセットがRNAポリメラーゼIIに結合するポリメラーゼプロモーターを含有しているので、前記DNAのrRNAおよびmRNAへの転写を可能にする。たとえば、このようなプラスミドとして、Hoffmanら、2000、PNAS、97(11):6108〜6113およびWO01/83794に記載のものが挙げられる。

0028

用語「インフルエンザウイルス」とは、オルトミクソウイルス科基準種を意味する。本発明によるインフルエンザウイルスは、上記したとおりである。

0029

本発明によるインフルエンザウイルスは、インフルエンザAまたはBウイルスであることが好ましい。インフルエンザAまたはBウイルスは、どの株のウイルスでもよい。詳細には、インフルエンザAウイルスは、H1N1、H2N2、H3N1、H3N2、H3N8、H5N1、H7N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、およびH10N7ウイルスからなる群から選択される。

0030

「季節性または汎流行性ウイルス」とは、ヒトなどの感染宿主から単離された、インフルエンザウイルスの臨床分離株を意味する。

0031

「感染性インフルエンザウイルス」とは、許容細胞に入って複製し得るインフルエンザウイルスを意味する。ウイルスが感染性であるかを決定する方法は、当業者によく知られている。たとえば、ウイルスが感染性であるかの決定は、TCID50検定を使用して実行することができる。TCID50は、許容細胞(MDCK細胞など)に対してサンプルの漸増希釈物を導入し、Spearman−Karber統計的方法を使用して、許容細胞の50%を感染させる終点希釈度を決定することにより、サンプル(たとえば、感染細胞培養上清または感染尿膜腔液)中の感染性ウイルスの量を評価する方法である。

0032

一部の実施形態では、前記感染性インフルエンザウイルスは、再集合体インフルエンザウイルスキメラインフルエンザウイルス、または弱毒インフルエンザウイルスでよい。好ましくは、前記感染性インフルエンザウイルスは、再集合体インフルエンザウイルスである。さらに好ましくは、前記感染性インフルエンザウイルスは、再集合体キメラインフルエンザウイルスである。

0033

「許容細胞」とは、インフルエンザウイルスが前記細胞に浸透し、新たな感染性ウイルスの産生まで、その完全な複製サイクルを実現するのを可能にする、細胞の意味である。高度許容細胞は、インフルエンザウイルスが盛んに複製し、多量の感染性ウイルスが産生される細胞である。

0034

用語「再集合体ウイルス」とは、少なくとも2種のドナーウイルスの遺伝物質を組み合わせた結果として得られる遺伝物質を含有しているウイルスを意味する。再集合体ウイルスをインフルエンザワクチンの調製に使用するとき、その遺伝物質は通常、少なくとも季節性または汎流行性ウイルスのHAおよびNA遺伝子を含有しているが、他の遺伝子(バックボーン遺伝子)は、インフルエンザワクチンの製造に使用する産生基質(孵化鶏卵の尿膜腔または許容細胞系など)において容易に成長し得る、および/またはヒトに対してより弱い病原体になるもしくは病原体でなくなり得るその能力を理由に選択された、他の1種または数種のドナーウイルスからのものである。バックボーン遺伝子の「提供者」として寄与するドナーウイルスの例としては、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)(A/PR/8/34)、B/Lee/40、および/またはB/パナマ/45/90ウイルスが挙げられる。

0035

用語「キメラウイルス」とは、キメラタンパク質をコードしているキメラ遺伝子を含有しているウイルスを意味する。「キメラ遺伝子および/またはタンパク質」とは、前記遺伝子またはタンパク質が、少なくとも2種の異なるドナーウイルスに由来する、少なくとも2部分の遺伝子または2部分のタンパク質を適宜組み合わせて得られたものであることを意味する。たとえば、インフルエンザウイルスAまたはB型の場合では、前記キメラ遺伝子および/またはタンパク質は、キメラHAおよび/またはキメラNA vRNAまたはタンパク質でよい。

0036

用語「弱毒ウイルス」とは、許容細胞中で複製するが、動物またはヒトにおいて複製し得る能力が一部または完全にさえ失われているウイルスを意味する。したがって、弱毒ウイルスの毒性は、ヒトおよび動物において強力に低減され、または完全に欠如さえしている。弱毒ウイルスによる感染と関連する臨床症状は、動物またはヒトにおいて低減され、または完全に不在でさえある。弱毒ウイルスの例は、当業界でよく知られている。弱毒ウイルスは、たとえば、野生型ウイルスから、(たとえば、異なる培養基質上、またはその最適複製温度より低い温度での)連続継代、組換えDNA技術部位特異的突然変異誘発遺伝子操作によって調製することができる。本発明において有用な弱毒ウイルスは、ワクチン接種された個体の大半において、副作用を生じない、または強度の弱い副作用しか生じないが、対象において防御免疫応答を誘発し得るその能力を保持することができる。

0037

用語「不活化ウイルス」とは、有意ないかなる程度にも、許容細胞に入って複製することが不能であるウイルスを意味する。ウイルスは、当業者によく知られているいくつかの手段によって不活化することができる。ウイルスを不活化する方法の例としては、遺伝子操作、化学的もしくは物理的処理、または放射線処理ホルムアルデヒドベータプロピオラクトン界面活性剤、典型的にはX線または紫外線放射の形での熱または電磁放射を含める)が挙げられる。本発明の枠内で、有用な不活化インフルエンザウイルスは、対象において防御免疫応答を誘発する能力を保持しているものである。

0038

用語「逆遺伝学」とは、感染性の再集合体ウイルスまたは弱毒ウイルスをその相補DNA(cDNA)から産生する分子法を意味する。こうした方法は、異なるインフルエンザウイルス間でvRNAを再集合させて再集合体インフルエンザウイルスを産生するのに非常に有利である。逆遺伝学法は、当業者によく知られている。逆遺伝学法は、上記したもの、たとえば、Neumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350;Neumannら、2005、Proc Natl Acad Sci USA、102(46):16825〜16829;Zhangら、2009、J Virol、83(18):9296〜9303;Massinら、2005、J Virol、79(21):13811〜13816;Murakamiら、2008、82(3):1605〜1609に記載のプラスミド;および/またはNeumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350;Neumannら、2005、Proc Natl Acad Sci USA、102(46):16825〜16829;Zhangら、2009、J Virol、83(18):9296〜9303;Massinら、2005、J Virol、79(21):13811〜13816;Murakamiら、2008、82(3):1605〜1609;Koudstaalら、2009、Vaccine、27(19):2588〜2593;Schickliら、2001、Philos Trans R Soc Lond Biol Sci、356(1416):1965〜1973;Nicolsonら、2005、Vaccine、23(22):2943〜2952;Legasteloisら、2007、Influenza Other Respi Viruses、1(3):95〜104;Whiteleyら、2007、Influenza Other Respi Viruses、1(4):157〜166に記載の細胞を使用する方法でよい。

0039

好ましくは、前記方法は、次のものでよい:
(i)16プラスミド法、たとえば、ポリアミン誘導体(Trans IT−LT1)を使用して、RNAポリメラーゼIプロモーターおよびRNAポリメラーゼIターミネーターの制御下にある、1つのインフルエンザvRNAに相補的なcDNAをそれぞれが含有している8つのプラスミドと、RNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下にある、PA、PB1、PB2、NP、HA、NA、M、およびNSmRNAの1つに相補的なcDNAをそれぞれが含有している8つのプラスミドとを細胞に遺伝子導入することによってインフルエンザウイルスを産生する、Neumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350、およびUS2009/0246830またはUS2011/0143424に記載の方法。詳細には、細胞は、ヒト腎胚性接着細胞(293T細胞系)である;
(ii)12プラスミド法、たとえば、第1の細胞型に、RNAポリメラーゼIプロモーターおよびRNAポリメラーゼIターミネーター(肝炎デルタリボザイム)の制御下にある、1つのインフルエンザvRNAに相補的なcDNAをそれぞれが含有している8つのプラスミドと、RNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下にある、NP、PA、PB1、およびPB2 mRNAの1つに相補的なcDNAをそれぞれが含有している4つのプラスミドとを遺伝子導入し、第2の細胞型においてウイルスをさらに増幅することによってインフルエンザウイルスを産生する、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682、およびUS2004/0142003、US2012/0058538に記載の方法。詳細には、前記第1の細胞型は、Vero細胞であり、前記第2の細胞型は、MDBKである;
(iii)13プラスミド法、たとえば、T7RNAポリメラーゼプロモーターおよびT7 RNAポリメラーゼターミネーターの制御下にある、1つのインフルエンザvRNAに相補的なcDNAをそれぞれが含有している8つのプラスミドと、RNAポリメラーゼIIの制御下にある、NP、PA、PB1、およびPB2 mRNAsの1つに相補的なcDNAをそれぞれが含有している4つのプラスミドと、RNAポリメラーゼIIの制御下にある、T7 RNAポリメラーゼおよび核局在化シグナルをコードしているmRNAに相補的なcDNAを含有している1つのプラスミドとを細胞に遺伝子導入することによってインフルエンザウイルスを産生する、De Witら、2007、Journal of General Virology、88:1281〜1287に記載の方法。詳細には、遺伝子導入細胞は、Vero、293T、またはQT6(ウズラからの線維肉腫細胞系)細胞である。
(iv)8プラスミド法、たとえば、各プラスミドによって、mRNAおよびvRNAの両方が発現し得る、Hoffmannら、2000、PNAS、97(11):6108〜6113およびWO01/83794に記載の方法。すなわち、各プラスミドは、1つのインフルエンザvRNAに相補的なcDNA、および前述の場合のような1つに代えて、2つの転写カセットを含有している。8つのインフルエンザウイルスvRNAのそれぞれに相補的なcDNAが、ポリメラーゼIターミネーターとポリメラーゼIプロモーターの間に挿入されている。このポリメラーゼI転写単位には、ポリメラーゼIIプロモーターおよびポリアデニル化シグナルが隣接している。第1の転写カセットによって、cDNAのvRNAの形での転写が可能になる。第2の転写カセットによって、cDNAのmRNAの形での転写が可能になり、次いでmRNAは、細胞機構を使用してウイルスタンパク質に翻訳される。PolI−PolII系とも呼ばれる、この二重カセット系が転写に活用されて、同じプラスミドのcDNAが、vRNAの形とmRNAの形の両方で転写される。cDNAは、遺伝子導入細胞のレベルで、vRNAおよび1つまたはそれ以上のウイルスタンパク質の発現によって顕在化する。詳細には、接着性MDCK細胞および293T細胞の共培養、ならびに遺伝子導入剤として、ポリアミン誘導体(Trans IT−LT1)を使用する。
(v)3プラスミド法、たとえば、それぞれRNAポリメラーゼIプロモーターおよびポリメラーゼIターミネーターの制御下にある、PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M、およびNS vRNAに相補的な8つのcDNAを含有している1つのプラスミドと、第1のものがPB2、PB1、およびPA mRNAのいずれか1つに相補的な3つのcDNAを含有しており、第2のものがNP mRNAに相補的なcDNAを含有している、RNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下にある2つのプラスミドとを細胞に遺伝子導入することによってインフルエンザウイルスを産生する、Neumannら、2005、PNAS、102(46):16825〜16829に記載の方法。詳細には、遺伝子導入細胞は、293TまたはVeroである。
(vi)1プラスミド法、たとえば、ネズミポリメラーゼIターミネーターおよびニワトリRNAポリメラーゼIプロモーターの制御下にある、PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M、およびNS vRNAに相補的な8つのcDNAを含有しており、PB2、PB1、PA、およびNP cDNAの間にポリメラーゼIIプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを有する、1つのプラスミドを細胞に遺伝子導入することによってインフルエンザウイルスを産生する、Zhangら、J.Virol.、83(18):9296〜9303に記載の方法。詳細には、遺伝子導入細胞は、CEF細胞である。
(vii)異なる2種の細胞系を使用するWO2005/062820に記載の方法:第1の工程において、PolI−PolII系(PoI/PoII)を有する8つの双方向性プラスミドを細胞に遺伝子導入し、次いで第2の工程において、インフルエンザウイルスの産生を増幅するために、遺伝子導入細胞を、インフルエンザウイルスに対して非常に許容性である別の細胞系からの細胞と共に培養する。詳細には、第1の工程における前記遺伝子導入細胞は、Vero細胞であり、第2の工程における前記他の細胞系は、ニワトリ胚細胞由来系統であるCEKまたはCEF細胞系である。

0040

インフルエンザウイルスタンパク質」とは、A型インフルエンザについては、PB1、PB2、PA、HA、NP、NA、M1、M2、NS1、およびNS2/NEPタンパク質、B型インフルエンザについては、PB1、PB2、PA、HA、NP、NA、NB、M1、BM2、NS1、およびNS2/NEPタンパク質、またはC型インフルエンザについては、PB1、PB2、PA、HEF、NP、M1、M1’、CM2、NS1、およびNS2/NEPを意味する。

0041

「リボ核タンパク質複合体の形成に必要なインフルエンザウイルスタンパク質」とは、A、B、またはC型インフルエンザウイルスについて、タンパク質PA、PB1、PB2、およびNPを意味する。

0042

「vRNA」とは、リボ核タンパク質複合体に封入されている、インフルエンザウイルスのマイナスセンスウイルスRNAを意味する。インフルエンザウイルスがA型またはB型であるとき、前記vRNAは、PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M、およびNS vRNAである。インフルエンザウイルスがC型であるとき、前記vRNAは、PB1、PB2、PA、HEF、NP、M、およびNS vRNAである。

0043

「cRNA」とは、vRNAに相補的である、プラスセンスRNA中間体を意味する。一度核に入ると、入ってくるマイナスセンスウイルスRNA(vRNA)は、プライマー依存的な機序によって、メッセンジャーRNA(mRNA)へと転写される。こうしたmRNA産物は、vRNA鋳型不完全複製物であり、vRNAとは異なり、キャッピングおよびポリアデニル化されている。複製は、2工程の過程を経て生じる。相補RNA(cRNA)と呼ばれる、RNAの全長プラスセンス複製物がまず作製され、次には鋳型として使用されて、より多くのvRNAを産生する。

0044

組換えカセット、ベクター、およびこれらの使用
本発明の意図は、マイナス一本鎖RNAウイルスのvRNAに相補的なcDNAを発現ベクターにクローン化するのに使用することのできる新規の組換えカセットを提供することである。すなわち、前記組換えカセットは、A型およびB型インフルエンザウイルスのvRNAに相補的なcDNAをクローン化するのに特に有用である。

0045

したがって、本発明は、センス鎖の5’から3’に、
認識配列の外側に切断部位(cutting site)を有し、粘着末端を生じる、第1の制限酵素の逆方向相補的認識配列(inverted complementary recognition sequence);
− 認識配列の内側に切断部位を有する第2の制限酵素の制限部位;
− 認識配列の内側に切断部位を有する第3の制限酵素の制限部位;および
− 認識配列の外側に切断部位を有し、粘着末端を生じる、前記第1の制限酵素の認識配列
を含み、またはこれらからなり、
前記第2と第3の制限酵素は異なる、組換えカセットに関する。

0046

「制限酵素」とは、認識部位に結合し、次いで、その認識配列に対して一定の場所でDNA鎖を切断するエンドヌクレアーゼを意味する(II型制限酵素)。「認識配列」とは、制限酵素がDNAバックボーンを切る前に結合する特定のヌクレオチド配列である。認識配列は、一般に、長さが4〜8塩基対であり、多くの場合、回文構造である−すなわち、5’−3’方向に読むとき、後からでも前からでも同じに読め、認識配列は、多くの場合、DNAの両方の鎖で同じである。「切断部位」とは、制限酵素によって切られる特定のヌクレオチド配列である。一部の場合では、切断点は、回文構造の制限部位の対称軸上に正確に存在して、平滑末端を有する産物を与える。一部の制限ヌクレアーゼは、「付着末端」または「粘着末端」として知られる、各断片の2つの末端に短い一本鎖の尾部が残る、ずれのある切れ目を生じる。

0047

認識配列に対する切断の場所は、酵素に応じて決まる。たとえば、SapIまたはBbsI酵素(IIS型制限酵素)について、切断部位は、認識配列の外側である:

0048

本明細書で使用するとき、「制限部位」は、好ましくは、制限酵素の認識配列からなり、かつ前記酵素の切断部位を含有している、ヌクレオチド配列を意味する。

0049

一部の実施形態では、認識配列の外側に切断部位を有する前記第1の制限酵素は、BbsI、SapI、AceIII、BsaI、またはBsmB1でよい。

0050

好ましくは、前記第1の制限酵素は、BbsIまたはSapIである。したがって、第1の制限酵素がBbsIであるとき、前記逆方向相補的認識配列は、配列5’−GTTTC−3’からなり、前記BbsI認識配列は、配列5’−GAAGAC−3’からなる。第1の制限酵素がSapIであるとき、前記逆方向相補的認識配列は、配列5’−GAAGAGC−3’からなり、前記SapI認識配列は、配列5’−GCTCTTC−3’からなる。

0051

第2および第3の制限部位がウイルスゲノム中に存在するリスクを最小限に抑えるために、前記制限部位は、長いヌクレオチド配列を有することが好ましい。一部の実施形態では、前記第2および第3の制限酵素の制限部位は、少なくとも、または正確に、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド長である。好ましくは、前記第2および第3の制限酵素の制限部位は、少なくとも、または正確に、7または8ヌクレオチド長である。

0052

一部の実施形態では、前記第2および第3の制限酵素は、NotIおよびSbfIからなる群から選択される。さらに好ましくは、前記第2の制限酵素は、NotIであり、前記第3の制限酵素は、SbfIである。

0053

したがって、第2または第3の制限酵素の制限部位は、配列5’−GCGGCCGC−3’または配列5’−CCTGCAGG−3’からなるものでよい。好ましくは、第2の制限酵素の制限部位は、配列5’−GCGGCCGC−3’からなり、第3の制限酵素の制限部位は、配列5’−CCTGCAGG−3’からなる。

0054

組換えカセットは、第1の制限酵素の前記逆方向相補的認識配列と第2の制限酵素の前記制限部位の間;および/または第2の制限酵素の前記制限部位と第3の制限酵素の前記制限部位の間に、追加ヌクレオチドを含んでもよい。一部の実施形態では、前記追加ヌクレオチドは、1本の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30ヌクレオチドからなるものでよい。一部の実施形態では、前記追加ヌクレオチドは、1本の多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30ヌクレオチドからなる。

0055

したがって、前記組換えカセットは、少なくとも、または正確に、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120ヌクレオチド長である。好ましくは、前記組換えカセットは、少なくとも、または正確に、28または30ヌクレオチド長である。

0056

好ましくは、前記組換えカセットは、配列5’−GTCTTCGCGGCCGCCCTGCAGGGAAGAC−3’(配列番号:2)からなる。

0057

前記組換えカセットは、二本鎖核酸であり、上記した配列は、核酸のコード鎖に対応することを理解する必要がある。

0058

本発明はまた、センス鎖の5’から3’に、
−RNAポリメラーゼIまたはT7 RNAポリメラーゼに結合するプロモーター、
− 本発明による組換えカセット、
ターミネーター配列
を含み、
− プロモーターがRNAポリメラーゼIに結合するとき、前記ターミネーター配列は、肝炎デルタリボザイム配列であり、
− プロモーターがT7 RNAポリメラーゼに結合するとき、前記ターミネーター配列は、T7ポリメラーゼターミネーター配列である
と理解される、ベクターに関する。

0059

「ターミネーター配列」とは、転写のためのDNA上の遺伝子またはオペロンの末端の印となる配列を意味する。前記肝炎デルタリボザイム配列は、配列番号:3の配列を含む、またはそれからなる。前記T7ポリメラーゼターミネーター配列は、配列番号:4の配列を含む、またはそれからなる。

0060

一部の実施形態では、前記プロモーターは、げっ歯類RNAポリメラーゼIまたはヒトRNAポリメラーゼIに結合する。好ましくは、前記プロモーターは、マウスまたはハムスターRNAポリメラーゼIに結合する。

0061

一部の実施形態では、げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合する前記プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7の配列を含む、またはそれからなる。

0062

一部の実施形態では、ヒトRNAポリメラーゼIに結合する前記プロモーターは、配列番号:8の配列を含む、またはそれからなる。

0063

好ましくは、前記ベクターは、センス鎖の5’から3’に、
− ヒトRNAポリメラーゼIに結合するプロモーター、
− 配列番号:2の配列の組換えカセット、
− 配列番号:3の配列の肝炎デルタリボザイム配列
を含む。

0064

より好ましくは、前記ベクターは、配列番号:1の配列を含む。

0065

さらに好ましくは、前記ベクターは、センス鎖の5’から3’に、
−げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーター、
− 配列番号:2の配列の組換えカセット、
− 配列番号:3の配列の肝炎デルタリボザイム配列
を含む。

0066

さらに好ましくは、前記ベクターは、センス鎖の5’から3’に、
− 配列番号:9の配列のT7ポリメラーゼに結合するプロモーター、
− 配列番号:2の配列の組換えカセット、
− 配列番号:4の配列のT7ポリメラーゼターミネーター
を含む。

0067

本発明によるベクターにおいて、前記組換えカセットには、RNAポリメラーゼIまたはT7RNAポリメラーゼに結合するプロモーターが先行し、ターミネーター配列が直後に続く。

0068

一部の実施形態では、前記ベクターは、カナマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子も含んでよい。したがって、前記ベクターは、配列番号:10の配列を含む、またはそれからなり、すなわち、前記ベクターは、いわゆる万能pSP−fluプラスミドである。

0069

一部の実施形態では、本発明によるベクターは、いかなる抗生物質耐性遺伝子も含まないが、Peubezら、2010、Microbial Cell Factories、9:65に記載の系などの無抗生物質選択系を含む。

0070

本発明によるベクターは、マイナス一本鎖RNAウイルス、特に、感染性マイナス一本鎖RNAウイルスを逆遺伝学によって産生する方法において使用することができる。詳細には、前記ベクターは、vRNAに相補的なcDNAに使用することができる。

0071

たとえば、前記マイナス一本鎖RNAウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどのアレナウイルス科;インフルエンザウイルス、イサウイルス、ソゴトウイルスなどのオルトミクソウイルス科;麻疹ウイルスムンプスウイルス呼吸器合胞体ウイルス牛疫ウイルスイヌジステンパーウイルスなどのパラミクソウイルス科カリフォルニア脳炎ウイルスやハンタウイルスなどのブニヤウイルス科狂犬病ウイルスなどのラブドウイルス科エボラウイルスマールブルグウイルスなどのフィロウイルス科ボルナ病ウイルスなどのボルナウイルス科のウイルスでよい。

0072

好ましくは、前記マイナス一本鎖RNAウイルスは、再集合体ウイルスおよび/またはキメラウイルスでよい。これらのウイルスを、弱毒ウイルスまたは不活化ウイルスにすることもできる。

0073

特に好ましい実施形態では、前記マイナス一本鎖RNAウイルスは、インフルエンザウイルスである。

0074

逆遺伝学によってマイナス一本鎖RNAウイルスを産生する方法は、当業者によく知られている。たとえば、前記方法は、Pattnaikら、1992、Cell、69(6):1011〜1020に記載のとおりのVSVウイルス;Schnellら、1994、EMBO J、13(18):4195〜4203に記載のとおりの狂犬病ウイルス;Radeckeら、1995、EMBO J、14(23):5773〜5784に記載のとおりの麻疹ウイルス;Garcinら、1995、EMBO J、14(24):6087〜6094に記載のとおりのセンダイウイルス;HoffmanおよびBanerjee、1997、J Virol、71(6):4272〜4277ならびにDurbinら、1997、Virology、235(2):323〜332に記載のとおりのパラインフルエンザ3型ウイルス;Heら、1997、Virology、237(2):249〜260に記載のとおりのSV5ウイルス;BaronおよびBarrett、1997、J Virol、71(2):1265〜1271に記載のとおりの牛疫ウイルス;Jinら、1998、Virology、251(1):206〜014に記載のとおりのRSVウイルス;Peetersら、1999、J Virol、73(6):5001〜5009に記載のとおりのニューカッスルウイルス;Neumannら、2002、J Virol、76(1):406〜410に記載のとおりのエボラウイルス;Kawanoら、2001、Virology、284(1):99〜112に記載のとおりのパラインフルエンザ2型ウイルス;Herfstら、2004、J Virol、78(15):8264〜8270に記載のとおりのメタニューモウイルス;BridgenおよびElliott、1996、Proc Natl Acad Sci USA、93(26):15400〜15404に記載のとおりのブニヤムウェラウイルスの産生方法である。

0075

好ましくは、逆遺伝学によってマイナス一本鎖RNAウイルスを産生する前記方法は、上記したとおり、インフルエンザウイルスを産生する方法である。より好ましくは、インフルエンザウイルスを産生する前記方法は、Neumanら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350、US2009/0246830、US2011/0143424、Hoffmannら、2002、Vaccine、20(25〜26):3165〜3170、WO01/83794、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682、US2004/0142003、US2012/0058538、De Witら、2007、Journal of General Virology、88:1281〜1287、WO2005/062820に記載の方法、または本発明による方法でよい。本発明による方法において前記ベクターを使用することがさらに好ましい。

0076

本発明によるベクターは、vRNAウイルスに相補的なcDNAを1つまたはそれ以上の前記ベクターにクローン化した後に、前記方法において使用することができる。

0077

クローン化戦略
本発明の文脈において、クローン化戦略には、本発明によるベクターと、クローン化されるcDNA配列間での相同組換えが必要となる。

0078

したがって、本発明は、RNAウイルスのvRNAに相補的なcDNAをクローン化する方法であって、
(i)本発明によるベクターのプロモーター配列からのヌクレオチドを含有している順方向プライマー、および本発明によるベクターのターミネーターからのヌクレオチドを含有している逆方向プライマーを使用しての、ウイルスのウイルスRNAのRTPCR逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)によって、RNAウイルスのvRNAに相補的なcDNAを産生する工程、
(ii)組換えカセットの第1の制限酵素を使用して、本発明によるベクターを直線化する工程、
(iii)工程(i)で得たcDNAと、工程(ii)で得た直線化されたベクターとを、前記cDNAと前記ベクター間の相同組換えが可能になる条件で接触させる工程
を含む方法をさらに提供する。

0079

工程(i)において、逆転写は、当業者によく知られている方法によって実行することができる。逆転写は、実施例の第1.8節に記載のとおりに実行することが好ましい。

0080

一部の実施形態では、前記逆方向プライマーは、その5’側に、本発明によるベクターのターミネーター配列からの少なくとも17ヌクレオチドを含む。好ましくは、前記逆方向プライマーは、その5’側に、肝炎デルタリボザイム配列からの少なくとも17ヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、逆方向プライマーは、その5’側に、配列5’−CTGGGACCTGCCGGCC−3’(配列番号:11)を含む。前記逆方向プライマーは、ターミネーター配列からのヌクレオチドに対して3’に、逆転写されるvRNAに相補的なヌクレオチドをさらに含む。

0081

一部の実施形態では、前記順方向プライマーは、その5’側に、本発明によるベクターのプロモーター配列からの少なくとも17ヌクレオチドを含む。好ましくは、前記順方向プライマーは、その5’側に、ヒトRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターからの少なくとも17ヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、前記順方向プライマーは、その5’側に、配列5’−TGGGCCGCCGGGTTATT−3’(配列番号:12)を含む。前記順方向プライマーは、プロモーター配列からのヌクレオチドに対して3’に、逆転写されるvRNAに相補的なヌクレオチドをさらに含む。

0082

工程(ii)は、当業者によく知られている方法によって実行することができる。工程(ii)は、実施例の第1.8節に記載のとおりに実行することが好ましい。

0083

工程(iii)は、当業者によく知られている方法によって実行することができる。工程(iii)は、実施例の第1.8節に記載のとおりに実行することが好ましい。

0084

工程(ii)において前記順方向および逆方向プライマーを使用しているために、得られるcDNAは、センス鎖の5’から3’に、ヒトポメラーゼIに結合するプロモーターからのヌクレオチド配列、ウイルスのvRNAをコードしているcDNA、および肝炎デルタリボザイム配列からのヌクレオチド配列を含む。したがって、工程(iii)において、工程(i)で得られたcDNAは、本発明によるベクターにアンチセンスでクローン化される。

0085

一部の実施形態では、前記クローン化戦略は、工程(i)で得られたcDNAを含有していないベクターを排除することからなる工程(iv)をさらに含む。工程(iv)は、工程(iii)において、得られたcDNAと接触させてあるベクターを、「組換えカセット、ベクター、および使用」の節に記載の第2および第3の制限酵素で消化することによって、たとえば、組換えカセットにNotIおよびSbfI制限部位を含めた場合、適当な条件でNotIおよびSbfI酵素を使用することによって、実行することができる。前記の適当な条件は、当業者によく知られている。

0086

本発明によるベクターの特色のおかげで、このクローン化戦略を実施して、A型ならびにB型インフルエンザウイルスからのvRNAに相補的なcDNAを挿入することができる。本発明によるベクターは、A型とB型両方のインフルエンザウイルスからのvRNAに相補的なcDNAのクローン化を可能にするので、先行技術より改良されたツールとなる。

0087

感染性インフルエンザウイルスの産生方法
高い収量のインフルエンザ産生を維持するために、細胞は、その表面上にSia2−6GalまたはSia2−3Gal受容体を発現させなければならない。CHO−K1細胞は、Sia2−6Gal受容体を発現させず、Sia2−3Gal受容体を不十分にしか発現させないが(細胞の30%で発現される)、意外にも、分子生物学によって、特に、適当な一式の発現ベクターによって逆遺伝学法により生成されたインフルエンザウイルスの産生には、CHO細胞系のサブクローンであるCHO−K1細胞系が、非常に効率のよい細胞系であることが見出された。

0088

したがって、本発明は、感染性インフルエンザウイルスを生成し得る一式の発現ベクターを使用する逆遺伝学によって得た感染性インフルエンザウイルスのシードでCHO細胞を感染させることによりウイルスの増殖(増幅)を実現させることによる、感染性インフルエンザウイルスの産生方法に関するものであり、したがって、感染性インフルエンザウイルスの産生方法は、細胞に前記の一式の発現ベクターを遺伝子導入することによる予備的な工程を含む。遺伝子導入細胞を含有している培地の上清は、感染性となり、収穫し、感染性シードとして使用して、別々の集団のCHO細胞を感染させることができる。別法として、遺伝子導入工程後、遺伝子導入細胞にCHO細胞をその場で加えて、インフルエンザウイルスの増殖を可能にすることもできる。

0089

したがって、本発明の主題は、
a)細胞に一式の発現ベクターを遺伝子導入して、感染性インフルエンザウイルスのシードを生成する工程、
b)CHO細胞を感染性インフルエンザウイルスの前記シードで感染させる工程
を含む、またはこれらからなる、感染性インフルエンザウイルスの産生方法(「逆遺伝学法」)である。

0090

本発明による方法において、感染性インフルエンザウイルスのシードは、前記感染性ウイルスを生成し得る一式の発現ベクターを細胞に遺伝子導入することにより得る。

0091

通常、CHO細胞を感染させる工程b)は、前記感染性ウイルスを生成し得る一式の発現ベクターを遺伝子導入した細胞(「遺伝子導入細胞」)にCHO細胞を加え、それによって、生成された感染性ウイルスの増殖を可能にすることにより実行する。CHO細胞を感染させる工程b)は、工程a)で生成した感染性インフルエンザウイルスのシードをCHO細胞に加えることによっても実行することができるはずである。

0092

感染性インフルエンザウイルスの前記シードによるCHO細胞の感染が、感染性インフルエンザウイルスの増殖を可能にする、当業者によく知られている培養条件下で行われることは、十分に理解される。感染性インフルエンザウイルスの増殖は、CHO細胞集団または他のいずれかの高度許容細胞集団を連続して感染させる、または孵化鶏卵の尿膜腔を感染させることにより、さらに増幅させることができる。

0093

感染性インフルエンザウイルスの産生は、当業者によく知られている条件で、CHO細胞を感染性インフルエンザウイルスの前記シードでex vivoまたはin vitro感染させることにより実現される。たとえば、前記感染は、32℃〜38℃、またはより普通には34℃〜37℃の間を含む温度にて、5%〜10%CO2で実行することができる。特定の例として、感染は、約35℃にて約8%CO2で実施することができる。一般に、トリプシン、またはセリンプロテアーゼ活性を有する酵素を培地に加えて、ウイルスが細胞に入って複製するのを可能にし、CHO細胞を介したインフルエンザウイルスの伝播を確実にする。

0094

特に好ましい実施形態では、感染性インフルエンザウイルスのシードによるCHO細胞の感染は、無血清培地である感染培地において実行する。感染性インフルエンザウイルスを産生する前記方法は、完全に血清不在で実行することが好ましい。

0095

本発明による方法は、ヘルパーウイルス不在で実施することが好ましいが、これは、適当な一式の発現ベクターのみの使用で、逆遺伝学による感染性インフルエンザウイルスの生成を可能にするのに十分であるという意味である。

0096

使用する発現ベクターの構造上の特色に従って、遺伝子導入工程に使用する細胞または細胞系は、CHO細胞系、CHO細胞系と別の細胞系の混合物、またはCHO細胞系でない細胞系を含む、またはそれからなるものでよい。

0097

本発明による方法が、ヒトRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にあるvRNA産生のためのプラスミドを含む一式の発現ベクターを使用する逆遺伝学によって実施されるとき、遺伝子導入に使用する細胞は、霊長類起源の細胞、または好ましくは、霊長類起源の細胞とCHO細胞の混合物であることが好ましい。霊長類起源の細胞は、たとえば、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293T細胞、またはVero細胞でよい。典型的には、遺伝子導入に使用する細胞は、Vero細胞、または好ましくは、Vero細胞とCHO細胞の混合物である。

0098

同じように、RNA産生のためのプラスミドが、イヌまたは鳥RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターを含有しているとき(Massinら、2005、J Virol、79(21):13811〜13816;Murakamiら、2008、82(3):1605〜1609)、遺伝子導入に使用する細胞は、それぞれ、MDCK細胞などのイヌ起源の細胞(もしくは好ましくは、イヌ起源の細胞とCHO細胞の混合物)またはCEF細胞やCEP細胞などのニワトリ細胞(もしくは好ましくは、ニワトリ起源の細胞とCHO細胞の混合物)であることが好ましい。

0099

最後に、vRNA産生のためのプラスミドが、ハムスターまたはマウスRNAポリメラーゼIなどのげっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターを含有しているとき、遺伝子導入工程は、CHO細胞だけを使用して実施することができる。その場合では、CHO細胞は、遺伝子導入および感染の両方の工程に使用される唯一の型の細胞である。したがって、適当な一式の発現ベクターからの感染性インフルエンザウイルスの産生に、CHO細胞の使用だけが含まれていればよく、これにより、インフルエンザウイルス産生工程が簡略化される。1種の細胞系だけしか培養する必要がない。

0100

別法として、De Witら、2007、J.Gen.Virol、88(第4部):1284〜1287に記載されているように、適当な一式の発現ベクターが、T7ポリメラーゼプロモーターの制御下にあるvRNA産生のためのプラスミドと、T7ポリメラーゼをコードしている追加のタンパク質発現プラスミドとを含むときも、CHO細胞は、遺伝子導入および感染の両方の工程に使用され、感染性インフルエンザウイルスの産生を確実にする、唯一の型の細胞とすることができる。

0101

一部の実施形態では、遺伝子導入に使用する細胞(たとえば、CHO細胞またはVero細胞とCHO細胞の混合物)は、インフルエンザPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質を安定して発現させる組換え細胞にすることができ、組換え細胞に組み入れる一式のベクターは、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAを発現し得る一式の発現ベクターである。

0102

したがって、一部の実施形態では、工程a)における前記細胞は、Vero細胞またはVero細胞とCHO細胞の混合物を含む、またはそれからなる。

0103

一部の実施形態では、工程a)における前記細胞はまた、CHO細胞を含む、またはそれからなる。

0104

本発明により使用する細胞系は、CHO細胞系である。CHO細胞系は、工業用タンパク質産生に一般に使用され、多くのCHO細胞系が当業者に知られている。たとえば、そのようなCHO細胞系として、たとえば、ATCCカタログにおいてCCL−61またはCCL−9618の番号で入手可能なCHO−K1細胞系、CHODP−12細胞系(ATCC番号:CRL−12444および12445)、およびCHO1−15細胞系(ATCC番号CRL−9606)が挙げられる。一実施形態によれば、本発明の目的で使用する細胞系は、その表面にSia2−6Gal受容体を発現させないが、Sia2−3Gal受容体を不十分に発現させる結果、50%未満の細胞集団が、ジゴキシゲニン標識イヌエンジュアグルチニンの存在下で蛍光性となる、CHO細胞系である。本発明の目的で使用する細胞系は、CHO−K1細胞系、詳細には、ATCCにおいてCCL−61の番号で参照される細胞系であることが好ましい。さらに好ましくは、CHO−K1細胞系、たとえば、ATCCにおいてCCL−61の番号で参照されるCHO−K1細胞系は、細胞の懸濁液の形である。たとえば、そのような細胞の懸濁液は、細胞系を無血清培地で培養して得ることができる。

0105

本発明による方法を実施するのに霊長類細胞系をCHO細胞系と組み合わせて使用するとき、ATCCカタログにおいてCCL−81、CRL−1586、CRL−1587、またはCCL−81.5の番号で入手可能なVero細胞系は、規制当局に承認されて久しいので、好ましい。好ましい293−T細胞系としては、ATCCカタログにおいてCRL−11268の番号で入手可能な系統が挙げられる。

0106

CHOおよび遺伝子導入細胞、詳細にはVero細胞は、GLP優良試験所基準)/GMP優良医薬品製造基準)の規制または国家の管理当局の要件に従って培養することが好ましい。たとえば、前記細胞は、履歴記録、すなわち、細胞の起源、その開発方法、産生のためのin vitro培養年数制限の情報によって特定することができる。前記細胞は、培養可能な細菌、マイコプラズマ、真菌、内在性ウイルスを含まないものにすることもできる。ワクチン生産のための細胞培養および細胞培養を支えるために使用する材料についての検討事項に関する手引きは、who expert committee on biological standardization、第47次報告、requirements for the use of animal cells as in vitro substrates for the production of biologicals(WHO technical report series、1998、878:19〜52)、the characterization and qualification of cell substrates andotherbiological materials used in the production of viral vaccines for infectious disease indications(US department of health and human services food and drug administration center for biologics evaluation and research[2010年2月])、欧州薬局方、第5版の第5.2.3節、または欧州医薬刊行のnote for guidance on quality of biotechnological products:derivation and characterisation of cell substrates used for production of biotechnological/biological products(cpmp/ich/294/95)において見ることができる。

0107

CHOおよび遺伝子導入細胞、詳細にはVero細胞は、無血清培地および/または無動成分条件での培養に順応させることが好ましい。

0108

無血清培地での培養に対する細胞の順応は、細胞が無血清培地で首尾よく生存し、増殖し得るまで、漸減する血清量を含有した培地で漸進性に細胞を継代することにより、当業者の手で容易に実現することができる。

0109

Vero細胞またはVero細胞とCHO細胞の混合物を遺伝子導入に使用するとき、接着性であるVero細胞は、遺伝子導入の前に、たとえばトリプシンでの処理によって、その支持体から引き離して、遺伝子導入の効能を向上させることが好ましい。したがって、遺伝子導入は、細胞の懸濁液に対して実行することが好ましい。しかし、細胞は、方法の過程で接着性になることもある。別法として、その主題が参照により本明細書に組み入れられるUS2009/0203112に記載されているような、懸濁液中での成長に順応させたVero細胞系を使用してもよい。

0110

本発明による方法の枠内で、遺伝子導入は、当業者に知られているどんな方法によって実行してもよい。たとえば、遺伝子導入は、膜電気穿孔、核電気穿孔によって実行することができる。遺伝子導入(工程a))は、核電気穿孔によって実行することが好ましい。表現「核電気穿孔」とは、その強度が核孔の数および/またはその透過性を増大させるのに十分である1回またはそれ以上の電気ショックによって、核酸を遺伝子導入する方法を意味すると理解される。一般に、電気ショックの合計強度は、少なくとも2kV/cmであり、ショックの合計継続時間は、少なくとも10μsである。懸濁液中での細胞の核電気穿孔は、その合計強度が少なくとも2kV/cmであり、ショックの合計継続時間が少なくとも10μsである、1回またはそれ以上の電気ショックによって実行する。ショックの合計強度が2〜10kV/cmの間であり、ショックの合計継続時間が10〜1000μsの間であることが好ましい。ショックの強度が2〜6kV/cmの間であり、ショックの合計継続時間が100〜600μsの間であることがさらにより好ましい。1つまたはそれ以上の休止期間によって中断されたいくつかの電気ショックを細胞に送達することが好ましい。その主題が参照により本明細書に組み入れられるUS2007/0059834は、細胞に電気ショックを与えた後に休止期間を置く実際的な方式を記載している。電気ショックに続いて、強度が2.5Aを越えない電流を、1〜50msの間の期間、細胞に適用することも可能である。典型的には、遺伝子導入工程は、実施例の第1.9.節に詳述するとおりに実行し、すなわち、遺伝子導入は、U−023プログラムを使用する、Lonzaが市販するnucleofectorなどの、nucleofectorを使用して実行する。

0111

遺伝子導入溶液は、細胞が電気ショックから防御されるように、また発現ベクターの核の方への拡散が妨げられないように選択する。その主題が参照により本明細書に組み入れられるUS2005/0064596は、最適化された遺伝子導入溶液を記載している。そうした溶液は、その緩衝能が少なくとも20mM pH−1であり、25℃の温度および7〜8の範囲のpH変動にさらしたとき、イオン強度が少なくとも200mMである配合物である。こうした配合物中のNa+およびK+のモル濃度は、それぞれ、100〜150mMの間、および2〜6mMの間であることが好ましい。こうした配合物は、一般に、Mg++イオンも含有する。本発明の文脈において使用することのできる遺伝子導入媒質を、例として示す:
− 遺伝子導入溶液番号1:4〜6mM KCl、10〜20mM MgCl2、120〜160mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH7.2);
− 遺伝子導入溶液番号2:4〜6mM KCl、10〜20mM MgCl2、5〜25mMHEPES、120〜160mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH7.2);
− 遺伝子導入溶液番号3:4〜6mM KCl、10〜20mM MgCl2、50〜160mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH7.2)、および5〜100mMのラクトビオン酸ナトリウムまたは5〜100mMのマンニトールまたは5〜100mM
コハク酸ナトリウムまたは5〜100mMの塩化ナトリウム
− 遺伝子導入溶液番号4:4〜6mM KCl、10〜20mM MgCl2、5〜25mM HEPES、50〜160mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH7.2)、および5〜100mMのラクトビオン酸ナトリウムまたは5〜100mMのマンニトールまたは5〜100mMのコハク酸ナトリウムまたは5〜100mMの塩化ナトリウム;
− 遺伝子導入溶液番号5:4〜6mM KCl、10〜20mM MgCl2、80〜100mM NaCl、8〜12mMのグルコース、0.3〜0.5mM Ca(NO3)2、20〜25mM HEPES、および50〜100mM tris/HClまたは30〜50mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH7.2);
− 遺伝子導入溶液番号6:0.1〜3.0mM MgCl2、50〜200mM K2HPO4/KH2PO4(pH6.5)、および/または1〜50mMのマンニトールおよび/または1〜50mMのコハク酸ナトリウム;ならびに
− 遺伝子導入溶液番号7:0.42mM Ca(NO3)2;5.36mM KCl;0.41mM MgSO4;103mM NaCl;23.8mM NaHCO3;5.64mM Na2HPO4;11.1mMのd(+)−グルコース;3.25μMのグルタチオン;20mM HEPES;pH7.3;
リン酸緩衝食塩水PBS)。

0112

電気穿孔溶液は、Lonzaが、Amaxa(商標)Cell line Nucleofector Kit V−VCA−1003として参照されるキットの中に提供している、solution Vであることがさらに好ましい。

0113

遺伝子導入工程に引き続いて、1体積の遺伝子導入溶液に対して少なくとも5体積の培養培地(culture medium)、好ましくは、1体積の遺伝子導入溶液に対して10体積、さらに好ましくは15体積の培養培地の比で、遺伝子導入細胞に培養培地を加える。培養培地は、CHO細胞の培養に適する培地であることが好ましい。遺伝子導入工程の際にVero細胞を使用するとき、CHO細胞およびVero細胞両方に適する培地、またはCHO細胞に適する培地とVero細胞に適する培地の混合物を使用することもできる。

0114

詳細には、遺伝子導入は、実施例の第1.9節に記載のとおりに実行する。

0115

感染工程の際に使用する培地(感染培地)は、CHO細胞の培養に適するどんな培地でもよい。一部の感染性インフルエンザウイルスが、トリプシンなしの感染培地においてCHO細胞中である程度増殖し得るとしても、感染培地は、トリプシン、またはセリンプロテアーゼ活性を有する酵素を含有し、またはそれが加えられて、ウイルスが細胞に入って複製するのを可能にし、他のCHO細胞を介したインフルエンザウイルスの伝播を確実にしてあることが非常に好ましい。実際に、ウイルスが細胞に入って複製し得るために、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンは、セリンプロテアーゼによって切断されなければならない。トリプシンは、合成起源のものであるか、または動物起源のいかなる産物も含まないことが好ましい。トリプシン、またはより一般には、セリンプロテアーゼ活性を有する任意の酵素、たとえば、プロナーゼスブチリシンプラスミンサーモリシンは、遺伝子組換えによって産生することができる。トリプシンは、詳細には、トランスジェニック植物(WO00/05384)、酵母または細菌(WO01/55429)によって産生することができる。たとえば、GibcoによってTrypLESelectの商品名で、またはInvitrogenによってTrypLE Expressの商品名で提供されている組換えトリプシンは、本発明の目的に適する。

0116

培養培地および感染培地を含めた、本発明の文脈で使用する培地は、動物起源の血清を含まないことが好ましく、好ましくは、動物起源のいかなるタンパク質も含まず、さらにより好ましくは、動物起源のいかなる成分も含まない。本発明の主題に適するといえる、動物起源の血清を含まない、および/または動物起源の原材料を含まない培地の例は、VPSFM(InVitrogen)、Episerf(InVitrogen)、LC17(Cambrex)、Pro CHO5−CDM(Cambrex)、HyQ SFM4CHO(Hyclone)、HyQ SFM4CHO−Utility(Hyclone)、HyQ PF Vero(Hyclone)、Ex cell 325 PF CHO無タンパク質培地(JRH Biosciences)、Ex cell 302無血清培地(JRH Biosciences)、Excell 525、Ex Cell(商標)CD CHO融合(SAFCBiosciences)の名称で市販されている。したがって、(たとえば、動物起源のいかなる夾雑物または成分も含まない)無動物質培地を使用して、本発明による方法を実施することが可能である。詳細には、本発明の主題に適する培地は、SAFC Biosciencesが製造するEx Cell(商標)CD CHO融合培地にL−グルタミンを補充したものである。CHO細胞によって感染性インフルエンザウイルスを産生するには、この培地に、好ましくは動物起源のいかなる成分も含まないトリプシンまたはトリプシン誘導体を加える。

0117

一部の実施形態では、遺伝子導入を施す細胞の合計量は、たとえば、50万、100万、150万、200万、250万、300万、600万、もしくはなお1000万個の細胞、またはこれ以上である。

0118

別の実施形態では、遺伝子導入を施す細胞が、Vero細胞とCHO細胞の混合物であるとき、Vero細胞およびCHO細胞は、0.5:1〜2:1の範囲、たとえば、1:1、1.5:1、1:0.5、または1:1.5のVero:CHO比で存在する場合がある。典型的には、前記Vero:CHO細胞比は、1:1である。たとえば、前記Vero:CHO細胞比が1:1であるとき、各型の細胞の量は、たとえば、少なくとも50万、100万、150万、200万、250万、300万の細胞となる。

0119

一部の実施形態では、感染工程を実施するために、遺伝子導入工程の後に加えるCHO細胞の量は、たとえば、少なくとも50万、100万、150万、200万、250万、300万の細胞である。

0120

本発明の方法の一部の実施形態では、発現ベクターは、1つまたはそれ以上のインフルエンザタンパク質と1つまたはそれ以上のインフルエンザvRNAの両方の発現を可能にする発現ベクターを含み、前記発現ベクター一式の発現によって、(i)前記ウイルスのvRNAを含有しているリボ核タンパク質複合体(RNP)の形成、および(ii)前記遺伝子導入細胞中での前記ウイルス粒子組立てが可能になると理解される。場合により、前記発現ベクター一式にヘルパーウイルスを加えてもよい。

0121

このようなベクターは、たとえば、mRNAおよびvRNA両方の発現を促進する双方向性プラスミドであり、各プラスミドは、
−インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAの中から選択される8つのvRNAの1つまたはそれ以上、または対応するcRNAに相補的な1つまたはそれ以上のcDNAを含有しており、各cDNAは、
−RNAポリメラーゼIIに結合し、その結果、対応するインフルエンザタンパク質の発現を可能にするプロモーター(POLIIプロモーター)、
− RNAポリメラーゼIに結合し、その結果、対応するvRNA、または前記の対応するcRNAの発現を可能にするプロモーター(POLIプロモーター)
の制御下にある。

0122

一部の実施形態では、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターは、ヒトRNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターであり、かつ/またはRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターは、ヒトRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターである。

0123

一式の発現ベクターをCHO細胞に遺伝子導入する場合、RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターは、げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターであることが好ましい。げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターは、ハムスターまたはマウスRNAポリメラーゼIに結合することが好ましい。

0124

一部の実施形態では、mRNAおよびvRNASの両方、または対応するcRNAの発現を可能にする一式の発現ベクターは、1、2、3、4、5、5、6、7、8つの上で定義したとおりの双方向性プラスミドを含む。前記発現ベクターは、8つの双方向性プラスミドからなり、各プラスミドが、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAの中から選択される8つのvRNA、または対応するcRNAの1つに相補的なcDNAを含有していることが好ましい。好ましくは、前記発現ベクターは、Ozawaら、2007、J Virol、81(17):9556〜9559に記載の8つのプラスミドからなる。

0125

一式の発現ベクターは、
− 1つまたはそれ以上のインフルエンザタンパク質をコードしている1つまたはそれ以上のmRNAだけの発現を可能にする発現ベクターと、
−インフルエンザウイルスの1つまたはそれ以上のインフルエンザvRNAまたは対応するcRNAだけの発現を可能にする発現ベクターと
を含んでもよく、前記一式の発現ベクターの発現によって、(i)前記ウイルスのvRNAを含有しているリボ核タンパク質複合体(RNP)の形成、および(ii)前記遺伝子導入細胞中での前記ウイルス粒子の組立てが可能になると理解される。

0126

インフルエンザタンパク質だけの発現を誘発するベクターは、少なくとも、PB1、PB2、PA、およびNPタンパク質の発現を誘発するものとするが、他のインフルエンザタンパク質(M、NS、HA、およびNAタンパク質)の発現も誘発してもよい。好ましくは、前記発現ベクターは、一方向性プラスミドであり、各プラスミドが、少なくとも、PB1、PB2、PA、およびNPタンパク質の群の中から選択される1つまたはそれ以上のタンパク質の発現を誘発する1つまたはそれ以上のcDNAを含有しており、各cDNAは、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターの制御下にある。したがって、前記発現ベクターは、実施例の第1.8節に記載のとおりに、PB2、PB1、PA、およびNPタンパク質の1つに対応するcDNAがそれぞれクローン化された、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682に記載のプラスミド、またはpVAX1プラスミドを含んでよい。別法として、一式の発現ベクターは、各プラスミドが、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAタンパク質の中の1種の別個のウイルスタンパク質をコードしているmRNAに相補的な1つのcDNAを含有しており、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターの制御下にある、8つの別個のプラスミドを含む。したがって、前記発現ベクターは、Neumannら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350に記載の8つのプラスミドを含んでよい。

0127

1つまたはそれ以上のインフルエンザvRNAまたは対応するcRNAの発現を可能にするベクターは、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの発現を誘発するものとする。好ましくは、前記発現ベクターは、一方向性プラスミドであり、各プラスミドが、前記インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAの1つまたはそれ以上、または対応するcRNAに相補的な1つまたはそれ以上のcDNAを含有しており、各cDNAは、RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある。前記発現ベクターは、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、または8つのプラスミドを含んでよい。さらに好ましくは、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの発現を可能にする前記発現ベクターは、各プラスミドが、8つのvRNA PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAの1つに相補的な1つのcDNAを含有しており、RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、異なる8つのプラスミドを含む。したがって、前記一式の発現ベクターは、Neumannら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(16):9345〜9350またはFodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682に記載されている8つのプラスミドを含む。別の実施形態では、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの発現を可能にする一式の発現ベクターは、Neumannら、2005、Proc Natl Acad Sci USA、102(46):16825〜16829に記載のとおり、それぞれがRNAポリメラーゼIプロモーターおよびポリメラーゼターミネーターの制御下にある、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAに相補的な8つのcDNAを含有している、1つのプラスミドである。別の実施形態では、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの発現を可能にする一式の発現ベクターは、たとえば、2つの異なるプラスミドを含み、1つのプラスミドが、RNAポリメラーゼIプロモーターの制御下にある、それぞれがPB1、PB2、PA、NP、M、およびNS vRNAのそれぞれに相補的である、6つのcDNAを含有しており、1つのプラスミドが、それぞれがHAおよびNA vRNAのそれぞれに相補的であり、それぞれがRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、2つのcDNAを含有している。RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、8つのPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの1つに相補的な、1つのcDNAを含有しているプラスミドは、前記cDNAを、配列番号:2の配列を含むベクターにクローン化して得ることが好ましい。前記各プラスミドは、配列番号:10の配列を含む、またはそれからなるベクター、すなわち、万能pSP−fluプラスミドに、前記cDNAをクローン化して得ることがさらに好ましい。

0128

特に好ましい実施形態では、一式の発現ベクターは、
− 各プラスミドが、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターの制御下にある、4種のウイルスPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質の1つをコードしているmRNAに相補的な1つのcDNAを含有している、異なる4つのプラスミド、たとえば、実施例の第1.8節に記載のとおりに、PB2、PB1、PA、およびNPをコードするcDNAがクローン化された、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682に記載のプラスミドまたはpVAX1プラスミドと、
− 各プラスミドが、RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、8つのPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAの1つに相補的な1つのcDNAを含有しており、前記cDNAを万能pSP−fluプラスミドなどの本発明によるベクターにクローン化することにより得たものである、異なる8つのプラスミドと
を含む。

0129

好ましくは、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAを発現し得るベクターは、それぞれ、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNAcDNAがクローン化されている、本発明によるベクターである。

0130

次いで、インフルエンザPB1、PB2、PA、およびNPタンパク質を発現し得るベクターは、たとえば、pVAX1プラスミド(Life technology、Cergy Pontoise、FR)でよい。

0131

本発明の別の実施形態では、本発明の方法により産生される感染性インフルエンザウイルスは、季節性もしくは汎流行性インフルエンザウイルスなどの野生型インフルエンザウイルス、再集合体インフルエンザウイルス、キメラインフルエンザウイルス、またはさらに弱毒インフルエンザウイルスでもよい。

0132

本発明の方法により産生される前記感染性インフルエンザウイルスは、再集合体インフルエンザウイルスであることが好ましい。

0133

さらに好ましくは、前記感染性インフルエンザウイルスは、再集合体キメラインフルエンザウイルスである。

0134

産生される感染性インフルエンザウイルスは、A株、B株、またはC株のどの亜型でもよい。ウイルスは、A/H1N1、A/H3N2、A/H5N1、A/H7N1、またはB株などの、ヒトに感染するウイルス株にすることができる。A/H5N1、A/H5N2、A/H5N8、A/H5N9、A/H7N1、A/H7N3、A/H7N7株などの、鳥に感染するウイルス株にすることもできる。ウマ(A/H3N8株)、ブタ(A/H1N1;A/H3N2またはA/H1N2株)などに感染するウイルス株にすることもできる。

0135

産生される感染性インフルエンザウイルスは、ヒト季節性インフルエンザの原因であるものでもよい。詳細には、本発明による前記の産生されるインフルエンザウイルスは、A/H1N1、A/H3N2株、またはB株でよい。鳥インフルエンザの原因であるウイルスにすることもできる。

0136

本発明により産生される感染性インフルエンザウイルスは、汎流行性インフルエンザの原因であるものにできる。詳細には、前記産生されるインフルエンザウイルスは、たとえば、A/H1N1、A/H5N1、またはA/H7N1株にすることができる。

0137

好ましくは、感染性インフルエンザウイルスは、再集合体感染性インフルエンザウイルスである、すなわち、少なくとも2種のドナーウイルス由来の遺伝物質を含有している。

0138

A型インフルエンザワクチンの製造に有用なA型再集合体ウイルスの例は、それぞれ6つまたは5つのvRNAが、A/PR/8/34(H1N1)のような、産生基質上で良好な成長能力を有するドナーウイルスからのものであり、抜けているvRNAが、季節性または汎流行性ウイルスからのHA、NA分節、およびことによるとPB1である、6:2型または5:3型のものである。再集合体は、6:2型のH1N1ウイルスであるとき、A/PR/8/34(H1N1)ウイルスからの6つのvRNA(PB1、PB2、PA NP、M、NS)と、季節性または汎流行性ウイルスからのHAおよびNA vRNAとを含んでよい。

0139

詳細には、6:2型のA型再集合体ウイルスの場合において、6つのvRNA分節は、A/PR/8/34(H1N1)ウイルス由来でよく、配列番号:13の配列のPA vRNA、配列番号:14の配列のPB1 vRNA、配列番号:15の配列のPB2 vRNA、配列番号:16の配列のNP vRNA、配列番号:17の配列のM vRNA、配列番号:18の配列のNS vRNAを含む、またはこれらからなるものでよい。

0140

インフルエンザB型ワクチンの製造に有用なB型再集合体ウイルスは、たとえば、PB2およびNP vRNAが、B/Lee/40ウイルスからのものであり、PAおよびNS vRNAがB/パナマ/45/90ウイルスからのものであり、HA、NA、PB1、およびM vRNAが、B/Hubei−Wujiagang/158/209と呼ばれる季節性Bウイルスからのものである、2:2:4型(ニューヨーク医科大学より提供)である。

0141

産生される感染性インフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザウイルス、特に、キメラ再集合体インフルエンザウイルスでもよく、さらにより詳細には、前記キメラインフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザHAおよび/またはNA vRNAを含有している。

0142

一部の実施形態では、前記HAまたはNA vRNAは、キメラである。

0143

前記キメラインフルエンザHAまたはNA vRNAは、キメラHAまたはNAタンパク質をコードしていることが好ましい。このHAまたはNA vRNAは、ドナーウイルス(A/PR8/34(H1N1)やB/Lee/40など)からのHA vRNAまたはNA vRNA断片の1つまたはそれ以上のドメインと、季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからのHAまたはNA vRNAの1つまたはそれ以上のドメインとを含む。詳細には、季節性または汎流行性ウイルスのHA vRNAの前記ドメインは、HA1および/もしくはHA2などのHAの抗原性外部ドメインをコードしているmRNAに相補的であり、または季節性もしくは汎流行性ウイルスのNA vRNAの前記ドメインは、前記季節性または汎流行性ウイルスのNAの抗原性外部ドメインをコードしているmRNAに相補的である。

0144

たとえば、前記キメラHAvRNAは、ドナーウイルス由来の2つのNCR(非コード領域)ドメイン、SP(シグナルペプチド)ドメイン、HA2ドメイン、TM(膜貫通)ドメイン、およびCyto(細胞質)ドメインを含有しているが、HA1ドメインは、季節性インフルエンザウイルスまたは汎流行性インフルエンザウイルス由来である。

0145

インフルエンザウイルスA型の場合では、キメラHAvRNAは、ドナーA/PR/8/34(H1N1)ウイルスからの2つのNCR、SP、HA2、TM、およびCytoドメイン、ならびに季節性または汎流行性インフルエンザA型ウイルスからのHA1ドメインを含有していることが好ましい。

0146

インフルエンザウイルスA型の場合において、キメラHAvRNAは、A/PR/8/34(H1N1)ドナーウイルスからの、それぞれ配列番号:19、20、21、22、23、および24の配列の、2つのNCR、SP、HA2、TM、およびCytoドメイン、ならびに季節性または汎流行性インフルエンザA型ウイルスからのHA1ドメインを含有していることがさらに好ましい。

0147

インフルエンザウイルスB型の場合では、キメラHAvRNAは、A/PR/8/34(H1N1)やB/Lee/40などのドナーウイルスからのNCR、SP、HA2、TM、Cytoドメイン、および季節性B型ウイルスからのHA1ドメインを含有していることが好ましい。

0148

キメラNA vRNAの場合では、vRNAは、ドナーウイルス由来のNCR、TM、Cyto、およびStalkドメインを含有しているが、外部ドメインと呼ばれるドメインは、季節性または汎流行性インフルエンザウイルス由来である。インフルエンザウイルスA型の場合では、キメラNA vRNAは、A/PR/8/34(H1N1)ドナーウイルスからのNCR、TM、Cyto、およびStalkドメイン、ならびに季節性または汎流行性インフルエンザウイルスからの外部ドメインを含有していることが好ましい。インフルエンザウイルスA型の場合では、キメラNA vRNAは、A/PR/8/34(H1N1)ドナーウイルスからの、それぞれ配列番号:25、26、27、28、および29の配列の、NCR、TM、Stalk、およびCytoドメイン、ならびに季節性または汎流行性ウイルスからの外部ドメインを含有していることがさらに好ましい。インフルエンザウイルスB型の場合では、キメラNA vRNAは、A/PR/8/34(H1N1)やB/Lee/40などのドナーウイルスからのNCR、TM、Stalk、およびCytoドメイン、ならびに季節性B型ウイルスからの外部ドメインを含有していることが好ましい。

0149

宿主細胞
本発明はまた、上で定義したとおりの一式の発現ベクターを含むCHO細胞に関する。

0150

前記CHO細胞および感染性インフルエンザウイルスは、上述のとおりである。

0151

したがって詳細には、前記CHO細胞は、上述のとおりのCHO−K1細胞である。

0152

特定の実施形態では、前記一式の発現ベクターは、
(i)インフルエンザPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質を発現することができ、各プラスミドが、RNAポリメラーゼIIに結合するプロモーターの制御下にある、PB2、PB1、PA、およびNPタンパク質の中から選択されるウイルスタンパク質の1つをコードしているmRNAに相補的な1つのcDNAを含有している、異なる4つのプラスミドを含む、発現ベクターと、
(ii)インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNA、または対応するcRNAを発現することができ、各プラスミドが、げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターの制御下にある、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、HA、およびNA vRNAの中から選択される8つのvRNAまたは対応するcRNAの1つに相補的な1つのcDNAを含有しており、前記cDNA配列を本発明によるベクターにクローン化して得たものである、異なる8つのプラスミドを含み、げっ歯類RNAポリメラーゼIに結合するプロモーターを含むと理解される、発現ベクターとを含む。

0153

インフルエンザPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質を発現し得る前記発現ベクターは、実施例の第1.8節に記載のとおりに、PB2、PB1、PA、およびNPの中から選択されるウイルスタンパク質の1つをコードしているmRNAに相補的なcDNAをそれぞれが含有している、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682に記載のプラスミド、またはpVAX1プラスミドを含むものでよい。

0154

本発明による前記ベクターは、ハムスターRNAポリメラーゼIに結合するプロモーターを含むことが好ましい。別法として、vRNAに相補的なcDNAを含有している8つのプラスミドのプロモーターは、T7ポリメラーゼプロモーターである。その場合では、一式の発現ベクターは、De Witら、2007、J.Gen.Virol、88(第4部):1284〜1287に記載のとおり、T7ポリメラーゼをコードしているmRNAに相補的なcDNAを含有した追加プラスミドを含有している(合計数は13である)。

0155

本発明はまた、インフルエンザPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質を安定して発現させる組換えCHO細胞に関する。特定の実施形態では、そのような組換えCHO細胞は、インフルエンザPB1、PB2、PA、NP、M、およびNS vRNAを発現し得る一式の発現ベクターを含有していてもよい。

0156

前記組換えCHO細胞は、組換えCHO−K1細胞であることが好ましい。

0157

安定した細胞を樹立する方法は、当業者によく知られている。たとえば、前記方法は、Wangら、2012、Genet Mol Res、11(2):1442〜1448、またはLiuら、2011、Sheng Wu Gong Cheng Xue Bao、27(5):747〜754に記載されている。

0158

医薬組成物調製方法
本発明はまた、
a)以前に記載したとおりの本発明のいずれかの実施形態による方法によってインフルエンザウイルスを産生するステップと、
b)感染性インフルエンザウイルスを、CHO細胞、好ましくはCHO−K1細胞中で増加させた後、収穫するステップと、
c)収穫した感染性インフルエンザウイルスを精製する工程と、
d)場合により、精製したウイルスを不活化する工程と、
e)精製したウイルスを薬学的に許容される担体と混合する工程と
を含む、インフルエンザワクチン組成物の調製方法に関する。

0159

精製は、短時間でよく、収穫した感染性ウイルスを一般に清澄化した後、遠心分離によってウイルスを濃縮する工程に限定してよい。精製は、たとえばスクロース密度勾配法(EP07760362)によって実施される遠心分離工程によって補うことができる。ウイルスを精製するのに、クロマトグラフィー法を実施してもよい。こうして、精製された全ウイルスの懸濁液が得られ、それをさらに加工して、最終ワクチン組成物を得ることができる。精製されたウイルス懸濁液に、それに続く処理を施してもよい。こうして、インフルエンザウイルス派生製品が得られる。ウイルス懸濁液は、たとえば、断片化もしくは分割されたウイルス、ビロソームに基づくワクチン、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニンを含有するサブユニットワクチンを製造するために、当業者によく知られている方法により、界面活性剤または脂質溶媒を使用して断片化することができる。精製されたウイルスから得られる、断片化または分割されたウイルス、インフルエンザウイルスヘマグルチニンを含有しているビロソーム、およびインフルエンザウイルスヘマグルチニンを含有するサブユニットワクチンは、インフルエンザウイルス派生製品であるとみなされる。

0160

最終ワクチン組成物は、全不活化インフルエンザウイルスまたは弱毒インフルエンザウイルスから構成される場合がある。

0161

ウイルス懸濁液の不活化は、β−プロピオラクトン(E.Budowskyら、1991、Vaccine、9:319〜325;1991、Vaccine、9:398〜402;1993、Vaccine、11:343〜348)、エチレンイミンもしくは誘導体(D.King 1991、Avian Dis.35:505〜514)、またはホルモール(EP07760362)を使用する従来の手段によって実施する。ウイルスの不活化は、精製工程の前または後に実施することができる。

0162

最終ワクチン組成物は、一般に、薬学的に許容される担体を用いて配合される。

0163

「薬学的に許容される担体」とは、活性薬剤の安定性無菌性、および送達性を高めるために医薬およびワクチン配合物に対して一般に使用される、ヒトにおいていかなる二次的反応、たとえば、アレルギー反応も生じない、任意の溶媒分散媒チャージ(charge)などを意味する。賦形剤は、選ばれた医薬形態投与の方法および経路に基づき選択される。適当な賦形剤、および医薬配合物に関しての要件は、当分野における参考文献を代表する、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(第19版、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1995))に記載されている。薬学的に許容される賦形剤の例は、水、リン酸緩衝食塩液、0.3%グリシン溶液である。

0164

不活化全ウイルスに基づくワクチン組成物は、1種またはそれ以上のアジュバントを含んでもよい。こうしたワクチンは、水酸化アルミニウムゲルリン酸アルミニウムミョウバンなどのアルミニウム塩が配合されてもよいし、または油中水もしくは水中油エマルションに配合してもよい。インフルエンザに対する体液性および/または細胞性応答を増大し得るどんなアジュバントを使用してもよい。非限定的なアジュバント配合物の例として、MF59(登録商標)エマルションリポソーム系配合物、およびMPLコリネバクテリウムパルバム、サポニンリゾレシチンプルロニック誘導体、またはこれらの組合せに基づく配合物が挙げられる。TLR作動薬を使用することもできる。

0165

本発明による方法によって得られるワクチンは、インフルエンザに対するヒトおよび動物の防御において使用するためのものである。

0166

獣医学分野では、ワクチンは、鳥インフルエンザ予防分野において主に使用されるが、ウマ科の仲間、特にウマ、イヌ科の仲間、特にイヌ、ネコ科の仲間、特にネコ、ブタ科の仲間、特にブタ、イタチ科、特にミンクおよびフェレット、ならびに鳥の種、特に、雌鳥カモシチメンチョウ、ウズラ、ホロホロチョウガチョウ、およびダチョウにおけるインフルエンザ症状および/またはウイルス分泌の予防または軽減に使用することもできる。

0167

ヒトにおいて、ワクチンは、流行性インフルエンザおよび汎流行性インフルエンザ予防の分野で使用される。流行性インフルエンザには、流行の原因であるウイルスからのHAとの抗原的関連性が存在し、一部にしか有効でないとしても、ある特定の免疫が存在する、インフルエンザウイルスの1種(またはそれ以上)の株との接触(感染)またはそれによる免疫化によってすでに感作されているヒト集団は冒されないが、汎流行性インフルエンザには、この新たなウイルスのHAが、先行する循環ウイルスとの抗原的関連性をもたないまたはほとんどもたないために、新たなウイルスに感作されていないヒト集団が冒される。

0168

流行性インフルエンザワクチンは、すでに循環した先行ウイルスとの抗原的関連性を有する循環季節性インフルエンザウイルスによってもたらされる季節性インフルエンザ形態に対するヒト集団の防御を意図するものである。現在、流行性インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスは、A型でH1N1もしくはH3N2亜型に属するか、またはB型である。

0169

汎流行性インフルエンザワクチンは、HAに関して先行循環ウイルスとの抗原的関連性をもたない新たなインフルエンザウイルスである汎流行性インフルエンザウイルスによる感染に対するヒト集団の防御を意図するものである。現在、汎流行性インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスは、A/H1N1ウイルスである。

0170

流行性または汎流行性インフルエンザワクチンは、生弱毒ワクチンまたは不活化ワクチンの形態でよいが、汎流行性インフルエンザの予防には不活化ワクチンが好ましい。ワクチンは、一価ワクチン(単一のインフルエンザウイルス株から調製されたワクチン)の形態でも、または多価ワクチン(いくつかのインフルエンザウイルス株から調製されたワクチン)の形態でもよい。流行性インフルエンザワクチンの組成物は、現在、H3N2およびH1N1ウイルスならびにB型ウイルスから調製された三価ワクチンの形態である。不活化ワクチンは、一般に、全ウイルス、断片化されたウイルス(分割されたウイルス)、もしくはビロソームの形態、またはHAを含有しているサブユニット形態であり、場合により、上で言及したものなどの、1種またはそれ以上のアジュバントを含有する。生弱毒ワクチンは、一般に、経口または経鼻投与されて、粘膜免疫展開を促進するが、不活化ワクチンは、非経口筋肉内もしくは皮下)、皮内、もしくはさらに粘膜鼻腔内)投与することもでき、またはWO01/22992に記載のとおり、異なる2つの投与経路を組み合わせて投与することさえできる。免疫化スキームは、一般に、注射、または注射に続いての追加免疫に備えるものである。投与するワクチン用量は、個体の年齢およびアジュバントの有無に応じて決まる。従来、ワクチン用量は、ワクチンに含有されている各ワクチン株のHA 15μgと同等のものを含有する。この用量は、ワクチンにアジュバント添加するとき、およそ1〜2μgのHAに減らしてもよく、または高齢の個体もしくは免疫不全に陥っている個体では30μgのHAもしくはさらにそれ以上に増やしてもよい。

0171

組成物は、従来の皮下注射器、またはBecton Dickinson Corporation(Franklin Lakes、NJ、USA)から市販されているものなどの安全注射器、またはジェットインジェクターを使用して投与することができる。皮内投与については、Mantoux技術を使用して従来の皮下注射器を用いることができ、またはBD Soluvia(商標)微量注入ステム(Becton Dickinson Corporation、Franklin Lakes、NJ、USA)などの特殊化された皮内送達デバイスを用いてもよい。

0172

投与する組成物の体積は、投与方法に応じて決まる。皮下注射の場合では、体積は、一般に、0.1〜1.0mlの間、好ましくはおよそ0.5mlである。

0173

本出願全体を通して、種々の参考文献を引用する。こうした参考文献の開示は、参照によって本開示に組み入れる。

0174

本発明について、以下の図面および実施例によってさらに例示する。

図面の簡単な説明

0175

ワクチン再集合体として使用できることになる組換えインフルエンザウイルスを迅速に生成するための能率化されたスキームの実例を示す図である。pSP−fluは、配列番号:10の配列からなる万能ベクターに該当する。
万能pSP−fluプラスミドを使用するクローン化戦略を示す図である。カナマイシン耐性遺伝子の位置を白く示し、POL1プロモーターおよびリボザイムを黒く示す。プラスミドは、BbsIで直線化し、端にプロモーターおよびリボザイムからの17ヌクレオチドを含有しているウイルスcDNAと混合した後、コンピテント大腸菌を形質転換させた。cDNAは、末端相補性領域内で環状プラスミドに再結合して、POL Iプロモーターとリボザイムの間にウイルスゲノム分節が導入された。

実施例

0176

実施例
1. 材料および方法
1.1.細胞
CHOK1細胞(ATCC番号:CCL−61)の懸濁液は、125mLのシェーカーフラスコ(Thermo Scientific)において、4mMのL−グルタミン(Gibco(登録商標))によって補充したEx−Cell CD CHO融合培地(SIGMA−ALDRICH、St Quentin Fallavier、FR)で、撹拌しながら培養した。接着性MDCK細胞(CCL−34)およびVero細胞(ATCC番号:CCL−81)は、組織培養フラスコ(Becton Dickinson)において、それぞれ、10%FBS(Thermo Scientific)によって補充したDMEM(Gibco(登録商標))、または0.1%ポビドンK30(Sanofi Pasteur)によって補充したVP−SFM(Gibco(登録商標))で培養した。CEP細胞は、10日齢特定病原体除去SPF)ニワトリ胚(Valo Biomedia、Osterholz−Scharmbeck、GE)から採取し、組織培養フラスコ(Becton Dickinson)において、5%FBS(Thermo Scientific)によって補充したDMEMF12+Glutamax I(HAM)(Gibco(登録商標))で培養した。すべての細胞培養物を、95%空気および5%CO2の雰囲気中にて37℃で保った。

0177

1.2.受容体分析
異なる細胞型の表面におけるSia2−3GalおよびSia2−6Gal残留物発現の分析を、ジゴキシゲニングリカン識別キット(Roche、Mannhein、GE)を使用して実行した。200万個の細胞を、1倍PBS(Eurobio、Courtaboeuf、FR)中で2回、0.05M Tris−HCl、0.15M NaCl、1mM MgCl2、1mM MnCl2、および1mM CaCl2を含有する緩衝液pH7.5中で1回洗浄した。細胞を、ジゴキシゲニン標識レクチンである、Sia2−6Gal残留物に特異的なセイヨウニワトコアグルチニン(SNA)(1/1000)またはSia2−3Galに特異的なイヌエンジュアグルチニン(MAA)(1/300)と共に室温で1時間インキュベートした。対照細胞は、レクチンなしでインキュベートした。細胞をTBS(0.05M Tris−HCl、0.15M NaCl、pH7.5)中で2回洗浄し、室温(暗所)にて1時間、1/40抗ジゴキシゲニン−フルオレセインFabFragment(Roche)で処理した。1倍PBS(Eurobio)中で2回洗浄した後、Guavaキャピラリーサイトメーターにおいて細胞を緑色蛍光強度について分析した。

0178

1.3.ウイルス
インフルエンザB/ブリベン/60/08ウイルス、ならびに再集合体ワクチンウイルスA/ニューカレドニア/20/99(H1N1)IVR116、A/ベトナム/1194/04(H5N1)rg14、およびA/カリフォルニア/07/09(H1N1)X179Aを、NIBSC(Hertfordshire、UK)から得た。ウイルスは、孵化鶏卵(Valo Biomedia)において繁殖させ、感染尿膜腔液から収穫した。

0179

1.4.ウイルス感染
感染の4時間前に、6ウェルプレート(Corning、NY、US)において、細胞を、各細胞型に適した無血清培養培地に、最終体積を1mlとして、1.6×105細胞/cm2の密度で播いた。感染は、35℃にて1時間、種々の感染多重度MOI)で実行した。ブタトリプシン(SIGMA−ALDRICH)を含有する各細胞型に適した血清なしの無血清培養培地(2ml)を加え、細胞を8%CO2中にて35℃で4日間インキュベートした。

0180

1.5.赤血球凝集検定
HA検定は、V底プレート(Corning)において培養上清50μlを1倍PBS(Gibco(登録商標))で2倍に段階希釈することにより実行した。引き続いて、0.5%ニワトリ赤血球細胞(Sanofi Pasteur、Alba−la−Romaine、FR)50μlを各ウェルに加えた。プレートを4℃で1時間インキュベートし、各ウェルについて、赤血球凝集または赤血球凝集の欠如を視覚的に決定した。

0181

1.6. TCID50検定
96ウェルプレート(Corning)において、MDCK細胞を、1μg/mlのブタトリプシン(SIGMA−ALDRICH)で補充したDMEM(Gibco(登録商標))に、2.7×106細胞/cm2の密度で播いた。細胞を、1:10の連続ウイルス希釈物50μlで感染させ、35℃で4日間インキュベートした。次いで、こうした培養物からの上清を赤血球凝集検定において試験した。Spearman−Karberの統計的方法に従って、TCID50力価を算出した(David John Finney、1952、Statistical method in biological assay、Hafner editor)。

0182

1.7.遺伝子導入効率
200万個の細胞を200×gで10分間遠心分離し、室温でcGMP現行の優良医薬品製造基準)solution V(Lonza、Basel、CH)100μlに再懸濁し、pGFP(Sanofi Pasteur)プラスミド10μgを加えた。nucleoporationを、Nucleofector(Lonza)によって、異なるプログラムを使用して実行した。6ウェルプレート(Corning)において、各細胞型に最適な培地にて、37℃、5%CO2で24時間、細胞をインキュベートした。Guavaキャピラリーサイトメーター(Millipore、Bellerica、MA、US)において、細胞を緑色蛍光強度について分析した。

0183

1.8.プラスミドDNA
感染性A/PR/8/34(H1N1)ウイルスのレスキューのための12のプラスミドは、以前より、Fodorら、1999、J Virol、73(11):9679〜9682に記載されている。以下で言及するとおりの多少の改変を加えて、同じ方法を適用した。

0184

A/WSN/33(H1N1)(WSN)ウイルスからのPB2、PB1、PA、およびNPタンパク質のコード領域を、pVAX1プラスミド(Life technology、Cergy Pontoise、FR)に、CMVプロモーターとウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGHポリA)部位の間においてクローン化した。pVAX1プラスミド(Life technology)は、ウイルスRNA発現用に改変した。簡潔に述べると、直線化のためのBbsI部位、NotIおよびSbfI部位を含有しているリンカーによって隔てられたヒトPOL1プロモーターおよび肝炎デルタリボザイム配列に対応するDNA断片を、pVAX1プラスミドにクローン化し、CMVプロモーターおよびBGH−ポリA部位を除去した。得られるプラスミドを「万能pSP−flu」と名付けた。

0185

ウイルスRNAは、QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen、Courtaboeuf、FR)を用いて感染尿膜腔液から抽出し、vRNAに相補的なゲノムcDNAは、Superscript IIIワンステップRT−PCRシステム(Life technology)を用い、肝炎デルタリボザイムからの17ヌクレオチド(5’−ctgggaccatgccggcc)(配列番号:11)およびPOL1プロモーターからの17ヌクレオチド(5’−tgggccgccgggttatt)(配列番号:12)をそれぞれ含有している一対のプライマーを使用して得た。

0186

温度サイクルパラメータは、60分間47℃、2分間94℃、次いで40サイクル(15秒間94℃、30秒間60℃、2分間72℃)、さらに5分間72℃とした。引き続いて、各断片をGenElute Gel抽出キット(SIGMA−ALDRICH)で精製し、BbsI(New England Biolabs、Ipswich、MA、US)によって予め直線化された万能pSP−fluプラスミドに、In Fusion HDPCRクローン化キット(Clontech,Takara Bio、Saint Germain en Laye、FR)を使用する相同組換えによってクローン化した。Nucleobond Maxi EFキット(Macherey Nagel、Duren、GE)を使用して、無エンドトキシンプラスミドDNA調製物を生成した。

0187

1.9.逆遺伝学
100万個のVero細胞と100万個のCHOK1細胞を混合し、200×gで10分間遠心分離し、室温でsolution V(Lonza)100μlに再懸濁した。8つのvRNA発現プラスミドそれぞれ1μgと4つのタンパク質発現プラスミドそれぞれ0.5μgの混合物を細胞に加え、nucleofector(Lonza)を用い、U−023プログラムを使用して、nucleofectionを実行した。細胞を、6ウェルプレートにおいて、4mMのL−グルタミン(Gibco(登録商標))で補充したEx−cell(商標)CD CHO融合培地(SIGMA−ALDRICH)中でインキュベートした。37℃、5%CO2で2時間インキュベートした後、組換えトリプシン(TryLESelect)(Gibco(登録商標))で補充した同じ培地において200万個のCHOK1細胞を加え、回転台上において35℃、8%CO2でインキュベートした。

0188

1.10.阻害赤血球凝集検定(IHA)
国立生物学的製剤研究所(NIBSC)から購入したA/カリフォルニア/07/09(H1N1)ウイルスのHAに特異的な血清を、コレラ菌のReceptor Destroying Enzyme(RDE、Sigma、10mU/mL)によって37℃で18時間処理した。RDEを56℃で1時間かけて不活化させた。次いで、RDE処理した血清を、5%シチメンチョウ赤血球細胞RBC)と共に4℃で2時間インキュベートし、2000rpmで10分間遠心分離した。次いで、処理した血清の段階希釈物を、試験するウイルス4HAUと共に室温で1時間、次いで0.25%ニワトリRBCと共に4℃で1時間インキュベートした。IHA力価は、ウイルスが媒介となるRBCの赤血球凝集を阻害する、血清の最高希釈度によって決定される。

0189

2. 結果
2.1.細胞成長
MDCK、CHO−K1、Vero、およびCEP細胞について、CHO−K1については懸濁液中で、または他の細胞型については接着として、各細胞型の最も適当な培地において成長を維持し得るその能力を評価した。1世代に必要な存続期間推定することにより、集団倍加レベル(pdl)を各細胞型について決定した。表1に見られるように、MDCKおよびCHO−K1は、Vero細胞(38時間)およびCEP細胞(48時間)に比べて、短いpdl(それぞれ23時間および18時間)を示した。CHO−K1およびVero細胞系は、血清なしで培養されたことに留意することが重要である。

0190

0191

成長研究は、37℃で6日間かけて実行し、1世代に必要な時間を推定することにより、集団倍加レベル(pdl)を算出した。集団倍加レベル(pdl)は、比T/Nから算出され、ここで、Tは、細胞培養の継続時間であり、Nは、次式Cf=Ci×2N[式中、CiおよびCfは、それぞれ、初期および最終細胞濃度である]から算出される細胞世代数である。値は、3つの独立した実験の平均および標準偏差(S.D.)を表す。

0192

2.2.インフルエンザ受容体
感染の際、鳥ウイルスならびに卵順応ヒトウイルス変異株は、Sia2−3Gal結合に主に結合するのに対し、ヒトから直接単離された臨床分離株は、Sia2−6Gal結合に優先的に結合する(Suzukiら、2011、Adv Exp Med Biol、705:443〜452)。

0193

異なる細胞型の表面上にあるインフルエンザウイルス受容体の2つの型を検出するために、(Sia2−3Gal結合に特異的な)MAAレクチンおよび(Sia2−6Gal結合に特異的な)SNAレクチンを使用した。細胞は、ジゴキシゲニン標識レクチンである(Sia2−6Galに特異的な)セイヨウニワトコアグルチニン(SNA)または(Sia2−3Galに特異的な)イヌエンジュアグルチニン(MAA)と共に室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞を抗ジゴキシゲニン−フルオレセインFab断片と共にインキュベートし、Guavaキャピラリーサイトメトリーシステムを使用して、蛍光強度について分析した。表2に示す値は、3つの独立した実験の平均および標準偏差(S.D.)を表す。

0194

MAAおよびSNAは、VeroおよびMDCK細胞(80%を上回る細胞)の表面に強力に結合しており、MDCKおよびVero細胞上で2種の受容体(Sia2−3GalおよびSia2−6Gal)が発現されたことが示された(表2)。さらに、MAAは、CEP細胞の73%に結合したのに対し、SNAは、CEP細胞の23%にしか結合せず、多数のCEP細胞がSia2−3Gal受容体を発現させ、少数がSia2−6Galを発現させたことが示された。CEP細胞がヒト受容体よりはるかに多くの鳥受容体を発現させた理由は、CEP細胞が鳥起源であることから説明できるはずである。CHO−K1細胞は、Sia2−6Gal受容体を発現させず、Sia2−3Gal受容体を不十分にしか発現させない。

0195

0196

2.3.ウイルス産生
インフルエンザウイルスの尿膜腔液を、事前順応なしで、試験する細胞系と直接接触させた。2種のインフルエンザA再集合体ウイルス(A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)IVR116およびA/ベトナム/1194/04(H5N1)rg14)ならびに1種のインフルエンザBウイルス(B/ブリスベン/60/08系統B/ビクトリア/2/87)を試験した。種々のMOI(10−1、10−2、および10−3)ならびにブタトリプシン濃度(0、1、2、5、および8μg/mL)を使用した。A型インフルエンザウイルスについては感染から3日後、B型インフルエンザウイルスについては感染から4日後に、10−1のMOIおよび最も適当なトリプシン濃度で得られた結果を、各細胞型について示す(表3および表4を参照されたい)。

0197

0198

0199

A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)IVR116およびA/ベトナム/1194/04(H5N1)rg14再集合体は、事前順応の必要なしに、試験した4種の細胞型において成長した。さらに、A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)IVR116再集合体ウイルスの最良の産生が、CHO−K1細胞において観察され、最高のウイルス力価(>107TCID50)が示された。A/ベトナム/1194/04(H5N1)rg14再集合体ウイルスの産生は、すべての細胞型においてぴったりと同じであった(およそ103TCID50/mL)。

0200

感染性B型ウイルスの産生に関しては、表4に示すとおり、B/ブリスベン/60/08ウイルスが、事前順応の必要なしに、3種の細胞系において十分に複製した。

0201

2.4.感染性インフルエンザウイルスを逆遺伝学法によってレスキューすることによるウイルス産生
2.4.1.細胞系が遺伝子導入を受け得る能力
感染性インフルエンザウイルスを生成し得る一式の発現ベクターによる遺伝子導入後に、異なる細胞型のウイルス産生能を試験することも重要である。第1の工程では、こうした異なる細胞型が遺伝子導入を受け得る、詳細には、動物起源の原材料の使用を伴わない材料による遺伝子導入を受け得る能力を試験することが重要である。Amaxa(Amaxa、Lonza technology)によって提供される、核を標的とするnucleoporation技術を細胞の遺伝子導入に使用し、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミドを使用して、異なる細胞系の被遺伝子導入能を評価した。細胞をV solutionに再懸濁し、pGFPプラスミドと共にインキュベートし、nucleofectorでnucleoporationを施した。異なるプログラム(U−023、A−024、V−001、T−030、L−005)を試験した。次いで、細胞を37℃で1日インキュベートし、緑色蛍光細胞の百分率をGuavaサイトメトリーによって分析した。最適な遺伝子導入プログラムを用いて3つの独立した実験から算出したGFP発現細胞の百分率平均値および標準偏差を、表5に示す。

0202

0203

70%を越える細胞がGFPを発現させており、試験したすべての細胞系が、nucleoporationによって遺伝子導入可能であることを示している。

0204

2.4.2.インフルエンザcDNAクローン化工程の最適化
効率よくするために、通常は2種のA型ウイルスおよび1種のB型ウイルス由来の抗原性材料を含有するインフルエンザワクチンは、出現し、季節性インフルエンザまたは汎流行性インフルエンザの原因になる新たな循環ウイルスに応じて、毎年更新されなければならない。重要なことに、HAおよびNA抗原性材料は、新たな循環ウイルスの抗原性材料に対応するように更新されなければならない。逆遺伝学を実行するために、HAおよびNAをコードする遺伝子は、毎年、または新たな循環ウイルスが特徴付けられたときに、POLIプロモーターの制御下にあるvRNA発現プラスミドにクローン化しなければならない。内部A/PR/8/34vRNAをコードしている他のvRNAプラスミドおよびタンパク質発現プラスミドは、通常1回しか構築されない。vRNA発現プラスミドにおけるクローン化工程は、未知のHAおよびNA遺伝子に対して逆遺伝学を行うとき、非常に扱いに注意を要することになりかねないため、A型およびB型ウイルスからの任意のインフルエンザ分節の組換えによるクローン化に使用することのできる万能逆遺伝学プラスミドが開発された。しかし、vRNA転写の正確な開始および停止のための要件が厳格であるために、組換え領域の選択は、劇的に制限される。したがって、POL1プロモーターの最後の17ヌクレオチドおよび肝炎デルタリボザイムの最初の17ヌクレオチドを含む、インフルエンザゲノムに特異的でない新たな組換えカセットを使用した。さらに、環状プラスミドを直線化するためのBbsI、空のプラスミドを除外するためのNotIおよびSbfI部位を含む28ヌクレオチドを、POL1プロモーターと肝炎デルタリボザイムの間に組み込んだ。「万能pSP−flu」と名付けた、得られたプラスミドは、比較的小さく(2202pb)、カナマイシン耐性遺伝子を含有していた(図2)。クローン化用のインフルエンザcDNAを調製するために、vRNAを逆転写して、組換え末端を含有しているcDNAとし、POL1プロモーターとリボザイムの間にクローン化した。この改良されたRNA産生プラスミドを使用して、インフルエンザAおよびBウイルスからのいくつかの遺伝子を、相同組換えによってクローン化した。陽性クローンの割合は、「容易な」クローン化については90%を上回り、「困難な」クローン化については30%であり、平均は、クローン化実験あたり150クローンであった。

0205

このように開発された万能pSP−fluプラスミドは、容易で迅速なインフルエンザゲノムクローニングのためのいくつかの改善点をもたらす。組換えカセットは、A型およびB型ウイルスからのあらゆるインフルエンザRNA分節のクローン化に使用することができる。次に、直線化したベクターが、バックグラウンドコロニーを生成する空のプラスミドを含まなかったことを確実にするのは難しいため、万能pSP−fluプラスミドは、クローン化工程の後に、残存する空のプラスミドの除去に使用することのできる、3つの酵素部位(BbsI、SbfI、およびNotI)を含有している。切断点を認識部位の外側に含有しているBbsI酵素による直線化によって、付着末端が生じ、プラスミドの再環状化が可能になった。

0206

2.4.3.インフルエンザウイルスのレスキュー
逆遺伝学によって感染性インフルエンザウイルスをレスキューし得るその能力について、その良好な成長特性を根拠に、CHO−K1およびVero細胞系を試験した。

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