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技術 新規心筋細胞マーカー

出願人 国立大学法人京都大学
発明者 山中伸弥吉田善紀舟越俊介
出願日 2013年7月16日 (6年7ヶ月経過) 出願番号 2015-503601
公開日 2015年9月24日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2015-527872
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード HLA遺伝子型 核初期化物質 分離溶液 SOX 発光酵素遺伝子 エピソーマルベクター 羊膜組織 濃縮率
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題・解決手段

本発明は、心筋細胞を含有する細胞集団よりNCAM1、SSEA3、SSEA4またはCD340が陽性であることを指標として心筋細胞を抽出または検出する工程を含む、心筋細胞の製造方法または検出方法を提供する。

概要

背景

心筋細胞出生と同時にその分裂能喪失し、再生が困難であることから、心筋梗塞心筋炎または老化等を原因とする傷害心組織に対して、胚性幹細胞ES細胞)や人工多能性幹細胞iPS細胞)など多能性を有する細胞(特許文献1)を分化誘導して得られる心筋細胞を移植する補充療法が注目されている。これら多能性幹細胞からの心筋細胞への分化誘導法は多数報告されているが(特許文献2および3、非特許文献1)、移植用細胞として用いるためにはソーティング等により心筋細胞の純度を高める必要がある。現在、心筋細胞に対する表面マーカーとして、CD166(ALCM)(非特許文献2)やN-cadherin(特許文献4または非特許文献3)やVCAM1(特許文献5)などが報告されているが、心筋細胞の純度を高めるためにはさらに多くのマーカーが必要であると考えられる。

概要

本発明は、心筋細胞を含有する細胞集団よりNCAM1、SSEA3、SSEA4またはCD340が陽性であることを指標として心筋細胞を抽出または検出する工程を含む、心筋細胞の製造方法または検出方法を提供する。

目的

本発明の目的は、心筋細胞を含有する細胞集団から当該心筋細胞を抽出することである

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

a)心筋細胞を含む細胞集団を提供する工程、およびb)NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、心筋細胞の製造方法。

請求項2

前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記心筋細胞を含有する細胞集団が、多能性幹細胞から分化誘導された細胞集団または摘出組織細胞からなる細胞集団である、請求項1に記載の方法。

請求項4

前記多能性幹細胞が、ES細胞またはiPS細胞である、請求項3に記載の方法。

請求項5

前記心筋細胞への分化誘導が、胚様体を形成する工程を含む、請求項3に記載の方法。

請求項6

前記心筋細胞への分化誘導が、サイトカインを含有する培地で胚様体を培養する工程を含む、請求項4に記載の方法。

請求項7

前記サイトカインが、activin A、BMP4、b-FGF、およびVEGFからなる群から選択される少なくとも一つのサイトカインである、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記培地が、さらにWnt阻害剤を含有する、請求項6に記載の方法。

請求項9

前記Wnt阻害剤がDKK-1である、請求項8に記載の方法。

請求項10

NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、心筋細胞の検出方法

請求項11

前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、請求項10に記載の方法。

請求項12

前記心筋細胞を含有する細胞集団が、多能性幹細胞から分化誘導された細胞集団または摘出組織細胞からなる細胞集団である、請求項10に記載の方法。

請求項13

前記多能性幹細胞が、ES細胞またはiPS細胞である、請求項12に記載の方法。

請求項14

NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つを検出する試薬を含む、心筋細胞抽出用または検出用キット

請求項15

前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、請求項14に記載のキット

技術分野

0001

本発明は、心筋細胞を含有する細胞集団より心筋細胞を抽出または検出するための新規心筋細胞マーカーに関する。

背景技術

0002

心筋細胞は出生と同時にその分裂能喪失し、再生が困難であることから、心筋梗塞心筋炎または老化等を原因とする傷害心組織に対して、胚性幹細胞ES細胞)や人工多能性幹細胞iPS細胞)など多能性を有する細胞(特許文献1)を分化誘導して得られる心筋細胞を移植する補充療法が注目されている。これら多能性幹細胞からの心筋細胞への分化誘導法は多数報告されているが(特許文献2および3、非特許文献1)、移植用細胞として用いるためにはソーティング等により心筋細胞の純度を高める必要がある。現在、心筋細胞に対する表面マーカーとして、CD166(ALCM)(非特許文献2)やN-cadherin(特許文献4または非特許文献3)やVCAM1(特許文献5)などが報告されているが、心筋細胞の純度を高めるためにはさらに多くのマーカーが必要であると考えられる。

0003

国際公開第2007/069666号
国際公開第2007/002136号
国際公開第2009/118928号
特開2010−158206号公報
PCT/JP2012/059617号

先行技術

0004

Yan P, et al, Biochem Biophys Res Commun. 379:115-20 (2009)
Rust W, et al, Regen Med. 4, 225-37 (2009)
Honda M, et al, Biochem Biophys Res Commun. 29, 351, 877-82 (2006)

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の目的は、心筋細胞を含有する細胞集団から当該心筋細胞を抽出することである。したがって、本発明の課題は、心筋細胞に特異的なマーカーを提供することである。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、上記の課題を解決すべく、NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340に着目し、これらのうちの少なくとも一つが陽性であることを指標として、多能性幹細胞より分化誘導した心筋細胞を含む細胞集団から、高率で心筋細胞が得られることを見出した。

0007

当該知見に基づき、本発明者らは、NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として用いることで心筋細胞を単離精製することに成功し、本発明を完成するに至った。

0008

本発明の一態様は、
a)心筋細胞を含む細胞集団を提供する工程
b)NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、
心筋細胞の製造方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞を含有する細胞集団が、多能性幹細胞から分化誘導された細胞集団または摘出組織細胞からなる細胞集団である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記多能性幹細胞が、ES細胞またはiPS細胞である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞への分化誘導が、胚様体を形成する工程を含む、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞への分化誘導が、サイトカインを含有する培地で胚様体を培養する工程を含む、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記サイトカインが、activin A、BMP4、b-FGF、およびVEGFからなる群から選択される少なくとも一つのサイトカインである、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記培地がさらにWnt阻害剤を含む、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記Wnt阻害剤がDKK-1である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、心筋細胞の検出方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞を含有する細胞集団が、多能性幹細胞から分化誘導された細胞集団または摘出組織細胞からなる細胞集団である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記多能性幹細胞が、ES細胞またはiPS細胞である、上記に記載の方法を提供することである。
本発明の他の態様は、NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つを検出する試薬を含む、心筋細胞抽出キットを提供することである。
本発明の他の態様は、前記心筋細胞がヒト心筋細胞である、上記に記載のキットを提供することである。

図面の簡単な説明

0009

多能性細胞から心筋細胞を分化誘導するプロトコールを示す。
201B7-M6GIP4株の分化誘導開始から0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目におけるフローサイトメトリーの結果を示す。図中、縦軸はNCAM1の強度、横軸はEGFPの強度を示す。
606A1株の分化誘導開始から30日目におけるフローサイトメトリーの結果を示す。左図では、横軸にNCAM1の強度、右図では、横軸にTroponin Tの強度を示す。
201B7-M6GIP4株の分化誘導開始から0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目におけるフローサイトメトリーの結果を示す。図中、縦軸はSSEA3の強度、横軸はEGFPの強度を示す。
201B7-M6GIP4株の分化誘導開始から0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目におけるフローサイトメトリーの結果を示す。図中、縦軸はSSEA4の強度、横軸はEGFPの強度を示す。
201B7-M6GIP4株の分化誘導開始から0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目および45日目におけるフローサイトメトリーの結果を示す。図中、縦軸はCD340の強度、横軸はEGFPの強度を示す。

0010

本発明を以下に詳細に説明する。

0011

本発明は、下記のとおり、NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、心筋細胞の製造方法、またはNCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340からなる群から選択される少なくとも一つが陽性であることを指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する工程を含む、心筋細胞の検出方法に関する。

0012

心筋細胞を含有する細胞集団とは、心筋細胞を含有している細胞の集合体であれば、その由来は特に問わない。例えば、任意の方法で得られた末梢血心臓骨髄組織脂肪組織骨格筋組織羊膜組織胎盤組織臍帯血などに含まれる細胞であってもよいし、また、多能性幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。

0013

心筋細胞の抽出とは、他の細胞種と比して心筋細胞の割合を多くすることを意味し、好ましくは、心筋細胞を50%、60%、70%、80%または90%以上含有するよう濃縮させることである。より好ましくは、100%心筋細胞からなる細胞集団を得ることである。

0014

NCAM1とは、neural cell adhesion molecule 1、CD56、NCAMまたはMSK39として知られる細胞接着に関連する遺伝子である。例えば、ヒトの場合、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号NM_000615、NM_001076682、NM_001242607またはNM_181351に記載された遺伝子または遺伝子によってコードされるタンパク質である。NCAM1には、選択的スプライシングによるアイソフォームも含まれる。

0015

SSEA3、SSEA4とは、GL-5およびGL-70と名付けられた、関連するスフィンゴ糖脂質上のエピトープであって、それぞれAnti-Stage-Specific Embryonic Antigen-3、Anti-Stage-Specific Embryonic Antigen-4として知られる。また、SSEA3、SSEA4は、MC631抗体とMC813-70抗体によってそれぞれ認識されることが知られている(Brimble SN et al., Stem Cells. 2007 Jan;25(1):54-62.)。SSEA3、SSEA4は、幹細胞の表面に特異的に発現することから、幹細胞マーカーとして一般に利用されている。

0016

CD340とは、v-erb-b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 2(ERBB2)、HER-2/neuなどとして知られるEGF受容体ファミリーメンバーである。例えば、ヒトの場合、NCBIのアクセッション番号NM_001005862またはNM_004448に記載された遺伝子または当該遺伝子によってコードされるタンパク質である。

0017

NCAM1、SSEA3、SSEA4および/またはCD340を指標として心筋細胞を含有する細胞集団から心筋細胞を抽出する場合、これらの遺伝子またはこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質は、単独で、またはそれらを2つ以上任意に組み合わせて使用され得る。NCAM1、SSEA3、SSEA4およびCD340を組み合わせて使用する場合、好ましくは、単独で使用する場合と比較して心筋細胞の濃縮率は高められる。

0018

心筋細胞とは、自己拍動の特性を有する心筋の細胞を意味する。心筋細胞は、心筋マー
カーである心筋トロポニン(cTnTまたはtroponin T type 2)陽性および/またはαMHC(α myosin heavy chain)陽性であることによって特徴づけられる。

0019

<多能性幹細胞>
本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞である。多能性幹細胞の例としては、以下のものに限定されないが、胚性(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹細胞(ntES細胞)、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ES細胞、ntES細胞、およびiPS細胞である。

0020

(A)胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。

0021

ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後のである胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された(J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A.
Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et
al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。

0022

ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞フィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、および/または塩基性線維芽細胞成長因子(basicfibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUS5,843,780B; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。

0023

ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM2-メルカプトエタノール、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20%KSR及び4ng/ml bFGFを添加したDMEM/F-12培養液を使用し、37℃、2% CO2/98% 空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O. Fumitaka et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:215-224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2及び20% KSRを含有するPBS中の0.25%トリプシン及び0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。

0024

ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、および/またはNanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-TimePCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、および/またはECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。

0025

ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2及びKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能で
ある。

0026

(B)精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウス作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,土社(東京、日本))。

0027

(C)胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。

0028

(D)人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem
Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson
et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、KimJB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720に記載の組み合わせが例示される。

0029

上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(V
PA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標) (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LTUTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。

0030

初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATまたはポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。

0031

一方、初期化因子がDNAの形態の場合、例えば、ウイルスプラスミド人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクターレンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクターセンダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーターエンハンサーリボゾーム結合配列ターミネーターポリアデニル化イトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子アンピシリン耐性遺伝子ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。

0032

また、初期化因子がRNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって各初期化因子を体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。

0033

iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12およびDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)および市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプセル社)、
無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。

0034

培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液中で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。

0035

あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシンピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009),PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。

0036

この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。

0037

上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2あたり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。

0038

iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。

0039

明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、及び成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、及び株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞造血幹細胞間葉系幹細胞歯髄幹細胞等の組織幹細胞体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球上皮細胞内皮細胞筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞肝細胞胃粘膜細胞、腸細胞脾細胞膵細胞(外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。

0040

また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞である。

0041

(E)核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
ntES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がntES(nuclear transfer ES)細胞である。ntES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B.Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。

0042

<多能性幹細胞から心筋細胞を製造する方法>
多能性幹細胞から心筋細胞への分化誘導方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。

0043

多能性幹細胞を任意の方法で分離し、浮遊培養またはコーティング処理された培養皿を用いて接着培養を行ってもよい。ここで、分離の方法としては、力学的、EDTA溶液(例えば、0.5mM EDTA溶液またはVersene(invitrogen社)が挙げられる)、プロテアーゼ活性コラゲナーゼ活性を有する分離溶液(例えば、Accutase(TM)およびAccumax(TM)が挙げられる)またはコラゲナーゼ活性のみを有する分離液を用いても良い。ここで、浮遊培養においては、培養皿の表面が、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていないもの、もしくは、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)によるコーティング処理)したものを使用できる。接着培養においては、例えば、マトリゲル(BD)、I型コラーゲンIV型コラーゲンゼラチンラミニンヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンクチン、およびこれらの組み合わせを用いてコーティング処理された培養皿を使用できる。

0044

ここで、浮遊培養および接着培養を組み合わせて行っても良い。本発明の態様において、組み合わせた場合、浮遊培養後、そのまま接着培養を行っても良く、もしくは浮遊培養により作製された中胚葉系の細胞を選択した後、接着培養を行っても良い。ここで、中胚葉とは、発生の過程体腔およびそれを裏打ちする中皮筋肉骨格皮膚真皮結合組織、心臓・血管(血管内皮も含む)、血液(血液細胞も含む)、リンパ管脾臓腎臓および尿管性腺(精巣、子宮、性腺上皮)をつくる能力を有した細胞から構成される胚葉を包含する。例えば、T、KDR、FOXF1、FLK1およびBMP4と言ったマーカーの発現により示される。好ましくは、KDRまたはFLK1を発現する細胞である。

0045

接着培養はフィーダー細胞と共培養を行っても良い。ここで、共培養に用いられるフィーダー細胞は、OP9細胞(Nishikawa, S.I. et al, Development 125, 1747-1757 (1998))またはEND-2細胞(Mummery C, et al,Circulation. 107:2733-40 (2003))が例示されるが、移植用細胞の材料として用いる場合、他種の細胞の混入を防ぐ観点から、共培養を行わないことが望まれる。

0046

また、他の態様として、任意の方法で分離された多能性幹細胞から胚様体(EB)を形成した後、任意の培地中コーティング処理された培養皿で接着培養する。また他の態様として、任意の方法で分離された多能性幹細胞から胚様体(EB)を形成し、次に任意の培地中コーティング処理された培養皿で接着培養した後、再びEBを形成する。これらの方法によって心筋細胞を誘導することができる。EBの形成は、通常、浮遊培養により行われるがこ
れに限定されない。

0047

本工程における培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Doulbecco’s modified Eagle’s Medium (DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、StemPro34培地である。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミントランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、脂肪酸インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロール、ITS−サプリメントなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、B27-サプリメント、N2-サプリメント、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン増殖因子、サイトカイン、Wnt阻害剤、抗生物質抗酸化剤ピルビン酸緩衝剤無機塩類などの1つ以上の物質も含有しうる。サイトカインとして、activinA、BMP4、b-FGF、VEGFが例示される。Wnt阻害剤の例としては、DKK1(NCBI Accession No. NM_012242(ヒト))、スクレロスチン(Sclerostin:NCBI Accession No. NM_025237(ヒト))、IWR-1(メルクミリポア)、IWP-2(シグマアルドリッチ)、IWP-3(シグマアルドリッチ)、IWP-4(シグマアルドリッチ)、PNU-74654(シグマアルドリッチ)、XAV939(シグマアルドリッチ)、およびそれらの誘導体が包含される。

0048

上記の物質を培地に添加する場合、培養時期ごとに加える薬剤を変えてもよい。また、上記の物質の濃度は、適用される細胞の種類に応じて任意に設定することが可能である。

0049

培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。培養時間は、心筋トロポニンおよび/またはαMHCが発現するために必要な日数であり、例えば8日以上である。

0050

心筋細胞への分化誘導工程は、低酸素条件下で行われてもよい。低酸素条件下における酸素濃度は、例えば、1〜10%であり、好ましくは、5%であるが、これらに限定されない。低酸素条件の期間は、心筋細胞への分化誘導を達成し得る限り特に限定されるものではないが、例えば、1〜20日間であり、好ましくは、12日間である。

0051

たとえば、多能性幹細胞から心筋細胞を製造する方法として、低酸素条件にて、BMP4およびROCK阻害薬を添加したStemPro34中で24時間培養してEBを形成し、次に、activin A、BMP4およびbFGFを添加した培地で3日間、続いてVEGFおよびDKK-1を添加した培地で4日間培養、さらにVEGFおよびb-FGFを添加した培地で数日間培養する条件が例示される。最後の培養工程は、心筋細胞マーカーによる細胞評価を行うために任意の期間行うことが可能である。

0052

このように製造された心筋細胞は、単一の種類の細胞集団であってもよいし、他の種類の細胞が含有された細胞集団であってもよい。

0053

<心筋細胞の抽出または検出方法>
心筋細胞を含有する細胞集団より心筋細胞の抽出または検出のために、NCAM1、SSEA3、SSEA4またはCD340に特異的親和性を有する試薬であれば何でもよく、抗体、アプタマーペプチドまたはそのような蛋白質を特異的に認識する化合物などを用いることができ、好ましくは、抗体もしくはその断片である。

0054

抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってよい。これらの抗体は、当業
者に周知の技術を用いて作成することが可能である(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987) Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12-11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したNCAM1、SSEA3、SSEA4またはCD340がコードするタンパク質、あるいはそれら蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って当該抗体を得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、上述の免疫された非ヒト動物から得られた脾臓細胞骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987) Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4-11.11)。抗体の断片としては、抗体の一部(たとえばFab断片)または合成抗体断片(たとえば、一本鎖Fv断片「ScFv」)が例示される。FabおよびF(ab)2断片などの抗体の断片もまた、遺伝子工学的に周知の方法によって作製することができる。

0055

親和性を有する試薬が結合した細胞を区別、分離するため、当該試薬は、たとえば、蛍光標識放射性標識化学発光標識酵素ビオチンまたはストレプトアビジン等の検出可能な物質、またはプロテインAプロテインG、ビーズまたは磁気ビーズ等の細胞の単離抽出を可能とさせる物質と、結合または接合されていてもよい。

0056

当該親和性を有する試薬は、間接的に標識してもよい。当該標識は、当業者に公知の様々な方法を使用して行い得るが、例えば、NCAM1、SSEA3、SSEA4またはCD340に対する抗体に特異的に結合する予め標識された抗体(二次抗体)を用いる方法が挙げられる。

0057

心筋細胞を検出する方法には、たとえば、フローサイトメーター、または心筋細胞を単離精製した後、別途細胞を検出する方法(例えば、プロテインチップ)を用いることが含まれる。

0058

心筋細胞を抽出する方法には、当該親和性を有する試薬へ親和大きな粒子を接合させ沈降させる方法、磁気ビーズを用いて磁性により細胞を選別する方法(例えば、MACS)、蛍光標識を用いてセルソーターを用いる方法、または抗体等が固定化された担体(例えば、細胞濃縮カラム)を用いる方法等が例示される。

0059

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。

0060

実施例1
多能性幹細胞株の作製
心筋細胞特異的にEGFPを発現する201B7-M6GIP4株および606A1株を、下記の通り作製した。201B7-M6GIP4株および606A1株は、従来の方法で培養した(Takahashi K, et al. Cell. 131: 861-72, 2007およびNakagawa M, et al. Nat Biotechnol. 26: 101-6, 2008)。

0061

(1)201B7-M6GIP4株
ヒト線維芽細胞レトロウィルスでOCT3/4,SOX2,KLF4,C-MYCを遺伝子導入し、マイトマイシン処理したSNLフィーダー細胞上で培養することによりiPS細胞を樹立した(201B7株)。この201B7株にヒトMYH6遺伝子のプロモーター領域とEGFP遺伝子の配列を遺伝子導入した細胞株を作製した(201B7-M6GIP4株)。この201B7-M6GIP4株は分化誘導により心筋細胞特異的にGFP発現が認められることが確認されている。

0062

(2)606A1株
ヒト臍帯血細胞に対してOCT3/4,SOX2,KLF4,LIN28,L-MYC,p53 shRNAiを発現させるエピソーマルベクターセット(pCXLE-hOct3/4-shp53-F, pCXLE-hSK, pCXLE-hUL)を電気穿孔法で遺伝子導入し、マイトマイシン処理したマウス胎仔線維芽細胞フィーダー上で培養することにより、iPS細胞株(606A1株)を作製した。

0063

上記(1)、(2)の細胞を6cmディッシュ上で80-90%コンフルエントになるまで培養した。当該培養細胞からフィーダー細胞を除去した後の細胞を、Trypsin/EDTAを用いてマトリゲルコートしたディッシュ上に播種し、さらに3-4日培養して、Collagenase BおよびTrypsin/EDTA液の添加により剥離させた。

0064

実施例2
心筋細胞誘導法
ヒトiPS細胞を 1ウェルあたり1.5-2.0×106の濃度でディッシュへ播種し、低酸素条件(5%)にて、10ng/ml BMP4および10μM ROCK阻害薬を添加したStemPro34培地中で 24時間培養して、EBを形成させた。翌日、6ng/ml activin A(R & D Systems)、10ng/ml BMP4(R & D Systems)および5ng/ml bFGF(R & D Systems)を添加した培地へ交換し3日間培養した。次いで、10ng/mlVEGF(R & D Systems)および150ng/ml DKK-1(R & D Systems)を添加した培地へ交換し4日間培養した後、10ng/ml VEGF(R & D Systems)および5ng/ml bFGF(R & D Systems)を添加した培地へ交換してさらに52日間培養し続けた。iPS細胞から心筋細胞への各分化段階における細胞を、下記にて述べる心筋細胞マーカーによる細胞評価に用いた。

0065

実施例3
心筋細胞マーカーNCAM1による細胞評価
実施例2の方法で誘導したヒトiPS細胞(201B7-M6GIP4株および606A1株)由来の心筋細胞を、誘導0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目に抗NCAM1抗体(BD)にて染色し、フローサイトメトリーを用いて評価した(図2)。30日目にNCAM1の発現差異を利用して心筋細胞純化を行ったところ、トロポニンT陽性心筋細胞の比率は、純化しなかった場合には58.5%であったのに対し、NCAM1高度発現、中等度発現細胞をフローサイトメトリーにて選別すると、それぞれ88.6%、71.3%と高純度の心筋細胞を得ることができた(図3)。

0066

上より、NCAM1を心筋細胞分化の指標として用いることで、心筋細胞の識別が可能であることが示された。

0067

実施例4
心筋細胞マーカーSSEA3による細胞評価
実施例2の方法で誘導したヒトiPS細胞(201B7-M6GIP4株および606A1株)由来の心筋細胞を、誘導0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目に抗SSEA3抗体(BD)にて染色し、フローサイトメトリーを用いて評価したところ、8日目の未熟な心筋細胞ではマーカーが陰性であったが、16〜26日目にMYH6陽性心筋細胞の一部で高発現を認めた(図4)。

0068

16日目にSSEA3の発現差異を利用して心筋純化を行ったところ、純化前はMYH6陽性細胞率が69.7%であったのに対し、純化後は81.5%と高値を示した。

0069

以上より、SSEA3を心筋細胞分化の指標として用いることで、心筋細胞の識別が可能であることが示された。

0070

実施例5
心筋細胞マーカーSSEA4による細胞評価
実施例2の方法で誘導したヒトiPS細胞(201B7-M6GIP4株および606A1株)由来の心筋細胞を、誘導0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、26日目、33日目、45日目および60日目に抗SSEA4抗体(BD)にて染色し、フローサイトメトリーを用いて評価したところ、8日目の未熟心筋細胞ではマーカーが陰性であったが、12日目以降にMYH6陽性心筋細胞の多くで高発現を認め、特に12〜33日目ではMYH6陽性心筋細胞の大部分に高発現を認めた(図5)。

0071

16日目にSSEA4の発現差異を利用して心筋純化を行ったところ、純化前はMYH6陽性細胞率が69.7%であったのに対し、純化後は84.0%と高値を示した。

0072

以上より、SSEA4を心筋細胞分化の指標として用いることで、心筋細胞の識別が可能であることが示された。

0073

実施例6
心筋細胞マーカーCD340による細胞評価
実施例2の方法で誘導したヒトiPS細胞(201B7-M6GIP4株および606A1株)由来の心筋細胞を、誘導0日目、4日目、8日目、12日目、16日目、20日目、30日目および45日目に抗CD340抗体(BD)にて染色し、フローサイトメトリーを用いて評価したところ、誘導8日目以降でMYH6陽性心筋細胞はCD340陽性であった(図6)。16日目および30日目にCD340の発現差異を利用して心筋純化を行ったところ、16日目においては純化前のMYH6陽性細胞率が35.7%であったのに対し、純化後には71.2%となり、また30日目においては純化前が36.7%であったのに対し純化後には65.7%となった。

実施例

0074

以上より、CD340を心筋細胞分化の指標として用いることで、心筋細胞の識別が可能であることが示された。

0075

本発明によれば、心筋細胞を含む細胞集団から心筋細胞を効率的に抽出または検出することができる。

0076

本発明は、好ましい態様を記載しているが、好ましい態様が改変可能であることは、当業者にとり明らかである。本発明は、本明細書において詳述された方法以外によって、具体的に表現され得るものであることを意図している。したがって、本発明は、特許請求の範囲の要旨と範囲に含まれる全ての改変を包含する。

0077

本明細書において引用された特許明細書および特許出願明細書を含む刊行物に記載の内容は、参照により、本明細書に開示される範囲で、その全体が本明細書に援用される。

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