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この項目の情報は公開日時点(2015年9月10日)のものです。
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課題・解決手段

本発明は、酸性pHよりも中性pHでより大きい親和性によってプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン−9(PCSK9)を特異的に結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。本発明の抗体は、pH依存性結合特性を示さない抗体と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸変化を有してもよい。例えば、本発明は、1つまたはそれ以上の相補性決定領域中に1つまたはそれ以上のヒスチジン置換を有する抗PCSK9抗体を含む。pH依存性結合特性を有する本発明の抗体は、血行中にとどまり、動物対象においてpH依存性結合特性を示さない抗PCSK9抗体と比較して延長された期間にわたってコレステロール低下活性を示す。したがって、本発明の抗体は、高HDLコレステロールに関連する疾患および障害治療に有用であり、ここで、本発明の抗体は、pH依存性結合特性を示さない抗体と比較してより少ない用量および/またはより少ない投与頻度患者に投与することができる。

概要

背景

プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、分泌性サブチラーゼファミリープロテイナーゼサブファミリーに属するプロタンパク質転換酵素である。コードされたタンパク質は、小胞体中で自己触媒的分子内処理を受ける可溶性酵素原として合成される。循環PCSK9は、肝細胞の表面上の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合し、それを破壊の標的とする。この過程は、LDLコレステロール(LDL−C)を結合して除去する肝臓能力を低下させ、そのため、LDL−Cレベルが上昇することになる。PCSK9を特異的に結合し、LDL受容体とのその相互作用遮断する抗体は、ヒト対象における血清LDL−Cレベルの低下に治療上有用であることが示されている。(例えば、非特許文献1を参照のこと)。

治療作用をもたらすために必要な抗体の投与量および/または投与頻度は、一般に単一抗体分子中和することができる抗原の数によって決まる。例えば、抗体が宿主内で分解の標的となる前に、抗体が1つの抗原にしか結合して中和できない場合、治療作用をもたらすために比較的多量の抗体を投与しなければならない、かつ/または抗体を比較的頻繁に投与しなければならない。一方、1つの抗体が分解前に複数の抗原と繰り返し結合することができる場合、投与に必要な抗体はより少なくなり、より少ない頻度で投与することができ、結果として有効な治療反応になる。

当分野では、現在知られている入手可能なPCSK9アンタゴニストで必要とされるものより低い投与量で、かつ/またはより長期間にわたって有効な治療反応をもたらすことができる、PCSK9を結合できる新たな治療分子が必要とされている。

概要

本発明は、酸性pHよりも中性pHでより大きい親和性によってプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン−9(PCSK9)を特異的に結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。本発明の抗体は、pH依存性結合特性を示さない抗体と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸変化を有してもよい。例えば、本発明は、1つまたはそれ以上の相補性決定領域中に1つまたはそれ以上のヒスチジン置換を有する抗PCSK9抗体を含む。pH依存性結合特性を有する本発明の抗体は、血行中にとどまり、動物対象においてpH依存性結合特性を示さない抗PCSK9抗体と比較して延長された期間にわたってコレステロール低下活性を示す。したがって、本発明の抗体は、高HDLコレステロールに関連する疾患および障害の治療に有用であり、ここで、本発明の抗体は、pH依存性結合特性を示さない抗体と比較してより少ない用量および/またはより少ない投与頻度で患者に投与することができる。

目的

本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対するpH依存性結合を示す抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
3件

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請求項1

表面プラズモン共鳴によって測定して、酸性pHよりも中性pHで少なくとも13倍大きな親和性によってヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント

請求項2

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、酸性pHよりも中性pHで少なくとも14倍大きな親和性によってPCSK9を結合する、請求項1に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項3

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、酸性pHよりも中性pHで少なくとも15倍大きな親和性によってPCSK9を結合する、請求項2に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項4

ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する該抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比が約12.5を超える、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項5

ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する該抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比が約7.5を超える、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項6

ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する該抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性t1/2比が約0.14未満である、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項7

25℃および酸性pHで約4.5分未満の解離半減期(t1/2)によってヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、該抗体またはその抗原結合性フラグメントが、25℃および中性pHで約35分を超えるt1/2によってPCSK9を結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項8

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、25℃および酸性pHで約2分未満の解離半減期(t1/2)によってPCSK9を結合し、該抗体またはその抗原結合性フラグメントが、25℃および中性pHで35分を超えるt1/2によってPCSK9を結合する、請求項7に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項9

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、25℃および酸性pHで約1.5分未満の解離半減期(t1/2)によってPCSK9を結合し、該抗体またはその抗原結合性フラグメントが、25℃および中性pHで35分を超えるt1/2によってPCSK9を結合する、請求項8に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項10

表面プラズモン共鳴によって測定して、中性pHでPCKS9に結合する抗体のt1/2よりも少なくとも10倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する、単離された抗体またはそれについて抗原結合性フラグメント。

請求項11

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、中性pHでhPCKS9に結合する抗体のt1/2よりも少なくとも15倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する、請求項10に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項12

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、中性pHでPCKS9に結合する抗体のt1/2よりも少なくとも20倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する、請求項11に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項13

酸性pHよりも中性pHで少なくとも12倍より大きな親和性によってPCSK9を結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、該抗体またはその抗原結合性フラグメントが、中性pHでPCKS9に結合する抗体のt1/2よりも少なくとも10倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項14

酸性pHでの抗体またはその抗原結合性フラグメントのPCSK9/LDLR遮断IC50値よりも少なくとも36倍より小さいIC50によって中性pHでヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)と低密度リポタンパク質受容体(LDLR)との間の相互作用を遮断する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項15

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントを約10mg/kgの単回投与で対象に投与したとき、血清LDL−Cがベースラインから少なくとも33%低下し、該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも26日間持続する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項16

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントを約10mg/kgの単回投与で対象に投与したとき、血清LDL−Cがベースラインから少なくとも33%低下し、該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも33日間持続する、請求項15に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項17

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントを約10mg/kgの単回投与で対象に投与したとき、血清LDL−Cがベースラインから少なくとも15%低下し、該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも42日間持続する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項18

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントを約10mg/kgの単回投与で対象に投与したとき、血清LDL−Cがベースラインから少なくとも15%低下し、該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも55日間持続する、請求項17に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項19

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、該HCVRが、配列番号:218またはN52H、Q53H、I100H、V101H、V104H、D106H、M107H、D108HおよびY112Hからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み;かつ該LCVRが、配列番号:226またはL29H、L30H、N33H、G34H、Y37H、L97H、T99HおよびP100Hからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項20

前記HCVRがD106Hアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み、かつ前記LCVRが配列番号:226を含む、請求項19に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項21

前記HCVRが配列番号:218を含み;かつ前記LCVRがL30Hアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、請求項19に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項22

前記HCVRがD106Hアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み、かつ前記LCVRがL30Hアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、請求項19に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項23

前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、該HCDR1が、配列番号:220(親)を含み;該HCDR2が、配列番号:222(親)、772(N52H)および773(Q53H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;該HCDR3が、配列番号:224(親)、782(I100H)、783(V101H)、786(V104H)、788(D106H)、789(M107H)、790(D108H)および794(Y112H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;該LCDR1が、配列番号:228(親)、801(L29H)、802(L30H)、804(N33H)、805(G34H)および808(Y37H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;該LCDR2が、配列番号:230(親)を含み;該LCDR3が、配列番号:232(親)、815(L97H)、817(T99H)および818(P100H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項24

前記HCDR2が配列番号:222(親)を含み;前記HCDR3が配列番号:224(親)または788(D106H)を含み;前記LCDR1が配列番号:228(親)または802(L30H)を含み;かつ前記LCDR3が配列番号:232(親)を含む、請求項23に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項25

前記HCDR3が配列番号:788(D106H)を含み、かつ前記LCDR1が配列番号:228(親)を含む、請求項24に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項26

前記HCDR3が配列番号:224(親)を含み、かつ前記LCDR1が配列番号:802(L30H)を含む、請求項24に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項27

前記HCDR3が配列番号:788(D106H)を含み、かつ前記LCDR1が配列番号:802(L30H)を含む、請求項24に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項28

対象において血清LDL−Cレベルを低下させる方法であって、請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントの治療有効量を含む医薬組成物を該対象に投与することを含む方法。

請求項29

前記対象の血清LDL−Cレベルが、医薬組成物の投与後にベースラインから少なくとも33%低下し、かつ該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも26日間持続する、請求項28に記載の方法。

請求項30

前記対象の血清LDL−Cレベルが、医薬組成物の投与後にベースラインから少なくとも33%低下し、かつ該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも33日間持続する、請求項29に記載の方法。

請求項31

前記対象の血清LDL−Cレベルが、医薬組成物の投与後にベースラインから少なくとも15%低下し、かつ該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも42日間持続する、請求項28に記載の方法。

請求項32

前記対象の血清LDL−Cレベルが、医薬組成物の投与後にベースラインから少なくとも15%低下し、かつ該血清LDL−Cの低下が、投与後、少なくとも55日間持続する、請求項31に記載の方法。

請求項33

高コレステロール血症を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントの治療有効量を含む医薬組成物を投与することを含む方法。

請求項34

ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する該抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比が、3.0から8.0の間である、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項35

表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する前記抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比が、4.0から7.0の間である、請求項34に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項36

表面プラズモン共鳴によって測定して、25℃でPCSK9に結合する抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比が、5.0から7.0の間である、請求項35に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項37

25℃でPCSK9に結合する抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性t1/2比が、表面プラズモン共鳴によって測定して、約0.14未満である、請求項34〜36のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項38

25℃でPCSK9に結合する抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性t1/2比が、表面プラズモン共鳴によって測定して、約0.13未満である、請求項37に記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。

請求項39

表面プラズモン共鳴によって測定して、約35分未満かつ約10.5分を超えるt1/2によって、pH6.0および25℃でヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項40

表面プラズモン共鳴によって測定して、約20分未満かつ約12分を超えるt1/2によって、pH6.0および25℃でヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する、請求項39に記載の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項41

表面プラズモン共鳴によって測定して、約16分未満かつ約14分を超えるt1/2によって、pH6.0および25℃でヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を結合する、請求項40に記載の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項42

pH依存性結合特性を有する抗体を生成する方法であって、(a)抗体の集団スクリーニングして抗原に対して少なくとも中程度のpH依存性結合を示す1つまたはそれ以上の抗体を特定することと、(b)(a)で特定された抗体を突然変異誘発にかけて抗原に対する抗体のpH依存性結合を増強させることとを含む方法。

請求項43

前記スクリーニングステップ(a)が、約3.0を超えるが約8.0未満の酸性/中性KD比によって抗原を結合する抗体を特定することを含む、請求項42に記載の方法。

請求項44

前記スクリーニングステップ(a)が、約1.0未満であるが約0.15を超える酸性/中性KD比によって抗原を結合する抗体を特定することを含む、請求項42に記載の方法。

請求項45

前記酸性/中性KD比が、酸性pHでおよび中性pHで表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される、請求項43に記載の方法。

請求項46

前記酸性/中性t1/2比が、酸性pHでおよび中性pHで表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される、請求項44に記載の方法。

請求項47

前記突然変異誘発ステップ(b)が、抗体の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)中の1つまたはそれ以上のアミノ酸ヒスチジン置換することを含む、請求項42〜46のいずれか1項に記載の方法。

請求項48

前記ステップ(a)および(b)から生じる抗体が、約4.0と等しいまたはそれを超える酸性/中性KD比、および/または約0.14と等しいまたはそれ未満の酸性/中性t1/2比を示す、請求項42〜47のいずれか1項に記載の方法。

請求項49

pH依存性結合特性を有する抗体を生成する方法であって、(a)抗体の集団をスクリーニングして、pH6.0で約20分を超えるが約40分未満のt1/2によって抗原に対するpH依存性結合を示す1つまたはそれ以上の抗体を特定することと、(b)(a)で特定された該抗体を突然変異誘発にかけて、pH依存性結合を保持するが、pH6.0で約20分未満のt1/2を有する抗体を生成することとを含む方法。

請求項50

前記突然変異誘発ステップ(b)によってpH6.0で約5分未満のt1/2を有する抗体を生成する、請求項49に記載の方法。

請求項51

前記抗原がPCSK9である、請求項42〜50のいずれか1項に記載の方法。

請求項52

薬剤に使用するための請求項1〜27または34〜41のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項53

高コレステロール血症の治療に使用するため、または血清LDL−Cレベルを低下させるための請求項1〜27または34〜41のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。

請求項54

高コレステロール血症の治療に使用するため、または血清LDL−Cレベルを低下させるための請求項1〜27または34〜41のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)と特異的に相互作用する抗原結合性分子、ならびに高コレステロール血症およびコレステロールレベルの上昇を特徴とする他の関連障害治療するこのような分子の使用に関する。

背景技術

0002

プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、分泌性サブチラーゼファミリープロテイナーゼサブファミリーに属するプロタンパク質転換酵素である。コードされたタンパク質は、小胞体中で自己触媒的分子内処理を受ける可溶性酵素原として合成される。循環PCSK9は、肝細胞の表面上の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合し、それを破壊の標的とする。この過程は、LDLコレステロール(LDL−C)を結合して除去する肝臓能力を低下させ、そのため、LDL−Cレベルが上昇することになる。PCSK9を特異的に結合し、LDL受容体とのその相互作用を遮断する抗体は、ヒト対象における血清LDL−Cレベルの低下に治療上有用であることが示されている。(例えば、非特許文献1を参照のこと)。

0003

治療作用をもたらすために必要な抗体の投与量および/または投与頻度は、一般に単一抗体分子中和することができる抗原の数によって決まる。例えば、抗体が宿主内で分解の標的となる前に、抗体が1つの抗原にしか結合して中和できない場合、治療作用をもたらすために比較的多量の抗体を投与しなければならない、かつ/または抗体を比較的頻繁に投与しなければならない。一方、1つの抗体が分解前に複数の抗原と繰り返し結合することができる場合、投与に必要な抗体はより少なくなり、より少ない頻度で投与することができ、結果として有効な治療反応になる。

0004

当分野では、現在知られている入手可能なPCSK9アンタゴニストで必要とされるものより低い投与量で、かつ/またはより長期間にわたって有効な治療反応をもたらすことができる、PCSK9を結合できる新たな治療分子が必要とされている。

先行技術

0005

Stein et al., New Engl. J. Med. 2012; 366:1108-1118

課題を解決するための手段

0006

本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対するpH依存性結合を示す抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。例えば、本発明は、酸性pHよりも中性pHでより高い親和性によってPCSK9を結合する(すなわち、酸性pHで結合親和性が低下する)抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。本明細書に記載された実施例に説明するように、酸性pHで低下した結合親和性を有する抗PCSK9抗体は、酸性pHで低下した結合親和性を示さない抗体と比較してさまざまな改善された/増強された生物学的特性を備えている。例えば、酸性pHで低下した結合親和性を有する本発明の抗PCSK9抗体は、酸性pHで低下した結合親和性を示さない抗PCSK9抗体と比較して動物対象(ヒト患者を含む)に投与したときに、血行中でより長い半減期を有する。換言すれば、酸性pHでPCSK9に対する低下した結合親和性を有する本発明の抗PCSK9抗体は、pH依存性結合がない抗PCSK9抗体よりもゆっくりと血行から取り除かれる。より遅い抗体クリアランス(すなわち、血行中のより長い半減期)は、本発明の抗体の延長されたコレステロール低下効力と関連がある。したがって、本発明の抗体は、酸性pHで低下した結合親和性を有しない抗PCSK9抗体よりも、少ない頻度および/または少ない用量で対象に投与することができるが、それにもかかわらず、それと同等の(または、より良好な)有効性を示すことになる。

0007

理論によって拘束されるわけではないが、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対するより低い結合親和性を有する抗PCSK9抗体は、エンドソーム酸性環境中で抗原から解離し、血漿に再利用され、ここで、さらなる治療的抗原結合ラウンドを受けることができると考えられる。この現象は、「抗体リサイクリング(antibody recycling)」または「キャッチアンドリリース(catch-and-release)」と呼ばれており、単一抗体分子が複数の抗原に結合して中和することができるため、in vivoでの抗体の効力を大いに改善することができる。対照的に、中性pHと比較して酸性pHで同等のまたはより大きな親和性によってPCSK9を結合する抗体は、分解のためリソソームに送られた後、エンドソーム中で抗原とのその強い結合によって抗体−抗原結合ラウンドを1回だけ受ける。

0008

抗PCSK9抗体の結合特性は、例えば、表面プラズモン共鳴によってin vitroで定量化することができ、これにより、中性pHおよび酸性pHでPCSK9に結合する抗体についての結合特性の数値(例えばka、kd、KD、t1/2など)が得られる。これらのパラメータは、抗体がpH依存性結合特性によってPCSK9を結合するかどうかを明らかにするために用いることができる。したがって、本発明は、表面プラズモン共鳴により測定して、酸性pHよりも中性pHで少なくとも5倍高い親和性によってPCSK9を結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(または、逆に記載すると、表面プラズモン共鳴により測定して中性pHよりも酸性pHで少なくとも5倍低い親和性によってPCSK9を結合する抗体)を含む。また、本発明は、表面プラズモン共鳴により測定して、中性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2より少なくとも5倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(または、逆に記載すると、表面プラズモン共鳴により測定して、酸性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2より少なくとも5倍長いt1/2によって中性pHでPCSK9を結合する抗体)を含む。特定の実施態様によれば、酸性pHよりも中性pHで少なくとも5倍高い親和性によってPCSK9を結合し、中性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2より少なくとも5倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する抗PCSK9抗体が提供される。

0009

本発明の特定の実施態様によれば、約10mg/kgの用量で対象に投与したとき、血清LDL−Cをベースラインから少なくとも25%低下させ、少なくとも20日間、血清LDL−Cの低下を持続させる抗PCSK9抗体が提供される。

0010

本発明の抗PCSK9抗体は、例えば、pH依存性結合を示さないか、または中程度のpH依存性結合しか示さない親抗PCSK9抗体のアミノ酸配列突然変異させ、それによってpH依存性結合を示す変異型抗PCSK9抗体を生成することによって得てもよい。例えば、親抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上の相補性決定領域(CDR)内の1つまたはそれ以上のアミノ酸ヒスチジン残基に〕えてもよく、得られたヒスチジン変異抗体をpH依存性結合(例えば、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した親和性)について試験することができる。

0011

本発明により、増強されたpH依存性結合特性を有する変異型抗PCSK9抗体を産生するためアミノ酸配列レベルで修飾してもよい例示的な親抗PCSK9抗体は、300Nと呼ばれる抗体である。あるいは、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体がヒスチジン置換突然変異誘発を介して誘導されうる親抗体として、抗体300Nの重鎖および軽鎖可変ドメイン(HCVR/LCVR)(すなわち、配列番号:218/226を含む)を含む、または抗体300Nの重鎖および軽鎖CDR(HCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3)を含む(すなわち、配列番号:220−222−224−228−230−232を含む)任意の抗PCSK9抗体を使用することができる。さらに、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体がヒスチジン置換突然変異誘発を介して誘導されうる親抗体として、HCVR/LCVRアミノ酸配列対、または本明細書の表1に示すHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3アミノ酸配列を含む任意の抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用してもよい。

0012

本発明は、PCSK9と拮抗することによって、例えば、PCSK9とLDL受容体(LDLR)との相互作用を遮断することによって治療可能であり、かつ/または改善される疾患および障害を治療する方法を含む。本発明のこの態様による方法は、それを必要とする対象に、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物を投与することを含む。本発明のこの態様による方法は、例えば、本明細書における他の箇所に開示された高コレステロール血症および他の関連疾患または障害を治療するために用いてもよい。

0013

また、本発明は、それを必要とする対象に、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体の多回投与を行うことを含む治療的投与療法を含む。本発明のこの態様内の特定の実施態様によれば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体の個々の用量を、1ヵ月に1回未満(例えば、2ヵ月毎に1回、3ヵ月毎に1回、4ヵ月毎に1回、など)の頻度で対象に投与してもよい。

0014

本発明は、本明細書に具体的に記載された例示的なPCSK9関連の疾患および障害のいずれかを含む、PCSK9と拮抗することによって、例えばPCSK9とLDL受容体(LDLR)との相互作用を遮断することによって治療可能であり、かつ/または改善される疾患および障害の治療に使用するためのpH依存性結合特性を有するその抗PCSK9抗体または抗原結合性フラグメントを含む。本発明のpH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントは、本明細書に教示された治療的投与療法に従って投与することができる。

0015

本発明は、PCSK9と拮抗することによって、例えばPCSK9とLDL受容体(LDLR)との相互作用を遮断することによって治療可能であり、かつ/または改善される疾患および障害の治療に使用するための医薬組成物、好ましくは、PCSK9と拮抗することによって治療可能であり、かつ/または改善される疾患および障害を治療する方法に関して本明細書に教示されたものを含む。本発明のこの態様による医薬組成物は、PCSK9と拮抗することによって治療可能であり、かつ/または改善される疾患および障害の治療に使用するためのpH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを含んでもよい。本発明の医薬組成物は、本明細書に教示された治療的投与療法のいずれかに従って投与することができる。

0016

他の実施態様は、続く詳細な説明の検討から明らかになるであろう。

図面の簡単な説明

0017

マウスPCSK9のみを発現する(すなわち、ヒトPCSK9を発現しない)マウスにおいて1mg/kgの用量で抗PCSK9抗体を皮下投与した後、さまざまな時点で測定した抗PCSK9抗体の血清中濃度を示す。
ヒトPCSK9(マウスPCSK9の代わりに)を発現するマウスにおいて、1mg/kgの用量で抗PCSK9抗体を皮下投与した後、さまざまな時点で測定した抗PCSK9抗体の血清中濃度を示す。図2A、2Bおよび2Cに示した実験に用いた抗体の説明は、本明細書の表5に示す。
ヒトPCSK9(マウスPCSK9の代わりに)を発現するマウスにおいて、1mg/kgの用量で抗PCSK9抗体を皮下投与した後、さまざまな時点で測定した抗PCSK9抗体の血清中濃度を示す。図2A、2Bおよび2Cに示した実験に用いた抗体の説明は、本明細書の表5に示す。
ヒトPCSK9(マウスPCSK9の代わりに)を発現するマウスにおいて、1mg/kgの用量で抗PCSK9抗体を皮下投与した後、さまざまな時点で測定した抗PCSK9抗体の血清中濃度を示す。図2A、2Bおよび2Cに示した実験に用いた抗体の説明は、本明細書の表5に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、316P(v1)および300N(v2)(図3A)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、VH−D106HおよびVK−L30H(図3B)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、VH−D106H/VK−L30Hおよびコンパレーター1(図3C)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、コンパレーター2およびコンパレーター3(図3D)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、コンパレーター4およびコンパレーター5(図3E)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、コンパレーター6およびコンパレーター7(図3F)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。
表面プラズモン共鳴結合実験からのセンサーグラムを示し、ここでは、抗PCSK9抗体を中性pH(pH7.4)でヒトPCSK9抗原と結合させた後、解離段階のための種々のpH(7.4、7.2、6.0および5.75)を有する緩衝液に取り換えた。これらの実験で試験した抗体は、コンパレーター8およびコンパレーター9(図3G)である。各グラフ中の個々の線は、それぞれの抗体の異なる濃度での結合レスポンスを表す。これらの実験に用いた抗体の説明を、本明細書の表5に示す。すべての実験は、37℃で実施した。解離半減期の値(t1/2)をそれぞれのセンサーグラムの上に示す。

0018

本発明を説明する前に、記載された特定の方法および実験条件は変化しうるため、本発明はこのような方法および条件に限定されるわけではないことを理解しなければならない。また、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるため、本明細書に用いる専門用語は、特定の実施態様を説明するためだけにあって、限定しようとするものでないことを理解しなければならない。

0019

特に明記しない限り、本明細書に用いるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に用いるように、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して用いるとき、その値が列挙された値から1%を超えずに逸脱してもよいことを意味する。例えば、本明細書に用いるように、「約100」という表現は、99および101ならびにその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4、など)を含む。

0020

本発明の実施または試験においては、本明細書に記載されたものと類似または同等のあらゆる方法および材料を用いることができるが、ここで、好ましい方法および材料を説明する。

0021

一般的な定義
「プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」、「PCSK9」、「PCSK9フラグメント」などの表現は、本明細書に用いるように、非ヒト種(例えば、「マウスPCSK9」、「マウスPCSK9フラグメント」、「サルPCSK9」、「サルPCSK9フラグメント」、など)からであると明記されていなければ、ヒトPCSK9タンパク質またはフラグメントのことをいう。ヒトPCSK9(本明細書では、しばしば「hPCSK9」と略す)は、配列番号:755に示すアミノ酸を有する。

0022

「抗体」という用語は、本明細書に用いるように、特定の抗原(例えば、PCSK9)と特異的に結合するか、または相互作用する、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、あらゆる抗原結合性分子または分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に結合された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖である4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、免疫グロブリンM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、HCVRまたはVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、LCVRまたはVLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存性の高い領域の間に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される。本発明の異なる実施態様では、抗体(またはその抗原結合性部分)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよく、または自然にもしくは人工的に修飾されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRの比較分析に基づいて定義してもよい。「抗体」という用語は、本明細書に用いるように、組換え抗体包含する。

0023

「抗体」という用語は、本明細書に用いるように、全抗体分子(full antibody molecules)の抗原結合性フラグメントも含む。抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性フラグメント」などの用語は、本明細書に用いるように、抗原を特異的に結合して複合体を形成する、いずれか天然の、酵素によって入手可能な、合成の、または遺伝子組換えポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性フラグメントは、例えば、抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技術またはタンパク質分解のようないずれかの適した標準技術を用いて全抗体分子から誘導してもよい。このようなDNAは知られており、かつ/または、例えば、商業的な供給源DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、配列決定し、化学的にまたは分子生物学的手法を用いて操作して、例えば、1つまたはそれ以上の可変および/または定常ドメインを適した配置に配列するか、またはコドンを導入し、システイン残基を生成し、アミノ酸などを修飾、付加もしくは除去しもよい。

0024

抗原結合性フラグメントの非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小限の認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束性(constrained)FR3−CDR3−FR4ペプチドが含まれる。他の遺伝子操作された分子、例えばドメイン特異的抗体単一ドメイン抗体ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二重特異性抗体三重特異性抗体、四重特性抗体、ミニ抗体ナノ抗体(例えば一価ナノ抗体、二価ナノ抗体、など)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ由来可変IgNARドメインもまた、本明細書に用いるように、「抗原結合性フラグメント」の表現内に包含される。

0025

抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的に少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってもよく、一般に1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、またはそれを含むフレーム中にある少なくとも1つのCDRを含むことになる。VLドメインと関連するVHドメインを有する抗原結合性フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは、任意の適した配置で互いに相対する状態にあってもよい。例えば、可変領域は二量体であって、VH−VH、VH−VLまたはVL−VL二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合性フラグメントは、単量体VHまたはVLドメインを含んでもよい。

0026

特定の実施態様において、抗体の抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの定常領域に共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含んでもよい。本発明の抗体の抗原結合性フラグメント内に見いだされうる可変および定常ドメインの非限定的な例示的配置としては、(i)VH−CH1;(ii)VH−CH2;(iii)VH−CH3;(iv)VH−CH1−CH2;(v)VH−CH1−CH2−CH3;(vi)VH−CH2−CH3;(vii)VH−CL;(viii)VL−CH1;(ix)VL−CH2;(x)VL−CH3;(xi)VL−CH1−CH2;(xii)VL−CH1−CH2−CH3;(xiii)VL−CH2−CH3;および(xiv)VL−CLが含まれる。上に記載された例示的配置のいずれかを含む可変および定常ドメインの任意の配置において、可変および定常ドメインは、互いに直接結合してもよいし、または完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって結合してもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間に可動性または半可動性の結合となる少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上の)アミノ酸からなってもよい。特定の実施態様において、ヒンジ領域は2から60の間のアミノ酸、例えば、5から50の間、または10から40の間のアミノ酸からなる。さらに、本発明の抗体の抗原結合性フラグメントは、互いにかつ/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインと非共有結合的結合または共有結合で(例えば、ジスルフィド結合によって)上記の可変および定常領域配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでもよい。

0027

ヒト抗体」という用語は、本明細書に用いるように、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変および定常領域を有する抗体を包含するものとする。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3中に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含んでもよい。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書に用いるように、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系から誘導されたCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むことは意図していない。特定の実施態様において、ヒト抗体は、本明細書において下に定義された組換えヒト抗体であることができる。

0028

「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書に用いるように、組換え手段によって作製、発現、生成または単離されるすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞に導入された組換え発現ベクターを用いて発現された抗体(さらに下に説明する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(さらに下に説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al. (1992) Nucl. AcidsRes. 20:6287-6295を参照のこと)または、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む他のなんらかの手段によって作製、発現、生成もしくは単離された抗体を含むものとする。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変および定常領域を有する。しかし、特定の実施態様において、このような組換えヒト抗体は、in vitroでの突然変異誘発(またはヒトIg配列に対してトランスジェニック動物を用いるとき、in vivoでの体細胞変異)にかけられ、そのため、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列から誘導されており、それらと関連があるが、in vivoにおいてヒト抗体生殖細胞系レパートリー内で天然に存在しえない配列となる。

0029

ヒト抗体は、ヒンジ不均一性(heterogeneity)に関連する2つの形態で存在することができる。一形態において、免疫グロブリン分子は、鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって二量体が一体となって保持されている約150〜160kDaの安定な4本鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は鎖間のジスルフィド結合を介して結合されておらず、共有結合した軽鎖および重鎖(半分の抗体)で構成される約75〜80kDaの分子が形成される。これらの形態は、アフィニティ精製の後でさえ分離するのが極めて困難である。

0030

種々の無傷IgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造の違いによるが、それに限定されるわけではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで著しく低下させることができる(Angal et
al. (1993) Molecular Immunology 30:105)。本発明は、例えば、産生において、所望の抗体形態の収率を改善するために望ましいことがありうる、ヒンジ、CH2またはCH
3領域中に1つまたはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。

0031

「単離された抗体」は、本明細書に用いるように、特定されており、その自然環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が自然に存在するか、もしくは自然に産生される組織もしくは細胞から分離された、または取り出された抗体が、本発明の目的の「単離された抗体」である。また、単離された抗体は、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップにかけられた抗体である。特定の実施態様によれば、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。

0032

「中和」または「遮断」抗体は、本明細書に用いるように、PCSK9に結合すると、PCSK9とLDL受容体(LDLR)またはLDLRの細胞外フラグメントとの間の相互作用を低下させるか、または検出可能な程度に阻害する抗体のことをいうものとする。

0033

本明細書に開示された抗PCSK9抗体は、この抗体が誘導された対応する生殖細胞系配列と比較してフレームワークおよび/または重鎖および軽鎖可変ドメインのCDR領域中に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の置換、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の挿入、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の欠失)を含んでもよい。このような突然変異は、本明細書に開示されたアミノ酸配列を、例えば、抗体配列の公開データベースから入手可能な生殖細胞系配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明の抗PCSK9抗体においてpH依存性結合特性を与える特定のアミノ酸変化は、本明細書の他の箇所で詳細に議論する。本発明は、本明細書に開示されたアミノ酸配列のいずれかから誘導されており、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸)が、抗体が誘導された生殖細胞系配列の対応する残基に、または別のヒト生殖細胞系配列の対応する残基に、または対応する生殖細胞系残基の保存的アミノ酸置換に突然変異している(このような配列変化は、本明細書においてまとめて「生殖細胞系突然変異」と呼ばれる)抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。当業者は、本明細書に開示された重鎖および軽鎖可変領域配列により出発して、1つまたはそれ以上の個々の生殖細胞系突然変異またはその組合せを含む、多くの抗体および抗原結合性フラグメントを容易に産生することができる。特定の実施態様では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基のすべてが、抗体が誘導された元の生殖細胞系配列に見いだされる残基に突然変異して戻る。別の実施態様では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸の範囲内もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸の範囲内に見いだされる突然変異残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に見いだされる突然変異残基のみが、元の生殖細胞系配列に突然変異して戻る。別の実施態様において、フレームワークおよび/またはCDR残基の1つまたはそれ以上が、異なる生殖細胞系配列(すなわち、抗体が最初に誘導された生殖細胞系配列と異なる生殖細胞系配列)の対応する残基に突然変異する。さらにまた、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つまたはそれ以上の生殖細胞系突然変異の任意の組合せを含んでもよく、例えば、ここでは、特定の個々の残基が、特定の生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異すると同時に、最初の生殖細胞系配列と異なる特定の他の残基が維持されるか、または異なる生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異する。一旦得られたら、1つまたはそれ以上の生殖細胞系突然変異を含む抗体および抗原結合性フラグメントは、改善された結合特異性、増加した結合親和性、改善されたまたは増強されたアンタゴニストまたはアゴニスト生物学的特性(場合によっては)、低下した免疫原性などのような1つまたはそれ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的なやり方で得られる抗体および抗原結合性フラグメントは、本発明内に包含される。

0034

また、本発明は、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されたHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗PCSK9抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されたHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば10またはそれ未満、8またはそれ未満、6またはそれ未満、4またはそれ未満、3またはそれ未満、2または1の保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PCSK9抗体を含む。

0035

エピトープ」という用語は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域において特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基のことをいう。単一抗原が、複数のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体が、抗原上の異なる領域に結合してもよく、異なる生物学的作用を有してもよい。エピトープは立体構造または線状のいずれであってもよい。立体構造エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の状況において、エピトープは、抗原上に糖類の部分、ホスホリル基またはスルホニル基を含んでもよい。

0036

「実質的な同一性」または「実質的に同一」という用語は、核酸またはそのフラグメントに関するときは、別の核酸(またはその相補鎖)を用いて適当なヌクレオチド挿入または欠失により最適に整列させたとき、配列同一性のいずれかのよく知られたアルゴリズム、例えば、以下に議論するような、FASTA、BLASTまたはGapによって測定して、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。配列同一性パーセンテージを、本開示中の核酸配列について示すとき、このようなパーセンテージは、特に明記しない限り、それぞれの参照核酸配列完全長に関して計算するものとする。参照核酸分子に対して実質的な同一性を有する核酸分子は、特定の場合、参照核酸分子によってコードされたポリペプチドと同じか、または実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。

0037

ポリペプチドに適用されるように、「実質的な類似性」または「実質的に類似した」という用語は、例えば、デフォルトギャップ質量(default gap weight)を用いてプログラムAPまたはBESTFITによって最適に整列させたとき、2つのペプチド配列が、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。配列同一性パーセンテージを本開示中のアミノ酸配列について示すとき、このようなパーセンテージは、特に明記しない限り、それぞれの参照アミノ酸配列の完全長に関して計算するものとする。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変えないことになる。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性または類似性の程度を上向きに調整して置換の保存的性質に関して補正してもよい。この調整を行う手段は、当業者によく知られている。例えば、Pearson (1994) MethodsMol. Biol. 24: 307-331を参照のこと。類似の化学的性質を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシンアラニンバリンロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖フェニルアラニンチロシンおよびトリプトファン;(5)塩基性側鎖リシンアルギニンおよびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパルテートおよびグルタメート、ならびに(7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが含まれる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタメート−アスパルテートおよびアスパラギン−グルタミンである。別法として、保存的置換は、Gonnet et al. (1992) Science 256: 1443-1445中に開示されたPAM250対数尤度マトリックス(log-likelihood matrix)において正の値を有する任意の変化である。「適度な保存的」置換は、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負でない値を有する任意の変化である。ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれており、配列解析ソフトウェアを用いて典型的に測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠失および他の修飾に割り当てられた類似性の手段を用いて、類似した配列を適合させる。例えば、GCGソフトウェアとしては、異なる生物種からの相同ポリペプチドのような密接に関連したポリペプチド間、または野生型タンパク質とその突然変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を明らかにするためにデフォルトパラメータで使用できるGapおよびBestfitのようなプログラムが含まれる。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。また、ポリペプチド配列は、デフォルトまたは推奨パラメータを用いるFASTA、GCGバージョン6.1のプログラムを用いて比較することができる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー検索配列との間に最良重複部分の領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する(前出、Pearson (2000) )。本発明の配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較するときの他の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410 and Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-402を参照のこと。

0038

pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体
本発明は、pH依存性結合特性を示す抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。本明細書に用いるように、「pH依存性結合」という表現は、抗体またはその抗原結合性フラグメントが「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」を示すことを意味する(本開示の目的では、いずれの表現も同じ意味で用いてよい)。例えば、「pH依存性結合特性を有する」抗体は、酸性pHよりも中性pHでより高い親和性によってPCSK9を結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。特定の実施態様において、本発明の抗体および抗原結合性フラグメントは、酸性pHよりも中性pHで、少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍またはそれ以上のより高い親和性によってPCSK9を結合する。また、「pH依存性結合特性を有する」抗体という成句は、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗体を含み、その表現は本明細書の他の箇所に定義されたとおりである。

0039

抗原(例えば、PCSK9)に対する抗体の「親和性」は、本開示の目的では、抗体のKDによって表される。抗体のKDは、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数のことをいう。抗原に結合する抗体について、KD値が大きくなるほど、その特定の抗原に対するその抗体の結合親和性が弱くなる。したがって、本明細書に用いるように、「酸性pHよりも中性pHでより高い親和性」という表現(または「pH依存性結合」という同等の表現)は、酸性pHでPCSK9に結合する抗体のKDは、中性pHでPCSK9に結合する抗体のKDより大きいことを意味する。例えば、本発明の文脈では、酸性pHでPCSK9に結合す抗体のKDが、中性pHでPCSK9に結合する抗体のKDよりも少なくとも約3倍大きい場合、抗体は、酸性pHよりも中性pHでより高い親和性によってPCSK9を結合すると考えられる。したがって、本発明は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のKDよりも少なくとも約3、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍、またはそれ以上となるKDによって酸性pHでPCSK9を結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む(それは、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、酸性pHよりも少なくとも約3、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍、またはそれ以上の大きな親和性によって中性pHでPCSK9を結合することを意味する)。

0040

また、特定の抗原に対する抗体の結合特性は、抗体のkdによって表してもよい。抗体のkdは、特定の抗原に関する抗体の解離速度定数のことであり、レシプロカル秒(すなわち、秒−1)によって表される。kd値の増加は、その抗原に対する抗体の結合が弱くなることを示す。したがって、本発明は、中性pHと比較して酸性pHでより高いkd値によってPCSK9を結合する抗体を含む。本発明は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のkdよりも、少なくとも約3、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍、またはそれ以上となるkdによって酸性pHでPCSK9を結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。

0041

特定の抗原に対する抗体の結合特性は、抗体のt1/2によって表してもよい。抗体のt1/2は、抗体−抗原相互作用の半減期のことをいう。したがって、本発明によれば、「pH依存性結合特性」(または同等の表現「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」)を有する抗体は、中性pHより短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する抗体を含む。例えば、本発明は、中性pHでPCSK9と結合する抗体のt1/2よりも少なくとも5倍短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む。例えば、本発明は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2よりも、少なくとも約5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60倍、またはそれ以上短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。具体例として、抗PCSK9抗体が中性pHで21分のt1/2、そして酸性pHで3分のt1/2を示す場合、本開示の目的では、抗体は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2よりも7倍[すなわち、21分を3分で割る]短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する。

0042

特定の例では、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のKD値に対する酸性pHでPCSK9に結合する抗体のKD値の比率によって表される(または、その逆も同じ)。例えば、本発明の目的では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、約3.0またはそれ以上の酸性/中性KD比を示す場合、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」を示すとみなしてもよい。特定の例示的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上であることができる。

0043

特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のkd値に対する酸性pHでPCSK9に結合する抗体のkd値の比率によって表される(または、その逆も同じ)。例えば、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、本発明の目的では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、約3.0またはそれ以上の酸性/中性kd比を示す場合、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」を示すとみなしてもよい。特定の例示的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上であることができる。

0044

特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」は、中性pHでPCSK9と結合している抗体のt1/2値に対する酸性pHでPCSK9と結合する抗体のt1/2値の比率によって表される(または、その逆も同じ)。例えば、本発明の目的では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、約0.20またはそれ未満の酸性/中性t1/2比を示す場合、抗体またはその抗原結合性フラグメントが「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合」を示すとみなしてもよい。特定の例示的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性t1/2比は、約0.20、0.15、0.14、0.12、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01またはそれ未満であることができる。

0045

本発明の抗体は、特定の例において、中性pHと比較して酸性pHで、より低い親和性(すなわち、より高いKD)およびより短いt1/2の両方によってPCSK9を結合する。例えば、本発明は、酸性pHよりも中性pHで少なくとも5倍高い親和性によって、かつ中性pHでhPCKS9に結合する抗体のt1/2よりも少なくとも5倍短い酸性pHでのt1/2によってPCSK9を結合する抗体を含む。しかし、特定の場合、酸性pHよりも中性pHでPCSK9に対するより高い結合親和性を示す抗体(KD値によって示すように)は、中性pHと比較して酸性pHでより短いt1/2を必ずしも示さなくてよい。

0046

本明細書に用いるように、「酸性pH」という表現は、6.0またはそれ未満(例えば、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満、など)のpHを意味する。「酸性pH」という表現は、6.0、5.95、5.90、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を含む。

0047

本明細書に用いるように、「中性pH」という表現は、約7.0〜約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。

0048

本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントのいずれかの特徴(例えば、KD値、Kd値、t1/2時間、IC50値、など)を酸性pHで測定し、中性pHでの同じ特徴と比較する場合(または、その逆も同じ)、特に明記しない限り、比較測定は、酸性pH6.0および中性pH7.4、ならびに温度25℃で測定したとみなさなければならない。

0049

本明細書に表すKD値、kd値およびt1/2時間は、抗体−抗原相互作用を特徴づけるため表面プラズモン共鳴をベースとするバイオセンサーを用いて測定してもよい(例えば、本明細書の実施例3を参照のこと)。KD値、kd値およびt1/2時間は、25℃または37℃で測定することができる。

0050

中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示す抗体およびその抗原結合性フラグメントは、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示さない抗体およびその抗原結合性フラグメントと比較して改善された薬物動態性質を示すことが発見された。例えば、本明細書に提供した実施例が示すように、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示す本発明の特定の抗体は、動物対象に投与したとき、pH依存性結合特性を示さない抗PCSK9抗体と比較して、血行からのより遅いクリアランスを示す。本発明のこの態様によれば、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を備えていない抗体と比較して少なくとも2倍遅い血行からのクリアランスを示す、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を有する抗体が提供される。クリアランス速度は、抗体の半減期によって表すことができ、ここでは、クリアランスが遅いほど半減期が長くなるという相関関係がある。また、本発明は、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を有する抗PCSK9抗体を含み、ここで、この抗体は、ヒトPCSK9を発現する動物(例えば、マウス)に約1mg/kgの用量で投与したとき、投与後、少なくとも30日間、動物の血清中に1.0μg/mlを超える濃度で検出可能である。

0051

また、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示す抗体およびその抗原結合性フラグメントは、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示さない抗体およびその抗原結合性フラグメントと比較して、改善および延長されたコレステロール低下活性を示すことが発見された。例えば、本発明は、酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示さない抗体およびその抗原結合性フラグメントと比較して延長されたLDL−C低下能力をもたらす抗PCSK9抗体を提供する。本発明の特定の実施態様によれば、約10mg/kgの用量で対象に投与したとき、ベースラインから少なくとも25%血清LDL−Cレベルを低下させ、この血清LDL−Cレベルの低下を少なくとも25日間持続させる抗PCSK9抗体が提供される。特定の場合、約10mg/kgの用量で対象に投与したとき、ベースラインから少なくとも25%血清LDL−Cレベルを低下させ、この血清LDL−Cレベルの低下を、例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45日間またはそれ以上持続させる抗PCSK9抗体が提供される。本明細書に用いるように、LDL−C(または、他の関連パラメータ)に関連がある「ベースライン」という用語は、抗PCSK9抗体(または、他の比較の治療介入)を対象に投与する時間の直前に測定した対象の血清中のLDL−Cレベルを意味する。

0052

本願発明者らは、少なくとも特定の治療状況下で、PCSK9に対する結合に関してあまりに高いpH感受性の程度を示す抗体は有害となりうることを発見した。すなわち、特定の状況下で、中性pHと比較して酸性pHでより低い親和性によって結合するが、それにもかかわらず、酸性pHでPCSK9に対する結合親和性をある程度を保持することは、抗体にとって望ましいことでありうる。したがって、本発明の特定の実施態様によれば、中程度のpH依存性結合特性を示す抗PCSK9抗体が提供される。

0053

本明細書に用いるように、「中程度のpH依存性結合特性」という表現は、3.0を超えるが、8.0未満の酸性/中性KD比を示す抗体またはその抗原結合性フラグメントを意味する。特定の例示的な実施態様において、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗体の酸性/中性KD比は、3.5から8.0の間;4.0から8.0の間;4.5から8.0の間;5.0から8.0の間;5.5から8.0の間;6.0から8.0の間;6.5から8.0の間;3.0から7.5の間;3.0から7.0の間;3.0から6.5の間;3.0から8.0の間;3.5から7.5の間;4.0から7.0の間;4.5から7.0の間;5.0から7.0の間;または4.5から6.5の間である。特定の例示的な実施態様において、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗体の酸性/中性KD比は、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0である。また、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗PCSK9抗体は、約1.0未満であるが約0.15を超える酸性/中性t1/2比を示してもよい。抗体が、本明細書に定義される「中程度のpH依存性結合特性」を示すかどうか明らかにする目的では、酸性/中性KD比および/または酸性/中性t1/2比を、25℃で表面プラズモン共鳴によって測定してもよい。本明細書に他の箇所に示すように、酸性/中性KD比および/または酸性/中性t1/2比、などは、酸性pH6.0および中性pH7.4で、または代わりに酸性pH5.75および中性pH7.2で測定することができる。

0054

本明細書に用いるように、また、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗PCSK9抗体は、表面プラズモン共鳴で測定して、約35分未満であるが10.5分を超えるt1/2によって酸性pH(例えば、pH6.0)および25℃でPCSK9を結合する抗体および抗原結合性フラグメントを含む。例えば、本発明は、約20分未満かつ約10分を超える;約20分未満かつ約11分を超える;約20分未満かつ約12分を超える;約20分未満かつ約13分を超える;約20分未満かつ約14分を超える;約20分未満かつ約15分を超える;約30分未満かつ約11分を超える;約25分未満かつ約12分を超える;約14分未満かつ約18分を超える;約16分未満かつ約13分を超える;または約16分未満かつ約14分を超えるt1/2によって酸性pH(例えば、pH6.0)および25℃でPCSK9を結合する「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗PCSK9抗体を含む。

0055

また、「中程度のpH依存性結合特性」を有する抗体は、約10.5分、約11.0分、約11.5分、約12.0分、約12.5分、約13.0分、約13.5分、約14.0分、約14.5分、約15.0分、約15.5分、約16.0分、約16.5分、約17.0分、約17.5分、約18.0分、約18.5分、約19.0分、約19.5分、約20.0分、約20.5分、約21.0分、約22.0分、約23.0分、約24.0分、約25.0分、約26.0分、約27.0分、約28.0分、約29.0分、約30.0分、約31.0分、約32.0分、約33.0分、約34.0分、または約35.0分のt1/2によって酸性pH(例えば、pH6.0)および25℃でPCSK9を結合する抗体を含む。

0056

ヒスチジン置換を有するpH依存性抗PCSK9抗体
本発明は、親抗PCSK9抗体と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸の違いを有し、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体を提供する。本明細書に用いるように、「親」抗PCSK9抗体は、pH依存性結合特性を示さないか、または中程度のpH依存性結合特性のみを示す抗PCSK9抗体である(例えば、ここでは、中性pHでのPCSK9に対する親抗体の結合親和性は、酸性pHでのPCSK9に対する抗体の結合親和性よりも3倍を超えることなく大きい;または親抗体は、中性pHでPCSK9に結合する抗体のt1/2よりも3倍を超えることなく短いt1/2によって酸性pHでPCSK9を結合する)。場合によっては、「親」抗PCSK9抗体は、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する増強された結合を示す抗PCSK9抗体であってもよい。いくつかの実施態様では、「親」抗PCSK9抗体は、相補性決定領域(CDR)中に人工的に導入されたなんらかのアミノ酸修飾なしに、標準抗体産生/単離方法(例えば、マウス免疫化ファージディスプレイ、など)によって得られる抗体である。

0057

本発明のこの態様によれば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、親抗PCSK9抗体と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸変異を有してもよい。例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、例えば、親抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上の(例えば、1、2、3、4、5または6個の)CDR中に、1つまたはそれ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の)ヒスチジン置換または挿入を含んでもよい。したがって、本発明の特定の実施態様によれば、ヒスチジン残基による親抗体の1つまたはそれ以上のCDRの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換を除いて、親抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(例えば、重鎖および軽鎖CDR)を含む抗PCSK9抗体が提供される。pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体は、親抗体の単一CDR内に、または親抗PCSK9抗体の複数(例えば、2、3、4、5または6個)のCDRにわたって配置された、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上のヒスチジン置換を有してもよい。例えば、本発明は、親抗PCSK9抗体の、HCDR1中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR3中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換、および/またはLCDR3中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換を含む、pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体を含む。

0058

pH依存性結合特性(または増強されたpH依存性結合特性)を有するために修飾するか、突然変異させるか、またはそうでない場合、遺伝子操作することができる「親」抗PCSK9抗体の例としては、米国特許第8,062,640号に開示された、いずれかの相補性決定領域(CDR)または重鎖および軽鎖可変ドメイン(HCVR/LCVR)を含む抗PCSK9抗体(また、本明細書の実施例1、表1にまとめる)が含まれる。中程度のpH依存性結合特性のみを示す親抗PCSK9抗体の具体例は、「300N」として本明細書(および米国特許第8,062,640号中)に引用された抗体である。300Nは、配列番号:218/226を有するHCVR/LCVRアミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号:220、222、224、228、230、232を有する重鎖および軽鎖CDR配列(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む。したがって、配列番号:218/226のHCVR/LCVRアミノ酸配列対、または配列番号:220、222、224、228、230、232のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列を含む任意の抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントは、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを産生するため、アミノ酸配列レベルで修飾することができる(例えば、1つまたはそれ以上のCDR中の1つまたはそれ以上のヒスチジン置換および/または挿入を有する)適した「親」抗体である。

0059

別法として、米国特許第8,062,640号に示された例示的な抗PCSK9抗体のいずれかのHCVR/LCVRアミノ酸配列対、またはHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列を含む任意の抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメント(また、本明細書の実施例1、表1にまとめる)は、また、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを産生するため、アミノ酸配列レベルで修飾することができる(例えば、1つまたはそれ以上のCDR中に1つまたはそれ以上のヒスチジン置換および/または挿入を有する)適した「親」抗体である。

0060

特定の実施態様において、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、このHCVRが、配列番号:2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、402、406、410、426、430、434、450、454、458、474、478、482、498、502、506、522、526、530、546、550、554、570、574、578、594、598、602、618、622、626、642、646、650、666、670、674、690、694、698、714、718、722、738および742のいずれか1つのアミノ酸配列または1つもしくはそれ以上の重鎖CDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸がヒスチジン残基で置換された上記アミノ酸配列のいずれかの変異体を含み;そしてLCVRが、配列番号:10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380、384、394、404、408、418、428、432、442、452、456、466、476、480、490、500、504、514、524、528、538、548、552、562、572、576、586、596、600、610、620、624、634、644、648、658、668、672、682、692、696、706、716、720、730、740および744のいずれか1つのアミノ酸配列、または1つもしくはそれ以上の軽鎖CDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸がヒスチジン残基で置換された上記アミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0061

特定の実施態様において、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、HCVR/LCVRアミノ酸配列対が配列番号:2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/560、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、502/504、506/514、522/524、526/528、530/538、546/548、550/552、554/562、570/572、574/576、578/586、594/596、598/600、602/610、618/620、622/624、626/634、642/644、646/648、650/658、666/668、670/672、674/682、690/692、694/696、698/706、714/716、718/720、722/730、738/740および742/744のいずれか1つのアミノ酸配列対または1つもしくはそれ以上の重鎖CDRおよび/もしくは軽鎖CDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸がヒスチジン残基で置換された上記アミノ酸配列対のいずれかの変異体を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0062

例えば、本発明は、「300N」として引用された例示的な親抗PCSK9抗体の変異体(すなわち、配列番号:218/226のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体の変異体)を提供する。特に、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、HCVRが、配列番号:218またはN52H、Q53H、I100H、V101H、V104H、D106H、M107H、D108HおよびY112Hからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み;かつLCVRが、配列番号:226またはL29H、L30H、N33H、G34H、Y37H、L97H、T99HおよびP100Hからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。

0063

例示的な一実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、HCVRがD106Hアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み、かつLCVRが配列番号:226を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。D106Hアミノ酸置換は、重鎖CDR3(HCDR3)内に位置する。D106Hアミノ酸置換を含む変異体HCDR3は、本明細書の表3に説明するように、配列番号:788のアミノ酸配列によって表される。

0064

別の例示的な実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、HCVRが配列番号:218を含み、かつLCVRがL30Hアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。L30Hアミノ酸置換は、軽鎖CDR1(LCDR1)内に位置する。L30Hアミノ酸置換を含む変異体LCDR1は、本明細書の表3に説明するように、配列番号:802のアミノ酸配列によって表される。

0065

別の例示的な実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、HCVRがD106Hアミノ酸置換を含む配列番号:218の変異体を含み、かつLCVRがL30Hアミノ酸置換を含む配列番号:226の変異体を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。

0066

特定の実施態様において、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1が配列番号:220(親)を含み;HCDR2が配列番号:222(親)、772(N52H)および773(Q53H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;HCDR3が配列番号:224(親)、782(I100H)、783(V101H)、786(V104H)、788(D106H)、789(M107H)、790(D108H)および794(Y112H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;LCDR1が配列番号:228(親)、801(L29H)、802(L30H)、804(N33H)、805(G34H)および808(Y37H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号:230(親)を含み;かつLCDR3が配列番号:232(親)、815(L97H)、817(T99H)および818(P100H)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0067

特定の実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1が配列番号:220(親)を含み;HCDR2が配列番号:222(親)を含み;HCDR3が配列番号:224(親)または788(D106H)を含み;LCDR1が配列番号:228(親)または802(L30H)を含み;LCDR2が配列番号:230(親)を含み;かつLCDR3が配列番号:232(親)を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0068

特定の実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1が配列番号:220(親)を含み;HCDR2が配列番号:222(親)を含み;HCDR3が配列番号:788(D106H)を含み;LCDR1が配列番号:228(親)を含み;LCDR2が配列番号:230(親)を含み;かつLCDR3が配列番号:232(親)を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0069

本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1が配列番号:220(親)を含み;HCDR2が配列番号:222(親)を含み;HCDR3が配列番号:224(親)を含み;LCDR1が配列番号:802(L30H)を含み;LCDR2が配列番号:230(親)を含み;かつLCDR3が配列番号:232(親)を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0070

特定の実施態様によれば、本発明は、pH依存性結合特性を示し、かつ3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1が配列番号:220(親)を含み;HCDR2が配列番号:222(親)を含み;HCDR3が配列番号:788(D106H)を含み;LCDR1が配列番号:802(L30H)を含み;LCDR2が配列番号:230(親)を含み;かつLCDR3が配列番号:232(親)を含む、抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。

0071

Fc変異体を含む抗PCSK9抗体
本発明の特定の実施態様によれば、例えば、中性pHと比較して酸性pHでFcRn受容体に対する抗体結合を増強または減弱させる、1つまたはそれ以上の突然変異を含むFcドメインを含む抗PCSK9抗体が提供される。例えば、本発明は、突然変異によって酸性環境中(例えば、pHが約5.5から約6.0までの範囲にあるエンドソーム中)でFcRnに対するFcドメインの親和性が高まる、FcドメインのCH2またはCH3領域中に突然変異を含む抗PCSK9抗体を含む。このようなFc修飾の非限定的な例としては、例えば、位置250(例えば、EまたはQ);250および428(例えば、LまたはF);252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)および256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾;または位置428および/または433(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/または434(例えば、H/FまたはY)での修飾;または位置250および/または428での修飾;または位置307または308(例えば、308F、V308F)および434での修飾が含まれる。一実施態様において、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)および308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾;252、254および256(例えば、252Y、254Tおよび256E)修飾;250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。

0072

本発明は、(1)中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する抗体の結合親和性を低下させる1つまたはそれ以上のヒスチジン置換を含む変異型CDR配列と、(2)中性pHと比較して酸性pHでFcRnに対するFcドメインの親和性を高める1つまたはそれ以上の突然変異を含む変異型Fcドメイン配列との両方を含む抗PCSK9抗体を含む。本発明のこの態様によれば、本明細書に記載された(例えば、表3を参照のこと)、ヒスチジン置換された重鎖もしくは軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)またはCDRのいずれか、および酸性pHでより大きな親和性によってFcドメインにFcRnを結合させる上記の突然変異のいずれかを含むFcドメインを含む抗PCSK9抗体が作製されうる。例えば、本発明は、例えば、本明細書において「VH−D106H」と呼ばれるヒスチジン変異型抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列ならびにT250Q/M248L;M252Y/S254T/T256E;M428L/N434S;およびH433K/N434Fからなる群から選択される1つまたはそれ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗PCSK9抗体を含む。また、本発明は、例えば、本明細書において「VK−L30H」と呼ばれるヒスチジン変異型抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列、ならびにT250Q/M248L;M252Y/S254T/T256E;M428L/N434S;およびH433K/N434Fからなる群から選択される1つまたはそれ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗PCSK9抗体を含む。本明細書に記載されたCDRヒスチジン置換突然変異およびFcドメイン突然変異のすべての可能な組合せは、本発明の範囲内に企図される。

0073

抗体の生物学的特性
また、pH依存性結合特性を有することに加えて、本発明の抗PCSK9抗体は、1つまたはそれ以上のさらなる有益な生物学的性質を有してもよい。例えば、本発明は、PCSK9と低密度リポタンパク質受容体(LDLR)との間の相互作用を効果的に遮断する抗PCSK9抗体を含む。特定の実施態様において、本発明の抗体は、例えば、本明細書の実施例4に示すブロッキングELISA、または実質的に類似したアッセイフォーマットを用いて測定して、約1nM未満、例えば、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満または約100pM未満のIC50によって中性pHでPCSK9とLDLRとの間の相互作用を遮断する。

0074

特定の実施態様において、本発明の抗体は、酸性pHよりも中性pHでより強力にPCSK9/LDLR相互作用を遮断することができる(例えば、酸性pHでPCSK9に対して低下した抗体結合を示す)。PCSK9/LDLR相互作用を遮断する抗PCSK9抗体の能力は、例えば、中性および酸性pHでのIC50値によって定量的に表してもよい(例えば、本明細書の実施例4を参照のこと)。抗体が酸性pHと比較して中性pHでPCSK9/LDLR相互作用を遮断する程度は、中性pHで測定された抗体のIC50値に対する酸性pHで測定された抗体のIC50値の比率によって表してもよい。このタイプのアッセイフォーマットにおける酸性/中性IC50比が高いほど、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9/LDLR相互作用を遮断する能力が低くなることを示している。したがって、本発明は、実施例4のアッセイフォーマットまたは実質的に類似したアッセイを用いて測定して、約1を超える、約5を超える、約10を超える、約20を超える、約30を超える、約32を超える、約34を超える、約36を超える、約38を超える、約40を超える、約50を超える、約60を超える、約70を超える、約80を超える、約90を超える、約100を超える、約110を超える、約120を超える、約130を超える、約140を超える、約150を超える、約160を超える、約170を超える、約180を超える、約190を超える、約200を超える、約210を超える、約220を超える、約230を超える、またはそれ以上の酸性/中性IC50比によって抗体がPCSK9/LDLR相互作用を遮断する抗PCSK9抗体を含む。特定の実施態様において、酸性/中性IC50比は、酸性pH6.0および中性pH7.4で、ならびに25℃の温度で測定される。別の実施態様において、酸性/中性IC50比は、酸性pH5.75および中性pH7.2で、ならびに25℃の温度で測定される。

0075

また、本発明は、抗体がLDL取り込みのPCSK9介在性阻害を遮断する、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体を含む。細胞ベースのLDL取り込みアッセイ、例えば本明細書の実施例5に示すものは、抗PCSK9抗体が、LDL取り込みのPCSK9介在性阻害を遮断できるかどうか、および/またはどの程度遮断できるかを明らかにするために用いることができる。特定の実施態様によれば、抗体が、例えば、本明細書の実施例5に示すin vitroでのLDL取り込みアッセイ、または実質的に類似したアッセイフォーマットを用いて測定して、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、約20nM未満、約15nM未満または約10nM未満のIC50によってLDL取り込みのPCSK9介在性阻害を遮断できる、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体が提供される。

0076

本発明の抗体は、上記の生物学的特性またはそのいずれかの組合せの1つまたはそれ以上を有してもよい。本発明の抗体の生物学的特性の前述のリストは、網羅的であることを意図しているわけではない。本明細書の実施例を含む本開示の概説から、本発明の抗体の他の生物学的特性は当業者に明らかである。

0077

pH依存性結合特性を有する抗体を生成する方法
また、本発明は、pH依存性結合特性を有する抗体を生成する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、少なくとも中程度のpH依存性結合特性を示す抗体についてスクリーニングし、次いで、このような抗体を、その抗原に対する抗体のpH依存性を増強するさらなる突然変異誘発にかけることを含む。スクリーニングステップは、それによって中程度のpH依存性結合特性を有する抗体が、特定の抗原に特異的な抗体の集団内に特定される任意の方法または過程を含んでもよい。特定の実施態様において、最初の抗体集団は、動物を免疫化することによって、または興味の特定の抗原を特異的に結合する抗体についてファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって得られる。このような抗体は、特定の実施態様において、完全にヒト抗体、例えば、完全にヒト組換え抗体であってもよい。特定の実施態様において、スクリーニングステップは、酸性pHおよび中性pHの両方で最初の抗体集団内のそれぞれの抗体の1つまたはそれ以上の結合パラメータ(例えば、KDまたはt1/2)を測定することを含む。抗体の結合パラメータは、例えば、表面プラズモン共鳴、または特定の抗原に対する抗体の結合特性の定量的もしくは定性的評価を可能にする他のなんらかの分析方法を用いて測定してもよい。本発明のこの態様の特定の実施態様によれば、スクリーニングステップは、約3.0を超えるが約8.0未満の酸性/中性KD比によって抗原を結合する抗体を特定することを含む。あるいは、スクリーニングステップは、約1.0未満であるが0.15を超える酸性/中性t1/2比によって抗原を結合する抗体を特定することを含んでもよい。さらに他の実施態様において、スクリーニングステップは、酸性pH(例えば、pH6.0)で40分未満であるが20分を超えない(例えば、25℃で)t1/2を示す抗体を特定することを含んでもよい。本発明のこの態様の特定の実施態様によれば、酸性/中性KD比および/または酸性/中性t1/2比は、酸性pH6.0および中性pH7.4で、ならびに25℃の温度で測定した。別の実施態様によれば、酸性/中性KD比および/または酸性/中性t1/2比は、酸性pH5.75および中性pH7.2で、ならびに25℃の温度で測定した。

0078

一旦、中程度のpH依存性結合特性を有する抗体が特定されたら、こうして特定された抗体を、次いで、抗原に対する抗体のpH依存性結合を増強するための突然変異誘発にかける。「増強されたpH依存性結合」は、抗体の突然変異バージョンが突然変異誘発前の抗体の元の「親」(すなわち、中程度のpH依存性)バージョンよりも、より大きな酸性/中性KD比、またはより小さな酸性/中性t1/2比を示すことを意味する。特定の実施態様において、「増強されたpH依存性結合」は、酸性pH(例えば、pH6.0)でその抗原に結合する抗体のt1/2が、突然変異誘発前の抗体のt1/2より短いことを意味する。特定の実施態様において、「増強されたpH依存性結合」は、酸性pH(例えば、pH6.0)でその抗原に結合する抗体のt1/2が、約16分未満、約10分未満、約5分未満、約2分未満または約1.5分未満(例えば、25℃で)であることを意味する。

0079

本発明のこの態様によれば、突然変異誘発ステップは、抗体の重鎖および/または軽鎖内にアミノ酸の欠失、置換または付加を含んでもよい。特定の実施態様によれば、突然変異誘発は、抗体の1つまたはそれ以上の可変ドメイン内で、例えば、1つまたはそれ以上のCDR内で実施される。例えば、突然変異誘発は、抗体の1つまたはそれ以上のCDR内のアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを含んでもよい。特定の実施態様において、突然変異誘発は、抗体の少なくとも1つのCDR中で1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジンで置換することを含む。

0080

本明細書に記載された実施例において、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体(例えば、完全なヒト抗PCSK9抗体)は、上記のようなスクリーニング/突然変異誘発方法論を用いて生成された。しかし、本発明のこの態様による方法は、pH依存性特性が有用であるか、または望ましい任意の抗原を結合する、pH依存性結合特性を有する抗体を生成するために用いることができる。本発明のこの態様による方法は、対象または患者に投与したとき、延長された血清半減期を有する抗体を生成するために用いることができる。

0081

pH依存性抗体を作るための「二重ヒスチジン」(His−His)突然変異誘発
本明細書に記載された特定の実験に基づいて、予想外なことに、CDR中の天然のヒスチジン残基に隣接して(例えば、そこからすぐ上流または下流に)位置する残基で、抗体のCDRにヒスチジン置換を導入し、それによって、His−Hisアミノ酸配列を産生することによって、中程度のpH依存性結合特性を有する抗体をより顕著なpH依存性結合特性を有する抗体に変換できることが発見された。本明細書に用いるように、「より顕著なpH依存性結合特性」は、抗体が、ヒスチジン置換の導入後、ヒスチジン置換の導入前の抗体よりも(a)より大きな酸性/中性KD比;(b)より大きな酸性/中性kd比;および/または(c)より小さな酸性/中性t1/2比の1つまたはそれ以上を示すことを意味する。例えば、本明細書において300Nとして引用された抗体は、中程度のpH依存性結合特性を有し、LCDR1(配列番号:228を参照のこと)の5番目アミノ酸位置で1つの天然ヒスチジンを含む。LCDR1の4番目のアミノ酸位置にヒスチジン置換を導入することによって(配列番号:802を有するLCDR1を含む「VK−L30H」抗体が得られ)、得られた抗体は、本明細書の実施例3Aおよび3Bに示すように、300Nよりも非常に顕著なpH依存性結合特性を有することが見いだされた。この「二重His」突然変異の戦略は、顕著なpH依存性結合特性を有する抗体を産生するための一般に適用できる方法論であってもよい。したがって、本発明は、中程度のpH依存性結合特性を有する抗体を選択し、既存のヒスチジン残基に隣接したアミノ酸位置で抗体の1つまたはそれ以上のCDR中にヒスチジン置換を導入し、それによって、より顕著なpH依存性結合特性を有する(例えば、ヒスチジン置換の導入前の親抗体より大きな酸性/中性KD比を有する)抗体を生成することを含む、抗体のpH依存性を増強する方法を含む。また、この方法論は、例えば、1つまたはそれ以上のCDR内の隣接するアミノ酸位置で2つまたはそれ以上のヒスチジン置換を導入することによって、通常、CDR中になんらヒスチジン残基がない抗体に適用することができる。

0082

エピトープマッピングおよび関連技術
本発明は、PCSK9(配列番号:755のアミノ酸1〜152)のプロドメイン内に見いだされる1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用する抗PCSK9抗体を含む。また、本発明は、PCSK9(配列番号:755のアミノ酸153〜425)の触媒ドメイン内に見いだされる1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用する抗PCSK9抗体を含む。また、本発明は、PCSK9(配列番号:755のアミノ酸426〜692)のC末端ドメイン内に見いだされる1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用する抗PCSK9抗体を含む。特定の例において、本発明の抗PCSK9抗体は、PCSK9の2つの隣接するドメイン内に位置するアミノ酸と相互作用する。抗体が結合するエピトープは、PCSK9の1つまたはそれ以上のドメイン内に位置する3つまたはそれ以上の(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の)アミノ酸の単一の連続した配列からなってもよい。代わりに、エピトープは、PCSK9の1つまたはそれ以上のドメイン内に位置する複数の非連続アミノ酸(または、アミノ酸配列)からなってもよい。

0083

抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうか明らかにするために当業者に知られている種々の技術を用いることができる。例示的な技術としては、例えば、Antibodies, Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されたような常用交叉ブロッキングアッセイ(cross-blocking assay)、アラニンスキャニング突然変異解析(alanine scanning mutational analysis)、ペプチドブロット解析(peptide blots analysis)(Reineke, 2004, MethodsMol Biol 248:443-463)、およびペプチド切断解析(peptide cleavage analysis)が含まれる。さらに、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出および化学修飾のような方法を用いることができる(Tomer, 2000, Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定するのに用いることができる別の方法は、質量分析によって検出される水素重水素交換である。一般的には、水素/重水素交換法は、興味のタンパク質を重水素標識し、続いて抗体を重水素標識タンパク質に結合することを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体によって保護された残基(それは重水素標識されたままである)を除くすべての残基で水素−重水素交換を起こさせる。抗体の解離後、標的タンパク質プロテアーゼ切断および質量分析にかけ、それによって、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring (1999) Analytical Biochemistry 267(2):252-259; Engen and Smith (2001) Anal. Chem. 73:256A-265Aを参照のこと。

0084

さらに、本発明は、本明細書に記載された特定の例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗PCSK9抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表3に記載されたヒスチジン置換変異型抗体のいずれか(例えば、VH−G26H、VH−F27H、VH−T28H、VH−F29H、VH−S30H、VH−S31H、VH−W33H、VH−I51H、VH−N52H、VH−Q53H、VH−D54H、VH−G55H、VH−S56H、VH−E57H、VH−K58H、VH−A97、VH−R98H、VH−D99H、VH−I100H、VH−V101H、VH−L102H、VH−M103H、VH−V104H、VH−Y105H、VH−D106H、VH−M107H、VH−D108H、VH−Y109H、VH−Y110H、VH−Y111H、VH−Y112H、VH−G113H、VH−M114H、VH−D115H、VH−V116H、VK−Q27H、VK−S28H、VK−L29H、VK−L30H、VK−S32H、VK−N33H、VK−G34H、VK−N35H、VK−N36H、VK−Y37H、VK−L55H、VK−G56H、VK−S57H、VK−M94H、VK−Q95H、VK−T96H、VK−L97H、VK−Q98H、VK−T99H、VK−P100H、VK−L101H、VK−T102H)と同じエピトープに結合する抗PCSK9抗体を含む。同様に、また、本発明は、本明細書の表3に記載されたヒスチジン置換変異型抗体のいずれか(例えば、VH−G26H、VH−F27H、VH−T28H、VH−F29H、VH−S30H、VH−S31H、VH−W33H、VH−I51H、VH−N52H、VH−Q53H、VH−D54H、VH−G55H、VH−S56H、VH−E57H、VH−K58H、VH−A97、VH−R98H、VH−D99H、VH−I100H、VH−V101H、VH−L102H、VH−M103H、VH−V104H、VH−Y105H、VH−D106H、VH−M107H、VH−D108H、VH−Y109H、VH−Y110H、VH−Y111H、VH−Y112H、VH−G113H、VH−M114H、VH−D115H、VH−V116H、VK−Q27H、VK−S28H、VK−L29H、VK−L30H、VK−S32H、VK−N33H、VK−G34H、VK−N35H、VK−N36H、VK−Y37H、VK−L55H、VK−G56H、VK−S57H、VK−M94H、VK−Q95H、VK−T96H、VK−L97H、VK−Q98H、VK−T99H、VK−P100H、VK−L101H、VK−T102H)によってPCSK9に対する結合と競合する抗PCSK9抗体を含む。

0085

抗体が、参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するどうか、またはそれとの結合に競合するかどうかは、当分野で知られている常用の方法を用いて容易に明らかにすることができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するかどうかを明らかにするためには、参照抗体をPCSK9タンパク質に結合させる。次に、PCSK9分子に結合する試験抗体の能力を評価する。参照抗PCSK9抗体と飽和結合後に、試験抗体がPCSK9に結合できる場合、試験抗体が参照抗PCSK9抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方、試験抗体がPCSK9分子に結合できない場合、参照抗PCSK9抗体と飽和結合後に、試験抗体は、本発明の参照抗PCSK9抗体によって結合されたエピトープと同じエピトープに結合しうる。次いで、試験抗体の結合が観察されなかったことが、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものかどうか、または結合が観察されなかった原因が立体障害(または、別の現象)であるかどうかを確かめるため、さらなる常用実験(例えば、ペプチド突然変異および結合解析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーまたは当分野で利用できる他のいずれかの定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを用いて実施することができる。本発明の特定の実施態様によれば、競合的結合アッセイで測定して、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍過剰な一方の抗体が、他方の結合を少なくとも50%、しかし、好ましくは75%、90%または99%も阻害する場合、2つの抗体は同じ(または、オーバーラップ)エピトープに結合する(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990:50:1495-1502を参照のこと)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原中の本質的にすべてのアミノ酸突然変異が、他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合すると考えられる。一方の抗体の結合を低減または排除するアミノ酸突然変異のサブセットが他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は「オーバーラップエピトープ」を有すると考えられる。

0086

抗体が結合について参照抗PCSK9抗体と競合するかどうかを明らかにするため、上記の結合方法論は、2つの方向性で実施される:第1の方向性では、参照抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合させ、続いてPCSK9分子に対する試験抗体の結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体を、飽和条件下でPCSK9分子に結合させ、続いてPCSK9分子に対する参照抗体の結合を評価する。いずれの方向性でも、最初の(飽和)抗体しかPCSK9分子に結合することができない場合、試験抗体および参照抗体は、PCSK9に対する結合について競合すると結論付けられる。当業者によって理解されるように、参照抗体との結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しなくてもよいが、オーバーラップまたは隣接するエピトープを結合することによって参照抗体の結合を立体的に阻止することがありうる。

0087

ヒト抗体の調製
完全なヒトモノクローナル抗体を含む、モノクローナル抗体を生成する方法は、当分野で知られている。ヒトPCSK9に特異的に結合する組換えヒト抗体を含む抗体を作製する本発明の文脈では、このようないずれかの知られている方法を用いることができる。その時、このような抗体は、ヒスチジン置換変異型抗体(例えば、pH依存性結合性質を示すヒスチジン置換変異型抗体)が誘導されうる親抗体として用いることができる。

0088

VELOCIMMUNE(商標)技術またはモノクローナル抗体を生成する他のいずれかの知られている方法を用いて、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、PCSK9に対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。抗体を特徴づけて、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば野生型または修飾されたIgG1またはIgG4で置換して完全なヒト抗体を生成する。選択される定常領域は具体的な使用に応じて変化しうるが、高親和性抗原結合性および標的特異性の特性は、可変領域に存在する。

0089

生物学的同等物
また、本明細書に具体的に例示されたヒスチジン置換に加えて、本発明は、記載された抗体のものとは異なるが、pH依存性結合特性を有するヒトPCSK9を結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗体を包含する。このような変異型抗体および抗体フラグメントは、親配列と比較したときにアミノ酸の1つまたはそれ以上の付加、欠失または置換を含むが、記載された抗体のものと本質的に同等の生物活性を示す。同様に、本発明の抗PCSK9抗体をコードするDNA配列は、開示された配列と比較したときに、ヌクレオチドの1つまたはそれ以上の付加、欠失または置換を含むが、本発明の抗PCSK9抗体または抗体フラグメントと本質的に生物学的に同等である抗PCSK9抗体または抗体フラグメントをコードする配列を包含する。

0090

2つの抗原結合性タンパク質または抗体を、例えば、類似の実験条件下、単回投与または多回投与のいずれかで同じモル用量で投与したときに、それらが吸収の速度および程度が有意差を示さない薬学同等物または薬学的代替物である場合、それらは生物学的に同等であるとみなされる。いくつかの抗体は、それらが吸収の程度において同等であるが、吸収速度においては異なっていても、このような吸収速度における違いが意図的であり、表示に示されており、例えば、慢性使用において、有効な体内薬物濃度の達成に必須でなく、研究した特定の薬物生成物にとって医学的に重要でないと考えられるため、生物学的に同等であるとみなされうる場合、依然として、同等物または薬学的代替物とみなされることになる。

0091

一実施態様において、2つの抗原結合性タンパク質は、それらの安全性、純度および効力において臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に同等である。

0092

一実施態様において、スイッチングのない継続治療と比較して、免疫原性における臨床的に有意な変化を含む、有害作用リスクにおいて予想される増加なしに、または有効性の低下なしに、患者が参照生成物生物学的生成物との間で1回またはそれ以上切り替えることができる場合、2つの抗原結合性タンパク質は生物学的に同等である。

0093

一実施態様において、2つの抗原結合性タンパク質がいずれかも、1つまたは複数の使用条件について共通の機構または作用機構によって、このような機構が知られている程度まで作用する場合、これらは生物学的に同等である。

0094

生物学的同等性は、in vivoおよびin vitro法によって示してもよい。生物学的同等性の測定手段としては、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度を、血液、血漿、血清または他の生物学的液体中で時間の関数として測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo検査;(b)ヒトin vivo生物学的利用能データと関連づけられており、適度な予測となるin vitro試験;(c)抗体(または、その標的)の適当な急性薬理学的作用を時間の関数として測定するヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;および(d)抗体の安全性、有効性、または生物学的利用能もしくは生物学的同等性を確立する管理良好の臨床試験が含まれる。

0095

本発明の抗PCSK9抗体の生物学的に同等な変異体は、例えば、残基または配列の種々の置換を行うか、または生物活性に必要でない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させることによって作製してもよい。例えば、再生により不必要なまたは間違った分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために生物活性に必須でないシステイン残基を欠失させるか、または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特性を変更するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する突然変異を含む、抗PCSK9抗体変異体を含んでもよい。

0096

種選択性および種交差反応性
本発明の特定の実施態様によれば、抗PCSK9抗体はヒトPCSK9に結合するが、他の種からのPCSK9には結合しない。また、本発明は、ヒトPCSK9および1つまたはそれ以上の非ヒト種からのPCSK9に結合する抗PCSK9抗体を含む。例えば、本発明の抗PCSK9抗体は、ヒトPCSK9に結合し、場合によっては、マウス、ラットモルモットハムスタースナネズミブタネコイヌウサギヤギヒツジウシウマラクダカニクイザルマーモセットアカゲザルまたはチンパンジーのPCSK9の1つまたはそれ以上に結合してもよく、または結合しなくてもよい。

0097

多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性であってもよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的でもあってよいし、または複数の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合性ドメインを含んでもよい。例えば、Tutt et al., 1991, J. Immunol. 147:60-69; Kufer et al., 2004, TrendsBiotechnol. 22:238-244を参照のこと。本発明の抗PCSK9抗体は、他の機能性分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質に結合するか、またはそれと共発現することができる。例えば、抗体またはそのフラグメントは、1つまたはそれ以上の他の分子単位、例えば他の抗体または抗体フラグメントに(例えば、化学カップリング、遺伝的融合、非共有結合またはその他によって)機能的に結合して第2の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性抗体を産生することができる。例えば、本発明は、免疫グロブリンの1つのアームが、ヒトPCSK9またはそのフラグメントに特異的であり、かつ免疫グロブリンの他のアームが第2の治療標的に特異的であるか、または治療部分に結合される、二重特異性抗体を含む。

0098

本発明の文脈において用いることができる例示的な二重特異性抗体フォーマットとしては、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインの使用を含み、ここで、第1および第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸によって互いに異なり、アミノ酸の違いがない二重特異性抗体と比較して少なくとも1つのアミノ酸の違いが、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を低下させる。一実施態様において、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによって;EUナンバリングによってH435R)のようなプロテインA結合を低下させるか、または消失させる突然変異を含む。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによって;EUによってY436F)をさらに含んでもよい。第2のCH3内に見いだされうるさらなる修飾としては、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57MおよびV82I(IMGTによって;EUによってD356E、L358M、N384S、K392N、V397MおよびV422I);IgG2抗体の場合、N44S、K52NおよびV82I(IMGT;EUによってN384S、K392NおよびV422I);ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79QおよびV82I(IMGTによって;EUによってQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419QおよびV422I)が含まれる。上記の二重特異性抗体フォーマットにおける変化は、本発明の範囲内に企図される。

0099

治療製剤および投与
本発明は、本発明の抗PCSK9抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、適した担体賦形剤希釈剤増量剤結合剤滑沢剤滑剤崩壊剤吸着剤防腐剤および改善された導入、送達耐性などをもたらす他の薬剤を用いて製剤化される。多くの適当な製剤は、すべて薬剤師に知られている処方集:レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington's Pharmaceutical Sciences)、マック・パブリシングカンパニー(Mack Publishing Company)、イーストン(Easton)、PAに見いだすことができる。これらの製剤には、例えば、散剤ペースト剤軟膏剤ゼリーロウオイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(例えばリポフェクチン(商標)(LIPOFECTINTM)、ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、カールバッド(Carlsbad)、CA)、DNA複合体無水吸収ペースト剤、水中油型および油中水型乳剤乳剤カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。また、Powell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311を参照のこと。

0100

患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢および体格、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化してもよい。好ましい用量は、典型的に体重または体表面積に応じて計算する。抗PCSK9抗体を投与するための有効用量およびスケジュールは、経験的に決定してもよい。例えば、患者の経過は、定期的な評価]よってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、用量の種間スケーリングは、当分野でよく知られた方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al., 1991, Pharmaceut. Res. 8:1351)。

0101

種々の送達システム、例えば、リポソーム中カプセル化微粒子マイクロカプセル突然変異ウイルスを発現できる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシスが知られており、本発明の医薬組成物を投与するために用いることができる(例えば、Wu et al., 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照のこと)。導入の方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。組成物は、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜直腸および腸粘膜、など)を通した吸収によっていずれかの都合のよい経路によって投与してもよく、他の生物活性剤と共に投与してもよい。投与は全身または局所であることができる。

0102

本発明の医薬組成物は、標準の針およびシリンジで皮下または静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達における用途を容易に有する。このようなペン型送達デバイスは再使用可能または使い捨てであることができる。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般に医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを用いる。一旦、カートリッジ内のすべての医薬組成物を投与し、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含む新たなカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジがない。つまり、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバー中に保持された医薬組成物で予め充填されることになる。一旦、リザーバーから医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。

0103

多くの再使用可能なペンおよび自己注射器送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達における用途を有する。ほんの少し例を挙げれば、例としては、オートペン(商標)(AUTOPENTM)(オーウェマンフォード社(Owen Mumford, Inc.)、ウッドストック、英国)、ディトロニック(商標)ペン(DISETRONICTMpen)(ディセトロニックメディカルシステムズ(Disetronic Medical Systems)、ベルグドルフ、スイス)、ヒューマログミックス75/25(商標)ペン(HUMALOGMIX 75/25TM pen)ヒューマログ(商標)ペン(HUMALOGTMpen)ヒューマリン70/30(商標)ペン(HUMALIN 70/30TM pen)(イーライリリー社(Eli Lilly and Co.)、インディアナポリス、IN)、ノボペン(商標)(NOVOPENTM)I、IIおよびIII(ノボノルディスク(Novo Nordisk)、コペンハーゲンデンマーク)、ノボペンジュニア(商標)(NOVOPEN JUNIORTM)(ノボノルディスク(Novo Nordisk)、コペンハーゲン、デンマーク)、BD(商標)ペン(ベクトンディキンソン(Becton Dickinson)、フランクリンレイクス、NJ)、オプティペン(商標)(OPTIPENTM)、オプティペンプロ(商標)(OPTIPEN PROTM)、オプティペンスターレット(商標)(OPTIPEN STARLETTM)およびオプティクリック(商標)(OPTICLIKTM)(サノフィ・アベンティス(sanofi-aventis)、フランクフルト、ドイツ)、が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の医薬組成物の皮下送達に用途を有する使い捨てのペン型送達デバイスの例としては、ほんの少し例を挙げれば、ソロスター(商標)ペン(SOLOSTARTMpen)(サノフィ・アヴェンティス(sanofi-aventis))、フレックスペン(商標)(FLEXPENTM)(ノボノルディスク(Novo Nordisk))、およびクイックペン(商標)(KWIKPENTM)(イーライリリー(Eli Lilly))、シュアクリック(商標)自己注射器(SURECLICKTMAutoinjector)(アムジェン(Amgen)、サウザンドオークス、CA)、ペンレット(商標)(PENLETTM)(商標)(ハーゼルマイヤー(Haselmeier)、シュツットガルト、ドイツ)、エピペン(EPIPEN)(デイ(Dey)、L.P.)、およびヒュミラ(商標)ペン(HUMIRATMPen)(アボットラボラトリーズ(Abbott Labs)、アボットパークIL)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。

0104

特定の状況において、医薬組成物は、放出制御システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用してもよい(Langer, 前出;Sefton, 1987,CRCCrit. Ref. Biomed. Eng. 14:201を参照のこと)。別の実施態様では、ポリマー物質を使用できる;Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (編), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Floridaを参照のこと。さらに別の実施態様において、放出制御システムは、組成物の標的の近くに配置することができ、そのため、全身用量の一部しか必要ではない(例えば、Goodson, 1984, Medical Applications of Controlled Release, 前出, 第2巻, 第115-138頁中を参照する)。他の放出制御システムは、Langer, 1990, Science 249:1527-1533による総説において議論される。

0105

注射用製剤は、静脈内、皮下、皮内および筋肉注射、点滴注入などのための剤形を含んでもよい。これらの注射用製剤は、公知の方法によって製造してもよい。例えば、注射用製剤は、例えば、上記の抗体またはその塩を、注射に慣用的に用いられる滅菌水性媒体または油性媒体中に溶解、懸濁または乳化することによって製造してもよい。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水ブドウ糖および他の補助剤を含有する等張性溶液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ヒマシ油ポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適当な可溶化剤と組み合わせて用いてもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油ダイズ油などがあり、これらは、安息香酸ベンジルベンジルアルコールなどのような可溶化剤と組み合わせて用いてもよい。したがって、製造された注射剤は、適当なアンプル中に充填されることが好ましい。

0106

好都合なことに、上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合わせて適した単位用量の剤形に製造される。このような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤丸剤カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。前述の抗体の含有量は、一般に、単位用量中の剤形当たり約5〜約500mgである。特に注射剤の形態では、前述の抗体は、約5〜約100mg、他の剤形については約10〜約250mgで含まれることが好ましい。

0107

抗体の治療的使用
本発明は、薬剤に使用するための、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体を含む、抗PCSK9抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。本発明は、それを必要とする対象に、抗PCSK9抗体を含む治療組成物(例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体)を投与することを含む方法を含む。治療組成物は、本明細書に開示された抗PCSK9抗体のいずれかまたはそのフラグメントを含むことができる。本明細書に用いるように、「それを必要とする対象」という表現は、高コレステロール血症の1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を示す、または高コレステロール血症と診断された、または、そうでなければ、総血清コレステロール、LDL、トリグリセリドもしくはVLDLの低下から利益を得られるであろう、もしくはHDLの上昇から利益を得られるであろうヒトまたは非ヒト動物を意味する。また、本発明は、本発明の抗PCSK9抗体(例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体)を投与することによってリポタンパク質(a)[Lp(a)]レベルを低下させる方法を含む。

0108

いくつかの場合、本発明の治療製剤で治療される患者は、コレステロール、脂質、トリグリセリドまたはリポタンパク質の上昇したレベルを示すことを除いて、それ以外は健常である。例えば、患者は、治療時に心血管性血栓性または他の疾患または障害の他のいずれかのリスクファクターを示さなくてもよい。しかし、他の例において、患者は、血清コレステロール、脂質、トリグリセリドまたはリポタンパク質の上昇と相関するか、またはこれらに付随して生じる疾患または障害を有するか、またはそれらを発症するリスクがあると診断されたことに基づいて選択する。例えば、本発明の医薬組成物の投与時に、またはその前に、患者は、例えば、冠動脈疾患急性心筋梗塞無症候性頸動脈アテローム性動脈硬化、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患などのような心血管疾患または障害を有すると診断されるか、または発症するリスクがあると確定されてもよい。心血管疾患または障害は、いくつかの場合、高コレステロール血症である。例えば、患者が例えばヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH)、および家族性高コレステロール血症(nonFH)とは異なる高コレステロール血症の発生といったような高コレステロール血症状態を有すると診断されたか、またはそれらを発症するリスクがあると確定された場合、この患者は本発明の医薬組成物を用いた治療に対して選択されうる。

0109

他の場合、本発明の医薬組成物の投与時に、またはその前に、患者は、血栓性閉塞性疾患または障害(例えば、例えば肺塞栓症網膜中心静脈閉塞、など)を有すると診断されるか、またはそれらを発症するリスクがあると確定されてもよい。特定の実施態様において、患者は、上記の疾患または障害の2つまたはそれ以上の組合せを有するか、またはそれらを発症するリスクがあると診断されたことに基づいて選択される。例えば、本発明の医薬組成物の投与時に、またはその前に、患者は、冠動脈疾患および肺塞栓症を有すると診断されるか、または発症するリスクがあると確定されてもよい。また、他の診断上の組合せ(例えば、アテローム性動脈硬化および網膜中心静脈閉塞、heFHおよび脳卒中、など)も、本発明の医薬組成物を用いて治療可能な患者集団の定義に含まれる。

0110

また、本発明の医薬組成物は、代謝性症候群真性糖尿病甲状腺機能低下症ネフローゼ症候群腎不全クッシング症候群胆汁性肝硬変糖原病肝細胞癌胆汁うっ滞成長ホルモン欠乏症からなる群から選択される基礎疾患もしくは障害によって生じるか、またはそれらに関連する高コレステロール血症または脂質異常症の治療にも有用である。また、本発明の医薬組成物は、エストロゲン療法プロゲステロン療法、ベータ遮断薬もしくは利尿薬のような以前の治療法によって生じた、またはそれらに関連する高コレステロール血症または脂質異常症の治療にも有用である。

0111

さらに他の場合、本発明の医薬組成物で治療される患者は、年齢(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75または80より高齢)、人種性別男性または女性)、運動習慣(例えば、定期的に運動する人、運動しない人)、他の既存の医学的状態(例えば、II型糖尿病高血圧、など)、および現在の投薬状態(例えば、スタチン[例えば、セリバスタチン、アトルバスタチンシンバスタチンピタバスタチンロスバスタチンフルバスタチンロバスタチンプラバスタチン、など]、ベータ遮断剤ナイアシン、などを現在使用中である)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の因子に基づいて選択される。本発明は、本発明の医薬組成物(例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCKS9抗体を含む組成物)を、スタチン不耐性、スタチンアレルギー性である患者または従来のスタチン療法に対する反応が不完全または不十分である患者に投与することを含む方法を含む。潜在的患者は、本発明の方法で治療する前に、これらの因子の1つまたはそれ以上に基づいて(例えば、質問表、診断上の評価、などによって)選択/スクリーニングすることができる。

0112

また、本発明は、対象にPCSK9阻害剤を投与することによって対象における経腸コレステロール排泄(TICE)を高める方法を含む。例えば、本発明は、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体を対象に投与することによって対象におけるTICEを高める方法を提供する。特定の実施態様によれば、本発明は、TICEの増強が有益となるであろう対象を特定するか、またはTICE不全を示す対象を特定し、対象にPCSK9阻害剤を投与することを含む方法を含む。

0113

スタチンが、患者のPCSK9レベルを上方制御するということは知られている(例えば、Dubuc et al., Aug. 2004, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 24:1454-1459を参照のこと)。従来の抗PCSK9治療剤を受けるスタチン治療患者は、スタチン療法を受けていない患者よりも速い血清からの抗PCSK9クリアランスを示す。理論に拘束されるわけではないが、スタチン使用患者における上昇したPCSK9レベルは、標的介在性クリアランス(target-mediate clearance)の過程を通して抗PCSK9抗体のより迅速な排泄を招いているかもしれないと提案されている。したがって、スタチン使用中の患者は、最適なコレステロール低下を達成するために従来の抗PCSK9治療剤(例えば、抗PCSK9抗体)の用量を高め、かつ/または投与頻度を増やす必要がありうる。本明細書に用いるように、「従来の抗PCSK9治療剤」という用語は、pH依存性結合特性を示さないあらゆるPCSK9結合分子、すなわち、中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対する低下した結合を示さない分子を意味する。本発明者らは、スタチン誘導性の標的介在性クリアランスの現象は、スタチン療法中の患者の体内で効果的に再利用される抗PCSK9抗体を用いて回避するか、または避けることがありうると考えている。したがって、本発明は、スタチン治療法中の対象に、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体の治療有効量を投与することによって抗PCSK9結合剤のスタチン誘導性の標的介在性クリアランスを克服/回避する方法を含む。また、本発明は、適切なコレステロール低下作用を達成するため、スタチン使用患者に投与する必要がある抗PCSK9薬剤の量を減らす方法、および/または抗PCSK9薬剤をスタチン使用患者に投与する頻度を減らす方法を含み、ここで、このような方法は、患者に最初に投与される従来の抗PCSK9薬剤を、pH依存性結合特性を示す抗PCSK9抗体に代えることによって患者の治療投与療法を変更することを含む。本明細書に記載されたpH依存性抗PCSK9抗体のいずれかは、前述の方法の文脈に関して用いてもよい。

0114

併用療法
また、本発明は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて本明細書に記載された例示的な抗PCSK9抗体のいずれかを含む医薬組成物を投与することを含む治療方法を提供する。本発明の抗PCSK9抗体と組み合わせて投与されうる例示的なさらなる治療剤としては、例えば、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、など)、ナイアシン、フィブリン酸胆汁酸分離剤(例えば、コレスチラミン)、コレセベラムコレスチポールエゼチミブ抗高血圧剤抗糖尿病薬アンギオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)またはアンギオポエチン様タンパク質4(ANGPTL4)のアンタゴニスト(例えば、抗ANGPTL3抗体[例えば、WO2008/073300またはUS7,935,796中に記載された抗ANGPTL3抗体]または抗ANGPTL4抗体[例えば、WO2006/0074228またはWO2007/109307またはWO2011/079257中に記載された抗ANGPTL4抗体])、ならびに上記のさらなる治療剤のいずれかの組合せが含まれる。

0115

さらなる治療活性剤は、本発明の抗PCSK9抗体を投与する直前に、それと同時に、またはその直後に投与してもよい(本開示の目的では、このような投与療法は、さらなる治療活性剤「と組み合わせた」抗PCSK9抗体の投与とみなされる)。本発明は、本発明の抗PCSK9抗体が、本明細書に他の箇所に記載された1つまたはそれ以上のさらなる治療活性成分と同時に製剤化(co-formulate)される医薬組成物を含む。

0116

また、本発明は、本発明の医薬組成物の投与時に、またはその直前に、高コレステロール血症または関連した状態の治療のための治療法中にある患者に、本明細書に記載された例示的な抗PCSK9抗体のいずれかを含む医薬組成物を投与することを含む治療方法を提供する。例えば、以前に高コレステロール血症と診断されたことがある患者は、別の薬物を処方され、その薬物の安定した投与レジメンを本発明の抗PCSK9抗体を含む医薬組成物の投与前に、かつ/または同時に、受けていることもある。以前のまたは同時の治療法は、例えば、(1)3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−補酵素ACoAレダクターゼを阻害することによってコレステロール合成の細胞枯渇を誘導する薬剤、例えばスタチン(例えば、セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、など);(2)コレステロール取り込みまたは胆汁酸再吸収を阻害する薬剤;(3)リポタンパク質異化作用を高める薬剤(例えばナイアシン);および/または(4)22−ヒドロキシコレステロールのようなコレステロール除去において役割を果たすLXR転写因子活性化剤を含んでもよい。特定の実施態様において、患者は、抗PCSK9抗体の投与前、またはそれと同時に、例えばシンバスタチン+エゼチミブ;スタチンと胆汁樹脂(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム);ナイアシン+スタチン(例えば、ナイアシンとロバスタチン);または他の脂質低下剤、例えばオメガ−3−脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)との決まった組合せの治療剤を使用中である。

0117

用量
本発明の方法および投与療法に従って対象に投与される抗PCSK9抗体の量は、一般に治療有効量である。本明細書に用いるように、「治療有効量」という成句は、血清LDL−Cの減少が検出可能となる抗PCSK9抗体の用量、または高コレステロール血症および/もしくは関連する状態の進行を阻害する、防止する、弱める、もしくは遅らせる抗PCSK9抗体の用量を意味する。pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体の場合、治療有効量は、抗PCSK9抗体約0.05mgから約600mgまで、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgであることができる。

0118

個々の用量内に含まれる抗PCSK9抗体の量は、患者体重キログラム当たりの抗体ミリグラム(すなわち、mg/kg)によって表してもよい。例えば、抗PCSK9は、約0.0001〜約10mg/kg患者体重の用量で患者に投与してもよい。

0119

投与療法
本発明の特定の実施態様によれば、複数の用量の本発明の抗PCSK9抗体(例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体を含む医薬組成物)を定められた時間経過にわたって対象に投与してもよい。本発明のこの態様による方法は、対象に複数の用量の抗PCSK9抗体を順に投与すること含む。本明細書に用いるように、「順に投与すること」は、それぞれの用量の抗PCSK9抗体が、異なる時点で、例えば、予め定められた間隔(例えば、数時間、数日、数週間あるいは数ヶ月)を隔てた異なる日に対象に投与されることを意味する。本発明は、初回用量の抗PCSK9抗体を1回、続いて第2の用量の抗PCSK9抗体を1回またはそれ以上、そして場合により、続いて第3の用量の抗PCSK9抗体を1回またはそれ以上、患者に順に投与することを含む方法を含む。

0120

「初回用量」、「第2の用量」および「第3の用量」という用語は、抗PCSK9抗体を投与する時間経過の順序のことをいう。したがって、「初回用量」は、治療法の開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」ともいう);「第2の用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;そして「第3の用量」は、第2の用量の後に投与される用量である。初回、第2および第3の用量は、すべて同じ量の抗PCSK9抗体を含んでもよいが、一般に投与の頻度に関して互いに異なることになる。しかし、特定の実施態様において、初回、第2および/または第3の用量に含まれる抗PCSK9抗体の量は、治療の経過中に互いに異なることになる(例えば、必要応じて上方または下方に調整する)。特定の実施態様において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4または5回)の用量が、治療法の開始時に「負荷量」、続いてより少ない頻度で投与されるその後の用量(例えば、「維持量」)として投与される。負荷量は、例えば、週に1回、2週毎に1回、3週毎に1回、月に1回、2ヵ月毎に1回、3ヵ月毎に1回などの頻度で投与してもよい。

0121

本発明の1つの例示的な実施態様において、それぞれ第2および/または第3の用量は、直前の用量の1〜60(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60またはそれ以上)週後に投与される。「直前の用量」という成句は、本明細書に用いるように、一連の複数の投与において、順序として間に入る用量がなく、ちょうど次の用量を投与する前に、患者に投与される抗PCSK9抗体の用量を意味する。

0122

本発明のこの態様による方法は、患者に第2および/または第3の用量の抗PCSK9抗体を任意の回数投与することを含んでもよい。例えば、特定の実施態様において、第2の用量は1回しか患者に投与されない。別の実施態様において、第2の用量は2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)患者に投与される。同様に、特定の実施態様において、第3の用量は1回しか患者に投与されない。別の実施態様において、第3の用量は2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)患者に投与される。第2および/または第3の用量は、場合によっては、複数の年数の間または対象の生涯にわたって特定の頻度で投与してもよい。

0123

複数回の第2の用量を含む実施態様において、それぞれの第2の用量は、他の第2の用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、それぞれの第2の用量は、直前の用量の1〜60週後に患者に投与してもよい。同様に、複数回の第3の用量を含む実施態様において、それぞれの第3の用量は、他の第3の用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、それぞれの第3の用量は、直前の用量の1〜60週後に患者に投与してもよい。あるいは、第2および/または第3の用量を患者に投与する頻度は、治療法の経過にわたって変化してもよい。また、投与頻度は、治療の経過中に、臨床検査による個々の患者の必要に応じて医師が調整してもよい。

0124

以下の実施例は、本発明の方法を実施するやり方ならびに本発明の組成物を製造および使用するやり方の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載するのであって、発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定しようとするものではない。使用した数に関しては(例えば、量、温度、など)正確さを保つように努めているが、実験的な誤差および偏差いくらか含まれているはずである。特に明記しない限り、部は質量による部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、そして圧力は大気圧またはその付近である。

0125

〔実施例1〕ヒトPCSK9に対するヒト抗体の生成
米国特許第8,062,640号に記載されたようなヒト抗PCSK9抗体を生成した。表1は、選択された抗PCSK9抗体およびそれらの対応する抗体表示の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対、ならびにCDRアミノ酸配列についての配列識別子を示す。核酸配列は、表1中に偶数の配列識別子に対応する奇数の配列識別子によって表される。例えば、配列番号:1は配列番号:2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であり;配列番号:3は配列番号:4のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列である、など。

0126

0127

0128

0129

0130

以下の非限定的な実施例に説明するように、それぞれの重鎖および軽鎖可変ドメインおよび/またはCDRのアミノ酸配列に対する参照を有する表1に記載された抗PCSK9抗体のいずれかを、pH依存性ヒスチジン置換変異体抗体を誘導することができる親抗体として用いてもよい。

0131

〔実施例2〕ヒト抗PCSK9抗体のヒスチジン置換突然変異体の作製
300Nと表示された抗PCSK9抗体は、酸性pHでPCSK9に対する低下した結合親和性を有する中程度のpH依存性結合特性、および増強された薬物動態を有することが知られている(米国特許第8,062,640号を参照のこと)。さらにより大きなpH依存性結合特性(すなわち、中性pHと比較して低いpHで低下した結合)および改善されたin vivo有効性(例えば、より長い抗体血清半減期、延長されたコレステロール低下活性、など)を有する300Nの変異体を生成する試みにおいて一連の変異型抗体を作製した。特に、300Nの相補性決定領域(CDR)内の各アミノ酸がそれぞれヒスチジンに突然変異した300Nの突然変異体バージョンを作製した。表1に示すように、親300N抗体の重鎖可変領域(HCVR)は配列番号:218のアミノ酸配列を含み、そして親300N抗体の軽鎖可変領域(LCVR)は配列番号:226のアミノ酸配列を含む。親300N抗体のCDR配列を表2に示す。His置換突然変異は、300Nから誘導されたヒスチジン置換変異型抗体に対応する抗体表示とともに表3に示す(例えば、VH−G26H、VH−F27H、など)。

0132

0133

0134

0135

表3に記載された各変異型抗体について、すべてのCDR配列は、表に示した突然変異CDR配列を除いて、親300N抗体(配列番号:220、222、224、228、230、232のCDR配列を含む)と同一である。例えば、「VH−D106H」と表示されたヒスチジン置換変異型抗体は、配列番号:220、222、788、228、230、232のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖CDR配列を含む(ここでは、配列番号:224のHCDR3配列が配列番号:788の変異型HCDR3配列で置換される)。同様に、「VK−L30H」と表示されたヒスチジン置換変異型抗体は、配列番号:220、222、224、802、230、232のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖CDR配列を含む(ここでは、配列番号:228のLCDR1配列が配列番号:802の変異型LCDR1配列で置換される)。

0136

〔実施例3A〕中性および酸性pHでの変異型抗PCSK9抗体の結合特性
実施例2のヒスチジン置換変異型抗体を、ヒトPCSK9に対するpH依存性結合について試験し、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore T200)アッセイを用いて25℃で、pH5.75およびpH7.2のいずれかで実施した。本実験の目的は、どのヒスチジン置換変異型抗体が、中性pHと比較して酸性pHでヒトPCSK9に対して低下した結合を示したかを特定することであった。

0137

ビアコアCM4(Biacore CM4)センサーチップを、ヒト抗体を捕捉するモノクローナルマウス抗ヒトFc抗体で誘導体化した。ヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で一時的に発現させた後、培地から抗ヒトFcセンサー表面上へ捕捉させた。3.125nMから500nMの範囲から種々の濃度のC末端myc−myc−ヘキサヒスチジンタグ(hPCSK9−mmH)を有するヒトPCSK9(配列番号:755)を50μl/分の流速で抗PCSK9モノクローナル抗体捕捉表面上に注射した。抗体−抗原結合を4分間または5分間モニターし、次いで捕捉されたモノクローナル抗体からの抗原の解離を5分間または8分間モニターした。スクラバー2.0(Scrubber 2.0)曲線適合ソフトウェアを用いてデータを処理し、1:1結合モデルに適合させることによって動態学的結合(ka)および解離(kd)速度定数を決定した。結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)は、動態学的速度定数:KD(M)=kd/ka;およびt1/2(分)=、(ln2/(60*kd)から計算した。

0138

pH7.2(中性)およびpH5.75(酸性)でヒトPCSK9に結合するヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体のそれぞれについてのKD値およびt1/2値、ならびにこれらのそれぞれの値についてのpH5.75/pH7.2比を表4に示す。親300N抗体の値も表の最下段に示す。KD値はモル濃度(M)表し、t1/2値は分(分)で表す。

0139

0140

0141

表4(すべて25℃での測定値)に示すように、親(300N)抗体は、pH7.2およびpH5.75の両方で中程度の結合親和性(KD約0.9〜1.0nM)を示し、pH7.2と比較してpH5.75でt1/2は3倍を超えて短くなった(すなわち、pH5.75でより速い解離;pH5.75/pH7.2比=0.26)。

0142

単一ヒスチジン置換のいくつかでは、pH5.75およびpH7.2の両方で実質的に低下した結合が得られ、他の置換は、元の配列と比較してpH依存性結合において最小限の作用しか有しなかった。しかし、重要なことに、単一ヒスチジン突然変異のいくつかでは、親抗体と比べて、pH7.2と比較してpH5.75で実質的により速い解離速度を示す抗体が得られた(pH5.75のt1/2は、pH7.2のt1/2より少なくとも5倍短い)。このようなpH依存性結合特性を有する抗体は、重鎖CDR置換を有する抗体:VH−W33H、VH−Q53H、VH−I100H、VH−V104H、VH−D106H、VH−M107HおよびVH−Y112H;ならびに軽鎖CDR置換を有する抗体:VK−L29H、VK−L30H、VK−N33H、VK−L97H、VK−T99HおよびVK−P100Hを含む。ヒスチジン置換変異型抗体VH−D106HおよびVK−L30Hは特に顕著なpH依存性結合を示し、これらをさらなる検査のために選択した。

0143

ヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体VH−D106HおよびVK−L30H、ならびに二重ヒスチジン置換変異体(VH−D106H/VK−L30H)のpH依存性結合特性をさらに調べるため、抗体を精製し、上記と類似した条件を用いて中性pH(pH7.4)(表6)および酸性pH(pH6.0)(表7)でヒトPCSK9に対する結合について試験した。中性pHに対する酸性pHでの結合特性の比率を表8に示す。また、これらの実験には、いくつかの対照/コンパレーター抗体が含まれていた。本アッセイで試験した抗体の一覧を表5に示す。すべての測定値は25℃で得た。

0144

0145

0146

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0148

pH依存性結合は、kdおよびKDの酸性/中性比の高い値(例えば、約12より大きい)によって、そしてt1/2の酸性/中性比の低い値(例えば、約0.20未満)によって示される。これらの基準によって、ヒスチジン置換変異型抗体VK−L30Hおよび二重突然変異型VH−D106H/VK−L30Hは、試験したすべての抗体のうち最も実質的なpH依存性結合特性を示した。特に、これらの抗体は、それぞれ約28を超えるkdの酸性/中性比、約14を超えるKDの酸性/中性比、および0.05未満のt1/2の酸性/中性比を示した。

0149

〔実施例3B〕ヒトPCSK9に対するヒスチジン変異型抗PCSK9抗体の結合特性:中性pHでの結合ならびに中性および酸性pH範囲での解離
本発明の抗PCSK9抗体のpH依存性結合特性をさらに評価するため、結合実験を実施し、ここでは、抗体/抗原結合段階を中性pHで観察し、そして抗体/抗原解離段階を37℃で中性または酸性pHの範囲で観察した。

0150

ビアコアCM4(Biacore CM4)センサーチップを、ヒト抗体を捕捉するためFab
ポリクローナル抗ヒトFc抗体で誘導体化した。精製された選択ヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体(VH−D106H、VK−L30HおよびVH−D016H/VK−L30H)を、親抗体(316Pおよび300N)およびコンパレーター抗体(コンパレーター1−7は、表5を参照のこと)と共に抗ヒトFcセンサー表面上へ捕捉させた。3.125nMから50nMまでの範囲の異なる濃度のC末端myc−myc−ヘキサヒスチジンタグ(hPCSK9−mmH)を有するヒトPCSK9を、30μl/分の流速で抗PCSK9モノクローナル抗体捕捉表面上に注射した。抗体−抗原結合をpH7.4で6分間モニターし、次いで捕捉されたモノクローナル抗体からの抗原の解離をpH7.4、7.2、6.0または5.75のいずれかで5分間モニターした。スクラバーバージョン2.0(Scrubber version 2.0)曲線適合ソフトウェアを用いてデータを処理し、適合させることによって解離(kd)速度定数を決定した。解離半減期(t1/2)は、t1/2(分)=(ln2/kd)/60として解離速度定数から計算した。種々のpH条件下で抗体の結合/解離特性を示すセンサーグラムを図3A〜3Gに図示する。

0151

これらの実験からの結果は、ヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体VH−D106H、VK−L30HおよびVH−D016H/VK−L30Hが、親抗体と比較して低いpHでPCSK9抗原からのより迅速な解離を示すことを裏付けている(図3A〜3GにpH6.0および5.75の実験の360秒の時点での反応レベルの急激な低下として示される)。

0152

〔実施例4〕変異型抗PCSK9抗体の受容体遮断活性
最初に、ELISAベースの免疫測定法を用いて、選択されたヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体を、中性pHでヒトLDLR(hLDLR)に対する組換えヒトPCSK9結合を遮断する能力について試験した。

0153

簡潔に言えば、PBS中2μg/mlで、C末端ヒトFcタグ(「hLDLR EGFAhFc」)で発現されたヒトLDLR(配列番号:758のアミノ酸313〜355)の上皮増殖因子様ドメインAを96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一夜コートし、続いてPBS中0.5%(w/v)BSAの溶液でブロッキングした。このプレートを用いて、表9Aに示すように中性pH(pH7.2)で種々の濃度の抗hPCSK9抗体(親またはヒスチジン置換変異体)により予め平衡にしたhPCSK9−mmHの溶液中で遊離PCSK9を測定した。

0154

中性pH(pH7.2)での抗体の遮断特性を決定する最初の実験として、一定の最終濃度500pMのhPCSK9−mmH(実施例3を参照のこと)を、0nM〜約100nMの範囲の抗体の連続的希釈により予備混合し、続いて室温で1時間インキュベーションし、結合を平衡に到達させた。次いで、平衡試料溶液を、上記のように調製したLDLR EGFAhFcコーティングプレートに移した。1時間インキュベーション後、受容体コーティングプレートを洗浄し、HRP結合抗myc二次抗体(ノーバス(Novus)、#NB600−341)を用いて、プレートに結合したhPCSK9−mmHを検出し、TMB HRP基質(BDバイオサイエンシズ(BD Biosciences)、#555214)を用いて比色シグナルを発生させた。450nmでの吸光度を記録して、プレートコーティングされたLDLR受容体に結合可能な、予備平衡PCSK9−抗体溶液中の遊離hPCSK9−mmhの濃度を示した。抗体を含まない試料からのhPCSK9−mmHの結合シグナルの50%減少を生じる抗体濃度として定義されたIC50値を、プリズム(Prism)ソフトウェア(グラフパッド(GraphPad))を用いてデータから決定し、表9Aに示す。(2つの別個の実験を行った;表9Aにダッシュ記号[−−]によって示すように、各実験ですべての抗体を試験したわけではなかった)。

0155

0156

親抗体300Nは、約0.20nMのIC50値を示した。ヒスチジン置換変異型抗体は、一般に300Nと比較して効力における僅かな低下を示したが、すべてIC50値<1.0nMを保持していた。VK−L30H変異体は、親抗体のものに近い遮断効力を保持していた(2つの別個の測定では0.17および0.20nMのIC50値)。

0157

次いで、類似したELISAベースの免疫測定法を用いて、本発明のヒスチジン置換変異型抗PCSK9抗体およびコンパレーター抗体のサブセットを、中性および低いpH条件でヒトLDLR(hLDLR)に結合する組換えヒトPCSK9を遮断する能力について試験した。

0158

簡潔に言えば、hLDLR EGFAhFcを、PBS中2μg/mLで96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一夜コーティングし、続いてPBS中0.5%(w/v)BSAの溶液でブロッキングした。このプレートを用いて、中性(pH7.2)または低い(pH5.75)pHで種々の濃度の抗hPCSK9抗体により予め平衡にしたhPCSK9−mmHの溶液中で遊離hPCSK9−mmHを測定した。

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