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概要
背景
生体分子、例えば、抗体、ペプチドまたはホルモンを含む治療用タンパク質の効率的で経済的な大規模製造は、バイオテクノロジーおよび医薬品産業にとって、ますます重要な考慮事項となっている。一般的に、この精製方法は、非常に手が込んでおり、高価であり、多くの異なる工程を含む。
典型的には、タンパク質は、例えば、目的のタンパク質を産生するように組み換え操作された哺乳動物または細菌の細胞株を用い、細胞培養法を用いて作られる。一般的に、標的タンパク質の発現に従い、例えば、宿主細胞タンパク質、媒体成分および核酸のような1種類以上の不純物からの標的タンパク質の分離は、手ごわい課題をはらんでいる。このような分離および精製は、治療用タンパク質が、ヒトに使用されることを意味しており、米国食品医薬品局(FDA)のような監督機関による承認が必要な場合には、特に重要である。
タンパク質を精製するための今日使用されている従来法は、多くは、少なくとも以下の工程を含む。(a)例えば、異なる遠心分離および/または濾過を用いた、細胞および細胞片を除去するための浄化工程;および(b)浄化された細胞培養供給物中の種々の不純物から目的のタンパク質を分離するための1つ以上の下流のクロマトグラフィー工程。
発酵および細胞培養方法は、バッチモードまたは供給−バッチモード、または連続的に(例えば、連続灌流方法の形態で)行うことができるが、下流の精製方法は、典型的には、多くは物理的および物流的に分離したバッチ方法として行われる。それぞれの処理工程の間、サンプルは、典型的には、次の処理工程に適するような溶液状態に変えるために、保持槽または貯留槽または容器に保存される。この結果、中間生成物を保存するために大きな容器が必要となる。これにより、費用が高くなり、製造の柔軟性および移動性が非常に制限される。
これに加え、多くの別個のバッチ処理工程を行うことは、労働集約的で費用集約的であり、時間がかかる。
モノクローナル抗体の場合には、精製方法の産業標準は、典型的には、幾つかのユニット操作を含む「テンプレート化された」方法を含む。ユニット操作の1つは、プロテインAと呼ばれるアフィニティリガンドを使用する精製工程であり、プロテインAは、staphylococcus aureusから単離され、抗体のFc領域に結合する。通常は、プロテインAユニット操作と組み合わせて、さらなるユニット操作が使用され、ほとんどのバイオ医薬品企業は、これらのユニット操作の使用と非常によく似た処理テンプレートを使用し、一方、ユニット操作の順序は、ある程度変わってもよい。
今日、産業で使用される例示的なテンプレート化された方法を図1に示す。このテンプレートの鍵となる態様は、細胞収穫工程であり、典型的には、細胞培養ブロスから細胞および細胞片を除去するために遠心分離、その後、デプス濾過の使用を含む。細胞収穫工程は、通常は、ウイルス不活性化の後に行われるプロテインAアフィニティ精製工程の後に行われる。ウイルス不活性化は、典型的には、その後に1つ以上のクロマトグラフィー工程(研磨工程とも呼ばれる。)が行われ、1つ以上のクロマトグラフィー工程は、通常は、カチオン交換クロマトグラフィーおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィーおよび/または疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/または混合モードのクロマトグラフィーおよび/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのうち、1つ以上を含む。研磨工程の後にウイルス濾過および超濾過/透析濾過が行われ、テンプレート法が完成する。例えば、Shukla et al.,J.Chromatography B.,848(2007)28−39;Liu et al.,MAbs、2010:Sep−Oct 2(5):480−499を参照。
一般的に、濾過操作の流出物およびクロマトグラフィー操作の溶出物を中間貯留槽に集め、次のユニット操作まで、多くは一晩保存する。この方法を終了させるのに必要な時間は、4から7日程度であってもよい。
本発明は、産業で現時点で使用されるテンプレート化された方法の幾つかの欠点を克服するテンプレート化された改良法を提供する。
概要
本発明は、生体分子を精製するための改良された方法およびシステムに関し、この方法は、連続的な様式で行うことができる。
目的
効果
実績
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請求項1
標的分子を精製するための方法であって、(a)標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを提供する工程と、(b)サンプルに少なくとも1種類の沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを回収する工程と、(c)工程(b)から得た浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを含む結合および溶出のクロマトグラフィー工程を行い、これによって、標的分子を含む溶出物を得る工程と、(d)溶出物に対し、2種類以上の媒体の使用を含むフロースルー精製を行う工程とを含み、少なくとも2つの工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われ、方法が、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程のみを含む、方法。
請求項2
方法が、連続方法である、請求項1に記載の方法。
請求項3
工程(c)と(d)の間にウイルス不活性化工程を含む、請求項1に記載の方法。
請求項4
請求項5
請求項6
ウイルス不活性化は、1つ以上の調整槽の使用を含む、請求項3に記載の方法。
請求項7
標的分子が抗体である、請求項1に記載の方法。
請求項8
請求項9
工程(b)の沈殿剤は、刺激応答性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
請求項10
刺激応答性ポリマーは、改質されたポリアリルアミンポリマーである、請求項9に記載の方法。
請求項11
請求項12
工程(b)の不純物の除去は、1つ以上のデプスフィルタの使用を含む、請求項1に記載の方法。
請求項13
工程(b)の不純物の除去は、遠心分離の使用を含む、請求項1に記載の方法。
請求項14
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、連続的なマルチカラムクロマトグラフィーを使用する、請求項1に記載の方法。
請求項15
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、アフィニティクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーおよび混合モードのクロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
請求項16
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを使用する、請求項1に記載の方法。
請求項17
プロテインAアフィニティクロマトグラフィーは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマー、孔径が制御されたガラスおよびアガロースからなる群から選択されるマトリックスに接続したプロテインAリガンドを使用する、請求項16に記載の方法。
請求項18
工程(a)のサンプルは、細胞培養物である、請求項1に記載の方法。
請求項19
細胞培養物が、バイオリアクター内で提供される、請求項18に記載の方法。
請求項20
請求項21
細胞培養物は、バイオリアクター以外の容器内で提供される、請求項18に記載の方法。
請求項22
工程(b)の沈殿剤を、細胞培養物を含むバイオリアクターに加える、請求項1に記載の方法。
請求項23
スタティックミキサを用いて沈殿剤を加える、請求項22に記載の方法。
請求項24
工程(b)の沈殿剤を、標的分子を含むサンプルを含む、バイオリアクター以外の容器に加える、請求項1に記載の方法。
請求項25
工程(d)のフロースルー精製が、活性炭、アニオン交換クロマトグラフィー媒体およびカチオン交換クロマトグラフィー媒体から選択される2種類以上の媒体を使用する、請求項1に記載の方法。
請求項26
工程(d)のフロースルー精製が、ウイルス濾過膜の使用をさらに含む、請求項25に記載の方法。
請求項27
カチオン交換クロマトグラフィー媒体が、膜、ビーズまたは繊維の形態である、請求項25に記載の方法。
請求項28
1つ以上の調整槽の使用を含み、および処理工程間で貯留槽を使用しない、請求項1に記載の方法。
請求項29
配合工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
請求項30
請求項31
プロテインA溶出物から標的分子を精製するためのフロースルー方法であって、(a)プロテインAクロマトグラフィーカラムから回収した溶出物を活性炭と接触させる工程と、(b)工程(a)から得たフロースルーサンプルをアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる工程と、(c)工程(b)から得たフロースルーサンプルをカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる工程と、(d)標的分子を含む工程(c)からのフロースルーサンプルを得る工程とを含み、溶出物は、工程(a)から(c)まで連続的に流れ、(d)のフロースルーサンプル中の1種類以上の不純物のレベルは、工程(a)の溶出物でのレベルよりも低い、方法。
請求項32
工程(c)から得たフロースルーサンプルに対し、ウイルス濾過を行うことをさらに含む、請求項31に記載のフロースルー方法。
請求項33
pHを変えるために、工程(b)と(c)の間で、インラインスタティックミキサおよび/または調整槽の使用をさらに含む、請求項31に記載のフロースルー方法。
請求項34
方法が、1個のスキッドを使用する、請求項31または32または33に記載のフロースルー方法。
請求項35
プロテインAクロマトグラフィーカラムから得た溶出物に対し、活性炭と接触させる前にウイルス不活性化を行う、請求項31に記載のフロースルー方法。
請求項36
工程(a)から(c)を任意の順序で行ってもよい、請求項31に記載の方法。
請求項37
プロテインA溶出物から標的分子を精製するためのフロースルー精製方法であって、溶出物を活性炭、アニオン交換媒体、カチオン交換媒体およびウイルス濾過媒体から選択される2種類以上の媒体と接触させることを含み、溶出物の流れが連続的である、方法。
請求項38
精製方法で使用するためのシステムであって、(a)バイオリアクターと、(b)1つ以上のデプスフィルタを含む濾過デバイスと、(c)1個の結合および溶出のクロマトグラフィー装置と、(d)少なくともフロースルーアニオン交換デバイスを少なくとも含むフロースルー精製システムとを含み、(a)から(d)のデバイスは互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルがシステム全体を連続して流れることができる、システム。
請求項39
(a)のバイオリアクターが、シングルユースバイオリアクターである、請求項38に記載のシステム。
請求項40
システムが、滅菌環境に囲まれている、請求項38に記載のシステム。
請求項41
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー装置が、少なくとも2つの分離ユニットを含み、それぞれのユニットが、同じクロマトグラフィー媒体を含み、2つの分離ユニットは、サンプルがユニットから次のユニットへ次から次へと流れることができるように接続している、請求項38に記載のシステム。
請求項42
請求項38に記載のシステムであって、(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー装置が、同じクロマトグラフィー媒体を含む3つ以上の分離ユニットを含み、3つ以上の分離ユニットは、液体が分離ユニットから次の分離ユニットへ、および最後の分離ユニットから最初の分離ユニットへ次から次へと流れることができるように接続している、システム。
請求項43
工程(d)のフロースルー精製は、活性炭デバイス、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイスから選択されるデバイスをさらに含む、請求項38に記載のシステム。
請求項44
工程(d)のフロースルー精製システムは、1個のスキッドを使用する、請求項38に記載のシステム。
請求項45
サンプルから標的分子を精製するための方法であって、(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、(b)バイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって浄化されたサンプルを得る工程と、(c)浄化されたサンプルを、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程に連続的に移し、これによって溶出物を得る工程と、(d)溶出物を1種類以上のウイルス不活性化剤と混合するために、工程(c)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽に連続的に移す工程と、(e)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、工程(d)の後の溶出物を、フロースルー精製操作に連続的に移す工程と、(f)工程(e)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程とを含み、処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルがひとつの処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(f)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われる、方法。
請求項46
サンプルから標的分子を精製するための方法であって、(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、(b)バイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを得る工程と、(c)浄化されたサンプルに、塩、洗剤、界面活性剤およびポリマーからなる群から選択される1種類以上の添加剤を加える工程と、(d)浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程を行い、これによって溶出物を得る工程と、(e)工程(d)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽を用いてウイルス不活性化薬剤にさらす工程と、(f)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、ウイルス不活性化後の溶出物をフロースルー精製操作に接触させる工程と、(g)工程(f)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程とを含み、処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルがひとつの処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(g)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われる、方法。
請求項47
添加剤が塩である、請求項46に記載の方法。
請求項48
塩が、0.5MNaClである、請求項47に記載の方法。
技術分野
0001
関連する出願
本出願は、出願日が2012年6月29日の米国仮特許出願第61/666,521号、出願日が2012年6月29日の米国仮特許出願第61/666,561号、出願日が2012年6月29日の米国仮特許出願第61/666,329号、および出願日が2012年7月2日の欧州特許出願EP12004909.3の優先権の利益を主張し、それぞれ、この全体が本明細書に参考として組み込まれる。
背景技術
0003
生体分子、例えば、抗体、ペプチドまたはホルモンを含む治療用タンパク質の効率的で経済的な大規模製造は、バイオテクノロジーおよび医薬品産業にとって、ますます重要な考慮事項となっている。一般的に、この精製方法は、非常に手が込んでおり、高価であり、多くの異なる工程を含む。
0004
典型的には、タンパク質は、例えば、目的のタンパク質を産生するように組み換え操作された哺乳動物または細菌の細胞株を用い、細胞培養法を用いて作られる。一般的に、標的タンパク質の発現に従い、例えば、宿主細胞タンパク質、媒体成分および核酸のような1種類以上の不純物からの標的タンパク質の分離は、手ごわい課題をはらんでいる。このような分離および精製は、治療用タンパク質が、ヒトに使用されることを意味しており、米国食品医薬品局(FDA)のような監督機関による承認が必要な場合には、特に重要である。
0005
タンパク質を精製するための今日使用されている従来法は、多くは、少なくとも以下の工程を含む。(a)例えば、異なる遠心分離および/または濾過を用いた、細胞および細胞片を除去するための浄化工程;および(b)浄化された細胞培養供給物中の種々の不純物から目的のタンパク質を分離するための1つ以上の下流のクロマトグラフィー工程。
0006
発酵および細胞培養方法は、バッチモードまたは供給−バッチモード、または連続的に(例えば、連続灌流方法の形態で)行うことができるが、下流の精製方法は、典型的には、多くは物理的および物流的に分離したバッチ方法として行われる。それぞれの処理工程の間、サンプルは、典型的には、次の処理工程に適するような溶液状態に変えるために、保持槽または貯留槽または容器に保存される。この結果、中間生成物を保存するために大きな容器が必要となる。これにより、費用が高くなり、製造の柔軟性および移動性が非常に制限される。
0008
モノクローナル抗体の場合には、精製方法の産業標準は、典型的には、幾つかのユニット操作を含む「テンプレート化された」方法を含む。ユニット操作の1つは、プロテインAと呼ばれるアフィニティリガンドを使用する精製工程であり、プロテインAは、staphylococcus aureusから単離され、抗体のFc領域に結合する。通常は、プロテインAユニット操作と組み合わせて、さらなるユニット操作が使用され、ほとんどのバイオ医薬品企業は、これらのユニット操作の使用と非常によく似た処理テンプレートを使用し、一方、ユニット操作の順序は、ある程度変わってもよい。
0009
今日、産業で使用される例示的なテンプレート化された方法を図1に示す。このテンプレートの鍵となる態様は、細胞収穫工程であり、典型的には、細胞培養ブロスから細胞および細胞片を除去するために遠心分離、その後、デプス濾過の使用を含む。細胞収穫工程は、通常は、ウイルス不活性化の後に行われるプロテインAアフィニティ精製工程の後に行われる。ウイルス不活性化は、典型的には、その後に1つ以上のクロマトグラフィー工程(研磨工程とも呼ばれる。)が行われ、1つ以上のクロマトグラフィー工程は、通常は、カチオン交換クロマトグラフィーおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィーおよび/または疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/または混合モードのクロマトグラフィーおよび/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのうち、1つ以上を含む。研磨工程の後にウイルス濾過および超濾過/透析濾過が行われ、テンプレート法が完成する。例えば、Shukla et al.,J.Chromatography B.,848(2007)28−39;Liu et al.,MAbs、2010:Sep−Oct 2(5):480−499を参照。
0010
一般的に、濾過操作の流出物およびクロマトグラフィー操作の溶出物を中間貯留槽に集め、次のユニット操作まで、多くは一晩保存する。この方法を終了させるのに必要な時間は、4から7日程度であってもよい。
先行技術
0012
Shukla et al.,J.Chromatography B.,848(2007)28−39
Liu et al.,MAbs、2010:Sep−Oct 2(5):480−499
0013
本発明は、今日、産業で使用される典型的なテンプレート化された方法に対し、幾つかの利点を与える方法およびシステムを提供する。本明細書に記載するテンプレート化された方法およびシステムは、連続的な様式または半連続的な様式で接続し、典型的には貯留槽(保持槽とも呼ばれる。)を使用する特定のユニット操作の間に保持槽の必要性をなくしたユニット操作を含む。または、調整槽のみを使用する。
0014
特定の処理工程の特定の組み合わせに起因し、本明細書に記載する方法およびシステムは、産業で使用される典型的な方法よりも必要な工程が少なく、さらに、生成物の収率に悪影響を与えることなく、全体的な精製方法のための時間を顕著に短くする。
0015
本発明の一態様では、サンプルから標的分子を精製するための方法が提供される。ある実施形態では、このような方法は、(a)標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを提供する工程と、(b)このサンプルに少なくとも1種類の沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを回収する工程と、(c)工程(b)から得た浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを含み、それぞれの分離ユニットが同じ媒体を含む結合および溶出のクロマトグラフィー工程を行い、これによって、標的分子を含む溶出物を得る工程と、(d)溶出物に対し、2種類以上の媒体の使用を含むフロースルー精製を行う工程とを含み、少なくとも2つの工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われ、この方法が、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を含む。
0017
ある実施形態では、この方法は、上の工程(c)と(d)の間にウイルス不活性化工程を含む。本明細書で記載するように、ウイルス不活性化工程は、酸、洗剤、溶媒および温度変化から選択されるウイルス不活性化剤の使用を含む。
0019
ある実施形態では、標的分子は、抗体であり、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
0020
ある実施形態では、本明細書に記載する方法で使用される沈殿剤は、刺激応答性ポリマーである。好ましい刺激応答性ポリマーは、改質されたポリアリルアミンポリマーであり、ホスフェート刺激に応答性である。
0022
ある実施形態では、沈殿剤を添加した後の不純物の除去は、1つ以上のデプスフィルタの使用を利用する。他の実施形態では、1種類以上の不純物の除去は、遠心分離の使用を利用する。
0023
1種類以上の不純物を沈殿させ、除去した後、浄化されたサンプルについて、典型的には、少なくとも2種類の分離ユニットを使用する1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程、例えば、上述の工程(c)を行う。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMC)を使用する。
0024
好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、アフィニティクロマトグラフィー工程(例えば、プロテインAアフィニティクロマトグラフィー)である。他の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、カチオン交換(CEX)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程または混合モードのクロマトグラフィー工程の使用を含む。
0025
ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程(例えば、プロテインAアフィニティクロマトグラフィー)は、保持工程で添加剤の使用を利用し、これによって、使用される中間洗浄工程の数を減らすか、またはなくす。
0028
ある実施形態では、サンプルは、バイオリアクター以外の容器内で提供され、例えば、本明細書に記載されるように、精製工程を行う前に、バイオリアクターから別の容器に移してもよい。
0029
ある実施形態では、上の工程(b)で使用される沈殿剤を、細胞培養物を含むバイオリアクターに直接加える。他の実施形態では、沈殿剤を、標的分子を含むサンプルを含む、バイオリアクター以外の容器に加える。ある実施形態では、スタティックミキサを用いて沈殿剤を加える。
0030
ある好ましい実施形態では、本明細書に記載する方法は、活性炭、アニオン交換クロマトグラフィー媒体およびカチオン交換クロマトグラフィー媒体から選択される2種類以上の媒体を使用するフロースルー精製方法の操作を含む。ある実施形態では、このようなフロースルー精製操作は、さらに、ウイルス濾過膜の使用を利用するウイルス濾過工程を含む。
0031
本明細書に記載する方法は、種々の処理工程の間の貯留槽の使用の必要性をなくす。ある実施形態では、本発明の方法は、1つ以上の調整槽の使用を含む。
0033
上述のように、本明細書に記載する方法は、典型的には2種類以上の媒体を使用するフロースルー精製操作を含む。ある実施形態では、本明細書で記載する方法で使用されるフロースルー精製方法の操作は、以下の工程を含み、すべての工程は、フロースルーモードで行われる。(a)プロテインAクロマトグラフィーカラムから回収した溶出物を活性炭と接触させる工程と、(b)工程(a)から得たフロースルーサンプルをアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる工程と、(c)工程(b)から得たフロースルーサンプルをカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる工程と、(d)標的分子を含む工程(c)からのフロースルーサンプルを得る工程。ここで、工程(d)のフロースルーサンプル中の1種類以上の不純物のレベルは、工程(a)の溶出物でのレベルよりも低い。上述の工程(a)から(c)を任意の順序で行ってもよい。
0034
ある実施形態では、フロースルー精製工程は、さらに、ウイルス濾過工程を含み、工程(c)から得たフロースルーサンプルを、ウイルス濾過工程に直接流す。
0035
ある実施形態では、工程(b)と工程(c)の間に溶液の変更が必要であり、溶液の変更は、pHを変えるために、インラインスタティックミキサおよび/または調整槽の使用を含む。
0036
ある実施形態では、フロースルー精製操作全体が1個のスキッドを使用する。
0037
ある実施形態では、プロテインAクロマトグラフィー工程から得た溶出物に対し、溶出物と活性炭とを接触させる前にウイルス不活性化を行う。
0038
本明細書に記載する特定の実施形態では、サンプルから標的分子を精製するための方法が提供され、この方法は、(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、(b)このバイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを得る工程と、(c)浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程を行い、これによって、溶出物を得る工程と、(d)工程(c)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽を用い、ウイルス不活性化剤にさらす工程と、(e)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、ウイルス不活性化後の溶出物を、フロースルー精製操作に接触させる工程と、(f)工程(d)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程とを含み、この処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルが処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(f)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部の間に同時に行われる。
0039
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、サンプルから標的分子を精製するための方法が提供され、この方法は、(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、(b)このバイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを得る工程と、(c)浄化されたサンプルに、塩、洗剤、界面活性剤およびポリマーからなる群から選択される1種類以上の添加剤を加える工程と、(d)浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程を行い、これによって、溶出物を得る工程と、(e)工程(d)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽を用いてウイルス不活性化薬剤にさらす工程と、(f)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、ウイルス不活性化後の溶出物を、フロースルー精製操作に接触させる工程と、(g)工程(f)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程とを含み、この処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルが処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(g)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部の間に同時に行われる。
0040
ある実施形態では、工程(c)の添加剤は、0.5M NaClである。
0041
本明細書に記載されるように、精製方法で使用するためのシステムも本明細書に提供される。ある実施形態では、システムは、(a)バイオリアクターと、(b)1つ以上のデプスフィルタを含む濾過デバイスと、(c)1個の結合および溶出のクロマトグラフィー装置と、(d)フロースルーアニオン交換デバイスを少なくとも含むフロースルー精製システムとを含み、液体は、処理を行っている間、(a)から(d)のデバイスを通って連続的に流れ、デバイスは、互いに流体連結するように接続する。
0042
ある実施形態では、システムの種々のデバイスの間に接続ラインが存在する。デバイスは、システム中のそれぞれのデバイスが、システム中のデバイスの前にあるデバイスおよび後にあるデバイスと流体連結するようにラインで接続している。
0044
ある実施形態では、システムは、滅菌環境に囲まれている。
0045
ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー装置が、少なくとも2つの分離ユニットを含み、それぞれのユニットが、同じクロマトグラフィー媒体(例えば、プロテインAアフィニティ媒体)を含む。特定の実施形態では、プロテインA媒体は、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに接続したプロテインAリガンドを含む。他の実施形態では、プロテインAリガンドは、アガロースまたは孔径が制御されたガラスに接続する。プロテインAリガンドは、Staphylococcus aureus由来のプロテインAの天然に存在するドメインに基づいていてもよく、または、天然に存在するドメインの改変体またはフラグメントであってもよい。特定の実施形態では、プロテインAリガンドは、Staphylococcus aureusのプロテインAのCドメインから誘導される。
0046
他の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー装置は、少なくとも3つの分離ユニットを含む。分離ユニットは、互いに流体連結するように接続し、この結果、液体が、ある分離ユニットから次の分離ユニットへと流れることができる。
0047
さらに他の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、保持工程中に、浄化された細胞培養物中で添加剤を使用し、添加剤を含むことで、溶出工程前の1つ以上の洗浄工程の必要性を減らすか、またはなくす。
0048
ある実施形態では、フロースルー精製システムは、活性炭デバイスおよびカチオン交換(CEX)フロースルークロマトグラフィーデバイスをさらに含む。ある実施形態では、フロースルー精製システムは、ウイルス濾過デバイスをさらに含む。
0049
ある実施形態では、フロースルー精製システム全体が1個のスキッドを含む。
図面の簡単な説明
0050
図1は、産業で使用される従来の精製方法の模式図である。
図2は、本明細書に記載するような例示的な精製方法の模式図である。示されている精製方法は、細胞培養のためのバイオリアクターを使用し、続いて、浄化;プロテインAの結合および溶出クロマトグラフィー(捕捉);ウイルス不活性化;フロースルー精製;および配合の処理を行う工程が続く。示されているように、それぞれの処理工程は、処理工程の意図した結果を達成するために用いられる1つ以上のデバイスを使用する。示されているように、浄化は、沈殿およびデプス濾過を使用し、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィーは、連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMC)を用いて行われ、ウイルス不活性化は、2つのインラインスタティックミキサを使用し、フロースルー精製は、活性炭(AC)を使用し、その後、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィーを使用し、その後、インラインスタティックミキサおよび調整槽を用いてpHを変え、その後、フロースルーカチオン交換(CEX)クロマトグラフィーおよびウイルス濾過を使用し、配合は、透析濾過/濃縮タンジェンシャルフロー濾過デバイス、その後、滅菌濾過を使用する。この方法全体で、1つ以上の滅菌フィルタも使用される。
図3は、図2の方法の浄化工程中に用いられるそれぞれのデプスフィルタ(1番目および2番目)および滅菌フィルタの圧力を測定するための実験結果を示すグラフである。X軸は、フィルタ保持量(L/m2)を示し、X軸の上側は、滅菌フィルタの保持量を指し、X軸の下側は、2つのデプスフィルタの保持量を指し、Y軸は、psiでの圧力を示す。
図4は、プロテインAの連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMC)の設定で保持させる前に、デプス濾過によるHCPおよびMAbの通過を測定するための実験結果を示すグラフである。X軸は、デプスフィルタ保持量(L/m2)を示し、左側のY軸は、MAb濃度(mg/mL)を示し、右側のY軸は、HCP濃度(μg/mL)を示す。
図5は、実施例3でさらに記載されるような、フロースルー精製処理工程の模式的な記載である。
図6は、デプスフィルタ、活性炭およびウイルス濾過の後の圧力プロフィールを測定するための実験結果を示すグラフである。Y軸は、圧力(psi)を示し、X軸は、時間単位での時間を示す。
図7は、AEX保持後のHCPの通過を測定するための実験結果を示すグラフである。Y軸は、HCP濃度(ppm)を示し、X軸は、AEX保持量(kg/L)を示す。
図8は、フロースルー精製操作中、ウイルス濾過デバイスの保持量の関数としてのMAb凝集物の除去量を測定するための実験結果を示すグラフである。X軸は、ウイルス濾過保持量(kg/m2)を示し、Y軸は、ウイルス濾過後のサンプル中のMAb凝集物のパーセントを示す。
図9は、フロースルー精製操作中、活性炭の後、ウイルス濾過の前の圧力プロフィールを測定するための実験結果を示すグラフである。X軸は、時間単位での時間を示し、Y軸は、psi単位での圧力を示す。
図10は、pHおよび導電性のプロフィールを測定するための実験結果を示すグラフであり、pHは、活性炭の前と、CEXフロースルーデバイスの前に測定され、導電性は、CEXフロースルーデバイスの前に測定される。左側のY軸は、pHを示し、右側のY軸は、導電性(mS/cm)を示し、X軸は、時間単位での時間を示す。
図11は、2つの分離ユニットを使用するCMCを用いた、未処理の浄化されるMAb04のプロテインA捕捉のクロマトグラムである。
図12は、2つの分離ユニットを使用するCMCを用いた、スマートポリマーで浄化されたMAb04のプロテインA捕捉のクロマトグラムである。
図13は、2つの分離ユニットを使用するCMCを用いた、カプリン酸で浄化されたMAb04のプロテインA捕捉のクロマトグラムである。
図14は、活性炭およびアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)デバイスをフロースルー精製操作の一部として用いたHCP除去に対する滞留時間の効果を観察するための実験結果を示すグラフである。Y軸は、HCP濃度(ppm)を示し、X軸は、AEX保持量(kg/L)を示す。
図15は、フロースルー精製操作中のフロースルーアニオン交換クロマトグラフィー工程とカチオン交換クロマトグラフィー工程の間に調整槽を用いた後のpH上昇に対する効果を測定するための実験結果を示すグラフである。X軸は、pHを示し、Y軸は、時間単位での時間を示す。
図16は、生成物の純度に対する悪い影響をもたない連続様式でフロースルー精製操作を行うことを示すために用いられる実験的な設定の模式図である。
図17は、連続態様およびバッチモードでウイルス濾過デバイスの使用によるウイルス濾過の後の圧力プロフィールを観察するための実験結果を示すグラフである。Y軸は、psi単位での圧力を示し、X軸は、時間単位での処理時間を示す。
図18は、ウイルス濾過デバイスのスループットに対する流速の効果を観察するための実験結果を示すグラフである。Y軸は、圧力低下(psi)を示し、X軸は、ウイルス濾過デバイスのスループット(kg/m2)を示す。
図19は、pH5.0および3分の滞留時間でのMAb5のロット番号1712のクロマトグラムを示す。図19に示されるように、生成物の大部分は、フロースルー中に集められ、このことは、タンパク質のUV痕跡量の比較的迅速な通過によって示される。ストリップピークの大きさは、一般的に、条件および保持される合計質量によって変わるが、ほんの5.5%の凝集物しか含まなかった保持材料と比較して、凝集物種を95.6%と比較的豊富に含む。
図20は、刺激応答性ポリマーおよび/またはNaClで処理した細胞培養物について、プロテインA精製のクロマトグラムからの溶出ピーク(120から130mlで最初のピーク)および再生ピーク(140ml付近)を示すグラフである。処理を行わなかったコントロールも示される。X軸は、プロテインAカラムを通り抜けた容積をあらわし、Y軸は、280nm波長での吸光度をあらわす。
図21は、プロテインAクロマトグラフィー中の中間洗浄工程または保持工程で用いるNaCl濃度の関数としてのHCP LRVを示す棒グラフである。X軸は、モル濃度(M)でのNaCl濃度をあらわし、Y軸は、HCP LRVをあらわす。
図22は、プロテインAクロマトグラフィー中の中間洗浄工程または保持工程中のNaCl濃度の関数としての生成物(MAb)の回収率を示す棒グラフである。X軸は、M単位でのNaCl濃度をあらわし、Y軸は、MAb回収率をあらわす。
図23は、プロテインAクロマトグラフィー中の中間洗浄工程または保持工程中に含まれる添加剤の関数としてのパーツパーミリオン(ppm)単位でのHCP濃度を示す棒グラフである。X軸は、含まれる添加剤をあらわし、Y軸は、ppm単位でのHCP濃度をあらわす。
図24は、プロテインAクロマトグラフィー中の中間洗浄工程または保持工程中に含まれる添加剤の関数としてのHCP LRVを示す棒グラフである。X軸は、含まれる添加剤をあらわし、Y軸は、HCP LRVをあらわす。
図25は、プロテインAクロマトグラフィー中の中間洗浄工程または保持工程中に含まれる添加剤の関数としてのコントロール溶出プールの容積に対する、添加剤の溶出プールの容積の比率を示す棒グラフである。X軸は、含まれる添加剤をあらわし、Y軸は、コントロール溶出プールの容積に対する、添加剤の溶出プールの容積の比率をあらわす。
0051
本発明は、精製または生体分子、例えば、抗体のための産業で使用される典型的なテンプレート化された方法に関連する幾つかの欠陥を克服する方法およびシステムを提供する。
0052
上述のように、生体分子を精製するための典型的なテンプレート化された方法は、1つ以上のクロマトグラフィー工程を含む多くの異なる工程を含み、工程の間に保持槽または貯留槽の使用を必要とし、終了するのに数時間から数日間かかる。
0053
典型的なテンプレート化された方法から離れて移動するために幾つかの努力がはらわれてきた。例えば、PCT国際公開第2012/014183号は、2つ以上のクロマトグラフィー分離モードをタンデムで組み合わせたタンパク質を精製するための方法を記載する。さらに、米国特許公開第2008/0269468号は、連続的な灌流発酵システムと、連続的な粒子除去システムおよび連続的な精製システムの組み合わせを記載し、この方法全体の混合物の流速は実質的に一定に保たれる。
0054
さらに、PCT国際公開第2012/051147号は、タンパク質を精製するための方法を記載するが、連続的な方法または半連続的な方法は記載されていないようである。
0055
最後に、PCT国際公開第2012/078677号は、生体分子を製造する連続的な方法を記載するが、マルチバルブアレイの利用に依存するようである。さらに、上述のPCT公開は、本明細書に記載するすべての処理工程の使用も教示または示唆しない。例えば、フロースルー活性炭デバイス、フロースルーAEX媒体、フロースルーCEX媒体およびフロースルーウイルスフィルタの使用を含む複数のフロースルー工程を含むフロースルー精製操作の教示も示唆もないようである。実際に、PCT国際公開第2012/078677号は、フロースルーモードで行われるカチオン交換クロマトグラフィー工程を教示も示唆もしない。最後に、上述のPCTは、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を使用し、本明細書に記載の方法によって、最小限の介入で首尾良く行うことができる連続的な方法も記載できていない。
0056
従って、連続モードで行われる精製方法を含むことが望ましいと思われるが、幾つかの個々のユニット操作を接続することに関連する複雑さに起因し、最小限の介入によって、例えば、少ない溶液調整によって(例えば、pHおよび/または導電性の変更)、連続的または半連続的なモードで行うために効率的な連続方法を達成することが困難である。しかし、本発明は、これを実際に達成することができた。
0057
本発明は、さらに、今日、産業で使用される従来の方法に比べ、例えば、処理工程の数の減少、溶液調整のための処理工程の間の大きな貯留槽の使用必要性をなくすことといった他の利点も提供する。本明細書に記載する方法およびシステムの場合には、導電性を変えるために、大きな容積の希釈を行う必要がなく、これによって、処理工程間の大きな貯留槽の使用必要性がない。さらに、ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、当分野で使用される従来の方法と比較して、それぞれの1つの処理工程と典型的に関連する少ない制御/監視装置(「スキッド」とも呼ばれる。)を使用する。
0058
ある実施形態では、本発明は、さらに、プロテインAクロマトグラフィーの保持工程中に添加剤の含有を使用する方法も提供し、生成物の純度を犠牲にすることなく、保持工程から溶出工程までまっすぐに進むことによって、または保持工程と溶出工程の間の洗浄工程の数を減らすことによって、1つ以上の中間洗浄工程を減らすか、またはなくす。一方、米国特許公開第20130096284号は、プロテインAクロマトグラフィーカラムに保持されるサンプル中にアミノ酸または塩が含まれることを記載しており、上述の公開は、本明細書に記載するようなマルチカラムの連続モードまたは半連続モードのこのようなプロテインAクロマトグラフィー工程の使用を教示または示唆していないようである。その代わりに、このようなプロテインA工程をバッチの1つのカラムモードで行うことを記載している。
0059
本発明は、プロテインAクロマトグラフィー工程中に行われる洗浄工程をなくすか、または洗浄工程の数を減らしたときでさえ、生成物の純度を犠牲にすることなく、不純物、例えば、HCPのレベルの低下が観察されることを示す。
0060
本発明をより簡単に理解し得るために、特定の用語を最初に定義する。詳細な記載全体で、さらなる定義を記載する。
0061
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、変動し得る特定の組成または処理工程に限定されないことを理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、この内容が他の意味であると明確に示されていない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」が、複数の対象物を含むことに留意されたい。従って、例えば、「1つのリガンド(a ligand)」に対する言及は、複数のリガンドを含み、「1つの抗体(an antibody)」に対する言及は、複数の抗体を含む、など。
0063
以下の用語は、本明細書に記載するように、本発明の目的のために定義される。
0064
本明細書で使用される場合、「標的分子」または「標的化合物」という用語は、本明細書に記載される方法およびシステムを用い、サンプル中の1種類以上の不純物から単離され、分離されるか、または精製される任意の分子、物質または化合物、またはこれらの混合物を指す。種々の実施形態では、標的分子は、生体分子、例えば、タンパク質、または2種類以上のタンパク質の混合物である。特定の実施形態では、標的分子は、Fc領域を含むタンパク質、例えば、抗体である。
0065
「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。典型的には、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる基本的な4種類のポリペプチド鎖構造を有し、この鎖は、例えば、鎖間のジスルフィド結合によって安定化される。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、モノマー形態またはポリマー形態で存在していてもよく、例えば、ペンタマー形態で存在するIgM抗体および/またはモノマー形態、ダイマー形態またはマルチマー形態で存在するIgA抗体であってもよい。抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびリガンド特異的な結合ドメインを保持しているか、またはリガンド特異的な結合ドメインを含むように修正されている限り、抗体フラグメントも含んでいてもよい。「フラグメント」という用語は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。フラグメントは、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的な処理によって得ることができる。フラグメントは、組み換え手段によっても得ることができる。組み換えによって作られる場合、フラグメントは、単独で発現してもよく、または融合タンパク質と呼ばれるより大きなタンパク質の一部として発現してもよい。例示的なフラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFvのフラグメントが挙げられる。
0066
ある実施形態では、Fc領域を含むタンパク質は、別のポリペプチドまたはこのフラグメントに融合した免疫グロブリンのFc領域を含む組み換えタンパク質である。例示的なポリペプチドとしては、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1抗トリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;ろ胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝血因子、例えば、VIIIC因子、IX因子、組織因子およびヴォン・ヴィレブランド因子、抗凝結因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿組織または組織型のプラスミノゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび腫瘍壊死因子−β;エンケファリナーゼ;RANTES(正常T細胞に発現し、分泌する活性化について制御);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンα鎖;リラキシンβ鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、β−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞毒性T−リンパ球関連抗原(CTLA)(例えば、CTLA−4);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、ウシ由来の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5またはニューロトロフィン−6(ΝT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)、または神経成長因子、例えば、NGF−β;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えば、αFGFおよびβFGF;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF−αおよびTGF−β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含む。);インスリン様成長因子−Iおよびインスリン様成長因子−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IFG−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34およびCD40;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−βおよびインターフェロン−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、OM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えば、CD1 Ia、CD1 Ib、CD1 Ic、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、HER2、HER3またはHER4受容体;および上に列挙したポリペプチドのフラグメントおよび/または改変体が挙げられる。これに加え、本明細書に記載する方法を用いて精製され得る抗体は、上に列挙した任意のポリペプチドに特異的に結合し得る。
0067
本明細書で使用する場合、他の意味で述べられていない限り、「サンプル」という用語は、標的分子を含む任意の組成物または混合物を指す。サンプルは、生体源または他の供給源から誘導されてもよい。生体源としては、真核生物および原核生物、例えば、植物および動物の細胞、組織および臓器が挙げられる。サンプルは、希釈剤、バッファー、洗剤および混入する種、標的分子と混合して見出される破片なども含んでいてもよい。サンプルは、「部分的に精製されて」(即ち、1つ以上の精製工程、例えば、濾過工程を行って)いてもよく、または、標的分子を産生する宿主細胞または臓器から直接得られてもよい(例えば、サンプルは、収穫された細胞培養液を含んでいてもよい。)。ある実施形態では、サンプルは、細胞培養供給物である。
0068
「不純物」または「混入物質」という用語は、本明細書で使用する場合、生体高分子、例えば、DNA、RNA、1つ以上の宿主細胞タンパク質、内毒素、脂質および本発明の方法を用いた1種類以上の外来分子または良くない分子から分離される、標的分子を含むサンプル中に存在し得る1種類以上の添加剤を含む任意の外来分子または良くない分子を指す。さらに、このような不純物は、本発明の方法の前に起こり得る工程で使用される任意の試薬を含んでいてもよい。不純物は、可溶性または不溶性であってもよい。
0069
「不溶性不純物」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子を含むサンプル中に存在する任意の望ましくない部分または良くない部分を指し、この部分は、懸濁した粒子または固体である。例示的な不溶性不純物としては、全細胞、細胞フラグメントおよび細胞片が挙げられる。
0070
「可溶性不純物」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子を含むサンプル中に存在する任意の望ましくない部分または良くない部分であって、この部分が不溶性不純物ではない部分を指す。例示的な可溶性不純物としては、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、RNA、ウイルス、内毒素、細胞培地成分、脂質などが挙げられる。
0071
「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」および「CHOP」という用語は、相互に置き換え可能に用いられ、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物から誘導される宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指す。HCPまたはCHOPは、一般的に、標的分子、例えば、CHO細胞で発現する抗体またはイムノアドヘシンを含む細胞培地または溶解物(例えば、収穫した細胞培養液(「HCCF」))中に不純物として存在する。標的分子を含む混合物中に存在するCHOPの量は、標的分子の純度の指標を与える。HCPまたはCHOPとしては、限定されないが、宿主細胞、例えば、CHO宿主細胞によって発現する目的のタンパク質が挙げられる。典型的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の標的分子の量に対し、パーツパーミリオンであらわされる。宿主細胞が別の細胞種(例えば、CHO以外の哺乳動物細胞、大腸菌、酵母、昆虫細胞または植物細胞)である場合が理解される。HCPは、宿主細胞の溶解物中に見出される標的タンパク質以外のタンパク質を指す。
0072
「パーツパーミリオン」または「ppm」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、本明細書に記載する方法を用いて精製される標的分子の純度の指標を指す。ppmという単位は、ミリグラム/ミリリットルの標的分子あたりのナノグラム/ミリグラム単位でのHCPまたはCHOPの量を指し(即ち、(CHOPのng/mL)/(標的分子のmg/mL)、標的分子およびHCPが溶液状態である。
0073
「精製すること」、「精製」、「分離する」、「分離すること」、「分離」、「単離する」、「単離すること」または「単離」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルから標的分子の純度を上げることを指す。典型的には、標的分子の純度は、サンプルから少なくとも1種類の不純物を(完全に、または部分的に)除去することによって上げられる。
0074
「結合および溶出モード」および「結合および溶出の方法」という用語は、本明細書で使用する場合、サンプル中に含まれる少なくとも1種類の標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質)が、適切な樹脂または媒体(例えば、アフィニティクロマトグラフィー媒体またはカチオン交換クロマトグラフィー媒体)に結合し、その後溶出する分離技術を指す。
0075
「フロースルー方法」、「フロースルーモード」および「フロースルー操作」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、1種類以上の不純物とともに生物医薬の調製に含まれる少なくとも1種類の標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質または抗体)が、ある材料を流すことを意図しており、通常は1種類以上の不純物に結合し、標的分子は通常は結合しない(即ち、流れる。)分離技術を指す。
0076
「処理工程」または「ユニット操作」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、精製方法で特定の結果を達成するための1つ以上の方法またはデバイスの使用を指す。本明細書に記載する方法およびシステムで使用可能な処理工程またはユニット操作の例としては、限定されないが、浄化、結合および溶出のクロマトグラフィー、ウイルス不活性化、フロースルー精製(フロースルーモードでの活性炭、アニオン交換およびカチオン交換から選択される2種類以上の媒体の使用を含む。)および配合が挙げられる。それぞれの処理工程またはユニット操作が、処理工程またはユニット操作の意図した結果を達成するために、1つより多い工程または方法またはデバイスを使用してもよいことが理解される。例えば、ある実施形態では、浄化工程および/またはフロースルー精製操作は、本明細書で記載するように、処理工程またはユニット操作を達成するために、1つより多い工程または方法またはデバイスを使用してもよい。ある実施形態では、ある処理工程またはユニット操作を行うために使用される1つ以上のデバイスは、シングルユースのデバイスであり、方法の任意の他のデバイスを置き換える必要なく、またはある方法の実行を止めることさえなく、除去および/または置き換えてもよい。
0077
本明細書で使用する場合、「システム」という用語は、一般的に、全精製方法の物理的な形態を指し、本明細書に記載するように、処理工程またはユニット操作を行うための2つ以上のデバイスを含む。ある実施形態では、システムは、滅菌環境に囲まれている。
0078
本明細書で使用する場合、「分離ユニット」という用語は、結合および溶出のクロマトグラフィー分離またはフロースルー工程または濾過工程で使用可能な設備または装置を指す。例えば、分離ユニットは、適切な機能を有する媒体を含有する吸収マトリックスまたはクロマトグラフィーデバイスで満たされたクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィーカートリッジであってもよい。本明細書に記載の方法およびシステムの幾つかの実施形態では、2つ以上の分離ユニットを含む精製方法で、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を使用する。好ましい実施形態では、2つ以上の分離ユニットは、同じ媒体を含む。
0079
種々の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、貯留槽の必然的な使用の必要性が存在せず、これによって、精製方法を行うための全体的な時間およびこのシステムによって占められる全体的な物理的フットプリントが顕著に減る。従って、本発明の種々の実施形態では、1つの処理工程(またはユニット操作)からの出力が、この方法の次の工程(またはユニット操作)の入力であり、処理工程からの全体的な出力を集める必要はなく、次の処理工程(またはユニット操作)に直接的に、また連続的に流れる。
0080
本明細書で使用する場合、「貯留槽」という用語は、一般的に、処理工程の間で用いられる任意の容器、入れ物、貯蔵器、槽または袋を指し、処理工程からの出力の全容積を集めることができる大きさ/容積を有する。貯留槽は、処理工程からの出力の全容積の溶液状態を保持または保存または操作するために用いられてもよい。本発明の種々の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、1つ以上の貯留槽の使用の必要性をなくす。
0081
ある実施形態では、本明細書で記載する方法およびシステムは、精製方法全体で1つ以上の調製槽を使用してもよい。
0082
「調整槽」という用語は、本明細書で使用する場合、処理工程の間または1つの処理工程の中で使用される任意の容器または入れ物または袋を指し(例えば、1つの方法操作が1つより多い工程を含むとき)、1つの工程からの出力は、調整槽を通って次の工程へと流れる。従って、調整槽は、ある工程からの出力の全容積を保持するか、または集めることを意図しておらず、その代わりに、ある工程から次の工程への出力の連続的な流れを可能にするという点で、貯留槽とは異なる。ある実施形態では、本明細書で記載する2つの処理工程の間、またはある方法操作(例えば、フロースルー精製操作)の中で使用する調整槽の容積は、処理工程からの出力の全容積の25%以下である。別の実施形態では、調整槽の容積は、処理工程からの出力の全容積の10%以下である。ある他の実施形態では、調整槽の容積は、標的分子を精製する出発物質を構成するバイオリアクターの細胞培養物の全容積の35%未満、または30%未満、または25%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満である。
0083
「連続方法」という用語は、本明細書で使用する場合、次の処理工程を行う前に、妨害することなく、および/またはある処理工程からの出力の全容積を集める必要なく、2つ以上の処理工程(またはユニット操作)を含み、この結果、ある処理工程からの出力が、この方法の次の処理工程に直接流れる、標的分子を精製するための方法を指す。好ましい実施形態では、2つ以上の処理工程を、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行ってもよい。言い換えると、連続方法の場合、本明細書に記載するように、次の処理工程を開始する前に、ある処理工程を完結させる必要はないが、サンプルの一部は、処理工程を常に移動している。「連続方法」という用語は、ある処理操作の中の工程にも適用され、この場合、複数の工程を含む処理工程の性能中に、サンプルは、処理工程を行うのに必要な複数の工程を通って連続的に流れる。本明細書に記載するこのような方法操作の一例は、連続的な様式で行われる複数の工程を含み、フロースルー活性炭、フロースルーAEX媒体、フロースルーCEX媒体およびフロースルーウイルス濾過のうち、2つ以上を使用するフロースルー精製操作である。一実施形態では、フロースルー精製操作は、活性炭の後、AEX媒体、その後、CEX媒体、その後、ウイルス濾過の順で行われる。しかし、活性炭、AEX媒体およびCEX媒体を任意の順序で使用してもよいことも理解される。従って、ある実施形態では、AEXの後、活性炭、その後、CEX媒体であり、または、CEXの後、活性炭、その後、AEX媒体である。さらに他の実施形態では、活性炭の後、CEX媒体、その後、AEX媒体である。さらに他の実施形態では、AEX媒体の後、CEX媒体、その後、活性炭であり、または、CEX媒体の後、AEX媒体、その後、活性炭である。
0084
連続方法は、本明細書で記載するように、任意の1つの処理工程の流体の入力または出力が不連続であるか、または中断している方法も含む。このような方法は、「半連続」方法と呼ばれてもよい。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、ある処理工程(例えば、結合および溶出のクロマトグラフィー工程)での入力は、連続的に入れられてもよいが、出力は、中断した状態で集められてもよく、精製方法中の他の処理工程が連続である。従って、ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、中断した様式で操作される少なくとも1つのユニット操作を含み、この方法またはシステムの他のユニット操作は、連続した様式で操作されてもよい。
0085
「接続した方法」という用語は、2つ以上の処理工程(またはユニット操作)を含み、互いに直接的に流体連結するように互いに接続し、この結果、流体材料が、この方法の処理工程全体を連続的に流れ、この方法の通常の操作中に、2つ以上の処理工程と同時に接触する、標的分子を精製するための方法を指す。同時に、この方法中の少なくとも1つの処理工程を、例えば、閉じた位置の弁のような障壁によって、他の処理工程から一時的に単離してもよいことが理解される。例えば、この方法の開始または停止中、または個々のユニット操作の除去/置き換えの間に、この個々の処理工程の一時的な単離が必要な場合がある。「接続した方法」という用語は、例えば、ある方法操作が、操作の意図した結果を達成するために行われる幾つかの工程を必要とするとき(例えば、本明細書に記載する方法で使用されるフロースルー精製操作)、互いに流体連結するように接続した処理操作内の工程にも適用される。
0086
「流体連結」という用語は、本明細書で使用する場合、2つの処理工程間の流体材料の流れ、または、ある処理操作の処理工程間の流体材料の流れを指し、処理工程は、任意の適切な手段(例えば、接続ラインまたは調整槽)によって接続し、これによって、流体の流れを、ある処理工程から別の処理工程へと可能にする。ある実施形態では、2つのユニット操作の間の接続ラインは、接続ラインを通る流体の流れを制御するために、1つ以上のバルブで中断していてもよい。接続ラインは、管、ホース、パイプ、経路、または2つの処理工程の間の流体の流れを可能にする幾つかの他の手段の形態であってもよい。
0087
「浄化する」、「浄化」および「浄化工程」という用語は、本明細書で使用する場合、懸濁した粒子および/またはコロイドを除去するための処理工程を指し、これによって、NTU(比濁分析による濁度単位)で測定する場合、標的分子を含有する溶液の濁度が小さくなる。浄化は、遠心分離または濾過を含む種々の手段によって達成することができる。遠心分離は、バッチモードまたは連続モードで行うことができ、一方、濾過は、通常の流れ(例えば、デプス濾過)または接線流のモードで行うことができる。今日、産業で使用される方法では、遠心分離の後に、典型的には、遠心分離によって除去されなかった不溶性不純物を除去するためにデプス濾過が行われる。さらに、浄化効率を高めるための方法、例えば、沈殿を使用することができる。不純物の沈殿は、凝集、pH調整(酸の沈殿)、温度の変化、刺激応答性ポリマーまたは低分子に起因する相変化、またはこれらの方法の任意の組み合わせのような種々の手段によって行うことができる。本明細書に記載される幾つかの実施形態では、浄化は、遠心分離、濾過、デプス濾過および沈殿のうち、2つ以上の任意の組み合わせを含む。ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、遠心分離の必要がない。
0088
「沈殿する」、「沈殿すること」または「沈殿」という用語は、本明細書で使用する場合、可溶性の標的分子からより簡単に分離することができるように望ましくない不純物の特性が変えられる、浄化に使用される方法を指す。このことは、典型的には、望ましくない不純物を含む大きな凝集粒子および/または不溶性複合体を作成することによって達成される。これらの粒子は、例えば、濾過または遠心分離によって、可溶性標的分子を含む液相からより簡単に分離することができる特性(例えば、密度または大きさ)を有する。ある場合には、相変化が起こり、この結果、望ましくない不純物は、可溶性の標的分子からより簡単に分離することができる。相変化による沈殿は、沈殿性薬剤(例えば、ポリマーまたは低分子)の添加によって達成することができる。特定の実施形態では、沈殿剤は、刺激応答性ポリマーであり、スマートポリマーとも呼ばれる。本明細書に記載される幾つかの実施形態では、沈殿剤または沈殿性薬剤は、凝集剤である。凝集剤は、本明細書で使用する場合、典型的には、性能が使用する凝集剤の濃度に依存する、沈殿を起こす一様式である(「容量依存性」)。典型的な凝集剤は、反対の電荷の不純物と複合体を形成する高分子電解質、例えば、ポリカチオンである。
0089
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、浄化は、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルへの沈殿剤の添加を使用する。ある場合には、例えば、刺激応答性ポリマーの場合には、溶液状態(例えば、温度、pH、塩度)の変化を使用し、沈殿を開始させてもよい。1種類以上の不純物および沈殿性薬剤を含む沈殿した材料を続いて除去し、これによって液相の標的分子を回収し、次いで、この液体に対し、典型的には、標的分子をさらに精製するために、さらなる処理工程を行う。
0090
沈殿は、精製される標的分子を発現する細胞培養物を含むバイオリアクター内で直接行われてもよく、この場合、沈殿剤をバイオリアクターに直接加える。または、沈殿剤は、別個の容器内の典型的には標的分子を含む細胞培養物に加えられてもよい。
0091
ある実施形態では、スタティックミキサを用い、沈殿剤を加える。沈殿剤が刺激応答性ポリマーである場合、ポリマーと、このポリマーが応答性である刺激とを、スタティックミキサを用いて加えてもよい。
0092
沈殿した材料を除去するための当業者が既知の多くの様式、例えば、遠心分離、濾過または沈降、またはこれら任意の組み合わせが存在する。
0094
「刺激」または「刺激の」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、刺激応答性ポリマーによる応答を生じる環境の物理的変化または化学的変化を指すことを意味する。従って、このようなポリマーは、刺激に応答性であり、この刺激によって、ポリマーの溶解度が変化する。本明細書で使用する1種類以上のポリマーが応答性である刺激の例は、限定されないが、例えば、温度変化、導電性の変化および/またはpHの変化が挙げられる。ある実施形態では、刺激は、サンプルに対する錯化剤または複合体を形成する塩の添加を含む。種々の実施形態では、刺激は、一般的に、サンプルにポリマーを添加した後に加えられる。しかし、刺激は、サンプルにポリマーを加えている間、または加える前に加えられてもよい。
0095
「刺激応答性ポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、刺激を加えた後、物理特性および/または化学特性の変化を示すポリマーまたはコポリマーを指す。典型的な刺激応答は、ポリマーの溶解度の変化である。例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ポリマーは、約35℃未満の温度で水溶性であるが、約35℃の温度の水中では不溶性になる。特定の実施形態では、刺激応答性ポリマーは、多価イオンの刺激(例えば、ホスフェート刺激)に応答性の改質されたポリアリルアミン(PAA)ポリマーである。このポリマーに関するさらなる詳細は、例えば、この全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許公開第20110313066号に見出すことができる。
0096
ある実施形態では、細胞培養物に対し、デプスフィルタによって1種類以上の不純物を除去する。
0097
「デプスフィルタ」または「デプス濾過」という用語は、本明細書で使用する場合、フィルタ表面だけではなく、フィルタ媒体全体の粒状物質を保持することができるフィルタを指す。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、1つ以上のデプスフィルタを浄化処理工程で使用する。
0098
ある実施形態では、浄化によって、後で精製方法の処理工程で使用するフィルタまたはデバイスの汚れを生じ得るようなサンプル中の可溶性および/または不溶性の不純物を除去し、これにより、全体的な精製方法がより経済的になる。
0099
本明細書に記載する種々の実施形態では、1つ以上のクロマトグラフィー工程が、タンパク質精製方法に含まれる。
0100
「クロマトグラフィー」という用語は、媒体上にある異なる吸収剤によって、目的の検体(例えば、標的分子)を混合物中に存在する他の分子から分離する任意の種類の技術を指す。通常は、標的分子を、混合物の個々の分子が、移動相の影響を受け、固定媒体を移動するような差の結果、または結合および溶出方法で、他の分子から分離する。
0101
「マトリックス」という用語は、本明細書で使用する場合、通常は、接続する官能基またはリガンドを有する任意の種類の粒状吸収剤、ビーズ、樹脂または他の固体相(例えば、膜、不織布、モノリスなど)を指す。接続するリガンドまたは官能基を有するマトリックスは、「媒体」とも呼ばれ、分離方法では、標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質、例えば、免疫グロブリン)を混合物中に存在する他の分子(例えば、1種類以上の不純物)から分離するための吸収剤として作用するか、または、粒径に基づいて分子を分離するためのふるいとして作用する(例えば、ウイルス濾過膜の場合)。
0102
マトリックスを形成する材料の例としては、多糖(例えば、アガロースおよびセルロース);および他の機械的に安定な物質、例えば、シリカ(例えば、孔径が制御されたガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子および上述の任意の誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーがマトリックスとして用いられる。
0103
特定の媒体は、リガンドを含んでいなくてもよい。リガンドを含まない本明細書に記載する方法で使用可能な媒体の例としては、限定されないが、活性炭、ヒドロキシアパタイト、シリカなどが挙げられる。
0104
「リガンド」という用語は、本明細書で使用する場合、マトリックスに接続し、媒体の結合特性を決定づける官能基を指す。「リガンド」の例としては、限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオ親和性相互作用基、金属親和性基、親和性基、バイオ親和性基および混合態様の基(上述の組み合わせ)が挙げられる。使用可能な他の例示的なリガンドとしては、限定されないが、強カチオン交換基、例えば、スルホプロピル、スルホン酸;強アニオン交換基、例えば、トリメチルアンモニウムクロリド:弱カチオン交換基、例えば、カルボン酸;弱アニオン交換基、例えば、N,NジエチルアミノまたはDBAE;疎水性相互作用基、例えば、フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシル;および親和性基、例えば、プロテインA、プロテインGおよびプロテインLが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムで使用されるリガンドは、プロテインAドメインのB、ZまたはCドメインの野生型マルチマー形態またはこのマルチマー改変体(例えば、B、ZまたはCドメインペンタマー)に基づくリガンドに関する米国特許公開第201002218442号および20130046056号(本明細書に参考として組み込まれる。)に記載されるように、1つ以上のプロテインAドメインまたはこの機能的改変体またはフラグメントを含む。ここに記載されるリガンドは、Fab結合の低下も示す。
0105
「アフィニティクロマトグラフィー」という用語は、標的分子(例えば、目的のFc領域を含有するタンパク質または抗体)が、標的分子に特異的なリガンドに特異的に結合するタンパク質分離技術に関する。このようなリガンドは、一般的に、適切なクロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合し、溶液がクロマトグラフィー媒体と接触すると、溶液中の標的分子に接近可能になる。特定の実施形態では、リガンドは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに固定されたプロテインAまたはこの機能的改変体である。標的分子は、一般的に、クロマトグラフィー工程中、リガンドに対して特異的な結合親和性を保持しており、一方、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質は、リガンドに感知できるほどに、または特異的に結合しない。固定化されたリガンドに対する標的分子の結合によって、混入しているタンパク質および不純物は、クロマトグラフィーマトリックスを通過することができ、一方、標的分子は、固相材料に固定されたリガンドに特異的に結合したままである。次いで、特異的に結合した標的分子は、適切な条件下(例えば、低いpH、高いpH、高い塩度、競争リガンドなど)、固定化されたリガンドから活性形態で除去され、溶出バッファーとともにクロマトグラフィーカラムを通り抜け、混入しているタンパク質および不純物を実質的に含まないものが、カラムをより早く通り抜けることができる。それぞれの特定の結合タンパク質、例えば、抗体を精製するために、適切な任意のリガンドを使用してもよいことが理解される。
0106
本発明の幾つかの実施形態では、プロテインAを、Fc領域を含有する標的タンパク質を精製するためのリガンドとして使用する。標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質)のリガンド(例えば、プロテインAに基づく)から溶出させるための条件は、当業者なら簡単に決定することができる。ある実施形態では、プロテインGまたはプロテインL、またはこれらの機能性改変体をリガンドとして使用してもよい。ある実施形態では、プロテインAのようなリガンドを使用する方法は、Fc領域を含有するタンパク質に結合させるために、5から9の範囲のpHを用い、その後、リガンド/標的分子接合体を洗浄または再平衡化し、次いで、その後、少なくとも1種類の塩を含む約4以下のpHを有するバッファーで溶出させる。
0107
「プロテインA」および「Prot A」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、天然源から回収したプロテインA、合成的に(例えば、ペプチド合成または組み換え技術によって)作られたプロテインA、およびCH2/CH3領域、例えば、Fc領域を有するタンパク質に結合する能力を保持した改変体を包含する。プロテインAは、Repligen、GEまたはFermatechから商業的に購入することができる。プロテインAは、一般的に、クロマトグラフィーマトリックスに固定される。本発明の方法およびシステムで使用されるプロテインAの機能的誘導体、フラグメントまたは改変体は、マウスIgG2aまたはヒトIgG1のFc領域に対する結合定数が少なくともK=108Mであり、好ましくは、K=109Mであることによって特徴づけられてもよい。このような結合定数の値と一致する相互作用は、本文では「高親和性結合」と呼ばれる。ある実施形態では、このようなプロテインAの機能的誘導体または改変体は、天然ドメインE、D、A、B、C、またはこの遺伝子操作された変異体から選択され、IgG結合機能を保持している野生型プロテインAの機能的IgG結合ドメインの少なくとも一部を含む。
0109
1個の接合点は、一般的に、タンパク質部分が、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーのクロマトグラフィー支持材料に1個の共有結合によって結合することを意味する。このような1個の接合点は、露出したアミノ酸位置に、つまり、N末端またはC末端、またはプロテインの折り畳み部分の外側周辺に近いループに配置される適切な反応性残基の使用によっても起こり得る。適切な反応性基は、例えば、スルフヒドリルまたはアミノ官能基である。
0110
ある実施形態では、改変体のプロテインA誘導体は、適切なクロマトグラフィーマトリックスへの複数点での接続によって接続する。
0111
「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」という用語は、本明細書で使用する場合、アフィニティクロマトグラフィーに適したリガンドを保有するクロマトグラフィーマトリックスを指す。典型的には、リガンド(例えば、プロテインAまたはこの機能的改変体またはフラグメント)は、クロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合し、溶液とクロマトグラフィー媒体が接触すると、溶液中の標的分子に接近可能である。アフィニティクロマトグラフィー媒体の一例は、プロテインA媒体である。アフィニティクロマトグラフィー媒体は、典型的には、鍵/鍵穴機構(例えば、抗原/抗体または酵素/受容体の結合)に基づき高い特異性で標的分子に結合する。プロテインAリガンドを保有するアフィニティ媒体の例としては、プロテインASEPHAROSE(商標)およびPROSEP(登録商標)−Aが挙げられる。本明細書に記載する方法およびシステムでは、全精製方法において、アフィニティクロマトグラフィー工程を、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程として使用してもよい。特定の実施形態では、プロテインAに由来するリガンドは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに接続する。他の実施形態では、このようなリガンドを、アガロースまたは孔径が制御されたガラスに接続する。
0112
「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、本明細書で使用する場合、混合物中の目的の溶質または検体(例えば、精製される標的分子)が、固相イオン交換材料に(例えば、共有結合によって)接続した帯電化合物と相互作用し、この結果、目的の溶質または検体が、混合物中の溶質の不純物または混入物質とほぼ同等に、帯電化合物と非特異的に相互作用するクロマトグラフィー方法を指す。混合物中に混入している溶質は、イオン交換材料のカラムから、目的の溶質とほぼ同程度の速度で溶出するか、または、目的の溶質に対し、樹脂に結合するか、または樹脂から除外される。
0113
「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的には、カチオン交換、アニオン交換および混合モードのイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、カチオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合し、その後、(例えば、カチオン交換する結合および溶出のクロマトグラフィーまたは「CEX」を用いて)溶出させることができ、または、標的分子をカラムから「フロースルー」しつつ、不純物を優先的に結合させることができる(カチオン交換フロースルークロマトグラフィーFT−CEX)。
0114
アニオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合し、その後、溶出させることができ、または、標的分子をカラムから「フロースルー」しつつ、不純物を優先的に結合させることができる(ネガティブクロマトグラフィーとも呼ばれる。)。ある実施形態では、本明細書に記載する実施例に示されるように、アニオン交換クロマトグラフィー工程は、フロースルーモードで行われる。
0115
「イオン交換媒体」という用語は、負に帯電した媒体(即ち、カチオン交換媒体)、または正に帯電した媒体(即ち、アニオン交換媒体)を指す。マトリックスに、例えば、共有結合によって、1つ以上の帯電したリガンドを接続することによって電荷を与えてもよい。または、またはこれに加え、電荷は、マトリックス固有の特性であってもよい(例えば、全体的に負の電荷を有するシリカの場合のように)。
0116
「アニオン交換媒体」という用語は、本明細書では、正に帯電した、例えば、マトリックスに接続した1つ以上の正に帯電したリガンド(例えば、四級アミノ基)を有する媒体を指すために用いられる。市販のアニオン交換媒体としては、DEAEセルロース、QAESEPHADEX(商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標)(GE Healthcare)が挙げられる。本明細書に記載の方法およびシステムで使用可能な他の例示的な材料は、Fractogel(登録商標)EMD TMAE、Fractogel(登録商標)EMD TMAE highcap、Eshmuno(登録商標)QおよびFractogel(登録商標)EMDDEAE(EMD Millipore)である。
0117
「カチオン交換媒体」という用語は、負に帯電した、媒体の固相に接触した水溶液中のカチオンと交換するための遊離カチオンを含む媒体を指す。固相に接続し、カチオン交換媒体を形成する負に帯電したリガンドは、例えば、カルボキシレートまたはスルホネートであってもよい。市販のカチオン交換媒体としては、カルボキシメチルセルロース、アガロースに固定されたスルホプロピル(SP)(例えば、GE Healthcare製のSP−SEPHAROSEFASTFLOW(商標)またはSP−SEPHAROSE HIGHPERFORMANCE(商標))およびアガロースに固定されたスルホニル(例えば、GE Healthcare製のS−SEPHAROSE FAST FLOW(商標))が挙げられる。好ましくは、Fractogel(登録商標)EMD SO3、Fractogel(登録商標)EMD SE Highcap、Eshmuno(登録商標)SおよびFractogel(登録商標)EMD COO(EMD Millipore)である。
0118
「混合モードのクロマトグラフィー」または「マルチモードのクロマトグラフィー」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも2種類の固有の種類の官能基を有し、それぞれが、目的の分子と相互作用可能なクロマトグラフィー固定相を使用する方法を指す。混合モードのクロマトグラフィーは、一般的に、標的タンパク質および/または不純物と1種類より多い相互作用態様を有するリガンドを使用する。リガンドは、典型的には、少なくとも2種類の異なる部位ではあるが、結合する物質と協働して相互作用する部位を含む。例えば、これらの部位の1つは、目的の物質と電荷−電荷型の相互作用を有していてもよく、一方、他の部位は、目的の物質と、電気受容体−供与体型の相互作用および/または疎水性および/または親水性の相互作用を有していてもよい。電気供与体−受容体型の相互作用としては、水素結合、π−π、カチオン−π、電荷移動、双極子−双極子および誘導される双極子相互作用が挙げられる。一般的に、相互作用の合計の違いに基づき、標的タンパク質と1種類以上の不純物は、さまざまな条件下で分離され得る。
0119
「混合モードのイオン交換媒体」または「混合モードの媒体」という用語は、カチオン性部分および/またはアニオン性部分と、疎水性部分とで共有結合によって改質された媒体を指す。市販の混合モードのイオン交換媒体は、シリカゲルの固相支持マトリックスに接続した弱カチオン交換基、低濃度のアニオン交換基および疎水性リガンドを含むBAKERBOND ABX(商標)(J.T.Baker、Phiilipsburg、N.J.)である。混合モードのカチオン交換材料は、典型的には、カチオン交換部分と疎水性部分とを有する。適切な混合モードのカチオン交換材料は、Capto(登録商標)MMC(GE Healthcare)およびEshmuno(登録商標)HCX(EMD millipore)が挙げられる。
0120
混合モードのアニオン交換材料は、典型的には、アニオン交換部分と、疎水性部分とを有する。適切な混合モードのアニオン交換材料は、Capto(登録商標)Adhere(GE Healthcare)である。
0121
「疎水性相互作用クロマトグラフィー」または「HIC」という用語は、本明細書で使用する場合、この疎水性(即ち、水溶液から疎水性表面に吸着する能力)に基づいて分子を分離するための方法を指す。HICは、通常は、典型的には低い疎水性を有するか、または逆相(RP)樹脂と比較して疎水性リガンドの密度が低い特定的に設計されたHIC樹脂によって、逆相クロマトグラフィーとは異なる。
0122
HICクロマトグラフィーは、典型的には、溶質分子の表面にある疎水性基の違いによる。これらの疎水性基は、不溶性マトリックス表面の疎水性基に結合する傾向がある。HICが、逆相液体クロマトグラフィーよりも極性が大きく、変性が少ない環境を使用するため、多くはイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーと組み合わせて、タンパク質精製について人気が高まっている。
0123
「通過」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子が、最初に、カラムまたは分離ユニットから出力したときに、充填されたクロマトグラフィーカラムまたは分離ユニットに標的分子を含むサンプルを保有している間の時間点を指す。言い換えると、「通過」という用語は、標的分子の消失が始まった時間点である。
0124
「バッファー」は、酸−塩基接合成分の作用によってpHの変化に抵抗する溶液である。例えば、バッファーの望ましいpHに依存して使用可能な種々のバッファーは、Buffers、A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems、Gueffroy、D編集、Calbiochem Corporation(1975)に記載される。バッファーの非限定例としては、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸およびアンモニウムのバッファーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
0125
適切な媒体を含むデバイスまたはカラムまたは分離ユニットにサンプルを「保持する」とき、バッファーを使用し、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを、デバイスまたはカラムまたは分離ユニットに保持する。結合および溶出のモードでは、バッファーは、標的分子が媒体に結合し、理想的には、すべての不純物が結合せずにカラムを流れるような導電性および/またはpHを有する。一方、フロースルーモードでは、バッファーを使用し、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを、カラムまたはデバイスまたは分離ユニットに保持し、一方、バッファーは、標的分子が媒体に結合せずに流れ、理想的には、不純物のすべてまたはほとんどが媒体に結合するような導電性および/またはpHを有する。
0126
「添加剤」という用語は、本明細書で使用する場合、サンプルをクロマトグラフィーマトリックスに保持する前、または保持工程の間に標的タンパク質を含むサンプルに加えられる任意の薬剤を指し、薬剤の添加によって、1つ以上の洗浄工程をなくし、または、保持工程の後、標的タンパク質を溶出させる前に使用すべき不純物除去のために他の手段で設計された洗浄工程の数を減らす。1種類の薬剤を、保持前、または保持中に、サンプルに加えてもよく、または、薬剤の数が、1種類より多くてもよい。例示的な添加剤としては、限定されないが、塩、ポリマー、界面活性剤または洗剤、溶媒、カオトロピック剤および任意のこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、このような添加剤は、塩化ナトリウム塩である。
0127
特定の実施形態では、浄化工程からの出力と、添加剤とを接触させるためにスタティックミキサを使用し、スタティックミキサの使用により、時間が顕著に短くなり、このため、浄化工程からプロテインAクロマトグラフィー工程への単純化された接続が可能になる。
0128
「再平衡化」という用語は、標的分子を保持させる前に、媒体を再調整するためのバッファーの使用を指す。保持に使用されるのと同じバッファーを再平衡化に使用してもよい。
0129
クロマトグラフィー媒体を「洗浄」または「洗浄すること」という用語は、適切な液体、例えばバッファーを媒体中または媒体上に通すことを指す。典型的には、洗浄を使用し、標的分子を溶出させる前に、媒体から、弱く結合した混入物質を除去し、および/または、保持の後に、結合していない標的分子または弱く結合した標的分子を除去する。ある実施形態では、洗浄バッファーは、保持バッファーとは異なる。他の実施形態では、洗浄バッファーと保持バッファーは同じである。特定の実施形態では、サンプルの保持条件を変えることによって、精製方法で洗浄工程が省かれるか、または洗浄工程の数が減る。
0130
ある実施形態では、本明細書に記載する方法で用いられる洗浄工程は、導電性が20mS/cm以下のバッファーを使用し、従って、典型的には導電性が20mS/cmより大きい、典型的には不純物除去のために用いられるバッファーとは異なる。
0131
「導電性」という用語は、水溶液が2つの電極間に電流を流す能力を指す。溶液中、電流は、イオンの移動によって流れる。従って、水溶液中に存在するイオンの量を増やすと、溶液は、より高い導電性を有するだろう。導電性を測定するための単位は、ミリジーメンス/センチメートル(mS/cmまたはmS)であり、市販の導電性測定器(例えば、Orionにより販売)を用いて測定することができる。溶液の導電性は、この中のイオン濃度を変えることによって変わり得る。例えば、溶液中のバッファー剤の濃度および/または塩(例えば、NaClまたはKCl)の濃度は、望ましい導電性を達成するために、変えられてもよい。ある実施形態では、種々のバッファーの塩濃度は、望ましい導電性を達成するために変えられる。ある実施形態では、1種類以上の添加剤がサンプル保持に加えられる方法において、1つ以上の洗浄工程をその後に使用する場合、このような洗浄工程は、導電性が約20mS/cm以下のバッファーを使用する。
0132
「溶出物」または「溶出する」または「溶出」という用語は、特定の溶液条件を用いるか、または特定の溶液条件を変えることによる、クロマトグラフィー媒体からの分子(例えば、目的のポリペプチドまたは不純物)の除去を指し、これによって、バッファー(「溶出バッファー」と呼ばれる。)が、クロマトグラフィー樹脂のリガンド部位で目的の分子と競争する。非限定例は、イオン交換材料の周囲にあるバッファーのイオン強度を変え、バッファーが、イオン交換材料の帯電部位で分子と競走することによって、イオン交換樹脂から分子を溶出することである。
0133
ある実施形態では、溶出バッファーは、低いpHを有し(例えば、約2から約5、または約3から約4の範囲のpHを有し)、リガンド(例えば、プロテインA)と標的タンパク質との相互作用を破壊する。例示的な溶出バッファーとしては、リン酸、酢酸、クエン酸およびアンモニウムのバッファーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、高いpH(例えば、約9以上のpH)を有する溶出バッファーを使用してもよい。溶出バッファーは、溶出を促進するために、さらなる化合物、例えば、MgCl2(2mM)も含んでいてもよい。
0134
ウイルス不活性化(VI)が望ましい場合には、標的分子を溶出させる前に、ウイルス不活性化バッファーを使用し、特定のウイルスを不活性化してもよい。このような場合には、典型的には、ウイルス不活性化バッファーは、洗剤/複数の洗剤を含んでいてもよく、または異なる特性(pH/導電性/塩およびこの量)を含んでいてもよいため、保持バッファーとは異なる。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程の前に、ウイルス不活性化が行われる。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程の間、または結合および溶出のクロマトグラフィー工程から溶出させた後に、ウイルス不活性化が行われる。ある実施形態では、ウイルス不活性化は、スタティックミキサを用いてライン内で行われる。他の実施形態では、ウイルス不活性化は、1つ以上の調整槽の使用を利用する。
0135
「バイオリアクター」という用語は、本明細書で使用する場合、生物学的に活性な環境を支える任意の製造または操作されたデバイスまたはシステムを指す。ある場合には、バイオリアクターは、細胞培養方法が行われる容器である。このような方法は、好気性または嫌気性のいずれかであってもよい。一般的に用いられるバイオリアクターは、典型的には、大きさが数リットルから数立方メートルの範囲の円筒形であり、多くは、ステンレス鋼から作られる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、バイオリアクターは、鋼鉄以外の材料から作られ、使い捨てまたはシングルユースである。バイオリアクターの総容積は、特定の方法に依存して、100mLから10,000リットルまたはこれより大きな範囲の任意の容積であってもよいと考えられる。本明細書に記載する方法およびシステムの幾つかの実施形態では、バイオリアクターを、ユニット操作、例えば、デプスフィルタに接続する。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、細胞培養および沈殿にバイオリアクターを使用し、この場合、沈殿剤を、バイオリアクターに直接加え、これによって、1種類以上の不純物を沈殿させてもよい。
0136
「活性炭」または「活性化された炭素」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に使用される場合、孔構造を高めるための方法を行った炭素系材料を指す。活性炭は、表面積が非常に大きい多孔性固体である。活性炭は、石炭、木材、ココナツの殻、木の実の殻および泥炭を含む種々の供給源から誘導されてもよい。活性炭は、強酸、塩基または酸化剤を用い、制御された雰囲気での加熱を含む物理的な活性化または化学的な活性化を用い、これらの材料から製造することができる。活性化方法は、高い表面積を有する多孔性構造を生成し、不純物除去のための高い能力を活性炭に与える。活性化方法は、表面の酸性を制御するように変えることができる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、活性炭をフロースルー精製工程で使用し、典型的には、その後に、結合および溶出のクロマトグラフィー工程またはウイルス不活性化工程が続き、ウイルス不活性化工程は、その後に、結合および溶出のクロマトグラフィー工程が続く。ある実施形態では、活性炭を、例えば、カラムまたは幾つかの他の適切なデバイスの中のセルロース媒体に組み込む。
0137
「スタティックミキサ」という用語は、2種類の流体材料、典型的には、液体を混合するためのデバイスを指す。このデバイスは、一般的に、円筒形(管)の筐体に含まれる混合要素からなる。システムの全体的な設計は、スタティックミキサに2つの流体の流れを運ぶための方法を組み込んでいる。流れがミキサ全体を移動するにつれて、移動しない要素は、連続的に材料をブレンドする。完全な混合は、流体の特性、管の内径、ミキサの要素の数およびこれらの設計などを含む多くの変数によって変わる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、精製方法または生成システム全体で1つ以上のスタティックミキサを使用する。特定の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力と、ウイルス不活性化剤(例えば、酸または任意の他の適切なウイルス不活性化剤)とを接触させるためにスタティックミキサを使用し、スタティックミキサの使用により、時間が顕著に短くなるが、効果的なウイルス不活性化を達成するのに必要である。
0138
本発明の方法
上述のように、本発明は、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプル(例えば、細胞培養供給物)から標的分子を精製するための新規で改良された方法を提供する。本明細書に記載する方法は、当分野で使用する既存の方法と比較して、方法の実施に必要な全体的な時間フレームを短くし(数日間に対し、12から24時間)、ほとんどの従来法と比較して、工程が少なく、ユニット操作が少ないという観点で方法全体の物理的なフットプリントが減り、従来の方法よりも実行が容易であるという点で、非常に改良されたものである。さらに、ある実施形態では、本発明の方法は、使い捨てであってもよいデバイスを使用する。
0139
本発明の方法は、望ましい結果を達成することを意図した幾つかの処理工程またはユニット操作を含み、処理工程(またはユニット操作)は、互いに流体連結し、さらに、2つ以上の処理工程を、それぞれの処理工程の経過時間の少なくとも一部で同時に行うことができるように接続する。言い換えると、ユーザは、この方法の次の処理工程を実行する前に、処理工程が終了するのを待つ必要がないが、ユーザは、標的分子を含む液体サンプルが、処理工程を連続的または半連続的に流れ、精製した標的分子が得られるように、方法を進めることができる。従って、標的分子を含むサンプルを、典型的には、所与の時間に、この方法の1つより多い処理工程またはユニット操作と接触させる。
0140
それぞれの処理工程(またはユニット操作)は、処理工程を達成するために、1つ以上のデバイスまたは方法の使用を含んでいてもよい。
0141
本明細書に記載する方法は、出力について、次の処理工程を行う前に、処理工程からの出力を保持し、希釈し、操作し、あるときには保存するために貯留槽を使用する必要がないという点で、産業で使用される従来の方法とは異なる。対照的に、本明細書で記載する方法は、サンプルをライン内で(例えば、スタティックミキサを用いて)操作することができ、または、(例えば、方法操作が、1つより多い方法またはデバイスを使用する場合)処理工程の間で、または時には、方法操作の中で、調整槽(通常は処理工程からの出力の合計容積の10%または20%または25%以下である調整槽)の使用を利用し、これによって、方法を行うための合計時間が顕著に短くなり、この方法を行うための全体的なシステムの物理的なフットプリントが顕著に小さくなる。好ましい実施形態では、本明細書に記載する方法は、貯留槽を使用しないだけではなく、前の工程からの出力の容積の25%未満、好ましくは10%未満の調整槽のみを必要とする。
0142
本明細書に記載する方法は、浄化、結合および溶出のクロマトグラフィーおよびフロースルー精製の少なくとも3つの処理工程を含む。典型的には、浄化が第1の工程であり、その後、結合および溶出のクロマトグラフィー、その後、フロースルー精製操作である。この方法は、限定されないが、ウイルス不活性化および配合を含むさらなる処理工程を含んでいてもよい。本明細書に記載する方法の重要な態様は、工程の数にかかわらず、この方法が、たった1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を含むことである。
0143
種々の処理工程は、本明細書に記載されるように、連続的な様式または半連続的な様式で行われる。以下は、本明細書に記載されるように、連続的または半連続的な方法で使用可能な処理工程の例である。以下に示す処理工程の任意の組み合わせを使用してもよいことが理解される。言い換えると、以下の表Iの工程1の任意の処理工程を、工程2の任意の処理工程および/または工程3の任意の処理工程などと合わせてもよい。本明細書で他の箇所に記載するさらなる処理工程を、以下の表Iに記載の1つ以上の処理工程と合わせ、または、これらの処理工程の代わりに使用してもよいことも理解される。
0144
0145
種々の処理工程(またはユニット操作)を以下に詳細に記載する。
0146
精製方法のための出発物質は、通常は、精製される標的分子を含むサンプルである。典型的には、標的分子を産生する細胞培養物を使用する。しかし、細胞培養物以外のサンプルを使用してもよい。例示的なサンプルとしては、限定されないが、トランスジェニック哺乳動物細胞培養物、非トランスジェニック哺乳動物細胞培養物、細菌細胞培養物、組織培養物、微生物発酵バッチ、植物抽出物、バイオ燃料、海水培養物、淡水培養物、廃棄水培養物、処理された下水、未処理の下水、牛乳、血液およびこれらの組み合わせが挙げられる。一般的に、サンプルは、標的分子に加え、種々の不純物を含有する。このような不純物としては、媒体成分、細胞、細胞片、核酸、宿主細胞タンパク質、ウイルス、内毒素などが挙げられる。
0147
浄化
本明細書に記載する方法およびシステムの第1の処理工程(またはユニット操作)の1つは、典型的には、浄化である。浄化は、標的分子から1種類以上の可溶性および/または不溶性の不純物を分離することを意図している。ある実施形態では、細胞および細胞片のような不溶性不純物は、サンプルから除去され、溶液中に標的分子を含む浄化された流体および他の可溶性不純物が得られる。浄化は、典型的には、望ましい標的分子の捕捉を含む工程の前に行われる。浄化の別の鍵となる態様は、後に精製方法の滅菌フィルタの汚染が生じ得るサンプル中の可溶性および/または不溶性不純物の除去であり、これによって、全体的な精製方法をより経済的にする。
0148
今日、産業で使用されるように、浄化は、一般的に、細胞および/または細胞片の除去を含み、典型的には、第1の工程として遠心分離を含み、その後にデプス濾過を含む。例えば、Shukla et al.,J.Chromatography B,848(2007):28−39;Liu et al.,MAbs.2(5):480−499(2010)を参照。
0149
本明細書に記載される幾つかの好ましい実施形態では、浄化は、遠心分離の使用を必要としない。
0150
例えば、ある実施形態では、バイオリアクター中の細胞培養物サンプルの出発時の容積は、2000リットル未満、または1000リットル未満、または500リットル未満であり、遠心分離の必要性がなく、細胞培養物サンプルについて、デプス濾過を単独で行ってもよく、または、沈降およびデプス濾過を行ってもよい。
0151
ある好ましい実施形態では、デプス濾過前に沈殿を使用すると、スループットが増加し、従って、遠心分離の必要がなく、処理され得るサンプルの容積の量も増加する。言い換えると、ある場合には、100リットルのサンプルを、デプス濾過のみで処理してもよく、沈殿と組み合わせて処理してもよく、ユーザは、ほぼ倍の量(即ち、2000リットル)を処理することができ得る。
0152
典型的には、1種類以上の不溶性不純物を除去するために、デプスフィルタが用いられる。デプスフィルタは、媒体表面にのみではなく、媒体全体に粒子を保持するための多孔性濾過媒体を使用するフィルタである。
0153
ある好ましい実施形態では、浄化のためにデプスフィルタを使用し、粒度分布が約0.5μmから約200μm、流速が約10リットル/m2/hrから約100リットル/m2/hrの細胞片および粒状物質を濾過することができる。
0154
多孔性デプスフィルタが異方性である場合(即ち、孔径が徐々に小さくなる。)、粒状不純物の一次除去で特に良好な結果を達成することができることがわかっている。ある好ましい実施形態では、孔は、名目上の孔径が約25μmより大きい。ある好ましい実施形態では、デプスフィルタは、不織繊維の少なくとも2つの段階的な層を含み、段階的な層は、合計厚みが約0.3cmから約3cmである。
0155
ある実施形態では、デプスフィルタは、膜圧(TMP)が20psiに到達するまで、粒度分布が約0.5μmから200μm、流速が約10リットル/m2/hrから約100リットル/m2/hrの粒子を含む高固体供給物を濾過することができるデバイスの構成である。
0156
ある実施形態では、デプスフィルタは、不織繊維、セルロースおよび珪藻土の段階的な層のコンポジットを含む。不織繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンまたはこれらの混合物を含む。
0157
例示的なデプスフィルタおよびこれを使用する方法は、米国特許公開第2013001.2689号に記載されてもよく、本明細書に参考として組み込まれ、粒度分布が約0.5μmから200μmの粒子を含む濾過サンプルに特に有用である。従って、ある実施形態では、浄化工程で用いられるデプスフィルタとしては、解放された段階的な層が挙げられ、供給流中の大きな粒子が、フィルタの深さ方向に浸透していくことができ、表面に集めるのではなく、フィルタの孔の中に捕捉される。段階的なデプスフィルタの解法された上部層は、大きな粒子を捕捉することができるが、底部層は、より小さな残留した凝集粒子を捕捉することができる。段階的なデプスフィルタの種々の利点は、大きな固体のスループット保持率が高いこと、ケーキの生成といった問題がないことが挙げられる。
0158
上述のように、ある実施形態では、浄化は、デプス濾過の使用、その後、沈殿の使用を含む。沈殿は、酸の沈殿、刺激応答性ポリマーの使用、凝集または沈降および沈殿を達成するための任意の他の適切な手段/薬剤を使用してもよい。従って、ある実施形態では、沈殿剤、例えば、刺激応答性ポリマーを、サンプルに加え、デプス濾過前に、1種類以上の可溶性および/または不溶性不純物を沈殿させる。
0159
他の沈殿手段としては、限定されないが、短鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸)の使用、凝集剤の使用、溶液状態の変化(例えば、温度、pH、塩度)および酸の沈殿が挙げられる。例えば、中程度に酸性の条件で、短鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸)の添加は、典型的には、IgGが沈殿していない状態で、非IgGタンパク質が沈殿することが報告される。
0160
凝集は、本明細書で使用される場合、沈殿が、典型的には使用する凝集剤の濃度に依存する(即ち、「容量依存性」である。)沈殿を行う1つの様式である。典型的な凝集剤は、反対の電荷の不純物と複合体を生成する高分子電解質、例えば、ポリカチオンである。
0161
凝集剤は、一般的に、細胞/タンパク質の電荷と、ポリマー(例えば、高分子電解質)の電荷との間の相互作用に起因して、細胞、細胞片およびタンパク質を沈殿させることによって、不溶性の複合体を生成する。
0162
凝集に高分子電解質ポリマーを使用し、タンパク質を精製することは、当分野で十分に確立されている(例えば、本明細書に参考として組み込まれる国際PCT公開第WO2008/091740号を参照)。凝集剤による沈殿は、広範囲のポリマーを用いて達成することができ、唯一の必要な一般的な特徴は、ポリマーが、目的の種(例えば、標的分子または不純物)とある程度の相互作用度を有していなければならないことである。例示的な凝集剤としては、キトサンおよび多糖のようなポリマーが挙げられる。
0163
凝集は、pHの変化を生じる化学処理によって、または界面活性剤の添加によっても達成されてもよい。
0164
沈殿した材料を除去するための当業者が既知の多くの様式、例えば、遠心分離、デプス濾過、濾過または沈降、またはこれらの任意の組み合わせが存在する。沈降の後、液相または上澄みのデカンテーションまたは濾過を行ってもよい。
0165
ある好ましい実施形態では、1種類以上の不純物を沈殿させるために、刺激応答性ポリマーを使用する。このような刺激応答性ポリマーの例は、例えば、米国特許公開第20090036651号、同第20100267933号および同第20110313006号に見出すことができ、それぞれ、この全体が本明細書に参考として組み込まれる。刺激応答性ポリマーは、一般的に、特定の処理条件のセット(例えば、pH、温度および/または塩の濃度)で水系溶媒に可溶性であり、1つ以上のこのような条件が変化すると不溶性になり、その後、析出する。例示的な刺激応答性ポリマーとしては、限定されないが、ポリアリルアミン、ベンジル基で修飾されたポリアリルアミン、またはポリビニルアミンおよびベンジル基で修飾されたポリビニルアミンが挙げられ、刺激は、ホスフェートまたはシトレートである。
0166
ある実施形態では、スタティックミキサを用い、刺激応答性ポリマーを連続して加える。他の実施形態では、ポリマーと、このポリマーが応答性である刺激とを、スタティックミキサを用いて加える。
0167
ある実施形態では、1種類以上の不純物、特に不溶性不純物を沈殿させるために低分子を使用する。
0168
ある実施形態では、本明細書に記載する方法に使用される低分子は、例えば、本明細書に参考として組み込まれるPCT国際公開第2013028334号に記載されるように、非極性でカチオン性である。浄化に使用可能な例示的な低分子としては、限定されないが、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(非限定例としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルアリールトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアミンクロリドまたはブロミド、ドデシルアミンまたはクロリドおよびセチルジメチルエチルアンモニウムブロミドまたはクロリドが挙げられる。)、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(非限定例としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドおよびベンゼトニウムクロリドが挙げられる。)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(非限定例としては、ドミフェンブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物(ブロミドおよびクロリド塩)およびオクチルドデシルジメチルアンモニウムクロリドまたはブロミドが挙げられる。)、ヘテロ芳香族アンモニウム塩(非限定例としては、セチルピリジウムハロゲン化物(クロリドまたはブロミド塩)およびヘキサデシルピリジニウムブロミドまたはクロリド、cis異性体の1−[3−クロロアリル]−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、アルキル−イソキノリニウムブロミドおよびアルキルジメチルナフチルメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。)、多置換された四級アンモニウム塩(非限定例としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネートおよびアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムシクロヘキシルスルファメートが挙げられる。)およびビス−四級アンモニウム塩(非限定例としては、1,10−ビス(2−メチル−4−アミノキノリニウムクロリド)デカン、1,6−ビス{1−メチル−3−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−プロピルジメチルアンモニウムクロリドヘキサンまたはトリクロビスオニウムクロリドおよびBuckman BrochuresによるCDQと呼ばれるビス−クアットが挙げられる。)が挙げられる。
0169
特定の好ましい実施形態では、低分子は、ベンゼトニウムクロリド(BZC)である。
0170
ある実施形態では、浄化は、バイオリアクター内で直接行われる。言い換えると、沈殿剤、例えば、刺激応答性ポリマーを、標的分子を発現する細胞培養物を含むバイオリアクターに直接加え、これによって、細胞および細胞片を沈殿させてもよく、標的分子は、沈殿の結果として得られる液相内に保持される。ある好ましい実施形態では、液相を、さらにデプス濾過する。液相に対し、遠心分離、濾過、沈降またはこれらの組み合わせを行ってもよい。
0171
他の実施形態では、刺激応答性ポリマーを、細胞培養物を含む容器に加え、バイオリアクターから分離する。従って、本明細書で使用する場合、「容器」という用語は、細胞を培養するために使用するバイオリアクターとは別個の容器を指す。
0172
ある実施形態では、遠心分離の前に、刺激応答性ポリマーをサンプルに加え、遠心分離の後にデプス濾過を行う。このような方法では、遠心分離の後に必要となり得るデプス濾過の大きさ/容積は、刺激応答性ポリマーが存在しないときに必要な量よりも少ない。
0173
ある実施形態では、宿主細胞タンパク質(HCP)を除去するためのフルオロカーボン組成物(CFC)改質された膜を記載するPCT国際出願第PCT/US2013/32768号(2013年3月18日に出願した国内番号MCA−1303PCT)に記載されるように、浄化された細胞培養供給物を、さらに、帯電したCFCにさらし、さらに、HCPを除去する。精製方法の他の処理工程の後に、例えば、フロースルー精製処理工程の一部であるプロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程の後、またはフロースルー精製処理工程の後、またはアニオン交換クロマトグラフィー工程の後に、CFC改質された膜を使用することもできる。
0174
浄化されたサンプルに対し、典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィー工程を行う。
0175
結合および溶出のクロマトグラフィー
本明細書に記載する種々の実施形態では、方法およびシステムは、捕捉のためにたった1つの結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程を含み、典型的には、浄化の後に行う。結合および溶出のクロマトグラフィーは、標的分子に結合することを意図しており、一方、1種類以上の不純物は、流れる(「捕捉工程」とも呼ばれる。)。結合した標的分子は、その後、溶出し、溶出物または結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力に、さらに精製工程を行ってもよい。
0176
結合および溶出のクロマトグラフィーは、1つの分離ユニットまたは2または3以上の分離ユニットを使用してもよい。
0177
本明細書に記載する種々の実施形態では、使用される結合および溶出のクロマトグラフィーは、アフィニティの結合および溶出のクロマトグラフィー、またはカチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィーまたは混合モードの結合および溶出のクロマトグラフィーである。典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィーは、標的分子に結合することを意図した媒体の使用を利用する。
0178
ある好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、アフィニティクロマトグラフィーである。アフィニティクロマトグラフィーに使用可能な適切なクロマトグラフィー媒体としては、限定されないが、プロテインA、プロテインGまたはプロテインIを含む媒体が挙げられる。官能基(例えば、ProSep(登録商標)High Capacity(EMD Millipore)、ProSep(登録商標)Ultra Plus(EMD Millipore)、Poros(登録商標)MabCapture(商標)A(Life Technologies)、AbSolute(登録商標)(NovaSep)、Protein A Ceramic Hyper D(登録商標)(Pall Corporation)、ToyopearlAF−rProtein A−650F(Tosoh)、MabSelect(登録商標)Sure(GE Healthcare))。適切な媒体は、通常は、クロマトグラフィーカラムまたはデバイスに充填される。
0179
特定の実施形態では、アフィニティクロマトグラフィー媒体は、親水性硬質ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに接続したプロテインAに由来するリガンドを含む。
0180
本発明の幾つかの実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー方法は、連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMCとも呼ばれる。)を使用する。
0181
連続的なクロマトグラフィーでは、方法の要求に依存して、直列および/または並列でカラムを操作することができるような配置で、幾つかの同一のカラムを典型的には接続する。従って、すべてのカラムを同時に動かしてもよく、または、この操作で断続的に重ね合わせてもよい。それぞれのカラムは、典型的には、方法を実施する間に、数回保持し、溶出し、再精製する。従来のクロマトグラフィーと比較して、1つのクロマトグラフィーサイクルは、保持、洗浄、溶出および再生といった幾つかの連続した工程に基づく。複数の同一のカラムに基づく連続的なクロマトグラフィーの場合には、すべてのこれらの工程を異なるカラムで行ってもよい。従って、連続的なクロマトグラフィー操作によって、クロマトグラフィー樹脂をよりよく利用し、バッファーの要求を減らし得、方法に経済的な利点を与える。
0183
ある好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、2つの分離ユニットを使用するCMCを使用する。ある他の好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、2つまたは3つ以上の多いユニットを使用するCMCを使用する。CMCの場合には、サンプルの保持は、通常は連続的であるが、溶出は、断続的または非連続である(即ち、CMCは、半連続的な性質を有する。)。
0184
ある好ましい実施形態では、CMCは、3つの分離ユニットを使用し、それぞれが同じクロマトグラフィー媒体を含み、分離ユニットは、液体が、ある分離ユニットから次の分離ユニットへと、また、最後の分離ユニットから最初の分離ユニットへと流れることができるように接続しており、サンプルは、分離ユニットに対する標的分子の結合を可能にするpHおよび導電性で、第1の分離ユニットに保持され、保持時間の経過時間の少なくとも一部が、連続した分離ユニットの保持と重なりあっており、2つの分離ユニットは、流体連結しており、この結果、第1の分離ユニットに結合しない任意の標的分子を保持し、次の分離ユニットに結合することができる。
0185
異なる分離ユニットは、所与の時間に方法の異なる段階であってもよく、即ち、ある分離ユニットが保持される間に、次の分離ユニットで、洗浄、溶出、再平衡化などを行ってもよい。さらに、第1の分離ユニットで洗浄、溶出、再平衡化工程を行っている間に、連続した分離ユニットで、保持工程などを行い、この結果、サンプルは、分離ユニット全体に連続して流れ、800cm/hを超える速度を有し、分離ユニットのクロマトグラフィー媒体は、直径が40から200μmであり、孔の直径が50nmから200nmの粒子を含む。
0186
ある実施形態では、それぞれの分離ユニットは、アフィニティクロマトグラフィー媒体、例えば、プロテインAに由来する媒体を含む。他の実施形態では、それぞれの分離ユニットは、イオン交換媒体(例えば、カチオン交換クロマトグラフィー媒体)または混合モードのクロマトグラフィー媒体を含む。
0187
例示的な連続的なクロマトグラフィー方法は、結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程で使用されてもよく、本明細書で記載するように、例えば、欧州特許出願第EP11008021.5号およびEP12002828.7号に見出すことができ、両方とも本明細書に参考として組み込まれる。
0188
ある実施形態では、分離ユニットを、円形の様式で接続する(模倣された移動床とも呼ばれる。)。例えば、特定の場合に、少なくとも3つの分離ユニットを、円形に接続し、例えば、本明細書に参考として組み込まれる欧州特許第2040811号に記載されるように、サンプルの保持を、ある分離ユニットから次の分離ユニットへと次々と移動する。
0189
従来の方法で用いられる容積の90%までによって半連続モードまたは連続モードで結合および溶出のクロマトグラフィーを行うと、少ない容積のアフィニティ媒体を用いて実行可能であることがわかった。さらに、バッチ方法と比較して3分の1および5分の1の小さな直径を有する分離ユニットを使用することができる。分離ユニットは、標的分子の特定のバッチの処理の中で、例えば、治療候補物質である標的分子のバッチ製造中、複数回再利用することができる。
0190
ある実施形態では、サンプルが保持される分離ユニットは、保持時間の経過時間全体にわたって、別の分離ユニットと流体連結する。
0191
他の実施形態では、保持される分離ユニットは、保持時間の経過時間のわずか一部で、別の分離ユニットと流体連結状態である。ある実施形態では、2つの分離ユニットは、保持時間の経過時間の後半でのみ流体連結状態である。
0192
バッチクロマトグラフィーモードで、典型的には、過剰な標的分子が分離ユニットに飽和する前に、分離ユニット(例えば、クロマトグラフィーカラム)の保持を止める。対照的に、CMCの結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程の場合には、本明細書に記載する方法およびシステムで使用する場合、2つの分離ユニットの間が流体接続しているので、ある分離ユニットに結合しない標的分子は、次の分離ユニットに移動するため、分離ユニットの保持は、止める必要はなく、ある分離ユニットの出口は、第2の分離ユニットなどの入口と接続している。保持工程のときに、当業者は、簡単に決定することができることが理解され、保持された分離ユニットに結合しない標的分子の量は、顕著に多く、この結果、保持される分離ユニットの出口は、別の分離ユニットの入口に接続する必要がある。この実施形態は、分離ユニットが、40から200μmの粒径を有し、50から200nmの孔径を有する媒体を含む場合に特に有効であることがわかっている。このような媒体を用い、保持供給を800cm/hを超える速度で連続して行うことができる。さらなる詳細は、2012年4月23日に出願されたEP12002828.7に見出すことができる。ある実施形態では、洗浄される分離ユニットまたは複数の分離ユニットの出口は、この洗浄によって除去される標的分子が失われず、前の分離ユニットに保持されているように、前の分離ユニットと流体連結している。
0193
標的分子を含む溶出プール中に最終的に入る不純物(例えば、HCP)のレベルが、結合および溶出のクロマトグラフィー中にサンプル保持に特定の添加剤を使用すると顕著に下げることができることがわかっている。実際に、サンプルの保持の前、またはサンプルを保持している間に、サンプルに特定の添加剤を添加すると、典型的には、不純物のクリアランスを高めるように設計された特定の洗浄工程を使用する必要がなくなり得る。言い換えると、典型的に使用される洗浄工程の数は、サンプルの保持の前、またはサンプルを保持している間、特定の添加剤を含むことによって減る。
0194
連続的なクロマトグラフィーの観点で、保持工程が終了し、次のゾーンに移動するプロテインAカラムは、カラムが新しい保持溶液(例えば、本明細書に記載されるもの)を受け入れる準備ができるように、予想される時間フレーム内ですべての必要な工程を終了させる必要があり、欧州特許出願第EP11008021.5およびEP12002828.7に見出すことができ、これらは両方とも、本明細書に参考として組み込まれる。すべての必要な工程を終了させるのに必要な時間は、カラムが再び保持の準備ができるようにしなければならない工程またはゾーンの数によって変わる。工程(例えば、中間洗浄)を減らすか、またはなくすことによって、より高い力価(標的タンパク質濃度)で、連続的なクロマトグラフィーの適用が可能であり、保持相は、短くなると予想され、連続的なクロマトグラフィー中、すべての力価条件で必要な時期が単純になる。
0195
1つ以上の中間洗浄工程を減らすか、またはなくすために使用可能な例示的な添加剤としては、限定されないが、塩、ポリマー、界面活性剤または洗剤、溶媒、カオトロピック剤および任意のこれらの組み合わせが挙げられる。「塩」は、酸および塩基の相互作用によって作られる化合物である。塩の例としては、塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩および/またはクエン酸塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムのうち、任意のものおよびすべてのものが挙げられる。特定の実施形態では、塩は、NaClである(例えば、最終濃度が0.5M NaClになるように加える。)。「疎水性塩」という用語は、疎水性成分との特定の種類の塩、例えば、アルキルアミン、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリドおよびテトラブチルアンモニウムクロリドを指す。本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、2つ以上のモノマーの共有結合によって作られる分子であり、モノマーは、アミノ酸残基ではない。ポリマーの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマーは、PEGである。
0196
「洗剤」という用語は、イオン系および非イオン系の両方の界面活性剤を指し、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−またはステアリル−スルホベタインである(より多くの洗剤について、US6870034B2を参照)。特定の実施形態では、洗剤は、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20(Tween 20)である。
0197
「溶媒」という用語は、1つ以上の他の物質を溶解または分散させることができ、溶液を与える液体物質を指す。ある実施形態では、溶媒は、有機非極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールおよび2,2−チオジグリコールである。「カオトロピック塩」という用語は、分子間の水構造を破壊することが知られている塩を指す。このような塩の例は、尿素およびグアニジニウムHClである。
0198
ある実施形態では、1つ以上のスタティックミキサを用い、1種類以上の添加剤を、浄化された細胞培養物と連続的に混合する。従って、ある実施形態では、タンパク質精製方法において、浄化された細胞培養物サンプルを、プロテインAクロマトグラフィー工程に連続的に流し、1種類以上の添加剤を、本明細書で記載するように、プロテインAクロマトグラフィーマトリックスに保持する前に、浄化された細胞培養物と連続的に混合する。
0199
ウイルス不活性化
本明細書に記載する方法およびシステムの幾つかの実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーの後に、ウイルス不活性化(VI)を行う。ウイルス不活性化は、必ずしも行われなくてもよいが、任意であると考えられると理解される。
0200
好ましくは、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力または溶出物に対し、ウイルス不活性化を行う。ウイルス不活性化によって、ウイルスが不活性化し、または、感染できなくなり、特に、標的分子が治療用途を意図している場合に、重要である。
0201
多くのウイルスは、化学改変によって不活性化することができる脂質またはタンパク質のコーティングを含む。単純にウイルスを不活性化するのではなく、あるウイルス不活性化方法は、ウイルスを完全に変性することができる。ウイルスを不活性化するための方法は、当業者には周知である。より広く用いられるウイルス不活性化方法の幾つかは、例えば、溶媒/洗剤の不活性化(例えば、Triton X100を用いる。);低温殺菌(加熱);酸性pHでの不活性化;および紫外線(UV)の不活性化のうち、1つ以上の使用を含む。これらの方法の2つ以上を合わせることができ、例えば、高温で酸性pHによる不活性化を行う。
0202
完全で効果的なウイルス不活性化を確保するために、ウイルス不活性化は、ウイルス不活性化剤とサンプルとを適切に混合するために、一定速度で攪拌しつつ、長期間にわたって行われることが多い。例えば、今日、産業で使用される多くの大規模な方法において、捕捉工程からの出力または溶出物を貯留槽に集め、長時間にわたってウイルス不活性化を行う(例えば、1時間より長く2時間まで、多くは、その後に一晩保存)。
0203
本明細書に記載する種々の実施形態では、ウイルス不活性化に必要な時間は、ウイルス不活性化をライン内で行うことによって、またはこの工程のために、貯留槽の変わりに調整槽を使用することによって、顕著に短くなる。
0204
本明細書に記載する方法で使用可能なウイルス不活性化技術の例は、例えば、PCT特許出願第PCT/US2013/45677(内部参照番号P12/098PCT)に見出すことができる。
0205
ある好ましい実施形態では、ウイルス不活性化は、酸性pHの使用を利用し、結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力を、ウイルス不活性化のために酸性pHにライン内でさらす。ウイルス不活性化のために用いられるpHは、典型的には、5.0未満、または好ましくは、3.0から4.0である。ある実施形態では、pHは、約3.6以下である。ライン内での方法を用いたウイルス不活性化のために用いられる経過時間は、10分以下、5分以下、3分以下、2分以下から、約1分以下までの範囲であってもよい。調整槽の場合、不活性化に必要な時間は、典型的には、1時間未満、または好ましくは、30分未満である。
0206
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、適切なウイルス不活性化剤は、結合および溶出のクロマトグラフィーと、この方法の次のユニット操作(例えば、フロースルー精製)との間の管または接続ラインにライン内で導入され、好ましくは、管または接続ラインは、出力がこの次のユニット操作に向かう前に、結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程からの出力と、ウイルス不活性化剤とを適切に混合するスタティックミキサを含む。典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力が、特定の流速でスタティックミキサを通って流れ、ウイルス不活性化剤との最小の接触時間を確保する。接触時間は、特定の長さおよび/または直径のスタティックミキサを用いることによって調節することができる。
0207
ある実施形態では、一定の経過時間、酸にさらした後、塩基または適切なバッファーを、管または接続ラインにさらに導入し、これによって、サンプルのpHを次の工程に適したpHにし、このpHは、標的分子に有害ではない。従って、ある好ましい実施形態では、低いpHおよび塩基性バッファーにさらすことは、スタティックミキサを介して混合しつつ、ライン内で達成される。
0208
ある実施形態では、ライン内のスタティックミキサに代えて、または、ライン内のスタティックミキサに加え、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力を、ウイルス不活性化剤で処理するために調整槽を用い、調整槽の容積は、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力の合計容積の25%を超えず、または15%を超えず、または10%を超えない。調整槽の容積が、典型的な貯留槽の容積よりも顕著に小さいため、サンプルとウイルス不活性化剤とのより効果的な混合を達成することができる。
0209
ある実施形態では、ウイルス不活性化は、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力のpHを変えるのではなく、結合および溶出のクロマトグラフィーの間に溶出バッファーのpHを変えることによって達成することができる。
0210
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、サンプルについて、ウイルス不活性化の後に、フロースルー精製方法を行う。ある実施形態では、ウイルス不活性化の後、フロースルー精製の前に、濾過工程が含まれていてもよい。特に、ウイルス不活性化の後にサンプルの濁度を観察する場合、このような工程が望ましいものであり得る。このような濾過工程は、微小孔フィルタまたはデプスフィルタを使用してもよい。
0211
しかし、ウイルス不活性化工程が任意である方法では、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力について、フロースルー精製を直接行ってもよい。
0212
フロースルー精製
本明細書に記載する種々の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力に対し、フロースルー精製操作を直接行うか、または、ウイルス不活性化の後に行う。ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムに使用されるフロースルー精製操作は、ウイルス不活性化を用いるか、または用いずに、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力で存在する1種類以上の不純物を除去することを意図した、フロースルー精製を達成するための2つ以上の処理工程またはデバイスまたは方法を使用する。
0213
ある好ましい実施形態では、フロースルー精製操作は、本明細書で記載するように、活性炭;アニオン交換クロマトグラフィー;カチオン交換クロマトグラフィー、混合モードのクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびウイルス濾過、またはこれらの組み合わせといった、フロースルーモードで行われる工程のうち、1つ以上を含む。ある実施形態では、溶液状態を変えるために、1つ以上のバルブ、ライン内スタティックミキサおよび/または調整槽を、これらの工程の2つ以上の間で使用してもよい。
0214
種々の工程、フロースルー精製を達成するために使用可能な1つ以上の工程を以下にさらに詳細に記載する。
0215
本明細書で記載するように、ある実施形態では、ある好ましい実施形態では、フロースルー精製は、少なくとも1つのフロースルーアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程を使用し、標的分子を含むサンプル中にまだ残存している1種類以上の不純物は、アニオン交換クロマトグラフィー媒体と結合し、一方、標的分子は、流れる。