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技術 金属基材、定着部材及び熱定着装置

出願人 キヤノン株式会社
発明者 田宮広与
出願日 2015年4月21日 (5年8ヶ月経過) 出願番号 2015-086942
公開日 2015年12月10日 (5年0ヶ月経過) 公開番号 2015-222419
状態 特許登録済
技術分野 電子写真一般。全体構成、要素 ロール及びその他の回転体 電子写真における定着
主要キーワード 円形状部材 評価標準 伸び検出 薄肉金属製 屈曲歪み 全構成元素 破壊確率 入射プローブ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

定着ベルトが大きな屈曲歪みを繰り返し受けても、破壊、破損の防止に有効な厚みが10〜100μmの定着ベルト向け金属製シームレスベルトを提供する。

解決手段

オーステナイト系ステンレス鋼板200を圧延加工して、厚みが10〜100μm、銅(Cu)および不可避的不純物を含み、マルテンサイト率が20%未満であり、かつ、オーステナイト相マトリクス中に金属基材周方向に直交する方向に延びているCuリッチ相が分散した金属組織を有する薄肉金属製シームレスベルト402を製造し、これを定着ベルトの基層とする。

概要

背景

現在、電子写真画像形成装置具備される熱定着装置には、消費電力を抑えることのできるベルト加熱方式が採用されているものがある。
図2は代表的なベルト加熱方式の熱定着装置の概略構成を示す断面図である。
この熱定着装置は、定着部材としての定着ベルト11と、該定着部材に対向して配置してなる加圧部材としての加圧ローラ20と、定着ベルト11の内周面に接触して配置されている加熱手段としてのセラミックヒータ12とを有する。定着ベルト11と加圧ローラ20とは定着ニップNを形成しており、定着ニップN部に未定着トナー画像Tを形成坦持させた記録材30を導入して、未定着画像を構成しているトナー溶融させて記録材30へトナー画像定着させる。
図3はエンドレスベルト形状を有する定着部材(以降、「定着ベルト」ともいう)11の断面図である。定着ベルト11は、セラミックヒータ12側から、基材101、弾性層102、離型層などの表層103の順に積層された3層から構成されている。基材101には、熱伝導性が高い薄肉のエンドレスベルト形状の金属基材(以降、「金属ベルト」ともいう)が使用されている。
図1は、ベルト加熱方式の熱定着装置において、定着ベルトが屈曲歪みを受ける説明図である。ベルト加熱方式において、定着ベルト11は定着ニップNを通過する際、入口側と出口側周方向屈曲を受ける。駆動ローラによって搬送される定着ベルトは、定着ニップNに繰り返し挿入され、上記の屈曲を繰返して受けることになる。

そして、定着ベルトが、繰り返し、屈曲を受けたとき、当該定着ベルトの金属ベルトが疲労破壊を起こすことがあった。その為、定着ベルトの耐久性を向上させるためには、金属ベルトに対してもさらなる耐屈曲性の向上が必要である。
ここで、金属ベルトの素材として、加工性が良好で比較的安価なオーステナイト系ステンレスが用いられている(特許文献1)。
SUS304の如き準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、比較的容易に塑性加工による薄肉化を行うことができる。また、かかるステンレス鋼は、塑性加工によってオーステナイト相の少なくとも一部がマルテンサイト相変態する(以降、「加工誘起変態」ともいう)。かかる加工誘起変態によって生じるマルテンサイト相(以降、「加工誘起マルテンサイト相」ともいう)は、オーステナイト相に比較して高硬度であるため、表面硬度が相対的に高い金属基材とすることができる。

概要

定着ベルトが大きな屈曲歪みを繰り返し受けても、破壊、破損の防止に有効な厚みが10〜100μmの定着ベルト向け金属製シームレスベルトを提供する。オーステナイト系ステンレス鋼板200を圧延加工して、厚みが10〜100μm、銅(Cu)および不可避的不純物を含み、マルテンサイト率が20%未満であり、かつ、オーステナイト相のマトリクス中に金属基材の周方向に直交する方向に延びているCuリッチ相が分散した金属組織を有する薄肉金属製シームレスベルト402を製造し、これを定着ベルトの基層とする。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

銅(Cu)および不可避的不純物を含むオーステナイト系ステンレス合金を含む、エンドレスベルト形状金属基材であって、該オーステナイト系ステンレス合金は、マルテンサイト率が20%未満であり、マトリクスとしてのオーステナイト相と、該マトリクス中に分散されたCuリッチ相とを含み、該Cuリッチ相は、該金属基材の周方向に直交する方向に延びていることを特徴とする金属基材。

請求項2

前記金属基材が、10〜100μmの厚さを有する請求項1に記載の金属基材。

請求項3

前記マルテンサイト率が、10%以下である請求項1または2に記載の金属基材。

請求項4

前記オーステナイト系ステンレス合金のCuの含有率が1〜4.5質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属基材。

請求項5

前記Cuリッチ相におけるCuの含有率が60質量%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属基材。

請求項6

エンドレス形状の金属基材を有するエンドレス形状の定着部材であって、該金属基材が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属基材であることを特徴とする定着部材。

請求項7

前記金属基材の周面上に弾性層及び離型層の少なくとも一方が設けられている請求項6に記載の定着部材。

請求項8

定着部材、該定着部材を加熱する加熱手段、該定着部材と共に圧接ニップを形成している加圧部材を有し、該定着部材と該加圧部材との圧接ニップに被加熱材を導入して挟持搬送することにより該被加熱材を加熱する熱定着装置において、該定着部材が請求項6または7に記載の定着部材であることを特徴とする熱定着装置。

請求項9

電子写真画像形成装置における未定着トナー画像定着用である請求項8に記載の熱定着装置。

技術分野

0001

本発明は、電子写真画像形成装置熱定着等に用いられるエンドレスベルト形状を有する定着部材基材として用い得るエンドレスベルト形状の金属基材に関する。また、本発明は、これを用いた定着部材及び熱定着装置に関する。

背景技術

0002

現在、電子写真画像形成装置に具備される熱定着装置には、消費電力を抑えることのできるベルト加熱方式が採用されているものがある。
図2は代表的なベルト加熱方式の熱定着装置の概略構成を示す断面図である。
この熱定着装置は、定着部材としての定着ベルト11と、該定着部材に対向して配置してなる加圧部材としての加圧ローラ20と、定着ベルト11の内周面に接触して配置されている加熱手段としてのセラミックヒータ12とを有する。定着ベルト11と加圧ローラ20とは定着ニップNを形成しており、定着ニップN部に未定着トナー画像Tを形成坦持させた記録材30を導入して、未定着画像を構成しているトナー溶融させて記録材30へトナー画像定着させる。
図3はエンドレスベルト形状を有する定着部材(以降、「定着ベルト」ともいう)11の断面図である。定着ベルト11は、セラミックヒータ12側から、基材101、弾性層102、離型層などの表層103の順に積層された3層から構成されている。基材101には、熱伝導性が高い薄肉のエンドレスベルト形状の金属基材(以降、「金属ベルト」ともいう)が使用されている。
図1は、ベルト加熱方式の熱定着装置において、定着ベルトが屈曲歪みを受ける説明図である。ベルト加熱方式において、定着ベルト11は定着ニップNを通過する際、入口側と出口側周方向屈曲を受ける。駆動ローラによって搬送される定着ベルトは、定着ニップNに繰り返し挿入され、上記の屈曲を繰返して受けることになる。

0003

そして、定着ベルトが、繰り返し、屈曲を受けたとき、当該定着ベルトの金属ベルトが疲労破壊を起こすことがあった。その為、定着ベルトの耐久性を向上させるためには、金属ベルトに対してもさらなる耐屈曲性の向上が必要である。
ここで、金属ベルトの素材として、加工性が良好で比較的安価なオーステナイト系ステンレスが用いられている(特許文献1)。
SUS304の如き準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、比較的容易に塑性加工による薄肉化を行うことができる。また、かかるステンレス鋼は、塑性加工によってオーステナイト相の少なくとも一部がマルテンサイト相変態する(以降、「加工誘起変態」ともいう)。かかる加工誘起変態によって生じるマルテンサイト相(以降、「加工誘起マルテンサイト相」ともいう)は、オーステナイト相に比較して高硬度であるため、表面硬度が相対的に高い金属基材とすることができる。

先行技術

0004

特開2005−241891号公報
特開2010−189719号公報

発明が解決しようとする課題

0005

オーステナイト相が塑性加工後にマルテンサイト相に変態する率(以下、マルテンサイト変態率)が高いステンレス鋼板を塑性加工することによって得られる金属ベルトに対しては、上記したように、加工誘起変態マルテンサイト相の生成によって引張強度の向上および繰り返しの屈曲に対する疲労破壊の抑制が期待された。
しかしながら、本発明者の検討によれば、加工誘起変態によってマルテンサイト率が高くなっている金属ベルトは高い引張強度を示すものの、繰り返し屈曲されたときにクラックの如き疲労破壊が発生する確率が高かった。特に、厚みを10〜100μmといった薄肉の金属ベルトに加工した場合、繰り返しの屈曲による疲労破壊を起こすまでの繰返し回数製品寿命)が大きくバラツキ信頼性に劣ることを本発明者は認識した。

0006

そこで、本発明は、繰り返しの屈曲による疲労破壊が生じ難い定着部材用の金属基材の提供に向けたものである。
また、本発明は、高品位電子写真画像の安定的な形成に資する定着部材及び熱定着装置の提供に向けたものである。

課題を解決するための手段

0007

本発明の一態様によれば、
銅(Cu)および不可避的不純物を含むオーステナイト系ステンレス合金を含む、エンドレスベルト形状の金属基材であって、
該オーステナイト系ステンレス合金は、マルテンサイト率が20%未満であり、マトリクスとしてのオーステナイト相と、該マトリクス中に分散したCuリッチ相とを含有し、
該Cuリッチ相は、該基材の周方向に直交する方向に延びていることを特徴とする金属基材が提供される。

0008

本発明の他の態様によれば、上記の金属基材を有する定着部材が得られる。
本発明の更に他の態様によれば、定着部材と、該定着部材を加熱する加熱手段と、該定着部材と共に圧接ニップを形成している加圧部材とを有し、該定着部材と該加圧部材との圧接ニップに被加熱材を導入して挟持搬送することにより該被加熱材を加熱する熱定着装置であって、該定着部材が上記の金属基材を有する定着部材である熱定着装置が提供される。

発明の効果

0009

本発明の一態様によれば、耐屈曲性に優れる金属基材を得ることができる。また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する定着部材及び熱定着装置を得ることができる。

図面の簡単な説明

0010

ベルト加熱方式の熱定着装置において、定着ベルトが屈曲歪みを受ける説明図である。
ベルト加熱方式の概略構成を表す熱定着装置の断面図である。
代表的な定着ベルトの断面図である。
(a)ステンレス鋼板からカップ形状部材を得る絞り加工の工程を説明する工程図である。(b)カップ形状部材を熱処理する工程を説明する図である。(c)カップ形状部材から金属製シームレスベルトを得る薄肉化工程を説明する工程図である。
(a)金属製シームレスベルトをシート状部材に切断する方向を説明する図である。(b)シート状部材からダンベル状試験片製作する方向を説明する図である。
金属製シームレスベルトの屈曲疲労試験結果から求めた、−3σの破壊確率を説明する図である。
実施例1に係る金属ベルトから作製したサンプルの透過型電子顕微鏡の画像である。

0011

本発明者は、SUS304の如きマルテンサイト変態率が高いステンレス鋼板を塑性加工して得た金属ベルトが良好な引張強度を示すにも関わらず、繰り返しの屈曲による疲労破壊が生じやすい理由について検討した。塑性加工によってマルテンサイト率が高められた金属ベルトは、オーステナイト相に対する加工誘起マルテンサイト相の割合が相対的に高くなっており、オーステナイト相とマルテンサイト相との界面が多く存在するようになっている。その結果、屈曲に由来する曲げ応力が集中し、クラックの如き破壊の起点になっているものと推定した。
かかる推定に基づき、本発明者は、金属ベルトの耐屈曲性を向上させるためには、加工誘起マルテンサイト率を低く抑えることが必要であるとの認識を持つに至った。しかしながら、加工誘起マルテンサイト率が低いステンレス基材は、定着部材用の金属基材として用いるには引張強度が十分でない。

0012

そこで、本発明者は、加工誘起マルテンサイト率を抑える一方で、オーステナイト系ステンレス中に、主に銅で構成された相(以降、「Cuリッチ相」ともいう)を析出させ、オーステナイト相を析出強化することを試みた。ここで、Cuリッチ相とは、Fe以外の全構成元素に対してCuの含有率が60質量%以上であるドメインをいう。なお、Cu以外に、Fe及び不可避的不純物を含んでいてもよい。また、Cuの含有率の計算にFeを含めない理由は後述する。ステンレス鋼板の高強度化のために、Cuリッチ相を析出させること自体は、ばね用ステンレス鋼板の発明に係る特許文献2に開示されている。
本発明者らの検討の結果、単にCuリッチ相を析出させただけでは耐屈曲性の改善効果は見られなかった。そこで、本発明者がさらなる検討を重ねたところ、Cuリッチ相を、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びて存在させることによって、金属ベルトの耐屈曲性を改善できることを見出した。これは、Cuリッチ相が、オーステナイト相の延びる方向と略平行に延びることによって、オーステナイト相とCUリッチ相との界面に集中する応力が、Cuリッチ相によって有効に吸収されているためであると推測される。

0013

本発明にかかる定着部材用の金属ベルトにおいては、薄板状のCuリッチ相をオーステナイト相に生じさせることによって、マルテンサイト率が低く抑えられているにもかかわらず、屈曲疲労特性の向上を達成することが可能となっている。具体的には、該金属ベルトは、Cuリッチ相を金属ベルトの周方向に直交する方向に延びて存在させることで、Cuリッチ相の析出強化による引張強度の向上と、Cuリッチ相の転位吸収効果による耐屈曲性の向上とを奏するものとなっている。

0014

以下、本発明に係る金属基材の一態様としての金属ベルトについて説明する。
まず、定着部材用の金属ベルトの厚さは、10〜100μmの範囲から選択される。更に、屈曲疲労特性の向上は、主に、オーステナイト相が、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びるCuリッチ相を有することで達成される。そのために、金属ベルトの強化に必要なオーステナイト相を確保すると共に、屈曲時にクラックの如き破壊の起点となるオーステナイト相との界面を生じさせるマルテンサイト相を極力生じさせないために、マルテンサイト率は低いことが好ましい。具体的には、金属ベルトのマルテンサイト率としては、マルテンサイト相が含まれない状態、すなわち、マルテンサイト率が0%であることが好ましい。また、塑性加工によってマルテンサイト相の形成が不可避である場合であっても、金属ベルトにおけるマルテンサイト率は20%未満、特には、10%以下とすることが好ましい。

0015

金属ベルトは、Cuリッチ相が、オーステナイト相のマトリクス中に分散した金属組織を有し、この金属組織によって屈曲疲労特性の向上を達成することができる。Cuリッチ相はマルテンサイト相中に形成されていてもよいが、屈曲疲労特性の大幅な向上を達成するためには、Cuリッチ相を、オーステナイト相のマトリクス中に分散させてなる金属組織とすることが好ましい。

0016

金属ベルトを構成するオーステナイト系ステンレス合金のCuの含有率は1.00〜8.00質量%であることが好ましく、1.00〜4.50質量%であることがより好ましい。
更に、Cuリッチ相中のFe以外の成分中に含まれるCuの含有率は少なくとも60質量%であることが好ましい。なお、Cuリッチ相は、Fe及び不可避不純物以外の成分がCuからなるものであってもよい。
本願発明の一態様において、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びているCuリッチ相とは、金属ベルトの表面から透過型電子顕微鏡を用いて観察されるCuリッチ相の最大長さをなす線分が、金属ベルトの周方向に直交する方向のベクトル成分を含むCuリッチ相と定義される。
本発明の一態様に係るCuリッチ相は、金属ベルトの表面から、透過型電子顕微鏡を用いて観察したときの最大長さをなす線分の長さをCuリッチ相の長さ(L)とし、当該線分に直交する線分であって、該Cuリッチ相の輪郭画定される線分の長さをCuリッチの幅(W)としたとき、幅(W)と長さ(L)の比、すなわち、W:Lが、1:2〜1:100であるような形状であることが好ましい。さらには、薄板状であることが好ましい。
かかる形状を有するCuリッチ相を、マルテンサイト率が20%未満のステンレス製エンドレスベルトの周方向に直交する方向に延びて存在させることで、当該エンドレスベルトの耐屈曲性を大幅に改善することができる。これは、脆いマルテンサイト相の存在比率を20%未満、特には10%以下に抑えられていること、および、柔軟なCuリッチ相を、周方向に直交する方向に延びて存在していることで、エンドレスベルトが屈曲されたときに当該エンドレスベルトに加わる応力が緩和されるためであると考えられる。

0017

<定着部材>
定着部材の形態としては、これを装着する定着装置の構造に応じて種々の形態をとることができるが、定着装置内での設置位置のコンパクト化や定着処理の効率化などの理由から、定着ベルトの形態を取る場合が多い。そのため、以降の説明においては、本発明に係る定着部材として、定着ベルトを例に説明する。
未定着トナー画像の加熱定着用の定着部材は、未定着トナー画像と接する面と加熱手段による加熱面に対して摺動する面とを有する。
なお、定着部材の基材としては、上述した本発明にかかる金属ベルトが用いられる。そして、金属ベルトの少なくとも一方の表面上には、弾性層及び離型層の少なくとも一方が設けられた構成とすることができる。より具体的な構成としては、金属ベルトの少なくとも一方の表面上に弾性層及び離型層をこの順に積層した構成が挙げられる。エンドレスベルト状の金属ベルトでは、例えば、その周面上に弾性層及び離型層の少なくとも一方を積層した構成が挙げられる。
弾性層は、均一な加圧を可能とする圧接ニップ部をより効果的に形成可能とするために設けることができ、シリコーンゴムなどの弾性を有する材料から構成することできる。具体的には、付加硬化型のシリコーンゴム組成物硬化物を含む弾性層等が好適に用いられる。
また、離型層は、トナー画像面に対する離型性を確保してオフセットの発生の防止が必要な場合に設けることができる。具体的には、フッ素樹脂フッ素ゴムを含む層が挙げられる。
そして、上記した本発明に係る定着部材は、図2に示した熱定着装置の定着部材として用いることができる。この熱定着装置は、電子写真画像形成装置における未定着トナー画像の定着用として好適に利用することができる。それによって、長期に亘る安定した電子写真画像の形成に資する熱定着装置を得ることができる。すなわち、本発明に係る定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置してなる加圧部材と、該定着部材の加熱手段とを備えており、該定着部材として、上記した本発明に係る定着部材を用いたものである。そして、加熱手段の例としてはヒータ、例えばセラミックヒータ等が挙げられる。定着部材と加圧部材との圧接ニップに被加熱材である録媒材を導入して挟持搬送することにより記録材を加熱することができる。

0018

ここで、定着部材として、上記したように、金属基材上に弾性層及び離型層の少なくとも一方を積層してなるエンドレス形状の定着部材を用いる場合、ヒータは、例えば該定着部材の金属基材に直接または間接的に接するように配置することができる。この場合において、金属基材のヒータと対向する側の面には、ポリイミドなどを含む摺動層(不図示)を設けてもよい。
更に、上記の定着装置を具備してなる、本発明に係る画像形成装置は、長期に亘って安定して高品位な電子写真画像を形成することのできるものとなる。

0019

以下、定着部材としての無端定着ベルトの製造方法、それに用いる鋼材について説明する。
−定着ベルト基層の製造方法−
定着ベルトの基材(基層)に用いるエンドレスベルト形状の金属基材、すなわち金属製エンドレスベルトは、下記工程を含む方法によって製造することができる。
(1)ステンレス鋼板から絞り加工によってカップ形状部材を得る。ステンレス鋼板の厚みは1.0mm以下が好ましく、0.2mm以上0.5mm以下がより好ましい。
(2)工程(1)で得たカップ形状部材を900℃以下の温度にて熱処理し、球状または棒状のCuリッチ相を析出させたカップ状部材を得る。また、当該熱処理における加熱温度の下限としては、該カップ形状部材を構成しているステンレス鋼の再結晶開始温度とすることが好ましい。当該熱処理を、当該再結晶開始温度以上、900℃以下とすることで、より効率的にCuリッチ相を金属組織中に析出させることができる。ここで、再結晶開始温度は、ステンレス鋼板の種類や、カップ形状部材を得る際の絞り加工によってステンレス鋼板が受ける塑性加工の程度によっても異なる。一例として、後述する、実施例において用いたオーステナイト系ステンレス鋼板は、該再結晶開始温度が750℃である。
(3)工程(2)で得たカップ形状部材を75%以上の加工率で塑性加工して、厚みを、0.01〜0.1mmに薄肉化する。この薄肉化の工程によって、工程(2)で生じた銅リッチ相は引き延ばされ、薄肉化されたカップ形状部材の周方向に直交する方向に延びて存在することとなる。その後、薄肉化されたカップ形状部材の底部を切断して、0.01〜0.1mmの厚みの金属製シームレスベルトを得る。 上記工程(3)における塑性加工の方法としては、絞り加工、圧延加工引き抜き加工プレス加工しごき加工およびスピニング加工の如き加工方法から適宜選択することができる。
オーステナイト相を加工硬化するための塑性加工を行う前のステンレス鋼板の厚さは、塑性加工における厚さに関する加工率による硬度調整を好適に行う上で、1.0mm以下とすることが好ましく、0.5mm以下とすることがより好ましい。また、同様の観点から、塑性加工を行う前のステンレス鋼板の厚さは、0.2mm以上とすることが好ましい。

0020

−定着ベルト基層向けステンレス鋼板−
一般的に、オーステナイト系のステンレス鋼は、以下のような組成を有する。
C:0.01〜0.15質量%;
Si:0.01〜1.00質量%;
Mn:0.01〜2.00質量%;
Ni:6.00〜15.00質量%;
Cr:15.00〜20.00質量%;
残部:Feおよび不可避不純物。
上記不可避不純物としては、0.045質量%以下の割合で含まれることのあるP、及び0.030質量%以下の質量比で含まれることのあるS等が挙げられる。
そして、ニッケル含有量が8質量%以上のオーステナイト系ステンレス鋼板の具体例としては、例えば、SUS304が挙げられる。
ここで、SUS304は、日本工業規格(JIS)G 4305(2010) に記載されているように、一般に以下のような組成を有する。
C:0.01〜0.08質量%;
Si:0.01〜1.00質量%;
Mn:0.01〜2.00質量%;
Ni:8.00〜10.50質量%;
Cr:18.00〜20.00質量%。
残部:Feおよび不可避不純物。
また、上記不可避不純物としては、上記したように、0.045質量%以下の割合で含まれることのあるP、及び0.030質量%以下の質量比で含まれることのあるS等が挙げられる。
SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板は、成形性が良く容易に塑性加工による薄肉化が行える。また、塑性加工による加工硬化割合が大きく定着ベルトとしての耐久性が比較的良い。更に、熱定着装置内環境において、酸化し難く経時変化が少ないなどの理由により、定着ベルト向け金属製シームレスベルトの素材として多く使用されている。オーステナイト系ステンレス鋼は、室温での塑性加工により加工誘起マルテンサイト変態を生じ、塑性加工前オーステナイト組織が高硬度なマルテンサイト組織に変態することが知られている。
本発明に係る、Cuリッチ相がオーステナイト相中に形成されている金属基材を得るための素材としてのオーステナイト系ステンレス鋼板としては、上記の各組成分に加えて更に1.00〜8.00質量%のCuを含むものが好適に利用できる。
Cuを1.00質量%以上、8.00質量%以下含有するオーステナイト系ステンレス鋼板の例を以下に挙げる。
SUSXM7、SUS303Cu、SUS304Cu、SUS304J1、SUS304J2、SUS304J3、SUS315J1、SUS315J2、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317J5L、SUS890L。
中でも、SUSXM7、SUS303Cu、SUS316J1およびSUS316J1Lは、塑性加工によってもマルテンサイト変態をより生じ難いため、特に好ましい。

0021

塑性加工に対してオーステナイトの安定性を示す指標として、材料の化学成分含有量から(式1)によって求められるMd30がある。Md30は単位として(℃)で表され、オーステナイト安定化指数として称され、その値がプラス側に大きな数値ほどオーステナイトの安定性が低く、塑性加工後のマルテンサイト変態量が多くなる。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29(Ni+Cu)−18.5Mo・・・(式1)
塑性加工されたオーステナイト系ステンレス鋼の硬度は、マルテンサイト変態量に比例し高くなる。そのため、Md30が大きな鋼種選定し、上記した、定着ベルト基材の製造方法(1)〜(3)に係る加工を施すことで、オーステナイト相のマトリクス中にCuリッチ相が分散状態で析出し、かつ、当該Cuリッチ相が、エンドレスベルト形状の金属基材の周方向に直交する方向に延びて存在してなる、高強度な薄肉金属製シームレスベルトを得ることができる。

0022

なお、薄肉の金属ベルトの強度を向上させるためには、引張強度を向上させることも必要である。しかしながら、先に述べたとおり、薄肉の金属ベルトにおいて、加工誘起マルテンサイトによる引張強度の向上を図ることは、オーステナイト相と加工誘起マルテンサイト相の境界における応力集中による屈曲時の疲労破壊の要因となる場合がある。特に100μm以下の厚みの金属ベルトにおいて、加工誘起マルテンサイトを存在させることによる屈曲時の疲労破壊の発生確率の上昇が、より顕著となる傾向にある。すなわち、厚みが100μm以下の薄肉の金属ベルトにおいては、加工誘起マルテンサイトを多く存在させた場合、疲労破壊を起こすまでの繰返し回数のバラツキが大きくなり、その結果として、後述する−3σの破壊確率が低くなる。

0023

図6は、−3σの破壊確率の求め方を説明する図である。図6縦軸負荷した歪み幅、横軸破断した回数を示す。矢印を付加したデータは破断せずに評価を打ち切った事を示す。図6のAで示す実線は50%の破壊確率を示し、Bで示す実線は−3σの破壊確率を示す。この様に、疲労強度測定の結果は、統計的に回帰させた破壊確率で示す事ができ、−3σの破壊確率以下となるように製品設計を行う事で疲労破壊に対し、信頼性が高い製品となる。そのため50%の破壊確率が高くかつ同一の歪み幅を負荷した際の破壊に至る繰り返し回数のバラツキが小さい薄肉金属製シームレスベルトは、−3σの破壊確率が高く疲労破壊防止に有効な部材と言える。

0024

オーステナイト系ステンレス鋼はクロムニッケル含有量が最も多い合金で、クロムはステンレス鋼の耐食性向上に有効な成分である。また、ニッケルはオーステナイト相を安定化させるために有効な成分である。また、Md30の式からも分かるように銅の含有量は、ニッケルと同様にマルテンサイト変態率に影響を与える成分である。

0025

日本工業規格(JIS) G 4305(2010)に基づくオーステナイト系ステンレス鋼板において、特にニッケルと銅の含有量が10.00%以上の場合、オーステナイト系ステンレス鋼は、加工誘起マルテンサイトの発生が抑制され、塑性加工後においても、オーステナイト相が極めて安定に存在し得る。その結果、定着ベルト基材の製造方法(1)〜(3)により製造された金属ベルトには、加工誘起マルテンサイト相による高強度化はあまり望め得ない。

0026

しかしながら、本発明に係る金属ベルトは、オーステナイト相のマトリクス中に薄板状のCuリッチ相が分散して析出した金属組織を有し、かかるCuリッチ相の析出によって高強度化が図られている。すなわち、該金属ベルトは、加工誘起マルテンサイトによる高強度化は得られていないが、Cuリッチ相の析出により高強度化が図られている。
さらに、該金属ベルトは、オーステナイト相より柔らかいCuリッチ相が、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びて存在し、電子線回折パターンからCuリッチ相が、母相のオーステナイト相に対して完全平行方位関係で存在していることが確認された。このことは、すなわちラス状のオーステナイト相(F.C.C構造 a=b=c=3.600Å)と薄板状のCuリッチ相(F.C.C構造 a=b=c=3.165)の境界は、結晶構造的に2相格子整合しており応力集中し難い境界であることを意味する。そして、かかるCuリッチ相の存在により、金属ベルトは、繰り返しの歪みを受けた際にも、オーステナイト相より柔らかい薄板状のCuリッチ相が負荷歪みを吸収するダンパー効果(転位吸収効果)を発揮し、統計的に回帰させた−3σの破壊確率を大幅に向上させるものと推測される。

0027

評価方法
(Cuリッチ相の確認)
金属ベルトから、FIB−μサンプリング法を用いて、金属ベルトの周方向に平行な断面が現われてなるサンプル(縦:10μm、横:10μm、厚み:0.1μm)を切り出す。得られたサンプルにおける、金属ベルトの周方向に平行な断面を、電界放射顕微鏡商品名:HF−2000、日立製作所製)を用いて、加速電圧200kV、倍率200,000倍で観察し、450nm×350nmの視野内のCuリッチ相と推定されるドメインを特定する。特定されたドメインについて、エネルギー分散X線分光分析装置(商品名:EDS2008 ver1.1 RevC、IXRF SYSTEMS製、入射プローブ径:2nm)を用いて加速電圧200kVで分析を行う。
この分析から得られるドメインの元素分析の結果から、Feを除く全構成元素に対するCuの含有率を計算する。そして、得られるCuの含有率が60質量%以上である場合、当該ドメインをCuリッチ相であると見做す。
なお、Cuの含有比率の計算において、Feを含めない理由は以下の通りである。すなわち、金属ベルト中のドメイン中のCuの含有率は、本来は、ドメインを構成している全元素に対するCuの含有率を算出すべきである。しかし、ドメインのサイズは、入射プローブ径が2nmであるエネルギー分散X線分光分析装置で分析可能なエリアに対して小さい。そのため、ドメインの元素分析を行ったとしても、得られる元素分析結果には、マトリクスを構成している元素の情報が不可避的に含まれる。そこで、本発明においては、マトリクスの構成元素のうち最も含有率が高いFeの情報を捨象して、ドメイン中のCuの含有率を算出することとした。
(疲労強度測定)
図5は、金属ベルトから疲労強度測定用試験片を得る方法の説明図である。
まず、金属ベルト402を、図5(a)に示すように軸方向に切り開き、シート状部材501を得た。次に、図5(b)に示すようにシート状部材501から、502で示すように金属ベルトの軸方向と直交する向きにダンベル状試験片503(各寸法の単位は「mm」である)を得て疲労強度用試験片とした。
上記試験片を用い、日本ばね工業会規格(JSMA規格)SD007:1996「ばね用薄板疲労試験方法」に従って行った。測定器は、金属箔疲労試験機(日本ベルパーツ株式会社製)を用いた。
試験片に繰返し負荷する歪みは、試験プーリー径により変更し、最大繰返し回数は107回まで行い、破断しない場合はそこで試験を打ち切った。試験片と試験プーリーを密着させる為の引張荷重は10Nとした。評価本数は10本以上とし、107回以上の打切りデータは4本以上、破断データは6本以上となるように評価した。上記測定により得られたデータを日本材料学会標準JSMS−SD−6−08金属材料疲労信頼性評価標準(S−N曲線回帰法)に従って−3σの破壊確率を求めた。

0028

(マルテンサイト率の測定)
次にマルテンサイト率の測定方法について説明する。マルテンサイト率はフェライト値から算出した。フェライト値とは、塑性加工によりオーステナイトからマルテンサイトに変態した割合量を評価できる指標である。なお、フェライト値は、測定用試料の厚みが2mm以下であると、その厚みに依存して小さな値が示される。その為、本発明に係る金属ベルトのマルテンサイト率の測定は、以下のようにして行った。測定対象である金属ベルトから試験片の複数を切り出す。そして、まず、試験片1枚についてフェライト値を測定する。次いで、試験片を2枚重ねてフェライト値を測定する。次に、試験片を3枚重ねてフェライト値を測定する。このように試験片を重ねる枚数を1枚ずつ増やす度にフェライト値を測定する。そして、フェライト値が飽和したときの値を、当該測定対象の金属ベルトのフェライト値とみなす。なお、フェライト値の測定にはマルチシステム膜厚計(商品名:フィッシャースコープMMS、株式会社フィッシャーインストルメンツ社製)を用いた。
(引張強度)
疲労強度測定用の試験片と同様の方法にて、引張強度測定用の試験片を作製した。
すなわち、金属ベルト402を、軸方向に切り開き、シート状部材を得た。次に、シート状部材から、金属ベルトの軸方向と直交する向きにダンベル状試験片を得た。なお、寸法は、図5(b)に示した疲労強度測定用試験片が長さが70mmであったのを50mmとし、また、該疲労強度測定用試験片の両側の孔部は存在しない。
また、測定は、精密万能試験機(商品名:島津オートグラフAG−50kNX、島津製作所製)を用いた。測定環境は、室温27℃、相対湿度70%とした。また、試験速度は、5mm/分、試料標線間距離は、15mmで伸び検出を行った。

0029

以下に実施例を挙げて本発明に係る、定着ベルト基層向けの金属製シームレスベルトについて具体的に説明する。

0030

〔実施例1〕
本実施例に係る金属ベルトを作成するためのステンレス鋼板として、SUSXM7を用意した。このステンレス鋼板は、Cuの含有量が1〜4.5質量%のオーステナイト系ステンレス鋼板である。このステンレス鋼板のMd30は−108であった。
このステンレス鋼板を、冷間圧延により0.22mmの厚みにし、850℃で40分の真空熱処理を施した後に徐冷した。冷却速度は、200℃/時とした。なお、このステンレス鋼板を用いて、金属ベルトを得た。その方法を以下に説明する。

0031

図4は、上記した真空熱処理後、徐冷して得られたステンレス鋼板から金属ベルト402を得る方法を示した図である。
まず、真空熱処理後、徐冷して得られた、厚みが0.22mmのステンレス鋼板から円板形状部材201を打ち抜いた。この円形状部材201を、4回の絞り加工を施すことにより、側壁の厚みが0.20mmのカップ形状部材300を得た(図4(a))。
次に、図4(b)に示したように、得られたカップ形状部材300を、温度850℃に加熱して、40分間保持し、その後、室温(25℃)にまで徐冷した。冷却温度は、200℃/時とした。この熱処理によって、絞り加工でカップ形状部材300に加えられた歪が除去されたカップ形状部材301を得た。
最後に、図4(c)に示すように、前記工程で得たカップ形状部材301を9回のしごき加工を施すことによって薄肉化し、総合しごき率が80%の加工率で薄肉化したカップ形状部材401を得た。得られた薄肉化されたカップ形状部材の底部を切断して、0.035mmの厚みの金属ベルトを得た。
金属製エンドレスベルトから、Cuリッチ相の存在および形態を観察するために、以下の分析を行った。
まず、得られた金属ベルトから、FIB−μサンプリング法を用いて、金属ベルトの周方向に平行な断面が現われてなる第1の観察用試料(縦:10μm、横:10μm、厚み:0.1μm)を切り出した。得られた第1の観察用試料における、金属ベルトの周方向に平行な断面を、電界放射顕微鏡(商品名:HF−2000、日立製作所製)を用いて、加速電圧200kV、倍率200,000倍で観察し、450nm×350nmの視野内に存在する複数個のCuリッチ相について、エネルギー分散X線分光分析装置(商品名:EDS2008 ver1.1 RevC、IXRF SYSTEMS製、入射プローブ径:2nm)を用いて加速電圧200kVで分析を行った。その結果、全てのCuリッチ相が、Feを除く全元素に占めるCuの含有率が60質量%以上であった。
次に、本実施例に係る金属ベルトを、電解研磨法ツインジェット)とイオンミリング法を用いて、表面および裏面から研磨して、電子線が透過し得る厚みを有する第2の観察用試料を作製した。得られた第2の観察用試料の表面を、電界放射型電子顕微鏡(HF−2000 日立製作所製)を用いて、倍率200,000倍で観察し、450nm×350nmの視野内に存在するすべてのCuリッチ相の幅および長さを測定するとともに、Cuリッチ相の最大長さをなす線分が延びる方向について観察した。その結果、いずれのCuリッチ相も、幅(W)と長さ(L)の比(W:L)は、1:2〜1:100の範囲内であった。また、最大長さをなす線分は、エンドレスベルトの周方向に直交する方向のベクトル成分を有していた。
より詳細には、本実施例に係るエンドレスベルトは、10〜100nm程度のラス状のオーステナイト相が、周方向に直交する方向に延びて存在していた。また、Cuリッチ相は、オーステナイト相の内部およびラス界面にオーステナイト相と完全平行方位関係で析出していた。なお、図7に、上記観察試料2の電子顕微鏡画像を示す。図7に示したように、針状のCuリッチ相701は、矢印Aで示した、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びていた。

0032

本実施例で得られた金属ベルトは、疲労強度測定による−3σの破壊確率、マルテンサイト率、および引張強度を表1にまとめて示す。

0033

〔比較例1〕
まず、日本工業規格(JIS) G 4305(2010)に基づくSUS304Lのステンレス鋼板を用意した。このステンレス鋼板は、冷間圧延により0.22mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行ったものであり、Md30は−26であった。なお、ステンレス鋼板は、Cuリッチ相を生じさせるCuを含んでいない。このステンレス鋼板を用いた以外は、実施例1に係る金属ベルトと同様にして本比較例に係る金属ベルトを作製した。
なお、本比較例に係る金属ベルトは、Cuを含まないステンレス鋼板から作製したものであるため、実施例1において行った、Cuリッチ相の解析のための第1および第2の観察用試料の作製および評価は行わなかった。
得られた本比較例に係る金属ベルトについて、疲労強度測定、マルテンサイト率および引張強度を測定した。結果を表1に示す。

0034

〔比較例2〕
まず、日本工業規格(JIS) G 4305(2010)に基づくSUS304のステンレス鋼板を用意した。
このステンレス鋼板は、冷間圧延により0.22mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行ったものであり、Md30は12であった。このステンレス鋼板は、Cuリッチ相を生じさせるCuを含んでいない。このステンレス鋼板を用いた以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る金属ベルトを作製した。
なお、本比較例に係る金属ベルトも、Cuを含まないステンレス鋼板から作製したものであるため、実施例1におけるCuリッチ相の解析のための第1および第2の観察用試料の作製および評価は行わなかった。
得られた本比較例に係る金属ベルトについて、疲労強度測定、マルテンサイト率および引張強度を測定した。結果を表1に示す。

0035

〔比較例3〕
まず、実施例1で用いたステンレス鋼板と同じステンレス鋼板を用意した。
このステンレス鋼板を用いて、実施例1と同じ方法でカップ形状部材を得た。得られたカップ形状部材を、温度1050℃に加熱して5分間保持し、その後、窒素ガスを用いて室温(27℃)にまで急冷した。冷却速度は、5℃/秒とした。
このカップ形状部材を、9回のしごき加工を施すことによって薄肉化し、総合しごき率が80%の加工率で薄肉化したカップ形状部材401を得た。得られた薄肉化されたカップ形状部材の底部を切断して、0.035mmの厚みの金属ベルトを得た。
得られた金属ベルトについて、実施例1と同様にして、第1及び第2の観察用試料を作製、評価した。
その結果、第1および第2の観察用試料からはCuリッチ相の存在が確認できなかった。これは、カップ形状部材を、1050℃で加熱し、5分間保持した後、室温まで急冷する熱処理を施したことによって、当該熱処理前には存在していたCuリッチ相が、オーステナイト相に固溶し、消滅したものと考えらえる。
また、この金属ベルトについて、疲労強度測定、マルテンサイト率および引張強度を測定した。結果を表1に示す。

0036

〔比較例4〕
実施例1と同様にして金属ベルトを作製した。得られた金属ベルトを、温度850℃で40分保持した後、室温まで徐冷した。冷却速度は、200℃/時とした。
こうして得た金属ベルトについて、実施例1と同様にして、第1及び第2の観察用試料を作製、評価した。
その結果、第1および第2の観察用試料から、球状のCuリッチ相が存在していることが確認された。すなわち、Cuリッチ相は、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びて存在していなかった。
Cuリッチ相が球状となっている理由は、実施例1と同様にして作製した金属ベルトを、温度850℃に40分間保持し、次いで、徐冷したことで、金属ベルトの周方向に直交する方向に延びていたCuリッチ相が、融解し、再度析出したことによるものと考えられる。
本比較例に係る金属ベルトについて、疲労強度測定、マルテンサイト率および引張強度を測定した。結果を表1に示す。なお、マルテンサイト率が0%であるのは、金属ベルトを、温度850℃に40分間保持し、次いで、徐冷したことで、加工誘起マルテンサイト相が、オーステナイト相に戻ったためであると考えられる。

0037

実施例

0038

表1に示したように、本発明に係る金属ベルトは、高い引張強度を有することが分かる。また、本発明に係る金属ベルトは、−3σの破壊確率が高く、繰り返しの屈曲によってもクラックの如き疲労破壊の生じる確率が低いこと、すなわち、信頼性が高いことが分かる。

0039

11定着ベルト
12セラミックヒータ
20加圧ローラ
30記録材
101基材(基層)
102弾性層
103表層
200ステンレス鋼板
201円板形状部材
300カップ形状部材
301 歪が除去されたカップ形状部材
401薄肉化したカップ状部材
402 金属製シームレスベルト
501シート状部材
503ダンベル状試験片
A 50%の破壊確率を示す線
B −3σの破壊確率を示す線
Tトナー
N 定着ニップ

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