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技術 下注ぎ造塊方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 高橋大喜新井宏忠飛松晴記上山泰一
出願日 2014年5月19日 (6年6ヶ月経過) 出願番号 2014-103345
公開日 2015年12月7日 (4年11ヶ月経過) 公開番号 2015-217419
状態 特許登録済
技術分野 インゴット鋳造
主要キーワード シュー部分 投入回数 ガスプラグ 反転流 型鍛造品 ノズル断面 スライドバルブ スラグ状態
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

溶鋼被覆剤の巻き込みに起因する介在物欠陥の発生を防止して、鋼塊歩留ならびに鋼塊品質を向上させる。

解決手段

本発明の下注ぎ造塊方法は、鋳型2内に注入された溶鋼の表面に溶鋼被覆剤を2回以上に分けて又は連続的に投入しつつ鋼を下注ぎ造塊するに際して、鋳型2内における溶鋼の液深をh[mm]、鋳型2の直径をd[mm]、鋳型2内への溶鋼の吐出速度をV[m/s]とした場合に、「溶鋼の巻き込みを防止する」という観点から液深h[mm]と直径d[mm]との関数として示される下限値と、「スラグとして消費されるのに十分な量を確保する」という観点から液深h[mm]と吐出速度V[m/s]との関数として示される上限値との間に、鋳型2内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が入るように溶鋼被覆剤を投入するものである。

概要

背景

一般に鋳型内で溶鋼凝固させ鋳片を製造する造塊法には、鋳型内への溶鋼の注入方式によって上注ぎ法と下注ぎ法とが知られている。これらの造塊法のうち、下注ぎ法は、良好な鋳塊肌が得られるという利点を有しており、品質重視される高級鋼の製造などに適用される。
この下注ぎ造塊方法では、下注ぎされた鋳型内の溶鋼の温度を保つなどの目的のため、溶鋼の浴面に対して「溶鋼被覆剤」とよばれる保温材を添加することが行われている。この溶鋼被覆剤は、溶湯の表面を被覆し、溶湯の表面からの抜熱を可能な限り小さくして鋳塊の冷却速度鋳込み速度)を制御する機能を有している。

ところで、このような「溶鋼被覆剤」は、カルシウムなどの酸化物を主成分とし、溶鋼の表面に浮遊状態となっているため、通常であれば鋼塊に巻き込まれることはない。しかし、鋳型内での浴面が乱れるなどして浮遊した溶鋼被覆剤が溶鋼中に巻き込まれると、介在物欠陥となって製品の品質を低下させたり、製品の歩留まりを低下させたりする場合がある。特に、船舶クランク軸などに用いられる鋳鍛鋼を鋳込む場合は、上述した非金属介在物は完全に取り除かれているのが好ましい。そのため、従来の造塊方法では、上記した非金属介在物の混入を防止するために、特許文献1や特許文献2に示すようなさまざまな手段が講じられている。

例えば、特許文献1には、鋳型内に溶鋼を注入する下注造塊方法において、湯道煉瓦に溶鋼を通すことにより、溶鋼中の非金属介在物を湯道孔孔壁吸着させて除去し、鋼塊中への非金属介在物の混入を防止する方法が開示されている。この造塊方法は、取鍋に生じている非金属介在物が湯道を通って鋳型に混入することを防止するものであり、取鍋由来の非金属介在物の発生を防止できるようになっている。

また、特許文献2には、下注ぎ造塊時に、製造効率下げることなく溶鋼表面湯の発生を防止しつつも溶鋼被覆剤の使用量を低減する方法が開示されている。この造塊方法でも、溶鋼被覆剤の使用量が低減されるため、結果的に非金属介在物の発生が防止可能となる。

概要

溶鋼被覆剤の巻き込みに起因する介在物欠陥の発生を防止して、鋼塊歩留ならびに鋼塊品質を向上させる。本発明の下注ぎ造塊方法は、鋳型2内に注入された溶鋼の表面に溶鋼被覆剤を2回以上に分けて又は連続的に投入しつつ鋼を下注ぎ造塊するに際して、鋳型2内における溶鋼の液深をh[mm]、鋳型2の直径をd[mm]、鋳型2内への溶鋼の吐出速度をV[m/s]とした場合に、「溶鋼の巻き込みを防止する」という観点から液深h[mm]と直径d[mm]との関数として示される下限値と、「スラグとして消費されるのに十分な量を確保する」という観点から液深h[mm]と吐出速度V[m/s]との関数として示される上限値との間に、鋳型2内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が入るように溶鋼被覆剤を投入するものである。

目的

本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、溶鋼への溶鋼被覆剤の巻き込みに起因する介在物欠陥の発生を防止して、鋼塊品質を向上させることができる下注ぎ造塊方法を提供する

効果

実績

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請求項1

鋳型内に注入された溶鋼の表面に溶鋼被覆剤を2回以上に分けて又は連続的に投入しつつ鋼を下注ぎ造塊するに際しては、前記鋳型内における溶鋼の液深をh[mm]、前記鋳型の直径をd[mm]、前記鋳型内への溶鋼の吐出速度をV[m/s]とした場合に、前記鋳型内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が式(1)を満たすように前記溶鋼被覆剤を投入することを特徴とする下注ぎ造塊方法

技術分野

0001

本発明は、溶鋼鋳型に下注ぎ注入して鋼塊を製造する下注ぎ造塊方法に関するものである。

背景技術

0002

一般に鋳型内で溶鋼を凝固させ鋳片を製造する造塊法には、鋳型内への溶鋼の注入方式によって上注ぎ法と下注ぎ法とが知られている。これらの造塊法のうち、下注ぎ法は、良好な鋳塊肌が得られるという利点を有しており、品質重視される高級鋼の製造などに適用される。
この下注ぎ造塊方法では、下注ぎされた鋳型内の溶鋼の温度を保つなどの目的のため、溶鋼の浴面に対して「溶鋼被覆剤」とよばれる保温材を添加することが行われている。この溶鋼被覆剤は、溶湯の表面を被覆し、溶湯の表面からの抜熱を可能な限り小さくして鋳塊の冷却速度鋳込み速度)を制御する機能を有している。

0003

ところで、このような「溶鋼被覆剤」は、カルシウムなどの酸化物を主成分とし、溶鋼の表面に浮遊状態となっているため、通常であれば鋼塊に巻き込まれることはない。しかし、鋳型内での浴面が乱れるなどして浮遊した溶鋼被覆剤が溶鋼中に巻き込まれると、介在物欠陥となって製品の品質を低下させたり、製品の歩留まりを低下させたりする場合がある。特に、船舶クランク軸などに用いられる鋳鍛鋼を鋳込む場合は、上述した非金属介在物は完全に取り除かれているのが好ましい。そのため、従来の造塊方法では、上記した非金属介在物の混入を防止するために、特許文献1や特許文献2に示すようなさまざまな手段が講じられている。

0004

例えば、特許文献1には、鋳型内に溶鋼を注入する下注造塊方法において、湯道煉瓦に溶鋼を通すことにより、溶鋼中の非金属介在物を湯道孔孔壁吸着させて除去し、鋼塊中への非金属介在物の混入を防止する方法が開示されている。この造塊方法は、取鍋に生じている非金属介在物が湯道を通って鋳型に混入することを防止するものであり、取鍋由来の非金属介在物の発生を防止できるようになっている。

0005

また、特許文献2には、下注ぎ造塊時に、製造効率下げることなく溶鋼表面湯の発生を防止しつつも溶鋼被覆剤の使用量を低減する方法が開示されている。この造塊方法でも、溶鋼被覆剤の使用量が低減されるため、結果的に非金属介在物の発生が防止可能となる。

先行技術

0006

特開昭58−68454号公報
特開平9−239494号公報

発明が解決しようとする課題

0007

ところで、鋳型中の溶鋼が激しく乱れたりする場合、鋳造中の溶鋼の表面に浮遊する溶鋼被覆剤が溶湯の下降流に巻き込まれて溶湯内に入り込み凝固殻捕捉されてしまうと、溶鋼中に混入した非金属介在物が原因となって介在物欠陥が発生してしまう可能性がある。
このような非金属介在物の混入に対し、上述した特許文献1及び特許文献2の造塊方法は、取鍋の非金属介在物の混入に起因する介在物欠陥の発生を防止したり、過剰な溶鋼被覆剤の撒布に起因する介在物欠陥の発生を防止したりする技術を開示するものであり、溶鋼への溶鋼被覆剤の巻き込みを原因とする非金属介在物の発生を抑制する技術を開示するものとはなっていない。

0008

本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、溶鋼への溶鋼被覆剤の巻き込みに起因する介在物欠陥の発生を防止して、鋼塊品質を向上させることができる下注ぎ造塊方法を提供することを目的としている。

課題を解決するための手段

0009

上記課題を解決するため、本発明の下注ぎ造塊方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の下注ぎ造塊方法は、鋳型内に注入された溶鋼の表面に溶鋼被覆剤を2回以上に分けて又は連続的に投入しつつ鋼を下注ぎ造塊するに際しては、前記鋳型内における溶鋼の液深をh[mm]、前記鋳型の直径をd[mm]、前記鋳型内への溶鋼の吐出速度をV[m/s]とした場合に、前記鋳型内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が式(1)を満たすように前記溶鋼被覆剤を投入することを特徴とする。

0010

発明の効果

0011

本発明の下注ぎ造塊方法によれば、溶鋼への溶鋼被覆剤の巻き込みに起因する介在物欠陥の発生を防止して、鋼塊品質の向上させることができる。

図面の簡単な説明

0012

本実施形態の下注ぎ造塊方法を行う下注ぎ造塊装置を示した模式図である。
下注ぎ造塊装置の鋳型を示した模式図である。
溶鋼の吐出流速が0.71m/sにおける介在物欠陥の発生状況を示した図である。
溶鋼の吐出流速が0.40m/sにおける介在物欠陥の発生状況を示した図である。
溶鋼の吐出流速が1.02 m/sにおける介在物欠陥の発生状況を示した図である。
溶鋼の吐出流速が1.33 m/sにおける介在物欠陥の発生状況を示した図である。

実施例

0013

以下、図を参照しながら、本実施形態による下注ぎ造塊方法について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の下注ぎ造塊方法が適用される下注ぎ造塊装置1について説明する。なお、図1は、下注ぎ造塊を行う下注ぎ造塊装置1の概略構成を示したものであり、図2は、下注ぎ造塊装置1の鋳型2を示した図である。
図1に示すように、下注ぎ造塊装置1は、取鍋3内の溶鋼が注入される注入管4と、この注入管4を介して取鍋3の溶鋼が装入される鋳型2と、鋳型2が上面に載置される定盤5とを備えている。

0014

具体的には、注入管4は、定盤5の中央側から上方に向かって立つように設けられた塔状の部材であり、内部には溶鋼が通る湯道6が上下方向に沿って形成されている。この注入管4の湯道6は、耐火煉瓦内張りして円形の断面となるように形成されており、この湯道6を通じて取鍋3の溶鋼を取り込むことができるようになっている。
定盤5は、注入管4及び鋳型2の下側に形成された平板状の部材であり、注入管4及び鋳型2を下方から支持可能となっている。定盤5の内部には、溶鋼が通る湯道6が、注入管4の下側と、鋳型2の下側との2点間を結ぶように形成されていて、注入管4に注入された溶鋼を鋳型2内に送ることができるようになっている。鋳型2は、溶鋼を鋳込むことができるように鋳鉄で形成された容器である。鋳型2の上側は上方に向かって開口しており、また鋳型2の下側には定盤5の湯道6から溶鋼を注入可能な下注入口7(溶鋼吐出口)が形成されている。

0015

上述したような下注ぎ造塊装置1にて下注ぎ造塊を行うにあたっては、まず、取鍋3を注入管4の上方にクレーンで配置し、取鍋3の底部に形成されたチェンジノズル9を注入管4の上端部に開口する湯道6に接続する。その後、取鍋の底部のスライドバルブ10を開状態とすることで、チェンジノズル9を介して、取鍋3内の溶鋼を注入管4の湯道6に
導き入れ、定盤5の湯道6を経由して鋳型2に送る。このようにして鋳型2に達した溶鋼は、鋳型2の下注入口7から鋳型2内に入り込み、鋳型2内で冷却されてインゴット等の鋳塊となる。この下注ぎ造塊方法においては、例えば船舶用部品などに用いられる大型鍛造品等の素材となる鋳塊を製造することができる。

0016

ところで、上述した下注ぎ造塊方法において、鋳型2に装入された溶鋼の浴面が大気に接触すると、溶鋼は大気との接触面から酸化して清浄度が低下してしまう。そこで本実施形態では、溶鋼の酸化を防止するために、溶鋼の鋳型2内への注入が始まった段階で、溶鋼の浴面を被覆する溶鋼被覆剤が添加される。この溶鋼被覆剤は、溶融スラグ成分となる酸化物(例えばSiO2-CaO-Al2O3)や保温性確保のための骨材である炭素などを含むものであり、溶鋼浴面上を浮遊しつつ溶鋼の表面を被覆することが可能となっている。

0017

溶鋼被覆剤は、溶鋼が凝固する際に浮遊したままであるため、通常であれば浮遊した溶鋼被覆剤が鋳塊に入り込むことはない。しかし、鋳型2内で溶鋼が激しく動くと、浮遊した溶鋼被覆剤が溶鋼の内部に入り込み、そのまま凝固が行われると、凝固殻に捕捉されて溶鋼中に混入した非金属介在物が介在物欠陥となってしまう可能性がある。
そこで、本実施形態の下注ぎ造塊方法では、このような溶鋼中への溶鋼被覆剤の巻き込みを抑制することで、介在物欠陥の発生を防止するようにしている。

0018

具体的には、本実施形態の下注ぎ造塊方法では、鋳型2内に注入された溶鋼の表面に溶鋼被覆剤を1回で投入するのではなく、2回以上に分けて投入するか、連続的に投入するようにしている。そして、個々の溶鋼被覆剤の投入に際しては、鋳型2内における溶鋼の液深をh[mm]、鋳型2の直径をd[mm]、鋳型2内への溶鋼の吐出速度をV[m/s]とした場合に、鋳型2内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が式(1)を満たすように溶鋼被覆剤を投入するようにしている。

0019

0020

なお、式中の吐出速度Vは、鋳込み時に下注入口7から注入される溶鋼の吐出速度である。この吐出速度Vの単位は[m/s]であり、単位時間あたりの鋳込み溶鋼流量[m3/s]を、ノズル断面積[m2]で除して算出される。
また、式中の液深h[mm]は、鋳込み時における鋳型2内の溶鋼深さであり、図2に示すように鋳型2底部の凹部(シュー部分)上端から湯面までの距離を基にして求められる。さらに、式中の直径d[mm]は最底部の鋳塊径であり、厚さs[mm]は溶鋼被覆剤の厚さである。

0021

次に、上述した式が導かれる理由について説明する。
上述した溶鋼被覆剤の厚さs[mm]の上限値と下限値、言い換えれば溶鋼被覆剤の最大投入量及び最小投入量は、「溶鋼の巻き込みを防止する」と「スラグとして消費されるのに十分な量を確保する」という2つの観点からそれぞれ決定される。
まず、前者の「溶鋼の巻き込みを防止する」という観点から、溶鋼被覆剤の厚さの上限値が以下のように決定される。

0022

つまり、図2に示すように、溶鋼被覆剤が溶鋼へ巻き込まれる現象は、鋳型2内の溶鋼に強い下降流の垂直成分が発生した場合に、発生した下降流の垂直成分に溶鋼被覆剤が巻き込まれることで生じる。例えば、下注入口7から鋳型2内に注入された溶鋼は鋳型2内を下方から上方に向かって移動し、やがて浴面付近に到達する。このとき、溶鋼の吐出圧が大きい場合には、図2にAで示すように溶鋼被覆剤の浴面の中央付近が上方に向かって盛り上がるように沸き上がる。この沸き上がっている部分はその上方からの外観から一般に「目玉」と呼ばれる。「目玉」の中央では、上方に向かって勢いをつけて吹き上がった溶鋼が、「目玉」の上端付近に達すると勢いを失って「目玉」の外側に向かって流れ落ち
ちょうど噴水のような溶鋼の流れが生じている。また、「目玉」の周囲では、外側に向かって流れ落ちる溶鋼に押されて溶鋼被覆剤が浴面の外周縁部に追いやられ、溶鋼被覆剤で覆われていない裸湯ゾーンが盛り上がるように形成される。

0023

つまり、「目玉」の近傍では、外側に向かって流れ落ちる溶鋼により、鋳型2内を上方から下方に向かって下降する溶鋼の下降流が形成される。この下降流のすぐ近くには外周縁部に追いやられた溶鋼被覆剤が存在しているため、下降流の垂直成分に溶鋼被覆剤が巻き込まれる可能性がある。ただ、下降流の垂直成分の流速が小さい場合には、溶鋼被覆剤の浮上速度浮上力)の方が勝っているため、巻き込まれが発生しても溶鋼被覆剤がすぐに浮上し、介在物欠陥になることはない。しかし、下降流の垂直成分が大きくなって、溶鋼被覆剤の浮上速度を超えた場合に、溶鋼被覆剤が浮上できなくなって巻き込まれた溶鋼被覆剤が凝固殻に捕捉された場合、介在物欠陥になってしまう。それゆえ、溶鋼被覆剤の巻込みを低減するためには、「目玉」で生じる下降流の垂直成分を弱くして溶鋼被覆剤が鋳塊内部にまで入り込まないようにする必要がある。

0024

このような下降流の垂直成分の強弱には、「溶鋼被覆材の厚み」が大きく影響する。
具体的には、「溶鋼被覆材の厚み」を変化させると、浴面に形成される「目玉」の形状が変化し、下降流の垂直成分の強弱が大きく変化する。例えば、溶鋼被覆剤が薄い場合、「目玉」の周囲の溶鋼被覆剤が外周側に向かって押しやられ、反転流が水平方向に広がるので、「目玉」の形状は低く広がったものとなる。そして、このときできる反転流は水平方向に沿ったものとなるので、垂直方向に沿って下降する下降流としてはそれほど強いものとはならず、溶鋼被覆剤の巻き込みも起きにくくなる。ところが、溶鋼被覆剤が厚い場合、溶鋼被覆剤が反転流に乗って外周側に向かって動きにくくなるので、「目玉」の形状は水平方向に狭幅で高く盛り上がったものとなり、垂直方向に沿って強い反転流が生じ、垂直方向に沿った下降流が優勢となって溶鋼被覆剤の巻き込みが起きやすくなる。

0025

また、「溶鋼の吐出速度」も、垂直方向に沿った下降流の強さに影響する。例えば、下注入口7から鋳型2内に注入された溶鋼の吐出圧、言い換えれば鋳型2内への溶鋼の吐出速度が大きい場合には、溶鋼被覆剤が厚い場合と同様に「目玉」は高く盛り上がったものとなり、反転流は垂直方向に沿って強くなり、垂直方向に沿った下降流が優勢となって巻き込みが起きやすくなる。また、吐出圧が大きいと、鋳型2内の溶鋼が乱流になり易く、溶鋼被覆剤が溶鋼中に巻き込まれ、凝固殻に捕捉されて欠陥不良となりうる可能性が高くなる。そのため、鋳型2内への溶鋼の吐出速度が大きい場合にも、下降流が優勢となって巻き込み現象が顕著になる。また、逆に鋳型2内への溶鋼の吐出速度が小さい場合には、下降流が弱くなって巻き込み現象が起こりにくくなる。

0026

以上のことから、上述した巻き込み現象の発生を抑制するためには、溶鋼被覆剤の厚さを所定の上限値を超えないものとするのがよいと判断され、この上限値は下注入口7からの溶鋼の吐出速度V[m/s]の関数として式(1)のように規定できることがわかる。
一方、溶鋼被覆剤の巻込みを低減するためには、鋳型2での溶鋼の深さについても考えておく必要がある。というのも、上述した下降流の大きさは、鋳型2での溶鋼の深さにも影響を受けるからである。例えば、鋳型2内での溶鋼の深さが深い場合、下注入口7の近傍では吐出する溶鋼に勢いがあっても、溶鋼の浴面に達して反転する際には溶鋼に勢いが無くなり、結果として溶鋼の反転流は緩やかとなって、溶鋼被覆剤の巻き込まれは起きにくくなる。逆に、鋳型2内での溶鋼の深さが浅い場合は、溶鋼の浴面に達しても溶鋼の勢いは十分に大きいので、反転流が大きくなって溶鋼被覆剤の巻込みが起きやすくなる。そのため、溶鋼被覆剤の厚さの上限値は、鋳型2内での溶鋼の深さh[mm]の関数としても式(1)のように規定される。

0027

以上のことから、鋳型2内における溶鋼被覆剤の厚さs[mm]の上限値は、吐出速度V[m/s]及び鋳型2内での溶鋼の深さh[mm]を用いて上述した式(1)のように示されるのである。
次に、後者の「スラグとして消費されるのに十分な量を確保する」という観点から、溶鋼被覆剤の厚さの下限値が以下のように決定される。

0028

つまり、溶鋼被覆剤は、溶鋼の表面を覆うことで、溶鋼の温度低下や溶鋼の再酸化を防
止したり、溶鋼の大気中からの水素ピックアップを防止したりするという機能を有している。しかし、この溶鋼被覆剤には、上記した機能に加え、鋳型2と鋼塊との間の焼付きを防止するという機能も有している。つまり、溶鋼の熱で溶融した溶鋼被覆剤が、スラグ状態で鋳型2と鋼塊との間に侵入し、緩衝材として機能することで鋼塊の鋳型2への焼付きを防止する。

0029

つまり、上述した浴面を覆う溶鋼被覆剤は、鋳型2に対する鋳塊の焼き付きを防止する部材ともなっており、浴面を覆っていた溶鋼被覆剤の一部が鋳塊の側面に回り込んで、鋳型2の表面と溶鋼との界面に供給されることで鋳型2への溶鋼の焼き付きを防止する構成となっている。そのため、溶鋼被覆剤が鋳型2と鋼塊の間に侵入して消費されていくと、浴面を覆う溶鋼被覆剤量が少なくなり、溶鋼の温度低下、溶鋼の再酸化、溶鋼の水素ピックアップなどの問題が発生する。

0030

そこで、本発明では、鋳型2内の溶鋼の浴面を覆う溶鋼被覆剤が、すべて鋳塊の側面に覆うに十分な厚さとなっているかどうかという観点から、鋳塊の側面の表面積を計算し、計算した表面積を覆うことができる量から溶鋼被覆剤の厚さs[mm]の下限値を上述した式(1)のように定めている。
具体的には、実際に「溶鋼の深さh[mm]」と「溶鋼被覆剤の厚さs[mm]」とをそれぞれ変化させて下注ぎ造塊した際に、非金属介在物が発生するかどうかを、溶鋼の吐出速度Vが0.71[m/s]、0.40[m/s]、1.02[m/s]、1.33[m/s]のそれぞれについて調査した。そして、得られた調査の結果(図3図6に示す結果)から、非金属介在物が発生する領域と発生しない領域とを分ける閾値を決定し、決定された閾値を関数式として示すことで式(1)が導かれる。

0031

なお、上述した下注ぎ造塊に用いた溶鋼は、一次精錬二次精錬されたものである。この一次精錬は、電気炉交流式アーク炉)を用いてスクラップを溶解し、溶解された溶鋼を取鍋へ傾注しつつ出鋼している。また、二次精錬は、LF(Ladle Furnace)法を用いて、成分調整介在物除去を行った後、取鍋を蓋で覆い、取鍋内を真空状態とした上でArガスプラグ(底吹き用プラグ)からArガス吹込み、真空脱ガス処理を行っている。さらに、下注ぎ造塊は、取鍋から湯道6を通じて、鋳型2内に溶鋼を鋳込み、溶鋼が鋳型2の凹部(シュー部分)の上部に達した際、鋳型2内に吊るしてある溶鋼被覆剤が入った袋と接触し、袋が燃えることで、溶鋼被覆剤を溶鋼表面に散布して行っている。

0032

また、上述した下注ぎ造塊においては、鋳込み中、溶鋼被覆剤は鋳型2又は鋼塊間に侵入してスラグスキンとなり消費されていく。しかし、溶鋼表面に裸湯が見えた場合は、溶鋼被覆剤を適宜追装している。
このようにして所定位置まで鋳込みが終了した後、鋳塊が完全凝固するまで静置する。そして、完全凝固後、脱型し、鍛造工程に移行する。このようにして鍛造工程に送られた鋼塊に対して、介在物の発生を検査した。

0033

具体的には、この介在物の検査は、鋳塊を鍛造成形し、製品形状とした後、超音波探傷試験により、製品形状の介在物検査を実施したものである。「○」が介在物なかった結果を示し、1つでも介在物が発生した場合は「×」の評価とした。なお、この介在物の検査は、型内材1mmの粒が浮上するときの浮上速度を理論的に計算して、それと下降流の垂直成分との比較を行っても、求めることができる。

0034

介在物の検査結果を表1及び図3図6に示す。なお、表1における「巻込み発生有無」は、上述した介在物検査の判定結果を示している。また、表1における「溶鋼被覆剤量
十分/不十分」については、溶鋼の表面に溶鋼被覆剤が少しでもある場合(溶鋼被覆剤の厚さが0mmを超える場合)に溶鋼被覆剤量が十分であると考えて「○」の評価とし、溶鋼の表面に溶鋼被覆剤が全くない場合(溶鋼被覆剤の厚さが0mmの場合)に溶鋼被覆剤量が不十分であると考えて「×」の評価とした。さらに、図3図6における「溶鋼液深」は、溶鋼の深さh[mm]を示すものである。

0035

0036

図3に示す吐出速度Vが0.71[m/s]の結果(表1に示す実験No.1〜実験No.15)では、上述した式(1)の関係を満足する網掛け部分に溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が含まれるように鋳造を行ったもの(実験No.2〜実験No.5、実験No.7〜実験No.13)についてはいずれも○の結果となっている。ところが、式(1)の関係を満足しない場合(実験No.1、実験
No.6、実験No.14、実験No.15の場合)、つまり網掛け部分以外の部分に溶鋼被覆剤の厚さs[mm]が入るような鋳造を行うと、×の評価となり、介在物欠陥が発生している。このことから、吐出速度Vを0.71[m/s]として式(1)の関係を満足する場合に、介在物欠陥の発生を抑制できていることが分かる。

0037

一方、図4に示す吐出速度Vが0.40[m/s]の結果(表1に示す実験No.46〜実験No.56)、図5に示す吐出速度Vが1.02[m/s]の結果(表1に示す実験No.16〜実験No.30)、図6に示す吐出速度Vが1.33[m/s]の結果(表1に示す実験No.31〜実験No.45)では、吐出速度Vの変化によりB(V)が変化しており、吐出速度Vが大きくなるほど上限値を示す線の傾きが小さくなっていることが分かる。このような上限値の変化に対応して、介在物欠陥の発生状況も変化しており、式(1)の関係を示す網掛け部分に○の評価が集まり、吐出速度Vが変化しても介在物欠陥の発生状況は式(1)に対応していることがわかる。このことから、吐出速度Vが0.40[m/s]〜1.33[m/s]の範囲にある場合には、鋳型2への鋳塊の焼き付きを防止しつつ、介在物欠陥の発生を確実に防止することが可能となると判断される。

0038

なお、図3の「溶鋼液深」が浅い領域を見れば分かるように、鋳込開始直後は溶鋼被覆剤の巻き込みを抑制できる網掛け部分が非常に狭いため、溶鋼への溶鋼被覆剤の巻き込みを防止することが困難となる。
理想的には網掛け部分に溶鋼被覆剤の厚みが位置するように溶鋼被覆剤を投入するのが望ましいが、溶鋼再酸化、水素ピックアップ、溶鋼温度低下の観点から、このような溶鋼被覆剤の投入は困難な場合がある。それゆえ、巻き込み抑制が困難な鋳込初期、例えば「溶鋼液深」が200mm以下の場合には、作業者の判断に委ねて溶鋼被覆剤を投入し、「溶鋼液深」が200mm超えてから、本発明範囲の操業条件操業を行うのが好ましい。

0039

また、溶鋼被覆剤の投入は、2回以上に分けて投入するか、連続的に投入するようにするのが好ましい。例えば、図3上に「B」で示される溶鋼液深h=800[mm]、溶鋼被覆剤の厚さs=60[mm]の造塊条件で造塊する場合を考える。このような造塊を行う際に、図中に「点線」で示すように鋳型2内の溶鋼の深さが浅いのに溶鋼被覆剤を1回で全量投入すると、溶鋼被覆剤の厚さsが上限を上回ることになり、本発明範囲の操業条件で操業を行うことができなくなる。

0040

といって、鋳型2内の溶鋼の深さが深くなってから溶鋼被覆剤を1回で全量投入することは、溶鋼被覆剤の厚さsが下限を下回った条件で大部分を造塊することに他ならないので、いずれにせよ本発明範囲の操業条件で操業を行うことは困難になる。
そのため、図中に「実線」で示すように、トータルの厚さでs=60[mm]となる溶鋼被覆剤のうち、全量の2/3となるs=40[mm]の溶鋼被覆剤を、例えば溶鋼液深がh=400[mm]となったときに加え、残りの1/3となるs=20[mm]の溶鋼被覆剤を、溶鋼液深がh=800[mm]となったときに加えるようにする。このように溶鋼被覆剤を複数回に分けて添加すれば、式(1)の関係を満足しつつ造塊を行うことが可能となる。

0041

なお、溶鋼被覆剤の投入回数を多くすればするほど、式(1)の関係を満足する造塊条件で操業することが可能となる。そのため、式(1)の関係を満足するように溶鋼被覆剤を小量ずつ途切れなく連続的に投入するのがより好ましい。しかし、溶鋼被覆剤を投入回数を多くし過ぎると装置構成が複雑となったり製造コストが高騰したりする可能性もあるので、そのような場合には溶鋼被覆剤を2回か3回に分けて投入することもできる。

0042

また、図3中に「1点鎖線(C)」として示すように、先に投入した溶鋼被覆剤が消費され、表面被覆剤の厚さsが薄くなっている場合には、式(1)の関係を満足するような溶鋼被覆剤に、消費された分だけ溶鋼被覆剤を多めに加えるのが好ましい。
また、式中に用いられる溶鋼の吐出速度は、製造効率を考慮した鋳込速度に基づいて決定されるものでもあるので、巻き込み現象の発生を抑制したいからといって鋳込速度を大幅に低減することは、製造効率の点から困難になる場合がある。それゆえ、製造効率の点から溶鋼の吐出速度を式に示す下限値まで下げられない場合もある。

0043

さらに、実際の下降流の大きさは、下注入口7の大きさに応じても変化する。つまり、式(1)における溶鋼の吐出速度は、鋳込流量と湯道6の径から算出される値である。そ
のため、鋳込流量が同じでも、湯道6径が変動すれば、溶鋼の吐出速度も変更してしまう。
係る点を鑑みた上で、本願発明の式(1)は、鋼塊の重量範囲が2.0〜200tonの範囲にある場合や、湯道6径の範囲がφ30〜120mmの範囲にある場合に成立するものとなっている。なお、式(1)の関係は、溶鋼被覆剤の種類には依らないものとなっている。

0044

さらに、上述した式(1)に用いる鋳型2の直径をd[mm]には、鋳型2の最も下側の底部の径を用いている。これは、本来の鋳型2には脱型の容易さを考慮し、3〜4°のテーパーが付いているが、本発明が着目している最底部から1000mm程度の位置では鋳塊径が大きく変動しないことが多い。そのため、式(1)では、鋳型2の最底部の径を用いている。

0045

なお、実機における溶鋼被覆剤厚さは、鋳込み状況によりばらつきが発生するが、本発明では、投入する溶鋼被覆剤量、溶鋼被覆剤密度、鋳型2径から決定される平均の厚さとしている。
以上、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。

0046

1 下注ぎ造塊装置
2鋳型
3取鍋
4注入管
5定盤
6湯道
7 下注入口(溶鋼吐出口)
9チェンジノズル
10 スライドバルブ

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