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技術 高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置、方法及びコンピュータプログラム。

出願人 TOYOTIRE株式会社
発明者 高橋宏幸日野理
出願日 2014年4月7日 (5年3ヶ月経過) 出願番号 2014-078650
公開日 2015年11月12日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2015-201009
状態 特許登録済
技術分野 複合演算 機械的応力負荷による材料の強さの調査
主要キーワード 分応力 高分子モデル 固有値方程式 フィティング 緩和時間τ 固有値解析 初期時刻 時間発展
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年11月12日)のものです。
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図面 (9)

課題

緩和弾性率級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出可能であり、且つ、フーリエ変換による適切な複素弾性率を算出可能に、高分子モデルの緩和弾性率を解析する。

解決手段

高分子モデルをN個のグループに分割するグループ設定部10と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率Gji(t)を算出する緩和弾性率算出部11と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する行列生成部12と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する固有値問題解決部13と、を有する。

概要

背景

高分子モデルなどの粘弾性材料の複素弾性率貯蔵弾性率損失弾性率損失正接)は、緩和弾性率を表す式をフーリエ変換することで得られることが知られている。緩和弾性率は、グリーン・久保公式によりシステム全体の応力に基づいて算出される。緩和弾性率を表現するための級数近似として、例えば特許文献1のように、プロニー級数近似を行うことが知られている。特許文献1では、各級数の係数及び緩和時間の決定方法について開示しているようである。

さらに、進んだ解析方法として、本発明の発明者らは、非特許文献1において、システムをいくつかのグループに分割しておき、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する各グループの寄与を算出する可能に、固有値問題解くことを述べている。

概要

緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出可能であり、且つ、フーリエ変換による適切な複素弾性率を算出可能に、高分子モデルの緩和弾性率を解析する。高分子モデルをN個のグループに分割するグループ設定部10と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力の時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率Gji(t)を算出する緩和弾性率算出部11と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する行列生成部12と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する固有値問題解決部13と、を有する。

目的

本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出可能であり、且つ、フーリエ変換による適切な複素弾性率を算出可能に、高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置、方法及びコンピュータプログラムを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

高分子モデルをN個のグループに分割するグループ設定部と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における前記高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力時間発展データを算出し、前記グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出する緩和弾性率算出部と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する行列生成部と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する固有値問題解決部と、を備え、前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いることを特徴とする高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置。ただし、τpは緩和時間を表す。

請求項2

前記固有値方程式は、次の式(6)で表される請求項1に記載の装置。A(t0+t)gp=exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}A(t0)gp…(6)

請求項3

前記KWW関数のパラメータβは、次の式(9)を満足する値に設定される請求項1又は2に記載の装置。G(t)=G(t0)exp{−[(t+t0)β+t0β]/2t0}…(9)

請求項4

コンピュータが実行する方法であって、高分子モデルをN個のグループに分割するステップと、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における前記高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力の時間発展データを算出し、前記グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出するステップと、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成するステップと、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似するステップと、を含み、前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いることを特徴とする高分子モデルの緩和弾性率を解析する方法。ただし、τpは緩和時間を表す。

請求項5

前記固有値方程式は、次の式(6)で表される請求項4に記載の方法。A(t0+t)gp=exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}A(t0)gp…(6)

請求項6

前記KWW関数のパラメータβは、次の式(9)を満足する値に設定される請求項4又は5に記載の方法。G(t)=G(t0)exp{−[(t+t0)β+t0β]/2t0}…(9)

請求項7

請求項4〜6のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム

技術分野

0001

本発明は、粘弾性複素弾性率)を算出するために有用な、高分子モデル緩和弾性率解析する装置、方法及びコンピュータプログラムに関する。

背景技術

0002

高分子モデルなどの粘弾性材料の複素弾性率(貯蔵弾性率損失弾性率損失正接)は、緩和弾性率を表す式をフーリエ変換することで得られることが知られている。緩和弾性率は、グリーン・久保公式によりシステム全体の応力に基づいて算出される。緩和弾性率を表現するための級数近似として、例えば特許文献1のように、プロニー級数近似を行うことが知られている。特許文献1では、各級数の係数及び緩和時間の決定方法について開示しているようである。

0003

さらに、進んだ解析方法として、本発明の発明者らは、非特許文献1において、システムをいくつかのグループに分割しておき、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する各グループの寄与を算出する可能に、固有値問題解くことを述べている。

0004

特開2003−345780号公報

先行技術

0005

分子動力学による高分子粘弾性の解析法に関する研究,日野 理、高橋 宏幸,日本ゴム協会2013年年次大会講演要旨集,87頁

発明が解決しようとする課題

0006

高分子モデルの緩和弾性率を解析するにあたり、上記特許文献1の方法では、システム全体の緩和弾性率を表現する各級数の緩和時間τpと係数を最小二乗法などによりフィティングしているため、フーリエ変換により複素弾性率を適切に得ることができる。しかし、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出することはできない。

0007

一方、非特許文献1の方法では、固有値問題を解くことで得られた解を用いれば、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出する可能である。しかし、級数近似した結果をフーリエ変換して粘弾性(複素弾性率)を算出し、算出結果をプロットした場合に、図6Aに示すように、本来では有るはずのない凹凸部がプロット結果に表れてしまう。このような凹凸部は、固有値問題に対応可能に近似する課程において人為的に生じたと考えられる。事実と異なり、このような間違ったデータに基づき設計を進めると不具合が生じるおそれがある。

0008

本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、緩和弾性率を級数近似したときの各係数に対する、システムを構成する各グループの寄与を算出可能であり、且つ、フーリエ変換による適切な複素弾性率を算出可能に、高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置、方法及びコンピュータプログラムを提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。

0010

すなわち、本発明の高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置は、高分子モデルをN個のグループに分割するグループ設定部と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における前記高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力の時間発展データを算出し、前記グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出する緩和弾性率算出部と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する行列生成部と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する固有値問題解決部と、を備え、前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いることを特徴とする。
ただし、τpは緩和時間を表す。

0011

本発明の高分子モデルの緩和弾性率を解析する方法は、コンピュータが実行する方法であって、高分子モデルをN個のグループに分割するステップと、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における前記高分子モデルの分子動力学計算を行い、前記グループ単位での応力の時間発展データを算出し、前記グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出するステップと、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成するステップと、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似するステップと、を含み、前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いることを特徴とする。
ただし、τpは緩和時間を表す。

0012

このように、周波数空間において、従来の指数関数よりも広いKWW関数を用いるので、得られた近似式をフーリエ変換して複素弾性率を算出した場合に、従来の指数関数で生じていたデータの欠けが生じることなく、複素弾性率を適切に得ることが可能となる。したがって、複素弾性率を適切に得ることができる点と、級数近似したときの各成分がどういう緩和時間に寄与しているかを表現できる点とを両立できる。

0013

具体的な前記固有値方程式は、次の式(6)で表される。
A(t0+t)gp=exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}A(t0)gp …(6)

0014

KWW関数のパラメータβを適切な値に設定するためには、前記KWW関数のパラメータβは、次の式(9)を満足する値に設定されることが好ましい。
G(t)=G(t0)exp{−[(t+t0)β+t0β]/2t0} …(9)

0015

本発明は、上記方法を構成するステップをコンピュータに実行させるプログラムとして特定可能である。

図面の簡単な説明

0016

本発明の高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置を示すブロック図。
装置が実行する解析処理ルーチンを示すフローチャート
高分子モデルの一例を示す図。
図3Aに示すモデルを用いた分子動力学計算により得られた緩和弾性率を示す図。
応力緩和を表現する指数緩和に関する説明図。
装置が実行する固有値解析処理ルーチンを示すフローチャート。
従来法の級数近似をフーリエ変換して算出した複素弾性率を示す図。
本発明の級数近似をフーリエ変換して算出した複素弾性率を示す図。

実施例

0017

以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。

0018

[高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置]
本実施形態の装置は、粘弾性(複素弾性率)を算出するために有用な、高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置である。具体的には、装置は、分子動力学計算を行い、時間と共に変化する応力を算出し、当該応力に基づいて緩和弾性率を算出する。得られる緩和弾性率は離散的なデータであるため、プロニー級数近似及び固有値問題を解き、時間的に連続的なデータを得る。得られた結果をフーリエ変換すれば、粘弾性、すなわち複素弾性率(貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接)を得ることが可能となる。

0019

図1に示すように、装置1は、グループ設定部10と、緩和弾性率算出部11と、行列生成部12と、固有値問題解決部13と、β決定部14と、を有する。これら各部10〜14は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置において予め記憶されている図2に示す解析処理ルーチンをCPUが実行することによりソフトウェア及びハードウェア協働して実現される。

0020

図1に示すグループ設定部10は、メモリに記憶されている高分子モデルをN個のグループに分割する設定を行う(図3A参照)。図3Aの例は、500個の粒子で構成される複数の分子鎖を、N=10個のグループに分割した図である。なお、メモリには、キーボードマウス等の既知の操作部を介してユーザからの操作を受け付け、高分子モデルに関する情報の設定、緩和応力を計算するための分子動力学計算に用いる各種解析条件が設定されている。

0021

図1に示す緩和弾性率算出部11は、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、グループ単位での応力σi(t)の時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出する。

0022

緩和弾性率G(t)は、グリーン・久保公式に基づき次の式(1)で算出可能である。



Vは体積、Tは温度、σはシステム(系)全体の応力、S全時間は全解析時間における単位時間の数を表す。
ここで、システム全体の応力σ(t)は、次の式(2)のように、グループ毎の部分応力σi(t)として表せる。



上記2式は、次の式(3),(4)のように相関行列として表現できる。

0023

図3Bは、図3Aに示すモデルを用いて分子動力学計算により算出した緩和弾性率を示す。横軸が時間[τ]を示し、縦軸弾性率[ε/σ3]を示す。

0024

図1に示す行列生成部12は、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する。行列A(t)は、次の式(5)で表される。

0025

図1に示す固有値問題解決部13は、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する。上記固有値方程式は、次の式(6)〜(8)で表される。



ここで、λpは固有値、gpは固有ベクトル、τpは緩和時間である。

0026

exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}は、拡張された指数関数(Stretched exponential function)と呼ばれるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数である。KWW関数は、通常の指数関数に比べて減衰が遅い関数であり、フーリエ変換した周波数領域において広いスペクトルを持つ特徴を有する。

0027

KWW関数のパラメータβは1よりも小さい値であるが、初期時刻t0と終了時刻(t0+t)に応じた適切な値を採用するためには、次の式(9)を満足する値に設定されるのが好ましい。図1に示すβ決定部14は、次の式(9)を数値的に解き、同式(9)を満足するβを決定する。



パラメータβは小さいほど減衰が遅くなり、周波数領域でスペクトルが広くなる。本実施形態の例では、0.5〜0.7の値が好ましかった。なお、本実施形態では、β決定部14を設けてβを動的に決定しているが、パラメータβを予め決定しておき、メモリに設定しておいてもよい。

0028

具体的に、固有値問題解決部13は、式(6)に示す固有値問題を解くにあたり、長時間部分から順次緩和解析を行い、全領域の応力緩和を、個々の緩和解析結果の和で表現する(プロニー級数表示)。すなわち、図4に示すように、緩和時間(全体)は、緩和解析(1)〜(3)の総和で再現される。固有値問題の解法は、非特許文献1と同じであるので、詳細は述べないが、簡単に説明すれば、図5のフローに基づく。すなわち、ステップST11において、長時間部分(終端緩和付近)に初期時刻t0及び終了時刻(t0+t)を設定し、固有値問題解決部13が、ステップST12において式(6)の固有値問題を解き、最大N組の固有値λpと固有ベクトルgpを得る。次のステップST13において、式(10)でA(t)を近似した結果をA’(t)とする。



ここで、緩和弾性率は、次の式(13)で近似される。



なお、グループiのgpへの寄与は、式(13)の第i行の要素の和で定義できる。

0029

次のステップST14において、全時間を近似できたか否かを判定する。近似できていない場合には、ステップST15において、A(t)−A’(t)を新たなA(t)に更新し、ステップST11の処理に戻る。

0030

[高分子モデルの緩和弾性率を解析する方法]
上記装置1を用いて緩和弾性率を解析する方法について、図2を用いて説明する。
まず、ステップST1において、グループ設定部10が、高分子モデルをN個のグループに分割する。次のステップST2において、緩和弾性率算出部11が、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、グループ単位での応力の時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率を算出する。次のステップST3において、行列生成部12が、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する。次のステップST4において、固有値問題解決部13が、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する。

0031

本発明の効果を示すために、従来(非特許文献1)との比較を示す。従来では、次の式(14)を用いて固有値問題を解いていた。



従来の方法で得られた級数近似の結果をフーリエ変換すると、図6Aに示すように、損失正接(tanδ)において、本来では有るはずのない凹凸部(図中にて円で囲んで示す)がプロット結果に表れてしまう。これは、応力緩和を指数関数の足し算で表現するにあたり、関数の緩和時間軸における分布粗密があると周波数空間において強度がない部分ができやすく、その結果、スペクトルが無い部分ができてしまい、従来方法では凹凸部が生じてしまうと考えられる。従来のように一般的な指数関数を用いた緩和解析法では、上記凹凸部のような欠けが生じやすい、緩和弾性率のような実時間の値では問題がないが、フーリエ変換で得られる複素弾性率のような周波数空間では問題となる。

0032

一方、本発明のようにKWW関数を用いれば、図6Bに示すように、上記凹凸部は出現しない。すなわち、本発明は、特許文献1に記載の利点(複素弾性率を適切に得ることができる点)と、非特許文献1に記載の利点(級数近似したときの各成分がどういう緩和時間に寄与しているかを表現できる点)とを両立する解析方法であることが分かる。

0033

以上のように、本実施形態の高分子モデルの緩和弾性率を解析する装置は、高分子モデルをN個のグループに分割するグループ設定部10と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、グループ単位での応力の時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出する緩和弾性率算出部11と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成する行列生成部12と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似する固有値問題解決部13と、を有する。前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いる。

0034

本実施形態の高分子モデルの緩和弾性率を解析する方法は、コンピュータが実行する方法であって、高分子モデルをN個のグループに分割するステップ(ST1)と、予め設定された解析条件を用いて平衡状態における高分子モデルの分子動力学計算を行い、グループ単位での応力の時間発展データを算出し、グループ単位の緩和弾性率Gji(t)[tは時間、i,jはグループに付けた番号を表す]を算出するステップ(ST2)と、時刻tにおけるグループ毎の応力Gji(t)を要素とするN×N個の行列A(t)を生成するステップ(ST3)と、終了時刻(t0+t)における行列A(t0+t)を、初期時刻t0における行列A(t0)と指数関数と固有ベクトルgpを含むプロニー級数形式で表した固有値方程式を解き、行列A(t)を近似するステップ(ST4)と、を含む。前記指数関数として、exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}で表されるKWW(Kohlausch-Williams-Watts)関数を用いる。

0035

このように、周波数空間において、従来の指数関数よりも広いKWW関数を用いるので、得られた近似式をフーリエ変換して複素弾性率を算出した場合に、従来の指数関数で生じていたデータの欠けが生じることなく、複素弾性率を適切に得ることが可能となる。したがって、複素弾性率を適切に得ることができる点と、級数近似したときの各成分がどういう緩和時間に寄与しているかを表現できる点とを両立できる。

0036

本実施形態では、具体的に、前記固有値方程式は、次の式(6)で表される。
A(t0+t)gp=exp{−[(t0+t)β+t0β]/τp}A(t0)gp …(6)

0037

本実施形態では、前記KWW関数のパラメータβは、次の式(9)を満足する値に設定している。
G(t)=G(t0)exp{−[(t+t0)β+t0β]/2t0} …(9)
これによれば、KWW関数のパラメータβを適切な値に設定可能となる。

0038

本実施形態に係るコンピュータプログラムは、上記方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。言い換えると、上記方法を使用しているとも言える。

0039

以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。

0040

上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。

0041

10…グループ設定部
11…緩和弾性率算出部
12…行列生成部
13…固有値問題解決部
14…β決定部

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