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技術 Cu−Ti系銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品

出願人 DOWAメタルテック株式会社
発明者 今井雄一木村崇佐々木史明
出願日 2014年3月28日 (6年8ヶ月経過) 出願番号 2014-070326
公開日 2015年11月2日 (5年1ヶ月経過) 公開番号 2015-190044
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 材料表 通電部品 方向線分 顕微鏡観察画像 肉厚減少率 時効処理材 ピン留め 溶体化処理材
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

Cu−Ti系銅合金板材において、曲げ加工性を向上させ、かつそのバラツキを改善する。

解決手段

質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋳片に熱間鍛造を施して板状のスラブを得るに際し、熱間鍛造の全ての圧下を850〜700℃の温度範囲で行い、1打当たりの最大圧下率をいずれの方向の圧下についても20%以下とし、スラブ板厚方向の圧下については材料全体にわたって1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与し、スラブ板厚方向のトータル厚減少率を25%以上とする熱間鍛造工程を有するCu−Ti系銅合金板材の製造方法。

概要

背景

電気電子部品を構成するコネクタリードフレームリレー、スイッチなどの通電部品に使用される材料には、電気・電子機器組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い「強度」が要求される。また、電気・電子部品は一般に曲げ加工により成形されることから優れた「曲げ加工性」が要求される。更に、電気・電子部品間接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象応力緩和)に対する耐久性、すなわち「耐応力緩和性」に優れることも要求される。

Cu−Ti系銅合金は、銅合金中でCu−Be系銅合金に次ぐ高強度を有し、Cu−Be系銅合金を凌ぐ耐応力緩和性を有する。また、コストと環境負荷の点でCu−Be系銅合金より有利である。このためCu−Ti系銅合金(例えばC1990;Cu−3.2質量%Ti合金)は、一部のCu−Be系銅合金の代替材としてコネクタ材などに使用されている。

概要

Cu−Ti系銅合金の板材において、曲げ加工性を向上させ、かつそのバラツキを改善する。質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋳片に熱間鍛造を施して板状のスラブを得るに際し、熱間鍛造の全ての圧下を850〜700℃の温度範囲で行い、1打当たりの最大圧下率をいずれの方向の圧下についても20%以下とし、スラブ板厚方向の圧下については材料全体にわたって1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与し、スラブ板厚方向のトータル厚減少率を25%以上とする熱間鍛造工程を有するCu−Ti系銅合金板材の製造方法。

目的

本発明はCu−Ti系銅合金の板材において、特許文献1よりも曲げ加工性を向上させ、かつそのバラツキを改善することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する熱間圧延後の板材であって、板の圧延方向をL方向、圧延方向と板厚方向に直角の方向をT方向、L方向に垂直な断面をC断面と呼ぶとき、C断面の顕微鏡観察において下記(A)に従う方法で求めた粗大結晶粒面積率が5.0%以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子個数密度が500個/mm2以下である熱間圧延後のCu−Ti系銅合金板材。(A)C断面に、T方向を一辺に持つ1.25mm×1.25mmの正方形観察領域を設け、その観察領域を81個の正方形からなるマス目に分割して各マス目の頂点である合計100個の格子点を設定し、当該観察領域の顕微鏡観察画像上の格子点のうち長径100μm以上の粗大結晶粒の内部(結晶粒界上を含む)に位置する格子点の合計数n1を求め、n1個/100個×100により算出される値を粗大結晶粒面積率(%)と定める。ただし、双晶境界は結晶粒界とみなさない。また、結晶粒の一部が観察領域の外に出ている長径100μm以上の結晶粒は当該観察領域内の部分をn1のカウント対象とする。

請求項2

化学組成が、質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなるものである請求項1に記載のCu−Ti系銅合金板材。

請求項3

質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する時効処理された板材であって、板の圧延方向をL方向、圧延方向と板厚方向に直角の方向をT方向、L方向に垂直な断面をC断面と呼ぶとき、C断面の顕微鏡観察において下記(B)に従う方法で求めた平均結晶粒径が7.0〜40.0μm、最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比が2.5以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が1000個/mm2以下である時効処理されたCu−Ti系銅合金板材。(B)C断面の観察視野内に、長さ0.125mmのT方向線分を0.0125mm間隔で平行に10本設定し、各線分についてJIS H0501−1986に規定の切断法に従い、線分によって完全に切られる結晶粒(以下「切断結晶粒」という)の数と各切断長さ(以下「個々の切断結晶粒径」という)を測定する。この測定を無作為に設定した異なる10視野について行い、10本×10視野=計100本の線分による個々の切断結晶粒径の合計値を切断結晶粒の総数で除した値(μm)を「平均結晶粒径」と定め、前記100本の線分による個々の切断結晶粒径の最大値(μm)のものから大きい順に5個選び、その5個の平均を「最大側平均結晶粒径」と定める。

請求項4

化学組成が、質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなるものである請求項3に記載の時効処理されたCu−Ti系銅合金板材。

請求項5

時効処理後冷間圧延されたものである請求項3または4に記載のCu−Ti系銅合金板材。

請求項6

時効処理後に冷間圧延および低温焼鈍が施されたものである請求項3または4に記載のCu−Ti系銅合金板材。

請求項7

質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋳片に熱間鍛造を施して板状のスラブを得るに際し、熱間鍛造の全ての圧下を850〜700℃の温度範囲で行い、1打当たりの最大圧下率をいずれの方向の圧下についても20%以下とし、スラブ板厚方向の圧下については材料全体にわたって1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与し、スラブ板厚方向のトータル厚減少率を25%以上とする熱間鍛造工程、前記鍛造後のスラブに対して、圧延開始温度950℃以下、950〜920℃での圧延率55%以上の条件で熱間圧延を施す熱間圧延工程、を有するCu−Ti系銅合金板材の製造方法。

請求項8

鋳片の化学組成が、質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなるものである請求項7に記載のCu−Ti系銅合金板材の製造方法。

請求項9

前記熱間圧延工程において、鍛造後のスラブに対して、圧延開始温度950℃以下、950〜920℃での圧延率55%以上の条件で熱間圧延を施すことにより、C断面の顕微鏡観察において下記(A)に従う方法で求めた粗大結晶粒面積率が5.0%以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が500個/mm2以下である板材を得る、請求項8または9に記載のCu−Ti系銅合金板材の製造方法。(A)C断面に、T方向を一辺に持つ1.25mm×1.25mmの正方形観察領域を設け、その観察領域を81個の正方形からなるマス目に分割して各マス目の頂点である合計100個の格子点を設定し、当該観察領域の顕微鏡観察画像上の格子点のうち長径100μm以上の粗大結晶粒の内部(結晶粒界上を含む)に位置する格子点の合計数n1を求め、n1個/100個×100により算出される値を粗大結晶粒面積率(%)と定める。ただし、双晶境界は結晶粒界とみなさない。また、結晶粒の一部が観察領域の外に出ている長径100μm以上の結晶粒は当該観察領域内の部分をn1のカウント対象とする。ここで、C断面は圧延方向に垂直な断面を意味する。

請求項10

請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱間鍛造工程および熱間圧延工程を経て製造された銅合金板材に対して、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍を施すCu−Ti系銅合金板材の製造方法。

請求項11

請求項3〜6のいずれか1項に記載のCu−Ti系銅合金板材を加工してなる通電部品

技術分野

0001

本発明は、コネクタリードフレームリレー、スイッチなどの通電部品に適したCu−Ti系銅合金板材であって、特に曲げ加工性バラツキを改善した板材、およびその製造方法に関する。また、その銅合金板材を材料に用いた通電部品に関する。

背景技術

0002

電気電子部品を構成するコネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの通電部品に使用される材料には、電気・電子機器組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い「強度」が要求される。また、電気・電子部品は一般に曲げ加工により成形されることから優れた「曲げ加工性」が要求される。更に、電気・電子部品間接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象応力緩和)に対する耐久性、すなわち「耐応力緩和性」に優れることも要求される。

0003

Cu−Ti系銅合金は、銅合金中でCu−Be系銅合金に次ぐ高強度を有し、Cu−Be系銅合金を凌ぐ耐応力緩和性を有する。また、コストと環境負荷の点でCu−Be系銅合金より有利である。このためCu−Ti系銅合金(例えばC1990;Cu−3.2質量%Ti合金)は、一部のCu−Be系銅合金の代替材としてコネクタ材などに使用されている。

先行技術

0004

特開2004−52008号公報
特開2008−308734号公報
特開2011−202218号公報
特開2012−12631号公報

発明が解決しようとする課題

0005

Cu−Ti系銅合金はTiの変調構造スピノーダル構造)を利用して強度を向上させることができる合金である。変調構造によって材料は著しく硬化するが、それによる耐疲労特性や曲げ加工性の損失が比較的少ないという長所を有する。その一方で、この合金系の板材には部分的に粗大結晶粒や粗大第二相粒子が存在しやすく、それに起因して曲げ加工性のバラツキが大きくなりやすいという欠点がある。Cu−Ni−Si系銅合金などでは第二相析出粒子ピン留め効果を利用して結晶粒径の均一化を図ることができる。しかし、Cu−Ti系銅合金では第二相の生成機構が異なるため、そのようなピン留め効果を利用することは困難である。

0006

特許文献1には、溶体化処理中のβ相析出の制御によりCu−Ti系銅合金の結晶粒径の均一化を図る技術が開示されている。また、熱間鍛造熱間圧延を組み合わせた熱間加工工程が開示されている。この文献の製造方法によれば、粒径偏差平均粒径の比が0.6以下という、結晶粒径バラツキの少ない板材が得られている。しかし、粗大第二相粒子に関しては特別の配慮がなされておらず、90°曲げによるBWの曲げ加工性はR/tが3.5程度であり、厳しい加工が要求される通電部品の用途では更なる改善が望まれる。

0007

特許文献2〜4には、結晶粒径、結晶方位析出物個数密度などを規定することによりCu−Ti系銅合金の曲げ加工性を改善する手法が開示されている。しかし、曲げ加工性のバラツキについては考慮されていない。

0008

本発明はCu−Ti系銅合金の板材において、特許文献1よりも曲げ加工性を向上させ、かつそのバラツキを改善することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

発明者らは詳細な研究の結果、仕上冷間圧延前の段階での最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比を一定以下に小さく制御するとともに、粗大第二相粒子の個数密度を低減することが、曲げ加工性のレベルを向上させ、かつバラツキを低減する上で重要であることを知見した。また、そのような組織状態を得るためには、鋳片に対して通常より低温域での熱間鍛造を施して加工歪を十分に導入しておくことが極めて有効であることを見出した。

0010

上記目的を達成するために、本発明では、質量%で、Ti:1.0〜5.0%、Fe:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、Ni:0〜1.5%、B:0〜0.07%であり、必要に応じて更にSn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する熱間圧延後の板材であって、板の圧延方向をL方向、圧延方向と板厚方向に直角の方向をT方向、L方向に垂直な断面をC断面と呼ぶとき、C断面の顕微鏡観察において下記(A)に従う方法で求めた粗大結晶粒面積率が5.0%以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が500個/mm2以下である熱間圧延後のCu−Ti系銅合金板材が提供される。
(A)C断面に、T方向を一辺に持つ1.25mm×1.25mmの正方形観察領域を設け、その観察領域を81個の正方形からなるマス目に分割して各マス目の頂点である合計100個の格子点を設定し、当該観察領域の顕微鏡観察画像上の格子点のうち長径100μm以上の粗大結晶粒の内部(結晶粒界上を含む)に位置する格子点の合計数n1を求め、n1個/100個×100により算出される値を粗大結晶粒面積率(%)と定める。ただし、双晶境界は結晶粒界とみなさない。また、結晶粒の一部が観察領域の外に出ている長径100μm以上の結晶粒は当該観察領域内の部分をn1のカウント対象とする。
ここで、長径は、当該観察画像においてその結晶粒を取り囲む最小円の直径である。

0011

また、上記化学組成を有する時効処理後された板材であって、板の圧延方向をL方向、圧延方向と板厚方向に直角の方向をT方向、L方向に垂直な断面をC断面と呼ぶとき、C断面の顕微鏡観察において下記(B)に従う方法で求めた平均結晶粒径が7.0〜40.0μm、最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比が2.5以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が1000個/mm2以下である時効処理されたCu−Ti系銅合金板材が提供される。この場合、時効処理後に冷間圧延されたもの、あるいは時効処理後に冷間圧延および低温焼鈍が施されたものであっても構わない。
(B)C断面の観察視野内に、長さ0.125mmのT方向線分を0.0125mm間隔で平行に10本設定し、各線分についてJIS H0501−1986に規定の切断法に従い、線分によって完全に切られる結晶粒(以下「切断結晶粒」という)の数と各切断長さ(以下「個々の切断結晶粒径」という)を測定する。この測定を無作為に設定した異なる10視野について行い、10本×10視野=計100本の線分による個々の切断結晶粒径の合計値を切断結晶粒の総数で除した値(μm)を「平均結晶粒径」と定め、前記100本の線分による個々の切断結晶粒径の最大値(μm)のものから大きい順に5個選び、その5個の平均を「最大側平均結晶粒径」と定める。
なお、本明細書において、直径1μm以上の粗大第二相粒子とは、第二相粒子を取り囲む最小円の直径が1μm以上である第二相粒子を意味する。

0012

上記Cu−Ti系銅合金熱間圧延材の製造方法として、上記化学組成を有する鋳片に熱間鍛造を施して板状のスラブを得るに際し、熱間鍛造の全ての圧下を850〜700℃の温度範囲で行い、1打当たりの最大圧下率をいずれの方向の圧下についても20%以下とし、スラブ板厚方向の圧下については材料全体にわたって1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与し、スラブ板厚方向のトータル厚減少率を25%以上とする熱間鍛造工程、
前記鍛造後のスラブに対して、圧延開始温度950℃以下、950〜920℃での圧延率55%以上の条件で熱間圧延を施す熱間圧延工程、
を有する製造方法が提供される。上記熱間圧延によって、C断面の顕微鏡観察において上記(A)に従う方法で求めた粗大結晶粒面積率が5.0%以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が500個/mm2である組織状態とすることが好ましい。

0013

この熱間鍛造工程および熱間圧延工程を経て製造された銅合金板材に対して、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍を施すことにより曲げ加工性およびそのバラツキを顕著に改善したCu−Ti系銅合金板材が得られる。この板材は曲げ加工を施して製造される通電部品用の素材として好適である。

発明の効果

0014

本発明によれば、Cu−Ti系銅合金板材において、優れた曲げ加工性を有し、かつ材料内での曲げ加工性のバラツキが顕著に改善された。従って本発明は、コネクタをはじめとする通電部品の加工度増大や設計自由度向上に寄与するものである。

図面の簡単な説明

0015

本発明に従う熱間圧延材のC断面の金属組織写真
熱間鍛造を施していない従来法による熱間圧延材のC断面の金属組織写真。
本発明に従う時効処理された板材(仕上冷間圧延後に低温焼鈍されたもの)についてのC断面の金属組織写真。
熱間鍛造を施していない従来の工程による時効処理された板材(仕上冷間圧延後に低温焼鈍されたもの)についてのC断面の金属組織写真。

0016

合金組成
本発明ではCu−Tiの2元系基本成分に、必要に応じてNi、Co、Feや、その他の合金元素を配合したCu−Ti系銅合金を採用する。以下、合金組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。

0017

Tiは、Cuマトリックスにおいて時効硬化作用が高い元素で、強度上昇および耐応力緩和性向上に寄与する。これらの作用を十分に引き出すためには1.0%以上のTi含有量を確保することが有利であり、2.5%以上とすることがより好ましい。一方、Ti含有量が過剰になると、熱間加工あるいは冷間加工過程中に割れが発生しやすくなる。また、溶体化処理が可能な温度域が狭くなる。種々検討の結果、Ti含有量は5.0%以下とする必要がある。4.0%以下あるいは3.5%以下の範囲に管理してもよい。

0018

Fe、Co、Niは、Tiとの金属間化合物を形成して強度の向上に寄与する元素であり、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。これらの金属間化合物は溶体化処理で結晶粒の粗大化を抑制する作用があるので、より高温域での溶体化処理が可能になり、Tiを十分に固溶させる上で有利となる。Fe、Co、Niの1種以上を添加する場合の個々の元素の含有量は、Fe:0.05%以上、Co:0.05%以上、Ni:0.05%以上とすることがより効果的であり、Fe:0.1%以上、Co:0.1%以上、Ni:0.1%以上とすることが更に効果的である。ただし、Fe、Co、Niを過剰に含有させると、それらの金属間化合物の生成によって消費されるTiの量が多くなるので、固溶Ti量が必然的に少なくなる。この場合、逆に強度低下を招きやすい。また、Fe、Ni、CoはTiと化合物を形成するため、過剰な含有は粗大粒子の増加を招く。従ってFe、Co、Niの1種以上を添加する場合は、Fe:0.5%以下、Co:1.0%以下、Ni:1.5%以下、の範囲とする。Fe:0.30%以下、Co:0.25%以下、Ni:0.25%以下の範囲に管理してもよい。

0019

Bは、鋳造組織微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。Bを添加する場合、0.01%以上とすることがより効果的であり、0.03%以上とすることが更に効果的である。ただし、過剰のB添加は不経済であり、通常0.07%以下の範囲で添加すればよい。

0020

Snは、固溶強化作用と耐応力緩和性の向上作用を有する。Snを含有させる場合、0.1%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、鋳造性導電率確保の観点からSn含有量は1.2%以下に制限され、0.5%以下あるいは0.25%以下の範囲に管理してもよい。

0021

Znは、はんだ付け性および強度を向上させる作用を有する他、鋳造性を改善させる作用もある。これらの作用を十分に得るには0.1%以上のZn含有量を確保することが望ましく、特に0.3以上とすることが一層効果的である。ただし、過剰のZn含有は導電性耐応力腐食割れ性低下要因となりやすい。このため、Znを含有させる場合は2.0%以下とする必要があり、1.0%以下あるいは0.5%以下に管理してもよい。

0022

Mgは、耐応力緩和性の向上作用と脱S作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるには、0.01%以上のMg含有量を確保することが好ましく、0.05%以上とすることがより効果的である。ただし、Mgは酸化されやすいので、鋳造性確保の観点からMgを含有させる場合は1.0%以下の含有量とする。0.5%以下とすることが一層好ましい。通常、0.1%以下とすればよい。

0023

その他の元素として、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下の1種以上を含有させることができる。例えば、ZrとAlはTiとの金属間化合物を形成することができ、SiはTiとの析出物を生成できる。Cr、Zr、Mn、Vは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、Cr、P、Zrは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。Zr、Al、Si、P、Cr、Mn、Vの1種以上を含有させる場合は、各元素の作用を十分に得るためにこれらの総量が0.01%以上となるように含有させることが効果的である。

0024

ただし、Zr、Al、Si、P、Cr、Mn、Vを多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与える要因となる。前述のSn、Zn、Mgと、Zr、Al、Si、P、Cr、Mn、Vの合計含有量は3.0%以下に抑えることが望ましく、2.0%以下あるいは1.0%以下の範囲に規制することができ、0.5%以下の範囲に管理しても構わない。経済性を加味したより合理的な上限規制としては、例えばZr:0.2%以下、Al:0.15%以下、Si:0.2%以下、P:0.05%以下、B:0.03%以下、Cr:0.2%以下、Mn:0.1%以下、V:0.2%以下の規制を設けることができる。

0025

《熱間圧延材の金属組織
熱間圧延後の段階で粗大結晶粒および粗大第二相粒子の存在が十分に抑制されているとき、その後の工程を経て製造された最終的な板材において結晶粒径の不均一性および粗大第二相粒子の存在に起因する曲げ加工性のバラツキが顕著に抑制されることがわかった。そのような有用性の高い板材中間製品として、本発明では以下の組織状態を有する熱間圧延材を開示する。

0026

板の圧延方向をL方向、圧延方向と板厚方向に直角の方向をT方向、L方向に垂直な断面をC断面と呼ぶとき、C断面の顕微鏡観察において下記(A)に従う方法で求めた粗大結晶粒面積率が5.0%以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が500個/mm2以下であるCu−Ti系銅合金熱間圧延材。上記直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度は300個/mm2以下であることがより好ましい。
(A)C断面に、T方向を一辺に持つ1.25mm×1.25mmの正方形観察領域を設け、その観察領域を81個の正方形からなるマス目に分割して各マス目の頂点である合計100個の格子点を設定し、当該観察領域の顕微鏡観察画像上の格子点のうち長径100μm以上の粗大結晶粒の内部(結晶粒界上を含む)に位置する格子点の合計数n1を求め、n1個/100個×100により算出される値を粗大結晶粒面積率(%)と定める。ただし、双晶境界は結晶粒界とみなさない。また、結晶粒の一部が観察領域の外に出ている長径100μm以上の結晶粒は当該観察領域内の部分をn1のカウント対象とする。

0027

時効処理材の金属組織》
また、時効処理後の板材(時効処理材)において、結晶粒径の粒度分布および粗大第二相粒子の存在量が特定の条件を満たすとき、その時効処理材およびそれを加工してなる板材は、結晶粒径の不均一性に起因する曲げ加工性のバラツキが顕著に抑制される。そのような有用性の高い板材として、本発明では以下の組織状態を有する板材を開示する。
時効処理後に仕上冷間圧延や更に低温焼鈍を施した製品板材においても、以下の組織状態が維持される。

0028

C断面の顕微鏡観察において下記(B)に従う方法で求めた平均結晶粒径が7.0〜40.0μm、最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比が2.5以下であり、C断面における直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が1000個/mm2以下であるCu−Ti系銅合金板材。上記直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度は700個/mm2以下であることがより好ましい。
(B)C断面の観察視野内に、長さ0.125mmのT方向線分を0.0125mm間隔で平行に10本設定し、各線分についてJIS H0501−1986に規定の切断法に従い、線分によって完全に切られる結晶粒(以下「切断結晶粒」という)の数と各切断長さ(以下「個々の切断結晶粒径」という)を測定する。この測定を無作為に設定した異なる10視野について行い、10本×10視野=計100本の線分による個々の切断結晶粒径の合計値を切断結晶粒の総数で除した値(μm)を「平均結晶粒径」と定め、前記100本の線分による個々の切断結晶粒径の最大値(μm)のものから大きい順に5個選び、その5個の平均を「最大側平均結晶粒径」と定める。

0029

これらの組織状態を有する板材は、以下の工程に従って得ることができる。

0030

《製造方法》
曲げ加工性バラツキの小さいCu−Ti系銅合金板材は、例えば下記のような製造工程により製造することができる。
「溶解・鋳造→熱間鍛造→熱間圧延→冷間圧延→(中間焼鈍→冷間圧延)→溶体化処理→時効処理→仕上冷間圧延→低温焼鈍」
ここでは、熱間圧延前特定条件下での熱間鍛造を行い、加工歪を付与しておくことが重要である。熱間圧延前には必要に応じてスラブ表面切削が行われる。また熱間圧延では高温域で十分に圧下を稼ぎ、動的再結晶化を促進させることが重要である。熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗研磨、あるいは更に脱脂が行われる。用途に応じて時効処理後の「仕上冷間圧延」と「低温焼鈍」を省略してもよい。以下、各工程について説明する。

0031

〔溶解・鋳造〕
連続鋳造半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Tiの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。

0032

〔熱間鍛造〕
本発明では、熱間圧延に供する前に熱間鍛造を行い、加工歪を付与することが重要である。銅合金の製造における熱間鍛造は、一般に900〜850℃程度の温度域で行われる。しかし、Cu−Ti系銅合金の場合、そのような温度域では歪エネルギーを十分に蓄積できないことがわかった。種々検討の結果、850℃以下の温度域で熱間鍛造を行うことが有効となる。ただし、鋳造組織は脆弱であるため、熱間鍛造温度が低いと割れやすくなる。そのため700℃以上で熱間鍛造を行う必要がある。

0033

発明者らの検討によれば、熱間鍛造工程で歪エネルギーを十分に蓄積させるために、熱間鍛造では以下の条件に従うことが有効であることがわかった。
(a)熱間鍛造温度を850℃以下の比較的低温域とする。
(b)スラブ板厚方向の圧下については材料全体にわたって1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与する。
(c)スラブの板厚方向のトータル厚さ減少率を25%以上とする。
また、熱間鍛造中に割れが生じないようにするためには以下の条件に従う必要がある。
(d)熱間鍛造温度を700℃以上とする。
(e)1打当たりの最大圧下率を20%以下とする。
なお、鍛造温度は、鍛造時の材料表面温度である。

0034

1打当たりの圧下率(%)は、下記(1)式により定まる。
1打当たりの圧下率(%)=(t0−t1)/t0×100 …(1)
ここで、t0は、その1打の圧下を付与する前の材料における、ハンマーが当たる部分のハンマー進行方肉厚(その部分の肉厚が不均一の場合は平均肉厚)(mm)、t1は、その1打の圧下を付与した後の材料における、ハンマーが当たった部分のハンマー進行方向肉厚(その部分の肉厚が不均一の場合は平均肉厚)(mm)を意味する。
例えば材料の同じ位置に続けて3打の圧下を付与する場合、その3打のうち少なくとも1打において圧下率15〜20%の圧下を付与することにより、そのハンマー打面ぶつけた位置において「1打当たりの圧下率が15〜20%の圧下を少なくとも1打以上付与する」という要件が満たされる。板状スラブを得るに際して、上記(b)の条件を満たすためには、例えば、1打当たりの圧下率が15〜20%の打撃を、板状スラブの板面(広面)となる材料表面のすべての部分について、材料の位置を変えながら順次付与していく方法が採用できる。ただし、熱間鍛造での割れの発生を防止するために、1打当たりの最大圧下率を20%以下とする(上記(e))。

0035

鋳片から板状スラブを得る熱間鍛造では、通常、板状スラブ厚さ方向(ND)と、それに直角の板状スラブ幅方向(TD)の2軸について、交互に変形を加える方法がとられる。十分に歪エネルギーを蓄積させるためには材料に加えるトータルの変形量を一定以上に確保する必要がある。種々検討の結果、少なくともND軸の肉厚減少率が25%以上となるように変形を加えること、すなわち上記(c)の条件に従うことが極めて有効である。この場合、板状スラブの幅(TDの肉厚)は、例えば元の鋳片に対して同等に維持することができる。
上記(c)のスラブの板厚方向のトータル厚さ減少率は、下記(2)式により定まる。
スラブの板厚方向のトータル厚さ減少率(%)=(t2−t3)/t2×100 …(2)
ここで、t2は、板状スラブ厚さ方向に対応する鋳片の厚さ(その厚さが場所により一定でない場合は平均厚さ)(mm)、t3は、得られる板状スラブの厚さ(その厚さが場所により一定でない場合は平均厚さ)(mm)を意味する。

0036

熱間鍛造前の鋳片の加熱は、鋳片の肉厚中心部と表面の温度差が20℃以下となるまで、在炉時間を確保することが望ましい。加熱温度は800〜850℃とし、在炉時間は例えば厚さ200mm程度の鋳片であれば、8〜16hとすればよい。熱間鍛造温度は850℃以下とする(上記(a))。840℃以下の範囲に制限することがより効果的である。ただし、温度が低下しすぎると割れが生じやすくなるので、熱間鍛造の終了温度は700℃以上とする(上記(d))。この850〜700℃、より好ましくは840〜700℃という比較的低温の温度域で上記(b)(c)に従う条件で熱間鍛造を行うと、歪エネルギーが十分に導入され、後述の熱間圧延工程で再結晶粒の粗大化防止効果および粗大第二相粒子の個数密度低減効果が発揮される。

0037

〔熱間圧延〕
発明者らの検討によれば、Cu−Ti系銅合金の場合、溶解鋳造後のTi偏析に起因して熱間圧延時に、粗大な結晶粒および粗大な第二相粒子が生成しやすく、これが後の工程を経て得られる板材最終製品の曲げ加工性を低下させる要因となることがわかった。従って、溶解鋳造で形成されたTi偏析を緩和し、熱間圧延時に粗大な結晶粒および粗大な第二相粒子が生じないように製造条件を工夫する必要がある。その工夫の一つが、上述の熱間鍛造工程での歪みエネルギーの導入である。さらにもう一つ、熱間圧延工程において、できるだけ高温域で圧下率を稼ぎ、熱間圧延前の加熱段階での拡散による均質化を促進するとともに熱間圧延中の動的再結晶を促進させることが重要である。

0038

熱間圧延時のスラブ加熱温度は930〜950℃とすることが望ましい。熱間圧延開始温度(最初の圧延パスにおける材料温度)は950℃以下とする。それより高いと合金成分の偏析箇所など融点が低下している箇所で割れが生じる場合がある。950〜920℃での圧延率55%以上とする。この高温域での圧延率が小さくなると動的再結晶による微細化効果が低減し、粗大な再結晶粒が存在する場合がある。また、Ti偏析の緩和が不十分となり粗大第二相粒子が多く形成される。熱間圧延終了温度(最後の圧延パスにおける材料温度)は700℃以上とすることが好ましい。熱間圧延後は水冷などによって急冷することが望ましい。
なお、ある板厚t4(mm)からある板厚t5(mm)までの圧延率は、下記(3)式により定まる。後述の各工程における圧延率も同様である。
圧延率(%)=(t4−t5)/t4×100 …(3)
なお、熱間圧延温度は、熱間圧延時の材料表面温度である。

0039

〔冷間圧延〕
溶体化処理前に行う冷間圧延では、圧延率を80%以上とすることが望ましい。圧延で導入される歪が再結晶の核として機能し、結晶粒径の均一化に有効となる。冷間圧延率の上限はミルパワー等により制約を受けるが、通常、99%以下の範囲で設定すればよい。必要に応じて、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延工程を実施してもよい。その場合、最終の中間焼鈍後に行う冷間圧延工程が、上記「溶体化処理前に行う冷間圧延」に相当する。

0040

〔溶体化処理〕
溶体化処理温度は700〜950℃とすることができる。750〜900℃とすることがより好ましい。加熱時間は5sec〜5minの範囲で設定すればよい。冷却は通常の溶体化処理と同様、水冷などにより急冷すればよい。例えば、700℃から200℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるような冷却が望ましい。

0041

〔時効処理〕
時効処理温度は300〜550℃、時効時間は60〜600minの範囲で設定すればよい。

0042

〔仕上冷間圧延〕
用途に応じて仕上冷間圧延を行い、強度レベルの向上を図ることができる。仕上冷間圧延率は70%以下とすることが望ましい。最終的な板厚は例えば0.05〜1.0mmとすることができ、特に0.05〜0.3mmの薄板材は通電部品の小型化に有用である。

0043

〔低温焼鈍〕
仕上冷間圧延後には、板材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔すべり面上の転位の低減による耐応力緩和特性向上を目的として、低温焼鈍を施すことができる。加熱温度150〜600℃、加熱時間5〜3600secの範囲で条件設定すればよい。仕上冷間圧延を省略した場合は、通常、この低温焼鈍も省略される。

0044

《板材の特性》
〔曲げ加工性〕
本発明に従えば、JIS H3110に従う90°W曲げ試験において、BW(Bad Way)のMBR/tが安定して0.60以下となる優れた曲げ加工性が実現できる。BWの曲げ試験は、曲げ試験片長手方向が圧延直角方向(T方向)、曲げ軸が圧延方向(L方向)となる条件で行われる。
〔引張強さ〕
本発明に従えば、JIS Z2241に従う板材の圧延方向(L方向)の引張試験において、引張強さが880MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらには920MPa以上のものが得られ、前記曲げ加工性と強度の両立を図ることができる。

0045

表1に示す銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を切断して、長さ約3000mm、厚さ150mm、幅270mmのサイズの鍛造実験用の鋳片とした。鍛造実験用鋳片は、長さ方向全長にわたって断面形状は均等である。以下、特に断らない限り、「鋳片」と言うときはこの鍛造実験用鋳片を意味する。一部の例を除き、鋳片を炉中で4h加熱したのち抽出して熱間鍛造を施し、板状スラブを得た。鍛造開始温度、鍛造終了温度は表2中に示してある。鋳片の厚さ方向と得られた板状スラブの板厚方向は一致するので、以下これらの方向を一括してNDと表記する。同様に鋳片の幅方向と得られた板状スラブの幅方向も一致するので、以下これらを一括してTDと表記する。

0046

熱間鍛造では、NDおよびTDの2軸方向について圧下を付与した。ここでは、TD(鋳片の側面)の圧下をスラブ全体にわたって行い、次いでND(鋳片の板面)の圧下をスラブ全体にわたって行うという方法で、TD、NDの鍛造を交互に行った。その際、NDの1打目が最大圧下率となるように鍛造した。ND、TDとも、1箇所につきそれぞれ合計3〜4打の圧下を付与して、それぞれの方向の肉厚を所定の厚さに整えた。材料の板面のどの部分についても「1打当たりの最大圧下率」および「スラブの板厚方向のトータル厚さ減少率」は均等とした。これらの数値を表2中に示す。得られた板状スラブの幅は約270mmであり、各スラブにおいて長手方向のスラブ幅は均等である。熱間鍛造後、スラブ表面の凹凸研削により平滑化した。

0047

熱間鍛造時に割れが生じた例を除き、上記各熱間鍛造スラブを、炉中で4h加熱した後、熱間圧延を施し、板厚15mmの熱間圧延材を得た。いずれも700℃以上の温度域で熱間圧延を終了し、直ちに水冷した。一部の例では熱間鍛造を省略して、鋳片を切削にて厚さ約115mmとしたのち、直接熱間圧延に供した。熱間圧延開始温度、および950℃から920℃までの圧延率を表2中に示す。また、熱間圧延時に割れが生じて次工程へ進めることができなかった例を除き、熱間圧延材からサンプルを切り出して、前述(A)に従う方法でC断面の粗大結晶粒面積率を測定した。測定値再現性を確認するため、各熱間圧延材につき無作為に選択した10視野の観察を行ったが、いずれも粗大結晶粒面積率(%)の測定値(%表示の数値)の変動幅は1.5以内に収まっていた。表3中には10視野で得られた数値の平均値を粗大結晶粒面積率(%)として表示した。また、熱間圧延材のC断面を電解研磨して、SEM観察を行い、直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度を求めた。電解研磨はElectroMet4(BUEHLER社製)を用い、φ10mmの領域に電圧15Vで20秒間電解研磨を行った。電解研磨液は、体積比で、蒸留水:10、リン酸:5、エタノール:5、2−プロパノール:1の混合液とした。SEM観察は倍率3000倍にて10視野で観察を行った。

0048

熱間圧延時に割れが生じた例を除き、熱間圧延材に約92.8%の冷間圧延を施して板厚1mm以下としたのち、水素窒素またはアルゴン雰囲気下で溶体化処理を施した。溶体化処理では、保持温度700〜900℃、保持時間1minで条件を調整して、溶体化処理後の平均結晶粒径をコントロールした。各例の溶体化処理の保持温度は表2に記載した。

0049

得られた溶体化処理材からサンプルを採取して、時効条件を設定するための予備実験として、300〜500℃で最大10hまでに時効処理試験を行い、合金組成に応じて最大硬さとなる時効温度Tm(℃)および最大硬さHm(Hv)を把握した。前記溶体化処理材に対して、時効温度をTm±10℃とし、時効時間を時効後の硬さが0.08Hm以上1.0Hm以下となる時間に設定して、時効処理を施した。ここでは各例とも450℃×6hの条件とした。

0050

時効処理後、圧延率70%以下の範囲での仕上冷間圧延を行い、最終板厚を0.1mmに揃えた。その後、水素、窒素またはアルゴン雰囲気下、300〜600℃の範囲で低温焼鈍を施した。

0051

このようにして得られた板厚0.1mmの板材(供試材)について、上述(B)に従う方法で平均結晶粒径、最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比を求めた。また、そのデータを用いて結晶粒径についての標準偏差/平均結晶粒径の比を算出した。供試材のC断面について、上記と同様の手法でSEM観察を行い、直径1μm以上の粗大第二相粒子の個数密度を求めた。
また、JIS Z2241に従ってL方向の引張試験を行い、試験数n=3の平均値にて引張強さを求めた。また、JIS H3110:2012に従って曲げ半径Rと板厚tの比R/tが0.6となる一定の条件でBWの90°W曲げ試験を試験数n=10にて行い、試験後の曲げ加工部の表面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れの発生有無を調べた。この曲げ試験において、10個の試験片のうち割れが発生した試験片の割合を「割れ発生率(%)」として表示し、全てについて割れの発生が認められなかった場合(すなわち、割れ発生率=0%)を合格、それ以外を不合格とした。この厳しい評価方法で合格評価が得られた板材は、優れた曲げ加工性を有し、かつ曲げ加工性のバラツキが極めて小さいと判断できる。表3にこれらの試験結果を示す。

0052

0053

0054

0055

表2、表3からわかるように、本発明に従う銅合金板材はいずれも熱間圧延材において粗大結晶粒の面積率が小さく、かつ時効処理材では最大側平均結晶粒径/平均結晶粒径の比が小さく抑えられた。その結果、曲げ加工性が良好であり、そのバラツキも顕著に改善された。

0056

これに対し、比較例No.31は熱間鍛造での1打当たりの最大圧下率が小さく、またNo.32は熱間鍛造でのスラブ板厚方向のトータル厚さ減少率が小さかったので、それぞれ歪みエネルギーの蓄積が不十分となり、得られた板材は粗大な結晶粒の存在する混粒組織となり、粗大第二相粒子の個数密度も高くなった。その結果、曲げ加工性のバラツキが大きかった。No.33は熱間圧延で高温域での圧延率が不足したので粗大な結晶粒の存在する混粒組織となり、曲げ加工性のバラツキが大きかった。No.34は熱間圧延温度が高すぎたので熱間圧延材に割れが生じ、それ以降の工程を中止した。No.35は熱間鍛造での1打当たりの最大圧下率が大きすぎ、No.36は熱間鍛造温度が高すぎ、No.37は熱間鍛造温度が低すぎたので、それぞれ熱間鍛造時に材料に割れが生じ、いずれもそれ以降の工程を中止した。No.38〜41は熱間鍛造を実施しなかったので、得られた板材は粗大な結晶粒の存在する混粒組織となり、粗大第二相粒子の個数密度も増大し、曲げ加工性のバラツキは改善されなかった。

実施例

0057

参考のため、図1に本発明に従う熱間圧延材(本発明例No.2)のC断面の金属組織写真を例示する。図2に熱間鍛造を施していない従来法による熱間圧延材(比較例No.38)のC断面の金属組織写真を例示する。図3に、本発明に従う時効処理された板材(No.2の低温焼鈍材)のC断面の金属組織写真を例示する。図4に、熱間鍛造を施していない従来の工程による時効処理された板材(No.38の低温焼鈍材)のC断面の金属組織写真を例示する。

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