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技術 ピストンリング及びその製造方法

出願人 株式会社リケン
発明者 川西実掛川聡島祐司
出願日 2014年3月6日 (6年9ヶ月経過) 出願番号 2014-043753
公開日 2015年9月28日 (5年2ヶ月経過) 公開番号 2015-169249
状態 特許登録済
技術分野 ピストン、ピストンリング、シリンダ 機関のピストンリング、ケーシング、シール
主要キーワード 動力部品 大型リング 小型ピストン 材料置換 シングルピース バフ研磨加工 外周カム 断面縮小
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図面 (5)

課題

リングローリング加工を含む熱間鍛造によりスチール化した大型ピストンリングについて、リング幅(h1)とリング厚さ(a1)の最適化を進め、燃費向上に貢献する軽量、低張力の大型スチールリングを提供する。

解決手段

幅(h1)と呼び径(d1)が “ 1×10-2 < h1/d1 < 1.8×10-2 ”の関係を満たすことによって、呼び径(d1)が200 mm以上の軽量、低張力の大型スチールリングを得る。

概要

背景

大型ディーゼルエンジンに使用される大型リングは、耐熱性耐摩耗性に優れた鋳鉄ピストンリングが主流である。しかし、近年、大型ディーゼルエンジンにおいても、地球環境問題の顕在化とともに、ますます高出力化高効率化(CO2低減)の傾向にあり、具体的には、シリンダ有効圧力最高圧力の上昇、熱負荷増大による作用応力の増大、あるいは平均ピストン速度の上昇などのため、その使用環境はますます過酷になっている。例えば、低速2ストローク機関トップリングには、摺動特性に優れる片状黒鉛鋳鉄と強度に優れる球状黒鉛鋳鉄との中間的なCV(Compacted Vermicular)黒鉛鋳鉄が採用されてきた。

一般に、鋳鉄は組織中に黒鉛が分散しているため、耐スカッフ性などの摺動特性に優れ、また熱伝導特性にも優れている。しかし、使用環境が過酷になると、強度面で十分でないために、ピストンリングの折損という致命的な欠点がクローズアップされてくる。

自動車エンジン用小型ピストンリングでは、鋳鉄から鋼への材料置換(以下「スチール化」ともいう。)が進み、トップリングでは、今やマルテンサイト系ステンレス鋼窒化処理イオンプレーティング処理(例えば、CrNやTiN等)を施したものが主流である。このトップリングは、所定の断面形状に伸線されたマルテンサイト系ステンレス線材からリングの自由形状成形するコイリング加工によって製造されるのが一般的である。

しかし、舶用エンジンなどの大型リングになると、リング断面積も大きくなるため、使用するスチール線材もより断面積の大きい素線が必要になる。断面積の大きい素線は取扱いが困難なこと、圧延機熱処理装置が大型化することから、線材から大型リングを成形するスチール化は進んでいない。特に、精密成形が難しいため、軽量化、低張力化に繋がる薄幅化が困難である。また、特許文献1は、特殊な鋼を鋳造法リング形状に成形した鋳鋼ピストンリング材を開示しているが、結局、鋳造に起因する引け巣ピンホール等の鋳造欠陥のない製法材料特性との両立が困難で、信頼性の点で実用化できていないのが実情である。

概要

リングローリング加工を含む熱間鍛造によりスチール化した大型ピストンリングについて、リング幅(h1)とリング厚さ(a1)の最適化を進め、燃費向上に貢献する軽量、低張力の大型スチールリングを提供する。幅(h1)と呼び径(d1)が “ 1×10-2 < h1/d1 < 1.8×10-2 ”の関係を満たすことによって、呼び径(d1)が200 mm以上の軽量、低張力の大型スチールリングを得る。

目的

本発明は、さらにリング幅(h1)とリング厚さ(a1)の最適化を進め、燃費向上に貢献する軽量、低張力の大型スチールリングを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

呼び径(d1)が200 mm以上のピストンリングであって、前記ピストンリングの母材が鋼であり、幅(h1)と呼び径(d1)が、1×10-2< h1/d1 < 1.8×10-2の関係を満たすことを特徴とするピストンリング。

請求項2

請求項1に記載のピストンリングにおいて、厚さ(a1)と前記呼び径(d1)が2×10-2< a1/d1 < 2.8×10-2の関係を満たすことを特徴とするピストンリング。

請求項3

請求項1又は2に記載のピストンリングにおいて、前記幅(h1)と前記厚さ(a1)と前記呼び径(d1)が、2×10-4 < h1×a1/(d1)2 < 5×10-4の関係を満たすことを特徴とするピストンリング。

請求項4

請求項1〜3のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記ピストンリングの張力(Ft)の前記呼び径(d1)に対する比(Ft/d1)が0.1〜0.25 N/mmであることを特徴とするピストンリング。

請求項5

請求項1〜4のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記鋼が炭素鋼低合金鋼バネ鋼軸受鋼マルテンサイト系ステンレス鋼から選択された鋼であることを特徴とするピストンリング。

請求項6

請求項1〜5のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記ピストンリングの外周摺動面に、窒化皮膜、めっき皮膜溶射皮膜化成処理皮膜、及びイオンプレーティング皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることを特徴とするピストンリング。

請求項7

請求項1〜6のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記ピストンリングの側面に窒化皮膜、めっき皮膜、及び化成処理皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることを特徴とするピストンリング。

請求項8

請求項1〜7のいずれかに記載のピストンリングを製造する方法であって、前記鋼の所定の長さに切断された円柱状素材を加熱し、プレス成形によって円板状成形体据込み加工する第1の熱間鍛造工程と、前記円板状成形体からコアポンチにより中央部に凹部を形成し穴開け加工して第1の円筒状素材に加工する第2の熱間鍛造工程と、前記第1の円筒状素材からリングローリングミルにより拡径した第2の円筒状素材に加工する第3の熱間加工工程と、前記第2の円筒状素材からピストンリングに加工する機械加工工程を含むことを特徴とする方法。

請求項9

請求項8に記載のピストンリングを製造する方法において、前記ピストンリングが軸に直角な断面で非円形形状を有するように、前記第3の熱間鍛造工程の後に、前記第2の円筒状素材の軸に直角な方向にプレス成形することを特徴とする方法。

技術分野

0001

本発明は、ピストンリングに関し、特に呼び径(d1)が200 mm以上の大型ピストンリング(以下「大型リング」ともいう。)に関する。

背景技術

0002

大型ディーゼルエンジンに使用される大型リングは、耐熱性耐摩耗性に優れた鋳鉄製ピストンリングが主流である。しかし、近年、大型ディーゼルエンジンにおいても、地球環境問題の顕在化とともに、ますます高出力化高効率化(CO2低減)の傾向にあり、具体的には、シリンダ有効圧力最高圧力の上昇、熱負荷増大による作用応力の増大、あるいは平均ピストン速度の上昇などのため、その使用環境はますます過酷になっている。例えば、低速2ストローク機関トップリングには、摺動特性に優れる片状黒鉛鋳鉄と強度に優れる球状黒鉛鋳鉄との中間的なCV(Compacted Vermicular)黒鉛鋳鉄が採用されてきた。

0003

一般に、鋳鉄は組織中に黒鉛が分散しているため、耐スカッフ性などの摺動特性に優れ、また熱伝導特性にも優れている。しかし、使用環境が過酷になると、強度面で十分でないために、ピストンリングの折損という致命的な欠点がクローズアップされてくる。

0004

自動車エンジン用小型ピストンリングでは、鋳鉄から鋼への材料置換(以下「スチール化」ともいう。)が進み、トップリングでは、今やマルテンサイト系ステンレス鋼窒化処理イオンプレーティング処理(例えば、CrNやTiN等)を施したものが主流である。このトップリングは、所定の断面形状に伸線されたマルテンサイト系ステンレス線材からリングの自由形状成形するコイリング加工によって製造されるのが一般的である。

0005

しかし、舶用エンジンなどの大型リングになると、リング断面積も大きくなるため、使用するスチール線材もより断面積の大きい素線が必要になる。断面積の大きい素線は取扱いが困難なこと、圧延機熱処理装置が大型化することから、線材から大型リングを成形するスチール化は進んでいない。特に、精密成形が難しいため、軽量化、低張力化に繋がる薄幅化が困難である。また、特許文献1は、特殊な鋼を鋳造法リング形状に成形した鋳鋼ピストンリング材を開示しているが、結局、鋳造に起因する引け巣ピンホール等の鋳造欠陥のない製法材料特性との両立が困難で、信頼性の点で実用化できていないのが実情である。

先行技術

0006

特開平6−221436号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明者らは、大型ディーゼルエンジンの信頼性向上のため、ピストンリング高強度化対策の一つとしてスチール化を検討し、リングローリング加工を含む熱間鍛造により、耐スカッフ性、耐摩耗性及び耐熱ヘタリ性に優れた、高強度の大型スチールリングの製造方法を特願2013−120497として、また、鋳鉄に匹敵する熱伝導特性を備えた大型スチールリングを特願2013−252020として出願した。本発明は、さらにリング幅(h1)とリング厚さ(a1)の最適化を進め、燃費向上に貢献する軽量、低張力の大型スチールリングを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

すなわち、本発明のピストンリングは、呼び径(d1)が200 mm以上のピストンリングであって、前記ピストンリングの母材が鋼であり、幅(h1)と呼び径(d1)が
1×10-2< h1/d1 < 1.8×10-2
の関係を満たすことを特徴とする。また、厚さ(a1)と呼び径(d1)は
2×10-2< a1/d1 < 2.8×10-2
の関係を満たすことが好ましく、さらに、幅(h1)と厚さ(a1)と呼び径(d1)は
2×10-4 < h1×a1/(d1)2 < 5×10-4
の関係を満たすことがより好ましい。さらに、前記ピストンリングの張力(Ft)の前記呼び径(d1)に対する比(Ft/d1)は0.1〜0.25 N/mmであることが好ましい。

0009

また、前記ピストンリングの母材に用いられる鋼は、炭素鋼低合金鋼バネ鋼軸受鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼から選択された鋼であることが好ましい。

0010

また、本発明のピストンリングの外周摺動面は、窒化処理、めっき処理、溶射皮膜化成処理皮膜、及びイオンプレーティング皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることが好ましい。さらに、前記ピストンリングの側面も、窒化処理、めっき処理、及び化成処理皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることが好ましい。

0011

前記ピストンリングを製造する方法は、前記鋼の所定の長さに切断された円柱状素材を加熱し、プレス成形によって円板状成形体据込み加工する第1の熱間鍛造工程と、前記円板状成形体からコアポンチにより中央部に凹部を形成し穴開け加工して第1の円筒状素材に加工する第2の熱間鍛造工程と、前記第1の円筒状素材からリングローリングミルにより拡径した第2の円筒状素材に加工する第3の熱間加工工程と、前記第2の円筒状素材からピストンリングに加工する機械加工工程を含むことが好ましい。さらに、前記ピストンリングが軸に直角な断面で非円形形状を有するように、前記第3の熱間鍛造工程の後に、前記第2の円筒状素材の軸に直角な方向にプレス成形することが好ましい。

発明の効果

0012

本発明のピストンリングは、従来の鋳鉄製ピストンリングと比べ、リング幅(h1)を縮小しているため、動力部品の軽量化に貢献し、従来所定の面圧に調整しても低張力化が可能となって、摩擦力を低減し、燃費向上に貢献する。リング厚さ(a1)も縮小すれば、軽量化や低張力化に加え、リングのシリンダ壁への追従性を著しく向上して、優れたシール性を実現する。従来の鋳鉄製又は鋳鋼製リングで不可能であったピストンリングの断面縮小化は、基本的に延性に優れ、高強度、高靱性鋼材を用いることにより、熱負荷が増大しても、折損の心配が無く安心して使用できること、並びに、リングローリング加工を含む熱間鍛造法と機械加工の組合せにより、呼び径200 mm以上のピストンリングを精度良く製造できること、により実現可能となった。さらに、所定のサイズの円筒状素材を軸に垂直にプレス成形することによって、リングの自由形状が非円形形状(楕円形状等)の圧力リング形状に成形することができ、後工程の機械加工工程での取り代を少なくすることも可能となる。

図面の簡単な説明

0013

代表的なピストンリングの軸方向から見た平面図と軸に垂直な接線方向から見た断面図である。
本発明のピストンリングの製造方法において、ピストンリング素材形状変化素材中心軸をとおる断面で模式的に示した図である。
第3の熱間鍛造工程のリングローリング加工を模式的に示した図である。
円筒状素材を軸に直角方向にプレス成形する熱間鍛造において、断面円形形状の円筒状素材から断面非円形形状の円筒状素材への変化を模式的に示した図である。

0014

図1は、呼び径d1、幅h1(軸方向)、厚さa1(径方向)の代表的なピストンリングの軸方向の平面図と、径方向の断面図を示す。自由形状のピストンリング(1)が破線で描かれ、ピストンに装着され、ピストンを呼び径d1のシリンダ内に挿入されたときのピストンリング(2)が実線で描かれている。なお、自由状態の合口隙間をm、シリンダ挿入時の合口隙間をs1としている。ピストンリング(1)をシリンダ内に挿入すると、合口隙間がmからs1まで閉じるため、接線方向にFtなる張力を発生する。この張力Ftによってシリンダとピストンの間のシールを維持している。本発明のピストンリングは、呼び径d1が200 mm以上(但し、呼び径d1が1100 mmを超えるものはほとんど無い。)の大型スチールリングである。スチールリングの特徴は、従来の鋳鉄製ピストンリングに対し、強度面で優れており、呼び径d1を大きく、幅h1を薄く設定しても、折損のおそれがない。しかし、ねじれが生じて平行度平面度が悪くなるので、h1/d1は1×10-2を超えるものとする。一方、幅h1が厚ければ、従来の鋳鉄製ピストンリングに対し薄幅化が十分でなく、低張力化による効果も限定されてしまうので、h1/d1は1.8×10-2未満とする。また、厚さa1は面圧や摩擦力には寄与しないが、発生する張力Ftやリングの追従性Kに密接に関係する。よって、ピストンリングとして所定の張力Ftを得るためには、厚さa1の呼び径d1に対する比(a1/d1)は2×10-2を超えることが好ましく、追従性を向上し、優れたシール性を実現するためには2.8×10-2未満であることが好ましい。総合的には、幅h1と厚さa1の積(h1×a1)の呼び径d1の二乗((d1)2)に対する比が2×10-4を超え、5×10-4未満であることが好ましい。

0015

本発明のピストンリングは、シリンダに装着されたとき、自己張力Ftに基づき面圧を発生させる。この面圧は、ピストンとシリンダ間のシール性や、オイル消費摩耗摩擦損失に密接に影響する。低燃費、低フリクションの観点からは低面圧が選択されるが、一方、シール性やオイル消費を無視することはできないので、所定の面圧は維持されなければならない。本発明では張力Ftの呼び径d1に対する比(Ft/d1)を0.1〜0.25 N/mmとすることが好ましく、0.1〜0.2 N/mmとすることがより好ましい。

0016

本発明のピストンリングに使用される鋼は、特に限定するものではないが、炭素鋼、低合金鋼、バネ鋼、軸受鋼、マルテンサイト系ステンレスから選択された鋼であることが好ましい。炭素鋼であればCが0.6〜0.8質量%程度の高炭素鋼、バネ鋼であればSUP9、 SUP10、SUP12等、軸受鋼であればSUJ2、マルテンサイト系ステンレスであればSUS420J2やSUS440Bが好ましく使用される。高温強度熱伝導率、耐熱ヘタリ性等、求められる要求特性により適した鋼材が選択される。

0017

例えば、熱ヘタリ率(リングを呼び径に閉じた状態で、300℃、3時間加熱した後の、接線張力減退度(%)で評価される。)については、大型ピストンリングでは、JIS B 8037-5:1998によれば、材料がねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)と球状黒鉛鋳鉄に対し、それぞれ、15%以下と10%以下と規定されている。しかし、材料が鋼の場合には、呼び径が200 mm以上のピストンリングが実現(製造)されていないため、何も規定されていない。本発明の大型ピストンリングも球状黒鉛鋳鉄と同レベルの熱ヘタリ率10%以下を満足することが好ましいが、組成を選択することによって、耐熱ヘタリ性を向上することができるので、熱ヘタリ率8%未満、あるいは6%未満、あるいは5%未満とするように調整することが可能である。

0018

本発明のピストンリングは、上記のように、その母材を鋼としているため、そのままでは、鋳鉄に比べ、耐スカッフ性等の摺動特性に課題がある。しかし、それらの課題は、近年の表面処理技術の進歩により克服されつつある。よって、本発明のピストンリングは、その外周摺動面に、窒化皮膜、めっき皮膜、溶射皮膜、化成処理皮膜、及びイオンプレーティング皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることが好ましい。また、側面には、窒化皮膜、めっき皮膜、及び化成処理皮膜からなるグループから選択された1又は2以上の皮膜を有していることが好ましい。特に、側面への窒化処理の適用は、従来から側面に適用してきた硬質クロムめっきに代えることが可能となり、コスト低減に貢献することができる。めっき皮膜には、硬質クロムめっき皮膜多層クロムめっき皮膜ニッケル複合分散めっき皮膜が含まれ、溶射皮膜には、モリブデン溶射皮膜やサーメット溶射皮膜、イオンプレーティング皮膜には、CrN皮膜やTiN皮膜が含まれる。

0019

本発明のピストンリングは、所定の長さに切断された円柱状鋼素材を加熱し、プレス成形によって円板状成形体に据込み加工する第1の熱間鍛造工程と、前記円板状成形体からコアポンチにより中央部に凹部を形成し穴開け加工して第1の円筒状素材に加工する第2の熱間鍛造工程と、前記第1の円筒状素材からリングローリングミルにより拡径した第2の円筒状素材に加工する第3の熱間鍛造工程と、前記第2の円筒状素材からピストンリングに加工する機械加工工程を含む方法によって製造することができる。図2は、本発明の製造方法において、ピストンリング素材の形状変化を素材の中心軸をとおる断面で模式的に示した図である。円柱状素材(3)から円板状成形体(4)を成形する第1の熱間鍛造工程、円板状成形体(4)から第1の円筒状素材(5)を成形する第2の熱間鍛造工程、そして、第1の円筒状素材(5)から第2の円筒状素材(6)を成形する第3の熱間鍛造工程を含んでいる。第3の熱間鍛造工程は、図3にその加工方法を模式的に示すリングローリングミルを使用する。リングローリングミルは、主ロール(8)、マンドレル(9)、アキシャルロール(10)、バックアップロール(11)等から構成されている。主ロール(8)は一定の回転数で駆動される一方、マンドレル(9)、アキシャルロール(10)及びバックアップロール(11)は被加工材(7)との摩擦で回転する従動式である。リングローリング加工は、基本的に、主ロール(8)とマンドレル(9)間でリングの径方向への圧下が行われ、被加工材(7)の肉厚を減少させながら径を拡大して所望の形状、寸法とする加工方法であるが、軸方向寸法については一対のアキシャルロール(10)間により、また被加工材(7)の真円度表面性状については複数のバックアップロールにより調整されている。

0020

上記のリングローリング加工により製造した第2の円筒状素材(6,12)は、ピストンリングに加工する機械加工工程を含むことが好ましい。この機械加工工程には、例えば、外周旋削加工、内周旋削加工、端面旋削加工、突切加工又は切断加工、側面研削加工合口切断加工、合口フライス加工外周カムならい旋削加工、外周研磨加工、外周バフ研磨加工、さらには、オイルリングオイル穴加工、等が含まれる。

0021

本発明において、ピストンリングの製造方法は、非円形の自由形状をもつ大型リング、すなわち、大型圧力リングの製造方法に関する。圧力リングは、いわゆるシングルピース型で、合口を閉じてシリンダに装着したときに、ガスをシールするため、径方向外側に張り出すような自己張力を持つ必要がある。上述した第3の熱間鍛造工程のリングローリング加工は、基本的に円形リングを成形する加工方法であり、自己張力をもたせるためには、図4に示すように、第3の熱間鍛造工程で成形した第2の円筒状素材(6)を非円形(楕円形)の自由形状素材(12)にプレス成形して修正することが好ましい。図4では、プレス方向以外を拘束しない、いわゆる自由鍛造を示しているが、もちろん所定の楕円形状をした下型及び/又は上型を利用した型鍛造としてもよい。円筒状素材(12)の断面が、短軸d2、長軸d3の楕円形状になるよう、温度、圧力P、圧下量Δdを調整し、d3/d2は1.005〜1.05とすることが好ましく、1.01〜1.03とすることがより好ましい。

0022

円形形状のピストンリングから非円形(楕円形)の自由形状をもつピストンリングに修正するには、所定のサイズの合口ピースを合口に挟んだ状態で熱処理することによっても可能であるが、大型リングでしばしば用いられる、二重段付き合口のような特殊合口とする場合は、合口部の機械加工を考慮すると難しい。特殊合口の大型リングを製造するには、素材の段階で自由形状であることが必要となり、その点でも、第2の円筒状素材(6)を非円形の自由形状素材(12)に修正することが好ましい。

0023

上記の熱間鍛造工程における被加工材の温度は、使用される材料により適宜選択されるが、例えば、マルテンサイトステンレス鋼を使用する場合は、素材温度が850〜1250℃であることが好ましく、900〜1100℃であることがより好ましい。

0024

リングローリング加工により製造した第2の円筒状素材(6,12)は、焼鈍処理により鍛造後内部応力を除去し、切削性を改善することが好ましい。また、焼鈍処理後ショットブラストによる酸化スケールを除去した後、表面の脱炭層除去加工を行うことが好ましい、さらに、第2の円筒状素材からは複数本のリングが取れるため、脱炭層の除去加工後に、所定の幅のリングに突切又は切断することが好ましい。

0025

得られたリング素材は、リングローリング加工により得られた周方向ファイバーフロー鍛流線)組織により、欠陥のない高強度の材料となるが、ピストンリング材料としては、耐熱ヘタリ性等、所定の特性を付与するため、焼入・焼戻処理を行うことが好ましい。素材としてマルテンサイトステンレス鋼を使用する場合は、焼入温度を800〜1100℃、焼戻温度を470〜550℃とする焼入・焼戻処理を行うことが好ましい。この熱処理により、焼戻マルテンサイト中に微細炭化物が分散した顕微鏡組織が得られる。本発明の材料は、好ましくは、Hv 430〜500のビッカース硬度、190 GPa以上のヤング率を有する。

0026

実施例1(E1)
SUS420J2材の外径110 mm、長さ200 mmの棒鋼を、1000℃に加熱し、外径約165 mm、高さ約90 mmの円板状成形体にプレス成形し、さらに、コアポンチにより中央部に凹部を形成し、それを貫通、穴開けして、外径約180 mm、内径約50 mmの第1の円筒状素材を作製した。次に第1の円筒状素材を、高周波誘導加熱装置により再度加熱し、リングローリングミルにセットし、リングローリング加工により外径約364 mm、内径約332 mm、幅約110 mmの第2の円筒状素材を作製した。この第2の円筒状素材を790℃、10時間の焼鈍後、ショットブラストによる酸化スケールの除去後、長径362 mm、短径356 mmの非円形形状(楕円形状等)に内外周を同時に粗加工した後、突切加工して非円形形状のリングを8本得た。900℃からの焼入、490℃、3時間の焼戻しの後、仕上加工を施して、呼び径(d1) 350 mm、幅(h1) 5 mm、厚さ(a1) 9.5 mmの矩形断面で外周面バレル形状、二重段付き合口形状の圧力リングとした。次に、460℃、5時間のガス窒化によりリング全面に窒化層を約70μm形成し、さらに外周には、高速フレーム溶射によりNi合金基地中に微細なCr炭化物粒子が分散した複合材粒子を主たる構成粒子スルザーメテコ社のSM5241粉末)とするサーメット溶射被膜を約500μm形成し、最終的には溶射被膜の膜厚約350μmまで仕上研磨を施した。ここで、ガス窒化により表面に生成した化合物層白層)は研削除去した。なお、面圧が0.08 MPaとなるように、張力Ftは70 Nに調整した。

0027

[1] 重量の測定
実施例1の圧力リングの重量は、電子天秤にて測定した8本の重量の平均値とした。平均値は397 gであった。

0028

[2]平面度の測定
実施例1のリングを定盤上に置き、合口部2点、合口から90°、180°及び270°の各点の5点に5 Nの荷重を加え、半径方向と円周方向の平面度を測定した。平面度は基準面に平行な面からのリング側面の自然に発生する偏差と定義され(JIS B 8037-2)、リングのねじれや皿状態を評価するのに用いられる。半径方向の平面度は、半径が1.5±0.05 mmの球面形測定子を用いて約1 Nの測定荷重で、リングの上側面において、荷重点の中央で測定する4点の測定値最大値とし、円周方向の平面度は、リングの厚さの中心で、かつ荷重点の中央で測定し、振れの最大値と最小値との差とする。実施例1の半径方向の平面度は0.011 mm、円周方向の平面度は0.044 mmであった。

0029

比較例1(C1)
材料組成が、質量%で、C:3.8%、Si:2.6%、Mn:0.5%、P:0.04%、S:0.01%、Cr:0.09%、Ni:0.88%、V:0.06%、Cu:2.42%の鋳鉄から、溶解、鋳造して第2の円筒状素材に該当するCV黒鉛鋳鉄製素材を作製し、窒化処理及び溶射処理を省略した以外は、実施例1と同様にして、呼び径(d1) 350 mm、幅(h1) 7 mm、厚さ(a1) 10.5 mmの矩形断面で外周面がバレル形状、二重段付き合口形状の圧力リングを作製した。比較例1のリングの重量は611 gであった。比較例1においても、面圧が0.08 MPaとなるように、張力Ftは98 Nに調整した。実施例1と同様にして平面度の測定を行った結果、半径方向の平面度は0.005 mm、円周方向の平面度は0.026 mmであった。実施例1と比較すると、平面度は約40〜55%小さかったが、実施例1では、比較例1に対し、約35%軽量化されていることがわかる。

0030

実施例2(E2)
実施例1と同じ組成の鋼材を用い、リングローリング加工により外径約368 mm、内径約339 mm、幅約120 mmの第2の円筒状素材を作製し、さらに、その円筒状素材を再度加熱し、軸に直角な方向にプレス成形して、長軸370 mm、短軸364 mmの非円形形状の円筒状素材に成形した。なお、このプレス成形では、所定の楕円形状をした下型及び上型を使用した。得られた非円形形状の円筒状素材は、実施例1と同様にして、焼鈍し、ショットブラストによる酸化スケールの除去後、内外周同時加工、突切加工して非円形形状のリングを8本得た。実施例1と同様に、焼入、焼戻の後、仕上加工を行い、さらに窒化処理と溶射処理を施して、圧力リングとした。実施例2では、実施例1に比べ内外周同時加工の加工時間が約1/5に短縮された。

0031

実施例3〜4(E3〜E4)、比較例2〜4(C2〜C4)
実施例2で作製した、外径約368 mm、内径約339 mm、幅約120 mmの第2の円筒状素材から、呼び径(d1)を350 mm、幅(h1)と厚さ(a1)を表1に示す数値とし、面圧が0.08 MPaとなるように張力Ftを調整した以外は、実施例2と同様にして、各実施例及び比較例につき8本の圧力リングを作製した。寸法関係及び張力Ft関係を表1に、実施例1と同様に測定した重量及び平面度の測定結果、並びに比較例1に対する重量比率及び追従性係数率を、実施例1及び比較例1の結果も含め表2に示す。ここで、追従性係数率(対比較例1)は、実施例1の鋼材のヤング率(E)を215 GPa、比較例1の鋳鉄のヤング率(E)を160 GPaとし、K=3Ftd12/Eh1a13により計算した。

0032

0033

実施例

0034

実施例1及び3〜4は、いずれも従来の鋳鉄製リングと比較して、重量比率が0.46〜0.82、低張力化率が0.57〜0.86と軽量化及び低張力化が図れる一方、平面度が半径方向0.007〜0.013 mm、円周方向0.040〜0.056 mmで、使用上問題ないレベルのリング精度に加工できることが確認された。比較例2は、鋼材を使用して比較例1の鋳鉄製リングより断面縮小化しているものの、比重差(鋼材比重7.8 g/cm3に対し、鋳鉄材比重は7.0 g/cm3)により重量比率は1に近く、またヤング率差(鋼材ヤング率215 GPaに対し、鋳鉄材ヤング率は160 GPa)により追従性係数は14%悪化している。比較例3〜4は、いずれも軽量化及び低張力化が大きいが、加工後の平面度が半径方向0.015 mm、円周方向0.070 mmを超え、リング精度上、問題が残った。

0035

1 自由状態のピストンリング
2シリンダ内に挿入したときのピストンリング
3円柱状鋼素材
4円板状成形体
5 第1の円筒状素材
6 第2の円筒状素材
7被加工材
8主ロール
9マンドレル
10アキシャルロール
11バックアップロール
12自由形状素材

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