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技術 TiAl製タービンホイール

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 高林宏之小柳禎彦鷲見芳紀
出願日 2014年3月5日 (6年3ヶ月経過) 出願番号 2014-042920
公開日 2015年9月28日 (4年9ヶ月経過) 公開番号 2015-168835
状態 特許登録済
技術分野 タービンの細部・装置 タービンロータ・ノズル・シール 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 破損限界 耐久限界 実機環境 ラメラー組織 サンプル採取位置 クリープ伸び シュリンケージ ホイール中
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重要な関連分野

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図面 (5)

課題

高温特性に優れ、かつHIP処理による高温特性改善が可能なTiAl系合金からなるTiAl製タービンホイールを提供すること。

解決手段

TiAl製タービンホイールは、30.0mass%≦Al≦33.0mass%、0.06mass%≦C≦0.12mass%、O<0.1mass%、及び、N<0.05mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。前記TiAl製タービンホイールは、ホイール中央部の組織等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下である。前記TiAl製タービンホイールは、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージ面積率が0.005area%未満である。

概要

背景

自動車用ターボチャージャータービンホイールは、エンジンから排気される高温ガスにさらされるため、高温下での耐熱性が要求される。そのため、タービンホイールには、従来、Ni基合金TiAl合金(例えば、特許文献1〜3)などの耐熱性に優れた合金が用いられている。

TiAl合金は、Inconel(登録商標)713CなどのNi基合金に比較して耐酸化性が若干劣る。しかし、TiAl合金にAl、Nb、又はSiを添加することにより耐酸化性が改善されることが知られており、また実際の自動車排気ガスに含まれる酸素成分が少ないことから、酸化による問題は克服しつつある。
一方、燃費燃焼効率を改善するために、排ガス温度は高温化する傾向にあり、900℃を超える高温域での強度特性の改善が重要課題になっている。しかしながら、タービンホイールは、一般に、鋳造法により製造されており、鋳造ままでは微小欠陥ミクロシュリンケージ)を内在することが多い。

この問題を解決するために、高温での熱処理による延性の改善や、HIP処理による延性・強度の改善が知られており、TiAl合金にも適用事例はある。
しかしながら、TiAl合金に対してHIP処理を施すと、むしろ特性を損ない、HIP処理による高温特性の改善が得られない場合があった。

概要

高温特性に優れ、かつHIP処理による高温特性改善が可能なTiAl系合金からなるTiAl製タービンホイールを提供すること。TiAl製タービンホイールは、30.0mass%≦Al≦33.0mass%、0.06mass%≦C≦0.12mass%、O<0.1mass%、及び、N<0.05mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。前記TiAl製タービンホイールは、ホイール中央部の組織等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下である。前記TiAl製タービンホイールは、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージの面積率が0.005area%未満である。

目的

本発明が解決しようとする課題は、高温特性に優れたTiAl系合金からなるTiAl製タービンホイールを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

以下の構成を備えたTiAl製タービンホイール。(1)前記TiAl製タービンホイールは、30.0mass%≦Al≦33.0mass%、0.06mass%≦C≦0.12mass%、O≦0.1mass%、及び、N≦0.05mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。(2)前記TiAl製タービンホイールは、ホイール中央部の組織等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下である。(3)前記TiAl製タービンホイールは、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージ面積率が0.005area%未満である。

請求項2

前記TiAl系合金は、7.0mass%≦Nb+Ta≦8.0mass%をさらに含む請求項1に記載のTiAl製タービンホイール。

請求項3

前記TiAl系合金は、0.2mass%≦Si≦1.0mass%、をさらに含む請求項1又は2に記載のTiAl製タービンホイール。

請求項4

前記TiAl系合金は、0.5mass%≦Cr≦1.5mass%さらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載のTiAl製タービンホイール。

請求項5

前記TiAl系合金は、0.2mass%≦Mn+V≦4.0mass%をさらに含む請求項1から4までのいずれか1項に記載のTiAl製タービンホール

請求項6

前記TiAl系合金は、0.2mass%≦W+Re≦10.0mass%をさらに含む請求項1から5までのいずれか1項に記載のTiAl製タービンホール。

請求項7

前記TiAl系合金は、Zr<1.0mass%、及び/又は、Fe<1.0mass%をさらに含む請求項1から6までのいずれか1項に記載のTiAlタービンホール。

技術分野

0001

本発明は、TiAl製タービンホイールに関し、さらに詳しくは、自動車ターボチャージャーなどに用いられるTiAl製タービンホイールに関する。

背景技術

0002

自動車用ターボチャージャーのタービンホイールは、エンジンから排気される高温ガスにさらされるため、高温下での耐熱性が要求される。そのため、タービンホイールには、従来、Ni基合金TiAl合金(例えば、特許文献1〜3)などの耐熱性に優れた合金が用いられている。

0003

TiAl合金は、Inconel(登録商標)713CなどのNi基合金に比較して耐酸化性が若干劣る。しかし、TiAl合金にAl、Nb、又はSiを添加することにより耐酸化性が改善されることが知られており、また実際の自動車排気ガスに含まれる酸素成分が少ないことから、酸化による問題は克服しつつある。
一方、燃費燃焼効率を改善するために、排ガス温度は高温化する傾向にあり、900℃を超える高温域での強度特性の改善が重要課題になっている。しかしながら、タービンホイールは、一般に、鋳造法により製造されており、鋳造ままでは微小欠陥ミクロシュリンケージ)を内在することが多い。

0004

この問題を解決するために、高温での熱処理による延性の改善や、HIP処理による延性・強度の改善が知られており、TiAl合金にも適用事例はある。
しかしながら、TiAl合金に対してHIP処理を施すと、むしろ特性を損ない、HIP処理による高温特性の改善が得られない場合があった。

先行技術

0005

特開2008−184665号公報
特開平10−118764号公報
特開平10−193087号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明が解決しようとする課題は、高温特性に優れたTiAl系合金からなるTiAl製タービンホイールを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、HIP処理による高温特性改善が可能なTiAl系合金からなるTiAl製タービンホイールを提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

上記課題を解決するために本発明に係るTiAl製タービンホイールは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記TiAl製タービンホイールは、
30.0mass%≦Al≦33.0mass%、
0.06mass%≦C≦0.12mass%、
O≦0.1mass%、及び、
N≦0.05mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。
(2)前記TiAl製タービンホイールは、ホイール中央部の組織等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下である。
(3)前記TiAl製タービンホイールは、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージの面積率が0.005area%未満である。

発明の効果

0008

所定の組成を有するTiAl系合金を鋳造すると、通常、個々の結晶粒がα2相(Ti3Al)とγ相(TiAl)のラメラー構造を持つ組織が得られる。一方、個々の結晶粒の形状は、TiAl系合金の組成に応じて、柱状晶となる場合と、等軸晶となる場合とがある。
柱状晶組織を持つTiAl系合金に対してHIP処理を施すと、高温特性の改善は得られない。同様に、等軸晶組織を持つTiAl系合金に対してHIP処理を施す場合において、平均粒径が小さすぎる場合及び大きすぎる場合のいずれも、高温特性の改善は得られない。

0009

これに対し、TiAl系合金を鋳造する場合において、成分を最適化すると、適度な粒径を持つ等軸晶組織が得られる。このようなTiAl系合金に対してHIP処理すると、高温特性が改善される。これは、HIP処理によりシュリンケージが消滅すると同時に、HIP処理時における結晶粒間での等軸γ粒の析出が抑制されるためと考えられる。

図面の簡単な説明

0010

HIP処理前(上図)及びHIP処理後(下図)の組織の模式図である。
図2(a)は、機械的特性を評価するための試験片採取位置の模式図である。図2(b)は、組織観察のための試験片採取位置の模式図である。
図3(a)は、Al量とクリープラプチャ寿命との関係を示す図である。図3(b)は、Al量と耐久破損限界回転数との関係を示す図である。
図4(a)は、C量とクリープラプチャー寿命との関係を示す図である。図4(b)は、C量と耐久破損限界回転数との関係を示す図である。

0011

以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. TiAl製タービンホイール]
本発明に係るTiAl製タービンホイールは、以下の構成を備えている。
(1)前記TiAl製タービンホイールは、
30.0mass%≦Al≦33.0mass%、
0.06mass%≦C≦0.12mass%、
O≦0.1mass%、及び、
N≦0.05mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl系合金からなる。
(2)前記TiAl製タービンホイールは、ホイール中央部の組織が等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下である。
(3)前記TiAl製タービンホイールは、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージの面積率が0.005area%未満である。

0012

[1.1.TiAl系合金]
本発明に係るTiAl製タービンホイールは、TiAl系合金からなる。TiAl系合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。

0013

[1.1.1.主構成元素
(1)30.0mass%≦Al≦33.0mass%:
Alは、Tiと結合して金属間化合物であるγ相(TiAl)及びα相(Ti3Al)を生成する。α相は、室温ではα2相となる。γ相及びα相は、いずれも単相では脆く、強度が低い化合物である。しかしながら、Al量を最適化すると、γ相中にα相が体積率で4〜28%程度含まれる二相状態(ラメラー組織)となり、延性及び強度が高くなる。また、耐久強度特性も最も良好となる。

0014

Al量が不足すると、α相(Ti3Al)の量が過大になる。同時に、平均結晶粒径が3.0mmを超える粗大な等軸晶組織となる。等軸晶組織であるため、HIP処理後は、ミクロシュリンケージが圧着されることにより特性ばらつきは抑制される。しかし、HIP処理によってラメラーが粗くなり、かつ、結晶粒界に粗大な等軸γ粒が形成される(図1(a)参照)。その結果、高温強度及び耐久強度が低下する。さらに、耐酸化性はAl量に依存しており、高温域での使用を考えると、低Al側の設計は好ましくない。
従って、Al量は、30.0mass%以上である必要がある。Al量は、さらに好ましくは、30.5mass%以上、さらに好ましくは、31.0mass%以上である。

0015

Al量が多くなるほど、耐酸化性は増大する。特に、1000℃付近の高温域では、その効果が顕著になる。しかしながら、Al量が過剰になると、γ相(TiAl)が過大(すなわち、α相(Ti3Al)が過小)となり、強度及び延性が著しく低下する。同時に、柱状晶組織が支配的となる。柱状晶組織の場合、ミクロシュリンケージがやや粗大なため、HIP処理を行っても圧着効果が低い。また、HIP処理後に形成される等軸γ粒の形成箇所がタービンホイールの軸部(中央部)に集中する(図1(d)参照)。そのため、高温引張強度が低くなり、耐久寿命も低下する。
従って、Al量は、33.0mass%以下である必要がある。Al量は、さらに好ましくは、32.5mass%以下、さらに好ましくは、32.0mass%以下である。

0016

(2)0.06mass%≦C≦0.12mass%:
Cは、α(α2)相及びγ相の双方に固溶し、TiAl系合金の高温強度を上げ、耐久強度を向上させる効果がある。C量が0.06mass%以上になると、マクロ組織が適度に等軸晶化し(図1(b)参照)、耐久強度を向上させる効果が現れる。従って、C量は、0.06mass%以上である必要がある。
一方、C量が過剰になると(C量が0.12mass%を超えると)、炭化物の析出と、結晶粒の過度微細化が顕在化し、耐久強度が低下する。従って、C量は、0.12mass%以下である必要がある。

0017

(3)O≦0.1mass%:
(4)N≦0.05mass%:
O及びNは、原料から混入する不純物である。O及び/又はNが多量に混入すると、マクロ組織が極微細等軸晶となる(図1(c)参照)。従って、O量は、0.1mass%以下である必要がある。また、N量は、0.05mass%以下である必要がある。

0018

[1.1.2. 副構成元素
TiAl系合金は、上述した主構成元素に加えて、以下の1又は2以上の副構成元素をさらに含んでいても良い。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。

0019

(5)7.0mass%≦Nb+Ta≦8.0mass%:
「Nb+Ta」は、NbとTaの総量を表す。また、総量が上記範囲内である限りにおいて、Nb又はTaのいずれか一方が含まれていなくても良く(Nb≧0mass%、Ta≧0mass%)、あるいは、双方が含まれていても良いことを表す。
Nb及びTaは、いずれもTiAl系合金の耐酸化性を改善する。このような効果を得るためには、総量は、7.0mass%以上が好ましい。総量は、さらに好ましくは、7.2mass%以上である。
一方、総量が過剰になると、延性が低下する。また、これらの元素は高比重であるため、TiAl系合金の密度を高くし、低密度というTiAl系合金の利点が薄れる。従って、総量は、8.0mass%以下が好ましい。総量は、さらに好ましくは、7.8mass%以下である。

0020

(6)0.2mass%≦Si≦1.0mass%:
Siは、高温環境下においてシリサイド(Ti5Si3)を析出させ、クリープ特性を改善する。また、Siは、耐酸化性を改善する。高いクリープ特性を得るためには、Si量は、0.2mass%以上が好ましい。Si量は、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
一方、Si量が過剰になると、粗大な晶出シリサイド(Ti5Si3)を形成し、クリープ特性を劣化させる。また、粗大な晶出シリサイドは、室温での延性も低下させる。従って、Si量は、1.0mass%以下が好ましい。Si量は、さらに好ましくは、0.8mass%以下である。

0021

(7)0.5mass%≦Cr≦1.5mass%:
Crは、TiAl系合金の延性を改善する。このような効果を得るためには、Cr量は、0.5mass%以上が好ましい。Cr量は、さらに好ましくは、0.7mass%以上である。
一方、Cr量が過剰になると、湯周り性が悪化する。また、耐酸化性が低下するとともに、β相が生成し、高温強度が低下する。従って、Cr量は、1.5mass%以下が好ましい。Cr量は、さらに好ましくは、1.3mass%以下である。

0022

(8)0.2mass%≦Mn+V≦4.0mass%:
「Mn+V」は、MnとVの総量を表す。また、総量が上記範囲内である限りにおいて、Mn又はVのいずれか一方が含まれていなくても良く(Mn≧0mass%、V≧0mass%)、あるいは、双方が含まれていても良いことを表す。
Mn及びVは、いずれもTiAl系合金の延性を改善する。このような効果を得るためには、総量は、0.2mass%以上が好ましい。
一方、総量が過剰になると、耐酸化性が低下するとともに、β相が生成し、高温強度が低下する。従って、総量は、4.0mass%以下が好ましい。

0023

(9)0.2mass%≦W+Re≦10.0mass%:
「W+Re」は、WとReの総量を表す。また、総量が上記範囲内である限りにおいて、W又はReのいずれか一方が含まれていなくても良く(W≧0mass%、Re≧0mass%)、あるいは、双方が含まれていても良いことを表す。
W及びReは、いずれもTiAl系合金の耐酸化性を改善する。このような効果を得るためには、総量は、0.2mass%以上が好ましい。
一方、総量が過剰になると、延性が低下する。また、W及びReは高比重のため、TiAl系合金の密度を高くし、低密度というTiAl系合金の利点が薄れる。従って、総量は、10.0mass%以下が好ましい。

0024

(10)Zr<1.0mass%:
(11)Fe<1.0mass%:
Zr及びFeは、いずれもTiAl系合金製タービンホイールの精密鋳造の工程及び原料から混入する不純物である。Zr及び/又はFeが1.0mass%以上混入すると、TiAl系合金の延性が著しく低下する。従って、Zr量は、1.0mass%未満が好ましい。同様に、Fe量は、1.0mass%未満が好ましい。特に、Zr量及びFe量がともに1.0mass%未満であるのが好ましい。

0025

[1.2.組織]
タービンホイールを構成するTiAl系合金は、ホイール中央部の組織が等軸晶からなり、かつ、平均結晶粒径が0.3mm以上3.0mm以下であるものからなる。なお、「ホイール中央部」とは、図2(b)のサンプル採取位置で示す部分である。

0026

[1.2.1.等軸晶]
「等軸晶」とは、短径D1に対する長径D2の比(=D2/D1比)が3.0以下である粒子をいう。
「長径D2」とは、TiAl系合金の断面を顕微鏡で観察した場合において、断面に現れる粒子の長径方向(長さが最大となる方向)の長さをいう。
「短径D1」とは、短径方向(長径方向に対して垂直な方向)の長さをいう。

0027

「等軸晶からなる」とは、TiAl系合金の断面を顕微鏡で観察し、視野内に含まれる30個以上の粒子を無作為に選んだ場合において、観察された粒子の総数に対する等軸晶粒子の数の割合が70%以上であることをいう。
本発明において、過冷却が大きくなるように成分が最適化されているため、凝固時には、鋳型の近傍だけでなく、中心部においても相対的に多量の核が生成する。その結果、実質的に等軸晶からなるTiAl系合金が得られる。

0028

[1.2.2.平均結晶粒径]
結晶粒径」とは、粒子断面の円相当径をいう。
「平均結晶粒径」とは、無作為に選んだ10個以上の粒子の結晶粒径の平均値をいう。

0029

TiAl系合金の平均結晶粒径は、合金成分(すなわち、過冷却の程度と、核生成の起点となる成分の量)に依存する。核生成を助長する成分が多くなるほど、平均結晶粒径は小さくなる。結晶粒径が小さくなるほど、室温〜800℃域の強度及び延性が向上する。しかしながら、核生成を助長する成分が過剰になると、結晶粒径が小さくなる(図1(c)参照)と同時に、ラメラーコロニーサイズが小さくなる。その結果、900℃を超える温度域での強度特性が低下する。また、不要な硬質脆性な化合物を形成することは、疲労破壊起点を増やすことにも相当するため、実機環境での耐久リスクが増加することになる。従って、平均結晶粒径は、0.3mm以上である必要がある。

0030

一方、結晶粒径が大きくなりすぎると、HIP処理後に、結晶粒間に粗大な等軸γ粒子が多量に析出する(図1(a)参照)。その結果、高温特性がかえって低下する。従って、平均結晶粒径は、3.0mm以下である必要がある。

0031

[1.3.ミクロシュリンケージ]
一般に、TiAl系合金を鋳造すると、粒子間にミクロシュリンケージが存在する。これをHIP処理すると、ミクロシュリンケージが圧着され、鋳造欠陥破壊起点)が減少する。その結果、特性ばらつきが抑制される。HIP処理条件を最適化すると、HIP後のホイール中央部のミクロシュリンケージの面積率は、0.005area%未満となる。
ここで、「ミクロシュリンケージの面積率」とは、図2(b)のサンプル採取位置の縦断面において、観察視野(15mm×15mm)内に含まれるミクロシュリンケージの面積の割合をいう。

0032

[2.タービンホイールの製造方法]
本発明に係るタービンホイールは、
(1)所定の成分となるように配合された原料を溶解し、鋳型に鋳造し、
(2)鋳造品をHIP処理し、
(3)必要に応じて機械加工を施す
ことにより製造することができる。

0033

[2.1. 溶解・鋳造工程
まず、所定の成分となるように配合された原料を溶解し、鋳型に鋳造する(溶解・鋳造工程)。溶解方法及び溶解条件は、特に限定されるものではなく、所定の成分を有する溶湯が得られる方法及び条件であればよい。
溶解方法としては、例えば、レビテーション溶解法、真空誘導溶解法、プラズマスカル溶解法などがある。

0034

次に、得られた溶湯を鋳型に鋳造する。鋳造方法及び条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法及び条件を選択することができる。
鋳造方法としては、例えば、減圧吸引鋳造法加圧鋳造法、遠心鋳造法金型鋳造法などがある。これらの中でも減圧吸引鋳造法は、薄肉で複雑な形状を有する部材の鋳造が可能であるので、タービンホイールの鋳造方法として特に好適である。

0035

減圧吸引鋳造法とは、ロストワックス法にて製造した砂型を用い、原料又は母合金をレビテーション溶解した後、鋳型をセットしたチャンバー内を減圧吸引することで鋳型内に溶湯を吸引し、鋳造する方法である。各製品重量は、通常1kg以下である。減圧吸引鋳造法は、タービンホイールのように翼先端部の肉厚が5mm以下となる薄肉・小型鋳物に適した方法である。また、レビテーション溶解との組み合わせにより、活性金属の溶解であるにもかかわらず、酸素窒素などの混入を抑制できる。

0036

しかしながら、レビテーション溶解炉では、その構造上、高周波電流により対象金属を加熱する一方で、炉体は常時水冷されている。そのため、溶湯温度を上げるのに限界があり、合金成分により凝固後の組織形態に差が生じる。
これに対し、本発明においては、溶湯の成分が最適化されているので、目的とする等軸晶組織を安定して得ることができる。
鋳造後、破砕ショットブラスト等を利用して、鋳型を除去する。

0037

[2.2.HIP処理工程]
次に、鋳造品をHIP処理する(HIP処理工程)。HIP処理は、内部の鋳造欠陥を消滅させ、信頼性を向上させるとともに、強度及び靱性を改善させる。HIP処理条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
一般に、HIP処理温度が高くなるほど、より短時間の処理で、ミクロシュリンケージを圧着させることができる。従って、HIP処理温度は、1000℃以上が好ましい。
一方、HIP処理温度が高くなりすぎると、結晶粒が粗大化する。従って、HIP処理温度は、1350℃以下が好ましい。

0038

最適なHIP処理時間は、組成や処理温度にもよるが、通常、2時間程度である。同様に、HIP処理時の圧力は、通常、1000kgf/cm2以上(98MPa以上)である。HIP処理後、サンドブラストにて表面のを除去する。

0039

[2.3. 加工工程]
次に、必要に応じてHIP処理品に対して、機械加工を施す(加工工程)。加工方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。なお、実質的に後加工が不要な場合には、後加工を省略することができる。

0040

[3. 作用]
所定の組成を有するTiAl系合金を鋳造すると、通常、個々の結晶粒がα2相(Ti3Al)とγ相(TiAl)のラメラー構造を持つ組織が得られる。一方、個々の結晶粒の形状は、TiAl系合金の組成に応じて、柱状晶となる場合と、等軸晶となる場合とがある。
一般に、鋳造品に対してHIP処理を施すと、鋳造まま材に形成されているミクロシュリンケージが圧着され、鋳造欠陥減少(破壊起点減少)による品質改善効果(特性ばらつきの抑制効果)が得られることが知られている。しかしながら、本願発明者らは、詳細な調査の結果、TiAl系合金については、鋳造組織が異なると、HIP処理による強度・延性に与える効果が異なることを見出した。

0041

また、HIP処理時の温度環境では、通常、結晶粒成長には至らない。しかしながら、HIP処理により、ラメラー間隔の増大と結晶粒間の等軸γ粒の形成による高温強度特性の低下が起こる。そのため、HIP処理に際しては、ラメラー組織の変化に起因する特性低下を抑制することが肝要となる。
一方、HIPとは関係なく、不純物(例えば、C、N、O、Bなど)の多量添加により、微細な等軸粒が得られることが知られている。そのため、このような不純物の添加による結晶粒の微細等軸化とHIP処理とを組み合わせることが考えられる。

0042

しかし、不純物の添加による微細等軸化とHIP処理との組み合わせでは、室温〜800℃域の強度及び延性を向上させることはできるが、900℃を超える高温域での強度特性が低下する。これは、結晶粒が小さくなると同時に、ラメラーコロニーサイズも小さくなるためである。また、不要な硬質脆性な化合物を形成することは、疲労破壊起点を増やすことにも相当するため、実機環境での耐久リスクが増加することになる。

0043

本願発明者らは、HIP処理前のマクロミクロ組織と、HIP処理後の強度特性に及ぼす成分の影響を鋭意調査した。その結果、最適な結晶組織結晶粒サイズが存在し、その組織を得るための製法と組成の最適解が存在することを見出した。具体的には、C量とAl量を適正化することで、炭化物を形成することなく、0.3〜3.0mm程度の適度な等軸晶組織が得られることを見出した。

0044

図1に、HIP処理前後の組織の模式図を示す。凝固時に核生成が専ら鋳型の近傍で起こる場合、図1(d)の上図に示すように、鋳造組織は柱状晶組織が支配的となる。一方、核生成が鋳型から離れた位置にある溶湯内でも活発に起こる場合、図1(a)の上図〜図1(c)の上図に示すように、鋳造組織は等軸晶組織となる。また、核生成を助長する成分が多くなるほど、図1(a)→図1(b)→図1(c)に示すように、結晶粒は微細化する。

0045

柱状晶組織においては、ミクロシュリンケージがタービンホイールの軸部中央に凝集している。このような柱状晶組織に対してHIP処理を行うと、図1(d)の下図に示すように、タービンホイールの軸部中央のミクロシュリンケージを完全に圧着できない上に、結晶粒界部に等軸γ粒が集合形成されやすい。その結果、かえって特性を損ない、HIP処理による高温特性の改善は得られない。

0046

一方、等軸晶組織においては、材料内にミクロシュリンケージが均等に分散している。そのため、等軸晶組織に対するHIP処理は有効であり、HIP処理により室温〜800℃程度の低温域での強度及び靱性の向上を図ることができる。
しかしながら、等軸晶組織において、結晶粒を微細化しすぎた場合(図1(c))には、900℃を超える高温域での強度低下とクリープ伸びの増大が生じる。そのため、900℃を超える高温域での使用に耐えられない。
また、結晶粒を粗大化しすぎた場合(図1(a))には、HIP処理後に結晶粒界に多量の等軸γ粒が形成される。そのため、高温強度及び耐久寿命が低下する。

0047

これに対し、適度に粗い等軸晶組織に対してHIP処理すると、図1(b)に示すように、多量の等軸γ粒子を生成させることなく、ミクロシュリンケージを圧着することができる。その結果、室温〜800℃の低温域の特性が向上するだけでなく、900℃を超える高温域における特性(高温強度、耐クリープ性)も向上する。

0048

(実施例1〜58、比較例1〜26)
[1.試料の作製]
レビテーション溶解及び減圧吸引鋳造を組み合わせた精密鋳造法にて、100g程度のタービンホイールを作製した。鋳造後、破砕、ショットブラスト等を用いて、鋳型を除去した。その後、鋳造品のHIP処理を行った。HIP処理条件は、温度:1200℃、加圧ガス:Arガス、圧力:1000kgf/cm2(98MPa)以上、処理時間:2時間とした。HIP処理後、サンドブラストにて表面の煤を除去した。表1及び表2に、各試料の成分を示す。

0049

0050

0051

[2.試験方法
[2.1.引張試験及びクリープラプチャー試験
図2(a)に示すように、HIP処理後のタービンホイールの軸部中央より、試験片を切り出した。試験部直径は6mm、試験部平滑部の長さは13mmとした。この試験片を用いて引張試験(JIS Z 2241に準拠)、及びクリープラプチャー試験(JIS Z 2271に準拠)を行った。

0052

[2.2.結晶粒径、ミクロシュリンケージの面積率、及び等軸γ面積率]
図2(b)に示すように、タービンホイールの軸部中央より試験片を切り出した。
試験片の縦断面ミクロ組織研磨ままの状態で光学顕微鏡にて観察し、15mm×15mmの視野を撮影した。その中におけるシュリンケージの面積率を導出した。
また、試験片の縦断面ミクロ組織をエッチングした状態で光学顕微鏡にて観察し、15mm×15mmの視野を撮影した。その範囲の結晶粒径(=ラメラーコロニーサイズ)の平均値、及び等軸γ粒子の面積率を導出した。

0053

[2.3.耐久試験
HIP処理後のタービンホイールを実機のターボチャージャーにセットした。燃料燃焼させたガスバーナー送風によりタービン回転試験を実施した。温度環境として、ターボチャージャー入口におけるガス温度を1000℃に設定した。
送風量により回転数を制御した。10万回転/分から試験を開始し、各5万回転アップ毎に30分間定常運転し、段階的に回転速度を上げた。ホイールが破損する限界の回転速度を耐久限界回転数とした。すなわち、20万回転/分で破損した場合は、耐久限界回転数は15万回/分である。
なお、30万回転/分以上については、機構上、回転速度を上げることができなかったため、実施していない。従って、30万回転/分のデータは、30万回転で30分間定常運転しても未破損であったことを意味する。

0054

[3. 結果]
表3及び表4に結果を示す。表5及び表6には、主としてAl量が異なる材料の組成及び結果を抜き出して示した。同様に、表7及び表8には、主としてC量が異なる材料の組成及び結果を抜き出して示した。
図3(a)に、Al量とクリープラプチャー寿命との関係を示す。図3(b)に、Al量と耐久破損限界回転数との関係を示す。図4(a)に、C量とクリープラプチャー寿命との関係を示す。図4(b)に、C量と耐久破損限界回転数との関係を示す。
表3〜表8及び図3図4より、以下のことがわかる。

0055

0056

0057

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0060

0061

(1)Al量が過剰になると、柱状晶組織となる。一方、Al量が少なすぎると、平均結晶粒径が3.0mmを超える粗大な等軸晶組織となる。その結果、何れの場合も高温特性が低下する。
これに対し、Al量を最適化すると、平均結晶粒径が0.3〜3.0mm程度の適度な粗さを有する等軸晶組織が得られる。また、これによって高温特性が向上する。

0062

(2)C量が少なすぎると、柱状晶組織となる。一方、C量が過剰になると、平均結晶粒径が0.3mm未満の極微細な等軸晶組織となる。その結果、何れの場合も高温特性が低下する。
これに対し、C量を最適化すると、平均結晶粒径が0.3〜3.0mm程度の適度な等軸晶組織が得られる。また、これによって高温特性が向上する。

実施例

0063

以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

0064

本発明に係るタービンホイールは、自動車用ターボチャージャーに用いることができる。

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